送信信号と受信信号とを分離しかつ妨害放射を抑制する装置を持つレーダシステム及び方法
特に物体の相対速度を求めかつ検出感度を高めるため、送信アンテナ毎に1つの測定サイクルにおいて、それぞれ同じ又は類似な個別信号の1つ又は複数の場合によっては交互配置される列が放射され、これらの個別信号の時間間隔が、平均して、最大に関心のある距離に対応する受信される信号の伝搬時間より大きいように構成されている、周辺検出用レーダシステム。複数の受信手段が設けられ、これらの受信手段において、物体における反射により受信される信号が高周波信号と混合され、それにより個別信号の列を表す低周波受信信号が生じ、順次に続く低周波受信信号にわたって、個別送信信号及び/又は混合のために使用される高周波信号及び/又は低周波個別信号自体の位相位置が変化されることによって、個別受信信号の位相位置が変化される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車における運転者援助システムに使用するためのレーダシステムに関する。レーダシステムは、送信信号と受信信号とを分離しかつ妨害放射を抑制するための本発明による装置及び方法を持っている。
【背景技術】
【0002】
自動車は、運転者援助システムを備えるようになっており、このシステムはセンサシステムにより周辺を検出し、こうして確認される交通状況から車両の自動的な反応を誘導し、かつ/又は運転者に指図又は警告することができる。その際快適機能と安全機能とが区別される。
【0003】
快適機能として、現在の開発FSRA(フルスピードレンジアダプティブクルーズコントロール)が重要な役割を果たす。交通状況が許す限り、自己速度が運転者により規定される希望速度に制御され、そうでない場合自己速度が交通状況に合わされる。
【0004】
快適さを高めるほかに、将来は安全機能がますます大きい役割を果たし、非常状況において制動距離の減少が重要な役割を果たすであろう。適当な運転者援助機能の選択幅は、制動遅れ時間を減少するため制動機の自動的な前充填から、改善された制動援助(BAS+)を経て自動的な非常制動まで及んでいる。
【0005】
上述した種類の運転者援助システムのために、現在圧倒的にレーダセンサが使用されている。レーダセンサは悪い天候条件でも確実に動作し、物体からの間隔のほかに、ドップラ効果を介してその相対速度も直接測定することができる。
【0006】
しかしこれらのレーダセンサは現在まだ高価であり、その検出性能は完全でなく、そのことが特に安全機能のためには非常に重大である。即ち理由として、典型的に次のことがあげられる。
物体の側方位置を正確に求めるために、多くの異なる方向における放射ローブが必要である。これは、センサに統合されて並列に又はほぼ並列に動作せしめられる複数のなるべく平面構造の送信アンテナ及び/又は受信アンテナにより、ますます実現される。アンテナが互いに影響を及ぼさないようにするため、これらのアンテナは非常によく分離又は絶縁されねばならないが、これは今まで費用のかかる回路技術によっても満足できるように達せられない。例として24GHz−UWBセンサ(UWB=超広帯域)があげられる。即ち非常に限定された周波数許容のため、非常に僅かな送信出力しか放射されず、それにより本来の送信アンテナを介して不十分な絶縁により意図せずに放射される電力が、送信アンテナを介して放射される電力と同じ大きさとなり、それが物体の方位角評価の際問題を生じ、また個々の角度範囲における感度低下を生じる可能性がある。
複数のアンテナを使用する場合、複数の並列な受信バスが設けられ、それがアナログ及びディジタル信号処理のための高い費用を生じる。
別のシステムにより行われる妨害結合又は放射は、レーダ周波数範囲又は電子評価装置の低周波部分が動作する範囲において、不正確な検出従って誤反応に至る可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、自動車のために妨害放射を抑制するレーダシステム及び方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、基本的に請求項1〜14に記載のレーダシステムにより解決される。
【0009】
特に妨害放射の抑制は、送信信号と受信信号との分離又は絶縁を意味し、それにより物体の側方位置の正確な算定及び感度低下の回避が行われる。更に妨害入射の抑制も含まれている。
【0010】
本発明の利点は、特に高周波電子装置及びアナログ及びディジタル信号処理の部品に対する少ない要求、従ってレーダシステムの少ない費用、及び改善される検出品質から生じる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】 レーダシステムの第1実施例を示す。
【図2】 いわゆる周波数ランプから成る送信信号及び受信信号の周波数を示す。
【図3】 一次DFT(左)の前及び一次DFT(右)の前に2つの物体が存在する場合検出される信号を示す。
【図4】 ちょうど物体が存在する距離ゲート4にあって周波数ランプを越えて回転する複素数スペクトル値を示す。
【図5】 二次DFT後の二次元複素数スペクトルを示す。
【図6】 4つの受信アンテナにおける異なる位相位置及びその方位角との関係を示す。
【図7】 三次元DFTの前のデータ(左)及びその後の三次元複素数スペクトル(右)を示す。
【図8】 強い500kHz結合のため、偶然反転あり及びなしの関係する距離ゲート6にある受信チャネルのドップラスペクトルを示す。
【図9】 受信アンテナを介して意図せずに放射される電力付き及びなしの送信アンテナ線図を示す。
【図10】 レーダシステムの第2実施例を示す。
【図11】 レーダシステムの第3実施例を示す。
【図12】 レーダシステムの第4実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
さてレーダシステムに実施例により本発明を説明する。実施例で説明される本発明及び示される数値例は、24GHzレーダに関する。しかしこれは本発明を24GHzに限定するのではなく、本発明は高周波レーダシステムに対して保護を請求しており、当業者は他の周波数例えば77GHzでも実施することができる。
【0013】
図1による実施例
図1に大まかに示されている実施例が考察される。レーダシステムは、送信信号を放射する1つの送信アンテナ1.1と、物体において反射される送信信号を同時に受信する複数の受信アンテナ1.2とを持っている。
【0014】
以下4つの受信アンテナを持つ実施例が示されるが、任意の複数の受信アンテナと少なくとも1つの受信アンテナによっても直ちに実施可能である。
【0015】
すべてのアンテナ(送信アンテナ及び受信アンテナ)は、高さ及び方位において同じ放射形状を持っている。4つの受信アンテナは1つの面内にあり、それぞれ同じ側方間隔即ち水平間隔dを持っている。
【0016】
送信信号は、制御電圧VSteuerを介して周波数を変化できる24GHz範囲の高周波発振器1.3から得られる。制御電圧は制御手段1.9において発生される。アンテナにより受信される信号は、実数値ミキサ1.5において、同様に発振器1.3の信号と、低周波範囲へ低減混合される。このため発振器信号の位相は、切換え可能なインバータ1.4を介して180°だけ回転されるか、又は不変にされる(切換え可能なインバータの制御は制御手段1.9から行われる)。それから受信信号は、図示した伝達関数を持つ帯域フィルタ1.6、増幅器1.7及びA/D変換器1.8を通り、続いてディジタル信号処理装置1.10において更に処理される。
【0017】
物体からの距離を測定できるようにするため、図2に示すように、高周波発振器従って送信信号の周波数が非常に速く直線的に変化される(例えば16μsに187.5MHzだけ)。その際周波数ランプが論じられる。周波数ランプは周期的に反復され(例えばすべて20μs)。従ってこの数値例では、全部で1024個の周波数ランプがある。
【0018】
個々の物体の受信信号は、混合後従ってA/D変換器においても、各周波数ランプ及び4つの受信チャネルの各々にたいしても正弦波振動である。これは図2により次のように説明することができる。即ち物体がレーダシステムに対して半径方向相対速度0を持っていると、送信される信号と受信される信号との周波数差Δfは一定であり、信号伝搬時間Δtに比例し、従って半径方向距離Δr=c・Δt/2に比例する。ここでcは光の速度であり、係数1/2は、伝搬時間Δtが波の往復に関するものであることを考慮している。周波数差Δfは、例えば上記の設計ではΔf=2r/c・187.5MHz/16μs=r・78.125kHz/mになる。受信される信号は、各受信チャネルにおいて発振周波数従って送信周波数と混合されるので、混合後周波数Δfを持つそれぞれ1つの正弦波状振動が生じる。この周波数はMHz範囲にあり、(半径方向)相対速度が消失しない場合更に2倍周波数だけ偏移せしめられるが、この2倍周波数はkHz範囲にのみあり、従って物体距離により周波数成分に対して近似的に無視することができる。複数の物体が存在すると、受信信号は異なる周波数の複数の正弦波状振動の重畳である。
