説明

近接検出装置

【課題】近接を検出することが可能な検出可能距離を伸ばすと同時に、近接座標の位置分解能を高めることができる近接検出装置を得ることを目的とする。
【解決手段】遠い位置に存在する検知対象物を検知する場合、複数の検知電極を電気的に結合し、近い位置に存在する検知対象物を検知する場合、電気的に結合されている複数の検知電極を分離する検出電極結合回路5を設け、静電容量検出回路6が検出電極結合回路5により電気的に結合されている検知電極の静電容量を検出するとともに、検出電極結合回路5により分離された検知電極の静電容量を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、タッチパネルに配置されている複数の検知電極の静電容量を検出して、ユーザがタッチパネルに触れている位置又はタッチパネルに近接している位置を特定する近接検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ユーザの意思を直接的に入力する手段として、ユーザがパネルや情報表示面に配置されている操作キーに触れると、その接触位置を検出するタッチセンサが有効なことが良く知られている。
これまで、実用に供されている代表的なタッチセンサとして、下記の(a)〜(c)に示すようなものがある。
【0003】
(a)2枚の導電シートが直接接触しないように重ね合わされている電気抵抗変化検出型タッチセンサであり、ユーザが導電シートの任意の位置を押下すると、ユーザにより押下された位置だけが導通するので、その導通箇所の座標を検出する。
(b)情報表示面に近い空間に光線のビームが張られているビーム遮断型タッチセンサであり、ユーザが情報表示面に触れようとして指を情報表示面に近づけると、ユーザが触れようとしている位置のビームが遮断されるので、その遮断箇所の座標を検出する。
(c)透明、不透明又は半透明の電極の静電容量を検出する静電センサであり、電極の静電容量の変化を検出することにより、ユーザの指や誘電体の接触又は近接を検出する。
【0004】
(a)の電気抵抗変化検出型タッチセンサについては、ユーザが導電シートに接触しない限り、座標を検出することができず、導電シートに対するユーザの近接や、その近接座標を検出することができない欠点がある。
(b)のビーム遮断型タッチセンサの場合、ユーザが情報表示面に触れなくても、その情報表示面に対するユーザの近接や、その近接座標を検出することができる。
しかし、ユーザが指示する位置の座標を確定する時点がフィードバックされないため、入力時点の不確定性による不安が大きくなることがある欠点がある。
【0005】
(c)の静電センサの場合、接触と近接の両方を検出することが可能であり、電気抵抗変化検出型タッチセンサ及びビーム遮断型タッチセンサの欠点を解消することができる近接検出装置である。
しかしながら、近接を検出することが可能な検出可能距離を伸ばすためには、電極の面積を広くする必要があり、電極の面積を広くすると、近接座標の位置分解能が劣化する性質がある。
一方、近接座標の位置分解能を高めるには、電極の面積を狭くする必要があり、電極の面積を狭くすると、近接を検出することが可能な検出可能距離が短くなる性質がある(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特許第2685073号公報(第4頁から第7頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の近接検出装置は以上のように構成されているので、近接を検出することが可能な検出可能距離を伸ばそうとすると近接座標の位置分解能が劣化し、近接座標の位置分解能を高めようとすると近接を検出することが可能な検出可能距離が短くなるなどの課題があった。
