説明

近接センサおよび近接センサシステム

【課題】動作表示発光デバイスの発光をそのまま光通信にしてリアルタイムに動作状態を無線または光ファイバで通信し、システムの信頼性と安全性を大幅に向上させる近接センサを提供する。
【解決手段】本近接センサは、動作光通信が可能な1つまたは複数の動作表示部を備え、この動作表示部で動作表示すると共に、検出物の検出動作に対応した動作光通信することを可能としたセンサである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出物を非接触で検出する非接触センサ部と、非接触センサ部のセンサ信号から検出物の位置および距離および速度および振動等の動作に対応して所要の制御をするセンサ制御部とを備えた近接センサならびに該近接センサを用いた近接センサシステムに関するものである。
【0002】
本発明の近接センサは近接スイッチと称するものも含む概念である。
【背景技術】
【0003】
近接センサには検出物の導電度、電気容量、磁気などの電磁気特性や反射率、吸収率などの光学特性や環境温湿度など、検出項目の距離や位置や速度や振動など、に対応するために多種多用なセンサがある。また実機に取り付ける場合に位置、距離、角度、光軸などを適切に調整し、環境電磁界などの影響を最小にするために、自己診断し、結果を発光ダイオード(LED)の明滅や点滅パターン発光および有色発光で動作表示する技術が下記特許文献1等に開示されている。
【特許文献1】特開2006−92486号公報:平成18年4月6日(2006.4.6)公開
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記公報等に開示されている近接センサにおいては動作表示部を備えていたとしても近接センサを設置箇所に取り付けた後は、当該動作表示部は近接センサの不具合時や故障時以外等は用いられない。また、近接センサではその形状およびコスト面から安全かつ高速大容量で検出物の動作データ伝送を行うことは実現が困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による近接センサは、PLC等の上位アンプまたはコントローラとの動作光通信が可能な発光機能を有する1つまたは複数の動作表示部と、検出物を非接触で検出する非接触センサ部と、上記非接触センサ部のセンサ信号から検出物の検出動作に対応して上記動作表示部を制御するセンサ制御部と、を備えたことを特徴とするものである。
【0006】
上記近接センサでは近接スイッチも含むものである。
【0007】
上記近接センサは誘導形、磁気形、容量形、超音波形、光電形、等に限定されない。
【0008】
本発明では、動作表示部が動作光通信機能を有するので、例えばセンサやスイッチを含む近接センサシステムにおける光通信部との間で動作光通信することができ、近接センサシステムの動作時に常時または随時リアルタイムで動作状態を光通信することに用いることができる。
【0009】
好ましくは、上記動作表示部は、発光部または受発光部である。
【0010】
上記動作表示部を発光部で構成した場合、当該近接センサと対応する近接センサシステム内の光受信部に対して片方向の動作光通信をすることができ、また、上記動作表示部を受発光部で構成した場合では、上記光受信部との間で双方向の光通信をすることができる。特に、上記動作表示部を受発光部で構成した場合では、上記双方向の光通信により、センサやスイッチを含む近接センサシステムに対してリアルタイムでのフィードバック制御が可能になり、従来の近接センサシステムにくらべて高度な精密制御および安全制御ができるようになる。
【0011】
好ましくは、上記動作表示部は、可視光線発光をする電球形状の発光ダイオード、シート状の有機エレクトロルミネセンス、レーザダイオードのいずれかである。
【0012】
好ましくは、上記動作表示部は、人間が視認できない高機能な光通信を実現する赤外線発光ダイオードである。
【0013】
好ましくは、上記発光部を受光センサと共に樹脂モールドで受発光一体型デバイス構成となし、発光部と受光センサとで双方向光通信を可能とすることである。このデバイス構成には1チップ構成化も含む。
【0014】
好ましくは、当該近接センサの電源としてソーラセルを実装することである。
【0015】
好ましくは、少なくとも上記非接触センサ部の検出動作に対応して動作光通信データと共用する発光部または受発光部の発光態様のデータ、を事前に書き換え可能に記憶する記憶部を備える。
【0016】
本発明による近接センサシステムは、上記近接センサと、この近接センサの動作表示部と空間または液間または光ファイバを経由して光通信する光受信部と、を備えたことを特徴とするものである。
