転写定着装置および画像形成装置
【課題】転写定着方式を採用し、転写定着部材上のトナー像および/または記録媒体の表面を転写定着の前に予め加熱するようにした転写定着装置において、転写定着部材の冷却を温度ムラ残留を解消して、常に良好な画像を得る。
【解決手段】転写定着部材と、この転写定着部材上のトナー像を加熱する加熱手段および/または記録媒体の表面を転写定着の前に予め加熱する記録媒体加熱手段と、を具備した転写定着装置において、ニップ部で転写定着した後の前記転写定着部材を冷却するための冷却幅を調節可能に構成された冷却手段と、記録媒体の紙幅、または印字画像データにより決まる印字画像幅のいずれかに基づいて前記転写定着部材の冷却幅を制御する冷却制御部を備える。
【解決手段】転写定着部材と、この転写定着部材上のトナー像を加熱する加熱手段および/または記録媒体の表面を転写定着の前に予め加熱する記録媒体加熱手段と、を具備した転写定着装置において、ニップ部で転写定着した後の前記転写定着部材を冷却するための冷却幅を調節可能に構成された冷却手段と、記録媒体の紙幅、または印字画像データにより決まる印字画像幅のいずれかに基づいて前記転写定着部材の冷却幅を制御する冷却制御部を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真式およびインクジェット式の複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関し、像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写定着させる転写定着装置およびこれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真式複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置においては、像担持体から記録媒体に転写された未定着トナー画像を加熱定着することにより複写物や記録物を得ることができる。定着に際しては、未定着トナー画像を担持している記録媒体を狭持加圧しながら未定着画像を加熱することにより未定着画像中に含まれる現像剤、特にトナーの溶融軟化及び記録媒体への浸透を行わせることにより記録媒体にトナーを定着することが行われる。そこで、像担持体上に形成した未定着画像を記録媒体に転写及び定着を一体で行う転写定着装置が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
このうち、特許文献1に開示のものは、中間転写体から転写材に2次転写定着を行うタイプのもので、特許文献2に開示のものは、中間転写体から転写定着体に2次転写定着した後、転写定着体から転写材に3次転写定着するタイプのものである。なお、これらの技術において、画像を構成する部材としては、トナーと呼ばれる樹脂を主体とした帯電性の粉体を利用するのが一般的である。
これらのトナーは、省エネルギ−化、複写機等の装置の小型化が検討される中で、よりホットオフセット発生温度が高く(耐ホットオフセット性が良好で)、かつ定着温度が低い(低温定着性が良好な)トナーが求められている。特に、転写定着は定着温度(ベルト温度)が上昇すると、転写定着ベルトに接触しているドラム、更には現像部にも熱が伝わり、ベルト変形による画像不具合、及びトナーの固化等の不具合がより一層発生しやすくなるため、より低温定着性のトナーが必要である。
【0003】
また、従来より、トナー中には離型性を付与するためにワックスが添加されている。一般にワックスなどの離型剤は、低融点のものが多く、染み出しによる現像部材の汚損を招いたり、溶融時に樹脂との間に界面を形成するために濁りが生じて色再現性を損なうことがある。また、樹脂との相溶性に問題があり、添加量が増すに従い現像性が悪化し、キャリアとのスペントも起こるので帯電量不足、帯電不安定が発生するため使用しないか、もしくは使用量を低減できることが好ましい。
従来の電子写真方式による画像形成装置において、画像品質を低下させやすいのは転写材への転写工程である。転写材には、主に紙が用いられるが、紙といっても普通紙から厚紙までさまざまな厚みのものがあり、表面性状も上質なものから粗いものまでさまざまである。特に、表面性の粗い紙においては、中間転写体が紙の表面性状に追従できずに微小ギャップを形成してしまうため、微小ギャップ部分で異常放電が発生し、画像が正常に転写されずに、全体としてボソボソの画像になりやすいという不具合がある。
【0004】
この点に関し、前掲の特許文献1あるいは特許文献2に記載されている如き、転写定着工程を有する画像形成装置では、転写と定着を同時に行っているため、転写工程と定着工程を別々に行う画像形成装置(以下、通常装置と言う)に比べて、一般に表面性の粗い紙を使用しても画像品質の低下が起こり難いという利点を備えている。これは、転写と同時に熱を加えるため、熱によりトナーが軟化・溶融して粘弾性を帯びたブロック状の塊になるため、紙の微小ギャップ部分の画像も塊として転写されやすいためである。このような利点から、転写定着手段を有する画像形成装置は、高画質達成に適した方式といえる。
さらに、転写定着方式の利点を挙げると、通常の電子写真方式と異なり、転写材には粉体が乗っていないため転写定着部直前まで、通紙方向を小曲率に規定可能な搬送ガイドが設置可能であり、薄紙から厚紙まで紙種によらず安定した搬送が可能となる。ちなみに、通常の電子写真では定着前で転写材には粉体が乗っているため、搬送ガイドは粉体をこすることが無い様に隙間を空けてしか通紙方向を案内できない。
この隙間の中で紙が不安定になることで通紙詰まりが発生する場合が多い。転写定着方式では通紙方向の自由度が高い結果、紙種対応性が広くまた通紙詰まりの発生率が極端に少ない画像形成装置が実現可能となる。
【0005】
ところで、上述の転写定着方式において、転写定着の熱効率を最大とするための観点では、紙とトナーを融着する面つまり紙とトナーとの界面の温度を高めることが必要である。このために、トナーを十分に加熱し軟化した状態で紙に圧接させる方式が既に提案されている。このような装置は、例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5などに開示がある。
しかしながら、この既知方法では、トナーを加熱するだけではなく、転写定着部材を加熱する必要があるため、転写定着部材が例えば300μmと厚い場合、4連タンデムによる作像方式など転写定着部材の周長が長い場合では必ずしも熱効率がよくない。なお、上記従来の転写定着装置は、転写定着部材の加熱工程に加えて、作像部の熱的損傷を低減するために転写・定着工程後の転写定着部材を冷却する冷却工程がおこなわれている場合が多い。
特に冷却が必要となることで、同一部材を一方で加熱し、一方で冷却することはエネルギ−の観点から非常に非効率である。さらに、加熱と冷却のサイクルを繰り返すことでエネルギ−的に無駄があるだけでなく、常態として繰り返されるヒ−トサイクルによる転写定着部材の耐久性と言う点でも不利である。
【0006】
この他、特許文献6、特許文献7では、転写定着部材と転写材および、加圧部材をそれぞれ加熱することで転写定着する方法が開示されている。この方法では転写定着部材の温度をトナー溶融温度以下に加熱し、転写材をトナー溶融温度以上に加熱することで、転写定着部材側にあまり熱を持たせない構成を採っている。
しかしながら、この方法では転写材を表面裏面とも加熱しており、紙を非画像面である裏側まで予熱することは、従来転写定着においても行われているが、これは明らかに定着に寄与しない紙裏まで暖めることでエネルギ−を無駄使いしている。また、両面印刷時の第1面目画像不良を引き起こしてしまう慮もある。エネルギ−的に非効率だけでなく、特に、両面印刷の第2面目印刷時に第1面目の画像(紙裏面)が再溶融し、画像劣化につながる。また転写定着後も高温の転写材が転写定着部材とともに搬送され、高温の転写材が長時間転写定着部材と接触し、ヒ−トサイクルによる転写定着部材の耐久性の面でも不利である。
【0007】
以上の点を考慮して、より熱効率が良い転写定着方式として、トナー接触直前の紙表面(転写面)のみを選択的に加熱し、紙裏に熱が伝わる前に転写定着するようにした紙加熱転写定着方式が既に提案されている。この片面(紙表面)のみを加熱する紙加熱転写定着に関しては、本出願人により特許文献8として紙を転写定着直前に選択的に加熱する方式が提案されている。転写定着の場合にはそれ以前の電子写真方式とは違って転写材にトナーが乗っていないので、上記紙加熱転写定着方式では転写材を加熱搬送する部材を狭く限定可能な場所に設置できる。このため、転写材表面を加熱する加熱部材を転写定着ニップ直前に設置し、転写材表面の温度低下が起こる前に転写定着ニップに送り込むことが可能である。これにより、特に厚紙などは無駄に紙裏面を加熱することなく定着することが可能になる。
【0008】
一般的に、紙を加熱する転写定着方式では転写定着部材を加熱する転写定着方式に比べて冷却に大きなエネルギーを必要としない。しかしながら、特許文献8のように紙を選択的に加熱するようにした転写定着方式においても、加熱された記録媒体が転写定着ベルトと接触し転写定着するため、転写定着ベルトは紙と接触した部分の温度が上昇してしまう。また、紙を選択的に加熱する転写定着方式においては、転写定着ベルトの紙と接触した部分のみが熱せられるから、紙幅に応じて転写定着ベルトが熱せられる幅も変わってくる。特に連続通紙を行った場合等には転写定着部材の加熱された記録媒体が接する部分と非通紙部分の温度差が顕著になってくる。
この転写定着部材の幅方向(記録媒体の搬送方向に直交する方向)の温度ムラは、次の作像プロセスに悪影響を与えて、画像品質を落としてしまう。具体的にはこのような温度ムラが残ったままであると、転写定着部材と接している感光体にも温度ムラが生じ、ひいては現像プロセス部品にも熱が伝わり、画像不具合、及びトナーの固化等の不具合が発生しやすくなってしまう。従来の転写定着装置は、上述した転写定着部材の加熱工程に加えて、作像部の熱的損傷を低減するために転写・定着工程後の転写定着部材を冷却する冷却工程がおこなわれている場合が多いが、転写定着部材を均等に冷却しているため、冷却過程を経ても温度ムラの解消には繋がらなかった。
【特許文献1】特開平10−63121号公報
【特許文献2】特開2004−145260公報
【特許文献3】特開2003−91201公報
【特許文献4】特開平11−65330号公報
【特許文献5】特開2005−140994公報
【特許文献6】特公平3−63756号公報
【特許文献7】特公平3−63757号公報
