説明

農作業機の自動操向制御装置

【課題】本発明では、発信機と受信機等の通信機器を設けることなく、圃場に凹凸が有っても自動的に直進走行になるように制御する自動制御の操向制御装置を設けることで、農作業機を運転して農作業を行う作業者の労力を軽減し効率的作業を行えるようにすることが課題である。
【解決手段】走行装置を操向する操向制御装置と機体の進行方向を検出する進行方向検出手段を機体に設け、該進行方向検出手段が直進からずれたことを検出すると操向制御装置を直進に修正すべく制御したことを特徴とする農作業機の自動操向制御装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、苗移植機やコンバイン等の農作業機における走行方向を自動的に制御する操向制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用型田植機やコンバイン等の農作業機は、圃場を直線的に走行しながら苗の植付や穀稈の刈取作業を行うのであるが、圃場に凹凸が有るために、作業者はハンドル等の操向装置から手を離すことなく走行方向が曲がらないように操向装置を操作していなければならず、操向操作と植付状態や穀稈の刈取状態の監視等の複数の作業を同時に行わなければならない。
【0003】
このような農作業機での農作業の労力を軽減するために、例えば、特開2004−148974号公報には、乗用型田植機において、進行方向前方の畦に設置されている発信器からの発信波を機体に設けた受信器で受信し、操向制御装置が操向用シリンダを制御して進行方向を修正しながら発信器に向けて自動的に直進するようにしている。そして、乗用型田植機が自動直進で直進中(進路が適切で機体が直進している時)には、操向制御装置により、操向用シリンダを少しだけ小刻みに往復作動させて、左右前輪が左右方向に小刻みに操向されるように制御する技術手段が記載されている。
【0004】
これは、操向輪である左右前輪を直進の状態(左右前輪が機体と平行な状態)から、左右交互に小刻みに操向させてやると、圃場の凹凸の影響を左右前輪があまり受けなくなって、直進し易くなるとの実験結果に基づくものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−148974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の従来技術は、走行方向前方の畦に発信機を設置する必要が有り、しかも農作業機が畦に達した後に隣の圃場を作業走行する場合には発信機を隣に移さなければならず、作業効率が悪い。
【0007】
そこで、本発明では、発信機と受信機等の通信機器を設けることなく、圃場に凹凸が有っても自動的に直進走行になるように制御する自動制御の操向制御装置を設けることで、農作業機を運転して農作業を行う作業者の労力を軽減し効率的作業を行えるようにすることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は次の構成によって達成される。
すなわち、請求項1記載の発明では、走行装置9を操向する操向制御装置130と機体の進行方向を検出する進行方向検出手段132を機体に設け、該進行方向検出手段132が直進からずれたことを検出すると操向制御装置130を直進に修正すべく制御したことを特徴とする農作業機の自動操向制御装置とした。
【0009】
この構成で、進行方向検出手段132で走行方向を判断して操向制御装置130が走行装置9を直進に自動で制御して農作業を行える。
また、請求項2記載の発明では、進行方向検出手段13が進行方向に対する加速度を検出する角速度センサ132で、設定進行方向と異なる走行方向が検出されると操向制御装置130が走行方向を設定進行方向へ戻すように操向修正制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の農作業機の自動操向制御装置とした。
【0010】
この構成で、直進となる走行設定方向と異なる走行方向を角速度センサ132が検出すると、操向制御装置130が元の走行設定方向へ走行するよう操向修正制御が出力されて直進状態を維持する。
【0011】
また、請求項3記載の発明では、人為操向装置34の操作入力によって、進行方向検出手段132の検出する進行方向による操向制御装置130の操向修正制御が中断すべくしたことを特徴とする請求項1に記載の農作業機の自動操向制御装置とした。
【0012】
この構成で、作業者が人為操向装置34を操作すると、その人為操向操作が優先して制御処理されて操向制御装置130の直進走行制御が中断され、作業者の意思に従った操向を行える。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明では、機体に設けた進行方向検出手段132で進行方向が既に設定した直進方向と違うと操向制御装置130が走行装置9を制御して直進方向へ戻すので、従来の如く発信機と受信機等の通信機器を設ける必要が無い。
【0014】
請求項2記載の発明では、進行方向検出手段132として角速度センサ132を用いることで、進行方向が既に設定した走行設定方向と違うことを敏感に検出でき、正確に直進走行を維持できる。
