軸受装置及びそれを備える装置
【課題】 電磁波ノイズによる機器の誤動作や破損を防止する。
【解決手段】 軸受装置は、第1円筒部材13と、第1円筒部材の外周面に接触する転動体32と、第1円筒部材の外側に配置され、その内周面に転動体が接触し、第1円筒部材を相対回転可能に支持する第2円筒部材23と、第1円筒部材に取付けられる第1電磁誘導モジュール(18,20a)と、第1円筒部材と第1電磁誘導モジュールとの間に配置され、第1円筒部材と第1電磁誘導モジュールとを電気絶縁する第1電気絶縁体16と、第2円筒部材に取付けられ、第1電磁誘導モジュールに対向する位置に配置される第2電磁誘導モジュール(28,30a)と、第2円筒部材と第2電磁誘導モジュールとの間に配置され、第2円筒部材と第2電磁誘導モジュールとを電気絶縁する第2電気絶縁体26を有している。
【解決手段】 軸受装置は、第1円筒部材13と、第1円筒部材の外周面に接触する転動体32と、第1円筒部材の外側に配置され、その内周面に転動体が接触し、第1円筒部材を相対回転可能に支持する第2円筒部材23と、第1円筒部材に取付けられる第1電磁誘導モジュール(18,20a)と、第1円筒部材と第1電磁誘導モジュールとの間に配置され、第1円筒部材と第1電磁誘導モジュールとを電気絶縁する第1電気絶縁体16と、第2円筒部材に取付けられ、第1電磁誘導モジュールに対向する位置に配置される第2電磁誘導モジュール(28,30a)と、第2円筒部材と第2電磁誘導モジュールとの間に配置され、第2円筒部材と第2電磁誘導モジュールとを電気絶縁する第2電気絶縁体26を有している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、軸受装置に関する。詳しくは、回転側と支持側との間で、無接触で電力及び/又は信号の伝達が可能となっている軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来技術に係る軸受装置が開示されている。この軸受装置は、回転軸が取付けられる内方部材と、その内方部材を回転可能に支持する外方部材を備えている。内方部材には回転側電磁誘導モジュールが取付けられ、外方部材には固定側電磁誘導モジュールが取付けられている。回転側電磁誘導モジュールと固定側電磁誘導モジュールは対向して配置され、これら電磁誘導モジュールの電磁誘導によって信号の伝達が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−249005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、この種の軸受装置では、回転側電磁誘導モジュールと固定側電磁誘導モジュールとの電磁誘導によって、回転側から固定側及び/又は固定側から回転側へ電力や信号を伝達する。このため、電磁波ノイズによって電磁誘導モジュールに電流が流れると、その電磁誘導モジュールに接続される機器が誤動作をしたり、破損したりする等の原因となる。また、電力や信号を伝達する際には、電磁誘導モジュールから発生する磁界による電磁波ノイズによって、外部機器が誤動作をしたり、破損したりする等の原因となる。
【0005】
本願は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電磁波ノイズによる影響を抑制して、電磁波ノイズによる機器の誤動作や破損を防止することができる軸受装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示する軸受装置は、第1円筒部材と、第1円筒部材の外周面に接触する転動体と、第1円筒部材の外側に配置され、その内周面に転動体が接触し、第1円筒部材を相対回転可能に支持する第2円筒部材と、第1円筒部材に取付けられる第1電磁誘導モジュールと、第1円筒部材と第1電磁誘導モジュールとの間に配置され、第1円筒部材と第1電磁誘導モジュールとを電気絶縁する第1電気絶縁体と、第2円筒部材に取付けられ、第1電磁誘導モジュールに対向する位置に配置される第2電磁誘導モジュールと、第2円筒部材と第2電磁誘導モジュールとの間に配置され、第2円筒部材と第2電磁誘導モジュールとを電気絶縁する第2電気絶縁体と、を有している。
【0007】
この軸受装置では、第1円筒部材と第1電磁誘導モジュールとの間に第1電気絶縁体が配置され、第2円筒部材と第2電磁誘導モジュールとの間に第2電気絶縁体が配置されている。このため、電磁波ノイズによって第1円筒部材や第2円筒部材に電流等が発生しても、第1電磁誘導モジュールや第2電磁誘導モジュールに電流が流れることが抑制される。その結果、意図しない電力の伝達や誤った信号の伝達を抑制することができ、電磁誘導モジュールに接続される機器の誤動作や破壊を防止することができる。また、電磁誘導モジュール間で電力や信号を伝達する際には、電磁誘導モジュールから発生する磁界による電磁波ノイズによって、第1円筒部材や第2円筒部材に電流等が発生することを抑制することができる。その結果、第1円筒部材や第2円筒部材に接続される機器の誤動作や破壊を防止することができる。例えば、第1円筒部材や第2円筒部材が接地される場合は、その接地線に接続される機器の誤動作や破壊を防止することができる。
【0008】
上記の軸受装置では、第1円筒部材の内周面に第1部材が取付けられる第1取付部が形成され、第2円筒部材の外周面には第2部材が取付けられる第2取付部が形成され、第1部材と第2部材は軸受装置を介して相対回転可能とされていてもよい。この場合に、第1円筒部材の外周面には、第1電磁誘導モジュールが取付けられる第1電磁誘導モジュール取付部が形成されており、第2円筒部材の内周面には、転動体に接触して第1円筒部材を相対回転可能に支持する第2支持部と、第2電磁誘導モジュールが取付けられる第2電磁誘導モジュール取付部が形成されていてもよい。また、第1取付部と第1電磁誘導モジュール取付部は第1円筒部材の軸方向に並んで配置されると共に、第2支持部と第2電磁誘導モジュール取付部は第2円筒部材の軸方向に並んで配置されていてもよい。そして、第1取付部が形成された位置では、第1円筒部材の外周面に転動体が接触する第1支持部が形成されており、第1電磁誘導モジュール取付部が形成された位置では、第1円筒部材の内周面が第1取付部より外側にシフトしていることが好ましい。このような構成によると、第1電磁誘導モジュールが取付けられる位置では、第1円筒部材と第1部材との間に隙間が形成され、第1部材が取付けられる位置(すなわち、第1取付部)で、第1円筒部材と転動体とが接触する。このため、円筒部材と転動体との片当りが防止され、円筒部材と転動体との不均一接触が回避される。また、転動体と円筒部材との接触点から、第1部材や第2部材から円筒部材に作用する外力の作用点までの距離が短くなる。このため、円筒部材に作用するモーメントを小さくでき、これら円筒部材の変形等を防止することができる。その結果、円筒部材が変形することによる円筒部材同士の接触や、過負荷や、性能低下や、破損といった不具合を防止することができる。なお、第2電磁誘導モジュール取付部が形成された位置における第2円筒部材の外周面は、第2支持部が形成された位置における第2円筒部材の外周面より内側にシフトしていてもよい。また、第1円筒部材の内周面と第2円筒部材の害周面の少なくとも一部には放熱フィンを設けることができる。放熱フィンを設けることで、軸受部分の放熱性が向上し、潤滑剤の固化等の不具合の発生を効果的に抑制することができる。
【0009】
また、上記の軸受装置では、第1円筒部材と第1電気絶縁体との間に配置される第1電磁遮蔽体と、第2円筒部材と第2電気絶縁体との間に配置される第2電磁遮蔽体をさらに有し、第1電気絶縁体は、第1電磁誘導モジュールと第1電磁遮蔽体との間に配置され、第2電気絶縁体は、第2電磁誘導モジュールと第2電磁遮蔽体との間に配置されていてもよい。さらに、第1円筒部材と第2円筒部材はそれぞれ、電磁遮蔽材料によって形成されていてもよい。この場合、第1円筒部材と第2円筒部材の間には、第1円筒部材及び第2円筒部材によってその周囲が囲まれる収容空間が形成されていてもよい。そして、第1電磁誘導モジュールと第1電磁遮蔽体と第1電気絶縁体並びに第2電磁誘導モジュールと第2電磁遮蔽体と第2電気絶縁体が、この収容空間に収容されていることが好ましい。このような構成によると、第1円筒部材と第2円筒部材による電磁遮蔽と、第1電磁遮蔽体と第2電磁遮蔽体による電磁遮蔽の2つの電磁遮蔽が行われるため、電磁波ノイズによって悪影響が生じることをより抑制することができる。
【0010】
上記の構成を採用する場合は、第1円筒部材と第2円筒部材の間には、収容空間と軸受装置の外部とを連通する隙間が形成されていている。第1電磁遮蔽体は、第1電磁誘導モジュールのうち第2電磁誘導モジュールと対向する面を除いた全ての面を覆い、第2電磁遮蔽体は、第2電磁誘導モジュールのうち第1電磁誘導モジュールと対向する面を除いた全ての面を覆っていてもよい。そして、上記の隙間の少なくとも一部が、第1電磁誘導モジュールの第2電磁誘導モジュールと対向する面と直交し、かつ、第2電磁誘導モジュールの第1電磁誘導モジュールと対向する面と直交することが好ましい。このような構成によると、電磁波ノイズの直進性により、隙間から進入した電磁波ノイズが電磁誘導モジュールの対向面に進入し難くなる。これによって、電磁波ノイズによって悪影響が生じることをより抑制することができる。
【0011】
上記の軸受装置では、第1円筒部材には第1部材が取付けられるようになっており、第2円筒部材には第2部材が取付けられるようになっており、第1部材と第2部材は、軸受装置を介して相対回転可能としてもよい。一方の円筒部材には、センサ及び電子回路が取付けられていてもよい。センサと電子回路は、他方の円筒部材側の電磁誘導モジュールから一方の円筒部材側の電磁誘導モジュールに伝達される電力によって動作し、電子回路には、センサからの信号と他方の円筒部材側の電磁誘導モジュールから一方の円筒部材側の電磁誘導モジュールに伝達される信号が入力し、電子回路から出力される信号とセンサから出力される信号は、一方の円筒部材側の電磁誘導モジュールから他方の円筒部材側の電磁誘導モジュールに伝達されることが好ましい。このような構成によると、第1部材又は第1部材が取付けられた円筒部材の異常等がセンサによって検出され、その異常を第2部材が取付けられた円筒部材側に伝達することができる。なお、センサは、第1部材や円筒部材の異常だけでなく、第1部材等の正常状態の検出や、熱や振動の検出を行なってもよい。このような検出を行うことで、軸受装置の変化をいち早く検知し、トラブルの発生を未然に防止することができ、また、メンテナンス時期の判断にも役立てることができる。
【0012】
また、上記の軸受装置では、第1電磁誘導モジュールは、電力を伝達するための第1電力用コイルと、信号を伝達するための第1信号用コイルと、第1電力用コイルと第1信号用コイルが券回される1つの第1コアを有することができる。また、第2電磁誘導モジュールは、第1電力用コイルと対向し、電力を伝達するための第2電力用コイルと、第1信号用コイルと対向し、信号を伝達するための第2信号用コイルと、第2電力用コイルと第2信号用コイルが券回される1つの第2コアを有することができる。このような構成によると、電力伝達用と信号伝達用の2つのコイルを回転側と固定側のそれぞれに配置するため、一対のコイルで電力と信号を伝達する場合と比較して複雑な処理が不要となり、電力伝達と信号伝達を簡易に行うことができる。また、1つのコアに電力用コイルと信号用コイルの両者を券回するため、小さなスペースに電磁誘導モジュールを配置することできる。
【0013】
また、上記の軸受装置では、第1円筒部材には第1部材が取付けられるようになっており、第2円筒部材には第2部材が取付けられるようになっており、第1部材と第2部材は、軸受装置を介して相対回転可能となっていてもよい。この場合に、第1電磁誘導モジュールは、電力を伝達するための第1電力用コイルと、信号を伝達するための第1信号用コイルと、第1電力用コイルが券回される第1電力用コアと、第1信号用コイルが券回される第1信号用コアを有しており、第1電力用コアと第1信号用コアは第1円筒部材の半径方向に並んで配置されていてもよい。また、第2電磁誘導モジュールは、第1電力用コイルと対向し、電力を伝達するための第2電力用コイルと、第1信号用コイルと対向し、信号を伝達するための第2信号用コイルと、第2電力用コイルが券回される第2電力用コアと、第2信号用コイルが券回される第2信号用コアを有しており、第2電力用コアと第2信号用コアは第2円筒部材の半径方向に並んで配置されていてもよい。この場合に、第1電力用コアの第2電力用コアとの対向面と、第1信号用コアの第2信号用コアとの対向面とが、第1円筒部材の軸方向にシフトしており、第2電力用コアの第1電力用コアとの対向面と、第2信号用コアの第1信号用コアとの対向面とが、第2円筒部材の軸方向にシフトしていることが好ましい。このような構成によると、電力用電磁誘導モジュールによる電磁誘導と、信号用電磁誘導モジュールによる電磁誘導により発生する漏れ磁束が相互に影響し合うことを抑制することができる。
【0014】
また、電力用コイルと信号用コイルの2つのコイルを有する軸受装置では、第1電力用コイルに接続される第1電力用配線と、第1信号用コイルに接続される第1信号用配線と、第2電力用コイルに接続される第2電力用配線と、第2信号用コイルに接続される第2信号用配線をさらに有することができる。そして、第1円筒部材は、第1円筒部材と第2円筒部材の間の空間を閉じる方向に伸びる端面を有しており、第1電力用配線と第1信号用配線とが、第1円筒部材の端面より引出されていることが好ましい。このような構成によると、第1円筒部材の内周面等に配線を引き回すための機械加工を行う必要を無くすことができる。その結果、第1円筒部材の強度低下を防止でき、加工工数の削減を図ることができる。
【0015】
なお、上記の軸受装置は、風力発電装置に用いることができる。すなわち、本明細書に開示する風力発電装置は、風を受けることで回転する第1部材と、回転部材に対して回転可能に取付けられる第2部材と、第2部材に対して回転可能に取付けられる第3部材と、を有しており、第1部材と第2部材の連結部と第2部材と第3部材の連結部の少なくとも一方に、上述した軸受装置のいずれか一つが用いられている。この風力発電装置では、第1部材と回転部材との間の電力及び/又は信号の伝達を無接触で、かつ、安定して行うことができる。
【0016】
また、上記の軸受装置は、ユニバーサルジョイント装置に用いることができる。すなわち、本明細書に開示するユニバーサルジョイント装置は、第1回転軸と、第1回転軸の回転が伝達される第2回転軸と、第1回転軸と第2回転軸の間に配置されているクロススパイダーと、を有している。クロススパイダーの第1軸部の少なくとも一端が、上述した軸受装置のいずれかである第1軸受装置を介して第1回転軸に回転可能に取付けられており、第1軸受装置の第1円筒部材と第2円筒部材の一方は第1軸部の一端に取付けられており、第1軸受装置の第1円筒部材と第2円筒部材の他方は第1回転軸に取付けられている。このユニバーサルジョイント装置では、第1回転軸とクロススパイダーとの間の電力及び/又は信号の伝達を無接触で、かつ、安定して行うことができる。また、クロススパイダーにセンサを取付けた場合は、センサからの信号を第1軸部側でモニタリングすることができ、ユニバーサルジョイントの異常診断等を行うことができる。
【0017】
また、上記のユニバーサルジョイント装置では、クロススパイダーの第2軸部の少なくとも一端が、上述した軸受装置のいずれかである第2軸受装置を介して第2回転軸に回転可能に取付けられており、第2軸受装置の第1円筒部材と第2円筒部材の一方は第2軸部の一端に取付けられており、第2軸受装置の第1円筒部材と第2円筒部材の他方は第2回転軸に取付けられており、第1軸受装置の第1軸部に取付けられている側の電磁誘導モジュールと、第2軸受装置の第2軸部に取付けられている側の電磁誘導モジュールとが配線により電気的に接続されていてもよい。このような構成によると、第1回転軸と第2回転軸との間の電力及び/又は信号の伝達を無接触で、かつ、安定して行うことができる。
