近赤外吸収粘着フィルム、近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルム、近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルム、プラズマディスプレイ用フィルター
【課題】近赤外領域の吸収率の低下を防止することができると共に、プラズマディスプレイ用フィルターの構造を単純化することができる近赤外吸収粘着フィルムを提供する。
【解決手段】近赤外吸収粘着フィルム3に関する。無機系近赤外吸収色素1をバインダ2に添加して形成されている。
【解決手段】近赤外吸収粘着フィルム3に関する。無機系近赤外吸収色素1をバインダ2に添加して形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイ用フィルターの製造に用いられる近赤外吸収粘着フィルム、近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルム、近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルム、近赤外線を吸収させるためにプラズマディスプレイに用いられるプラズマディスプレイ用フィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマディスプレイ用フィルター9は、図14に示すように、ジチオールニッケル、フタロシアニン、ジイモニウム等の有機系近赤外吸収色素11(例えば、特許文献1−3参照。)を含有する近赤外吸収層12の一方の側に粘着層13を介して反射防止フィルム4を貼り合わせると共に、他方の側に粘着層13を介して電磁波シールドフィルム6を貼り合わせることによって形成されている。
【0003】
そして、反射防止フィルム4によって反射を防止し、電磁波シールドフィルム6によって電磁障害を防止すると共に、プラズマディスプレイパネルのセルに封入されているNeガスやXeガス等の不活性ガスの発光に由来する近赤外線を近赤外吸収層12によって吸収することができるものである。特に近赤外線の波長は各種家電機器のリモコン装置の動作波長に近いので、上記のようにプラズマディスプレイ用フィルター9内に近赤外吸収層12が設けてあると、家電機器の誤動作を防止することができるものである。
【0004】
近年、近赤外吸収層12に粘着性を付与し、この近赤外吸収層12に直接反射防止フィルム4及び電磁波シールドフィルム6を貼り付けることによって、プラズマディスプレイ用フィルター9の構造を単純化することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−230134号公報
【特許文献2】特開平10−78509号公報
【特許文献3】特開2000−206323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、近赤外吸収層12の粘着性が高くなると、有機系近赤外吸収色素11は壊れて近赤外領域の吸収率が低下してしまうという問題が生じる。そうであるからといって、近赤外吸収層12の粘着性を低くすると、反射防止フィルム4や電磁波シールドフィルム6が剥がれやすくなるという問題が生じる。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、近赤外領域の吸収率の低下を防止することができると共に、プラズマディスプレイ用フィルターの構造を単純化することができる近赤外吸収粘着フィルム、近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルム、近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルム、プラズマディスプレイ用フィルターを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る近赤外吸収粘着フィルムは、無機系近赤外吸収色素1をバインダ2に添加して形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1において、バインダ2の酸価が0.25mgKOH/g以上であることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項3に係る近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルムは、請求項1又は2に記載の近赤外吸収粘着フィルム3が反射防止フィルム4に貼り付けられていることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項4に係る近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルムは、請求項1又は2に記載の近赤外吸収粘着フィルム3が電磁波シールドフィルム6に貼り付けられていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項5に係るプラズマディスプレイ用フィルターは、請求項1又は2に記載の近赤外吸収粘着フィルム3を介して反射防止フィルム4及び電磁波シールドフィルム6が貼り合わされて形成されているもの、請求項3に記載の近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルム5の近赤外吸収粘着層8に電磁波シールドフィルム6が貼り付けられて形成されているもの、請求項4に記載の近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルム7の近赤外吸収粘着層8に反射防止フィルム4が貼り付けられて形成されているもの、のいずれかであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に係る近赤外吸収粘着フィルムによれば、無機系近赤外吸収色素が用いられていることによって、近赤外領域の吸収率の低下を防止することができると共に、別途粘着層を設ける必要がなくなり、プラズマディスプレイ用フィルターの構造を単純化することができるものである。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、バインダの酸価を高めることによって、HAZE(曇価)を低くすることができるものである。
【0015】
本発明の請求項3に係る近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルムによれば、近赤外吸収粘着層に無機系近赤外吸収色素が含有されていることによって、近赤外領域の吸収率の低下を防止することができると共に、別途粘着層を設ける必要がなくなり、プラズマディスプレイ用フィルターの構造を単純化することができるものである。
【0016】
