説明

転がり軸受の静止輪クリープ試験装置および試験方法

【課題】 転がり軸受のクリープ試験を短時間且つ安価に行うことができると共に、静止輪クリープ発生時の転がり軸受の諸特性を定量的に測定することができる転がり軸受の静止輪クリープ試験装置および試験方法を提供する。
【解決手段】 外輪40と、複数の玉42を介して外輪40に対し回転自在に配置された内輪41と、を備えた供試転がり軸受17の静止輪クリープ試験装置10は、外輪40を嵌合固定された前ハウジング23と、内輪41を回転させる軸12と、供試転がり軸受17に荷重を負荷する荷重負荷手段13と、ロードセル14と、外輪40のクリープに伴って円周方向に変位するように外輪40に固定され、且つロードセル14に接続されたトルクバー15と、を具備し、外輪40に作用するトルクを測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり軸受の静止輪クリープ試験装置および試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用のオルタネータ、マニュアルトランスミッション、オートマチックトランスミッションのギヤ支持、あるいはベルト式無段変速機のプーリ支持など、大きな荷重を負荷された状態で用いられる転がり軸受は、軸受の回転に伴って静止輪(内輪回転で使用される転がり軸受においては外輪、外輪回転で使用される転がり軸受においては内輪)と、静止輪が嵌合するハウジング(転がり軸受が内輪回転で使用される場合)または軸(転がり軸受が外輪回転で使用される場合)との間で相対的な回転、所謂クリープが発生する場合がある。
【0003】
このクリープは、主に、軸受に負荷された荷重、および/または温度変化によって静止輪が変形し、静止輪とハウジングまたは軸との嵌め合いが緩むことにより発生する。そして、クリープが発生すると、静止輪とハウジングまたは軸との嵌合面が磨耗して転がり軸受の機能が損なわれる虞がある。
【0004】
このような静止輪クリープの発生を防止するために、静止輪をフランジ一体型とし、ハウジングとフランジとをボルト等で固定する方法、静止輪にピンなどの回止め部材を植設してハウジングまたは軸に設けた溝穴にピンを係合させたもの、静止輪とハウジングまたは軸との嵌合部にOリングを配置したもの、デフリックコートなどの表面処理を施したもの、など、種々の防止策が提案されている。
【0005】
そして、静止輪にクリープ防止策が施された転がり軸受のクリープ防止効果を評価するためのクリープ試験は、従来、実際に使用されるハウジングまたは軸に転がり軸受を組み込み、回転試験を行った後の静止輪の摩耗量を評価することにより行われていた。
【0006】
また、発光素子と受光素子とを対向配置した検出器を設け、転がり軸受の静止輪に発光素子からの光を遮蔽する検出板を取り付けて、クリープが発生した際には検出板によって発光素子からの光を遮蔽することにより、クリープの発生を早期に検出するようにしたものも知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】実開平2−3168号公報(第3−4頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の摩耗量の評価によるクリープ試験方法では、評価結果を得るまでに長時間を要するばかりでなく、一度使用したハウジングまたは軸は摩耗しているため再使用することができず、クリープ試験に多くの費用や時間がかかる問題があった。また、特許文献1に開示されているクリープ検出装置は、クリープの発生の有無を検出するものであって、クリープを定量的に把握するものではなく、クリープ発生時の転がり軸受の諸特性を取得・解析して更なるクリープ防止策に反映することができず、改善の余地があった。
【0008】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、転がり軸受のクリープ試験を短時間且つ安価に行うことができると共に、静止輪クリープ発生時の転がり軸受の諸特性を定量的に測定することができる転がり軸受の静止輪クリープ試験装置および試験方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明に係る転がり軸受の静止輪クリープ試験装置は、下記(1)〜(3)を特徴としている。