【0015】
請求項3記載の発明では、作業者が人為操向装置34を操作すると、その操向操作に従って操向制御装置130が直進走行制御を中止するように制御されるので、作業者が旋回、危険回避、突発事態に機敏に対処できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例の乗用型田植機の側面図である。
【図2】本発明の実施例の乗用型田植機の平面図である。
【図3】本発明の実施例の乗用型田植機の操向操作に連動する後輪のクラッチ作動機構図である。
【図4】後輪支持部の拡大側面図である。
【図5】図4の部分拡大側面図である。
【図6】図5の部分拡大側断面図である。
【図7】前輪支持部の部分拡大正断面図である。
【図8】油圧無段変速装置の油圧回路図である。
【図9】操向制御の制御ブロック図である。
【図10】操向制御の制御フローチャート図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の農作業機として乗用型田植機の実施例で説明する。
図1及び図2は、施肥装置を装着した乗用型田植機の側面図と平面図である。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0018】
走行車体2は、走行装置9として、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪軸10aに左右前輪10,10が各々取り付けられている。
【0019】
また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸19に後輪11,11が取り付けられている。
【0020】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及び油圧式無段変速装置23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ミッションケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって苗植付部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。
【0021】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0022】
エンジン20の回転動力は、ベルト伝動装置21などを介して油圧式無段変速装置23に伝えられ、この油圧式無段変速装置23からの出力はベルト(図示せず)を介してミッションケース12の図示しない入力軸に伝えられる。
【0023】
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38,38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。
苗植付部4は、走行車体2のメインフレーム15に昇降リンク装置3で昇降自在に装着されているが、その昇降させる構成と苗植付部4の構成について説明する。先ず、走行車体2に基部が回動自在に設けられた一般的な昇降油圧シリンダ46(図1)のピストン上端部を昇降リンク装置3に連結し、走行車体2に設けた油圧ポンプ(図示せず)により昇降油圧シリンダ46に圧油を供給・排出して、昇降油圧シリンダ46のピストンを伸進・縮退させて昇降リンク装置3に連結した苗植付部4が上下動されるように構成されている。
【0024】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これら上リンク40と下リンク41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に苗植付部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として苗植付部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0025】
苗植付部4は8条植の構成で、フレームを兼ねる苗植付伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分ずつ各条の苗取出口51a、・・・に供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51a、・・・に供給すると苗送りベルト51b・・・により苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51a・・・に供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52・・・、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ47等を備えている。
【0026】
