近赤外線及び遠赤外線を用いる物体検知装置
【課題】 物体を適切に検知することができる物体検出装置の提供
【解決手段】 自動ドアセンサ100は、近赤外線センサ部100A、遠赤外線センサ部100B及び制御部100Cを有している。近赤外線センサ部100Aは、近赤外線を用いて近赤外線検知領域R110に物体が存在するか否かを検知する。近赤外線センサ部100Aは、複数の近赤外線投光領域を形成することによって、物体の存在、物体の検知位置、物体の移動方向を検知する。遠赤外線センサ部100Bは、遠赤外線検知領域R130からの遠赤外線を受光することによって、遠赤外線検知領域R130に人が存在するか否かを検知する。制御部100Cは、近赤外線センサ部100A及び遠赤外線センサ部100Bの検知結果に基づいて、自動ドアシステム50のドアパネル55a、55bを開閉するための所定の信号を発生する。
【解決手段】 自動ドアセンサ100は、近赤外線センサ部100A、遠赤外線センサ部100B及び制御部100Cを有している。近赤外線センサ部100Aは、近赤外線を用いて近赤外線検知領域R110に物体が存在するか否かを検知する。近赤外線センサ部100Aは、複数の近赤外線投光領域を形成することによって、物体の存在、物体の検知位置、物体の移動方向を検知する。遠赤外線センサ部100Bは、遠赤外線検知領域R130からの遠赤外線を受光することによって、遠赤外線検知領域R130に人が存在するか否かを検知する。制御部100Cは、近赤外線センサ部100A及び遠赤外線センサ部100Bの検知結果に基づいて、自動ドアシステム50のドアパネル55a、55bを開閉するための所定の信号を発生する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を検知する物体検知装置に関し、特に、近赤外線及び遠赤外線を用いるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の物体検出装置である自動ドアセンサについて、図13を用いて説明する。自動ドアセンサ2は、図13に示すように、自動ドア4の無目6に取り付けられる。自動ドア4は、間隔をおいて配置した固定壁8、8間のドア開口を、両引き分けのドアパネル10、10によって開閉するもので、自動ドアセンサ2が形成した検知範囲12内に人体や物が存在するか否かによって、ドアパネル10、10が開閉される。
【0003】
図14(a)、(b)に示すように、自動ドアセンサ2では、その中央に1つの投光器14が設けられている。投光器14は、例えば赤外線を所定の周期を持ったパルス状に発光することで投光するものである。投光器14は、ドア開口幅方向およびドア開口幅方向に直交する方向に一定の長さを有し、ドア開口幅方向に直交する方向の長さが長い面状に発光することで投光を行う。投光器14の前面には、レンズ16が光学素子として設けられている。レンズ16は、例えばシリンドリカルレンズで、図15に示すように、投光器14からの光によって、ドア開口幅方向及びドア開口幅方向に直交する方向にそれぞれ所定の長さを持つ例えば矩形状の投光領域18を、基準面例えば床面上に形成する。これら投光器14及びレンズ16によって投光部が構成されている。
【0004】
投光部のドア開口幅方向の両側に、それぞれ受光器が設けられている。図14(a)における右側には、ドアに近い位置に受光器22aが配置されている。同左側には同様にドアから離れる位置に受光器22bが配置されている。受光器22a、22bは同一の構成のものである。
【0005】
右側及び左側の受光器22a、22bの前面には、ドア開口幅方向の異なる位置からの光を同じ受光器に集光する多分割レンズ24a、24bがそれぞれ配置されている。多分割レンズ24a、24bは、ドア開口幅方向に4つに分割されており、投光領域18から反射した光を各受光器22a、22bに集束させる。図15の投光領域18内に円で示しているのが、各受光器22a、22bにおいて受光される反射光を発生する床面上の受光領域である。
【0006】
これら受光領域は、投光領域18内において、受光器22aに対応してドア開口から遠い側にあるドア開口幅方向に一列の4つの受光領域26aと、受光器22bに対応してドア開口に近い側にあるドア開口幅方向に一列の4つの受領領域26bとからなる。このように受光領域26a、26bが形成されるように、多分割レンズ24a、24bを構成しているレンズの向きと傾きとが調整されている。
【0007】
受光器22aと多分割レンズ24aとによって、1つの受光部が構成され、受光器22bと多分割レンズ24bとによって、1つの受光部が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−265017公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の自動ドアセンサ2には、以下に示すような改善すべき点がある。自動ドアセンサ2では、赤外線として近赤外線を投光し、投光した近赤外線の反射光を受光するものである。このため、気象条件によっては、自動ドアセンサ2が正常に動作しない、という改善すべき点がある。例えば、雪や霧等の気象条件や、大気中に蒸気が発生した場合、それらによって近赤外線が遮断、あるいは反射することによって、自動ドアセンサ2での誤検知が発生する。
【0010】
また、自動ドアセンサ2では、投光領域18において移動する物体を追跡検知できる。また、所定時間以上、同じ位置に留まっている物体の存在を検知することはできるが、その物体が人であるか否かを検知することができない、という改善すべき点がある。自動ドアセンサ2のような近赤外線を投光し反射光を受光することによって物体の存在を検知する自動ドアセンサでは、一般的に、所定時間以上同じ位置に留まり静止している物体を検知した場合、当該物体は人でないと判断して、ドアを閉じる処理をする。このように処理しなければ、物体を検知している限り、ドアが開いた状態となるからである。このようなドアの開閉処理では、検知した物体が人であったとしても、結果的にドアを閉じることとなる。
【0011】
一方、人から放射される遠赤外線(熱線)を検知することによって人の存在を判断する遠赤外線センサがある。このような遠赤外線センサでは、検知した遠赤外線から検知領域の温度を算出し、温度差から人が存在するか否かを判断する。したがって、夏場等、検知領域における床面が高温になると、人の体温との温度差が少なくなり、結果的に人の存在が検知できない、という問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、検知エリア内の物体の検知を確実に行うと同時に、その物体が人であるか否かを適切に検知することができる物体検出装置の提供を目的とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明における課題を解決するための手段及び発明の効果を以下に示す。
【0014】
本発明に係る物体検知装置は、近赤外線を所定の近赤外線検知領域に投光する近赤外線投光部、投光した前記近赤外線の反射光を受光する近赤外線受光部、前記反射光の受光から、前記近赤外線検知領域における物体の存在を判断する近赤外線制御部、所定の遠赤外線検知領域から遠赤外線を受光する遠赤外線受光部、前記遠赤外線の受光から、前記遠赤外線検知領域における物体の存在を判断する遠赤外線制御部、前記近赤外線制御部における物体の存在判断と、前記遠赤外線制御部における物体の存在判断とを用いて、所定の検知領域における物体の存在を判断する制御部、を有する物体検知装置であって、前記検知領域は、前記近赤外線検知領域と前記遠赤外線検知領域とが重複する領域によって形成されていること、を特徴とする。
【0015】
これにより、近赤外線を用いた検知、又は、遠赤外線を用いた検知では、適切な検知ができなかった場合でも、両者の検知を用いることによって適切な検知を行うことができる。
【0016】
また、人の位置や移動をより正しく判断できるので、屋内外における高齢者見守りセンサや、セキュリティセンサとして利用出来る。
【0017】
本発明に係る物体検知装置では、前記近赤外線検知領域は、複数の近赤外線投光領域を有すること、を特徴とする。
【0018】
これにより、物体の存在に加えて、検知位置、移動方向も加味した物体の検知を行うことができる。
【0019】
本発明に係る物体検知装置では、前記遠赤外線検知領域は、単独素子を光学分割するなどで検知領域の分割認識を行わない単独または複数の遠赤外線受光領域を有すること、を特徴とする。
【0020】
これにより、人等の熱源の存在による人の検知を行うことができる。
また本発明に係る物体検知装置では、前記遠赤外線検知領域は、複数の遠赤外線受光領域を有すること、を特徴とする。
【0021】
これにより、人等の熱源の存在に加えて、検知位置、移動方向も加味した人の検知を行うことができる。
【0022】
本発明に係る物体検知装置では、前記制御部は、前記近赤外線の反射光から前記検知領域に物体が存在すると判断し、さらに、受光した前記遠赤外線から前記検知領域に人が存在すると判断した場合に、前記検知領域に人が存在すると判断すること、を特徴とする。
【0023】
これにより、検知した物体が長時間、同じ位置に存在する場合であっても、検知した物体が人であるか否かの判断によって、より適切な動作を行わせることができる。
【0024】
本発明に係る物体検知装置では、前記制御部は、前記近赤外線制御部のみによる物体存在判断、前記遠赤外線制御部のみによる物体存在判断、又は前記近赤外線制御部及び前記遠赤外線制御部における物体存在判断とのAND処理若しくはOR処理、以上の処理のいずれか又は組み合わせを選択すること、を特徴とする。
【0025】
これにより、気象条件や、設置場所やその場所の温度等の設置環境等の条件に合わせて、近赤外線を用いた検知、遠赤外線を用いた検知、又は両者を用いた検知を選択することができるので、より適切な検知を行うことができる。
本発明に係る物体検知装置では、前記制御部は、所定の領域の温度を選択情報として用いること、を特徴とする。
【0026】
これにより、温度によって、適切な物体存在判断を選択することができる。
本発明に係る物体検知装置では、前記制御部は、前記選択情報として温度が人の体温又はそれ以上であれば前記OR処理、又は、前記近赤外線制御部のみによる物体存在判断を選択し、それ以下であれば前記AND処理を選択すること、を特徴とする。
【0027】
これにより、体温を基準として、適切な物体存在判断を選択することができる。
本発明に係る物体検知装置では、前記遠赤外線受光部は、受光した前記遠赤外線から前記温度を取得すること、を特徴とする。
【0028】
これにより、特別な手段を用いずとも、必要な温度を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る物体検出装置の一実施例1である自動ドアセンサ100の概要を示す図である。
【図2】自動ドアセンサ100の機能構造を示す図である。
【図3】近赤外線センサ部100Aの内部構造を示す図である。
【図4】遠赤外線センサ部100Bの内部構造を示す図である。
【図5】自動ドアセンサ100の近赤外線検知領域R110を示す図である。
【図6】自動ドアセンサ100の近赤外線投光領域R110A−1〜R110D−18を示す図である。
【図7】自動ドアセンサ100の近赤外線受光領域R220A−1〜R220D−3を示す図である。
【図8】自動ドアセンサ100の近赤外線受光領域R220A−1〜R220D−3を示す図である。
【図9】自動ドアセンサ100の遠赤外線検知領域R130を示す図である。
【図10】近赤外線検知テーブルの一例を示す図である。
【図11】制御部100Cの動作を示すフローチャートである。
【図12】物体検知センサ500を設置した部屋の俯瞰図である。
【図13】従来の自動ドアセンサを示す図である。
【図14】従来の自動ドアセンサを示す図である。
【図15】従来の自動ドアセンサを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明していく。
【実施例1】
【0031】
第1 全体構成
