軽油モニタ
【課題】不正軽油を各種の識別原理に従って高精度に識別可能とした軽油モニタを提供する。
【解決手段】軽油以外の成分を含む不正軽油を識別するための軽油モニタであって、識別対象であるサンプルS’に紫外線を照射した際に発生するサンプル中のクマリンによる蛍光強度を測定してサンプルS’が不正軽油であるか否かを識別可能とした軽油モニタにおいて、サンプルS’を収容するサンプル容器20Aを、その中心軸cが鉛直線bに対し所定角度傾くように配置すると共に、サンプル容器20Aの下方に紫外線を出射するLED等の光源10Bを配置し、更に、必要に応じてサンプル容器20Aの端部近傍に蛍光集光用のレンズ11を配置する。
【解決手段】軽油以外の成分を含む不正軽油を識別するための軽油モニタであって、識別対象であるサンプルS’に紫外線を照射した際に発生するサンプル中のクマリンによる蛍光強度を測定してサンプルS’が不正軽油であるか否かを識別可能とした軽油モニタにおいて、サンプルS’を収容するサンプル容器20Aを、その中心軸cが鉛直線bに対し所定角度傾くように配置すると共に、サンプル容器20Aの下方に紫外線を出射するLED等の光源10Bを配置し、更に、必要に応じてサンプル容器20Aの端部近傍に蛍光集光用のレンズ11を配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽油以外の成分を含む不正軽油を識別するための軽油モニタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンを使用する自動車や重機等の燃料として、一部で不正軽油が販売、使用されている。これらの不正軽油は、主に、灯油や重油を軽油に混合したものや、あるいは重油を脱色したものを軽油と称しているものがほとんどである。
不正軽油の流通は、その使用によって環境汚染やエンジンの故障、寿命低下を招くため、従来より種々の不正軽油識別方法が提供されている。
【0003】
不正軽油識別方法の代表的なものとしては、灯油及び重油に識別剤としてクマリンを添加しておき、燃料タンク等から抜き取った燃料を分析してクマリンが検出されれば、軽油であるべき燃料に灯油また重油が混入していることから不正軽油と識別する方法があり、この方法は特許文献1に記載されている。
ここで、クマリンの分析方法としてはサンプルに所定濃度のアルコール及びアルカリ溶液を加えてサンプル中のクマリンをアルカリ液層に抽出し、このアルカリ液層に紫外線を照射した際に発生する蛍光強度を目視により検出する定性分析法(簡易測定法)や分光光度計により測定する定量分析法が知られている(「軽油識別剤標準分析方法作業マニュアル」(社団法人全国石油協会 平成6年3月発行)を参照)。
【0004】
また、不正軽油識別の他の方法として、特許文献2に記載されているように、ガスクロクロマトグラフィを用いてサンプルの成分を分析することにより、軽油と不正軽油とを識別する方法もある。
【0005】
しかしながら、前述したクマリン分析による識別方法では、灯油や重油に濃硫酸や苛性ソーダ等の薬品を加えてクマリンを除去した場合には、これらを軽油として誤認してしまう問題がある。
更に、何れの従来技術でも、1サンプル当たり多くの費用が必要なため、不正軽油の使用を取り締まる自治体等にとって大きな負担となっていた。
また、サンプルの密度や屈折率から不正軽油を識別する方法も提案されているが、例えば灯油と重油を混合したものと軽油との識別が困難である。
【0006】
上記の点に鑑み、出願人は、不正軽油を低コストにて確実に識別可能とした軽油識別方法及び軽油モニタを、特願2007−321495号(以下、先願という)として出願している。
この先願に係る軽油識別方法の一例では、識別対象であるサンプルの色度値をASTM色試験方法により検出し、この色度値を色度しきい値と比較する色判定工程と、前記サンプルによる吸光度の一次微分値のスペクトルを測定し、このスペクトルの所定の波長領域の面積値を特徴量として面積しきい値と比較する面積値判定工程と、を有し、前記色判定工程及び面積値判定工程における比較結果を用いて前記サンプルが不正軽油であるか否かを識別している。
【0007】
また、上記先願に係る軽油モニタの一例としては、軽油以外の成分を含む不正軽油を識別するための軽油モニタにおいて、識別対象であるサンプルに光を照射する光源と、前記サンプルの透過光から前記サンプルの色度値をASTM色試験方法により検出し、検出した前記色度値を色度しきい値と比較する色判定手段と、前記サンプルによる吸光度の一次微分値のスペクトルを測定するスペクトル測定手段と、前記スペクトルの所定の波長領域の面積値を特徴量として面積しきい値と比較する面積値判定手段と、前記色判定手段及び面積値判定手段による比較結果を用いて前記サンプルが不正軽油であるか否かを識別する識別手段と、を備えている。
【0008】
以下、上記先願発明について略述する。まず、図9は、先願に係る軽油モニタの一例を示す主要部構成図である。
図9において、10は可視光から近赤外光に至る波長の光を出射するタングステンハロゲンランプ等の光源であり、この光源10から出射した光は、不正軽油であるか否かを識別するべきサンプルが収容されたサンプル容器20を透過している。この透過光は、可視光及び近赤外光用のビームスプリッタ30に入射し、反射光はカラーセンサ40へ、透過光は近赤外光用の分光光度計50に入射する。
【0009】
カラーセンサ40は、ビームスプリッタ30からの反射光(可視光)を観測し、JIS K−2580「石油製品−色試験方法」に規定されたASTM色試験方法により、サンプルのASTM色度値を求める。
そして、図示されていない信号処理回路により上記ASTM色度値を軽油の色度値に相当するしきい値(色度しきい値という)Tcと比較して、サンプルが軽油または不正軽油である可能性を判定する。例えば、サンプルのASTM色度値が色度しきい値Tcより小さい場合に、そのサンプルが軽油である可能性が高いと判定する。
