説明

車載装置

【課題】ライトキャッシュメモリを有するハードディスク装置を用いる場合に、動作途中でエンジンが始動されても動作が長時間中断されることがなく、装置規模の拡大を最小限に抑えることができる車載装置を提供すること。
【解決手段】車載装置100は、ライトキャッシュメモリ34の使用/不使用を指定可能なハードディスク装置30と、製品マイコン部10と、ハードディスク装置30に動作電力を供給する電源回路60と、昇圧回路64が接続されており製品マイコン部10に動作電力を供給する電源回路62と、エンジン始動前にライトキャッシュメモリ34の不使用をハードディスク装置30に対して指示し、エンジン始動後にライトキャッシュメモリ34の使用をハードディスク装置30に対して指示するCM制御部としてのCPU12とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されてハードディスク装置に各種データが読み書きされる車載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ハードディスク装置に記憶した地図データを読み出して地図表示等の処理を行うようにした車載のナビゲーション装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このナビゲーション装置に備わったハードディスク装置にはライトキャッシュメモリが用いられており、データの書き込み時間の短縮が図られている。また、このハードディスク装置では、年度毎の地図データの更新を外付けハードディスク装置を接続することによって行っており、外付けハードディスク装置に記憶されているデータを内蔵されたハードディスク装置に書き込む際に、電源のオフを不許可にする表示を行ったり、電源がオフにならないような制御を行ったりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−249813号公報(第7−13頁、図1−6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近では、ナビゲーション装置に限らず車両に搭載された装置の記憶装置としてハードディスク装置が広く用いられている。例えば、オーディオ装置においてCD等からリッピングした音楽データをハードディスク装置に記憶することで、大量の音楽データを記憶することができるようになっている。このようなハードディスク装置では、特許文献1に記載されているように、ライトキャッシュメモリを用いることにより効率よくデータの書き込みを行うことができる。
【0005】
ところで、このようなハードディスク装置に対してデータを書き込みを行っているときに電源をオフすると、物理的な磁気ディスクに対するデータ書き込みにエラーが生じるだけでなく、ライトキャッシュメモリに既に格納されている大量のデータも消失してしまう。特許文献1に開示されたナビゲーション装置では、利用者が電源をオフしてしまってこのようなことが生じないように表示や制御を行っている。しかし、エンジン始動前にナビゲーション装置の動作を開始し、その後エンジンを始動する場合を考えると、エンジン始動時にバッテリ電圧が低下し、ナビゲーション装置の動作がリセットされてしまうことがある。このような場合には、内蔵されたハードディスク装置もリセットされるため、ライトキャッシュメモリに既に格納されているデータも消失し、ナビゲーション装置の動作が長時間中断する事態が発生する。
【0006】
このような事態を回避するためには、ナビゲーション装置などのハードディスク装置を用いた車載装置を駆動するためのバッテリを、エンジンスタータ用のバッテリとは別にしたり、バッテリと車載装置との間に昇圧回路を設けて電圧低下によって車載装置がリセットされないようにするなどの方法が考えられる。しかし、2つのバッテリを備える場合にはコスト上昇につながるとともに、重量が増すため近年の軽量化の要請に反することになる。また、昇圧回路を設けてバッテリの電圧低下によるリセットを防止する場合には、機械的な駆動部を有するハードディスク装置を含む車載装置全体の動作電力を確保することになり、昇圧回路の装置規模が大きくなる。
【0007】