【0008】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、近接を検出することが可能な検出可能距離を伸ばすと同時に、近接座標の位置分解能を高めることができる近接検出装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る近接検出装置は、遠い位置に存在する検知対象物を検知する場合、複数の検知電極を電気的に結合し、近い位置に存在する検知対象物を検知する場合、電気的に結合されている複数の検知電極を分離する電極結合分離手段を設け、静電容量検出手段が電極結合分離手段により電気的に結合されている検知電極の静電容量を検出するとともに、その電極結合分離手段により分離された検知電極の静電容量を検出するようにしたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、遠い位置に存在する検知対象物を検知する場合、上記複数の検知電極を電気的に結合し、近い位置に存在する検知対象物を検知する場合、電気的に結合されている複数の検知電極を分離する電極結合分離手段を設け、静電容量検出手段が電極結合分離手段により電気的に結合されている検知電極の静電容量を検出するとともに、その電極結合分離手段により分離された検知電極の静電容量を検出するように構成したので、近接を検出することが可能な検出可能距離を伸ばすと同時に、近接座標の位置分解能を高めることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による近接検出装置を示す構成図であり、図において、検知電極2a〜2dはタッチパネル1に配置されており、検知対象物であるユーザの指3(または、誘電体)の近接によって静電容量が変化する。
制御回路4は遠い位置に存在する検知対象物の検出指令を示す遠切替信号を出力し、または、近い位置に存在する検知対象物の検出指令を示す近切替信号を出力するなどの処理を実施する。
【0012】
検出電極結合回路5は制御回路4から遠い位置に存在する検知対象物の検出指令を示す遠切替信号を受けると、検知電極2aと検知電極2bを電気的に結合するとともに、検知電極2cと検知電極2dを電気的に結合し、制御回路4から近い位置に存在する検知対象物の検出指令を示す近切替信号を受けると、検知電極2aと検知電極2bを電気的に分離するとともに、検知電極2cと検知電極2dを電気的に分離する。
なお、制御回路4及び検出電極結合回路5から電極結合分離手段が構成されている。
【0013】
静電容量検出回路6は制御回路4から遠い位置に存在する検知対象物の検出指令を示す遠切替信号を受けると、検出電極結合回路5により電気的に結合されている検知電極A(検知電極2a+検知電極2b)及び検知電極B(検知電極2c+検知電極2d)の静電容量を検出し、制御回路4から近い位置に存在する検知対象物の検出指令を示す近切替信号を受けると、検出電極結合回路5により分離された検知電極2a,2b,2c,2dの静電容量を検出する。
また、静電容量検出回路6は検出した静電容量が基準容量以上である場合、検知対象物の近接を認定して、近接検出信号を出力する。
なお、静電容量検出回路6は静電容量検出手段を構成している。
【0014】
次に動作について説明する。
制御回路4は、タッチパネル1に配置されている検知電極2a〜2dから、例えば、5mm以上離れている遠い位置に存在するユーザの指3を検知する場合、遠い位置に存在する検知対象物の検出指令を示す遠切替信号を検出電極結合回路5及び静電容量検出回路6に出力する。
【0015】
検出電極結合回路5は、制御回路4から遠い位置に存在する検知対象物の検出指令を示す遠切替信号を受けると、検知電極2aと検知電極2bを電気的に結合するとともに、検知電極2cと検知電極2dを電気的に結合する。
これにより、検知電極2aと検知電極2bが電気的に結合された検知電極Aが1つの電極として動作し、また、検知電極2cと検知電極2dが電気的に結合された検知電極Bが1つの電極として動作する。
この場合、検知電極A(検知電極B)の面積が、検知電極2aと検知電極2bの面積の合計(検知電極2cと検知電極2dの面積の合計)になるため、検知電極2aと検知電極2b(検知電極2cと検知電極2d)を電気的に結合していない場合よりも、遠い位置に存在する検知対象物の検出が可能になる。
【0016】
静電容量検出回路6は、制御回路4から遠い位置に存在する検知対象物の検出指令を示す遠切替信号を受けると、検出電極結合回路5により電気的に結合されている検知電極A(検知電極2a+検知電極2b)の静電容量と、検知電極B(検知電極2c+検知電極2d)の静電容量を検出する。
静電容量検出回路6は、検知電極A(検知電極2a+検知電極2b)の静電容量が基準容量以上であれば、検知電極Aにユーザの指3が近接していると認定して、近接検出信号を出力する。
