説明

追尾装置、追尾方法、及びコンピュータプログラム

【課題】飛翔体のトランスポンダーから送信されてきた応答信号を受信し、その電波強度を基に、アンテナ角を飛翔体に追尾させる追尾装置で、サンプリングレートを高速化させることなく、高精度追尾が可能にする。
【解決手段】制御装置21の座標演算器22で現時刻の飛翔体の位置座標を算出し、位置推定器23で次時刻の飛翔体の位置座標を推定し、角度算出器24で次時刻のアンテナの角度の推定値を算出している。そして、推定された次時刻でのアンテナの角度を目標値として、アンテナ31の向きを制御している。このように、本発明の第1の実施形態では、次時刻でのアンテナの角度の推定値を目標値として、アンテナ31の向きを制御しているため、サンプリングレートを高速化させることなく、高精度追尾が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機等の飛翔体のトランスポンダーから送信されてきた応答信号を受信し、その電波強度を基に、アンテナ角を飛翔体に追尾させる追尾装置、追尾方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
航空機等の管制する場合に、飛翔体にトランスポンダーを搭載し、地上のアンテナから飛翔体に質問信号を送信し、飛翔体のトランスポンダーから送信されてきた応答信号を受信し、その電波強度をもとに、地上の指向性アンテナの方向と飛翔体の方向とのずれ角(エラー角)を算出し、アンテナ角を飛翔体に追尾させることが行われている(例えば特許文献1)。
【0003】
図6及び図7は、このような追尾制御システムの概要の説明図である。図6において、地上の指向性アンテナ101からの質問信号に応答して、飛翔体102のトランスポンダーからは、応答信号が送信される。この応答信号は、アンテナ101で受信される。
【0004】
図7に示すように、地上には受信機105が設けられる。受信機105は、飛翔体102からの受信信号から、アンテナ101と飛翔体102との間の直距離、飛翔体102の高度、アンテナ101と飛翔体102とを結ぶ直線と実際のアンテナ101の向く方向と、のずれを示すエラー角を取得する。エラー角には、AZ(アジマス角)エラー角と、EL(エレベーション角)エラー角とがある。AZエラー角は、水平方向と垂直方向とに4区分したアンテナ領域において、左上側の領域Aの電波強度と左下側の領域Cの電波強度との和(A+C)と、右上側の領域Bの電波強度と右下側の領域Dの電波強度との和(B+D)との差((A+C)−(B+D))に基づく信号である。ELエラー角は、左上側の領域Aの電波強度と右上側の領域Bの電波強度との和(A+B)と、左下側の領域Cの電波強度と右下側の領域Dの電波強度との和(C+D)との差((A+B)−(C+D))に基づく信号である。
【0005】
受信機105で取得されたエラー角は、制御装置106に供給される。制御装置106は、このエラー角に基づいて、PID(Proportional Integral Difference)制御により、飛翔体102の位置に追従するように、アンテナ101の位置を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−236387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、図6及び図7に示す例では、受信機105からのエラー角からアンテナ101の向きをPID制御により飛翔体102に追尾させるようにしている。しかしながら、この場合、エラー角のサンプリングレートが遅いと、制御帯域はその1/2〜1/10程度に設定しなければ安定しない。また、エラー角にノイズ成分が多く含まれていれば、その分、フィルタで帯域を落とし安定域を確保する必要がある。このため、高速で近傍を通過する飛翔体等を追尾できない場合がある。また、システム全体のサンプリングレートを高速化するためには、構成品ごとに高速処理する必要があるため、価格が高騰してしまう可能性がある。
【0008】
上述の課題を鑑み、本発明は、サンプリングレートを高速化させることなく、高精度追尾が可能な追尾装置、追尾方法、及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、本発明に係る追尾装置は、飛翔体のトランスポンダーから送信されてきた応答信号を受信する受信機と、前記受信機の出力を基に、次時刻以降の飛翔体の位置を推定し、当該推定された次時刻以降の飛翔体の位置に基づいて目標値設定して、前記アンテナの向きを制御する制御装置とを備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る追尾方法は、飛翔体のトランスポンダーから送信されてきた応答信号を受信し、アンテナから飛翔体までの直距離と、前記アンテナと前記飛翔体とのエラー角と、前記飛翔体の機体情報とを取得し、前記受信機の出力を基に、次時刻以降の飛翔体の位置を推定し、当該推定された次時刻以降の飛翔体の位置に基づいて目標値設定して、前記アンテナの向きを制御することを特徴とする。
