説明

車載用レーダ装置

【課題】対象物の水平方向方位と鉛直方向方位の両方を検出するコストを低減した車載用レーダ装置を得る。
【解決手段】送信部から送信され対象物より反射された電波を、水平方向に複数配列された第1の受信アンテナ素子と、第1の受信アンテナ素子と同一平面状に第1の受信アンテナ素子とは別に鉛直方向に複数配列された第2の受信アンテナ素子とにより受信し、受信した信号と送信部から分配された信号とをミキサにより混合し、ダウンコンバートされた信号を受信アンプにより増幅する受信部と、受信部からの受信信号に基づき、所定範囲内に存在する対象物の距離,相対速度,方位を検出する信号処理部とを備える車載用レーダ装置において、受信部を構成するミキサの後段に、第1又は第2の受信アンテナ素子と同数の回路切替部を備え、回路切替部により第1の受信アンテナ素子への接続と、第2の受信アンテナ素子への接続とを切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用レーダ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車載用レーダ装置は、先行車等を認識するために利用されることが多く、その場合、道路標識や案内板等のような路面に対する鉛直方向の位置が高いために障害物とはなり得ない物体を先行車と識別する必要がある。この問題を解決するために、例えば、特許文献1に記載されているような、複数の素子アンテナが水平方向に配列されたアレーアンテナを有する受信アンテナと、この受信アンテナのアンテナパターンの水平方向の走査を電気的に行うことにより、この受信アンテナで受信した受信信号から水平方向の所定方位範囲内に存在する目標物の認識を行う信号処理部とを備えたレーダ装置において、素子アンテナの少なくとも一部が鉛直方向にずれて配置され、信号処理部は鉛直方向にずれた素子アンテナからの受信信号を用いて目標物の鉛直方向方位をモノパルス方式で検出することを特徴とするレーダ装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3433417号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しなしながら、前記従来のレーダ装置には以下のような課題がある。まず、前記従来のレーダ装置において、各素子アンテナからミキサ、信号処理部へと入力される構造(特許文献の図1)とした場合、ミキサをはじめとする受信回路の数が全素子アンテナと同数必要であり、レーダ装置に必要な部品点数が多くなり、価格も高コストとなる。
【0005】
次に、特許文献の図3では、ミキサの前段に挿入したスイッチにより各素子アンテナの切り替えを行うことでミキサをはじめとする受信回路の数を減らした構成で、水平、鉛直方向方位の検出を実現している。しかしながら、特許文献の図3では、素子アンテナが8個(上側の素子アンテナ4個、下側の素子アンテナ4個)、スイッチが全素子アンテナと同数の8個、ミキサが6個の構成となっている。また、特許文献の図3に則した最も簡単な構成では、素子アンテナが4個(上側の素子アンテナ2個、下側の素子アンテナ2個)、スイッチは4個、ミキサが4個必要となる。すなわち、素子アンテナ数が必要最小限となる構成においても、スイッチ、ミキサの素子数がアンテナ素子と同数必要となり、コスト削減効果が大きくない。とりわけ高周波用部品であるスイッチ、ミキサの素子数が多い構成となるため高コストとなる。
【0006】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたものであり、高周波用ではなくIF帯用スイッチを用いることによるスイッチより後段の受信回路数の削減、又は、高周波用スイッチを用いることでミキサを含めた受信回路数の削減等を行い、又は、前記スイッチに素子アンテナの切り替えを行う機能だけではなく、接続切替時の不要信号を抑制する機能も兼ねることにより、低コスト又は/及び高精度に、対象物の水平方向方位と鉛直方向方位の両方を検出する車載用レーダ装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係わる車載レーダ装置は、対象物に向けて送信アンテナから電波を送信する送信部と、前記送信部から送信され対象物より反射された電波を、水平方向に複数配列された第1の受信アンテナ素子と、前記第1の受信アンテナ素子と同一平面状に前記第1の受信アンテナ素子とは別に鉛直方向に複数配列された第2の受信アンテナ素子とにより受信し、受信した信号と前記送信部から分配された信号とをミキサにより混合し、ダウンコンバートされた信号を受信アンプにより増幅する受信部と、前記受信部からの受信信号に基づき、所定範囲内に存在する対象物の距離,相対速度,方位を検出する信号処理部とを備えた車載用レーダ装置において、前記受信部を構成する前記ミキサの後段に、前記第1又は第2の受信アンテナ素子と同数の回路切替部を備え、前記回路切替部により前記第1の受信アンテナ素子への接続と、前記第2の受信アンテナ素子への接続とを切り替えるようにしたものである。
【0008】
また、本発明に係わる車載レーダ装置は、対象物に向けて送信アンテナから電波を送信する送信部と、前記送信部から送信され対象物より反射された電波を、水平方向に複数配列された第1の受信アンテナ素子と、前記第1の受信アンテナ素子と同一平面状に前記第1の受信アンテナ素子とは別に鉛直方向に複数配列された第2の受信アンテナ素子とにより受信し、受信した信号と前記送信部から分配された信号とをミキサにより混合し、ダウンコンバートされた信号を受信アンプにより増幅する受信部と、前記受信部からの受信信号に基づき、所定範囲内に存在する対象物の距離,相対速度,方位を検出する信号処理部とを備える車載用レーダ装置において、前記受信部を構成する前記ミキサの前段に、前記第1又は第2の受信アンテナ素子と同数の検出方向切替手段を備え、前記検出方向切替手段により前記第1の受信アンテナ素子への接続と、前記第2の受信アンテナ素子への接続とを切り替えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の車載用レーダ装置によれば、回路切替部が、第1の受信アンテナ素子が接続されたミキサへの接続と、第2の受信アンテナ素子が接続されたミキサへの接続とを、切り替える機能を備えることで、ミキサより後段の受信回路を削減した車載用レーダ装置が得られ、対象物の水平方向方位と鉛直方向方位の両方を検出できる。さらに、回路切替部を高周波部品ではなくIF帯部品とするため、従来の車載用レーダ装置よりもコストを低減することができる。
【0010】
