説明

近赤外線乃至テラヘルツ波長の分光法及び装置

本発明の原理によれば、層状格子干渉計は、放射線をその波長成分に細分する。格子の2組の歯は、互いに対して動かされる。干渉計のスペクトル出力は、諸検出器の配列上に集束され、格子歯の多数の位置に対してデータが記憶される。次いで、収集されたデータはフーリエ変換されて、放射線のスペクトルを回復する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[0001]本願は、2005年12月23日出願の米国特許仮出願第60/753,643号の利益を主張する。前述の出願の内容を完全に、参照により本明細書に組み込む。
【技術分野】
【0002】
[0002]本発明は、撮像及び非撮像分光計(imaging and non-imaging spectrometers)に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]分光法(spectroscopy)とは、所与の源からの電磁放射線がその波長成分に細分され、またそれらの成分が分析されて、その放射線源の物性を求める科学技術である。特に、スペクトル内にある(又はない)放射線の波長は、放射線源内にある原子又は分子を示す。分光計は、放射線をその波長成分に分散させ、スペクトルを生成する。
【0004】
[0004]これらのスペクトル内では、原子及び分子の指紋である輝線及び/又は吸収線を調べることができる。元素周期表内のすべての原子は、電子軌道の間隔が固有であり、従って、特定のエネルギー又は波長だけを発し又は吸収することができる。それ故、スペクトル線の位置及び間隔は、原子ごとに固有であり、従って、科学者らは、その固有の署名スペクトルから、どのような種類の原子が放射線源内に存在するかを求めることができる。
【0005】
[0005]物体が発することができるスペクトルには、輝線、吸収、及び連続スペクトルという3つの種類がある。[0006]輝線は、電子が、原子核の周囲のより低い軌道に落ちてエネルギーを失い、それによって特定の周波数で電磁波を放射するときに生じる(即ち、観察されている波長スペクトル全体での比較的強い放射の線)。従って、例えば、輝線スペクトル(emission spectra)は、高温の気体中の原子及び分子が特定の波長で余分の放射線を発するときに生じ、そのスペクトル内に明るい線が現れる。これらの線のパターンは、元素ごとに固有である。スペクトル内のこれらの線の位置を使用して、物体の組成、温度、密度、及び/又は他の物性を求めることができる。
【0006】
[0007]一方、吸収線は、電子がエネルギーを吸収することによってより高い軌道に移動するときに生じる。放射線源で物体を照らした場合、その物体は、その物体を構成する原子に従って、ある非常に限定的な周波数でのみその放射線を吸収する。従って、輝線スペクトルと同様に、その物体から反射される放射線の吸収スペクトルを測定することによって、照明源内に現れた波長のうちのどの波長が、反射内に現れないかを求めることによって、物体の組成を求めることができる。これが、吸収スペクトルである。
【0007】
[0008]原子のスペクトル線に基づく分光法は、主に可視波長に適している。近赤外線(IR)の範囲(およそ0.75〜3.0ミクロン)、中IRの範囲(約3.0〜8.0ミクロン)、及び長IRの範囲(約8.0〜30ミクロン]では、スペクトル吸収帯域の要因となる主要な機構は、電子エネルギー準位間の遷移ではなく、分子の振動エネルギー準位間の遷移である。テラヘルツ(Terahertz;1012)又はTHz範囲(約30〜1000ミクロン)と呼ばれることもある遠IRの範囲では、分子の回転エネルギー準位が主要な機構である。
【0008】
[0009]材料の結晶格子の振動の吸収スペクトル(いわゆるフォノンスペクトル)に基づく固体材料の検出及び識別という、THz(遠IR)だけに関する追加の適用分野がある。これらのスペクトルはほとんど、遠IR波長(THz周波数)に位置する。原理は同じであるが、スペクトル放出に対する基本的な機構は、分子の振動又は回転ではなく格子の振動である。これは、爆発物、薬物などを検出するために有用である。
【0009】
[0010]物体のスペクトルから、その組成を求めることができるだけではなく、少なくとも温度及び密度が変化すると原子の署名スペクトル線が移動する可能性があるので、潜在的にその温度、密度、及び他の特性を求めることもできる。 [0011]連続スペクトル(熱スペクトルとも呼ばれる)は、熱を放射する、即ち温度が絶対零度より高いあらゆる物体によって発せられる。光(又は他の電磁放射線)は、連続帯域内に分散され、すべての波長がある程度の放射線を有する。従って、所与の1つ又は複数の波長での放射線の大きさを使用して、物体の一般組成及び/又はその温度もしくは密度を求めることができる。しかし、物体の連続スペクトルは一般に、より限定的な輝線又は吸収スペクトルに比べて提供する情報が少ない傾向がある。