また、検知電極B(検知電極2c+検知電極2d)の静電容量が基準容量以上であれば、検知電極Bにユーザの指3が近接していると認定して、近接検出信号を出力する。
【0017】
制御回路4は、タッチパネル1に配置されている検知電極2a〜2dから、例えば、5mm以内の近い位置に存在するユーザの指3を検知する場合、近い位置に存在する検知対象物の検出指令を示す近切替信号を検出電極結合回路5及び静電容量検出回路6に出力する。
なお、制御回路4は、静電容量検出回路6から検知電極A又は検知電極Bにユーザの指3が近接している旨を示す近接検出信号が出力されたとき、近い位置に存在する検知対象物の検出指令を示す近切替信号を検出電極結合回路5及び静電容量検出回路6に出力する。
【0018】
検出電極結合回路5は、制御回路4から近い位置に存在する検知対象物の検出指令を示す近切替信号を受けると、検知電極2aと検知電極2bを電気的に分離するとともに、検知電極2cと検知電極2dを電気的に分離する。
これにより、検知電極2a,2b,2c,2dのそれぞれが1つの電極として動作するが、検知電極2a,2b,2c,2dの面積が、検知電極A(検知電極B)の面積より狭くなるため、検知電極2aと検知電極2b(検知電極2cと検知電極2d)を電気的に結合している場合よりも、近接座標の位置分解能が向上する。
【0019】
静電容量検出回路6は、制御回路4から近い位置に存在する検知対象物の検出指令を示す近切替信号を受けると、検出電極結合回路5により分離された検知電極2a,2b,2c,2dの静電容量を検出する。
静電容量検出回路6は、検知電極2aの静電容量が基準容量以上であれば、検知電極2aにユーザの指3が近接していると認定して、近接検出信号を出力する。
また、検知電極2bの静電容量が基準容量以上であれば、検知電極2bにユーザの指3が近接していると認定して、近接検出信号を出力する。
また、検知電極2cの静電容量が基準容量以上であれば、検知電極2cにユーザの指3が近接していると認定して、近接検出信号を出力する。
さらに、検知電極2dの静電容量が基準容量以上であれば、検知電極2dにユーザの指3が近接していると認定して、近接検出信号を出力する。
【0020】
制御回路4は、静電容量検出回路6から検知電極2a,2b,2c,2dにユーザの指3が近接している旨を示す近接検出信号が出力されない場合、再度、遠い位置に存在する検知対象物の検出指令を示す遠切替信号を検出電極結合回路5及び静電容量検出回路6に出力することにより、検知電極A(検知電極B)で検知対象物の近接を検出するようにする。
【0021】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、遠い位置に存在する検知対象物を検知する場合、複数の検知電極を電気的に結合し、近い位置に存在する検知対象物を検知する場合、電気的に結合されている複数の検知電極を分離する検出電極結合回路5を設け、静電容量検出回路6が検出電極結合回路5により電気的に結合されている検知電極の静電容量を検出するとともに、検出電極結合回路5により分離された検知電極の静電容量を検出するように構成したので、近接を検出することが可能な検出可能距離を伸ばすと同時に、近接座標の位置分解能を高めることができる効果を奏する。
【0022】
なお、この実施の形態1では、検出電極結合回路5が2つの検知電極を結合するものについて示したが、3つ以上の検知電極を結合するようにしてもよい。
また、検出電極結合回路5が、5mm以上離れている検知対象物を検出する場合と、5mm以内の検知対象物を検出する場合とで、2段階で電極の結合と分離を切り替えるものについて示したが、検知電極からの距離に応じて、検知電極の結合数を順次切り替えるようにしてもよい(3段階以上の切替を実施)。
【0023】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、検知電極2a,2b,2c,2dが直線的に配置されているものについて示したが、図2に示すように、検知電極2a−1〜2a−4,2b−1〜2b−4,2c−1〜2c−4,2d−1〜2d−4,2e−1〜2e−4,2f−1〜2f−4,2g−1〜2g−4が縦横に配置されていてもよく、上記実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
