説明

輻輳制御装置および輻輳制御方法ならびに輻輳制御プログラム

【課題】メディアゲートウェイの輻輳状態を効果的に防止・抑制することができる輻輳制御装置を提供する。
【解決手段】VoIPネットワークにおいて公衆交換電話網に対する網端ゲートウェイの輻輳を制御するメディアゲートウェイ制御サーバ10は、メディアゲートウェイ20へ呼処理に関するリクエストコマンドを発行するコマンド発行部11と、コマンド発行部11から発行される前記リクエストコマンドを利用してメディアゲートウェイ20の輻輳状態を検出する輻輳監視部13と、輻輳監視部13の検出結果にしたがって、メディアゲートウェイ20への新規呼を抑制する新規呼抑制部14とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、VoIP(ボイス・オーバー・インターネット・プロトコル)ネットワーク上の輻輳制御に関し、特に、IPネットワークを既存の公衆交換電話網(PSTN:Public Switched Telephone Network)に接続するための網端ゲートウェイ(メディアゲートウェイ)の輻輳状態を解消するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットプロトコルで通信を行うIPネットワークと、既存の公衆交換電話網(PSTN)とを接続し、音声をディジタルデータに変換してさらにパケット化することにより、双方のネットワーク間で音声通話ができるIPテレフォニーが利用可能となっている。このIPテレフォニーにおいて、IPネットワークにおいてPSTNに対する網端ゲートウェイとして機能する装置は、一般的にメディアゲートウェイ(またはVoIPゲートウェイと呼ばれることもある)と呼ばれている。
【0003】
IPテレフォニーにおける課題の一つとして、メディアゲートウェイの輻輳が認識されている(例えば特許文献1参照)。メディアゲートウェイの輻輳は、例えば、IPテレフォニーへの加入者の増大や、多くの加入者が一斉に特定の接続相手先へ発呼(発信)することによって起こり得る。メディアゲートウェイの輻輳は、通信のボトルネックとなるため、輻輳が生じる可能性を迅速に検知し、輻輳を解消する措置を講ずることが必要である。
【0004】
なお、上記の特許文献1における輻輳制御技術は、IPネットワーク内の各パスごとのパケット流量に基づいて各パスが輻輳状態になっているかを判定し、輻輳状態となっているパスにつき蓄積されているトラフィック分布の中で、最大要素をなす網端ゲートウェイ間トラフィックを規制するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−261925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の輻輳制御技術では、IPネットワーク内の各パスのパケット流量の実測値に基づいて輻輳状態を判定するが、複雑なトポロジを有するネットワークにおいては、あるパスの輻輳状態が網端ゲートウェイ間トラフィックにどのような影響を及ぼすのかが推測困難である可能性がある。また、上記従来の輻輳制御技術では、個別のメディアゲートウェイの能力(回線数等)や稼働状態(接続中の回線数等)は考慮されていない。
【0007】
以下の開示は、上述した従来の課題を鑑み、メディアゲートウェイの輻輳状態を効果的に防止・抑制することができる輻輳制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、以下に開示の輻輳制御装置は、VoIPネットワークにおいて公衆交換電話網に対する網端ゲートウェイの輻輳を制御する輻輳制御装置であって、当該輻輳制御装置から前記網端ゲートウェイへ呼処理に関するリクエストコマンドを発行するコマンド発行部と、前記コマンド発行部から発行される前記リクエストコマンドを利用して前記網端ゲートウェイの輻輳状態を検出する輻輳監視部と、前記輻輳監視部の検出結果にしたがって、前記網端ゲートウェイへの新規呼を抑制する新規呼抑制部とを備えた構成である。