農作業機
【課題】走行機体に動力を供給する動力源の駆動及び走行機体に連結してある作業機の作動を制御する複数の制御方法を適宜選択し、操作性及び利便性を向上させることができる農作業機を提供する。
【解決手段】耕耘機制御装置は前記作業モード切替スイッチが押下されたことを示す信号が入力され(ステップS1)該スイッチにより選択された作業モードが通常モードであるときは(ステップS2)所定のランプを点灯させて通常モードでの制御を行う(ステップS3、S4、S5)。選択された作業モードが枕地モードであるときは(ステップS6)所定のランプを点灯させて枕地モードでの制御を行う(ステップS7、S8、S9)。選択された作業モードが走行モードであるときは(ステップS6)所定のランプを消灯させて走行モードでの制御を行う(ステップS10、S11、S12)。
【解決手段】耕耘機制御装置は前記作業モード切替スイッチが押下されたことを示す信号が入力され(ステップS1)該スイッチにより選択された作業モードが通常モードであるときは(ステップS2)所定のランプを点灯させて通常モードでの制御を行う(ステップS3、S4、S5)。選択された作業モードが枕地モードであるときは(ステップS6)所定のランプを点灯させて枕地モードでの制御を行う(ステップS7、S8、S9)。選択された作業モードが走行モードであるときは(ステップS6)所定のランプを消灯させて走行モードでの制御を行う(ステップS10、S11、S12)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体に動力を供給する動力源の駆動及び走行機体に連結してある作業機の作動を制御する複数の制御方法を、走行状態に応じて適宜選択し、操作性及び利便性を向上させることができる農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の農作業機には、走行機体と、該走行機体に装着されている農作業のための作業機、例えば土壌を耕耘するロータリ耕耘機とを設けてあり、また農作業を行うための、前記走行機体に動力を供給する動力源の駆動及び前記ロータリ耕耘機の作動を制御する複数の制御方法を実行する制御手段とを設けてある。また複数の制御方法を個別に手動で設定するための設定スイッチ群を設けてあり、前記各制御方法を一括して選択する選択スイッチを設けてある。
通常の耕耘作業をする場合には、前記選択スイッチをオンにして、前記制御手段により、複数の前記制御方法の全てを制御し(以下、前記制御方法の全てを、自動で制御することを通常モードという。)、路上を走行する場合には、前記選択スイッチをオフにして前記設定スイッチ群を操作し、前記制御手段により、複数の制御方法の全てを手動で制御していた(以下、前記制御方法の全てを手動で制御することを走行モードという。)。
【0003】
また、前記通常モード及び走行モードに加え、前記通常モードに採用されている複数の制御方法の内、プラウを牽引するときに必要な制御方法を自動で制御し、他の制御方法を、設定スイッチ群からの出力に基づいて手動で制御する半自動の牽引モードを設定してある制御手段を設け、選択スイッチにより、前記通常モード、牽引モード、及び走行モードを選択する農作業機も提案されている。
【0004】
該農作業機においては、前記通常モード、牽引モード、及び走行モードの切替えを選択スイッチにより行い、操作者の操作性及び利便性を向上させていた(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004―159620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて前記通常モード及び牽引モードには、走行機体を旋回させたときに、旋回を妨げないために前記ロータリ耕耘機を上昇させる制御方法(以下旋回上昇制御という。)及び走行機体を後進させたときに、後進を妨げないために前記ロータリ耕耘機を上昇させる制御方法(以下後進上昇制御という。)が含まれている。
【0006】
一般に圃場での作業は、圃場の中央部分にあたる隣接地及び圃場の周縁部分にあたる枕地での作業に大別され、隣接地での作業は、前記ロータリ耕耘機により土壌の耕耘を行うと共に前進し、枕地に至ったときに走行機体を旋回させて前記旋回上昇制御を行い、また後進したときに前記後進上昇制御を行う必要があるので、一連の作業を円滑に行うために通常モードで制御される。
一方枕地での作業は、畦畔付近において前記ロータリ耕耘機を下降させた状態で、走行機体を旋回又は前後させて前記ロータリ耕耘機の作業位置を調整するので、前記通常モードに採用されている複数の制御方法の内、前記旋回上昇制御及び後進上昇制御を除いた制御方法を自動で制御する半自動の枕地モードで制御することが望ましい。
【0007】
特許文献1に記載の農作業機を使用して枕地での作業を行う場合には、操作者が、前記通常モードから前記旋回上昇制御及び後進上昇制御を除くか、又は前記走行モードに枕地
での作業に必要な制御方法を追加する必要があり、操作者の操作性及び利便性を十分に向上させているとはいえない。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、作業機の姿勢を水平に制御する水平制御手段と、前記動力源のトルク特性を制御するエンジン特性制御手段と、作業機が耕耘する土壌の深さを制御する耕耘深さ制御手段と、前記走行機体を後進させたときに前記作業機を上昇させる後進上昇制御手段と、前記走行機体を旋回させたときに前記作業機を上昇させる旋回上昇制御手段と、前記走行機体を旋回させたときに、前記走行機体の速度を減速させる減速旋回制御手段とを設け、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段にそれぞれ制御させるか否かを選択するための選択手段を設け、該選択手段の操作により、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させる決定をするか、前記後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させて、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、及び耕耘深さ制御手段に制御を実行させない決定をするか、又は前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させない非制御の決定をする決定手段を設けることにより、前記選択手段、例えばスイッチを操作して、隣接地では通常モードとしての自動制御を選択し、前記各制御を自動で行い、枕地又は路上では、枕地モードとしての制御又は走行モードとしての手動制御を選択して、前記旋回上昇制御及び後進上昇制御が自動で行われることを回避し、操作者の操作性及び利便性を向上させることができる農作業機を提供することを目的とする。
【0009】
また前記走行機体の速度を検出する速度センサと、設定された変速段を示す信号を出力する変速段出力手段とを設けることにより、操作者が前記通常モード又は枕地モードから走行モードに切替えずに、路上を走行している場合であって、前記速度センサから所定速度以上の速度を示す出力を取込んだとき又は前記変速段出力手段から高速段を示す出力を取込んだときに、前記走行モードに切替えて制御し、操作者の操作性及び利便性を向上させることができる農作業機を提供することを目的とする。
【0010】
また前記速度センサの出力又は前記変速段出力手段の出力に基づいて前記走行モードに切替えた場合であって、前記速度センサから所定速度以上の速度を示す出力を前記決定手段が取込んだとき又は前記変速段出力手段から高速段を示す出力を取込んだときに、前記走行モードへの切替えを維持する手段を前記決定手段に設けることにより、前記走行機体が路上を走行している間は前記走行モードで制御し、走行中に操作者の意図しない前記旋回上昇制御又は後進上昇制御が行われることを防止できる農作業機を提供することを目的とする。
【0011】
また前記速度センサの出力又は前記変速段出力手段の出力に基づいて前記走行モードに切替えた場合には、前記選択手段が操作され、前記速度センサから所定速度未満の速度を示す出力を取込むか又は前記変速段出力手段から低速段を示す出力を取込んだときに、前記走行モードから前記通常モードに切替える手段を前記決定手段に設けることにより、前記走行モードになった後は、前記走行機体の速度が低速度であり且つ前記スイッチが操作された場合又は低速段であり且つ前記スイッチが操作された場合に、前記スイッチからの出力に基づいてモードを変更し、操作者の意図しない前記旋回上昇制御又は後進上昇制御が行われることを防止することができる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明に係る農作業機は、走行機体と、該走行機体に動力を供給する動力源と、前記走行機体の舵取を行う操舵部材と、前記走行機体に装着されており、農作業を行う作業機
と、該作業機の姿勢を水平に制御する水平制御手段と、前記動力源のトルク特性を制御するエンジン特性制御手段と、作業機が耕耘する土壌の深さを制御する耕耘深さ制御手段と、前記走行機体を後進させたときに前記作業機を上昇させる後進上昇制御手段と、前記走行機体を旋回させたときに前記作業機を上昇させる旋回上昇制御手段と、前記走行機体を旋回させたときに、前記走行機体の速度を減速させる減速旋回制御手段と、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段にそれぞれ制御させるか否かを選択するための選択手段とを備える農作業機において、前記選択手段の操作により、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させる決定をするか、前記後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させて、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、及び耕耘深さ制御手段に制御を実行させない決定をするか、又は前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させない非制御の決定をする決定手段を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明においては、作業機の姿勢を水平に制御する水平制御手段と、前記動力源のトルク特性を制御するエンジン特性制御手段と、作業機が耕耘する土壌の深さを制御する耕耘深さ制御手段と、前記走行機体を後進させたときに前記作業機を上昇させる後進上昇制御手段と、前記走行機体を旋回させたときに前記作業機を上昇させる旋回上昇制御手段と、前記走行機体を旋回させたときに、前記走行機体の速度を減速させる減速旋回制御手段とを設け、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段にそれぞれ制御させるか否かを選択するための選択手段を設け、該選択手段の操作により、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させる決定をするか、前記後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させて、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、及び耕耘深さ制御手段に制御を実行させない決定をするか、又は前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させない非制御の決定をする決定手段を設けることにより、前記選択手段、例えばスイッチを操作して、隣接地では通常モードとしての自動制御を選択し、前記各制御を自動で行い、枕地又は路上では、枕地モードとしての制御又は走行モードとしての手動制御を選択して、前記旋回上昇制御及び後進上昇制御が自動で行われることを回避する。
【0014】
第2発明に係る農作業機は、前記走行機体の速度を検出する速度センサと、設定された変速段を示す信号を出力する変速段出力手段とを備え、前記決定手段は、前記速度センサから所定速度以上の速度を示す出力を取込んだとき、又は前記変速段出力手段から高速段を示す出力を取込んだときに、前記非制御の決定をする手段を有することを特徴とする。
【0015】
本発明においては、前記走行機体の速度を検出する速度センサと、設定された変速段を示す信号を出力する変速段出力手段とを設けることにより、操作者が前記通常モード又は枕地モードから走行モードに切替えずに、路上を走行している場合であって、前記速度センサから所定速度以上の速度を示す出力を取込んだとき又は前記変速段出力手段から高速段を示す出力を取込んだときに、前記走行モードに切替えて制御する。
【0016】
第3発明に係る農作業機は、前記決定手段は、前記非制御の決定をした場合であって、前記速度センサから所定速度以上の速度を示す出力を取込んだとき又は前記変速段出力手段から高速段を示す出力を取込んだときに、前記非制御の決定を維持する手段を有することを特徴とする。
【0017】
本発明においては、前記速度センサの出力又は前記変速段出力手段の出力に基づいて前記走行モードに切替えた場合であって、前記速度センサから所定速度以上の速度を示す出力を前記決定手段が取込んだとき又は前記変速段出力手段から高速段を示す出力を取込んだときに、前記走行モードへの切替えを維持する手段を前記決定手段に設けることにより、前記走行機体が路上を走行している間は前記走行モードで制御する。
【0018】
