説明

転がり軸受

【課題】抜熱性を促進して高発熱化を防止することで高速回転特性を改善することができる転がり軸受を提供する。
【解決手段】内周面に外輪軌道12を有する外輪11と、外周面に内輪軌道14を有する内輪13と、外輪軌道12と内輪軌道14との間に転動自在に設けられた転動体15と、転動体15を転動自在に保持する保持器16と、を備え、保持器16と外輪11と間の空間への潤滑油供給を抑制する遮蔽板17を外輪11の軸方向端部の一方の側に具備し、且つ保持器16の側面が、遮蔽板17と僅かな隙間で近接し、保持器16は、少なくとも回転中に保持器16の内径面の遮蔽板17側が、反遮蔽板側に比べて小径である転がり軸受10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車用のオルタネータ、コンプレッサ用電磁クラッチ装置、プーリ支持装置、ウォータポンプ装置、電動モータ等の各種回転機械装置に組み込まれて、高速回転、高温環境下で使用される転がり軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受の潤滑方法として、高速運転には、ポンプ等で潤滑油を軸受内部へ供給する強制潤滑方式のような油潤滑が有利であることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
従来の転がり軸受の一例として、図7に示すように、合成樹脂製で冠型の保持器101の外径面と、外輪102の内径面とを近接させ、この保持器101を外輪102案内により転動自在に支持した転がり軸受100が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記特許文献1に開示された転がり軸受100では、自己潤滑性、低摩擦性の観点から金属製保持器を避け、合成樹脂製の保持器101を使い、高速回転時に保持器101が振動することに対処して玉案内を避けて外輪102案内とし、回転トルク増大防止のためにポケット形状として球面を避けて円筒形を採用している。
【0005】
また、従来の転がり軸受の他の一例として、図8に示すように、転動溝201、202を内輪203及び外輪204の幅方向B1の中心から長さLB1だけずらして設け、玉205と内輪203又は外輪204の側面との距離が大きい側の空間に収納できる程度に保持器206のポケット207と保持器206の端面との間のポケット底の肉厚を大きくすることで保持器206の耐久性を向上しようとした転がり軸受200が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、従来の転がり軸受の他の一例として、図9に示すように、外輪301及び内輪302の一対の軌道輪303,304のうち、少なくとも一方が、その一端若しくは両端が他方の軌道輪の幅寸法よりも所定量だけ突出し、保持器305が、一対の軌道輪303,304に沿って所定量だけ肉厚化され、密封板306が、突出した一端若しくは両端と他方の軌道輪との間に亘って設けられることで、高速回転時の保持器305の変形抑制を行うようにした転がり軸受300が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
また、従来の転がり軸受の他の一例として、図10に示すように、内輪401と外輪402との間から供給されたオイルが排出される側の内輪401の肩部403に、オイル排出端面側に向かってその径が大きくなるテーパを形成した転がり軸受400が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【0008】
【非特許文献1】綿林英一著 財団法人 日本規格協会 1999年02月20日発行 転がり軸受マニュアル 185頁
【特許文献1】特開2002−295480号公報(図1)
【特許文献2】実開平4−105630号公報(図1)
【特許文献3】特開2006−226438号公報(図1)
【特許文献4】特開平11−201173号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、電気自動車のモータ等のように高速回転が要求される軸受の使用環境下では、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4のいずれの技術も、高速回転時の回転トルクや発熱の増大という点に、さらなる改善の余地がある。特に、発熱の増大は、自己潤滑性や低摩擦性等の観点から好適な樹脂製の保持器にとって強度低下をもたらす大きな要因となるために改善の必要性が大きい。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、抜熱性を促進して高発熱化を防止することで高速回転特性を改善することができる転がり軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記目的は、下記構成により達成される。
