説明

車載用前照灯制御装置

【課題】半導体素子の電力損失を低減することにより、半導体素子の温度上昇を低減でき、小型化できる車載用前照灯制御装置を提供する。
【解決手段】車載用前照灯制御装置10は、入力電圧を前照灯が必要とする電圧に変換する電力変換回路11と、いずれの入力電圧からも制御用電圧を作る制御電源部13と、制御電源部13から給電されて電力変換回路11を制御する制御部14とを備え、電力変換回路11が、ワイドギャップ半導体を具備し、電力変換回路11を構成するスイッチング素子の駆動周波数が、136KHz以上、500KHz以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高輝度放電灯(HID(High Intensity Discharge)ランプ)や発光ダイオード(LED(Light Emitting Diode))を光源として点灯する車載用前照灯を制御する車載用前照灯制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、直流電源を昇圧して負荷への供給電力を制御する直流昇圧回路と、直流昇圧回路から出力される直流電圧を交流電圧に変換して放電灯に供給するインバータ回路とを備える車載用前照灯制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−215996号公報(図1、請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、高い電源電圧入力時に無負荷状態になることなく、半導体素子に印加される電圧ストレスを低減できる。
ところで、特許文献1と同様に、放電灯を点灯させる車載用前照灯制御装置が提案されている。
【0005】
図5に示すように、このような従来の車載用前照灯制御装置100は、直流昇圧回路であるDC/DCコンバータ102と、インバータ回路103と、起動回路であるイグナイタ104とから構成される電力変換回路101を備える。
DC/DCコンバータ102は、車載バッテリーより供給される直流電源Eを昇圧して負荷である放電灯LAへの供給電力を制御する。
インバータ回路103は、直流電源Eを交流に変換する。
イグナイタ104は、放電灯LAの起動時に高圧パルスを印加する。
【0006】
このような従来の車載用前照灯制御装置100は、放電灯LAの起動時に、DC/DCコンバータ102が、300V〜400V程度の無負荷2次電圧まで出力電圧を昇圧。放電灯LAに、その無負荷2次電圧を印加する。
ここで、イグナイタ104は、20KV程度の高圧パルスを放電灯LAに印加することにより、放電灯LAの電極間で放電を開始させて放電灯LAを始動させる。
【0007】
このとき、DC/DCコンバータ102の入力電圧Vinが電源監視部105により検出され、抵抗R1,抵抗R2により分圧された電圧レベルが、コンパレータCMPにより基準電圧Vrefと比較される。
コンパレータCMPの出力は、抵抗R4によりプルアップされており、入力電圧Vinが異常な場合には、コンパレータCMPの出力によりリセット回路106を動作させて、DC/DCコンバータ102を制御するためのPWM回路107の動作を停止させる。
PWM回路107の動作が停止すると、DC/DCコンバータ102の動作も停止する。
【0008】
このように、従来の車載用前照灯制御装置100は、入力電圧Vinの異常監視機能を有することにより、信頼性を高くできる。
しかし、このような従来の車載用前照灯制御装置100は、その形状が、電力変換回路101を構成する半導体素子の温度または半導体素子の形状に制約される。
これらの半導体素子を定格内で使用し、半導体素子の信頼性を確保するためには、DC/DCコンバータ102を構成するMOSFETであるスイッチング素子Qのジャンクション温度Tjを150℃以下にする必要がある。
【0009】
また、インバータ回路103を構成する絶縁ゲートバイポーラトランジスタIGBTのジャンクション温度Tjも150℃以下にする必要がある。
そのため、これら半導体素子の温度制約により、半導体素子の放熱構造を備えると、形状が大きくなる。
【0010】
これとは異なり、半導体素子の温度制約を解決する他の方法として、例えば、MOSFETであるスイッチング素子Qや絶縁ゲートバイポーラトランジスタIGBTの導通損失の低い製品を採用する方法がある。
しかしながら、この場合においては、半導体素子のそのものの形状が大きくなり、結果的に、形状が大きくなる。
【0011】