第4発明に係る農作業機は、前記決定手段は、前記非制御の決定を選択した場合であって、前記選択手段が操作され、前記速度センサから所定速度未満の速度を示す出力を取込むか又は前記変速段出力手段から低速段を示す出力を取込んだときに、前記選択手段の操作により、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させる決定をする手段を有することを特徴とする。
【0019】
本発明においては、前記速度センサの出力又は前記変速段出力手段の出力に基づいて前記走行モードに切替えた場合には、前記選択手段が操作され、前記速度センサから所定速度未満の速度を示す出力を取込むか又は前記変速段出力手段から低速段を示す出力を取込んだときに、前記走行モードから前記通常モードに切替える手段を前記決定手段に設けることにより、前記走行モードになった後は、前記走行機体の速度が低速度であり且つ前記スイッチが操作された場合又は低速段であり且つ前記スイッチが操作された場合に、前記スイッチからの出力に基づいてモードを変更する。
【発明の効果】
【0020】
第1発明に係る農作業機にあっては、作業機の姿勢を水平に制御する水平制御手段と、前記動力源のトルク特性を制御するエンジン特性制御手段と、作業機が耕耘する土壌の深さを制御する耕耘深さ制御手段と、前記走行機体を後進させたときに前記作業機を上昇させる後進上昇制御手段と、前記走行機体を旋回させたときに前記作業機を上昇させる旋回上昇制御手段と、前記走行機体を旋回させたときに、前記走行機体の速度を減速させる減速旋回制御手段とを設け、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段にそれぞれ制御させるか否かを選択するための選択手段を設け、該選択手段の操作により、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させる決定をするか、前記後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させて、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、及び耕耘深さ制御手段に制御を実行させない決定をするか、又は前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させない非制御の決定をする決定手段を設けることにより、前記選択手段、例えばスイッチを操作して、隣接地では通常モードとしての自動制御を選択し、前記各制御を自動で行い、枕地又は路上では、枕地モードとしての制御又は走行モードとしての手動制御を選択して、前記旋回上昇制御及び後進上昇制御が自動で行われることを回避し、操作者の操作性及び利便性を向上させることができる。
【0021】
第2発明に係る農作業機にあっては、前記走行機体の速度を検出する速度センサと、設定された変速段を示す信号を出力する変速段出力手段とを設けることにより、操作者が前記通常モード又は枕地モードから走行モードに切替えずに、路上を走行している場合であって、前記速度センサから所定速度以上の速度を示す出力を取込んだとき又は前記変速段出力手段から高速段を示す出力を取込んだときに、前記走行モードに切替えて制御し、操作者の操作性及び利便性を向上させることができる。
【0022】
第3発明に係る農作業機にあっては、前記速度センサの出力又は前記変速段出力手段の出力に基づいて前記走行モードに切替えた場合であって、前記速度センサから所定速度以
上の速度を示す出力を前記決定手段が取込んだとき又は前記変速段出力手段から高速段を示す出力を取込んだときに、前記走行モードへの切替えを維持する手段を前記決定手段に設けることにより、前記走行機体が路上を走行している間は前記走行モードで制御し、走行中に操作者の意図しない前記旋回上昇制御又は後進上昇制御が行われることを防止することができる。
【0023】
第4発明に係る農作業機にあっては、前記速度センサの出力又は前記変速段出力手段の出力に基づいて前記走行モードに切替えた場合には、前記選択手段が操作され、前記速度センサから所定速度未満の速度を示す出力を取込むか又は前記変速段出力手段から低速段を示す出力を取込んだときに、前記走行モードから前記通常モードに切替える手段を前記決定手段に設けることにより、前記走行モードになった後は、前記走行機体の速度が低速度であり且つ前記スイッチが操作された場合又は低速段であり且つ前記スイッチが操作された場合に、前記スイッチからの出力に基づいてモードを変更し、操作者の意図しない前記旋回上昇制御又は後進上昇制御が行われることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(実施の形態1)
以下本発明を実施の形態1に係る農作業機を示す図面に基づいて詳述する。図1は農作業機の略示側面図、図2は農作業機の略示平面図、図3はロータリ耕耘機の略示拡大側面図、図4はリヤカバーセンサ周りの構成を示す模式図である。
【0025】
図において1は本発明に係る農作業機の走行機体であり、該走行機体1は、ディーゼル式のエンジン5を搭載してあるエンジンフレーム14を有している。該エンジンフレーム14の前側に前バンパ12を設けてあり、前記エンジンフレーム14の左右両側に二つの前車軸ケース13、13を設けてある。該前車軸ケース13、13を介して左右一対の前車輪3、3が設けてある。前記エンジンフレーム14の後部に、機体フレーム16がボルトにて着脱自在に固定してあり、該機体フレーム16の両側に左右一対の後車輪4、4が設けてある。前記エンジン5にて前記後車輪4、4及び前車輪3、3を駆動することにより、走行機体1は前後進走行するように構成してある。前記エンジン5はボンネット6にて覆われており、また前記機体フレーム16の上面にはキャビン7が設置してある。該キャビン7の内部には、操縦座席8と、舵取りすることによって前車輪3の操向方向を左右に動かすステアリングホイール9とが設置されている。前記キャビン7の外側部には、オペレータが乗降するステップ10を設けてあり、該ステップ10より内側で且つ前記キャビン7の底部より下側には、前記エンジン5に燃料を供給する燃料タンク11を設けてある。
【0026】
前記機体フレーム16の後部には、エンジン5からの回転動力を適宜変速して前車輪3、3及び後車輪4、4に伝達するための走行変速機構を有するミッションケース17が搭載されている。後車輪4は、ミッションケース17の外側面から外向きに突出するように装着された図示しない後輪車軸を介して取り付けてある。
【0027】
ミッションケース17には、エンジン5からの回転動力の一部を後述するPTO軸23に伝達するための図示しないPTO変速機構が内蔵されており、該PTO変速機構により、後述するロータリ耕耘機24の回転伝動系への入口において、駆動力の大きさを無段階又は段階的に調節する。
【0028】
ミッションケース17の後部上面には、作業機としてのロータリ耕耘機24を昇降動する油圧式の作業機用昇降機構20が着脱可能に取り付けられている。ロータリ耕耘機24は、ミッションケース17の後部に、一対の左右ロワーリンク21、21及びトップリンク22からなる3点リンク機構を介して連結してある。左右ロワーリンク21、21の前端側は、ミッションケース17の後部の左右側面にロワーリンクピン25、25を介して
回動可能に連結されている。前記トップリンク22の前端側は、前記作業機用昇降機構20の後部のトップリンクヒッチ26にトップリンクピン27を介して連結されている。さらに、ミッションケース17の後側面には、前記ロータリ耕耘機24に駆動力を伝達するためのPTO軸23が後向きに突出するように設けられている。
【0029】
油圧式の前記作業機用昇降機構20は、単動形の昇降制御油圧シリンダ28(後述する図5参照)と、該昇降制御油圧シリンダ28により回動される一対の左右リフトアーム29、29とを備えている。進行方向に向かって左側の前記リフトアーム29と前記ロワーリンク21とは、左リフトロッド30を介して連結されている。進行方向に向かって右側の前記リフトアーム29と前記ロワーリンク21とは、右リフトロッド31、及び該右リフトロッド31の一部を形成する複動形の傾斜制御油圧シリンダ32、及び該傾斜制御油圧シリンダ32のピストンロッド33とを介して連結されている。
【0030】
前記トップリンク22及びロワーリンク21、21の後側に、前記ロータリ耕耘機24を配置してある。前記ロータリ耕耘機24は、前記ロワーリンク21、21に連結される下リンクフレーム35と、前記トップリンクに連結される上リンクフレーム34とを備え、前記下リンクフレーム35の下側に耕耘爪40を有するロータリ部41を配置してあり、該ロータリ部41にPTO入力軸46aが連結してある。
【0031】
前記ロワーリンク21の後端部と、前記下リンクフレーム35の前端部とが、下ヒッチピン35aを介して連結されており、前記トップリンク22の後端部と、前記上リンクフレーム34の前端部とが、上ヒッチピン34aを介して連結されており、前記PTO入力軸46aと前記PTO軸23とは、両端に自在継手が備えられた伸縮自在な伝動軸46bを介して連結されている。前記PTO軸23から出力された動力は、前記PTO入力軸46a及び伝動軸46bを介して前記ロータリ部41に伝達され、前記耕耘爪40を反時計方向に回転させる。
【0032】
前記ロータリ部41は耕耘上面カバー42と、該耕耘上面カバー42に取付けてある耕耘リヤカバー43とを備えている。図2及び図3に示す如く、前記耕耘上面カバー42の上面に、前記ロータリ耕耘機24が耕耘している土壌の深さ、及び前記耕耘リヤカバー43を取付けてあるか否かを検出するポテンショメータ型のリヤカバーセンサ47を設けてある。該リヤカバーセンサ47と耕耘リヤカバー43とは、センサアーム48及びセンサリンク49を介して連結されている。
【0033】
前記リヤカバーセンサ47に内蔵してあるポテンショメータは、図4に示す如く、円弧形の抵抗皮膜47aを備えている。該抵抗被膜47aの両端に端子A及びBを接続してあり、該両端子には基準電圧を印加してある。また前記抵抗被膜47aの曲率中心に、その一端部を配置してあり、該一端部を中心にしてその他端部を抵抗皮膜47aに沿って摺動させる針状のブラシ47bが設けてある。該ブラシ47bの一端部には端子Cを接続してある。
【0034】
前記端子Cは、ケーブル55、雄型コネクタ56、及び雌型コネクタ57を介して、ローパスフィルタからなるフィルタ部54に接続してある。該フィルタ部54は、後述する耕耘制御装置70に接続されており、フィルタ部54から耕耘制御装置70に、前記ブラシ47bの位置を示す信号が入力される。
前記耕耘リヤカバー43が上下したときに、図4の矢印にて示す如く、前記ブラシ47bが、前記抵抗皮膜47a上を摺動し、耕耘制御装置70に、前記ブラシ47bの位置を示す信号が入力され、該信号に基づいて前記ロータリ耕耘機24が耕耘している土壌の深さが検出される。
【0035】
図5は農作業機の作業機系油圧回路図である。作業機系油圧回路100には、エンジン5の回転力により作動する作業機用油圧ポンプ101を備える。該作業機用油圧ポンプ101は、分流弁105を介して、前記傾斜制御油圧シリンダ32に作動油を供給制御するための傾斜制御電磁弁104に接続してある。また前記作業機用油圧ポンプ101は、前記分流弁105を介して、前記昇降制御油圧シリンダ28に作動油を供給制御するための上昇制御電磁弁102及び下降制御電磁弁103に接続してある。
前記傾斜制御電磁弁104の切換を行い、前記ピストンロッド33を上下させて、前記ロータリ耕耘機24を傾斜させ、また前記上昇制御電磁弁102及び下降制御電磁弁103の切換を行い、前記リフトアーム29、29を上下させて、前記ロータリ耕耘機24を上昇させるか又は下降させるようにしてある。
【0036】
図6は農作業機の走行系動力伝達回路図である。走行系動力伝達回路200は、エンジン5の回転力を用いて油圧による無段変速を行うHST201を備える。該HST201は、遊星ギヤユニット202を介して、前後進を切替える主クラッチ203に接続している。該主クラッチ203の付近にホールICを備える速度センサ210を設けてあり、前記主クラッチ203に連結してある図示しないシャフトの回転数に基づいて、走行機体の速度を検出する構成にしてある。
前記主クラッチ203は主ディファレンシャルユニット204に接続しており、該主ディファレンシャルユニット204は前記後車輪4、4に連結している。また前記主クラッチ203は、前車輪用電磁クラッチ205に接続しており、該前車輪用電磁クラッチ205は前記前車輪3、3に連結している。
エンジン5の回転力が、前記HST201、遊星ギヤユニット202、主クラッチ203及び主ディファレンシャルユニット204を介して、前記後車輪4、4に伝動し、走行機体1が走行する構成となっている。また前記前車輪用電磁クラッチ205を接離することにより、2駆または4駆走行に切替わる構成となっている。
また前記遊星ギヤユニット202に、前記PTO軸23に動力を伝えるPTOクラッチユニット206を、伝動部材を介して連結してあり、該PTOクラッチユニット206を接離してPTO軸23への伝動を調整している。
【0037】
次に、キャビン7内に配置された各種操作手段の構成について説明する。図7は操縦座席付近の構成を示す模式的拡大平面図、図8は作業機モード切替スイッチを示す拡大図、図9は作業機調整ボックスを示す拡大図である。
【0038】
前記キャビン7内にある丸ハンドル型のステアリングホイール9は、前記操縦座席8の前方に位置する操縦コラム60上に設けられている。該操縦コラム60の右方には、前記走行機体1の前後進を切替えるリバーサレバー61と、走行機体1を制動操作するための左右ブレーキペダル62、62とが設けてあり、操縦コラム60の左方にはクラッチペダル63が配置されている。前記リバーサレバー61は、前進、後進又はニュートラルを示す位置のいずれかに配置されるようにしてある。