(1) 内周面に外輪軌道を有する外輪と、外周面に内輪軌道を有する内輪と、前記外輪軌道と前記内輪軌道との間に転動自在に設けられた転動体と、前記転動体を転動自在に保持する保持器と、を備えた転がり軸受であって、
前記保持器と前記外輪と間の空間への潤滑油供給を抑制する遮蔽板を前記外輪の軸方向端部の一方の側に具備し、且つ前記保持器の側面が、前記遮蔽板と僅かな隙間で近接し、前記保持器は、内径面の前記遮蔽板側の端部が、少なくとも回転中に反遮蔽板側の端部に比べて小径であり、前記内径面が軸方向に対して傾斜していることを特徴とする転がり軸受。
【0012】
(2) 前記内輪の肩面のうち、前記遮蔽板側の肩面が、前記保持器の回転時における内径面の傾斜と同じ方向に傾斜していることを特徴とする前記(1)記載の転がり軸受。
【0013】
(3) 前記外輪軌道及び前記内輪軌道が、前記遮蔽板から離れる方向に軸受軸方向中心からオフセットされていることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の転がり軸受。
【0014】
前記(1)の構成によれば、遮蔽板が外輪の側面の一方の側に具備され、保持器の側面が、遮蔽板と僅かな隙間で近接することで、遮蔽板と保持器との隙間に潤滑油が流入することを抑制でき、保持器と外輪と間の空間への潤滑油供給を抑制することができる。軸受回転時の回転中心に近い方が、モーメントが小さいために、回転中心から遠い軸受内空間への潤滑油供給を遮蔽板により抑制することで、潤滑油による攪拌抵抗のモーメントが小さくなり、軸受の回転トルクを低減することができる。ここで、遮蔽板は、外輪に圧入等で固定されてもよいし、別体として単に外輪に密着させてもよい。そして、遮蔽板は、樹脂製の保持器との摩擦力を低減するために、樹脂製とするよりも金属製とすることが好ましい。
【0015】
射出成形できる樹脂製の保持器に、潤滑油の排出性を向上させるためのポンプ作用を持たせるために、樹脂製の保持器は、少なくとも回転中は、遮蔽板に近い方から遠い方に向かって内径が大きい。つまり、静止時には、保持器の内径が遮蔽板からの距離に関係なく同一であっても、回転中、特に発熱が問題となる高速回転中に遠心力により保持器が弾性変形し、その内径が遮蔽板に近い方から遠い方に向かって大きくなればよい。したがって、抜熱性を促進して高発熱化を防止することで高速回転特性を改善することができる。
【0016】
なお、遮蔽板の内径は、保持器の内径最小値と同程度にすることが好ましく、最大でも、転動体のPCD以下とする必要がある。また、軸受空間への潤滑油の吸排の方向が決まっている場合には、遮蔽板側から潤滑油が供給されるように転がり軸受を組み込むことが好ましい。
【0017】
前記(2)の構成によれば、内輪の肩面のうち、遮蔽板に近い方の肩面を、保持器の内径面と同じ方向に傾斜させることで、ポンプ作用を更に強化することができる。
【0018】
前記(3)の構成によれば、通常は、軸受幅は限定されるので、外輪軌道及び内輪軌道を、遮蔽板から離れる方向に軸受軸方向中心よりオフセットすることで、ポンプ作用を更に強化することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る転がり軸受によれば、抜熱性を促進して高発熱化を防止することができ、高速回転特性を改善することができる転がり軸受を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図を参照して本発明の複数の好適な実施形態を説明する。
【0021】
(第1実施形態)
図1〜図4は本発明に係る転がり軸受の第1実施形態であって、図1は本発明の第1実施形態に係る転がり軸受の半断面図、図2は図1の転がり軸受に適用される保持器の一部破断外観斜視図、図3は図1の転がり軸受における保持器の弾性変形前の半断面図、図4は図1の転がり軸受における保持器の弾性変形時の半断面図である。
【0022】
図1に示すように、本発明の第1実施形態である転がり軸受10は、内周面に外輪軌道12を有する外輪11と、外周面に内輪軌道14を有する内輪13と、外輪軌道12と内輪軌道14との間に転動自在に設けられた転動体である玉15と、玉15を転動自在に保持する保持器16と、遮蔽板17と、を備える深溝玉軸受である。
【0023】