発明に係る物体検出装置の一実施例である自動ドアセンサ100を用いた自動ドアシステム50の概要について図1を用いて説明する。自動ドアシステム50は、自動ドアセンサ100、フレーム51、固定壁53a、53b、ドアパネル55a、55b、及び駆動装置(図示せず)を有している。自動ドアシステム50は、ドアパネル55a、55bが左右に開閉する、いわゆる両引きの自動ドアシステムである。
【0032】
フレーム51は、固定壁53a、53bの間に設置される。ドアパネル55a、55bは、固定壁53a、53b間をフレーム51の無目に沿って左右に開閉する。フレーム51の内部には、ドアパネル55a、55bを駆動するための駆動装置が内蔵されている。
【0033】
自動ドアセンサ100は、フレーム51の無目に取り付けられる。取り付けに際しては、無目の前面を設置面として、自動ドアセンサ100の背面を設置面に合わせて設置する。
【0034】
自動ドアセンサ100は、人等の物体が通過する床面上に検知領域R100を形成する。検知領域R100は、近赤外線検知領域R110及び遠赤外線検知領域R130によって形成される。近赤外線検知領域R110と遠赤外線検知領域R130とは、床面において一致する。
【0035】
自動ドアセンサ100は、検知領域R100内に人等の物体が存在すると判断すると、ドアパネル55a、55bの開閉動作を行うための所定の信号を駆動装置に送信する。
【0036】
駆動装置は、自動ドアセンサ100からの信号に基づいて、ドアパネル55a、55bの開閉処理を行う。
【0037】
なお、以下においては、設置面である無目の前面と平行な方向を矢印a3方向、設置面に垂直な法線方向を矢印a1方向とする。
【0038】
第2 自動ドアセンサ100の構成
自動ドアセンサ100の機能構成について図2を用いて説明する。自動ドアセンサ100は、近赤外線センサ部100A、遠赤外線センサ部100B及び制御部100Cを有している。なお、近赤外線センサ部100Aと遠赤外線センサ部100Bとは、矢印a1方向(図1参照)に並んで配置されている。
【0039】
近赤外線センサ部100Aは、近赤外線を用いて近赤外線検知領域R110に物体が存在するか否かを検知する。近赤外線センサ部100Aは、複数の近赤外線投光領域(後述)を形成することによって、物体の存在と合わせて、物体の検知位置、さらに物体の移動方向を検知することができる。
【0040】
遠赤外線センサ部100Bは、遠赤外線を用いて遠赤外線検知領域に熱源が存在するか否かを検知する。人は体温約36℃の熱源であり、遠赤外線を放出している。つまり、遠赤外線センサ部100Bは、遠赤外線検知領域R130からの遠赤外線を受光することによって、遠赤外線検知領域R130に人が存在するか否かを検知する。
【0041】
制御部100Cは、近赤外線センサ部100A、遠赤外線センサ部100Bの動作を制御するとともに、近赤外線センサ部100A及び遠赤外線センサ部100Bの検知結果に基づいて、自動ドアシステム50のドアパネル55a、55bを開閉するための所定の信号を発生する。
【0042】
次に、近赤外線センサ部100A及び遠赤外線センサ部100Bの内部構造について図3を用いて説明する。
【0043】
1.近赤外線センサ部100A
近赤外線センサ部100Aは、近赤外線投光ユニット110A、110B、近赤外線受光ユニット220A、220B、220C、220D、及び近赤外線制御回路230を有している。
【0044】
(1)近赤外線投光ユニット110A、110B
自動ドアセンサ100は、中央付近に2個の近赤外線投光ユニット110A、110Bを有している。
【0045】
近赤外線投光ユニット110Aは、近赤外線投光素子群111A及び多分割レンズ113Aを有している。近赤外線投光ユニット110Aは、近赤外線投光素子群111A及び多分割レンズ113Aによって投光用光学系を形成する。
【0046】
近赤外線投光素子群111Aは、矢印a3方向(設置面である無目の前面と平行な方向)に3個、矢印a1方向(設置面に垂直な法線方向)に4個、つまり3×4のマトッリクスを形成する12個の近赤外線投光素子111−1〜111−12を有している。なお、図3においては、近赤外線投光素子111−1〜111−12を各近赤外線投光素子の内部に記述する数字によって表わしている。
【0047】
多分割レンズ113Aは、各近赤外線投光素子111−1〜111−12が発光した近赤外線を初期投光として分割し複数の検知光を生成し、生成した検知光毎に近赤外線検知領域R110内の所定の近赤外線投光領域に集光する。多分割レンズ113Aは、矢印a3方向に4つに分割されている。多分割レンズ113Aは、近赤外線投光素子111−1が発光した近赤外線による初期投光から4個の検知光r1、r2、r3、r4を生成し、検知光r1、r2、r3、r4を、それぞれ異なる4つの近赤外線投光領域R110A−1、R110B−1、R110C−1、R110D−1(図5参照)に向かって集光する。多分割レンズ113Aは、検知光r1〜r4が所定の近赤外線投光領域を形成するように、各レンズの向きと傾きとが調整されている。各近赤外線投光素子111−1〜111−18によって形成される近赤外線投光領域については後述する。
【0048】
近赤外線投光ユニット110Bについても、近赤外線投光ユニット110Aと同様である。ただし、近赤外線投光素子群111Bは、3×2のマトッリクスを形成する6個の投光素子111−13〜111−18を有している。
【0049】
なお、近赤外線投光素子111−1〜111−18を2個の近赤外線投光ユニット110A、110Bに分けて配置したのは、自動ドアセンサ100の矢印a1方向の厚さを厚くすることなく、多数の近赤外線投光素子を配置するためである。
【0050】
2.近赤外線受光ユニット220A〜220D
自動ドアセンサ100は、両端に2個ずつ、合計4個の近赤外線受光ユニット220A〜220Dを有している。
【0051】
近赤外線受光ユニット220Aは、近赤外線受光素子群221A及び集光レンズ223Aを有している。近赤外線受光ユニット220Aは、近赤外線受光素子群221A及び集光レンズ223Aによって受光用光学系を形成する。
【0052】
近赤外線受光素子群221Aは、矢印a3方向に3個、矢印a1方向に2個、3×2のマトッリクスを形成する6個の近赤外線受光素子221−1〜221−6を有している。なお、図3においては、近赤外線受光素子221−1〜221−6を各近赤外線受光素子の内部に記述する数字によって表わしている。
【0053】
集光レンズ223Aは、検知領域内の所定の受光領域から取得する検知光の反射光を、近赤外線受光素子221−1〜221−6に集光する。集光レンズ223Aは、非分割レンズであり、矢印a1に軸を有するシリンドリカルレンズである。各近赤外線受光素子221−1〜221−6によって形成される近赤外線受光領域については後述する。
【0054】
近赤外線受光ユニット220B〜220Dについても、近赤外線受光ユニット220Aと同様である。ただし、近赤外線受光素子群221Bは6個の近赤外線受光素子221−7〜221−12を、近赤外線受光素子群221Cは6個の近赤外線受光素子221−13〜221−18を、近赤外線受光素子群221Dは6個の近赤外線受光素子221−19〜221−24を、それぞれ有している。
【0055】
3.近赤外線制御回路230
近赤外線制御回路230は、近赤外線投光ユニット110A及び近赤外線投光ユニット110Bが有する18個の近赤外線投光素子111−1〜111−18を、所定の周期で、順次、発光させる。また、近赤外線制御回路230は、近赤外線受光ユニット220A〜220Dが有する近赤外線受光素子221−1〜121−24が検知光の反射光を受光すると、受光量に基づき人等の物体が検知領域に侵入したか否かを判断する。
【0056】
2.遠赤外線センサ部100B
遠赤外線センサ部100Bの構成について図4を用いて説明する。遠赤外線センサ部100Bは、遠赤外線受光素子301、集光レンズ303、及び遠赤外線制御回路305を有している。遠赤外線受光素子301は、遠赤外線検知領域R130からの遠赤外線を受光する。集光レンズ303は、単一のレンズ面を有している。集光レンズ303は、遠赤外線検知領域R130からの遠赤外線を遠赤外線受光素子301に集光する。遠赤外線制御回路305は、遠赤外線受光素子301が遠赤外線を受光すると、受光量の変化に基づき人等の熱源物体が検知領域に侵入したか否かを判断する。
【0057】
第3 検知領域
自動ドアセンサ100が形成する検知領域について説明する。検知領域R100は、自動ドアセンサ100が物体の侵入の有無を検知することができる領域である。
【0058】
検知領域R100は、近赤外線検知領域R110及び遠赤外線検知領域R130を有している。以下において、近赤外線検知領域R110及び遠赤外線検知領域R130について説明する。
【0059】
1.近赤外線検知領域R110
近赤外線検知領域R110について図5を用いて説明する。近赤外線検知領域R110には、72個の近赤外線投光領域R110A−1〜R110A−18、R110B−1〜R110B−18、R110C−1〜R110C−18、R110D−1〜R110D−18、及び、12個の近赤外線受光領域R220A−1〜R220A−3、R220B−1〜R220B−3、R220C−1〜R220C−3、R220D−1〜R220D−3が形成される。
【0060】
(1)近赤外線投光領域
自動ドアセンサ100が形成する近赤外線投光領域R110A−1〜R110D−18について図6を用いて説明する。各近赤外線投光領域R110A−1〜R110D−18は、多分割レンズを介して各近赤外線投光素子111−1〜111−18が発光した近赤外線を初期投光として生成された検知光を、さらに集光することによって形成される。これによって、各近赤外線投光素子111−1〜111−18が発光した近赤外線から生成された検知光はスポット光として集光され、各近赤外線投光領域R110A−1〜R110D−18は、床面上において、広がりの少なく、周縁が明確なほぼ円形形状となる。
【0061】
また、近赤外線投光領域R110A−1〜R110D−18は、4個の近赤外線投光領域グループG110A、G110B、G110C、G110Dに分けることができる。近赤外線投光領域グループG110Aには、近赤外線投光領域R110A−1〜R110A−18が、3×6のマトリックス状に配置される。他の近赤外線投光領域グループG110B〜G110Dについても同様である。このように、床面上に4個の近赤外線投光領域グループが形成されるのは、1個の近赤外線投光素子が発光した近赤外線が、多分割レンズ113A、113Bによって4つの検知光に分割され、対応する近赤外線投光領域に集光されることによる。
【0062】
近赤外線投光領域グループG110Aにおいて、近赤外線投光素子111−1〜111−3(図3参照)が発光する近赤外線から生成される検知光によって形成される近赤外線投光領域R110A−1〜R110A−3は、床面上において、閉状態のドアパネル55aと重なる位置に形成される。このように、ドアパネル55aに重ねて近赤外線投光領域R110A−1〜R110A−3を形成しても、各近赤外線投光領域は小さく周縁が明確な円形形状であるため、ドアパネル55aによる乱反射の影響を最小限にすることができる。なお、ドアパネル55aと重なる位置に近赤外線投光領域R110A−1〜R110A−3を形成することによって、物体がドアパネル55a、55b間を通過する際にドアパネル55a、55bが閉じてしまうことを防止することができる。
【0063】
近赤外線投光領域R110A−4〜R110A−6は、近赤外線投光領域R110A−1〜R110A−3に対して矢印a1方向に形成される。近赤外線投光領域R110A−7〜R110A−9、近赤外線投光領域R110A−10〜R110A−12、近赤外線投光領域R110A−13〜R110A−15、近赤外線投光領域R110A−16〜R110A−18についても、同様である。したがって、近赤外線投光領域R110A−4〜R110A−18は、ドアパネル55a、55bとは重ならない位置に形成される。
【0064】