【0024】
次に動作について説明する。
制御回路4は、タッチパネル1に配置されている検知電極2から、例えば、5mm以上離れている遠い位置に存在するユーザの指3を検知する場合、遠い位置に存在する検知対象物の検出指令を示す遠切替信号を検出電極結合回路5及び静電容量検出回路6に出力する。
【0025】
検出電極結合回路5は、制御回路4から遠い位置に存在する検知対象物の検出指令を示す遠切替信号を受けると、検知電極2a−1〜2a−4の列と検知電極2c−1〜2c−4の列とを電気的に結合するとともに、検知電極2e−1〜2e−4の列と検知電極2g−1〜2g−4の列とを電気的に結合する。
また、検出電極結合回路5は、検知電極2b−1,2d−1,2f−1の列と検知電極2b−2,2d−2,2f−2の列とを電気的に結合するとともに、検知電極2b−3,2d−3,2f−3の列と検知電極2b−4,2d−4,2f−4の列とを電気的に結合する。
【0026】
静電容量検出回路6は、制御回路4から遠い位置に存在する検知対象物の検出指令を示す遠切替信号を受けると、検出電極結合回路5により電気的に結合されている検知電極A(=(2a−1)+(2a−2)+(2a−3)+(2a−4)+(2c−1)+(2c−2)+(2c−3)+(2c−4))の静電容量と、検知電極B(=(2e−1)+(2e−2)+(2e−3)+(2e−4)+(2g−1)+(2g−2)+(2g−3)+(2g−4))の静電容量と、検知電極C(=(2b−1)+(2d−1)+(2f−1)+(2b−2)+(2d−2)+(2f−2))の静電容量と、検知電極D(=(2b−3)+(2d−3)+(2f−3)+(2b−4)+(2d−4)+(2f−4))の静電容量とを検出する。
静電容量検出回路6は、検知電極A,B,C,Dの静電容量が基準容量以上であれば、検知電極A,B,C,Dにユーザの指3が近接していると認定して、近接検出信号を出力する。
【0027】
制御回路4は、タッチパネル1に配置されている検知電極2から、例えば、5mm以内の近い位置に存在するユーザの指3を検知する場合、近い位置に存在する検知対象物の検出指令を示す近切替信号を検出電極結合回路5及び静電容量検出回路6に出力する。
なお、制御回路4は、静電容量検出回路6から検知電極A,B,C,Dにユーザの指3が近接している旨を示す近接検出信号が出力されたとき、近い位置に存在する検知対象物の検出指令を示す近切替信号を検出電極結合回路5及び静電容量検出回路6に出力する。
【0028】
検出電極結合回路5は、制御回路4から近い位置に存在する検知対象物の検出指令を示す近切替信号を受けると、検知電極2a−1〜2a−4の列と検知電極2c−1〜2c−4の列とを電気的に分離するとともに、検知電極2e−1〜2e−4の列と検知電極2g−1〜2g−4の列とを電気的に分離する。
また、検出電極結合回路5は、検知電極2b−1,2d−1,2f−1の列と検知電極2b−2,2d−2,2f−2の列とを電気的に分離するとともに、検知電極2b−3,2d−3,2f−3の列と検知電極2b−4,2d−4,2f−4の列とを電気的に分離する。
【0029】
静電容量検出回路6は、制御回路4から近い位置に存在する検知対象物の検出指令を示す近切替信号を受けると、検出電極結合回路5により分離された検知電極2a−1〜2a−4の列の静電容量、検知電極2c−1〜2c−4の列の静電容量、検知電極2e−1〜2e−4の列の静電容量、検知電極2g−1〜2g−4の列の静電容量、検知電極2b−1,2d−1,2f−1の列の静電容量、検知電極2b−2,2d−2,2f−2の列の静電容量、検知電極2b−3,2d−3,2f−3の列の静電容量、検知電極2b−4,2d−4,2f−4の列の静電容量を検出する。
静電容量検出回路6は、各検知電極の列の静電容量が基準容量以上であれば、当該検知電極の列にユーザの指3が近接していると認定して、近接検出信号を出力する。
【0030】
制御回路4は、静電容量検出回路6から各検知電極の列にユーザの指3が近接している旨を示す近接検出信号が出力されない場合、再度、遠い位置に存在する検知対象物の検出指令を示す遠切替信号を検出電極結合回路5及び静電容量検出回路6に出力することにより、電気的に結合している検知電極の列で検知対象物の近接を検出するようにする。
【0031】
実施の形態3.