【0019】
各周波数ランプの期間中にすべて4つの受信チャネルにおいて、A/D変換器の受信信号が、例えば512回それぞれ例えば25nsの間隔で(従って40MHzで)走査される(図2参照)。図2からわかるように、信号走査は、物体からの受信信号が関心のある距離範囲に到達する時間範囲においてのみ意味がある。従ってランプ開始後、少なくとも最大に関心のある距離に相当する伝搬時間を待たねばならない(200mの最大距離では、これが1.25μsに相当する)。
【0020】
それから各周波数ランプ及び各受信チャネルの例えば512個の走査値にわたって、高速フーリエ変換(FFT)の形で離散フーリエ変換(DFT)が行われる。それにより異なる周波数を生じる異なる距離にある物体を分離することができる(図3参照。左は、2つの物体が存在する場合DFT前の信号、右はDFT後の信号。ここでkは1024個の周波数ランプにわたる制御変数、mは4つの受信チャネルRXmにわたる制御変数である)。DFTの離散した周波数支持個所jの各々は距離rに相当し、従ってパルスレーダと同じように距離ゲートと称することもできる。即ち上記の解釈において、距離ゲートは2つの間隔従って1mの幅を持っている(r.78.125kHz/m=1/(12.8μs)から生じる)。物体が存在する距離ゲートにおいて、DFTに電力ピークが現れる。走査される受信信号は実数値であり、アナログ帯域フィルタ1.5の上部移行範囲は例えば8.764MHzの周波数帯域幅を持っている(112個の周波支持個所の範囲に相当する)ので、この数値例では512個の離散した周波数支持個所のうち200個のみが処理可能である。注意すべきことは、フィルタの任意の狭さの移行範囲は実現不可能なことである。フィルタ1.5は小さい周波数を減衰し、従って増幅器1.6及びA/D変換器1.7の過負荷を回避するため、近い物体の受信信号を減衰する(アンテナにおいて受信される信号は、物体間隔の減少と共に強くなる)。
【0021】
例えば1024個の周波数ランプ(k=0.1,・・・,1023)にわたって、各受信チャネルm(m=0,1,2,3)において各距離ゲートj(従って例えば200個の考察される周波数支持個所の各々)のために、複素数スペクトル値e(j、k、m)が生じる。距離ゲートに相当する距離にちょうど1つの物体があると、複素数スペクトル値が、この距離ゲートjにおいて例えば1024個の周波数ランプにわたって2倍周波数で回転する。なぜならば、周波数ランプから周波数ランプへ、(mm範囲又はそれ以下にある)距離従って対応する振動の位相位置が、一様に変化するからである。例えば図4に示される周波数ランプ当たり45°の位相変化が、物体のλ/(8.2)=0.78mmの距離変化に相当し、この数値例における波長はλ=c/24.15GHz=12.4mmであり、分母にある係数2は波の往復運動を考慮し、それからvrel=0.78mm/20μs=140km/hの相対速度が生じる。各受信チャネル及び各距離ゲートのために、例えば1024個の周波数ランプに生じる複素数スペクトル値について、二次DFTが計算されることによって、同じ距離ゲートにおいて異なる相対速度を持つ複数の物体が分離される。この二次DFTの各離散周波数支持個所lは、1組のドップラ周波数に相当する。ドップラ周波数の走査のため、その走査周波数の未知の整数倍まで、この周波数支持個所を求めることができ、それにより物体の1組の相対速度vrelを求めることができるので、二次DFTの離散周波数支持個所を相対速度ゲートと称することができる。ここで考察される説明では、可能な相対速度の組から、道路交通のために有意義又は可能な1つの相対速度のみが存在する(図5参照)。二次DFTは相対速度を求めるために役立つだけでなく、その積分により検出感度も高め、1024個の周波数ランプではほぼ10・log10(1024)=30dBだけ高める。
【0022】
相対速度のためのこの二次DFTにより、各受信チャネルに対して二次元複素数スペクトルが生じ、個々の素子は距離−相対速度ゲートと称することができ、物体によりそれぞれ対応する距離−相対速度ゲートにおける電力ピークが現れる(図5参照)。
【0023】
最後に4つの受信チャネルからの情報が、(4つの受信アンテナに)融合される。送信アンテナから発して個々の物体で反射される波は、方位角αに関係して異なる位相位置φ(m)で4つの受信アンテナm,m=0,1,2,3に達する。なぜならば、物体と受信アンテナとの距離は少し相違しているからである。即ち受信アンテナの水平な等距離のため、位相差が4つの受信アンテナにわたって直線的に増大又は減少しているからである(図6参照)。場合によっては一定で従って補償可能な位相ずれとは別に、これらの位相差は二次DFT後まで維持されるので、4つの受信チャネルを介して各距離−相対速度ゲートにおいてディジタルビーム形成を行うことができる。そのため直線的に増大する位相を持つ1組の複素係数と乗算される4つの受信チャネルの複素数値にわたって和が形成される。即ちそれぞれの係数の組の直線的位相変化に関係して、異なる放射方向を持つ放射ローブが生じる。これらの放射ローブの放射幅は、個々の受信アンテナの放射ローブより著しく小さい。上述した加算は例えば8点DFTにより行われ、その際4つの受信チャネルの4つの値は4つの零により補足される。即ちこのDFTの離散周波数値は異なる方位角に相当し、従って角度ゲートn(例えばn=0.1,・・・7)と称することができる。
【0024】
方位角のためこの三次DFTによれば、三次元複素数スペクトルが生じ、個々の素子は距離−相対速度−角度−ゲートと称することができ、物体によりそれぞれ対応する距離−相対速度−角度−ゲートに出力ピークが現れる。これを図7に示す。その左側に三次元DFTの前のデータが示され、右側にその後のデータが示されている。従って出力ピークを求めることにより、物体及びその程度即ち距離、相対速度(万一のあいまいさを別として)、及び方位角を求めることができる。出力ピークはDFT窓形成により隣接する素子にもレベルを持つので、このレベルに関係して補間により、ゲート幅より著しく正確に物体寸法を求めることができる。注意すべきことは、一方では十分な物体分離を行うため出力ピークが幅広くなりすぎないように、他方では強く反射する物体の存在する所で弱く反射する物体も確認できるようにするため、窓スペクトルのサイドローブも大きくなりすぎないように、3つのDFTの窓関数が選ばれることである。出力ピークの高さから、第4の物体寸法としてその反射断面も評価することができ、この反射断面は、物体がレーダ波をどんな強さで反射するかを示す。物体の上述した検出及び対応する物体寸法の算定は測定サイクルを表し、周辺の瞬間画像を供給する。これは例えばすべて30msで周期的に反復される。
【0025】
実際のレーダシステムでは、レーダ周波数範囲(例えば24GHz)又は電子評価装置の低周波部分が動作又は感応する(例えば50Hz〜1GHzの範囲)範囲の妨害結合又は妨害入射が起こる。これらの妨害は、他のシステム又はレーダシステム自体により生じることがある。その例は次の通りである。
同じ高周波範囲で動作するレーダシステムの入射。これらの入社は受信アンテナを越えて入り込む。
低周波範囲にある他のシステム(例えば車両外の無線システム又は車両内の他のシステム)により行われる入射又は結合であって、理想的に遮蔽されないハウジング又は車両側導線を介して入り込む。
レーダシステム自体により生じる妨害信号(例えば電圧調整器のクロック)であって、低周波受信チャネルへ結合する。
【0026】
特別な手段がないと、これらすべての妨害により、実際には全く存在しない物体が検出され、それにより運転者援助システムが誤って反応することがある。例えば電圧調整器の500kHzクロックが4つの受信チャネルすべてに一様に結合すると、(三次DFT後)三次元スペクトルに電力ピークが生じて、6mの距離、0°の方位角及び0km/hの相対速度で物体検出を行う。レーダシステムによりFSRA(フルスピードレンジレーダ)機能が行われると、これは次のことを意味する。即ち非常に小さい間隔で先行する同じ速度の車両が誤って永続的に検出され、十分大きい間隔を得るため自己車両が先行車両に合わせて制動される。しかしこの幽霊物体の間隔及び相対速度は常に不変なので(自己車両とほぼ同じ強さで制動される)、それがほとんど停止するまで制動され、これは当然容認されず、安全の面でも危険になる。
【0027】
この問題を回避するため、混合のために使用される発振器信号の位相が、切換え可能なインバータ1.4によりランプからランプへ偶然に180°だけ回転されるか、又は不変のままにされる。即ち各ランプ内で、切換え可能なインバータの選択された設定は不変である。それにより受信信号の位相は混合後同じように変化し、従って180°だけ回転されるか又は回転されない。反転が行われた周波数ランプに対して、これは後で例えば一次DFT後に再び修正されねばならない。そのためそれぞれの値が−1を乗算される(180°の逆回転に相当する)。それから物体における反射の結果生じる有効信号が、3つのDFTを経て再びコヒーレントに積分される。即ち適当な距離−相対速度−角度ゲートにおける電力ピークを持つ偶然の反転なしと同じ三次元スペクトルが生じる。