【特許文献8】特開2005−37879公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記実情を考慮してなされたものであり、その目的は高画質達成に最適な画像形成手段である転写定着方式を採用し、転写定着部材上のトナー像および/または記録媒体の表面を転写定着の前に予め加熱するようにした転写定着装置において、転写定着部材の冷却を温度ムラが無くなるように効率的に行い、温度ムラ残留による不具合を解消して、良好な画像を常に得られる転写定着装置、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、記録媒体の転写定着面にトナー像を転写するとともに定着する転写定着装置であって、表面にトナー画像を担持させる転写定着部材と、前記転写定着部材上のトナー像を加熱する加熱手段および/または記録媒体の表面を転写定着の前に予め加熱する記録媒体加熱手段と、前記転写定着部材との間で記録媒体を加圧するニップ部を形成する加圧部材と、を具備した転写定着装置において、前記記録媒体を前記ニップ部で転写定着した後の前記転写定着部材を冷却するための、冷却幅を調節可能に構成された冷却手段と、記録媒体の紙幅、または印字画像データにより決まる印字画像幅のいずれかに基づいて前記転写定着部材の冷却幅を制御する冷却制御部と、を備えたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の転写定着装置において、記録媒体の幅を検知して用紙幅信号を出力する紙幅検知部を更に備え、前記冷却制御部は、前記紙幅検知部からの用紙幅信号または、印字画像データにより求めた印字画像幅信号のいずれかの信号に基づいて前記転写定着部材の冷却幅を制御することを特徴とする。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項1または2に記載の転写定着装置において、前記冷却手段は、コロナ放電によって発生したイオン風を利用して冷却するイオン風冷却装置であることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1または2に記載の転写定着装置において、前記冷却手段は、送風装置によって発生させた気体流を冷却に用いることを特徴とする。
また、請求項5の発明は、請求項3または4に記載の転写定着装置において、気体を冷却する熱交換器を備え、前記熱交換器によって冷却された気体流またはイオン風を前記転写定着部材の冷却に用いることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の転写定着装置において、前記転写定着装置組み込み装置本体の外側へ空気を吐き出すための排気手段を更に備えたことを特徴とする。
そして、請求項7の発明は、電子写真方式による画像形成装置であって、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の転写定着装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、転写定着部材の冷却を温度ムラが無くなるように効率的に行い、温度ムラ残留による不具合を解消して、常に良好な画像を常に得られる転写定着装置、画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。以下では、本発明の一例として画像形成装置であるタンデム型の電子写真式カラ−複写機に適応した実施形態を挙げ、図面に従って説明する。
図1は、本発明の実施形態である画像形成装置としての4連タンデム方式の電子写真式カラ−複写機の内部要部を示す側面図である。この装置では、高画質達成に最適な画像形成手段である転写定着方式を採用し、なおかつ、エネルギ−の効率の観点から紙とトナー像双方をそれぞれ加熱するようにしている。この種のカラー複写機は周知であるため、全体構成については詳細説明は省略する。
図1に基づいて本実施形態の4連タンデム方式カラ−複写機の構成及び動作の概要について説明する。カラ−複写機は、装置本体中央部に位置する画像形成部1Aと、該画像形成部1Aの下方に位置する給紙部1Bと、画像形成部1Aの上方に位置する図示しない画像読取部を有している。
本装置では線速300mm/sで作像が可能である。画像形成部1Aには、周回可能に張設されて水平方向に延びる転写面を提供する中間転写体としての転写定着ベルト2が配置されており、転写定着ベルト2の上面には、色分解色と補色関係にある色の画像それぞれを形成するための構成が設けられている。すなわち、補色関係にある色のトナー(イエロ−、マゼンタ、シアン、ブラック)によるトナー像を担持可能な像担持体としての感光体3Y、3M、3C、3Kが転写定着ベルト2の転写面部に沿って順に並置されている。
【0014】
各符号で数字に付記しているアルファベットは、トナーの色別に対応している。転写定着ベルト2の構成は基材となるポリイミド樹脂80μm、シリコーンゴム160μm、フッ素ゴム7μmによる積層構造が代表的なものである。ゴム層は記録媒体の凹凸に追従するために必要で、表面のフッ素樹脂はゴムのトナーや紙粉に対する離型性が優れていれば不要である。
各感光体3Y、3M、3C、3Kはそれぞれ同じ方向に回転駆動可能なドラムで構成されており、その周りには、回転過程において画像形成処理を実行する帯電装置4、光書き込み手段としての書き込み装置5、現像装置6、1次転写装置7、及びクリ−ニング装置8が順に配置されている。各符号数字に付記しているアルファベットは、感光体3と同様、トナーの色別に対応している。
各現像装置6には、それぞれのカラ−トナーが収容されている。転写定着ベルト2は、駆動ローラ11と、従動ローラ9、10に掛け回されて感光体3Y、3M、3C、3Kとの対峙位置において同方向に移動可能な構成を有している。駆動ローラ11と対向する位置には、転写定着ベルト2の表面をクリ−ニングするクリ−ニング装置12が設けられている。
感光体3Yの表面が帯電装置4により一様に帯電され、画像読取部からの光学的な画像情報に基づいて感光体3Y上に静電潜像が形成される。該静電潜像はイエロ−のトナーを収容した現像装置6Yによりトナー像として可視像化され、該トナー像は所定のバイアスが印加される1次転写装置7Yにより転写定着ベルト2上に1次転写される。他の感光体3M、3C、3Kでもトナーの色が異なるだけで同様の画像形成がなされ、それぞれの色のトナー像が転写定着ベルト2上に順に転写されて重ね合わせられる。転写後感光体3上に残留したトナーはクリ−ニング装置8により除去され、また、転写後図示しない除電ランプにより感光体3の電位が初期化され、次の作像工程に備えられる。
【0015】
本実施形態における転写定着装置は、転写定着ベルト2、加圧ローラ24、加熱体13、冷却手段20、排出ファン26、そして、紙幅検知部と冷却制御部を含み構成されている。
すなわち、転写定着装置は、表面にトナー画像を担持する中間像担持体でもある転写定着部材としての転写定着ベルト2と、従動ローラ9の配設位置において、転写定着ベルト2の像担持面に圧接されて、記録媒体を挟持し加圧する転写定着部となるニップNを形成している加圧部材(対向部材)としての加圧ローラ24と、ニップNのベルト周回方向上流側で転写定着ベルト内周面に対峙させ配置されたトナー像を加熱する加熱手段としての加熱体13(面状発熱体やハロゲンヒ−タ)、記録媒体をニップ部(N)で転写定着した後で、転写定着ベルト2を冷却するための気体流を発生させる送風装置(起風装置)を用いた冷却手段20を備えている。
また、冷却手段20から送られて転写定着ベルト2を冷却した気体流を装置筐体の外部に吐き出すための排気手段としての排出ファン26が冷却手段20の下流側に設けてある。その他に、記録媒体としての転写紙の紙幅を検知して用紙幅信号を出力する紙幅検知部と、冷却手段20の冷却幅を調節するための冷却制御部(図では明示なし)を有している。
紙幅検知部は、従来より画像形成プロセスを適正化する目的等で設けられているものを転用可能で、用紙トレイの選択切替に伴う信号等がそのまま利用可能である。冷却制御部は、装置全体を制御する装置制御部のCPUが実行する一機能として実現され、後で詳述するように紙幅検知部から、記録媒体の用紙幅に対応して出力される用紙幅信号に応じて冷却手段20のベルト幅方向の実効的な冷却幅(実施形態では冷却領域はベルト移送方向に線対象、広義には同時にその位置)を制御する。
【0016】
転写定着部の構成を詳細に説明する。従動ローラ9の近傍には、転写定着ベルト2とニップN(以下、ニップ又は転写ニップともいう)を形成する加圧部材又は対向部材としての加圧ローラ24が設けられている。加圧ローラ24はアルミニウム等の金属によりパイプ状に形成されており、表面には離型層がコ−ティングされている。
既知方法で潜像が形成された後、現像過程で顕像化された各色トナー像、即ちそれぞれ、感光体3Y、3M、3C、3Bから中間転写体となる転写定着ベルト2に転写されたトナー像Tは、定着ニップ部Nで用紙Pに定着されるまで加熱手段13よって加熱されて、加熱手段120よって予め加熱された用紙PにニップNにおいて定着される。このとき、転写されたトナー像Tは図1においてはベルトの内側から加熱体(面状発熱体やハロゲンヒ−タ)によって加熱しているが、ベルトの外側から非接触加熱(ハロゲンヒ−タなどの輻射熱)してもよい。
【0017】
図1における給紙部1Bは、記録媒体としての用紙Pを積載収容する給紙トレイ14と、該給紙トレイ14内の用紙Pを最上のものから順に1枚ずつ分離して給紙する給紙コロ16と、給紙された用紙Pを搬送する搬送ローラ対17と、給紙された用紙Pが一旦停止され、斜めずれを修正された後転写定着ベルト2上の画像の先端と搬送方向の所定位置とが一致するタイミングでニップNに向けて送り出されるレジストローラ対18を有している。
なお、実施形態装置では転写紙搬送路の転写定着部直前には紙表面を加熱する紙加熱手段としての加熱ローラ120が設けられている。この加熱ローラ120を140〜200℃といった範囲で制御し、紙表面を加熱する。この際、紙裏面に熱電対を固定し実験すると、加熱ローラ120の接触後0〜60msでは紙裏の温度は15℃以内の変化しかないことが確認されている(計測はリコーコピー用紙6200を用いた)。ここでは紙加熱を加熱ローラ120によって行っているが、他の方式であっても構わない。
【0018】
紙加熱手段の別な構成例を図8乃至図11に示した。図8の紙加熱手段は加熱源となる高温のローラ130とは別に用紙に接触する小径ローラ131を用紙との間に設けている。この構成では用紙に接触する小径ローラ131を小径化できるので紙加熱位置から転写ニップNへの距離が短くなり、図1の場合より、紙裏面まで熱が伝わる前に転写定着が可能となる。高温のローラ130はアルミ薄肉ローラでハロゲンヒータなどの熱源を内包し、小径ローラ131は熱伝導が高いシリコンゴムローラである。
図9の紙加熱手段は高温の金属ローラ130と小径ローラ131との間に無端状の金属のSUSベルト132を張架している。この構成では転写ニップN近傍まで加熱でき、図8の構成よりも用紙との接触時間を長くできるので、用紙搬送速度がアップしても加熱時間が確保できる特徴がある。用紙とSUSベルト132との接触を確実にするため、用紙裏面からローラや板バネなどの押し当て部材を設けても良い。
図10の紙加熱手段は加熱源として自己温度制御可能なPTC特性を有する発熱体134と発熱体から伸びるSUS製板バネ133からなり、板バネ133と用紙表面が接触し加熱される。発熱体134は所定のキューリー点となると抵抗が急激に上昇しる抵抗発熱体である。このため、その自己温度制御機能によって用紙が異常昇温してしまうような事故を防止できて安全である。紙の凹凸面に対しても追従して過熱できるようにSUS板バネのかわりに金属繊維を束ねた金属ブラシにしてもよい。
【0019】
図11の紙加熱手段は加熱源としてPTC特性を有する発熱体134を用紙の上面に接触させると共に、繊維を植毛した押し当て部材122を用紙下面に圧接させることによって、用紙表面を加熱する。図10と比べて用紙加熱時間を長くできるので、用紙速度がアップしても加熱時間が確保できる。押し当て部材122の繊維はポリイミド繊維を用いている。また、繊維の巻き込み防止のため繊維進入防止部材123を設けている。
また、紙加熱手段から転写ニップNに突入するまでの受け渡し区間で補助加熱手段(輻射過熱)によって、紙表面温度の低下を抑えることができ、より安定して加熱することができる。その際、安全性のため異常時には輻射をさえぎるシャッターを設けることが好ましい。
図1に戻り、紙加熱手段(記録媒体用加熱手段)としての加熱ローラ120を通過した用紙Pは、従動ローラ9に支承され転写定着ベルト2と加圧ローラ24により形成されたニップN(転写定着部)に突入し挟持され加圧および加熱されながらニップを通過することによって転写定着ベルト2の像担持面上のトナー像Tが用紙P表面に転写定着される。