本発明の請求項4に係る近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルムによれば、近赤外吸収粘着層に無機系近赤外吸収色素が含有されていることによって、近赤外領域の吸収率の低下を防止することができると共に、別途粘着層を設ける必要がなくなり、プラズマディスプレイ用フィルターの構造を単純化することができるものである。
【0017】
本発明の請求項5に係るプラズマディスプレイ用フィルターによれば、無機系近赤外吸収色素を含有する近赤外吸収粘着層によって、近赤外領域の吸収率の低下を防止しつつ、近赤外線を吸収させることができるものであり、しかも従来のプラズマディスプレイ用フィルターに比べて構造が単純化されているものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る近赤外吸収粘着フィルムを示すものであり、(a)(b)は断面図である。
【図2】本発明に係る近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルムを示すものであり、(a)(b)は断面図である。
【図3】本発明に係る近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルムを示すものであり、(a)(b)は断面図である。
【図4】本発明に係るプラズマディスプレイ用フィルターの一例を示す断面図である。
【図5】実施例1の近赤外吸収粘着フィルムの試験前後の透過率スペクトルである。
【図6】実施例2の近赤外吸収粘着フィルムの試験前後の透過率スペクトルである。
【図7】実施例3の近赤外吸収粘着フィルムの試験前後の透過率スペクトルである。
【図8】実施例4の近赤外吸収粘着フィルムの試験前後の透過率スペクトルである。
【図9】実施例5の近赤外吸収粘着フィルムの試験前後の透過率スペクトルである。
【図10】実施例6のプラズマディスプレイ用フィルターの試験前後の透過率スペクトルである。
【図11】実施例7の近赤外吸収粘着フィルムの試験前後の透過率スペクトルである。
【図12】実施例8の近赤外吸収粘着フィルムの試験前後の透過率スペクトルである。
【図13】比較例1の近赤外吸収粘着フィルムの試験前後の透過率スペクトルである。
【図14】従来のプラズマディスプレイ用フィルターの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
図1(a)は本発明に係る近赤外吸収粘着フィルムの一例を示すものであり、この近赤外吸収粘着フィルム3は、無機系近赤外吸収色素1をバインダ2に添加することによって形成されている。
【0021】
ここで、無機系近赤外吸収色素1としては、タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子等を用いることができる。タングステン酸化物微粒子としては、例えば、一般式WyOz(W:タングステン、O:酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表されるものを用いることができ、また複合タングステン酸化物微粒子としては、例えば、一般式MxWyOz(M:陽性元素;Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、W:タングステン、O:酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表されるものを用いることができる。また、無機系近赤外吸収色素1の平均粒子径は0.0001〜10μmに設定することができ、この平均粒子径は大塚電子(株)製「濃厚粒径アナライザーFPAR−1000」等によって測定することができる。また無機系近赤外吸収色素1の添加量は、無機系近赤外吸収色素1及びバインダ2の全量に対して、0.1〜70質量%に設定することができる。
【0022】
また、バインダ2としては、例えば、水酸基若しくはカルボキシル基等を含有するアクリレートオリゴマー単体、又は、水酸基若しくはカルボキシル基等を含有する2種以上のアクリレートオリゴマーと、メチレンジイソシアネートに代表されるイソシアネート架橋剤とを含有する光学部材用粘着剤組成物等を用いることができ、さらにこの光学部材用粘着剤組成物等を酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)等の溶剤に溶解して樹脂分を0.01〜50質量%に設定したものを用いることもできる。
【0023】
上記のようにバインダ2は粘着性を有することになるので、これに有機系近赤外吸収色素11を添加すると、この色素が壊れて近赤外領域の吸収率が低下してしまう。しかし、無機系近赤外吸収色素1は耐久性を有しているので、粘着性を有するバインダ2に添加しても、壊れて近赤外領域の吸収率が低下することがない。よって、無機系近赤外吸収色素1をバインダ2に添加すれば、粘着性を有する近赤外吸収層12(近赤外吸収粘着層8)を形成するための近赤外吸収粘着フィルム3を容易に得ることができるものである。
【0024】
しかし、単に無機系近赤外吸収色素1をバインダ2に添加しただけでは、近赤外吸収粘着フィルム3のHAZE(曇価)が高くなって、光学フィルムとしては使用できなくなるおそれがある。そこで、バインダ2の酸価を0.25mgKOH/g以上に設定するのが好ましく、1.0mgKOH/g以上(上限は500mgKOH/g)に設定するのがより好ましい。ここで、バインダ2の酸価の調整は、例えば、バインダ2を構成する成分のうちカルボキシル基を含有するモノマーの量を増減させることによって行うことができる。そしてこのようにバインダ2の酸価を高めることによって、HAZE(曇価)を低くすることができるものである。しかし、バインダ2の酸価が0.25mgKOH/g未満であると、HAZE(曇価)が高くなったり、粘着性が低くなったりするおそれがある。なお、バインダ2の酸価はJIS K 2501に基づいて測定することができる。
【0025】
図1(b)は本発明に係る近赤外吸収粘着フィルムの他の一例を示すものであり、この近赤外吸収粘着フィルム3の両面には離型フィルム10が貼り付けられている。ここで、離型フィルム10としては、近赤外吸収粘着フィルム3に貼り付けられる面にあらかじめシリコン離型剤が塗布されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ38μm程度)等を用いることができる。このような離型フィルム10が近赤外吸収粘着フィルム3の両面に貼り付けられていることによって、粘着性を有する近赤外吸収粘着フィルム3の取扱い性を向上させることができるものである。通常、このような近赤外吸収粘着フィルム3は、無機系近赤外吸収色素1を添加したバインダ2を一方の離型フィルム10の表面に塗布し、この塗布面に他方の離型フィルム10を重ねて、上記バインダ2を乾燥させることによって製造することができる。
