説明

送信アンテナ装置

【課題】 スーパーターンスタイルアンテナ(VHF用放送アンテナ)と、パネルアンテナにより構築されるUHF用放送アンテナとを、同じ地上高に並べて設置した構成の実用性の高い送信アンテナ装置を提供する。
【解決手段】 放送塔の上部等の所定の地上高に鉛直に設けられる支持柱(1)に複数のバッドウィングアンテナにより構築されるスーパーターンスタイルアンテナ(10)を取り付けると共に、上記支持柱から一定の距離を隔てて該支持柱と平行に補助支持柱(2)を設け、この補助支持柱にパネルアンテナ(21)また複数のパネルアンテナにより構築される多面合成アンテナ(20)を取り付けることで上記スーパーターンスタイルアンテナとパネルアンテナ/多面合成アンテナとを同一地上高に並べて設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送塔における限られたスペースを有効に利用して設置することのできる送信アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーターンスタイルアンテナは、VHF帯テレビジョン放送用アンテナとして幅広く用いられている。このスーパーターンスタイルアンテナは、鉄塔(支持柱)の周囲に4枚のバッドウィングアンテナ(放射素子)を互いに直交させて設けた構造を有する。また電力利得を高めるべく複数のバッドウィングアンテナを1波長間隔で多段に設けたり、或いは複数チャネルのスーパーターンスタイルアンテナを多段に設けるに際して、バッドウィングアンテナの周囲に補強用の支持柱を設けることも提唱されている(例えば特許文献1を参照)。
【0003】
一方、複数の放射素子(例えばダイポールアンテナ)を、パネル状の反射板上にダイバシティ配列した複数枚のパネルアンテナを鉄塔(支持柱)の周囲に円環状に配列して多面合成アンテナを構築することが知られている(例えば特許文献2を参照)。この種の多面合成アンテナは、例えばUHF帯テレビジョン放送用アンテナとして幅広く用いられる。
【特許文献1】実公昭46−19150号公報
【特許文献2】実開昭63−106208号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上述したスーパーターンスタイルアンテナと多面合成アンテナとを同一の放送塔(鉄塔)に設置する場合、一般的には放送塔を構築する鉄塔の上部に鉛直に設けた支持柱にスーパーターンスタイルアンテナを設置し、上記多面合成アンテナについては上記鉄塔の上端部(上部鉄骨構造部)の周囲に設置することが考えられる。しかしスーパーターンスタイルアンテナの下方に多面合成アンテナが設けられることになり、電波サービスエリアに大きな影響を与えるアンテナ地上高に差が生じることが否めない。
【0005】
そこでスーパーターンスタイルアンテナの周囲に多面合成アンテナを設けることが考えられる。しかしこの場合には、多面合成アンテナを構成する複数のパネルアンテナを上記スーパーターンスタイルアンテナを囲んで配列することになるので、これらのアンテナ間の干渉が懸念される。しかもスーパーターンスタイルアンテナを囲む多面合成アンテナ(複数のパネルアンテナ)によって、スーパーターンスタイルアンテナのアンテナ特性が大きく阻害される虞がある。また構造的には、例えばスーパーターンスタイルアンテナを支持した支持柱の周囲に前記多面合成アンテナを支持するための大掛かりな構造物(アンテナ支持体)を設けることが必要であり、その設備コストが嵩む等の問題がある。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、放送塔における限られたスペースを有効に利用してスーパーターンスタイルアンテナとパネルアンテナとを併設することのできる送信アンテナ装置を提供することにある。
特に本発明は、スーパーターンスタイルアンテナに代表されるVHF帯のテレビジョン放送用アンテナと、反射体をなすパネル板上にダイポールアンテナまたは双ループアンテナを配列した構成の、いわゆるパネルアンテナにより構築されるUHF帯のテレビジョン放送用アンテナとを、同じ地上高に並べて設置した構成の実用性の高い送信アンテナ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するべく本発明に係る送信アンテナ装置は、放送塔の上部等の所定の地上高に鉛直に設けられる支持柱と、この支持柱に支持されて該支持柱の周囲に互いに直角に配列された複数のバッドウィングアンテナにより構築されるスーパーターンスタイルアンテナと、前記支持柱に取り付けられた補助支持体と、この補助支持体に支持されてそのアンテナ面を前記支持柱から一定の距離を隔てて該支持柱と平行に設けられたパネルアンテナとを備えたことを特徴としている。
