説明

転写装置

【課題】
本発明により、転写装置において、レジスト膜厚、及び被転写材の薄い厚みを従来よりも高精度に制御することができる。
【解決手段】
シリコンウェハなどの金型と被転写体、またはレジストフィルムとが接触する面内の、出来るだけ生産に関係の無い一部に微小穴を開けておき、その微小穴から被転写体のみの膜厚を測定する従来よりも高精度センサを取り付けることにより、被転写体のみの寸法が測定でき、転写中における寸法変化に線形性のある簡素な補正値を掛けることにより従来よりも高精度な薄膜の厚み制御を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被転写体に転写する転写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路、及び、テンティング技術においては微細化、集積化が進んでおり、その微細加工、及び電子回路形成を実現するためのパターン転写技術としてフォトリソグラフィ装置の高精度化や、パターン回路形成用フィルムの高精度な薄膜形成技術の開発が進められてきた。
【0003】
しかし、加工方法が光露光の光源の波長に近づき、リソグラフィ技術は限界に近づいてきており、更なる微細化、高精度化を進めるために、リソグラフィ技術に代わり、微細なパターン形成を低コスト、且つ高スループットで行うための技術として、被転写体上に形成したいパターンと同じパターンの凹凸を有するモールドを、被転写基板表面に形成されたレジスト膜層、又は被転写体そのものに対して型押し、加熱、加圧、冷却を行うことで所定のパターンを被転写体へ転写する、インプリント技術が発達してきた。
【0004】
また、上記インプリント技術において、成形時に被転写体の膜厚を制御する技術や、レジスト膜など形成するための、薄膜形成技術として、ラミネート技術などが発達してきている。被転写体、及びレジスト膜を薄くすることにより、更なる小形化、微細化、及びコストダウンが図れるといったメリットが上げられる。
【0005】
ここで、膜厚を制御する技術としては、特許文献1に記載のように、被転写体保持機構と、金型保持機構表面にセンサを取り付け、被転写体と金型が密着した際の前記被転写体保持機構と金型保持機構との隙間を測定し、測定結果から位置を制御することにより厚みを制御する方法があげられる。
【0006】
また、特許文献2に記載のように、レジストを複数回に分けスピンコートする方式や、特許文献3のように、レジストを複数種類使用し、スピンコートで塗布する方式や、レジスト剤を対象物へ塗布した後に、ヘラ状の爪で均一に伸ばす方法、及び剛性のある板で押付ける方法などがある。
【0007】
更に、特許文献4では、フィルム材をローラにて圧着する際、荷重、及びローラ位置を制御し、膜厚を制御する方法などが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008-132711
【特許文献2】特開2011-23387
【特許文献3】特開平6-97068
【特許文献4】特開平5-61200
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の膜厚制御方式では、サーボモータ、及びボールネジ等のメカ的なタワミ量や、転写ステージ、及び保持機構の熱影響への考慮から、保持機構部へセンサが設置されており、保持機構部間の隙間を測定し、膜厚を制御する方法となっている。
【0010】
しかし、熱による金型自体の膨張、材料の膨張、荷重によるステージのタワミ、(例:ウェハφ150単体を4MPaで加圧した際、ウェハ端部から10mm離れた位置で数μm撓む)を考慮されておらず、ミクロンオーダーでの膜厚制御は困難である。
【0011】
ここで、補正値を入れたとしても、ウェハの設置位置の変化や、金型と被転写体自体の厚みバラつき(参考:ウェハφ150厚みt675μm±20μm)があり、金型、及び被転写体の膜厚を予め測定し管理しておかなければならない為、単純に保持機構部間をセンサで計測した値に補正を掛けるだけでは、膜厚制御が困難である。
【0012】
また、被転写体は主に樹脂材であり、金属と比べると高い弾性力をもっている。転写が行われる際には、被転写体の膜厚が著しく変化しており、塑性変形と弾性変形が同時に発生するため、補正値による制御も困難となる。荷重によるタワミを小さくするためには、被転写体や金型を小さくし転写に必要とされる荷重を出来るだけ小さく抑えることや、装置自体の剛性をあげるべく、ステージ、ボールネジなどの強度アップすることもあげられるが、転写面積が限られ、更に装置が巨大化する。