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成によれば、呼処理に関するリクエストコマンドを利用して、メディアゲートウェイの輻輳状態を効果的に防止・抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本実施形態にかかるIPテレフォニーシステムの全体の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、第1の実施形態にかかるメディアゲートウェイ制御サーバによるメディアゲートウェイの輻輳制御の動作手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】図3は、新規呼抑制の解除手順の一例を示す模式図である。
【図4】図4は、新規呼抑制とその解除手順の一例を示す模式図である。
【図5】図5は、新規呼抑制の解除手順の一例を示す模式図である。
【図6】図6は、新規呼抑制の解除手順の一例を示す模式図である。
【図7】図7は、新規呼抑制の解除手順の一例を示す模式図である。
【図8】図8は、第1の実施形態にかかるメディアゲートウェイ制御サーバの機能的構成を示すブロック図である。
【図9】図9は、第2の実施形態にかかるメディアゲートウェイ制御サーバによるメディアゲートウェイの輻輳制御の動作手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態にかかる輻輳制御装置は、VoIPネットワークにおいて公衆交換電話網に対する網端ゲートウェイの輻輳を制御する輻輳制御装置であって、当該輻輳制御装置から前記網端ゲートウェイへ呼処理に関するリクエストコマンドを発行するコマンド発行部と、前記コマンド発行部から発行される前記リクエストコマンドを利用して前記網端ゲートウェイの輻輳状態を検出する輻輳監視部と、前記輻輳監視部の検出結果にしたがって、前記網端ゲートウェイへの新規呼を抑制する新規呼抑制部とを備えている。
【0012】
この構成によれば、呼処理に関するリクエストコマンドを利用することにより、網端ゲートウェイの輻輳状態を的確に検出することができる。また、その検出結果にしたがって新規呼を抑制するので、網端ゲートウェイの輻輳を効果的に防止・解消することが可能となる。
【0013】
上記の輻輳制御装置は、前記リクエストコマンドに対するレスポンスを受信するレスポンス受信部をさらに備え、前記輻輳監視部が、前記リクエストコマンドの発行から、当該リクエストコマンドへのレスポンスの受信までの経過時間を閾値と比較することにより、前記網端ゲートウェイの輻輳状態を検出することが好ましい。あるいは、前記輻輳監視部が、前記コマンド発行部から前記網端ゲートウェイへの一定時間当たりのコマンド送信量を閾値と比較することにより、前記網端ゲートウェイの輻輳状態を検出する構成も同様に好ましい。
【0014】
上記の輻輳制御装置において、前記輻輳監視部が、前記網端ゲートウェイの輻輳状態を複数段階に分類して検出し、前記新規呼抑制部が、前記輻輳監視部により検出された輻輳状態の段階に応じた抑制率で新規呼の抑制を行うことが好ましい。段階的に新規呼の抑制を行うことにより、重い輻輳が生じない限りは、できるだけ新規呼を生成できるようにすることが可能となり、ネットワーク資源を有効利用できるからである。
【0015】
上記の輻輳制御装置において、前記輻輳監視部が、前記網端ゲートウェイの通信中呼数をさらに利用して前記網端ゲートウェイの輻輳状態を検出することが好ましい。これにより、網端ゲートウェイの能力や現状を加味した輻輳制御が可能となるからである。
【0016】
上記の輻輳制御装置において、前記新規呼抑制部による新規呼の抑制が開始された後に、所定の条件が満たされると新規呼の抑制を解除する呼抑制解除部をさらに備えたことが好ましい。さらに、前記所定の条件が複数段階に設定され、前記呼抑制解除部が、満たされた条件の段階に応じた抑制率で新規呼の抑制を解除することが好ましい。段階的に新規呼の抑制を解除することにより、輻輳状態がすぐに再発してしまう事態を防止できるからである。
【0017】
本発明にかかる輻輳制御技術は、輻輳制御プログラムまたは輻輳制御方法としても実施可能である。
【0018】