【0008】
即ち、本発明に係る送信アンテナ装置は、複数のバッドウィングアンテナにより構築されるスーパーターンスタイルアンテナが取り付けられた支持柱に、パネルアンテナを支持するための補助支持体を取り付け、この補助支持体に前記支持柱から一定の距離を隔てて該支持柱と平行にパネルアンテナを取り付けることで、上記スーパーターンスタイルアンテナとパネルアンテナとを同一地上高に並べて設けたことを特徴としている。
【0009】
好ましくは請求項2に記載するように前記補助支持体を、前記スーパーターンスタイルアンテナを構築するバッドウィングアンテナの面(アンテナ面)を延長した位置、または互いに直角に配列されたバッドウィングアンテナの面により挟まれる領域に前記パネルアンテナを支持し得るように前記支持柱に設け、これによってスーパーターンスタイルアンテナに干渉させることなく前記パネルアンテナを設置し得るようにしたことを特徴としている。
【0010】
ちなみに前記パネルアンテナは、請求項3に記載するように前記補助支持体に支持されて該補助支持柱の周囲に配列されて多面合成アンテナを構築する複数のパネルアンテナからなる。特にこれらの複数枚のパネルアンテナは、請求項4に記載するように前記支持柱に対峙する面を除く面に配列されて、前記支持柱に対峙する向きをヌル方位とする多面合成アンテナを構築するように設けることが好ましい。
【0011】
尚、前記パネルアンテナは、例えば反射体をなす所定の大きさのパネル板上に放射素子としてのダイポールアンテナまたは双ループアンテナを配列したものとして実現される。好ましくは前記スーパーターンスタイルアンテナはVHF帯のものとして、また前記パネルアンテナはUHF帯のものとして実現される。
【発明の効果】
【0012】
上述した構成の送信アンテナ装置によれば、スーパーターンスタイルアンテナが取り付けられた支持柱に補助支持体を設け、この補助支持体に前記支持柱から一定の距離を隔てて該支持柱と平行にしてパネルアンテナを取り付けるだけなので、スーパーターンスタイルアンテナおよびパネルアンテナの取り付け地上高を容易に揃えることができる。しかも上述した如く設けられる補助支持体、およびこの補助支持体に取り付けられるパネルアンテナは、前記スーパーターンスタイルアンテナとの間に適当な距離を隔てるだけで該スーパーターンスタイルアンテナとの間で干渉することがないので、その存在はスーパーターンスタイルアンテナの特性に殆ど影響を及ぼすことがない。この結果、スーパーターンスタイルアンテナおよびパネルアンテナの各アンテナ特性をそれぞれ十分に引き出すことのできる送信アンテナ装置を実現することができる。
【0013】
特に請求項2に記載するように補助支持体の設置位置、ひいてはパネルアンテナの取り付け位置を設定すれば、スーパーターンスタイルアンテナとパネルアンテナとの間の干渉を防ぎながら上記パネルアンテナの設置位置をスーパーターンスタイルアンテナに近付けることが可能となる。この結果、送信アンテナ装置の全体を、特に放送塔等の上部に設置されるアンテナ部をコンパクトに構成することが可能となる。
【0014】
また請求項3に記載するように補助支持体に複数のパネルアンテナを取り付け、これらのパネルアンテナにて多面合成アンテナを構築すれば、この多面合成アンテナから幅広い範囲に亘って電波(例えばテレビジョン放送波)を効率的に放射(送信)することが可能となる。特に請求項4に記載するように複数のパネルアンテナを前記支持柱に対峙する面を除く面に配列し、該支持柱に対峙する向きをヌル方位とする放射パターンを得るように多面合成アンテナを構築すれば、スーパーターンスタイルアンテナの影響(干渉)を受けることのない送信アンテナとすることができる等の効果が奏せられる。
【0015】