このように、近赤外線投光素子111−4〜111−18が発光した近赤外線をスポット光に集光し、近赤外線検知領域R110に複数のほぼ円形状の近赤外線投光領域R110A−4〜R110A−18、R110B−4〜R110B−18、R110C−4〜R110C−18、R110D−4〜R110D−18を形成することによって、近赤外線をドアパネル55a、55bに照射することなく、検知に必要な近赤外線検知領域R110を形成することができる。したがって、ドアパネル55a、55bの動きによって近赤外線が乱反射することがなく、近赤外線投光領域R110A−4〜R110A−18に照射される近赤外線の量を一定にすることができる。したがって、近赤外線受光素子121A〜121Dが各近赤外線投光領域での近赤外線の量の変化を検知することはないので、自動ドアセンサ100におけるドアパネル55a、55bを開閉する際の誤動作を防止することができる。
【0065】
また、自動ドアセンサ100を設置する際に、近赤外線検知領域R100の範囲を明確にすることができる。よって、自動ドアセンサ100の設置作業を簡便にできる。
【0066】
(2)近赤外線受光領域
自動ドア100が形成する近赤外線受光領域R220A−1〜R220D−3について図7を用いて説明する。自動ドア100では、固定壁53aから固定壁53bに向かって、近赤外線受光領域R220A−1、近赤外線受光領域R220B−1、近赤外線受光領域R220A−2、近赤外線受光領域R220B−2、近赤外線受光領域R220A−3、近赤外線受光領域R220B−3、近赤外線受光領域R220C−1、近赤外線受光領域R220D−1、近赤外線受光領域R220C−2、近赤外線受光領域R220D−2、近赤外線受光領域R220C−3、近赤外線受光領域R220D−3の順で形成される。
【0067】
近赤外線受光領域R220A−1〜R220D−3は、2個の近赤外線受光領域グループG220A、G220Bに分けることができる。近赤外線受光領域グループG220Aには、6個の近赤外線受光領域R220A−1〜R220B−3が配置される。他の近赤外線受光領域グループG220Bには、6個の近赤外線受光領域R220C−1〜R220D−3が配置される。
【0068】
各近赤外線受光領域R220A−1〜R220D−3は、シリンドリカルレンズである集光レンズ223Aによって、矢印a1方向及び矢印a3方向にそれぞれ所定の長さを持つ矩形状として床面上に形成される。
【0069】
近赤外線受光領域グループG220Aにおいて、近赤外線受光領域R220A−1は、近赤外線投光領域グループG110Aの投光領域R110A−(3n+1)(n=0、1、2、3、4、5。以下、同様)に対応して形成される。近赤外線受光領域R220B−1は、近赤外線投光領域グループG110Aの近赤外線投光領域R110A−(3n+2)に対応して形成される。近赤外線受光領域R220A−2は、近赤外線投光領域グループG110Aの近赤外線投光領域R110A−(3n+3)に対応して形成される。
【0070】
近赤外線受光領域R220B−2は近赤外線投光領域グループG110Bの近赤外線投光領域R110B−(3n+1)に、近赤外線受光領域R220A−3は近赤外線投光領域グループG110Bの近赤外線投光領域R110B−(3n+2)に、近赤外線受光領域R220B−3は近赤外線投光領域グループG110Bの近赤外線投光領域R110B−(3n+3)に、それぞれ対応して形成される。
【0071】
これにより、隣接する近赤外線受光領域が、同じ近赤外線投光素子が発光した近赤外線から生成される検知光によって形成される近赤外線投光領域に対応しないように形成することができる。例えば、近赤外線投光素子111−1が発光した近赤外線から生成される検知光によって形成される近赤外線投光領域R110A−1及び近赤外線投光領域R110B−1は、それぞれ近赤外線受光領域R220A−1、近赤外線受光領域R220B−2に対応し、近赤外線受光領域R220A−1に隣接する近赤外線受光領域R220B−1は、近赤外線投光領域R110B−1に対応しない。よって、隣接する近赤外線受光領域の境界付近に物体が存在し、物体による近赤外線から生成される検知光の反射光を隣接する近赤外線受光領域が受光したとしても、物体が存在する近赤外線投光領域に対応する近赤外線投光素子と近赤外線受光領域との組み合わせから、物体の位置を判断でき、誤検知することはない。
【0072】
また、図8に示すように、近赤外線受光領域R220A−1は、ドアパネル55aに近い領域uが近赤外線受光素子221−1(図3参照)によって、ドアパネル55aから遠い領域dが近赤外線受光素子221−4(図8参照)によって、それぞれ形成される。このように、近赤外線受光ユニット220Aにおいて、矢印a1方向側に近赤外線受光素子221−1および近赤外線受光素子221−4を並列に配置し、並列に配置した複数の近赤外線受光素子によって1つの近赤外線受光領域R220A−1を形成することによって、近赤外線受光領域R220A−1の物体侵入方向側の長さLを調整し、物体検知に必要な長さとすることができる。
【0073】
2.遠赤外線検知領域R130
遠赤外線検知領域R130について図9を用いて説明する。遠赤外線検知領域R130は、床面において近赤外線受光領域R110と同一の領域に形成される。なお、遠赤外線検知領域R130は、遠赤外線受光素子301が遠赤外線を受光することができる床面上の一つの遠赤外線受光領域により形成されている。
【0074】
第2 制御部100Cの動作
近赤外線制御回路230及び遠赤外線制御回路305は、電源投入後、それぞれが物体の検知処理を行う。
【0075】
近赤外線制御回路230は、近赤外線検知領域R110に物体を検知すると、近赤外線物体検知テーブルに検知結果を記述する。ここで、近赤外線物体検知テーブルについて図10を用いて説明する。近赤外線物体検知テーブルは、物体ID記述領域、検知時間記述領域、検知位置記述領域を有している。物体ID記述領域には、検知した物体を一位に特定する情報(ID)が記述される。検知時間記述領域には、反射光を受光した時間が記述される。なお、近赤外線制御回路230は、反射光を受光した時間を所定のタイマ回路から取得する。検知位置記述領域には、物体を検知した位置が記述される。物体を検知した位置は、物体を検知する際の近赤外線投光領域と近赤外線受光領域との組み合わせによって判断する。
【0076】
遠赤外線制御回路307は、遠赤外線検知領域R130に人等の熱源を検知すると、遠赤外線検知テーブルに検知結果を記述する。なお、遠赤外線検知テーブルについては、検知位置記述領域が存在しないことを除いて近赤外線検知テーブルと同様であるため、詳細な記述は省略する。
【0077】
制御部100Cは、近赤外線センサ部100A及び遠赤外線センサ部100Bにおける検知結果を用いて、検知領域R100における物体の種別及び存在を判断する。これにより、近赤外線センサ部100A又は遠赤外線センサ部100Bのみによる検知に比して、自動ドアセンサ100では適切な検知が可能となる。
【0078】
なぜならば、近赤外線だけを用いた物体検知では、大気中に雪や霧、蒸気が存在する場合、その光学的反射あるいは遮断により人等の物体を正常に検知できなくなる場合が存在する。
【0079】
また、近赤外線を用いた物体検知では、物体を高精度に検知することはできるが、検知した物体が人であるか否かを判断することは難しい。このため、検知した物体が長時間、同じ位置に存在する場合、ドアパネル55a、55bの開閉処理として、ドアパネル55a、55bが長時間にわたって開いた状態が継続されることを防止するために、実際は検知した物体が人であったとしても一定時間経過したらドアパネル55a、55bを閉じる処理を行わなければならない場合が存在する。
【0080】
また、遠赤外線を用いた物体検知では、夏場等で気温や床面が人の体温に近くなると、床面等の周囲温度と人間の体温との温度差が得られないため人を適切に検知できなくなる場合がある。
【0081】
このように、近赤外線だけを用いた検知、遠赤外線だけを用いた検知には、原理的な限界から適切に検知ができない場合が存在する。
【0082】
一方、自動ドアセンサ100では、近赤外線を用いた物体検知、遠赤外線を用いた物体検知、又は両者を用いた検知を選択することができる。自動ドアセンサ100の制御部100Cは、近赤外線センサ部100A、遠赤外線センサ部100Bによる物体検知の選択を示す選択情報を取得すると、取得した選択情報に合わせて近赤外線センサ部100Aによる物体検知、遠赤外線センサ部100Bによる物体検知を切り換える。以下において、制御部100Cにおける近赤外線センサ部100Aによる物体検知、遠赤外線センサ部100Bによる物体検知の選択動作について説明する。
【0083】
1.気温、気象による選択
制御部100Cは、近赤外線センサ部100A、遠赤外線センサ部100Bによる物体検知の選択を示す選択情報を取得すると、取得した選択情報に合わせて近赤外線センサ部100Aによる物体検知、遠赤外線センサ部100Bによる物体検知を切り換える。
【0084】
制御部100Cは、例えば、温度センサ等によって現在の気温を選択情報として取得する。これにより、制御部100Cは、気温が所定温度、例えば30度より高いと判断すると、近赤外線センサ部100Aによる判断又は遠赤外線センサ部100Bによる判断を選択するOR処理を実行し、気温が所定温度以下であればAND処理を実行する。この場合、気温が30度を超えるほど高くなり、遠赤外線センサ部100Bによる適切な検知ができなくなったとしても、近赤外線センサ部100Aによる検知ができる。これにより、自動ドアセンサ100は、夏場の温度上昇にも雪、霧等の気象条件にも適切に判断できる。
【0085】
また、制御部100Cは、例えば、通信回線等を用いて気象情報を選択情報として取得する。これにより、制御部100Cは、所定の気象情報、例えば、降雪、霧の発生を取得すれば、近赤外線センサ部100Aによる判断区加えて、遠赤外線センサ部100Bによる判断も確認するAND処理を実行する。この場合、雪や霧による誤動作を防止することができる。
【0086】
2.物体種別による選択
自動ドアセンサ100は、検知領域R100において長時間にわたって物体が移動しない場合には、検知した物体の種別を判断し、判断した物体の種別を選択情報として適切な自動ドアの開閉動作を行うようにすることができる。例えば、長時間移動しない物体が遠赤外線センサ部100Bにより人であると判断すれば、ドアパネル55a、55bが開いた状態を維持する。一方、長時間移動しない物体が人でないと判断すれば、自動ドアを閉じた状態とする。このように、検知した物体の種別によって、自動ドアの開閉を適切に動作させることができる。
【0087】
制御部100Cにおける物体種別の判断を加味した動作について図11に示すフローチャートを用いて説明する。制御部100Cは、電源投入後、常時、近赤外線制御回路130及び遠赤外線制御回路305のそれぞれが生成する近赤外線検知テーブル、遠赤外線検知テーブルを監視する。制御部100Cは、近赤外線検知テーブルの物体検知時間記述領域に記述されている時間から所定時間が経過している検知結果が存在するか否かを判断する(S1001)。なお、所定時間については、例えば15秒と、予め設定しておく。
【0088】
制御部100Cは、遠赤外線検知テーブルに、現在に人等の熱源が検知されていることを示す検知結果が存在するか否かを判断する(S1003)。制御部100Cは、現在、遠赤外線センサ部100Bにおいて人等の熱源が検知されていることを示す検知結果が存在すると判断すると、近赤外線検知テーブルにおいて所定時間が経過している物体は人であると判断する(S1005)。一方、制御部100Cは、遠赤外線検知領域から遠赤外線を受光していないと判断すると、物体検知テーブルにおいて所定時間が経過している物体は人でないと判断する(S1007)。
【0089】
このように、制御部100Cは、所定時間が経過して同じ位置に存在する物体について、遠赤外線を受光するか否か、つまり、遠赤外線検知領域に発熱体が存在するか否かによって、人であるか、人でないかを判断する。なお、人は発熱体であるため、遠赤外線検知に人が存在すれば、遠赤外線受光部によって遠赤外線が受光される。
【0090】
このように、自動ドアセンサ50では、一方のセンサ部による検知が正常に行えない場合であっても、他方による検知を行うようにしたり、両方のセンサ部による検知を行ったりできるので、多くの環境における安定した動作が可能となる。
【実施例2】
【0091】