なお前記操縦コラム60の近傍には、前記ステアリングホイール9の操舵角を検出するホール素子型の操舵角センサ9a(後述する図10参照)を設けてあり、前記リバーサレバー61の近傍には後述するポテンショメータ型のリバーサセンサ61aを配設してあり(後述する図10参照)、前記リバーサレバー61の位置を検出する構成にしてある。
前記操縦コラム60を前方から囲むようにして、ダッシュボードパネル64を設けてあり、該ダッシュボードパネル64の右側に作業機モード設定器65を配設してある。該作業機モード設定器65は、図8に示す如く、後述する通常モード、枕地モード、及び走行モードを押下して選択する作業モード切替スイッチ65aと、通常モードであることを表示する通常モード表示ランプ65bと、枕地モードであることを表示する枕地モード表示ランプ65cとを備える。前記作業モード切替スイッチ65aは、前記作業モード切替スイッチ65aを押下する度に、作業モードが変更され、前記通常モード、枕地モード、走
行モードの順に変更され、再び通常モードに戻るようにしてある。
前記ダッシュボードパネル64の左側には、前輪3、3及び後輪4、4の駆動状態を制御する駆動制御スイッチ群66を配置してあり、該駆動制御スイッチ群は、2駆・4駆走行を選択するための2駆・4駆走行切替えスイッチ、旋回時に右側又は左側にある車輪に対し自動的に制動を行うためのオートブレーキスイッチ、及び旋回時に前車輪の回転速度を後車輪の略倍に制御するための倍速スイッチ(いずれも図示せず。)を配置してある。
【0039】
操縦座席8の左右に、右側コラム67及び左側コラム68がそれぞれ設けてあり、該右側コラム67上には、所定の段階に変速可能な主変速レバー67aと、ロータリ耕耘機24の高さ位置を手動で変更調節するための作業機昇降レバー67bと、ロータリ耕耘機24の設定を行う複数のスイッチ群を有する作業機設定ボックス67cとを配置してある。前記左側コラム68上には、作業状態に応じて前記PTO変速機構の変速段を無段階又は段階的に変速操作するためのPTO変速レバー68aを設けてある。前記右側コラム67の内部であって、前記主変速レバー67aの近傍に、主変速レバー67aの変速段を検出するポテンショメータ型の変速段センサ69を設けてある(後述する図10参照)。
【0040】
前記作業機設定ボックス67cは、走行機体1が後進した場合にロータリ耕耘機24を自動的に上昇させるための後進上昇スイッチ671と、走行機体が所定角度以上に操舵されて旋回した場合に、ロータリ耕耘機24を自動的に上昇させるための旋回上昇スイッチ672と、走行機体が所定角度以上に操舵されて旋回した場合に、走行機体の速度を減速させる減速旋回スイッチ673と、ロータリ耕耘機24の傾斜を圃場に対応させるための傾きモード切替スイッチ674と、エンジンのトルク特性を変更するためのエコボタン675と、所定の耕深に設定するための深さモード切替スイッチ676と、耕深を手動で調整するための深さダイヤル677とを備える。
【0041】
次にエンジンの駆動及びロータリ耕耘機の作動を制御する複数の制御方法について説明する。図10は耕耘機制御装置周りの要部構成を示すブロック図である。
【0042】
前記走行機体1に、前記ロータリ耕耘機24の作動を制御する耕耘機制御装置70を設けてあり、該耕耘機制御装置70には前記エンジン5の駆動を制御するガバナ制御装置80が接続してある。また前記耕耘機制御装置70には前記作業機モード設定器65及び前記作業機設定ボックス67cに設けてあるスイッチ群の信号を処理するスイッチ制御装置90が接続してある。前記耕耘機制御装置70、ガバナ制御装置80及びスイッチ制御装置90は、エンジン5の駆動及びロータリ耕耘機24の作動を制御するCPU、エンジン5の駆動及びロータリ耕耘機24の作動に関する制御プログラムを格納してあるROM、種々の情報を一時的に記憶するRAM等を備える。
前記耕耘機制御装置70に、前記変速段センサ69、操舵角センサ9a、速度センサ210、リヤカバーセンサ47、リバーサセンサ61a、及び前記走行機体1の傾斜角度を検出するローリングセンサ50を接続してあり、また前記上昇制御電磁弁102、下降制御電磁弁103、及び傾斜制御電磁弁104を接続してある。前記ガバナ制御装置80には、エンジン5に供給される燃料の量を調整する電子ガバナ81を接続してあり、前記スイッチ制御装置90には、前記作業機設定ボックス67c及び作業機モード設定器65を接続してある。
【0043】
〔耕耘深さ制御〕
ロータリ耕耘機24が耕耘する土壌の深さを制御する耕耘深さ制御について説明する。前記深さモード切替スイッチ676及び深さダイヤル677の出力を取込んで、ロータリ耕耘機24が耕耘すべき土壌の深さを記憶する。次に前記耕耘機制御装置70は、前記リヤカバーセンサ47の出力を取込んで、ロータリ耕耘機24が耕耘している土壌の深さを記憶し、ロータリ耕耘機24が耕耘している土壌の深さと、ロータリ耕耘機24が耕耘す
べき土壌の深さとを比較して、前記上昇制御電磁弁102又は下降制御電磁弁103の切換を行い、ロータリ耕耘機24が耕耘している土壌深さをロータリ耕耘機24が耕耘すべき土壌の深さにする。
【0044】
〔水平制御〕
ロータリ耕耘機24の傾きを地面に対し水平に制御する水平制御について説明する。前記耕耘機制御装置70は、前記傾きモード切替スイッチ674又は作業モード切替スイッチ65aにより、水平制御を行うことを示す信号が入力されている場合に、前記ローリングセンサ50から前記走行機体1の傾斜角度を示す信号を取込んで、前記走行機体1の傾斜角度を記憶する。そして該傾斜角度に基づいて、前記傾斜制御電磁弁104の切換を行い、前記ロータリ耕耘機24の傾きを水平にする。
【0045】
〔エンジン特性制御〕
エンジン5のトルク特性を変更するエンジン特性制御について説明する。前記耕耘機制御装置70は、前記エコボタン675又は作業モード切替スイッチ65aから、エンジン特性制御を行うことを示す信号を取込んだときに、所定の信号を前記ガバナ制御装置80に出力する。該信号を取込んだガバナ制御装置80は、前記電子ガバナ81の開度を調整し、エンジン5の最大トルクが高回転域にて得られるように前記エンジン5の燃焼効率を変化させる。
【0046】
〔後進上昇制御〕
走行機体1を後進させたときに前記ロータリ耕耘機24を上昇させる後進上昇制御について説明する。前記耕耘機制御装置70は、前記後進上昇スイッチ671又は作業モード切替スイッチ65aから後進上昇制御を行うことを示す信号を取込んだ場合であって、前記リバーサセンサ61aから後進示す信号を取込んだときに、前記上昇制御電磁弁102を開き、前記ロータリ耕耘機24を上昇させる。
【0047】
〔旋回上昇制御〕
走行機体1を旋回させたときに前記ロータリ耕耘機24を上昇させる旋回上昇制御について説明する。前記耕耘機制御装置70は、前記旋回上昇スイッチ672又は作業モード切替スイッチ65aから旋回上昇制御を行うことを示す信号を取込んだ場合であって、前記操舵角センサ9aから所定角度以上の角度を示す信号を取込んだときに、前記上昇制御電磁弁102を開き、前記ロータリ耕耘機24を上昇させる。
【0048】
〔減速旋回制御〕
適切な旋回半径にて走行機体1を旋回させるために旋回時に減速させる減速旋回制御について説明する。前記耕耘機制御装置70は、前記減速旋回スイッチ673又は作業モード切替スイッチ65aから減速旋回制御を行うことを示す信号を取込んだ場合であって、前記操舵角センサ9aから所定角度以上の角度を示す信号を取込んだときに、前記ガバナ制御装置80に所定の信号を出力する。該信号を取込んだ前記ガバナ制御装置80は、前記電子ガバナ81の開度を小さくして、前記走行機体1を減速させる。
【0049】
次に農作業機の作業モードの変更処理について説明する。ここで作業モードとは、前記耕耘深さ制御、水平制御、エンジン特性制御、後進上昇制御、旋回上昇制御、及び減速旋回制御を作業内容に即して採否した制御方法の組合せをいい、作業モードの変更処理とは、作業モード切替スイッチ65aにより作業モードを変更する処理を言う。図11は作業モードの内容を示す表、図12は耕耘機制御装置70による作業モードの変更処理を示すフローチャートである。
【0050】
図11に示す如く、作業モードの内、複数の制御方法を全て選択した組合せを通常モー
ドとし、前記後進制御、旋回上昇制御及び減速旋回制御を除いた他の制御方法を選択した組合せを枕地モードとし、複数の制御方法を全て選択していない組合せを走行モードとしてある。すなわち、通常モードにおいては、耕耘深さ制御、水平制御、エンジン特性制御、後進上昇制御、旋回上昇制御、及び減速旋回制御を自動で制御し、枕地モードにおいては、耕耘深さ制御、水平制御、及びエンジン特性制御を自動で制御し、後進上昇制御、旋回上昇制御、及び減速旋回制御を手動で制御する。走行制御においては、耕耘深さ制御、水平制御、エンジン特性制御、後進上昇制御、旋回上昇制御、及び減速旋回制御を手動で制御する。
【0051】
作業モードの変更処理について説明する。前記耕耘機制御装置70は、前記作業モード切替スイッチ65aが押下されたことを示す信号が入力されたか否か判断する(ステップS1)。前記作業モード切替スイッチ65aが押下されたことを示す信号が入力されていないときは(ステップS1:NO)、作業モードの変更処理を終了する。前記作業モード切替スイッチ65aが押下されたことを示す信号が入力されたときは(ステップS1:YES)、前記作業モード切替スイッチ65aにより選択された作業モードが通常モードであるか否か判断する(ステップS2)。変更後の作業モードが通常モードであるときは(ステップS2:YES)、前記通常モード表示ランプ65bを点灯させる信号を出力し(ステップS3)、前記枕地モード表示ランプ65cを消灯させる信号を出力する(ステップS4)。そして通常モードでの制御を行う(ステップS5)。
【0052】
選択された作業モードが通常モードでないときは(ステップS2:NO)、選択された作業モードが枕地モードであるか否か判断する(ステップS6)。選択された作業モードが枕地モードであるときは(ステップS6:YES)、前記通常モード表示ランプ65bを消灯させる信号を出力し(ステップS7)、前記枕地モード表示ランプ65cを点灯させる信号を出力する(ステップS8)。そして枕地モードでの制御を行う(ステップS9)。
選択された作業モードが枕地モードでないときは(ステップS6:NO)、通常モード表示ランプ65bを消灯させる信号を出力し(ステップS10)、枕地モード表示ランプ65cを消灯させる信号を出力する(ステップS11)。そして走行モードでの制御を行う(ステップS12)。
【0053】
次に高速度対応処理について説明する。ここで高速度対応処理とは、通常モード又は枕地モードでの制御を行っている場合であって、所定速度以上の速度を示す信号が入力されたときに実行される処理をいう。図13は耕耘機制御装置70による高速度対応処理を説明するフローチャートである。
【0054】
前記耕耘機制御装置70は、走行モードでの制御を行っているか否か判断する(ステップS21)。走行モードでの制御を行っているときは(ステップS21:YES)、高速度対応処理を終了する。通常モード又は枕地モードでの制御を行っているときは(ステップS21:NO)、前記速度センサ210の出力を取込み、農作業機が所定速度以上で走行しているか否か判断する(ステップS22)。農作業機が所定速度未満で走行しているときは(ステップS22:NO)、高速度対応処理を終了する。
【0055】
農作業機が所定速度以上で走行しているときは(ステップS22:YES)、農作業機は路面を走行していると推定され、作業モードを通常モード又は枕地モードから走行モードに強制的に変更する(ステップS23)。そして前記耕耘機制御装置70は、前記作業モード切替スイッチ65aが押下されたことを示す信号が入力されたか否か判断する(ステップS24)。前記作業モード切替スイッチ65aが押下されたことを示す信号が入力されていないときは(ステップS24:NO)、ステップS24に戻る。前記作業モード切替スイッチ65aが押下されたことを示す信号が入力されたときは(ステップS24:
YES)、前記速度センサ210の出力を取込み、農作業機が所定速度以上で走行しているか否か判断する(ステップS25)。走行機体1が所定速度以上で走行しているときは(ステップS25:YES)、農作業機は路面を走行していると推定され、作業モードを変更せずにステップS24に戻る。農作業機が所定速度未満で走行しているときは(ステップS25:NO)、農作業機は圃場で作業していると推定され、前記作業モード切替スイッチ65aの入力に基づいて作業モードを変更する(ステップS26)。
【0056】
実施の形態1に係る農作業機にあっては、前記耕耘機制御装置70に前記通常モード、枕地モード、及び走行モードを設定し、各モードを選択する作業モード切替スイッチ65aを設けることにより、該作業モード切替スイッチ65aを使用して、前記隣接地での作業、枕地での作業、及び路上走行に応じた各モードをそれぞれ選択し、操作者の操作性及び利便性を向上させることができる。
【0057】
また農作業機の速度を検出する速度センサ210を設けることにより、操作者が前記通常モード又は枕地モードから走行モードに切替えずに、路上を走行にしている場合に、前記耕耘機制御装置70が前記速度センサ210から所定速度以上の速度を示す出力を取込んだときは、前記走行モードに切替えて制御し、操作者の操作性及び利便性を向上させることができる。
【0058】