【0010】
[0012]従って、分光法及び分光計には、科学及び技術の多くの分野にわたって、有力で重要な適用分野がある。例えば、分光法及び分光計は、天文学で、宇宙の星及び他の物体の組成を求めるために広範囲にわたって使用される。分光法及び分光計はまた、軍事及び警備の適用分野でも、建物内部にあるか、地下にあるか、又はそれ以外の直接観測できない可能性がある物質の識別などに使用される。分光計はまた、人物及び荷物を(例えば空港で)走査して、プラスチック爆弾又は銃などの金属物などの特定の種類の物品をその人物が所持している(又は荷物が含む)かどうかを確認するために使用することもできる。
【0011】
[0013]非撮像分光計は、所与の源からのすべての放射線のスペクトル成分を単一の単位として観察する。一方、撮像分光計は、所与の視野内の異なる点からの放射線を別々に検出し、それらの点ごとにスペクトル成分を別々に求める(即ちピクセル化)。従って、例えば、非撮像分光計は、単一の光検出器を使用して物体からの放射線を検出することができ、一方、撮像分光計は、諸光検出器の配列を備え、各光検出器が、観察されている視野全体の中の異なる部分又は点からの放射線を受け取る。
【0012】
[0014]放射線をそのスペクトル成分に細分するための様々な技術が知られている。おそらく、その最もよく知られた例は、日光をプリズム中に通すことである。別の例は、マイケルソン分光計であり、放射線を光線分割器中に通して、同じ特性を有する2つの別々の光線に分割し、次いで、その2つの別々の光線が、長さの異なる経路を通って進行した後に、それらを再結合させる。2つの経路の長さが異なるため、一方の光線からの放射線は、他方の光線からの放射線に対して位相がずれ、従って、2つの光線が再結合されるとき、干渉縞が生じる。この干渉縞を分析して、元の単一の光線のスペクトル成分を求めることができる。2つの放射光線間に干渉を生じさせる計器は、干渉計と呼ばれる。
【0013】
[0015]放射線を位相遅延の異なる2つの成分に分割し、次いでそれらを再結合させる別の干渉計技術は、層状格子干渉計(lameller grating interferometer)である。層状格子干渉計は、John Strongによって、Journal of Optical Society of America,Vol.57,pp.354−7(1957)に初めて記載された。層状格子干渉計の動作及び設計上の問題についての要約は、Robert John Bellによる著書Introductory Fourier Transform Spectroscopy(Academic Press,New York,1972)の第15章に見られる。更に、Omar Manzadoらの「Miniature lamellar grating interferometer based on silicon technology」.Optics Letters,Vol.29,No.13,July 1,2004,pp.1437−9では、近赤外波長で使用するための、MEMS(微小電子機械システム)技術を使用して製作される層状格子干渉計を開示している。同文献を参照により本明細書中に組み込む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
[0016]本発明の目的は、改良型の分光計を提供することである。[0017]本発明の別の目的は、近赤外から遠赤外(テラヘルツ周波数)の波長スペクトル内の、より狭いサブ帯域で適用される分光計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
[0018]本発明の原理によれば、層状格子干渉計は、放射線をその波長成分に細分する。格子の2組の歯は、互いに対して動かされる。干渉計のスペクトル出力は、諸検出器の配列上に集束され、格子歯の多数の相対変位に対してデータが記憶される。次いで、収集されたデータは、フーリエ変換されて、放射線のスペクトルを回復する。[0019]本発明の好ましい一実施形態では、検出器配列は、非冷却マイクロブリッジ検出器配列(uncooled, microbridge detector array)を含む。別の好ましい実施形態では、検出器配列は、固体光検出器(solid-state photodetector)を含む。更に別の好ましい実施形態では、検出器配列は、半導体MEMSデバイスを含む。