上述の転写定着工程の後、転写定着ベルト2に対する転写部と、最も上流側の感光体3Kに対する転写部との間にある冷却手段20によって、転写定着ベルト2は冷却される。これによって、転写定着ベルト2の温度上昇を抑えることができ、感光体への熱影響がなくなる。冷却手段20では、特に温度が高い領域を集中して選択的に強く冷却するように制御しており、転写定着ベルト2に温度ムラが残るのを効率的に防止している。
なお、図1に示すように冷却手段20と併用して冷却手段20の下流位置に、均しローラ210を設けて補助的に温度分布を均すようにしてあり、併行して温度ムラ解消を一層確実に行えるようにしている。この均しローラ210については別途後述する。
【0020】
次に本実施形態の特徴点である冷却手段20について図2を用いて詳細に説明する。図2は本実施形態のファンを複数個並べて構成した冷却装置である。冷却装置としてベルト幅方向(移動方向と直交方向)に沿って整列して配設された複数のファン(軸流ファン、クロスフローファンなど)を用いている。
そして、図示しない制御部が、既存の紙幅検知部(図示なし)からの用紙幅信号に基づいて、各ファンを個別に風量制御あるいはON/OFF制御することによって、高温の紙と接触した転写定着ベルトを幅方向に選択的に冷却する(転写定着部材の冷却幅を制御する)。すなわち、紙と接触し温度上昇した部分を選択的に冷却する。上記紙幅検知部からの信号によって、紙幅に対応するファンのみをONする。例えばA4縦であれば、紙が通過した210mm幅に対応する部分(帯状領域)の転写定着ベルトを選択的に集中して冷却し、効率的に転写定着ベルトを冷却することができる。
上記のように冷却に気体を用いる強制空冷の場合は換気風量が重要である。本実施形態では先に示した冷却手段20を補助し冷却効率を高めるための構成として機外へ冷却に用いたエアーを放出するための排気手段(送風手段)としてファンを配設してある。この排気用のファンは、一つ以上設けても良い。冷却に気体を用いる強制空冷の場合、一般的に以下のような式が適用できる。
q=ΔT・(ρ・Cp・Q/60)
ここで、q:装置発熱量(W)=紙から受け取る熱量
ΔT:内部温度上昇(K)=転写定着ベルト温度上昇
ρ:空気密度(kg/m3)=常温にて約1.2kg/m3
Cp:空気の定圧比熱(J/(kg・K))=約1007J/(kg・K)
Q:必要換気量(m3/min)、である。
【0021】
図1により冷却風の流れを具体的な例を示して説明する。冷却装置20からの冷却エアーを被冷却対象物である転写定着ベルト(紙幅検知部からの用紙幅信号に基づいた幅)へ送風する。このとき、エアーフローをスムースにするため、転写定着ベルト搬送方向へやや傾けたほうが良い。転写定着ベルトを冷却したエアーは転写定着ベルトの搬送方向へ沿って流れ、転写定着ベルト下流側に設置された排気手段(送風手段)として機能する排出ファン26によって、機外へ放出される。
例えば、排出ファン26として、軸流ファンを装置筐体の適切な位置に配設する。排出ファン26の気体吸入側および/または気体送出側に適宜のダクトを設けるようにしても良い。このように、常にフレッシュなエアーを冷却風として用い、スムースなエアーフローで換気風量を上げることでより効果的な冷却が可能となる。なお、別な実施形態として後述するように、冷却装置(冷却手段)としてイオン風を用いている場合(図5、図6参照)には、オゾンが発生するので、排出ファン26には、オゾンフィルターをつけることが望ましい。
冷却手段20の下流位置に配設されて転写定着ベルト2に接触させてある均しローラ210も、補助的に温度ムラをより減少させている。ヒートパイプや熱伝導率の高いグラファイトなどの材料で形成されており、転写定着ベルト2に接触して回転する。なお、均しローラ210を別途設けずにローラ11をヒートパイプローラとすることで均しローラと兼用することも可能である。そして、冷却された転写定着ベルト上の残留物(残トナーなどの付着物)はベルトクリーニング装置12によって回収され、一連の転写定着プロセスは完了する。
【0022】
冷却手段20としては、上述例とは異なる構成を採用することも可能であり、上述した構成と同等の作用効果が得られる。空気流を利用した冷却手段20の異なる実施例を挙げる。
図3は、変形例の冷却手段20Aを示す模式的構成図である。この冷却手段20Aは、単一の冷却装置(長尺シロッコファン)のファン吹き出し口に延在する方向を適宜の駆動機構で可変に構成したルーバーが装着されている。この構成の場合には冷却制御部が、紙幅検知部からの信号によってルーバーを駆動して姿勢を制御し、紙幅に対応する転写定着ベルト領域へ集中的にエアーが送風されるようにする。トナー画像は転写定着ベルト2の幅方向対称に中央部に形成されるのでルーバー群は、転写定着ベルト2の側端部寄りのものを幅方向対称に可動させれば足りる。
図4は別な構成例を示しており、コンプレッサまたはファンから供給したエアーをベルト幅方向に分布した多数の開口群(エアー噴出し穴)を有したエアノズルから噴出させ、転写定着ベルトを冷却する。これも、紙幅検知部からの信号によってエアー噴出し穴を開閉制御し紙幅に対応する位置のノズルのみを開状態にすることで、転写定着ベルトの温度上昇した部分を選択的に冷却することができる。
【0023】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、紙幅検知部からの用紙幅信号に基づいて、紙と接触した転写定着ベルト幅を選択的に冷却することで転写定着後の転写定着ベルトの温度ムラ、特に連続通紙中による転写定着ベルトの紙幅温度上昇を抑えることができ、常に良好な画像を提供することができる。
なお、本実施形態は、未定着トナー像を保持した用紙を単に加熱・加圧する従来の定着装置に対し、紙加熱転写定着方式を採っているので、既知効果としての省エネルギー特質も備えている。この点について簡略に説明すると、従来のカラ−画像形成装置では十分な光沢を得るために用紙による温度低下を考慮して白黒画像形成装置に比べて1.5倍ほどの熱量を与えていた。このため、用紙が必要以上に加熱されるとともに、トナーと用紙の密着性も必要以上に高められていた。
これに対し本実施形態では、十分な光沢を得るための温度として、転写定着ベルト温度と紙温度とそれぞれ独立に設定できるようにしてあるので、転写定着ベルト2の温度(定着設定温度)を低くできる。また、用紙Pは直前に加熱されるので過剰に加熱されず、トナーTと用紙の密着性も必要以上に高められることはない。
このように本実施形態においては、中間転写体への熱移動を抑制できるので耐久性を向上させることができている。また、既述した冷却手段を備えているから中間転写体の温度を低減でき、中間転写体側の熱劣化を一段と抑制できる。なお、低速機の場合など装置の仕様や定格によっては、前述した定着直後の選択的な冷却手段20のみとしても良く、実用上充分な冷却性能を確保できる。
【0024】
[第2実施形態]
第2の実施形態は、上述した第1実施形態の構成に加えて更に既述した冷却手段20の気体吸入側に熱交換器を取り付けるようにしたものである。図示は省略するが、熱交換器を併用することで、冷却された気体を取り入れ、被冷却物である転写定着ベルトに冷却された気体を当てることで、より冷却効果を上げることが可能となる。
熱交換器は、隔壁を通じて2つの流体間で熱の授受を行わせて、加熱、蒸発、冷却、凝縮などの用途に使用されるものであり、一般的には、次のようなものがある。
イ)多管円筒形熱交換器
ロ)二重管式熱交換器
ハ)プレート式熱交換器
ニ)その他の熱交換器
これらのいずれかの熱交換器を用い、冷却されたエアーを冷却に利用することで常温のエアーよりも、効果的に転写定着ベルトを冷却することができる。
【0025】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態では、先に図1に示した第1実施形態におけるファンに替えて冷却手段20としてイオン風冷却装置を用いており、コロナ放電により発生したイオン風を利用して気流を生じさせ、該気流によって被冷却部である転写定着ベルトを冷却するようにしたものである。
第3実施形態の画像形成装置(複写機)は、冷却手段としての冷却装置20が異なるのみで、その他の部分の構成は第1実施形態と全く同一(図1参照)で良いため、要部全体構成の図示と同等各部の説明は省略し、以下では冷却装置を主体に説明する。
第1実施形態で冷却手段に用いたファンはその作動時に騒音を発生し、しかも設置に大きなスペースを必要とする。また、ファンによるエアーは拡散する乱流となるためピンポイントで冷却するのは限界がある。このような諸々の点を鑑みて、本実施形態では冷却手段としてイオン風を発生させこれを利用し、転写定着ベルトを冷却する。ファン等の冷却装置に比べ、騒音を発生せず、小型化が可能となっている。
付言すれば、第3実施形態で用いたイオン風冷却装置は、冷却手段として機能するとともに転写定着ベルトや未転写のトナーの残留電荷を除電することができ、クリーニングや次の作像プロセスを良好に行うことができる副次的効果もある。
【0026】
イオン風を利用した冷却装置について図を用い詳細に説明する。図5に例示したイオン風冷却装置は、転写定着ベルト2の幅方向に伸びて延在させたタングステンワイヤ21(60μm程度)を放電電極とし、該タングステンワイヤ21から転写定着ベルト側に位置して複数の電極板22を設けることによって構成されている。これらの電極板22は金属等の板状の導電体からなり、面方向を転写定着ベルト2の表面に交差させて設置され、交差角度を調節できるように可動式になっている。タングステンワイヤ(以下、単にワイヤ)21には放電電源23によって、高電圧(5〜10kV程度)が印加されるようになっており、各電極板22はアースされている。
放電電源23によってワイヤ21に高電圧が印加されると、ワイヤ21と電極板22との間でコロナ放電が発生し、ワイヤ21から電極板22へ向けて電流が流れる。これによって窒素や酸素がイオン化される。これらのイオン化された分子は、放電電極2から放射状に発生する電界の方向に向かって周囲の中性分子に衝突しながら流れ、それに伴って、イオン化された分子が放出された後に、近くの空気が流れ込み、ワイヤ21と電極板22の近傍のエアーを転写定着ベルト2の方向へと押し出すように作用し、気流を発生させイオン風が生じる。その際、紙幅検知部からの信号に基づいて制御されて端部側の電極板がルーバーのように可動し(図5の矢印の方向)、紙幅に対応する部分の転写定着ベルトへイオン風が導かれるようになっている。
【0027】
この動作によって、転写定着ベルトの長手方向についての温度ムラがなく、効率的に転写定着ベルトを冷却することができる。このとき、コロナ放電によって生じるイオン風にはオゾンが含まれているため、オゾンフィルター等でオゾンを除去することが望ましい。なお、上記構成ではワイヤに正負の電圧どちらを印加させても良いが、正の電圧を印加したほうが、気流の発生効率を高めることができて有利である。
イオン風を用いることの利点は、気流の乱れが少なく、被冷却物に対して均一に流すことが可能となる点にある。また、ファンよりも設置場所をとらずに済むし、騒音を発生することもない。さらに、付近のエアー(空気層)の熱伝導度を向上させる効果があり、イオン化された気体が接触するため、転写定着ベルトの残留電荷や残トナーの除電も行え、これによっても冷却効果の促進を図ることができる。
【0028】
図6は、イオン風冷却装置の異なった構成を示しており、放電電極として針電極31を用い、円環状の平板電極32との間に高電圧を印加して、コロナ放電を生じさせることで、針電極先端から平板電極32に向けて発生し中央の円形孔部分を通過して流れるイオン風を利用して転写定着ベルト2を冷却する構成である。