【0017】
なお、非接触センサ部は、検出物の位置偏差、距離偏差、速度偏差、振動範囲等を非接触で検出するセンサヘッドや、このセンサヘッドのコイルを要素の一つとする発振回路部、等で構成することができる。
【0018】
非接触センサ部は誘導型であるが、磁気型、容量型、超音波型、光電型、等に限定されない。
【0019】
また、本発明の近接センサでは、動作表示部、非接触センサ部、センサ制御部、等をファームウエアで制御すると共に、外部パソコン、PLC等とシリアル通信で接続するUSBまたはRS485を備えることができる。
【0020】
なお、発光部を平面発光および円筒状発光で360度死角なしの動作光通信する有機ELで構成することができる。
【0021】
なお、上記近接センサ側を、空間および液間または光ファイバを経由して、フォトダイオード等の受光デバイスを内蔵した光受信側とを含めたシステム構成として、近接センサの遠隔動作状態監視やフィードバック制御に用いることができる。
【0022】
また、光通信を双方向通信にした場合、近接センサをリアルタイムでフィードバック制御を行うことが可能になり、従来の近接センサにくらべて高度な精密制御および安全制御ができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の近接センサでは、この近接センサのセンサ検出信号で機械や装置やその他を監視する近接センサシステム等において、動作光通信機能により、その機械や装置やその他をリアルタイムに監視・解析・判断することができ、当該近接センサシステムの信頼性・安全性を大幅に強化することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施の形態に係る近接センサおよびそれを用いた近接センサシステムを説明する。
【0025】
図1は本発明の誘導形近接センサと、その近接センサを制御する近接センサコントローラと、のブロック構成を示す。図1は全体としては近接センサシステムを構成する。
【0026】
まず、実施の形態の近接センサの構成から説明する。近接センサは、検出位置が図示両矢印向きに変位する検出物1に非接触に設置される検出コイル3を内蔵したセンサヘッド5を備える。このセンサヘッド5の出力はプリアンプ内蔵の発振回路部7で発振させられ、この発振回路部7の出力は、演算・処理部9に入力される。ここで検出コイル3にはコア有り、コア無し、を含む。センサヘッド5は非接触センサ部の少なくとも一部を構成する。非接触センサ部には発振回路部7を含めてもよい。上記近接センサではアンプ分離型では同軸ケーブル23でセンサヘッド5と発振回路部7とを接続する。
【0027】
演算・処理部9は、発振回路部7の出力からセンサヘッド5の検出物1の検出状態に対応したインピーダンスの変化および発振状態を検出する。演算・処理部9は、CPU/FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)により構成され、メモリ、検出回路、周辺回路等のハードウェアと、発振、ドライブ、表示、補正等がプログラムされたソフトウエア(ファームウエア)とを含むセンサ制御部の一例を構成する。演算・処理部9から、補正修正されデータ化した検出出力と、動作表示制御部13へのドライブ信号と、が出力される。
【0028】
動作表示制御部13は、動作表示部である動作表示・動作光通信LED14が接続され、演算・処理部9からの動作表示および動作光通信に対応したドライブ信号に応答してLED14をドライブして発光させる。このLED14の発光色は特に限定されない。演算・処理部9は内蔵ソフトウエアにより自身で上記LED14をドライブするドライブ信号を生成する。演算・処理部9には、USB通信入出力コネクタ17を介して外部パソコンまたはPLC15が接続され、これによって演算・処理部9は外部パソコンまたはPLC15等と各種通信をすることができる。また、このLED14の好ましい形態は人間が視認できないが高機能な光通信を実現する赤外線発光LEDである。LED14は動作表示部を構成するが、動作表示制御部13を含めて動作表示部と称してもよい。なお、演算・処理部9は、外部パソコンまたはPLC15等と各種通信をすることができる。またソーラセル(太陽電池)19実装の近接センサの場合は近接センサ各部に電源供給するための発電回路部21を内蔵する。
【0029】