また、本発明の車載用レーダ装置によれば、受信部を構成するミキサの前段に、第1又は第2の受信アンテナ素子と同数の検出方向切替手段を備え、前記検出方向切替手段により前記第1の受信アンテナ素子への接続と、前記第2の受信アンテナ素子への接続とを切り替えるようにしたので、ミキサを含めた受信回路を削減し、従来の車載用レーダ装置よりもコストを低減した車載用レーダ装置であって、対象物の水平方向方位と鉛直方向方位の両方を検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係る車載用レーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る車載用レーダ装置に用いるアンテナ部の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る車載用レーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る車載用レーダ装置の回路切替部1、2の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る車載用レーダ装置に用いる検出方向切替手段1、2のタイミングチャートを示す図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係る車載用レーダ装置の送信部、信号処理部の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る検出方向切替手段1を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係る送信スイッチ素子、検出方向切替手段1、2のタイミングチャートを示す図である。
【0012】
【図9】本発明の実施の形態3に係る車載用レーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の実施の形態3に係る検出方向切替手段1の構成を示す図である。
【図11】本発明の実施の形態3に係る接続切替手段1の構成を示す図である。
【図12】本発明の実施の形態3に係る検出方向切替手段1、2と接続切替手段1〜4のタイミングチャートを示す図である。
【図13】本発明の実施の形態4に係る送信スイッチ素子、検出方向切替手段1、2、接続切替手段1〜4のタイミングチャートを示す図である。
【図14】本発明の実施の形態5に係る車載用レーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図15】本発明の実施の形態5に係る接続切替手段1の構成を示す図である。
【図16】本発明の実施の形態5に係る接続切替手段1〜4のタイミングチャートを示す図である。
【0013】
【図17】本発明の実施の形態6に係る送信スイッチ素子、接続切替手段1〜4のタイミングチャートを示す図である。
【図18】本発明の実施の形態7に係る車載用レーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図19】本発明の実施の形態7に係る検出方向切替手段1、2、接続切替手段2、4のタイミングチャートを示す図である。
【図20】本発明の実施の形態8に係る送信スイッチ素子、検出方向切替手段1、2、接続切替手段2、4のタイミングチャートを示す図である。
【図21】本発明の実施の形態9に係る車載用レーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図22】本発明の実施の形態10に係る車載用レーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図23】本発明の実施の形態10に係る送信スイッチ素子、検出方向切替手段1、2、接続切替手段1、2のタイミングチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の車載レーダ装置の好適な実施の形態につき図面を用いて説明する。
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係る車載用レーダ装置の構成を示すブロック図である。図1に示すように、実施の形態1の車載用レーダ装置は、発振器102、分配器103、送信アンテナ104、受信アンテナ108、ミキサ109、回路切替部110、受信アンプ111、信号処理部112等から構成される。そして、以下で述べる各構成要素の動作タイミング等は信号処理部112によって制御される。
【0015】
発振器102が信号処理部112の制御信号S1により必要な送信信号を発生させ、分配器103において、送信アンテナ104方向と、ミキサ109方向に電力(送信信号)を分配する。送信信号は、送信アンテナ104から空間に電波として放射される。ここで、発振器102から送信アンテナ104において電波を放射するまでを送信部101とする。その後、自車前方の対象物106にて反射された電波は、受信アンテナ108にて受信され、受信信号としてミキサ109に入力される。ミキサ109では、前記受信信号が分配器103で分配された前記送信信号と混合され、ベースバンドの信号にダウンコンバートされ、出力される。
【0016】
そして、前記受信信号は回路切替部110を介して受信アンプ111に入力される。回路切替部(検出方向切替手段)110については図3を用いて詳細を後述する。受信アンプ111によって増幅された受信信号は、信号処理部112に入力され、所定範囲内に存在する対象物の距離,相対速度,方位が検出される。この車載用レーダ装置における距離と相対速度の検出方式については、一般的なFM−CWレーダと同様であるので詳細な説明は割愛する。以下では、対象物の検出については、方位検出に特化して説明を進めることとする。なお、方位検出方式については後述する通りである。
【0017】
図2は、本発明の実施の形態1に係る車載用レーダ装置に用いるアンテナ部105の構成を示す図である。本発明の車載用レーダ装置を構成するアンテナ部105は、例えば、図2に示すように、1つの送信アンテナ104と、水平方向に2つ配列された第1の受信アンテナ素子201と、鉛直方向に2つ配列された第2の受信アンテナ素子202とが同一平面状に配置される。車載用レーダ装置に用いるアンテナ部105は自車前方の検出する対象物に対向して、例えば平面状のアンテナ部が地面にほぼ垂直に自車前部に配置される。
【0018】
図3は、本発明の実施の形態1に係る車載用レーダ装置の構成を示すブロック図である。送信部101については、図1と同様であるので、図3から省略した。本発明の車載用レーダ装置は、例えば図3に示すように、第1の受信アンテナ素子1(301)、第1の受信アンテナ素子2(303)、第2の受信アンテナ素子1(302)、第2の受信アンテナ素子2(304)、ミキサ1〜4(305〜308)、回路切替部1、2(309,310)、受信アンプ1、2(311,312)等から構成されている。回路切替部1、2(309,310)を備えることにより、ミキサより後段の回路を(一部共用することにより)一部削減することができる。図示していないが、前記後段の回路には一般的に、LNA(低ノイズアンプ)やVGA(可変ゲインアンプ)、そしてLPF(ローパスフィルタ)等、多くの回路部品が使用されるため、回路削減によるコスト低減効果が大きいことは言うまでもない。