【0026】
以上のように、図1に示す近赤外吸収粘着フィルム3にあっては、粘着性のあるバインダ2の中においても耐久性があって壊れにくい無機系近赤外吸収色素1が用いられているので、近赤外領域の吸収率の低下を防止することができるものである。また無機系近赤外吸収色素1は粘着性のあるバインダ2に添加されているので、別途粘着層13を設ける必要がなくなり、後述の図4に示すようにプラズマディスプレイ用フィルター9の構造を単純化することができるものである。
【0027】
図2(a)は本発明に係る近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルムの一例を示すものであり、この近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルム5は、近赤外吸収粘着フィルム3が近赤外吸収粘着層8として反射防止フィルム4に貼り付けられて形成されている。つまり、バインダ2が有する粘着性によって近赤外吸収粘着フィルム3が反射防止フィルム4に直接貼り付けられているものである。この反射防止フィルム4は、透明基体に対して低屈折率層と高屈折率層とを、低屈折率層/高屈折率層/透明基体の順で積層して形成することができる。例えば、低屈折率層を透明フッ素樹脂にて形成し、高屈折率層をアクリル樹脂等にて形成することができる。この高屈折率層や低屈折率層は、溶液流延法等の手法で形成することができる。反射防止フィルム4の厚さは適宜調整されるが、好ましくは低屈折率層と高屈折率層の厚さの総計が0.1〜50μmの範囲となるようにする。具体的には、日本油脂(株)製「リアルック9100」「リアルック8201UV」、住友大阪セメント(株)製「クリアラス1100」等を反射防止フィルム4として用いることができる。
【0028】
図2(b)は本発明に係る近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルムの他の一例を示すものであり、この近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルム5は、図1(b)に示す近赤外吸収粘着フィルム3の一方の離型フィルム10を剥がし、この面に反射防止フィルム4を貼り付けることによって製造することができる。この場合、他方の離型フィルム10は剥がしていないので、近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルム5の取扱い性を向上させることができるものである。
【0029】
以上のように、図2に示す近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルム5にあっては、近赤外吸収粘着層8に無機系近赤外吸収色素1が含有されているので、近赤外領域の吸収率の低下を防止することができるものである。また無機系近赤外吸収色素1は粘着性のあるバインダ2に添加されているので、別途粘着層13を設ける必要がなくなり、後述の図4に示すようにプラズマディスプレイ用フィルター9の構造を単純化することができるものである。
【0030】
図3(a)は本発明に係る近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルムの一例を示すものであり、この近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルム7は、近赤外吸収粘着フィルム3が近赤外吸収粘着層8として電磁波シールドフィルム6に貼り付けられて形成されている。ここで、電磁波シールドフィルム6としては、例えば、東洋紡績(株)製「コスモシャインA4300」等のポリエステルフィルムに透明エポキシ系接着剤で電解銅箔等の金属箔を貼り合わせ、この金属箔をフォトリソ法で格子状パターンにエッチングすると共にこの格子状パターンを黒色化処理したもの等を用いることができる。
【0031】
図3(b)は本発明に係る近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルムの他の一例を示すものであり、この近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルム7は、図1(b)に示す近赤外吸収粘着フィルム3の一方の離型フィルム10を剥がし、この面に電磁波シールドフィルム6を貼り付けることによって製造することができる。この場合、他方の離型フィルム10は剥がしていないので、近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルム7の取扱い性を向上させることができるものである。
【0032】
以上のように、図3に示す近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルム7にあっては、近赤外吸収粘着層8に無機系近赤外吸収色素1が含有されているので、近赤外領域の吸収率の低下を防止することができるものである。また無機系近赤外吸収色素1は粘着性のあるバインダ2に添加されているので、別途粘着層13を設ける必要がなくなり、後述の図4に示すようにプラズマディスプレイ用フィルター9の構造を単純化することができるものである。
【0033】
図4は本発明に係るプラズマディスプレイ用フィルターの一例を示すものであり、このプラズマディスプレイ用フィルター9は、近赤外吸収粘着フィルム3を介して反射防止フィルム4及び電磁波シールドフィルム6が貼り合わされて形成されている。近赤外吸収粘着フィルム3は近赤外吸収粘着層8となる。通常、このプラズマディスプレイ用フィルター9は、図1(b)に示す近赤外吸収粘着フィルム3の一方の離型フィルム10を剥がし、この面に反射防止フィルム4を貼り付けると共に、他方の離型フィルム10を剥がし、この面に電磁波シールドフィルム6を貼り付けることによって製造することができる。
【0034】
またプラズマディスプレイ用フィルター9は、近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルム5の近赤外吸収粘着層8に電磁波シールドフィルム6が貼り付けられて形成されていてもよい。この場合、図2(b)に示す近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルム5の離型フィルム10を剥がし、この面に電磁波シールドフィルム6を貼り付けることによってプラズマディスプレイ用フィルター9を製造することができる。
【0035】