このように、ライトキャッシュメモリを有するハードディスク装置を記憶装置として用いる車載装置では、動作途中でエンジンが始動されると動作が長時間中断されることになり、これを回避するためにはバッテリや大容量の昇圧回路が必要になって装置規模が大きくなるという問題があった。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、ライトキャッシュメモリを有するハードディスク装置を記憶装置として用いる場合に、動作途中でエンジンが始動されても動作が長時間中断されることがなく、装置規模の拡大を最小限に抑えることができる車載装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明の車載装置は、ライトキャッシュメモリを有し、記憶媒体へデータを書き込む際にライトキャッシュメモリの使用/不使用を指定可能なハードディスク装置と、所定のプログラムを実行することにより、ハードディスク装置に対してデータの読み書きを行いながら所定の動作を行うプログラム実行手段と、バッテリに接続され、ハードディスク装置に動作電力を供給する第1の電源回路と、プログラム実行手段に動作電力を供給する第2の電源回路と、バッテリの電圧が低下したときに昇圧して第2の電源回路に供給する昇圧回路と、エンジン始動前にライトキャッシュメモリの不使用をハードディスク装置に対して指示し、エンジン始動後にライトキャッシュメモリの使用をハードディスク装置に対して指示するキャッシュメモリ使用状態指示手段とを備えている。
【0010】
エンジン始動前はライトキャッシュメモリを用いずに記憶媒体へのデータの書き込みが行われるため、エンジン始動時に動作電圧が低下してハードディスク装置がリセットされても、速やかにその時点で書き込み中のデータから書き込みを再開することができる。また、プログラム実行手段については、昇圧回路を用いてエンジン始動時の動作電圧の低下を防止しているため、エンジン始動時にも正常動作を継続することができる。これらにより、動作途中でエンジンが始動されても動作が長時間中断されることを回避することができる。さらに、昇圧回路を用いて動作電圧を維持する対象からハードディスク装置を外すことにより、小容量の昇圧回路を用いることができ、装置規模の拡大を最小限に抑えることができる。
【0011】
また、上述したキャッシュメモリ使用状態指示手段は、プログラム実行手段に含まれることが望ましい。これにより、プログラムを追加するだけでキャッシュメモリ使用状態指示手段の動作を実現することができ、しかも、エンジン始動時にも動作を継続することができる。
【0012】
また、上述したプログラム実行手段は、プログラムを格納するROMおよびRAMの少なくとも一方と、ROMあるいはRAMからプログラムを読み出して実行するCPUとを含んで構成されていることが望ましい。特に、上述したプログラム実行手段は、機械的な駆動部を含まないことが望ましい。これにより、昇圧回路によって供給する動作電力を少なくすることができる。
【0013】
また、上述したキャッシュメモリ使用状態指示手段は、外部装置からエンジンが始動された旨を示すエンジン始動信号を受信したときに、ライトキャッシュメモリの使用をハードディスク装置に対して指示することが望ましい。これにより、エンジンが始動したことを確実かつ容易に知ることができる。
【0014】
また、上述したハードディスク装置およびプログラム実行手段は、エンジン始動前の所定のタイミングで動作を開始することが望ましい。具体的には、上述した所定のタイミングは、車両のドアが開閉されたとき、あるいは、車両のドアのロック状態が解除されたときであることが望ましい。これにより、エンジンを始動するまでに動作を開始し、利用者が車載装置を利用することができるまでの時間を短縮して、操作性を向上させることができる。
【0015】
また、上述したキャッシュメモリ使用状態指示手段は、エンジン停止を検出したときに、ライトキャッシュメモリの不使用をハードディスク装置に対して指示することが望ましい。これにより、エンジンを停止した後に再度始動する場合に備えることできる。
【0016】
また、上述したキャッシュメモリ使用状態指示手段は、アイドリングストップ時に、ライトキャッシュメモリの不使用をハードディスク装置に対して指示することが望ましい。これにより、アイドリングストップ時において次にエンジンを始動する際にも動作が長時間中断されることを回避することができる。
【0017】
