軸受
【課題】軸ジャーナルに対する軸受表面積を減らすようにしてある平軸受を提供する。
【解決手段】平軸受を、使用時に関連する軸受ハウジング内にはめ込む。このハウジングに接触する軸受裏当ては、軸線方向でハウジングと実質的に同じ長さであり、この場合平軸受の作動面は軸線方向及び半径方向の両方向に逃げを設け、使用時に関連する軸ジャーナルに対する軸受表面積を減らすようにしてある。
【解決手段】平軸受を、使用時に関連する軸受ハウジング内にはめ込む。このハウジングに接触する軸受裏当ては、軸線方向でハウジングと実質的に同じ長さであり、この場合平軸受の作動面は軸線方向及び半径方向の両方向に逃げを設け、使用時に関連する軸ジャーナルに対する軸受表面積を減らすようにしてある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平軸受(plain bearing)、ことに限定するわけではないがエンジン・クランク軸軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
最も広い意味でエンジンの特性及び寸法は一般にエンジンの設計者が定める。たとえば4シリンダ・エンジンは、今日ではほぼ確実に5軸受形クランク軸が使われるがこのエンジンでは3個又は5個の主軸受付きクランク軸を備える。各エンジン・シリンダは、一般に2個の半殻から成る軸受を備えた連接棒を持つ。軸受の軸線方向最大長さは連接棒厚さ(軸線方向長さ)によって定まる。この連接棒厚さ自体は、ビッグ・エンド軸ジャーナルをその隣接する主軸受軸ジャーナルに接合する各クランク・ウェブ間で利用できる空間により定まる。従来の軸受は、利用できる限度内の最大許容軸受面積を生ずる実際上全部の利用可能長さをほぼ必ず利用している。若干の場合に軸受面積はオイル供給を行い分布みぞ等を設けることによって減小する。
【0003】
クランク軸エンド・フロートを制御する一体のスラスト・ワッシャを持つ若干の構造のいわゆるフランジ付き主軸受けは、若干の利用できる長さがフランジ取付けの領域におけるクランク軸の汚損を各別のフランジ部材の取付け手段により防ぐのを妨げてはならないから全部の利用できる軸線方向長さを必ずしも利用していない。この範囲内のこのような軸受の例はUS−A−4,989,998号及びUS−A−5,267,797号の各明細書に認められる。
【0004】
US−A−4,640,630号明細書はターボチャージャ・ロータ用の特殊な軸受に係わる。この軸受は、そのハウジングに対して又その支えるターボチャージャ軸に対しても回転する浮動式の大体において円筒形のブッシュ形軸受であり、従ってこの軸受はそのハウジング内に固定してない。さらにこの軸受は穴内に減小した軸受面積を持つが、これは軸受の半径方向こわさを制御するためであり、この軸受は、ターボチャージャのように極めて高い回転速度の用途における性能に有害な作用を及ぼす振動を制御するのに使う。外径長さ対内径長さの比率に対する最適の範囲を与える以外には他の情報は与えない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
軸受面積を最大にする理由は、エンジンの作動中に軸受に加わる特定の荷重をできるだけ低くすることである。特定の荷重を最小にすることは一般に、たとえば任意の与えられたエンジン速度に対する比較的低いオイル作動温度と最少の軸受摩耗とのようなその他の軸受の利点を生ずるものと一般的に考えられる。
【0006】
従来の軸受では、軸受端面で軸受合金に断面で見ると、軸受面積を少量だけ減らす凸形曲がりを持つ面取り部分のような普通の軸受構造であることが指摘される。しかし一般に普遍的に承認されている軸受構造の原理は、とくに新型の高定格高速回転エンジンで軸受面積を最大にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち前記した所から、公知のエンジン用に作られ「標準」のエンジン軸受の面積に比べて著しく減小した軸受面積を持つ軸受が標準軸受より低い軸受作動温度(bearing operating temperature)を生ずるとすれば驚くべきことである。
【0008】
本発明によれば平軸受が得られる。この平軸受は作動面(running surface)を持ち、この平軸受の作動面は使用中に関連する軸ジャーナルに対する接触軸受表面積を減らすように軸線方向及び半径方向の両方向に逃げを設けてある(relieved)。
【0009】
平軸受は関連する軸受ハウジング内に使用時にはめ込まれた(fitted)別個の軸受である。軸受背部は前記ハウジングに接触し軸線方向で前記ハウジングと実質的に同じ長さである。
【0010】
本平軸受は使用時に関連するハウジング内に固定され、すなわち軸受及びハウジングは固定の関係を保持し相互に対し回転しない。
【0011】
本平軸受けは、軸受け合金ライニングを持つ少なくとも1つの強い裏あて材料を備える。
【0012】
本発明による軸受の逃げ(relief)は、公知の面取り部が凸形の断面輪郭又は軸受作動面から軸受軸線方向端面の外縁部に直接延びる直線を持つ点で公知の面取り部で軸受端部に認められることの多い普通の面取り部とは異なる。本発明による軸受の逃げは、軸受端面の軸線方向端部に延びる又は軸受端面に密接に隣接するみぞ又はさねはぎ(rebate)として考えられる。
【0013】
本発明による軸受は、軸受表面積は減小しても一層低い軸受作動温度の生ずることが認められている。
【0014】
軸受をハウジング、通常各ハウジング半部分が半分の軸受殻を含む分割型ハウジング(split housing)内に立てるときは、組立てた軸受穴と軸受をまわりに組立てる関連するクランク軸ジャーナルとの間に公称すきま(nominal clearance)が存在する。このすきまにより作動時に軸受及び軸ジャーナルを支えるオイル膜を形成することができる。或るエンジンではクランクケース内の主軸受けは固定され、回転するクランク軸ジャーナルはオイル膜に支えられると共に、連接棒のビック・エンド軸受はエンジン・ピストンにより駆動され軸ジャーナルにより介在するオイル膜に支えられる。すきまにより、ハウジング内の軸受のたわみが生ずる条件のもとでオイル膜の保持ができ又作動中に熱膨張作用を生ずることができる。
