説明

車載用通信装置、車載用通信方法、及び車載用通信プログラム

【課題】簡易な処理によって衝突回避に必要な情報を他車に伝達することができる、車載用通信装置、車載用通信方法、及び車載用通信プログラムを提供すること。
【解決手段】車載用通信装置40は、交差点毎に、車両の走行に関する履歴情報と、電波の周波数を特定する属性情報とを、相互に対応付けて格納する属性DB43cと、交差点毎に自車の走行に関する自車履歴情報を格納する履歴DB43dと、自車が交差点に接近した場合、当該接近した交差点に対応する自車履歴情報を履歴DB43dから取得する履歴情報取得部42aと、履歴情報取得部42aによって取得された自車履歴情報に対応し、且つ接近した交差点に対応付けて格納されている属性情報を、属性DB43cから取得する属性情報取得部42bと、属性情報取得部42bが取得した属性情報に基づいて特定される周波数の電波の出力を行う通信部41とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用通信装置、車載用通信方法、及び車載用通信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両間で各種の情報の通信を行なうための車車間通信システムが提案されており、例えば、交差点での車両同士の衝突回避のために、車車間通信システムを用いて自車の位置情報等を通知するシステムも知られている。ところが、この車車間通信システムにおいては、近接する複数車両が同一の通信チャンネルを用いて同時に送信を行った場合、混信が発生する可能性があった。
【0003】
そこで、位置情報等の車両情報を送信する際、当該送信を行う車両が接近した特定の地点や車線等に予め割り当てられている通信チャンネルを利用して情報の送信を行わせることで、複数の送信車両から情報が送信されても混信を防止できる、移動体用情報通信装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−207679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車車間通信によって送受信された情報に基づいて衝突回避を行うためには、情報の処理速度を高速化し、衝突回避のための動作を行う時間を確保することが重要である。しかし、上述の如き従来の移動体用情報通信装置では、複数の車両から送信された信号の混信は防げるものの、信号に含まれる情報量が多いため、送信や受信における情報処理に要する時間が長くなってしまう可能性があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、簡易な処理によって衝突回避に必要な情報を他車に伝達することができる、車載用通信装置、車載用通信方法、及び車載用通信プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の車載用通信装置は、交差点毎に、車両の走行に関する履歴情報と、無線通信の伝送媒体の属性を特定する属性情報とを、相互に対応付けて格納する属性情報格納手段と、交差点毎に自車の走行に関する自車履歴情報を格納する履歴情報格納手段と、前記自車が前記交差点に接近した場合、当該接近した交差点に対応する前記自車履歴情報を前記履歴情報格納手段から取得する履歴情報取得手段と、前記履歴情報取得手段によって取得された前記自車履歴情報に対応し、且つ接近した前記交差点に対応付けて格納されている前記属性情報を、前記属性情報格納手段から取得する属性情報取得手段と、前記属性情報取得手段が取得した前記属性情報に基づいて特定される属性の前記伝送媒体の出力を行う出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に記載の車載用通信装置は、請求項1に記載の車載用通信装置において、前記属性情報格納手段は、前記交差点毎に、車両が停止した割合を特定する停止履歴情報を含む前記履歴情報と、前記属性情報とを、相互に対応付けて格納し、前記履歴情報格納手段は、前記交差点毎に、前記自車が停止した割合を特定する自車停止履歴情報を含む前記自車履歴情報を格納し、前記履歴情報取得手段は、前記自車が前記交差点に接近した場合、前記自車停止履歴情報を前記履歴情報格納手段から取得し、前記属性情報取得手段は、前記履歴情報取得手段が取得した前記自車停止履歴情報に対応する前記停止履歴情報に対応付けて格納されている前記属性情報を、前記属性情報格納手段から取得すること、を特