また前記速度センサ210の出力に基づいて前記走行モードに切替えた場合であって、前記耕耘機制御装置70が、前記速度センサ210から所定速度以上の速度を示す出力を取込んだときは、前記走行モードを維持する手段を設けることにより、前記走行機体1が路上を走行している間は走行モードで制御し、走行中に操作者の意図しない前記旋回上昇制御及び後進上昇制御等の通常モードでの制御が行われることを防止することができる。
【0059】
また前記速度センサ210の出力に基づいて前記走行モードに切替えた場合には、前記作業モード切替スイッチ65aが操作されると共に、前記耕耘機制御装置70が前記速度センサ210から所定速度未満の速度を示す出力を取込んだときに、前記走行モードから前記通常モード又は枕地モードに変更する手段を設けることにより、前記走行モードになった後は、走行機体1の速度が低速度であり且つ前記作業モード切替スイッチ65aが操作された場合に、前記作業モード切替スイッチ65aの出力に基づいて前記走行モードを変更し、操作者の意図しない前記旋回上昇制御及び後進上昇制御等が行われることを防止することができる。
【0060】
なおロータリ耕耘機24に替えて、プラウ及び荷台等の作業機を走行機体に連結しても良い。また耕耘機制御装置70はロータリ耕耘機24の前後方向の姿勢を制御する構成を備えていても良い。
【0061】
(実施の形態2)
以下本発明に係る農作業機を、実施の形態2を示す図面に基づいて詳述する。図14は耕耘機制御装置70による高速段対応処理を説明するフローチャートである。ここで高速段対応処理とは、通常モード又は枕地モードでの制御を行っている場合であって、主変速レバー67aが最高速段になっているときに実行される処理をいう。
【0062】
前記耕耘機制御装置70は、走行モードでの制御を行っているか否か判断する(ステップS31)。走行モードでの制御を行っているときは(ステップS31:YES)、高速段対応処理を終了する。通常モード又は枕地モードでの制御を行っているときは(ステップS31:NO)、前記変速段センサ69の出力を取込み、変速段が最高速段になっているか否か判断する(ステップS32)。前記主変速レバー67aが最高速段になっていないときは(ステップS32:NO)、高速段対応処理を終了する。
【0063】
前記主変速レバー67aが最高速段になっているときは(ステップS32:YES)、農作業機は路面を走行していると推定され、作業モードを通常モード又は枕地モードから走行モードに強制的に変更する(ステップS33)。そして前記耕耘機制御装置70は、前記作業モード切替スイッチ65aが押下されたことを示す信号が入力されたか否か判断する(ステップS34)。前記作業モード切替スイッチ65aが押下されたことを示す信号が入力されていないときは(ステップS34:NO)、ステップS34に戻る。前記作業モード切替スイッチ65aが押下されたことを示す信号が入力されたときは(ステップS34:YES)、前記変速段センサ69の出力を取込み、主変速レバー67aが最高速段になっているか否か判断する(ステップS35)。主変速レバー67aが最高速段になっているときは(ステップS35:YES)、農作業機は路面を走行していると推定され、作業モードを変更せずにステップS34に戻る。主変速レバー67aが最高速段になっていないときは(ステップS35:NO)、農作業機は圃場で作業していると推定され、前記作業モード切替スイッチ65aの入力に基づいて作業モードを変更する(ステップS36)。
【0064】
実施の形態2に係る農作業機にあっては、主変速レバー67aと、該主変速レバー67aにより設定された変速段を検出する変速段センサ69を設けることにより、操作者が前記通常モード又は枕地モードから走行モードに切替えずに、変速段を最高速段にして、走行機体1を走行状態にした場合に、前記耕耘機制御装置70が作業モードを強制的に前記走行モードに変更して制御し、操作者の操作性及び利便性を向上させることができる。
【0065】
また前記変速段センサ69の出力に基づいて前記走行モードに変更した場合であって、前記耕耘機制御装置70が、前記変速段センサ69から最高速段を示す出力を取込んだときは、前記走行モードを維持する手段を設けることにより、走行機体1が路上を走行している間は走行モードで制御し、走行中に操作者の意図しない前記旋回上昇制御及び後進上昇制御等が行われることを防ぐことができる。
【0066】
また前記変速段センサ69の出力に基づいて前記走行モードに変更した場合には、前記作業モード切替スイッチ65aが操作されると共に、前記耕耘機制御装置70が前記変速段センサ69から低速段を示す出力を取込んだときに、前記走行モードから前記通常モード又は枕地モードに変更する手段を設けることにより、前記変速段センサ69の出力に基づいて前記走行モードになった後は、変速段が最高速段でなく且つ前記作業モード切替スイッチ65aが操作された場合に、前記作業モード切替スイッチ65aの出力に基づいて作業モードを変更し、操作者の意図しない前記旋回上昇制御及び後進上昇制御等が行われることを防止することができる。
【0067】
なお例えば6速を最高速段とする6段変速の場合に、6速又は5速を高速段とし、4速以下を低速段として、高速段になっているときに、作業モードを強制的に走行モードに変更する構成としても良い(ステップS32及びステップS33参照)。また主変速レバー67a及び変速段センサ69に替えて、変速段を選択する変速段選択スイッチを設け、該変速段選択スイッチから出力された信号に基づいて、高速段対応処理を行う構成であっても良い。また最高速段になっている場合に、速度センサ210の出力を取込み、農作業機が所定速度以上で走行しているときに、作業モードを強制的に走行モードに変更する構成としても良い。また農作業機が所定速度以上で走行している場合に、変速段センサ69の出力を取込み、高速段になっているときに、作業モードを強制的に走行モードに変更する構成としても良い。
【0068】
実施の形態2に係る農作業機の構成の内、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0069】
(実施の形態3)
以下本発明を実施の形態3に係る農作業機を示す図面に基づいて詳述する。図15はリヤカバーセンサ周りの構成を示す模式図、図16は耕耘機制御装置70による不装着対応処理を説明するフローチャートである。ここで不装着対応処理とはロータリ耕耘機24を走行機体1に装着していないときに実行される処理をいう。
図15に示す如く、前記耕耘機制御装置70に、前記ブラシ47bの位置を示す信号が入力される入力ポート70pが設けてある。耕耘機制御装置70は、前記入力ポート70Pを介して、前記フィルタ部54からブラシ47bの位置を示す信号が入力されたか否かを検出する構成にしてある。
【0070】
次に耕耘機制御装置70による不装着対応処理について説明する。前記耕耘機制御装置70は、前記フィルタ部54から前記ブラシ47bの位置を示す信号が入力されているか否か判断する(ステップS41)。該信号が入力されているときは、(ステップS41:YES)、不装着対応処理を終了する。
【0071】
前記ブラシ47bの位置を示す信号が入力されていないときは(ステップS41:NO)、作業モードを走行モードに強制的に設定する(ステップS42)。そして前記耕耘機制御装置70は、前記スイッチ制御装置90から、前記作業モード切替スイッチ65aが押下されたことを示す信号が入力されたか否か判断する(ステップS43)。前記作業モード切替スイッチ65aが押下されたことを示す信号が入力されていないときは(ステップS43:NO)、ステップS43に戻る。前記作業モード切替スイッチ65aが押下されたことを示す信号が入力されたときは(ステップS43:YES)、前記ブラシ47bの位置を示す信号が入力されているか否か判断する(ステップS44)。該信号が入力されていないときは(ステップS44:NO)、作業モードを変更せずにステップS43に戻る。
前記ブラシ47bの位置を示す信号が入力されているときは(ステップS44:YES)、前記作業モード切替スイッチ65aが押下されたことを示す信号に基づいて作業モードを変更する(ステップS45)。
【0072】
実施の形態3に係る農作業機にあっては、前記ロータリ耕耘機24を前記走行機体1に装着しているか否かを検出するリヤカバーセンサ47を設けることにより、前記耕耘機制御装置70に、前記ブラシ47bの位置を示す信号が入力されていないときは、前記走行モードに設定し、前記ロータリ耕耘機24の前記走行機体1への装着作業が完了する前に、前記旋回上昇制御又は後進上昇制御等が行われ、前記ロータリ耕耘機24が横転することを防ぐことができる。
通常、ロータリ耕耘機24を走行機体1に装着するときには、ロータリ耕耘機24を載置し、走行機体1を後進させてロータリ耕耘機24に接近させる。このときステアリングホイール9を操作して、走行機体1及びロータリ耕耘機24の左右方向の相対位置を調整する。そのため、通常モードであるときには、前記装着作業の途中に旋回上昇制御又は後進上昇制御が行われ、前記ロワーリンク21が上昇して、ロータリ耕耘機24に接触し、ロータリ耕耘機24が横転するおそれがある。走行モードに設定してあれば旋回上昇制御又は後進上昇制御は行われず、ロータリ耕耘機24が横転するおそれはない。
【0073】
実施の形態3に係る農作業機の構成の内、実施の形態1又は2と同様な構成については同じ符号を付しその詳細な説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】実施の形態1に係る農作業機の略示側面図である。
【図2】実施の形態1に係る農作業機の略示平面図である。
【図3】実施の形態1に係る農作業機のロータリ耕耘機の略示拡大側面図である。
【図4】実施の形態1に係る農作業機のリヤカバーセンサ周りの構成を示す模式図である。
【図5】実施の形態1に係る農作業機の作業機系油圧回路図である。
【図6】実施の形態1に係る農作業機の走行系動力伝達回路図である。
【図7】実施の形態1に係る農作業機の操縦座席付近の構成を示す模式的拡大平面図である。
【図8】実施の形態1に係る農作業機の作業機モード切替スイッチを示す拡大図である。
【図9】実施の形態1に係る農作業機の作業機調整ボックスを示す拡大図である。
【図10】実施の形態1に係る農作業機の耕耘機制御装置周りの要部構成を示すブロック図である。
【図11】実施の形態1に係る農作業機の耕耘機制御装置による作業モードの内容を示す表である。
【図12】実施の形態1に係る農作業機の耕耘機制御装置による作業モードの変更処理を示すフローチャートである。
【図13】実施の形態1に係る農作業機の耕耘機制御装置による高速度対応処理を説明するフローチャートである。
【図14】実施の形態2に係る農作業機の耕耘機制御装置による高速段対応処理を説明するフローチャートである。
【図15】実施の形態3に係る農作業機のリヤカバーセンサ周りの構成を示す模式図である。
【図16】実施の形態3に係る農作業機の耕耘機制御装置による不装着対応処理を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0075】
1 走行機体
5 エンジン
9 ステアリングホイール
9a 操舵角センサ
24 ロータリ耕耘機
61 リバーサレバー
47 リヤカバーセンサ
65a 作業モード切替スイッチ
67a 主変速レバー
69 変速段センサ
67c 作業機設定ボックス
70 耕耘機制御装置
80 ガバナ制御装置
81 電子ガバナ
90 スイッチ制御装置
210 速度センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体に動力を供給する動力源の駆動及び走行機体に連結してある作業機の作動を制御する複数の制御方法を、走行状態に応じて適宜選択し、操作性及び利便性を向上させることができる農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の農作業機には、走行機体と、該走行機体に装着されている農作業のための作業機、例えば土壌を耕耘するロータリ耕耘機とを設けてあり、また農作業を行うための、前記走行機体に動力を供給する動力源の駆動及び前記ロータリ耕耘機の作動を制御する複数の制御方法を実行する制御手段とを設けてある。また複数の制御方法を個別に手動で設定するための設定スイッチ群を設けてあり、前記各制御方法を一括して選択する選択スイッチを設けてある。
通常の耕耘作業をする場合には、前記選択スイッチをオンにして、前記制御手段により、複数の前記制御方法の全てを制御し(以下、前記制御方法の全てを、自動で制御することを通常モードという。)、路上を走行する場合には、前記選択スイッチをオフにして前記設定スイッチ群を操作し、前記制御手段により、複数の制御方法の全てを手動で制御していた(以下、前記制御方法の全てを手動で制御することを走行モードという。)。
【0003】
また、前記通常モード及び走行モードに加え、前記通常モードに採用されている複数の制御方法の内、プラウを牽引するときに必要な制御方法を自動で制御し、他の制御方法を、設定スイッチ群からの出力に基づいて手動で制御する半自動の牽引モードを設定してある制御手段を設け、選択スイッチにより、前記通常モード、牽引モード、及び走行モードを選択する農作業機も提案されている。
【0004】
該農作業機においては、前記通常モード、牽引モード、及び走行モードの切替えを選択スイッチにより行い、操作者の操作性及び利便性を向上させていた(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004―159620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて前記通常モード及び牽引モードには、走行機体を旋回させたときに、旋回を妨げないために前記ロータリ耕耘機を上昇させる制御方法(以下旋回上昇制御という。)及び走行機体を後進させたときに、後進を妨げないために前記ロータリ耕耘機を上昇させる制御方法(以下後進上昇制御という。)が含まれている。