【0010】
(1) 静止輪と、複数の転動体を介して前記静止輪に対し回転自在に配置された回転輪と、を備えた転がり軸受の静止輪クリープ試験装置であって、
前記静止輪を嵌合固定された固定部材と、
前記回転輪を回転させる駆動手段と、
前記転がり軸受に荷重を負荷する荷重負荷手段と、
ロードセルと、
前記静止輪のクリープに伴って円周方向に変位するように該静止輪に固定され、且つ前記ロードセルに接続された従動子と、
を具備し、
前記静止輪に作用するトルクを測定すること。
【0011】
上記した転がり軸受の静止輪クリープ試験装置によれば、荷重負荷手段により転がり軸受に荷重を負荷しながら転がり軸受の回転輪を回転させ、転がり軸受の静止輪にクリープが発生したときに、静止輪と共に円周方向に変位する従動子と、従動子に接続されたロードセルとによって、静止輪に作用する回転トルクのトルク値を測定するので、クリープの発生を即座に検出して、静止輪を嵌合固定された固定部材を磨耗させることなく短時間に且つ安価にクリープ試験を行うことができると共に、クリープ発生時に静止輪に作用するトルク値を定量的に把握することができる。
【0012】
(2) 静止輪と、複数の転動体を介して前記静止輪に対し回転自在に配置された回転輪と、を具備した転がり軸受の静止輪クリープ検出装置であって、
前記静止輪を嵌合固定された固定部材と、
前記回転輪を回転させる駆動手段と、
前記転がり軸受に荷重を負荷する荷重負荷手段と、
前記静止輪を連続して撮像する撮像手段と、
を備え、
前記撮像手段により撮像された連続画像から前記静止輪の回転速度を測定すること。
【0013】
上記した転がり軸受の静止輪クリープ試験装置によれば、荷重負荷手段により転がり軸受に荷重を負荷しながら転がり軸受の回転輪を回転させ、転がり軸受の静止輪を撮像手段によって連続的に撮像し、撮像された静止輪の連続画像から静止輪の回転速度を測定するので、クリープの発生を即座に検出して、静止輪を嵌合固定された固定部材を磨耗させることなく短時間に且つ安価にクリープ試験を行うことができると共に、クリープ発生時に静止輪の回転速度を定量的に把握することができる。
【0014】
(3) 上記(1)または(2)に記載の転がり軸受の静止輪クリープ試験装置において、
前記固定部材の温度を制御する温度制御手段を備えたこと。
【0015】
上記構成の転がり軸受の静止輪クリープ試験装置によれば、静止輪を嵌合固定される固定部材の温度を温度制御手段により制御し、種々の温度環境下(例えば、一定温度、高温・低温環境など)における静止輪クリープ発生時の転がり軸受の諸特性を定量的に測定することができ、また、温度変化によるクリープの発生も定量的に測定することができる。
【0016】
また、本発明に係る転がり軸受の静止輪クリープ試験方法は、下記(4)および(5)を特徴としている。
【0017】
(4) 静止輪と、複数の転動体を介して前記静止輪に対し回転自在に配置された回転輪と、を具備した転がり軸受の静止輪クリープ試験方法であって、
ロードセルと、前記静止輪のクリープに伴って円周方向に変位するように該静止輪に固定され、且つ前記ロードセルに接続された従動子と、により前記静止輪に作用するトルクを測定すること。
【0018】
上記した転がり軸受の静止輪クリープ試験方法によれば、転がり軸受の静止輪にクリープが発生したときに、静止輪と共に円周方向に変位する従動子と、従動子に接続されたロードセルとによって、静止輪に作用する回転トルクのトルク値を測定するので、クリープの発生を即座に検出して、静止輪を嵌合固定された固定部材を磨耗させることなく短時間に且つ安価にクリープ試験を行うことができると共に、クリープ発生時に静止輪に作用するトルク値を定量的に把握することができる。
【0019】
(5) 静止輪と、複数の転動体を介して前記静止輪に対し回転自在に配置された回転輪と、を具備した転がり軸受の静止輪クリープ試験方法であって、
撮像手段により前記静止輪を連続して撮像し、
前記撮像手段により撮像された連続画像から前記静止輪の回転速度を測定すること。
【0020】