従って、例えばスーパーターンスタイルアンテナをVHF帯テレビジョン放送用の送信アンテナとして、また前記パネルアンテナにより構築される多面合成アンテナをUHF帯テレビジョン放送用の送信アンテナ、特にデジタル地上波テレビジョンアンテナとしてこれらの両アンテナを同時に有効に活用することが可能となる等の実用上多大なる効果が奏せられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る送信アンテナ装置について、VHF帯およびUHF帯のテレビジョン放送波をそれぞれ送信する放送塔に設置されるアンテナ装置を例に説明する。
図1はこの実施形態に係る送信アンテナ装置の概略構成を示しており、(a)はその正面図、(b)はその平面構成図である。この送信アンテナ装置は、図示しない放送塔(鉄塔)の上部に鉛直に設けられてアンテナの取り付けに供せられる支持柱(アンテナ支持体)1に取り付けられるもので、複数のバッドウィングアンテナ11により構築されるスーパーターンスタイルアンテナ10と、例えば複数のパネルアンテナ21により構築される多面合成アンテナ20とを備える。ちなみに上記支持柱1は、放送塔(鉄塔)の上端部に鉛直(垂直方向)に突設された、例えば直径19cm程度のパイプ体からなる。
【0017】
上記スーパーターンスタイルアンテナ10は、図1(b)にその平面構成を示すように、4枚のバッドウィングアンテナ11a,11b,11c,11dを支持柱1の周囲に90°の角度間隔で、そのアンテナ面が互いに直交するように配列して構築される。これらのバッドウィングアンテナ11(11a,11b,11c,11d)は、互いに90°の位相差を与えて励振されることで、全方向性(無指向)アンテナであるターンスタイルアンテナとして機能する。特にこの実施形態に係るスーパーターンスタイルアンテナ10は、4枚のバッドウィングアンテナ11(11a,11b,11c,11d)にて構成されるアンテナユニットを基本単位とし、図1(a)に示すように上記アンテナユニットを、例えば1波長間隔で多段に設けて構築される。尚、上記バッドウィングアンテナ11の大きさ(縦寸法)は、VHF帯テレビジョン放送波(ローチャネル)の送信アンテナの場合、1段当たり2.5〜3m程度である。
【0018】
一方、多面合成アンテナ20を構成するパネルアンテナ21は、例えば図2(a)(b)にその一部を切欠して示す平面構成とその側面構成とを示すように、ループ形状の放射素子を備えた4素子双ループアンテナ22と、この4素子双ループアンテナ22の裏面側に該4素子双ループアンテナ22がなすアンテナ面と平行に設けられた平板状の主反射板23とを備えて構成される。上記4素子双ループアンテナ22は、その周長Lが電波周波数の略1波長(λ)となる円弧状のループアンテナ素子部(放射素子)25を、略1/2波長(λ/2)の長さの平行給電部26を介して4素子形成した構造のものである。
【0019】
またこの4素子双ループアンテナ22の裏面側に設けられる主反射板23は、ループアンテナ素子部25から放射される電波を反射することで、パネルアンテナ21としての電波放射特性を前記主反射板23の反射面に垂直な方向に向けて単一指向性を持たせる役割を担う。また主反射板23の両側部にそれぞれ設けられた副反射板24は、主反射板23の両側部を介して廻り込む電波を抑えることで、パネルアンテナ21におけるサイドローブおよびバックローブをそれぞれ抑えてその指向特性を高める役割を担う。これらの副反射板24の高さhは、その放送電波周波数の波長λに対して、例えば0.01λ〜0.14λ程度に設定される。
【0020】
またこのパネルアンテナ21は、前述した4素子双ループアンテナ22を覆ってその電波放射面に設けられる保護カバー(レイドーム)27を備えている。この保護カバー27は電波透過性の良好な合成樹脂材等からなり、前記副反射板24を介してそのアンテナ面の全体を覆うように取り付けられる。このような保護カバー27により、雨風や雪、更には粉塵等から4素子双ループアンテナ22が保護され、また放送塔に取り付けた際に受け易い風圧荷重に対するパネルアンテナ21の構造的強度が確保されている。
【0021】
このような構造のパネルアンテナ21、或いは複数のパネルアンテナ21によって構築される多面合成アンテナ20の放送塔への取り付けは、特に前述した支持柱1から一定の距離Dを隔てて該支持柱1と平行に棒状の補助支持体2を設け、この補助支持体2にパネルアンテナ21を取り付けることにより行われる。即ち、図1(a)に示すようにスーパーターンスタイルアンテナ10を取り付けた支持柱1に、該支持柱1から横方向に延びる上下一対の連結部材3,3を設け、これらの連結部材3,3を介してその先端部に前記支持柱1と平行に補助支持体2を設ける。