【0006】
一般に圃場での作業は、圃場の中央部分にあたる隣接地及び圃場の周縁部分にあたる枕地での作業に大別され、隣接地での作業は、前記ロータリ耕耘機により土壌の耕耘を行うと共に前進し、枕地に至ったときに走行機体を旋回させて前記旋回上昇制御を行い、また後進したときに前記後進上昇制御を行う必要があるので、一連の作業を円滑に行うために通常モードで制御される。
一方枕地での作業は、畦畔付近において前記ロータリ耕耘機を下降させた状態で、走行機体を旋回又は前後させて前記ロータリ耕耘機の作業位置を調整するので、前記通常モードに採用されている複数の制御方法の内、前記旋回上昇制御及び後進上昇制御を除いた制御方法を自動で制御する半自動の枕地モードで制御することが望ましい。
【0007】
特許文献1に記載の農作業機を使用して枕地での作業を行う場合には、操作者が、前記通常モードから前記旋回上昇制御及び後進上昇制御を除くか、又は前記走行モードに枕地
での作業に必要な制御方法を追加する必要があり、操作者の操作性及び利便性を十分に向上させているとはいえない。
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、作業機の姿勢を水平に制御する水平制御手段と、前記動力源のトルク特性を制御するエンジン特性制御手段と、作業機が耕耘する土壌の深さを制御する耕耘深さ制御手段と、前記走行機体を後進させたときに前記作業機を上昇させる後進上昇制御手段と、前記走行機体を旋回させたときに前記作業機を上昇させる旋回上昇制御手段と、前記走行機体を旋回させたときに、前記走行機体の速度を減速させる減速旋回制御手段とを設け、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段にそれぞれ制御させるか否かを選択するための選択手段を設け、該選択手段の操作により、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させる決定をするか、前記後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させて、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、及び耕耘深さ制御手段に制御を実行させない決定をするか、又は前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させない非制御の決定をする決定手段を設けることにより、前記選択手段、例えばスイッチを操作して、隣接地では通常モードとしての自動制御を選択し、前記各制御を自動で行い、枕地又は路上では、枕地モードとしての制御又は走行モードとしての手動制御を選択して、前記旋回上昇制御及び後進上昇制御が自動で行われることを回避し、操作者の操作性及び利便性を向上させることができる農作業機を提供することを目的とする。
【0009】
また前記走行機体の速度を検出する速度センサと、設定された変速段を示す信号を出力する変速段出力手段とを設けることにより、操作者が前記通常モード又は枕地モードから走行モードに切替えずに、路上を走行している場合であって、前記速度センサから所定速度以上の速度を示す出力を取込んだとき又は前記変速段出力手段から高速段を示す出力を取込んだときに、前記走行モードに切替えて制御し、操作者の操作性及び利便性を向上させることができる農作業機を提供することを目的とする。
【0010】
また前記速度センサの出力又は前記変速段出力手段の出力に基づいて前記走行モードに切替えた場合であって、前記速度センサから所定速度以上の速度を示す出力を前記決定手段が取込んだとき又は前記変速段出力手段から高速段を示す出力を取込んだときに、前記走行モードへの切替えを維持する手段を前記決定手段に設けることにより、前記走行機体が路上を走行している間は前記走行モードで制御し、走行中に操作者の意図しない前記旋回上昇制御又は後進上昇制御が行われることを防止できる農作業機を提供することを目的とする。
【0011】
また前記速度センサの出力又は前記変速段出力手段の出力に基づいて前記走行モードに切替えた場合には、前記選択手段が操作され、前記速度センサから所定速度未満の速度を示す出力を取込むか又は前記変速段出力手段から低速段を示す出力を取込んだときに、前記走行モードから前記通常モードに切替える手段を前記決定手段に設けることにより、前記走行モードになった後は、前記走行機体の速度が低速度であり且つ前記スイッチが操作された場合又は低速段であり且つ前記スイッチが操作された場合に、前記スイッチからの出力に基づいてモードを変更し、操作者の意図しない前記旋回上昇制御又は後進上昇制御が行われることを防止することができる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1発明に係る農作業機は、走行機体と、該走行機体に動力を供給する動力源と、前記走行機体の舵取を行う操舵部材と、前記走行機体に装着されており、農作業を行う作業機
と、該作業機の姿勢を水平に制御する水平制御手段と、前記動力源のトルク特性を制御するエンジン特性制御手段と、作業機が耕耘する土壌の深さを制御する耕耘深さ制御手段と、前記走行機体を後進させたときに前記作業機を上昇させる後進上昇制御手段と、前記走行機体を旋回させたときに前記作業機を上昇させる旋回上昇制御手段と、前記走行機体を旋回させたときに、前記走行機体の速度を減速させる減速旋回制御手段と、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段にそれぞれ制御させるか否かを選択するための選択手段とを備える農作業機において、前記選択手段の操作により、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させる決定をするか、前記後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させて、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、及び耕耘深さ制御手段に制御を実行させない決定をするか、又は前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させない非制御の決定をする決定手段を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明においては、作業機の姿勢を水平に制御する水平制御手段と、前記動力源のトルク特性を制御するエンジン特性制御手段と、作業機が耕耘する土壌の深さを制御する耕耘深さ制御手段と、前記走行機体を後進させたときに前記作業機を上昇させる後進上昇制御手段と、前記走行機体を旋回させたときに前記作業機を上昇させる旋回上昇制御手段と、前記走行機体を旋回させたときに、前記走行機体の速度を減速させる減速旋回制御手段とを設け、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段にそれぞれ制御させるか否かを選択するための選択手段を設け、該選択手段の操作により、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させる決定をするか、前記後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させて、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、及び耕耘深さ制御手段に制御を実行させない決定をするか、又は前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させない非制御の決定をする決定手段を設けることにより、前記選択手段、例えばスイッチを操作して、隣接地では通常モードとしての自動制御を選択し、前記各制御を自動で行い、枕地又は路上では、枕地モードとしての制御又は走行モードとしての手動制御を選択して、前記旋回上昇制御及び後進上昇制御が自動で行われることを回避する。
【0014】
第2発明に係る農作業機は、前記走行機体の速度を検出する速度センサと、設定された変速段を示す信号を出力する変速段出力手段とを備え、前記決定手段は、前記速度センサから所定速度以上の速度を示す出力を取込んだとき、又は前記変速段出力手段から高速段を示す出力を取込んだときに、前記非制御の決定をする手段を有することを特徴とする。
【0015】
本発明においては、前記走行機体の速度を検出する速度センサと、設定された変速段を示す信号を出力する変速段出力手段とを設けることにより、操作者が前記通常モード又は枕地モードから走行モードに切替えずに、路上を走行している場合であって、前記速度センサから所定速度以上の速度を示す出力を取込んだとき又は前記変速段出力手段から高速段を示す出力を取込んだときに、前記走行モードに切替えて制御する。
【0016】
第3発明に係る農作業機は、前記決定手段は、前記非制御の決定をした場合であって、前記速度センサから所定速度以上の速度を示す出力を取込んだとき又は前記変速段出力手段から高速段を示す出力を取込んだときに、前記非制御の決定を維持する手段を有することを特徴とする。
【0017】
本発明においては、前記速度センサの出力又は前記変速段出力手段の出力に基づいて前記走行モードに切替えた場合であって、前記速度センサから所定速度以上の速度を示す出力を前記決定手段が取込んだとき又は前記変速段出力手段から高速段を示す出力を取込んだときに、前記走行モードへの切替えを維持する手段を前記決定手段に設けることにより、前記走行機体が路上を走行している間は前記走行モードで制御する。
【0018】
第4発明に係る農作業機は、前記決定手段は、前記非制御の決定を選択した場合であって、前記選択手段が操作され、前記速度センサから所定速度未満の速度を示す出力を取込むか又は前記変速段出力手段から低速段を示す出力を取込んだときに、前記選択手段の操作により、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させる決定をする手段を有することを特徴とする。
【0019】
本発明においては、前記速度センサの出力又は前記変速段出力手段の出力に基づいて前記走行モードに切替えた場合には、前記選択手段が操作され、前記速度センサから所定速度未満の速度を示す出力を取込むか又は前記変速段出力手段から低速段を示す出力を取込んだときに、前記走行モードから前記通常モードに切替える手段を前記決定手段に設けることにより、前記走行モードになった後は、前記走行機体の速度が低速度であり且つ前記スイッチが操作された場合又は低速段であり且つ前記スイッチが操作された場合に、前記スイッチからの出力に基づいてモードを変更する。
【発明の効果】
【0020】
第1発明に係る農作業機にあっては、作業機の姿勢を水平に制御する水平制御手段と、前記動力源のトルク特性を制御するエンジン特性制御手段と、作業機が耕耘する土壌の深さを制御する耕耘深さ制御手段と、前記走行機体を後進させたときに前記作業機を上昇させる後進上昇制御手段と、前記走行機体を旋回させたときに前記作業機を上昇させる旋回上昇制御手段と、前記走行機体を旋回させたときに、前記走行機体の速度を減速させる減速旋回制御手段とを設け、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段にそれぞれ制御させるか否かを選択するための選択手段を設け、該選択手段の操作により、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させる決定をするか、前記後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させて、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、及び耕耘深さ制御手段に制御を実行させない決定をするか、又は前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させない非制御の決定をする決定手段を設けることにより、前記選択手段、例えばスイッチを操作して、隣接地では通常モードとしての自動制御を選択し、前記各制御を自動で行い、枕地又は路上では、枕地モードとしての制御又は走行モードとしての手動制御を選択して、前記旋回上昇制御及び後進上昇制御が自動で行われることを回避し、操作者の操作性及び利便性を向上させることができる。
【0021】
第2発明に係る農作業機にあっては、前記走行機体の速度を検出する速度センサと、設定された変速段を示す信号を出力する変速段出力手段とを設けることにより、操作者が前記通常モード又は枕地モードから走行モードに切替えずに、路上を走行している場合であって、前記速度センサから所定速度以上の速度を示す出力を取込んだとき又は前記変速段出力手段から高速段を示す出力を取込んだときに、前記走行モードに切替えて制御し、操作者の操作性及び利便性を向上させることができる。
【0022】
第3発明に係る農作業機にあっては、前記速度センサの出力又は前記変速段出力手段の出力に基づいて前記走行モードに切替えた場合であって、前記速度センサから所定速度以
上の速度を示す出力を前記決定手段が取込んだとき又は前記変速段出力手段から高速段を示す出力を取込んだときに、前記走行モードへの切替えを維持する手段を前記決定手段に設けることにより、前記走行機体が路上を走行している間は前記走行モードで制御し、走行中に操作者の意図しない前記旋回上昇制御又は後進上昇制御が行われることを防止することができる。