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の車載用通信装置は、請求項1又は2に記載の車載用通信装置において、前記伝送媒体の入力を受け付ける受付手段と、前記受付手段が前記伝送媒体の入力を受け付けた場合、当該伝送媒体の属性を特定し、当該特定した属性に基づいて車両の制御を行う制御手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の車載用通信方法は、交差点毎に、車両の走行に関する履歴情報と、無線通信の伝送媒体の属性を特定する属性情報とを、相互に対応付けて属性情報格納手段に格納する属性情報格納ステップと、交差点毎に自車の走行に関する自車履歴情報を履歴情報格納手段に格納する履歴情報格納ステップと、前記自車が前記交差点に接近した場合、当該接近した交差点に対応する前記自車履歴情報を前記履歴情報格納手段から取得する履歴情報取得ステップと、前記履歴情報取得ステップで取得された前記自車履歴情報に対応し、且つ接近した前記交差点に対応付けて格納されている前記属性情報を、前記属性情報格納手段から取得する属性情報取得ステップと、前記属性情報取得ステップで取得した前記属性情報に基づいて特定される属性の前記伝送媒体の出力を行う出力ステップと、を含むことを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の車載用通信プログラムは、請求項4に記載の方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の車載用通信装置、請求項4に記載の車載用通信方法、及び請求項5に記載の車載用通信プログラムによれば、交差点毎に、車両の走行に関する履歴情報と、無線通信の伝送媒体の属性を特定する属性情報とを、相互に対応付けて格納する属性情報格納手段から、履歴情報取得手段が取得した自車履歴情報に対応し、且つ接近した交差点に対応付けて格納されている属性情報を取得し、当該取得した属性情報に基づいて特定される属性の伝送媒体の出力を行う。すなわち、衝突回避に必要となる車両の走行に関する履歴情報を信号に変換処理することなく、対応する属性の伝送媒体の出力という簡易な処理によって、走行履歴に基づく衝突回避に必要な情報を他車に伝達することができる。
【0013】
また、請求項2に記載の車載用通信装置によれば、交差点毎に、車両が停止した割合を特定する停止履歴情報を含む履歴情報と属性情報とを相互に対応付けて格納する属性情報格納手段から、履歴情報取得手段が取得した自車停止履歴情報に対応する停止履歴情報に対応付けて格納されている属性情報を取得するので、交差点での過去の停止割合に基づく衝突判定に必要な情報を、他車に伝達することができる。
【0014】
また、請求項3に記載の車載用通信装置によれば、受付手段が伝送媒体の入力を受け付けた場合、当該伝送媒体の属性を特定し、特定した属性に基づいて車両の制御を行うので、受信信号の復号処理を行うことなく、受け付けた伝送媒体の属性の特定という簡易な処理によって、交差点に接近する他車の走行に関する履歴に対応する適当な制御を実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る車載用通信装置の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
(構成)
まず、車載用通信システムの構成を説明する。図1は、実施の形態に係る車載用通信システムを例示するブロック図である。図1に示すように、この車載用通信システム1は、現在位置検出処理部10、スピーカ20、ディスプレイ30、及び車載用通信装置40を備えている。また、車載用通信装置40には、車載用通信システム1が搭載されている車両(以下、必要に応じて「自車」)のブレーキ50が接続されている。
【0017】
(構成−現在位置検出処理部)
現在位置検出処理部10は、車載用通信システム1が搭載された車両の現在位置を検出する現在位置検出手段である。具体的には、現在位置検出処理部10は、GPS、地磁気センサ、距離センサ、又はジャイロセンサ(いずれも図示省略)の少なくとも一つを有し、現在の車両の位置(座標)及び方位等を公知の方法にて検出する。
【0018】
(構成−スピーカ及びディスプレイ)
スピーカ20及びディスプレイ30は、車載用通信装置40の制御に基づいて各種の情報を出力する。なお、スピーカ20より出力される音声の具体的な態様は任意であり、必要に応じて生成された合成音声や、予め録音された音声を出力することができる。また、ディスプレイ30の具体的な構成は任意であり、公知の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの如きフラットパネルディスプレイを使用することができる。