【0019】
第1の受信アンテナ素子1(301)で受信され、ミキサ1(305)を経由した受信信号は、回路切替部1(309)のポートAに入力される。一方、第2の受信アンテナ素子1(302)で受信され、ミキサ2(306)を経由した受信信号は、回路切替部1(309)のポートBに入力される。そして、回路切替部1(309)のポートCから出力された受信信号は受信アンプ1(311)を経由し、信号処理部112に入力される。同様に、第1の受信アンテナ素子2(303)で受信され、ミキサ3(307)を経由した受信信号は、回路切替部2(310)のポートAに入力される。一方、第2の受信アンテナ素子2(304)で受信され、ミキサ4(308)を経由した受信信号は、回路切替部2(310)のポートBに入力される。そして、回路切替部2(310)のポートCから出力された受信信号は受信アンプ2(312)を経由し、信号処理部112に入力される。
【0020】
さて、この車載用レーダ装置では、方位検出方式として、位相を用いて対象物の方位を計測する方式のDBF(ディジタルビームフォーミング)処理等を信号処理部112において行う。DBF処理とは、送信アンテナから送信され、対象物で反射した電波を複数の受信アンテナで同時に受信し、その受信信号を用いて、様々なアンテナパターンをディジタル信号処理により形成するものである。このDBF処理では、形成したビームにより特定されるレーダ波の到来方向毎に、受信強度と位相が検出される。
【0021】
すなわち、第1の受信アンテナ素子1(301)で受信され、ミキサ1(305)を経由した受信信号と、第1の受信アンテナ素子2(303)で受信され、ミキサ3(307)を経由した受信信号とを信号処理部112においてDBF処理により合成し、算出される前記受信信号間の位相差により、対象物106の方位を検出する。この場合、第1の受信アンテナ素子1、2(301,303)は水平方向に配列されているので、対象物106の水平方向方位が検出される。同様に、鉛直方向に配列された第2の受信アンテナ素子1、2(302,304)で受信され、ミキサ2、4(306,308)を経由した受信信号をDBF処理することにより、対象物106の鉛直方向方位が検出される。
【0022】
実施の形態1では、図3に示した、信号処理部112からの制御信号S2により、回路切替部1、2(309,310)の接続状態がA−C導通である期間(以下、水平方向検出期間)は、信号処理部において、対象物106の水平方向方位が検出される。一方、信号処理部112からの制御信号S2により、回路切替部1、2(309,310)の接続状態がB−C導通である期間(以下、鉛直方向検出期間)は、信号処理部112において、対象物106の鉛直方向方位が検出される。なお、対象物106の距離と相対速度の検出については、水平方向検出期間又は鉛直方向検出期間に検出しても良いし、水平方向検出期間に検出したものと鉛直方向検出期間に検出したものを比較する等して検出しても良い。
【0023】
図4は、本発明の実施の形態1に係る車載用レーダ装置の回路切替部1、2(309,310)の構成を示すブロック図である。回路切替部1、2(309、310)は、それぞれ検出方向切替手段1、2(401,402)で構成され、ミキサ1〜4(305〜308)を経由した信号ラインの終端回路1〜4(403〜406)と、受信アンプ1、2(311,312)、との間に、それぞれに近接して配置される。終端回路1〜4(403〜406)は、検出方向切替手段1、2(401,402)の接続状態がA−C導通⇔B−C導通(水平方向検出期間⇔鉛直方向検出期間)と切り替わる際の、急激なインピーダンス変化による伝導ノイズや放射ノイズ、そしてミキサ1〜4(305〜308)への信号の反射等を防ぐ役割を担う。また、終端回路に近接して配置することで、信号ラインが短くなり、信号ラインに重畳する外来ノイズへの耐性が上がる、前記インピーダンス変化による伝導ノイズや放射ノイズを抑制する等の効果をもたらす。
【0024】
図5は、本発明の実施の形態1に係る車載用レーダ装置に用いる検出方向切替手段1、2(401,402)のタイミングチャートを示す図である。本発明の車載用レーダ装置を構成する検出方向切替手段1、2(401,402)は、例えば、図5に示すように、信号処理部112からの制御信号S2がHの場合は、検出方向切替手段1、2(401,402)共に、接続状態をA−C導通に切り替える。一方、信号処理部112からの制御信号S2がLの場合は、検出方向切替手段1、2(401,402)共に、接続状態をB−C導通に切り替える。前述の通り、前者の場合は対象物の水平方向方位が、後者の場合は対象物の鉛直方向方位が検出される。
【0025】
以上のようにして、回路切替部(検出方向切替手段)が、第1の受信アンテナ素子が接続されたミキサへの接続と、第2の受信アンテナ素子が接続されたミキサへの接続とを切り替える機能を備えることで、ミキサより後段の受信回路を1部削減した車載用レーダ装置であって、対象物の水平方向方位と鉛直方向方位の両方を検出できる。なお、回路切替部を高周波部品ではなくIF帯部品とするため、従来の車載用レーダ装置よりもコストを低減することができる。
【0026】
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2に係る車載用レーダ装置の送信部101、信号処理部112の構成を示すブロック図である。実施の形態2に係る車載用レーダ装置のアンテナ部105の構成は図2と、受信部107の構成は図4と同様であるので図面を省略する。図6に示した車載用レーダ装置の送信部101は、図1で示した構成に、分配器103と送信アンテナ104との間に、送信スイッチ素子601を新たに備えたものである。送信スイッチ素子601は、信号処理部112からの制御信号S4により、分配器103から分配された送信信号を所定のオン時間およびオフ時間で区切る。すなわち、実施の形態2に係る車載用レーダ装置は、実施の形態1に係る車載用レーダ装置をパルスレーダとして動作させるものである。
【0027】
パルスレーダでは、パルス状の電波を送信し、実際の物体で反射されたパルス波を受信し、その往復時間で距離を算出し、送信波と受信波のビート周波数(ドップラ周波数)から相対速度を算出する。したがって、パルスの往復時間を直接計測するので、FM―CWレーダにおいて多く発生する偽像の発生確率を大幅に低減できる。また、パルスレーダでは、車載用レーダ装置において問題となる、送信信号が回路内の漏洩により直接受信回路に入力されることで、ミキサから出力される送信信号に同期した不要信号を、ミキサより後段にスイッチを設ける等の対策により、遮断することができる。実施の形態2では、図4の検出方向切替手段1、2(401,402)が、水平方向検出と鉛直方向検出を切り替える機能と、不要信号を遮断する機能とを兼ね備える。
【0028】