【0022】
この補助支持体2を設ける位置については、例えば図1(b)に示すようにスーパーターンスタイルアンテナ10を構築するバッドウィングアンテナ11の面(アンテナ面)を延長した位置、または図1(b)において仮想線にて示すように互いに直角に配列された2枚のバッドウィングアンテナ11の各アンテナ面により挟まれる領域(向き)であって前記パネルアンテナ21の設置を可能とする位置、具体的にはバッドウィングアンテナ11のアンテナ面に対して45°の角度をなす向きの位置とすれば良い。
【0023】
そしてこのような補助支持体2に、パネルアンテナ21から放射される電波が指向する向きに合わせて該パネルアンテナ21を取り付けるようにすれば良い。この際、パネルアンテナ21から電波を放射する向きが、前記支持柱1に対峙する面にならない向きとすることで、スーパーターンスタイルアンテナ10の影響を受けることなしにパネルアンテナ21を設置することが可能となる。またパネルアンテナ21の電力利得を高める場合には、図1(a)に示すように複数のパネルアンテナ21を多段に設けるようにすれば良い。
【0024】
また補助支持体2の周囲に複数枚(例えば3枚)のパネルアンテナ21を取り付けて、これらのパネルアンテナ21により多面合成アンテナ20を構築する場合には、図1(b)に示すように前記支持柱1に対峙する面を避けて複数のパネルアンテナ21を取り付けるようにすれば良い。具体的には前記支持柱1に対峙する面を避けて、3枚のパネルアンテナ21を90°ずつその向きを異ならせて補助支持体2の周囲に取り付けるようにすれば良い。この場合においても、複数のパネルアンテナ21により構成される多面合成アンテナ20を図1(a)に示すように多段に設け、これによってその電力利得を高めるようにしても良い。
【0025】
尚、パネルアンテナ21にてUHF帯テレビジョン放送アンテナを実現する場合、その放射素子として前述した4素子双ループアンテナ22を用いた場合には、パネルアンテナ21の縦寸法は概略2mとなる。ちなみに1段当たり2.5〜3m程度のスーパーターンスタイルアンテナ10を3段積み重ねてVHF帯の或るチャネルの放送アンテナを構築した場合、そのVHFアンテナの縦寸法は略7.5〜9m程度となる。これに対して1段当たり略2mのパネルアンテナ21を4段積み重ねてUHF帯の或るチャネルの放送アンテナを構築すれば、そのUHFアンテナの縦寸法は略8mとなる。従って3段構成のスーパーターンスタイルアンテナ10と、4段構成の多面合成アンテナ20との縦寸法がほぼ等しくなるので、例えば図1(a)に示すように3段構成のスーパーターンスタイルアンテナ10と、4段構成の多面合成アンテナ(パネルアンテナ)20との取り付け位置を合わせれば、これらのアンテナ10,20の取り付け高さ位置(放送塔における地上高)を実質的に略等しく設定することが可能となる。
【0026】
故に1つの放送塔における同一高さ位置に、スーパーターンスタイルアンテナ10からなるVHF用のテレビジョン放送アンテナと、パネルアンテナ21を用いて構成される多面合成アンテナ20からなるUHF用のテレビジョン放送アンテナとを同時に設置することが可能となる。特に放送塔の上部に設けた支持柱1にスーパーターンスタイルアンテナ10を取り付け、また上記支持柱1の側部に該支持柱1と平行に設けた補助支持体2にパネルアンテナ20を取り付けるだけで、各アンテナ10,20の特性を損なうことなしに各アンテナ10,20をそれぞれ機能させることが可能となる。
【0027】
ここで上述した如く設けられるスーパーターンスタイルアンテナ10および多面合成アンテナ20の各アンテナ特性について述べる。スーパーターンスタイルアンテナ10の基本的な水平指向性は図3(a)に特性HA1として示す通りであり、またその垂直指向性は図3(b)に特性VA1として示す通りである。また前述した特許文献1にも開示されるようにスーパーターンスタイルアンテナ10の周囲に、例えばバッドウィングアンテナのアンテナ面の延長上に補強用支持材を設けても、そのアンテナ特性に殆ど影響を与えることがない。従って上記補強用支持材を設ける位置に補助支持体2を設け、この補助支持体2にパネルアンテナ21を取り付けても、これらの存在によってスーパーターンスタイルアンテナ10のアンテナ特性には殆ど影響がないと考えられる。
【0028】