【0011】
本発明に係るコンピュータプログラムは、飛翔体のトランスポンダーから送信されてきた応答信号を受信し、アンテナから飛翔体までの直距離と、前記アンテナと前記飛翔体とのエラー角と、前記飛翔体の機体情報とを取得するステップと、前記受信機の出力を基に、次時刻以降の飛翔体の位置を推定するステップと、当該推定された次時刻以降の飛翔体の位置に基づいて目標値設定して、前記アンテナの向きを制御するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、次時刻での飛翔体の位置を推定し、次時刻での飛翔体の位置から、次時刻でのアンテナのAZ角及びEL角を算出し、アンテナの向きを制御している。このため、サンプリングレートを高速化させることなく、高精度の追尾が可能になる。また、本発明によれば、応答特性を向上させるためにシステムタイミングを高帯域に設定する必要がないため、安価なシステムを構築することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の制御ブロック図である。
【図3】Z座標の算出の説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態の処理を示すフローチャートである。
【図6】追尾制御システムの概要の説明図である。
【図7】追尾制御システムの概要の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1の実施形態の構成を示すブロック図である。
【0015】
図1において、受信機11は、飛翔体のトランスポンダーから送信されてきた応答信号を受信し、飛翔体の機体情報、直距離、エラー角(AZエラー角及びELエラー角)を取得する。
【0016】
制御装置21は、座標演算器22と、位置推定器23と、角度算出器24と、予測補償器25と、直距離適応型制御補償選定器26とを有している。座標演算器22は、受信機11から取得された直距離と、エラー角と、機体情報とから、現時刻の飛翔体の位置座標を算出する。
【0017】
位置推定器23は、座標演算器22で算出された現時刻の飛翔体の位置座標から、次時刻の飛翔体の位置座標を推定する。位置推定は、飛翔体の現時刻の位置座標と、飛翔体の運動及びアンテナの挙動とを考慮して、状態方程式に基づいて推定される。
【0018】
角度算出器24は、位置推定器23で算出された次時刻の飛翔体の位置座標に基づいて、次時刻のアンテナの角度の目標値を算出する。この角度算出器24の出力は、予測補償器25を介して応答特性を補償して、アンテナ31のアクチュエータに供給される。
【0019】
予測補償器25としては、複数の種類の特性のものが設けられる。直距離適応型制御補償選定器26は、受信機11から取得された直距離に基づいて、予測補償器25の特性を選定する。すなわち、直距離適応型制御補償選定器26は、アンテナ角速度を必要とされる近距離においては、高帯域の制御フィルタを選定して応答特性を速め、遠距離においては低帯域の制御フィルタを選定して応答特性を安定化させる。
【0020】
このように、本発明の第1の実施形態では、制御装置21の座標演算器22で、現時刻の飛翔体の位置座標を算出し、位置推定器23で、次時刻の飛翔体の位置座標を推定し、角度算出器24で、次時刻のアンテナの角度の推定値を算出している。そして、推定された次時刻でのアンテナの角度を目標値として、アンテナ31の向きを制御している。このように、本発明の第1の実施形態では、次時刻での飛翔体の位置を推定してアンテナ31の向きを制御しているため、サンプリングレートを高速化させることなく、高精度追尾が可能になる。
【0021】
図2は、本発明の第1の実施形態の制御ブロック図を示すものである。この図2の制御ブロック図を参照しながら、本発明の第1の実施形態の各部の演算について説明する。
【0022】
図1に示したように、本発明の第1の実施形態では、座標演算器22で、現時刻の飛翔体の位置座標を算出し、位置推定器23で、次時刻の飛翔体の位置座標を推定し、角度算出器24で、次時刻の飛翔体の位置座標に基づいて、次時刻のアンテナの角度の推定値を算出している。
【0023】
図2において、演算ブロック52は、図1における座標演算器22を実現する演算ブロックである。この演算ブロック51は、以下の演算式により、直距離と、AZエラー角と、高度の情報を入力として、地球固定座標系における現時刻の飛翔体の位置座標を算出する。
【0024】
【数1】