本構成では、図6(a)のように平板電極32に小孔を設け、そこからイオン風を噴射させる。図6(b)は実際のイオン風冷却装置の具体的な構成図であり、図に示すように、個々に通電制御可能な電極対(針電極31と平板電極32)を、転写定着ベルト2の幅方向に一列に複数組並べてイオン風冷却装置を構成する。稼動時には、紙幅検知部からの信号に応じて、紙幅に対応する位置の放電電極にのみバイアスを印加するように制御することで、転写定着ベルトの紙幅に対応する箇所を選択的にピンポイントで冷却することができる。
この構成により生じるイオン風は集約性(指向性)に優れており、局所的に送風することが可能となる。そのため、転写定着ベルトの紙幅に対応する箇所(領域)をピンポイントで冷却することが可能となになっている。図6(b)では中央寄りの4つの電極対に選択的に通電し、紙が接触した高温領域に集中的に冷却を行っている様子を図示してある。
なお、本実施例においても、先に示した実施例1の場合と全く同様に冷却手段に加えて機外へ冷却に用いたエアーを放出するための排気手段(送風手段)として一つ以上のファンを備えていて、より冷却効果を上げるようにしている。
【0029】
以上説明した第3実施形態によれば、紙幅検知部からの用紙幅信号に基づいて、紙と接触した転写定着ベルトの幅適所を選択的に冷却することで転写定着後の転写定着ベルトの温度ムラ、特に連続通紙中による転写定着ベルトの紙幅温度上昇を抑えることができ、不具合なく良好な画像を提供することができる。
特に、イオン風冷却装置を採用しているため、ファン冷却に比べ冷却用の気流の乱れが少なく、被冷却物に対して均一に冷却用気体を流すことができる。また、ファンよりも設置場所をとらずに騒音を発生することもない。さらに、イオン化された気体のため、転写定着ベルトの残留電荷や残トナーの除電も行え、エアーの熱伝導度も向上させることも可能であり、これによっても冷却効果の促進を図ることができる。
なお、本実施例においても、先に示した実施例2の場合と全く同様に冷却手段の気体吸入側に熱交換器を取り付けることで、冷却された気体を取り入れ、被冷却物である転写定着ベルトに冷却された気体を当てることで、より冷却効果を上げるように構成することができる。これとは逆に、装置の定格や保証品質によってはイオン風冷却装置のみで実用上充分な冷却効果が得られる場合には、併用して設けた排気手段としてのファンについては省略しても良い。
【0030】
[第4実施形態]
本発明が適用される画像形成部の方式は、上述各実施形態のように4連タンデム方式のものに限らない。図1に示す以外にも、感光体上色重ね方式の画像形成装置に適用した場合においても既述したのと同様のメリットが得られる。図7に第4実施形態の感光体上色重ね方式の画像形成装置の内部要部を側面図で示す。画像形成装置としての全体構成は周知であり内部要部のみ示した。なお、図1と同等機能部分には、同一の符号を付してある。
この方式では、周動する単一の感光体の表面を帯電手段によって一様に帯電し、そこにレーザ書込手段により複数色の画像データをレーザ光によって順次書き込んで静電潜像を形成した後、複数の現像手段によってそれぞれ異なる色のトナーを付着させてトナー像を形成して可視化し、その各トナー像をトナー像担持体としての中間転写ベルト上に順次に一次転写して重ね合わせた後、転写定着装置によって記録媒体に一括して転写及び定着を行う。
【0031】
図7に示した感光体上色重ね方式の画像形成部自体は一般的なもので各部構成とその機能については、周知であるから説明は簡略化し、転写定着ベルト2の冷却装置についてのみ詳細に説明する。
図7のカラ−複写機も、装置本体中央部に位置する画像形成部1Aと、この画像形成部1Aの下方に位置する給紙部1B、上方に位置する図示しない画像読取部を有している。画像形成部1Aには、周回可能に張設されて水平方向に延びる転写面を提供する中間転写体としての転写定着ベルト2が配置されており、該転写定着ベルト2の上面には、色分解色と補色関係にある色の画像それぞれを形成するための構成が設けられている。
すなわち、単一の感光体3Aが転写定着ベルト2の転写面部に圧接させ配設されている。7Aは1次転写装置となる転写ローラである。転写ローラ7Aの周上には、補色関係にある色のトナー(イエロ−、マゼンタ、シアン、ブラック)によるトナー像を担持可能な像担持体としての現像装置6Y、6M、6C、6Kが転写面部に沿って順に並置されている。また、感光体3Aの周りには、回転過程において画像形成処理を実行するための図示を省略した帯電装置、及びクリ−ニング装置が配置されている。感光体3Aの上方には、光書き込み手段としての書き込み装置5Y、5M、5C、5Kが、配置されている。
【0032】
感光体3Aの表面が図示しない帯電装置により一様に帯電され、続いて順次、各色毎に画像読取部からの画像情報に基づいて感光体3A上に静電潜像が形成され各色毎の現像装置6によりトナー像が重ねて形成される。こうして色重ねして形成されたカラー可視像(トナー像)が、所定のバイアスが印加される1次転写装置7Aにより転写定着ベルト2上に1次転写される。転写後感光体3A上に残留したトナーは図示しないクリ−ニング装置により除去され、また、転写後図示しない除電ランプにより感光体3Aの電位が初期化され、次の作像工程に備えられる。 1次転写された転写定着ベルト2上のカラートナー画像は、加熱手段13で加熱されながら転写定着部に向かい、ニップを通過する際に転写用紙Pに転写定着され排出経路へ搬送される。一方、転写定着後の転写定着ベルト2は、第1実施形態と全く同様に下流の冷却手段20によって転写用紙幅に対応する帯状の部分を集中的に冷却される。
本実施形態における転写定着装置は、第1実施形態と全く同等構成で(各部の寸法、厳密な配設位置寸法等は異なる)、転写定着ベルト2、ニップNを形成している加圧ローラ24、加熱手段(加熱体)13、冷却手段である送風ファン20(既述したイオン風冷却装置であっても無論良い)、排気ファン(排気手段)26、そして図示のない、紙幅検知手段としても機能している画像処理部および冷却制御部によって構成されている。
【0033】
本実施形態では、紙幅検知は、画像処理部において、入力画像信号(画像読取部からの画像情報、或は外部クライアント装置からの印刷ジョブ等)から、あるいはこれをラスター画像化した画像データから形成すべき画像の幅を検出して前述紙幅信号を生成し出力する。その他の上記各部の構成・機能は既述第1実施形態と同等であるから、説明は繰り返さない。冷却手段20(例えば軸流ファン、図2参照)によって転写定着ベルト2の転写用紙幅に対応する帯状の部分にのみ空気が集中的に吹き付けられ転写定着ベルト2を効率良く冷却する。転写定着ベルト2を冷却した空気は、大部分が排気ファン26によって装置外に排出される。
ちなみに、第4実施形態の感光体上色重ね方式は、単一の感光体上の作像動作として、1色のトナーに対する帯電、露光(書き込み)、現像までの一連の工程を、他色のトナーについても同様工程を同じ1つの感光体上で個別に行う方式である。一方、前述各実施形態での4連タンデム方式は、1色毎に1つの感光体上に作像工程を行い、中間転写体から転写定着体に2次転写定着した後、転写定着体から転写材に3次転写定着しており、各色分の感光体を複数必要とするものである。この方式と比較すると、本実施形態に示した感光体上色重ね方式は、高速対応性にも適しており、更に感光体が1つで構成されているため、省スペ−ス化が可能であり、マシンの低コストに繋がる利点がある。
【0034】
以上複数の実施形態を挙げて本発明について説明したが、本発明が前記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、前記各実施の形態の中で示唆した以外にも、前記各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は前記各実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。また、前記加熱手段と記録媒体加熱手段のうちいずれか一方のみを備えた転写定着装置であっても、転写定着部材の幅方向の温度ムラが生じる慮がある場合には、本発明を適用することで、次の作像プロセスに悪影響を与えるのを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1実施形態の画像形成装置(カラ−複写機)の内部要部を示す側面図である。
【図2】第1実施形態に係る冷却手段を示す模式的構成図である。
【図3】第1実施形態に係る冷却手段の変形例を模式的に示す構成図である。
【図4】第1実施形態に係る冷却手段の別な変形例を模式的に示す構成図である。
【図5】第3実施形態におけるイオン風冷却装置を示す構成図である。
【図6】(a)(b)は、イオン風冷却装置の異なった態様を示す構成図である。
【図7】実施形態の感光体上色重ね方式の画像形成装置の内部要部を示す側面図である。
【図8】実施形態に係る他の紙加熱手段に係る転写定着部分近傍の拡大図である。
【図9】他の紙加熱手段を説明する拡大図である。
【図10】他の紙加熱手段を説明する拡大図である。
【図11】他の紙加熱手段を説明する拡大図である。
【符号の説明】
【0036】
1A 画像形成部
1B 給紙部
2 転写定着ベルト(転写定着部材)
3Y、3M、3C、3K、(3A) 感光体
4(4Y、4M、4C、4K) 帯電装置
5(5Y、5M、5C、5K) 書き込み装置
6(6Y、6M、6C、6K) 現像装置
7、7A 1次転写装置(転写ローラ)
8 クリ−ニング装置
9、10 従動ローラ
11 駆動ローラ
12 クリ−ニング装置
13 加熱装置(加熱手段)
20 冷却手段(転写定着部材冷却手段)
21 タングステンワイヤ(放電電極)
22 電極板
23 放電電源
24 加圧ローラ(加圧部材)
26 排気手段(排出ファン)
31 針電極
32 平板電極、
120 加熱ローラ(紙加熱手段)
210 均しローラ(温度均し手段)
N ニップ
P 記録媒体
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真式およびインクジェット式の複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関し、像担持体上に形成されたトナー像を記録媒体に転写定着させる転写定着装置およびこれを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電子写真式複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置においては、像担持体から記録媒体に転写された未定着トナー画像を加熱定着することにより複写物や記録物を得ることができる。定着に際しては、未定着トナー画像を担持している記録媒体を狭持加圧しながら未定着画像を加熱することにより未定着画像中に含まれる現像剤、特にトナーの溶融軟化及び記録媒体への浸透を行わせることにより記録媒体にトナーを定着することが行われる。そこで、像担持体上に形成した未定着画像を記録媒体に転写及び定着を一体で行う転写定着装置が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
このうち、特許文献1に開示のものは、中間転写体から転写材に2次転写定着を行うタイプのもので、特許文献2に開示のものは、中間転写体から転写定着体に2次転写定着した後、転写定着体から転写材に3次転写定着するタイプのものである。なお、これらの技術において、画像を構成する部材としては、トナーと呼ばれる樹脂を主体とした帯電性の粉体を利用するのが一般的である。