図7は、実施の形態2に係る検出方向切替手段1(401)を示す図である。図7では、検出方向切替手段1(401)のみ図示したが、検出方向切替手段2(402)も同様である。この実施の形態2では、図4の検出方向切替手段1、2(401,402)として、SP3T(単極3投)のスイッチ素子を使用することにより、接続状態を3状態設ける。接続状態がA−D導通の場合は水平方向検出期間、B−D導通の場合は鉛直方向検出期間となり、C−D導通の場合は後段の電位を接地回路701と同電位、すなわちグラウンド電位とする(以下、非検出期間)。そして、少なくとも送信期間では、前記検出方向切替手段1、2(401,402)は、ミキサ1(305)を経由した信号ライン及びミキサ2(306)を経由した信号ラインと、後段の回路とを遮断する(接続状態をC−D導通とする)ことで、前記不要信号を遮断する。
【0029】
図8は、実施の形態2に係る送信スイッチ素子601、検出方向切替手段1、2(401,402)のタイミングチャートを示す図である。実施の形態2に係る送信スイッチ素子601は、例えば図8に示すように、信号処理部112からの制御信号S4がHの場合は、送信スイッチ素子601は導通(送信期間1〜3)となり、制御信号S4がLの場合は遮断となる。
【0030】
信号処理部112からの制御信号S2、S3は、制御信号S4がHの期間及び遅れ期間はLとなる。前記以外の期間では、制御信号S2、S3は互いに反転した信号となる。なお、前記遅れ期間は、自車のごく近傍からの反射波を遮断する等のために所定時間に設定される。そして、検出方向切替手段1、2(401,402)は、(S2、S3)=(L、L)の場合はC−D導通(非検出期間)、(S2、S3)=(H、L)の場合はA−D導通(水平方向検出期間)、(S2、S3)=(L、H)の場合はB−D導通(鉛直方向検出期間)と接続状態を切り替える。このように検出方向切替手段1、2(401,402)を制御することにより、検出方向切替手段1、2(401,402)は水平方位検出期間と鉛直方位検出期間を切り替える機能に加えて、非検出期間では、信号処理部112に入力される送信信号に同期した不要信号を遮断する機能を兼ね備えることができる。
【0031】
以上のようにして、送信部に送信スイッチ素子を備え、検出方向切替手段が、第1の受信アンテナ素子が接続されたミキサへの接続と、第2の受信アンテナ素子が接続されたミキサへの接続とを切り替える機能と、少なくとも送信期間では、信号処理部へ入力する送信信号に同期した不要信号を遮断する機能とを兼ね備えることにより、送信スイッチ素子の追加でパルスレーダとして機能し、安価な構成で、対象物の水平方向方位と鉛直方向方位の両方を検出できる。
【0032】
実施の形態3.
図9は本発明の実施の形態3に係る車載用レーダ装置の構成を示すブロック図である。送信部101の構成は図1と、アンテナ部105の構成は図2と同様であるので図面を省略する。図9に示した、実施の形態3に係る車載用レーダ装置は、図4に示した回路切替部1(309)に、接続切替手段1、2(901,902)を、回路切替部2(310)に接続切替手段3、4(903,904)をそれぞれ新たに備えたものである。
【0033】
図10は、実施の形態3に係る検出方向切替手段1(401)の構成を示す図である。検出方向切替手段1(401)として、SPDT(単極双投)のスイッチ素子を使用し、接続状態がA−C導通(水平方向切替期間)となる場合、実際には、B−C間を通して後段の回路に流れる漏れ信号も存在する。すなわち、水平方向検出期間に、(図3を参照して)第2の受信アンテナ素子1(302)で受信した信号が第1の受信アンテナ素子1(301)で受信した信号に重畳し、水平方向方位の検出精度が劣化する恐れがある。同様に、鉛直方向検出期間に、第1の受信アンテナ素子1(301)で受信した信号が第2の受信アンテナ素子1(302)で受信した信号に重畳し、鉛直方向方位の検出精度が劣化する場合もある。この実施の形態3では、新たに備えた接続切替手段1〜4(901〜904)により、前記漏れ信号を抑制する。
【0034】
図11は、実施の形態3に係る接続切替手段1(901)の構成を示す図である。ここでは、図示したように、接続切替手段1〜4(901〜904)をSPDT(単極双投)のスイッチ素子とする。ポートAには、第1の受信アンテナ素子1(301)が接続されたミキサ1(305)が接続される。そして、ポートBには、接続状態がB−C導通となったときに後段の電位をグラウンド電位に固定するための接地回路1101が接続される。この接地回路1101により、接続状態がA−C導通⇔B−C導通と切り替わる際に、急激にインピーダンスを変化させることがなく、伝導ノイズや放射ノイズの発生等を防ぐことができる。
【0035】
図12は、実施の形態3に係る検出方向切替手段1、2(401、402)と接続切替手段1〜4(901〜904)のタイミングチャートを示す図である。検出方向切替手段1、2(401、402)の動作については実施の形態1と同様であるので説明を省略する。まず、信号処理部112からの制御信号S5、S7は、制御信号S2に同相同期しており、制御信号S2がHの場合、制御信号S5、S7はHとなる。この場合は、接続切替手段1、3(901、903)共に接続状態をA−C導通とする。一方、信号処理部112からの制御信号S2がLの場合、制御信号S5、S7はLとなる。この場合は接続切替手段1、3(901、903)共に接続状態をB−C導通とする。
【0036】
次に、信号処理部112からの制御信号S6、S8は制御信号S2に逆相同期しており、制御信号S2がHの場合、制御信号S6、S8はLとなる。この場合は接続切替手段2、4(902,904)共に接続状態をB−C導通とする。一方、信号処理部112からの制御信号S2がLの場合、制御信号S6、S8はHとなる。この場合は接続切替手段2、4(902,904)共に接続状態をA−C導通とする。したがって、水平方向検出期間では、検出方向切替手段1、2(401,402)及び接続切替手段2、4(902、904)により、第2の受信アンテナ素子を経由した信号の信号処理部112への漏れ込みが抑制される。同様に、鉛直方向検出期間では、検出方向切替手段1、2(401、402)及び接続切替手段1、3(901,903)により、第1の受信アンテナ素子を経由した信号の信号処理部112への漏れ込みが抑制される。
【0037】
以上のようにして、第1の受信アンテナ素子が接続されたミキサと検出方向切替手段との間と、第2の受信アンテナ素子が接続されたミキサと検出方向切替手段との間とのそれぞれに配置された接続切替手段が、水平方向方位検出時は第2の受信アンテナ素子を経由した信号の信号処理部への漏れ込みを、鉛直方向方位検出時は第1の受信アンテナ素子を経由した信号の信号処理部への漏れ込みを、それぞれ抑制する機能を備えることにより、安価な構成で、且つ、実施の形態1の図4に係る車載用レーダ装置よりも高精度に、対象物の水平方向方位と鉛直方向方位の両方を検出することができる。
【0038】
実施の形態4.