【0010】
また、分光光度計50は、ビームスプリッタ30の透過光(近赤外光)のスペクトルを測定するものである。そして、このスペクトルを前記信号処理回路によって解析することにより、サンプルが軽油または不正軽油である可能性を判定する。
【0011】
なお、図10は、先願に係る軽油モニタの他の例を示す主要部構成図である。
この例では、図9におけるビームスプリッタ30を省略し、かつ、可視光及び近赤外光用の分光光度計60を用いている。分光光度計60は、前記同様にサンプル容器20を透過した近赤外光のスペクトルを測定する機能を有するほか、前記カラーセンサ40の機能を備えており、サンプル容器20を透過した可視光を対象としてサンプルのASTM色度値を測定することが可能となっている。
【0012】
次いで、分光光度計50または60におけるスペクトルの解析原理について説明する。
すなわち、この先願発明では、分光光度計50または60により測定される近赤外光の吸光度一次微分値のスペクトルは、サンプルが軽油の場合と不正軽油の場合とで顕著に相違するという知見に基づいてスペクトルを解析し、その解析結果と前記ASTM色度値の測定結果との両方を用いて不正軽油を識別している。
【0013】
ここで、図11は光の波長が910[nm]〜940[nm]までの吸光度一次微分値のスペクトル、図12は光の波長が850[nm]〜890[nm]までの吸光度一次微分値のスペクトルである。これらのスペクトルの測定では、凡例に示すように、軽油として2号軽油a,2号軽油b(a,bの相違は元売り会社の相違),3号軽油,特3号軽油を用い、不正軽油として重油+灯油(各50%),重油,灯油を用いている。
【0014】
図11,図12から明らかなように、軽油及び不正軽油のスペクトルは、ある波長領域において明確な相違があり、この相違に着目すれば不正軽油の識別が可能である。
すなわち、図11において、例えば917[nm]〜928[nm]の波長領域A1’に着目すると、不正軽油では、吸光度の一次微分値が軽油に比べておおむね負側に大きくなっている。また、図12において、860[nm]〜870[nm]の波長領域A3’に着目すると、不正軽油では、吸光度の一次微分値が軽油に比べておおむね正側に大きく、同じく874[nm]〜886[nm]の波長領域A2’に着目すると、不正軽油では、吸光度の一次微分値が軽油に比べておおむね負側に大きくなっている。
このため、これらの波長領域A1’,A2’,A3’における吸光度一次微分値の面積値を特徴量として用い、この特徴量を所定のしきい値(面積しきい値という)と比較することによって不正軽油を識別することができる。
【0015】
なお、この先願発明によれば、ある波長領域における吸光度一次微分値の面積値だけでなく、吸光度一次微分値のスペクトルにおける選択した二つの波長の各値(一次微分値)の差の値を特徴量として用いることもできる。
【0016】
【特許文献1】特開平10−38878号公報(段落[0004]〜[0013]等)
【特許文献2】特開2006−23184号公報(段落[0020]〜[0033]等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記先願発明は、サンプルのASTM色度値の測定と近赤外光のスペクトル解析とを併用して不正軽油を識別するものであるが、これに加えてサンプルのクマリン分析を行うことができれば、各種の識別原理を用いて不正軽油を高精度に識別することができるようになり、軽油モニタの汎用性や使い勝手が向上することが明らかである。
【0018】
ここで、クマリン分析では、前述した如くサンプル(例えば20ml)に所定濃度のアルコール(同じく3.5ml)及びアルカリ溶液(同じく3ml)を加えてサンプル中のクマリンをアルカリ液層に抽出するため、図13に示すように、サンプル容器20A内のサンプルS’は、その比重によってサンプル(不正軽油であれば、真正の軽油以外の成分)S1、アルコールS2、及び、最も少量のアルカリ溶液S3に分離する。そして、クマリンの検出は、アルカリ溶液S3に紫外線LED等の光源10Bから紫外線を照射した際に発生する蛍光(散乱光)の強度を、必要に応じ光ファイバ51等を介して分光光度計50(60)により測定するものであるが、光源10Bからの紫外線がアルカリ溶液S3を通過する経路が長い方が蛍光の発生量が多くなるので、クマリンを高精度に検出することができる。
【0019】
いま、ASTM色度値の測定及びスペクトル解析を行う分光光度計をそのまま用いてクマリン分析を行う場合を考えると、アルカリ溶液S3中の紫外線の照射経路を長くするには、例えば、ASTM色度値の測定及びスペクトル解析に用いる光源10Aの下方であってサンプル容器20Aの側方にクマリン分析用の光源10Bを配置し、この光源10Bからの紫外線をサンプル容器20Aの底面に平行になるようにアルカリ溶液S3中を透過させることが考えられる。
しかし、前述のようにアルカリ溶液S3は少量であり、その深さdが僅かであるため、この深さdに合わせてサンプル容器20Aの側方に光源10Bを配置することは困難であり、他方の光源10Aと干渉(接触)しないような位置に光源10Bを配置することも難しい。従って、光源10Bとしては、例えば図13に示す如くサンプル容器20の下方に配置せざるを得ず、その場合には、深さdが僅かであるためにアルカリ溶液S3中の紫外線の通過経路を長くすることが困難である。
【0020】
すなわち、従来では、単一の分光光度計を用いて、ASTM色度値の測定及びスペクトル解析と共に、クマリン分析を高精度に行えるようにした軽油モニタを構成することが難しいため、その実現が強く望まれていた。