本発明は、前述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、半導体素子の電力損失を低減することにより、半導体素子の温度上昇を低減でき、小型化できる車載用前照灯制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る車載用前照灯制御装置は、少なくとも1つの入力電圧と、前記入力電圧を前照灯が必要とする電圧に変換する電力変換回路と、いずれの前記入力電圧からも制御用電圧を作る制御電源部と、前記制御電源部から給電されて前記電力変換回路を制御する制御部とを備え、前記電力変換回路が、ワイドギャップ半導体を具備し、前記電力変換回路を構成するスイッチング素子の駆動周波数が、136KHz以上、500KHz以下である。
【0013】
本発明に係る車載用前照灯制御装置は、前記電力変換回路は、直流電圧を昇圧して負荷への供給電力を制御する直流昇圧回路と、前記直流昇圧回路からの出力を交流電圧に変換して放電灯に供給するインバータ回路と、放電灯の起動時に高圧パルスを印加する起動回路とを有して構成される。
【0014】
本発明に係る車載用前照灯制御装置は、前記前照灯がLEDを備える。
【0015】
本発明に係る車載用前照灯制御装置は、前記ワイドギャップ半導体が、GaN半導体またはSiC半導体である。
【0016】
本発明に係る車載用前照灯制御装置は、前記ワイドギャップ半導体は、そのバンドギャップEgが、Eg≧2.0eVである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る車載用前照灯制御装置によれば、半導体素子の電力損失を低減することにより、半導体素子の温度上昇を低減でき、小型化できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る第1実施形態の車載用前照灯制御装置の回路構成図
【図2】本発明に係る第1実施形態の車載用前照灯制御装置を適用した前照灯の垂直断面図
【図3】本発明に係る第2実施形態の車載用前照灯制御装置の回路構成図
【図4】本発明に係る第2実施形態の車載用前照灯制御装置における駆動電圧と駆動電流との関係図
【図5】従来の車載用前照灯制御装置の回路構成図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る複数の実施形態の車載用前照灯制御装置について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明に係る第1実施形態の車載用前照灯制御装置10は、少なくとも1つの入力電圧を前照灯12が必要とする電圧に変換する電力変換回路11を備える。
また、第1実施形態の車載用前照灯制御装置10は、いずれの入力電圧からも制御用電圧を生成する制御電源部13と、制御電源部13から給電されて電力変換回路11を制御する制御部14とを備える。
【0020】
電力変換回路11は、直流電源Eを昇圧して前照灯12に有する負荷である放電灯LAへの供給電力を制御する直流昇圧回路であるDC/DCコンバータ15を備える。
また、電力変換回路11は、直流電源Eを交流へ変換するインバータ回路16と、放電灯LAの起動時に高圧パルスを印加する起動回路であるイグナイタ(IGN)17とを備える。
【0021】
DC/DCコンバータ15は、スイッチング素子Qと、トランスTと、ダイオードD1と、ダイオードD2と、インダクタンスL1と、コンデンサCとを含む。
DC/DCコンバータ15は、スイッチング素子Qを高周波でオン・オフすることにより、トランスTの1次側に直流電源Eを断続的に接続する。
【0022】
そして、DC/DCコンバータ15は、トランスTの2次側に、昇圧された高周波電圧を得て、これをダイオードD1により整流して、コンデンサCに昇圧された直流電圧を得る。
DC/DCコンバータ15は、ダイオードD1のオフ時に、インダクタL1の蓄積エネルギーが回生用のダイオードD2を介してコンデンサCに充電される。
【0023】
インバータ回路16は、スイッチング素子Q1,スイッチング素子Q2,スイッチング素子Q3,スイッチング素子Q4で構成されたフルブリッジ回路よりなる。
スイッチング素子Q1,スイッチング素子Q2,スイッチング素子Q3,スイッチング素子Q4は、インバータ駆動回路18により制御および駆動される。
【0024】
インバータ回路16は、スイッチング素子Q1,スイッチング素子Q4がオンで、スイッチング素子Q2,スイッチング素子Q3がオフと、スイッチング素子Q1,スッチング素子Q4がオフで、スイッチング素子Q2,スイッチング素子Q3がオンとが交番する。
これにより、インバータ回路16は、入力直流電圧を低周波交流電圧に変換して出力する。
【0025】