【0019】
(構成−車載用通信装置)
車載用通信装置40は、通信部41、制御部42、及びデータ記録部43を備えている。
【0020】
(構成−車載用通信装置−通信部)
通信部41は、制御部42によって特定される属性の伝送媒体の出力を行う出力手段であり、伝送媒体の入力を受け付ける受付手段である。ここで、「伝送媒体」とは、電波、光、音波等、情報の伝送に用いることのできる媒体を含む概念である。また、「属性」とは、これらの各種伝送媒体の属性であり、例えば、電波の周波数、変調方式、偏波方向等が挙げられる。以下では、伝送媒体として電波を使用し、電波の属性として周波数を取り扱う場合を例に挙げて説明する。なお、この場合の通信部41としては、電波の出力及び入力機能を有する公知の無線通信装置を用いることができる。
【0021】
(構成−車載用通信装置−制御部)
制御部42は、車載用通信装置40を制御するためのものであり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。特に、本実施の形態に係る車載用通信プログラムは、任意の記録媒体又はネットワークを介して車載用通信装置40にインストールされることで、制御部42の各部を実質的に構成する。
【0022】
この制御部42は、機能概念的に、履歴情報取得部42a、属性情報取得部42b、及び自車制御部42cを備えている。履歴情報取得部42aは、交差点毎の自車の走行に関する自車履歴情報をデータ記録部43から取得する履歴情報取得手段である。属性情報取得部42bは、電波の属性を特定する属性情報をデータ記録部43から取得する属性情報取得手段である。自車制御部42cは、スピーカ20、ディスプレイ30、ブレーキ50等を含む自車の制御を行う制御手段である。これらの制御部42の各構成要素によって実行される処理の詳細については後述する。
【0023】
(構成−車載用通信装置−データ記録部)
データ記録部43は、車載用通信装置40の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記録する記録手段であり、例えば、外部記憶装置としてのハードディスク(図示省略)を用いて構成されている。ただし、ハードディスクに代えてあるいはハードディスクと共に、磁気ディスクの如き磁気的記録媒体、又はDVDやブルーレイディスクの如き光学的記録媒体を含む、その他の任意の記録媒体を用いることができる。
【0024】
このデータ記録部43は、地図情報データベース(以下、データベースを「DB」と称する)43a、属性DB43c、履歴DB43d、及び制御テーブル43eを備えている。地図情報DB43aは、地図情報を格納する地図情報格納手段である。「地図情報」は、交差点や車線等の位置の特定に必要な情報であり、例えば、交差点データ(交差点座標等)、道路データ(道路種別、車線数、制限速度、道路座標、道路番号等)、地図をディスプレイ30に表示するための地図表示データ等を含んで構成されている。また、地図情報DB43aはノード情報43bを格納している。ノード情報43bは、交差点の位置、及び交差点の接続道路の位置を特定するために必要な情報であり、各交差点に対応する交差点ノードの座標や接続道路に対応する接続道路ノードの座標、及びこれらのノードを一意に識別するノード番号を含んで構成される。図2は、交差点及び交差点の接続道路路に対応するノードを例示した図である。図2の例では、交差点AAには交差点ノードNAAが対応し、交差点AAに接続する各接続道路には、交差点AAの手前に設定された接続道路ノード(N1、N2、N3、N4)が対応する。各接続道路ノードは、各接続道路の制限速度に基づいて決定された距離だけ交差点ノードから離れた位置に設定される。例えば、制限速度から一定の加速度で減速して停止するまでに必要となる距離を、交差点ノードから接続道路ノードまでの距離とすることができる。具体的には、速度60km/hから加速度−2.0m/sで減速して停止するまでに必要な距離は69.4m、速度40km/hから加速度−2.0m/sで減速して停止するまでに必要な距離は30.9mであるので、図2の例では、制限速度が60km/hの道路Rにおける接続道路ノードN2及びN4は交差点ノードNAAから69.4m離れた位置に設定され、制限速度が40km/hの道路Sにおける接続道路ノードN1及びN3は交差点ノードNAAから30.9m離れた位置に設定される。