以下、本発明のより具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
[第1の実施形態]
図1は、本実施形態にかかるIPテレフォニーシステムの全体の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態にかかるIPテレフォニーシステムにおいては、IPネットワーク1と、公衆交換電話網(PSTN)2とが、メディアゲートウェイ(MG)20を介して接続されている。なお、図1においては、メディアゲートウェイ20を1台のみ図示したが、1つのIPネットワーク1に複数台のメディアゲートウェイ20が設けられていてもよい。
【0020】
メディアゲートウェイ20は、公衆交換電話網2に対するIPネットワーク1の網端ゲートウェイであり、音声をインターネットプロトコルで取り扱い可能なディジタルデータ(パケット化されたデータ)に変換する。なお、メディアゲートウェイは、VoIPゲートウェイと呼ばれることもある。メディアゲートウェイ20は、スタンドアローン型の装置として実施することも可能であるが、ルータ等の既存のネットワーク周辺機器内にソフトウェアモジュールとして組み込まれることもある。
【0021】
メディアゲートウェイ制御サーバ10は、IPネットワーク1においてメディアゲートウェイ20に対する輻輳制御を行う。なお、本実施形態のメディアゲートウェイ制御サーバ10は、公衆交換電話網2に対するコールエージェントとしても機能するが、メディアゲートウェイ制御サーバ10の外部にコールエージェントが別途設けられた構成であっても良い。その場合は、メディアゲートウェイ制御サーバ10が、外部のコールエージェントから公衆交換電話網2への発呼を制御することとなる。
【0022】
IPネットワーク1は、共通線網3との通信を制御するSGC(Signaling Gateway Control)サーバ40と、IP電話60との通信を制御するSIP(Session Initiation Protocol)サーバ30とをさらに有している。SIPサーバ30とメディアゲートウェイ制御サーバ10との間のインタフェースとしては、例えば、SIP/UDP/IPプロトコルが用いられる。メディアゲートウェイ制御サーバ10とSGCサーバ40との間のインタフェースとしては、例えば、MTP3/UDP/IPプロトコルが用いられる。SGCサーバ40と共通線網3との間の通信は、例えばNo7/ISUPにしたがって制御される。メディアゲートウェイ制御サーバ10とメディアゲートウェイ20との間のインタフェースとしては、例えば、H.248/UDP/IPプロトコルが用いられる。
【0023】
また、図1では図示を省略しているが、IPネットワーク1には、NTP(Network Protocol)サーバや、ネットワークオペレーションに必要な機能(SNMP,FTP,TELNET等)を提供するEMインタフェース等の様々なインタフェースが組み込まれることが一般的である。
【0024】
以上の構成を有することにより、IPネットワーク1の加入者のIP電話60と、公衆交換電話網2の加入者の固定電話70との間で音声通話を行うことが可能となる。
【0025】
ここで、本実施形態にかかるメディアゲートウェイ制御サーバ10によるメディアゲートウェイ20の輻輳制御の動作手順の一例について、図2を参照しながら説明する。図2に示す例においては、メディアゲートウェイ制御サーバ10は、最初に、輻輳状態を検出するための閾値として、所定の時間を設定する(Op1o1)。この閾値は、メディアゲートウェイ制御サーバ10がメディアゲートウェイ20へ呼処理に関するリクエストコマンドを送信してからレスポンスを受信するまでの時間であって、この閾値を超えた場合に、メディアゲートウェイ20が輻輳していると判断するために用いられる。なお、輻輳状態を検出するための上記の閾値は、通常のIPプロトコルで、リクエストを出してからレスポンスを受信するまでのタイムアウト値として規定されている値よりも短い時間に設定することが好ましい。なお、このOp101は必須ではなく、閾値は初期値として適切に設定されており、必要な場合のみ閾値の変更を行うようにすれば良い。
【0026】