図13は、本発明の実施の形態4に係る送信スイッチ素子601、検出方向切替手段1、2(401、402)、接続切替手段1〜4(901〜904)のタイミングチャートを示す図である。送信スイッチ素子601の動作は実施の形態2と同様であるので説明を省略する。また、実施の形態4に係る車載用レーダ装置の構成は、実施の形態3と同様(送信部101は図6と同様、アンテナ部105は図2と同様、受信部と信号処理部112は図9と同様)であるので図面を省略する。
信号処理部112からの制御信号S2は、S4の立ち下がりに同期させる。制御信号S2がHの期間は、検出方向切替手段1、2(401,402)の接続状態はA−C導通、制御信号S2がLの期間は、検出方向切替手段1、2(401,402)の接続状態はB−C導通となる。
【0039】
制御信号S5、7は、制御信号S2においてS4がHの期間及び遅れ期間(非検出期間)をLとした信号となる。そして、制御信号S5、S7がHの期間は、接続切替手段1、3(901,903)の接続状態がA−C導通となり、さらに、この期間では検出方向切替手段1、2(401、402)の接続状態もA−C導通となる。したがって、制御信号S5、S7がHの期間は、水平方向検出期間となる。また、制御信号S6、8は、制御信号S5、S7を非検出期間、遅らせた信号となる。そして、制御信号S6、S8がHの期間は、接続切替手段2、4(902,904)の接続状態がA−C導通となり、さらに、この期間では検出方向切替手段1、2(401,402)の接続状態もB−C導通となる。したがって、制御信号S6、S8がHの期間は、鉛直方向検出期間となる。
このように接続切替手段1〜4(901〜904)を制御することにより、接続切替手段1〜4(901〜904)は、実施の形態3で挙げた漏れ信号を抑制する機能に加えて、非検出期間では信号処理部112に入力される送信信号に同期した不要信号を遮断する機能を兼ね備えることができる。
【0040】
以上のようにして、送信部に送信スイッチ素子を備え、接続切替手段が、水平方向方位検出時は第2の受信アンテナ素子を経由した信号の信号処理部への漏れ込みを、鉛直方向方位検出時は第1の受信アンテナ素子を経由した信号の信号処理部への漏れ込みを、それぞれ抑制する機能と、少なくとも送信期間では、信号処理部へ入力する送信信号に同期した不要信号を遮断する機能とを兼ね備えることにより、実施の形態3に係る車載用レーダ装置から送信スイッチ素子の追加でパルスレーダとして機能し、実施の形態2に係る車載用レーダ装置よりも高精度に、対象物の水平方向方位と鉛直方向方位の両方を検出することができる。
【0041】
実施の形態5.
図14は、本発明の実施の形態5に係る車載用レーダ装置の構成を示すブロック図である。図14に示した回路切替部1、2(309,310)は、実施の形態3に係る図9の構成から検出方向切替手段1、2(401,402)を省略した構成となる。また、送信部101の構成は図1と、アンテナ部105の構成は図2と同様であるので図面を省略する。図15は、実施の形態5に係る接続切替手段1(901)の構成を示す図である。ここでは、図示したように、接続切替手段1(901)をSPST(単極単投)のスイッチ素子とする。また、図示していないが、接続切替手段2〜4(902〜904)も同様の構成とする。ポートAには、第1の受信アンテナ素子1(301)が接続されたミキサ1(305)が接続される。ポートCには、受信アンプ1(311)が接続される。
【0042】
図16は、実施の形態5に係る接続切替手段1〜4(901〜904)のタイミングチャートを示す図である。動作としては、実施の形態3の図12に示したタイミングチャートから検出方向切替手段1、2(401,402)の動作を省略したものと同様となる。信号処理部112からの制御信号S5、S7とS6、S8は逆相同期しており、制御信号S5、S7がHの期間、すなわち、接続切替手段1、3(901,903)の接続状態がA−C導通となる期間は、制御信号S6、S8がL、すなわち、接続切替手段2、4(902,904)の接続状態がA−C遮断となり、水平方向検出期間となる。一方、制御信号S5、S7がLの期間、すなわち、接続切替手段1、3(901,903)の接続状態がA−C遮断となる期間は、制御信号S6、S8がH、すなわち、接続切替手段2、4(902,904)の接続状態がA−C導通となり、鉛直方向検出期間となる。
【0043】
以上のようにして、接続切替手段が、第1の受信アンテナ素子が接続されたミキサと後段の回路と、第2の受信アンテナ素子が接続されたミキサと後段の回路とを、それぞれ接続遮断する切り替え機能を備えることで、実施の形態3の車載用レーダ装置よりも安価な構成で、対象物の水平方向方位と鉛直方向方位の両方を検出することができる。
【0044】
実施の形態6.