これらのトナーは、省エネルギ−化、複写機等の装置の小型化が検討される中で、よりホットオフセット発生温度が高く(耐ホットオフセット性が良好で)、かつ定着温度が低い(低温定着性が良好な)トナーが求められている。特に、転写定着は定着温度(ベルト温度)が上昇すると、転写定着ベルトに接触しているドラム、更には現像部にも熱が伝わり、ベルト変形による画像不具合、及びトナーの固化等の不具合がより一層発生しやすくなるため、より低温定着性のトナーが必要である。
【0003】
また、従来より、トナー中には離型性を付与するためにワックスが添加されている。一般にワックスなどの離型剤は、低融点のものが多く、染み出しによる現像部材の汚損を招いたり、溶融時に樹脂との間に界面を形成するために濁りが生じて色再現性を損なうことがある。また、樹脂との相溶性に問題があり、添加量が増すに従い現像性が悪化し、キャリアとのスペントも起こるので帯電量不足、帯電不安定が発生するため使用しないか、もしくは使用量を低減できることが好ましい。
従来の電子写真方式による画像形成装置において、画像品質を低下させやすいのは転写材への転写工程である。転写材には、主に紙が用いられるが、紙といっても普通紙から厚紙までさまざまな厚みのものがあり、表面性状も上質なものから粗いものまでさまざまである。特に、表面性の粗い紙においては、中間転写体が紙の表面性状に追従できずに微小ギャップを形成してしまうため、微小ギャップ部分で異常放電が発生し、画像が正常に転写されずに、全体としてボソボソの画像になりやすいという不具合がある。
【0004】
この点に関し、前掲の特許文献1あるいは特許文献2に記載されている如き、転写定着工程を有する画像形成装置では、転写と定着を同時に行っているため、転写工程と定着工程を別々に行う画像形成装置(以下、通常装置と言う)に比べて、一般に表面性の粗い紙を使用しても画像品質の低下が起こり難いという利点を備えている。これは、転写と同時に熱を加えるため、熱によりトナーが軟化・溶融して粘弾性を帯びたブロック状の塊になるため、紙の微小ギャップ部分の画像も塊として転写されやすいためである。このような利点から、転写定着手段を有する画像形成装置は、高画質達成に適した方式といえる。
さらに、転写定着方式の利点を挙げると、通常の電子写真方式と異なり、転写材には粉体が乗っていないため転写定着部直前まで、通紙方向を小曲率に規定可能な搬送ガイドが設置可能であり、薄紙から厚紙まで紙種によらず安定した搬送が可能となる。ちなみに、通常の電子写真では定着前で転写材には粉体が乗っているため、搬送ガイドは粉体をこすることが無い様に隙間を空けてしか通紙方向を案内できない。
この隙間の中で紙が不安定になることで通紙詰まりが発生する場合が多い。転写定着方式では通紙方向の自由度が高い結果、紙種対応性が広くまた通紙詰まりの発生率が極端に少ない画像形成装置が実現可能となる。
【0005】
ところで、上述の転写定着方式において、転写定着の熱効率を最大とするための観点では、紙とトナーを融着する面つまり紙とトナーとの界面の温度を高めることが必要である。このために、トナーを十分に加熱し軟化した状態で紙に圧接させる方式が既に提案されている。このような装置は、例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5などに開示がある。
しかしながら、この既知方法では、トナーを加熱するだけではなく、転写定着部材を加熱する必要があるため、転写定着部材が例えば300μmと厚い場合、4連タンデムによる作像方式など転写定着部材の周長が長い場合では必ずしも熱効率がよくない。なお、上記従来の転写定着装置は、転写定着部材の加熱工程に加えて、作像部の熱的損傷を低減するために転写・定着工程後の転写定着部材を冷却する冷却工程がおこなわれている場合が多い。
特に冷却が必要となることで、同一部材を一方で加熱し、一方で冷却することはエネルギ−の観点から非常に非効率である。さらに、加熱と冷却のサイクルを繰り返すことでエネルギ−的に無駄があるだけでなく、常態として繰り返されるヒ−トサイクルによる転写定着部材の耐久性と言う点でも不利である。
【0006】
この他、特許文献6、特許文献7では、転写定着部材と転写材および、加圧部材をそれぞれ加熱することで転写定着する方法が開示されている。この方法では転写定着部材の温度をトナー溶融温度以下に加熱し、転写材をトナー溶融温度以上に加熱することで、転写定着部材側にあまり熱を持たせない構成を採っている。
しかしながら、この方法では転写材を表面裏面とも加熱しており、紙を非画像面である裏側まで予熱することは、従来転写定着においても行われているが、これは明らかに定着に寄与しない紙裏まで暖めることでエネルギ−を無駄使いしている。また、両面印刷時の第1面目画像不良を引き起こしてしまう慮もある。エネルギ−的に非効率だけでなく、特に、両面印刷の第2面目印刷時に第1面目の画像(紙裏面)が再溶融し、画像劣化につながる。また転写定着後も高温の転写材が転写定着部材とともに搬送され、高温の転写材が長時間転写定着部材と接触し、ヒ−トサイクルによる転写定着部材の耐久性の面でも不利である。
【0007】
以上の点を考慮して、より熱効率が良い転写定着方式として、トナー接触直前の紙表面(転写面)のみを選択的に加熱し、紙裏に熱が伝わる前に転写定着するようにした紙加熱転写定着方式が既に提案されている。この片面(紙表面)のみを加熱する紙加熱転写定着に関しては、本出願人により特許文献8として紙を転写定着直前に選択的に加熱する方式が提案されている。転写定着の場合にはそれ以前の電子写真方式とは違って転写材にトナーが乗っていないので、上記紙加熱転写定着方式では転写材を加熱搬送する部材を狭く限定可能な場所に設置できる。このため、転写材表面を加熱する加熱部材を転写定着ニップ直前に設置し、転写材表面の温度低下が起こる前に転写定着ニップに送り込むことが可能である。これにより、特に厚紙などは無駄に紙裏面を加熱することなく定着することが可能になる。
【0008】
一般的に、紙を加熱する転写定着方式では転写定着部材を加熱する転写定着方式に比べて冷却に大きなエネルギーを必要としない。しかしながら、特許文献8のように紙を選択的に加熱するようにした転写定着方式においても、加熱された記録媒体が転写定着ベルトと接触し転写定着するため、転写定着ベルトは紙と接触した部分の温度が上昇してしまう。また、紙を選択的に加熱する転写定着方式においては、転写定着ベルトの紙と接触した部分のみが熱せられるから、紙幅に応じて転写定着ベルトが熱せられる幅も変わってくる。特に連続通紙を行った場合等には転写定着部材の加熱された記録媒体が接する部分と非通紙部分の温度差が顕著になってくる。
この転写定着部材の幅方向(記録媒体の搬送方向に直交する方向)の温度ムラは、次の作像プロセスに悪影響を与えて、画像品質を落としてしまう。具体的にはこのような温度ムラが残ったままであると、転写定着部材と接している感光体にも温度ムラが生じ、ひいては現像プロセス部品にも熱が伝わり、画像不具合、及びトナーの固化等の不具合が発生しやすくなってしまう。従来の転写定着装置は、上述した転写定着部材の加熱工程に加えて、作像部の熱的損傷を低減するために転写・定着工程後の転写定着部材を冷却する冷却工程がおこなわれている場合が多いが、転写定着部材を均等に冷却しているため、冷却過程を経ても温度ムラの解消には繋がらなかった。
【特許文献1】特開平10−63121号公報
【特許文献2】特開2004−145260公報
【特許文献3】特開2003−91201公報
【特許文献4】特開平11−65330号公報
【特許文献5】特開2005−140994公報
【特許文献6】特公平3−63756号公報
【特許文献7】特公平3−63757号公報
【特許文献8】特開2005−37879公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記実情を考慮してなされたものであり、その目的は高画質達成に最適な画像形成手段である転写定着方式を採用し、転写定着部材上のトナー像および/または記録媒体の表面を転写定着の前に予め加熱するようにした転写定着装置において、転写定着部材の冷却を温度ムラが無くなるように効率的に行い、温度ムラ残留による不具合を解消して、良好な画像を常に得られる転写定着装置、画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、記録媒体の転写定着面にトナー像を転写するとともに定着する転写定着装置であって、表面にトナー画像を担持させる転写定着部材と、前記転写定着部材上のトナー像を加熱する加熱手段および/または記録媒体の表面を転写定着の前に予め加熱する記録媒体加熱手段と、前記転写定着部材との間で記録媒体を加圧するニップ部を形成する加圧部材と、を具備した転写定着装置において、前記記録媒体を前記ニップ部で転写定着した後の前記転写定着部材を冷却するための、冷却幅を調節可能に構成された冷却手段と、記録媒体の紙幅、または印字画像データにより決まる印字画像幅のいずれかに基づいて前記転写定着部材の冷却幅を制御する冷却制御部と、を備えたことを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載の転写定着装置において、記録媒体の幅を検知して用紙幅信号を出力する紙幅検知部を更に備え、前記冷却制御部は、前記紙幅検知部からの用紙幅信号または、印字画像データにより求めた印字画像幅信号のいずれかの信号に基づいて前記転写定着部材の冷却幅を制御することを特徴とする。
【0011】
また、請求項3の発明は、請求項1または2に記載の転写定着装置において、前記冷却手段は、コロナ放電によって発生したイオン風を利用して冷却するイオン風冷却装置であることを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1または2に記載の転写定着装置において、前記冷却手段は、送風装置によって発生させた気体流を冷却に用いることを特徴とする。
また、請求項5の発明は、請求項3または4に記載の転写定着装置において、気体を冷却する熱交換器を備え、前記熱交換器によって冷却された気体流またはイオン風を前記転写定着部材の冷却に用いることを特徴とする。
請求項6の発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の転写定着装置において、前記転写定着装置組み込み装置本体の外側へ空気を吐き出すための排気手段を更に備えたことを特徴とする。
そして、請求項7の発明は、電子写真方式による画像形成装置であって、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の転写定着装置を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、転写定着部材の冷却を温度ムラが無くなるように効率的に行い、温度ムラ残留による不具合を解消して、常に良好な画像を常に得られる転写定着装置、画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[第1実施形態]
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。以下では、本発明の一例として画像形成装置であるタンデム型の電子写真式カラ−複写機に適応した実施形態を挙げ、図面に従って説明する。
図1は、本発明の実施形態である画像形成装置としての4連タンデム方式の電子写真式カラ−複写機の内部要部を示す側面図である。この装置では、高画質達成に最適な画像形成手段である転写定着方式を採用し、なおかつ、エネルギ−の効率の観点から紙とトナー像双方をそれぞれ加熱するようにしている。この種のカラー複写機は周知であるため、全体構成については詳細説明は省略する。