【0016】
[0020]微小電子機械システム技術(MEMS)の最近の進歩により、動的にプログラム可能な層状格子を製作することが可能である。MEMS層状格子と、非冷却マイクロブリッジ検出器配列とを組み合わせると、本発明の原理による極めて小型且つ軽量の分光計を製作することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[0027]本発明は、近赤外から遠赤外(又はTHz)波長範囲内で適用される分光計である。実際には、本発明の原理によって構成される特定の分光計の周波数範囲はおそらく、近赤外からテラヘルツ波長範囲の一部分だけを包含するはずであり、より重要な点は、本発明の原理を利用して、近赤外からテラヘルツ周波数範囲内の任意の部分のサブ帯域内で動作する分光計を作ることができるということである。従来技術では、分光計の種類及びその範囲内で使用される技術は通常、分光計が動作するべき特定の波長範囲に従って、大幅に異なるものでなければならなかった。本発明の原理によれば、同じ基本的な技術又は技法を使用して、近赤外(約0.75〜3.0ミクロン)から、中赤外(約3.0〜8.0ミクロン)、及び長赤外(約8.0〜30ミクロン)、遠赤外(THz)(約30〜1000ミクロン)までの間の任意の部分の周波数帯域で動作する分光計を作ることができる。
【0018】
[0028]図1は、本発明の原理による、テラヘルツ範囲の2次元撮像フーリエ変換分光計101の基本的な構成要素の概略図である。この種類のシステムは、人物又は荷物を走査して爆発物、銃、及び他の禁制品を探すための空港警備に適用することができる。照明源112は、組成を知りたいと望む物体又は場面114(以下「物体」と総称する)を照らす。物体は、荷物、人物、及び/又は工場の一部分とすることができる。実際には、荷物又は人物はおそらく、ブース又は類似の閉鎖された空間など、放射線源112によって照らすことができる特定の位置に配置されるはずである。照明源112は、分光計の帯域幅内のすべての周波数で所与の放射線分布を含む放射線を発するべきである。しかしこれは、システムの必要条件ではない。
【0019】
[0029]照明源112が活動状態であるとき、物体は、源112からの放射線を吸収し、従って反射された放射線のスペクトルを変更し、且つ物体によって反射された放射線の構造を変更する。前述のように、物体は、その物体を構成する原子及び分子に基づく特定の吸収スペクトルを有する。物体114から反射される照明源112からの放射線は、光学系116によって収集され、層状格子干渉計118に影響を与える。光学系116は、従来の反射、屈折、又は反射屈折設計とすることができる。
【0020】
[0030]図2は、図1の分光計101で使用できる、本発明の原理による層状格子干渉計のより詳細な概略図である。図示のように、格子118は、第1の組の歯210と、第2の組の歯212とを含む。歯210の前面210aはすべて、同一平面上に互いに均一に配置される。歯212の前面212aはすべて、同一平面上に互いに均一に配置される。第2の組の歯212は、中規模作動装置214によって、第1の組の歯210に対してz方向に一体として動かすことができ、従って歯210の前面210aと歯212の前面212aとの間のz方向の直線距離を変化させる。本明細書の用語では、Δzとは、2組の歯の前面間の線形オフセット(linear offset)を示す。また本明細書の用語では、ゼロオフセット位置とは、両組の歯の前面が互いに完全に同じ高さとなる位置である。[0031]この種類の層状格子は、周知のMEMS技術を使用して容易に製造することができる。
【0021】
[0032]光学系116は、放射線211aを、層状格子118の歯の前面210a、212aへ向ける。歯がゼロオフセット位置にあるとき、層状格子は、本質的には鏡である。しかし、2組の歯210、212が完全に同じ高さではないとき、2組の歯の前面から反射する放射線は、この放射線を、2つの成分、即ち、第1の組の歯210の前面210aから反射した放射線211bと、第2の組の歯212の前面212aから反射した放射線とに分割する。もちろん、2つの異なる成分の放射線は、互いに位相オフセットである。
【0022】