メディアゲートウェイ制御サーバ10は、メディアゲートウェイ20へ呼処理に関するリクエストコマンドを送信すると、それに対するレスポンスを受信するまでの時間を計測し、その時間が前記閾値を超えたかどうかを判断する(Op102)。レスポンス受信までの時間が閾値を超えた場合(Op102の判断結果がYes)、メディアゲートウェイ制御サーバ10は、メディアゲートウェイ20に対する新規呼を抑制する(Op103)。なお、上記のリクエストコマンドとしては、呼制御に関するリクエストコマンドであれば、任意のコマンドを用いることができる。例えば、VoIPのプロトコルとして普及しているMEGACO(H.248)であれば、AddReqeustコマンド、ModifyRequestコマンド、SubtractRequestコマンド等をOp102の判断に用いることができる。なお、呼制御に関するコマンドの全てを輻輳検出に利用しても良いし、輻輳検出に用いるコマンドを一部のコマンドのみに限定しても良い。
【0027】
なお、図2の例では、コマンド送信からレスポンス受信までの時間が閾値を超えたことを検出したらすぐに新規呼を抑制することとしているが、以下のような変形例も考えられる。例えば、コマンド送信からレスポンス受信までの時間が閾値を超えたことを所定の回数以上検出したときに、新規呼の抑制を実行してもよい。あるいは、コマンド送信からレスポンス受信までの時間が閾値を超えたことを、所定の時間内に所定の回数以上検出したときに、新規呼の抑制を実行するようにしてもよい。このように、新規呼の抑制を開始するための条件を若干厳しくすれば、比較的重い輻輳が生じるまでは新規呼が抑制されないので、通信パフォーマンスを維持できるという利点がある。
【0028】
また、Op102の処理の変形例として、レスポンス受信までの経過時間だけでなく、接続中の呼の数を加味して輻輳状態を検出しても良い。例えば、レスポンス受信までの経過時間に、その時点においてメディアゲートウェイ20で通信中の呼の数に所定の係数を乗じて得られた値を加算し、その結果を閾値と比較するようにしても良い。この検出手法によれば、新たに送られるリクエストコマンドの影響だけでなく、その時点にメディアゲートウェイ20で既に確立されている呼による負荷も加味した輻輳状態が検出できるという利点がある。
【0029】
Op103において新規呼の抑制処理を行うと、メディアゲートウェイ制御サーバ10は、新規呼の抑制を開始した時刻からの所定の時間が経過するまでウェイト状態となる(Op104)。そして、新規呼の抑制を開始してから所定の時間が経過すると、新規呼の抑制を緩和する(Op105)。このOp105においては、所定時間が経過したときに、新規呼の抑制を一切行わない(すなわち全ての新規呼を許可する)ようにしても良いし、時間経過に伴って段階的に抑制を緩和するようにしても良い。
【0030】
例えば、後者の例としては、一定時間が経過する毎に、抑制率を所定の割合だけ下げるようなアルゴリズムを採用してもよい。なお、新規呼の抑制率とは、呼のリクエストがあってもリクエストを出さずに破棄する率を意味するものとする。より具体的な例を示せば、例えば、図3に示すように、新規呼の抑制を開始した時点では、新規呼を一切出さない(抑制率100%)ものとし、それから所定の時間(T秒)が経過する毎に、抑制率を20%ずつ下げていくという方法がある。なお、Tの値も、抑制率を段階的に下げる割合も、この例に限定されず、任意に設定することができる。また、抑制率を段階的に下げている途中で再び輻輳状態を検出した場合は、抑制率を100%に戻すようにしてもよい。このように、新規呼の抑制を開始した後に、抑制率を段階的に下げていくことによって新規呼の抑制を解除する手法によれば、輻輳状態が十分に解消されるまでは新規呼の抑制を少なくとも部分的に行うことにより、輻輳によるパフォーマンス劣化を効果的に防止することができる。
【0031】