またプラズマディスプレイ用フィルター9は、近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルム7の近赤外吸収粘着層8に反射防止フィルム4が貼り付けられて形成されていてもよい。この場合、図3(b)に示す近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルム7の離型フィルム10を剥がし、この面に反射防止フィルム4を貼り付けることによってプラズマディスプレイ用フィルター9を製造することができる。
【0036】
以上のように、図4に示すプラズマディスプレイ用フィルター9にあっては、無機系近赤外吸収色素1を含有する近赤外吸収粘着層8によって、近赤外領域の吸収率の低下を防止しつつ、近赤外線を吸収させることができるものである。しかも、図14に示す従来のプラズマディスプレイ用フィルター9では、耐久性がなく壊れやすい有機系近赤外色素が用いられていたので、近赤外吸収層12と粘着層13とを分けて設けなければならなかったが、本発明では、耐久性があって壊れにくい無機系近赤外色素を用いているので、近赤外吸収粘着層8として近赤外吸収層12と粘着層13とを一体化して設けることが可能となり、その結果、この近赤外吸収粘着層8に直接反射防止フィルム4及び電磁波シールドフィルム6を貼り付けることができるようになったので、従来のプラズマディスプレイ用フィルター9に比べて構造を単純化することができるものである。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0038】
近赤外吸収色素として、下記[表1]に示すように、実施例1〜8では無機系のもの、比較例1では有機系のものを用いた。
【0039】
バインダ2(粘着剤及び硬化剤)として、下記[表1]に示すようなものを用いた。なお、バインダ2の酸価を下記[表1]に示す。
【0040】
そして、実施例1〜8では、粘着剤100gに「YMF−02A」を16g添加し、硬化剤2gを加えた。この近赤外吸収色素を添加したバインダ2を離型フィルム10の表面に隙間寸法100μmのバーコータ(ヨシミツ精機(株)製「ドクターブレードYD−2型」)を用いて塗布し、この塗布面に別の離型フィルム10を重ね、80℃で3分間加熱して、上記バインダ2を乾燥させることによって、図1(b)に示すような近赤外吸収粘着フィルム3を製造した。
【0041】
さらに、実施例6では、上記のようにして得られた近赤外吸収粘着フィルム3の一方の離型フィルム10を剥がし、この面に反射防止フィルム4を貼り付けると共に、他方の離型フィルム10を剥がし、この面に電磁波シールドフィルム6を貼り付けることによって、プラズマディスプレイ用フィルター9を製造した。なお、反射防止フィルム4としては、日本油脂(株)製「リアルック8201UV」を用い、電磁波シールドフィルム6としては、東洋紡績(株)製「コスモシャインA4300」(厚さ100μm)に透明エポキシ系接着剤で電解銅箔(12μm)を貼り合わせ、この金属箔をフォトリソ法でライン/ピッチが12/300μmの格子状パターンにエッチングすると共にこの格子状パターンを黒色化処理したものを用いた。
【0042】
また、比較例1では、「SKダイン2094」を100質量部、「SKダイン2094用硬化剤」を100質量部、溶媒としてメチルエチルケトンを80質量部、「IRG−022」(イモニウム化合物)を0.59質量部及び「IR−10A」(フタロシアニン化合物)を0.31質量部(「IRG−022」「IR−10A」は共に有機系近赤外吸収色素11)を混合して溶解させた。この近赤外吸収色素を添加したバインダ2を離型フィルム10の表面に隙間寸法100μmのバーコータ(ヨシミツ精機(株)製「ドクターブレードYD−2型」)を用いて塗布し、この塗布面に別の離型フィルム10を重ね、80℃で3分間加熱して、上記バインダ2を乾燥させることによって、図1(b)に示すような近赤外吸収粘着フィルム3を製造した。
【0043】
このようにして得られた実施例1〜5,7,8及び比較例1の近赤外吸収粘着フィルム3並びに実施例6のプラズマディスプレイ用フィルター9を80℃で500時間乾燥させる試験を行い、目視分光光度計を用いて試験前後の透過率を測定することによって、近赤外領域の吸収率の低下の有無を確認した。その結果を図5〜図13に示す。なお、試験前後において波長850〜1100nmの近赤外線の透過率が20%以上上昇したものは、近赤外領域の吸収率が低下したものとみなし、20%未満であったものは、近赤外領域の吸収率が低下しなかったものとみなした。
【0044】
また、上記プラズマディスプレイ用フィルター9について、JIS K7136−2000に基づいてHAZE(曇価)を測定した。
【0045】
以上の結果を下記[表1]に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
有機系近赤外吸収色素11を用いた比較例1では図13のように近赤外領域の吸収率の低下がみられたのに対し、無機系近赤外吸収色素1を用いた実施例1〜7では図5〜図12のように近赤外領域の吸収率の低下はみられなかった。
【0048】
また、バインダ2の酸価が0.25mgKOH/g未満の実施例7ではHAZE(曇価)が高かったのに対し、バインダ2の酸価が0.25mgKOH/gを超える実施例1〜6,8ではHAZE(曇価)が低かった。
【符号の説明】
【0049】
1 無機系近赤外吸収色素
2 バインダ
3 近赤外吸収粘着フィルム
4 反射防止フィルム
5 近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルム
6 電磁波シールドフィルム
7 近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルム
8 近赤外吸収粘着層
9 プラズマディスプレイ用フィルター
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイ用フィルターの製造に用いられる近赤外吸収粘着フィルム、近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルム、近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルム、近赤外線を吸収させるためにプラズマディスプレイに用いられるプラズマディスプレイ用フィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマディスプレイ用フィルター9は、図14に示すように、ジチオールニッケル、フタロシアニン、ジイモニウム等の有機系近赤外吸収色素11(例えば、特許文献1−3参照。)を含有する近赤外吸収層12の一方の側に粘着層13を介して反射防止フィルム4を貼り合わせると共に、他方の側に粘着層13を介して電磁波シールドフィルム6を貼り合わせることによって形成されている。
【0003】