前述の実施例1では、本発明に係る物体検知装置を自動ドアセンサ100として用いた。本実施例においては、本発明に係る物体検知装置をセキュリティシステムや見守りシステムにおいて使用する物体検知センサ500として用いる。なお、物体検知センサ500の構成、動作については、実施例1における自動ドアセンサ100と同様であるため、詳細な記述は省略する。
【0092】
物体検知センサ500の使用例について、図12を用いて説明する。図12は、物体検知センサ500を設置した部屋の俯瞰図である。物体検知センサ500は、例えば、所定の壁の上端に設置される。なお、物体検知センサ500の設置位置については、天井等、床面に所定の検知領域R100を形成できるものであれば、例示のものに限定されない。
物体検知センサ500では、近赤外線センサ部100Aを用いてリビング内の物体の存在や移動を検知できる上、遠赤外線センサ100Bを用いて熱源の有無、つまり人の存在を検知できる。例えば、物体検知センサ500は、近赤外線センサ部100Aを用いて、検知領域Ra、検知領域Rcに物体が存在することを検知する。また、物体検知センサ500は、近赤外線センサ部100Aを用いて、検知領域Raで検知した物体が検知領域Rbへ移動したことも検知できる。また、物体検知センサ500は、近赤外線センサ部100Aを用いて、検知領域Rcで検知した物体には移動がないことも検知できる。
【0093】
一方、物体検知センサ500は、遠赤外線センサ部100Bを用いて、検知領域Ra、検知領域Rb、検知領域Rcで検知した物体が人であることを検知することができる。ここで、テレビ等の電化製品は、発熱するが、表面温度は人とは異なる。また、テレビ等の検知領域Rdは全く移動しない。このような特徴を利用することによって、物体検知センサ500は、容易に人と電化製品とを識別することができる。つまり、物体検知センサ500は、検知領域Rdで検知した物体については、電化製品等の物体である判断することができる。
【0094】
また、風でカーテンcが動いた場合、物体検知センサ500の近赤外線センサ部100Aは検知領域Reにおいてカーテンcを検知することとなる。しかし、カーテンcは熱源でないことから、物体検知センサ500の遠赤外線センサ部100Bではカーテンcを検知しない。また、カーテンcが動ける範囲には制約があることから、近赤外線センサ部100Aがカーテンcを検知する検知領域を予め特定することができる。このような特徴を利用することによって、物体検知センサ500は、容易に人とカーテンcとを識別することができる。つまり、物体検知センサ500は、検知領域Reで検知した物体については、カーテンcである判断することができる。
【0095】
このように物体検知センサ500は、従来のセンサでは電化製品やカーテン等を人と誤検知するという回避できなった誤動作を防止することができる。よって、物体検知センサ500を用いることによって、セキュリティ会社警備員の無駄な現地確認出動を大幅に軽減することができる。
【0096】
[他の実施例]
(1)近赤外線検知領域R110:前述の実施例1及び実施例2においては、近赤外線検知領域R110は、複数の近赤外線投光領域を有するとしたが、一つの近赤外線投光領域のみを有するものとしてもよい。近赤外線受光領域についても同様である。
【0097】
(2)遠赤外線検知領域R130:前述の実施例1及び実施例2においては、遠赤外線検知領域R130は、一つの遠赤外線受光領域を有するとしたが、複数の遠赤外線受光領域を有するものとしてもよい。この場合、単独の遠赤外線受光素子301及びレンズ面を複数に分割した集光レンズ303を用いる、複数の遠赤外線受光素子301及びレンズ面が単一の集光レンズ303を用いる、複数の遠赤外線受光素子301及びレンズ面を複数に分割した集光レンズ303を用いる等すればよい。なお、遠赤外線受光領域を複数とする場合は、近赤外線検知テーブルと同様、遠赤外線検知テーブルに検知位置記述領域を設定すればよい。
【0098】
(3)検知領域R100:前述の実施例1及び実施例2においては、近赤外線検知領域R110及び遠赤外線検知領域R130は、床面において一致するとしたが、いずれかが他方を包含するようにしてもよい。また、いずれかが他方を包含せずとも、両者によって重なりは生ずるように配置し、重なる領域を検知領域R100とするようにしてもよい。
【0099】
(4)近赤外線センサ部100A及び遠赤外線センサ部100Bの配置:前述の実施例1及び実施例2においては、近赤外線センサ部100Aと遠赤外線センサ部100Bとは、図1の矢印a1方向に並んで配置されるとしたが、それぞれが床面に適切に近赤外線検知領域R110、遠赤外線検知領域R130を形成できるのであれば、例示のものに限定されない。例えば、図1の矢印a3方向に並んで配置するようにしてもよい。
【0100】
(5)遠赤外線センサの構成:前述の実施例1及び実施例2においては、遠赤外線センサ部100Bの構成として、単独の遠赤外線受光素子301、レンズ面を単一にした集光レンズ303を示したが、遠赤が支援検知領域R130を形成できるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、単独の遠赤外線受光素子301及びレンズ面を複数に分割した集光レンズ303を用いる、複数の遠赤外線受光素子301及びレンズ面を単一にした集光レンズ303を用いる、複数の遠赤外線受光素子301及びレンズ面を複数に分割した集光レンズ303を用いるようにしてもよい。なお、一般的に、レンズ面を複数分割することよって検知領域R110の面積を広げることができる。
【0101】
また、遠赤外線受光素子301は、温度変化があった際に微分信号が発生する焦電素子、対象の温度測定を行う温度測定素子等、使用目的等に合わせて選択すればよい。例えば、遠赤外線受光素子301に焦電素子を用いる場合は、検知領域内で人が動いた場合のみ信号が得られるので、移動した人を検知することができる。一方、対象の温度測定を行う温度測定素子を用いる場合は、動かずにじっとしている人を検知することができる。
【0102】
(6)物体存在判断の選択:前述の実施例1及び実施例2においては、温度情報又は気象情報を用いて、近赤外線センサ部100Aによる物体検知、遠赤外線センサ部100Bによる物体検知のAND処理、OR処理を選択したが、温度情報及び気象情報を用いて、AND処理、OR処理を選択するようにしてもよい。
【0103】
また、選択情報によって、AND処理、OR処理以外に、近赤外線センサ部100Aのみによる物体検知、遠赤外線センサ部100Bのみによる物体検知を選択するようにしてもよい。
【0104】
(7)選択情報の取得:前述の実施例1及び実施例2においては、床面の温度を温度センサにより取得するとしたが、床面の温度を取得できるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、遠赤外線センサ部100Bによって受光された遠赤外線から床面の温度を算出するようにしてもよい。これにより、床面の温度を取得するにあたり、特別な部品を用意する必要がなくなる。
【0105】
さらに、選択情報について、自動ドアセンサ100や物体検知センサ500に、所定のディップスイッチ等の切換手段を配置し、手動により切り換えるようにしてもよい。
【0106】
(8)人の体温の取得:前述の実施例2においては、遠赤外線センサ部100Bにおいて熱源の有無を判断するとしたが、さらに、遠赤外線センサ部100Bは検知した物体の温度まで取得するものを使用すれば、検知領域R100に存在する人の体温をリアルタイムに計測できる。
【0107】
これにより、体調管理が必要な高齢者や病人の体温の変化を、常時、監視できる。したがって、高熱あるいは急な体温の低下に至るような緊急状態を容易に発見できる。また、エアコンの長時間使用によるゆっくりとした体温の低下に対する警告、エアコンの停止や風量、温度の調整等もシステムとして行える。
【0108】
このような人の体温変化に基づく監視を行う場合、対象となる人の存在や位置の検知精度がさらに重要となる。従来の遠赤外線センサだけでは、周囲温度の影響を受けて、人の存在や位置を正しく検知できない場合があった。
【0109】
一方、物体検知装置500では、まず近赤外線センサ部100Aによって、対象となる物体の位置を正しく検知し、遠赤外線センサ部100Bによって、検知した物体の位置の正確な温度を取得する。これにより、検知対象となる物体の温度を正確に取得することができる。検知対象となる物体が人であれば、人の体温を正確に取得することができる。これにより、人の体温変化の監視を適切に行うことができる。
【0110】
なお、広域な検知領域R100の中から特定の人の体温を正確に検知するためには、遠赤外線センサ部100Bも分割された遠赤外線検知領域を有することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明に係る物体検知装置は、例えば、自動ドアシステム、セキュリティシステム、見守りシステムに利用することができる。
【符号の説明】
【0112】
100・・・・・自動ドアセンサ
100A・・・・・近赤外線センサ部
110A、B・・・・・投光ユニット
111−1〜18・・・・・投光素子
113A、B・・・・・多分割レンズ
120A〜D・・・・・受光ユニット
121−A〜D・・・・・受光素子
123A〜D・・・・・集光レンズ
220A〜D・・・・・受光ユニット
221−1〜24・・・・・受光素子
223A〜D・・・・・集光レンズ
100B・・・・遠赤外線センサ部
301・・・・・受光素子
303・・・・・集光レンズ
305・・・・・遠赤外線制御回路
R100・・・・・検知領域
R110・・・・・近赤外線検知領域
R110A−1〜R110D−18・・・・・投光領域
R220A−1〜R220D−3・・・・・受光領域
R130・・・・・遠赤外線検知領域
500・・・・・物体検知センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体を検知する物体検知装置に関し、特に、近赤外線及び遠赤外線を用いるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の物体検出装置である自動ドアセンサについて、図13を用いて説明する。自動ドアセンサ2は、図13に示すように、自動ドア4の無目6に取り付けられる。自動ドア4は、間隔をおいて配置した固定壁8、8間のドア開口を、両引き分けのドアパネル10、10によって開閉するもので、自動ドアセンサ2が形成した検知範囲12内に人体や物が存在するか否かによって、ドアパネル10、10が開閉される。
【0003】
図14(a)、(b)に示すように、自動ドアセンサ2では、その中央に1つの投光器14が設けられている。投光器14は、例えば赤外線を所定の周期を持ったパルス状に発光することで投光するものである。投光器14は、ドア開口幅方向およびドア開口幅方向に直交する方向に一定の長さを有し、ドア開口幅方向に直交する方向の長さが長い面状に発光することで投光を行う。投光器14の前面には、レンズ16が光学素子として設けられている。レンズ16は、例えばシリンドリカルレンズで、図15に示すように、投光器14からの光によって、ドア開口幅方向及びドア開口幅方向に直交する方向にそれぞれ所定の長さを持つ例えば矩形状の投光領域18を、基準面例えば床面上に形成する。これら投光器14及びレンズ16によって投光部が構成されている。
【0004】
投光部のドア開口幅方向の両側に、それぞれ受光器が設けられている。図14(a)における右側には、ドアに近い位置に受光器22aが配置されている。同左側には同様にドアから離れる位置に受光器22bが配置されている。受光器22a、22bは同一の構成のものである。
【0005】
右側及び左側の受光器22a、22bの前面には、ドア開口幅方向の異なる位置からの光を同じ受光器に集光する多分割レンズ24a、24bがそれぞれ配置されている。多分割レンズ24a、24bは、ドア開口幅方向に4つに分割されており、投光領域18から反射した光を各受光器22a、22bに集束させる。図15の投光領域18内に円で示しているのが、各受光器22a、22bにおいて受光される反射光を発生する床面上の受光領域である。
【0006】