そこで、本発明の解決課題は、サンプル容器の配置構造を改良することにより、ASTM色度値の測定、スペクトル解析、及びクマリン分析等の各種識別原理に従って不正軽油を高精度に識別可能とした軽油モニタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するため、請求項1に係る軽油モニタは、軽油以外の成分を含む不正軽油を識別するための軽油モニタであって、識別対象としてのサンプルに紫外線を照射した際に発生する前記サンプル中のクマリンによる蛍光強度を測定して前記サンプルが不正軽油であるか否かを識別可能とした軽油モニタにおいて、
前記サンプルを収容するサンプル容器を、その中心軸が鉛直線に対し所定角度傾くように配置すると共に、前記サンプル容器の下方に紫外線を出射する第1の光源を配置したものである。
【0022】
請求項2に係る軽油モニタは、請求項1に記載した軽油モニタにおいて、前記サンプル容器の端部近傍に、蛍光を集光するためのレンズを配置したものである。
【0023】
請求項3に係る軽油モニタは、請求項1または2に記載した軽油モニタにおいて、可視光から近赤外光までの光を出射可能な第2の光源と、第2の光源からサンプルを透過した光を用いてサンプルのASTM色度値、スペクトル、及び前記蛍光強度を測定する単一の測定手段と、これらのASTM色度値、スペクトル、及び前記蛍光強度の測定結果に基づいて、サンプルが不正軽油であるか否かを識別する識別手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、サンプル容器を鉛直線に対し傾斜して配置したため、サンプルのASTM色度値、スペクトル、及びクマリンによる蛍光強度を単一の分光光度計によって測定することが可能になり、これら各種の識別原理を併用して不正軽油を高精度に識別することができる。
また、これにより、サンプル容器内のアルカリ溶液における紫外線の通過経路を長く確保できるので、アルカリ溶液にクマリンが含有されている場合には、サンプル容器の底面に対して垂直方向の蛍光の発生領域が広がって蛍光の検出が容易になるという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1,図2は、この実施形態に係る軽油モニタの主要部を示す模式図であり、図1はサンプルSのASTM色度値及びスペクトルを測定する場合、図2はサンプルS’ 中のクマリン分析を行う場合のものである。
【0026】
これらの図において、10Aは可視光から近赤外光までを出射可能なタングステンハロゲンランプ等の光源、10Bは紫外線を出射してサンプルS’中のクマリン分析を行うための紫外線LED等の光源、20,20AはサンプルS,S’が収容されるサンプル容器、21,21Aは蓋、70はサンプルSのASTM色度値及びスペクトルを測定し、かつ、前記クマリン分析時にクマリンから発生する蛍光強度を測定するための分光光度計である。
また、11は、光源10AからサンプルSを経た透過光、及び、下記のアルカリ溶液S3内に存在するクマリンによって発生する蛍光(散乱光)を集光するために、サンプル容器20,20Aの端部近傍に配置されたレンズである。なお、本実施形態において、上記レンズ11は、少なくとも前記蛍光を集光可能な位置に配置すれば良く、必ずしも前記透過光まで集光することは要求されない。
ここで、クマリン分析時に使用するサンプルS’は、前記同様にサンプル(例えば20ml)S1とアルコール(同じく3.5ml)S2とアルカリ溶液(同じく3ml)S3とに分離している。
なお、便宜的に、光源10Bを請求項における第1の光源、光源10Aを同じく第2の光源というものとする。
【0027】
本実施形態の特徴は、サンプルSのASTM色度値及びスペクトル測定用の分光光度計70を用いてサンプルS’中のクマリン分析も行うために、サンプル容器20,20Aの配置構造を改良した点にあり、具体的には、サンプル容器20,20Aの中心軸cを鉛直線bに対して角度αだけ傾けて配置してある。
ここで、サンプル容器には異なる符号20,20Aを用いているが、サンプルS,S’のコンタミネーションを洗浄によって防止できれば、単一のサンプル容器を用いても良い。
【0028】
また、分光光度計70は、図10に示した分光光度計60と同様に、サンプルSを透過した可視光を対象としてASTM色試験方法によるASTM色度値を測定する機能、及び、サンプルSを透過した近赤外光のスペクトルを測定する機能を有するほか、前記「軽油識別剤標準分析方法作業マニュアル」に記載された定量分析法等によるクマリン分析機能を有しており、具体的には、光源10Bからの紫外線がサンプルS’中のアルカリ溶液S3に照射された際に、含有するクマリンによって発生する蛍光(散乱光)の強度を測定する機能を有する。
図示されていないが、分光光度計70には信号処理回路が接続されており、この信号処理回路によりASTM色度値の比較判定、スペクトルの解析、蛍光強度の測定等を行い、不正軽油を識別することが可能になっている。
【0029】
図3は、図1,図2を上面から見た平面図に相当している。
図3において、分光光度計70は、光源10Aからサンプル容器20内のサンプルSを介した透過光、及び、クマリン分析時にサンプル容器20A内のアルカリ溶液S3からの散乱光が入射する分光器としての反射型の回折格子71と、この回折格子71により反射した紫外線−可視光−近赤外光の波長範囲の光を検出する光度計(検出器)72とを備えている。なお、分光光度計70の構成はこれに限定されるものではなく、単一の検出器により紫外線−可視光−近赤外光の波長範囲の光を検出可能であればよい。
【0030】
図4は、本実施形態の作用を説明するための図である。
図4(a)は図13と同等のものであって、サンプル容器20Aの中心軸cが鉛直線bと一致するように配置した比較例である。一方、図4(b)は本実施形態によりサンプル容器20Aの中心軸cを鉛直線bに対して角度α(例えば35°)だけ傾けて配置した例である。