【0023】
第4発明に係る農作業機にあっては、前記速度センサの出力又は前記変速段出力手段の出力に基づいて前記走行モードに切替えた場合には、前記選択手段が操作され、前記速度センサから所定速度未満の速度を示す出力を取込むか又は前記変速段出力手段から低速段を示す出力を取込んだときに、前記走行モードから前記通常モードに切替える手段を前記決定手段に設けることにより、前記走行モードになった後は、前記走行機体の速度が低速度であり且つ前記スイッチが操作された場合又は低速段であり且つ前記スイッチが操作された場合に、前記スイッチからの出力に基づいてモードを変更し、操作者の意図しない前記旋回上昇制御又は後進上昇制御が行われることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(実施の形態1)
以下本発明を実施の形態1に係る農作業機を示す図面に基づいて詳述する。図1は農作業機の略示側面図、図2は農作業機の略示平面図、図3はロータリ耕耘機の略示拡大側面図、図4はリヤカバーセンサ周りの構成を示す模式図である。
【0025】
図において1は本発明に係る農作業機の走行機体であり、該走行機体1は、ディーゼル式のエンジン5を搭載してあるエンジンフレーム14を有している。該エンジンフレーム14の前側に前バンパ12を設けてあり、前記エンジンフレーム14の左右両側に二つの前車軸ケース13、13を設けてある。該前車軸ケース13、13を介して左右一対の前車輪3、3が設けてある。前記エンジンフレーム14の後部に、機体フレーム16がボルトにて着脱自在に固定してあり、該機体フレーム16の両側に左右一対の後車輪4、4が設けてある。前記エンジン5にて前記後車輪4、4及び前車輪3、3を駆動することにより、走行機体1は前後進走行するように構成してある。前記エンジン5はボンネット6にて覆われており、また前記機体フレーム16の上面にはキャビン7が設置してある。該キャビン7の内部には、操縦座席8と、舵取りすることによって前車輪3の操向方向を左右に動かすステアリングホイール9とが設置されている。前記キャビン7の外側部には、オペレータが乗降するステップ10を設けてあり、該ステップ10より内側で且つ前記キャビン7の底部より下側には、前記エンジン5に燃料を供給する燃料タンク11を設けてある。
【0026】
前記機体フレーム16の後部には、エンジン5からの回転動力を適宜変速して前車輪3、3及び後車輪4、4に伝達するための走行変速機構を有するミッションケース17が搭載されている。後車輪4は、ミッションケース17の外側面から外向きに突出するように装着された図示しない後輪車軸を介して取り付けてある。
【0027】
ミッションケース17には、エンジン5からの回転動力の一部を後述するPTO軸23に伝達するための図示しないPTO変速機構が内蔵されており、該PTO変速機構により、後述するロータリ耕耘機24の回転伝動系への入口において、駆動力の大きさを無段階又は段階的に調節する。
【0028】
ミッションケース17の後部上面には、作業機としてのロータリ耕耘機24を昇降動する油圧式の作業機用昇降機構20が着脱可能に取り付けられている。ロータリ耕耘機24は、ミッションケース17の後部に、一対の左右ロワーリンク21、21及びトップリンク22からなる3点リンク機構を介して連結してある。左右ロワーリンク21、21の前端側は、ミッションケース17の後部の左右側面にロワーリンクピン25、25を介して
回動可能に連結されている。前記トップリンク22の前端側は、前記作業機用昇降機構20の後部のトップリンクヒッチ26にトップリンクピン27を介して連結されている。さらに、ミッションケース17の後側面には、前記ロータリ耕耘機24に駆動力を伝達するためのPTO軸23が後向きに突出するように設けられている。
【0029】
油圧式の前記作業機用昇降機構20は、単動形の昇降制御油圧シリンダ28(後述する図5参照)と、該昇降制御油圧シリンダ28により回動される一対の左右リフトアーム29、29とを備えている。進行方向に向かって左側の前記リフトアーム29と前記ロワーリンク21とは、左リフトロッド30を介して連結されている。進行方向に向かって右側の前記リフトアーム29と前記ロワーリンク21とは、右リフトロッド31、及び該右リフトロッド31の一部を形成する複動形の傾斜制御油圧シリンダ32、及び該傾斜制御油圧シリンダ32のピストンロッド33とを介して連結されている。
【0030】
前記トップリンク22及びロワーリンク21、21の後側に、前記ロータリ耕耘機24を配置してある。前記ロータリ耕耘機24は、前記ロワーリンク21、21に連結される下リンクフレーム35と、前記トップリンクに連結される上リンクフレーム34とを備え、前記下リンクフレーム35の下側に耕耘爪40を有するロータリ部41を配置してあり、該ロータリ部41にPTO入力軸46aが連結してある。
【0031】
前記ロワーリンク21の後端部と、前記下リンクフレーム35の前端部とが、下ヒッチピン35aを介して連結されており、前記トップリンク22の後端部と、前記上リンクフレーム34の前端部とが、上ヒッチピン34aを介して連結されており、前記PTO入力軸46aと前記PTO軸23とは、両端に自在継手が備えられた伸縮自在な伝動軸46bを介して連結されている。前記PTO軸23から出力された動力は、前記PTO入力軸46a及び伝動軸46bを介して前記ロータリ部41に伝達され、前記耕耘爪40を反時計方向に回転させる。
【0032】
前記ロータリ部41は耕耘上面カバー42と、該耕耘上面カバー42に取付けてある耕耘リヤカバー43とを備えている。図2及び図3に示す如く、前記耕耘上面カバー42の上面に、前記ロータリ耕耘機24が耕耘している土壌の深さ、及び前記耕耘リヤカバー43を取付けてあるか否かを検出するポテンショメータ型のリヤカバーセンサ47を設けてある。該リヤカバーセンサ47と耕耘リヤカバー43とは、センサアーム48及びセンサリンク49を介して連結されている。
【0033】
前記リヤカバーセンサ47に内蔵してあるポテンショメータは、図4に示す如く、円弧形の抵抗皮膜47aを備えている。該抵抗被膜47aの両端に端子A及びBを接続してあり、該両端子には基準電圧を印加してある。また前記抵抗被膜47aの曲率中心に、その一端部を配置してあり、該一端部を中心にしてその他端部を抵抗皮膜47aに沿って摺動させる針状のブラシ47bが設けてある。該ブラシ47bの一端部には端子Cを接続してある。
【0034】
前記端子Cは、ケーブル55、雄型コネクタ56、及び雌型コネクタ57を介して、ローパスフィルタからなるフィルタ部54に接続してある。該フィルタ部54は、後述する耕耘制御装置70に接続されており、フィルタ部54から耕耘制御装置70に、前記ブラシ47bの位置を示す信号が入力される。
前記耕耘リヤカバー43が上下したときに、図4の矢印にて示す如く、前記ブラシ47bが、前記抵抗皮膜47a上を摺動し、耕耘制御装置70に、前記ブラシ47bの位置を示す信号が入力され、該信号に基づいて前記ロータリ耕耘機24が耕耘している土壌の深さが検出される。
【0035】
図5は農作業機の作業機系油圧回路図である。作業機系油圧回路100には、エンジン5の回転力により作動する作業機用油圧ポンプ101を備える。該作業機用油圧ポンプ101は、分流弁105を介して、前記傾斜制御油圧シリンダ32に作動油を供給制御するための傾斜制御電磁弁104に接続してある。また前記作業機用油圧ポンプ101は、前記分流弁105を介して、前記昇降制御油圧シリンダ28に作動油を供給制御するための上昇制御電磁弁102及び下降制御電磁弁103に接続してある。
前記傾斜制御電磁弁104の切換を行い、前記ピストンロッド33を上下させて、前記ロータリ耕耘機24を傾斜させ、また前記上昇制御電磁弁102及び下降制御電磁弁103の切換を行い、前記リフトアーム29、29を上下させて、前記ロータリ耕耘機24を上昇させるか又は下降させるようにしてある。
【0036】
図6は農作業機の走行系動力伝達回路図である。走行系動力伝達回路200は、エンジン5の回転力を用いて油圧による無段変速を行うHST201を備える。該HST201は、遊星ギヤユニット202を介して、前後進を切替える主クラッチ203に接続している。該主クラッチ203の付近にホールICを備える速度センサ210を設けてあり、前記主クラッチ203に連結してある図示しないシャフトの回転数に基づいて、走行機体の速度を検出する構成にしてある。
前記主クラッチ203は主ディファレンシャルユニット204に接続しており、該主ディファレンシャルユニット204は前記後車輪4、4に連結している。また前記主クラッチ203は、前車輪用電磁クラッチ205に接続しており、該前車輪用電磁クラッチ205は前記前車輪3、3に連結している。
エンジン5の回転力が、前記HST201、遊星ギヤユニット202、主クラッチ203及び主ディファレンシャルユニット204を介して、前記後車輪4、4に伝動し、走行機体1が走行する構成となっている。また前記前車輪用電磁クラッチ205を接離することにより、2駆または4駆走行に切替わる構成となっている。
また前記遊星ギヤユニット202に、前記PTO軸23に動力を伝えるPTOクラッチユニット206を、伝動部材を介して連結してあり、該PTOクラッチユニット206を接離してPTO軸23への伝動を調整している。
【0037】
次に、キャビン7内に配置された各種操作手段の構成について説明する。図7は操縦座席付近の構成を示す模式的拡大平面図、図8は作業機モード切替スイッチを示す拡大図、図9は作業機調整ボックスを示す拡大図である。
【0038】
前記キャビン7内にある丸ハンドル型のステアリングホイール9は、前記操縦座席8の前方に位置する操縦コラム60上に設けられている。該操縦コラム60の右方には、前記走行機体1の前後進を切替えるリバーサレバー61と、走行機体1を制動操作するための左右ブレーキペダル62、62とが設けてあり、操縦コラム60の左方にはクラッチペダル63が配置されている。前記リバーサレバー61は、前進、後進又はニュートラルを示す位置のいずれかに配置されるようにしてある。
なお前記操縦コラム60の近傍には、前記ステアリングホイール9の操舵角を検出するホール素子型の操舵角センサ9a(後述する図10参照)を設けてあり、前記リバーサレバー61の近傍には後述するポテンショメータ型のリバーサセンサ61aを配設してあり(後述する図10参照)、前記リバーサレバー61の位置を検出する構成にしてある。
前記操縦コラム60を前方から囲むようにして、ダッシュボードパネル64を設けてあり、該ダッシュボードパネル64の右側に作業機モード設定器65を配設してある。該作業機モード設定器65は、図8に示す如く、後述する通常モード、枕地モード、及び走行モードを押下して選択する作業モード切替スイッチ65aと、通常モードであることを表示する通常モード表示ランプ65bと、枕地モードであることを表示する枕地モード表示ランプ65cとを備える。前記作業モード切替スイッチ65aは、前記作業モード切替スイッチ65aを押下する度に、作業モードが変更され、前記通常モード、枕地モード、走
行モードの順に変更され、再び通常モードに戻るようにしてある。
前記ダッシュボードパネル64の左側には、前輪3、3及び後輪4、4の駆動状態を制御する駆動制御スイッチ群66を配置してあり、該駆動制御スイッチ群は、2駆・4駆走行を選択するための2駆・4駆走行切替えスイッチ、旋回時に右側又は左側にある車輪に対し自動的に制動を行うためのオートブレーキスイッチ、及び旋回時に前車輪の回転速度を後車輪の略倍に制御するための倍速スイッチ(いずれも図示せず。)を配置してある。
【0039】
操縦座席8の左右に、右側コラム67及び左側コラム68がそれぞれ設けてあり、該右側コラム67上には、所定の段階に変速可能な主変速レバー67aと、ロータリ耕耘機24の高さ位置を手動で変更調節するための作業機昇降レバー67bと、ロータリ耕耘機24の設定を行う複数のスイッチ群を有する作業機設定ボックス67cとを配置してある。前記左側コラム68上には、作業状態に応じて前記PTO変速機構の変速段を無段階又は段階的に変速操作するためのPTO変速レバー68aを設けてある。前記右側コラム67の内部であって、前記主変速レバー67aの近傍に、主変速レバー67aの変速段を検出するポテンショメータ型の変速段センサ69を設けてある(後述する図10参照)。
【0040】
前記作業機設定ボックス67cは、走行機体1が後進した場合にロータリ耕耘機24を自動的に上昇させるための後進上昇スイッチ671と、走行機体が所定角度以上に操舵されて旋回した場合に、ロータリ耕耘機24を自動的に上昇させるための旋回上昇スイッチ672と、走行機体が所定角度以上に操舵されて旋回した場合に、走行機体の速度を減速させる減速旋回スイッチ673と、ロータリ耕耘機24の傾斜を圃場に対応させるための傾きモード切替スイッチ674と、エンジンのトルク特性を変更するためのエコボタン675と、所定の耕深に設定するための深さモード切替スイッチ676と、耕深を手動で調整するための深さダイヤル677とを備える。
【0041】
次にエンジンの駆動及びロータリ耕耘機の作動を制御する複数の制御方法について説明する。図10は耕耘機制御装置周りの要部構成を示すブロック図である。
【0042】
前記走行機体1に、前記ロータリ耕耘機24の作動を制御する耕耘機制御装置70を設けてあり、該耕耘機制御装置70には前記エンジン5の駆動を制御するガバナ制御装置80が接続してある。また前記耕耘機制御装置70には前記作業機モード設定器65及び前記作業機設定ボックス67cに設けてあるスイッチ群の信号を処理するスイッチ制御装置90が接続してある。前記耕耘機制御装置70、ガバナ制御装置80及びスイッチ制御装置90は、エンジン5の駆動及びロータリ耕耘機24の作動を制御するCPU、エンジン5の駆動及びロータリ耕耘機24の作動に関する制御プログラムを格納してあるROM、種々の情報を一時的に記憶するRAM等を備える。