【0013】
但し、光硬化性の樹脂を使用する場合では、一般的に高荷重を必要としない為、ステージタワミの影響を考慮しなくて良い場合がある。
【0014】
特許文献2、及び特許文献3ではパターン回路形成用としてレジストフィルムとするべく、スピンコートの技術が利用されているが、配線パターンが深く、パターン間が狭い場合など、テンティング不良が発生しやすくなる。
【0015】
特許文献4においてはロールで張り合わせる、ラミネート技術が利用されており、加圧力や、ロールの隙間寸法の条件出しが可能であれば、板状やシート状の幅方向の寸法で急激な変化が無いものに対しては有効である。
【0016】
しかし、ロール加圧は一直線上に圧力が掛かっている為、被転写体の幅方向における寸法が、円形であったりすると、転写条件が変化し、膜厚が一定とならなくなる。そのため、ウェハへのテンティングには向かない。
【0017】
本発明の目的は、例えば、微細構造の転写可能であるとともに、被転写体の薄膜成形の従来よりも高精度な制御を可能とし、ウェハへのレジスト膜成形の従来よりも高精度な薄膜厚制御も可能とする、小形で安価となる転写技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
金型、又は基板である転写物と被転写体、またはレジストフィルムとが接触する面の範囲内において被転写体の膜厚を測定する手段を設けると共に、その測定値に応じて、加圧条件を制御することで、転写後の膜厚を従来よりも高精度に制御することができる。
【0019】
上記構成について、別の表現にて、以下に説明をする。
【0020】
被転写体が支持される固定部と、転写される形状を有する転写物を支持する支持部と、前記支持部が設けられ、前記固定部に対して近づく、または遠ざかる移動方向に移動可能に駆動される駆動部と、少なくとも前記転写物を加熱、冷却する機構部と、前記被転写体と前記転写物とが接するように加圧する加圧機構部と、
前記被転写体と前記転写物とが接触する面の範囲内において、前記被転写体と前記転写物との距離の測定する測定機構部と、前記測定機構部で計測した距離をもとに、前記加圧機構を制御する加圧制御機構部と、少なくとも前記固定部、前記駆動部を支持するベースとを有するようにして、転写装置を構成する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、微細構造転写装置、又はそれに準じる装置において、被転写体を従来よりも高精度に薄膜成形が可能であるとともに、レジスト膜厚の従来よりも高精度な薄膜成形制御をも可能とする技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施形態を表す微細構造転写装置の概略構成を示す正面図。
【図2】本発明の実施例の被転写体保持側へセンサを取り付けた概略構成を示す正面図。
【図3】本発明の実施例の被転写体保持側へセンサを取り付けた概略構成を示す上面図。
【図4】本発明の実施例の金型保持側へセンサを取り付けた概略構成を示す正面図。
【図5】本発明の実施例の金型保持側へセンサを取り付けた概略構成を示す上面図。
【図6】本発明の実施例での転写における被転写体の変化量の目標値と実際の変化量との関係を表すグラフ。
【図7】本発明の実施例の金型と被転写体が接触した状態を表す概略図。
【図8】本発明の実施例の金型と被転写体を複数設置した状態を表す概略図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
先ず、本発明の実施例の微細構造転写装置および転写方法について説明する。図1に本発明の実施形態を表す微細構造転写装置の概略構成を示す正面図を示す。
【0024】
図1の垂直方向をZ軸とし以下説明を行う。
【0025】
本装置の転写動作においては、表面にナノメートル、又はマイクロメートル単位の微細な凹凸が形成された金型7を被転写体6に接触させ加熱、加圧、冷却を行い被転写体6の金型7が接触した面に微細構造体を成形する熱式のナノインプリント装置の転写であり、テンティング動作においては、被転写体6をレジスト材とし、金型7であるテンティング対象物へ押付け、接着させる装置である。
【0026】