【0025】
(1)式において、飛翔体の位置座標が(xmono,ymono,zmono)であり、アンテナの位置座標が原点(x,y,z)となる。rng(k)は、現時刻kでのアンテナから飛翔体までの直距離である。ψはアンテナのAZ角であり、θはアンテナのEL角である。時刻kでのAZ角ψ(k)は、図2における加算器51により、受信機11からの時刻kでのAZエラー角の値AZerr(k)と、アンテナのAZ角の現在値との和(AZ角:ψ=AZerr(k)+AZ)から取得している。設置角補正値は、一定値の補正値である。時刻kでのEL角θ(k)は、座標z(k)と、直距離rng(k)とから、以下に示すようにして、算出される。
【0026】
【数2】

【0027】
なお、EL角も、AZ角と同様に、時刻kでのELエラー角の値ELerr(k)と、アンテナのEL角の現在値との和(EL角:θ=ELerr(k)+EL)から取得しても良い。
【0028】
また、Rは地球の半径(R=6,378,136m)、hは飛翔体の高度、rは平面座標系の位置
【0029】
【数3】

【0030】
である。
【0031】
Z座標は、地球の丸みから生じる誤差を考慮して算出される。図3は、Z座標の算出を説明するものである。これにより、以下のようにして、Z座標が求められる。
【0032】
【数4】

【0033】
図2において、演算ブロック53は、図1における位置推定器23に対応し、以下に示すような演算により、時刻kでの飛翔体の位置座標から、次時刻(k+1)での飛翔体の位置座標を予測推定する。
【0034】
つまり、時刻kでの飛翔体の位置座標をP(k)、時刻kでの飛翔体の速度をV(k)、時刻kでの飛翔体の加速度をA(k)それぞれ以下に示すように表現するとする。
【0035】
【数5】

【0036】
時刻kでの飛翔体の位置座標P(k)、時刻kでの飛翔体の速度V(k)、時刻kでの飛翔体の加速度A(k)から、以下のように定義する。
【0037】
【数6】

この場合、現時刻からΔT後の時刻(k+1)での飛翔体の位置(x(k+1),y(k+1),z(k+1))及び速度(v(k+1),v(k+1),v(k+1))は、以下のような運動方程式で表現することができる。ここで、飛翔体の運動による速度と、アンテナの挙動による速度とが含まれる。
【0038】
【数7】

【0039】
以上の情報を基に、次時刻(k+1)での状態方程式及び観測方程式を作成すると、(2)式のようになる。
【0040】
【数8】

【0041】
(2)式において、行列D、行列F、行列G、行列Hは、以下のように表現される。また、Wk、Vkはノイズである。
【0042】
【数9】

【0043】
以上のように、(2)式を用いて、次時刻(k+1)での飛翔体の位置を予測推定することができる。
【0044】
演算ブロック54は、図1における角度算出器24に対応し、推定された次時刻(k+1)での飛翔体の位置座標から、アンテナのAZ角ψ及びEL角θを算出する。AZ角ψ及びEL角θは、(3)式により算出することができる。
【0045】
【数10】

【0046】
制御フィルタ55は、図1における予測補償器25に対応している。制御フィルタ55としては、AZ用とEL用とがあり、それぞれ、短距離用と長距離用とがある。短距離用は、安定性は小さいが、応答性が速い特性である。長距離用は、応答性は遅いが、安定性が良好な特性である。AZ用及びEL用の例は、(4)式に示すような一次フィルタが用いられる。
【0047】
【数11】