前記耕耘機制御装置70に、前記変速段センサ69、操舵角センサ9a、速度センサ210、リヤカバーセンサ47、リバーサセンサ61a、及び前記走行機体1の傾斜角度を検出するローリングセンサ50を接続してあり、また前記上昇制御電磁弁102、下降制御電磁弁103、及び傾斜制御電磁弁104を接続してある。前記ガバナ制御装置80には、エンジン5に供給される燃料の量を調整する電子ガバナ81を接続してあり、前記スイッチ制御装置90には、前記作業機設定ボックス67c及び作業機モード設定器65を接続してある。
【0043】
〔耕耘深さ制御〕
ロータリ耕耘機24が耕耘する土壌の深さを制御する耕耘深さ制御について説明する。前記深さモード切替スイッチ676及び深さダイヤル677の出力を取込んで、ロータリ耕耘機24が耕耘すべき土壌の深さを記憶する。次に前記耕耘機制御装置70は、前記リヤカバーセンサ47の出力を取込んで、ロータリ耕耘機24が耕耘している土壌の深さを記憶し、ロータリ耕耘機24が耕耘している土壌の深さと、ロータリ耕耘機24が耕耘す
べき土壌の深さとを比較して、前記上昇制御電磁弁102又は下降制御電磁弁103の切換を行い、ロータリ耕耘機24が耕耘している土壌深さをロータリ耕耘機24が耕耘すべき土壌の深さにする。
【0044】
〔水平制御〕
ロータリ耕耘機24の傾きを地面に対し水平に制御する水平制御について説明する。前記耕耘機制御装置70は、前記傾きモード切替スイッチ674又は作業モード切替スイッチ65aにより、水平制御を行うことを示す信号が入力されている場合に、前記ローリングセンサ50から前記走行機体1の傾斜角度を示す信号を取込んで、前記走行機体1の傾斜角度を記憶する。そして該傾斜角度に基づいて、前記傾斜制御電磁弁104の切換を行い、前記ロータリ耕耘機24の傾きを水平にする。
【0045】
〔エンジン特性制御〕
エンジン5のトルク特性を変更するエンジン特性制御について説明する。前記耕耘機制御装置70は、前記エコボタン675又は作業モード切替スイッチ65aから、エンジン特性制御を行うことを示す信号を取込んだときに、所定の信号を前記ガバナ制御装置80に出力する。該信号を取込んだガバナ制御装置80は、前記電子ガバナ81の開度を調整し、エンジン5の最大トルクが高回転域にて得られるように前記エンジン5の燃焼効率を変化させる。
【0046】
〔後進上昇制御〕
走行機体1を後進させたときに前記ロータリ耕耘機24を上昇させる後進上昇制御について説明する。前記耕耘機制御装置70は、前記後進上昇スイッチ671又は作業モード切替スイッチ65aから後進上昇制御を行うことを示す信号を取込んだ場合であって、前記リバーサセンサ61aから後進示す信号を取込んだときに、前記上昇制御電磁弁102を開き、前記ロータリ耕耘機24を上昇させる。
【0047】
〔旋回上昇制御〕
走行機体1を旋回させたときに前記ロータリ耕耘機24を上昇させる旋回上昇制御について説明する。前記耕耘機制御装置70は、前記旋回上昇スイッチ672又は作業モード切替スイッチ65aから旋回上昇制御を行うことを示す信号を取込んだ場合であって、前記操舵角センサ9aから所定角度以上の角度を示す信号を取込んだときに、前記上昇制御電磁弁102を開き、前記ロータリ耕耘機24を上昇させる。
【0048】
〔減速旋回制御〕
適切な旋回半径にて走行機体1を旋回させるために旋回時に減速させる減速旋回制御について説明する。前記耕耘機制御装置70は、前記減速旋回スイッチ673又は作業モード切替スイッチ65aから減速旋回制御を行うことを示す信号を取込んだ場合であって、前記操舵角センサ9aから所定角度以上の角度を示す信号を取込んだときに、前記ガバナ制御装置80に所定の信号を出力する。該信号を取込んだ前記ガバナ制御装置80は、前記電子ガバナ81の開度を小さくして、前記走行機体1を減速させる。
【0049】
次に農作業機の作業モードの変更処理について説明する。ここで作業モードとは、前記耕耘深さ制御、水平制御、エンジン特性制御、後進上昇制御、旋回上昇制御、及び減速旋回制御を作業内容に即して採否した制御方法の組合せをいい、作業モードの変更処理とは、作業モード切替スイッチ65aにより作業モードを変更する処理を言う。図11は作業モードの内容を示す表、図12は耕耘機制御装置70による作業モードの変更処理を示すフローチャートである。
【0050】
図11に示す如く、作業モードの内、複数の制御方法を全て選択した組合せを通常モー
ドとし、前記後進制御、旋回上昇制御及び減速旋回制御を除いた他の制御方法を選択した組合せを枕地モードとし、複数の制御方法を全て選択していない組合せを走行モードとしてある。すなわち、通常モードにおいては、耕耘深さ制御、水平制御、エンジン特性制御、後進上昇制御、旋回上昇制御、及び減速旋回制御を自動で制御し、枕地モードにおいては、耕耘深さ制御、水平制御、及びエンジン特性制御を自動で制御し、後進上昇制御、旋回上昇制御、及び減速旋回制御を手動で制御する。走行制御においては、耕耘深さ制御、水平制御、エンジン特性制御、後進上昇制御、旋回上昇制御、及び減速旋回制御を手動で制御する。
【0051】
作業モードの変更処理について説明する。前記耕耘機制御装置70は、前記作業モード切替スイッチ65aが押下されたことを示す信号が入力されたか否か判断する(ステップS1)。前記作業モード切替スイッチ65aが押下されたことを示す信号が入力されていないときは(ステップS1:NO)、作業モードの変更処理を終了する。前記作業モード切替スイッチ65aが押下されたことを示す信号が入力されたときは(ステップS1:YES)、前記作業モード切替スイッチ65aにより選択された作業モードが通常モードであるか否か判断する(ステップS2)。変更後の作業モードが通常モードであるときは(ステップS2:YES)、前記通常モード表示ランプ65bを点灯させる信号を出力し(ステップS3)、前記枕地モード表示ランプ65cを消灯させる信号を出力する(ステップS4)。そして通常モードでの制御を行う(ステップS5)。
【0052】
選択された作業モードが通常モードでないときは(ステップS2:NO)、選択された作業モードが枕地モードであるか否か判断する(ステップS6)。選択された作業モードが枕地モードであるときは(ステップS6:YES)、前記通常モード表示ランプ65bを消灯させる信号を出力し(ステップS7)、前記枕地モード表示ランプ65cを点灯させる信号を出力する(ステップS8)。そして枕地モードでの制御を行う(ステップS9)。
選択された作業モードが枕地モードでないときは(ステップS6:NO)、通常モード表示ランプ65bを消灯させる信号を出力し(ステップS10)、枕地モード表示ランプ65cを消灯させる信号を出力する(ステップS11)。そして走行モードでの制御を行う(ステップS12)。
【0053】
次に高速度対応処理について説明する。ここで高速度対応処理とは、通常モード又は枕地モードでの制御を行っている場合であって、所定速度以上の速度を示す信号が入力されたときに実行される処理をいう。図13は耕耘機制御装置70による高速度対応処理を説明するフローチャートである。
【0054】
前記耕耘機制御装置70は、走行モードでの制御を行っているか否か判断する(ステップS21)。走行モードでの制御を行っているときは(ステップS21:YES)、高速度対応処理を終了する。通常モード又は枕地モードでの制御を行っているときは(ステップS21:NO)、前記速度センサ210の出力を取込み、農作業機が所定速度以上で走行しているか否か判断する(ステップS22)。農作業機が所定速度未満で走行しているときは(ステップS22:NO)、高速度対応処理を終了する。
【0055】
農作業機が所定速度以上で走行しているときは(ステップS22:YES)、農作業機は路面を走行していると推定され、作業モードを通常モード又は枕地モードから走行モードに強制的に変更する(ステップS23)。そして前記耕耘機制御装置70は、前記作業モード切替スイッチ65aが押下されたことを示す信号が入力されたか否か判断する(ステップS24)。前記作業モード切替スイッチ65aが押下されたことを示す信号が入力されていないときは(ステップS24:NO)、ステップS24に戻る。前記作業モード切替スイッチ65aが押下されたことを示す信号が入力されたときは(ステップS24:
YES)、前記速度センサ210の出力を取込み、農作業機が所定速度以上で走行しているか否か判断する(ステップS25)。走行機体1が所定速度以上で走行しているときは(ステップS25:YES)、農作業機は路面を走行していると推定され、作業モードを変更せずにステップS24に戻る。農作業機が所定速度未満で走行しているときは(ステップS25:NO)、農作業機は圃場で作業していると推定され、前記作業モード切替スイッチ65aの入力に基づいて作業モードを変更する(ステップS26)。
【0056】
実施の形態1に係る農作業機にあっては、前記耕耘機制御装置70に前記通常モード、枕地モード、及び走行モードを設定し、各モードを選択する作業モード切替スイッチ65aを設けることにより、該作業モード切替スイッチ65aを使用して、前記隣接地での作業、枕地での作業、及び路上走行に応じた各モードをそれぞれ選択し、操作者の操作性及び利便性を向上させることができる。
【0057】
また農作業機の速度を検出する速度センサ210を設けることにより、操作者が前記通常モード又は枕地モードから走行モードに切替えずに、路上を走行にしている場合に、前記耕耘機制御装置70が前記速度センサ210から所定速度以上の速度を示す出力を取込んだときは、前記走行モードに切替えて制御し、操作者の操作性及び利便性を向上させることができる。
【0058】
また前記速度センサ210の出力に基づいて前記走行モードに切替えた場合であって、前記耕耘機制御装置70が、前記速度センサ210から所定速度以上の速度を示す出力を取込んだときは、前記走行モードを維持する手段を設けることにより、前記走行機体1が路上を走行している間は走行モードで制御し、走行中に操作者の意図しない前記旋回上昇制御及び後進上昇制御等の通常モードでの制御が行われることを防止することができる。
【0059】
また前記速度センサ210の出力に基づいて前記走行モードに切替えた場合には、前記作業モード切替スイッチ65aが操作されると共に、前記耕耘機制御装置70が前記速度センサ210から所定速度未満の速度を示す出力を取込んだときに、前記走行モードから前記通常モード又は枕地モードに変更する手段を設けることにより、前記走行モードになった後は、走行機体1の速度が低速度であり且つ前記作業モード切替スイッチ65aが操作された場合に、前記作業モード切替スイッチ65aの出力に基づいて前記走行モードを変更し、操作者の意図しない前記旋回上昇制御及び後進上昇制御等が行われることを防止することができる。
【0060】
なおロータリ耕耘機24に替えて、プラウ及び荷台等の作業機を走行機体に連結しても良い。また耕耘機制御装置70はロータリ耕耘機24の前後方向の姿勢を制御する構成を備えていても良い。
【0061】
(実施の形態2)
以下本発明に係る農作業機を、実施の形態2を示す図面に基づいて詳述する。図14は耕耘機制御装置70による高速段対応処理を説明するフローチャートである。ここで高速段対応処理とは、通常モード又は枕地モードでの制御を行っている場合であって、主変速レバー67aが最高速段になっているときに実行される処理をいう。
【0062】
前記耕耘機制御装置70は、走行モードでの制御を行っているか否か判断する(ステップS31)。走行モードでの制御を行っているときは(ステップS31:YES)、高速段対応処理を終了する。通常モード又は枕地モードでの制御を行っているときは(ステップS31:NO)、前記変速段センサ69の出力を取込み、変速段が最高速段になっているか否か判断する(ステップS32)。前記主変速レバー67aが最高速段になっていないときは(ステップS32:NO)、高速段対応処理を終了する。
【0063】
前記主変速レバー67aが最高速段になっているときは(ステップS32:YES)、農作業機は路面を走行していると推定され、作業モードを通常モード又は枕地モードから走行モードに強制的に変更する(ステップS33)。そして前記耕耘機制御装置70は、前記作業モード切替スイッチ65aが押下されたことを示す信号が入力されたか否か判断する(ステップS34)。前記作業モード切替スイッチ65aが押下されたことを示す信号が入力されていないときは(ステップS34:NO)、ステップS34に戻る。前記作業モード切替スイッチ65aが押下されたことを示す信号が入力されたときは(ステップS34:YES)、前記変速段センサ69の出力を取込み、主変速レバー67aが最高速段になっているか否か判断する(ステップS35)。主変速レバー67aが最高速段になっているときは(ステップS35:YES)、農作業機は路面を走行していると推定され、作業モードを変更せずにステップS34に戻る。主変速レバー67aが最高速段になっていないときは(ステップS35:NO)、農作業機は圃場で作業していると推定され、前記作業モード切替スイッチ65aの入力に基づいて作業モードを変更する(ステップS36)。
【0064】
実施の形態2に係る農作業機にあっては、主変速レバー67aと、該主変速レバー67aにより設定された変速段を検出する変速段センサ69を設けることにより、操作者が前記通常モード又は枕地モードから走行モードに切替えずに、変速段を最高速段にして、走行機体1を走行状態にした場合に、前記耕耘機制御装置70が作業モードを強制的に前記走行モードに変更して制御し、操作者の操作性及び利便性を向上させることができる。