図1に基づいて本実施形態の4連タンデム方式カラ−複写機の構成及び動作の概要について説明する。カラ−複写機は、装置本体中央部に位置する画像形成部1Aと、該画像形成部1Aの下方に位置する給紙部1Bと、画像形成部1Aの上方に位置する図示しない画像読取部を有している。
本装置では線速300mm/sで作像が可能である。画像形成部1Aには、周回可能に張設されて水平方向に延びる転写面を提供する中間転写体としての転写定着ベルト2が配置されており、転写定着ベルト2の上面には、色分解色と補色関係にある色の画像それぞれを形成するための構成が設けられている。すなわち、補色関係にある色のトナー(イエロ−、マゼンタ、シアン、ブラック)によるトナー像を担持可能な像担持体としての感光体3Y、3M、3C、3Kが転写定着ベルト2の転写面部に沿って順に並置されている。
【0014】
各符号で数字に付記しているアルファベットは、トナーの色別に対応している。転写定着ベルト2の構成は基材となるポリイミド樹脂80μm、シリコーンゴム160μm、フッ素ゴム7μmによる積層構造が代表的なものである。ゴム層は記録媒体の凹凸に追従するために必要で、表面のフッ素樹脂はゴムのトナーや紙粉に対する離型性が優れていれば不要である。
各感光体3Y、3M、3C、3Kはそれぞれ同じ方向に回転駆動可能なドラムで構成されており、その周りには、回転過程において画像形成処理を実行する帯電装置4、光書き込み手段としての書き込み装置5、現像装置6、1次転写装置7、及びクリ−ニング装置8が順に配置されている。各符号数字に付記しているアルファベットは、感光体3と同様、トナーの色別に対応している。
各現像装置6には、それぞれのカラ−トナーが収容されている。転写定着ベルト2は、駆動ローラ11と、従動ローラ9、10に掛け回されて感光体3Y、3M、3C、3Kとの対峙位置において同方向に移動可能な構成を有している。駆動ローラ11と対向する位置には、転写定着ベルト2の表面をクリ−ニングするクリ−ニング装置12が設けられている。
感光体3Yの表面が帯電装置4により一様に帯電され、画像読取部からの光学的な画像情報に基づいて感光体3Y上に静電潜像が形成される。該静電潜像はイエロ−のトナーを収容した現像装置6Yによりトナー像として可視像化され、該トナー像は所定のバイアスが印加される1次転写装置7Yにより転写定着ベルト2上に1次転写される。他の感光体3M、3C、3Kでもトナーの色が異なるだけで同様の画像形成がなされ、それぞれの色のトナー像が転写定着ベルト2上に順に転写されて重ね合わせられる。転写後感光体3上に残留したトナーはクリ−ニング装置8により除去され、また、転写後図示しない除電ランプにより感光体3の電位が初期化され、次の作像工程に備えられる。
【0015】
本実施形態における転写定着装置は、転写定着ベルト2、加圧ローラ24、加熱体13、冷却手段20、排出ファン26、そして、紙幅検知部と冷却制御部を含み構成されている。
すなわち、転写定着装置は、表面にトナー画像を担持する中間像担持体でもある転写定着部材としての転写定着ベルト2と、従動ローラ9の配設位置において、転写定着ベルト2の像担持面に圧接されて、記録媒体を挟持し加圧する転写定着部となるニップNを形成している加圧部材(対向部材)としての加圧ローラ24と、ニップNのベルト周回方向上流側で転写定着ベルト内周面に対峙させ配置されたトナー像を加熱する加熱手段としての加熱体13(面状発熱体やハロゲンヒ−タ)、記録媒体をニップ部(N)で転写定着した後で、転写定着ベルト2を冷却するための気体流を発生させる送風装置(起風装置)を用いた冷却手段20を備えている。
また、冷却手段20から送られて転写定着ベルト2を冷却した気体流を装置筐体の外部に吐き出すための排気手段としての排出ファン26が冷却手段20の下流側に設けてある。その他に、記録媒体としての転写紙の紙幅を検知して用紙幅信号を出力する紙幅検知部と、冷却手段20の冷却幅を調節するための冷却制御部(図では明示なし)を有している。
紙幅検知部は、従来より画像形成プロセスを適正化する目的等で設けられているものを転用可能で、用紙トレイの選択切替に伴う信号等がそのまま利用可能である。冷却制御部は、装置全体を制御する装置制御部のCPUが実行する一機能として実現され、後で詳述するように紙幅検知部から、記録媒体の用紙幅に対応して出力される用紙幅信号に応じて冷却手段20のベルト幅方向の実効的な冷却幅(実施形態では冷却領域はベルト移送方向に線対象、広義には同時にその位置)を制御する。
【0016】
転写定着部の構成を詳細に説明する。従動ローラ9の近傍には、転写定着ベルト2とニップN(以下、ニップ又は転写ニップともいう)を形成する加圧部材又は対向部材としての加圧ローラ24が設けられている。加圧ローラ24はアルミニウム等の金属によりパイプ状に形成されており、表面には離型層がコ−ティングされている。
既知方法で潜像が形成された後、現像過程で顕像化された各色トナー像、即ちそれぞれ、感光体3Y、3M、3C、3Bから中間転写体となる転写定着ベルト2に転写されたトナー像Tは、定着ニップ部Nで用紙Pに定着されるまで加熱手段13よって加熱されて、加熱手段120よって予め加熱された用紙PにニップNにおいて定着される。このとき、転写されたトナー像Tは図1においてはベルトの内側から加熱体(面状発熱体やハロゲンヒ−タ)によって加熱しているが、ベルトの外側から非接触加熱(ハロゲンヒ−タなどの輻射熱)してもよい。
【0017】
図1における給紙部1Bは、記録媒体としての用紙Pを積載収容する給紙トレイ14と、該給紙トレイ14内の用紙Pを最上のものから順に1枚ずつ分離して給紙する給紙コロ16と、給紙された用紙Pを搬送する搬送ローラ対17と、給紙された用紙Pが一旦停止され、斜めずれを修正された後転写定着ベルト2上の画像の先端と搬送方向の所定位置とが一致するタイミングでニップNに向けて送り出されるレジストローラ対18を有している。
なお、実施形態装置では転写紙搬送路の転写定着部直前には紙表面を加熱する紙加熱手段としての加熱ローラ120が設けられている。この加熱ローラ120を140〜200℃といった範囲で制御し、紙表面を加熱する。この際、紙裏面に熱電対を固定し実験すると、加熱ローラ120の接触後0〜60msでは紙裏の温度は15℃以内の変化しかないことが確認されている(計測はリコーコピー用紙6200を用いた)。ここでは紙加熱を加熱ローラ120によって行っているが、他の方式であっても構わない。
【0018】
紙加熱手段の別な構成例を図8乃至図11に示した。図8の紙加熱手段は加熱源となる高温のローラ130とは別に用紙に接触する小径ローラ131を用紙との間に設けている。この構成では用紙に接触する小径ローラ131を小径化できるので紙加熱位置から転写ニップNへの距離が短くなり、図1の場合より、紙裏面まで熱が伝わる前に転写定着が可能となる。高温のローラ130はアルミ薄肉ローラでハロゲンヒータなどの熱源を内包し、小径ローラ131は熱伝導が高いシリコンゴムローラである。
図9の紙加熱手段は高温の金属ローラ130と小径ローラ131との間に無端状の金属のSUSベルト132を張架している。この構成では転写ニップN近傍まで加熱でき、図8の構成よりも用紙との接触時間を長くできるので、用紙搬送速度がアップしても加熱時間が確保できる特徴がある。用紙とSUSベルト132との接触を確実にするため、用紙裏面からローラや板バネなどの押し当て部材を設けても良い。
図10の紙加熱手段は加熱源として自己温度制御可能なPTC特性を有する発熱体134と発熱体から伸びるSUS製板バネ133からなり、板バネ133と用紙表面が接触し加熱される。発熱体134は所定のキューリー点となると抵抗が急激に上昇しる抵抗発熱体である。このため、その自己温度制御機能によって用紙が異常昇温してしまうような事故を防止できて安全である。紙の凹凸面に対しても追従して過熱できるようにSUS板バネのかわりに金属繊維を束ねた金属ブラシにしてもよい。
【0019】
図11の紙加熱手段は加熱源としてPTC特性を有する発熱体134を用紙の上面に接触させると共に、繊維を植毛した押し当て部材122を用紙下面に圧接させることによって、用紙表面を加熱する。図10と比べて用紙加熱時間を長くできるので、用紙速度がアップしても加熱時間が確保できる。押し当て部材122の繊維はポリイミド繊維を用いている。また、繊維の巻き込み防止のため繊維進入防止部材123を設けている。
また、紙加熱手段から転写ニップNに突入するまでの受け渡し区間で補助加熱手段(輻射過熱)によって、紙表面温度の低下を抑えることができ、より安定して加熱することができる。その際、安全性のため異常時には輻射をさえぎるシャッターを設けることが好ましい。
図1に戻り、紙加熱手段(記録媒体用加熱手段)としての加熱ローラ120を通過した用紙Pは、従動ローラ9に支承され転写定着ベルト2と加圧ローラ24により形成されたニップN(転写定着部)に突入し挟持され加圧および加熱されながらニップを通過することによって転写定着ベルト2の像担持面上のトナー像Tが用紙P表面に転写定着される。
上述の転写定着工程の後、転写定着ベルト2に対する転写部と、最も上流側の感光体3Kに対する転写部との間にある冷却手段20によって、転写定着ベルト2は冷却される。これによって、転写定着ベルト2の温度上昇を抑えることができ、感光体への熱影響がなくなる。冷却手段20では、特に温度が高い領域を集中して選択的に強く冷却するように制御しており、転写定着ベルト2に温度ムラが残るのを効率的に防止している。
なお、図1に示すように冷却手段20と併用して冷却手段20の下流位置に、均しローラ210を設けて補助的に温度分布を均すようにしてあり、併行して温度ムラ解消を一層確実に行えるようにしている。この均しローラ210については別途後述する。
【0020】
次に本実施形態の特徴点である冷却手段20について図2を用いて詳細に説明する。図2は本実施形態のファンを複数個並べて構成した冷却装置である。冷却装置としてベルト幅方向(移動方向と直交方向)に沿って整列して配設された複数のファン(軸流ファン、クロスフローファンなど)を用いている。
そして、図示しない制御部が、既存の紙幅検知部(図示なし)からの用紙幅信号に基づいて、各ファンを個別に風量制御あるいはON/OFF制御することによって、高温の紙と接触した転写定着ベルトを幅方向に選択的に冷却する(転写定着部材の冷却幅を制御する)。すなわち、紙と接触し温度上昇した部分を選択的に冷却する。上記紙幅検知部からの信号によって、紙幅に対応するファンのみをONする。例えばA4縦であれば、紙が通過した210mm幅に対応する部分(帯状領域)の転写定着ベルトを選択的に集中して冷却し、効率的に転写定着ベルトを冷却することができる。
上記のように冷却に気体を用いる強制空冷の場合は換気風量が重要である。本実施形態では先に示した冷却手段20を補助し冷却効率を高めるための構成として機外へ冷却に用いたエアーを放出するための排気手段(送風手段)としてファンを配設してある。この排気用のファンは、一つ以上設けても良い。冷却に気体を用いる強制空冷の場合、一般的に以下のような式が適用できる。
q=ΔT・(ρ・Cp・Q/60)
ここで、q:装置発熱量(W)=紙から受け取る熱量
ΔT:内部温度上昇(K)=転写定着ベルト温度上昇
ρ:空気密度(kg/m3)=常温にて約1.2kg/m3
Cp:空気の定圧比熱(J/(kg・K))=約1007J/(kg・K)
Q:必要換気量(m3/min)、である。
【0021】
図1により冷却風の流れを具体的な例を示して説明する。冷却装置20からの冷却エアーを被冷却対象物である転写定着ベルト(紙幅検知部からの用紙幅信号に基づいた幅)へ送風する。このとき、エアーフローをスムースにするため、転写定着ベルト搬送方向へやや傾けたほうが良い。転写定着ベルトを冷却したエアーは転写定着ベルトの搬送方向へ沿って流れ、転写定着ベルト下流側に設置された排気手段(送風手段)として機能する排出ファン26によって、機外へ放出される。