両者を比較すると、アルカリ溶液S3の液層の深さはd’>dとなり、サンプル容器20Aの下方に前記光源10Bを配置した場合に、本実施形態の図4(b)では、比較例の図4(a)に比べてアルカリ溶液S3内の紫外線通過経路を長く確保できるので、それに伴ってクマリン含有時におけるサンプル容器20Aの底面に対して垂直方向の蛍光の発生領域を広くすることができる。このため、サンプル容器20Aの端部近傍にレンズ11を配置すれば、クマリンにより発生した蛍光を容易かつ効率的に集光して分光光度計70に導くことができ、蛍光強度を高精度に検出することができる。
【0031】
次に、図5はこの実施形態の軽油モニタを構成するモニタ本体100の斜視図であり、101は前記光源10A,10B、分光光度計70等を備えた検出部、102はサンプル容器20,20Aを収納するための凹部である容器収納部、103はサンプル容器20,20Aのセット用窓部、104は光源の駆動回路や分光光度計70の受光信号処理回路等を構成する回路基板、105は操作スイッチ、106は電源スイッチ、107は測定結果等を表示する表示部である。
【0032】
また、図6は軽油モニタの主要部の構成図であり、(a)はカバー(図示せず)を外した状態の平面図、(b)は(a)のC−C断面図、(c)は(d)のA−A断面図、(d)は正面図、(e)は(a)のB−B断面図である。
これらの図において、111は電源としてのバッテリー、200はケース、201はサンプル容器20,20A等の付属品を収納するための付属品収納部である。
【0033】
更に、図7は前記検出部101の斜視図であり、108,109は検出部101をモニタ本体100に取り付けるための支持板、110は光源10Aが収納されている光源収納部である。
また、図8は検出部101の構成図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は(b)のE−E断面図、(d)は(a)のD−D断面図である。
この実施形態では、支持板108,109により検出部101を傾けてモニタ本体100に取り付けることにより、図1,図2等に示したサンプル容器20,20Aの中心軸cと鉛直線bとの間の傾斜角度αを確保している。
【0034】
図5〜図8から明らかなように、この実施形態の軽油モニタでは、カバーを外した状態でサンプル容器20,20Aのセット用窓部103及び容器収納部102が露出する。このため、使用者はASTM色度値及びスペクトル測定を行うためのサンプルSが収容されたサンプル容器20、または、クマリン分析を行うためのサンプルS’が収容されたサンプル容器20Aを、容器収納部102に沿って斜めにセットするだけで測定準備が完了するので、極めて使い勝手が良いものである。
また、使用していないサンプル容器20または20A等は付属品収納部201に収納しておけばよいため、これらを紛失するおそれもない。
【0035】
以上のように、本実施形態に係る軽油モニタによれば、サンプル容器20,20Aの配置構造を改良したことにより、ASTM色度値の測定やスペクトル解析による識別動作とクマリン分析による識別動作とを単一の分光光度計を用いて実現可能であり、これら各種の識別原理に従って不正軽油を高精度に識別することができる。
また、従来の軽油モニタに対して検出部101や光学系の配置構造を変更する等の改良を加えるだけで良いから、低コストにて提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態の主要部を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態の主要部を示す模式図である。
【図3】図1,図2の平面図に相当する図である。
【図4】本発明の実施形態及び比較例の作用を示す図である。
【図5】本発明の実施形態におけるモニタ本体の斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係る軽油モニタの主要部の構成図である。
【図7】本発明の実施形態における検出部の斜視図である。
【図8】本発明の実施形態における検出部の構成図である。
【図9】先願発明の主要部の構成図である。
【図10】先願発明の主要部の構成図である。
【図11】先願発明における吸光度一次微分値のスペクトルを示す図である。
【図12】先願発明における吸光度一次微分値のスペクトルを示す図である。
【図13】クマリン分析動作の説明図である。
【符号の説明】
【0037】
10A,10B:光源
11:レンズ
20,20A:サンプル容器
21,21A:蓋
70:分光光度計
71:回折格子
72:光度計(検出器)
100:モニタ本体
101:検出部
102:容器収納部
103:セット用窓部
104:回路基板
105:操作スイッチ
106:電源スイッチ
107:表示部
108,109:支持板
110:光源収納部
111:バッテリー
200:ケース
201:付属品収納部
S1:サンプル
S2:アルコール
S3:アルカリ溶液
S,S’:サンプル
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽油以外の成分を含む不正軽油を識別するための軽油モニタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンを使用する自動車や重機等の燃料として、一部で不正軽油が販売、使用されている。これらの不正軽油は、主に、灯油や重油を軽油に混合したものや、あるいは重油を脱色したものを軽油と称しているものがほとんどである。
不正軽油の流通は、その使用によって環境汚染やエンジンの故障、寿命低下を招くため、従来より種々の不正軽油識別方法が提供されている。
【0003】
不正軽油識別方法の代表的なものとしては、灯油及び重油に識別剤としてクマリンを添加しておき、燃料タンク等から抜き取った燃料を分析してクマリンが検出されれば、軽油であるべき燃料に灯油また重油が混入していることから不正軽油と識別する方法があり、この方法は特許文献1に記載されている。