【0015】
軸受穴と、関連する軸ジャーナルとの間の公称の全すきまの1つの要因(factor)として、半径方向すきまは軸受穴の直径と軸ジャーナルの直径とに基づいて公称の全すきま×2ないし約×15の間であることが分った。たとえば軸受及び軸の間の公称すきまが0.04mmであれば、逃げの部分の半径方向すきまは約0.08ないし0.60mmの範囲にある。
【0016】
逃げの部分(relieved portion)の軸線方向長さは、軸線方向の逃げの部分なしで利用できる最大の利用できる軸受長さの一定割合部分として考えられる。利用できる軸受長さの約5ないし約40%の範囲の軸線方向の逃げの部分が有利な作用を生ずることが分っている。好適な範囲は約10ないし約30%である。
【0017】
逃げの部分は、軸受の一方の軸線方向端部又は両方の軸線方向端部に設ければよい。逃げ(relief)を各軸受軸線方向端部に設ける場合には逃げを軸受長さのまわりに実質的に対称に配置するのがよい。たとえば全軸線方向逃げが6mmであれば、この場合それぞれ3mmの軸線方向長さを持つ2つの逃げ部分として設けるのがよい。
【0018】
若干の場合に逃げは公称の軸受面積内に設けるのがよい。しかし本発明軸受の逃げが従来の円周方向のオイル供給みぞによっては構成されないのはもちろんである。実際上本発明の軸受面積逃げ部分は一般に、たとえばクランク軸オイル供給せん孔を介しオイルを直接供給する構造とは異なって遠隔のオイル源からオイルが流れを込む区域に設ける。すなわち本発明軸受の逃げの部分は、オイル供給みぞからオイルを受ける。このオイル供給みぞ自体はたとえばエンジン主軸受の場合に逃げなしの軸受表面の介在部分を介しクランク軸オイル供給せん孔からオイルを受ける。又他方では連接棒軸受は関連する軸ジャーナルのオイル供給穴からオイルを供給する。オイル穴は一般に軸受の軸線方向各端部間のほぼ中間に位置し供給オイルが逃げの部分に向かい軸線方向外方に向かうようにしてある。
【0019】
逃げの部分は軸受対の両半部分に設けるのがよく、又逃げの部分は円周方向に互いに隣接しすなわち逃げの部分は両半部分で円周方向に互いに整合するのがよい。オイル溜まりを乱す、軸受接合面の各逃げの部分の「段差」(step)又は連続性の欠除部又は逃げの部分を含む軸受領域に生ずるうず等が存在してはならないと考えられる。すなわち軸受半部分の各逃げ部分は隣接する軸受半部分の各逃げの部分になめらかに調和しなければならない。
【0020】
本発明軸受の逃げは、オイルの流れの障害部を含んではならない。
【0021】
逃げの部分を各別の半割り殻軸受(half shell bearing)によって述べたが、本発明は又たとえば連接棒に形成した軸受にも応用できる。この軸受は、たとえば高速酸素−燃料吹付けによりこの軸受穴に軸受合金を直接内張りしてある。本発明は、軸線方向及び半径方向の逃げを適用する場合に正味の全部の利用できる軸受長さ部に軸受合金を内張りして通常全軸線方向長さにわたり所定のすきまを持つ「正規」の(normal)軸受表面になる部分を形成するようにできる。
【0022】
同様に本発明は又、軸受穴に円形の逃げの部分を設ける場合に実質的に円筒形のスリーブ軸受に適用できる。
【0023】
本発明は又、たとえばアルミニウム合金製連接棒に直接形成した軸受に係わる。たとえば芝刈機及びその他の園芸術装置に使われる単シリンダ・エンジンのような多くの小型低回転低動力エンジンは、軸受として直接機械加工する連接棒材料を利用する。
【0024】
本発明による軸受は、与えられたエンジン速度で低下したオイル温度に基づく増大したオイル粘度によって高動力高速度の条件のもとでいわゆる軸受タッチダウンの開始を遅らせる。
【0025】
本発明軸受により生ずる低下した軸受作動温度は逃げの部分に生成する乱流(turbulence)又はオイルのうず巻(oil vortices)に基づき又はその影響を受ける。これ等の乱流又はうず巻は、軸受から流れるオイルへのこの軸受からの熱伝達に役立つ。
【0026】
各逃げの部分には、軸受内へのオイルの飛散を生ずるようにオイルのうず巻の形成及び/又は保持に役立つ構成にしてある。このような構成はたとえば逃げの部分に又はこの逃げの部分に隣接して形成した唇状部から成る。
【0027】
さらに、減少した動力損失は、軸受作動温度の低下又は低下した軸受温度上昇の得られる2次的効果の誘起することが分る。
【0028】
本発明軸受は、連接棒ビッグ・エンド軸受又は主軸受又はその他の任意の形式の軸受とくに動的荷重を受ける軸受を含む。しかし本発明軸受は内燃機関以外の用途に使用でき、このような使用例には限定するわけではないが圧縮機、流体圧ギヤ・ポンプ、船舶及びボート用のプロペラペラ軸の軸受と静的な又は動的の荷重を受けるその他の任意の軸受とを含む。
【0029】
なお分りやすいように本発明を添付図面について例示して述べる。
【実施例】
【0030】
同じ構造を共通の参照数字で示した図1ないし9について本発明の実施例を説明する。
【0031】
内燃機関用の従来の半割り軸受(half bearing)10を図1に示してある。半割り軸受10は、たとえば鋼のような材料で作った強い裏当て(backing)12と裏当て12に接着した軸接合金ライニング14とから成る。ライニング14は使用時に軸ジャーナル(図示してない)と関連する。強い裏当て12は約0.25mm以上の任意の厚さを持つ。軸受合金ライニング層14は、厚さが約0.25mmないし1.5mmでありアルミニウム合金又は合金から作ることが多い。軸受10は、合金層14より軟らかい合金から成るいわゆるオーバレイ層を設けても設けなくてもよい。このようなオーバレイ層は設けてある場合通常厚さが15ないし50μmの範囲である。軸受合金層14は図示の例では実質的に軸受の全面積にわたって延びる。すなわち軸受合金が関連する連接棒に軸線方向に整合するように設けた切欠き部16以外に切欠き又は除去した区域はない。