電力変換回路11は、DC/DCコンバータ15の入力電圧Vinが電源監視部19により検出されており、抵抗R1,抵抗R2により分圧された電圧レベルが、コンパレータCMPにより基準電圧Vk(Vref)と比較される。
コンパレータCMPの出力は、抵抗R4によりプルアップされており、入力電圧Vinが異常な場合に、コンパレータCMPの出力によりリセット回路20を動作させて、DC/DCコンバータ15を制御するためのPWM回路21の動作を停止させる。
【0026】
PWM回路21の動作が停止すると、DC/DCコンバータ15の動作も停止する。
リセット回路20は、その出力により、インバータ駆動回路18の動作を停止させる。これにより、インバータ回路16のスイッチング素子Q1,スイッチング素子Q2,スイッチング素子Q3,スイッチング素子Q4の動作を停止させる。
【0027】
電力変換回路11は、DC/DCコンバータ15を構成するスイッチング素子Q,ダイオードD1,ダイオードD2がワイドギャップ半導体(例えば、GaN半導体、SiC半導体等からなる)である。
また、電力変換回路11は、インバータ回路16を構成するスイッチング素子Q1,スイッチング素子Q2,スイッチング素子Q3,スイッチング素子Q4がワイドギャップ半導体である。
【0028】
そして、電力変換回路11は、DC/DCコンバータ15を構成するスイッチング素子Qのスイッチング周波数を、136KHz以上であって500KHz以下に設定している。
さらに、電力変換回路11は、インバータ回路16を構成するスイッチング素子Q1,スイッチング素子Q2,スイッチング素子Q3,スイッチング素子Q4のスイッチング周波数を、136KHz以上であって500KHz以下に設定している。
【0029】
ワイドギャップ半導体は、従来用いられていたDC/DCコンバータ,インバータ回路を構成するシリコン系の半導体よりも導通損失またはオン抵抗等が1桁から2桁小さい。
そして、ワイドギャップ半導体は、そのバンドギャップEgが、Eg≧2.0eVである。
そのため、電力変換回路11は、DC/DCコンバータ15を構成するスイッチング素子Q,ダイオードD1,ダイオードD2に発生する電力損失を1桁小さくできる。
【0030】
そして、インバータ回路16を構成するスイッチング素子Q1,スイッチング素子Q2,スイッチング素子Q3,スイッチング素子Q4に発生する電力損失を1桁小さくできる。
従って、電力変換回路11を構成する半導体素子の温度に制約されることなく、車載用前照灯制御装置10の形状を選択できる。
【0031】
電力変換回路11は、DC/DCコンバータ16およびインバータ回路16のスイッチング周波数が、500KHz以下である。
そのため、車載用前照灯制御装置10が搭載される自動車(図2参照)1において、相互接続された車載機器間のデータ通信(Controller Area Network通信)にノイズ等の悪影響を与えることを防げる。
なぜなら、データ通信のスイッチング周波数が、500KHzを超える帯域を用いるからである。
【0032】
電力変換回路11は、DC/DCコンバータ15およびインバータ回路16のスイッチング周波数が、136KHz以上である。
そのため、車載用前照灯制御装置10が搭載される自動車1に採用されるスマートキー(電子キーの一種で電波を利用)に干渉して、誤動作や不動作等の悪影響を与えることを防げる。
なぜなら、スマートキーの電波の周波数が、136KHz未満の帯域を用いるからである。
【0033】
電力変換回路11は、インバータ回路16を構成するスイッチング素子Q1,スイッチング素子Q2,スイッチング素子Q3,スイッチング素子Q4がワイドギャップ半導体であることにより、車載用前照灯制御装置10を小型化できる。
特に、放電灯LAが、水銀レスの高輝度放電灯である場合に、従来の有水銀の高輝度放電灯に比較して、ランプ電流が約2倍であり、ランプ電圧が約1/2となる。
【0034】
そのため、インバータ回路16を構成するスイッチング素子Q1,スイッチング素子Q2,スイッチング素子Q3,スイッチング素子Q4に流れる低周波交流電流が約2倍になる。
従って、インバータ回路16を構成するスイッチング素子Q1,スイッチング素子Q2,スイッチング素子Q3,スイッチング素子Q4がワイドギャップ半導体であることにより、車載用前照灯制御装置10を確実に小型化できる。
【0035】
図2に示すように、車載用前照灯制御装置10は、自動車1の前照灯12に適用される。
前照灯12は、灯具ケース22と、灯具ケース22の前面に配置された前面カバー23との内部の灯室24内に固定されたソケット25に水銀フリーランプである放電灯LAが取り付けられる。