【0018】
また、上記の軸受装置は、車軸装置に用いることができる。すなわち、本明細書に開示する車軸装置は、支持部材と、回転軸と、回転軸に取付けられた車輪と、上述した軸受装置のいずれか一つを有しており、軸受装置の第1円筒部材と第2円筒部材の一方が支持部材に取付けられると共に他方が回転軸に取付けられており、回転軸が軸受装置を介して支持部材に回転可能に支持されている。この車軸装置によると、支持部材と回転部材との間の電力及び/又は信号の伝達を無接触で、かつ、安定して行うことができる。また、車輪にセンサを取付けた場合は、車輪の異常を事前に判断でき、車輪の誤動作や破損の防止、早期問題解決による長寿命化等を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1に係る軸受装置の断面図を示す。
【図2】実施例2に係る軸受装置の断面図を示す。
【図3】実施例3に係る軸受装置の断面図を示す。
【図4】実施例4に係る軸受装置の断面図を示す。
【図5】実施例5に係る軸受装置の断面図を示す。
【図6】実施例6に係る軸受装置の断面図を示す。
【図7】実施例7に係る軸受装置の断面図を示す。
【図8】実施例8に係る軸受装置の断面図を示す。
【図9】実施例9に係る軸受装置の断面図を示す。
【図10】実施例10に係る軸受装置の断面図を示す。
【図11】実施例1〜10に係る軸受装置のいずれかを備えたユニバーサルジョイント装置を模式的に示す図である。
【図12】実施例1〜10に係る軸受装置のいずれかを備えた風力発電装置を模式的に示す図である。
【図13】車輪を支持する軸受装置に、実施例1〜10に係る軸受装置のいずれかを用いた例を示す図である。
【実施例1】
【0020】
図1に示すように、実施例1の軸受装置10は、第1円筒部材13と、第1円筒部材13の外側に配置される第2円筒部材23を有している。第1円筒部材13には図示しない回転軸が取付けられ、第2円筒部材23には図示しない支持体が取付けられる。これにより、回転軸が支持体に対して回転可能に支持される。
【0021】
第1円筒部材13は、円筒状の円筒部12と、円筒部12の一端に固定されたシール部材14を有している。円筒部12は、電磁遮蔽材料(例えば、鋼材やステンレス等)によって形成されている。円筒部12の内周面12cには、図示しない回転軸が圧入等によって固定される。円筒部12の外周面には、転動体32が当接する第1支持部12aと、第1電磁誘導モジュール(18,20a)が取付けられる第1取付部12bが形成されている。第1支持部12aと第1取付部12bは、回転軸の軸線Cの伸びる方向(以下、軸線方向という)に並んで配置されている。第1支持部12aは、第1取付部12bよりも回転軸の半径方向外側(以下、単に半径方向外側という)に突出している。このため、第1支持部12aの軸線方向の両側(すなわち、第1取付部12b側とその反対側)には段差が形成されている。
【0022】
シール部材14は、リング状の板材であり、電磁遮蔽材料(例えば、ステンレス等)によって形成されている。シール部材14は、円筒部12の一端(即ち、第1取付部12b側の端部)に固定されている。シール部材14は、円筒部12の外周面から半径方向外側に向かって突出している。シール部材14は、第2円筒部材22に近接する位置まで伸び、シール部材14と第2円筒部材22との間には隙間36bが形成されている。隙間36bは、シール部材14の外周面から軸線方向に伸び、次いで半径方向に屈曲している。
【0023】
第1円筒部材13(詳細には、シール部材14及び円筒部12)には、第1電気絶縁体16を介して第1電磁誘導モジュール(18,20a)が取付けられている。第1電気絶縁体16は、絶縁材料(例えば、エポキシ樹脂、テフロン(登録商標)等)によって形成されている。第1電気絶縁体16の内周面が円筒部12の第1取付部12bに固定され、第1電気絶縁体16の一端面がシール部材14に固定されている。これにより、円筒部12と第1電磁誘導モジュール(18,20a)との間、及び、シール部材14と第1電磁誘導モジュール(18,20a)との間に、第1電気絶縁体16の分だけ距離が設けられている。なお、電気絶縁体16の外周面と第2円筒部材22の間には空間が形成されている。
【0024】
第1電磁誘導モジュール(18,20a)は、第1円筒部材13の外周に沿って配置されている。第1電磁誘導モジュール(18,20a)は、リング状のポットコア18と、ポットコア18に券回されたコイル20aを有している。ポットコア18は、透磁性材料(例えば、フェライト)によって形成されている。ポットコア18は、第2電磁誘導モジュール(28,30a)と対向する面を除いて第1電気絶縁体16によって覆われている。コイル20aは、ポットコア18の内部に配置されている。コイル20aは、第2電磁誘導モジュール(28,30a)と対向する面を除いてポットコア18によって覆われている。ポットコア18と第1電気絶縁体16の第2電磁誘導モジュール(28,30a)と対向する面は、同一平面上に位置し、回転軸の軸線Cに対して直交している。コイル20aには、引き出し配線20bの一端が接続されている。引き出し配線20bは、シール部材14を貫通して外部に引出されている。
【0025】
第2円筒部材23は、円筒状の円筒部22と、円筒部22に固定されたシール部材24a,24bを有している。円筒部22は、電磁遮蔽材料(例えば、鋼材やステンレス等)によって形成されている。円筒部22の内周面は、第1円筒部材13の外周面12a,12bに対向している。円筒部22の内周面には、転動体32が当接する第2支持部22aと、第2電磁誘導モジュール(28,30a)が取付けられる第2取付部22bが形成されている。第2支持部22aと第2取付部22bは、軸線方向に並んで配置されている。第2支持部22aと第2取付部22bは同一平面上に位置しており、円筒部22の内周面には段差が形成されていない。また、円筒部22の外周面22cにも、段差が形成されていない。円筒部22の外周面22cには、図示しない支持体が固定される。
【0026】
シール部材24aは、リング状の板材であり、電磁遮蔽材料(例えば、ステンレス等)によって形成されている。シール部材24aは、円筒部22の一端(即ち、第2支持部22a側の端部)に固定されている。シール部材24aは、円筒部22の内周面から半径方向内側に向かって突出している。シール部材24aは、第1円筒部材13と近接する位置まで伸び、シール部材24aと第1円筒部材13の間には隙間36aが形成されている。隙間36aは、シール部材24aの外周面から軸線方向に伸び、次いで半径方向に屈曲している。
【0027】
シール部材24bは、リング状の板材であり、電磁遮蔽材料材料(例えば、ステンレス等)によって形成されている。シール部材24bは、第2電磁誘導モジュール(28,30a)と転動体32との間の位置で円筒部22に固定されている。シール部材24bは、円筒部22の内周面から回転軸の半径方向内側(以下、単に半径方向内側という)に向かって突出している。シール部材24bは、第1円筒部材13と近接する位置まで伸び、シール部材24bと第1円筒部材13との間には隙間36cが形成されている。隙間36cは、空間35側から空間34側に向かって軸線方向に伸び、次いで半径方向に屈曲している。
【0028】
第2円筒部材23(具体的には、シール部材24b及び円筒部22)には、第2電気絶縁体26を介して第2電磁誘導モジュール(28,30a)が取付けられている。第2電気絶縁体26は、絶縁材料(例えば、エポキシ樹脂、テフロン(登録商標)等)によって形成されている。第2電気絶縁体26の外周面が円筒部22の第2取付部22bに固定され、第2電気絶縁体16の一端面がシール部材24bに固定されている。これにより、円筒部22と第2電磁誘導モジュール(28,30a)との間、及び、シール部材24bと第2電磁誘導モジュール(28,30a)との間に、第2電気絶縁体26の分だけ距離が設けられている。なお、電気絶縁体26の内周面と第1円筒部材13の間には空間が形成されている。
【0029】
第2電磁誘導モジュール(28,30a)は、第2円筒部材23の内周面に沿って配置されると共に、第1電磁誘導モジュール(18,20a)に対向して配置されている。第2電磁誘導モジュール(28,30a)と第1電磁誘導モジュール(18,20a)との間には、わずかな隙間が形成されている。第2電磁誘導モジュール(28,30a)は、ポットコア28と、ポットコア28に券回されたコイル30aを有している。ポットコア28は、透磁性材料(例えば、フェライト)によって形成されている。ポットコア28は、第1電磁誘導モジュール(18,20a)と対向する面を除いて第2電気絶縁体26によって覆われている。コイル30aは、ポットコア28の内部に配置されている。コイル30aは、第1電磁誘導モジュール(18,20a)と対向する面を除いてポットコア18によって覆われている。ポットコア28と第2電気絶縁体26の第1電磁誘導モジュール(18,20a)と対向する面は、同一平面上に位置し、回転軸の軸線Cに対して直交している。コイル30aには、引き出し配線30bの一端が接続されている。引き出し配線30bは、第2円筒部材23を貫通して外部に引出されている。
【0030】
上述した軸受装置10では、第1円筒部材13の円筒部12と第2円筒部材23の円筒部22の間にシール部材14,24aを配置することで、その周囲が第1円筒部材13と第2円筒部材23によって囲まれた収容空間(34,35)が形成される。収容空間(34,35)は、シール部材24bによって2つの空間に区切られている。一方の空間34には、転動体32が配置されており、他方の空間35には、電気絶縁体16,26と電磁誘導モジュール(18,20a),(28,30a)が配置されている。第1円筒部材13と第2円筒部材23との間をシール部材14,24a,24bによって塞ぐことで、空間34内に充填された潤滑剤(例えば、グリス等)を封止することができる。また、空間34,35内に異物が進入することを防止でき、第1電磁誘導モジュール(18,20a)及び第2電磁誘導モジュール(28,30a)を保護することができる。
【0031】
上述した軸受装置10において、第1円筒部材13側と第2円筒部材23側との間で電力又は信号の伝達を行うには、引き出し配線20bの一端に第1電力又は信号伝送用回路を接続し、引き出し配線30bの一端に第2電力又は信号伝送用回路を接続する。第1円筒部材13側から第2円筒部材23側に電力又は信号を伝達する場合は、第1電力又は信号伝送用回路は、第2円筒部材23側に伝達したい電力又は信号を電磁誘導可能な状態とし、第1電磁誘導モジュール(18,20a)のコイル20aに供給する。これによって、第1電磁誘導モジュール(18,20a)のコイル20aに電流が流れ、その電磁誘導によって第2電磁誘導モジュール(28,30a)のコイル30aに電流が流れる。第2電力又は信号伝送用回路は、第2電磁誘導モジュール(28,30a)のコイル30aに流れた電流(信号)を電力又は信号に変換する。これとは逆に、第2円筒部材23側から第1円筒部材13側に電力又は信号の伝達する場合は、上記とは逆の手順で行えばよい。なお、第1円筒部材13側と第2円筒部材23側との間で電力及び信号を同時に伝達することもできる。この場合は、送信側に電力と信号を合成する回路を設け、受信側に受信した信号から電力と信号を分離する回路を設ければよい。
【0032】
上述した説明から明らかなように、上述した軸受装置10においては、第1円筒部材13及び第2円筒部材23は、転動体32が当接する部分と、電磁誘導モジュール(18,20a)又は(28,30a)が取付けられる部分とが、回転軸の軸線方向に並んで配置され、第1円筒部材13及び第2円筒部材23の軸線方向の長さが長くされている。このため、第1円筒部材13及び第2円筒部材23の表面積が増大して、放熱性が向上されている。その結果、転動体32と第1円筒部材13との間に生じる摩擦熱や、転動体32と第2円筒部材23との間に生じる摩擦熱を、効率的に外部に放熱することができる。これによって、第1円筒部材13と第2円筒部材23の間に封止した潤滑剤の固化や、第1円筒部材13や第2円筒部材23の熱変形等を抑制することができる。
【0033】
また、上述した軸受装置10では、第1円筒部材13に第1電磁誘導モジュール(18,20a)が取付けられ、第2円筒部材23に第2電磁誘導モジュール(28,30a)が取付けられている。ここで、第1円筒部材13及び第2円筒部材23の加工精度は高く、また、これらの部材13,23のラジアル方向及びスラスト方向の回転精度も高い。このため、第1電磁誘導モジュール(18,20a)と第2電磁誘導モジュール(28,30a)との位置関係も精度よく管理することができる。その結果、第1電磁誘導モジュール(18,20a)と第2電磁誘導モジュール(28,30a)の間で安定した電磁誘導を行うことができ、安定した電力又は信号の伝達を行うことができる。例えば、第1電磁誘導モジュール(18,20a)と第2電磁誘導モジュール(28,30a)のギャップが大きくなると抵抗成分が大きくなり、伝達できる電力量が小さくなったり、伝達される信号波形が正確に伝達できなくなったりする。しかしながら、上述した軸受装置10では、第1電磁誘導モジュール(18,20a)と第2電磁誘導モジュール(28,30a)のギャップが一定となるため、安定した電力又は信号の伝達を行うことができる。
【0034】
また、上述した軸受装置10では、第1電磁誘導モジュール(18,20a)と第2電磁誘導モジュール(28,30a)が、第1円筒部材13と第2円筒部材23とによって囲まれた空間内に配置されている。これらの部材12,14,22,24aは電磁遮蔽材料によって形成されているため、外部で発生した電磁波ノイズが電磁誘導モジュール(18,20a),(28,30a)に影響することが抑制され、また、電磁誘導モジュール(18,20a),(28,30a)で発生した電磁波ノイズが外部機器に作用することが防止される。その結果、軸受装置10に接続される機器や外部機器の誤動作や損傷等を防止することができる。
【0035】
さらに、上記の軸受装置10では、第1円筒部材13に第1電気絶縁体16を介して第1電磁誘導モジュール(18,20a)が取付けられ、第2円筒部材23に第2電気絶縁体26を介して第2電磁誘導モジュール(28,30a)が取付けられている。このため、第1電磁誘導モジュール(18,20a)及び第2電磁誘導モジュール(28,30a)と第1円筒部材13及び第2円筒部材23との距離を適切な長さに保つことができる。このため、第1電磁誘導モジュール(18,20a)と第2電磁誘導モジュール(28,30a)からの磁束の漏れが少なくなり、両者のエネルギー効率を高めることができる。これによって、安定した信号又は電力の伝達が可能となる。さらに磁束の漏れが少なくなるため、第1円筒部材13及び第2円筒部材23への電磁波ノイズを軽減することができ、その結果、軸受装置10に接続される機器や外部機器の誤動作や損傷を防止することができる。
【0036】
また、第1円筒部材13や第2円筒部材23に電磁波ノイズが作用して電流が発生しても、第1電気絶縁体16及び第2電気絶縁体26によって、第1電磁誘導モジュール(18,20a)や第2電磁誘導モジュール(28,30a)に電流が流れることを抑制することができる。その結果、電磁波ノイズによって電力や信号の誤った伝達が生じることが防止され、機器の誤動作や破損を防止することができる。
【0037】
また、第1電気絶縁体16及び第2電気絶縁体26は誘電体であるため、ポットコア18と第1電気絶縁体16と第1円筒部材13によってキャパシタが構成され、ポットコア28と第2電気絶縁体26と第2円筒部材23によってキャパシタが構成される。これらキャパシタの静電容量が大きければ、ポットコア18,28と円筒部材13,23との間のインピーダンスが小さくなり、ポットコア18,28と円筒部材13,23の間で電流が流れ易くなる。しかしながら、実施例1の軸受装置10では、電気絶縁体16,26の厚みを適切にしてポットコア18,28と円筒部材13,23の間の距離を適切にし、キャパシタの静電容量をコントロールしている。このため、ポットコア18,28と円筒部材13,23の間で電流が流れることを抑制し、そのエネルギー損失を小さくしている。これによって、エネルギー効率を高めることができる。