あるいは、Op103の新規呼の抑制についても、いきなり新規呼を100%抑制するのではなく、閾値との関係に応じて段階的な抑制を行うようにしてもよい。より具体的な例を示せば、例えば、図4に示すように、コマンド送信からレスポンス受信までの時間が所定の閾値の70%〜90%までの間を「一次輻輳状態」とし、この一次輻輳状態が検出されたら新規呼の一部(例えば30%)を抑制する。また、コマンド送信からレスポンス受信までの時間が所定の閾値の90%〜100%までの間を「二次輻輳状態」とし、この二次輻輳状態が検出されたら、新規呼の抑制率を一次輻輳状態よりも高い割合(例えば80%)とする。そして、コマンド送信からレスポンス受信までの時間が所定の閾値を超えたら、新規呼を100%抑制する。なお、ここで挙げた一次輻輳状態および二次輻輳状態の基準値と、それぞれの状態における抑制率の数値もあくまでも一例であり、任意の値への変更が可能である。また、より細かい段階設定によって新規呼の抑制を行うようにしてもよい。
【0032】
さらなる変形例として、新規呼の抑制を開始した後に、その後のメディアゲートウェイ20における通信状況に応じて新規呼抑制の解除を行うようにすることも考えられる。この変形例の一つの具体例を、図5を参照しながら説明する。例えば、Op103で新規呼抑制を開始した時点で、その時点におけるメディアゲートウェイ20において通信中の回線数を検出する。そして、新規呼抑制を開始した後に時間が経過し、通信中の回線数が、抑制開始時に対して所定の割合(例えば70%)を下回った時点で、新規呼の抑制率を所定の割合(例えば50%)まで引き下げる。そして、さらに時間が経過し、通信中の回線数が、抑制開始時に対してさらに低い割合(例えば50%)まで下がった時点で、新規呼の抑制を完全に解除する。なお、ここで挙げた通信中の回線数についての閾値およびそれぞれの時点における抑制率の数値もあくまでも一例であり、任意の値への変更が可能である。また、この変形例においても、より細かい段階設定によって新規呼抑制の解除を行うようにしてもよい。このように、新規呼の抑制を開始した後に、メディアゲートウェイ20の通信状況に応じて新規呼抑制の解除を行うことにより、メディアゲートウェイ20の能力や実際の通信状況に即した呼制御が可能となるので、ネットワーク資源の有効活用が図られるという利点がある。
【0033】
また、上記の変形例のさらなる具体例としては、図6に示すような段階的な抑制解除の方法も考えられる。例えば、Op103で新規呼抑制を開始した後に、メディアゲートウェイ20における通信中の回線数の総回線数に対する比率を、適宜のタイミングで検出する。そして、上記の比率が所定の割合(例えば70%)を下回った時点で、新規呼の抑制率を所定の割合(例えば50%)まで引き下げる。そして、上記の比率がさらに低い値(例えば50%)まで下がった時点で、新規呼の抑制を完全に解除する。なお、ここで挙げた上記比率についての閾値およびそれぞれの時点における抑制率の数値もあくまでも一例であり、任意の値への変更が可能である。また、この変形例においても、より細かい段階設定によって新規呼抑制の解除を行うようにしてもよい。
【0034】
また、上記の変形例のさらなる具体例としては、図7に示すような段階的な抑制解除の方法も考えられる。例えば、Op103で新規呼抑制を開始した後に、その時点におけるメディアゲートウェイ20において通信中の回線数を検出する。そして、新規呼抑制を開始した後に通信が終了した回線数をカウントし、通信が終了した回線数が所定数(例えば50回線)に到達した時点で、新規呼の抑制率を所定の割合(例えば50%)まで引き下げる。そして、さらに時間が経過し、通信が終了した回線数がさらに増えて所定数(例えば100回線)に達した時点で、新規呼の抑制を完全に解除する。なお、ここで挙げた、通信が終了した回線数についての閾値およびそれぞれの時点における抑制率の数値もあくまでも一例であり、任意の値への変更が可能である。また、この変形例においても、より細かい段階設定によって新規呼抑制の解除を行うようにしてもよい。
【0035】
以上に説明したように、第1の実施形態にかかるメディアゲートウェイ制御サーバ10は、メディアゲートウェイ20に対して呼制御に関するリクエストコマンドを出したときに、それに対するレスポンスの受信までの時間に基づいて、メディアゲートウェイ20の輻輳状態を判断する。そして、その判断結果に基づいてメディアゲートウェイ20への新規呼を抑制することにより、メディアゲートウェイ20の輻輳を効果的に防止し、かつ、輻輳が生じてもその輻輳を速やかに解消することができる。