【0025】
属性DB43cは、車両の走行に関する履歴情報と、電波の周波数を特定する属性情報とを、交差点毎に相互に対応付けて格納する属性情報格納手段である。図3は、属性DB43cに格納されている情報の内容を例示した表である。図3に示すように、属性DB43cはDB項目として「交差点ノード」「接続道路ノード」及び「停止履歴η[%]」を備え、これらの項目に対応して格納される情報と対応付けて、電波の周波数を特定する属性情報(図3では「F1」「F2」等)が格納されている。なお、本実施の形態では、属性情報「F1」から「F12」は、それぞれ異なる周波数を表しているものとする。項目「交差点ノード」に対応して格納される情報は、各交差点に対応する交差点ノードを一意に識別する識別情報であり、例えば交差点ノード番号(図3では「NAA」)が格納される。項目「接続道路ノード」に対応して格納される情報は、各交差点の接続道路ノードを一意に識別する識別情報であり、例えば接続道路ノード番号(図3では「N1」「N2」「N3」「N4」)が格納される。項目「停止履歴η[%]」に対応して格納される情報は、交差点毎に車両が停止した割合を特定する停止履歴情報であり、例えば、車両が停止した割合の範囲を特定する情報(図3では、「η=100」、「0<η<100」、「η=0」)が格納される。このように、属性DB43cには、各交差点の接続道路に対応付けて、履歴情報と属性情報とが相互に対応付けられて格納されるので、交差点毎に、各交差点の接続道路の数(例えば、図2の交差点AAの様な十字路であれば4本、三叉路であれば3本)に対応する履歴情報と属性情報との対応関係を特定することができる。
【0026】
履歴DB43dは、交差点毎に自車の走行に関する自車履歴情報を格納する履歴情報格納手段である。図4は、履歴DB43dに格納されている情報の内容を例示した表である。図4に示すように、履歴DB43dはDB項目として「交差点ノード」「接続道路ノード」「停止履歴η[%]」を備え、これらに対応する情報が相互に対応付けて格納されている。項目「停止履歴η[%]」に対応して格納される情報は、交差点毎に自車が停止した割合を特定する自車停止履歴情報であり、例えば、接続道路ノードから交差点ノードまでの間を走行した際に自車が停止した割合を百分率で示す数値が格納される(図4では「85%」等)。なお、この履歴DB43dにおける情報の入力や更新のタイミングは任意であり、例えば、現在位置検出処理部10を介して自車が接続道路ノードを通過したことが特定された場合、自車が通過した接続道路ノードから当該接続道路ノードに対応する接続道路が接続する交差点の交差点ノードまでの間に自車が停止したか否かを制御部42が判定し、判定結果に基づいて履歴DB43dの内容を更新する。
【0027】
制御テーブル43eは、通信部41を介して電波の入力を受け付けた車両の自車制御部42cが、当該車両の制御を行う際に参照する情報を、交差点毎に格納する。図5は、交差点AAについて制御テーブル43eに格納されている情報を例示した表である。図5に示したように、制御テーブル43eは、テーブル項目として項目「属性」及び「制御内容」を備え、これらに対応する情報が相互に対応付けて格納されている。項目「属性」に対応して格納される情報は、電波の周波数を特定する属性情報である。項目「制御内容」に対応して格納される情報は、自車制御部42cが実行する制御内容を特定するための情報である。この項目「制御内容」に対応して格納される情報の具体的な内容については後述する。
【0028】
(処理)
次に、このように構成される車載用通信システム1によって実行される処理について、出力処理と受付処理とに大別して説明する。
【0029】
(処理−出力処理)
図6は出力処理を示したフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。この出力処理は、車両が電波を出力する際に実行される処理であり、例えば、車載用通信システム1への電源投入後に自動的に起動される。
【0030】
出力処理が起動されると、履歴情報取得部42aは、現在位置検出処理部10を介して自車の現在位置を取得する(SA1)。そして、取得した現在位置に基づいて地図情報DB43aのノード情報43bを参照し、自車が交差点に接近したか否かを判定する(SA2)。具体的には、自車が何れかの接続道路ノードに到達したか否かを判定し、接続道路ノードに到達したと判定した場合、当該接続道路ノードに対応する接続道路が接続する交差点に接近したと判定する。