【0028】
例えば電圧調整器の500kHzクロックによる低周波受信チャネルへの結合は、位相変化の修正前にランプにわたってコヒーレントであるが、修正後ランプからランプへ−1又は+1との偶然乗算によりコヒーレントでなくなるので、二次及び三次のDFTにおいて行われる積分によって、ランプを介してもはや電力ピークには至らず、その電力はすべての離散周波数支持個所へ偶然に分配され、従って白色雑音を表す。即ちこの雑音は、三次元スペクトルで、6mに対する距離ゲートのすべての素子に、またそれぞれ1−2の先行距離ゲート及び後続距離ゲートにおいて弱められた形で現れ、他の距離ゲートの素子には高められた雑音は現れない。なぜならば、各ランプ内の結合にコヒーレントに作用し、こうして一次DFTによりまだ雑音に変換されないからである。結合による雑音は、上述した構成例(全部で1024個のランプ)では、位相変化なしで発生するであろう出力ピークより約10・log10(1024)≒30dB下にある。これが図8において強い500kHz結合について示されている。この雑音が(図8に示すように)システム雑音より上にあると、レーダシステムの感度低下が生じるであろう。しかし回路の適当なレイアルトにより、ものように強い過結合を回避することができる。
【0029】
別の上述した妨害結合又は妨害入射に対して同じ原理が当てはまる。即ち偶然反転により、妨害結合は少数の距離ゲートにおいて場合によっては高められる雑音のみを生じる(それにより発生される雑音がシステム雑音より上にある限り)けれども、幽霊物体を生じない。
【0030】
図10による実施例2
図1による実施例では、今まで電力が送信アンテナ1.1のみを介してのみ放射される理想的な場合が考察された。しかし実際には受信アンテナ1.2を介しても電力が放射される。なぜならば、ミキサ1.5は理想的には絶縁せず、従って発振器から発するミキサの入力電力の一部が、ミキサを通って受信アンテナへ漏れ、そこで放射されるからである。
【0031】
いわゆるISM帯域で動作する24GHz狭帯域レーダについては、発信器から送信アンテナへ与えられる電力は、少なくともミキサへ与えられる電力と同じ大きさである。ミキサは典型的に約20dBの絶縁を持っているので、受信アンテナを介して放射される電力は、(送信アンテナからの)本来の送信電力に比べて無視できる。24GH帯域レーダいわゆるUWBレーダに対して、非常に僅かな送信電力の放射しか許さない非常に限定的な周波数許容が当てはまり、それにより本来の受信アンテナを介して不十分な絶縁により望ましくないように放射される電力が、送信アンテナを介して放射される電力と似た大きさである。図1による装置では、これにより、上述した両方の電力成分を考慮する合成アンテナ線図において、強い落込みが生じ(図9参照)、それにより特定の方位においてレーダの感度が非常に低下するので、この方位角では、少なくとも弱く反射する物体はもはや検出されず、従って見落とされる。
【0032】
さて次の実施例は、複数の送信アンテナと少なくとも1つの受信アンテナを持つレーダシステムのために容易に実施可能であり、1つの受信アンテナ及び4つの送信アンテナを持つ構成について説明される。
【0033】
従って今や図10に示されるレーダシステムが考察される。このレーダシステムは、最初のレーダシステム(実施例1)とは、大体において次の点で相違している。即ち(4つの代わりに)ただ1つの受信アンテナしかないが、その代わりに1つの面にある(1つの代わりに)4つの等間隔の送信アンテナがある。4つの送信アンテナはマルチプレクサ10.11を介して順次作動せしめられる。即ち各ランプにおいて、それぞれ1つのアンテナのみが送信し、その際ランプからランプへそれぞれ次のアンテナへ切換えが行われる。全部で同じ数のランプ(1024個)では、各送信アンテナで256個のランプが放射される。信号評価は、更に上述のものに対して2つの小さい相違を持つ三次元DFTから成っている。即ち一方では、二次DFTは長さ256しか持っていない。他方では、物体の消滅しない相対速度は、4つの順次に駆動される送信アンテナからの受信信号の直線的位相ずれを生じる。この直線的位相ずれが物体の方位角による直線的位相ずれに重畳される。相対速度が二次DFTから求められるので、それにより生じる位相ずれは、例えば三次DFTの前又は後でも除去される。
【0034】
図10によるレーダシステムは、ランプにわたる位相変化なしのUWB運転の際送信アンテナ線図において受信アンテナを介して意に反して放射される電力のため強い落込みが生じる、という欠点を更に持っている。受信アンテナを介して放射されるこの電力が角度の形成を著しく誤らせ、従って物体の方位角の誤った測定をひき起こす、という問題も生じる。その理由は次の通りである。即ち送信アンテナから放射されて物体で反射される電力は、物体の方位角に関係して、受信される信号に、4つの送信アンテナにわたる直線的位相ずれを生じる(これは図6と同じように説明される)。受信アンテナにより放射されて物体で反射される電力は、受信信号において、使用される送信アンテナとは無関係な位相を持っている。従って受信信号は、送信アンテナにわたる位相ずれを持つ成分と一定の成分から成っているので、和はもはや送信アンテナにわたる直線位相ずれを持たず、従って直線的位相ずれの仮定に基く方位角形成は誤差を生じる。
【0035】
上述した両方の問題(送信アンテナ線図における落込み)は、混合のために使用される発振器信号の位相を、切換え可能なインバータ10.4によりランプからランプへ180°だけ回転させるか又は不変にすることによって、再び回避することができる。即ち各ランプ内で、インバータの選択される設定は一定のままである。ランプにわたって見ると、それにより受信アンテナを介して放射される電力は互いに関連せしめられず、従って送信アンテナを介して放射される電力に対してコヒーレントでなくなる。受信アンテナを介して放射されて物体で反射される電力は、受信信号において対応する距離ゲートにおいて再び小さい雑音としてのみ作用する。この雑音は、位相変化なしで(従って1024個のランプにわたる二次及び三次DFTによりコヒーレントな積分の際)生じる電力より、約10・log10(1024)≒30dB下にある。
【0036】
図11による実施例3
さて次の実施例は、複数の送信アンテナ及び少なくとも1つの受信アンテナを持つレーダシステムのために容易に実施可能であり、1つの受信アンテナ及び2つの送信アンテナを持つ構成について説明される。
【0037】
さて図11に示されるレーダシステムを考察する。このレーダシステムは実施例2によるレーダシステムとは次の点で相違している。
(4つの送信アンテナの代わりに)2つの送信アンテナしか存在しない。
両方の送信アンテナは同時に作動せしめられ、従って1024個のランプの各々が同時に両方のアンテナで送信される(それによりマルチプレクサはない)。
切換え可能なインバータ11.4は、(発振器とミキサとの間ではなく)両方の送信アンテナの1つの前に設けられる。
【0038】
切換え可能なインバータ11.4により、第1の送信アンテナの信号の位相は、ランプからランプへ交互に0°及び180°だけ変化される。従って1つ置きのランプで信号が反転され、その間では不変である。即ち第2の送信アンテナの信号は、位相を変化されない。第1の送信アンテナの信号の交代する位相により、この送信アンテナによる受信信号は、ランプにわたって半分のランプ繰返し周波数(従って25kHz)で変調される。それにより受信信号は二次DFT後そのドップラ周波数を25kHzだけ移相されている。第2の送信アンテナによる受信信号は、ドップラにおいて移相されない。相対速度が例えば5kHzの2倍周波数に相当する物体に対して、二次DFT後に第2の送信アンテナからの受信信号について、5kHzにおいて電力ピークが生じ、第1の送信アンテナからの受信信号について、30kHzにおいて電力ピークが生じる。それにより二次DFT後に第1及び第2の送信アンテナから生じる成分が、周波数について分離される。第1の送信アンテナの成分を25kHzだけ戻し、続いて角度成形のため三次DFTを行うことができる(ここでは例えば長さ2のDFT)。
【0039】
決定された交代する位相変化の代わりに、それを偶然にも行うこともできるであろう。しかしその場合二次DFTを2回、即ち1回は位相変化の修正付きで、また1回は位相変化の修正なしで求めねばならないだろう。位相修正を考慮したDFTでは、第1の送信アンテナから生じる受信信号は電力ピークをもたらし、第2の送信アンテナから生じる受信信号は約30dBその下にある雑音を発生するであろう。位相修正を考慮しないDFTでは、事情がちょうど逆にされるであろう。それにより両方の成分の分離も可能になるであろう。
【0040】
図12による実施例4
さて次の実施例は、少なくとも1つの送信アンテナ及び複数の受信アンテナを持つレーダシステムのために容易に実施可能であり、1つの送信アンテナ及び2つの受信アンテナを持つ構成について説明する。
【0041】