そして、放電灯LAの周囲に反射板26が取り付けられており、灯具ケース22の外側に配置された車載用前照灯制御装置10がソケット25に電気的に接続される。
車載用前照灯制御装置10は、点灯スイッチ27およびフューズ28を通じてバッテリーBTに電気的に接続される。
【0036】
以上、説明したように第1実施形態の車載用前照灯制御装置10によれば、電力変換回路11が、ワイドギャップ半導体を具備する。
また、車載用前照灯制御装置10によれば、電力変換回路11を構成するスイッチング素子Q,スイッチング素子Q1,スイッチング素子Q2,スイッチング素子Q3,スイッチング素子Q4の駆動周波数が、136KHz以上、500KHz以下である。
従って、第1実施形態の車載用前照灯制御装置10によれば、電力変換回路11を構成する半導体素子の電力損失を低減することにより、半導体素子の温度上昇を低減でき、小型化できる。
【0037】
また、第1実施形態の車載用前照灯制御装置10によれば、電力変換回路11が、DC/DCコンバータ15と、インバータ回路16と、イグナイタ17とから構成されるために、従来の構造を大きく変更することなく、コスト面で有利に製造できる。
【0038】
そして、第1実施形態の車載用前照灯制御装置10によれば、GaN半導体、SiC半導体等からなるワイドギャップ半導体を採用することにより、エネルギー量を大幅に減少させて省エネルギーデバイスを実現できる。
【0039】
さらに、第1実施形態の車載用前照灯制御装置10によれば、ワイドギャップ半導体のバンドギャップEgが、Eg≧2.0eVである。
従って、第1実施形態の車載用前照灯制御装置10によれば、電力損失を1桁小さくできるために、電力変換回路11を構成する半導体素子の温度に制約されることなく、小型化できる。
【0040】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態の車載用前照灯制御装置について説明する。
なお、以下の第2実施形態において、前述した第1実施形態と重複する構成要素や機能的に同様な構成要素については、図中に同一符号あるいは相当符号を付することによって説明を簡略化あるいは省略する。
【0041】
図3に示すように、本発明に係る第2実施形態の車載用前照灯制御装置30は、負荷が、複数のLED32から構成されるLEDユニット部31であり、LED駆動回路33を備える。
なお、LED32の接続と個数は、用途に応じて適宜設定できる。
【0042】
LED駆動回路33は、直流電源Eと、駆動回路部34と、抵抗R1と、抵抗R2と、抵抗R3と、スイッチSWより構成される。
駆動回路部34は、駆動回路35と制御部36とを備える。
LED駆動回路33は、直流電源Eから入力される直流電圧V1および直流電流I1を、LEDユニット部31を駆動させるための駆動電圧V2および駆動電流I2に変換する。
LED駆動回路33は、駆動電圧V2および駆動電流I2をLEDユニット部31に供給することにより直流電源Eとともに電源手段を構成する。
【0043】
LED駆動回路33は、抵抗R2の電圧V3および抵抗R3の電圧V4を検出し、2つの電圧V3および電圧V4に基づいて駆動電圧V2を検出することにより、抵抗R1,抵抗R2,抵抗R3とともに電圧検出手段を構成している。
LED駆動回路33は、抵抗R3の電圧V4および抵抗値に基づいて抵抗R3に流れる電流、すなわち、駆動電流I2を検出することにより、抵抗R3とともに電流検出手段を構成している。
【0044】
図4に示すように、LED駆動回路33は、検出される駆動電圧V2と駆動電流I2とが定電力制御になるような制御を行う。
実線RはLEDユニット部31の電圧と電流との特性を示し、実線Pと実線Rとの交点が動作点となる。
【0045】
例えば、実線Rのような特性を示すLEDユニット部31の消費電力は、電圧V2bと電流I2bとの積である。
経路Aは、直流電源Eをオンにしたときのスタートモードであり、駆動電圧V2が上昇するにつれて、駆動電流I2が増加していく。
経路Aは、LEDユニット部31の特性によるものであり、LED駆動回路33は、LEDユニット部31に対して電力を急激に供給しないで、徐々に供給するような制御を行う。
【0046】
電圧V2b,電流I2bは、それぞれ一般的な、LEDユニット部31の定常時の駆動電圧V2,駆動電流I2である。
経路Bは、定常時モードであり、LED駆動回路33は、駆動電圧V2が電圧V2a〜V2cの範囲にあるとき、駆動電圧V2と検出される駆動電流I2の積からなる消費電流が一定になる制御を行う。
電圧V2cは、駆動電圧V2の上限値であり、電流I2cは、駆動電流I2の上限値である。