そこでバッドウィングアンテナのアンテナ面の延長上に設けた補助支持体2にパネルアンテナ21を取り付け、この状態においてスーパーターンスタイルアンテナ10の水平指向性を調べたところ、図3(a)に特性HA2として示すように元のアンテナ特性から殆ど変化しないことが確認された。またその垂直指向性については、図3(b)に特性VA2として示すように若干半値幅が拡がるものの元のアンテナ特性から殆ど変化しないことが確認された。即ち、図3に示すようにパネルアンテナ21の有無に拘わらず、スーパーターンスタイルアンテナ10のアンテナ特性(指向性)は殆ど変化することがなく、実用に十分供し得ることが確認できた。
【0029】
一方、補助支持体2の周囲に90°間隔で取り付けた3面のパネルアンテナ21からなる多面合成アンテナ20の基本的な水平指向性は図4(a)に特性HB1として示す通りであり、上記3枚のパネルアンテナ21がそれぞれ指向する向きに対してだけ、ほぼ一様の電波放射強度が得られる。換言すればパネルアンテナを設けていない方向を除く領域に、一様な電波強度が得られる。またその垂直指向性は図4(b)に特性VB1として示す通りである。
【0030】
そこでこのような多面合成アンテナ20を前述した補助支持体2に取り付け、特に3枚のパネルアンテナ21を支持柱1に対峙する方向を避けて設けた場合の水平指向特性を調べたところ、図4(b)に特性HB2として示すように元のアンテナ特性から殆ど変化しないことが確認された。またその垂直指向特性を調べたところ、図4(b)に特性VB2として示すように元のアンテナ特性から殆ど変化しないことも確認された。この事実は支持柱1およびこの支持柱1に取り付けられたスーパーたースタイルアンテナ10は、上述した3枚のパネルアンテナ21からなる3面合成アンテナ20から電波が放射されることのない面に対峙しており、従ってこれらのアンテナ10,20が互いに対峙する部位においてそのアンテナ面が対峙することがなく、従って電波干渉等が生じない為であると考えられる。
【0031】
従って上述したように1つの放送塔の上部構築部である支持柱1にスーパーターンスタイルアンテナ10を取り付け、更に前記支持柱1に設けた補助支持体2に上記支持柱1を避けた向きを指向させて3面合成アンテナ20を取り付けた送信アンテナ装置によれば、上記各アンテナ10,20を干渉させることなく、各アンテナ10,20がそれぞれ有するアンテナ特性をそれぞれ十分に機能させることができる。従ってスーパーターンスタイルアンテナ10から放射されるVHF帯のテレビジョン放送波と、3面合成アンテナ20か放射されるUHF帯のテレビジョン放送波とを、それぞれ所定の放送サービスエリアに向けて効率的に送信することが可能となる。特に上記各アンテナ10,20を放送塔における同一高さ位置(地上高)に設置することができるので、その電波到達距離をそれぞれ十分に確保することが可能となる等の効果が奏せられる。
【0032】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば補助支持体2を設ける位置については、前述した支持柱1からの距離Dを隔てた位置のいずれの向きであっても良い。つまり支持柱1を中心とする半径Dの周面上の度の位置に補助支持体2を設けても良い。また補助支持体2を2枚のバッドウィングアンテナ11の間に設ける場合には、パネルアンテナ21の設置を妨げない範囲で上記距離Dを短くして多面合成アンテナ20の設置位置を支持柱1に近付けるようにしても良い。
【0033】
また実施形態においては3段構成のスーパーターンスタイルアンテナ10について示したが、その構成段数は特に限定されるものではなく、割り当て周波数(チャネル)の異なる複数のスーパーターンスタイルアンテナ10を多段配列することも勿論可能である。更には多面合成アンテナ20についても、要求される電力利得に応じてその構成段数を変えたり、割り当て周波数(チャネル)の異なる複数の多面合成アンテナ20を多段配列することも勿論可能である。またその送信周波数に応じてアンテナ寸法等を設定すれば良いことも言うまでもない。
【0034】