例えば、排出ファン26として、軸流ファンを装置筐体の適切な位置に配設する。排出ファン26の気体吸入側および/または気体送出側に適宜のダクトを設けるようにしても良い。このように、常にフレッシュなエアーを冷却風として用い、スムースなエアーフローで換気風量を上げることでより効果的な冷却が可能となる。なお、別な実施形態として後述するように、冷却装置(冷却手段)としてイオン風を用いている場合(図5、図6参照)には、オゾンが発生するので、排出ファン26には、オゾンフィルターをつけることが望ましい。
冷却手段20の下流位置に配設されて転写定着ベルト2に接触させてある均しローラ210も、補助的に温度ムラをより減少させている。ヒートパイプや熱伝導率の高いグラファイトなどの材料で形成されており、転写定着ベルト2に接触して回転する。なお、均しローラ210を別途設けずにローラ11をヒートパイプローラとすることで均しローラと兼用することも可能である。そして、冷却された転写定着ベルト上の残留物(残トナーなどの付着物)はベルトクリーニング装置12によって回収され、一連の転写定着プロセスは完了する。
【0022】
冷却手段20としては、上述例とは異なる構成を採用することも可能であり、上述した構成と同等の作用効果が得られる。空気流を利用した冷却手段20の異なる実施例を挙げる。
図3は、変形例の冷却手段20Aを示す模式的構成図である。この冷却手段20Aは、単一の冷却装置(長尺シロッコファン)のファン吹き出し口に延在する方向を適宜の駆動機構で可変に構成したルーバーが装着されている。この構成の場合には冷却制御部が、紙幅検知部からの信号によってルーバーを駆動して姿勢を制御し、紙幅に対応する転写定着ベルト領域へ集中的にエアーが送風されるようにする。トナー画像は転写定着ベルト2の幅方向対称に中央部に形成されるのでルーバー群は、転写定着ベルト2の側端部寄りのものを幅方向対称に可動させれば足りる。
図4は別な構成例を示しており、コンプレッサまたはファンから供給したエアーをベルト幅方向に分布した多数の開口群(エアー噴出し穴)を有したエアノズルから噴出させ、転写定着ベルトを冷却する。これも、紙幅検知部からの信号によってエアー噴出し穴を開閉制御し紙幅に対応する位置のノズルのみを開状態にすることで、転写定着ベルトの温度上昇した部分を選択的に冷却することができる。
【0023】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、紙幅検知部からの用紙幅信号に基づいて、紙と接触した転写定着ベルト幅を選択的に冷却することで転写定着後の転写定着ベルトの温度ムラ、特に連続通紙中による転写定着ベルトの紙幅温度上昇を抑えることができ、常に良好な画像を提供することができる。
なお、本実施形態は、未定着トナー像を保持した用紙を単に加熱・加圧する従来の定着装置に対し、紙加熱転写定着方式を採っているので、既知効果としての省エネルギー特質も備えている。この点について簡略に説明すると、従来のカラ−画像形成装置では十分な光沢を得るために用紙による温度低下を考慮して白黒画像形成装置に比べて1.5倍ほどの熱量を与えていた。このため、用紙が必要以上に加熱されるとともに、トナーと用紙の密着性も必要以上に高められていた。
これに対し本実施形態では、十分な光沢を得るための温度として、転写定着ベルト温度と紙温度とそれぞれ独立に設定できるようにしてあるので、転写定着ベルト2の温度(定着設定温度)を低くできる。また、用紙Pは直前に加熱されるので過剰に加熱されず、トナーTと用紙の密着性も必要以上に高められることはない。
このように本実施形態においては、中間転写体への熱移動を抑制できるので耐久性を向上させることができている。また、既述した冷却手段を備えているから中間転写体の温度を低減でき、中間転写体側の熱劣化を一段と抑制できる。なお、低速機の場合など装置の仕様や定格によっては、前述した定着直後の選択的な冷却手段20のみとしても良く、実用上充分な冷却性能を確保できる。
【0024】
[第2実施形態]
第2の実施形態は、上述した第1実施形態の構成に加えて更に既述した冷却手段20の気体吸入側に熱交換器を取り付けるようにしたものである。図示は省略するが、熱交換器を併用することで、冷却された気体を取り入れ、被冷却物である転写定着ベルトに冷却された気体を当てることで、より冷却効果を上げることが可能となる。
熱交換器は、隔壁を通じて2つの流体間で熱の授受を行わせて、加熱、蒸発、冷却、凝縮などの用途に使用されるものであり、一般的には、次のようなものがある。
イ)多管円筒形熱交換器
ロ)二重管式熱交換器
ハ)プレート式熱交換器
ニ)その他の熱交換器
これらのいずれかの熱交換器を用い、冷却されたエアーを冷却に利用することで常温のエアーよりも、効果的に転写定着ベルトを冷却することができる。
【0025】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態では、先に図1に示した第1実施形態におけるファンに替えて冷却手段20としてイオン風冷却装置を用いており、コロナ放電により発生したイオン風を利用して気流を生じさせ、該気流によって被冷却部である転写定着ベルトを冷却するようにしたものである。
第3実施形態の画像形成装置(複写機)は、冷却手段としての冷却装置20が異なるのみで、その他の部分の構成は第1実施形態と全く同一(図1参照)で良いため、要部全体構成の図示と同等各部の説明は省略し、以下では冷却装置を主体に説明する。
第1実施形態で冷却手段に用いたファンはその作動時に騒音を発生し、しかも設置に大きなスペースを必要とする。また、ファンによるエアーは拡散する乱流となるためピンポイントで冷却するのは限界がある。このような諸々の点を鑑みて、本実施形態では冷却手段としてイオン風を発生させこれを利用し、転写定着ベルトを冷却する。ファン等の冷却装置に比べ、騒音を発生せず、小型化が可能となっている。
付言すれば、第3実施形態で用いたイオン風冷却装置は、冷却手段として機能するとともに転写定着ベルトや未転写のトナーの残留電荷を除電することができ、クリーニングや次の作像プロセスを良好に行うことができる副次的効果もある。
【0026】
イオン風を利用した冷却装置について図を用い詳細に説明する。図5に例示したイオン風冷却装置は、転写定着ベルト2の幅方向に伸びて延在させたタングステンワイヤ21(60μm程度)を放電電極とし、該タングステンワイヤ21から転写定着ベルト側に位置して複数の電極板22を設けることによって構成されている。これらの電極板22は金属等の板状の導電体からなり、面方向を転写定着ベルト2の表面に交差させて設置され、交差角度を調節できるように可動式になっている。タングステンワイヤ(以下、単にワイヤ)21には放電電源23によって、高電圧(5〜10kV程度)が印加されるようになっており、各電極板22はアースされている。
放電電源23によってワイヤ21に高電圧が印加されると、ワイヤ21と電極板22との間でコロナ放電が発生し、ワイヤ21から電極板22へ向けて電流が流れる。これによって窒素や酸素がイオン化される。これらのイオン化された分子は、放電電極2から放射状に発生する電界の方向に向かって周囲の中性分子に衝突しながら流れ、それに伴って、イオン化された分子が放出された後に、近くの空気が流れ込み、ワイヤ21と電極板22の近傍のエアーを転写定着ベルト2の方向へと押し出すように作用し、気流を発生させイオン風が生じる。その際、紙幅検知部からの信号に基づいて制御されて端部側の電極板がルーバーのように可動し(図5の矢印の方向)、紙幅に対応する部分の転写定着ベルトへイオン風が導かれるようになっている。
【0027】
この動作によって、転写定着ベルトの長手方向についての温度ムラがなく、効率的に転写定着ベルトを冷却することができる。このとき、コロナ放電によって生じるイオン風にはオゾンが含まれているため、オゾンフィルター等でオゾンを除去することが望ましい。なお、上記構成ではワイヤに正負の電圧どちらを印加させても良いが、正の電圧を印加したほうが、気流の発生効率を高めることができて有利である。
イオン風を用いることの利点は、気流の乱れが少なく、被冷却物に対して均一に流すことが可能となる点にある。また、ファンよりも設置場所をとらずに済むし、騒音を発生することもない。さらに、付近のエアー(空気層)の熱伝導度を向上させる効果があり、イオン化された気体が接触するため、転写定着ベルトの残留電荷や残トナーの除電も行え、これによっても冷却効果の促進を図ることができる。
【0028】
図6は、イオン風冷却装置の異なった構成を示しており、放電電極として針電極31を用い、円環状の平板電極32との間に高電圧を印加して、コロナ放電を生じさせることで、針電極先端から平板電極32に向けて発生し中央の円形孔部分を通過して流れるイオン風を利用して転写定着ベルト2を冷却する構成である。
本構成では、図6(a)のように平板電極32に小孔を設け、そこからイオン風を噴射させる。図6(b)は実際のイオン風冷却装置の具体的な構成図であり、図に示すように、個々に通電制御可能な電極対(針電極31と平板電極32)を、転写定着ベルト2の幅方向に一列に複数組並べてイオン風冷却装置を構成する。稼動時には、紙幅検知部からの信号に応じて、紙幅に対応する位置の放電電極にのみバイアスを印加するように制御することで、転写定着ベルトの紙幅に対応する箇所を選択的にピンポイントで冷却することができる。
この構成により生じるイオン風は集約性(指向性)に優れており、局所的に送風することが可能となる。そのため、転写定着ベルトの紙幅に対応する箇所(領域)をピンポイントで冷却することが可能となになっている。図6(b)では中央寄りの4つの電極対に選択的に通電し、紙が接触した高温領域に集中的に冷却を行っている様子を図示してある。
なお、本実施例においても、先に示した実施例1の場合と全く同様に冷却手段に加えて機外へ冷却に用いたエアーを放出するための排気手段(送風手段)として一つ以上のファンを備えていて、より冷却効果を上げるようにしている。
【0029】
以上説明した第3実施形態によれば、紙幅検知部からの用紙幅信号に基づいて、紙と接触した転写定着ベルトの幅適所を選択的に冷却することで転写定着後の転写定着ベルトの温度ムラ、特に連続通紙中による転写定着ベルトの紙幅温度上昇を抑えることができ、不具合なく良好な画像を提供することができる。
特に、イオン風冷却装置を採用しているため、ファン冷却に比べ冷却用の気流の乱れが少なく、被冷却物に対して均一に冷却用気体を流すことができる。また、ファンよりも設置場所をとらずに騒音を発生することもない。さらに、イオン化された気体のため、転写定着ベルトの残留電荷や残トナーの除電も行え、エアーの熱伝導度も向上させることも可能であり、これによっても冷却効果の促進を図ることができる。
なお、本実施例においても、先に示した実施例2の場合と全く同様に冷却手段の気体吸入側に熱交換器を取り付けることで、冷却された気体を取り入れ、被冷却物である転写定着ベルトに冷却された気体を当てることで、より冷却効果を上げるように構成することができる。これとは逆に、装置の定格や保証品質によってはイオン風冷却装置のみで実用上充分な冷却効果が得られる場合には、併用して設けた排気手段としてのファンについては省略しても良い。
【0030】
[第4実施形態]
本発明が適用される画像形成部の方式は、上述各実施形態のように4連タンデム方式のものに限らない。図1に示す以外にも、感光体上色重ね方式の画像形成装置に適用した場合においても既述したのと同様のメリットが得られる。図7に第4実施形態の感光体上色重ね方式の画像形成装置の内部要部を側面図で示す。画像形成装置としての全体構成は周知であり内部要部のみ示した。なお、図1と同等機能部分には、同一の符号を付してある。