上記実施の形態1では、タッチパネル1には4個の検知電極2a〜2dが配置され、検知電極の結合数が2(例えば、検知電極2aと検知電極2bの結合)であるものについて示したが、タッチパネル1に数多くの検知電極2(例えば、N個の検知電極2)が配置される場合、検出電極結合回路5が制御回路4の指示の下、初期段階では検知電極2の結合数を最大値に設定し、静電容量検出回路6が検知対象物の近接を認定する毎に、検知電極2の結合数を減らしていくようにしてもよい。
図3はこの発明の実施の形態3による近接検出装置の処理内容を示すフローチャートである。
【0032】
次に動作について説明する。
制御回路4は、例えば、タッチパネル1にマトリックス状に配置されている検知電極2の個数が例えばN個である場合、N個の検知電極2を擬似的に大きな1枚の検知電極として動作させるため、検知電極2の結合数を最大値Nに設定する(ステップST1)。
また、制御回路4は、このときの近接感度を高めるため、静電容量検出回路6のサンプリングレートを所定の最低値に設定する。
【0033】
これにより、検出電極結合回路5は、制御回路4の指示の下、N個の検知電極2を電気的に結合する(ステップST2)。
静電容量検出回路6は、検出電極結合回路5がN個の検知電極2を電気的に結合すると、上記実施の形態1と同様にして、電気的に結合されている擬似的に大きな検知電極の静電容量を検出する(ステップST3)。
静電容量検出回路6は、擬似的に大きな検知電極の静電容量が基準容量以上であれば、その検知電極にユーザの指3が近接していると認定して近接検出信号を出力する。
【0034】
制御回路4は、静電容量検出回路6が近接を認定して近接検出信号を出力すると(ステップST4)、静電容量検出回路6により静電容量が検出された検知電極が配置されている位置のX,Y座標を特定する(ステップST5)。
例えば、静電容量検出回路6により静電容量が検出された検知電極が検知電極2aであれば、その検知電極2aが配置されている位置のX,Y座標を特定するが、N個の検知電極2が電気的に結合されているような場合には、検知電極が配置されている位置のX,Y座標として、例えば、N個の検知電極2の中心のX,Y座標を特定する。
また、制御回路4は、静電容量検出回路6により検出された静電容量をZ座標値に換算することにより、検知電極2から検知対象物までの近接距離(Z座標)を算出する(ステップST5)。
【0035】
また、制御回路4は、静電容量検出回路6により検出された静電容量に応じて検知電極2の結合数を変更する(ステップST6)。
例えば、検知電極2の結合数がNのときの静電容量が基準容量より20%大きければ、検知電極2の結合数Nを20%減らし、その静電容量が基準容量より30%大きければ、検知電極2の結合数Nを30%減らすなど、その静電容量が大きい程、検知電極2の結合数Nを減らす割合を大きくする。
なお、検知電極2の結合形態(電気的に結合する検知電極の組み合わせ)は、予め結合数に応じて設定されているものとし、制御回路4は、検知電極2の結合数と結合形態の対応関係を示すテンプレートを参照して、検知電極2の結合数に応じた検知電極2の結合形態を検出電極結合回路5に指示する。
【0036】
制御回路4は、検知電極2の結合数を減らすと、その結合数に応じて静電容量検出回路6のサンプリングレートを変更する(ステップST7)。
静電容量検出回路6のサンプリングレートは、予め検知電極2の結合数に応じて設定されているものとし、制御回路4は、検知電極2の結合数とサンプリングレートの対応関係を示すテンプレートを参照して、静電容量検出回路6のサンプリングレートを変更する。
ここでは、制御回路4がテンプレートを参照して、静電容量検出回路6のサンプリングレートを変更するものについて示したが、検知電極2の結合数から静電容量検出回路6のサンプリングレートを計算するようにしてもよい。
【0037】
制御回路4は、静電容量検出回路6により検出された静電容量が規定量(検知対象物が検知電極に接触していると考えられる場合の静電容量)に到達していれば(ステップST8)、その検知電極にユーザの指3が接触していると認定して、接触検出信号を出力する(ステップST9)。
一方、静電容量検出回路6により検出された静電容量が所定量に到達していなければ(ステップST8)、検知電極の結合数に応じた検知電極2の結合形態を検出電極結合回路5に指示する。
以降、ステップST2の処理に戻る。
【0038】
制御回路4は、静電容量検出回路6が検知電極の静電容量を検出したのち(ステップST3)、近接を認定せずに、近接検出信号を出力しない場合(ステップST4)、検知電極2の結合形態(電気的に結合する検知電極の組み合わせ)を前回の結合形態に戻し、前回の結合形態を検出電極結合回路5に指示する(ステップST10)。
