軌条の移動方法
【課題】 たとえば分岐構造などの精度が要求されるような軌条であっても、迅速にかつ正確に移動させることができ、また、軌条を任意の方向に移動することが可能な軌条の移動方法を提供する。
【解決手段】 横桁15(37)上に、複数の縦桁19を一体化させて構成される移動桁28が構築される。移動桁28上には、分岐部25を含む軌条23が設置される。移動桁28には複数のジャッキ39がワイヤ41を介して接続される。移動桁28の一部にピン33が設けられる。ジャッキ39を稼働すると、移動桁28はピン33を回転軸として回転移動する。すなわち、分岐部25を含む軌条23を移動させることができる。
【解決手段】 横桁15(37)上に、複数の縦桁19を一体化させて構成される移動桁28が構築される。移動桁28上には、分岐部25を含む軌条23が設置される。移動桁28には複数のジャッキ39がワイヤ41を介して接続される。移動桁28の一部にピン33が設けられる。ジャッキ39を稼働すると、移動桁28はピン33を回転軸として回転移動する。すなわち、分岐部25を含む軌条23を移動させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐部を含む既設の軌条を、簡易に移動させることが可能な、軌条の移動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道軌道などの構造物の交換等行う場合には、列車等の走行しない限られた時間内での極めて短時間での工事が必要である。たとえば、軌条の更新を行う場合には、このような短時間において、既設軌条の撤去と新たな軌条の設置を行う必要がある。
【0003】
このような構造物の更新方法としては、平行して設置される軌条に走行台車を待機させ、ターンテーブルを有する横取り装置によって、撤去した既設の軌条を走行台車上に載せて既設軌条を退避させるとともに、当該横取り装置によって、並行する軌条上に運搬された新たな軌条を設置部位に設置する橋梁架設交換施工方法がある(特許文献1)。
【0004】
また、軌条の移設ではないが、橋脚上に軌条を設け、軌条上に橋桁を載せて移動する無限軌道を移送台として、移送台を水平ジャッキによって移動させることで、橋桁等の横取り移動を行う方法がある(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−1910号公報
【特許文献2】特開2000−234311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のような施工方法では、軌条を更新することはできても、軌条の方向を変化させることはできないという問題がある。たとえば、既存の軌条を横方向に移設したり、軌条の走行方向を変化させたりすることはできない。
【0007】
また、特許文献2による方法では、橋桁を横方向に移動させるものではあるが、ジャッキに接続された無限軌道をH鋼ブロック上で走行させるため、H鋼ブロックと平行な方向にしか移動ができないという問題がある。たとえば、橋桁等の構造物を、H鋼ブロックに対して斜め方向や1点を中心とした回転移動など、任意の方向には移動できないという問題がある。また、単に複数のジャッキで無限軌道を押すだけでは、構造物を変形させることなく精度良く移設することは困難である。
【0008】
図12は、分岐部63を有する軌条61を示した図である。分岐部63を含む軌条61は枕木65上に設置された状態で、高い精度が要求される。しかし、高架の設置等のため、このような軌条63を移設する必要がある場合がある。たとえば、図12に示すように、破線で示す軌条を実線で示した軌条へ移動(矢印H方向)する場合である。このような場合、軌条63の方向を変化させるため、特許文献1のような方法は使用できない。
【0009】
また、例えば特許文献2のような方法で、分岐部63を含む軌条61を移動させると、軌条61および分岐部65が変形等により精度を保つことができない。したがって、軌条を移動させるのではなく、既設の軌条に対して鉄道の運行の妨げとならないような位置に仮設の軌条を設置し、仮設の軌条を利用しながら本設の軌条を図12のような位置に再設置する必要がある。したがって、軌条を移設するためには多くの手間がかかり、また、広い工事領域が必要となるという問題がある。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、たとえば分岐構造などの精度が要求されるような軌条であっても、迅速にかつ正確に移動させることができ、また、軌条を任意の方向に移動することが可能な軌条の移動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するため、本発明は、軌条を移動させる方法であって、軌条の下部に位置するように、移動桁を設ける工程(a)と、前記移動桁の側方に、前記軌条に沿って複数のジャッキを設け、前記ジャッキと前記移動桁とを接続する工程(b)と、前記ジャッキにより前記移動桁を移動させる工程(c)と、を具備することを特徴とする軌条の移動方法である。
【0012】
前記移動桁は、所定間隔で前記軌条に略平行な方向に設けられた複数の鉄骨製の縦桁を有し、前記移動桁の下方には、前記移動桁の移動方向に略平行な複数の鉄骨製の横桁が設置され、前記工程(b)では、前記横桁に前記ジャッキを設け、前記工程(c)では、前記縦桁が前記横桁上を移動することで前記移動桁を移動させてもよい。
【0013】
この場合、前記横桁上にはフッ化樹脂板が設けられ、前記縦桁の下方にはステンレス板が設けられ、前記工程(c)では、前記フッ化樹脂板と前記ステンレス板とを摺動させてもよい。
【0014】
前記工程(c)では、前記ジャッキによる前記移動桁の移動方向が、直線方向であってもよく、この場合、複数の前記ジャッキは、それぞれエンコーダにより前記ジャッキの移動量が測定可能であり、複数の前記ジャッキのうち、前記移動桁の長手方向の略中央に位置するジャッキを基準ジャッキとし、前記基準ジャッキを除く他の複数のジャッキを追従ジャッキとし、前記工程(c)では、前記基準ジャッキの移動速度を、前記追従ジャッキよりも遅く設定し、前記追従ジャッキの内、一の追従ジャッキの移動量が、前記基準ジャッキの移動量に対して所定量を超えると、前記一の追従ジャッキの移動を止め、前記一の追従ジャッキの移動量が、前記基準ジャッキの移動量に対して所定量以下となると、前記一の追従ジャッキの移動を再開させてもよい。
【0015】
また、前記工程(c)の前に、前記移動桁の一部に回転軸を設け、前記工程(c)では、前記ジャッキによる前記移動桁の移動方向が、前記回転軸を中心とした回転方向であってもよく、この場合、複数の前記ジャッキは、それぞれエンコーダにより前記ジャッキの移動量が測定可能であり、前記回転軸から最も遠い部位に設けられるジャッキを基準ジャッキとし、前記基準ジャッキを除く他の複数のジャッキを追従ジャッキとし、前記工程(c)では、前記基準ジャッキの移動速度を、前記追従ジャッキよりも遅く設定し、前記追従ジャッキの内、一の追従ジャッキの移動量が、前記基準ジャッキの移動量に対して所定量を超えると、前記一の追従ジャッキの移動を止め、前記一の追従ジャッキの移動量が、前記基準ジャッキの移動量に対して所定量以下となると、前記一の追従ジャッキの移動を再開させてもよい。
【0016】
前記移動桁上には、分岐構造を有する軌条が設けられてもよい。
【0017】
本発明によれば、上方に軌条を有する移動桁を設け、移動桁をジャッキで移動させるため、移動桁の移動方向によって、任意の方向へ軌条を移設することができる。特に、移動桁は縦桁を有し、縦桁が縦桁下方に設けられた横桁上を移動するため、移動が容易である。特に縦桁にステンレス板を設け、横桁にはフッ化樹脂板を設けるため、摩擦抵抗が極めて小さくなり、移動桁の移動が更に容易となる。
【0018】
また、移動桁の移動方向を直線方向にすれば、ジャッキの設置方向に移動桁を移動させることができる。この場合に、移動桁の略中央のジャッキを基準ジャッキとして、基準ジャッキよりも他の追従ジャッキの移動速度をわずかに速くし、追従ジャッキの移動量が基準ジャッキの移動量に対して所定量以上大きくなると当該追従ジャッキを止め、追従ジャッキの移動量が基準ジャッキの移動量に対して所定量以下となると当該追従ジャッキの移動を再開させることで、移動桁を移動させる複数のジャッキを極めて精度よく制御することができ、移動桁の移動量を精度よく管理することができる。