また、上述したプログラム実行手段によって実行されるプログラムには、ハードディスク装置に記憶されている地図データを用いて車両の走行を案内するナビゲーションプログラムが含まれていることが望ましい。あるいは、上述したプログラム実行手段によって実行されるプログラムには、ハードディスク装置に記憶されている音楽データを用いて音楽の再生を行うオーディオプログラムが含まれていることが望ましい。また、上述したプログラム実行手段によって実行されるプログラムには、受信機によって受信したデータをハードディスク装置に記憶する放送受信用プログラムが含まれていることが望ましい。また、上述したプログラム実行手段によって実行されるプログラムには、車両の周囲を撮像して得られた画像データをハードディスク装置に記憶するドライブレコーダプログラムが含まれていることが望ましい。ハードディスク装置を用いることが多いと考えられるこれらの車載装置において特に、動作途中でエンジンが始動されても動作が長時間中断されることを回避することができる効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一実施形態の車載装置の全体構成を示す図である。
【図2】車両に搭乗する際にエンジン始動に先立って車載装置を起動する場合の動作を示す説明図である。
【図3】アイドリングストップ制御によってエンジンを停止後に再始動する場合の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を適用した一実施形態の車載装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態の車載装置の全体構成を示す図である。図1に示す車載装置100は、製品マイコン部10、ハードディスク装置(HDD)30、GPS装置40、ディスク装置42、受信機44、カメラ46、通信インタフェース部(通信IF)50、電源回路60、62、昇圧回路64を含んで構成されている。
【0020】
製品マイコン部10は、所定のプログラムを実行することにより、ハードディスク装置30に対してデータの読み書きを行いながら所定の動作を行う。製品マイコン部10がプログラム実行手段に対応しており、機械的な駆動部を含まずに構成されている。この製品マイコン部10は、CPU12、ROM14、RAM16、フラッシュROM18を備えている。フラッシュROM18は、車載装置100をコンピュータとして動作させるための基本プログラムやナビゲーション装置などとして動作させるための各種のアプリケーションプログラムを記憶するフラッシュメモリである。例えば、フラッシュROM18には、ファイルシステム21、HDD制御ドライバ22、CM制御プログラム23、ナビアプリ24、オーディオアプリ25、録画アプリ26、記録アプリ27が格納されている。
【0021】
ファイルシステム21は、ハードディスク装置30に読み書きするデータの管理等を行う。HDD制御ドライバ22は、ハードディスク装置30を駆動してデータの読み書きを行う。CM(キャッシュメモリ)制御プログラム23は、ハードディスク装置30に対して、エンジンの始動の前後に応じて、内蔵されたライトキャッシュメモリの使用/不使用を指示するためのものである。このCM制御プログラム23をCPU12で実行することにより、CM制御部(キャッシュメモリ使用状態指示手段に対応する)としての動作が行われる。
【0022】
ナビアプリ24は、ハードディスク装置30に記憶されている地図データを用いて車載装置100が搭載された車両の走行を案内するナビゲーションプログラムである。自車位置を検出するGPS装置40とともに用いられ、車両の走行を案内する動作としては、地図表示、経路探索・誘導、周辺施設検索などのナビゲーション処理が行われる。
【0023】
オーディオアプリ25は、ハードディスク装置30に記憶されている音楽データや、CDあるいはDVDに記録されている音楽データを読み出して音楽の再生を行うオーディオプログラムである。CD等に記録されている音楽データの読み出しはディスク装置42を用いて行われる。ディスク装置42は、ディスク型記録媒体としてのCDやDVDに記録された音楽データを読み出す。この音楽データは、オーディオアプリ25を用いて直接再生することもできるが、一旦ハードディスク装置30に書き込んで他の音楽データとともにデータベース化し、必要に応じてハードディスク装置30から読み出して再生することもできる。
【0024】
録画アプリ26は、受信機44によって受信した画像データをハードディスク装置30に記録する受信データ記録プログラムである。受信機44は、放送局から配信された番組の画像データおよび音声データを受信し、表示や音声出力を行う。また、これらの受信データは、必要に応じて(利用者による設定内容に応じて)ハードディスク装置30に保存(番組の録画)することができ、録画アプリ26をCPU12によって実行することにより、この録画動作が行われる。
【0025】