近接センサコントローラ16は、近接センサの動作表示・動作光通信LED14からの発光を動作光通信光として受光することができる受光素子16aと、この受光素子16aの受光出力を復調し処理する復調・処理回路16bと、で構成されている。この近接センサコントローラ16は、復調・処理回路16b出力により上記近接センサによる検出物1の検出状態を知ることができるものであり、近接センサと共に近接センサシステムを構成することができる。
【0030】
以上の構成を備えた近接センサおよび近接センサコントローラ16の形態は磁気形または容量形または超音波形または光電形においてもそれぞれの形態は図1の構成から容易に展開できる。
【0031】
図2(a)(b)(c)は本発明の誘導形近接センサの構造を示す。センサヘッド5は、ベース基板(プラットフォーム)25にハンダやボンディング等で接続されている。このベース基板25にはLSI(大規模集積回路)を含む図1構成の電子回路要素7,9,11,13,等の電子部品モジュール27が実装されモールドされている。センサヘッド5はベース基板25に同軸ケーブルで分離して接続してもよい。
【0032】
図2(a)では、ベース基板25に単独でLED29が搭載されており、このLED29は動作表示と動作光通信兼用のLEDである。なお、LED29は単独有機ELに置き換えた構造も含む。LED29は可視光の動作表示と動作光通信兼用発光でよいし、赤外線の動作光通信発光専用でもよい。
【0033】
図2(b)では、ベース基板25に2個のLED31,33が搭載されており、これら2個のLED31,33は動作表示と動作光通信兼用また人間が視認できない高機能な光通信を実現する赤外線発光LEDであり、検出コイル3や発振回路部7などを独立2系統にして光受信側で近接センサの不具合とか検出物1の不具合とかをチェックできるようにして安全近接センサ装置の形態としてもよい。この場合では安全のために近接センサをわざわざ2個備える必要がなくなり、また、プログラマブルコントローラ等のコントローラを含む近接センサ装置でフィードバック制御による安全制御を安価でかつ無線で実現することができるようになる。なお、両LED31,33とも動作光通信と動作表示とに兼用してもよい。また、両LED31,33の発光色や発光点滅や発光明滅を組み合わせて動作の情報量を多くすることができるようにしてもよい。
【0034】
図2(c)では、ベース基板25に有機ELシート35が設けられており、近接センサの動作表示兼用の光通信にその有機ELシート35を用い、ソーラセル37で光給電を行うバッテリレスの近接センサとしてもよい。有機ELシート35はその発光形態が平面発光であるので、光通信では通信性に優れた発光形態となる。
【0035】
図3は、本発明の近接センサによる動作表示・動作光通信において光受信側を含めた近接センサシステムの構成である。図中、矢印Aは本発明の近接センサ、矢印Bは伝送媒体の無線や光ファイバ、矢印Cは光受信部を示す。
【0036】
近接センサA側において、動作光送信の演算処理部39構成は、CPU/FPGAモジュールからなり、メモリ、検出回路、周辺回路等のハードウェアと、発振、ドライブ、表示、補正等をプログラムされたソフトウエアと、を含む演算処理部39と、ドライブと出力を担当する動作表示・光通信部41と、可視光やレーザダイオード(LD)や赤外線発光LEDからなる光出力デバイス45とで構成される。
【0037】
光受信部C側はフォトダイオード(PD)などの受光デバイス47と、光分波や復調回路や処理回路等からなる復調・処理回路49と、で構成されている。近接センサA側の光出力デバイス45からの出力光は空間や液間を点線51で示す無線または光ファイバ53で光受信部C側の受光デバイス47側に伝送され、復調・処理回路49で復調・処理される。
【0038】
図3の近接センサシステムでは、近接センサA側にフォトダイオード(PD)をもちいた受光部(図1参照)、発光側に赤外LD(レーザダイオード)を用いた送信部(図示なし)を内蔵して双方向通信をおこない、光受信部C側からリアルタイムで近接センサA側への指令やリアルタイムフィードバック機能を有した高機能なセンサシステム形態を構成できる。
【0039】
近接センサA側の動作表示・光通信部41では、LDや可視光赤外発光LED等の光出力デバイス45を駆動して、近接センサA側のセンサヘッド5からの検出状態を示す動作表示情報をそのまま光受信部C側との間で光通信する。そして、この光通信に際しては、無線51や光ファイバ53を介して近接センサA側と光受信部C側との間で行う。光受信部C側は、受光デバイス47や復調・処理回路49、等を備える。
【0040】