[0033]再び図1を参照すると、位相オフセットの量は、距離Δzに依存する。2組の歯の前面から反射した放射線は、第2の光学系120によって、検出システム122上へ集束される。[0034]検出システム122は、特定の分光計の周波数スペクトル内の放射線を検出するように合理的に適合された任意のシステムとすることができる。撮像分光計では、この検出器は、諸検出器の配列を備えることができる。これは、諸検出器の2次元配列(例えば100×100の光検出器の格子)、又は1次元配列とすることができ、この配列が視野全体にわたって走査される。交互に、諸検出器の固定1次元配列を使用することもでき、物体は、この1次元検出器配列の視野を横切って通過させることができる。最後に、検出システムは、単一の検出器だけを備えることもでき、この検出器が走査されて、画像を生成する。[0035]もちろん、簡単な非撮像分光計では、走査されない単一の検出器を使用することができる。
【0023】
[0036]1つ又は複数の検出器を製作するために最も適した特定の技術は、分光計の周波数範囲に依存する可能性が高く、異なるサイズの放射線の波長には、異なる技術がより経済的に適している。テラヘルツの範囲では、熱電(TE)マイクロブリッジ検出器などの非冷却熱検出器が、検出器として優れた選択となるはずである。そのようなマイクロブリッジ検出器は、MEMS技術を使用して製造することができる。本発明でうまく機能するはずのいくつかの特定のTEマイクロブリッジ検出器が、本特許出願と同一の譲受人が所有する、米国特許第5,220,188号、同第5,220,189号、同第5,449,910号、及び同第6,036,872号に開示されている。
【0024】
近赤外周波数の範囲では、検出器又は検出器配列は、光導電効果又は光起電力効果のいずれかを使用する光電検出器を含むことができる。米国特許第5,220,188号は、基本的なエッチピット型のマイクロボロメータ(microbolometer;微小輻射エネルギー測定用温度計)IR検出器を開示している。米国特許第5,220,189号は、基本的な熱電(TE)型のIR検出器を開示しており、この検出器は、本出願に好ましいはずである。これらの設計に対する後の改良形態は、例えば、米国特許第5,449,910号、同第5,534,111号、同第5,895,233号、及び同第6,036,872号に記載されている。[0037]いずれにしても、1つ又は複数の検出器は、放射線信号を電気信号に変換し、それらの電気信号が、処理、記憶、及び分析のために処理装置124に供給される。
【0025】
[0038]動作の際には、層状格子干渉計118の2組の歯210及び212は、複数の異なるΔz位置について、互いに対して走査される。場合によっては、Δz位置はΔz=0を含む。各Δz位置で、処理装置124は、検出器配列122からデータを受け取り且つ記憶する。すべての所望のΔz位置での完全な走査が実施され、収集されたデータが記憶された後、処理装置124は、各画素からのデータセットにフーリエ変換を実行し、配列の画素ごとのスペクトルデータを求める。この手順は、例えば、Robert John Bellによる著書Introductory Fourier Transform Spectroscopy(Academic Press,New York,1972)に記載のように、フーリエ変換分光法の当技術分野では周知である。
【0026】
[0039]図5Aは、本発明のテラヘルツ周波数の適用分野で使用できる例示的な層状格子干渉計の分解図である。図5B及び5Cは、同じ干渉計を、その組み立てられた形で示し、2組の歯はそれぞれ、それらの相対的な移動範囲の両極にある。類似の構造は、格子周期及び他の物理的パラメータを波長に合わせて適切に調整することによって、当該の他のスペクトル波長帯で使用することもできる。
【0027】
[0040]2組の歯210及び212は、それぞれ別々の基板501及び502上に配置される。一方の基板501は、電動機駆動アーム505に取り付けられ、電動機駆動アーム505は、基板をアームの長手方向に移動させて、2組の歯の前面間の長手方向の距離を変えることができる。他方の基板502は、スペーサ509、及びネジ又はボルト(図示せず)などの適切な接続手段を介して、横方向支持部材507に固定して取り付けられる。更に、バネ512が、2つの基板501と502の間を通る中空円筒514内に取り付けられて、2つの基板を互いから離れるように偏らせる。最後に、位置決めガイド(alignment guide)515は、2つの基板501、502の縁部の孔を通って、2つの基板の位置決めを長手方向に(即ち、2つの基板を互いに並列に保持するように)維持し、且つ横方向に(一方の組の歯が他方の組の歯の間隙を干渉せずに通るように、2組の歯を位置決めして保持するように)維持するのに役立つ。
【0028】