記録アプリ27は、カメラ46を用いて車両の周囲を撮像して得られた画像データをハードディスク装置30に記録するドライブレコーダとしての動作を行うための撮像データ記録プログラムである。カメラ46は、車両の所定位置(例えば、車両前方およびルームミラー、ドアミラーが見える位置)に設置されており、記録アプリ27をCPU12で実行することにより、このカメラ46による撮像によって得られた画像データを、最新の所定時間分(例えば数分)ハードディスク装置30に記録するドライブレコーダとしての動作が行われる。
【0026】
ハードディスク装置30は、フラッシュROM18に格納されたナビアプリ24等を実行して各アプリに対応する動作を行う際に、必要に応じてデータの読み書きを行う記憶装置であり、書込み円盤部32、ライトキャッシュメモリ34、HDD制御部36を備えている。書込み円盤部32は、磁気ヘッド(図示せず)を用いてデータの読み書きが行わる記録媒体である。ライトキャッシュメモリ34は、所定容量を有し、書込み円盤部32にデータを書き込む前に一旦データを保持する。ライトキャッシュメモリ34を用いることにより、データの書き込み効率を上げることができ、データの書き込みに要する時間を短縮することが可能となる。HDD制御部36は、書込み円盤部32に対するデータの書き込みと読み出しを制御する。データを書き込む際には、ライトキャッシュメモリ34の使用/不使用を外部(例えばCM制御プログラム23を実行したCPU12)から指定することができ、HDD制御部36は、入力されたデータを直接書込み円盤部32に記録し、あるいは、ライトキャッシュメモリ34に一旦格納した後読み出して書込み円盤部32に記録する書き込み制御を行う。
【0027】
通信インタフェース部50は、外部装置としてのエンジンECU(電子制御装置)210やISS(アイドルストップシステム)220との間で信号の送受信を行う。エンジンECU210は、エンジン200の制御を行っている。本実施形態では、エンジン始動後にエンジンECU2210からエンジン始動信号が出力されるものとする。このエンジン始動信号は、通信インタフェース部50によって受信され、車載装置100(CM制御部)においてエンジンが始動されたことを知ることができるようになっている。なお、エンジン始動信号を受信する以外の方法を用いてエンジンの始動を検出するようにしてもよい。例えば、車載のバッテリ300の電圧を監視してエンジン始動を検出する場合などが考えられる。
【0028】
また、ISS220は、車両が信号待ち等で停車し、かつ、所定の条件(例えばバッテリ残量が所定値以上など)を満たすときにエンジン200を停止するアイドリングストップ制御を行う。本実施形態では、アイドリングストップ制御によってエンジン停止した直後にISS220からIS(アイドリングストップ)信号が出力されるものとする。このISS信号は、通信インタフェース部50によって受信され、車載装置100(CM制御部)においてアイドリングストップ制御によりエンジン200が停止したことを知ることができるようになっている。なお、ISS信号を受信する以外の方法でエンジンの停止を検出するようにしてもよい。例えば、エンジン200の始動および停止はエンジンECU210によって制御されているため、エンジンECU210からエンジン200が停止した旨の信号を出力し、これを通信インタフェース50で受信して車載装置100においてエンジン200が停止したことを知るようにしてもよい。
【0029】
電源回路(第1の電源回路)60は、バッテリ300が接続されており、例えば5Vの動作電圧(定電圧)が生成され、ハードディスク装置30、GPS装置40、ディスク装置42、受信機44、カメラ46、通信インタフェース部50のそれぞれに動作電力を供給する。
【0030】
電源回路62(第2の電源回路)は、例えば3.3Vの動作電圧(定電圧)が生成され、製品マイコン部10に動作電力を供給する。この電源回路62には、昇圧回路64を介してバッテリ300が接続されている。昇圧回路64は、バッテリ300の電圧が低下したときに昇圧して電源回路62に供給する。昇圧回路64を通すことにより、エンジン200の始動時にバッテリ300の電圧が大きく低下した場合であっても電源回路62に印加される電圧の変動を少なくすることができ、電源回路62の出力電圧(3.3V)を維持することが可能となる。一方、電源回路60にはバッテリ300が直接接続されているため、エンジン200の始動時にバッテリ300の電圧が大きく低下すると電源回路60の出力電圧も一時的に大きく低下し、電源回路60に接続されたハードディスク装置30等がリセットされてしまう。
【0031】