ここで、クマリンの分析方法としてはサンプルに所定濃度のアルコール及びアルカリ溶液を加えてサンプル中のクマリンをアルカリ液層に抽出し、このアルカリ液層に紫外線を照射した際に発生する蛍光強度を目視により検出する定性分析法(簡易測定法)や分光光度計により測定する定量分析法が知られている(「軽油識別剤標準分析方法作業マニュアル」(社団法人全国石油協会 平成6年3月発行)を参照)。
【0004】
また、不正軽油識別の他の方法として、特許文献2に記載されているように、ガスクロクロマトグラフィを用いてサンプルの成分を分析することにより、軽油と不正軽油とを識別する方法もある。
【0005】
しかしながら、前述したクマリン分析による識別方法では、灯油や重油に濃硫酸や苛性ソーダ等の薬品を加えてクマリンを除去した場合には、これらを軽油として誤認してしまう問題がある。
更に、何れの従来技術でも、1サンプル当たり多くの費用が必要なため、不正軽油の使用を取り締まる自治体等にとって大きな負担となっていた。
また、サンプルの密度や屈折率から不正軽油を識別する方法も提案されているが、例えば灯油と重油を混合したものと軽油との識別が困難である。
【0006】
上記の点に鑑み、出願人は、不正軽油を低コストにて確実に識別可能とした軽油識別方法及び軽油モニタを、特願2007−321495号(以下、先願という)として出願している。
この先願に係る軽油識別方法の一例では、識別対象であるサンプルの色度値をASTM色試験方法により検出し、この色度値を色度しきい値と比較する色判定工程と、前記サンプルによる吸光度の一次微分値のスペクトルを測定し、このスペクトルの所定の波長領域の面積値を特徴量として面積しきい値と比較する面積値判定工程と、を有し、前記色判定工程及び面積値判定工程における比較結果を用いて前記サンプルが不正軽油であるか否かを識別している。
【0007】
また、上記先願に係る軽油モニタの一例としては、軽油以外の成分を含む不正軽油を識別するための軽油モニタにおいて、識別対象であるサンプルに光を照射する光源と、前記サンプルの透過光から前記サンプルの色度値をASTM色試験方法により検出し、検出した前記色度値を色度しきい値と比較する色判定手段と、前記サンプルによる吸光度の一次微分値のスペクトルを測定するスペクトル測定手段と、前記スペクトルの所定の波長領域の面積値を特徴量として面積しきい値と比較する面積値判定手段と、前記色判定手段及び面積値判定手段による比較結果を用いて前記サンプルが不正軽油であるか否かを識別する識別手段と、を備えている。
【0008】
以下、上記先願発明について略述する。まず、図9は、先願に係る軽油モニタの一例を示す主要部構成図である。
図9において、10は可視光から近赤外光に至る波長の光を出射するタングステンハロゲンランプ等の光源であり、この光源10から出射した光は、不正軽油であるか否かを識別するべきサンプルが収容されたサンプル容器20を透過している。この透過光は、可視光及び近赤外光用のビームスプリッタ30に入射し、反射光はカラーセンサ40へ、透過光は近赤外光用の分光光度計50に入射する。
【0009】
カラーセンサ40は、ビームスプリッタ30からの反射光(可視光)を観測し、JIS K−2580「石油製品−色試験方法」に規定されたASTM色試験方法により、サンプルのASTM色度値を求める。
そして、図示されていない信号処理回路により上記ASTM色度値を軽油の色度値に相当するしきい値(色度しきい値という)Tcと比較して、サンプルが軽油または不正軽油である可能性を判定する。例えば、サンプルのASTM色度値が色度しきい値Tcより小さい場合に、そのサンプルが軽油である可能性が高いと判定する。
【0010】
また、分光光度計50は、ビームスプリッタ30の透過光(近赤外光)のスペクトルを測定するものである。そして、このスペクトルを前記信号処理回路によって解析することにより、サンプルが軽油または不正軽油である可能性を判定する。
【0011】
なお、図10は、先願に係る軽油モニタの他の例を示す主要部構成図である。
この例では、図9におけるビームスプリッタ30を省略し、かつ、可視光及び近赤外光用の分光光度計60を用いている。分光光度計60は、前記同様にサンプル容器20を透過した近赤外光のスペクトルを測定する機能を有するほか、前記カラーセンサ40の機能を備えており、サンプル容器20を透過した可視光を対象としてサンプルのASTM色度値を測定することが可能となっている。
【0012】
次いで、分光光度計50または60におけるスペクトルの解析原理について説明する。
すなわち、この先願発明では、分光光度計50または60により測定される近赤外光の吸光度一次微分値のスペクトルは、サンプルが軽油の場合と不正軽油の場合とで顕著に相違するという知見に基づいてスペクトルを解析し、その解析結果と前記ASTM色度値の測定結果との両方を用いて不正軽油を識別している。
【0013】
ここで、図11は光の波長が910[nm]〜940[nm]までの吸光度一次微分値のスペクトル、図12は光の波長が850[nm]〜890[nm]までの吸光度一次微分値のスペクトルである。これらのスペクトルの測定では、凡例に示すように、軽油として2号軽油a,2号軽油b(a,bの相違は元売り会社の相違),3号軽油,特3号軽油を用い、不正軽油として重油+灯油(各50%),重油,灯油を用いている。
【0014】
図11,図12から明らかなように、軽油及び不正軽油のスペクトルは、ある波長領域において明確な相違があり、この相違に着目すれば不正軽油の識別が可能である。