これら受光領域は、投光領域18内において、受光器22aに対応してドア開口から遠い側にあるドア開口幅方向に一列の4つの受光領域26aと、受光器22bに対応してドア開口に近い側にあるドア開口幅方向に一列の4つの受領領域26bとからなる。このように受光領域26a、26bが形成されるように、多分割レンズ24a、24bを構成しているレンズの向きと傾きとが調整されている。
【0007】
受光器22aと多分割レンズ24aとによって、1つの受光部が構成され、受光器22bと多分割レンズ24bとによって、1つの受光部が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−265017公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の自動ドアセンサ2には、以下に示すような改善すべき点がある。自動ドアセンサ2では、赤外線として近赤外線を投光し、投光した近赤外線の反射光を受光するものである。このため、気象条件によっては、自動ドアセンサ2が正常に動作しない、という改善すべき点がある。例えば、雪や霧等の気象条件や、大気中に蒸気が発生した場合、それらによって近赤外線が遮断、あるいは反射することによって、自動ドアセンサ2での誤検知が発生する。
【0010】
また、自動ドアセンサ2では、投光領域18において移動する物体を追跡検知できる。また、所定時間以上、同じ位置に留まっている物体の存在を検知することはできるが、その物体が人であるか否かを検知することができない、という改善すべき点がある。自動ドアセンサ2のような近赤外線を投光し反射光を受光することによって物体の存在を検知する自動ドアセンサでは、一般的に、所定時間以上同じ位置に留まり静止している物体を検知した場合、当該物体は人でないと判断して、ドアを閉じる処理をする。このように処理しなければ、物体を検知している限り、ドアが開いた状態となるからである。このようなドアの開閉処理では、検知した物体が人であったとしても、結果的にドアを閉じることとなる。
【0011】
一方、人から放射される遠赤外線(熱線)を検知することによって人の存在を判断する遠赤外線センサがある。このような遠赤外線センサでは、検知した遠赤外線から検知領域の温度を算出し、温度差から人が存在するか否かを判断する。したがって、夏場等、検知領域における床面が高温になると、人の体温との温度差が少なくなり、結果的に人の存在が検知できない、という問題がある。
【0012】
そこで、本発明は、検知エリア内の物体の検知を確実に行うと同時に、その物体が人であるか否かを適切に検知することができる物体検出装置の提供を目的とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明における課題を解決するための手段及び発明の効果を以下に示す。
【0014】
本発明に係る物体検知装置は、近赤外線を所定の近赤外線検知領域に投光する近赤外線投光部、投光した前記近赤外線の反射光を受光する近赤外線受光部、前記反射光の受光から、前記近赤外線検知領域における物体の存在を判断する近赤外線制御部、所定の遠赤外線検知領域から遠赤外線を受光する遠赤外線受光部、前記遠赤外線の受光から、前記遠赤外線検知領域における物体の存在を判断する遠赤外線制御部、前記近赤外線制御部における物体の存在判断と、前記遠赤外線制御部における物体の存在判断とを用いて、所定の検知領域における物体の存在を判断する制御部、を有する物体検知装置であって、前記検知領域は、前記近赤外線検知領域と前記遠赤外線検知領域とが重複する領域によって形成されていること、を特徴とする。
【0015】
これにより、近赤外線を用いた検知、又は、遠赤外線を用いた検知では、適切な検知ができなかった場合でも、両者の検知を用いることによって適切な検知を行うことができる。
【0016】
また、人の位置や移動をより正しく判断できるので、屋内外における高齢者見守りセンサや、セキュリティセンサとして利用出来る。
【0017】
本発明に係る物体検知装置では、前記近赤外線検知領域は、複数の近赤外線投光領域を有すること、を特徴とする。
【0018】
これにより、物体の存在に加えて、検知位置、移動方向も加味した物体の検知を行うことができる。
【0019】
本発明に係る物体検知装置では、前記遠赤外線検知領域は、単独素子を光学分割するなどで検知領域の分割認識を行わない単独または複数の遠赤外線受光領域を有すること、を特徴とする。
【0020】
これにより、人等の熱源の存在による人の検知を行うことができる。
また本発明に係る物体検知装置では、前記遠赤外線検知領域は、複数の遠赤外線受光領域を有すること、を特徴とする。
【0021】
これにより、人等の熱源の存在に加えて、検知位置、移動方向も加味した人の検知を行うことができる。
【0022】
本発明に係る物体検知装置では、前記制御部は、前記近赤外線の反射光から前記検知領域に物体が存在すると判断し、さらに、受光した前記遠赤外線から前記検知領域に人が存在すると判断した場合に、前記検知領域に人が存在すると判断すること、を特徴とする。
【0023】
これにより、検知した物体が長時間、同じ位置に存在する場合であっても、検知した物体が人であるか否かの判断によって、より適切な動作を行わせることができる。
【0024】
本発明に係る物体検知装置では、前記制御部は、前記近赤外線制御部のみによる物体存在判断、前記遠赤外線制御部のみによる物体存在判断、又は前記近赤外線制御部及び前記遠赤外線制御部における物体存在判断とのAND処理若しくはOR処理、以上の処理のいずれか又は組み合わせを選択すること、を特徴とする。
【0025】
これにより、気象条件や、設置場所やその場所の温度等の設置環境等の条件に合わせて、近赤外線を用いた検知、遠赤外線を用いた検知、又は両者を用いた検知を選択することができるので、より適切な検知を行うことができる。
本発明に係る物体検知装置では、前記制御部は、所定の領域の温度を選択情報として用いること、を特徴とする。
【0026】
これにより、温度によって、適切な物体存在判断を選択することができる。
本発明に係る物体検知装置では、前記制御部は、前記選択情報として温度が人の体温又はそれ以上であれば前記OR処理、又は、前記近赤外線制御部のみによる物体存在判断を選択し、それ以下であれば前記AND処理を選択すること、を特徴とする。
【0027】
これにより、体温を基準として、適切な物体存在判断を選択することができる。
本発明に係る物体検知装置では、前記遠赤外線受光部は、受光した前記遠赤外線から前記温度を取得すること、を特徴とする。
【0028】
これにより、特別な手段を用いずとも、必要な温度を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る物体検出装置の一実施例1である自動ドアセンサ100の概要を示す図である。
【図2】自動ドアセンサ100の機能構造を示す図である。
【図3】近赤外線センサ部100Aの内部構造を示す図である。
【図4】遠赤外線センサ部100Bの内部構造を示す図である。
【図5】自動ドアセンサ100の近赤外線検知領域R110を示す図である。
【図6】自動ドアセンサ100の近赤外線投光領域R110A−1〜R110D−18を示す図である。
【図7】自動ドアセンサ100の近赤外線受光領域R220A−1〜R220D−3を示す図である。
【図8】自動ドアセンサ100の近赤外線受光領域R220A−1〜R220D−3を示す図である。
【図9】自動ドアセンサ100の遠赤外線検知領域R130を示す図である。
【図10】近赤外線検知テーブルの一例を示す図である。
【図11】制御部100Cの動作を示すフローチャートである。
【図12】物体検知センサ500を設置した部屋の俯瞰図である。
【図13】従来の自動ドアセンサを示す図である。
【図14】従来の自動ドアセンサを示す図である。
【図15】従来の自動ドアセンサを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明していく。
【実施例1】
【0031】
第1 全体構成
発明に係る物体検出装置の一実施例である自動ドアセンサ100を用いた自動ドアシステム50の概要について図1を用いて説明する。自動ドアシステム50は、自動ドアセンサ100、フレーム51、固定壁53a、53b、ドアパネル55a、55b、及び駆動装置(図示せず)を有している。自動ドアシステム50は、ドアパネル55a、55bが左右に開閉する、いわゆる両引きの自動ドアシステムである。
【0032】
フレーム51は、固定壁53a、53bの間に設置される。ドアパネル55a、55bは、固定壁53a、53b間をフレーム51の無目に沿って左右に開閉する。フレーム51の内部には、ドアパネル55a、55bを駆動するための駆動装置が内蔵されている。
【0033】
自動ドアセンサ100は、フレーム51の無目に取り付けられる。取り付けに際しては、無目の前面を設置面として、自動ドアセンサ100の背面を設置面に合わせて設置する。
【0034】
自動ドアセンサ100は、人等の物体が通過する床面上に検知領域R100を形成する。検知領域R100は、近赤外線検知領域R110及び遠赤外線検知領域R130によって形成される。近赤外線検知領域R110と遠赤外線検知領域R130とは、床面において一致する。
【0035】
自動ドアセンサ100は、検知領域R100内に人等の物体が存在すると判断すると、ドアパネル55a、55bの開閉動作を行うための所定の信号を駆動装置に送信する。
【0036】
駆動装置は、自動ドアセンサ100からの信号に基づいて、ドアパネル55a、55bの開閉処理を行う。
【0037】
なお、以下においては、設置面である無目の前面と平行な方向を矢印a3方向、設置面に垂直な法線方向を矢印a1方向とする。
【0038】
第2 自動ドアセンサ100の構成
自動ドアセンサ100の機能構成について図2を用いて説明する。自動ドアセンサ100は、近赤外線センサ部100A、遠赤外線センサ部100B及び制御部100Cを有している。なお、近赤外線センサ部100Aと遠赤外線センサ部100Bとは、矢印a1方向(図1参照)に並んで配置されている。
【0039】
近赤外線センサ部100Aは、近赤外線を用いて近赤外線検知領域R110に物体が存在するか否かを検知する。近赤外線センサ部100Aは、複数の近赤外線投光領域(後述)を形成することによって、物体の存在と合わせて、物体の検知位置、さらに物体の移動方向を検知することができる。
【0040】
遠赤外線センサ部100Bは、遠赤外線を用いて遠赤外線検知領域に熱源が存在するか否かを検知する。人は体温約36℃の熱源であり、遠赤外線を放出している。つまり、遠赤外線センサ部100Bは、遠赤外線検知領域R130からの遠赤外線を受光することによって、遠赤外線検知領域R130に人が存在するか否かを検知する。
【0041】
制御部100Cは、近赤外線センサ部100A、遠赤外線センサ部100Bの動作を制御するとともに、近赤外線センサ部100A及び遠赤外線センサ部100Bの検知結果に基づいて、自動ドアシステム50のドアパネル55a、55bを開閉するための所定の信号を発生する。
【0042】
次に、近赤外線センサ部100A及び遠赤外線センサ部100Bの内部構造について図3を用いて説明する。
【0043】
1.近赤外線センサ部100A
近赤外線センサ部100Aは、近赤外線投光ユニット110A、110B、近赤外線受光ユニット220A、220B、220C、220D、及び近赤外線制御回路230を有している。
【0044】
(1)近赤外線投光ユニット110A、110B
自動ドアセンサ100は、中央付近に2個の近赤外線投光ユニット110A、110Bを有している。
【0045】
近赤外線投光ユニット110Aは、近赤外線投光素子群111A及び多分割レンズ113Aを有している。近赤外線投光ユニット110Aは、近赤外線投光素子群111A及び多分割レンズ113Aによって投光用光学系を形成する。
【0046】
近赤外線投光素子群111Aは、矢印a3方向(設置面である無目の前面と平行な方向)に3個、矢印a1方向(設置面に垂直な法線方向)に4個、つまり3×4のマトッリクスを形成する12個の近赤外線投光素子111−1〜111−12を有している。なお、図3においては、近赤外線投光素子111−1〜111−12を各近赤外線投光素子の内部に記述する数字によって表わしている。
【0047】