【0065】
また前記変速段センサ69の出力に基づいて前記走行モードに変更した場合であって、前記耕耘機制御装置70が、前記変速段センサ69から最高速段を示す出力を取込んだときは、前記走行モードを維持する手段を設けることにより、走行機体1が路上を走行している間は走行モードで制御し、走行中に操作者の意図しない前記旋回上昇制御及び後進上昇制御等が行われることを防ぐことができる。
【0066】
また前記変速段センサ69の出力に基づいて前記走行モードに変更した場合には、前記作業モード切替スイッチ65aが操作されると共に、前記耕耘機制御装置70が前記変速段センサ69から低速段を示す出力を取込んだときに、前記走行モードから前記通常モード又は枕地モードに変更する手段を設けることにより、前記変速段センサ69の出力に基づいて前記走行モードになった後は、変速段が最高速段でなく且つ前記作業モード切替スイッチ65aが操作された場合に、前記作業モード切替スイッチ65aの出力に基づいて作業モードを変更し、操作者の意図しない前記旋回上昇制御及び後進上昇制御等が行われることを防止することができる。
【0067】
なお例えば6速を最高速段とする6段変速の場合に、6速又は5速を高速段とし、4速以下を低速段として、高速段になっているときに、作業モードを強制的に走行モードに変更する構成としても良い(ステップS32及びステップS33参照)。また主変速レバー67a及び変速段センサ69に替えて、変速段を選択する変速段選択スイッチを設け、該変速段選択スイッチから出力された信号に基づいて、高速段対応処理を行う構成であっても良い。また最高速段になっている場合に、速度センサ210の出力を取込み、農作業機が所定速度以上で走行しているときに、作業モードを強制的に走行モードに変更する構成としても良い。また農作業機が所定速度以上で走行している場合に、変速段センサ69の出力を取込み、高速段になっているときに、作業モードを強制的に走行モードに変更する構成としても良い。
【0068】
実施の形態2に係る農作業機の構成の内、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を付しその詳細な説明を省略する。
【0069】
(実施の形態3)
以下本発明を実施の形態3に係る農作業機を示す図面に基づいて詳述する。図15はリヤカバーセンサ周りの構成を示す模式図、図16は耕耘機制御装置70による不装着対応処理を説明するフローチャートである。ここで不装着対応処理とはロータリ耕耘機24を走行機体1に装着していないときに実行される処理をいう。
図15に示す如く、前記耕耘機制御装置70に、前記ブラシ47bの位置を示す信号が入力される入力ポート70pが設けてある。耕耘機制御装置70は、前記入力ポート70Pを介して、前記フィルタ部54からブラシ47bの位置を示す信号が入力されたか否かを検出する構成にしてある。
【0070】
次に耕耘機制御装置70による不装着対応処理について説明する。前記耕耘機制御装置70は、前記フィルタ部54から前記ブラシ47bの位置を示す信号が入力されているか否か判断する(ステップS41)。該信号が入力されているときは、(ステップS41:YES)、不装着対応処理を終了する。
【0071】
前記ブラシ47bの位置を示す信号が入力されていないときは(ステップS41:NO)、作業モードを走行モードに強制的に設定する(ステップS42)。そして前記耕耘機制御装置70は、前記スイッチ制御装置90から、前記作業モード切替スイッチ65aが押下されたことを示す信号が入力されたか否か判断する(ステップS43)。前記作業モード切替スイッチ65aが押下されたことを示す信号が入力されていないときは(ステップS43:NO)、ステップS43に戻る。前記作業モード切替スイッチ65aが押下されたことを示す信号が入力されたときは(ステップS43:YES)、前記ブラシ47bの位置を示す信号が入力されているか否か判断する(ステップS44)。該信号が入力されていないときは(ステップS44:NO)、作業モードを変更せずにステップS43に戻る。
前記ブラシ47bの位置を示す信号が入力されているときは(ステップS44:YES)、前記作業モード切替スイッチ65aが押下されたことを示す信号に基づいて作業モードを変更する(ステップS45)。
【0072】
実施の形態3に係る農作業機にあっては、前記ロータリ耕耘機24を前記走行機体1に装着しているか否かを検出するリヤカバーセンサ47を設けることにより、前記耕耘機制御装置70に、前記ブラシ47bの位置を示す信号が入力されていないときは、前記走行モードに設定し、前記ロータリ耕耘機24の前記走行機体1への装着作業が完了する前に、前記旋回上昇制御又は後進上昇制御等が行われ、前記ロータリ耕耘機24が横転することを防ぐことができる。
通常、ロータリ耕耘機24を走行機体1に装着するときには、ロータリ耕耘機24を載置し、走行機体1を後進させてロータリ耕耘機24に接近させる。このときステアリングホイール9を操作して、走行機体1及びロータリ耕耘機24の左右方向の相対位置を調整する。そのため、通常モードであるときには、前記装着作業の途中に旋回上昇制御又は後進上昇制御が行われ、前記ロワーリンク21が上昇して、ロータリ耕耘機24に接触し、ロータリ耕耘機24が横転するおそれがある。走行モードに設定してあれば旋回上昇制御又は後進上昇制御は行われず、ロータリ耕耘機24が横転するおそれはない。
【0073】
実施の形態3に係る農作業機の構成の内、実施の形態1又は2と同様な構成については同じ符号を付しその詳細な説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】実施の形態1に係る農作業機の略示側面図である。
【図2】実施の形態1に係る農作業機の略示平面図である。
【図3】実施の形態1に係る農作業機のロータリ耕耘機の略示拡大側面図である。
【図4】実施の形態1に係る農作業機のリヤカバーセンサ周りの構成を示す模式図である。
【図5】実施の形態1に係る農作業機の作業機系油圧回路図である。
【図6】実施の形態1に係る農作業機の走行系動力伝達回路図である。
【図7】実施の形態1に係る農作業機の操縦座席付近の構成を示す模式的拡大平面図である。
【図8】実施の形態1に係る農作業機の作業機モード切替スイッチを示す拡大図である。
【図9】実施の形態1に係る農作業機の作業機調整ボックスを示す拡大図である。
【図10】実施の形態1に係る農作業機の耕耘機制御装置周りの要部構成を示すブロック図である。
【図11】実施の形態1に係る農作業機の耕耘機制御装置による作業モードの内容を示す表である。
【図12】実施の形態1に係る農作業機の耕耘機制御装置による作業モードの変更処理を示すフローチャートである。
【図13】実施の形態1に係る農作業機の耕耘機制御装置による高速度対応処理を説明するフローチャートである。
【図14】実施の形態2に係る農作業機の耕耘機制御装置による高速段対応処理を説明するフローチャートである。
【図15】実施の形態3に係る農作業機のリヤカバーセンサ周りの構成を示す模式図である。
【図16】実施の形態3に係る農作業機の耕耘機制御装置による不装着対応処理を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0075】
1 走行機体
5 エンジン
9 ステアリングホイール
9a 操舵角センサ
24 ロータリ耕耘機
61 リバーサレバー
47 リヤカバーセンサ
65a 作業モード切替スイッチ
67a 主変速レバー
69 変速段センサ
67c 作業機設定ボックス
70 耕耘機制御装置
80 ガバナ制御装置
81 電子ガバナ
90 スイッチ制御装置
210 速度センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体と、該走行機体に動力を供給する動力源と、前記走行機体の舵取を行う操舵部材と、前記走行機体に装着されており、農作業を行う作業機と、該作業機の姿勢を水平に制御する水平制御手段と、前記動力源のトルク特性を制御するエンジン特性制御手段と、作業機が耕耘する土壌の深さを制御する耕耘深さ制御手段と、前記走行機体を後進させたときに前記作業機を上昇させる後進上昇制御手段と、前記走行機体を旋回させたときに前記作業機を上昇させる旋回上昇制御手段と、前記走行機体を旋回させたときに、前記走行機体の速度を減速させる減速旋回制御手段と、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段にそれぞれ制御させるか否かを選択するための選択手段とを備える農作業機において、
前記選択手段の操作により、
前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させる決定をするか、
前記後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させて、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、及び耕耘深さ制御手段に制御を実行させない決定をするか、
又は前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させない非制御の決定をする決定手段を備えることを特徴とする農作業機。
【請求項2】
前記走行機体の速度を検出する速度センサと、設定された変速段を示す信号を出力する変速段出力手段とを備え、
前記決定手段は、前記速度センサから所定速度以上の速度を示す出力を取込んだとき、又は前記変速段出力手段から高速段を示す出力を取込んだときに、前記非制御の決定をする手段を有することを特徴とする請求項1に記載の農作業機。
【請求項3】
前記決定手段は、前記非制御の決定をした場合であって、前記速度センサから所定速度以上の速度を示す出力を取込んだとき又は前記変速段出力手段から高速段を示す出力を取込んだときに、前記非制御の決定を維持する手段を有することを特徴とする請求項2に記載の農作業機。
【請求項4】
前記決定手段は、前記非制御の決定を選択した場合であって、前記選択手段が操作され、前記速度センサから所定速度未満の速度を示す出力を取込むか又は前記変速段出力手段から低速段を示す出力を取込んだときに、前記選択手段の操作により、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させる決定をする手段を有することを特徴とする請求項2に記載の農作業機。
【請求項1】
走行機体と、該走行機体に動力を供給する動力源と、前記走行機体の舵取を行う操舵部材と、前記走行機体に装着されており、農作業を行う作業機と、該作業機の姿勢を水平に制御する水平制御手段と、前記動力源のトルク特性を制御するエンジン特性制御手段と、作業機が耕耘する土壌の深さを制御する耕耘深さ制御手段と、前記走行機体を後進させたときに前記作業機を上昇させる後進上昇制御手段と、前記走行機体を旋回させたときに前記作業機を上昇させる旋回上昇制御手段と、前記走行機体を旋回させたときに、前記走行機体の速度を減速させる減速旋回制御手段と、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段にそれぞれ制御させるか否かを選択するための選択手段とを備える農作業機において、
前記選択手段の操作により、
前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させる決定をするか、
前記後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させて、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、及び耕耘深さ制御手段に制御を実行させない決定をするか、
又は前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させない非制御の決定をする決定手段を備えることを特徴とする農作業機。
【請求項2】
前記走行機体の速度を検出する速度センサと、設定された変速段を示す信号を出力する変速段出力手段とを備え、
前記決定手段は、前記速度センサから所定速度以上の速度を示す出力を取込んだとき、又は前記変速段出力手段から高速段を示す出力を取込んだときに、前記非制御の決定をする手段を有することを特徴とする請求項1に記載の農作業機。
【請求項3】
前記決定手段は、前記非制御の決定をした場合であって、前記速度センサから所定速度以上の速度を示す出力を取込んだとき又は前記変速段出力手段から高速段を示す出力を取込んだときに、前記非制御の決定を維持する手段を有することを特徴とする請求項2に記載の農作業機。
【請求項4】
前記決定手段は、前記非制御の決定を選択した場合であって、前記選択手段が操作され、前記速度センサから所定速度未満の速度を示す出力を取込むか又は前記変速段出力手段から低速段を示す出力を取込んだときに、前記選択手段の操作により、前記水平制御手段、エンジン特性制御手段、耕耘深さ制御手段、後進上昇制御手段、旋回上昇制御手段、及び減速旋回制御手段に制御を実行させる決定をする手段を有することを特徴とする請求項2に記載の農作業機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−165408(P2009−165408A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7147(P2008−7147)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】
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