【0048】
判定ブロック56は、図1における直距離適応型制御補償選定器26に対応しており、直距離rng(k)から、制御フィルタ55の特性を判定する。すなわち、判定ブロック56は、直距離が短いときには、制御フィルタ55として、高帯域の特性のものを使用し、応答性を速くし、直距離が長いときには、制御フィルタ55として、低帯域の特性のものを使用して、安定性を良好にする。
【0049】
ジンバルモータ57は、アンテナをAZ方向とEL方向とに回転させるアクチュエータに対応している。演算ブロック54で求められた次時刻(k+1)でのアンテナのAZ角ψ及びEL角θは、制御フィルタ55を介してジンバルモータ57に供給され、これを目標値として、アンテナのAZ方向及びEL方向の位置が制御される。
【0050】
図4は、本発明の第1の実施形態の動作を示すフローチャートである。図4において、制御装置21は、直距離と、AZエラー角と、高度の情報を入力する(ステップS1)。直距離と、AZエラー角と、高度の情報が入力されると、制御装置21は、モノパルス推定処理(ステップS2〜ステップS7)と、補償器の選定処理(ステップS8〜ステップS10)とを並列的に行う。
【0051】
つまり、モノパルス推定処理では、制御装置21は、異常値処理を行った後(ステップS2)、入力された直距離と、AZエラー角と、高度とに基づいて、(1)式に示す演算により、時刻kでの飛翔体の位置座標を求める(ステップS3)。
【0052】
ステップS2の異常値処理は、飛翔体の位置としてはあり得ないような値や前回の値と大きく異なるような値の場合の処理である。この場合には、前置ホールドや補間処理が行われる。
【0053】
次に、制御装置21は、(2)式に示す状態方程式に基づいて、次時刻(k+1)での飛翔体の位置を推定する(ステップS4)。そして、制御装置21は、次時刻(k+1)での飛翔体の位置座標を出力する(ステップS5)。
【0054】
次に、制御装置21は、次時刻(k+1)での飛翔体の位置から、(3)式に示す演算により、次時刻(k+1)でのアンテナのAZ角ψ及びEL角θを推定する(ステップS6)。そして、制御装置21は、次時刻(k+1)でのアンテナのAZ角ψ及びEL角θを出力する(ステップS7)。
【0055】
ステップS2〜ステップS7の処理と並行して、制御装置21は、ステップS1の後に、直距離が所定値以上かどうかを判定する(ステップS8)。そして、制御装置21は、直距離が所定値以上の場合には、長距離用のフィルタ特性を選択し(ステップS9)、直距離が所定値未満の場合には、短距離用のフィルタ特性を選択する(ステップS10)。フィルタの特性は、例えば(4)式に示されるような特性である。なお、ここでは、直距離が所定値以上かどうかにより、2種類の特性を選択しているが、さらに、直距離の判定を複数に条件分岐し、フィルタ特性を更に細かく選択できるようにしても良い。
【0056】
ステップS9及びステップS10でフィルタ特性が設定されたら、制御装置21は、ステップS7で出力されたアンテナのAZ角ψ及びEL角θに対して、ステップS9及びステップS10で設定されたフィルタ特性を施し(ステップS11)、このフィルタ処理が施されたアンテナのAZ角ψ(k+1)及びEL角θ(k+1)を目標角度として出力する(ステップS12)。アンテナのアクチュエータは、これを目標値として、アンテナのAZ角及びEL角を設定する。
【0057】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態では、次時刻での飛翔体の位置を推定し、次時刻での飛翔体の位置から、次時刻でのアンテナのAZ角ψ及びEL角θを算出し、アンテナ位置を制御している。また、本発明の第1の実施形態では、飛翔体までの直距離に応じて、フィルタの特性を設定している。このため、サンプリングレートを高速化させることなく、高精度の追尾が可能になる。なお、上述の説明では、1つ先の時刻の飛翔体の位置を推定して制御を行っているが、更に、2つ先或いはそれより先の時刻の飛翔体の位置を推定して制御を行うようにしても良い。
【0058】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図5は、本発明の第2の実施形態の処理を示すフローチャートである。この実施形態は、上述の次時刻の推定値によるモノパルス推定処理と、GPS(Global Positioning System)による次時刻の推定値による処理とを組み合わせたものである。
【0059】
つまり、飛翔体の位置は、前述したように、受信機11から取得された直距離と、エラー角と、機体情報とから、演算に求められる他、GPSによっても取得できる。
【0060】
図5において、制御装置21は、前回のアルゴリズムの確認を行う(ステップS101)。ここで、アルゴリズムとは、受信機11から取得された直距離と、エラー角と、機体情報とから、現時刻での飛翔体の位置を求め、次時刻での飛翔体の位置を推定し、次時刻でのアンテナのAZ角ψ及びEL角θを推定するアルゴリズム(以下、モノパルス推定アルゴリズム)と、GPSから飛翔体の現時刻での位置を取得し、次時刻での飛翔体の位置を推定し、次時刻でのアンテナのAZ角ψ及びEL角θを推定するアルゴリズム(以下、GPS推定アルゴリズム)である。
【0061】
次に、制御装置21は、所定回数以上、同一アルゴリズムで推定値が出力されたかどうかを判定する(ステップS102)。同一アルゴリズムでの推定値の出力が所定回数未満なら、制御装置21は、前回と同一のアルゴリズムで推定を行い(ステップS103)、アンテナのAZ角ψ(k+1)及びEL角θ(k+1)を指定角度として出力する(ステップS104)。