【0019】
また、移動桁の一部に回転軸を設けることで、回転軸を中心として回転方向に移動桁を移動させることもできる。この場合には、回転軸から最も遠い位置のジャッキを基準ジャッキとすることで、前述の通り、精度よく移動桁の移動量を管理することができる。このように、本発明の移動桁は、移動桁の回転移動と直線移動とを組み合わせれば、任意の方向に軌条を移動することができる。また、回転移動と直線移動とを組み合わせることで、個々の移動時には一方向の移動となるため、完全に自由方向への移動を行う場合のように、移動桁をコンクリート等で各方向に対して剛性を高め、完全に変形防止する必要がなく、このため鉄骨製の移動体でも十分な精度を得ることができる。
【0020】
移動桁の移動を精度よく行うことで、軌条の分岐構造を移動することができる。したがって、通常は、その精度管理が困難であるため、移設等を行うことができなかった分岐部も移動することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、たとえば分岐構造などの精度が要求されるような軌条であっても、迅速にかつ正確に移動させることができ、また、軌条を任意の方向に移動することが可能な軌条の移動方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態にかかる軌条の移動方法について説明する。図1は、既設の軌条1を示す図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のA−A線断面図である。なお、以下の図においても各図(b)は対応する各図(a)の、図1におけるA−A線位置の断面図を示すものとする。
【0023】
軌条1は分岐部3を構成し枕木5上に設置されている。また、図1(b)に示すように、枕木5は軌道砕石11上に設けられる。軌条1はこの状態において列車等が運行を行っている。なお、分岐部3近傍を除く軌条1においては枕木5の図示を省略する。
【0024】
軌条1を移動させるためには、まず、図1に示すように、軌条1の側方に、分岐部3近傍の軌条1と同等の大きさの範囲の地面9を掘削して、掘削穴7が設けられる。なお、掘削穴7の内部の周囲には、図示を省略した土止め等が設けられる。
【0025】
次に、図2に示すように、掘削穴7内に地中梁13が設置される。地中梁13は例えばコンクリート製である。地中梁13上には横桁15が設置され、横桁15はボルト等で地中梁13へ固定される。横桁15は例えばH鋼が使用できる。横桁15は、後述する移動桁が移動する方向に対して概ね平行に、所定の間隔をあけて設置される。たとえば、後述する移動桁が60m長さx10m幅程度であれば、横桁15は5m〜10程度の間隔で8本程度設置すれば良い。なお、実際には移動桁は回転移動も行うため、横桁15の設置方向は厳密に移動方向に平行である必要はない。
【0026】
図2(c)は図2(b)のB−B線拡大断面図である。横桁15上には、横桁15の長手方向に渡ってフッ化樹脂板17が設置される。フッ化樹脂板17は例えばボルト等で横桁15へ接合される。
【0027】
次に、図3に示すように、横桁15上に、縦桁19が設置される。縦桁19は、例えば軌条1に略平行な方向に複数設置される。縦桁19は例えばH鋼が使用できる。縦桁19は横桁15に対してボルト等で仮固定される。なお、縦桁19の設置範囲が後述する移動桁の大きさとなる。
【0028】
図3(c)は図3(b)のC部拡大図である。縦桁19の下方にはステンレス板21が設置される。ステンレス板21は縦桁19に対して溶接等で接合される。なお、ステンレス板21は、縦桁19全長にわたって設けられる必要はなく、例えば、横桁15との交差部近傍をカバーするように設けられる。ステンレス板21とフッ化樹脂板17とは摩擦係数が極めて小さいため、容易にステンレス板21がフッ化樹脂板17上を摺動することができる。なお、以後の図面においては、フッ化樹脂板およびステンレス板の図示は省略する。
【0029】
また、図示は省略するが、縦桁19同士は縦桁19上に設けられた鋼板や、縦桁19に略垂直な方向であって横桁15と干渉しない位置に設けられたH鋼等で互いに接合される。したがって、複数の縦桁19は一体化される。一体化された縦桁19は、横桁15に対して仮止めされているため、この状態で移動することはない。
【0030】
次に、図4に示すように、縦桁19上(図示を省略した鋼板上)に軌道砕石29が設置される。軌道砕石29上には枕木27、軌条23が設置される。軌条23は分岐部25を構成する。なお、設置される軌条23および分岐部25の形態は、例えば既設の軌条1、分岐部3と同一とすることができる。縦桁19上に設置された軌道砕石29、軌条23等は縦桁19と一体化される。一体化された、縦桁19、軌道砕石29、軌道23、枕木27等によって移動桁28が構成される。
【0031】
なお、移動桁28の周囲には軌道砕石29の砂利止め等が設けられる。また、移動桁28の構築に際しては、軌条1と軌条23とが同一の高さとなるように移動桁28の高さが決められ、移動桁28はほぼ水平に構築される。また、移動桁28の構築が終了するまでは、軌条1を用いて列車等の運行を継続することができる。
【0032】
次に、図5に示すように、移動桁28上の軌条23へ既設の軌道と接続している軌条31(図中点線)が接続される。すなわち、従来軌条1(分岐部3)上を通過していた列車等は、軌条1に代えて移動桁28上の軌条23を走行する。なお、当該工程は、夜間の列車等の走行が無い時間帯に行われる。したがって、列車の運行の妨げにはならない。軌条31と軌条23の接続を終えれば、列車等の運行を再開することができる。
【0033】
軌条31と軌条23との接続後、既設の軌条1、枕木5等が撤去される。軌条1等の撤去後、図5に示すように、軌条1が設置されていた部位に掘削穴7と連通するように掘削穴30が設けられる。掘削穴30の掘削後、掘削穴30内へ地中梁32が設置される。なお、地中梁32は地中梁13と一体化され、この際、図5(b)に示すように、地中梁13と地中梁32の上面高さが同じになるように設置される。
【0034】
次に、図6に示すように、既存の横桁15の延長方向へ、地中梁32上に複数の横桁37が設置される。横桁37はそれぞれの横桁15と接続される。横桁37は例えばH鋼が使用できる。横桁37は地中梁32へボルト等で固定される。また、横桁37上には、横桁15と同様に、図示を省略したフッ化樹脂板17が設置される。
【0035】
複数の横桁37の内1本の横桁37上であって、移動桁28との交点近傍にはピン33およびヒンジ35が設けられる。図6(a)は、図面下方の横桁37へピン33およびヒンジ35が設けられた例を示す図である。ピン33およびヒンジ35についての詳細は後述する。
【0036】
ピン33等が設置された横桁37以外の横桁37の端部には、ジャッキ39(39a、39b、39c、39d、39e、39f、39g)が設けられる。各ジャッキ39にはワイヤ41が接合される。ワイヤ41は、それぞれのジャッキ39が設置された横桁37に沿って延伸され、縦桁19のそれぞれの横桁37と交差する部位近傍へ接合される。すなわち、各ジャッキ39はワイヤ41を介して移動桁28と接合される。
【0037】
図7は、ピン33およびヒンジ35等の拡大図である。図7(a)は平面図、図7(b)は正面図である。一対の板状のガイド34は横桁37上にボルト等で固定される。ピン33は一対のガイド34によって横桁37に対して垂直方向に保持される。一対のガイド34には対応する位置にピン33が挿入可能な孔が設けられており、ピン33は、ガイド34に抜き差しが可能である。ピン33の上方にはフランジが設けられ、ピン33をガイド34へ情報より挿入した状態で、ピン33がガイド34より抜け落ちることはない。
【0038】
ヒンジ35は、板状の部材であり、縦桁19へボルト等で固定される。ヒンジ35にはピン33が貫通可能な孔が設けられている。ヒンジ35は、一対のガイド34間に挿入され、ピン33は、一対のガイド34およびヒンジ35を貫通するように挿入される。なお、ピン33、ガイド34、ヒンジ35は例えば鋼製でよい。