多分割レンズ113Aは、各近赤外線投光素子111−1〜111−12が発光した近赤外線を初期投光として分割し複数の検知光を生成し、生成した検知光毎に近赤外線検知領域R110内の所定の近赤外線投光領域に集光する。多分割レンズ113Aは、矢印a3方向に4つに分割されている。多分割レンズ113Aは、近赤外線投光素子111−1が発光した近赤外線による初期投光から4個の検知光r1、r2、r3、r4を生成し、検知光r1、r2、r3、r4を、それぞれ異なる4つの近赤外線投光領域R110A−1、R110B−1、R110C−1、R110D−1(図5参照)に向かって集光する。多分割レンズ113Aは、検知光r1〜r4が所定の近赤外線投光領域を形成するように、各レンズの向きと傾きとが調整されている。各近赤外線投光素子111−1〜111−18によって形成される近赤外線投光領域については後述する。
【0048】
近赤外線投光ユニット110Bについても、近赤外線投光ユニット110Aと同様である。ただし、近赤外線投光素子群111Bは、3×2のマトッリクスを形成する6個の投光素子111−13〜111−18を有している。
【0049】
なお、近赤外線投光素子111−1〜111−18を2個の近赤外線投光ユニット110A、110Bに分けて配置したのは、自動ドアセンサ100の矢印a1方向の厚さを厚くすることなく、多数の近赤外線投光素子を配置するためである。
【0050】
2.近赤外線受光ユニット220A〜220D
自動ドアセンサ100は、両端に2個ずつ、合計4個の近赤外線受光ユニット220A〜220Dを有している。
【0051】
近赤外線受光ユニット220Aは、近赤外線受光素子群221A及び集光レンズ223Aを有している。近赤外線受光ユニット220Aは、近赤外線受光素子群221A及び集光レンズ223Aによって受光用光学系を形成する。
【0052】
近赤外線受光素子群221Aは、矢印a3方向に3個、矢印a1方向に2個、3×2のマトッリクスを形成する6個の近赤外線受光素子221−1〜221−6を有している。なお、図3においては、近赤外線受光素子221−1〜221−6を各近赤外線受光素子の内部に記述する数字によって表わしている。
【0053】
集光レンズ223Aは、検知領域内の所定の受光領域から取得する検知光の反射光を、近赤外線受光素子221−1〜221−6に集光する。集光レンズ223Aは、非分割レンズであり、矢印a1に軸を有するシリンドリカルレンズである。各近赤外線受光素子221−1〜221−6によって形成される近赤外線受光領域については後述する。
【0054】
近赤外線受光ユニット220B〜220Dについても、近赤外線受光ユニット220Aと同様である。ただし、近赤外線受光素子群221Bは6個の近赤外線受光素子221−7〜221−12を、近赤外線受光素子群221Cは6個の近赤外線受光素子221−13〜221−18を、近赤外線受光素子群221Dは6個の近赤外線受光素子221−19〜221−24を、それぞれ有している。
【0055】
3.近赤外線制御回路230
近赤外線制御回路230は、近赤外線投光ユニット110A及び近赤外線投光ユニット110Bが有する18個の近赤外線投光素子111−1〜111−18を、所定の周期で、順次、発光させる。また、近赤外線制御回路230は、近赤外線受光ユニット220A〜220Dが有する近赤外線受光素子221−1〜121−24が検知光の反射光を受光すると、受光量に基づき人等の物体が検知領域に侵入したか否かを判断する。
【0056】
2.遠赤外線センサ部100B
遠赤外線センサ部100Bの構成について図4を用いて説明する。遠赤外線センサ部100Bは、遠赤外線受光素子301、集光レンズ303、及び遠赤外線制御回路305を有している。遠赤外線受光素子301は、遠赤外線検知領域R130からの遠赤外線を受光する。集光レンズ303は、単一のレンズ面を有している。集光レンズ303は、遠赤外線検知領域R130からの遠赤外線を遠赤外線受光素子301に集光する。遠赤外線制御回路305は、遠赤外線受光素子301が遠赤外線を受光すると、受光量の変化に基づき人等の熱源物体が検知領域に侵入したか否かを判断する。
【0057】
第3 検知領域
自動ドアセンサ100が形成する検知領域について説明する。検知領域R100は、自動ドアセンサ100が物体の侵入の有無を検知することができる領域である。
【0058】
検知領域R100は、近赤外線検知領域R110及び遠赤外線検知領域R130を有している。以下において、近赤外線検知領域R110及び遠赤外線検知領域R130について説明する。
【0059】
1.近赤外線検知領域R110
近赤外線検知領域R110について図5を用いて説明する。近赤外線検知領域R110には、72個の近赤外線投光領域R110A−1〜R110A−18、R110B−1〜R110B−18、R110C−1〜R110C−18、R110D−1〜R110D−18、及び、12個の近赤外線受光領域R220A−1〜R220A−3、R220B−1〜R220B−3、R220C−1〜R220C−3、R220D−1〜R220D−3が形成される。
【0060】
(1)近赤外線投光領域
自動ドアセンサ100が形成する近赤外線投光領域R110A−1〜R110D−18について図6を用いて説明する。各近赤外線投光領域R110A−1〜R110D−18は、多分割レンズを介して各近赤外線投光素子111−1〜111−18が発光した近赤外線を初期投光として生成された検知光を、さらに集光することによって形成される。これによって、各近赤外線投光素子111−1〜111−18が発光した近赤外線から生成された検知光はスポット光として集光され、各近赤外線投光領域R110A−1〜R110D−18は、床面上において、広がりの少なく、周縁が明確なほぼ円形形状となる。
【0061】
また、近赤外線投光領域R110A−1〜R110D−18は、4個の近赤外線投光領域グループG110A、G110B、G110C、G110Dに分けることができる。近赤外線投光領域グループG110Aには、近赤外線投光領域R110A−1〜R110A−18が、3×6のマトリックス状に配置される。他の近赤外線投光領域グループG110B〜G110Dについても同様である。このように、床面上に4個の近赤外線投光領域グループが形成されるのは、1個の近赤外線投光素子が発光した近赤外線が、多分割レンズ113A、113Bによって4つの検知光に分割され、対応する近赤外線投光領域に集光されることによる。
【0062】
近赤外線投光領域グループG110Aにおいて、近赤外線投光素子111−1〜111−3(図3参照)が発光する近赤外線から生成される検知光によって形成される近赤外線投光領域R110A−1〜R110A−3は、床面上において、閉状態のドアパネル55aと重なる位置に形成される。このように、ドアパネル55aに重ねて近赤外線投光領域R110A−1〜R110A−3を形成しても、各近赤外線投光領域は小さく周縁が明確な円形形状であるため、ドアパネル55aによる乱反射の影響を最小限にすることができる。なお、ドアパネル55aと重なる位置に近赤外線投光領域R110A−1〜R110A−3を形成することによって、物体がドアパネル55a、55b間を通過する際にドアパネル55a、55bが閉じてしまうことを防止することができる。
【0063】
近赤外線投光領域R110A−4〜R110A−6は、近赤外線投光領域R110A−1〜R110A−3に対して矢印a1方向に形成される。近赤外線投光領域R110A−7〜R110A−9、近赤外線投光領域R110A−10〜R110A−12、近赤外線投光領域R110A−13〜R110A−15、近赤外線投光領域R110A−16〜R110A−18についても、同様である。したがって、近赤外線投光領域R110A−4〜R110A−18は、ドアパネル55a、55bとは重ならない位置に形成される。
【0064】
このように、近赤外線投光素子111−4〜111−18が発光した近赤外線をスポット光に集光し、近赤外線検知領域R110に複数のほぼ円形状の近赤外線投光領域R110A−4〜R110A−18、R110B−4〜R110B−18、R110C−4〜R110C−18、R110D−4〜R110D−18を形成することによって、近赤外線をドアパネル55a、55bに照射することなく、検知に必要な近赤外線検知領域R110を形成することができる。したがって、ドアパネル55a、55bの動きによって近赤外線が乱反射することがなく、近赤外線投光領域R110A−4〜R110A−18に照射される近赤外線の量を一定にすることができる。したがって、近赤外線受光素子121A〜121Dが各近赤外線投光領域での近赤外線の量の変化を検知することはないので、自動ドアセンサ100におけるドアパネル55a、55bを開閉する際の誤動作を防止することができる。
【0065】
また、自動ドアセンサ100を設置する際に、近赤外線検知領域R100の範囲を明確にすることができる。よって、自動ドアセンサ100の設置作業を簡便にできる。
【0066】
(2)近赤外線受光領域
自動ドア100が形成する近赤外線受光領域R220A−1〜R220D−3について図7を用いて説明する。自動ドア100では、固定壁53aから固定壁53bに向かって、近赤外線受光領域R220A−1、近赤外線受光領域R220B−1、近赤外線受光領域R220A−2、近赤外線受光領域R220B−2、近赤外線受光領域R220A−3、近赤外線受光領域R220B−3、近赤外線受光領域R220C−1、近赤外線受光領域R220D−1、近赤外線受光領域R220C−2、近赤外線受光領域R220D−2、近赤外線受光領域R220C−3、近赤外線受光領域R220D−3の順で形成される。
【0067】
近赤外線受光領域R220A−1〜R220D−3は、2個の近赤外線受光領域グループG220A、G220Bに分けることができる。近赤外線受光領域グループG220Aには、6個の近赤外線受光領域R220A−1〜R220B−3が配置される。他の近赤外線受光領域グループG220Bには、6個の近赤外線受光領域R220C−1〜R220D−3が配置される。
【0068】
各近赤外線受光領域R220A−1〜R220D−3は、シリンドリカルレンズである集光レンズ223Aによって、矢印a1方向及び矢印a3方向にそれぞれ所定の長さを持つ矩形状として床面上に形成される。
【0069】
近赤外線受光領域グループG220Aにおいて、近赤外線受光領域R220A−1は、近赤外線投光領域グループG110Aの投光領域R110A−(3n+1)(n=0、1、2、3、4、5。以下、同様)に対応して形成される。近赤外線受光領域R220B−1は、近赤外線投光領域グループG110Aの近赤外線投光領域R110A−(3n+2)に対応して形成される。近赤外線受光領域R220A−2は、近赤外線投光領域グループG110Aの近赤外線投光領域R110A−(3n+3)に対応して形成される。
【0070】
近赤外線受光領域R220B−2は近赤外線投光領域グループG110Bの近赤外線投光領域R110B−(3n+1)に、近赤外線受光領域R220A−3は近赤外線投光領域グループG110Bの近赤外線投光領域R110B−(3n+2)に、近赤外線受光領域R220B−3は近赤外線投光領域グループG110Bの近赤外線投光領域R110B−(3n+3)に、それぞれ対応して形成される。
【0071】
これにより、隣接する近赤外線受光領域が、同じ近赤外線投光素子が発光した近赤外線から生成される検知光によって形成される近赤外線投光領域に対応しないように形成することができる。例えば、近赤外線投光素子111−1が発光した近赤外線から生成される検知光によって形成される近赤外線投光領域R110A−1及び近赤外線投光領域R110B−1は、それぞれ近赤外線受光領域R220A−1、近赤外線受光領域R220B−2に対応し、近赤外線受光領域R220A−1に隣接する近赤外線受光領域R220B−1は、近赤外線投光領域R110B−1に対応しない。よって、隣接する近赤外線受光領域の境界付近に物体が存在し、物体による近赤外線から生成される検知光の反射光を隣接する近赤外線受光領域が受光したとしても、物体が存在する近赤外線投光領域に対応する近赤外線投光素子と近赤外線受光領域との組み合わせから、物体の位置を判断でき、誤検知することはない。
【0072】