【0038】
さらに、ポットコア18,28と円筒部材13,23の間に、熱伝導率の小さな電気絶縁体16,26が配置されるため、ポットコア18,28と円筒部材13,23との間で熱が伝達され難くなる。このため、電磁誘導の損失によって発生する熱が円筒部材13,23側に伝達されることを抑制すると同時に、円筒部材13,23で発生する摩擦熱がポットコア18,28側に伝達されること抑制することができる。
【0039】
さらに、上記の軸受装置10では、第1電磁誘導モジュール(18,20a)のポットコア18と第2電磁誘導モジュール(28,30a)のポットコア28とが対向配置されるため、第1電磁誘導モジュール(18,20a)と第2電磁誘導モジュール(28,30a)のポットコア18,28内に閉じた磁界が形成され易くなる。このため、漏れ磁束の量が小さくなり、信号又は電力の伝達効率を高めることができる。
【0040】
なお、上述した実施例1の軸受装置10は、その外径寸法等は従来公知の軸受装置と同様に設計することができる。この場合には、従来の軸受装置を実施例1の軸受装置10に交換するだけで、回転側から支持体側に信号及び電力の伝達を行う機能を付与することができる。
【実施例2】
【0041】
図2に示すように、実施例2の軸受装置40は、電力を伝達する電磁誘導モジュールと、信号を伝達する電磁誘導モジュールを別々に設けた点で実施例1の軸受装置10と相違し、その他の点は実施例1の軸受装置10と同一の構成を有している。このため、実施例1の軸受装置10と同一構成の部分については、実施例1の軸受装置10と同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0042】
実施例2の軸受装置40では、第1円筒部材13に、電気絶縁体43を介して第1電力用電磁誘導モジュール44と第1信号用電磁誘導モジュール46が取付けられている。第1電力用電磁誘導モジュール44と第1信号用電磁誘導モジュール46は、回転軸の半径方向に並んで配置されている。一方、第2円筒部材23には、電気絶縁体47を介して第2電力用電磁誘導モジュール48と第2信号用電磁誘導モジュール50が取付けられている。第2電力用電磁誘導モジュール48と第2信号用電磁誘導モジュール50は、回転軸の半径方向に並んで配置されている。また、第2電力用電磁誘導モジュール48は、第1電力用電磁誘導モジュール44と対向し、第2信号用電磁誘導モジュール50は、第1信号用電磁誘導モジュール46と対向している。各電磁誘導モジュール44,46,48,50は、ポットコア44a,46a,48a,50aと、ポットコア44a,46a,48a,50aに巻回されたコイル44b,46b,48b,50bによって構成されている。第1電力用電磁誘導モジュール44と第2電力用電磁誘導モジュール48によって電力の伝達が行われ、第1信号用電磁誘導モジュール46と第2信号用電磁誘導モジュール50によって信号の伝達が行われる。したがって、実施例2の軸受装置40では、信号と電力の伝達を行うことができる。
【0043】
また、第1電力用電磁誘導モジュール44の引き出し配線44cと第1信号用電磁誘導モジュール46の引き出し配線46cは、シール部材14を貫通して外部に引き出されている。このため、第1円筒部材13の円筒部12に配線用の空間を設ける必要がなく、また、第1円筒部材13に固定される回転軸に配線を引き回す空間を設ける必要もない。その結果、第1円筒部材13や回転軸に配線のための機械加工を施す必要がなく、これらの強度が低下することもない。なお、第2電力用電磁誘導モジュール48の引き出し配線48cと第2信号用電磁誘導モジュール50の引き出し配線50cは、第2円筒部材23の円筒部22を貫通して外部に引き出されている。
【実施例3】
【0044】
図3に示すように、実施例3の軸受装置60は、実施例2の軸受装置40と略同一の構成を有しており、各電磁誘導モジュール44,46,48,50を配置する位置のみが相違する。このため、実施例2の軸受装置40と同一構成の部分については、実施例2の軸受装置40と同一の符号を付すことで、その詳細な説明は省略する。
【0045】
実施例3の軸受装置60では、第1電力用電磁誘導モジュール44と第2電力用電磁誘導モジュール48の間に形成される空隙66と、第1信号用電磁誘導モジュール46と第2信号用電磁誘導モジュール50の間に形成される空隙68は、回転軸の軸線方向にシフトしている。すなわち、空隙66と空隙68が、回転軸の軸線方向にずれている。このため、電力用の電磁誘導モジュール44,48による電磁誘導と、信号用の電磁誘導モジュール46,50による電磁誘導により発生する漏れ磁束が相互に干渉することを抑制することができる。
【実施例4】
【0046】
図4に示すように、実施例4の軸受装置70は、実施例2の軸受装置40と異なり、転動体32を挟んで一方に電力用の電磁誘導モジュール44,48が配置され、他方に信号用の電磁誘導モジュール46,50が配置されている点で相違する。このため、実施例2の軸受装置40と同一構成の部分については、実施例2の軸受装置40と同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0047】
実施例4の軸受装置70では、第1電力用電磁誘導モジュール44と第2電力用電磁誘導モジュール48が第1円筒部材13の一端側(図4の上端側)に設けられ、第1信号用電磁誘導モジュール46と第2信号用電磁誘導モジュール50が第1円筒部材13の他端側(図4の下端側)に設けられている。そして、シール部材76a,76b,76c,14は電磁遮蔽材料(例えば、ステンレス等)により形成される。このため、電力用の電磁誘導モジュール44,48は、円筒部12,22及びシール部材14,76cによって取囲まれて電磁遮蔽が行われる。一方、信号用の電磁誘導モジュール46,50は、円筒部12,22及びシール部材76a,76bによって取囲まれて電磁遮蔽が行われる。従って、電力用の電磁誘導モジュール44,48による電磁誘導と、信号用の電磁誘導モジュール46,50による電磁誘導により発生する漏れ磁束が相互に干渉することを抑制することができる。
【実施例5】
【0048】
図5に示すように、実施例5の軸受装置90は、実施例1の軸受装置10と略同一の構成を有しており、電磁誘導モジュール94,98の構成のみが相違する。このため、実施例1の軸受装置10と同一構成の部分については、実施例1の軸受装置10と同一の符号を付すことで、その詳細な説明は省略する。
【0049】
実施例5の軸受装置90では、電磁誘導モジュール94は、第1円筒部材13に取付けられている。電磁誘導モジュール94は、ポットコア94aと、ポットコア94aに巻回された信号用コイル94cと、ポットコア94aに巻回された電力用コイル94bを有している。一方、電磁誘導モジュール98は、第2円筒部材23に取付けられており、ポットコア98aと、ポットコア98aに巻回された信号用コイル98cと、ポットコア98aに巻回された電力用コイル98bを有している。ポットコア94a,98aと信号用コイル94c,98cによって信号の伝達が行われ、ポットコア94a,98aと電力用コイル94b,98bによって電力の伝達が行われる。
【0050】
この軸受装置90では、1つのポットコア94a又は98aに2つのコイル(94b,94c)又は(98b,98c)が巻回されるため、その分だけ電磁誘導モジュール94,98の省スペース化が図られる。これによって、軸受装置90を小型化することができる。
【実施例6】
【0051】
図6に示すように、実施例6の軸受装置110は、実施例1の軸受装置10と略同一の構成を有しており、電磁誘導モジュール(18,20a),(28,30a)と円筒部材13,23の間に電磁遮蔽体114,120が配置されている点でのみ相違する。このため、実施例1の軸受装置10と同一構成の部分については、実施例1の軸受装置10と同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0052】
実施例6の軸受装置110では、円筒部材13,23に固定部材112,118を介して電磁遮蔽体114,120が取付けられる。電磁遮蔽体114,120には、電気絶縁体116,122を介して電磁誘導モジュール(18,20a),(28,30a)が取付けられている。電磁遮蔽体114,120は、電磁遮蔽材料(例えば、アルミニウム等)によって形成されている。電磁遮蔽体114は、電磁誘導モジュール(18,20a)のうち電磁誘導モジュール(28,30a)と対向する面を除いた全ての面を覆っている。また、電磁遮蔽体120は、電磁誘導モジュール(28,30a)のうち電磁誘導モジュール(18,20a)と対向する面を除いた全ての面を覆っている。
【0053】
この軸受装置110では、電磁誘導モジュール(18,20a),(28,30a)が電磁遮蔽体114,120で囲まれ、さらに、第1円筒部材13と第2円筒部材23とシール部材14,24aによって囲まれている。すなわち、電磁誘導モジュール(18,20a),(28,30a)は、二重の電磁遮蔽が行われている。このため、電磁波ノイズによる意図しない電力の伝達や誤った信号の伝達を効果的に抑制することができる。また、一方の電磁遮蔽に何らかの原因で不具合が発生しても、他方の電磁遮蔽によって電磁波ノイズの影響を低減することができる。このため、電力伝達又は信号伝達の信頼性を向上することができる。
【0054】
特に、上記の軸受装置110では、シール部材14と第2円筒部材23の隙間36bと、シール部材24aと第1円筒部材13の隙間36aとが、軸線方向に伸びる部分を有しているのに対して、第1電磁誘導モジュール(18,20a)と第2電磁誘導モジュール(28,30a)との間の隙間は、軸線方向に垂直に伸びている。すなわち、両者は直交している。電磁波は直進性を有するため、両者が直交することで、相互に影響を及ぼすことを抑制することができる。すなわち、外部で発生した電磁波ノイズが電磁誘導モジュール(18,20a),(28,30a)に影響することが抑制され、また、電磁誘導モジュール(18,20a),(28,30a)で発生した電磁波ノイズが外部機器に作用することが防止される。その結果、外部機器の誤動作や損傷等を好適に防止することができる。
【実施例7】
【0055】
図7に示すように、実施例7の軸受装置130は、実施例2の軸受装置40と略同一の構成を有しており、電磁誘導モジュール44,46,48,50と円筒部材13,23との間に電磁遮蔽体132,138が配置されている点でのみ相違する。このため、実施例2の軸受装置40と同一構成の部分については、実施例2の軸受装置40と同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0056】
実施例7の軸受装置130では、円筒部材13,23に電磁遮蔽体132,138が取付けられている。電磁遮蔽体132,138は、電磁遮蔽材料(例えば、アルミニウム等)によって形成されている。電磁遮蔽体132には、電気絶縁体134,136を介して電磁誘導モジュール46,44が取付けられている。電磁遮蔽体132は、電磁誘導モジュール46,44のうち電磁誘導モジュール50,48と対向する面を除いた全ての面を覆っている。電磁遮蔽体132には、電磁誘導モジュール46,44の中間の位置から電磁遮蔽体138側に向かって突出する隔壁部134aが形成されている。一方、電磁遮蔽体138には、電気絶縁体140,142を介して電磁誘導モジュール50,48が取付けられている。電磁遮蔽体138は、電磁誘導モジュール50,48のうち電磁誘導モジュール46,44と対向する面を除いた全ての面を覆っている。電磁遮蔽体138には、電磁誘導モジュール50,48の中間の位置に凹部138aが形成されている。電磁遮蔽体138の凹部138a内には、電磁遮蔽体134の隔壁部134aが位置している。
【0057】
この軸受装置130では、電磁誘導モジュール44,48と電磁誘導モジュール46,50の間に隔壁部134aが位置している。このため、電磁誘導モジュール44,48から漏れる磁束が電磁誘導モジュール46,50に影響を与えることを防止することができ、電磁誘導モジュール46,50から漏れる磁束が電磁誘導モジュール44,48に影響を与えることを防止することができる。
【実施例8】
【0058】
図8に示すように、実施例8の軸受装置150は、実施例7の軸受装置130と略同一の構成を有しており、円筒部材153の内周面と円筒部材155の外周面のそれぞれに段差が形成されている点でのみ相違する。このため、実施例7の軸受装置130と同一構成の部分については、実施例7の軸受装置130と同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0059】
実施例8の軸受装置150では、第1円筒部材153の内周面に、図示しない回転軸が取付けられる支持部152aと、支持部152aに取付けられた回転軸に対して無接触となる無接触部152bが形成されている。無接触部152bは、支持部152aに対して、半径方向外側にシフトしており、かつ、軸線方向に連続して形成されている。支持部152aが設けられた位置において、第1円筒部材153の外周面に転動体32が接触している。また、無接触部152bが設けられた位置において、第1円筒部材153の外周面に電磁誘導モジュール44,46が取付けられている。
【0060】
また、第2円筒部材155の外周面には、図示しない支持体が取付けられる第1外周面154aと、第1外周面154aと軸線方向に並設された第2外周面154bが形成されている。第2外周面154bは、第1外周面154aに対して、半径方向内側にシフトしている。第1外周面154aが設けられた位置において、第2円筒部材155の内周面に転動体32が接触している。また、第2外周面154bが設けられた位置において、第2円筒部材155の内周面に電磁誘導モジュール48,50が取付けられている。
【0061】
上記の軸受装置150では、回転軸と第1円筒部材153とが接触する支持部152aが設けられた位置において、第1円筒部材153と転動体32とが接触する。また、支持体と第2円筒部材155とが接触する第1外周面154aが設けられた位置において、第2円筒部材155と転動体32とが接触する。すなわち、第1円筒部材153は、転動体32と接触する部位から離れた無接触部152bでは回転軸と接触せず、第2円筒部材155は、転動体32と接触する部位から離れた第2外周面54bでは支持体と接触しない。このため、第1円筒部材153と第2円筒部材155に過大なモーメントが作用することを防止でき、これらの部材153,155の損傷等を防止することができる。
【0062】
また、円筒部材153,155の電磁誘導モジュール44,46,48,50が取付けられる部位の変形が防止されるため、電磁誘導モジュール44,46,48,50の位置関係が一定に保たれる。これによって、電磁誘導モジュール44,46,48,50による電力の伝達及び信号の伝達を安定して行うことができる。また、電磁誘導モジュール44,46,48,50自体に外力が作用することを防止し、電磁誘導モジュール44,46,48,50の破損を防止することができる。
【0063】
さらに、無接触部152bを設けることで、第1円筒部材153の内周面と回転軸の間に隙間が形成され、かつ、第2外周面154bを設けることで、第2円筒部材155の外周面と支持体の間に隙間が形成される。このため、第1円筒部材153及び第2円筒部材155の放熱性を向上することができる。これによって、熱による潤滑剤の固化や各部材の変形等を防止することができる。
【実施例9】
【0064】
図9に示すように、実施例9の軸受装置160は、実施例8の軸受装置150と略同一の構成を有しており、円筒部材153の内周面と円筒部材155の外周面のそれぞれに放熱フィン152c,154cが形成されている点でのみ相違する。このため、実施例8の軸受装置150と同一構成の部分については、実施例8の軸受装置150と同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0065】