保持器16は、射出成形によって作成された樹脂製の冠型保持器であって、円周方向に複数のポケット18を有し、外径面の遮蔽板17側に外輪11に向けて突出した突部19を有する。
【0024】
遮蔽板17は、樹脂製の保持器16との摩擦力を低減するために、樹脂製ではなく、例えばSPCCをプレス成形加工した金属製とされている。遮蔽板17は、外輪11の内周面の軸方向端部の一方の側に形成されている遮蔽板取付用凹部20に加締めにより固定されることで、保持器16と外輪11と間の空間への潤滑油供給を抑制し、潤滑油の主たる流路を回転中心に近い保持器16の内径側として、攪拌抵抗を減らして低発熱化を図っている。なお、遮蔽板17は、外輪11に圧入等で固定されてもよいし、別体として単に外輪11に密着させてもよい。
【0025】
ここで、遮蔽板17の内径寸法R1は、保持器16の最小内径寸法R2よりも大きく、玉15のPCD寸法R3よりも小さい(R2<R1<R3)。
【0026】
また、遮蔽板17と保持器16の端面との距離(例えば0.5mm)D1は、保持器16の内径面と内輪13の外径面との最小距離D2よりも小さい(D1<D2)。これにより、遮蔽板17と内輪13との隙間から軸受空間内に流入した潤滑油は、遮蔽板17と保持器16との間よりも、保持器16の内径面と内輪13の外径面との間に多く流れ易くなり、最短距離で軸受空間を貫通する割合を増やすことができる。また、潤滑油は軸方向に流れるので、軸受空間内に潤滑油が溜まって攪拌抵抗を増大させるようにならない。
【0027】
ここで、遮蔽板17は、転がり軸受10の回転中に遠心力により変形した保持器16の端面と接触しても構わないが、両者が接触すると、回転トルクが増加するので好ましくない。したがって、回転トルクの増加を防止するためには、遮蔽板17と保持器16が接触しないことが好ましい。
【0028】
図2に示すように、保持器16は、ポケット18の形状が、軸の中心に向かう円筒形状である。これにより、高速回転時に遠心力が働いて保持器16が外径側に開いたときに、ポケット18の内径側と玉15とが接触することがなく、隙間が一定に保たれるために磨耗が防止される。保持器16は、潤滑油の排出性を向上させるためのポンプ作用を持たせるために、少なくとも回転中は、遮蔽板17に近い方から遠い方に向かって内径が大きくなる。つまり、静止時には、保持器16の内径が遮蔽板17からの距離に関係なく同一であっても、回転中、特に発熱が問題となる高速回転中に遠心力により保持器16の開口端部側が弾性変形し、その内径が遮蔽板17から離れる方向に向かって大きくなればよい。
【0029】
保持器16の材料としては、軽量であり、摩擦抵抗が小さい樹脂材が好ましく、46ナイロンや66ナイロン等のポリアミド系樹脂や、ポリブチレンテレフタレートやポリフェニレンサルサイド(PPS)やポリアミドイミド(PAI)や、熱可塑性ポリイミドや、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)や、ポリエーテルニトリル(PEN)等が挙げられる。また、上記した樹脂に、10〜50wt%の繊維状充填材(例えば、ガラス繊維や炭素繊維等)を適宜添加することにより、保持器16の剛性及び寸法精度の向上させることができる。
【0030】
次に、図3及び図4を参照して、転がり軸受10のポンプ作用について説明する。
【0031】
図3に示すように、転がり軸受10は、遮蔽板17側から潤滑油が流入されるに際し、静止時に、保持器16の流入側内径寸法R6と、反流入側内径寸法R7とがほぼ等しい。
【0032】
図4に示すように、転がり軸受10は、回転時に、保持器16が遠心力によって外輪11側に弾性変形するために、保持器16は、反遮蔽板17側の内径寸法R8が遮蔽板17側の内径寸法R9よりも大きくなる(R9<R8)。これにより、保持器16が、少なくとも回転中に内径面の遮蔽板17側が、反遮蔽板17側に比べて小径となり、保持器16の内径面により傾斜した潤滑油の流路が、保持器16の弾性変形によって形成される。保持器16の内径面が、軸方向に対する傾斜角度が5度程度のテーパ面21になることにより、反遮蔽板17側に流路が開くこととなってポンプ作用が効率良く行われる。
【0033】
以上説明したように、第1実施形態の転がり軸受10によれば、回転中心から遠い軸受内空間への潤滑油供給を抑制することで、回転中心に近い方に潤滑油が多く供給される。そして、回転中心寄りに供給された潤滑油は、潤滑油による攪拌抵抗のモーメントが小さいために、軸受の回転トルクを低減することができる。そのため、遮蔽板17は、保持器16と外輪11と間の空間への潤滑油供給を抑制するように、外輪11の軸方向端部の一方の側に具備される。また、保持器16の側面が、遮蔽板17と僅かな隙間で近接することで、遮蔽板17と保持器16との隙間に潤滑油が流入することを抑制できる。