光受信部C側の受光デバイス47はフォトダイオード等からなり、このフォトダイオードにより近接センサA側からの光通信情報を受光し、光受信部C側の復調・処理回路49ではその光通信情報を復調処理する。このようにして近接センサシステム内において近接センサA側の図示略のセンサヘッド5からの情報を光受信部C側との間で光通信し、これによって近接センサの状態の監視や制御に用いることができる。
【0041】
図4は動作表示部である発光素子(発光部)61を受光センサ63と共に樹脂モールドでデバイス構成化した受発光一体型デバイス65の構造を示す。このデバイス65は1チップ構成を含む。発光素子61と受光センサ63は透明窓64からそれぞれ発光と受光とが可能になっている。図2(a)の単独LED29の代わりに受発光一体型デバイス65を用いて高機能の動作光双方向通信で小型高機能の本発明近接センサを実現する。図4の受発光一体型デバイス65を用いた動作光双方向通信により、近接センサへのリアルタイム指示およびフィードバック制御を実現する。
【0042】
なお、演算・処理部9,39に、検出および解析プログラムと、動作表示・動作光通信LED14や光出力デバイス45の発光態様のデータ(非接触センサ部の位置、距離、速度、振動等の検出動作に対応して動作光通信データと共用するデータ)と、を外部操作で書き換え可能に記憶する記憶部を設けてもよい。
【0043】
以上説明したように本実施の形態では、動作光通信機能により、リアルタイムの動作監視・解析・判断ができ、信頼性・安全性が大幅に強化される。また発光による表示だけでなく光通信、光発電と受光の4つを意識した機能、安全、コスト、形状の近接センサを提供することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は本発明の実施の形態に係る近接センサと、その近接センサを制御する近接センサコントローラとのブロック構成を示す図である。
【図2】図2は本発明の実施の形態に係る各近接センサの構造を示す図である。
【図3】図3は本発明の実施の形態に係る近接センサを用いた近接センサシステムのブロック構成を示す図である。
【図4】図4は受発光一体形デバイスの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 検出物
3 検出コイル
5 センサヘッド
7 発振回路部
9 演算・処理部
13 動作表示制御部
14 動作表示・動作光通信LED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PLC等の上位アンプまたはコントローラとの動作光通信が可能な発光機能を有する1つまたは複数の動作表示部と、
検出物を非接触で検出する非接触センサ部と、
上記非接触センサ部のセンサ検出信号から検出物の検出動作に対応して上記動作表示部を制御するセンサ制御部と、
を備えた、ことを特徴とする近接センサ。
【請求項2】
上記動作表示部が、発光部または受発光部である、ことを特徴とする請求項1に記載の近接センサ。
【請求項3】
上記発光部が、可視光線発光をする電球形状の発光ダイオード、シート状の有機エレクトロルミネセンス、レーザダイオード、または赤外線発光ダイオードのいずれかであることを特徴とする請求項2に記載の近接センサ。
【請求項4】
上記発光部を受光センサと共に樹脂モールドで受発光一体型デバイス構成となし、上記発光部と受光センサとで双方向光通信を可能とした、ことを特徴とする請求項2に記載の近接センサ。
【請求項5】
当該近接センサの電源としてソーラセルを実装したことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の近接センサ。
【請求項6】
上記非接触センサ部の位置、距離、速度、振動等の検出動作に対応して、動作光通信データと共用する発光部または受発光部の発光態様のデータ、を事前に書き換え可能に記憶する記憶部を備える、ことを特徴とする請求項2に記載の近接センサ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の近接センサと、この近接センサの動作表示部と無線または光ファイバを経由して光通信する光受信部と、を備えたことを特徴とする近接センサシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−9489(P2009−9489A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172275(P2007−172275)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000167288)光洋電子工業株式会社 (354)
【Fターム(参考)】