【0032】
図2及び3は、エンジンの連接棒22に取付けられ図1の軸受10と大体においてにおいて同様な構造を持つ軸受20を示す。軸受20は、軸受合金から成るライニング28を持つ鋼製裏当て(steel backing)26を備える。連接棒22の下半部のキャップ24の一部だけを下半部の軸受20の一部と共に示してある。連接棒22に2個の半割りの軸受20を組立てるときは、軸受20は、2個のクランク軸ウェブ32、34間に支えたクランク軸ビッグ・エンド・ジャーナル(rankshaft big−end journal)30を囲む。軸受20の全軸線方向長さは図1に「L」として示してある。連接棒22及び軸受20をクランク軸ビッグ・エンド・ジャーナル30のまわりに組立てるときは、ジャーナル面40及び軸受面42間にすきま「d」が存在する。すきま「d」は、連接棒22内に組付けたときに半殻の軸受20により形成した軸受穴とクランク軸ビッグ・エンド・ジャーナル30の直径との間の直径差として定義される。軸受20は軸線44を持つ。
【0033】
本発明による軸受20は図2及び3に示すように、半径方向に寸法「D」と軸線方向に長さ「l」とを持つ円周方向くぼみ50、52を設けることにより各軸線方向端部で穴に逃げを設けてある。図3に示した拡大図Aは又、クランク軸ビッグ・エンド・ジャーナル30の軸線方向端部に形成した応力逃がしみぞ46と、連接棒22の軸受受入れ穴の端部に形成したかど取り部48とを示す。
【0034】
軸ジャーナル30は、詳細に後述する試験の場合に後述の制御された条件に関係なくこれ等の条件のもとでオイルを供給されるオイル供給穴36を持つ。正規の使用の際には車両にはめ込まれた同じエンジンが隣接主軸受からクランク軸のせん孔を介しオイル穴36にオイルを供給される。しかし試験はエンジンと正規の道路使用エンジンとは共に一般に実際上或る位置(オイル穴36)で軸受にオイルが供給されこのオイルが逃げの部分に向かい外方に(矢印38により示すように)流れ、軸受からその軸線方向両端部で流出し、エンジン・オイル・パン内に落下する。すなわち各軸線方向軸受端部に隣接して1個所ずつ2個所の逃げの部分がある場合に、これ等の逃げの部分の中間にオイルが供給され各逃げの部分を経てこの軸受から各軸線方向端部で流出する。各オイルは供給穴及び各逃げ部の相対配置を後者の考え方は後述の全部の実施例に適用できる。
【0035】
図2及び3において深さ「D」は一定である。しかしこのことは、さらに後述するように深さ「D」が軸線方向長さ「l」に沿って変るような場合にとは必ずしも限らない。
【0036】
図4は、逃げの部分52がその軸線方向外方に位置する唇状部60を持つ第2の実施例を示す。この軸受の全壁厚さは「T」と定め、唇状部60の位置における壁の厚さは「t」と定める。この場合t<Tまたt=Tただしt>(T−D)である。唇状部60の軸線方向長さは、「m」と定め軸受及びすきまの実際の寸法と実際のエンジン用途と従って変えてもよい。
【0037】
図5は一様でない深さの逃げの部分を持つ軸受を示す。この逃げの部分は軸受の軸線方向端部に向かい或る一定の角度をなして、下方に傾斜する。深さ「D」は逃げ部分の一方の端部から他端部までの平均深さと定める。
【0038】
図6は図5に示したのとは逆の傾斜を持つ逃げの部分を示す。又深さ「D」は一端部から他端部までのくぼみの平均深さと定義する。
【0039】
図7は、くぼみ52が湾曲底部70を持つ軸受を示す。この軸受の軸線方向外端部における壁圧「t」は「T」に等しいか又は「T」より小さい。このくぼみの深さ「D」は湾曲底部70の最大深さ部の深さとして定義する。
【0040】
図8は段付きの逃げの部分72を持つ軸受を示す。図示の例は3個所の段を持つ。しかし3個所より多くても少なくてもよい。
【0041】
図9は、逃げの部分50、52を軸受端部80、82の軸線方向内方に形成した実施例を示す。各くぼみの軸線方向外方の軸受表面部分84、86は、壁厚さに逃げを設けてなくて前記したような厚さ「T」を持つ。
【0042】
6000rpmで100kwの最高動力と4000rpmで180NMの最高トルクとを持つ4シリンダ直列形16バルブ・ダブル・オーバーヘッド・カムシャフト(DOHC)2リットル エンジンで種種の寸法の「D」及び「l」を持つ図2及び3により作った軸受について試験を行った。各エンジン試験は次の表に示した条件のもとに行った。
【0043】
【0044】
本発明による軸受の各逃げの部分の真の効果を試験によりできるだけ表示するように、エンジンは流量、温度及び圧力の制御した条件のもとでオイルがビッグ・エンド軸受に直接送られるように改造した。改造してないエンジンではオイルは通常主軸受ジャーナルからビッグ・エンド軸受にクランク軸のウエブ及びジャーナルのオイルせん孔を介して送られる。このオイルは次いで一体のエンジン・オイル・ポンプからシリンダ・ブロック内の通路を経て加圧オイルにより供給される。しかし改造してないエンジンでは本発明軸受によってビッグ・エンド軸受(big−end bearing)すなわちクラクピン軸受へのオイルの供給を制御することと又は作動パラメータの変化を監視することとができない。たとえばエンジン速度の上昇に伴い主軸受はそのビッグ・エンド下流側に達するオイルの圧力及び量に大きい影響を持ち高いエンジン速度においてビッグ・エンド軸受内のオイル供給が欠乏を生ずるようになる。改造した試験エンジンでは入力オイル・パラメータ(input oil parameter)を前記したように正確に制御することができるだけでなく又軸受温度の変化を正確に監視することができる。オイルはこの改造エンジン内にクランク軸の鼻部のせん孔を介して導入され、ビッグ・エンド軸受への独立したオイル送給ができる。主軸受ジャーナルからビッグ・エンドへの正規のオイル供給せん孔は栓をしてある。オイル流れを監視する全流量計(bull−flow meter)によりオイル供給量が定められる。オイルを供給される軸受20は又、軸受温度の変化を監視する熱電対を設けてある。各熱電対(図示してない)は実際の軸受面から約0.3mmの位置に位置させてある。すなわち記録されるのはオイル温度変化でなくて軸受温度の変化である。試験エンジンの改造の詳細は、2000年3月SAE論文COP−456号のD.D..ウイリアムズ(Williams)B.のマイアン(Mian)、A.C.パーカー(Parker)を著者とする論文「全体及び部分みぞ付き主軸受の計測したクランク軸軸受のオイルの流れ及び温度」に認められる。