ここで、本発明において、微細構造とは数μmから数nm程度の範囲の凹凸構造を有する構造体を言う。また、薄膜とは数nmから数百μmの範囲である。
本装置は、ベース3上を移動できる駆動、及び型保持部1(以下、駆動部1と称す)とベース3に固定された固定部、及び被転写体保持部2(以下固定部2と称す)から構成されており、駆動部1には金型7が保持され、固定部2には被転写体6が保持できる。駆動部1はサーボモータ9が回転することにより、駆動伝達部8から回転動作が伝達し、ボールネジ11が回転することによりZ軸方向で駆動することができる。
【0027】
サーボモータ9はサーボモータの特徴であるエンコーダが実装、又は外付けにて取り付けられており、自身の回転位置を記憶することができる。この時、サーボモータ9の回転は制御装置10にて速度、位置、トルクなどが制御されており、所定位置を0とし、所定位置からZ方向へ移動した距離を、駆動部1のZ方向の位置へ表示変換できる。
【0028】
ここで、図示はされていないが、駆動部1、及び部2には金型7、及び被転写体6を加熱、冷却するための機構、または光硬化させるためのUV照射装置が実装されているものである。また、駆動部1においては、ベース3とリニアブッシュ、又はリニアガイド、及びリニアブロック等に準じる機構が設けてあり、駆動部1はスムーズにガイドされ、Z軸方向へ移動が可能である。
【0029】
更に、駆動部1にはロードセルが組込まれており、金型7、及び被転写体6に掛かる荷重を検出できる機構である。駆動部1とボールネジ11の連結にはフリージョイント、また、サーボモータ9と駆動伝達部8はカップリング、チェーン、プーリなど機械的に締結されているものである。
【0030】
サーボモータ9は制御装置10によりトルク制御、位置制御、速度制御など様々な動作が可能であり、上記ロードセルの圧力からフィードバック制御も可能である。
【0031】
加熱、冷却に関しては、制御装置10内に温調器、温度検出器、サーミスタなどが設けてあり、適切なPID制御にて加熱から冷却まで可能である。
加熱の熱源としては、カートリッジヒータ、面状ヒータ、誘導加熱ヒータ、ランプヒータなど様々上げられるが、金型7、及び被転写体6を熱転写するには大きな熱量が必要とされる為、堅牢なヒータブロックとカートリッジヒータの組合せが好ましい。
【0032】
冷却には、冷却媒体として水、又はアルコール水が使用される。
冷却媒体を循環するにあたっては、チラー等の冷却装置を設置し、温度管理された冷却媒体を循環させることが好ましい。また、冷却完了後は、次の加熱の為、冷却媒体を排出する為に、N2やクリーンエア等の不活性ガスにて排水動作を行うものである。
【0033】
被転写体6が光硬化性樹脂の場合においては、上記ヒータ、冷却機構以外に、紫外線(UV)を照射する為のランプが設置される構成であっても良い。
また、図示されていないが、転写雰囲気を真空状態にする機構が設けられており、真空、大気状態の両方で転写が可能な構成となっている。
【0034】
固定部変位センサ5の取り付け部正面概要図を図2に、上面図を図3に示す。
固定部2には図2に示すように、被転写体6と金型7が接触する面内において、固定部2から金型7表面までの距離を測定する、固定部変位センサ5が設置されている。
【0035】
更に、被転写体6と金型7が接触したこと検出する手段を設けておくことにより、被転写体6と金型7が接触した際に、固定部2と金型7表面までの距離を計測することにより、被転写体6単体の膜厚を計測することができる。
【0036】
このとき、距離を測定する手段として、被転写体6の材質にもよるが、光学センサなどであれば、被転写体6を透過して計測することが可能である。
【0037】
また、被転写体6の一部に微小な穴加工をし、固定部変位センサ5の位置と、被転写体6に空けた前記微小穴とを対応するように、若しくは合致させるようにすることにより、接触式センサや、超音波センサ、レーザセンサなどが利用でき、金型7と固定部2との距離を測定することができる。このことにより、金型7の厚みに影響を受けず、また、荷重による駆動部1、及び固定部2のタワミに影響を受けない被転写体6単体の厚み測定が可能である。
【0038】
駆動部変位センサ4の取り付け部正面概要図を図4に、上面図を図5に示す。