また、図8に示すように、近赤外線受光領域R220A−1は、ドアパネル55aに近い領域uが近赤外線受光素子221−1(図3参照)によって、ドアパネル55aから遠い領域dが近赤外線受光素子221−4(図8参照)によって、それぞれ形成される。このように、近赤外線受光ユニット220Aにおいて、矢印a1方向側に近赤外線受光素子221−1および近赤外線受光素子221−4を並列に配置し、並列に配置した複数の近赤外線受光素子によって1つの近赤外線受光領域R220A−1を形成することによって、近赤外線受光領域R220A−1の物体侵入方向側の長さLを調整し、物体検知に必要な長さとすることができる。
【0073】
2.遠赤外線検知領域R130
遠赤外線検知領域R130について図9を用いて説明する。遠赤外線検知領域R130は、床面において近赤外線受光領域R110と同一の領域に形成される。なお、遠赤外線検知領域R130は、遠赤外線受光素子301が遠赤外線を受光することができる床面上の一つの遠赤外線受光領域により形成されている。
【0074】
第2 制御部100Cの動作
近赤外線制御回路230及び遠赤外線制御回路305は、電源投入後、それぞれが物体の検知処理を行う。
【0075】
近赤外線制御回路230は、近赤外線検知領域R110に物体を検知すると、近赤外線物体検知テーブルに検知結果を記述する。ここで、近赤外線物体検知テーブルについて図10を用いて説明する。近赤外線物体検知テーブルは、物体ID記述領域、検知時間記述領域、検知位置記述領域を有している。物体ID記述領域には、検知した物体を一位に特定する情報(ID)が記述される。検知時間記述領域には、反射光を受光した時間が記述される。なお、近赤外線制御回路230は、反射光を受光した時間を所定のタイマ回路から取得する。検知位置記述領域には、物体を検知した位置が記述される。物体を検知した位置は、物体を検知する際の近赤外線投光領域と近赤外線受光領域との組み合わせによって判断する。
【0076】
遠赤外線制御回路307は、遠赤外線検知領域R130に人等の熱源を検知すると、遠赤外線検知テーブルに検知結果を記述する。なお、遠赤外線検知テーブルについては、検知位置記述領域が存在しないことを除いて近赤外線検知テーブルと同様であるため、詳細な記述は省略する。
【0077】
制御部100Cは、近赤外線センサ部100A及び遠赤外線センサ部100Bにおける検知結果を用いて、検知領域R100における物体の種別及び存在を判断する。これにより、近赤外線センサ部100A又は遠赤外線センサ部100Bのみによる検知に比して、自動ドアセンサ100では適切な検知が可能となる。
【0078】
なぜならば、近赤外線だけを用いた物体検知では、大気中に雪や霧、蒸気が存在する場合、その光学的反射あるいは遮断により人等の物体を正常に検知できなくなる場合が存在する。
【0079】
また、近赤外線を用いた物体検知では、物体を高精度に検知することはできるが、検知した物体が人であるか否かを判断することは難しい。このため、検知した物体が長時間、同じ位置に存在する場合、ドアパネル55a、55bの開閉処理として、ドアパネル55a、55bが長時間にわたって開いた状態が継続されることを防止するために、実際は検知した物体が人であったとしても一定時間経過したらドアパネル55a、55bを閉じる処理を行わなければならない場合が存在する。
【0080】
また、遠赤外線を用いた物体検知では、夏場等で気温や床面が人の体温に近くなると、床面等の周囲温度と人間の体温との温度差が得られないため人を適切に検知できなくなる場合がある。
【0081】
このように、近赤外線だけを用いた検知、遠赤外線だけを用いた検知には、原理的な限界から適切に検知ができない場合が存在する。
【0082】
一方、自動ドアセンサ100では、近赤外線を用いた物体検知、遠赤外線を用いた物体検知、又は両者を用いた検知を選択することができる。自動ドアセンサ100の制御部100Cは、近赤外線センサ部100A、遠赤外線センサ部100Bによる物体検知の選択を示す選択情報を取得すると、取得した選択情報に合わせて近赤外線センサ部100Aによる物体検知、遠赤外線センサ部100Bによる物体検知を切り換える。以下において、制御部100Cにおける近赤外線センサ部100Aによる物体検知、遠赤外線センサ部100Bによる物体検知の選択動作について説明する。
【0083】
1.気温、気象による選択
制御部100Cは、近赤外線センサ部100A、遠赤外線センサ部100Bによる物体検知の選択を示す選択情報を取得すると、取得した選択情報に合わせて近赤外線センサ部100Aによる物体検知、遠赤外線センサ部100Bによる物体検知を切り換える。
【0084】
制御部100Cは、例えば、温度センサ等によって現在の気温を選択情報として取得する。これにより、制御部100Cは、気温が所定温度、例えば30度より高いと判断すると、近赤外線センサ部100Aによる判断又は遠赤外線センサ部100Bによる判断を選択するOR処理を実行し、気温が所定温度以下であればAND処理を実行する。この場合、気温が30度を超えるほど高くなり、遠赤外線センサ部100Bによる適切な検知ができなくなったとしても、近赤外線センサ部100Aによる検知ができる。これにより、自動ドアセンサ100は、夏場の温度上昇にも雪、霧等の気象条件にも適切に判断できる。
【0085】
また、制御部100Cは、例えば、通信回線等を用いて気象情報を選択情報として取得する。これにより、制御部100Cは、所定の気象情報、例えば、降雪、霧の発生を取得すれば、近赤外線センサ部100Aによる判断区加えて、遠赤外線センサ部100Bによる判断も確認するAND処理を実行する。この場合、雪や霧による誤動作を防止することができる。
【0086】
2.物体種別による選択
自動ドアセンサ100は、検知領域R100において長時間にわたって物体が移動しない場合には、検知した物体の種別を判断し、判断した物体の種別を選択情報として適切な自動ドアの開閉動作を行うようにすることができる。例えば、長時間移動しない物体が遠赤外線センサ部100Bにより人であると判断すれば、ドアパネル55a、55bが開いた状態を維持する。一方、長時間移動しない物体が人でないと判断すれば、自動ドアを閉じた状態とする。このように、検知した物体の種別によって、自動ドアの開閉を適切に動作させることができる。
【0087】
制御部100Cにおける物体種別の判断を加味した動作について図11に示すフローチャートを用いて説明する。制御部100Cは、電源投入後、常時、近赤外線制御回路130及び遠赤外線制御回路305のそれぞれが生成する近赤外線検知テーブル、遠赤外線検知テーブルを監視する。制御部100Cは、近赤外線検知テーブルの物体検知時間記述領域に記述されている時間から所定時間が経過している検知結果が存在するか否かを判断する(S1001)。なお、所定時間については、例えば15秒と、予め設定しておく。
【0088】
制御部100Cは、遠赤外線検知テーブルに、現在に人等の熱源が検知されていることを示す検知結果が存在するか否かを判断する(S1003)。制御部100Cは、現在、遠赤外線センサ部100Bにおいて人等の熱源が検知されていることを示す検知結果が存在すると判断すると、近赤外線検知テーブルにおいて所定時間が経過している物体は人であると判断する(S1005)。一方、制御部100Cは、遠赤外線検知領域から遠赤外線を受光していないと判断すると、物体検知テーブルにおいて所定時間が経過している物体は人でないと判断する(S1007)。
【0089】
このように、制御部100Cは、所定時間が経過して同じ位置に存在する物体について、遠赤外線を受光するか否か、つまり、遠赤外線検知領域に発熱体が存在するか否かによって、人であるか、人でないかを判断する。なお、人は発熱体であるため、遠赤外線検知に人が存在すれば、遠赤外線受光部によって遠赤外線が受光される。
【0090】
このように、自動ドアセンサ50では、一方のセンサ部による検知が正常に行えない場合であっても、他方による検知を行うようにしたり、両方のセンサ部による検知を行ったりできるので、多くの環境における安定した動作が可能となる。
【実施例2】
【0091】
前述の実施例1では、本発明に係る物体検知装置を自動ドアセンサ100として用いた。本実施例においては、本発明に係る物体検知装置をセキュリティシステムや見守りシステムにおいて使用する物体検知センサ500として用いる。なお、物体検知センサ500の構成、動作については、実施例1における自動ドアセンサ100と同様であるため、詳細な記述は省略する。
【0092】
物体検知センサ500の使用例について、図12を用いて説明する。図12は、物体検知センサ500を設置した部屋の俯瞰図である。物体検知センサ500は、例えば、所定の壁の上端に設置される。なお、物体検知センサ500の設置位置については、天井等、床面に所定の検知領域R100を形成できるものであれば、例示のものに限定されない。
物体検知センサ500では、近赤外線センサ部100Aを用いてリビング内の物体の存在や移動を検知できる上、遠赤外線センサ100Bを用いて熱源の有無、つまり人の存在を検知できる。例えば、物体検知センサ500は、近赤外線センサ部100Aを用いて、検知領域Ra、検知領域Rcに物体が存在することを検知する。また、物体検知センサ500は、近赤外線センサ部100Aを用いて、検知領域Raで検知した物体が検知領域Rbへ移動したことも検知できる。また、物体検知センサ500は、近赤外線センサ部100Aを用いて、検知領域Rcで検知した物体には移動がないことも検知できる。
【0093】
一方、物体検知センサ500は、遠赤外線センサ部100Bを用いて、検知領域Ra、検知領域Rb、検知領域Rcで検知した物体が人であることを検知することができる。ここで、テレビ等の電化製品は、発熱するが、表面温度は人とは異なる。また、テレビ等の検知領域Rdは全く移動しない。このような特徴を利用することによって、物体検知センサ500は、容易に人と電化製品とを識別することができる。つまり、物体検知センサ500は、検知領域Rdで検知した物体については、電化製品等の物体である判断することができる。
【0094】
また、風でカーテンcが動いた場合、物体検知センサ500の近赤外線センサ部100Aは検知領域Reにおいてカーテンcを検知することとなる。しかし、カーテンcは熱源でないことから、物体検知センサ500の遠赤外線センサ部100Bではカーテンcを検知しない。また、カーテンcが動ける範囲には制約があることから、近赤外線センサ部100Aがカーテンcを検知する検知領域を予め特定することができる。このような特徴を利用することによって、物体検知センサ500は、容易に人とカーテンcとを識別することができる。つまり、物体検知センサ500は、検知領域Reで検知した物体については、カーテンcである判断することができる。
【0095】
このように物体検知センサ500は、従来のセンサでは電化製品やカーテン等を人と誤検知するという回避できなった誤動作を防止することができる。よって、物体検知センサ500を用いることによって、セキュリティ会社警備員の無駄な現地確認出動を大幅に軽減することができる。
【0096】
[他の実施例]
(1)近赤外線検知領域R110:前述の実施例1及び実施例2においては、近赤外線検知領域R110は、複数の近赤外線投光領域を有するとしたが、一つの近赤外線投光領域のみを有するものとしてもよい。近赤外線受光領域についても同様である。
【0097】
(2)遠赤外線検知領域R130:前述の実施例1及び実施例2においては、遠赤外線検知領域R130は、一つの遠赤外線受光領域を有するとしたが、複数の遠赤外線受光領域を有するものとしてもよい。この場合、単独の遠赤外線受光素子301及びレンズ面を複数に分割した集光レンズ303を用いる、複数の遠赤外線受光素子301及びレンズ面が単一の集光レンズ303を用いる、複数の遠赤外線受光素子301及びレンズ面を複数に分割した集光レンズ303を用いる等すればよい。なお、遠赤外線受光領域を複数とする場合は、近赤外線検知テーブルと同様、遠赤外線検知テーブルに検知位置記述領域を設定すればよい。
【0098】
(3)検知領域R100:前述の実施例1及び実施例2においては、近赤外線検知領域R110及び遠赤外線検知領域R130は、床面において一致するとしたが、いずれかが他方を包含するようにしてもよい。また、いずれかが他方を包含せずとも、両者によって重なりは生ずるように配置し、重なる領域を検知領域R100とするようにしてもよい。
【0099】