【0034】
また、保持器16は、少なくとも回転中は、遮蔽板17から離れる方向に向かって内径が大きくなる。静止時には、保持器16の内径が遮蔽板17からの距離に関係なく同一であっても、回転中、特に発熱が問題となる高速回転中に遠心力により保持器16が弾性変形し、その内径が遮蔽板17から離れる方向に向かって大きくなることで、潤滑油の排出性を向上させるためのポンプ作用を持たせることができる。したがって、抜熱性を促進して高発熱化を防止することで高速回転特性を改善することができる。
【0035】
(第2実施形態)
次に、図5を参照して、本発明の転がり軸受に係る第2実施形態について説明する。図5は本発明に係る第2実施形態の転がり軸受の半断面図である。なお、以下の各実施形態において、上述した第1実施形態と重複する構成要素や機能的に同様な構成要素については、図中に同一符号あるいは相当符号を付することによって説明を簡略化あるいは省略する。
【0036】
図5に示すように、本発明の第2実施形態である転がり軸受30の保持器31は、内径面に、軸方向に対する傾斜角度が5度程度のテーパ面32が形成されている。
【0037】
転がり軸受30は、遮蔽板17側から潤滑油が流入されるに際し、静止時に、保持器31の反流入側内径寸法R10が流入側内径寸法R11よりも大きくなる(R10<R11)。これにより、回転時にも、保持器31の反流入側内径寸法R10が流入側内径寸法R11よりも大きくなっていることで、保持器31の内径面の遮蔽板17側が、反遮蔽板17側に比べて小径となってポンプ作用が効率良く行われる。
【0038】
(第3実施形態)
次に、図6を参照して、本発明の転がり軸受に係る第3実施形態について説明する。図6は本発明に係る第3実施形態の転がり軸受の半断面図である。
【0039】
図6に示すように、本発明の第3実施形態である転がり軸受40は、ポケット18の底部が肉厚化されていて内径面にテーパ面42が形成された保持器41を備えている。更に、内輪13の肩面22,23のうち、遮蔽板17に近い方の肩面23に、保持器41のテーパ面(例えば5度)42と同じ方向に、例えば15度で傾斜させたテーパ面43が形成され、外輪軌道12及び内輪軌道14が、遮蔽板17から離れる方向に軸受軸方向中心位置Aより距離L1だけオフセットされている。
【0040】
第3実施形態の転がり軸受40によれば、内輪13の肩面22,23のうち、遮蔽板17に近い方の肩面23に、保持器41のテーパ面42と同じ方向に傾斜させたテーパ面43を有することで、傾斜した流路が長くなって、ポンプ機能を更に強化することができる。更に、通常は、軸受幅は限定されるが、外輪軌道12及び内輪軌道14を、遮蔽板17から離れる方向に軸受軸方向中心Aより距離L1だけオフセットさせることで、ポンプ機能を更に強化して潤滑油の排出性を向上させることができる。
【実施例】
【0041】
次に、本発明に係る転がり軸受の実施例について説明する。
【0042】
[発熱比較試験]
まず、第2実施形態及び第3実施形態に係る転がり軸受において、以下の試験を行った。
「実施例1」
〈仕様〉
遮蔽板と保持器側面との距離:0.5mm
保持器内径最小値(53.7mm)と内輪の肩部径(51.5mm)の差:2.2mm
保持器の案内形式:外輪案内(保持器に突部を有することで、遠心力で保持器が外輪側に開いた時に、外輪の外輪軌道と肩部の境界エッジに摺動しないようにしている。)
保持器幅3.6mm
保持器内径面(テーパ面)角度:5度
軸受名番:日本精工株式会社製単列深溝玉軸受6909
軸受PCD:56.5mm
遮蔽板:SPCCをプレス成形加工し、外輪端部に加締めて装着した。
遮蔽板内径:φ53.7mm
【0043】
「比較例1」
〈仕様〉
第2実施形態及び第3実施形態の転がり軸受に適用した保持器と同様の材料を用いて製作した冠型保持器を有する転がり軸受を用いた。
軸受名番:日本精工株式会社製単列深溝玉軸受6909
保持器材料:46ナイロン(ガラス繊維を25%充填)
玉のPCD:56.5mm
【0044】
〈試験条件〉
油量:0.8L/min
軸受入口油温度:85℃
回転数:27600rpm(dmN156万),30000rpm(dmN170万)
【0045】
なお、発熱温度は、軸受入口の油温度を図5に示す計測位置Bにおいて計測し、外輪温度を図5に示す計測位置Cにおいて計測し、発熱量(温度差)を比較した。試験結果を表1に示す。なお、カッコ内は実際の計測温度である。
【0046】
【表1】

【0047】