最後に、図12に示す簡単なレーダシステムを考察する。実施例2による先のレーダシステムとは、原理的に次の点で相違している。
(2つの代わりに)1つの送信アンテナのみがあり、その代わりに(1つの代わりに)2つの受信アンテナがある。
両方の受信アンテナの同時に受信される信号は、ミキサの後で加算器12.11において加算され、その際まず第1の受信アンテナに属する信号が、切換え可能なインバータ12.4を通過する(加算により続いて1つの受信信号のみが必要である)。
【0042】
切換え可能なインバータ12.4により、今や第1の受信アンテナからのミキサ出力信号の位相が、ランプからランプへ交互に0°及び180°変化される。先の実施例3と同じように、二次DFT後第1の受信アンテナから生じる信号成分が、二重周波数でランプ繰返し周波数の半分だけ移相されており、従って第2の受信アンテナの移相されない信号成分から分離可能である。
【0043】
最後の注
切換え可能なインバータの位相位置の0°と180°との間の偶然の変化は、長さ31のフィードバックされる2進シフトレジスタにより行われる。即ちシフトレジスタの出力が1に等しいと、反転が行われ、0に対しては反転されない。それにより両方の状態は平均して同じ頻度で現れ、順次に続く状態(従ってランプからランプへのそのつどの位相変化)は非常によい近似で相関されないので、位相変化により生じる雑音は、三次元スペクトルにおいて非常によい近似で白色である。シフトレジスタは完全に偶然のプロセスを示さないので(例えば出力例は2Lの周期を持ち、ここでLはシフトレジスタの長さである)、もっと正確には擬似プロセスでもある。
【0044】
実際の物体はしばしば広がっており、物体の各部分がレーダシステムに対して同じ相対速度を持っているのではない(特に近接範囲における動的状況において)。これにより、1つの実際の物体から、物体の異なる部分に属する距離、方位角及び相対速度の異なる程度の複数の検出が生じる可能性がある。従ってここで物体を話題にする場合、実際の物体の部分も問題である。
【0045】
最後に述べるべきことは、上述した考察がもちろん他のシステム構築例えば2つの送信アンテナ及び4つの送信アンテナを持つシステムにも適用されることである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車における運転者援助システムに使用するためのレーダシステムに関する。レーダシステムは、送信信号と受信信号とを分離しかつ妨害放射を抑制するための本発明による装置及び方法を持っている。
【背景技術】
【0002】
自動車は、運転者援助システムを備えるようになっており、このシステムはセンサシステムにより周辺を検出し、こうして確認される交通状況から車両の自動的な反応を誘導し、かつ/又は運転者に指図又は警告することができる。その際快適機能と安全機能とが区別される。
【0003】
快適機能として、現在の開発FSRA(フルスピードレンジアダプティブクルーズコントロール)が重要な役割を果たす。交通状況が許す限り、自己速度が運転者により規定される希望速度に制御され、そうでない場合自己速度が交通状況に合わされる。
【0004】
快適さを高めるほかに、将来は安全機能がますます大きい役割を果たし、非常状況において制動距離の減少が重要な役割を果たすであろう。適当な運転者援助機能の選択幅は、制動遅れ時間を減少するため制動機の自動的な前充填から、改善された制動援助(BAS+)を経て自動的な非常制動まで及んでいる。
【0005】
上述した種類の運転者援助システムのために、現在圧倒的にレーダセンサが使用されている。レーダセンサは悪い天候条件でも確実に動作し、物体からの間隔のほかに、ドップラ効果を介してその相対速度も直接測定することができる。
【0006】
しかしこれらのレーダセンサは現在まだ高価であり、その検出性能は完全でなく、そのことが特に安全機能のためには非常に重大である。即ち理由として、典型的に次のことがあげられる。
物体の側方位置を正確に求めるために、多くの異なる方向における放射ローブが必要である。これは、センサに統合されて並列に又はほぼ並列に動作せしめられる複数のなるべく平面構造の送信アンテナ及び/又は受信アンテナにより、ますます実現される。アンテナが互いに影響を及ぼさないようにするため、これらのアンテナは非常によく分離又は絶縁されねばならないが、これは今まで費用のかかる回路技術によっても満足できるように達せられない。例として24GHz−UWBセンサ(UWB=超広帯域)があげられる。即ち非常に限定された周波数許容のため、非常に僅かな送信出力しか放射されず、それにより本来の送信アンテナを介して不十分な絶縁により意図せずに放射される電力が、送信アンテナを介して放射される電力と同じ大きさとなり、それが物体の方位角評価の際問題を生じ、また個々の角度範囲における感度低下を生じる可能性がある。
複数のアンテナを使用する場合、複数の並列な受信バスが設けられ、それがアナログ及びディジタル信号処理のための高い費用を生じる。
別のシステムにより行われる妨害結合又は放射は、レーダ周波数範囲又は電子評価装置の低周波部分が動作する範囲において、不正確な検出従って誤反応に至る可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、自動車のために妨害放射を抑制するレーダシステム及び方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、基本的に請求項1〜14に記載のレーダシステムにより解決される。
【0009】
特に妨害放射の抑制は、送信信号と受信信号との分離又は絶縁を意味し、それにより物体の側方位置の正確な算定及び感度低下の回避が行われる。更に妨害入射の抑制も含まれている。
【0010】
本発明の利点は、特に高周波電子装置及びアナログ及びディジタル信号処理の部品に対する少ない要求、従ってレーダシステムの少ない費用、及び改善される検出品質から生じる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】 レーダシステムの第1実施例を示す。
【図2】 いわゆる周波数ランプから成る送信信号及び受信信号の周波数を示す。
【図3】 一次DFT(左)の前及び一次DFT(右)の前に2つの物体が存在する場合検出される信号を示す。
【図4】 ちょうど物体が存在する距離ゲート4にあって周波数ランプを越えて回転する複素数スペクトル値を示す。
【図5】 二次DFT後の二次元複素数スペクトルを示す。
【図6】 4つの受信アンテナにおける異なる位相位置及びその方位角との関係を示す。
【図7】 三次元DFTの前のデータ(左)及びその後の三次元複素数スペクトル(右)を示す。
【図8】 強い500kHz結合のため、偶然反転あり及びなしの関係する距離ゲート6にある受信チャネルのドップラスペクトルを示す。
【図9】 受信アンテナを介して意図せずに放射される電力付き及びなしの送信アンテナ線図を示す。
【図10】 レーダシステムの第2実施例を示す。
【図11】 レーダシステムの第3実施例を示す。
【図12】 レーダシステムの第4実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
さてレーダシステムに実施例により本発明を説明する。実施例で説明される本発明及び示される数値例は、24GHzレーダに関する。しかしこれは本発明を24GHzに限定するのではなく、本発明は高周波レーダシステムに対して保護を請求しており、当業者は他の周波数例えば77GHzでも実施することができる。
【0013】
図1による実施例
図1に大まかに示されている実施例が考察される。レーダシステムは、送信信号を放射する1つの送信アンテナ1.1と、物体において反射される送信信号を同時に受信する複数の受信アンテナ1.2とを持っている。
【0014】
以下4つの受信アンテナを持つ実施例が示されるが、任意の複数の受信アンテナと少なくとも1つの受信アンテナによっても直ちに実施可能である。
【0015】
すべてのアンテナ(送信アンテナ及び受信アンテナ)は、高さ及び方位において同じ放射形状を持っている。4つの受信アンテナは1つの面内にあり、それぞれ同じ側方間隔即ち水平間隔dを持っている。
【0016】
送信信号は、制御電圧VSteuerを介して周波数を変化できる24GHz範囲の高周波発振器1.3から得られる。制御電圧は制御手段1.9において発生される。アンテナにより受信される信号は、実数値ミキサ1.5において、同様に発振器1.3の信号と、低周波範囲へ低減混合される。このため発振器信号の位相は、切換え可能なインバータ1.4を介して180°だけ回転されるか、又は不変にされる(切換え可能なインバータの制御は制御手段1.9から行われる)。それから受信信号は、図示した伝達関数を持つ帯域フィルタ1.6、増幅器1.7及びA/D変換器1.8を通り、続いてディジタル信号処理装置1.10において更に処理される。
【0017】