苗植付部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にミドルフロート57とサイドフロート56がそれぞれ設けられている。これらセンターフロート55とミドルフロート57とサイドフロート56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、それぞれが泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52・・・により苗が植付けられる。各センターフロート55とミドルフロート57とサイドフロート56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサ(図示せず)により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り換えて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。
【0027】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61、・・・によって一定量ずつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62・・・でセンターフロート55とミドルフロート57とサイドフロート56の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示せず)・・・まで導き、施肥ガイド・・・の前側に設けた作溝体(図示せず)・・・によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62・・・に吹き込まれ、施肥ホース62、・・・内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0028】
苗植付部4には整地装置の一例であるサイドロータ27aとセンタロータ27bが取り付けられている。
苗載台51は苗植付部4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65の支持ローラ65aをレールとして左右方向にスライドする構成である。
【0029】
サイドロータ27aとセンタロータ27bは、次のような支持構造に支持されている。すなわち苗載台51の前記支持枠体65の両側辺部材65bに上端を回動自在に支持された梁部材66と該梁部材66の両端に固着した支持アーム67と該支持アーム67に回動自在に取り付けられたロータ支持フレーム68が設けられ、該ロータ支持フレーム68の下端にはサイドロータ27aとセンタロータ27bの駆動軸70a,70bが取り付けられている。また該ロータ支持フレーム68の下端部近くは苗植付伝動ケース50に回動自在に取り付けられた連結部材71に連結している。
【0030】
センターフロート55とミドルフロート57とサイドフロート56との配置位置の関係でセンターフロート55の前方にあるセンタロータ27bはサイドフロート56とミドルフロート57の前方にある各サイドロータ27aより前方に配置されている。そのためサイドロータ27aの駆動軸70aへの動力は後輪11のギヤケース18内のギヤから伝達され、センタロータ27bの駆動軸70bへは両方のサイドロータ27aとセンタロータ27bの駆動軸70a,70aの車体内側の端部からそれぞれ動力が伝達される。
【0031】
また、センタロータ27bは梁部材66に上端部が支持された一対のリンク部材76,77によりスプリング78を介して吊り下げられている。
また、ロータ上下位置調節レバー81の下端部には折曲片82が固着されており、該折曲片82は支持枠体65に回動自在に支持されている。そしてロータ上下位置調節レバー81が車両の左右方向に回動操作されると、支持枠体65の両側辺部材65bに回動自在に支持された梁部材66に固着支持された突出部66aの近くを折曲片82が上下に回動する。折曲片82は前記突出部66aの下方を係止しているので、該突出部66aがレバー81の機体右方向の回動で、上向きに梁部材66を中心として回動する。該突出部66aの前記回動により第一リンク部材76の梁部材66との連結部と反対側の端部も梁部材66を中心として上向きに回動する。この第一リンク部材76の上方への回動により第二リンク部材77とスプリング78を介してセンタロータ27bを上方に上げることができる。センタロータ27bを上方に移動させると、駆動軸70bと駆動軸70aを介してサイドロータ27aも同時に上方に移動する。
【0032】
なお、ロータ上下位置調節レバー81は車体2のほぼ中央部に設けているので、サイドロータ27aとセンタロータ27bの上下動を行う場合に左右のバランスを取りやすい。
また、苗植付部4を圃場に下げたときに、苗植付部4を水平位置に戻すケーブル45をセンタロータ27bのリンク部材76,77とスプリング78等からなる引上げスプリング部と昇降油圧シリンダ46と連動させた。
【0033】
このように、センタロータ27bのスプリング78等によるスイング機構の他にケーブル45を設けることで苗植付部4を上昇位置から下降させるごとにセンタロータ27bを水平位置に戻すことができ、センタロータ27bの保持位置を安定化させることができる。