経路Cは、過電圧制御モードであり、LED駆動回路33は、駆動電圧V2が、あらかじめ決められた電圧V2c以上になることを防止する過電圧保護制御を行う。
【0047】
具体的に、LED駆動回路33は、駆動電圧V2が電圧V2cまで上昇すると、駆動電圧V2および駆動電流I2の供給を停止する。
これにより、各LED32へのストレス、各LED32の温度上昇、または各LED32が接続されずに開放状態になっていることを防止できる。
なお、定電力制御では、定電流制御より駆動電圧V2の上限値である電圧V2cを高くできる。
【0048】
一方、経路Dは、過電流制御モードであり、LED駆動回路33は、駆動電流I2があらかじめ決められた電流I2c以上になることを防止する過電流保護制御を行う。
具体的に、LED駆動回路33は、駆動電圧V2が電圧V2a以下に低下すると、駆動電流I2を電流I2cで一定になる制御を行う。
【0049】
このような制御が発生する要因としては、複数のLED32のうち少なくとも一つが短絡するという不良が発生した場合や、各LED32の動作電圧が周囲温度上昇等の上昇により低下した場合等がある。
これにより、各LED32へのストレスを防止できる。
【0050】
次に、スイッチSWがオン後の動作について説明する。
先ず、スタートモード(経路A参照)において、駆動電圧の上昇に伴い、駆動電流I2が徐々に増加していく。
定常時の動作点(経路Aと経路Bとの交点)から定常時モード(経路B参照)に移行する。
駆動電圧V2が電圧V2cまで上昇すると、定常時モードから過電圧制御モード(経路C参照)に切り替わる。
これに対して、駆動電圧V2が電圧V2aまで低下すると、定常時モードから過電流制御モード(経路D参照)に切り替わる。
【0051】
図3に戻り、駆動回路35は、トランスTを備える昇降圧回路部である。
トランスTは、例えばフライバックトランス等であり、直流電源Eに電気的に接続されている一次巻線T1と、LEDユニット部31に電気的に接続されている二次巻線T2とを備える。
駆動回路35は、一次巻線T1と直列に接続されているダイオードD1と、LEDユニット部31に並列にしてダイオードD1に接続されているコンデンサC1とを備える。
駆動回路35は、スイッチ素子37を備える。
【0052】
スイッチ素子37は、例えば、GaN半導体またはSiC半導体等からなるワイドギャップ半導体であるパワー素子であり、高周波でオンおよびオフを行う。
ダイオードD1は、二次巻線T2に発生する電圧を整流する。
コンデンサC1は、例えば電解コンデンサ等であり、大きな容量を有し、ダイオードD1を介して2次巻線T2から出力される直流電圧を充電する。
コンデンサC1に充電されている電圧が駆動電圧V2になり、LEDユニット部31に駆動電圧V2および駆動電流I2が供給される。
【0053】
制御部36は、制御電源38と、増幅回路部39と、基準値生成回路部40と、PWM制御部41と、ドライバ回路部42とを備える。
制御電源38は、制御部36を動作させるための電源であり、直流電源Eから所定の直流電圧が供給される。
【0054】
増幅回路部39は、アンプ43,アンプ44を備え、電圧V3,電圧V4をアンプ43,アンプ44で増幅し、基準値生成回路部40およびPWM制御部41に出力する。
基準値生成回路部40は、不図示のタイマー部を備え、増幅回路部39から入力される電圧V3,電圧V4に基づいてモード切替を行うとともに、タイマー部で基準値を生成し、基準値をPWM制御部41に出力する。
【0055】
PWM制御部41は、基準値生成回路部40で切り替えられたモードに応じて、スイッチ素子37のオンデュティーを設定するためのパルス幅変調信号を生成し、パルス幅変調信号をドライバ回路部42に出力する。
ドライバ回路部42は、PWM制御部41からパルス幅変調信号を入力し、オン信号の場合に、駆動信号をスイッチ素子37に出力する。
【0056】
次に、駆動回路部34の動作について説明する。
先ず、ドライバ回路部42からの駆動信号により、スイッチ素子37がオンになると、直流電源E→一次巻線T1→スイッチ素子37→直流電源Eの閉回路で直流電流I1が流れ、トランスTがエネルギーを蓄積する。
次に、ドライバ回路部42からの駆動信号により、スイッチ素子37がオフになると、エネルギーが、二次巻線T2→ダイオードD1→コンデンサD1→二次巻線T2の閉回路で放出され、コンデンサC1が充電されて電圧が高くなる。
【0057】
スイッチ素子37のオンおよびオフを高周波で切り替えることにより、安定な直流電圧をコンデンサC1に出力する。
コンデンサC1の電圧により、LEDユニット部31に駆動電圧V2および駆動電流I2を供給する。