【0036】
ここで、図8を参照し、上記の機能を実現するためのメディアゲートウェイ制御サーバ10の機能的構成例について説明する。図8に示すように、メディアゲートウェイ制御サーバ10は、コマンド発行部11と、レスポンス受信部12と、輻輳監視部13と、新規呼抑制部14と、呼抑制解除部15と、閾値記憶部16とを備えている。
【0037】
コマンド発行部11は、メディアゲートウェイ20、SIPサーバ30、SGCサーバ40に対する各種コマンドを生成し、これらのサーバへ送出する。コマンド発行部11からメディアゲートウェイ20へ発行されるコマンドには、前述したAddRequest等の、輻輳状態の検出に用いるリクエストコマンドが含まれる。
【0038】
レスポンス受信部12は、コマンド発行部11が発行したコマンドに対するレスポンスを受信する。輻輳監視部13は、コマンド発行部11が発行したコマンドに対するレスポンスを監視することにより、輻輳状態を検出する。特に、本実施形態にかかる輻輳監視部13は、Op102の処理を行う点に特徴がある。すなわち、本実施形態にかかる輻輳監視部13は、コマンド発行部11がコマンドを発行してから、レスポンス受信部12が当該コマンドへのレスポンスを受信するまでの時間を計測すると共に、計測された時間が所定の閾値以内であるか否かを判断することにより、メディアゲートウェイ20で輻輳が起きているかどうかを判断する。
【0039】
新規呼制御部14は、図2のOp103の処理を行う。すなわち、輻輳監視部13により、メディアゲートウェイ20の輻輳状態が検出されたときに、コマンド発行部11を介した新規呼の生成を抑制する。
【0040】
呼抑制解除部15は、図2のOp105の処理を行う。すなわち、新規呼抑制開始から所定の時間が経過した場合、あるいは、前記において各種変形例として説明したように、新規呼抑制を少なくとも部分的に解除して良いと判断された場合に、新規呼の抑制を解除する。
【0041】
閾値記憶部16は、メディアゲートウェイ制御サーバ10の処理で参照される各種の閾値を記憶するメモリである。
【0042】
なお、メディアゲートウェイ制御サーバ10は、スタンドアローン型のサーバとしても実施可能であるが、前述したとおり、サーバやルータ等の既存のネットワーク周辺機器上のソフトウェアモジュール(プログラム)としても実施可能である。すなわち、プロセッサによってプログラムを実行することにより、サーバやルータ等に図2に示すような機能ブロック群が実現される態様も、本発明の一実施形態に相当する。また、そのようなプログラムを格納した記憶媒体も、本発明の一実施形態に相当する。
【0043】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態について、以下に説明する。なお、第2の実施形態にかかる
メディアゲートウェイ制御サーバ10は、図9に示すとおり、メディアゲートウェイ20の輻輳状態の判断手法が異なる以外は、第1の実施形態と同様の処理を行い、その機能的構成も、第1の実施形態において図8に示した構成と同様である。
【0044】
すなわち、図9に示すとおり、本実施形態におけるメディアゲートウェイ制御サーバ10は、第1の実施形態において図2に示したOp102の代わりに、一定時間当たりにメディアゲートウェイ20へ送られるリクエストコマンドの量を所定の閾値と比較することにより、メディアゲートウェイ20の輻輳状態を検出する(Op202)。なお、Op202以外の処理は、第1の実施形態と同様であるので、他の処理の説明は省略する。また、第1の実施形態において説明した各種の変形例も、第2の実施形態に適用することが可能である。
【0045】
なお、Op202において検出されるリクエストコマンドの量とは、一定時間当たりのリクエストコマンドの数であっても良いし、リクエストコマンドのデータ量であっても良い。
【0046】