図示のように、2つの基板は、基板501の歯210が、基板502内の歯212の間の間隙を通ることができるように位置決めされる。電動機駆動アーム505を使用して、2つの基板501、502間の相対距離、即ち2組の歯210、212の前面間の相対距離を変化させることができる。図5Bは、アームが正の最大ΔZ位置まで完全に延ばされた、層状格子干渉計の状態を示す。図5Cは、アームがその負の最大ΔZ位置まで完全に引っ込められた、干渉計の状態を示す。
【0029】
[0041]図6は、システム内に層状格子干渉計を組み込むための1つの可能な手法を示す、非冷却検出器とともに使用するのに適した1つの例示的な撮像光学系を示す。図示の光学系では、入射する放射線は、2つの層状格子干渉計601a及び601bから、集束鏡603の方へ反射される。この放射線は、鏡603から、非冷却検出器配列605内へ反射される。
【0030】
[0042]検出器配列によって取得されたスペクトル画像が、次いでどのように(処理装置124内で、又は後の処理機器(図示せず)内で)更に分析されるかは、その特定の適用分野に依存する。一例にすぎないが、分光計が、個人を走査して禁制品を探すための空港警備システムとして使用されている場合、そのデータを分析して、ある人物がプラスチック爆弾、金属、又は有毒ガスを身に着けているかどうかを確認することができる。これは、その人物の輝線及び/又は吸収線スペクトル画像を分析して、そのような物質を構成する原子又は分子の署名スペクトル画像を得ることによって行われるはずである。
【0031】
[0043]THz周波数の典型的な爆発性化合物のスペクトルの例を、図3A〜3Dに示す。図3Aは、TNTに対するスペクトルを示す。図3Bは、RDXに対するスペクトルを示す。図3Cは、HMXに対するスペクトルを示す。図3Dは、2,4−DNTに対するスペクトルを示す。[0044]図1の分光計はまた、照明源112を使用して、又は単に分光計101近傍の周辺光及び他の放射線を使用して、物体の広帯域、非スペクトル画像を取得するために使用することもできる。
【0032】
[0045]本発明の好ましい一実施形態では、まず分光計を使用して、人物又は物体データの広帯域画像を取得し且つ分析することができる。(広帯域画像では、層状格子の歯はΔz=0に設定されるはずである)。次いで、画像のいずれかの部分(即ち、観察されている個人のいずれかの部分)が、異常な広帯域読取値を有するように見える場合、画像のその部分だけが、後に層状格子干渉計を走査することによって分析されて、その吸収及び/又は輝線スペクトルを得ることができる。一例にすぎないが、約0.1から0.3mmの波長範囲内の放射線は、約1ミリメートルの衣類を透過することができ、一方では人間の皮膚と、他方では金属又はプラスチック爆弾との広帯域反射率を区別することができる。従って、例えば、広帯域画像で、ある人物がシャツの下に物体を隠していることが判明した場合、次いで画像のその部分を再処理して、より複雑且つ詳細な輝線及び/又は吸収スペクトルを取得し、その物体の組成を求めることができる。
【0033】
[0046]現在の技術で、100×100の検出器などの実際的なパラメータと仮定すると、300ミクロンの画素サイズでは、約10メートルで1.75cmの空間解像度を提供し、例えば、空港警備市場向けの商業的に手頃な価格の分光計は、30分の1秒ごとに広帯域画像を取得することが可能になりうる。一方、同じサイズの輝線又は吸収スペクトル画像では、約128の周波数帯域と仮定すると、1画像につき4から5秒程度を必要とする可能性がある。
【0034】
[0047]図4は、本発明の代替実施形態を示す。本発明のこの実施形態は、照明源112が省略されていること以外は、図1の実施形態と本質的に同一である。この実施形態は、間接照明(周辺光及び他の放射線)だけを使用する。この実施形態は、輝線及び/又は吸収スペクトル分析の実行を除外するものではないが、広帯域撮像に最も適している。本発明の原理を利用する、照明源をもたない分光計は、特定のスペクトル帯域に従って、約100から1000メートルの範囲で、実質上スタンドオフ連続スペクトル分光計として使用することができる。[0048]実際には、本発明の原理によって作られた任意の所与の分光計は、近赤外からテラヘルツの範囲のうちのほんの一部分だけで動作する。任意の所与の実装形態の実際の周波数帯域幅は、約1/2λから約1.5λ以下の帯域幅を包含する可能性が高いはずである。ここで、λは帯域の中心波長である。
【0035】
[0049]本発明のいくつかの特定の実施形態についてかように説明してきたが、様々な改変形態、修正形態、及び改良形態が、当業者には容易に想到されよう。本開示によって明らかにされるそのような改変形態、修正形態、及び改良形態は、本明細書中に明示しないが、本記載の一部であるものとし、且つ本発明の精神及び範囲内であるものとする。従って、上記の説明は、例示的なものにすぎず、限定するものではない。本発明は、添付の特許請求の範囲及びその等価物に定義される通りにのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の原理による分光計の概略図である。