【0062】
ステップS102で、同一アルゴリズムでの推定値の出力が所定回数以上なら、制御装置21は、AGC(Automatic Gain Control)レベル及びGPS指標の確認を行い(ステップS105)、AGCレベルが所定レベル以上かどうかを判定する(ステップS106)。
【0063】
ステップS106で、AGCレベルが所定レベル以上なら、モノパルス推定アルゴリズムによりアンテナのAZ角ψ(k+1)及びEL角θ(k+1)の推定値を求め(ステップS107)、直距離に応じて、AZ用及びEL用のフィルタ特性を適応的に選択して(ステップS108)、アンテナのAZ角ψ(k+1)及びEL角θ(k+1)を指定角度として出力する(ステップS104)。
【0064】
ステップS106で、AGCレベルが所定レベル未満なら、制御装置21は、GPS指標が信頼できるかどうかを判定する(ステップS109)。GPS指標が信頼できれば、GPS推定アルゴリズムによりアンテナのAZ角ψ(k+1)及びEL角θ(k+1)の推定値を求め(ステップS110)、アンテナのAZ角ψ(k+1)及びEL角θ(k+1)を指定角度として出力する(ステップS104)。
【0065】
ステップS109で、GPS指標が信頼できない場合には、制御装置21は、所定時間の結果後に、自動サーチ処理を行う(ステップS111)。このときには、制御装置21は、最後に算出できたAZ角及びEL角から、飛翔体が存在する可能性のある最大の角度まで目標値を設定し、飛翔体の位置をサーチする。
【0066】
以上説明したように、本発明の第2の実施形態では、飛翔体からの信号の受信状態が良好なときには、受信機11から取得された直距離と、エラー角と、機体情報とから、現時刻での飛翔体の位置を求め、次時刻での飛翔体の位置を推定し、次時刻でのアンテナのAZ角ψ及びEL角θを算出するようにし、受信状態が良好でないときには、GPSから飛翔体の現時刻での位置を取得し、次時刻での飛翔体の位置を推定し、次時刻でのアンテナのAZ角ψ及びEL角θを算出するようにしている。これにより、飛翔体からの信号の受信状態が良好でない場合にも、アンテナを飛翔体に追尾させることができる。
【0067】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【符号の説明】
【0068】
11:受信機
21:制御装置
22:座標演算器
23:位置推定器
24:角度算出器
25:予測補償器
26:直距離適応型制御補償選定器
31:アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛翔体のトランスポンダーから送信されてきた応答信号を受信する受信機と、
前記受信機の出力を基に、次時刻以降の飛翔体の位置を推定し、当該推定された次時刻以降の飛翔体の位置に基づいて目標値設定して、前記アンテナの向きを制御する制御装置と
を備えることを特徴とする追尾装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記アンテナと前記飛翔体の直距離と、前記飛翔体の機体情報と、前記アンテナの方向と前記飛翔体の方向とのエラー角とから現時刻の飛翔体の位置座標を算出する座標演算器と、
前記現時刻の飛翔体の位置座標から次時刻の飛翔体の位置座標を推定する位置推定器と、
前記次時刻の飛翔体の位置座標に基づいて次時刻のアンテナの角度を推定する角度算出器と、
前記角度算出器の出力に対して補償特性を与える予測補償器と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の追尾装置。
【請求項3】
更に、前記直距離に応じて前記予測補償器の制御帯域を変更する選定器を有することを特徴とする請求項2に記載の追尾装置。
【請求項4】
前記位置推定器は、更に、GPSにより現時刻の飛翔体の位置座標を取得し、
受信状態に応じて、前記アンテナと前記飛翔体の直距離と、前記飛翔体の機体情報と、前記アンテナの方向と前記飛翔体の方向とのエラー角とから現時刻の前記飛翔体の位置座標を算出する処理と、前記GPSにより現時刻の前記飛翔体の位置座標を取得する処理とを選択することを特徴とする請求項2に記載の追尾装置。
【請求項5】
飛翔体のトランスポンダーから送信されてきた応答信号を受信し、
アンテナから飛翔体までの直距離と、前記アンテナと前記飛翔体とのエラー角と、前記飛翔体の機体情報とを取得し、
前記受信機の出力を基に、次時刻以降の飛翔体の位置を推定し、
当該推定された次時刻以降の飛翔体の位置に基づいて目標値設定して、前記アンテナの向きを制御する
ことを特徴とする追尾方法。
【請求項6】
飛翔体のトランスポンダーから送信されてきた応答信号を受信し、アンテナから飛翔体までの直距離と、前記アンテナと前記飛翔体とのエラー角と、前記飛翔体の機体情報とを取得するステップと、
前記受信機の出力を基に、次時刻以降の飛翔体の位置を推定するステップと、
当該推定された次時刻以降の飛翔体の位置に基づいて目標値設定して、前記アンテナの向きを制御するステップと
を含むことを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−196775(P2011−196775A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−62696(P2010−62696)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】