【0031】
その結果、交差点に接近していないと判定した場合(SA2、No)、履歴情報取得部42aはSA1に戻り、自車の現在位置を取得する(SA1)。一方、交差点に接近したと判定した場合(SA2、Yes)、履歴情報取得部42aは、自車が到達した接続道路ノードに対応付けて格納されている自車停止履歴情報を履歴DB43dから取得する(SA3)。続いて、属性情報取得部42bは属性DB43cを参照し(SA4)、SA3で履歴情報取得部42aが取得した自車停止履歴情報に対応する停止履歴情報に対応付けて格納されている属性情報を、属性DB43cから取得する(SA5)。
【0032】
例えば、図2における車両Pの履歴情報取得部42aが、SA2において自車Pが交差点AAの接続道路ノードN4に到達したと判定した場合、当該履歴情報取得部42aは、接続道路ノードN4から交差点ノードNAAまでの間に自車Pが停止した割合を特定する自車履歴情報として、図4に示した履歴DB43dから停止履歴η=75[%]を取得する。続いて、属性情報取得部42bは、図3の属性DB43cにおける項目「交差点ノード」における「NAA」、項目「接続道路ノード」における「N4」、及び項目「停止履歴η[%]」における「0<η<100」に対応付けて格納されている属性情報「F11」を取得する。
【0033】
図6に戻り、通信部41は、SA5で属性情報取得部42bが取得した属性情報に基づいて特定される周波数の電波の出力を行う(SA6)。例えば、図2における車両Pが接続道路ノードN4に到達した場合、当該車両Pの通信部41は、属性情報取得部42bがSA5で取得した属性情報「F11」に基づいて特定される周波数の電波の出力を行う。SA6において電波の出力を行った後、出力処理を終了する。出力処理の終了後、自車が通過した接続道路ノードから当該接続道路ノードに対応する接続道路が接続する交差点の交差点ノードまでの間に自車が停止したか否かを制御部42が判定し、判定結果に基づいて履歴DB43dの内容を更新する。
【0034】
(処理−受付処理)
図7は受付処理を示したフローチャートである。この受付処理は、車両が電波の入力を受け付ける際に実行される処理であり、例えば、出力処理と同様に車載用通信システム1への電源投入後に自動的に起動される。
【0035】
受付処理が起動されると、通信部41は、電波の入力を受け付けたか否かを判定する(SB1)。その結果、電波の入力を受け付けたと判定した場合(SB1、Yes)、自車制御部42cは、現在位置検出処理部10を介して自車の現在位置を取得し、取得した現在位置に基づいて地図情報DB43aのノード情報43bを参照し、自車の前方所定距離内(例えば500m以内)に交差点があるか否かを判定する(SB2)。その結果、交差点がないと判定した場合(SB2、No)、自車は当該電波の対象外であるものとし、自車制御部42cは受付処理を終了する。
【0036】
一方、交差点があると判定した場合(SB2、Yes)、自車制御部42cは、通信部41が入力を受け付けた電波の周波数を特定する(SB3)。続いて、自車制御部42cは属性DB43cを参照し、SB2で特定した電波の周波数に対応する接続道路ノードを特定する(SB4)。そして、SB2で取得した自車の現在位置に基づき、SB4で特定した接続道路ノードに対応する接続道路と自車が走行している道路とが一致するか否かを判定する(SB5)。その結果、SB4で特定した接続道路ノードに対応する接続道路と自車が走行している道路とが一致すると判定した場合(SB5、Yes)、通信部41が入力を受け付けた電波は自車の前方を自車と同方向に走行する他車から出力された電波であり、自車は当該電波の対象外であるものとし、自車制御部42cは受付処理を終了する。
【0037】
一方、SB4で特定した接続道路ノードに対応する接続道路と自車が走行している道路とが一致しないと判定した場合(SB5、No)、通信部41が入力を受け付けた電波は自車の前方の交差点に他の接続道路から進入する他車から出力された電波であり、自車は当該電波の対象であるものとし、自車制御部42cは制御テーブル43eを参照し(SB6)、SB2で自車の前方所定距離内にあると判定した交差点に対応する交差点ノードと、SB3で特定した電波の周波数に対応する属性情報に対応付けて格納されている制御内容を取得する。そして、当該取得した制御内容に対応する制御を実行する(SB7)。
【0038】
ここで、図5に示した制御テーブル43eの項目「制御内容」に対応して格納される情報の具体的な内容について説明する。