上記した転がり軸受の静止輪クリープ試験方法によれば、転がり軸受の静止輪を撮像手段によって連続的に撮像し、撮像された静止輪の連続画像から静止輪の回転速度を測定するので、クリープの発生を即座に検出して、静止輪を嵌合固定された固定部材を磨耗させることなく短時間に且つ安価にクリープ試験を行うことができると共に、クリープ発生時に静止輪の回転速度を定量的に把握することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の転がり軸受の静止輪クリープ試験装置および試験方法によれば、転がり軸受のクリープ試験を短時間且つ安価に行うことができると共に、静止輪クリープ発生時の転がり軸受の諸特性を定量的に測定することができる。これにより得られたデータから、転がり軸受の諸元や使用条件などの各種条件とクリープ発生時に静止輪に作用するトルクや静止輪の回転速度との関係を解析することにより、有効なクリープ防止対策の検討が可能となる。
【0022】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための最良の形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明に係る好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0024】
図1は本発明の一実施形態である内輪回転型転がり軸受の静止輪クリープ試験装置の正面図、図2は図1におけるII−II矢視縦断面図である。
【0025】
図1及び図2に示されるように、転がり軸受の静止輪クリープ試験装置(以後、単に静止輪クリープ試験装置と呼ぶ。)10は、ベースハウジング11と、不図示のモータに接続されて駆動手段を構成する回転軸12と、荷重負荷手段13と、ロードセル14と、従動子であるトルクバー15と、撮像手段であるビデオカメラ16と、を備えている。
【0026】
また、静止輪クリープ試験装置10には、クリープ試験に供される供試転がり軸受17と、供試転がり軸受17と同一の回転軸12に装着されたサポート軸受18、19とが組み込まれている。クリープ試験に供される転がり軸受17は、外輪40と、内輪41と、外輪40と内輪41との間に周方向に転動自在に配設された複数の転動体である玉42とから構成された、例えば、呼び番号6206(内径30mm、外径62mm、幅16mm)の深溝玉軸受である。また、サポート軸受18、19は、例えば、呼び番号6307の深溝玉軸受である。
【0027】
ベースハウジング11は、高い剛性を有する鋼材から略直方体形状に形成され、内部に軸受室20が設けられている。ベースハウジング11の前方壁および後方壁には、同一軸線上に整列するように形成された円形の挿通孔が穿設されており、この挿通孔に、略円盤状の前取付枠21および後取付枠22が嵌合して固定されている。
【0028】
前取付枠21および後取付枠22には、ベースハウジング11に固定された状態において同一軸線上に整列するように形成された円形の取付孔21a、22aがそれぞれ穿設されており、ハウジング取付孔21a、22aには、アルミニウムや鉄から略円筒状に形成された固定部材である前ハウジング23および後ハウジング24が嵌合し且つ交換可能に取り付けられている。
【0029】
そして、前ハウジング23は一端部を前取付枠21の前方端面より軸方向に突出させて配置されており、該一端部の内周面23aには供試転がり軸受17の静止輪である外輪40が嵌合して固定されている。供試転がり軸受17の内輪41は回転軸12の一端部に外嵌して固定されている。後ハウジング24の内周面24aにはサポート軸受18の外輪43が嵌合して固定されおり、また、サポート軸受18の内輪44は回転軸12に外嵌して固定されている。回転軸12は、供試転がり軸受17およびサポート軸受18により回動自在に支持されており、回転軸12の一端部(供試転がり軸受17が固定された端部とは他方の端部)12aは、ベースハウジング11から突出して配設され、例えばモータなどの駆動装置(図示せず)に連結されて、供試転がり軸受17を回転させる駆動手段を構成している。
【0030】
回転軸12において、供試転がり軸受17とサポート軸受18との中間部には、複列のサポート軸受19の内輪が外嵌して固定されている。サポート軸受19の外輪には、円環状の荷重受け部材38が外嵌しており、荷重受け部材38は、後述する荷重負荷手段13の押圧棹37に接触している。
【0031】