またパネルアンテナ21から全方位に亘って電波を放射する必要がある場合には、3面合成アンテナ20を設けた側とは反対側の位置に更に別の補助支持体を設け、この補助支持体に別のパネルアンテナ21多面合成アンテナ20を設けることも可能である。或いは図5に示すように、スーパーターンアンテナ10を構築する4つのバッドウィングアンテナ11a,11b,11c,11dの各アンテナ面の延長線上にそれぞれ補助支持体2を設け、これらの各補助支持体2にパネルアンテナ21を、そのアンテナ面が各バッドウィングアンテナ11と平行となるようにそれぞれ取り付けても良い。即ち、上記4枚のパネルアンテナ21のアンテナ面を順次90°ずつ異ならせることでスキュー配列し、これによって無指向性のアンテナ特性を有する送信アンテナを構築するようにしても良い。
【0035】
尚、前述した多面合成アンテナ20については、4面以上のパネルアンテナ21を用いて構成することも可能である。更にはパネルアンテナ21自体を、前述した4素子双ループアンテナに代えて、2素子双ループアンテナやダイポールアンテナ等を用いて実現することも勿論可能であり、またこれらのアンテナ素子を横並びに並列配置してパネルアンテナ21を構成することも可能である。
【0036】
また前述した連結部材3については、支持柱1に対する取り付け高さ位置を調整可能な構成としたり、更には補助上記柱2の支持位置を、つまり補助上記柱2の上記支持柱1からの離間距離Dを調整可能な構造としておくことも有用である。更にはこの連結部材3にパネルアンテナ21の上端部および下端部をそれぞれ取り付けることで、前述した保持支持体2を用いることなくパネルアンテナ21を設置するようにしても良い。この場合、上記連結部材3自体が補助支持体2として機能することになる。またここではテレビジョン放送用のアンテナを例に説明したが、各種情報通信用のアンテナを構築する場合にも同様に適用可能なことは言うまでもない。その他、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の一実施形態に係る送信アンテナ装置の概略構成を示す正面図および平面図。
【図2】図1に示す送信アンテナ装置に取り付けられるパネルアンテナの概略構成を示す平面図および側面図。
【図3】図1に示す送信アンテナ装置におけるスーパーターンスタイルアンテナの指向特性を示す図。
【図4】図1に示す送信アンテナ装置における多面合成アンテナの指向特性を示す図。
【図5】4枚のパネルアンテナをスキュー配列して構成される送信アンテナ装置の例を示す図。
【符号の説明】
【0038】
1 支持柱
2 補助支持体
3 連結部材(補助支持体)
10 スーパーターンスタイルアンテナ
11 バッドウィングアンテナ
20 多面合成アンテナ
21 パネルアンテナ
22 4素子双ループアンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の地上高に鉛直に設けられる支持柱と、
この支持柱に支持されて該支持柱の周囲に互いに直角に配列された複数のバッドウィングアンテナにより構築されたスーパーターンスタイルアンテナと、
前記支持柱に取り付けられた補助支持体と、
この補助支持体に支持され、そのアンテナ面を前記支持柱から一定の距離を隔てて該支持柱と平行に設けられたパネルアンテナと
を具備したことを特徴とする送信アンテナ装置。
【請求項2】
前記補助支持体は、前記バッドウィングアンテナの面を延長した位置、または互いに直角に配列されたバッドウィングアンテナの面により挟まれる領域に前記パネルアンテナを支持するものである請求項1に記載の送信アンテナ装置。
【請求項3】
前記パネルアンテナは、前記補助支持体に支持されて該補助支持柱の周囲に配列されて多面合成アンテナを構築する複数のパネルアンテナからなる請求項1に記載の送信アンテナ装置。
【請求項4】
前記複数のパネルアンテナは、前記支持柱に対峙する面を除く面に配列されて、前記支持柱に対峙する向きをヌル方位とする多面合成アンテナを構築するものである請求項3に記載の送信アンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−50080(P2006−50080A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225626(P2004−225626)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(504270046)ブロードワイヤレス株式会社 (7)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【出願人】(502003390)株式会社ウイル (9)
【Fターム(参考)】