この方式では、周動する単一の感光体の表面を帯電手段によって一様に帯電し、そこにレーザ書込手段により複数色の画像データをレーザ光によって順次書き込んで静電潜像を形成した後、複数の現像手段によってそれぞれ異なる色のトナーを付着させてトナー像を形成して可視化し、その各トナー像をトナー像担持体としての中間転写ベルト上に順次に一次転写して重ね合わせた後、転写定着装置によって記録媒体に一括して転写及び定着を行う。
【0031】
図7に示した感光体上色重ね方式の画像形成部自体は一般的なもので各部構成とその機能については、周知であるから説明は簡略化し、転写定着ベルト2の冷却装置についてのみ詳細に説明する。
図7のカラ−複写機も、装置本体中央部に位置する画像形成部1Aと、この画像形成部1Aの下方に位置する給紙部1B、上方に位置する図示しない画像読取部を有している。画像形成部1Aには、周回可能に張設されて水平方向に延びる転写面を提供する中間転写体としての転写定着ベルト2が配置されており、該転写定着ベルト2の上面には、色分解色と補色関係にある色の画像それぞれを形成するための構成が設けられている。
すなわち、単一の感光体3Aが転写定着ベルト2の転写面部に圧接させ配設されている。7Aは1次転写装置となる転写ローラである。転写ローラ7Aの周上には、補色関係にある色のトナー(イエロ−、マゼンタ、シアン、ブラック)によるトナー像を担持可能な像担持体としての現像装置6Y、6M、6C、6Kが転写面部に沿って順に並置されている。また、感光体3Aの周りには、回転過程において画像形成処理を実行するための図示を省略した帯電装置、及びクリ−ニング装置が配置されている。感光体3Aの上方には、光書き込み手段としての書き込み装置5Y、5M、5C、5Kが、配置されている。
【0032】
感光体3Aの表面が図示しない帯電装置により一様に帯電され、続いて順次、各色毎に画像読取部からの画像情報に基づいて感光体3A上に静電潜像が形成され各色毎の現像装置6によりトナー像が重ねて形成される。こうして色重ねして形成されたカラー可視像(トナー像)が、所定のバイアスが印加される1次転写装置7Aにより転写定着ベルト2上に1次転写される。転写後感光体3A上に残留したトナーは図示しないクリ−ニング装置により除去され、また、転写後図示しない除電ランプにより感光体3Aの電位が初期化され、次の作像工程に備えられる。 1次転写された転写定着ベルト2上のカラートナー画像は、加熱手段13で加熱されながら転写定着部に向かい、ニップを通過する際に転写用紙Pに転写定着され排出経路へ搬送される。一方、転写定着後の転写定着ベルト2は、第1実施形態と全く同様に下流の冷却手段20によって転写用紙幅に対応する帯状の部分を集中的に冷却される。
本実施形態における転写定着装置は、第1実施形態と全く同等構成で(各部の寸法、厳密な配設位置寸法等は異なる)、転写定着ベルト2、ニップNを形成している加圧ローラ24、加熱手段(加熱体)13、冷却手段である送風ファン20(既述したイオン風冷却装置であっても無論良い)、排気ファン(排気手段)26、そして図示のない、紙幅検知手段としても機能している画像処理部および冷却制御部によって構成されている。
【0033】
本実施形態では、紙幅検知は、画像処理部において、入力画像信号(画像読取部からの画像情報、或は外部クライアント装置からの印刷ジョブ等)から、あるいはこれをラスター画像化した画像データから形成すべき画像の幅を検出して前述紙幅信号を生成し出力する。その他の上記各部の構成・機能は既述第1実施形態と同等であるから、説明は繰り返さない。冷却手段20(例えば軸流ファン、図2参照)によって転写定着ベルト2の転写用紙幅に対応する帯状の部分にのみ空気が集中的に吹き付けられ転写定着ベルト2を効率良く冷却する。転写定着ベルト2を冷却した空気は、大部分が排気ファン26によって装置外に排出される。
ちなみに、第4実施形態の感光体上色重ね方式は、単一の感光体上の作像動作として、1色のトナーに対する帯電、露光(書き込み)、現像までの一連の工程を、他色のトナーについても同様工程を同じ1つの感光体上で個別に行う方式である。一方、前述各実施形態での4連タンデム方式は、1色毎に1つの感光体上に作像工程を行い、中間転写体から転写定着体に2次転写定着した後、転写定着体から転写材に3次転写定着しており、各色分の感光体を複数必要とするものである。この方式と比較すると、本実施形態に示した感光体上色重ね方式は、高速対応性にも適しており、更に感光体が1つで構成されているため、省スペ−ス化が可能であり、マシンの低コストに繋がる利点がある。
【0034】
以上複数の実施形態を挙げて本発明について説明したが、本発明が前記各実施の形態に限定されず、本発明の技術思想の範囲内において、前記各実施の形態の中で示唆した以外にも、前記各実施の形態は適宜変更され得ることは明らかである。また、前記構成部材の数、位置、形状等は前記各実施の形態に限定されず、本発明を実施する上で好適な数、位置、形状等にすることができる。また、前記加熱手段と記録媒体加熱手段のうちいずれか一方のみを備えた転写定着装置であっても、転写定着部材の幅方向の温度ムラが生じる慮がある場合には、本発明を適用することで、次の作像プロセスに悪影響を与えるのを確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1実施形態の画像形成装置(カラ−複写機)の内部要部を示す側面図である。
【図2】第1実施形態に係る冷却手段を示す模式的構成図である。
【図3】第1実施形態に係る冷却手段の変形例を模式的に示す構成図である。
【図4】第1実施形態に係る冷却手段の別な変形例を模式的に示す構成図である。
【図5】第3実施形態におけるイオン風冷却装置を示す構成図である。
【図6】(a)(b)は、イオン風冷却装置の異なった態様を示す構成図である。
【図7】実施形態の感光体上色重ね方式の画像形成装置の内部要部を示す側面図である。
【図8】実施形態に係る他の紙加熱手段に係る転写定着部分近傍の拡大図である。
【図9】他の紙加熱手段を説明する拡大図である。
【図10】他の紙加熱手段を説明する拡大図である。
【図11】他の紙加熱手段を説明する拡大図である。
【符号の説明】
【0036】
1A 画像形成部
1B 給紙部
2 転写定着ベルト(転写定着部材)
3Y、3M、3C、3K、(3A) 感光体
4(4Y、4M、4C、4K) 帯電装置
5(5Y、5M、5C、5K) 書き込み装置
6(6Y、6M、6C、6K) 現像装置
7、7A 1次転写装置(転写ローラ)
8 クリ−ニング装置
9、10 従動ローラ
11 駆動ローラ
12 クリ−ニング装置
13 加熱装置(加熱手段)
20 冷却手段(転写定着部材冷却手段)
21 タングステンワイヤ(放電電極)
22 電極板
23 放電電源
24 加圧ローラ(加圧部材)
26 排気手段(排出ファン)
31 針電極
32 平板電極、
120 加熱ローラ(紙加熱手段)
210 均しローラ(温度均し手段)
N ニップ
P 記録媒体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体の転写定着面にトナー像を転写するとともに定着する転写定着装置であって、
表面にトナー画像を担持させる転写定着部材と、
前記転写定着部材上のトナー像を加熱する加熱手段、および/または、記録媒体の表面を転写定着の前に予め加熱する記録媒体加熱手段と、
前記転写定着部材との間で記録媒体を加圧するニップ部を形成する加圧部材と、
を具備した転写定着装置において、
前記記録媒体を前記ニップ部で転写定着した後の前記転写定着部材を冷却するための、冷却幅を調節可能に構成された冷却手段と、
記録媒体の紙幅、または印字画像データにより決まる印字画像幅のいずれかに基づいて前記転写定着部材の冷却幅を制御する冷却制御部と、を備えたことを特徴とする転写定着装置。
【請求項2】
記録媒体の幅を検知して用紙幅信号を出力する紙幅検知部を更に備え、
前記冷却制御部は、前記紙幅検知部からの用紙幅信号または、印字画像データにより求めた印字画像幅信号のいずれかの信号に基づいて前記転写定着部材の冷却幅を制御することを特徴とする請求項1に記載の転写定着装置。
【請求項3】
前記冷却手段は、コロナ放電によって発生したイオン風を利用して冷却するイオン風冷却装置であることを特徴とする請求項1または2に記載の転写定着装置。
【請求項4】
前記冷却手段は、送風装置によって発生させた気体流を冷却に用いることを特徴とする請求項1または2に記載の転写定着装置。
【請求項5】
気体を冷却する熱交換器を備え、前記熱交換器によって冷却された気体流またはイオン風を前記転写定着部材の冷却に用いることを特徴とする請求項3または4に記載の転写定着装置。
【請求項6】
前記転写定着装置組み込み装置本体の外側へ空気を吐き出すための排気手段を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の転写定着装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の転写定着装置を備えたことを特徴とする電子写真方式による画像形成装置。
【請求項1】
記録媒体の転写定着面にトナー像を転写するとともに定着する転写定着装置であって、
表面にトナー画像を担持させる転写定着部材と、
前記転写定着部材上のトナー像を加熱する加熱手段、および/または、記録媒体の表面を転写定着の前に予め加熱する記録媒体加熱手段と、
前記転写定着部材との間で記録媒体を加圧するニップ部を形成する加圧部材と、
を具備した転写定着装置において、
前記記録媒体を前記ニップ部で転写定着した後の前記転写定着部材を冷却するための、冷却幅を調節可能に構成された冷却手段と、
記録媒体の紙幅、または印字画像データにより決まる印字画像幅のいずれかに基づいて前記転写定着部材の冷却幅を制御する冷却制御部と、を備えたことを特徴とする転写定着装置。
【請求項2】
記録媒体の幅を検知して用紙幅信号を出力する紙幅検知部を更に備え、
前記冷却制御部は、前記紙幅検知部からの用紙幅信号または、印字画像データにより求めた印字画像幅信号のいずれかの信号に基づいて前記転写定着部材の冷却幅を制御することを特徴とする請求項1に記載の転写定着装置。
【請求項3】
前記冷却手段は、コロナ放電によって発生したイオン風を利用して冷却するイオン風冷却装置であることを特徴とする請求項1または2に記載の転写定着装置。
【請求項4】
前記冷却手段は、送風装置によって発生させた気体流を冷却に用いることを特徴とする請求項1または2に記載の転写定着装置。
【請求項5】
気体を冷却する熱交換器を備え、前記熱交換器によって冷却された気体流またはイオン風を前記転写定着部材の冷却に用いることを特徴とする請求項3または4に記載の転写定着装置。
【請求項6】
前記転写定着装置組み込み装置本体の外側へ空気を吐き出すための排気手段を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の転写定着装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の転写定着装置を備えたことを特徴とする電子写真方式による画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−44330(P2010−44330A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209961(P2008−209961)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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