【0039】
横桁37に固定されたガイド34と縦桁19へ固定されたヒンジ35は、ピン33を回転軸として回転可能である。図7(c)は、縦桁19が横桁37に対して、ピン33を中心として回転した状態を示す図である。
【0040】
前述の通り、横桁37は地中梁32へ固定されている。したがって、横桁37(横桁15)から縦桁19の仮止めを解除し、縦桁19へ力を加えることで、縦桁19はピン33を中心に回転移動することができる。
【0041】
次に、図8に示すように、移動桁28全体を回転移動させる。移動桁28を移動させる前には、あらかじめ縦桁19と横桁15との仮固定を外しておく。前述の通り、縦桁19はピン33を回転軸として回転可能である。移動桁28に接続されたジャッキ39を稼働し、ワイヤ41によって移動桁28を所定量引っ張ることで、移動桁28を回転移動(図中矢印F方向)させることができる。なお、移動桁28を移動させる際の、各ジャッキ39の動作の制御方法についての詳細は後述する。
【0042】
ここで、移動桁28の回転移動の際には、あらかじめ従来の軌道と接続する軌条31とは接続が断たれる。したがって、移動桁28の移動工程は、列車等の運行がない夜間に行う必要がある。
【0043】
図9は、さらに移動桁28を直線移動させる場合を示す図である。移動桁28を直線移動させる場合には、ピン33およびヒンジ35が撤去され、ピン33等が設置されていた横桁37上にもジャッキ39(39h)が設置される。ジャッキ39hも他のジャッキ39と同様に、ワイヤ41が設けられ、ワイヤ41は移動桁28へ接合される。
【0044】
次に、移動桁28に接続されたジャッキ39を稼働し、ワイヤ41によって移動桁28を所定量引っ張ることで、移動桁28を直線移動(図中矢印G方向)させることができる。移動桁28の移動が完了した後、移動桁28(縦桁19)は横桁15(37)へボルト等で固定される。以上の工程により、移動桁28の回転移動および直線移動を行うことができる。
【0045】
なお、ジャッキ39の移動量が移動桁28の移動量よりも小さい場合には、複数回の移動に分けて移動桁28の移動を行えばよい。また、移動桁28の移動は、回転移動のみまたは直線移動のみであってもよく、または直線移動後に回転移動させてもよい。
【0046】
また、移動桁28の直線移動の際には、回転移動の際と同様に、従来の軌道と接続する軌条31とは接続が断たれた状態である。したがって、移動桁28の移動が完了した後、移動後の軌条23の位置へ、列車が走行する軌道と接続する軌条31を再接続することで、列車等の運行を再開することができる。なお、移動桁28の移動の際には、横桁15(37)上に設けられたフッ化樹脂板17と、縦桁19下に設けられたステンレス板21とが摺動する。この場合、両者の摩擦係数が小さいため、容易に縦桁19を横桁15(37)上で移動させることができる。
【0047】
次に、移動桁28を移動させる場合の各ジャッキの制御方法について説明する。図10は、ジャッキ39の制御方法を示すフローチャートである。
【0048】
ジャッキ39の制御を行う上で、まず、基準ジャッキを設定する必要がある。基準ジャッキは、全体のジャッキの中で、移動速度(移動量)を制御するための基準となるジャッキである。移動桁28を回転移動させる場合には、回転中心から最も遠いジャッキが基準ジャッキとなる。すなわち、図8においてはジャッキ39aが基準ジャッキとなる。
【0049】
また、移動桁28を直線移動させる場合には、移動桁28の長手方向の略中央に接続されたジャッキ(所定の間隔で並設された各ジャッキ39の略中央に位置するジャッキ)が基準ジャッキとなる。すなわち、図9においてはジャッキ39d(またはジャッキ39e)が基準ジャッキとなる。
【0050】
基準ジャッキ以外のジャッキはすべて追従ジャッキとなる。それぞれの追従ジャッキは、基準ジャッキとの関係のみでその動作が制御され、追従ジャッキ同士で動作を制御し合うことはない。したがって、基準ジャッキは設定された条件で一定の動作を行い、追従ジャッキは基準ジャッキの動作を監視して、基準ジャッキの動作との関係で制御される。
【0051】
基準ジャッキが選択されると、まず、基準ジャッキの移動速度が設定される(ステップ101)。基準ジャッキの移動速度は、すなわち、移動桁28を移動させるための移動速度である。なお、移動桁28の回転移動の際には、当然ながら基準ジャッキの取り付け位置における回転周速度が基準ジャッキの移動速度となる。
【0052】
次に、追従ジャッキの移動速度が設定される(ステップ102)。追従ジャッキの移動速度は、基準ジャッキの移動速度よりもわずかに速く設定される。たとえば基準ジャッキの移動速度に対して17%程度早く設定される。
【0053】
次に、基準ジャッキおよび追従ジャッキのすべてを同時に動作(移動)開始する(ステップ103)。すなわち、ジャッキ39の移動に応じて移動桁28の移動が開始する。なお、基準ジャッキおよび追従ジャッキにはそれぞれエンコーダが取り付けられる。したがって、各ジャッキの移動量はエンコーダによって把握される。
【0054】
基準ジャッキの移動量が設定移動量に達すると(ステップ104)、全ジャッキの移動が停止し、移動を終了する(ステップ109)。すなわち、移動桁28は設定された量の移動を終了する。
【0055】
移動桁28の移動が終了するまでは、各追従ジャッキの移動量は常に基準ジャッキの移動量と比較される。例えば、ある追従ジャッキの移動量が基準ジャッキの移動量と比較され、基準ジャッキの移動量よりも所定量大きい場合には当該追従ジャッキの移動は一時停止する(ステップ105、106)。
【0056】
前述の通り、追従ジャッキの移動速度は基準ジャッキよりも高速であるため、両者を同一時間稼働させると、追従ジャッキの移動量が基準ジャッキの移動量を上回る。たとえば、ある追従ジャッキの移動量が基準ジャッキの移動量に対して0.1mm以上大きくなった場合には、当該追従ジャッキの移動を一時停止する。なお、追従ジャッキの移動量が基準ジャッキの移動量に対して所定量以内であれば、当該追従ジャッキはそのまま移動を継続する。
【0057】
ある追従ジャッキが一時停止した状態においても、当該追従ジャッキと基準ジャッキの移動量は常に比較される。当該追従ジャッキが一時停止した状態において、基準ジャッキの移動が進行し、基準ジャッキの移動量が当該追従ジャッキの移動量に対して所定量以上大きくなると、当該追従ジャッキは移動を再開する(ステップ107、108)。
【0058】
たとえば、ある一時停止状態の追従ジャッキの移動量が、基準ジャッキの移動量に対して0.1mm以上小さくなった場合(すなわち基準ジャッキの移動量が、当該追従ジャッキの移動量を0.1mm以上追い越した場合)に、当該追従ジャッキの移動を再開することができる。
【0059】
なお、上述の追従ジャッキの移動量制御は、それぞれの追従ジャッキごとに個々に行われる。したがって、ある追従ジャッキが一時停止状態であっても、他の追従ジャッキが稼働し続ける場合もあり、また、一度にすべての追従ジャッキが稼働・停止状態となることもある。
【0060】
図11は、前述の追従ジャッキの制御に伴う、基準ジャッキおよび追従ジャッキの移動量の変化を示す図である。基準ジャッキは、移動開始(S点)から一定の移動速度で移動を開始し(ステップ103)、ジャッキ移動量設定値49に達すると移動を停止する(ステップ104、109)。すなわち、基準ジャッキ移動量43はS点より直線的に移動量を増していき、ジャッキ移動量設定値49に達すると一定となる。
【0061】
基準ジャッキ移動量43の上下には、ジャッキ移動量の方向に所定の間隔をあけて追従ジャッキ偏差上限値47、追従ジャッキ偏差下限値45が設定される。たとえば基準ジャッキ移動量43に対して、上側にUだけ偏差させたものが、追従ジャッキ偏差上限値47であり、基準ジャッキ移動量43に対して下側にLだけ偏差させたものが追従ジャッキ偏差下限値45である。
【0062】
追従ジャッキは基準ジャッキと同時にS点より移動を開始する(ステップ103)。追従ジャッキの移動速度は基準ジャッキの移動速度よりも大きいため、基準ジャッキ移動量43よりも追従ジャッキ移動量51の勾配は大きくなる。
【0063】