図9に示すように、第1円筒部材153の無接触部152bには放熱フィン152cが設けられている。また、第2円筒部材155の第2外周面154bにも放熱フィン164cが設けられている。これによって、円筒部材153,155の放熱性が向上し、軸受装置160が高温となることによる不具合の発生を防止することができる。
【実施例10】
【0066】
図10に示すように、実施例10の軸受装置170は、実施例9の軸受装置160に対して、センサ172が設けられた点でのみ相違する。このため、実施例9の軸受装置160と同一構成の部分については、実施例9の軸受装置160と同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0067】
図10に示すように、第1円筒部材153にはセンサ172が取付けられる。センサ172は、第1円筒部材153の状態や、第1円筒部材153に取付けられる回転軸の状態等、第1円筒部材153に接する部材の状態を検出するセンサである。センサ172には、例えば、サーモカップル、サーミスタ、歪ゲージ、加速度センサ等を用いることができる。例えば、センサ172にサーモカップルを用いた場合、回転軸又は第1円筒部材153の熱状態を検出することができる。
【0068】
センサ172は、引き出し配線44c,46cが接続されている。センサ172は、電磁誘導モジュール50,46の電磁誘導によって第2円筒部材155側から第1円筒部材153側に伝達された電力により作動する。そして、センサ172から出力される信号は、電磁誘導モジュール44,48の電磁誘導によって第1円筒部材153側から第2円筒部材155側に伝達される。このため、第2円筒部材155側に設けられた外部機器は、略リアルタイムで回転軸及び/又は第1円筒部材153の状態をモニタリングすることができる。その結果、軸受装置170に発生した異常を検出することができ、軸受装置170の破損またはこれに接続される機器の破損を防止することができる。
【0069】
以上、実施例1〜10の軸受装置について説明したが、これらの軸受装置は種々の用途に用いることができる。例えば、図11に示すように、第1回転軸242の回転を第2回転軸252に伝達するユニバーサルジョイントに用いることができる。例えば、実施例1〜10の軸受装置は、第1回転軸242と第2回転軸252の間に配置されているクロススパイダー246の軸先端部を支持する軸受装置に用いることができる。すなわち、クロススパイダー246は、その両端が第1回転軸242に回転可能に支持される第1軸部250と、その両端が第2回転軸252に回転可能に支持される第2軸部248を有しており、第1軸部250と第2軸部248とは交差している。第1軸部250の少なくとも一端と第1回転軸242の間には、実施例1〜10のいずれかの軸受装置(図示省略)が配置される。また、第2軸部248の少なくとも一端と第2回転軸252の間には、実施例1〜10のいずれかの軸受装置(図示省略)が配置される。第1軸部250に配置された軸受装置では、第1円筒部材が第1軸部250の一端に取付けられ、第2円筒部材が第1回転軸に取付けられる。第2軸部248に配置された軸受装置では、第1円筒部材が第2軸部248の一端に取付けられ、第2円筒部材が第2回転軸252に取付けられる。そして、第1軸部250に取付けられている電磁誘導モジュールと、第2軸部248に取付けられている電磁誘導モジュールとを配線により接続する。これによって、電磁誘導によって第1回転軸242側から第1軸部250側(即ち、クロススパイダー246)に伝えられた電力及び/又は信号は、配線を介して第2軸部248側に伝達される。また、第2軸部248側に伝達された電力及び/又は信号は、電磁誘導によって第2回転軸252側に伝達される。これによって、第1回転軸242側から第2回転軸252側に電力又は信号が伝達される。
【0070】
なお、クロススパイダーにセンサを設置し、そのセンサに軸受装置によって第1回転軸側又は第2回転軸側から電力を供給してもよい。その場合に、センサからの出力信号は、軸受装置を介して第1回転軸側又は第2回転軸側に伝達する。これによって、第1回転軸側又は第2回転軸側でユニバーサルジョイントの状態を略リアルタイムで監視することができる。その結果、ユニバーサルジョイントに異常が生じた時は適切な対応を採ることができ、ユニバーサルジョイントの破損等を未然に防止することができる。
【0071】
また、実施例1〜10の軸受装置は、図12に示すような風力発電装置180に好適に用いることができる。風力発電装置180は、風を受けることで回転するブレード182と、ブレード182が固定された回転部材210を備えている。回転部材210の回転は、歯車機構(188,208,194,202)を介して駆動軸196に伝達される。駆動軸196が回転することで、発電機198が駆動される。回転部材210には、取付けロッド204の一端が相対回転可能に取付けられている。取付けロッド204の他端は、タワー192に回転可能に取付けられている。かかる構成において、回転部材210と取付けロッド204の間に配する軸受装置206及び/又は取付けロッド204とタワー192の間に配置する軸受装置190に、実施例1〜10のいずれかの軸受装置を用いることができる。軸受装置190,206に電力及び信号を伝達することができる軸受装置を用いることで、タワー192側と回転部材210側の制御基板184との間で電力及び信号の伝達を行うことができる。なお、風力発電装置の詳細な構成については、例えば、特許3679801号に開示された構成を採用することができる。
【0072】
さらには、図13に示す車軸装置に、実施例1〜10の軸受装置を用いることができる。すなわち、車軸装置220は、車軸226と、軸受装置222と、車軸226を軸受装置222を介して回転可能に支持する支持部材234を有している。この軸受装置222に、実施例1〜10のいずれかの軸受装置を用いることができる。車軸226の先端には車輪230が取付けられている。車輪230には、車輪230の状態を検出するセンサ228が取付けられている。センサ228には、例えば、サーモカップル、サーミスタ、歪ゲージ、加速度センサ、エンコーダ等を用いることができる。軸受装置222に電力及び信号を伝達することができる実施例の軸受装置を用いることで、支持部材234側から車輪230に取付けられたセンサ228に電力を供給することができ、また、センサ228からの信号を支持部材234側に伝達することができる。
【0073】
なお、上述した適用例に限られず、一般的な機械(例えば、工作機械の回転部やロボットの間接部)の軸受装置として、実施例1〜10の軸受装置を用いることができる。実施例1〜10の軸受装置を用いることで、回転側から固定側及び/又は固定側から回転側への電力又は信号の伝達を行うことができる。
【0074】
以上、本発明のいくつかの実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上述した各実施例では、内側の円筒部材に回転軸(回転側)が取付けられ、外側の円筒部材に支持体(固定側)が取付けられていた。しかしながら、本願に開示する軸受装置は、内側の円筒部材に支持体(固定側)が取付けられ、外側の円筒部材に回転軸(回転側)が取付けられていてもよい。
【0075】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0076】
10:軸受装置
13:第1円筒部材
14,24a,24b:シール部材
16,26:電気絶縁体
18,28:ポットコア
20a,30a:コイル
23:第2円筒部材
【技術分野】
【0001】
本願は、軸受装置に関する。詳しくは、回転側と支持側との間で、無接触で電力及び/又は信号の伝達が可能となっている軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来技術に係る軸受装置が開示されている。この軸受装置は、回転軸が取付けられる内方部材と、その内方部材を回転可能に支持する外方部材を備えている。内方部材には回転側電磁誘導モジュールが取付けられ、外方部材には固定側電磁誘導モジュールが取付けられている。回転側電磁誘導モジュールと固定側電磁誘導モジュールは対向して配置され、これら電磁誘導モジュールの電磁誘導によって信号の伝達が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−249005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、この種の軸受装置では、回転側電磁誘導モジュールと固定側電磁誘導モジュールとの電磁誘導によって、回転側から固定側及び/又は固定側から回転側へ電力や信号を伝達する。このため、電磁波ノイズによって電磁誘導モジュールに電流が流れると、その電磁誘導モジュールに接続される機器が誤動作をしたり、破損したりする等の原因となる。また、電力や信号を伝達する際には、電磁誘導モジュールから発生する磁界による電磁波ノイズによって、外部機器が誤動作をしたり、破損したりする等の原因となる。
【0005】
本願は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電磁波ノイズによる影響を抑制して、電磁波ノイズによる機器の誤動作や破損を防止することができる軸受装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示する軸受装置は、第1円筒部材と、第1円筒部材の外周面に接触する転動体と、第1円筒部材の外側に配置され、その内周面に転動体が接触し、第1円筒部材を相対回転可能に支持する第2円筒部材と、第1円筒部材に取付けられる第1電磁誘導モジュールと、第1円筒部材と第1電磁誘導モジュールとの間に配置され、第1円筒部材と第1電磁誘導モジュールとを電気絶縁する第1電気絶縁体と、第2円筒部材に取付けられ、第1電磁誘導モジュールに対向する位置に配置される第2電磁誘導モジュールと、第2円筒部材と第2電磁誘導モジュールとの間に配置され、第2円筒部材と第2電磁誘導モジュールとを電気絶縁する第2電気絶縁体と、を有している。
【0007】
この軸受装置では、第1円筒部材と第1電磁誘導モジュールとの間に第1電気絶縁体が配置され、第2円筒部材と第2電磁誘導モジュールとの間に第2電気絶縁体が配置されている。このため、電磁波ノイズによって第1円筒部材や第2円筒部材に電流等が発生しても、第1電磁誘導モジュールや第2電磁誘導モジュールに電流が流れることが抑制される。その結果、意図しない電力の伝達や誤った信号の伝達を抑制することができ、電磁誘導モジュールに接続される機器の誤動作や破壊を防止することができる。また、電磁誘導モジュール間で電力や信号を伝達する際には、電磁誘導モジュールから発生する磁界による電磁波ノイズによって、第1円筒部材や第2円筒部材に電流等が発生することを抑制することができる。その結果、第1円筒部材や第2円筒部材に接続される機器の誤動作や破壊を防止することができる。例えば、第1円筒部材や第2円筒部材が接地される場合は、その接地線に接続される機器の誤動作や破壊を防止することができる。
【0008】
上記の軸受装置では、第1円筒部材の内周面に第1部材が取付けられる第1取付部が形成され、第2円筒部材の外周面には第2部材が取付けられる第2取付部が形成され、第1部材と第2部材は軸受装置を介して相対回転可能とされていてもよい。この場合に、第1円筒部材の外周面には、第1電磁誘導モジュールが取付けられる第1電磁誘導モジュール取付部が形成されており、第2円筒部材の内周面には、転動体に接触して第1円筒部材を相対回転可能に支持する第2支持部と、第2電磁誘導モジュールが取付けられる第2電磁誘導モジュール取付部が形成されていてもよい。また、第1取付部と第1電磁誘導モジュール取付部は第1円筒部材の軸方向に並んで配置されると共に、第2支持部と第2電磁誘導モジュール取付部は第2円筒部材の軸方向に並んで配置されていてもよい。そして、第1取付部が形成された位置では、第1円筒部材の外周面に転動体が接触する第1支持部が形成されており、第1電磁誘導モジュール取付部が形成された位置では、第1円筒部材の内周面が第1取付部より外側にシフトしていることが好ましい。このような構成によると、第1電磁誘導モジュールが取付けられる位置では、第1円筒部材と第1部材との間に隙間が形成され、第1部材が取付けられる位置(すなわち、第1取付部)で、第1円筒部材と転動体とが接触する。このため、円筒部材と転動体との片当りが防止され、円筒部材と転動体との不均一接触が回避される。また、転動体と円筒部材との接触点から、第1部材や第2部材から円筒部材に作用する外力の作用点までの距離が短くなる。このため、円筒部材に作用するモーメントを小さくでき、これら円筒部材の変形等を防止することができる。その結果、円筒部材が変形することによる円筒部材同士の接触や、過負荷や、性能低下や、破損といった不具合を防止することができる。なお、第2電磁誘導モジュール取付部が形成された位置における第2円筒部材の外周面は、第2支持部が形成された位置における第2円筒部材の外周面より内側にシフトしていてもよい。また、第1円筒部材の内周面と第2円筒部材の害周面の少なくとも一部には放熱フィンを設けることができる。放熱フィンを設けることで、軸受部分の放熱性が向上し、潤滑剤の固化等の不具合の発生を効果的に抑制することができる。
【0009】
また、上記の軸受装置では、第1円筒部材と第1電気絶縁体との間に配置される第1電磁遮蔽体と、第2円筒部材と第2電気絶縁体との間に配置される第2電磁遮蔽体をさらに有し、第1電気絶縁体は、第1電磁誘導モジュールと第1電磁遮蔽体との間に配置され、第2電気絶縁体は、第2電磁誘導モジュールと第2電磁遮蔽体との間に配置されていてもよい。さらに、第1円筒部材と第2円筒部材はそれぞれ、電磁遮蔽材料によって形成されていてもよい。この場合、第1円筒部材と第2円筒部材の間には、第1円筒部材及び第2円筒部材によってその周囲が囲まれる収容空間が形成されていてもよい。そして、第1電磁誘導モジュールと第1電磁遮蔽体と第1電気絶縁体並びに第2電磁誘導モジュールと第2電磁遮蔽体と第2電気絶縁体が、この収容空間に収容されていることが好ましい。このような構成によると、第1円筒部材と第2円筒部材による電磁遮蔽と、第1電磁遮蔽体と第2電磁遮蔽体による電磁遮蔽の2つの電磁遮蔽が行われるため、電磁波ノイズによって悪影響が生じることをより抑制することができる。
【0010】
上記の構成を採用する場合は、第1円筒部材と第2円筒部材の間には、収容空間と軸受装置の外部とを連通する隙間が形成されていている。第1電磁遮蔽体は、第1電磁誘導モジュールのうち第2電磁誘導モジュールと対向する面を除いた全ての面を覆い、第2電磁遮蔽体は、第2電磁誘導モジュールのうち第1電磁誘導モジュールと対向する面を除いた全ての面を覆っていてもよい。そして、上記の隙間の少なくとも一部が、第1電磁誘導モジュールの第2電磁誘導モジュールと対向する面と直交し、かつ、第2電磁誘導モジュールの第1電磁誘導モジュールと対向する面と直交することが好ましい。このような構成によると、電磁波ノイズの直進性により、隙間から進入した電磁波ノイズが電磁誘導モジュールの対向面に進入し難くなる。これによって、電磁波ノイズによって悪影響が生じることをより抑制することができる。
【0011】
上記の軸受装置では、第1円筒部材には第1部材が取付けられるようになっており、第2円筒部材には第2部材が取付けられるようになっており、第1部材と第2部材は、軸受装置を介して相対回転可能としてもよい。一方の円筒部材には、センサ及び電子回路が取付けられていてもよい。センサと電子回路は、他方の円筒部材側の電磁誘導モジュールから一方の円筒部材側の電磁誘導モジュールに伝達される電力によって動作し、電子回路には、センサからの信号と他方の円筒部材側の電磁誘導モジュールから一方の円筒部材側の電磁誘導モジュールに伝達される信号が入力し、電子回路から出力される信号とセンサから出力される信号は、一方の円筒部材側の電磁誘導モジュールから他方の円筒部材側の電磁誘導モジュールに伝達されることが好ましい。このような構成によると、第1部材又は第1部材が取付けられた円筒部材の異常等がセンサによって検出され、その異常を第2部材が取付けられた円筒部材側に伝達することができる。なお、センサは、第1部材や円筒部材の異常だけでなく、第1部材等の正常状態の検出や、熱や振動の検出を行なってもよい。このような検出を行うことで、軸受装置の変化をいち早く検知し、トラブルの発生を未然に防止することができ、また、メンテナンス時期の判断にも役立てることができる。