そして、反射防止フィルム4によって反射を防止し、電磁波シールドフィルム6によって電磁障害を防止すると共に、プラズマディスプレイパネルのセルに封入されているNeガスやXeガス等の不活性ガスの発光に由来する近赤外線を近赤外吸収層12によって吸収することができるものである。特に近赤外線の波長は各種家電機器のリモコン装置の動作波長に近いので、上記のようにプラズマディスプレイ用フィルター9内に近赤外吸収層12が設けてあると、家電機器の誤動作を防止することができるものである。
【0004】
近年、近赤外吸収層12に粘着性を付与し、この近赤外吸収層12に直接反射防止フィルム4及び電磁波シールドフィルム6を貼り付けることによって、プラズマディスプレイ用フィルター9の構造を単純化することが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−230134号公報
【特許文献2】特開平10−78509号公報
【特許文献3】特開2000−206323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、近赤外吸収層12の粘着性が高くなると、有機系近赤外吸収色素11は壊れて近赤外領域の吸収率が低下してしまうという問題が生じる。そうであるからといって、近赤外吸収層12の粘着性を低くすると、反射防止フィルム4や電磁波シールドフィルム6が剥がれやすくなるという問題が生じる。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、近赤外領域の吸収率の低下を防止することができると共に、プラズマディスプレイ用フィルターの構造を単純化することができる近赤外吸収粘着フィルム、近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルム、近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルム、プラズマディスプレイ用フィルターを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る近赤外吸収粘着フィルムは、無機系近赤外吸収色素1をバインダ2に添加して形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1において、バインダ2の酸価が0.25mgKOH/g以上であることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の請求項3に係る近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルムは、請求項1又は2に記載の近赤外吸収粘着フィルム3が反射防止フィルム4に貼り付けられていることを特徴とするものである。
【0011】
本発明の請求項4に係る近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルムは、請求項1又は2に記載の近赤外吸収粘着フィルム3が電磁波シールドフィルム6に貼り付けられていることを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項5に係るプラズマディスプレイ用フィルターは、請求項1又は2に記載の近赤外吸収粘着フィルム3を介して反射防止フィルム4及び電磁波シールドフィルム6が貼り合わされて形成されているもの、請求項3に記載の近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルム5の近赤外吸収粘着層8に電磁波シールドフィルム6が貼り付けられて形成されているもの、請求項4に記載の近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルム7の近赤外吸収粘着層8に反射防止フィルム4が貼り付けられて形成されているもの、のいずれかであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に係る近赤外吸収粘着フィルムによれば、無機系近赤外吸収色素が用いられていることによって、近赤外領域の吸収率の低下を防止することができると共に、別途粘着層を設ける必要がなくなり、プラズマディスプレイ用フィルターの構造を単純化することができるものである。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、バインダの酸価を高めることによって、HAZE(曇価)を低くすることができるものである。
【0015】
本発明の請求項3に係る近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルムによれば、近赤外吸収粘着層に無機系近赤外吸収色素が含有されていることによって、近赤外領域の吸収率の低下を防止することができると共に、別途粘着層を設ける必要がなくなり、プラズマディスプレイ用フィルターの構造を単純化することができるものである。
【0016】
本発明の請求項4に係る近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルムによれば、近赤外吸収粘着層に無機系近赤外吸収色素が含有されていることによって、近赤外領域の吸収率の低下を防止することができると共に、別途粘着層を設ける必要がなくなり、プラズマディスプレイ用フィルターの構造を単純化することができるものである。
【0017】
本発明の請求項5に係るプラズマディスプレイ用フィルターによれば、無機系近赤外吸収色素を含有する近赤外吸収粘着層によって、近赤外領域の吸収率の低下を防止しつつ、近赤外線を吸収させることができるものであり、しかも従来のプラズマディスプレイ用フィルターに比べて構造が単純化されているものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る近赤外吸収粘着フィルムを示すものであり、(a)(b)は断面図である。
【図2】本発明に係る近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルムを示すものであり、(a)(b)は断面図である。
【図3】本発明に係る近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルムを示すものであり、(a)(b)は断面図である。
【図4】本発明に係るプラズマディスプレイ用フィルターの一例を示す断面図である。
【図5】実施例1の近赤外吸収粘着フィルムの試験前後の透過率スペクトルである。
【図6】実施例2の近赤外吸収粘着フィルムの試験前後の透過率スペクトルである。
【図7】実施例3の近赤外吸収粘着フィルムの試験前後の透過率スペクトルである。
【図8】実施例4の近赤外吸収粘着フィルムの試験前後の透過率スペクトルである。
【図9】実施例5の近赤外吸収粘着フィルムの試験前後の透過率スペクトルである。
【図10】実施例6のプラズマディスプレイ用フィルターの試験前後の透過率スペクトルである。