基準ジャッキおよび追従ジャッキが移動を続け、追従ジャッキ移動量51が追従ジャッキ偏差上限値47に達すると(P点)、すなわち、追従ジャッキの移動量が基準ジャッキの移動量よりもUだけ大きくなると、当該追従ジャッキは移動を停止する(ステップ105、106)。
【0064】
追従ジャッキが移動を停止しても基準ジャッキは一定速度で移動を継続する。追従ジャッキ移動量51が追従ジャッキ偏差下限値45に達すると(Q点)、すなわち、追従ジャッキの移動量が基準ジャッキの移動量よりもLだけ小さくなると、当該追従ジャッキは移動を再開する(ステップ107、108)。
【0065】
その後、追従ジャッキは同様の動作を繰り返し、基準ジャッキがジャッキ移動量設定値49に到達すると、基準ジャッキとともに移動を停止する(ステップ109)。以上により動作を終了する。
【0066】
以上説明したように、本発明にかかる軌条の移動方法によれば、軌条を回転移動および直線移動を組み合わせ、任意の方向へ移動させることができる。特に、移動桁28の一部にピン33等の回転軸を設けることで、回転軸を中心に移動桁28を回転させることができる。
【0067】
移動桁28の移動の際には、横桁15上のフッ化樹脂板17と縦桁19下方のステンレス板21とが摺動し、摩擦係数が小さいため、容易に移動桁28を移動させることができる。
【0068】
軌条の移動は移動桁28を、複数のジャッキにより直線移動または回転移動させればよいため、短期間で移動を完了させることができる。すなわち、軌条の移動時、及び移動後の軌条に列車等が走行する軌道を接続する間以外は、列車等の運行の妨げになることはない。このため、軌条の移動を列車の運行しない夜間で行うことができる。
【0069】
また、軌条の移動には移動桁28を使用し、移動桁28は複数のジャッキにより直線移動および回転移動を行い、個々の移動においては一方向の移動となるため、移動桁等の構造物を完全に自由移動させる場合と比較し、移動桁28に大きな剛性が必要なく、このため移動桁28は鉄骨構造とすることができ、施工が容易である。
【0070】
また、移動桁28の移動の際に、複数のジャッキから基準ジャッキを1台定め、基準ジャッキの移動量から他の追従ジャッキの移動量を制御することで、極めて高い移動量精度を得ることができ、例えば、数mm程度の誤差範囲内で移動桁を移動させることができる。したがって、分岐部を含む軌条であっても、容易に移動させることができる。
【0071】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0072】
例えば、移動桁28の移動の際に、移動桁28の移動方向に沿ってガイドローラ等を設ければ、移動桁28はガイドローラに沿ってまっすぐに移動させることができる。また、移動桁28の施工方法として、既設の軌条の側方に掘削穴7を設け、新たに軌条23等を設置したが、軌条脇に桁受けのための作業スペースを確保し、既設の軌条1の下方を直接側方から掘削し、地中梁および横桁等の施工ができれば、既設の分岐部3を含む所定の範囲を直接移動桁として構築することもできる。この場合、軌条脇に線路幅と同等の幅の敷地がなく、ほとんどスペースがないような狭隘な場所においても、軌条を移動することができる。また、移動桁28を回転移動する場合に、ピン33は移動桁28の端部に設けられたが、回転軸となるピン33等の設置部位は、移動桁28の任意の部位とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】既存の軌条1の側方に掘削穴7を設ける工程を示す図。
【図2】掘削穴7へ地中梁13および横桁15を設置した状態を示す図。
【図3】横桁15上へ縦桁19を設置する状態を示す図。
【図4】縦桁19上に軌条23等を設置し移動桁28を構築した状態を示す図。
【図5】移動桁28上の軌条23を軌条31と接続し、既設の軌条1等を撤去するとともに当該部位に地中梁32を設けた状態を示す図。
【図6】地中梁32上に横梁37を設置し、横梁37上にジャッキ39を設け、移動桁28の端部近傍にピン33およびヒンジ35を設けた状態を示す図。
【図7】ピン33およびヒンジ35近傍を示す図。
【図8】移動桁28をピン33を回転軸として回転移動させる状態を示す図。
【図9】移動桁28を直背にどうさせる状態を示す図。
【図10】ジャッキ39の制御方法を示すフリーチャート。
【図11】基準ジャッキと追従ジャッキの動作を示す図。
【図12】分岐部63を含む軌条61を移動させる状態を示す図。
【符号の説明】
【0074】
1、23、31………軌条
3、25………分岐部
5、27………枕木
7、30………掘削穴
9………地面
11、29………軌道砕石
13、32………地中梁
15、37………横桁
17………フッ化樹脂板
19………縦桁
21………ステンレス板
33………ピン
34………ガイド
35………ヒンジ
39………ジャッキ
41………ワイヤ
61………軌条
63………分岐部
65………枕木
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐部を含む既設の軌条を、簡易に移動させることが可能な、軌条の移動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道軌道などの構造物の交換等行う場合には、列車等の走行しない限られた時間内での極めて短時間での工事が必要である。たとえば、軌条の更新を行う場合には、このような短時間において、既設軌条の撤去と新たな軌条の設置を行う必要がある。
【0003】
このような構造物の更新方法としては、平行して設置される軌条に走行台車を待機させ、ターンテーブルを有する横取り装置によって、撤去した既設の軌条を走行台車上に載せて既設軌条を退避させるとともに、当該横取り装置によって、並行する軌条上に運搬された新たな軌条を設置部位に設置する橋梁架設交換施工方法がある(特許文献1)。
【0004】
また、軌条の移設ではないが、橋脚上に軌条を設け、軌条上に橋桁を載せて移動する無限軌道を移送台として、移送台を水平ジャッキによって移動させることで、橋桁等の横取り移動を行う方法がある(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】特開平11−1910号公報
【特許文献2】特開2000−234311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のような施工方法では、軌条を更新することはできても、軌条の方向を変化させることはできないという問題がある。たとえば、既存の軌条を横方向に移設したり、軌条の走行方向を変化させたりすることはできない。
【0007】
また、特許文献2による方法では、橋桁を横方向に移動させるものではあるが、ジャッキに接続された無限軌道をH鋼ブロック上で走行させるため、H鋼ブロックと平行な方向にしか移動ができないという問題がある。たとえば、橋桁等の構造物を、H鋼ブロックに対して斜め方向や1点を中心とした回転移動など、任意の方向には移動できないという問題がある。また、単に複数のジャッキで無限軌道を押すだけでは、構造物を変形させることなく精度良く移設することは困難である。
【0008】
図12は、分岐部63を有する軌条61を示した図である。分岐部63を含む軌条61は枕木65上に設置された状態で、高い精度が要求される。しかし、高架の設置等のため、このような軌条63を移設する必要がある場合がある。たとえば、図12に示すように、破線で示す軌条を実線で示した軌条へ移動(矢印H方向)する場合である。このような場合、軌条63の方向を変化させるため、特許文献1のような方法は使用できない。
【0009】