駆動部1には図4に示すように、金型7表面から固定部2までの距離を計測対象とする、駆動部変位センサ4が設置されており、金型7のチップ穴、又は加工された穴を利用し、更に被転写体6の一部に微細な穴加工をし、駆動部変位センサ5の穴位置と、被転写体6に空いた穴が対応する、若しくは、合致した際に、金型7表面と固定部2との距離を測定できる。但し、この場合においては、金型7の厚み変化により、駆動部変位センサ4の位置調整、又は膜厚成形制御に補正値を追加する構成となっている。
【0039】
上記のように、前記被転写体6に空いた穴部の位置において、駆動部変位センサ5によって、金型7表面と固定部2との距離を測定することによって、前記被転写体6と前記金型7などとが接触する面の範囲内において、金型7表面と固定部2との距離を測定することが出来るようになる。
【0040】
更には、この穴部の位置において、両者の距離を測るようにすることによって、上述した熱による金型自体の膨張、材料の膨張、荷重によるステージのタワミ、などの影響を従来よりも低減して、例えば、転写処理において、サブミクロンオーダーでの膜厚制御を可能とするものである。
【0041】
即ち、上記穴部の位置での両者の距離を測定するので、金型や、転写装置の構成部のステージ、固定部、駆動部などの熱、荷重などによる変形、変位などが上記測定結果に影響することを低減可能となる。更には、実際の管理、制御される厚さとなる膜厚の部分、部位での測定であるか、若しくは、実際の転写物、被転写体の転写される部位、またはその近く、近傍で測定するので、より精度を高めて測定が可能となるものである。
【0042】
これは、例えば、真に測定をしたい部分、部位とセンサー、測定器の測定部位が離れていると、斜めであったりした場合、離れている距離の分だけ、斜めの角度による誤差が真の測定値に対して加わる場合があり、これらが上記構成であれば、改善可能となる。
【0043】
更に上記穴部について説明をする。
【0044】
当初は、金型7表面と固定部2との距離を測定する際に、上記穴部の位置ではなく、被転写体6から約10mm程度の距離離れた位置でセンサーで測定を行った結果、転写中のセンサー測定値と、転写後に装置から取り出した被転写物の厚みの実測の測定値とで、十数μmの誤差を生じる結果が得られた。
【0045】
更には、被転写物の厚み、乃至金型の厚みが数ミクロン単位で異なる場合、又は、被転写物、及び金型の取り付け位置が数mmずれるだけで、前記十数μmの誤差に上乗せした形で誤差が生じてしまい、繰り返し精度が得られない。
【0046】
そのため、上記誤差と膜厚と間の相関関係を示すような線形性などを得ることが困難であり、例えば線形性から見出される補正値を用いて、高精度で膜厚を制御するようなことが困難であった。
【0047】
上記のことから、上記センサ取付位置では所望の精度とは、程遠いものであり、幾度も検討を繰り返したが、上記誤差を低減することが困難であった。
【0048】
これらの試行錯誤の試みの中で、「上記被転写体6における実際に転写される位置、転写される部位の出来るだけ近傍において測定することで改善出来るのでは」との着想があり、実際に検討を繰り返して、上記位置、部位での測定であれば、誤差が大幅に改善されることを確認した。
【0049】
これらの試行錯誤の結果、初めて、上記実施例の穴部を設ける発明に至ったものである。
【0050】
ここで、前記微細な穴加工の穴形状としては、円形、楕円、多角形など様々な形状で対応が可能である。また、図7に一例を示すが、被転写体6を2ヶ以上配置し、前記被転写体6が並んだ隙間にセンサが設置され、被転写体6と金型7との距離が測定できる。
【0051】
また、上記穴部の大きさは、例えば、2mm程度を想定するものである。
しかしながら、1mm乃至10mmでも良い。若しくは、前記被転写体6と前記金型7などの前記転写物との距離を測定する測定機構部である駆動部変位センサ5などの測定部が干渉されること無く、測定出来る大きさであれば良い。
【0052】
つまり、駆動部1、及び固定部2の荷重による撓みの影響が出ないような配置で被転写材6、及び金型7が配置できれば良い。
【0053】
前記被転写体6を2ヶ以上配置するのと同様に、金型7を複数配置し金型7間の隙間から、距離の計測を行うことも可能であり、前記被転写体6、及び前記金型7がそれぞれ複数配列され、前記距離を計測する事もできる。
【0054】