【0034】
サイドロータ27aとセンタロータ27bの全てに回転センサを設けて、苗の植え付け作業時にどれかのロータが回転していないことを検出すると、苗植付部4を上昇させて走行を停止し、警告ランプや警報で作業者に故障発生を知らせるようにしても良い。
【0035】
図3の平面図には、図1の乗用型田植機の操向操作に連動する後輪11のサイドクラッチ作動機構図を示す。
ハンドル34で旋回動作させる際に、ハンドル34の操作により作動するピットマンアーム141に出力軸140を介して作動ローラ142を連動させ、該作動ローラ142に従動体143を連動させて左右の後輪11の伝動軸のサイドクラッチ操作アーム147を作動させるクラッチ連動用の左右ロッド144が設けられているが、該クラッチ連動用左右ロッド144とサイドクラッチ操作アーム147との間は左プルシリンダ137Lと右プルシリンダ137Rで連結した構成となっている。
【0036】
また、左右のサイドクラッチ操作アーム147は、前記左プルシリンダ137Lと右プルシリンダ137Rで旋回時に内側の後輪11への伝動軸のサイドクラッチを切るよう作動制御用の制御用電磁バルブ135(図9)を備えている。
【0037】
図4と図5に示すように、後輪ギヤケース18は、後輪11の後輪車軸19より前側の回動支点軸P回りに上下回動可能に構成している。走行フレーム16には後輪ギヤケース18を下方に向けて回動付勢する圧縮スプリング17を設けてあり、通常の走行時には機体の自重で圧縮スプリング17が縮んで後輪11が上限状態となり、機体の前進で後輪11に所定以上の駆動負荷が生じたときにはその駆動反力により後輪ギヤケース18が下側へ回動して後輪11が下動状態となるよう構成して後輪サスペンション機構3Sを構成している。
【0038】
また、前記後輪ギヤケース18は、後輪車軸19を挟む位置で上下に分割して半割アッパーケース18aと半割ロワーケース18bとからなる構成としてあり、回動支点軸Pを半割ロワーケース18b側に設定すると共に、半割アッパーケース18a側には、独立スイングのストッパー部24を進行方向前側に設けた構成としている。
【0039】
さらに、走行フレーム16には、後輪車軸19の上下位置を検出する後輪上下位置センサ39を設け、走行フレーム16のフレームばね座94に設ける後輪押圧ソレノイド49で半割アッパーケース18aの突起29にロッド54を当てて後輪11の上下動を規制するようにしている。また、図6に詳細を示す如く、フレームばね座94と半割アッパーケース18aのケースばね座89の間に外ばね17aを設け、この外ばね17aの内側にフレームばね座94と後輪調圧ソレノイド93のロッド先端ばね座88との間に内ばね17bを設けて、後輪車軸19すなわち後輪11を弾発支持し、後輪調圧ソレノイド93の作動で内ばね17bが作用したり作用しなくしたりすることで後輪11の弾発力を硬軟に変更可能にしている。
【0040】
なお、回動支点軸Pは、走行フレーム16から下方に突設するブラケット73に軸支してあり、且つ、後輪11の外径内に設定している。要するに、左右後輪11,11の後輪ギヤケース18は、圧縮ススプリング17を介して回動支点軸P回りに左右独立的にスイングする後輪サスペンション機構3Sとしている。
【0041】
次に、図7により左右の前輪10,10を昇降可能に支持する前輪サスペンション機構2Sを説明する。
左右の前輪ファイナルケース13,13内には左右前輪駆動軸74,74を軸架し、左右前輪ファイナルケース13,13の左右端部には左右縦筒体部75a,75aを設け、この縦筒体部75a,75aに左右前輪支持ケース80,80を外嵌合し、縦軸回りに回動自在で、且つ、上下動自在に支持している。左右前輪支持ケース80,80内には左右第二前輪駆動軸79,79を軸架し、左右前輪支持ケース80,80の下部には左右前輪軸10a,10aを介して左右前輪10,10を支架している。
【0042】
また、この左右第二前輪駆動軸79,79の上部を縦筒体部75a,75aに挿入し、左右前輪駆動軸74,74側の第一ベベルギヤG1と左右第二前輪駆動軸79,79に上下動自在にスプライン嵌合した第二ベベルギヤG2とを噛み合わせ、左右第二前輪駆動軸79,79の下端部の第三ベベルギヤG3と左右前輪軸10a,10aの第四ベベルギヤG4,G4とを噛み合わせている。また、縦筒体部75a,75aの上部空間筒部83a,83aにばね84,84を内装し、左右第二前輪駆動軸79,79を下方に押圧付勢し、左右前輪支持ケース80,80が上下動しても左右前輪10,10に動力を伝達するように構成している。
【0043】
左右前輪ファイナルケース13,13と左右前輪支持ケース80,80との間に左右前輪支持ケース80,80の上下動で前輪10の動きを検出する前輪上下位置センサ69を設け、左右縦筒体部75a,75aの上端に前輪調圧ソレノイド85を設けてこの前輪調圧ソレノイド85のロッド先端ばね座86と第二前輪駆動軸79の上端ばね座87との間に設ける内ばね84bと縦筒体部75aに内装する外ばね84aで第二前輪駆動軸79を弾発支持し、前輪調圧ソレノイド85の作動の作動で内ばね84bが作用したり作用しなくしたりすることで前輪10の弾発力を硬軟に変更可能にして前輪サスペンション機構2Sを構成している。