図17は、本発明の実施の形態6に係る送信スイッチ素子601、接続切替手段1〜4(901〜904)のタイミングチャートを示す図である。この実施の形態6における動作は、実施の形態4(図13)の動作において、検出方向切替手段1、2(401,402)の動作を省略したものと同様である。ただし、この実施の形態6では、接続切替手段としてSPSTのスイッチ素子を用いるので、実施の形態4での接続切替手段の接続状態であったB−C導通が、A−C遮断に変更となる。また、実施の形態6に係る車載用レーダ装置の構成は、実施の形態5と同様(送信部101は図6と同様、アンテナ部は図2と同様、受信部107は図14、図15と同様、信号処理部112は図14と同様)であるので図面を省略する。
【0045】
送信期間1においては、接続切替手段1〜4(901〜904)はそれぞれA−C遮断とし、送信信号に同期した不要信号の信号処理部112への入力を遮断する。受信期間1においては、接続切替手段1、3(901,903)はA−C導通、接続切替手段2、4(902,904)はA−C遮断となり、第1のアンテナ素子1、2(301,303)で受信された受信信号が信号処理部112に入力され、対象物の水平方向方位が検出される。また、受信期間2においては、接続切替手段1、3(901,903)はA−C遮断、接続切替手段2、4(902,904)はA−C導通となり、第2のアンテナ素子1、2(302,304)で受信された受信信号が信号処理部112に入力され、対象物の鉛直方向方位が検出される。
【0046】
以上のようにして、送信部に送信スイッチ素子を備え、接続切替手段が、第1の受信アンテナ素子が接続されたミキサと後段の回路と、第2の受信アンテナ素子が接続されたミキサと後段の回路とを、それぞれ接続遮断する切り替え機能と、少なくとも送信期間では、信号処理部へ入力する送信信号に同期した不要信号を遮断する機能とを兼ね備えることにより、実施の形態5に係る車載用レーダ装置に送信スイッチ素子を追加してパルスレーダとして機能させ、実施の形態4に係る車載用レーダ装置よりも安価な構成で、対象物の水平方向方位と鉛直方向方位の両方を検出することができる。
【0047】
実施の形態7.
図18は、本発明の実施の形態7に係る車載用レーダ装置の構成を示すブロック図である。図18に示した回路切替部1、2(309,310)は、実施の形態3に係る図9の構成から、接続切替手段1、3(901,903)を省略した構成となる。また、送信部101の構成は図1と、アンテナ部105の構成は図2と同様であるので図面を省略する。なお、接続切替手段2、4(902,904)は、図11に示したようなSPDT(単極双投)のスイッチ素子であるものとして説明を進める。
【0048】
図19は、本発明の実施の形態7に係る検出方向切替手段1、2(401,402)、接続切替手段2、4(902,904)のタイミングチャートを示す図である。実施の形態3に係る図12において、信号処理部112からの制御信号S5、S7、接続切替手段1、3(901,903)を無くした図であると考えればよい。実施の形態1、3と同様に、信号処理部112からの制御信号S2がHの期間は水平方向検出期間、信号処理部112からの制御信号S2がLの場合は鉛直方向検出期間となる。
【0049】
前者の場合、検出方向切替手段1、2(401,402)の接続状態はA―C導通であり、接続切替手段2、4(902,904)の接続状態はB―C導通であるため、検出方向切替手段1、2(401,402)及び、接続切替手段2、4(902,904)により、第2の受信アンテナ素子を経由した信号の信号処理部112への漏れ込みが抑制される。また、実施の形態3に係る図9の構成から接続切替手段1、3(901,903)を省略した構成としているため、第1の受信アンテナ素子が接続されたミキサを経由した信号ラインの損失が低減される。
【0050】
後者の場合、検出方向切替手段1、2(401,402)のみにより、第1の受信アンテナ素子を経由した信号の信号処理部112への漏れ込みが抑制される。すなわち、鉛直方向方位よりも高精度に、水平方向方位検出を行うことができる。車載用レーダ装置の製造工程における鉛直方向の軸調整等、高い検出精度を要求されない場合には、この実施の形態7に係る車載用レーダ装置は非常に有用な構成であると言える。
【0051】
以上のようにして、第2の受信アンテナ素子が接続されたミキサの後段に配置された接続切替手段が、水平方向方位検出時は第2の受信アンテナ素子で受信した信号の信号処理部への漏れ込みを抑制する機能を備え、さらに、実施の形態3に係る車載用レーダ装置から第1の受信アンテナ素子が接続されたミキサの後段に配置された接続切替手段を削減し、第1の受信アンテナ素子が接続されたミキサを経由した信号ラインの損失を低減することにより、実施の形態3に係る車載用レーダ装置よりも安価な構成で、対象物の水平方向方位を鉛直方向方位よりも高精度に検出することができる。
【0052】
実施の形態8.
図20は、本発明の実施の形態8に係る送信スイッチ素子601、検出方向切替手段1、2(401,402)、接続切替手段2、4(902,904)のタイミングチャートを示す図である。実施の形態8における動作は、実施の形態4(図13)の動作において、接続切替手段1、3(901,903)の動作を省略したものと同様である。また、実施の形態8に係る車載用レーダ装置の構成は、実施の形態7と同様(送信部101は図6と同様、アンテナ部は図2と同様、受信部と信号処理部112は図18と同様)であるので図面を省略する。
【0053】
送信期間1においては、接続切替手段2、4(902,904)はB−C導通、検出方向切替手段1、2(401,402)もB−C導通となり、送信信号に同期した不要信号の信号処理部112への入力を遮断する。受信期間1においては、接続切替手段2、4(902,904)はB−C導通、検出方向切替手段1、2(401,402)はA−C導通となり、第1のアンテナ素子1、2(301,303)で受信された受信信号が信号処理部112に入力され、対象物の水平方向方位が検出される。また、受信期間2においては、接続切替手段2、4(902,904)はA−C導通、検出方向切替手段1、2(401,402)はB−C導通となり、第2のアンテナ素子1、2(302,304)で受信された受信信号が信号処理部112に入力され、対象物の鉛直方向方位が検出される。
【0054】
受信期間1では、検出方向切替手段1、2(401,402)及び接続切替手段2、4(902,904)により、第2の受信アンテナ素子を経由した信号の信号処理部112への漏れ込みが抑制される。受信期間2では、検出方向切替手段1、2(401,402)のみにより、第1の受信アンテナ素子を経由した信号の信号処理部112への漏れ込みが抑制される。
【0055】
以上のようにして、送信部に送信スイッチ素子を備え、接続切替手段が、水平方向検出期間では、第2の受信アンテナ素子で受信した信号の信号処理部への漏れ込みを抑制する機能と、少なくとも送信期間に、信号処理部へ入力される送信信号に同期した不要信号を遮断する機能とを兼ね備え、検出方向切替手段は、第1の受信アンテナ素子が接続されたミキサを経由した信号ラインへの接続と、接続切替手段への接続とを切り替える機能と、少なくとも送信期間に、信号処理部へ入力される送信信号に同期した不要信号を遮断する機能とを兼ね備えることにより、実施の形態7に係る車載用レーダ装置に送信スイッチ素子を追加して、パルスレーダとして機能させ、実施の形態4に係る車載用レーダ装置よりも安価な構成で、対象物の水平方向方位を鉛直方向方位よりも高精度に検出することができる。
【0056】
実施の形態9.