また、例えば特許文献2のような方法で、分岐部63を含む軌条61を移動させると、軌条61および分岐部65が変形等により精度を保つことができない。したがって、軌条を移動させるのではなく、既設の軌条に対して鉄道の運行の妨げとならないような位置に仮設の軌条を設置し、仮設の軌条を利用しながら本設の軌条を図12のような位置に再設置する必要がある。したがって、軌条を移設するためには多くの手間がかかり、また、広い工事領域が必要となるという問題がある。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、たとえば分岐構造などの精度が要求されるような軌条であっても、迅速にかつ正確に移動させることができ、また、軌条を任意の方向に移動することが可能な軌条の移動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するため、本発明は、軌条を移動させる方法であって、軌条の下部に位置するように、移動桁を設ける工程(a)と、前記移動桁の側方に、前記軌条に沿って複数のジャッキを設け、前記ジャッキと前記移動桁とを接続する工程(b)と、前記ジャッキにより前記移動桁を移動させる工程(c)と、を具備することを特徴とする軌条の移動方法である。
【0012】
前記移動桁は、所定間隔で前記軌条に略平行な方向に設けられた複数の鉄骨製の縦桁を有し、前記移動桁の下方には、前記移動桁の移動方向に略平行な複数の鉄骨製の横桁が設置され、前記工程(b)では、前記横桁に前記ジャッキを設け、前記工程(c)では、前記縦桁が前記横桁上を移動することで前記移動桁を移動させてもよい。
【0013】
この場合、前記横桁上にはフッ化樹脂板が設けられ、前記縦桁の下方にはステンレス板が設けられ、前記工程(c)では、前記フッ化樹脂板と前記ステンレス板とを摺動させてもよい。
【0014】
前記工程(c)では、前記ジャッキによる前記移動桁の移動方向が、直線方向であってもよく、この場合、複数の前記ジャッキは、それぞれエンコーダにより前記ジャッキの移動量が測定可能であり、複数の前記ジャッキのうち、前記移動桁の長手方向の略中央に位置するジャッキを基準ジャッキとし、前記基準ジャッキを除く他の複数のジャッキを追従ジャッキとし、前記工程(c)では、前記基準ジャッキの移動速度を、前記追従ジャッキよりも遅く設定し、前記追従ジャッキの内、一の追従ジャッキの移動量が、前記基準ジャッキの移動量に対して所定量を超えると、前記一の追従ジャッキの移動を止め、前記一の追従ジャッキの移動量が、前記基準ジャッキの移動量に対して所定量以下となると、前記一の追従ジャッキの移動を再開させてもよい。
【0015】
また、前記工程(c)の前に、前記移動桁の一部に回転軸を設け、前記工程(c)では、前記ジャッキによる前記移動桁の移動方向が、前記回転軸を中心とした回転方向であってもよく、この場合、複数の前記ジャッキは、それぞれエンコーダにより前記ジャッキの移動量が測定可能であり、前記回転軸から最も遠い部位に設けられるジャッキを基準ジャッキとし、前記基準ジャッキを除く他の複数のジャッキを追従ジャッキとし、前記工程(c)では、前記基準ジャッキの移動速度を、前記追従ジャッキよりも遅く設定し、前記追従ジャッキの内、一の追従ジャッキの移動量が、前記基準ジャッキの移動量に対して所定量を超えると、前記一の追従ジャッキの移動を止め、前記一の追従ジャッキの移動量が、前記基準ジャッキの移動量に対して所定量以下となると、前記一の追従ジャッキの移動を再開させてもよい。
【0016】
前記移動桁上には、分岐構造を有する軌条が設けられてもよい。
【0017】
本発明によれば、上方に軌条を有する移動桁を設け、移動桁をジャッキで移動させるため、移動桁の移動方向によって、任意の方向へ軌条を移設することができる。特に、移動桁は縦桁を有し、縦桁が縦桁下方に設けられた横桁上を移動するため、移動が容易である。特に縦桁にステンレス板を設け、横桁にはフッ化樹脂板を設けるため、摩擦抵抗が極めて小さくなり、移動桁の移動が更に容易となる。
【0018】
また、移動桁の移動方向を直線方向にすれば、ジャッキの設置方向に移動桁を移動させることができる。この場合に、移動桁の略中央のジャッキを基準ジャッキとして、基準ジャッキよりも他の追従ジャッキの移動速度をわずかに速くし、追従ジャッキの移動量が基準ジャッキの移動量に対して所定量以上大きくなると当該追従ジャッキを止め、追従ジャッキの移動量が基準ジャッキの移動量に対して所定量以下となると当該追従ジャッキの移動を再開させることで、移動桁を移動させる複数のジャッキを極めて精度よく制御することができ、移動桁の移動量を精度よく管理することができる。
【0019】
また、移動桁の一部に回転軸を設けることで、回転軸を中心として回転方向に移動桁を移動させることもできる。この場合には、回転軸から最も遠い位置のジャッキを基準ジャッキとすることで、前述の通り、精度よく移動桁の移動量を管理することができる。このように、本発明の移動桁は、移動桁の回転移動と直線移動とを組み合わせれば、任意の方向に軌条を移動することができる。また、回転移動と直線移動とを組み合わせることで、個々の移動時には一方向の移動となるため、完全に自由方向への移動を行う場合のように、移動桁をコンクリート等で各方向に対して剛性を高め、完全に変形防止する必要がなく、このため鉄骨製の移動体でも十分な精度を得ることができる。
【0020】
移動桁の移動を精度よく行うことで、軌条の分岐構造を移動することができる。したがって、通常は、その精度管理が困難であるため、移設等を行うことができなかった分岐部も移動することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、たとえば分岐構造などの精度が要求されるような軌条であっても、迅速にかつ正確に移動させることができ、また、軌条を任意の方向に移動することが可能な軌条の移動方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態にかかる軌条の移動方法について説明する。図1は、既設の軌条1を示す図であり、図1(a)は平面図、図1(b)は図1(a)のA−A線断面図である。なお、以下の図においても各図(b)は対応する各図(a)の、図1におけるA−A線位置の断面図を示すものとする。
【0023】
軌条1は分岐部3を構成し枕木5上に設置されている。また、図1(b)に示すように、枕木5は軌道砕石11上に設けられる。軌条1はこの状態において列車等が運行を行っている。なお、分岐部3近傍を除く軌条1においては枕木5の図示を省略する。
【0024】
軌条1を移動させるためには、まず、図1に示すように、軌条1の側方に、分岐部3近傍の軌条1と同等の大きさの範囲の地面9を掘削して、掘削穴7が設けられる。なお、掘削穴7の内部の周囲には、図示を省略した土止め等が設けられる。
【0025】
次に、図2に示すように、掘削穴7内に地中梁13が設置される。地中梁13は例えばコンクリート製である。地中梁13上には横桁15が設置され、横桁15はボルト等で地中梁13へ固定される。横桁15は例えばH鋼が使用できる。横桁15は、後述する移動桁が移動する方向に対して概ね平行に、所定の間隔をあけて設置される。たとえば、後述する移動桁が60m長さx10m幅程度であれば、横桁15は5m〜10程度の間隔で8本程度設置すれば良い。なお、実際には移動桁は回転移動も行うため、横桁15の設置方向は厳密に移動方向に平行である必要はない。
【0026】
図2(c)は図2(b)のB−B線拡大断面図である。横桁15上には、横桁15の長手方向に渡ってフッ化樹脂板17が設置される。フッ化樹脂板17は例えばボルト等で横桁15へ接合される。
【0027】
次に、図3に示すように、横桁15上に、縦桁19が設置される。縦桁19は、例えば軌条1に略平行な方向に複数設置される。縦桁19は例えばH鋼が使用できる。縦桁19は横桁15に対してボルト等で仮固定される。なお、縦桁19の設置範囲が後述する移動桁の大きさとなる。
【0028】
図3(c)は図3(b)のC部拡大図である。縦桁19の下方にはステンレス板21が設置される。ステンレス板21は縦桁19に対して溶接等で接合される。なお、ステンレス板21は、縦桁19全長にわたって設けられる必要はなく、例えば、横桁15との交差部近傍をカバーするように設けられる。ステンレス板21とフッ化樹脂板17とは摩擦係数が極めて小さいため、容易にステンレス板21がフッ化樹脂板17上を摺動することができる。なお、以後の図面においては、フッ化樹脂板およびステンレス板の図示は省略する。
【0029】
また、図示は省略するが、縦桁19同士は縦桁19上に設けられた鋼板や、縦桁19に略垂直な方向であって横桁15と干渉しない位置に設けられたH鋼等で互いに接合される。したがって、複数の縦桁19は一体化される。一体化された縦桁19は、横桁15に対して仮止めされているため、この状態で移動することはない。