【0044】
前記の後輪サスペンション機構3Sと前輪サスペンション機構2Sで、後輪11と前輪10の昇降の硬さを変更出来るのであるが、その調整は、次の如く行う。
畦クラッチを切った場合には、後輪サスペンション機構3Sを軟らかくし、旋回時に苗植付部4を自動的に昇降するオートリフト制御時には、後輪サスペンション機構3Sを硬くし、植付作業中に後輪11のローリングが多いと、後輪サスペンション機構3Sを軟らかくし、後進時には機体の前側が沈みこむことを防ぐために、機体の前側を最も上昇させて前輪サスペンション機構2Sを作用しないように固定すると共に、後輪サスペンション機構3Sを軟らかくするか最も短くする。
【0045】
また、前輪サスペンション機構2Sと後輪サスペンション機構3Sの作動頻度が多いと、圃場が固いので、前輪サスペンション機構2Sと後輪サスペンション機構3Sを共に軟らかくし、枕地植付け以外でもサイドロータ27aとセンタロータ27bを下げる。
【0046】
尚、前輪サスペンション機構2Sと後輪サスペンション機構3Sに圧縮空気を使ったエアサスペンションを採用した場合も、畦クラッチを切った場合や旋回時に苗植付部4を自動的に昇降するオートリフト制御時や左右の線引きマーカ47を旋回時に作用位置に回動する自動線引きマーカ制御を切った時には、エアサスペンションを軟らかくし、さらに、旋回時に自動で苗植付部4を昇降し植付を開始する場合にも、エアサスペンションを軟らかくする。
【0047】
本実施例の田植機の変速装置は従来周知の可変容量型の油圧ポンプ91と油圧モータ92を閉回路状にオイルが循環する油圧回路で接続した油圧式無段変速装置23を備えているが、その油圧回路構成を図8に示す。
【0048】
油圧式無段変速装置23は可動斜板95付きの可変容量型油圧ポンプ91と可変容量型油圧モータ92を備え、該油圧式無段変速装置23にはエンジン20からの出力が入力軸(図示せず)を経由して油圧ポンプ91に入り、油圧ポンプ91の可動斜板95の傾斜角度を調整することで油圧ポンプ91からの作動油の吐出量がコントロールされる。油圧ポンプ91の可動斜板95を回転させて吐出された作動油は油圧モータ92に回路96,97からなる閉回路を介して送油される。前記閉回路は油圧ポンプ91の斜板95の傾斜角度に応じて回路96,97の一方が高圧側油路になり、他方が低圧側油路になる。
【0049】
また回路96と回路97の中間部を結ぶバイパス油路99を有しており、該バイパス油路99には高圧側油路と低圧側油路を連通または遮断する切換バルブ101を備えている。さらに、回路96に一方向弁106を経由する油路107と回路97に一方向弁109を経由する油路110を設け、該油路107又は油路110にはオイルタンク102から潤滑油を補充するために油圧ポンプ112を備えたチャージ圧用の油路113が設けられている。
【0050】
油圧式無段変速装置23は油圧ポンプ91の吐出油圧を制御する傾斜角度を変更するように斜板95を設けているが、該斜板95と一体のトラニオン軸を備えた可変容量型油圧ポンプ91と可変容量型油圧モータ92の間に油圧式無段変速装置閉回路を形成しており、該油圧式無段変速装置23のトラニオン軸を作動させる作動用シリンダ117でその回動角度を設定できる構成である。
【0051】
作動用シリンダ117は油圧制御バルブ118によりシリンダピストン117aの作動油圧量を調整することでシリンダ117の駆動制御をしている。
また、油圧式無段変速装置23の閉回路の可変容量型油圧ポンプ91と可変油圧モータ92の並列位置に該油圧式無段変速装置23の閉回路へ作動油を循環供給する方向を矢印A方向又はA方向の逆方向に切替るシャトル弁120を有する油路121を設けている。該シャトル弁120のスプールが中立位置にあると油路121は開放して油圧モータ92から作動油が吐出しない構成である。
【0052】
シャトル弁120は前後進切替レバー123の操作位置に連動してシャトル弁120の切換が行われる構成になっている。すなわち、前後進切換レバー123の回動支点123aの延長部の端部には該レバー123の回動角度に応じて張力が変化するようにスプリング124の一端が取り付けられている。該スプリング124の他端にはレバー125が固定され、該レバー125の中央に設けた支点125aを中心にしてレバー固定部の反対側のレバー端部には負荷シリンダ127のピストン押圧部が接続している。また負荷シリンダ127のピストン127aにより作動油が吐出する側の壁面にはシーケンス弁128を経由して前記シャトル弁120に接続する油路129が設けられている。
【0053】
シーケンス弁128はある一定以上の油圧式無段変速装置23の回路内の油圧にならないと負荷シリンダ127を作動させない構成になっている。また、前後進レバー123の操作荷重は全領域で一定となるようにレバー125の長さとレバー125の支点125aの位置、負荷シリンダ127の作動圧、スプリング124の付勢力などが決められている。
【0054】