本実施形態の車載装置100はこのような構成を有しており、次にその動作を説明する。図2は、車両に搭乗する際にエンジン始動に先立って車載装置を起動する場合の動作を示す説明図である。図2において、「HDD」はハードディスク装置30のライトキャッシュメモリの使用状態を示しており、「キャッシュ・オフ」はライトキャッシュメモリ34を使用せずにデータの書き込みが行われることを、「キャッシュ・オン」はライトキャッシュメモリ34を使用してデータの書き込みが行われることそれぞれ示している。
【0032】
車両のドア(例えば運転席側のドア)が開閉されたときに車載装置100が起動される。以後、車載装置100の各構成が動作を開始する。なお、車載装置100がドアの開閉を検出する方法としては、開閉センサ(図示せず)を用いる場合や、エンジンECU210あるいは車両全体を制御するECU(図示せず)からドアの開閉を知らせる信号を受信する場合などが考えられる。また、ドアの開閉時に車載装置100を起動する代わりに、ドアのロックが解除されたときに車載装置100が起動されるようにしてもよい。
【0033】
車載装置100が起動されると、CM制御部(CM制御プログラム23を実行したCPU12)は、ハードディスク装置30に向けてライトキャッシュメモリ34の不使用を指示する。この指示を受信したハードディスク装置30において、データの書き込み要求が発生したときに、HDD制御部36は、ライトキャッシュメモリ34を用いずにデータの書き込みを行う。例えば、エンジン始動前にデータの書き込み要求が発生する場合の具体例としては、ナビアプリ24を実行して経路探索を行う場合、オーディオアプリ25を実行してディスク装置42に装填されたCD等から音楽データのリッピングを行う場合、録画アプリ26を実行して受信機44によって受信した番組を録画する場合、記録アプリ27を実行してカメラ46で撮像した画像データを記録する場合などが考えられる。
【0034】
このような状態においてエンジン200が始動されると、バッテリ300に直接接続された電源回路60の出力電圧が低下するため、ハードディスク装置30が一時的にリセットされるが、この段階ではライトキャッシュメモリ34は使用されていないため、リセット時の書き込み処理にエラーが生じるがリセット後にエラーになったデータの再書き込みが行われるだけで、ハードディスク装置30を用いた動作を継続することができる。また、エンジン200が始動された場合であっても、製品マイコン部10には電源回路62から正常な動作電圧の供給が維持されるため、製品マイコン部10による動作は正常に継続される。
【0035】
エンジン始動後にエンジンECU210からエンジン始動信号が出力されると、CM制御部は、ハードディスク装置30に向けてライトキャッシュメモリ34の使用を指示する。以後、ハードディスク装置30のHDD制御部36は、ライトキャッシュメモリ34を用いてデータの書き込みを行う。
【0036】
このように、本実施形態の車載装置100では、エンジン始動前はライトキャッシュメモリ34を用いずに記憶媒体(書込み円盤部32)へのデータの書き込みが行われるため、エンジン始動時に動作電圧が低下してハードディスク装置30がリセットされても、速やかにその時点で書き込み中のデータから書き込みを再開することができる。また、製品マイコン部10については、昇圧回路64を用いてエンジン始動時の動作電圧の低下を防止しているため、エンジン始動時にも正常動作を継続することができる。これらにより、動作途中でエンジン200が始動されても製品マイコン部10の動作が長時間中断されることを回避することができる。さらに、昇圧回路64を用いて動作電圧を維持する対象からハードディスク装置30を外すことにより、小容量の昇圧回路64を用いることができ、装置規模の拡大を最小限に抑えることができる。
【0037】
また、CM制御部(キャッシュメモリ使用状態指示手段)を製品マイコン部10を用いて実現することにより、CM制御プログラム23を追加するだけで必要な動作を実現することができ、しかも、エンジン始動時にも動作を継続することが可能となる。
【0038】
また、エンジンECU210から送られてくるエンジン始動信号に基づいてエンジン始動を検出してライトキャッシュメモリ34の使用をハードディスク装置30に対して指示しており、エンジン始動信号を用いることによりエンジンが始動したことを確実かつ容易に知ることができる。
【0039】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、CM制御部(キャッシュメモリ使用状態指示手段)を製品マイコン部10を用いて実現したが、製品マイコン部10とは別にCM制御部を設けるようにしてもよい。このCM制御部は、エンジン始動後にライトキャッシュメモリ34の使用をハードディスク装置30に向けて指示できればよいため、電源回路60から供給される電力によって動作するようにしてもよい。また、CM制御部をハードディスク装置30に内蔵するようにしてもよい。