また、第2の実施形態の変形例として、リクエストコマンドの量だけでなく、接続中の呼の数を加味して輻輳状態を検出しても良い。例えば、一定時間当たりのリクエストコマンドの送信量に、その時点においてメディアゲートウェイ20で通信中の呼の数に所定の係数を乗じて得られた値を加算し、その結果を閾値と比較するようにしても良い。この検出手法によれば、新たに送られるリクエストコマンドの影響だけでなく、その時点にメディアゲートウェイ20で既に確立されている呼による負荷も加味した輻輳状態が検出できるという利点がある。
【0047】
以上、具体的な実施形態を例示したが、上述の実施形態およびその変形例は本発明を限定するものではなく、発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0048】
なお、上記の各実施形態に加えて、以下の付記を開示する。
【0049】
(付記1)
VoIPネットワークにおいて公衆交換電話網に対する網端ゲートウェイの輻輳を制御する輻輳制御装置であって、
当該輻輳制御装置から前記網端ゲートウェイへ呼処理に関するリクエストコマンドを発行するコマンド発行部と、
前記コマンド発行部から発行される前記リクエストコマンドを利用して前記網端ゲートウェイの輻輳状態を検出する輻輳監視部と、
前記輻輳監視部の検出結果にしたがって、前記網端ゲートウェイへの新規呼を抑制する新規呼抑制部とを備えたことを特徴とする輻輳制御装置。
【0050】
(付記2)
前記リクエストコマンドに対するレスポンスを受信するレスポンス受信部をさらに備え、
前記輻輳監視部が、前記リクエストコマンドの発行から、当該リクエストコマンドへのレスポンスの受信までの経過時間を閾値と比較することにより、前記網端ゲートウェイの輻輳状態を検出する、付記1に記載の輻輳制御装置。
【0051】
(付記3)
前記輻輳監視部が、前記コマンド発行部から前記網端ゲートウェイへの一定時間当たりのコマンド送信量を閾値と比較することにより、前記網端ゲートウェイの輻輳状態を検出する、付記1に記載の輻輳制御装置。
【0052】
(付記4)
前記輻輳監視部が、前記網端ゲートウェイの輻輳状態を複数段階に分類して検出し、
前記新規呼抑制部が、前記輻輳監視部により検出された輻輳状態の段階に応じた抑制率で新規呼の抑制を行う、付記1〜3のいずれか一項に記載の輻輳制御装置。
【0053】
(付記5)
前記輻輳監視部が、前記網端ゲートウェイの通信中呼数をさらに利用して前記網端ゲートウェイの輻輳状態を検出する、付記1〜4のいずれか一項に記載の輻輳制御装置。
【0054】
(付記6)
前記新規呼抑制部による新規呼の抑制が開始された後に、所定の条件が満たされると新規呼の抑制を解除する呼抑制解除部をさらに備えた、付記1〜5のいずれか一項に記載の輻輳制御装置。
【0055】
(付記7)
前記所定の条件が複数段階に設定され、
前記呼抑制解除部が、満たされた条件の段階に応じた抑制率で新規呼の抑制を解除する、付記6に記載の輻輳制御装置。
【0056】
(付記8)
VoIPネットワークにおいて公衆交換電話網に対する網端ゲートウェイの輻輳を制御する輻輳制御プログラムであって、
前記輻輳制御プログラムは、コンピュータのプロセッサに、
当該輻輳制御装置から前記網端ゲートウェイへ呼処理に関するリクエストコマンドを発行するコマンド発行処理と、
前記コマンド発行処理で発行される前記リクエストコマンドを利用して前記網端ゲートウェイの輻輳状態を検出する輻輳監視処理と、
前記輻輳監視処理の検出結果にしたがって、前記網端ゲートウェイへの新規呼を抑制する新規呼抑制処理とを実行させることを特徴とする輻輳制御プログラム。
【0057】
(付記9)
VoIPネットワークにおいて公衆交換電話網に対する網端ゲートウェイの輻輳を制御する輻輳制御方法であって、
コンピュータのプロセッサが、当該輻輳制御装置から前記網端ゲートウェイへ呼処理に関するリクエストコマンドを発行するコマンド発行ステップと、
前記プロセッサが、前記コマンド発行ステップで発行される前記リクエストコマンドを利用して前記網端ゲートウェイの輻輳状態を検出する輻輳監視ステップと、