上記構成からなる負荷制御機構では、油圧式無段変速装置23のトラニオン軸の作動用シリンダ117がトラニオン軸(斜板)を中立位置に保持していると、シャトル弁120も中立位置に保持され、前後進切換レバー123には油圧式無段変速装置23からは作動油が供給されない。一方トラニオン軸・斜板95を作動させる作動用シリンダ117がトラニオン軸すなわち可動斜板95を中立位置から前進側又は後進側に傾けると油圧式無段変速装置23の閉回路内の作動油がシャトル弁120にも供給され、次いでシーケンス弁128が開放すると負荷シリンダ127内に作動油が供給され、負荷シリンダ127からの圧力でレバー123が支点123aを中心に揺動し、前後進切換レバー123の前進側又は後進側への操作に所定の負荷が掛かるようになっている。
【0055】
可変容量型油圧モータ92のモータ容量変更は、モード設定によって次の如く変更する。省エネモードでは、モータ容量を可変容量型油圧ポンプ91のポンプ容量よりも少なくなるように制御し、通常モードでは、モータ容量を可変容量型油圧ポンプ91のポンプ容量と等しくなるように制御し、湿田モードでは、モータ容量を可変容量型油圧ポンプ91のポンプ容量よりも多くなるように制御する。
【0056】
省エネモードに設定することで、油圧式無段変速装置23を最も効率の良い範囲で作動させて低燃費にすることが出来て、路上走行時等に使用する。通常モードは、急激な走行速度の変化を無くして、通常の圃場での植付作業に使用する。また、湿田モードは、湿田の圃場での植付作業に使用し、走行負荷の増大による油圧回路の高圧化でのオイル漏れを防ぐことになる。
【0057】
回路96、97に圧力センサを設けて、その圧力センサの検出圧力で、前記モードのどれを選択するのが良いかを、操作盤33に表示するようにしても良い。
図9は、操向制御に関わる制御ブロック図で、操向制御装置130への入力信号は、ハンドル34の左右切れ角を検出するハンドル切れ角センサ131からの切れ角信号と、角速度センサ132からの機体の進行方向信号と、直進スイッチ133からの直進設定信号と、調整モードを設定する調整モード設定スイッチ134の設定信号とである。
【0058】
また、制御装置130からは、制御用電磁バルブ135に右プルシリンダ137Rと左プルシリンダ137Lの作動信号が出力され、ブザー136に値移動信号が出力される。
操向制御は、図10の如く、ステップS1で直進スイッチ133のオンを検出すると、ステップS2で走行を開始し、ステップS3でハンドル34が左右に2°以上旋回操作されないと判定すると、ステップS4で進行方向が設定方向から左に2°以上傾くとステップS5で右サイドクラッチを切って右に旋回し、ステップS6で進行方向が設定方向から右に2°以上傾くとステップS7で左サイドクラッチを切って左に旋回する。
【0059】
ステップS3で判定がYESつまりハンドルを左右どちらかに2°以上回すとステップS4以降の制御を行わず、ハンドルの回し角度に従って走行装置9を旋回させる。
また、ステップS4で判定がNOであればステップS6の判定に移行し、ステップS6で判定がNOであればリターンする。
【0060】
尚、角速度センサ132が本発明の進行方向検出手段であるが、地球上の方位を表示するコンパスで進行方向検出手段を構成しても良い。
なお、調整モード設定スイッチ133をオンして走行試験を行い、ハンドル切れ角センサ131からの旋回操作信号が入力されないのに角速度センサ132が左右どちらかに進行方向が3°以上傾いたら、ブザー136を鳴らして旋回連繋機構Aの調整が必要なことを知らせるようにする。
【符号の説明】
【0061】
9 走行装置
34 人為操向装置(ハンドル)
130 操向制御装置
132 進行方向検出手段(角速度センサ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(9)を操向する操向制御装置(130)と機体の進行方向を検出する進行方向検出手段(132)を機体に設け、該進行方向検出手段(132)が設定進行方向からずれたことを検出すると操向制御装置(130)を設定進行方向に修正すべく制御したことを特徴とする農作業機の自動操向制御装置。
【請求項2】
進行方向検出手段(132)が進行方向に対する加速度を検出する角速度センサ(132)で、設定進行方向と異なる走行方向が検出されると操向制御装置(130)が走行方向を設定進行方向へ戻すように操向修正制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の農作業機の自動操向制御装置。
【請求項3】
人為操向装置(34)の操作入力によって、進行方向検出手段(132)の検出する進行方向による操向制御装置(130)の操向修正制御が中断すべくしたことを特徴とする請求項1に記載の農作業機の自動操向制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−184676(P2010−184676A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31589(P2009−31589)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】