【0040】
また、上述した実施形態では、ナビアプリ24、オーディオアプリ25、録画アプリ26、記録アプリ27を備えるようにしたが、車載装置100としてこれら4つのアプリを全て備える必要は必ずしもなく、1つ以上を適宜選択的に備えるようにしてもよい。また、ハードディスク装置30を用いるものであれば、これら4つのアプリ以外のアプリケーションプログラムをフラッシュROM18に格納しておいてCPU12で実行するようにしてもよい。また、フラッシュROM18を用いたが、それ以外の不揮発性メモリ、あるいは、電源バックアップ(電源回路62を用いることができる)を行ったRAM等を代わりに用いるようにしてもよい。
【0041】
また、上述した実施形態では、車両に搭乗してエンジンを始動する前にハードディスク装置30のライトキャッシュメモリ34を不使用に設定する場合について説明したが、アイドリングストップ制御によってエンジンを停止した場合にも本発明を適用することができる。
【0042】
図3は、アイドリングストップ制御によってエンジンを停止後に再始動する場合の動作を示す説明図である。図2に示した場合と異なり、アイドリングストップ制御によってエンジンを停止後に再始動する場合には、車載装置100は動作中の状態にある。
【0043】
アイドリングストップ制御によってエンジンが停止した後、ISS220から出力されたIS信号を通信インタフェース部50で受信すると、CM制御部(CM制御プログラム23を実行したCPU12)は、ハードディスク装置30に向けてライトキャッシュメモリ34の不使用を指示する。この指示を受信したハードディスク装置30において、データの書き込み要求が発生したときに、HDD制御部36は、ライトキャッシュメモリ34を用いずにデータの書き込みを行う。
【0044】
このような状態においてエンジン200が再始動されると、バッテリ300に直接接続された電源回路60の出力電圧が低下するため、ハードディスク装置30が一時的にリセットされるが、この段階ではライトキャッシュメモリ34は使用されていないため、リセット時の書き込み処理にエラーが生じるがリセット後にエラーになったデータの再書き込みが行われるだけで、ハードディスク装置30を用いた動作を継続することができる。また、エンジン200が再始動された場合であっても、製品マイコン部10には電源回路62から正常な動作電圧の供給が維持されるため、製品マイコン部10による動作は正常に継続される。
【0045】
エンジン再始動後にエンジンECU210からエンジン始動信号が出力されると、CM制御部は、ハードディスク装置30に向けてライトキャッシュメモリ34の使用を指示する。以後、ハードディスク装置30のHDD制御部36は、ライトキャッシュメモリ34を用いてデータの書き込みを行う。
【0046】
このように、アイドリングストップ制御によってエンジンの停止、再始動が行われた場合であっても、製品マイコン部10の動作が長時間中断されることを回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
上述したように、本発明によれば、動作途中でエンジン200が始動されても製品マイコン部10の動作が長時間中断されることを回避することができる。また、昇圧回路64を用いて動作電圧を維持する対象からハードディスク装置30を外すことにより、小容量の昇圧回路64を用いることができ、装置規模の拡大を最小限に抑えることができる。
【符号の説明】
【0048】
10 製品マイコン部
12 CPU
14 ROM
16 RAM
18 フラッシュROM
30 ハードディスク装置(HDD)
32 書込み円盤部
34 ライトキャッシュメモリ
36 HDD制御部
40 GPS装置
42 ディスク装置
44 受信機
46 カメラ
50 通信インタフェース部(通信IF)
60、62 電源回路
64 昇圧回路
100 車載装置
200 エンジン
210 エンジンECU(電子制御装置)
220 ISS(アイドルストップシステム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライトキャッシュメモリを有し、記憶媒体へデータを書き込む際に前記ライトキャッシュメモリの使用/不使用を指定可能なハードディスク装置と、
所定のプログラムを実行することにより、前記ハードディスク装置に対してデータの読み書きを行いながら所定の動作を行うプログラム実行手段と、
バッテリに接続され、前記ハードディスク装置に動作電力を供給する第1の電源回路と、