この時、前記金型間の隙間は、出来るだけ小さくすることで、前記駆動部1、及び固定部2の荷重による撓みの影響を抑えられ、従来よりも高精度な前記距離計測が可能となる。ここで、前記金型は円形状だけではなく、楕円、多角形などの形状が取れ、図8に示す様な形状で前記距離を測定できる。
【0055】
ここで、金型7、及び被転写体6は設置位置が一定となるよう、駆動部1、及び固定部2の取り付け部において、例えば、段差が設けてあり、押当てで位置が決まる等、位置決めが容易な構成となっている。
【0056】
上記変位センサ取り付け穴については、金型7の有効転写エリア外となるよう出来るだけ穴径が小さくされており、歩留り向上が図れる。
被転写体6の膜厚を測定するセンサとしては、非接触式のセンサであれば、例えば光学式のセンサが上げられるが、できれば、高精度、且つセンサヘッドの小さいもので、分解能が高いセンサが好ましい。接触式センサも挙げられる。このほかにも、超音波式、磁界式など挙げられるが、固定部2と金型7間の距離が測定できれば、上記センサの限りではない。
【0057】
転写における動作、及び制御は、サーボモータ9が回転することにより、駆動伝達部8からボールネジ11がZ軸方向へ動作することにより、駆動部1が固定部2へ接近し、金型7と被転写体6を接触させ、熱式においては、所定温度まで昇温し、所定温度到達後に加圧を開始、加圧完了後に被転写体6がガラス転移温度以下となるよう冷却を行い、冷却動作完了後に、駆動部1が固定部2から離れる方向へ動作し、転写完了となる。
【0058】
光硬化式の場合は、金型7と被転写体6とが接触した後の、昇温動作を省略することも可能であり、加圧完了後に紫外線(UV)を照射し、被転写体6を硬化させ、冷却動作を行い、駆動部1を固定部2から離れる方向へ動作させ、転写完了となる。
【0059】
ここで、金型7と被転写体6が接触したことを検出する方法として、金型7と被転写体6とが接触した際に発生する圧力をロードセルにて検出することにより、金型7と被転写体6の接触検知が可能である。検出する圧力は別途設定が可能である。他にも、金型7と被転写体6とが接触する際に発生する、加速度を検出する、加速度センサを取り付けることにより、検出可能である。
【0060】
また、別途、接触したことを検出する接触式、及び非接触式のセンサを設けてあっても良く、駆動部1と固定部2の隙間を測定するだけではなく、金型7、及び被転写体6の厚みばらつきを補正できるセンシング方式としたものである。
ここで、サーボモータ9の回転速度は、通常時の動作速度を高速とし、金型7と被転写体6が接触する直前から、接触後の加圧動作までを低速速度動作とすることで、大幅なタクト短縮、及び荷重制御を従来よりも高精度化できる。
【0061】
金型7をウェハとし、被転写体6をレジストとした場合は、それぞれの材料厚みが極端に異なることもなく、数十μm程度のばらつきであることから、お互いが接触する前の任意の位置まで高速で移動することが望ましい。この時、任意の位置は設定が可能である。
【0062】
被転写体6はフィルム状でも良いが、フォトレジストなどの液体状の材料に関しては、別途レジストを基材に塗布したものを被転写体6とし使用できる。
次に、薄膜成形の制御方法について記載する。
【0063】
例えば、ウェハへフォトレジストのテンティングを行う場合においては、金型7としてウェハを使用、被転写体6としてレジストが使用され、それぞれが駆動部1、及び固定部2で保持される。次にサーボモータ9が回転することにより、ボールネジ11にて駆動部1が固定部2側へ接近する。
【0064】
駆動部1が固定部2へ高速で接近し、前記任意位置でサーボモータ9の回転速度が低速に切替わる。その後、金型7と被転写体6の接触が確認できる位置まで低速移動する。
【0065】
接触を確認した場合、直ちに前記サーボモータ9の回転動作を停止させ、固定部変位センサ5、又は稼動部変位センサ4にて、金型7と駆動部1との隙間を計測し、その値を被転写体6の初期膜厚X1とする。
【0066】
また、目標とする最終膜厚を目標膜厚X2とおき、加圧中に計測される固定部変位センサ5、又は駆動部変位センサ4の被転写体6の膜厚を実測膜厚X3、補正値をa1とおいた場合、次式が与えられる。
(X1−X2)× a1 = (X1−X3) ・・・ (式1.1)
ここで、初期膜厚X1から目標膜厚X2を引いた値が被転写体6の目標潰れ量T1であり、初期膜厚X1から前記目標膜厚X2で制御され製作した際に計測される実測膜厚X3を引いた値で被転写体6の実際の潰れ量T2が得られ、補正値a1は実際潰れ量T2から目標潰れ量T1で割った値となり、潰れ量には図6で示す様な線形性が得られる。