これにより、駆動回路部34は、駆動電圧V2を直流電圧V1以上の大きさまたは直流電圧V1以下の大きさにしてLEDユニット部31に供給できる。
【0058】
駆動回路部34を構成するスイッチ素子37のスイッチング周波数は、136KHz以上、500KHz以下である。
従って、相互接続された車載機器間のデータ通信(Controller Area Network通信)またはスマートキー(電子キーの一種で電波を利用)において、ノイズ等の悪影響に起因する誤動作および不動作を防げる。
【0059】
駆動回路部34は、スイッチング素子37に発生する電力損失を1桁小さくできるために、車載用前照灯制御装置30の形状が、LED駆動回路33を構成する半導体素子の温度に制約されない。
また、ダイオードD1についても、例えば、GaN半導体またはSiC半導体等からなるワイドギャップ半導体であるパワー素子を採用することにより、より一層、車載用前照灯制御装置30の形状が、LED駆動回路33を構成する半導体素子の温度に制約されない。
【0060】
第2実施形態の車載用前照灯制御装置30によれば、LEDユニット部31の消費電力を一定にできるために、各LED32に対するストレスを低減でき、光を安定に照射できる。
また、第2実施形態の車載用前照灯制御装置30によれば、LEDユニット部31に対して過大駆動電圧V2または駆動電流I2を供給することを防止できる。
【0061】
そして、第2実施形態の車載用前照灯制御装置30によれば、直流電源Eから供給される直流電圧V1に関係なく、LED32の個数を適宜設定することができ、駆動電圧V2が低い時であっても、LED32を駆動できる。
加えて、第2実施形態の車載用前照灯制御装置30によれば、トランスTによりLEDユニット部31と直流電源Eとが電気的に分離されているので、LEDユニット部31を直流電源E側で発生するノイズから防御できる。
【0062】
なお、本発明の車載用前照灯制御装置において電源監視部,PWM回路,リセット回路,インバータ駆動回路等は、前述した各実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形や改良等が可能である。
【符号の説明】
【0063】
10,30 車載用前照灯制御装置
11 電力変換回路
12 前照灯
13 制御電源部
14 制御部
15 DC/DCコンバータ(直流昇圧回路)
16 インバータ回路
17 イグナイタ(起動回路)
32 LED
33 LED駆動回路(電力変換回路)
LA 放電灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの入力電圧と、
前記入力電圧を前照灯が必要とする電圧に変換する電力変換回路と、
いずれの前記入力電圧からも制御用電圧を作る制御電源部と、
前記制御電源部から給電されて前記電力変換回路を制御する制御部とを備え、
前記電力変換回路が、ワイドギャップ半導体を具備し、前記電力変換回路を構成するスイッチング素子の駆動周波数が、136KHz以上、500KHz以下である車載用前照灯制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の車載用前照灯制御装置において、
前記電力変換回路は、
直流電圧を昇圧して負荷への供給電力を制御する直流昇圧回路と、
前記直流昇圧回路からの出力を交流電圧に変換して放電灯に供給するインバータ回路と、
放電灯の起動時に高圧パルスを印加する起動回路とを有して構成される車載用前照灯制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車載用前照灯制御装置において、
前記前照灯がLEDを備える車載用前照灯制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1項に記載の車載用前照灯制御装置において、
前記ワイドギャップ半導体が、GaN半導体またはSiC半導体である車載用前照灯制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のうちのいずれか1項に記載の車載用前照灯制御装置において、
前記ワイドギャップ半導体は、そのバンドギャップEgが、Eg≧2.0eVである車載用前照灯制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−221810(P2012−221810A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87624(P2011−87624)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】