図21は、本発明の実施の形態9に係る車載用レーダ装置の構成を示すブロック図である。実施の形態1に係る図4に示した構成の検出方向切替手段1、2(401,402)を、受信アンテナ素子とミキサの間に配置した構成となる。このような構成とすることにより、検出方向切替手段1、2(401,402)より後段の回路を(一部共用にすることにより)一部削減することができる。特に、高周波部品であるミキサを削減することによるコスト低減効果は大きい。また、実施の形態1でも述べたが、ミキサより後段の回路には一般的に、LNA(低ノイズアンプ)やVGA(可変ゲインアンプ)、そしてLPF(ローパスフィルタ)等、多くの回路部品が使用されるため、回路削減によるコスト低減効果が大きいことは言うまでもない。なお、送信部101の構成は図1と、アンテナ部105の構成は図2と同様であるので図面を省略する。
【0057】
この実施の形態9に係る検出方向切替手段1、2(401,402)の動作については、実施の形態1の図5と同様である。信号処理部112からの制御信号S2により、検出方向切替手段1、2(401,402)の接続状態をA−C導通⇔B−C導通と切り替えることにより、水平方向方位と鉛直方向方位の両方を検出する。
【0058】
以上のようにして、検出方向切替手段が、第1の受信アンテナ素子が接続された信号ラインと、第2の受信アンテナ素子が接続された信号ラインとを切り替える機能を備えることで、ミキサを含めた受信回路を削減し、従来の車載用レーダ装置よりもコストを低減した車載用レーダ装置であって、対象物の水平方向方位と鉛直方向方位の両方を検出できる。
【0059】
実施の形態10.
図22は、本発明の実施の形態10に係る車載用レーダ装置の構成を示すブロック図である。実施の形態9に係る図21に示した構成に、ミキサ1、2(305,306)と受信アンプ1、2(311,312)の間に、接続切替手段1、2(901,902)を備えたものである。接続切替手段1、2(901,902)は、図15に示したようなSPST(単極単投)のスイッチ素子とする。また、送信部101の構成は、図6の構成と、アンテナ部の構成は図2と同様であるので図面を省略する。
【0060】
図23は、実施の形態10に係る送信スイッチ素子601、検出方向切替手段1、2(401,402)、接続切替手段1、2(901,902)のタイミングチャートを示す図である。非検出期間(送信期間+遅れ時間)においては、接続切替手段1、2(901,902)の接続状態は共にA−C遮断となり、送信信号に同期した不要信号の信号処理部112への漏れ込みを遮断する。受信期間1においては、接続切替手段1、2(901,902)の接続状態はA−C導通、検出方向切替手段1、2(401,402)の接続状態はA−C導通となり、第1のアンテナ素子1、2(301,303)で受信された受信信号が信号処理部112に入力され、対象物の水平方向方位が検出される。また、受信期間2においては、接続切替手段1、2(901,902)はA―C導通、検出方向切替手段1、2(401,402)はB―C導通となり、第2のアンテナ素子1、2(302,304)で受信された受信信号が信号処理部112に入力され、対象物の鉛直方向方位が検出される。なお、ここでは、接続切替手段1、2(901,902)に、SPST(単極単投)のスイッチ素子を使用することを前提としたが、図11に示したようなSPDT(単極双投)のスイッチ素子を使用しても構わない。
【0061】
以上のようにして、送信部に送信スイッチ素子を備え、検出方向切替手段が、第1の受信アンテナ素子が接続された信号ラインへの接続と、第2の受信アンテナ素子が接続された信号ラインへの接続とを切り替える機能を備え、接続切替手段が、少なくとも送信期間に信号処理部へ入力する送信信号に同期した不要信号を遮断する機能を備えることにより、実施の形態9の車載用レーダ装置に送信スイッチ素子を追加してパルスレーダとして機能させ、安価な構成で、対象物の水平方向方位と鉛直方向方位の両方を検出することができる。
【符号の説明】
【0062】
101 送信部 102 発振器
103 分配器 104 送信アンテナ
105 アンテナ部 107 受信部
108 受信アンテナ 109 ミキサ
110 回路切替部 111 受信アンプ
112 信号処理部
201 第1の受信アンテナ素子 202 第2の受信アンテナ素子
301 第1の受信アンテナ素子1 302 第2の受信アンテナ素子1
【0063】
303 第1の受信アンテナ素子2 304 第2の受信アンテナ素子2
305 ミキサ1 306 ミキサ2
307 ミキサ3 308 ミキサ4
309 回路切替部1 310 回路切替部2
311 受信アンプ1 312 受信アンプ2
401 検出方向切換手段1 402 検出方向切換手段2
403 終端回路1 404 終端回路2
405 終端回路3 406 終端回路4
【0064】
601 送信スイッチ素子 701 接地回路
901 接続切換手段1 902 接続切換手段2
903 接続切替手段3 904 接続切替手段4
1101 接地回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に向けて送信アンテナから電波を送信する送信部と、
前記送信部から送信され対象物より反射された電波を、水平方向に複数配列された第1の受信アンテナ素子と、前記第1の受信アンテナ素子と同一平面状に前記第1の受信アンテナ素子とは別に鉛直方向に複数配列された第2の受信アンテナ素子とにより受信し、受信した信号と前記送信部から分配された信号とをミキサにより混合し、ダウンコンバートされた信号を受信アンプにより増幅する受信部と、
前記受信部からの受信信号に基づき、所定範囲内に存在する対象物の距離,相対速度,方位を検出する信号処理部とを備える車載用レーダ装置において、