(4)近赤外線センサ部100A及び遠赤外線センサ部100Bの配置:前述の実施例1及び実施例2においては、近赤外線センサ部100Aと遠赤外線センサ部100Bとは、図1の矢印a1方向に並んで配置されるとしたが、それぞれが床面に適切に近赤外線検知領域R110、遠赤外線検知領域R130を形成できるのであれば、例示のものに限定されない。例えば、図1の矢印a3方向に並んで配置するようにしてもよい。
【0100】
(5)遠赤外線センサの構成:前述の実施例1及び実施例2においては、遠赤外線センサ部100Bの構成として、単独の遠赤外線受光素子301、レンズ面を単一にした集光レンズ303を示したが、遠赤が支援検知領域R130を形成できるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、単独の遠赤外線受光素子301及びレンズ面を複数に分割した集光レンズ303を用いる、複数の遠赤外線受光素子301及びレンズ面を単一にした集光レンズ303を用いる、複数の遠赤外線受光素子301及びレンズ面を複数に分割した集光レンズ303を用いるようにしてもよい。なお、一般的に、レンズ面を複数分割することよって検知領域R110の面積を広げることができる。
【0101】
また、遠赤外線受光素子301は、温度変化があった際に微分信号が発生する焦電素子、対象の温度測定を行う温度測定素子等、使用目的等に合わせて選択すればよい。例えば、遠赤外線受光素子301に焦電素子を用いる場合は、検知領域内で人が動いた場合のみ信号が得られるので、移動した人を検知することができる。一方、対象の温度測定を行う温度測定素子を用いる場合は、動かずにじっとしている人を検知することができる。
【0102】
(6)物体存在判断の選択:前述の実施例1及び実施例2においては、温度情報又は気象情報を用いて、近赤外線センサ部100Aによる物体検知、遠赤外線センサ部100Bによる物体検知のAND処理、OR処理を選択したが、温度情報及び気象情報を用いて、AND処理、OR処理を選択するようにしてもよい。
【0103】
また、選択情報によって、AND処理、OR処理以外に、近赤外線センサ部100Aのみによる物体検知、遠赤外線センサ部100Bのみによる物体検知を選択するようにしてもよい。
【0104】
(7)選択情報の取得:前述の実施例1及び実施例2においては、床面の温度を温度センサにより取得するとしたが、床面の温度を取得できるものであれば、例示のものに限定されない。例えば、遠赤外線センサ部100Bによって受光された遠赤外線から床面の温度を算出するようにしてもよい。これにより、床面の温度を取得するにあたり、特別な部品を用意する必要がなくなる。
【0105】
さらに、選択情報について、自動ドアセンサ100や物体検知センサ500に、所定のディップスイッチ等の切換手段を配置し、手動により切り換えるようにしてもよい。
【0106】
(8)人の体温の取得:前述の実施例2においては、遠赤外線センサ部100Bにおいて熱源の有無を判断するとしたが、さらに、遠赤外線センサ部100Bは検知した物体の温度まで取得するものを使用すれば、検知領域R100に存在する人の体温をリアルタイムに計測できる。
【0107】
これにより、体調管理が必要な高齢者や病人の体温の変化を、常時、監視できる。したがって、高熱あるいは急な体温の低下に至るような緊急状態を容易に発見できる。また、エアコンの長時間使用によるゆっくりとした体温の低下に対する警告、エアコンの停止や風量、温度の調整等もシステムとして行える。
【0108】
このような人の体温変化に基づく監視を行う場合、対象となる人の存在や位置の検知精度がさらに重要となる。従来の遠赤外線センサだけでは、周囲温度の影響を受けて、人の存在や位置を正しく検知できない場合があった。
【0109】
一方、物体検知装置500では、まず近赤外線センサ部100Aによって、対象となる物体の位置を正しく検知し、遠赤外線センサ部100Bによって、検知した物体の位置の正確な温度を取得する。これにより、検知対象となる物体の温度を正確に取得することができる。検知対象となる物体が人であれば、人の体温を正確に取得することができる。これにより、人の体温変化の監視を適切に行うことができる。
【0110】
なお、広域な検知領域R100の中から特定の人の体温を正確に検知するためには、遠赤外線センサ部100Bも分割された遠赤外線検知領域を有することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明に係る物体検知装置は、例えば、自動ドアシステム、セキュリティシステム、見守りシステムに利用することができる。
【符号の説明】
【0112】
100・・・・・自動ドアセンサ
100A・・・・・近赤外線センサ部
110A、B・・・・・投光ユニット
111−1〜18・・・・・投光素子
113A、B・・・・・多分割レンズ
120A〜D・・・・・受光ユニット
121−A〜D・・・・・受光素子
123A〜D・・・・・集光レンズ
220A〜D・・・・・受光ユニット
221−1〜24・・・・・受光素子
223A〜D・・・・・集光レンズ
100B・・・・遠赤外線センサ部
301・・・・・受光素子
303・・・・・集光レンズ
305・・・・・遠赤外線制御回路
R100・・・・・検知領域
R110・・・・・近赤外線検知領域
R110A−1〜R110D−18・・・・・投光領域
R220A−1〜R220D−3・・・・・受光領域
R130・・・・・遠赤外線検知領域
500・・・・・物体検知センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外線を所定の近赤外線検知領域に投光する近赤外線投光部、
投光した前記近赤外線の反射光を受光する近赤外線受光部、
前記反射光の受光から、前記近赤外線検知領域における物体の存在を判断する近赤外線制御部、
所定の遠赤外線検知領域から遠赤外線を受光する遠赤外線受光部、
前記遠赤外線の受光から、前記遠赤外線検知領域における物体の存在を判断する遠赤外線制御部、
前記近赤外線制御部における物体の存在判断と、前記遠赤外線制御部における物体の存在判断とを用いて、所定の検知領域における物体の存在を判断する制御部、
を有する物体検知装置であって、
前記検知領域は、
前記近赤外線検知領域と前記遠赤外線検知領域とが重複する領域によって形成されていること、
を特徴とする物体検知装置。
【請求項2】
請求項1に係る物体検知装置において、
前記近赤外線検知領域は、
複数の近赤外線投光領域を有すること、
を特徴とする物体検知装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に係る物体検知装置において、
前記遠赤外線検知領域は、
複数の遠赤外線受光領域を有すること、
を特徴とする物体検知装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3に係る物体検知装置のいずれかにおいて、
前記制御部は、
前記反射光から前記検知領域に物体が存在すると判断し、さらに、受光した前記遠赤外線から前記検知領域に物体が存在すると判断した場合に、前記検知領域に物体が存在すると判断すること、
を特徴とする物体検知装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4に係る物体検知装置のいずれかにおいて、
前記制御部は、
選択情報を用いて、前記近赤外線制御部のみによる物体存在判断、前記遠赤外線制御部のみによる物体存在判断、又は前記近赤外線制御部における物体存在判断と前記遠赤外線制御部における物体存在判断とのAND処理若しくはOR処理、以上の処理のいずれか又は組み合わせを選択すること、
を特徴とする物体検知装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5に係る物体検知装置のいずれかにおいて、
前記制御部は、
所定の領域の温度を選択情報として用いること、
を特徴とする物体検知装置
【請求項7】
請求項6に係る物体検知装置において、
前記制御部は、
前記選択情報として温度が人の体温又はそれ以上であれば前記OR処理、又は、前記近赤外線制御部のみによる物体存在判断を選択し、それ以下であれば前記AND処理を選択すること、
を特徴とする物体検知装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に係る物体検知装置において、
前記遠赤外線受光部は、
受光した前記遠赤外線から前記温度を取得すること、
を特徴とする物体検知装置。
【請求項1】
近赤外線を所定の近赤外線検知領域に投光する近赤外線投光部、
投光した前記近赤外線の反射光を受光する近赤外線受光部、
前記反射光の受光から、前記近赤外線検知領域における物体の存在を判断する近赤外線制御部、
所定の遠赤外線検知領域から遠赤外線を受光する遠赤外線受光部、
前記遠赤外線の受光から、前記遠赤外線検知領域における物体の存在を判断する遠赤外線制御部、
前記近赤外線制御部における物体の存在判断と、前記遠赤外線制御部における物体の存在判断とを用いて、所定の検知領域における物体の存在を判断する制御部、
を有する物体検知装置であって、
前記検知領域は、
前記近赤外線検知領域と前記遠赤外線検知領域とが重複する領域によって形成されていること、
を特徴とする物体検知装置。
【請求項2】
請求項1に係る物体検知装置において、
前記近赤外線検知領域は、
複数の近赤外線投光領域を有すること、
を特徴とする物体検知装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に係る物体検知装置において、
前記遠赤外線検知領域は、
複数の遠赤外線受光領域を有すること、
を特徴とする物体検知装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3に係る物体検知装置のいずれかにおいて、
前記制御部は、
前記反射光から前記検知領域に物体が存在すると判断し、さらに、受光した前記遠赤外線から前記検知領域に物体が存在すると判断した場合に、前記検知領域に物体が存在すると判断すること、
を特徴とする物体検知装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4に係る物体検知装置のいずれかにおいて、
前記制御部は、
選択情報を用いて、前記近赤外線制御部のみによる物体存在判断、前記遠赤外線制御部のみによる物体存在判断、又は前記近赤外線制御部における物体存在判断と前記遠赤外線制御部における物体存在判断とのAND処理若しくはOR処理、以上の処理のいずれか又は組み合わせを選択すること、
を特徴とする物体検知装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5に係る物体検知装置のいずれかにおいて、
前記制御部は、
所定の領域の温度を選択情報として用いること、
を特徴とする物体検知装置
【請求項7】
請求項6に係る物体検知装置において、
前記制御部は、
前記選択情報として温度が人の体温又はそれ以上であれば前記OR処理、又は、前記近赤外線制御部のみによる物体存在判断を選択し、それ以下であれば前記AND処理を選択すること、
を特徴とする物体検知装置。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に係る物体検知装置において、
前記遠赤外線受光部は、
受光した前記遠赤外線から前記温度を取得すること、
を特徴とする物体検知装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−61273(P2013−61273A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200578(P2011−200578)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(501397920)旭光電機株式会社 (45)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(501397920)旭光電機株式会社 (45)
【Fターム(参考)】
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