物体からの距離を測定できるようにするため、図2に示すように、高周波発振器従って送信信号の周波数が非常に速く直線的に変化される(例えば16μsに187.5MHzだけ)。その際周波数ランプが論じられる。周波数ランプは周期的に反復され(例えばすべて20μs)。従ってこの数値例では、全部で1024個の周波数ランプがある。
【0018】
個々の物体の受信信号は、混合後従ってA/D変換器においても、各周波数ランプ及び4つの受信チャネルの各々にたいしても正弦波振動である。これは図2により次のように説明することができる。即ち物体がレーダシステムに対して半径方向相対速度0を持っていると、送信される信号と受信される信号との周波数差Δfは一定であり、信号伝搬時間Δtに比例し、従って半径方向距離Δr=c・Δt/2に比例する。ここでcは光の速度であり、係数1/2は、伝搬時間Δtが波の往復に関するものであることを考慮している。周波数差Δfは、例えば上記の設計ではΔf=2r/c・187.5MHz/16μs=r・78.125kHz/mになる。受信される信号は、各受信チャネルにおいて発振周波数従って送信周波数と混合されるので、混合後周波数Δfを持つそれぞれ1つの正弦波状振動が生じる。この周波数はMHz範囲にあり、(半径方向)相対速度が消失しない場合更に2倍周波数だけ偏移せしめられるが、この2倍周波数はkHz範囲にのみあり、従って物体距離により周波数成分に対して近似的に無視することができる。複数の物体が存在すると、受信信号は異なる周波数の複数の正弦波状振動の重畳である。
【0019】
各周波数ランプの期間中にすべて4つの受信チャネルにおいて、A/D変換器の受信信号が、例えば512回それぞれ例えば25nsの間隔で(従って40MHzで)走査される(図2参照)。図2からわかるように、信号走査は、物体からの受信信号が関心のある距離範囲に到達する時間範囲においてのみ意味がある。従ってランプ開始後、少なくとも最大に関心のある距離に相当する伝搬時間を待たねばならない(200mの最大距離では、これが1.25μsに相当する)。
【0020】
それから各周波数ランプ及び各受信チャネルの例えば512個の走査値にわたって、高速フーリエ変換(FFT)の形で離散フーリエ変換(DFT)が行われる。それにより異なる周波数を生じる異なる距離にある物体を分離することができる(図3参照。左は、2つの物体が存在する場合DFT前の信号、右はDFT後の信号。ここでkは1024個の周波数ランプにわたる制御変数、mは4つの受信チャネルRXmにわたる制御変数である)。DFTの離散した周波数支持個所jの各々は距離rに相当し、従ってパルスレーダと同じように距離ゲートと称することもできる。即ち上記の解釈において、距離ゲートは2つの間隔従って1mの幅を持っている(r.78.125kHz/m=1/(12.8μs)から生じる)。物体が存在する距離ゲートにおいて、DFTに電力ピークが現れる。走査される受信信号は実数値であり、アナログ帯域フィルタ1.5の上部移行範囲は例えば8.764MHzの周波数帯域幅を持っている(112個の周波支持個所の範囲に相当する)ので、この数値例では512個の離散した周波数支持個所のうち200個のみが処理可能である。注意すべきことは、フィルタの任意の狭さの移行範囲は実現不可能なことである。フィルタ1.5は小さい周波数を減衰し、従って増幅器1.6及びA/D変換器1.7の過負荷を回避するため、近い物体の受信信号を減衰する(アンテナにおいて受信される信号は、物体間隔の減少と共に強くなる)。
【0021】
例えば1024個の周波数ランプ(k=0.1,・・・,1023)にわたって、各受信チャネルm(m=0,1,2,3)において各距離ゲートj(従って例えば200個の考察される周波数支持個所の各々)のために、複素数スペクトル値e(j、k、m)が生じる。距離ゲートに相当する距離にちょうど1つの物体があると、複素数スペクトル値が、この距離ゲートjにおいて例えば1024個の周波数ランプにわたって2倍周波数で回転する。なぜならば、周波数ランプから周波数ランプへ、(mm範囲又はそれ以下にある)距離従って対応する振動の位相位置が、一様に変化するからである。例えば図4に示される周波数ランプ当たり45°の位相変化が、物体のλ/(8.2)=0.78mmの距離変化に相当し、この数値例における波長はλ=c/24.15GHz=12.4mmであり、分母にある係数2は波の往復運動を考慮し、それからvrel=0.78mm/20μs=140km/hの相対速度が生じる。各受信チャネル及び各距離ゲートのために、例えば1024個の周波数ランプに生じる複素数スペクトル値について、二次DFTが計算されることによって、同じ距離ゲートにおいて異なる相対速度を持つ複数の物体が分離される。この二次DFTの各離散周波数支持個所lは、1組のドップラ周波数に相当する。ドップラ周波数の走査のため、その走査周波数の未知の整数倍まで、この周波数支持個所を求めることができ、それにより物体の1組の相対速度vrelを求めることができるので、二次DFTの離散周波数支持個所を相対速度ゲートと称することができる。ここで考察される説明では、可能な相対速度の組から、道路交通のために有意義又は可能な1つの相対速度のみが存在する(図5参照)。二次DFTは相対速度を求めるために役立つだけでなく、その積分により検出感度も高め、1024個の周波数ランプではほぼ10・log10(1024)=30dBだけ高める。
【0022】
相対速度のためのこの二次DFTにより、各受信チャネルに対して二次元複素数スペクトルが生じ、個々の素子は距離−相対速度ゲートと称することができ、物体によりそれぞれ対応する距離−相対速度ゲートにおける電力ピークが現れる(図5参照)。
【0023】
最後に4つの受信チャネルからの情報が、(4つの受信アンテナに)融合される。送信アンテナから発して個々の物体で反射される波は、方位角αに関係して異なる位相位置φ(m)で4つの受信アンテナm,m=0,1,2,3に達する。なぜならば、物体と受信アンテナとの距離は少し相違しているからである。即ち受信アンテナの水平な等距離のため、位相差が4つの受信アンテナにわたって直線的に増大又は減少しているからである(図6参照)。場合によっては一定で従って補償可能な位相ずれとは別に、これらの位相差は二次DFT後まで維持されるので、4つの受信チャネルを介して各距離−相対速度ゲートにおいてディジタルビーム形成を行うことができる。そのため直線的に増大する位相を持つ1組の複素係数と乗算される4つの受信チャネルの複素数値にわたって和が形成される。即ちそれぞれの係数の組の直線的位相変化に関係して、異なる放射方向を持つ放射ローブが生じる。これらの放射ローブの放射幅は、個々の受信アンテナの放射ローブより著しく小さい。上述した加算は例えば8点DFTにより行われ、その際4つの受信チャネルの4つの値は4つの零により補足される。即ちこのDFTの離散周波数値は異なる方位角に相当し、従って角度ゲートn(例えばn=0.1,・・・7)と称することができる。
【0024】
方位角のためこの三次DFTによれば、三次元複素数スペクトルが生じ、個々の素子は距離−相対速度−角度−ゲートと称することができ、物体によりそれぞれ対応する距離−相対速度−角度−ゲートに出力ピークが現れる。これを図7に示す。その左側に三次元DFTの前のデータが示され、右側にその後のデータが示されている。従って出力ピークを求めることにより、物体及びその程度即ち距離、相対速度(万一のあいまいさを別として)、及び方位角を求めることができる。出力ピークはDFT窓形成により隣接する素子にもレベルを持つので、このレベルに関係して補間により、ゲート幅より著しく正確に物体寸法を求めることができる。注意すべきことは、一方では十分な物体分離を行うため出力ピークが幅広くなりすぎないように、他方では強く反射する物体の存在する所で弱く反射する物体も確認できるようにするため、窓スペクトルのサイドローブも大きくなりすぎないように、3つのDFTの窓関数が選ばれることである。出力ピークの高さから、第4の物体寸法としてその反射断面も評価することができ、この反射断面は、物体がレーダ波をどんな強さで反射するかを示す。物体の上述した検出及び対応する物体寸法の算定は測定サイクルを表し、周辺の瞬間画像を供給する。これは例えばすべて30msで周期的に反復される。
【0025】
実際のレーダシステムでは、レーダ周波数範囲(例えば24GHz)又は電子評価装置の低周波部分が動作又は感応する(例えば50Hz〜1GHzの範囲)範囲の妨害結合又は妨害入射が起こる。これらの妨害は、他のシステム又はレーダシステム自体により生じることがある。その例は次の通りである。
同じ高周波範囲で動作するレーダシステムの入射。これらの入社は受信アンテナを越えて入り込む。
低周波範囲にある他のシステム(例えば車両外の無線システム又は車両内の他のシステム)により行われる入射又は結合であって、理想的に遮蔽されないハウジング又は車両側導線を介して入り込む。
レーダシステム自体により生じる妨害信号(例えば電圧調整器のクロック)であって、低周波受信チャネルへ結合する。
【0026】