【0045】
図10には、流入送給オイルの温度が2バールで100℃の場合に行った試験の成績を示す。軸受温度の変化は3000rpmないし6500rpmの範囲で計測する。各軸受は「標準型」で、(1)すなわち車両ははめ込まれたときにエンジンに通常供給される軸受で深さ2mm×0.3mmの逃げの部分を持つ軸受であり、(2)すなわち軸受の各軸線方向端部において「D」=0.3mm又「l」=1mm、深さ4mm×0.3mm、(3)すなわち軸受の各軸線方向端部において「D」=0.3mm又「l」=2mm、深さ6mm×0.3mm、(4)すなわち軸受の各軸線方向端部において「D」=0.3mm又「l」=3mm、深さ6mm×0.6mm、(5)すなわち「D」=0.6mm又「l」=3mmである。試験エンジンでは半径方向すきま「d」は0.02mmで直径方向すきまは0.04mmであった。
【0046】
図10に明らかなように軸受の各軸線方向端部で寸法「l」が1から3mmまで増大するのに伴い軸受温度上昇(100℃のオイル送給温度以上)は低下し続ける。6000rpmにおける100℃の入力オイル温度(input oil temperature)では、本発明によれば各軸受端部で3mmの長さ「l」と0.3mmの深さ「D」とを持つ軸受は温度が約26℃だけ上昇するが標準の軸受は温度が約40℃だけ増大する。各軸線方向端部における1mmから3mmまでの増大する寸法「l」の効果により、軸受温度上昇を低下させ続ける。軸受の各軸線方向端部において3mmの寸法「D」で0.3mmから0.6mmまで深さ「D」を増す効果により、6000rpmまでの軸受温度上昇の減小を生じ、次で標準軸受は軸受温度上昇の増大が一層低くなる。
【0047】
図11は、オイル入力温度が100℃でなくて140℃であることを除いて図10と同様な線図を示す。しかし図5に示したのと同じ傾斜により、軸受の各軸線方向端部における0.3mmの深さ「D」と3mmの寸法「l」とにより、標準軸受よりなお約5℃又はそれ以上低い温度上昇によるときは約6500rpmまでの速度範囲の付近で軸受温度上昇に最小の増加を生ずる。又軸受の各軸線方向端部に3mmまでの寸法「l」の増大により比較的低い同じ傾向の軸受温度上昇がある。
【0048】
図12及び図13は標準軸受に対する軸受温度上昇の線図(トレース1)と「l」=2mm又深さ「D」=0.1mmの軸線方向端部の逃げの部分を持つ軸受に対する温度上昇の線図(トレース2)とを示す。前記のように本発明による軸受が100℃(図12)及び140℃(図13)の入力オイル温度における軸受温度上昇の減小を示すのは明らかである。オイル供給圧力は両方の線図で2バールである。
【0049】
各エンジンは加速時に高い速度まで運転するが、車両のエンジンは本発明の効果の著しい極めて低い速度でこのエンジンの運転寿命の大部分を費やす。しかしたとえば一様な車両及びエンジンの高い速度が一般的であるモータウエイでは、とくに、エンジン・オイル・パンのまわりの冷却空気の流れを抑止する今日一般的な車両の空気力学を改良する導風板及びパネルの使用によって高いオイル温度の認められることが多い。従って軸受温度の下げるのに使われるどのような手段も有利である。すなわち軸受及び関連するクランク軸の寿命が本発明による軸受を使うときは一層低い作動温度従って一層高いオイル粘度によって延びることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】従来の半軸受の斜視図である。
【図2】本発明軸受の1実施例と関連する軸受ハウジング及びクランク軸ジャーナルとの一部を示す横断面図である。
【図3】図2の部分Aの拡大図である。
【図4】本発明軸受の第2実施例の部分横断面図である。
【図5】本発明軸受の第3実施例の部分横断面図である。
【図6】本発明軸受の第4実施例の部分横断面図である。
【図7】本発明軸受の第5実施例の部分横断面図である。
【図8】本発明軸受の第6実施例の部分横断面図である。
【図9】本発明軸受の第7実施例の部分横断面図である。
【図10】「標準」軸受に相当する寸法範囲を持つ逃げ部分を備えた本発明軸受の軸受温度上昇対エンジン速度の線図である。
【図11】異なる試験条件による図10の線図と同様な線図である。
【図12】異なる寸法パラメータを持つ本発明軸受の図10と同様な線図である。
【図13】異なる試験条件のものとでの図12に示したのと同様な線図である。
【符号の説明】
【0051】
20 平軸受
22 連接棒
30 軸ジャーナル
52 逃げの部分
【技術分野】
【0001】
本発明は、平軸受(plain bearing)、ことに限定するわけではないがエンジン・クランク軸軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
最も広い意味でエンジンの特性及び寸法は一般にエンジンの設計者が定める。たとえば4シリンダ・エンジンは、今日ではほぼ確実に5軸受形クランク軸が使われるがこのエンジンでは3個又は5個の主軸受付きクランク軸を備える。各エンジン・シリンダは、一般に2個の半殻から成る軸受を備えた連接棒を持つ。軸受の軸線方向最大長さは連接棒厚さ(軸線方向長さ)によって定まる。この連接棒厚さ自体は、ビッグ・エンド軸ジャーナルをその隣接する主軸受軸ジャーナルに接合する各クランク・ウェブ間で利用できる空間により定まる。従来の軸受は、利用できる限度内の最大許容軸受面積を生ずる実際上全部の利用可能長さをほぼ必ず利用している。若干の場合に軸受面積はオイル供給を行い分布みぞ等を設けることによって減小する。
【0003】