すなわち、図11において、例えば917[nm]〜928[nm]の波長領域A1’に着目すると、不正軽油では、吸光度の一次微分値が軽油に比べておおむね負側に大きくなっている。また、図12において、860[nm]〜870[nm]の波長領域A3’に着目すると、不正軽油では、吸光度の一次微分値が軽油に比べておおむね正側に大きく、同じく874[nm]〜886[nm]の波長領域A2’に着目すると、不正軽油では、吸光度の一次微分値が軽油に比べておおむね負側に大きくなっている。
このため、これらの波長領域A1’,A2’,A3’における吸光度一次微分値の面積値を特徴量として用い、この特徴量を所定のしきい値(面積しきい値という)と比較することによって不正軽油を識別することができる。
【0015】
なお、この先願発明によれば、ある波長領域における吸光度一次微分値の面積値だけでなく、吸光度一次微分値のスペクトルにおける選択した二つの波長の各値(一次微分値)の差の値を特徴量として用いることもできる。
【0016】
【特許文献1】特開平10−38878号公報(段落[0004]〜[0013]等)
【特許文献2】特開2006−23184号公報(段落[0020]〜[0033]等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記先願発明は、サンプルのASTM色度値の測定と近赤外光のスペクトル解析とを併用して不正軽油を識別するものであるが、これに加えてサンプルのクマリン分析を行うことができれば、各種の識別原理を用いて不正軽油を高精度に識別することができるようになり、軽油モニタの汎用性や使い勝手が向上することが明らかである。
【0018】
ここで、クマリン分析では、前述した如くサンプル(例えば20ml)に所定濃度のアルコール(同じく3.5ml)及びアルカリ溶液(同じく3ml)を加えてサンプル中のクマリンをアルカリ液層に抽出するため、図13に示すように、サンプル容器20A内のサンプルS’は、その比重によってサンプル(不正軽油であれば、真正の軽油以外の成分)S1、アルコールS2、及び、最も少量のアルカリ溶液S3に分離する。そして、クマリンの検出は、アルカリ溶液S3に紫外線LED等の光源10Bから紫外線を照射した際に発生する蛍光(散乱光)の強度を、必要に応じ光ファイバ51等を介して分光光度計50(60)により測定するものであるが、光源10Bからの紫外線がアルカリ溶液S3を通過する経路が長い方が蛍光の発生量が多くなるので、クマリンを高精度に検出することができる。
【0019】
いま、ASTM色度値の測定及びスペクトル解析を行う分光光度計をそのまま用いてクマリン分析を行う場合を考えると、アルカリ溶液S3中の紫外線の照射経路を長くするには、例えば、ASTM色度値の測定及びスペクトル解析に用いる光源10Aの下方であってサンプル容器20Aの側方にクマリン分析用の光源10Bを配置し、この光源10Bからの紫外線をサンプル容器20Aの底面に平行になるようにアルカリ溶液S3中を透過させることが考えられる。
しかし、前述のようにアルカリ溶液S3は少量であり、その深さdが僅かであるため、この深さdに合わせてサンプル容器20Aの側方に光源10Bを配置することは困難であり、他方の光源10Aと干渉(接触)しないような位置に光源10Bを配置することも難しい。従って、光源10Bとしては、例えば図13に示す如くサンプル容器20の下方に配置せざるを得ず、その場合には、深さdが僅かであるためにアルカリ溶液S3中の紫外線の通過経路を長くすることが困難である。
【0020】
すなわち、従来では、単一の分光光度計を用いて、ASTM色度値の測定及びスペクトル解析と共に、クマリン分析を高精度に行えるようにした軽油モニタを構成することが難しいため、その実現が強く望まれていた。
そこで、本発明の解決課題は、サンプル容器の配置構造を改良することにより、ASTM色度値の測定、スペクトル解析、及びクマリン分析等の各種識別原理に従って不正軽油を高精度に識別可能とした軽油モニタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するため、請求項1に係る軽油モニタは、軽油以外の成分を含む不正軽油を識別するための軽油モニタであって、識別対象としてのサンプルに紫外線を照射した際に発生する前記サンプル中のクマリンによる蛍光強度を測定して前記サンプルが不正軽油であるか否かを識別可能とした軽油モニタにおいて、
前記サンプルを収容するサンプル容器を、その中心軸が鉛直線に対し所定角度傾くように配置すると共に、前記サンプル容器の下方に紫外線を出射する第1の光源を配置したものである。
【0022】
請求項2に係る軽油モニタは、請求項1に記載した軽油モニタにおいて、前記サンプル容器の端部近傍に、蛍光を集光するためのレンズを配置したものである。
【0023】
請求項3に係る軽油モニタは、請求項1または2に記載した軽油モニタにおいて、可視光から近赤外光までの光を出射可能な第2の光源と、第2の光源からサンプルを透過した光を用いてサンプルのASTM色度値、スペクトル、及び前記蛍光強度を測定する単一の測定手段と、これらのASTM色度値、スペクトル、及び前記蛍光強度の測定結果に基づいて、サンプルが不正軽油であるか否かを識別する識別手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、サンプル容器を鉛直線に対し傾斜して配置したため、サンプルのASTM色度値、スペクトル、及びクマリンによる蛍光強度を単一の分光光度計によって測定することが可能になり、これら各種の識別原理を併用して不正軽油を高精度に識別することができる。
また、これにより、サンプル容器内のアルカリ溶液における紫外線の通過経路を長く確保できるので、アルカリ溶液にクマリンが含有されている場合には、サンプル容器の底面に対して垂直方向の蛍光の発生領域が広がって蛍光の検出が容易になるという効果もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1,図2は、この実施形態に係る軽油モニタの主要部を示す模式図であり、図1はサンプルSのASTM色度値及びスペクトルを測定する場合、図2はサンプルS’ 中のクマリン分析を行う場合のものである。