特別な手段がないと、これらすべての妨害により、実際には全く存在しない物体が検出され、それにより運転者援助システムが誤って反応することがある。例えば電圧調整器の500kHzクロックが4つの受信チャネルすべてに一様に結合すると、(三次DFT後)三次元スペクトルに電力ピークが生じて、6mの距離、0°の方位角及び0km/hの相対速度で物体検出を行う。レーダシステムによりFSRA(フルスピードレンジレーダ)機能が行われると、これは次のことを意味する。即ち非常に小さい間隔で先行する同じ速度の車両が誤って永続的に検出され、十分大きい間隔を得るため自己車両が先行車両に合わせて制動される。しかしこの幽霊物体の間隔及び相対速度は常に不変なので(自己車両とほぼ同じ強さで制動される)、それがほとんど停止するまで制動され、これは当然容認されず、安全の面でも危険になる。
【0027】
この問題を回避するため、混合のために使用される発振器信号の位相が、切換え可能なインバータ1.4によりランプからランプへ偶然に180°だけ回転されるか、又は不変のままにされる。即ち各ランプ内で、切換え可能なインバータの選択された設定は不変である。それにより受信信号の位相は混合後同じように変化し、従って180°だけ回転されるか又は回転されない。反転が行われた周波数ランプに対して、これは後で例えば一次DFT後に再び修正されねばならない。そのためそれぞれの値が−1を乗算される(180°の逆回転に相当する)。それから物体における反射の結果生じる有効信号が、3つのDFTを経て再びコヒーレントに積分される。即ち適当な距離−相対速度−角度ゲートにおける電力ピークを持つ偶然の反転なしと同じ三次元スペクトルが生じる。
【0028】
例えば電圧調整器の500kHzクロックによる低周波受信チャネルへの結合は、位相変化の修正前にランプにわたってコヒーレントであるが、修正後ランプからランプへ−1又は+1との偶然乗算によりコヒーレントでなくなるので、二次及び三次のDFTにおいて行われる積分によって、ランプを介してもはや電力ピークには至らず、その電力はすべての離散周波数支持個所へ偶然に分配され、従って白色雑音を表す。即ちこの雑音は、三次元スペクトルで、6mに対する距離ゲートのすべての素子に、またそれぞれ1−2の先行距離ゲート及び後続距離ゲートにおいて弱められた形で現れ、他の距離ゲートの素子には高められた雑音は現れない。なぜならば、各ランプ内の結合にコヒーレントに作用し、こうして一次DFTによりまだ雑音に変換されないからである。結合による雑音は、上述した構成例(全部で1024個のランプ)では、位相変化なしで発生するであろう出力ピークより約10・log10(1024)≒30dB下にある。これが図8において強い500kHz結合について示されている。この雑音が(図8に示すように)システム雑音より上にあると、レーダシステムの感度低下が生じるであろう。しかし回路の適当なレイアルトにより、ものように強い過結合を回避することができる。
【0029】
別の上述した妨害結合又は妨害入射に対して同じ原理が当てはまる。即ち偶然反転により、妨害結合は少数の距離ゲートにおいて場合によっては高められる雑音のみを生じる(それにより発生される雑音がシステム雑音より上にある限り)けれども、幽霊物体を生じない。
【0030】
図10による実施例2
図1による実施例では、今まで電力が送信アンテナ1.1のみを介してのみ放射される理想的な場合が考察された。しかし実際には受信アンテナ1.2を介しても電力が放射される。なぜならば、ミキサ1.5は理想的には絶縁せず、従って発振器から発するミキサの入力電力の一部が、ミキサを通って受信アンテナへ漏れ、そこで放射されるからである。
【0031】
いわゆるISM帯域で動作する24GHz狭帯域レーダについては、発信器から送信アンテナへ与えられる電力は、少なくともミキサへ与えられる電力と同じ大きさである。ミキサは典型的に約20dBの絶縁を持っているので、受信アンテナを介して放射される電力は、(送信アンテナからの)本来の送信電力に比べて無視できる。24GH帯域レーダいわゆるUWBレーダに対して、非常に僅かな送信電力の放射しか許さない非常に限定的な周波数許容が当てはまり、それにより本来の受信アンテナを介して不十分な絶縁により望ましくないように放射される電力が、送信アンテナを介して放射される電力と似た大きさである。図1による装置では、これにより、上述した両方の電力成分を考慮する合成アンテナ線図において、強い落込みが生じ(図9参照)、それにより特定の方位においてレーダの感度が非常に低下するので、この方位角では、少なくとも弱く反射する物体はもはや検出されず、従って見落とされる。
【0032】
さて次の実施例は、複数の送信アンテナと少なくとも1つの受信アンテナを持つレーダシステムのために容易に実施可能であり、1つの受信アンテナ及び4つの送信アンテナを持つ構成について説明される。
【0033】
従って今や図10に示されるレーダシステムが考察される。このレーダシステムは、最初のレーダシステム(実施例1)とは、大体において次の点で相違している。即ち(4つの代わりに)ただ1つの受信アンテナしかないが、その代わりに1つの面にある(1つの代わりに)4つの等間隔の送信アンテナがある。4つの送信アンテナはマルチプレクサ10.11を介して順次作動せしめられる。即ち各ランプにおいて、それぞれ1つのアンテナのみが送信し、その際ランプからランプへそれぞれ次のアンテナへ切換えが行われる。全部で同じ数のランプ(1024個)では、各送信アンテナで256個のランプが放射される。信号評価は、更に上述のものに対して2つの小さい相違を持つ三次元DFTから成っている。即ち一方では、二次DFTは長さ256しか持っていない。他方では、物体の消滅しない相対速度は、4つの順次に駆動される送信アンテナからの受信信号の直線的位相ずれを生じる。この直線的位相ずれが物体の方位角による直線的位相ずれに重畳される。相対速度が二次DFTから求められるので、それにより生じる位相ずれは、例えば三次DFTの前又は後でも除去される。
【0034】
図10によるレーダシステムは、ランプにわたる位相変化なしのUWB運転の際送信アンテナ線図において受信アンテナを介して意に反して放射される電力のため強い落込みが生じる、という欠点を更に持っている。受信アンテナを介して放射されるこの電力が角度の形成を著しく誤らせ、従って物体の方位角の誤った測定をひき起こす、という問題も生じる。その理由は次の通りである。即ち送信アンテナから放射されて物体で反射される電力は、物体の方位角に関係して、受信される信号に、4つの送信アンテナにわたる直線的位相ずれを生じる(これは図6と同じように説明される)。受信アンテナにより放射されて物体で反射される電力は、受信信号において、使用される送信アンテナとは無関係な位相を持っている。従って受信信号は、送信アンテナにわたる位相ずれを持つ成分と一定の成分から成っているので、和はもはや送信アンテナにわたる直線位相ずれを持たず、従って直線的位相ずれの仮定に基く方位角形成は誤差を生じる。
【0035】
上述した両方の問題(送信アンテナ線図における落込み)は、混合のために使用される発振器信号の位相を、切換え可能なインバータ10.4によりランプからランプへ180°だけ回転させるか又は不変にすることによって、再び回避することができる。即ち各ランプ内で、インバータの選択される設定は一定のままである。ランプにわたって見ると、それにより受信アンテナを介して放射される電力は互いに関連せしめられず、従って送信アンテナを介して放射される電力に対してコヒーレントでなくなる。受信アンテナを介して放射されて物体で反射される電力は、受信信号において対応する距離ゲートにおいて再び小さい雑音としてのみ作用する。この雑音は、位相変化なしで(従って1024個のランプにわたる二次及び三次DFTによりコヒーレントな積分の際)生じる電力より、約10・log10(1024)≒30dB下にある。
【0036】
図11による実施例3
さて次の実施例は、複数の送信アンテナ及び少なくとも1つの受信アンテナを持つレーダシステムのために容易に実施可能であり、1つの受信アンテナ及び2つの送信アンテナを持つ構成について説明される。
【0037】
さて図11に示されるレーダシステムを考察する。このレーダシステムは実施例2によるレーダシステムとは次の点で相違している。
(4つの送信アンテナの代わりに)2つの送信アンテナしか存在しない。
両方の送信アンテナは同時に作動せしめられ、従って1024個のランプの各々が同時に両方のアンテナで送信される(それによりマルチプレクサはない)。
切換え可能なインバータ11.4は、(発振器とミキサとの間ではなく)両方の送信アンテナの1つの前に設けられる。
【0038】
切換え可能なインバータ11.4により、第1の送信アンテナの信号の位相は、ランプからランプへ交互に0°及び180°だけ変化される。従って1つ置きのランプで信号が反転され、その間では不変である。即ち第2の送信アンテナの信号は、位相を変化されない。第1の送信アンテナの信号の交代する位相により、この送信アンテナによる受信信号は、ランプにわたって半分のランプ繰返し周波数(従って25kHz)で変調される。それにより受信信号は二次DFT後そのドップラ周波数を25kHzだけ移相されている。第2の送信アンテナによる受信信号は、ドップラにおいて移相されない。相対速度が例えば5kHzの2倍周波数に相当する物体に対して、二次DFT後に第2の送信アンテナからの受信信号について、5kHzにおいて電力ピークが生じ、第1の送信アンテナからの受信信号について、30kHzにおいて電力ピークが生じる。それにより二次DFT後に第1及び第2の送信アンテナから生じる成分が、周波数について分離される。第1の送信アンテナの成分を25kHzだけ戻し、続いて角度成形のため三次DFTを行うことができる(ここでは例えば長さ2のDFT)。