【図11】実施例7の近赤外吸収粘着フィルムの試験前後の透過率スペクトルである。
【図12】実施例8の近赤外吸収粘着フィルムの試験前後の透過率スペクトルである。
【図13】比較例1の近赤外吸収粘着フィルムの試験前後の透過率スペクトルである。
【図14】従来のプラズマディスプレイ用フィルターの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
図1(a)は本発明に係る近赤外吸収粘着フィルムの一例を示すものであり、この近赤外吸収粘着フィルム3は、無機系近赤外吸収色素1をバインダ2に添加することによって形成されている。
【0021】
ここで、無機系近赤外吸収色素1としては、タングステン酸化物微粒子、複合タングステン酸化物微粒子等を用いることができる。タングステン酸化物微粒子としては、例えば、一般式WyOz(W:タングステン、O:酸素、2.2≦z/y≦2.999)で表されるものを用いることができ、また複合タングステン酸化物微粒子としては、例えば、一般式MxWyOz(M:陽性元素;Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Re、Be、Hf、Os、Bi、Iのうちから選択される1種類以上の元素、W:タングステン、O:酸素、0.001≦x/y≦1、2.2≦z/y≦3.0)で表されるものを用いることができる。また、無機系近赤外吸収色素1の平均粒子径は0.0001〜10μmに設定することができ、この平均粒子径は大塚電子(株)製「濃厚粒径アナライザーFPAR−1000」等によって測定することができる。また無機系近赤外吸収色素1の添加量は、無機系近赤外吸収色素1及びバインダ2の全量に対して、0.1〜70質量%に設定することができる。
【0022】
また、バインダ2としては、例えば、水酸基若しくはカルボキシル基等を含有するアクリレートオリゴマー単体、又は、水酸基若しくはカルボキシル基等を含有する2種以上のアクリレートオリゴマーと、メチレンジイソシアネートに代表されるイソシアネート架橋剤とを含有する光学部材用粘着剤組成物等を用いることができ、さらにこの光学部材用粘着剤組成物等を酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)等の溶剤に溶解して樹脂分を0.01〜50質量%に設定したものを用いることもできる。
【0023】
上記のようにバインダ2は粘着性を有することになるので、これに有機系近赤外吸収色素11を添加すると、この色素が壊れて近赤外領域の吸収率が低下してしまう。しかし、無機系近赤外吸収色素1は耐久性を有しているので、粘着性を有するバインダ2に添加しても、壊れて近赤外領域の吸収率が低下することがない。よって、無機系近赤外吸収色素1をバインダ2に添加すれば、粘着性を有する近赤外吸収層12(近赤外吸収粘着層8)を形成するための近赤外吸収粘着フィルム3を容易に得ることができるものである。
【0024】
しかし、単に無機系近赤外吸収色素1をバインダ2に添加しただけでは、近赤外吸収粘着フィルム3のHAZE(曇価)が高くなって、光学フィルムとしては使用できなくなるおそれがある。そこで、バインダ2の酸価を0.25mgKOH/g以上に設定するのが好ましく、1.0mgKOH/g以上(上限は500mgKOH/g)に設定するのがより好ましい。ここで、バインダ2の酸価の調整は、例えば、バインダ2を構成する成分のうちカルボキシル基を含有するモノマーの量を増減させることによって行うことができる。そしてこのようにバインダ2の酸価を高めることによって、HAZE(曇価)を低くすることができるものである。しかし、バインダ2の酸価が0.25mgKOH/g未満であると、HAZE(曇価)が高くなったり、粘着性が低くなったりするおそれがある。なお、バインダ2の酸価はJIS K 2501に基づいて測定することができる。
【0025】
図1(b)は本発明に係る近赤外吸収粘着フィルムの他の一例を示すものであり、この近赤外吸収粘着フィルム3の両面には離型フィルム10が貼り付けられている。ここで、離型フィルム10としては、近赤外吸収粘着フィルム3に貼り付けられる面にあらかじめシリコン離型剤が塗布されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ38μm程度)等を用いることができる。このような離型フィルム10が近赤外吸収粘着フィルム3の両面に貼り付けられていることによって、粘着性を有する近赤外吸収粘着フィルム3の取扱い性を向上させることができるものである。通常、このような近赤外吸収粘着フィルム3は、無機系近赤外吸収色素1を添加したバインダ2を一方の離型フィルム10の表面に塗布し、この塗布面に他方の離型フィルム10を重ねて、上記バインダ2を乾燥させることによって製造することができる。
【0026】
以上のように、図1に示す近赤外吸収粘着フィルム3にあっては、粘着性のあるバインダ2の中においても耐久性があって壊れにくい無機系近赤外吸収色素1が用いられているので、近赤外領域の吸収率の低下を防止することができるものである。また無機系近赤外吸収色素1は粘着性のあるバインダ2に添加されているので、別途粘着層13を設ける必要がなくなり、後述の図4に示すようにプラズマディスプレイ用フィルター9の構造を単純化することができるものである。
【0027】
図2(a)は本発明に係る近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルムの一例を示すものであり、この近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルム5は、近赤外吸収粘着フィルム3が近赤外吸収粘着層8として反射防止フィルム4に貼り付けられて形成されている。つまり、バインダ2が有する粘着性によって近赤外吸収粘着フィルム3が反射防止フィルム4に直接貼り付けられているものである。この反射防止フィルム4は、透明基体に対して低屈折率層と高屈折率層とを、低屈折率層/高屈折率層/透明基体の順で積層して形成することができる。例えば、低屈折率層を透明フッ素樹脂にて形成し、高屈折率層をアクリル樹脂等にて形成することができる。この高屈折率層や低屈折率層は、溶液流延法等の手法で形成することができる。反射防止フィルム4の厚さは適宜調整されるが、好ましくは低屈折率層と高屈折率層の厚さの総計が0.1〜50μmの範囲となるようにする。具体的には、日本油脂(株)製「リアルック9100」「リアルック8201UV」、住友大阪セメント(株)製「クリアラス1100」等を反射防止フィルム4として用いることができる。
【0028】