【0067】
以上のことから、被転写体6の初期膜厚X1を検出した時点で、目標潰れ量T1を算出し、目標潰れ量T1から補正値a1を除算すると設定潰れ量T3が求まる。
【0068】
ここで、式1.2に示すように被転写体6の初期膜厚X1から実際の潰れ量T3を引いた値を、固定部変位センサ5、又は駆動部変位センサ4にて検出される被転写体6の膜厚目標値Y1とし、膜厚目標値Y1に達した時点で、加圧解除することにより、被転写体6の薄膜制御が可能である。
(X1−T3) = Y1 ・・・ (式1.2)
例えば、初期膜厚X1が1.4μm、目標膜厚X2が1.2μmとした場合に製作した被転写体6が実際に潰れた量X3を1.0μmとすると、目標潰れ量T1は0.2μm、実際潰れ量T2は0.4μmとなることから、補正値a1は2となり、実際に設定しなければならない設定潰れ量T3は目標潰れ量T1から補正値a1を除算した値、0.1μmが求まる。このことより、膜厚目標値Y1が1.3μmであることが求まる。
【0069】
以上のことから、単純に被転写体6を初期膜厚X1から目標値X2まで潰し込むだけでは、実際の潰れ量T2と誤差が大きく生じ、高精度な膜厚制御ができない。
【0070】
また、前記補正値a1の線形性は被転写体6の材質、物性により変化するため、加熱温度、及び加圧荷重に影響を受け、補正値a1は変化する。一般的に、加熱温度が高くなれば、前記計算から得られる線形直線の係数が大きくなり、加圧荷重においても、加圧荷重が大きくなれば、線形直線の係数が大きくなる。これらは、物性値から求めることも可能であるが、実際に一度計測し、補正値a1とすることが望ましい。
【0071】
ここで、駆動部1で保持される金型7と固定部2に保持される被転写体6は、駆動部1にて被転写体6を保持し、固定部2にて金型7を保持する機構でも良い。
また、駆動部1と固定部2は上下対称となり、上部に駆動部1が設置され、下部に固定部2が設置され、上方から駆動部1が上下動作行う構造でも良く、更に水平に設置される構成でも良い。
【0072】
前記駆動部変位センサ、及び前記固定部変位センサの取り付け位置については、被転写体6、及び金型7が接触する面内であればどこにでも取り付けられていれば良く、その場合において、被転写体6、又は金型7に空ける微小穴部と合致する位置であれば良い。また、前記駆動部変位センサ、又は前記固定部変位センサのいずれかが取り付けられていれば良い。
【0073】
本発明の実施例において、金型7とは、表面に微細構造が形成され構造体であり、材質は特に制限が無いが、シリコンウェハ、石英、Ni箔などが強度の点から好ましく例示される。
【0074】
更に、本発明の実施例の微細な構造が転写される被転写体は特に限定されないが、所望する目的に応じて選択される。具体的には、ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリビニルアルコール,ポリ塩化ビニリデン,ポリエチレンテレフタレート,ポリ塩化ビニール,ポリスチレン,ABS樹脂,AS樹脂、アクリル樹脂,ポリアミド,ポリアセタール,ポリブチレンテレフタレート,ガラス強化ポリエチレンテレフタレート,ポリカーボネート,変性ポリフェニレンエーテル,ポリフェニレンスルフィド,ポリエーテルエーテルケトン,液晶性ポリマー,フッ素樹脂,ポリアレート,ポリスルホン,ポリエーテルスルホン,ポリアミドイミド,ポリエーテルイミド,熱可塑性ポリイミド等の熱可塑性樹脂や、フェノール樹脂,メラミン樹脂,ユリア樹脂,エポキシ樹脂,不飽和ポリエステル樹脂,アルキド樹脂,シリコーン樹脂,ジアリルフタレート樹脂,ポリアミドビスマレイミド,ポリビスアミドトリアゾール等の熱硬化性樹脂、及びこれらを2種以上ブレンドした材料を用いることも可能である。
【0075】
これら樹脂は単体のフィルム状で供給されるか、支持基板表面上に数nmから数百μm形成されている場合もある。ここで支持基板とはパターンが形成される部材を支持する基板であり、その材質は特に限定されないが、所定の強度を有するもので、微細構造体が形成される部材の表面が平坦なものであれば良い。
【0076】
上述の実施例にて、表面にナノメートル又はマイクロメートル単位の微細な凹凸が形成されたスタンパを用い、被転写体を加熱、加圧、冷却し微細構造体を成形する熱式のナノインプリント装置、転写装置について、説明をした。