クランク軸エンド・フロートを制御する一体のスラスト・ワッシャを持つ若干の構造のいわゆるフランジ付き主軸受けは、若干の利用できる長さがフランジ取付けの領域におけるクランク軸の汚損を各別のフランジ部材の取付け手段により防ぐのを妨げてはならないから全部の利用できる軸線方向長さを必ずしも利用していない。この範囲内のこのような軸受の例はUS−A−4,989,998号及びUS−A−5,267,797号の各明細書に認められる。
【0004】
US−A−4,640,630号明細書はターボチャージャ・ロータ用の特殊な軸受に係わる。この軸受は、そのハウジングに対して又その支えるターボチャージャ軸に対しても回転する浮動式の大体において円筒形のブッシュ形軸受であり、従ってこの軸受はそのハウジング内に固定してない。さらにこの軸受は穴内に減小した軸受面積を持つが、これは軸受の半径方向こわさを制御するためであり、この軸受は、ターボチャージャのように極めて高い回転速度の用途における性能に有害な作用を及ぼす振動を制御するのに使う。外径長さ対内径長さの比率に対する最適の範囲を与える以外には他の情報は与えない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
軸受面積を最大にする理由は、エンジンの作動中に軸受に加わる特定の荷重をできるだけ低くすることである。特定の荷重を最小にすることは一般に、たとえば任意の与えられたエンジン速度に対する比較的低いオイル作動温度と最少の軸受摩耗とのようなその他の軸受の利点を生ずるものと一般的に考えられる。
【0006】
従来の軸受では、軸受端面で軸受合金に断面で見ると、軸受面積を少量だけ減らす凸形曲がりを持つ面取り部分のような普通の軸受構造であることが指摘される。しかし一般に普遍的に承認されている軸受構造の原理は、とくに新型の高定格高速回転エンジンで軸受面積を最大にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち前記した所から、公知のエンジン用に作られ「標準」のエンジン軸受の面積に比べて著しく減小した軸受面積を持つ軸受が標準軸受より低い軸受作動温度(bearing operating temperature)を生ずるとすれば驚くべきことである。
【0008】
本発明によれば平軸受が得られる。この平軸受は作動面(running surface)を持ち、この平軸受の作動面は使用中に関連する軸ジャーナルに対する接触軸受表面積を減らすように軸線方向及び半径方向の両方向に逃げを設けてある(relieved)。
【0009】
平軸受は関連する軸受ハウジング内に使用時にはめ込まれた(fitted)別個の軸受である。軸受背部は前記ハウジングに接触し軸線方向で前記ハウジングと実質的に同じ長さである。
【0010】
本平軸受は使用時に関連するハウジング内に固定され、すなわち軸受及びハウジングは固定の関係を保持し相互に対し回転しない。
【0011】
本平軸受けは、軸受け合金ライニングを持つ少なくとも1つの強い裏あて材料を備える。
【0012】
本発明による軸受の逃げ(relief)は、公知の面取り部が凸形の断面輪郭又は軸受作動面から軸受軸線方向端面の外縁部に直接延びる直線を持つ点で公知の面取り部で軸受端部に認められることの多い普通の面取り部とは異なる。本発明による軸受の逃げは、軸受端面の軸線方向端部に延びる又は軸受端面に密接に隣接するみぞ又はさねはぎ(rebate)として考えられる。
【0013】
本発明による軸受は、軸受表面積は減小しても一層低い軸受作動温度の生ずることが認められている。
【0014】
軸受をハウジング、通常各ハウジング半部分が半分の軸受殻を含む分割型ハウジング(split housing)内に立てるときは、組立てた軸受穴と軸受をまわりに組立てる関連するクランク軸ジャーナルとの間に公称すきま(nominal clearance)が存在する。このすきまにより作動時に軸受及び軸ジャーナルを支えるオイル膜を形成することができる。或るエンジンではクランクケース内の主軸受けは固定され、回転するクランク軸ジャーナルはオイル膜に支えられると共に、連接棒のビック・エンド軸受はエンジン・ピストンにより駆動され軸ジャーナルにより介在するオイル膜に支えられる。すきまにより、ハウジング内の軸受のたわみが生ずる条件のもとでオイル膜の保持ができ又作動中に熱膨張作用を生ずることができる。
【0015】
軸受穴と、関連する軸ジャーナルとの間の公称の全すきまの1つの要因(factor)として、半径方向すきまは軸受穴の直径と軸ジャーナルの直径とに基づいて公称の全すきま×2ないし約×15の間であることが分った。たとえば軸受及び軸の間の公称すきまが0.04mmであれば、逃げの部分の半径方向すきまは約0.08ないし0.60mmの範囲にある。
【0016】
逃げの部分(relieved portion)の軸線方向長さは、軸線方向の逃げの部分なしで利用できる最大の利用できる軸受長さの一定割合部分として考えられる。利用できる軸受長さの約5ないし約40%の範囲の軸線方向の逃げの部分が有利な作用を生ずることが分っている。好適な範囲は約10ないし約30%である。
【0017】
逃げの部分は、軸受の一方の軸線方向端部又は両方の軸線方向端部に設ければよい。逃げ(relief)を各軸受軸線方向端部に設ける場合には逃げを軸受長さのまわりに実質的に対称に配置するのがよい。たとえば全軸線方向逃げが6mmであれば、この場合それぞれ3mmの軸線方向長さを持つ2つの逃げ部分として設けるのがよい。
【0018】
若干の場合に逃げは公称の軸受面積内に設けるのがよい。しかし本発明軸受の逃げが従来の円周方向のオイル供給みぞによっては構成されないのはもちろんである。実際上本発明の軸受面積逃げ部分は一般に、たとえばクランク軸オイル供給せん孔を介しオイルを直接供給する構造とは異なって遠隔のオイル源からオイルが流れを込む区域に設ける。すなわち本発明軸受の逃げの部分は、オイル供給みぞからオイルを受ける。このオイル供給みぞ自体はたとえばエンジン主軸受の場合に逃げなしの軸受表面の介在部分を介しクランク軸オイル供給せん孔からオイルを受ける。又他方では連接棒軸受は関連する軸ジャーナルのオイル供給穴からオイルを供給する。オイル穴は一般に軸受の軸線方向各端部間のほぼ中間に位置し供給オイルが逃げの部分に向かい軸線方向外方に向かうようにしてある。