前ハウジング23の前記一端部(即ち、内周面23aに供試転がり軸受17の外輪40を嵌合固定された端部)の周壁には、連通孔26が円周方向に所定の幅を持って水平に穿設されており、この連通孔26を通して、棒状のトルクバー15が、外輪40の軸線に向けて水平に且つ半径方向に沿って配置され、その先端部を外輪40の外周面に固定されている。
【0032】
そして、トルクバー15の基端部の鉛直上方には、ベースハウジング11に固定されてロードセル14が配置されており、トルクバー15の前記基端部とロードセル14とはワイヤなどにより接続されている。
【0033】
ロードセル14は、作用する荷重を荷重の大きさに比例した大きさの電気信号(電圧値或いは電流値)に変換し、信号線52aを介して演算装置51に出力する。尚、ロードセル14は、供試転がり軸受17の静止輪である外輪40が固定された前ハウジング23と実質的に一体であるベースハウジング11に固定されていることが、静止輪クリープ試験のために重要である。
【0034】
荷重負荷手段13は、ベースハウジング11の側部に隣接して配設されており、内部にバネを収納した押圧子30と、てこを用いて押圧子30の付勢力を増幅する増幅機構と、押圧棹37とにより構成されている。
【0035】
前記増幅機構は、第1のてこ31と、第2のてこ34とを備えている。第1のてこ31は一端部を押圧子30により付勢されると共に、他端部に設けられた支点32により該支点32を中心に揺動可能に支持されている。第1のてこ31の中間部には自在継ぎ手33が設けられており、第2のてこ32の一端部に連結されている。第2のてこ34は、自在継ぎ手33に連結された一端部とは他方の端部に設けられた支点35により該支点35を中心に揺動可能に支持されている。第2のてこ34の中間部には、負荷荷重測定用ロードセル36を介して押圧棹37が接続されている。
【0036】
押圧棹37は、ベースハウジング11の側壁25に設けられた挿通孔25aに挿通され、その先端部は、回転軸12の略中間部にサポート軸受19を介して配置された荷重受け部材38に接続されている。押圧子30の付勢力は、自在継ぎ手33を介して、第1のてこ31および第2のてこ32により増幅されて押圧棹37に伝達され、そして、荷重受け部材38および回転軸12を介して供試転がり軸受17にラジアル荷重として負荷される。
【0037】
尚、押圧棹37により荷重受け部材38に負荷される荷重は負荷荷重測定用ロードセル36により測定される。荷重負荷手段13を、バネおよびてこを用いた増幅機構を備えた構成とすることにより、油圧式などと比較して装置をコンパクトに構成することができ、あらゆる場所で測定することができる。
【0038】
前ハウジング23の前方の開口端部(図2において左側面)には、透明ガラスや透明アクリル樹脂などからなる透視板27が取り付けられており、透視板27を通して外部から軸受室20内の、少なくとも供試転がり軸受17の外輪40および前ハウジング23の内周面23aを視認可能となっている。
【0039】
尚、透視板27は、供試転がり軸受17に供給された潤滑剤が、供試転がり軸受17の回転に伴って周囲に飛散して周辺環境を汚染するのを防止することを主目的としており、供試転がり軸受17がグリース潤滑されたシール付き軸受などのように潤滑剤による周辺環境汚染の虞がない場合には省略してもよい。
【0040】
ビデオカメラ16は、透視板27に対向して配置され、透視板27を介して軸受室20内の少なくとも供試転がり軸受17の外輪40を、時間的に連続してまたは所定の時間毎に断続して撮像し(即ち、被写体の光学像を電気信号に変換し)、信号線52bを介して演算装置51に出力する。
【0041】
また、前ハウジング23には温度制御手段であるヒータ装置(図示せず)が組み込まれており、前ハウジング23の温度を制御可能とされている。これにより、供試転がり軸受17の運転により前ハウジング23の温度が上昇して定常状態に達したときの状態を、短時間で且つ容易に再現し、信頼性の高いクリープ試験を実施することを可能としている。
【0042】
演算装置51は、周知のCPU(即ち、Central Processing Unit)、ROM(即ち、Read Only Memory)、RAM(Random−Access Memory)、ハードディスク、等(いずれも不図示)から構成され、ロードセル14およびビデオカメラ16から出力された電気信号を記録し、もしくはROMなどに記憶された制御プログラムに基づいて、前記電気信号をもとに、外輪40のクリープ発生時において外輪40に作用するトルク値、外輪40の回転速度などを演算し、また各種解析を行う。