前記プログラム実行手段に動作電力を供給する第2の電源回路と、
前記バッテリの電圧が低下したときに昇圧して前記第2の電源回路に供給する昇圧回路と、
エンジン始動前に前記ライトキャッシュメモリの不使用を前記ハードディスク装置に対して指示し、エンジン始動後に前記ライトキャッシュメモリの使用を前記ハードディスク装置に対して指示するキャッシュメモリ使用状態指示手段と、
を備えることを特徴とする車載装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記キャッシュメモリ使用状態指示手段は、前記プログラム実行手段に含まれることを特徴とする車載装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記プログラム実行手段は、プログラムを格納するROMおよびRAMの少なくとも一方と、前記ROMあるいは前記RAMからプログラムを読み出して実行するCPUとを含んで構成されていることを特徴とする車載装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記プログラム実行手段は、機械的な駆動部を含まないことを特徴とする車載装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかにおいて、
前記キャッシュメモリ使用状態指示手段は、外部装置からエンジンが始動された旨を示すエンジン始動信号を受信したときに、前記ライトキャッシュメモリの使用を前記ハードディスク装置に対して指示することを特徴とする車載装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記ハードディスク装置および前記プログラム実行手段は、エンジン始動前の所定のタイミングで動作を開始することを特徴とする車載装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記所定のタイミングは、車両のドアが開閉されたとき、あるいは、車両のドアのロック状態が解除されたときであることを特徴とする車載装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかにおいて、
前記キャッシュメモリ使用状態指示手段は、エンジン停止を検出したときに、前記ライトキャッシュメモリの不使用を前記ハードディスク装置に対して指示することを特徴とする車載装置。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかにおいて、
前記キャッシュメモリ使用状態指示手段は、アイドリングストップ時に、前記ライトキャッシュメモリの不使用を前記ハードディスク装置に対して指示することを特徴とする車載装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかにおいて、
前記プログラム実行手段によって実行されるプログラムには、前記ハードディスク装置に記憶されている地図データを用いて車両の走行を案内するナビゲーションプログラムが含まれていることを特徴とする車載装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかにおいて、
前記プログラム実行手段によって実行されるプログラムには、前記ハードディスク装置に記憶されている音楽データを用いて音楽の再生を行うオーディオプログラムが含まれていることを特徴とする車載装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかにおいて、
前記プログラム実行手段によって実行されるプログラムには、受信機によって受信したデータを前記ハードディスク装置に記録する受信データ記録プログラムが含まれていることを特徴とする車載装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかにおいて、
前記プログラム実行手段によって実行されるプログラムには、車両の周囲を撮像して得られた画像データを前記ハードディスク装置に記録する撮像データ記録プログラムが含まれていることを特徴とする車載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−43458(P2013−43458A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180214(P2011−180214)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】