【0019】
逃げの部分は軸受対の両半部分に設けるのがよく、又逃げの部分は円周方向に互いに隣接しすなわち逃げの部分は両半部分で円周方向に互いに整合するのがよい。オイル溜まりを乱す、軸受接合面の各逃げの部分の「段差」(step)又は連続性の欠除部又は逃げの部分を含む軸受領域に生ずるうず等が存在してはならないと考えられる。すなわち軸受半部分の各逃げ部分は隣接する軸受半部分の各逃げの部分になめらかに調和しなければならない。
【0020】
本発明軸受の逃げは、オイルの流れの障害部を含んではならない。
【0021】
逃げの部分を各別の半割り殻軸受(half shell bearing)によって述べたが、本発明は又たとえば連接棒に形成した軸受にも応用できる。この軸受は、たとえば高速酸素−燃料吹付けによりこの軸受穴に軸受合金を直接内張りしてある。本発明は、軸線方向及び半径方向の逃げを適用する場合に正味の全部の利用できる軸受長さ部に軸受合金を内張りして通常全軸線方向長さにわたり所定のすきまを持つ「正規」の(normal)軸受表面になる部分を形成するようにできる。
【0022】
同様に本発明は又、軸受穴に円形の逃げの部分を設ける場合に実質的に円筒形のスリーブ軸受に適用できる。
【0023】
本発明は又、たとえばアルミニウム合金製連接棒に直接形成した軸受に係わる。たとえば芝刈機及びその他の園芸術装置に使われる単シリンダ・エンジンのような多くの小型低回転低動力エンジンは、軸受として直接機械加工する連接棒材料を利用する。
【0024】
本発明による軸受は、与えられたエンジン速度で低下したオイル温度に基づく増大したオイル粘度によって高動力高速度の条件のもとでいわゆる軸受タッチダウンの開始を遅らせる。
【0025】
本発明軸受により生ずる低下した軸受作動温度は逃げの部分に生成する乱流(turbulence)又はオイルのうず巻(oil vortices)に基づき又はその影響を受ける。これ等の乱流又はうず巻は、軸受から流れるオイルへのこの軸受からの熱伝達に役立つ。
【0026】
各逃げの部分には、軸受内へのオイルの飛散を生ずるようにオイルのうず巻の形成及び/又は保持に役立つ構成にしてある。このような構成はたとえば逃げの部分に又はこの逃げの部分に隣接して形成した唇状部から成る。
【0027】
さらに、減少した動力損失は、軸受作動温度の低下又は低下した軸受温度上昇の得られる2次的効果の誘起することが分る。
【0028】
本発明軸受は、連接棒ビッグ・エンド軸受又は主軸受又はその他の任意の形式の軸受とくに動的荷重を受ける軸受を含む。しかし本発明軸受は内燃機関以外の用途に使用でき、このような使用例には限定するわけではないが圧縮機、流体圧ギヤ・ポンプ、船舶及びボート用のプロペラペラ軸の軸受と静的な又は動的の荷重を受けるその他の任意の軸受とを含む。
【0029】
なお分りやすいように本発明を添付図面について例示して述べる。
【実施例】
【0030】
同じ構造を共通の参照数字で示した図1ないし9について本発明の実施例を説明する。
【0031】
内燃機関用の従来の半割り軸受(half bearing)10を図1に示してある。半割り軸受10は、たとえば鋼のような材料で作った強い裏当て(backing)12と裏当て12に接着した軸接合金ライニング14とから成る。ライニング14は使用時に軸ジャーナル(図示してない)と関連する。強い裏当て12は約0.25mm以上の任意の厚さを持つ。軸受合金ライニング層14は、厚さが約0.25mmないし1.5mmでありアルミニウム合金又は合金から作ることが多い。軸受10は、合金層14より軟らかい合金から成るいわゆるオーバレイ層を設けても設けなくてもよい。このようなオーバレイ層は設けてある場合通常厚さが15ないし50μmの範囲である。軸受合金層14は図示の例では実質的に軸受の全面積にわたって延びる。すなわち軸受合金が関連する連接棒に軸線方向に整合するように設けた切欠き部16以外に切欠き又は除去した区域はない。
【0032】
図2及び3は、エンジンの連接棒22に取付けられ図1の軸受10と大体においてにおいて同様な構造を持つ軸受20を示す。軸受20は、軸受合金から成るライニング28を持つ鋼製裏当て(steel backing)26を備える。連接棒22の下半部のキャップ24の一部だけを下半部の軸受20の一部と共に示してある。連接棒22に2個の半割りの軸受20を組立てるときは、軸受20は、2個のクランク軸ウェブ32、34間に支えたクランク軸ビッグ・エンド・ジャーナル(rankshaft big−end journal)30を囲む。軸受20の全軸線方向長さは図1に「L」として示してある。連接棒22及び軸受20をクランク軸ビッグ・エンド・ジャーナル30のまわりに組立てるときは、ジャーナル面40及び軸受面42間にすきま「d」が存在する。すきま「d」は、連接棒22内に組付けたときに半殻の軸受20により形成した軸受穴とクランク軸ビッグ・エンド・ジャーナル30の直径との間の直径差として定義される。軸受20は軸線44を持つ。
【0033】
本発明による軸受20は図2及び3に示すように、半径方向に寸法「D」と軸線方向に長さ「l」とを持つ円周方向くぼみ50、52を設けることにより各軸線方向端部で穴に逃げを設けてある。図3に示した拡大図Aは又、クランク軸ビッグ・エンド・ジャーナル30の軸線方向端部に形成した応力逃がしみぞ46と、連接棒22の軸受受入れ穴の端部に形成したかど取り部48とを示す。
【0034】
軸ジャーナル30は、詳細に後述する試験の場合に後述の制御された条件に関係なくこれ等の条件のもとでオイルを供給されるオイル供給穴36を持つ。正規の使用の際には車両にはめ込まれた同じエンジンが隣接主軸受からクランク軸のせん孔を介しオイル穴36にオイルを供給される。しかし試験はエンジンと正規の道路使用エンジンとは共に一般に実際上或る位置(オイル穴36)で軸受にオイルが供給されこのオイルが逃げの部分に向かい外方に(矢印38により示すように)流れ、軸受からその軸線方向両端部で流出し、エンジン・オイル・パン内に落下する。すなわち各軸線方向軸受端部に隣接して1個所ずつ2個所の逃げの部分がある場合に、これ等の逃げの部分の中間にオイルが供給され各逃げの部分を経てこの軸受から各軸線方向端部で流出する。各オイルは供給穴及び各逃げ部の相対配置を後者の考え方は後述の全部の実施例に適用できる。