【0030】
次に、図4に示すように、縦桁19上(図示を省略した鋼板上)に軌道砕石29が設置される。軌道砕石29上には枕木27、軌条23が設置される。軌条23は分岐部25を構成する。なお、設置される軌条23および分岐部25の形態は、例えば既設の軌条1、分岐部3と同一とすることができる。縦桁19上に設置された軌道砕石29、軌条23等は縦桁19と一体化される。一体化された、縦桁19、軌道砕石29、軌道23、枕木27等によって移動桁28が構成される。
【0031】
なお、移動桁28の周囲には軌道砕石29の砂利止め等が設けられる。また、移動桁28の構築に際しては、軌条1と軌条23とが同一の高さとなるように移動桁28の高さが決められ、移動桁28はほぼ水平に構築される。また、移動桁28の構築が終了するまでは、軌条1を用いて列車等の運行を継続することができる。
【0032】
次に、図5に示すように、移動桁28上の軌条23へ既設の軌道と接続している軌条31(図中点線)が接続される。すなわち、従来軌条1(分岐部3)上を通過していた列車等は、軌条1に代えて移動桁28上の軌条23を走行する。なお、当該工程は、夜間の列車等の走行が無い時間帯に行われる。したがって、列車の運行の妨げにはならない。軌条31と軌条23の接続を終えれば、列車等の運行を再開することができる。
【0033】
軌条31と軌条23との接続後、既設の軌条1、枕木5等が撤去される。軌条1等の撤去後、図5に示すように、軌条1が設置されていた部位に掘削穴7と連通するように掘削穴30が設けられる。掘削穴30の掘削後、掘削穴30内へ地中梁32が設置される。なお、地中梁32は地中梁13と一体化され、この際、図5(b)に示すように、地中梁13と地中梁32の上面高さが同じになるように設置される。
【0034】
次に、図6に示すように、既存の横桁15の延長方向へ、地中梁32上に複数の横桁37が設置される。横桁37はそれぞれの横桁15と接続される。横桁37は例えばH鋼が使用できる。横桁37は地中梁32へボルト等で固定される。また、横桁37上には、横桁15と同様に、図示を省略したフッ化樹脂板17が設置される。
【0035】
複数の横桁37の内1本の横桁37上であって、移動桁28との交点近傍にはピン33およびヒンジ35が設けられる。図6(a)は、図面下方の横桁37へピン33およびヒンジ35が設けられた例を示す図である。ピン33およびヒンジ35についての詳細は後述する。
【0036】
ピン33等が設置された横桁37以外の横桁37の端部には、ジャッキ39(39a、39b、39c、39d、39e、39f、39g)が設けられる。各ジャッキ39にはワイヤ41が接合される。ワイヤ41は、それぞれのジャッキ39が設置された横桁37に沿って延伸され、縦桁19のそれぞれの横桁37と交差する部位近傍へ接合される。すなわち、各ジャッキ39はワイヤ41を介して移動桁28と接合される。
【0037】
図7は、ピン33およびヒンジ35等の拡大図である。図7(a)は平面図、図7(b)は正面図である。一対の板状のガイド34は横桁37上にボルト等で固定される。ピン33は一対のガイド34によって横桁37に対して垂直方向に保持される。一対のガイド34には対応する位置にピン33が挿入可能な孔が設けられており、ピン33は、ガイド34に抜き差しが可能である。ピン33の上方にはフランジが設けられ、ピン33をガイド34へ情報より挿入した状態で、ピン33がガイド34より抜け落ちることはない。
【0038】
ヒンジ35は、板状の部材であり、縦桁19へボルト等で固定される。ヒンジ35にはピン33が貫通可能な孔が設けられている。ヒンジ35は、一対のガイド34間に挿入され、ピン33は、一対のガイド34およびヒンジ35を貫通するように挿入される。なお、ピン33、ガイド34、ヒンジ35は例えば鋼製でよい。
【0039】
横桁37に固定されたガイド34と縦桁19へ固定されたヒンジ35は、ピン33を回転軸として回転可能である。図7(c)は、縦桁19が横桁37に対して、ピン33を中心として回転した状態を示す図である。
【0040】
前述の通り、横桁37は地中梁32へ固定されている。したがって、横桁37(横桁15)から縦桁19の仮止めを解除し、縦桁19へ力を加えることで、縦桁19はピン33を中心に回転移動することができる。
【0041】
次に、図8に示すように、移動桁28全体を回転移動させる。移動桁28を移動させる前には、あらかじめ縦桁19と横桁15との仮固定を外しておく。前述の通り、縦桁19はピン33を回転軸として回転可能である。移動桁28に接続されたジャッキ39を稼働し、ワイヤ41によって移動桁28を所定量引っ張ることで、移動桁28を回転移動(図中矢印F方向)させることができる。なお、移動桁28を移動させる際の、各ジャッキ39の動作の制御方法についての詳細は後述する。
【0042】
ここで、移動桁28の回転移動の際には、あらかじめ従来の軌道と接続する軌条31とは接続が断たれる。したがって、移動桁28の移動工程は、列車等の運行がない夜間に行う必要がある。
【0043】
図9は、さらに移動桁28を直線移動させる場合を示す図である。移動桁28を直線移動させる場合には、ピン33およびヒンジ35が撤去され、ピン33等が設置されていた横桁37上にもジャッキ39(39h)が設置される。ジャッキ39hも他のジャッキ39と同様に、ワイヤ41が設けられ、ワイヤ41は移動桁28へ接合される。
【0044】
次に、移動桁28に接続されたジャッキ39を稼働し、ワイヤ41によって移動桁28を所定量引っ張ることで、移動桁28を直線移動(図中矢印G方向)させることができる。移動桁28の移動が完了した後、移動桁28(縦桁19)は横桁15(37)へボルト等で固定される。以上の工程により、移動桁28の回転移動および直線移動を行うことができる。
【0045】
なお、ジャッキ39の移動量が移動桁28の移動量よりも小さい場合には、複数回の移動に分けて移動桁28の移動を行えばよい。また、移動桁28の移動は、回転移動のみまたは直線移動のみであってもよく、または直線移動後に回転移動させてもよい。
【0046】
また、移動桁28の直線移動の際には、回転移動の際と同様に、従来の軌道と接続する軌条31とは接続が断たれた状態である。したがって、移動桁28の移動が完了した後、移動後の軌条23の位置へ、列車が走行する軌道と接続する軌条31を再接続することで、列車等の運行を再開することができる。なお、移動桁28の移動の際には、横桁15(37)上に設けられたフッ化樹脂板17と、縦桁19下に設けられたステンレス板21とが摺動する。この場合、両者の摩擦係数が小さいため、容易に縦桁19を横桁15(37)上で移動させることができる。
【0047】
次に、移動桁28を移動させる場合の各ジャッキの制御方法について説明する。図10は、ジャッキ39の制御方法を示すフローチャートである。
【0048】
ジャッキ39の制御を行う上で、まず、基準ジャッキを設定する必要がある。基準ジャッキは、全体のジャッキの中で、移動速度(移動量)を制御するための基準となるジャッキである。移動桁28を回転移動させる場合には、回転中心から最も遠いジャッキが基準ジャッキとなる。すなわち、図8においてはジャッキ39aが基準ジャッキとなる。
【0049】
また、移動桁28を直線移動させる場合には、移動桁28の長手方向の略中央に接続されたジャッキ(所定の間隔で並設された各ジャッキ39の略中央に位置するジャッキ)が基準ジャッキとなる。すなわち、図9においてはジャッキ39d(またはジャッキ39e)が基準ジャッキとなる。
【0050】
基準ジャッキ以外のジャッキはすべて追従ジャッキとなる。それぞれの追従ジャッキは、基準ジャッキとの関係のみでその動作が制御され、追従ジャッキ同士で動作を制御し合うことはない。したがって、基準ジャッキは設定された条件で一定の動作を行い、追従ジャッキは基準ジャッキの動作を監視して、基準ジャッキの動作との関係で制御される。
【0051】
基準ジャッキが選択されると、まず、基準ジャッキの移動速度が設定される(ステップ101)。基準ジャッキの移動速度は、すなわち、移動桁28を移動させるための移動速度である。なお、移動桁28の回転移動の際には、当然ながら基準ジャッキの取り付け位置における回転周速度が基準ジャッキの移動速度となる。