【0039】
項目「制御内容」に対応して格納される情報は、自車制御部42cが実行する制御内容を特定するための情報である。この制御内容として、例えば、各属性情報に対応する周波数の電波を出力した車両が、交差点までの間に停止する可能性に対応した制御内容を設定することができる。
【0040】
例えば、属性情報「F1」「F4」「F7」「F10」に対応する周波数の電波を出力した車両が過去に接続道路ノードN1、N2、N3、N4から交差点ノードNAAまでの間に停止した割合は、図3の属性DB43cによれば100%である。従って、当該車両が停車せずに交差点に進入する可能性は非常に低く、当該車両から電波の入力を受け付けた車両が交差点手前で停止できるように減速する必要性は低い。そこで、図5に示したように、属性情報「F1」「F4」「F7」「F10」に対応する周波数の電波の入力を受け付けた場合に自車制御部42cが実行する制御内容として、スピーカ20やディスプレイ30を介して情報(例えば、他の車両が交差点に接近している旨の情報)を提供する旨の「情報提供」を設定している。
【0041】
また、属性情報「F2」「F5」「F8」「F11」に対応する周波数の電波を出力した車両が過去に接続道路ノードN1、N2、N3、N4から交差点ノードNAAまでの間に停止した割合は、図3の属性DB43cによれば0%より大きく、100%未満である。従って、当該車両が停車せずに交差点に進入する可能性があることから、当該車両から電波の入力を受け付けた車両が電波を出力した車両の交差点への進入に注意することが望ましい。そこで、図5に示したように、属性情報「F2」「F5」「F8」「F11」に対応する周波数の電波の入力を受け付けた場合に自車制御部42cが実行する制御内容として、スピーカ20やディスプレイ30を介して警告情報を出力する旨の「警告」を設定している。
【0042】
また、属性情報「F3」「F6」「F9」「F12」に対応する周波数の電波を出力した車両が過去に接続道路ノードN1、N2、N3、N4から交差点ノードNAAまでの間に停止した割合は、図3の属性DB43cによれば0%である。従って、当該車両が停車せずに交差点に進入する可能性が非常に高く、当該車両から電波の入力を受け付けた車両は交差点手前で停止できるように減速する必要がある。そこで、図5に示したように、属性情報「F3」「F6」「F9」「F12」に対応する周波数の電波の入力を受け付けた場合に自車制御部42cが実行する制御内容として「ブレーキ制御」を設定している。
【0043】
例えば、図2における車両Qの通信部41が、属性情報「F11」に対応する周波数で車両Pから出力された電波の入力を受け付けた場合、車両Qの自車制御部42cは、制御内容として「警告」を取得する。従って、車両Pが停車せずに交差点に進入する可能性があるものとし、自車制御部42cは車両Qのスピーカ20やディスプレイ30を介して警告出力を行う。
【0044】
(効果)
このように実施の形態によれば、交差点毎に、車両の走行に関する履歴情報と電波の周波数を特定する属性情報とを相互に対応付けて格納する属性DB43cから、履歴情報取得部42aが取得した自車履歴情報に対応し、且つ接近した交差点に対応付けて格納されている属性情報を取得し、当該取得した属性情報に基づいて特定される周波数の電波の出力を行う。すなわち、衝突回避に必要となる車両の走行に関する履歴情報を信号に変換処理することなく、対応する周波数の電波の出力という簡易な処理によって、走行履歴に基づく衝突回避に必要な情報を他車に伝達することができる。
【0045】
また、交差点毎に、車両が停止した割合を特定する停止履歴情報を含む履歴情報と属性情報とを相互に対応付けて格納する属性DB43cから、履歴情報取得部42aが取得した自車停止履歴情報に対応する停止履歴情報に対応付けて格納されている属性情報を取得するので、交差点での過去の停止割合に基づく衝突判定に必要な情報を、他車に伝達することができる。
【0046】
また、通信部41が電波の入力を受け付けた場合、当該電波の周波数を特定し、特定した周波数に基づいて自車の制御を行うので、受信信号の復号処理を行うことなく、受け付けた電波の周波数の特定という簡易な処理によって、交差点に接近する他車の走行に関する履歴に対応する適当な制御を実行することができる。
【0047】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0048】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏することがある。
【0049】
(自車制御部について)
上述の実施の形態では、自車制御部42cは、入力を受け付けた電波の周波数に対応する属性情報に対応付けて格納されている制御内容を実行すると説明したが、自車と他車との交差点への進入タイミングを特定し、当該進入タイミングが接近している場合にのみ、制御内容を実行させてもよい。例えば、入力を受け付けた電波の周波数に対応する接続道路ノードを属性DB43cに基づいて特定し、当該接続道路ノードと交差点ノードとの距離、及び当該接続道路ノードが設定されている道路の制限速度等の情報を地図情報DB43aから取得する。そして、接続道路ノードと交差点ノードとの距離を制限速度で除することにより、電波を出力した車両の速度が制限速度である場合に交差点に進入するまでの所要時間を推定する。また、ノード情報43bに基づき特定される交差点ノードの位置、現在位置検出処理部10を介して取得した自車位置、及び公知の速度センサを介して取得した自車速度に基づき、当該自車速度が一定の場合における交差点ノードまでの予測所要時間を算出する。その結果、交差点ノードまでの自車の予測所要時間が、電波を出力した車両が交差点に進入するまでの所要時間から一定範囲内の時間(例えば5秒以内)に含まれる場合に、交差点への進入タイミングが接近していると判定し、制御内容を実行させてもよい。
【0050】
また、処理を行う時刻に基づいて、制御内容を変更するようにしてもよい。例えば、時刻が夜間の場合は交差点の見通しが悪化する等、注意の必要性が増大すると考えられる。従って、例えば、図5に示した制御テーブル43eにおいて、属性情報「F1」「F4」「F7」「F10」に対応する周波数の電波の入力を受け付けた場合に自車制御部42cが実行する制御内容を、時刻が昼間の場合は「情報提供」、夜間の場合は「警告」とすることができる。同様に、属性情報「F2」「F5」「F8」「F11」に対応する周波数の電波の入力を受け付けた場合に自車制御部42cが実行する制御内容を、時刻が昼間の場合は「警告」、夜間の場合は「ブレーキ制御」とすることができる。
【0051】
(履歴DBについて)
上述の実施の形態では、履歴DB43dは、交差点、ノード、及び停止履歴を特定する情報を相互に対応付けて格納すると説明したが、さらに、ドライバを一意に識別する情報を対応付けて格納させてもよい。例えば、1台の車両を複数のドライバが運転する場合、運転中のドライバを一意に識別する情報を操作スイッチ等を介して予め車載用通信装置40に入力しておき、当該情報に対応付けて自車停止履歴情報を履歴DB43dに格納させてもよい。この場合、出力処理において、履歴情報取得部42aは、運転中のドライバを一意に識別する情報に対応付けて格納されている自車停止履歴情報を履歴DB43dから取得する。
【0052】
また、過去の全期間における自車履歴情報ではなく、現在までの一定期間の自車履歴情報を履歴DB43dに格納させてもよい。これにより、最近の運転傾向に基づく情報を他車に伝達することができる。
【0053】
また、上述の実施の形態では、現在位置検出処理部10を介して自車がノードを通過したことが特定された場合、自車が通過したノードから当該ノードが設定されている交差点までの間に自車が停止したか否かを制御部42が判定し、判定結果に基づいて履歴DB43dの内容を更新すると説明したが、更に、自車が停止した場合において、停止している先行車両の有無を判定し、停止している先行車両が無い場合にのみ履歴DB43dの内容を更新するようにしてもよい。これにより、先行車両が停止したために自車が停止したケースを自車停止履歴情報から除外することができ、より正確な自車停止履歴情報を履歴DB43dに格納することができる。
【0054】
また、信号や標識が設置されていない交差点についてのみ、履歴DB43dの内容を更新するようにしてもよい。この場合、属性DB43cも、信号や標識が設置されていない交差点について、属性情報と履歴情報とを相互に対応付けて格納させる。
【0055】
(履歴情報について)
上述の実施の形態では、属性DB43cは停止履歴情報を格納し、履歴DB43dは自車停止履歴情報を格納していると説明したが、これらのDBに他の履歴情報や自車履歴情報を格納させてもよい。例えば、車両が交差点を通過した際の速度を特定する速度履歴情報を属性DB43cに格納し、自車が交差点を通過した際の速度を特定する自車速度履歴情報を履歴DB43dに格納してもよい。これにより、例えば交差点通過時の速度の大小に基づく衝突回避に必要な情報を他車に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施の形態に係る車載用通信システムを例示するブロック図である。