図2(b)は本発明に係る近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルムの他の一例を示すものであり、この近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルム5は、図1(b)に示す近赤外吸収粘着フィルム3の一方の離型フィルム10を剥がし、この面に反射防止フィルム4を貼り付けることによって製造することができる。この場合、他方の離型フィルム10は剥がしていないので、近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルム5の取扱い性を向上させることができるものである。
【0029】
以上のように、図2に示す近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルム5にあっては、近赤外吸収粘着層8に無機系近赤外吸収色素1が含有されているので、近赤外領域の吸収率の低下を防止することができるものである。また無機系近赤外吸収色素1は粘着性のあるバインダ2に添加されているので、別途粘着層13を設ける必要がなくなり、後述の図4に示すようにプラズマディスプレイ用フィルター9の構造を単純化することができるものである。
【0030】
図3(a)は本発明に係る近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルムの一例を示すものであり、この近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルム7は、近赤外吸収粘着フィルム3が近赤外吸収粘着層8として電磁波シールドフィルム6に貼り付けられて形成されている。ここで、電磁波シールドフィルム6としては、例えば、東洋紡績(株)製「コスモシャインA4300」等のポリエステルフィルムに透明エポキシ系接着剤で電解銅箔等の金属箔を貼り合わせ、この金属箔をフォトリソ法で格子状パターンにエッチングすると共にこの格子状パターンを黒色化処理したもの等を用いることができる。
【0031】
図3(b)は本発明に係る近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルムの他の一例を示すものであり、この近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルム7は、図1(b)に示す近赤外吸収粘着フィルム3の一方の離型フィルム10を剥がし、この面に電磁波シールドフィルム6を貼り付けることによって製造することができる。この場合、他方の離型フィルム10は剥がしていないので、近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルム7の取扱い性を向上させることができるものである。
【0032】
以上のように、図3に示す近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルム7にあっては、近赤外吸収粘着層8に無機系近赤外吸収色素1が含有されているので、近赤外領域の吸収率の低下を防止することができるものである。また無機系近赤外吸収色素1は粘着性のあるバインダ2に添加されているので、別途粘着層13を設ける必要がなくなり、後述の図4に示すようにプラズマディスプレイ用フィルター9の構造を単純化することができるものである。
【0033】
図4は本発明に係るプラズマディスプレイ用フィルターの一例を示すものであり、このプラズマディスプレイ用フィルター9は、近赤外吸収粘着フィルム3を介して反射防止フィルム4及び電磁波シールドフィルム6が貼り合わされて形成されている。近赤外吸収粘着フィルム3は近赤外吸収粘着層8となる。通常、このプラズマディスプレイ用フィルター9は、図1(b)に示す近赤外吸収粘着フィルム3の一方の離型フィルム10を剥がし、この面に反射防止フィルム4を貼り付けると共に、他方の離型フィルム10を剥がし、この面に電磁波シールドフィルム6を貼り付けることによって製造することができる。
【0034】
またプラズマディスプレイ用フィルター9は、近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルム5の近赤外吸収粘着層8に電磁波シールドフィルム6が貼り付けられて形成されていてもよい。この場合、図2(b)に示す近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルム5の離型フィルム10を剥がし、この面に電磁波シールドフィルム6を貼り付けることによってプラズマディスプレイ用フィルター9を製造することができる。
【0035】
またプラズマディスプレイ用フィルター9は、近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルム7の近赤外吸収粘着層8に反射防止フィルム4が貼り付けられて形成されていてもよい。この場合、図3(b)に示す近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルム7の離型フィルム10を剥がし、この面に反射防止フィルム4を貼り付けることによってプラズマディスプレイ用フィルター9を製造することができる。
【0036】
以上のように、図4に示すプラズマディスプレイ用フィルター9にあっては、無機系近赤外吸収色素1を含有する近赤外吸収粘着層8によって、近赤外領域の吸収率の低下を防止しつつ、近赤外線を吸収させることができるものである。しかも、図14に示す従来のプラズマディスプレイ用フィルター9では、耐久性がなく壊れやすい有機系近赤外色素が用いられていたので、近赤外吸収層12と粘着層13とを分けて設けなければならなかったが、本発明では、耐久性があって壊れにくい無機系近赤外色素を用いているので、近赤外吸収粘着層8として近赤外吸収層12と粘着層13とを一体化して設けることが可能となり、その結果、この近赤外吸収粘着層8に直接反射防止フィルム4及び電磁波シールドフィルム6を貼り付けることができるようになったので、従来のプラズマディスプレイ用フィルター9に比べて構造を単純化することができるものである。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0038】
近赤外吸収色素として、下記[表1]に示すように、実施例1〜8では無機系のもの、比較例1では有機系のものを用いた。
【0039】
バインダ2(粘着剤及び硬化剤)として、下記[表1]に示すようなものを用いた。なお、バインダ2の酸価を下記[表1]に示す。
【0040】
そして、実施例1〜8では、粘着剤100gに「YMF−02A」を16g添加し、硬化剤2gを加えた。この近赤外吸収色素を添加したバインダ2を離型フィルム10の表面に隙間寸法100μmのバーコータ(ヨシミツ精機(株)製「ドクターブレードYD−2型」)を用いて塗布し、この塗布面に別の離型フィルム10を重ね、80℃で3分間加熱して、上記バインダ2を乾燥させることによって、図1(b)に示すような近赤外吸収粘着フィルム3を製造した。
【0041】