【0039】
決定された交代する位相変化の代わりに、それを偶然にも行うこともできるであろう。しかしその場合二次DFTを2回、即ち1回は位相変化の修正付きで、また1回は位相変化の修正なしで求めねばならないだろう。位相修正を考慮したDFTでは、第1の送信アンテナから生じる受信信号は電力ピークをもたらし、第2の送信アンテナから生じる受信信号は約30dBその下にある雑音を発生するであろう。位相修正を考慮しないDFTでは、事情がちょうど逆にされるであろう。それにより両方の成分の分離も可能になるであろう。
【0040】
図12による実施例4
さて次の実施例は、少なくとも1つの送信アンテナ及び複数の受信アンテナを持つレーダシステムのために容易に実施可能であり、1つの送信アンテナ及び2つの受信アンテナを持つ構成について説明する。
【0041】
最後に、図12に示す簡単なレーダシステムを考察する。実施例2による先のレーダシステムとは、原理的に次の点で相違している。
(2つの代わりに)1つの送信アンテナのみがあり、その代わりに(1つの代わりに)2つの受信アンテナがある。
両方の受信アンテナの同時に受信される信号は、ミキサの後で加算器12.11において加算され、その際まず第1の受信アンテナに属する信号が、切換え可能なインバータ12.4を通過する(加算により続いて1つの受信信号のみが必要である)。
【0042】
切換え可能なインバータ12.4により、今や第1の受信アンテナからのミキサ出力信号の位相が、ランプからランプへ交互に0°及び180°変化される。先の実施例3と同じように、二次DFT後第1の受信アンテナから生じる信号成分が、二重周波数でランプ繰返し周波数の半分だけ移相されており、従って第2の受信アンテナの移相されない信号成分から分離可能である。
【0043】
最後の注
切換え可能なインバータの位相位置の0°と180°との間の偶然の変化は、長さ31のフィードバックされる2進シフトレジスタにより行われる。即ちシフトレジスタの出力が1に等しいと、反転が行われ、0に対しては反転されない。それにより両方の状態は平均して同じ頻度で現れ、順次に続く状態(従ってランプからランプへのそのつどの位相変化)は非常によい近似で相関されないので、位相変化により生じる雑音は、三次元スペクトルにおいて非常によい近似で白色である。シフトレジスタは完全に偶然のプロセスを示さないので(例えば出力例は2Lの周期を持ち、ここでLはシフトレジスタの長さである)、もっと正確には擬似プロセスでもある。
【0044】
実際の物体はしばしば広がっており、物体の各部分がレーダシステムに対して同じ相対速度を持っているのではない(特に近接範囲における動的状況において)。これにより、1つの実際の物体から、物体の異なる部分に属する距離、方位角及び相対速度の異なる程度の複数の検出が生じる可能性がある。従ってここで物体を話題にする場合、実際の物体の部分も問題である。
【0045】
最後に述べるべきことは、上述した考察がもちろん他のシステム構築例えば2つの送信アンテナ及び4つの送信アンテナを持つシステムにも適用されることである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用レーダシステムのための妨害放射を抑制する方法であって、
1つの測定サイクルにおいて、1つ又は複数の実質的に同じ高周波個別信号が放射され、これらの個別信号の時間間隔が、平均して、特に物体の相対速度を求めかつ検出感度を高めるため、最大に関心のある距離に対応する受信される信号の伝搬時間より大きく、
受信される信号が高周波信号と混合され、それにより個別信号の列を表す低周波受信信号が生じ、
順次に続く低周波個別受信信号にわたって、個別送信信号及び/又は混合のために使用される高周波信号及び/又は低周波個別受信信号自体の位相位置が変化されることによって、個別受信信号の位相位置が変化される、方法。
【請求項2】
放射される信号の振幅経過が、短いパルスの1つ又は複数の列を含み、位相位置の変化がパルスからパルスへ行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
放射される信号の周波数経過が、同じ傾斜の直線的周波数ランプの1つ又は複数の列を含み、位相位置の変化がランプからランプへ行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
個別送信信号及び/又は混合のために使用される高周波信号及び/又は低周波個別受信信号の位相位置の変化が、決定的又は擬似偶然的又は偶然的な方式で行われるか、又は決定的又は偶然的又は擬似偶然的な成分から構成されている、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項5】
信号が選択的に反転され、従って位相を180°回転されるか又は不変にされることによって、位相位置の変化が行われる、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項6】
自身により又は他のシステムにより行われる妨害結合又は妨害放射が、レーダ周波数範囲又は電子評価装置の低周波部分が動作するか感応する範囲において、信号処理の際物体からの受信信号に対して関連付けられることなく挙動し、従って重要な部分に抑制されるようにするために、位相位置の変化が利用される、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項7】
異なるアンテナにより同時に送信及び受信する際、位相位置の変化により、例えば受信バスの理想的でない分離又は完全でない後方絶縁により受信アンテナを介して意図せずに送信されて混合のために使用される高周波信号の成分が、送信アンテナを介して送信される信号から、物体における反射及び受信後、信号処理手段において少なくとも大幅に分離される、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項8】
複数の送信及び/又は受信用アンテナがあって、異なる組合わせで並列又は直列に使用され、アンテナの異なる組合わせにおいてこれらの組合わせから、物体における反射により、レーダシステムに対するこれらの物体の角度が算定され、位相位置の変化により、角度算定における誤りが少なくとも大幅に回避される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
送信アンテナ及び送信アンテナを介して放射される電力の重畳により、著しく減少した検出感度を持つ角度範囲とならないように、位相位置の変化が行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
信号処理手段において、低周波個別受信信号について、有効成分に相関しかつ妨害成分に相関しない積分が行われ、その結果妨害成分が雑音としてのみ現れ、従って誤った物体検出及び/又は物体寸法の著しく誤りのある算定に至らない、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項11】
複数のアンテナで同時に送信が行われ、異なるアンテナの個別送信信号の相対位相位置が変化され、それにより異なるアンテナの送信信号が、同じアンテナで受信する際、少なくとも近似的に分離可能である、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項12】
2つのアンテナで同時に送信が行われ、両方のアンテナの個別送信信号の相対位相位置が、偶然に又は擬似偶然に又は個別送信信号から個別送信信号へ交互に0°及び180°でだけ変化される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
複数のアンテナで同時に受信が行われ、アンテナの受信信号が高周波数範囲又は低周波数範囲で加算され、加算の際異なるアンテナの個別受信信号の相対位相位置が変化され、それにより異なるアンテナの受信信号が、後で信号処理手段において少なくとも近似的に再び分離可能であり、その結果受信信号の処理の一部が共通なバスで行われる、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項14】
それぞれ1つの個別受信信号の評価の前又は評価の際又は評価の後に、使用された位相位置変化が修正される、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項15】
先行する請求項の1つに記載の方法により妨害放射の影響を抑制する自動車用周辺検出レーダシステムであって、