【0026】
これらの図において、10Aは可視光から近赤外光までを出射可能なタングステンハロゲンランプ等の光源、10Bは紫外線を出射してサンプルS’中のクマリン分析を行うための紫外線LED等の光源、20,20AはサンプルS,S’が収容されるサンプル容器、21,21Aは蓋、70はサンプルSのASTM色度値及びスペクトルを測定し、かつ、前記クマリン分析時にクマリンから発生する蛍光強度を測定するための分光光度計である。
また、11は、光源10AからサンプルSを経た透過光、及び、下記のアルカリ溶液S3内に存在するクマリンによって発生する蛍光(散乱光)を集光するために、サンプル容器20,20Aの端部近傍に配置されたレンズである。なお、本実施形態において、上記レンズ11は、少なくとも前記蛍光を集光可能な位置に配置すれば良く、必ずしも前記透過光まで集光することは要求されない。
ここで、クマリン分析時に使用するサンプルS’は、前記同様にサンプル(例えば20ml)S1とアルコール(同じく3.5ml)S2とアルカリ溶液(同じく3ml)S3とに分離している。
なお、便宜的に、光源10Bを請求項における第1の光源、光源10Aを同じく第2の光源というものとする。
【0027】
本実施形態の特徴は、サンプルSのASTM色度値及びスペクトル測定用の分光光度計70を用いてサンプルS’中のクマリン分析も行うために、サンプル容器20,20Aの配置構造を改良した点にあり、具体的には、サンプル容器20,20Aの中心軸cを鉛直線bに対して角度αだけ傾けて配置してある。
ここで、サンプル容器には異なる符号20,20Aを用いているが、サンプルS,S’のコンタミネーションを洗浄によって防止できれば、単一のサンプル容器を用いても良い。
【0028】
また、分光光度計70は、図10に示した分光光度計60と同様に、サンプルSを透過した可視光を対象としてASTM色試験方法によるASTM色度値を測定する機能、及び、サンプルSを透過した近赤外光のスペクトルを測定する機能を有するほか、前記「軽油識別剤標準分析方法作業マニュアル」に記載された定量分析法等によるクマリン分析機能を有しており、具体的には、光源10Bからの紫外線がサンプルS’中のアルカリ溶液S3に照射された際に、含有するクマリンによって発生する蛍光(散乱光)の強度を測定する機能を有する。
図示されていないが、分光光度計70には信号処理回路が接続されており、この信号処理回路によりASTM色度値の比較判定、スペクトルの解析、蛍光強度の測定等を行い、不正軽油を識別することが可能になっている。
【0029】
図3は、図1,図2を上面から見た平面図に相当している。
図3において、分光光度計70は、光源10Aからサンプル容器20内のサンプルSを介した透過光、及び、クマリン分析時にサンプル容器20A内のアルカリ溶液S3からの散乱光が入射する分光器としての反射型の回折格子71と、この回折格子71により反射した紫外線−可視光−近赤外光の波長範囲の光を検出する光度計(検出器)72とを備えている。なお、分光光度計70の構成はこれに限定されるものではなく、単一の検出器により紫外線−可視光−近赤外光の波長範囲の光を検出可能であればよい。
【0030】
図4は、本実施形態の作用を説明するための図である。
図4(a)は図13と同等のものであって、サンプル容器20Aの中心軸cが鉛直線bと一致するように配置した比較例である。一方、図4(b)は本実施形態によりサンプル容器20Aの中心軸cを鉛直線bに対して角度α(例えば35°)だけ傾けて配置した例である。
両者を比較すると、アルカリ溶液S3の液層の深さはd’>dとなり、サンプル容器20Aの下方に前記光源10Bを配置した場合に、本実施形態の図4(b)では、比較例の図4(a)に比べてアルカリ溶液S3内の紫外線通過経路を長く確保できるので、それに伴ってクマリン含有時におけるサンプル容器20Aの底面に対して垂直方向の蛍光の発生領域を広くすることができる。このため、サンプル容器20Aの端部近傍にレンズ11を配置すれば、クマリンにより発生した蛍光を容易かつ効率的に集光して分光光度計70に導くことができ、蛍光強度を高精度に検出することができる。
【0031】
次に、図5はこの実施形態の軽油モニタを構成するモニタ本体100の斜視図であり、101は前記光源10A,10B、分光光度計70等を備えた検出部、102はサンプル容器20,20Aを収納するための凹部である容器収納部、103はサンプル容器20,20Aのセット用窓部、104は光源の駆動回路や分光光度計70の受光信号処理回路等を構成する回路基板、105は操作スイッチ、106は電源スイッチ、107は測定結果等を表示する表示部である。
【0032】
また、図6は軽油モニタの主要部の構成図であり、(a)はカバー(図示せず)を外した状態の平面図、(b)は(a)のC−C断面図、(c)は(d)のA−A断面図、(d)は正面図、(e)は(a)のB−B断面図である。
これらの図において、111は電源としてのバッテリー、200はケース、201はサンプル容器20,20A等の付属品を収納するための付属品収納部である。
【0033】
更に、図7は前記検出部101の斜視図であり、108,109は検出部101をモニタ本体100に取り付けるための支持板、110は光源10Aが収納されている光源収納部である。
また、図8は検出部101の構成図であり、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は(b)のE−E断面図、(d)は(a)のD−D断面図である。
この実施形態では、支持板108,109により検出部101を傾けてモニタ本体100に取り付けることにより、図1,図2等に示したサンプル容器20,20Aの中心軸cと鉛直線bとの間の傾斜角度αを確保している。