【0035】
図2及び3において深さ「D」は一定である。しかしこのことは、さらに後述するように深さ「D」が軸線方向長さ「l」に沿って変るような場合にとは必ずしも限らない。
【0036】
図4は、逃げの部分52がその軸線方向外方に位置する唇状部60を持つ第2の実施例を示す。この軸受の全壁厚さは「T」と定め、唇状部60の位置における壁の厚さは「t」と定める。この場合t<Tまたt=Tただしt>(T−D)である。唇状部60の軸線方向長さは、「m」と定め軸受及びすきまの実際の寸法と実際のエンジン用途と従って変えてもよい。
【0037】
図5は一様でない深さの逃げの部分を持つ軸受を示す。この逃げの部分は軸受の軸線方向端部に向かい或る一定の角度をなして、下方に傾斜する。深さ「D」は逃げ部分の一方の端部から他端部までの平均深さと定める。
【0038】
図6は図5に示したのとは逆の傾斜を持つ逃げの部分を示す。又深さ「D」は一端部から他端部までのくぼみの平均深さと定義する。
【0039】
図7は、くぼみ52が湾曲底部70を持つ軸受を示す。この軸受の軸線方向外端部における壁圧「t」は「T」に等しいか又は「T」より小さい。このくぼみの深さ「D」は湾曲底部70の最大深さ部の深さとして定義する。
【0040】
図8は段付きの逃げの部分72を持つ軸受を示す。図示の例は3個所の段を持つ。しかし3個所より多くても少なくてもよい。
【0041】
図9は、逃げの部分50、52を軸受端部80、82の軸線方向内方に形成した実施例を示す。各くぼみの軸線方向外方の軸受表面部分84、86は、壁厚さに逃げを設けてなくて前記したような厚さ「T」を持つ。
【0042】
6000rpmで100kwの最高動力と4000rpmで180NMの最高トルクとを持つ4シリンダ直列形16バルブ・ダブル・オーバーヘッド・カムシャフト(DOHC)2リットル エンジンで種種の寸法の「D」及び「l」を持つ図2及び3により作った軸受について試験を行った。各エンジン試験は次の表に示した条件のもとに行った。
【0043】
【0044】
本発明による軸受の各逃げの部分の真の効果を試験によりできるだけ表示するように、エンジンは流量、温度及び圧力の制御した条件のもとでオイルがビッグ・エンド軸受に直接送られるように改造した。改造してないエンジンではオイルは通常主軸受ジャーナルからビッグ・エンド軸受にクランク軸のウエブ及びジャーナルのオイルせん孔を介して送られる。このオイルは次いで一体のエンジン・オイル・ポンプからシリンダ・ブロック内の通路を経て加圧オイルにより供給される。しかし改造してないエンジンでは本発明軸受によってビッグ・エンド軸受(big−end bearing)すなわちクラクピン軸受へのオイルの供給を制御することと又は作動パラメータの変化を監視することとができない。たとえばエンジン速度の上昇に伴い主軸受はそのビッグ・エンド下流側に達するオイルの圧力及び量に大きい影響を持ち高いエンジン速度においてビッグ・エンド軸受内のオイル供給が欠乏を生ずるようになる。改造した試験エンジンでは入力オイル・パラメータ(input oil parameter)を前記したように正確に制御することができるだけでなく又軸受温度の変化を正確に監視することができる。オイルはこの改造エンジン内にクランク軸の鼻部のせん孔を介して導入され、ビッグ・エンド軸受への独立したオイル送給ができる。主軸受ジャーナルからビッグ・エンドへの正規のオイル供給せん孔は栓をしてある。オイル流れを監視する全流量計(bull−flow meter)によりオイル供給量が定められる。オイルを供給される軸受20は又、軸受温度の変化を監視する熱電対を設けてある。各熱電対(図示してない)は実際の軸受面から約0.3mmの位置に位置させてある。すなわち記録されるのはオイル温度変化でなくて軸受温度の変化である。試験エンジンの改造の詳細は、2000年3月SAE論文COP−456号のD.D..ウイリアムズ(Williams)B.のマイアン(Mian)、A.C.パーカー(Parker)を著者とする論文「全体及び部分みぞ付き主軸受の計測したクランク軸軸受のオイルの流れ及び温度」に認められる。
【0045】
図10には、流入送給オイルの温度が2バールで100℃の場合に行った試験の成績を示す。軸受温度の変化は3000rpmないし6500rpmの範囲で計測する。各軸受は「標準型」で、(1)すなわち車両ははめ込まれたときにエンジンに通常供給される軸受で深さ2mm×0.3mmの逃げの部分を持つ軸受であり、(2)すなわち軸受の各軸線方向端部において「D」=0.3mm又「l」=1mm、深さ4mm×0.3mm、(3)すなわち軸受の各軸線方向端部において「D」=0.3mm又「l」=2mm、深さ6mm×0.3mm、(4)すなわち軸受の各軸線方向端部において「D」=0.3mm又「l」=3mm、深さ6mm×0.6mm、(5)すなわち「D」=0.6mm又「l」=3mmである。試験エンジンでは半径方向すきま「d」は0.02mmで直径方向すきまは0.04mmであった。
【0046】
図10に明らかなように軸受の各軸線方向端部で寸法「l」が1から3mmまで増大するのに伴い軸受温度上昇(100℃のオイル送給温度以上)は低下し続ける。6000rpmにおける100℃の入力オイル温度(input oil temperature)では、本発明によれば各軸受端部で3mmの長さ「l」と0.3mmの深さ「D」とを持つ軸受は温度が約26℃だけ上昇するが標準の軸受は温度が約40℃だけ増大する。各軸線方向端部における1mmから3mmまでの増大する寸法「l」の効果により、軸受温度上昇を低下させ続ける。軸受の各軸線方向端部において3mmの寸法「D」で0.3mmから0.6mmまで深さ「D」を増す効果により、6000rpmまでの軸受温度上昇の減小を生じ、次で標準軸受は軸受温度上昇の増大が一層低くなる。