前記受信部を構成する前記ミキサの後段に、前記第1又は第2の受信アンテナ素子と同数の回路切替部を備え、前記回路切替部により前記第1の受信アンテナ素子への接続と、前記第2の受信アンテナ素子への接続とを切り替えるようにしたことを特徴とする車載用レーダ装置。
【請求項2】
前記回路切替部は、前記第1の受信アンテナ素子が接続された前記ミキサを経由した信号ラインへの接続と、前記第2の受信アンテナ素子が接続された前記ミキサを経由した信号ラインへの接続とを、前記信号処理部からの制御信号により切り替える検出方向切替手段であって、
前記検出方向切替手段は、前記信号ラインの終端回路と前記ミキサの後段の回路との間に配置されることを特徴とする請求項1記載の車載用レーダ装置。
【請求項3】
前記送信部は、送信信号を所定のオン時間およびオフ時間で区切る送信スイッチ素子を備え、
少なくとも前記オン時間の送信期間では、前記検出方向切替手段は前記信号ラインと前記前記ミキサの後段の回路との接続を遮断することを特徴とする請求項2記載の車載用レーダ装置。
【請求項4】
前記回路切替部は、
前記第1の受信アンテナ素子が接続された前記ミキサを経由した信号ラインへの接続と、前記ミキサの後段の電位をグラウンド電位に固定する接地回路への接続とを前記信号処理部からの制御信号により切り替える第1接続切替手段と、
前記第2の受信アンテナ素子が接続された前記ミキサを経由した信号ラインへの接続と、前記ミキサの後段の電位をグラウンド電位に固定する接地回路への接続とを前記信号処理部からの制御信号により切り替える第2接続切替手段と
前記第1の受信アンテナ素子が接続された前記ミキサと前記第1接続切替手段を経由した信号ラインへの接続と、前記第2の受信アンテナ素子が接続された前記ミキサと前記第2接続切替手段を経由した信号ラインへの接続とを前記信号処理部からの制御信号により切り替える検出方向切替手段とを備えたことを特徴とする請求項1記載の車載用レーダ装置。
【請求項5】
前記送信部は、送信信号を所定のオン時間およびオフ時間で区切る送信スイッチ素子を備え、
少なくとも前記オン時間の送信期間では、前記接続切替手段は前記第1の受信アンテナ素子又は前記第2の受信アンテナ素子が接続された前記ミキサを経由した信号ラインと前記検出方向切替手段との接続を遮断することを特徴とする請求項4記載の車載用レーダ装置。
【請求項6】
前記回路切替部は、
前記第1の受信アンテナ素子に接続された前記ミキサを経由した信号ラインと、前記第2の受信アンテナ素子に接続された前記ミキサを経由した信号ラインとにそれぞれ接続切替手段を備え、
前記接続切替手段は前記信号ラインの終端回路と、前記ミキサの後段の回路との間に配置されることを特徴とする請求項1記載の車載用レーダ装置。
【請求項7】
前記送信部は、送信信号を所定のオン時間およびオフ時間で区切る送信スイッチ素子を備え、
少なくとも前記オン時間の送信期間では、前記接続切替手段は前記第1の受信アンテナ素子又は前記第2の受信アンテナ素子が接続された前記ミキサを経由した信号ラインと前記ミキサの後段の回路との接続を遮断することを特徴とする請求項6に記載の車載用レーダ装置。
【請求項8】
前記回路切替部は、
前記第2の受信アンテナ素子が接続されたミキサを経由した信号ラインへの接続と、前記ミキサの後段の電位をグラウンド電位に固定する接地回路への接続とを前記信号処理部からの制御信号により切り替える接続切替手段と、
前記第1の受信アンテナ素子が接続された前記ミキサを経由した信号ラインへの接続と、前記第2の受信アンテナ素子が接続された前記ミキサと前記接続切替手段を経由した信号ラインへの接続とを信号処理部からの制御信号により切り替える検出方向切替手段とを備えたことを特徴とする請求項1記載の車載用レーダ装置。
【請求項9】
前記送信部は、送信信号を所定のオン時間およびオフ時間で区切る送信スイッチ素子を備え、
少なくとも前記オン時間の送信期間では、前記接続切替手段は、第2の受信アンテナ素子が接続されたミキサを経由した信号ラインと前記検出方向切替手段とを遮断し、
前記検出方向切替手段は、前記接続切替手段の前記接地回路と前記ミキサの後段の回路とを導通させることを特徴とする請求項8記載の車載用レーダ装置。
【請求項10】
対象物に向けて送信アンテナから電波を送信する送信部と、
前記送信部から送信され対象物より反射された電波を、水平方向に複数配列された第1の受信アンテナ素子と、前記第1の受信アンテナ素子と同一平面状に前記第1の受信アンテナ素子とは別に鉛直方向に複数配列された第2の受信アンテナ素子とにより受信し、受信した信号と前記送信部から分配された信号とをミキサにより混合し、ダウンコンバートされた信号を受信アンプにより増幅する受信部と、
前記受信部からの受信信号に基づき、所定範囲内に存在する対象物の距離,相対速度,方位を検出する信号処理部とを備える車載用レーダ装置において、
前記受信部を構成する前記ミキサの前段に、前記第1又は第2の受信アンテナ素子と同数の検出方向切替手段を備え、前記検出方向切替手段により前記第1の受信アンテナ素子への接続と、前記第2の受信アンテナ素子への接続とを切り替えるようにしたことを特徴とする車載用レーダ装置。
【請求項11】
前記送信部は、送信信号を所定のオン時間およびオフ時間で区切る送信スイッチ素子を備え、
前記受信部は、前記ミキサの後段に接続切替手段を備え、前記接続切替手段は、少なくとも前記オン時間の送信期間では、前記ミキサを経由した信号ラインと前記ミキサの後段の回路とを遮断することを特徴とする請求項10記載の車載用レーダ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2012−202927(P2012−202927A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69988(P2011−69988)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】