【0052】
次に、追従ジャッキの移動速度が設定される(ステップ102)。追従ジャッキの移動速度は、基準ジャッキの移動速度よりもわずかに速く設定される。たとえば基準ジャッキの移動速度に対して17%程度早く設定される。
【0053】
次に、基準ジャッキおよび追従ジャッキのすべてを同時に動作(移動)開始する(ステップ103)。すなわち、ジャッキ39の移動に応じて移動桁28の移動が開始する。なお、基準ジャッキおよび追従ジャッキにはそれぞれエンコーダが取り付けられる。したがって、各ジャッキの移動量はエンコーダによって把握される。
【0054】
基準ジャッキの移動量が設定移動量に達すると(ステップ104)、全ジャッキの移動が停止し、移動を終了する(ステップ109)。すなわち、移動桁28は設定された量の移動を終了する。
【0055】
移動桁28の移動が終了するまでは、各追従ジャッキの移動量は常に基準ジャッキの移動量と比較される。例えば、ある追従ジャッキの移動量が基準ジャッキの移動量と比較され、基準ジャッキの移動量よりも所定量大きい場合には当該追従ジャッキの移動は一時停止する(ステップ105、106)。
【0056】
前述の通り、追従ジャッキの移動速度は基準ジャッキよりも高速であるため、両者を同一時間稼働させると、追従ジャッキの移動量が基準ジャッキの移動量を上回る。たとえば、ある追従ジャッキの移動量が基準ジャッキの移動量に対して0.1mm以上大きくなった場合には、当該追従ジャッキの移動を一時停止する。なお、追従ジャッキの移動量が基準ジャッキの移動量に対して所定量以内であれば、当該追従ジャッキはそのまま移動を継続する。
【0057】
ある追従ジャッキが一時停止した状態においても、当該追従ジャッキと基準ジャッキの移動量は常に比較される。当該追従ジャッキが一時停止した状態において、基準ジャッキの移動が進行し、基準ジャッキの移動量が当該追従ジャッキの移動量に対して所定量以上大きくなると、当該追従ジャッキは移動を再開する(ステップ107、108)。
【0058】
たとえば、ある一時停止状態の追従ジャッキの移動量が、基準ジャッキの移動量に対して0.1mm以上小さくなった場合(すなわち基準ジャッキの移動量が、当該追従ジャッキの移動量を0.1mm以上追い越した場合)に、当該追従ジャッキの移動を再開することができる。
【0059】
なお、上述の追従ジャッキの移動量制御は、それぞれの追従ジャッキごとに個々に行われる。したがって、ある追従ジャッキが一時停止状態であっても、他の追従ジャッキが稼働し続ける場合もあり、また、一度にすべての追従ジャッキが稼働・停止状態となることもある。
【0060】
図11は、前述の追従ジャッキの制御に伴う、基準ジャッキおよび追従ジャッキの移動量の変化を示す図である。基準ジャッキは、移動開始(S点)から一定の移動速度で移動を開始し(ステップ103)、ジャッキ移動量設定値49に達すると移動を停止する(ステップ104、109)。すなわち、基準ジャッキ移動量43はS点より直線的に移動量を増していき、ジャッキ移動量設定値49に達すると一定となる。
【0061】
基準ジャッキ移動量43の上下には、ジャッキ移動量の方向に所定の間隔をあけて追従ジャッキ偏差上限値47、追従ジャッキ偏差下限値45が設定される。たとえば基準ジャッキ移動量43に対して、上側にUだけ偏差させたものが、追従ジャッキ偏差上限値47であり、基準ジャッキ移動量43に対して下側にLだけ偏差させたものが追従ジャッキ偏差下限値45である。
【0062】
追従ジャッキは基準ジャッキと同時にS点より移動を開始する(ステップ103)。追従ジャッキの移動速度は基準ジャッキの移動速度よりも大きいため、基準ジャッキ移動量43よりも追従ジャッキ移動量51の勾配は大きくなる。
【0063】
基準ジャッキおよび追従ジャッキが移動を続け、追従ジャッキ移動量51が追従ジャッキ偏差上限値47に達すると(P点)、すなわち、追従ジャッキの移動量が基準ジャッキの移動量よりもUだけ大きくなると、当該追従ジャッキは移動を停止する(ステップ105、106)。
【0064】
追従ジャッキが移動を停止しても基準ジャッキは一定速度で移動を継続する。追従ジャッキ移動量51が追従ジャッキ偏差下限値45に達すると(Q点)、すなわち、追従ジャッキの移動量が基準ジャッキの移動量よりもLだけ小さくなると、当該追従ジャッキは移動を再開する(ステップ107、108)。
【0065】
その後、追従ジャッキは同様の動作を繰り返し、基準ジャッキがジャッキ移動量設定値49に到達すると、基準ジャッキとともに移動を停止する(ステップ109)。以上により動作を終了する。
【0066】
以上説明したように、本発明にかかる軌条の移動方法によれば、軌条を回転移動および直線移動を組み合わせ、任意の方向へ移動させることができる。特に、移動桁28の一部にピン33等の回転軸を設けることで、回転軸を中心に移動桁28を回転させることができる。
【0067】
移動桁28の移動の際には、横桁15上のフッ化樹脂板17と縦桁19下方のステンレス板21とが摺動し、摩擦係数が小さいため、容易に移動桁28を移動させることができる。
【0068】
軌条の移動は移動桁28を、複数のジャッキにより直線移動または回転移動させればよいため、短期間で移動を完了させることができる。すなわち、軌条の移動時、及び移動後の軌条に列車等が走行する軌道を接続する間以外は、列車等の運行の妨げになることはない。このため、軌条の移動を列車の運行しない夜間で行うことができる。
【0069】
また、軌条の移動には移動桁28を使用し、移動桁28は複数のジャッキにより直線移動および回転移動を行い、個々の移動においては一方向の移動となるため、移動桁等の構造物を完全に自由移動させる場合と比較し、移動桁28に大きな剛性が必要なく、このため移動桁28は鉄骨構造とすることができ、施工が容易である。
【0070】
また、移動桁28の移動の際に、複数のジャッキから基準ジャッキを1台定め、基準ジャッキの移動量から他の追従ジャッキの移動量を制御することで、極めて高い移動量精度を得ることができ、例えば、数mm程度の誤差範囲内で移動桁を移動させることができる。したがって、分岐部を含む軌条であっても、容易に移動させることができる。
【0071】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0072】
例えば、移動桁28の移動の際に、移動桁28の移動方向に沿ってガイドローラ等を設ければ、移動桁28はガイドローラに沿ってまっすぐに移動させることができる。また、移動桁28の施工方法として、既設の軌条の側方に掘削穴7を設け、新たに軌条23等を設置したが、軌条脇に桁受けのための作業スペースを確保し、既設の軌条1の下方を直接側方から掘削し、地中梁および横桁等の施工ができれば、既設の分岐部3を含む所定の範囲を直接移動桁として構築することもできる。この場合、軌条脇に線路幅と同等の幅の敷地がなく、ほとんどスペースがないような狭隘な場所においても、軌条を移動することができる。また、移動桁28を回転移動する場合に、ピン33は移動桁28の端部に設けられたが、回転軸となるピン33等の設置部位は、移動桁28の任意の部位とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】既存の軌条1の側方に掘削穴7を設ける工程を示す図。
【図2】掘削穴7へ地中梁13および横桁15を設置した状態を示す図。
【図3】横桁15上へ縦桁19を設置する状態を示す図。
【図4】縦桁19上に軌条23等を設置し移動桁28を構築した状態を示す図。
【図5】移動桁28上の軌条23を軌条31と接続し、既設の軌条1等を撤去するとともに当該部位に地中梁32を設けた状態を示す図。
【図6】地中梁32上に横梁37を設置し、横梁37上にジャッキ39を設け、移動桁28の端部近傍にピン33およびヒンジ35を設けた状態を示す図。
【図7】ピン33およびヒンジ35近傍を示す図。
【図8】移動桁28をピン33を回転軸として回転移動させる状態を示す図。
【図9】移動桁28を直背にどうさせる状態を示す図。
【図10】ジャッキ39の制御方法を示すフリーチャート。
【図11】基準ジャッキと追従ジャッキの動作を示す図。