【図2】交差点の接続道路上に設定されたノードを例示した図である。
【図3】交差点AAについて属性DBに格納されている情報の内容を例示した表である。
【図4】履歴DBに格納されている情報の内容を例示した表である。
【図5】交差点AAについて制御テーブルに格納されている情報を例示した表である。
【図6】出力処理を示したフローチャートである。
【図7】受付処理を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0057】
1 車載用通信システム
10 現在位置検出処理部
20 スピーカ
30 ディスプレイ
40 車載用通信装置
41 通信部
42 制御部
42a 履歴情報取得部
42b 属性情報取得部
42c 自車制御部
43 データ記録部
43a 地図情報DB
43b ノード情報
43c 属性DB
43d 履歴DB
43e 制御テーブル
50 ブレーキ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点毎に、車両の走行に関する履歴情報と、無線通信の伝送媒体の属性を特定する属性情報とを、相互に対応付けて格納する属性情報格納手段と、
交差点毎に自車の走行に関する自車履歴情報を格納する履歴情報格納手段と、
前記自車が前記交差点に接近した場合、当該接近した交差点に対応する前記自車履歴情報を前記履歴情報格納手段から取得する履歴情報取得手段と、
前記履歴情報取得手段によって取得された前記自車履歴情報に対応し、且つ接近した前記交差点に対応付けて格納されている前記属性情報を、前記属性情報格納手段から取得する属性情報取得手段と、
前記属性情報取得手段が取得した前記属性情報に基づいて特定される属性の前記伝送媒体の出力を行う出力手段と、
を備えることを特徴とする車載用通信装置。
【請求項2】
前記属性情報格納手段は、
前記交差点毎に、車両が停止した割合を特定する停止履歴情報を含む前記履歴情報と、前記属性情報とを、相互に対応付けて格納し、
前記履歴情報格納手段は、
前記交差点毎に、前記自車が停止した割合を特定する自車停止履歴情報を含む前記自車履歴情報を格納し、
前記履歴情報取得手段は、
前記自車が前記交差点に接近した場合、前記自車停止履歴情報を前記履歴情報格納手段から取得し、
前記属性情報取得手段は、
前記履歴情報取得手段が取得した前記自車停止履歴情報に対応する前記停止履歴情報に対応付けて格納されている前記属性情報を、前記属性情報格納手段から取得すること、
を特徴とする請求項1に記載の車載用通信装置。
【請求項3】
前記伝送媒体の入力を受け付ける受付手段と、
前記受付手段が前記伝送媒体の入力を受け付けた場合、当該伝送媒体の属性を特定し、当該特定した属性に基づいて車両の制御を行う制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の車載用通信装置。
【請求項4】
交差点毎に、車両の走行に関する履歴情報と、無線通信の伝送媒体の属性を特定する属性情報とを、相互に対応付けて属性情報格納手段に格納する属性情報格納ステップと、
交差点毎に自車の走行に関する自車履歴情報を履歴情報格納手段に格納する履歴情報格納ステップと、
前記自車が前記交差点に接近した場合、当該接近した交差点に対応する前記自車履歴情報を前記履歴情報格納手段から取得する履歴情報取得ステップと、
前記履歴情報取得ステップで取得された前記自車履歴情報に対応し、且つ接近した前記交差点に対応付けて格納されている前記属性情報を、前記属性情報格納手段から取得する属性情報取得ステップと、
前記属性情報取得ステップで取得した前記属性情報に基づいて特定される属性の前記伝送媒体の出力を行う出力ステップと、
を含むことを特徴とする車載用通信方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法をコンピュータに実行させることを特徴とする車載用通信プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−152555(P2010−152555A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328736(P2008−328736)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】