即ち、制御回路4は、今回の検知電極では検知対象物を検出することができていないので、遠くに位置する検知対象物を検出することができるようにするため、検知電極の結合数を多くする。
【0039】
以上で明らかなように、この実施の形態3によれば、検出電極結合回路5が制御回路4の指示の下、初期段階では検知電極2の結合数を最大値に設定し、静電容量検出回路6が検知対象物の近接を認定する毎に、検知電極2の結合数を減らしていくように構成したので、迅速かつ確実の検知対象物の近接を検出することができる効果を奏する。
【0040】
また、この実施の形態3によれば、検出電極結合回路5による検知電極の結合数に応じて静電容量を検出する際のサンプリングレートを変更するように構成したので、近接感度と応答性の適正化を図ることができる効果を奏する。
【0041】
なお、この実施の形態3では、検知電極2の結合形態に応じて、異なる解像度のX,Y,Z座標を算出するものについて示したが、これらのX,Y,Z座標を検知電極2の結合形態で正規化することにより、検知電極2の結合形態が変化しても、X,Y,Z座標を同じ尺度で扱えるようにしてもよい。
【0042】
また、この実施の形態3では、初期段階でN個の検知電極2を結合して1枚の電極のように扱うものについて示したが、目的とする近接の検出能力に応じた電極の構成であれば何でもよい。例えば、近接能力を向上させる物理的な位置が部分的な位置である場合は、その位置での検出能力を向上されるような結合形態にするものとする。
【0043】
この実施の形態3では、制御回路4が、静電容量検出回路6により検出された静電容量が規定量(検知対象物が検知電極に接触していると考えられる場合の静電容量)に到達していれば、その検知電極にユーザの指3が接触していると認定して、接触検出信号を出力するものについて示したが、静電容量検出回路6により検出された静電容量が所定量に到達していない場合でも、既に、ユーザの指3が近接している検知電極が配置されている位置のX,Y,Z座標が特定されているので(ステップST5)、そのX,Y,Z座標を出力するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】この発明の実施の形態1による近接検出装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態2による近接検出装置を示す構成図である。
【図3】この発明の実施の形態3による近接検出装置の処理内容を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
1 タッチパネル、2a〜2d 検知電極、2a−1〜2a−4,2b−1〜2b−4,2c−1〜2c−4,2d−1〜2d−4,2e−1〜2e−4,2f−1〜2f−4,2g−1〜2g−4 検知電極、3 ユーザの指(検知対象物)、4 制御回路(電極結合分離手段)、5 検出電極結合回路(電極結合分離手段)、6 静電容量検出回路(静電容量検出手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知対象物の近接によって静電容量が変化する複数の検知電極と、遠い位置に存在する検知対象物を検知する場合、上記複数の検知電極を電気的に結合し、近い位置に存在する検知対象物を検知する場合、電気的に結合されている複数の検知電極を分離する電極結合分離手段と、上記電極結合分離手段により電気的に結合されている検知電極の静電容量を検出するとともに、上記電極結合分離手段により分離された検知電極の静電容量を検出する静電容量検出手段とを備えた近接検出装置。
【請求項2】
静電容量検出手段は、基準容量以上の静電容量を検出すると、検知対象物の近接を認定することを特徴とする請求項1記載の近接検出装置。
【請求項3】
電極結合分離手段は、初期段階の検知電極の結合数を最大値に設定し、静電容量検出手段が検知対象物の近接を認定する毎に、上記検知電極の結合数を減らしていくことを特徴とする請求項2記載の近接検出装置。
【請求項4】
静電容量検出手段は、電極結合分離手段による検知電極の結合数に応じて静電容量を検出する際のサンプリングレートを変更することを特徴とする請求項3記載の近接検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−153025(P2008−153025A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338845(P2006−338845)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】