【図2】図1の層状格子干渉計のより詳細な概略図である。
【図3A】図3Aは、分光計で測定できる固有のスペクトル「指紋」を示す、爆発物で使用される一般的な化合物の、テラヘルツ周波数で測定され且つ予測されたスペクトルを示すスペクトル分析図である。
【図3B】図3Bは、分光計で測定できる固有のスペクトル「指紋」を示す、爆発物で使用される一般的な化合物の、テラヘルツ周波数で測定され且つ予測されたスペクトルを示すスペクトル分析図である。
【図3C】図3Cは、分光計で測定できる固有のスペクトル「指紋」を示す、爆発物で使用される一般的な化合物の、テラヘルツ周波数で測定され且つ予測されたスペクトルを示すスペクトル分析図である。
【図3D】図3Dは、分光計で測定できる固有のスペクトル「指紋」を示す、爆発物で使用される一般的な化合物の、テラヘルツ周波数で測定され且つ予測されたスペクトルを示すスペクトル分析図である。
【図4】本発明の原理による分光計の代替実施形態の概略図である。
【図5A】図5Aは、本発明のテラヘルツ周波数の適用分野向けの層状格子干渉計の例示的な一実装形態の斜視図である。
【図5B】図5Bは、本発明のテラヘルツ周波数の適用分野向けの層状格子干渉計の例示的な一実装形態の斜視図である。
【図5C】図5Cは、本発明のテラヘルツ周波数の適用分野向けの層状格子干渉計の例示的な一実装形態の斜視図である。
【図6】システム内に層状格子干渉計を組み込むための1つの可能な手法を示す、非冷却検出器とともに使用するのに適した例示的な撮像光学系の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状格子干渉計と、
物体からの放射線を前記干渉計の方へ向けるように適合された第1の光学系と、
前記放射線が前記干渉計中を通った後に前記放射線を検出し、且つ前記検出された放射線を電気信号に変換する諸検出器要素の配列であって、各検出器が前記物体の異なる部分からの光を検出するように適合された、諸検出器要素の配列と、
前記諸検出器要素から、前記放射線のスペクトル組成に関する情報を含む前記電気信号を受け取るように結合された処理装置であって、前記情報にフーリエ変換を実行して、前記物体のスペクトル組成を取得するように適合された、前記処理装置とを備える、分光計。
【請求項2】
前記物体を照らすように適合された放射線源を更に備える、請求項1に記載の分光計。
【請求項3】
前記検出器配列の前記諸検出器が、非冷却熱検出器を含む、請求項1に記載の分光計。
【請求項4】
前記検出器配列の前記諸検出器が、マイクロブリッジ・ボロメータを含む、請求項1に記載の分光計。
【請求項5】
前記検出器配列の前記諸検出器が、熱電マイクロブリッジ検出器を含む、請求項1に記載の分光計。
【請求項6】
前記検出器配列の前記諸検出器が、光導電効果又は光起電力効果のいずれかを使用する光電検出器を含む、請求項1に記載の分光計。
【請求項7】
前記検出器配列の前記諸検出器が、MEMSデバイスを含む、請求項1に記載の分光計。
【請求項8】
前記分光計に、前記物体の連続スペクトルのスペクトル分析を取得させ、且つ、前記物体のうちの特定の事前定義された状態を満たす任意の部分に対する前記連続スペクトルのスペクトル分析に応じて、前記物体の前記部分の輝線、吸収、又は反射スペクトル分析を取得させるように適合された制御システムを更に備える、請求項1に記載の分光計。
【請求項9】
前記分光計の帯域幅が、近赤外線乃至テラヘルツの範囲内である、請求項1に記載の分光計。
【請求項10】
前記分光計の帯域幅が、0.5fから1.5fの間であり、ここで、fが、特定の適用分野向けのスペクトル帯域の中心周波数である、請求項9に記載の分光計。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−521677(P2009−521677A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547334(P2008−547334)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/047783
【国際公開番号】WO2007/075355
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】