【0034】
図5〜図8から明らかなように、この実施形態の軽油モニタでは、カバーを外した状態でサンプル容器20,20Aのセット用窓部103及び容器収納部102が露出する。このため、使用者はASTM色度値及びスペクトル測定を行うためのサンプルSが収容されたサンプル容器20、または、クマリン分析を行うためのサンプルS’が収容されたサンプル容器20Aを、容器収納部102に沿って斜めにセットするだけで測定準備が完了するので、極めて使い勝手が良いものである。
また、使用していないサンプル容器20または20A等は付属品収納部201に収納しておけばよいため、これらを紛失するおそれもない。
【0035】
以上のように、本実施形態に係る軽油モニタによれば、サンプル容器20,20Aの配置構造を改良したことにより、ASTM色度値の測定やスペクトル解析による識別動作とクマリン分析による識別動作とを単一の分光光度計を用いて実現可能であり、これら各種の識別原理に従って不正軽油を高精度に識別することができる。
また、従来の軽油モニタに対して検出部101や光学系の配置構造を変更する等の改良を加えるだけで良いから、低コストにて提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施形態の主要部を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態の主要部を示す模式図である。
【図3】図1,図2の平面図に相当する図である。
【図4】本発明の実施形態及び比較例の作用を示す図である。
【図5】本発明の実施形態におけるモニタ本体の斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係る軽油モニタの主要部の構成図である。
【図7】本発明の実施形態における検出部の斜視図である。
【図8】本発明の実施形態における検出部の構成図である。
【図9】先願発明の主要部の構成図である。
【図10】先願発明の主要部の構成図である。
【図11】先願発明における吸光度一次微分値のスペクトルを示す図である。
【図12】先願発明における吸光度一次微分値のスペクトルを示す図である。
【図13】クマリン分析動作の説明図である。
【符号の説明】
【0037】
10A,10B:光源
11:レンズ
20,20A:サンプル容器
21,21A:蓋
70:分光光度計
71:回折格子
72:光度計(検出器)
100:モニタ本体
101:検出部
102:容器収納部
103:セット用窓部
104:回路基板
105:操作スイッチ
106:電源スイッチ
107:表示部
108,109:支持板
110:光源収納部
111:バッテリー
200:ケース
201:付属品収納部
S1:サンプル
S2:アルコール
S3:アルカリ溶液
S,S’:サンプル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽油以外の成分を含む不正軽油を識別するための軽油モニタであって、識別対象としてのサンプルに紫外線を照射した際に発生する前記サンプル中のクマリンによる蛍光強度を測定して前記サンプルが不正軽油であるか否かを識別可能とした軽油モニタにおいて、
前記サンプルを収容するサンプル容器を、その中心軸が鉛直線に対し所定角度傾くように配置すると共に、前記サンプル容器の下方に紫外線を出射する第1の光源を配置したことを特徴とする軽油モニタ。
【請求項2】
請求項1に記載した軽油モニタにおいて、
前記サンプル容器の端部近傍に、蛍光を集光するためのレンズを配置したことを特徴とする軽油モニタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載した軽油モニタにおいて、
可視光から近赤外光までの光を出射可能な第2の光源と、
第2の光源からサンプルを透過した光を用いてサンプルのASTM色度値、スペクトル、及び前記蛍光強度を測定する単一の測定手段と、
これらのASTM色度値、スペクトル、及び前記蛍光強度の測定結果に基づいて、サンプルが不正軽油であるか否かを識別する識別手段と、
を備えたことを特徴とする軽油モニタ。
【請求項1】
軽油以外の成分を含む不正軽油を識別するための軽油モニタであって、識別対象としてのサンプルに紫外線を照射した際に発生する前記サンプル中のクマリンによる蛍光強度を測定して前記サンプルが不正軽油であるか否かを識別可能とした軽油モニタにおいて、
前記サンプルを収容するサンプル容器を、その中心軸が鉛直線に対し所定角度傾くように配置すると共に、前記サンプル容器の下方に紫外線を出射する第1の光源を配置したことを特徴とする軽油モニタ。
【請求項2】
請求項1に記載した軽油モニタにおいて、
前記サンプル容器の端部近傍に、蛍光を集光するためのレンズを配置したことを特徴とする軽油モニタ。
【請求項3】
請求項1または2に記載した軽油モニタにおいて、
可視光から近赤外光までの光を出射可能な第2の光源と、
第2の光源からサンプルを透過した光を用いてサンプルのASTM色度値、スペクトル、及び前記蛍光強度を測定する単一の測定手段と、
これらのASTM色度値、スペクトル、及び前記蛍光強度の測定結果に基づいて、サンプルが不正軽油であるか否かを識別する識別手段と、
を備えたことを特徴とする軽油モニタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−264940(P2009−264940A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−115139(P2008−115139)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】
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