前記プロセッサが、前記輻輳監視ステップの検出結果にしたがって、前記網端ゲートウェイへの新規呼を抑制する新規呼抑制ステップとを含むことを特徴とする輻輳制御方法。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、メディアゲートウェイの輻輳制御装置および輻輳制御プログラムならびに輻輳制御方法として、産業上の利用が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 IPネットワーク
2 公衆交換電話網(PSTN)
3 共通線網
10 メディアゲートウェイ制御サーバ(輻輳制御装置)
11 コマンド発行部
12 レスポンス受信部
13 輻輳監視部
14 新規呼抑制部
15 呼抑制解除部
16 閾値記憶部
20 メディアゲートウェイ(網端ゲートウェイ)
30 SIPサーバ
40 SGCサーバ
60 IP電話
70 固定電話

【特許請求の範囲】
【請求項1】
VoIPネットワークにおいて公衆交換電話網に対する網端ゲートウェイの輻輳を制御する輻輳制御装置であって、
当該輻輳制御装置から前記網端ゲートウェイへ呼処理に関するリクエストコマンドを発行するコマンド発行部と、
前記コマンド発行部から発行される前記リクエストコマンドを利用して前記網端ゲートウェイの輻輳状態を検出する輻輳監視部と、
前記輻輳監視部の検出結果にしたがって、前記網端ゲートウェイへの新規呼を抑制する新規呼抑制部とを備えたことを特徴とする輻輳制御装置。
【請求項2】
前記リクエストコマンドに対するレスポンスを受信するレスポンス受信部をさらに備え、
前記輻輳監視部が、前記リクエストコマンドの発行から、当該リクエストコマンドへのレスポンスの受信までの経過時間を閾値と比較することにより、前記網端ゲートウェイの輻輳状態を検出する、請求項1に記載の輻輳制御装置。
【請求項3】
前記輻輳監視部が、前記コマンド発行部から前記網端ゲートウェイへの一定時間当たりのコマンド送信量を閾値と比較することにより、前記網端ゲートウェイの輻輳状態を検出する、請求項1に記載の輻輳制御装置。
【請求項4】
前記輻輳監視部が、前記網端ゲートウェイの輻輳状態を複数段階に分類して検出し、
前記新規呼抑制部が、前記輻輳監視部により検出された輻輳状態の段階に応じた抑制率で新規呼の抑制を行う、請求項1〜3のいずれか一項に記載の輻輳制御装置。
【請求項5】
前記輻輳監視部が、前記網端ゲートウェイの通信中呼数をさらに利用して前記網端ゲートウェイの輻輳状態を検出する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の輻輳制御装置。
【請求項6】
VoIPネットワークにおいて公衆交換電話網に対する網端ゲートウェイの輻輳を制御する輻輳制御プログラムであって、
前記輻輳制御プログラムは、コンピュータのプロセッサに、
当該輻輳制御装置から前記網端ゲートウェイへ呼処理に関するリクエストコマンドを発行するコマンド発行処理と、
前記コマンド発行処理で発行される前記リクエストコマンドを利用して前記網端ゲートウェイの輻輳状態を検出する輻輳監視処理と、
前記輻輳監視処理の検出結果にしたがって、前記網端ゲートウェイへの新規呼を抑制する新規呼抑制処理とを実行させることを特徴とする輻輳制御プログラム。
【請求項7】
VoIPネットワークにおいて公衆交換電話網に対する網端ゲートウェイの輻輳を制御する輻輳制御方法であって、
コンピュータのプロセッサが、当該輻輳制御装置から前記網端ゲートウェイへ呼処理に関するリクエストコマンドを発行するコマンド発行ステップと、
前記プロセッサが、前記コマンド発行ステップで発行される前記リクエストコマンドを利用して前記網端ゲートウェイの輻輳状態を検出する輻輳監視ステップと、
前記プロセッサが、前記輻輳監視ステップの検出結果にしたがって、前記網端ゲートウェイへの新規呼を抑制する新規呼抑制ステップとを含むことを特徴とする輻輳制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−178185(P2010−178185A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20355(P2009−20355)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】