【0077】
上記転写装置において、転写、及び対象物に薄膜を成形するテンティング技術における、被転写体の厚み成形制御に関しても説明をしているが、これに限定されるものではなく、適宜、構成、並びに転写における方法を変形、変更するものであっても、本発明の技術に関するものと言える。
【符号の説明】
【0078】
1 駆動、及び型保持部
2 固定部、及び被転写体保持部
3 ベース
4 駆動部変位センサ
5 固定部変位センサ
6 被転写体
7 金型
8 駆動伝達部
9 サーボモータ
10 制御装置
11 ボールネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被転写体が支持される固定部と、
転写される形状を有する転写物を支持する支持部と、
前記支持部が設けられ、前記固定部に対して近づく、または遠ざかる移動方向に移動可能に駆動される駆動部と、
少なくとも前記転写物を加熱、冷却する機構部と、
前記被転写体と前記転写物とが接するように加圧する加圧機構部と、
前記被転写体と前記転写物とが接触する面の範囲内において、前記被転写体と前記転写物との距離を測定する測定機構部と、
前記測定機構部で計測した距離をもとに、前記加圧機構を制御する加圧制御機構部と
少なくとも前記固定部、前記駆動部を支持するベースと
を有することを特徴とする転写装置。
【請求項2】
請求項1に記載の転写装置において、
前記測定機構部によって前記距離を測定する位置に対応して、前記被転写体には穴部を有することを特徴とする転写装置。
【請求項3】
請求項1に記載の転写装置において、
前記測定機構部によって前記距離を測定する位置に対応して、前記被転写体が複数分割配置され、前記被転写体間に隙間を有することを特徴とする転写装置。
【請求項4】
請求項2乃至3に記載の転写装置において、
前記被転写体、及び前記転写物の支持部とが互いに嵌合する位置に位置決め部もしくは段差を有し、
前記被転写体、及び前記支保持部とを押し当てたときに前記穴部と前記距離を測定する位置とが対応する位置とされる構成であることを特徴とする転写装置。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載の転写装置において、
前記固定部に対して前記駆動部が移動方向に移動可能にガイドするガイド機構部と、
前記駆動部に掛かる荷重を検出する機構部と、
前記駆動部に荷重が掛かった際に任意荷重にて制動制御する制動機構部と、
前記駆動部の移動速度、トルク、移動位置を制御する機構部と、
のうちの少なくとも一つの機構部を更に備えることを特徴とする転写装置。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載の転写装置において、
前記転写物は金型であって、
前記金型はシリコンウェハ、Niレプリカ、石英の表面に数μm乃至数nmの範囲の凹凸構造を備えていることを特徴とする転写装置。
【請求項7】
請求項1乃至5に記載の転写装置において、
前記被転写体は厚さが数nm乃至数百μmの範囲であるフィルムであることを特徴とする転写装置。
【請求項8】
請求項1乃至5に記載の転写装置において、
前記被転写体と前記転写物とが接触したことを検知する接触検知機構部を更に備えることを特徴とする転写装置。
【請求項9】
請求項8に記載の転写装置において、
前記接触検知機構が圧力検出器を使用したことを特徴とする転写装置。
【請求項10】
請求項8に記載の転写装置において、
前記接触検知機構が加速度検出器を使用して前記駆動部の加速度の変化を計測することによるものであることを特徴とする転写装置。
【請求項11】
請求項1乃至5に記載の転写装置において、
前記転写物は基板であって、
前記基板には、転写されるパターンが形成されていることを特徴とする転写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−67124(P2013−67124A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208408(P2011−208408)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(502129933)株式会社日立産機システム (1,140)
【Fターム(参考)】