【0043】
次に、上述した転がり軸受の静止輪クリープ試験装置10の動作、即ち試験方法を説明する。
【0044】
転がり軸受の静止輪クリープ検出装置10において、荷重負荷手段13の押圧子30に収納されたバネを所定の付勢力に設定し、前記増幅機構により所定の倍率で増幅した付勢力において押圧棹37により荷重受け部材38を押圧し、供試転がり軸受17に荷重を負荷する。また、ヒータ装置により前ハウジング23を所定の温度に加熱する。
【0045】
回転軸12をモータにより図2矢印B方向に回転させ、供試転がり軸受17の内輪41を同方向に回転させる。玉42を介して内輪41から外輪40に伝達される回転トルクが、前ハウジング23と外輪40との嵌合力を上回ると、前ハウジング23に対して外輪40が相対的に図1矢印C方向に回転し、外輪40のクリープが発生する。
【0046】
外輪40の回転に伴い、トルクバー15が同方向に回転し、トルクバー15の前記基端部が円周方向に変位する。トルクバー15の前記基端部は、外輪40に作用するトルクに応じた引張荷重をもってロードセル14に接続されたワイヤ50を引張り、ロードセル14に荷重を伝達する。ロードセル14が、伝達された荷重をその大きさに比例した電気信号に変換し、信号線52aを介して演算装置51に出力する。
【0047】
また、ビデオカメラ16が、透視板27を通して供試転がり軸受17の外輪40および前ハウジング23を時間的に連続的して、または所定の時間毎に断続して撮像し、信号線52bを介して演算装置51に出力する。
【0048】
演算装置51が、ロードセル14およびビデオカメラ16から出力された電気信号を記録し、もしくはROMなどに記憶された制御プログラムに基づいて、前記電気信号をもとに、外輪40のクリープ発生時において外輪40に作用するトルク値、外輪40の回転速度を演算する。
【0049】
これにより、供試転がり軸受17のクリープ試験が短時間且つ安価に行われると共に、供試転がり軸受17の静止輪である外輪40のクリープ発生時における外輪40に作用するトルク値、外輪40の回転速度が定量的に測定される。
【0050】
上述した転がり軸受の静止輪クリープ試験装置および試験方法によれば、荷重負荷手段13により供試転がり軸受17に荷重を負荷しながら供試転がり軸受17の回転輪である内輪41を回転させ、供試転がり軸受17の静止輪である外輪40にクリープが発生したときに、外輪40と共に円周方向に変位する従動子であるトルクバー15と、トルクバー15にワイヤ50を介して接続されたロードセル14とによって、外輪40に作用する回転トルクのトルク値を測定するので、クリープの発生を即座に検出することができ、外輪40を嵌合固定された固定部材である前ハウジング23を磨耗させることなく短時間に且つ安価にクリープ試験を行うことができると共に、クリープ発生時に外輪40に作用するトルク値を定量的に把握することができる。
【0051】
また、前ハウジング23は交換可能にベースハウジング11に取り付けられているので、外輪40のクリープにより磨耗した際にも、前ハウジング23を交換するだけでよく、よって安価にクリープ試験を行うことができる。
【0052】
また、荷重負荷手段13により供試転がり軸受17に荷重を負荷しながら供試転がり軸受17の回転輪である内輪41を回転させ、供試転がり軸受17の静止輪である外輪40を撮像手段であるビデオカメラ16によって連続的に撮像し、撮像された外輪40の連続画像から外輪40の回転速度を測定するので、クリープの発生を即座に検出して、外輪40を嵌合固定された固定部材である前ハウジング23を磨耗させることなく短時間に且つ安価にクリープ試験を行うことができると共に、クリープ発生時に外輪40の回転速度を定量的に把握することができる。
【0053】
尚、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、前述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0054】