【0012】
また、上記の軸受装置では、第1電磁誘導モジュールは、電力を伝達するための第1電力用コイルと、信号を伝達するための第1信号用コイルと、第1電力用コイルと第1信号用コイルが券回される1つの第1コアを有することができる。また、第2電磁誘導モジュールは、第1電力用コイルと対向し、電力を伝達するための第2電力用コイルと、第1信号用コイルと対向し、信号を伝達するための第2信号用コイルと、第2電力用コイルと第2信号用コイルが券回される1つの第2コアを有することができる。このような構成によると、電力伝達用と信号伝達用の2つのコイルを回転側と固定側のそれぞれに配置するため、一対のコイルで電力と信号を伝達する場合と比較して複雑な処理が不要となり、電力伝達と信号伝達を簡易に行うことができる。また、1つのコアに電力用コイルと信号用コイルの両者を券回するため、小さなスペースに電磁誘導モジュールを配置することできる。
【0013】
また、上記の軸受装置では、第1円筒部材には第1部材が取付けられるようになっており、第2円筒部材には第2部材が取付けられるようになっており、第1部材と第2部材は、軸受装置を介して相対回転可能となっていてもよい。この場合に、第1電磁誘導モジュールは、電力を伝達するための第1電力用コイルと、信号を伝達するための第1信号用コイルと、第1電力用コイルが券回される第1電力用コアと、第1信号用コイルが券回される第1信号用コアを有しており、第1電力用コアと第1信号用コアは第1円筒部材の半径方向に並んで配置されていてもよい。また、第2電磁誘導モジュールは、第1電力用コイルと対向し、電力を伝達するための第2電力用コイルと、第1信号用コイルと対向し、信号を伝達するための第2信号用コイルと、第2電力用コイルが券回される第2電力用コアと、第2信号用コイルが券回される第2信号用コアを有しており、第2電力用コアと第2信号用コアは第2円筒部材の半径方向に並んで配置されていてもよい。この場合に、第1電力用コアの第2電力用コアとの対向面と、第1信号用コアの第2信号用コアとの対向面とが、第1円筒部材の軸方向にシフトしており、第2電力用コアの第1電力用コアとの対向面と、第2信号用コアの第1信号用コアとの対向面とが、第2円筒部材の軸方向にシフトしていることが好ましい。このような構成によると、電力用電磁誘導モジュールによる電磁誘導と、信号用電磁誘導モジュールによる電磁誘導により発生する漏れ磁束が相互に影響し合うことを抑制することができる。
【0014】
また、電力用コイルと信号用コイルの2つのコイルを有する軸受装置では、第1電力用コイルに接続される第1電力用配線と、第1信号用コイルに接続される第1信号用配線と、第2電力用コイルに接続される第2電力用配線と、第2信号用コイルに接続される第2信号用配線をさらに有することができる。そして、第1円筒部材は、第1円筒部材と第2円筒部材の間の空間を閉じる方向に伸びる端面を有しており、第1電力用配線と第1信号用配線とが、第1円筒部材の端面より引出されていることが好ましい。このような構成によると、第1円筒部材の内周面等に配線を引き回すための機械加工を行う必要を無くすことができる。その結果、第1円筒部材の強度低下を防止でき、加工工数の削減を図ることができる。
【0015】
なお、上記の軸受装置は、風力発電装置に用いることができる。すなわち、本明細書に開示する風力発電装置は、風を受けることで回転する第1部材と、回転部材に対して回転可能に取付けられる第2部材と、第2部材に対して回転可能に取付けられる第3部材と、を有しており、第1部材と第2部材の連結部と第2部材と第3部材の連結部の少なくとも一方に、上述した軸受装置のいずれか一つが用いられている。この風力発電装置では、第1部材と回転部材との間の電力及び/又は信号の伝達を無接触で、かつ、安定して行うことができる。
【0016】
また、上記の軸受装置は、ユニバーサルジョイント装置に用いることができる。すなわち、本明細書に開示するユニバーサルジョイント装置は、第1回転軸と、第1回転軸の回転が伝達される第2回転軸と、第1回転軸と第2回転軸の間に配置されているクロススパイダーと、を有している。クロススパイダーの第1軸部の少なくとも一端が、上述した軸受装置のいずれかである第1軸受装置を介して第1回転軸に回転可能に取付けられており、第1軸受装置の第1円筒部材と第2円筒部材の一方は第1軸部の一端に取付けられており、第1軸受装置の第1円筒部材と第2円筒部材の他方は第1回転軸に取付けられている。このユニバーサルジョイント装置では、第1回転軸とクロススパイダーとの間の電力及び/又は信号の伝達を無接触で、かつ、安定して行うことができる。また、クロススパイダーにセンサを取付けた場合は、センサからの信号を第1軸部側でモニタリングすることができ、ユニバーサルジョイントの異常診断等を行うことができる。
【0017】
また、上記のユニバーサルジョイント装置では、クロススパイダーの第2軸部の少なくとも一端が、上述した軸受装置のいずれかである第2軸受装置を介して第2回転軸に回転可能に取付けられており、第2軸受装置の第1円筒部材と第2円筒部材の一方は第2軸部の一端に取付けられており、第2軸受装置の第1円筒部材と第2円筒部材の他方は第2回転軸に取付けられており、第1軸受装置の第1軸部に取付けられている側の電磁誘導モジュールと、第2軸受装置の第2軸部に取付けられている側の電磁誘導モジュールとが配線により電気的に接続されていてもよい。このような構成によると、第1回転軸と第2回転軸との間の電力及び/又は信号の伝達を無接触で、かつ、安定して行うことができる。
【0018】
また、上記の軸受装置は、車軸装置に用いることができる。すなわち、本明細書に開示する車軸装置は、支持部材と、回転軸と、回転軸に取付けられた車輪と、上述した軸受装置のいずれか一つを有しており、軸受装置の第1円筒部材と第2円筒部材の一方が支持部材に取付けられると共に他方が回転軸に取付けられており、回転軸が軸受装置を介して支持部材に回転可能に支持されている。この車軸装置によると、支持部材と回転部材との間の電力及び/又は信号の伝達を無接触で、かつ、安定して行うことができる。また、車輪にセンサを取付けた場合は、車輪の異常を事前に判断でき、車輪の誤動作や破損の防止、早期問題解決による長寿命化等を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1に係る軸受装置の断面図を示す。
【図2】実施例2に係る軸受装置の断面図を示す。
【図3】実施例3に係る軸受装置の断面図を示す。
【図4】実施例4に係る軸受装置の断面図を示す。
【図5】実施例5に係る軸受装置の断面図を示す。
【図6】実施例6に係る軸受装置の断面図を示す。
【図7】実施例7に係る軸受装置の断面図を示す。
【図8】実施例8に係る軸受装置の断面図を示す。
【図9】実施例9に係る軸受装置の断面図を示す。
【図10】実施例10に係る軸受装置の断面図を示す。
【図11】実施例1〜10に係る軸受装置のいずれかを備えたユニバーサルジョイント装置を模式的に示す図である。
【図12】実施例1〜10に係る軸受装置のいずれかを備えた風力発電装置を模式的に示す図である。
【図13】車輪を支持する軸受装置に、実施例1〜10に係る軸受装置のいずれかを用いた例を示す図である。
【実施例1】
【0020】
図1に示すように、実施例1の軸受装置10は、第1円筒部材13と、第1円筒部材13の外側に配置される第2円筒部材23を有している。第1円筒部材13には図示しない回転軸が取付けられ、第2円筒部材23には図示しない支持体が取付けられる。これにより、回転軸が支持体に対して回転可能に支持される。
【0021】
第1円筒部材13は、円筒状の円筒部12と、円筒部12の一端に固定されたシール部材14を有している。円筒部12は、電磁遮蔽材料(例えば、鋼材やステンレス等)によって形成されている。円筒部12の内周面12cには、図示しない回転軸が圧入等によって固定される。円筒部12の外周面には、転動体32が当接する第1支持部12aと、第1電磁誘導モジュール(18,20a)が取付けられる第1取付部12bが形成されている。第1支持部12aと第1取付部12bは、回転軸の軸線Cの伸びる方向(以下、軸線方向という)に並んで配置されている。第1支持部12aは、第1取付部12bよりも回転軸の半径方向外側(以下、単に半径方向外側という)に突出している。このため、第1支持部12aの軸線方向の両側(すなわち、第1取付部12b側とその反対側)には段差が形成されている。
【0022】
シール部材14は、リング状の板材であり、電磁遮蔽材料(例えば、ステンレス等)によって形成されている。シール部材14は、円筒部12の一端(即ち、第1取付部12b側の端部)に固定されている。シール部材14は、円筒部12の外周面から半径方向外側に向かって突出している。シール部材14は、第2円筒部材22に近接する位置まで伸び、シール部材14と第2円筒部材22との間には隙間36bが形成されている。隙間36bは、シール部材14の外周面から軸線方向に伸び、次いで半径方向に屈曲している。
【0023】
第1円筒部材13(詳細には、シール部材14及び円筒部12)には、第1電気絶縁体16を介して第1電磁誘導モジュール(18,20a)が取付けられている。第1電気絶縁体16は、絶縁材料(例えば、エポキシ樹脂、テフロン(登録商標)等)によって形成されている。第1電気絶縁体16の内周面が円筒部12の第1取付部12bに固定され、第1電気絶縁体16の一端面がシール部材14に固定されている。これにより、円筒部12と第1電磁誘導モジュール(18,20a)との間、及び、シール部材14と第1電磁誘導モジュール(18,20a)との間に、第1電気絶縁体16の分だけ距離が設けられている。なお、電気絶縁体16の外周面と第2円筒部材22の間には空間が形成されている。
【0024】
第1電磁誘導モジュール(18,20a)は、第1円筒部材13の外周に沿って配置されている。第1電磁誘導モジュール(18,20a)は、リング状のポットコア18と、ポットコア18に券回されたコイル20aを有している。ポットコア18は、透磁性材料(例えば、フェライト)によって形成されている。ポットコア18は、第2電磁誘導モジュール(28,30a)と対向する面を除いて第1電気絶縁体16によって覆われている。コイル20aは、ポットコア18の内部に配置されている。コイル20aは、第2電磁誘導モジュール(28,30a)と対向する面を除いてポットコア18によって覆われている。ポットコア18と第1電気絶縁体16の第2電磁誘導モジュール(28,30a)と対向する面は、同一平面上に位置し、回転軸の軸線Cに対して直交している。コイル20aには、引き出し配線20bの一端が接続されている。引き出し配線20bは、シール部材14を貫通して外部に引出されている。
【0025】
第2円筒部材23は、円筒状の円筒部22と、円筒部22に固定されたシール部材24a,24bを有している。円筒部22は、電磁遮蔽材料(例えば、鋼材やステンレス等)によって形成されている。円筒部22の内周面は、第1円筒部材13の外周面12a,12bに対向している。円筒部22の内周面には、転動体32が当接する第2支持部22aと、第2電磁誘導モジュール(28,30a)が取付けられる第2取付部22bが形成されている。第2支持部22aと第2取付部22bは、軸線方向に並んで配置されている。第2支持部22aと第2取付部22bは同一平面上に位置しており、円筒部22の内周面には段差が形成されていない。また、円筒部22の外周面22cにも、段差が形成されていない。円筒部22の外周面22cには、図示しない支持体が固定される。
【0026】
シール部材24aは、リング状の板材であり、電磁遮蔽材料(例えば、ステンレス等)によって形成されている。シール部材24aは、円筒部22の一端(即ち、第2支持部22a側の端部)に固定されている。シール部材24aは、円筒部22の内周面から半径方向内側に向かって突出している。シール部材24aは、第1円筒部材13と近接する位置まで伸び、シール部材24aと第1円筒部材13の間には隙間36aが形成されている。隙間36aは、シール部材24aの外周面から軸線方向に伸び、次いで半径方向に屈曲している。
【0027】
シール部材24bは、リング状の板材であり、電磁遮蔽材料材料(例えば、ステンレス等)によって形成されている。シール部材24bは、第2電磁誘導モジュール(28,30a)と転動体32との間の位置で円筒部22に固定されている。シール部材24bは、円筒部22の内周面から回転軸の半径方向内側(以下、単に半径方向内側という)に向かって突出している。シール部材24bは、第1円筒部材13と近接する位置まで伸び、シール部材24bと第1円筒部材13との間には隙間36cが形成されている。隙間36cは、空間35側から空間34側に向かって軸線方向に伸び、次いで半径方向に屈曲している。
【0028】
第2円筒部材23(具体的には、シール部材24b及び円筒部22)には、第2電気絶縁体26を介して第2電磁誘導モジュール(28,30a)が取付けられている。第2電気絶縁体26は、絶縁材料(例えば、エポキシ樹脂、テフロン(登録商標)等)によって形成されている。第2電気絶縁体26の外周面が円筒部22の第2取付部22bに固定され、第2電気絶縁体16の一端面がシール部材24bに固定されている。これにより、円筒部22と第2電磁誘導モジュール(28,30a)との間、及び、シール部材24bと第2電磁誘導モジュール(28,30a)との間に、第2電気絶縁体26の分だけ距離が設けられている。なお、電気絶縁体26の内周面と第1円筒部材13の間には空間が形成されている。
【0029】
第2電磁誘導モジュール(28,30a)は、第2円筒部材23の内周面に沿って配置されると共に、第1電磁誘導モジュール(18,20a)に対向して配置されている。第2電磁誘導モジュール(28,30a)と第1電磁誘導モジュール(18,20a)との間には、わずかな隙間が形成されている。第2電磁誘導モジュール(28,30a)は、ポットコア28と、ポットコア28に券回されたコイル30aを有している。ポットコア28は、透磁性材料(例えば、フェライト)によって形成されている。ポットコア28は、第1電磁誘導モジュール(18,20a)と対向する面を除いて第2電気絶縁体26によって覆われている。コイル30aは、ポットコア28の内部に配置されている。コイル30aは、第1電磁誘導モジュール(18,20a)と対向する面を除いてポットコア18によって覆われている。ポットコア28と第2電気絶縁体26の第1電磁誘導モジュール(18,20a)と対向する面は、同一平面上に位置し、回転軸の軸線Cに対して直交している。コイル30aには、引き出し配線30bの一端が接続されている。引き出し配線30bは、第2円筒部材23を貫通して外部に引出されている。
【0030】
上述した軸受装置10では、第1円筒部材13の円筒部12と第2円筒部材23の円筒部22の間にシール部材14,24aを配置することで、その周囲が第1円筒部材13と第2円筒部材23によって囲まれた収容空間(34,35)が形成される。収容空間(34,35)は、シール部材24bによって2つの空間に区切られている。一方の空間34には、転動体32が配置されており、他方の空間35には、電気絶縁体16,26と電磁誘導モジュール(18,20a),(28,30a)が配置されている。第1円筒部材13と第2円筒部材23との間をシール部材14,24a,24bによって塞ぐことで、空間34内に充填された潤滑剤(例えば、グリス等)を封止することができる。また、空間34,35内に異物が進入することを防止でき、第1電磁誘導モジュール(18,20a)及び第2電磁誘導モジュール(28,30a)を保護することができる。
【0031】