【図12】分岐部63を含む軌条61を移動させる状態を示す図。
【符号の説明】
【0074】
1、23、31………軌条
3、25………分岐部
5、27………枕木
7、30………掘削穴
9………地面
11、29………軌道砕石
13、32………地中梁
15、37………横桁
17………フッ化樹脂板
19………縦桁
21………ステンレス板
33………ピン
34………ガイド
35………ヒンジ
39………ジャッキ
41………ワイヤ
61………軌条
63………分岐部
65………枕木
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌条を移動させる方法であって、
軌条の下部に位置するように、移動桁を設ける工程(a)と、
前記移動桁の側方に、前記軌条に沿って複数のジャッキを設け、前記ジャッキと前記移動桁とを接続する工程(b)と、
前記ジャッキにより前記移動桁を移動させる工程(c)と、
を具備することを特徴とする軌条の移動方法。
【請求項2】
前記移動桁は、所定間隔で前記軌条に略平行な方向に設けられた複数の鉄骨製の縦桁を有し、
前記移動桁の下方には、前記移動桁の移動方向に略平行な複数の鉄骨製の横桁が設置され、
前記工程(b)では、前記横桁に前記ジャッキを設け、
前記工程(c)では、前記縦桁が前記横桁上を移動することで前記移動桁が移動することを特徴とする請求項1記載の軌条の移動方法。
【請求項3】
前記横桁上にはフッ化樹脂板が設けられ、前記縦桁の下方にはステンレス板が設けられ、前記工程(c)では、前記フッ化樹脂板と前記ステンレス板とが摺動することを特徴とする請求項2記載の軌条の移動方法。
【請求項4】
前記工程(c)では、前記ジャッキによる前記移動桁の移動方向が、直線方向であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の軌条の移動方法。
【請求項5】
複数の前記ジャッキは、それぞれエンコーダにより前記ジャッキの移動量が測定可能であり、
複数の前記ジャッキのうち、前記移動桁の長手方向の略中央に位置するジャッキを基準ジャッキとし、前記基準ジャッキを除く他の複数のジャッキを追従ジャッキとし、
前記工程(c)では、前記基準ジャッキの移動速度を、前記追従ジャッキよりも遅く設定し、
前記追従ジャッキの内、一の追従ジャッキの移動量が、前記基準ジャッキの移動量に対して所定量を超えると、前記一の追従ジャッキの移動を止め、
前記一の追従ジャッキの移動量が、前記基準ジャッキの移動量に対して所定量以下となると、前記一の追従ジャッキの移動を再開することを特徴とする請求項4記載の軌条の移動方法。
【請求項6】
前記工程(c)の前に、前記移動桁の一部に回転軸を設け、
前記工程(c)では、前記ジャッキによる前記移動桁の移動方向が、前記回転軸を中心とした回転方向であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の軌条の移動方法。
【請求項7】
複数の前記ジャッキは、それぞれエンコーダにより前記ジャッキの移動量が測定可能であり、
前記回転軸から最も遠い部位に設けられるジャッキを基準ジャッキとし、前記基準ジャッキを除く他の複数のジャッキを追従ジャッキとし、
前記工程(c)では、前記基準ジャッキの移動速度を、前記追従ジャッキよりも遅く設定し、
前記追従ジャッキの内、一の追従ジャッキの移動量が、前記基準ジャッキの移動量に対して所定量を超えると、前記一の追従ジャッキの移動を止め、
前記一の追従ジャッキの移動量が、前記基準ジャッキの移動量に対して所定量以下となると、前記一の追従ジャッキの移動を再開することを特徴とする請求項6記載の軌条の移動方法。
【請求項8】
前記移動桁上には、分岐構造を有する軌条が設けられることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の軌条の移動方法。
【請求項1】
軌条を移動させる方法であって、
軌条の下部に位置するように、移動桁を設ける工程(a)と、
前記移動桁の側方に、前記軌条に沿って複数のジャッキを設け、前記ジャッキと前記移動桁とを接続する工程(b)と、
前記ジャッキにより前記移動桁を移動させる工程(c)と、
を具備することを特徴とする軌条の移動方法。
【請求項2】
前記移動桁は、所定間隔で前記軌条に略平行な方向に設けられた複数の鉄骨製の縦桁を有し、
前記移動桁の下方には、前記移動桁の移動方向に略平行な複数の鉄骨製の横桁が設置され、
前記工程(b)では、前記横桁に前記ジャッキを設け、
前記工程(c)では、前記縦桁が前記横桁上を移動することで前記移動桁が移動することを特徴とする請求項1記載の軌条の移動方法。
【請求項3】
前記横桁上にはフッ化樹脂板が設けられ、前記縦桁の下方にはステンレス板が設けられ、前記工程(c)では、前記フッ化樹脂板と前記ステンレス板とが摺動することを特徴とする請求項2記載の軌条の移動方法。
【請求項4】
前記工程(c)では、前記ジャッキによる前記移動桁の移動方向が、直線方向であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の軌条の移動方法。
【請求項5】
複数の前記ジャッキは、それぞれエンコーダにより前記ジャッキの移動量が測定可能であり、
複数の前記ジャッキのうち、前記移動桁の長手方向の略中央に位置するジャッキを基準ジャッキとし、前記基準ジャッキを除く他の複数のジャッキを追従ジャッキとし、
前記工程(c)では、前記基準ジャッキの移動速度を、前記追従ジャッキよりも遅く設定し、
前記追従ジャッキの内、一の追従ジャッキの移動量が、前記基準ジャッキの移動量に対して所定量を超えると、前記一の追従ジャッキの移動を止め、
前記一の追従ジャッキの移動量が、前記基準ジャッキの移動量に対して所定量以下となると、前記一の追従ジャッキの移動を再開することを特徴とする請求項4記載の軌条の移動方法。
【請求項6】
前記工程(c)の前に、前記移動桁の一部に回転軸を設け、
前記工程(c)では、前記ジャッキによる前記移動桁の移動方向が、前記回転軸を中心とした回転方向であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の軌条の移動方法。
【請求項7】
複数の前記ジャッキは、それぞれエンコーダにより前記ジャッキの移動量が測定可能であり、
前記回転軸から最も遠い部位に設けられるジャッキを基準ジャッキとし、前記基準ジャッキを除く他の複数のジャッキを追従ジャッキとし、
前記工程(c)では、前記基準ジャッキの移動速度を、前記追従ジャッキよりも遅く設定し、
前記追従ジャッキの内、一の追従ジャッキの移動量が、前記基準ジャッキの移動量に対して所定量を超えると、前記一の追従ジャッキの移動を止め、
前記一の追従ジャッキの移動量が、前記基準ジャッキの移動量に対して所定量以下となると、前記一の追従ジャッキの移動を再開することを特徴とする請求項6記載の軌条の移動方法。
【請求項8】
前記移動桁上には、分岐構造を有する軌条が設けられることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の軌条の移動方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−84500(P2010−84500A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−258088(P2008−258088)
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(592245627)京浜急行電鉄株式会社 (6)
【出願人】(592182573)オックスジャッキ株式会社 (19)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月3日(2008.10.3)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【出願人】(592245627)京浜急行電鉄株式会社 (6)
【出願人】(592182573)オックスジャッキ株式会社 (19)
【Fターム(参考)】
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