例えば、上述した実施形態では、転がり軸受の静止輪クリープ試験装置は、内輪回転型転がり軸受の静止輪クリープ試験装置として説明したが、これに限定されるものではなく、外輪回転型転がり軸受の静止輪クリープ試験装置としてもよく、この場合でも同様の効果を奏する。
【0055】
また、従動子であるトルクバー15は供試転がり軸受17の外輪40の外周面に固定されるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、即ち静止輪クリープ発生時に静止輪と共に円周方向に変位すればよく、内輪回転型転がり軸受の場合は外輪の軸方向端面、外輪回転型転がり軸受の場合は内輪の軸方向端面に固定されてもよい。
【0056】
また、供試転がり軸受17を回転させる駆動手段を、回転軸12およびモータにより構成したものとして説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、モータの回転軸と回転軸12との間に、歯車列やベルトなどの増速機構を介在させてもよい。また、モータの替わりに、作業者の手や脚などの人力によって回転軸12を回転させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態である転がり軸受の静止輪クリープ試験装置の正面図である。
【図2】図1におけるII−II矢視縦断面図である。
【符号の説明】
【0058】
10 転がり軸受の静止輪クリープ試験装置
11 ベースハウジング
12 回転軸(駆動手段)
13 荷重負荷手段
14 ロードセル
15 トルクバー(従動子)
16 ビデオカメラ(撮像手段)
17 供試転がり軸受
23 前ハウジング(固定部材)
40 外輪(静止輪)
41 内輪(回転輪)
42 玉(転動体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止輪と、複数の転動体を介して前記静止輪に対し回転自在に配置された回転輪と、を備えた転がり軸受の静止輪クリープ試験装置であって、
前記静止輪を嵌合固定された固定部材と、
前記回転輪を回転させる駆動手段と、
前記転がり軸受に荷重を負荷する荷重負荷手段と、
ロードセルと、
前記静止輪のクリープに伴って円周方向に変位するように該静止輪に固定され、且つ前記ロードセルに接続された従動子と、
を具備し、
前記静止輪に作用するトルクを測定することを特徴とする転がり軸受の静止輪クリープ試験装置。
【請求項2】
静止輪と、複数の転動体を介して前記静止輪に対し回転自在に配置された回転輪と、を具備した転がり軸受の静止輪クリープ試験装置であって、
前記静止輪を嵌合固定された固定部材と、
前記回転輪を回転させる駆動手段と、
前記転がり軸受に荷重を負荷する荷重負荷手段と、
前記静止輪を連続して撮像する撮像手段と、
を備え、
前記撮像手段により撮像された連続画像から前記静止輪の回転速度を測定することを特徴とする転がり軸受の静止輪クリープ試験装置。
【請求項3】
前記固定部材の温度を制御する温度制御手段を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の転がり軸受の静止輪クリープ試験装置。
【請求項4】
静止輪と、複数の転動体を介して前記静止輪に対し回転自在に配置された回転輪と、を具備した転がり軸受の静止輪クリープ試験方法であって、
ロードセルと、前記静止輪のクリープに伴って円周方向に変位するように該静止輪に固定され、且つ前記ロードセルに接続された従動子と、により前記静止輪に作用するトルクを測定することを特徴とする転がり軸受の静止輪クリープ試験方法。
【請求項5】
静止輪と、複数の転動体を介して前記静止輪に対し回転自在に配置された回転輪と、を具備した転がり軸受の静止輪クリープ試験方法であって、
撮像手段により前記静止輪を連続して撮像し、
前記撮像手段により撮像された連続画像から前記静止輪の回転速度を測定することを特徴とする転がり軸受の静止輪クリープ試験方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−29788(P2006−29788A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204249(P2004−204249)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】