【0047】
図11は、オイル入力温度が100℃でなくて140℃であることを除いて図10と同様な線図を示す。しかし図5に示したのと同じ傾斜により、軸受の各軸線方向端部における0.3mmの深さ「D」と3mmの寸法「l」とにより、標準軸受よりなお約5℃又はそれ以上低い温度上昇によるときは約6500rpmまでの速度範囲の付近で軸受温度上昇に最小の増加を生ずる。又軸受の各軸線方向端部に3mmまでの寸法「l」の増大により比較的低い同じ傾向の軸受温度上昇がある。
【0048】
図12及び図13は標準軸受に対する軸受温度上昇の線図(トレース1)と「l」=2mm又深さ「D」=0.1mmの軸線方向端部の逃げの部分を持つ軸受に対する温度上昇の線図(トレース2)とを示す。前記のように本発明による軸受が100℃(図12)及び140℃(図13)の入力オイル温度における軸受温度上昇の減小を示すのは明らかである。オイル供給圧力は両方の線図で2バールである。
【0049】
各エンジンは加速時に高い速度まで運転するが、車両のエンジンは本発明の効果の著しい極めて低い速度でこのエンジンの運転寿命の大部分を費やす。しかしたとえば一様な車両及びエンジンの高い速度が一般的であるモータウエイでは、とくに、エンジン・オイル・パンのまわりの冷却空気の流れを抑止する今日一般的な車両の空気力学を改良する導風板及びパネルの使用によって高いオイル温度の認められることが多い。従って軸受温度の下げるのに使われるどのような手段も有利である。すなわち軸受及び関連するクランク軸の寿命が本発明による軸受を使うときは一層低い作動温度従って一層高いオイル粘度によって延びることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】従来の半軸受の斜視図である。
【図2】本発明軸受の1実施例と関連する軸受ハウジング及びクランク軸ジャーナルとの一部を示す横断面図である。
【図3】図2の部分Aの拡大図である。
【図4】本発明軸受の第2実施例の部分横断面図である。
【図5】本発明軸受の第3実施例の部分横断面図である。
【図6】本発明軸受の第4実施例の部分横断面図である。
【図7】本発明軸受の第5実施例の部分横断面図である。
【図8】本発明軸受の第6実施例の部分横断面図である。
【図9】本発明軸受の第7実施例の部分横断面図である。
【図10】「標準」軸受に相当する寸法範囲を持つ逃げ部分を備えた本発明軸受の軸受温度上昇対エンジン速度の線図である。
【図11】異なる試験条件による図10の線図と同様な線図である。
【図12】異なる寸法パラメータを持つ本発明軸受の図10と同様な線図である。
【図13】異なる試験条件のものとでの図12に示したのと同様な線図である。
【符号の説明】
【0051】
20 平軸受
22 連接棒
30 軸ジャーナル
52 逃げの部分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動面を持つ平軸受であって、
使用時に関連する軸ジャーナル(30)に対する接触軸受表面積を減らすように、前記作動面に、軸線方向及び半径方向の両方向に延びる少なくとも2つの逃げの部分(50、52)を設け、前記逃げの部分が軸受全周のまわりに延び、前記逃げの部分を関連する前記軸ジャーナルのオイル供給穴(36)の軸線方向外方にこのオイル供給穴(36)から離れて位置させた平軸受において、
前記半径方向の逃げ(D)を、関連する軸ジャーナルの直径に基づいて前記軸受穴(42)と、前記関連する軸ジャーナルとの間の公称の全すきま(d)の×2ないし×15の要因とし、前記逃げの部分の全軸線方向長さ(l)を軸受長さ(L)の5ないし40%の範囲内とし、前記逃げの部分を、前記軸受長さのまわりに実質的に対称に配置し、前記逃げの部分の底部が軸受軸線に対して傾斜するようにしたことを特徴とする平軸受。
【請求項1】
作動面を持つ平軸受であって、
使用時に関連する軸ジャーナル(30)に対する接触軸受表面積を減らすように、前記作動面に、軸線方向及び半径方向の両方向に延びる少なくとも2つの逃げの部分(50、52)を設け、前記逃げの部分が軸受全周のまわりに延び、前記逃げの部分を関連する前記軸ジャーナルのオイル供給穴(36)の軸線方向外方にこのオイル供給穴(36)から離れて位置させた平軸受において、
前記半径方向の逃げ(D)を、関連する軸ジャーナルの直径に基づいて前記軸受穴(42)と、前記関連する軸ジャーナルとの間の公称の全すきま(d)の×2ないし×15の要因とし、前記逃げの部分の全軸線方向長さ(l)を軸受長さ(L)の5ないし40%の範囲内とし、前記逃げの部分を、前記軸受長さのまわりに実質的に対称に配置し、前記逃げの部分の底部が軸受軸線に対して傾斜するようにしたことを特徴とする平軸受。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−237035(P2011−237035A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147505(P2011−147505)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【分割の表示】特願2001−580991(P2001−580991)の分割
【原出願日】平成13年4月23日(2001.4.23)
【出願人】(509278645)マール、インタナショナル、ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【分割の表示】特願2001−580991(P2001−580991)の分割
【原出願日】平成13年4月23日(2001.4.23)
【出願人】(509278645)マール、インタナショナル、ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】
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