さらに、実施例6では、上記のようにして得られた近赤外吸収粘着フィルム3の一方の離型フィルム10を剥がし、この面に反射防止フィルム4を貼り付けると共に、他方の離型フィルム10を剥がし、この面に電磁波シールドフィルム6を貼り付けることによって、プラズマディスプレイ用フィルター9を製造した。なお、反射防止フィルム4としては、日本油脂(株)製「リアルック8201UV」を用い、電磁波シールドフィルム6としては、東洋紡績(株)製「コスモシャインA4300」(厚さ100μm)に透明エポキシ系接着剤で電解銅箔(12μm)を貼り合わせ、この金属箔をフォトリソ法でライン/ピッチが12/300μmの格子状パターンにエッチングすると共にこの格子状パターンを黒色化処理したものを用いた。
【0042】
また、比較例1では、「SKダイン2094」を100質量部、「SKダイン2094用硬化剤」を100質量部、溶媒としてメチルエチルケトンを80質量部、「IRG−022」(イモニウム化合物)を0.59質量部及び「IR−10A」(フタロシアニン化合物)を0.31質量部(「IRG−022」「IR−10A」は共に有機系近赤外吸収色素11)を混合して溶解させた。この近赤外吸収色素を添加したバインダ2を離型フィルム10の表面に隙間寸法100μmのバーコータ(ヨシミツ精機(株)製「ドクターブレードYD−2型」)を用いて塗布し、この塗布面に別の離型フィルム10を重ね、80℃で3分間加熱して、上記バインダ2を乾燥させることによって、図1(b)に示すような近赤外吸収粘着フィルム3を製造した。
【0043】
このようにして得られた実施例1〜5,7,8及び比較例1の近赤外吸収粘着フィルム3並びに実施例6のプラズマディスプレイ用フィルター9を80℃で500時間乾燥させる試験を行い、目視分光光度計を用いて試験前後の透過率を測定することによって、近赤外領域の吸収率の低下の有無を確認した。その結果を図5〜図13に示す。なお、試験前後において波長850〜1100nmの近赤外線の透過率が20%以上上昇したものは、近赤外領域の吸収率が低下したものとみなし、20%未満であったものは、近赤外領域の吸収率が低下しなかったものとみなした。
【0044】
また、上記プラズマディスプレイ用フィルター9について、JIS K7136−2000に基づいてHAZE(曇価)を測定した。
【0045】
以上の結果を下記[表1]に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
有機系近赤外吸収色素11を用いた比較例1では図13のように近赤外領域の吸収率の低下がみられたのに対し、無機系近赤外吸収色素1を用いた実施例1〜7では図5〜図12のように近赤外領域の吸収率の低下はみられなかった。
【0048】
また、バインダ2の酸価が0.25mgKOH/g未満の実施例7ではHAZE(曇価)が高かったのに対し、バインダ2の酸価が0.25mgKOH/gを超える実施例1〜6,8ではHAZE(曇価)が低かった。
【符号の説明】
【0049】
1 無機系近赤外吸収色素
2 バインダ
3 近赤外吸収粘着フィルム
4 反射防止フィルム
5 近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルム
6 電磁波シールドフィルム
7 近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルム
8 近赤外吸収粘着層
9 プラズマディスプレイ用フィルター
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機系近赤外吸収色素をバインダに添加して形成されていることを特徴とする近赤外吸収粘着フィルム。
【請求項2】
バインダの酸価が0.25mgKOH/g以上であることを特徴とする請求項1に記載の近赤外吸収粘着フィルム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の近赤外吸収粘着フィルムが反射防止フィルムに貼り付けられていることを特徴とする近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の近赤外吸収粘着フィルムが電磁波シールドフィルムに貼り付けられていることを特徴とする近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の近赤外吸収粘着フィルムを介して反射防止フィルム及び電磁波シールドフィルムが貼り合わされて形成されているもの、請求項3に記載の近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルムの近赤外吸収粘着層に電磁波シールドフィルムが貼り付けられて形成されているもの、請求項4に記載の近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルムの近赤外吸収粘着層に反射防止フィルムが貼り付けられて形成されているもの、のいずれかであることを特徴とするプラズマディスプレイ用フィルター。
【請求項1】
無機系近赤外吸収色素をバインダに添加して形成されていることを特徴とする近赤外吸収粘着フィルム。
【請求項2】
バインダの酸価が0.25mgKOH/g以上であることを特徴とする請求項1に記載の近赤外吸収粘着フィルム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の近赤外吸収粘着フィルムが反射防止フィルムに貼り付けられていることを特徴とする近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の近赤外吸収粘着フィルムが電磁波シールドフィルムに貼り付けられていることを特徴とする近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の近赤外吸収粘着フィルムを介して反射防止フィルム及び電磁波シールドフィルムが貼り合わされて形成されているもの、請求項3に記載の近赤外吸収粘着層付き反射防止フィルムの近赤外吸収粘着層に電磁波シールドフィルムが貼り付けられて形成されているもの、請求項4に記載の近赤外吸収粘着層付き電磁波シールドフィルムの近赤外吸収粘着層に反射防止フィルムが貼り付けられて形成されているもの、のいずれかであることを特徴とするプラズマディスプレイ用フィルター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−265638(P2009−265638A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77714(P2009−77714)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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