上述した軸受装置10において、第1円筒部材13側と第2円筒部材23側との間で電力又は信号の伝達を行うには、引き出し配線20bの一端に第1電力又は信号伝送用回路を接続し、引き出し配線30bの一端に第2電力又は信号伝送用回路を接続する。第1円筒部材13側から第2円筒部材23側に電力又は信号を伝達する場合は、第1電力又は信号伝送用回路は、第2円筒部材23側に伝達したい電力又は信号を電磁誘導可能な状態とし、第1電磁誘導モジュール(18,20a)のコイル20aに供給する。これによって、第1電磁誘導モジュール(18,20a)のコイル20aに電流が流れ、その電磁誘導によって第2電磁誘導モジュール(28,30a)のコイル30aに電流が流れる。第2電力又は信号伝送用回路は、第2電磁誘導モジュール(28,30a)のコイル30aに流れた電流(信号)を電力又は信号に変換する。これとは逆に、第2円筒部材23側から第1円筒部材13側に電力又は信号の伝達する場合は、上記とは逆の手順で行えばよい。なお、第1円筒部材13側と第2円筒部材23側との間で電力及び信号を同時に伝達することもできる。この場合は、送信側に電力と信号を合成する回路を設け、受信側に受信した信号から電力と信号を分離する回路を設ければよい。
【0032】
上述した説明から明らかなように、上述した軸受装置10においては、第1円筒部材13及び第2円筒部材23は、転動体32が当接する部分と、電磁誘導モジュール(18,20a)又は(28,30a)が取付けられる部分とが、回転軸の軸線方向に並んで配置され、第1円筒部材13及び第2円筒部材23の軸線方向の長さが長くされている。このため、第1円筒部材13及び第2円筒部材23の表面積が増大して、放熱性が向上されている。その結果、転動体32と第1円筒部材13との間に生じる摩擦熱や、転動体32と第2円筒部材23との間に生じる摩擦熱を、効率的に外部に放熱することができる。これによって、第1円筒部材13と第2円筒部材23の間に封止した潤滑剤の固化や、第1円筒部材13や第2円筒部材23の熱変形等を抑制することができる。
【0033】
また、上述した軸受装置10では、第1円筒部材13に第1電磁誘導モジュール(18,20a)が取付けられ、第2円筒部材23に第2電磁誘導モジュール(28,30a)が取付けられている。ここで、第1円筒部材13及び第2円筒部材23の加工精度は高く、また、これらの部材13,23のラジアル方向及びスラスト方向の回転精度も高い。このため、第1電磁誘導モジュール(18,20a)と第2電磁誘導モジュール(28,30a)との位置関係も精度よく管理することができる。その結果、第1電磁誘導モジュール(18,20a)と第2電磁誘導モジュール(28,30a)の間で安定した電磁誘導を行うことができ、安定した電力又は信号の伝達を行うことができる。例えば、第1電磁誘導モジュール(18,20a)と第2電磁誘導モジュール(28,30a)のギャップが大きくなると抵抗成分が大きくなり、伝達できる電力量が小さくなったり、伝達される信号波形が正確に伝達できなくなったりする。しかしながら、上述した軸受装置10では、第1電磁誘導モジュール(18,20a)と第2電磁誘導モジュール(28,30a)のギャップが一定となるため、安定した電力又は信号の伝達を行うことができる。
【0034】
また、上述した軸受装置10では、第1電磁誘導モジュール(18,20a)と第2電磁誘導モジュール(28,30a)が、第1円筒部材13と第2円筒部材23とによって囲まれた空間内に配置されている。これらの部材12,14,22,24aは電磁遮蔽材料によって形成されているため、外部で発生した電磁波ノイズが電磁誘導モジュール(18,20a),(28,30a)に影響することが抑制され、また、電磁誘導モジュール(18,20a),(28,30a)で発生した電磁波ノイズが外部機器に作用することが防止される。その結果、軸受装置10に接続される機器や外部機器の誤動作や損傷等を防止することができる。
【0035】
さらに、上記の軸受装置10では、第1円筒部材13に第1電気絶縁体16を介して第1電磁誘導モジュール(18,20a)が取付けられ、第2円筒部材23に第2電気絶縁体26を介して第2電磁誘導モジュール(28,30a)が取付けられている。このため、第1電磁誘導モジュール(18,20a)及び第2電磁誘導モジュール(28,30a)と第1円筒部材13及び第2円筒部材23との距離を適切な長さに保つことができる。このため、第1電磁誘導モジュール(18,20a)と第2電磁誘導モジュール(28,30a)からの磁束の漏れが少なくなり、両者のエネルギー効率を高めることができる。これによって、安定した信号又は電力の伝達が可能となる。さらに磁束の漏れが少なくなるため、第1円筒部材13及び第2円筒部材23への電磁波ノイズを軽減することができ、その結果、軸受装置10に接続される機器や外部機器の誤動作や損傷を防止することができる。
【0036】
また、第1円筒部材13や第2円筒部材23に電磁波ノイズが作用して電流が発生しても、第1電気絶縁体16及び第2電気絶縁体26によって、第1電磁誘導モジュール(18,20a)や第2電磁誘導モジュール(28,30a)に電流が流れることを抑制することができる。その結果、電磁波ノイズによって電力や信号の誤った伝達が生じることが防止され、機器の誤動作や破損を防止することができる。
【0037】
また、第1電気絶縁体16及び第2電気絶縁体26は誘電体であるため、ポットコア18と第1電気絶縁体16と第1円筒部材13によってキャパシタが構成され、ポットコア28と第2電気絶縁体26と第2円筒部材23によってキャパシタが構成される。これらキャパシタの静電容量が大きければ、ポットコア18,28と円筒部材13,23との間のインピーダンスが小さくなり、ポットコア18,28と円筒部材13,23の間で電流が流れ易くなる。しかしながら、実施例1の軸受装置10では、電気絶縁体16,26の厚みを適切にしてポットコア18,28と円筒部材13,23の間の距離を適切にし、キャパシタの静電容量をコントロールしている。このため、ポットコア18,28と円筒部材13,23の間で電流が流れることを抑制し、そのエネルギー損失を小さくしている。これによって、エネルギー効率を高めることができる。
【0038】
さらに、ポットコア18,28と円筒部材13,23の間に、熱伝導率の小さな電気絶縁体16,26が配置されるため、ポットコア18,28と円筒部材13,23との間で熱が伝達され難くなる。このため、電磁誘導の損失によって発生する熱が円筒部材13,23側に伝達されることを抑制すると同時に、円筒部材13,23で発生する摩擦熱がポットコア18,28側に伝達されること抑制することができる。
【0039】
さらに、上記の軸受装置10では、第1電磁誘導モジュール(18,20a)のポットコア18と第2電磁誘導モジュール(28,30a)のポットコア28とが対向配置されるため、第1電磁誘導モジュール(18,20a)と第2電磁誘導モジュール(28,30a)のポットコア18,28内に閉じた磁界が形成され易くなる。このため、漏れ磁束の量が小さくなり、信号又は電力の伝達効率を高めることができる。
【0040】
なお、上述した実施例1の軸受装置10は、その外径寸法等は従来公知の軸受装置と同様に設計することができる。この場合には、従来の軸受装置を実施例1の軸受装置10に交換するだけで、回転側から支持体側に信号及び電力の伝達を行う機能を付与することができる。
【実施例2】
【0041】
図2に示すように、実施例2の軸受装置40は、電力を伝達する電磁誘導モジュールと、信号を伝達する電磁誘導モジュールを別々に設けた点で実施例1の軸受装置10と相違し、その他の点は実施例1の軸受装置10と同一の構成を有している。このため、実施例1の軸受装置10と同一構成の部分については、実施例1の軸受装置10と同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0042】
実施例2の軸受装置40では、第1円筒部材13に、電気絶縁体43を介して第1電力用電磁誘導モジュール44と第1信号用電磁誘導モジュール46が取付けられている。第1電力用電磁誘導モジュール44と第1信号用電磁誘導モジュール46は、回転軸の半径方向に並んで配置されている。一方、第2円筒部材23には、電気絶縁体47を介して第2電力用電磁誘導モジュール48と第2信号用電磁誘導モジュール50が取付けられている。第2電力用電磁誘導モジュール48と第2信号用電磁誘導モジュール50は、回転軸の半径方向に並んで配置されている。また、第2電力用電磁誘導モジュール48は、第1電力用電磁誘導モジュール44と対向し、第2信号用電磁誘導モジュール50は、第1信号用電磁誘導モジュール46と対向している。各電磁誘導モジュール44,46,48,50は、ポットコア44a,46a,48a,50aと、ポットコア44a,46a,48a,50aに巻回されたコイル44b,46b,48b,50bによって構成されている。第1電力用電磁誘導モジュール44と第2電力用電磁誘導モジュール48によって電力の伝達が行われ、第1信号用電磁誘導モジュール46と第2信号用電磁誘導モジュール50によって信号の伝達が行われる。したがって、実施例2の軸受装置40では、信号と電力の伝達を行うことができる。
【0043】
また、第1電力用電磁誘導モジュール44の引き出し配線44cと第1信号用電磁誘導モジュール46の引き出し配線46cは、シール部材14を貫通して外部に引き出されている。このため、第1円筒部材13の円筒部12に配線用の空間を設ける必要がなく、また、第1円筒部材13に固定される回転軸に配線を引き回す空間を設ける必要もない。その結果、第1円筒部材13や回転軸に配線のための機械加工を施す必要がなく、これらの強度が低下することもない。なお、第2電力用電磁誘導モジュール48の引き出し配線48cと第2信号用電磁誘導モジュール50の引き出し配線50cは、第2円筒部材23の円筒部22を貫通して外部に引き出されている。
【実施例3】
【0044】
図3に示すように、実施例3の軸受装置60は、実施例2の軸受装置40と略同一の構成を有しており、各電磁誘導モジュール44,46,48,50を配置する位置のみが相違する。このため、実施例2の軸受装置40と同一構成の部分については、実施例2の軸受装置40と同一の符号を付すことで、その詳細な説明は省略する。
【0045】
実施例3の軸受装置60では、第1電力用電磁誘導モジュール44と第2電力用電磁誘導モジュール48の間に形成される空隙66と、第1信号用電磁誘導モジュール46と第2信号用電磁誘導モジュール50の間に形成される空隙68は、回転軸の軸線方向にシフトしている。すなわち、空隙66と空隙68が、回転軸の軸線方向にずれている。このため、電力用の電磁誘導モジュール44,48による電磁誘導と、信号用の電磁誘導モジュール46,50による電磁誘導により発生する漏れ磁束が相互に干渉することを抑制することができる。
【実施例4】
【0046】
図4に示すように、実施例4の軸受装置70は、実施例2の軸受装置40と異なり、転動体32を挟んで一方に電力用の電磁誘導モジュール44,48が配置され、他方に信号用の電磁誘導モジュール46,50が配置されている点で相違する。このため、実施例2の軸受装置40と同一構成の部分については、実施例2の軸受装置40と同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0047】
実施例4の軸受装置70では、第1電力用電磁誘導モジュール44と第2電力用電磁誘導モジュール48が第1円筒部材13の一端側(図4の上端側)に設けられ、第1信号用電磁誘導モジュール46と第2信号用電磁誘導モジュール50が第1円筒部材13の他端側(図4の下端側)に設けられている。そして、シール部材76a,76b,76c,14は電磁遮蔽材料(例えば、ステンレス等)により形成される。このため、電力用の電磁誘導モジュール44,48は、円筒部12,22及びシール部材14,76cによって取囲まれて電磁遮蔽が行われる。一方、信号用の電磁誘導モジュール46,50は、円筒部12,22及びシール部材76a,76bによって取囲まれて電磁遮蔽が行われる。従って、電力用の電磁誘導モジュール44,48による電磁誘導と、信号用の電磁誘導モジュール46,50による電磁誘導により発生する漏れ磁束が相互に干渉することを抑制することができる。
【実施例5】
【0048】
図5に示すように、実施例5の軸受装置90は、実施例1の軸受装置10と略同一の構成を有しており、電磁誘導モジュール94,98の構成のみが相違する。このため、実施例1の軸受装置10と同一構成の部分については、実施例1の軸受装置10と同一の符号を付すことで、その詳細な説明は省略する。
【0049】
実施例5の軸受装置90では、電磁誘導モジュール94は、第1円筒部材13に取付けられている。電磁誘導モジュール94は、ポットコア94aと、ポットコア94aに巻回された信号用コイル94cと、ポットコア94aに巻回された電力用コイル94bを有している。一方、電磁誘導モジュール98は、第2円筒部材23に取付けられており、ポットコア98aと、ポットコア98aに巻回された信号用コイル98cと、ポットコア98aに巻回された電力用コイル98bを有している。ポットコア94a,98aと信号用コイル94c,98cによって信号の伝達が行われ、ポットコア94a,98aと電力用コイル94b,98bによって電力の伝達が行われる。
【0050】
この軸受装置90では、1つのポットコア94a又は98aに2つのコイル(94b,94c)又は(98b,98c)が巻回されるため、その分だけ電磁誘導モジュール94,98の省スペース化が図られる。これによって、軸受装置90を小型化することができる。
【実施例6】
【0051】
図6に示すように、実施例6の軸受装置110は、実施例1の軸受装置10と略同一の構成を有しており、電磁誘導モジュール(18,20a),(28,30a)と円筒部材13,23の間に電磁遮蔽体114,120が配置されている点でのみ相違する。このため、実施例1の軸受装置10と同一構成の部分については、実施例1の軸受装置10と同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0052】
実施例6の軸受装置110では、円筒部材13,23に固定部材112,118を介して電磁遮蔽体114,120が取付けられる。電磁遮蔽体114,120には、電気絶縁体116,122を介して電磁誘導モジュール(18,20a),(28,30a)が取付けられている。電磁遮蔽体114,120は、電磁遮蔽材料(例えば、アルミニウム等)によって形成されている。電磁遮蔽体114は、電磁誘導モジュール(18,20a)のうち電磁誘導モジュール(28,30a)と対向する面を除いた全ての面を覆っている。また、電磁遮蔽体120は、電磁誘導モジュール(28,30a)のうち電磁誘導モジュール(18,20a)と対向する面を除いた全ての面を覆っている。
【0053】
この軸受装置110では、電磁誘導モジュール(18,20a),(28,30a)が電磁遮蔽体114,120で囲まれ、さらに、第1円筒部材13と第2円筒部材23とシール部材14,24aによって囲まれている。すなわち、電磁誘導モジュール(18,20a),(28,30a)は、二重の電磁遮蔽が行われている。このため、電磁波ノイズによる意図しない電力の伝達や誤った信号の伝達を効果的に抑制することができる。また、一方の電磁遮蔽に何らかの原因で不具合が発生しても、他方の電磁遮蔽によって電磁波ノイズの影響を低減することができる。このため、電力伝達又は信号伝達の信頼性を向上することができる。
【0054】
特に、上記の軸受装置110では、シール部材14と第2円筒部材23の隙間36bと、シール部材24aと第1円筒部材13の隙間36aとが、軸線方向に伸びる部分を有しているのに対して、第1電磁誘導モジュール(18,20a)と第2電磁誘導モジュール(28,30a)との間の隙間は、軸線方向に垂直に伸びている。すなわち、両者は直交している。電磁波は直進性を有するため、両者が直交することで、相互に影響を及ぼすことを抑制することができる。すなわち、外部で発生した電磁波ノイズが電磁誘導モジュール(18,20a),(28,30a)に影響することが抑制され、また、電磁誘導モジュール(18,20a),(28,30a)で発生した電磁波ノイズが外部機器に作用することが防止される。その結果、外部機器の誤動作や損傷等を好適に防止することができる。