複数のアンテナを含むことができかつ送信信号を放射する送信手段、複数のアンテナを含むことができかつ物体において反射される送信信号を受信する受信手段、及び受信される信号を処理する信号処理手段を含み、
1つの測定サイクルにおいて、実質的に同じ高周波の個別信号の1列又は複数列が放射され、
これらの個別信号の時間間隔が、平均して、特に物体の相対速度を算定しかつ検出感度を高めるため、最大に関心のある距離に対応する受信される信号の伝搬時間より大きく、
受信される信号が高周波信号と混合され、それにより個別信号の列を表す低周波受信信号が生じるものにおいて、
更に個別信号の位相回転手段が設けられ、移相回転手段により、個別送信信号及び/又は混合のため使用される高周波信号及び/又は低周波受信信号自体の位相位置が変化されることを特徴とする、レーダシステム。
【請求項1】
自動車用レーダシステムのための妨害放射を抑制する方法であって、
1つの測定サイクルにおいて、1つ又は複数の実質的に同じ高周波個別信号が放射され、これらの個別信号の時間間隔が、平均して、特に物体の相対速度を求めかつ検出感度を高めるため、最大に関心のある距離に対応する受信される信号の伝搬時間より大きく、
受信される信号が高周波信号と混合され、それにより個別信号の列を表す低周波受信信号が生じ、
順次に続く低周波個別受信信号にわたって、個別送信信号及び/又は混合のために使用される高周波信号及び/又は低周波個別受信信号自体の位相位置が変化されることによって、個別受信信号の位相位置が変化される、方法。
【請求項2】
放射される信号の振幅経過が、短いパルスの1つ又は複数の列を含み、位相位置の変化がパルスからパルスへ行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
放射される信号の周波数経過が、同じ傾斜の直線的周波数ランプの1つ又は複数の列を含み、位相位置の変化がランプからランプへ行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
個別送信信号及び/又は混合のために使用される高周波信号及び/又は低周波個別受信信号の位相位置の変化が、決定的又は擬似偶然的又は偶然的な方式で行われるか、又は決定的又は偶然的又は擬似偶然的な成分から構成されている、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項5】
信号が選択的に反転され、従って位相を180°回転されるか又は不変にされることによって、位相位置の変化が行われる、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項6】
自身により又は他のシステムにより行われる妨害結合又は妨害放射が、レーダ周波数範囲又は電子評価装置の低周波部分が動作するか感応する範囲において、信号処理の際物体からの受信信号に対して関連付けられることなく挙動し、従って重要な部分に抑制されるようにするために、位相位置の変化が利用される、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項7】
異なるアンテナにより同時に送信及び受信する際、位相位置の変化により、例えば受信バスの理想的でない分離又は完全でない後方絶縁により受信アンテナを介して意図せずに送信されて混合のために使用される高周波信号の成分が、送信アンテナを介して送信される信号から、物体における反射及び受信後、信号処理手段において少なくとも大幅に分離される、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項8】
複数の送信及び/又は受信用アンテナがあって、異なる組合わせで並列又は直列に使用され、アンテナの異なる組合わせにおいてこれらの組合わせから、物体における反射により、レーダシステムに対するこれらの物体の角度が算定され、位相位置の変化により、角度算定における誤りが少なくとも大幅に回避される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
送信アンテナ及び送信アンテナを介して放射される電力の重畳により、著しく減少した検出感度を持つ角度範囲とならないように、位相位置の変化が行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
信号処理手段において、低周波個別受信信号について、有効成分に相関しかつ妨害成分に相関しない積分が行われ、その結果妨害成分が雑音としてのみ現れ、従って誤った物体検出及び/又は物体寸法の著しく誤りのある算定に至らない、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項11】
複数のアンテナで同時に送信が行われ、異なるアンテナの個別送信信号の相対位相位置が変化され、それにより異なるアンテナの送信信号が、同じアンテナで受信する際、少なくとも近似的に分離可能である、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項12】
2つのアンテナで同時に送信が行われ、両方のアンテナの個別送信信号の相対位相位置が、偶然に又は擬似偶然に又は個別送信信号から個別送信信号へ交互に0°及び180°でだけ変化される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
複数のアンテナで同時に受信が行われ、アンテナの受信信号が高周波数範囲又は低周波数範囲で加算され、加算の際異なるアンテナの個別受信信号の相対位相位置が変化され、それにより異なるアンテナの受信信号が、後で信号処理手段において少なくとも近似的に再び分離可能であり、その結果受信信号の処理の一部が共通なバスで行われる、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項14】
それぞれ1つの個別受信信号の評価の前又は評価の際又は評価の後に、使用された位相位置変化が修正される、先行する請求項の1つに記載の方法。
【請求項15】
先行する請求項の1つに記載の方法により妨害放射の影響を抑制する自動車用周辺検出レーダシステムであって、
複数のアンテナを含むことができかつ送信信号を放射する送信手段、複数のアンテナを含むことができかつ物体において反射される送信信号を受信する受信手段、及び受信される信号を処理する信号処理手段を含み、
1つの測定サイクルにおいて、実質的に同じ高周波の個別信号の1列又は複数列が放射され、
これらの個別信号の時間間隔が、平均して、特に物体の相対速度を算定しかつ検出感度を高めるため、最大に関心のある距離に対応する受信される信号の伝搬時間より大きく、
受信される信号が高周波信号と混合され、それにより個別信号の列を表す低周波受信信号が生じるものにおいて、
更に個別信号の位相回転手段が設けられ、移相回転手段により、個別送信信号及び/又は混合のため使用される高周波信号及び/又は低周波受信信号自体の位相位置が変化されることを特徴とする、レーダシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2012−522972(P2012−522972A)
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502452(P2012−502452)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【国際出願番号】PCT/DE2010/000417
【国際公開番号】WO2010/115418
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(503355292)コンティ テミック マイクロエレクトロニック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (79)
【氏名又は名称原語表記】Conti Temic microelectronic GmbH
【住所又は居所原語表記】Sieboldstrasse 19, D−90411 Nuernberg, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【国際出願番号】PCT/DE2010/000417
【国際公開番号】WO2010/115418
【国際公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(503355292)コンティ テミック マイクロエレクトロニック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (79)
【氏名又は名称原語表記】Conti Temic microelectronic GmbH
【住所又は居所原語表記】Sieboldstrasse 19, D−90411 Nuernberg, Germany
【Fターム(参考)】
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