表1から明らかなように、実施例1は、比較例1に比べて、27600rpmにおいて発熱が約37%減少(19℃→12℃)し、30000rpmにおいては約30%減少(27℃→19℃)した。これにより、本発明の第1実施形態及び第2実施形態に係る転がり軸受が、抜熱性を促進して高発熱化を防止することで高速回転特性を改善できたことがわかる。
【0048】
次に、第3実施形態に係る転がり軸受において、以下の試験を行った。
【0049】
「実施例2」
〈仕様〉
軸受名番:日本精工株式会社製単列深溝玉軸受6909
保持器材料:46ナイロン(ガラス繊維を25%充填)
玉のPCD:56.5mm
〈試験条件〉
油量:0.8L/min
軸受入口油温度:85℃
回転数:27600rpm(dmN156万),30000rpm(dmN170万)
【0050】
〈保持器の仕様〉
玉オフセット量:1.0mm
保持器幅:3.6mm
保持器内径面(テーパ面)角度:5度
保持器内径最小値(52.5mm)と内輪の肩部径(48.5mm)の差:4.0mm
保持器の案内型式:外輪案内
遮蔽板側内輪肩部テーパ(テーパ面)角度:15度
遮蔽板と保持器側面との距離0.5mm
遮蔽板:SPCCをプレス成形加工し、外輪端部に加締めて装着した。
遮蔽板内径:φ53.7mm
【0051】
なお、発熱温度は、実施例1と同様に、軸受入口油温度を図6に示す計測位置Bにおいて、外輪温度を図6に示す計測位置Cにおいて計測し、温度差(発熱量)を比較した。比較例1は実施例1の比較例1と同じである。試験結果を表1に示す。
【0052】
表1から明らかなように、実施例2は、比較例1に比べて、27600rpmにおいて発熱が更に約33%減少(12℃→8℃)し、30000rpmにおいては約40%減少(19℃→13℃)した。これにより、実施例2のように、実施例1に加えて保持器内径側及び内輪の遮蔽板側にテーパ面を設けることで、ポンプ機能がさらに強化されたことにより、抜熱性を促進して高発熱化を防止し、高速回転特性を更に改善できたことがわかる。
【0053】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の第1実施形態に係る転がり軸受の半断面図である。
【図2】図1の転がり軸受に適用される保持器の一部破断外観斜視図である。
【図3】図1の転がり軸受における保持器の弾性変形前の半断面図である。
【図4】図1の転がり軸受における保持器の弾性変形時の半断面図である。
【図5】本発明に係る第2実施形態の転がり軸受の半断面図である。
【図6】本発明に係る第3実施形態の転がり軸受の半断面図である。
【図7】特許文献1の転がり軸受の断面図である。
【図8】特許文献2の転がり軸受の断面図である。
【図9】特許文献3の転がり軸受の断面図である。
【図10】特許文献4の転がり軸受の断面図である。
【符号の説明】
【0055】
10 転がり軸受
11 外輪
12 外輪軌道
13 内輪
14 内輪軌道
15 玉(転動体)
16 保持器
17 遮蔽板
22 肩面
23 肩面
30 転がり軸受
31 保持器
40 転がり軸受
41 保持器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に外輪軌道を有する外輪と、外周面に内輪軌道を有する内輪と、前記外輪軌道と前記内輪軌道との間に転動自在に設けられた転動体と、前記転動体を転動自在に保持する保持器と、を備えた転がり軸受であって、
前記保持器と前記外輪と間の空間への潤滑油供給を抑制する遮蔽板を前記外輪の軸方向端部の一方の側に具備し、且つ前記保持器の側面が、前記遮蔽板と僅かな隙間で近接し、前記保持器は、内径面の前記遮蔽板側の端部が、少なくとも回転中に反遮蔽板側の端部に比べて小径であり、前記内径面が軸方向に対して傾斜していることを特徴とする転がり軸受。
【請求項2】
前記内輪の肩面のうち、前記遮蔽板側の肩面が、前記保持器の回転時における内径面の傾斜と同じ方向に傾斜していることを特徴とする請求項1記載の転がり軸受。
【請求項3】
前記外輪軌道及び前記内輪軌道が、前記遮蔽板から離れる方向に軸受軸方向中心からオフセットされていることを特徴とする請求項1又は2記載の転がり軸受。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−174603(P2009−174603A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12441(P2008−12441)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】