【実施例7】
【0055】
図7に示すように、実施例7の軸受装置130は、実施例2の軸受装置40と略同一の構成を有しており、電磁誘導モジュール44,46,48,50と円筒部材13,23との間に電磁遮蔽体132,138が配置されている点でのみ相違する。このため、実施例2の軸受装置40と同一構成の部分については、実施例2の軸受装置40と同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0056】
実施例7の軸受装置130では、円筒部材13,23に電磁遮蔽体132,138が取付けられている。電磁遮蔽体132,138は、電磁遮蔽材料(例えば、アルミニウム等)によって形成されている。電磁遮蔽体132には、電気絶縁体134,136を介して電磁誘導モジュール46,44が取付けられている。電磁遮蔽体132は、電磁誘導モジュール46,44のうち電磁誘導モジュール50,48と対向する面を除いた全ての面を覆っている。電磁遮蔽体132には、電磁誘導モジュール46,44の中間の位置から電磁遮蔽体138側に向かって突出する隔壁部134aが形成されている。一方、電磁遮蔽体138には、電気絶縁体140,142を介して電磁誘導モジュール50,48が取付けられている。電磁遮蔽体138は、電磁誘導モジュール50,48のうち電磁誘導モジュール46,44と対向する面を除いた全ての面を覆っている。電磁遮蔽体138には、電磁誘導モジュール50,48の中間の位置に凹部138aが形成されている。電磁遮蔽体138の凹部138a内には、電磁遮蔽体134の隔壁部134aが位置している。
【0057】
この軸受装置130では、電磁誘導モジュール44,48と電磁誘導モジュール46,50の間に隔壁部134aが位置している。このため、電磁誘導モジュール44,48から漏れる磁束が電磁誘導モジュール46,50に影響を与えることを防止することができ、電磁誘導モジュール46,50から漏れる磁束が電磁誘導モジュール44,48に影響を与えることを防止することができる。
【実施例8】
【0058】
図8に示すように、実施例8の軸受装置150は、実施例7の軸受装置130と略同一の構成を有しており、円筒部材153の内周面と円筒部材155の外周面のそれぞれに段差が形成されている点でのみ相違する。このため、実施例7の軸受装置130と同一構成の部分については、実施例7の軸受装置130と同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0059】
実施例8の軸受装置150では、第1円筒部材153の内周面に、図示しない回転軸が取付けられる支持部152aと、支持部152aに取付けられた回転軸に対して無接触となる無接触部152bが形成されている。無接触部152bは、支持部152aに対して、半径方向外側にシフトしており、かつ、軸線方向に連続して形成されている。支持部152aが設けられた位置において、第1円筒部材153の外周面に転動体32が接触している。また、無接触部152bが設けられた位置において、第1円筒部材153の外周面に電磁誘導モジュール44,46が取付けられている。
【0060】
また、第2円筒部材155の外周面には、図示しない支持体が取付けられる第1外周面154aと、第1外周面154aと軸線方向に並設された第2外周面154bが形成されている。第2外周面154bは、第1外周面154aに対して、半径方向内側にシフトしている。第1外周面154aが設けられた位置において、第2円筒部材155の内周面に転動体32が接触している。また、第2外周面154bが設けられた位置において、第2円筒部材155の内周面に電磁誘導モジュール48,50が取付けられている。
【0061】
上記の軸受装置150では、回転軸と第1円筒部材153とが接触する支持部152aが設けられた位置において、第1円筒部材153と転動体32とが接触する。また、支持体と第2円筒部材155とが接触する第1外周面154aが設けられた位置において、第2円筒部材155と転動体32とが接触する。すなわち、第1円筒部材153は、転動体32と接触する部位から離れた無接触部152bでは回転軸と接触せず、第2円筒部材155は、転動体32と接触する部位から離れた第2外周面54bでは支持体と接触しない。このため、第1円筒部材153と第2円筒部材155に過大なモーメントが作用することを防止でき、これらの部材153,155の損傷等を防止することができる。
【0062】
また、円筒部材153,155の電磁誘導モジュール44,46,48,50が取付けられる部位の変形が防止されるため、電磁誘導モジュール44,46,48,50の位置関係が一定に保たれる。これによって、電磁誘導モジュール44,46,48,50による電力の伝達及び信号の伝達を安定して行うことができる。また、電磁誘導モジュール44,46,48,50自体に外力が作用することを防止し、電磁誘導モジュール44,46,48,50の破損を防止することができる。
【0063】
さらに、無接触部152bを設けることで、第1円筒部材153の内周面と回転軸の間に隙間が形成され、かつ、第2外周面154bを設けることで、第2円筒部材155の外周面と支持体の間に隙間が形成される。このため、第1円筒部材153及び第2円筒部材155の放熱性を向上することができる。これによって、熱による潤滑剤の固化や各部材の変形等を防止することができる。
【実施例9】
【0064】
図9に示すように、実施例9の軸受装置160は、実施例8の軸受装置150と略同一の構成を有しており、円筒部材153の内周面と円筒部材155の外周面のそれぞれに放熱フィン152c,154cが形成されている点でのみ相違する。このため、実施例8の軸受装置150と同一構成の部分については、実施例8の軸受装置150と同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0065】
図9に示すように、第1円筒部材153の無接触部152bには放熱フィン152cが設けられている。また、第2円筒部材155の第2外周面154bにも放熱フィン164cが設けられている。これによって、円筒部材153,155の放熱性が向上し、軸受装置160が高温となることによる不具合の発生を防止することができる。
【実施例10】
【0066】
図10に示すように、実施例10の軸受装置170は、実施例9の軸受装置160に対して、センサ172が設けられた点でのみ相違する。このため、実施例9の軸受装置160と同一構成の部分については、実施例9の軸受装置160と同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0067】
図10に示すように、第1円筒部材153にはセンサ172が取付けられる。センサ172は、第1円筒部材153の状態や、第1円筒部材153に取付けられる回転軸の状態等、第1円筒部材153に接する部材の状態を検出するセンサである。センサ172には、例えば、サーモカップル、サーミスタ、歪ゲージ、加速度センサ等を用いることができる。例えば、センサ172にサーモカップルを用いた場合、回転軸又は第1円筒部材153の熱状態を検出することができる。
【0068】
センサ172は、引き出し配線44c,46cが接続されている。センサ172は、電磁誘導モジュール50,46の電磁誘導によって第2円筒部材155側から第1円筒部材153側に伝達された電力により作動する。そして、センサ172から出力される信号は、電磁誘導モジュール44,48の電磁誘導によって第1円筒部材153側から第2円筒部材155側に伝達される。このため、第2円筒部材155側に設けられた外部機器は、略リアルタイムで回転軸及び/又は第1円筒部材153の状態をモニタリングすることができる。その結果、軸受装置170に発生した異常を検出することができ、軸受装置170の破損またはこれに接続される機器の破損を防止することができる。
【0069】
以上、実施例1〜10の軸受装置について説明したが、これらの軸受装置は種々の用途に用いることができる。例えば、図11に示すように、第1回転軸242の回転を第2回転軸252に伝達するユニバーサルジョイントに用いることができる。例えば、実施例1〜10の軸受装置は、第1回転軸242と第2回転軸252の間に配置されているクロススパイダー246の軸先端部を支持する軸受装置に用いることができる。すなわち、クロススパイダー246は、その両端が第1回転軸242に回転可能に支持される第1軸部250と、その両端が第2回転軸252に回転可能に支持される第2軸部248を有しており、第1軸部250と第2軸部248とは交差している。第1軸部250の少なくとも一端と第1回転軸242の間には、実施例1〜10のいずれかの軸受装置(図示省略)が配置される。また、第2軸部248の少なくとも一端と第2回転軸252の間には、実施例1〜10のいずれかの軸受装置(図示省略)が配置される。第1軸部250に配置された軸受装置では、第1円筒部材が第1軸部250の一端に取付けられ、第2円筒部材が第1回転軸に取付けられる。第2軸部248に配置された軸受装置では、第1円筒部材が第2軸部248の一端に取付けられ、第2円筒部材が第2回転軸252に取付けられる。そして、第1軸部250に取付けられている電磁誘導モジュールと、第2軸部248に取付けられている電磁誘導モジュールとを配線により接続する。これによって、電磁誘導によって第1回転軸242側から第1軸部250側(即ち、クロススパイダー246)に伝えられた電力及び/又は信号は、配線を介して第2軸部248側に伝達される。また、第2軸部248側に伝達された電力及び/又は信号は、電磁誘導によって第2回転軸252側に伝達される。これによって、第1回転軸242側から第2回転軸252側に電力又は信号が伝達される。
【0070】
なお、クロススパイダーにセンサを設置し、そのセンサに軸受装置によって第1回転軸側又は第2回転軸側から電力を供給してもよい。その場合に、センサからの出力信号は、軸受装置を介して第1回転軸側又は第2回転軸側に伝達する。これによって、第1回転軸側又は第2回転軸側でユニバーサルジョイントの状態を略リアルタイムで監視することができる。その結果、ユニバーサルジョイントに異常が生じた時は適切な対応を採ることができ、ユニバーサルジョイントの破損等を未然に防止することができる。
【0071】
また、実施例1〜10の軸受装置は、図12に示すような風力発電装置180に好適に用いることができる。風力発電装置180は、風を受けることで回転するブレード182と、ブレード182が固定された回転部材210を備えている。回転部材210の回転は、歯車機構(188,208,194,202)を介して駆動軸196に伝達される。駆動軸196が回転することで、発電機198が駆動される。回転部材210には、取付けロッド204の一端が相対回転可能に取付けられている。取付けロッド204の他端は、タワー192に回転可能に取付けられている。かかる構成において、回転部材210と取付けロッド204の間に配する軸受装置206及び/又は取付けロッド204とタワー192の間に配置する軸受装置190に、実施例1〜10のいずれかの軸受装置を用いることができる。軸受装置190,206に電力及び信号を伝達することができる軸受装置を用いることで、タワー192側と回転部材210側の制御基板184との間で電力及び信号の伝達を行うことができる。なお、風力発電装置の詳細な構成については、例えば、特許3679801号に開示された構成を採用することができる。
【0072】
さらには、図13に示す車軸装置に、実施例1〜10の軸受装置を用いることができる。すなわち、車軸装置220は、車軸226と、軸受装置222と、車軸226を軸受装置222を介して回転可能に支持する支持部材234を有している。この軸受装置222に、実施例1〜10のいずれかの軸受装置を用いることができる。車軸226の先端には車輪230が取付けられている。車輪230には、車輪230の状態を検出するセンサ228が取付けられている。センサ228には、例えば、サーモカップル、サーミスタ、歪ゲージ、加速度センサ、エンコーダ等を用いることができる。軸受装置222に電力及び信号を伝達することができる実施例の軸受装置を用いることで、支持部材234側から車輪230に取付けられたセンサ228に電力を供給することができ、また、センサ228からの信号を支持部材234側に伝達することができる。
【0073】
なお、上述した適用例に限られず、一般的な機械(例えば、工作機械の回転部やロボットの間接部)の軸受装置として、実施例1〜10の軸受装置を用いることができる。実施例1〜10の軸受装置を用いることで、回転側から固定側及び/又は固定側から回転側への電力又は信号の伝達を行うことができる。
【0074】
以上、本発明のいくつかの実施例について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、上述した各実施例では、内側の円筒部材に回転軸(回転側)が取付けられ、外側の円筒部材に支持体(固定側)が取付けられていた。しかしながら、本願に開示する軸受装置は、内側の円筒部材に支持体(固定側)が取付けられ、外側の円筒部材に回転軸(回転側)が取付けられていてもよい。
【0075】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0076】
10:軸受装置
13:第1円筒部材
14,24a,24b:シール部材
16,26:電気絶縁体
18,28:ポットコア
20a,30a:コイル
23:第2円筒部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1円筒部材と、
第1円筒部材の外周面に接触する転動体と、
第1円筒部材の外側に配置され、その内周面に転動体が接触し、第1円筒部材を相対回転可能に支持する第2円筒部材と、
第1円筒部材に取付けられる第1電磁誘導モジュールと、
第1円筒部材と第1電磁誘導モジュールとの間に配置され、第1円筒部材と第1電磁誘導モジュールとを電気絶縁する第1電気絶縁体と、
第2円筒部材に取付けられ、第1電磁誘導モジュールに対向する位置に配置される第2電磁誘導モジュールと、
第2円筒部材と第2電磁誘導モジュールとの間に配置され、第2円筒部材と第2電磁誘導モジュールとを電気絶縁する第2電気絶縁体と、を有している、軸受装置。
【請求項2】
第1円筒部材の内周面には第1部材が取付けられる第1取付部が形成されており、第2円筒部材の外周面には第2部材が取付けられる第2取付部が形成されており、第1部材と第2部材は、軸受装置を介して相対回転可能となり、
第1円筒部材の外周面には、第1電磁誘導モジュールが取付けられる第1電磁誘導モジュール取付部が形成されており、
第2円筒部材の内周面には、転動体に接触して第1円筒部材を相対回転可能に支持する第2支持部と、第2電磁誘導モジュールが取付けられる第2電磁誘導モジュール取付部が形成されており、
第1取付部と第1電磁誘導モジュール取付部は第1円筒部材の軸方向に並んで配置されると共に、第2支持部と第2電磁誘導モジュール取付部は第2円筒部材の軸方向に並んで配置されており、
第1取付部が形成された位置では、第1円筒部材の外周面に転動体が接触する第1支持部が形成されており、
第1電磁誘導モジュール取付部が形成された位置では、第1円筒部材の内周面が第1取付部より外側にシフトしている、請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
第2電磁誘導モジュール取付部が形成された位置における第2円筒部材の外周面は、第2支持部が形成された位置における第2円筒部材の外周面より内側にシフトしている、請求項2に記載の軸受装置。
【請求項4】
第1円筒部材の内周面と第2円筒部材の外周面の少なくとも一方に放熱フィンが設けられている、請求項2又は3に記載の軸受装置。
【請求項5】
第1円筒部材と第1電気絶縁体との間に配置される第1電磁遮蔽体と、第2円筒部材と第2電気絶縁体との間に配置される第2電磁遮蔽体をさらに有し、
第1電気絶縁体は、第1電磁誘導モジュールと第1電磁遮蔽体との間に配置され、第2電気絶縁体は、第2電磁誘導モジュールと第2電磁遮蔽体との間に配置されており、
さらに、
第1円筒部材と第2円筒部材はそれぞれ、電磁遮蔽材料によって形成されており、
第1円筒部材と第2円筒部材の間には、第1円筒部材及び第2円筒部材によってその周囲が囲まれる収容空間が形成されており、
第1電磁誘導モジュールと第1電磁遮蔽体と第1電気絶縁体並びに第2電磁誘導モジュールと第2電磁遮蔽体と第2電気絶縁体が、前記収容空間に収容されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の軸受装置。
【請求項6】
第1円筒部材と第2円筒部材の間には、前記収容空間と軸受装置の外部とを連通する隙間が形成されており、
第1電磁遮蔽体は、第1電磁誘導モジュールのうち第2電磁誘導モジュールと対向する面を除いた全ての面を覆っており、
第2電磁遮蔽体は、第2電磁誘導モジュールのうち第1電磁誘導モジュールと対向する面を除いた全ての面を覆っており、
前記隙間の少なくとも一部が、第1電磁誘導モジュールの第2電磁誘導モジュールと対向する面と直交し、かつ、第2電磁誘導モジュールの第1電磁誘導モジュールと対向する面と直交する、請求項5に記載の軸受装置。
【請求項7】
第1円筒部材には第1部材が取付けられるようになっており、第2円筒部材には第2部材が取付けられるようになっており、第1部材と第2部材は、軸受装置を介して相対回転可能となり、
一方の円筒部材には、センサ及び電子回路が取付けられており、
そのセンサと電子回路は、他方の円筒部材側の電磁誘導モジュールから一方の円筒部材側の電磁誘導モジュールに伝達される電力によって動作し、
電子回路には、センサからの信号と他方の円筒部材側の電磁誘導モジュールから一方の円筒部材側の電磁誘導モジュールに伝達される信号が入力し、
電子回路から出力される信号とセンサから出力される信号は、一方の円筒部材側の電磁誘導モジュールから他方の円筒部材側の電磁誘導モジュールに伝達される、請求項1〜6のいずれかに記載の軸受装置。
【請求項8】
第1電磁誘導モジュールは、電力を伝達するための第1電力用コイルと、信号を伝達するための第1信号用コイルと、第1電力用コイルと第1信号用コイルが券回される1つの第1コアを有しており、
第2電磁誘導モジュールは、第1電力用コイルと対向し、電力を伝達するための第2電力用コイルと、第1信号用コイルと対向し、信号を伝達するための第2信号用コイルと、第2電力用コイルと第2信号用コイルが券回される1つの第2コアを有している、請求項1〜7のいずれか一項に記載の軸受装置。
【請求項9】
第1円筒部材には第1部材が取付けられるようになっており、第2円筒部材には第2部材が取付けられるようになっており、第1部材と第2部材は、軸受装置を介して相対回転可能となり、
第1電磁誘導モジュールは、電力を伝達するための第1電力用コイルと、信号を伝達するための第1信号用コイルと、第1電力用コイルが券回される第1電力用コアと、第1信号用コイルが券回される第1信号用コアを有しており、第1電力用コアと第1信号用コアは第1円筒部材の半径方向に並んで配置されており、
第2電磁誘導モジュールは、第1電力用コイルと対向し、電力を伝達するための第2電力用コイルと、第1信号用コイルと対向し、信号を伝達するための第2信号用コイルと、第2電力用コイルが券回される第2電力用コアと、第2信号用コイルが券回される第2信号用コアを有しており、第2電力用コアと第2信号用コアは第2円筒部材の半径方向に並んで配置されており、
第1電力用コアの第2電力用コアとの対向面と、第1信号用コアの第2信号用コアとの対向面とが、第1円筒部材の軸方向にシフトしており、
第2電力用コアの第1電力用コアとの対向面と、第2信号用コアの第1信号用コアとの対向面とが、第2円筒部材の軸方向にシフトしている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の軸受装置。
【請求項10】
第1電力用コイルに接続される第1電力用配線と、第1信号用コイルに接続される第1信号用配線と、第2電力用コイルに接続される第2電力用配線と、第2信号用コイルに接続される第2信号用配線をさらに有しており、
第1円筒部材は、第1円筒部材と第2円筒部材の間の空間を閉じる方向に伸びる端面を有しており、第1電力用配線と第1信号用配線とが、第1円筒部材の端面より引出されている、請求項8又は9に記載の軸受装置。
【請求項11】
風を受けることで回転する第1部材と、
回転部材に対して回転可能に取付けられる第2部材と、
第2部材に対して回転可能に取付けられる第3部材と、を有しており、
第1部材と第2部材の連結部と第2部材と第3部材の連結部の少なくとも一方に、請求項1〜10のいずれか一項に記載の軸受装置が用いられている、風力発電装置。
【請求項12】
第1回転軸と、
第1回転軸の回転が伝達される第2回転軸と、
第1回転軸と第2回転軸の間に配置されているクロススパイダーと、を有しており、
クロススパイダーの第1軸部の少なくとも一端が、請求項1〜10のいずれか一項に記載の第1軸受装置を介して第1回転軸に回転可能に取付けられており、
第1軸受装置の第1円筒部材と第2円筒部材の一方は第1軸部の一端に取付けられており、第1軸受装置の第1円筒部材と第2円筒部材の他方は第1回転軸に取付けられている、ユニバーサルジョイント装置。
【請求項13】
クロススパイダーの第2軸部の少なくとも一端が、請求項1〜10のいずれか一項に記載の第2軸受装置を介して第2回転軸に回転可能に取付けられており、
第2軸受装置の第1円筒部材と第2円筒部材の一方は第2軸部の一端に取付けられており、第2軸受装置の第1円筒部材と第2円筒部材の他方は第2回転軸に取付けられており、
第1軸受装置の第1軸部に取付けられている側の電磁誘導モジュールと、第2軸受装置の第2軸部に取付けられている側の電磁誘導モジュールとが配線により電気的に接続されている、請求項12に記載のユニバーサルジョイント装置。
【請求項14】
支持部材と、
回転軸と、
回転軸に取付けられた車輪と、
請求項1〜10のいずれか一項に記載の軸受装置と、を有しており、
軸受装置の第1円筒部材と第2円筒部材の一方が支持部材に取付けられると共に他方が回転軸に取付けられており、回転軸が軸受装置を介して支持部材に回転可能に支持されている、車軸装置。
【請求項1】
第1円筒部材と、
第1円筒部材の外周面に接触する転動体と、
第1円筒部材の外側に配置され、その内周面に転動体が接触し、第1円筒部材を相対回転可能に支持する第2円筒部材と、
第1円筒部材に取付けられる第1電磁誘導モジュールと、
第1円筒部材と第1電磁誘導モジュールとの間に配置され、第1円筒部材と第1電磁誘導モジュールとを電気絶縁する第1電気絶縁体と、
第2円筒部材に取付けられ、第1電磁誘導モジュールに対向する位置に配置される第2電磁誘導モジュールと、
第2円筒部材と第2電磁誘導モジュールとの間に配置され、第2円筒部材と第2電磁誘導モジュールとを電気絶縁する第2電気絶縁体と、を有している、軸受装置。
【請求項2】
第1円筒部材の内周面には第1部材が取付けられる第1取付部が形成されており、第2円筒部材の外周面には第2部材が取付けられる第2取付部が形成されており、第1部材と第2部材は、軸受装置を介して相対回転可能となり、
第1円筒部材の外周面には、第1電磁誘導モジュールが取付けられる第1電磁誘導モジュール取付部が形成されており、
第2円筒部材の内周面には、転動体に接触して第1円筒部材を相対回転可能に支持する第2支持部と、第2電磁誘導モジュールが取付けられる第2電磁誘導モジュール取付部が形成されており、
第1取付部と第1電磁誘導モジュール取付部は第1円筒部材の軸方向に並んで配置されると共に、第2支持部と第2電磁誘導モジュール取付部は第2円筒部材の軸方向に並んで配置されており、
第1取付部が形成された位置では、第1円筒部材の外周面に転動体が接触する第1支持部が形成されており、
第1電磁誘導モジュール取付部が形成された位置では、第1円筒部材の内周面が第1取付部より外側にシフトしている、請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
第2電磁誘導モジュール取付部が形成された位置における第2円筒部材の外周面は、第2支持部が形成された位置における第2円筒部材の外周面より内側にシフトしている、請求項2に記載の軸受装置。
【請求項4】
第1円筒部材の内周面と第2円筒部材の外周面の少なくとも一方に放熱フィンが設けられている、請求項2又は3に記載の軸受装置。
【請求項5】
第1円筒部材と第1電気絶縁体との間に配置される第1電磁遮蔽体と、第2円筒部材と第2電気絶縁体との間に配置される第2電磁遮蔽体をさらに有し、
第1電気絶縁体は、第1電磁誘導モジュールと第1電磁遮蔽体との間に配置され、第2電気絶縁体は、第2電磁誘導モジュールと第2電磁遮蔽体との間に配置されており、
さらに、
第1円筒部材と第2円筒部材はそれぞれ、電磁遮蔽材料によって形成されており、
第1円筒部材と第2円筒部材の間には、第1円筒部材及び第2円筒部材によってその周囲が囲まれる収容空間が形成されており、
第1電磁誘導モジュールと第1電磁遮蔽体と第1電気絶縁体並びに第2電磁誘導モジュールと第2電磁遮蔽体と第2電気絶縁体が、前記収容空間に収容されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の軸受装置。
【請求項6】
第1円筒部材と第2円筒部材の間には、前記収容空間と軸受装置の外部とを連通する隙間が形成されており、
第1電磁遮蔽体は、第1電磁誘導モジュールのうち第2電磁誘導モジュールと対向する面を除いた全ての面を覆っており、
第2電磁遮蔽体は、第2電磁誘導モジュールのうち第1電磁誘導モジュールと対向する面を除いた全ての面を覆っており、
前記隙間の少なくとも一部が、第1電磁誘導モジュールの第2電磁誘導モジュールと対向する面と直交し、かつ、第2電磁誘導モジュールの第1電磁誘導モジュールと対向する面と直交する、請求項5に記載の軸受装置。
【請求項7】
第1円筒部材には第1部材が取付けられるようになっており、第2円筒部材には第2部材が取付けられるようになっており、第1部材と第2部材は、軸受装置を介して相対回転可能となり、
一方の円筒部材には、センサ及び電子回路が取付けられており、
そのセンサと電子回路は、他方の円筒部材側の電磁誘導モジュールから一方の円筒部材側の電磁誘導モジュールに伝達される電力によって動作し、
電子回路には、センサからの信号と他方の円筒部材側の電磁誘導モジュールから一方の円筒部材側の電磁誘導モジュールに伝達される信号が入力し、
電子回路から出力される信号とセンサから出力される信号は、一方の円筒部材側の電磁誘導モジュールから他方の円筒部材側の電磁誘導モジュールに伝達される、請求項1〜6のいずれかに記載の軸受装置。
【請求項8】
第1電磁誘導モジュールは、電力を伝達するための第1電力用コイルと、信号を伝達するための第1信号用コイルと、第1電力用コイルと第1信号用コイルが券回される1つの第1コアを有しており、
第2電磁誘導モジュールは、第1電力用コイルと対向し、電力を伝達するための第2電力用コイルと、第1信号用コイルと対向し、信号を伝達するための第2信号用コイルと、第2電力用コイルと第2信号用コイルが券回される1つの第2コアを有している、請求項1〜7のいずれか一項に記載の軸受装置。
【請求項9】
第1円筒部材には第1部材が取付けられるようになっており、第2円筒部材には第2部材が取付けられるようになっており、第1部材と第2部材は、軸受装置を介して相対回転可能となり、
第1電磁誘導モジュールは、電力を伝達するための第1電力用コイルと、信号を伝達するための第1信号用コイルと、第1電力用コイルが券回される第1電力用コアと、第1信号用コイルが券回される第1信号用コアを有しており、第1電力用コアと第1信号用コアは第1円筒部材の半径方向に並んで配置されており、
第2電磁誘導モジュールは、第1電力用コイルと対向し、電力を伝達するための第2電力用コイルと、第1信号用コイルと対向し、信号を伝達するための第2信号用コイルと、第2電力用コイルが券回される第2電力用コアと、第2信号用コイルが券回される第2信号用コアを有しており、第2電力用コアと第2信号用コアは第2円筒部材の半径方向に並んで配置されており、
第1電力用コアの第2電力用コアとの対向面と、第1信号用コアの第2信号用コアとの対向面とが、第1円筒部材の軸方向にシフトしており、
第2電力用コアの第1電力用コアとの対向面と、第2信号用コアの第1信号用コアとの対向面とが、第2円筒部材の軸方向にシフトしている、請求項1〜7のいずれか一項に記載の軸受装置。
【請求項10】
第1電力用コイルに接続される第1電力用配線と、第1信号用コイルに接続される第1信号用配線と、第2電力用コイルに接続される第2電力用配線と、第2信号用コイルに接続される第2信号用配線をさらに有しており、
第1円筒部材は、第1円筒部材と第2円筒部材の間の空間を閉じる方向に伸びる端面を有しており、第1電力用配線と第1信号用配線とが、第1円筒部材の端面より引出されている、請求項8又は9に記載の軸受装置。
【請求項11】
風を受けることで回転する第1部材と、
回転部材に対して回転可能に取付けられる第2部材と、
第2部材に対して回転可能に取付けられる第3部材と、を有しており、
第1部材と第2部材の連結部と第2部材と第3部材の連結部の少なくとも一方に、請求項1〜10のいずれか一項に記載の軸受装置が用いられている、風力発電装置。
【請求項12】
第1回転軸と、
第1回転軸の回転が伝達される第2回転軸と、
第1回転軸と第2回転軸の間に配置されているクロススパイダーと、を有しており、
クロススパイダーの第1軸部の少なくとも一端が、請求項1〜10のいずれか一項に記載の第1軸受装置を介して第1回転軸に回転可能に取付けられており、
第1軸受装置の第1円筒部材と第2円筒部材の一方は第1軸部の一端に取付けられており、第1軸受装置の第1円筒部材と第2円筒部材の他方は第1回転軸に取付けられている、ユニバーサルジョイント装置。
【請求項13】
クロススパイダーの第2軸部の少なくとも一端が、請求項1〜10のいずれか一項に記載の第2軸受装置を介して第2回転軸に回転可能に取付けられており、
第2軸受装置の第1円筒部材と第2円筒部材の一方は第2軸部の一端に取付けられており、第2軸受装置の第1円筒部材と第2円筒部材の他方は第2回転軸に取付けられており、
第1軸受装置の第1軸部に取付けられている側の電磁誘導モジュールと、第2軸受装置の第2軸部に取付けられている側の電磁誘導モジュールとが配線により電気的に接続されている、請求項12に記載のユニバーサルジョイント装置。
【請求項14】
支持部材と、
回転軸と、
回転軸に取付けられた車輪と、
請求項1〜10のいずれか一項に記載の軸受装置と、を有しており、
軸受装置の第1円筒部材と第2円筒部材の一方が支持部材に取付けられると共に他方が回転軸に取付けられており、回転軸が軸受装置を介して支持部材に回転可能に支持されている、車軸装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−163145(P2012−163145A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23126(P2011−23126)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(304026696)国立大学法人三重大学 (270)
【出願人】(802000042)株式会社三重ティーエルオー (20)
【出願人】(599078163)三重電子株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(304026696)国立大学法人三重大学 (270)
【出願人】(802000042)株式会社三重ティーエルオー (20)
【出願人】(599078163)三重電子株式会社 (13)
【Fターム(参考)】
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