説明

送信装置、通信システム、通信条件決定方法および通信条件決定プログラム

【課題】通信レートと送信出力の双方の通信の要求を満たし、かつ要求を満足する範囲で電力削減が可能な送信装置、通信システム、通信条件決定方法およびプログラムを得ること。
【解決手段】送信装置10は通信条件初期選択手段12が初期的に選択した通信条件で送信を行い通信環境を判別する。通信条件改定手段16は、この判別結果に応じて通信テーブル11から通信レートが高くなる方向あるいは送信出力が減少する方向に沿って改定した通信条件を選択し、収束するまで通信環境の判別と通信条件の改定を繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信装置、通信システム、通信条件決定方法および通信条件決定プログラムに関する。本発明はたとえば送信時の電力消費の節減に好適な無線LAN端末等の送信装置、通信システムあるいはこれらに好適に使用可能な通信条件決定方法および通信条件決定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
無線LAN(Local Area Network)のアクセスポイントとなる無線LAN親機や、この無線LAN親機を通じて無線LANによって通信を行う携帯端末等の各種の通信端末からなる無線LAN子機を、本明細書では無線LAN端末と総称することにする。
【0003】
無線LAN端末は、親機側も子機側も無線の送信時に微弱な信号を増幅する無線回路を備えている。このような無線回路は他の一般的な電子回路よりも電力消費が大きい。したがって、二次電池で駆動することの多い携帯型の無線LAN端末の場合には、稼働時間を延ばすために、消費電力をいかに低減するかが製品開発の重要な課題となる。この一方で、消費電力を節減した結果として送信装置の送信電力が不十分であれば、通信の品質を確保することができない。
【0004】
そこで、本発明の関連技術では、受信信号の搬送波に含まれる雑音成分に係る値を複数個の基準値と比較して無線通信を行う状況の良否を判別するようにしている。そして、通信の行われる環境に応じて、送信電力のレベルを下降させたり上昇させることが提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【0005】
この関連技術では、無線通信を行う状況が「良」と判別された場合に、予め用意した電力テーブルを参照して、通信レートが下がらない程度まで送信電力を落として電力消費の削減を図るようにしている。また、無線通信を行う状況が「中」と判別された場合には、所定の通信レートの確保と電力消費の抑制をバランス良くするために、送信電力を第1レベルより上げるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−211601号公報(第0042段落〜第0047段落、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この関連技術では、無線通信を行う状況が更に悪くなった場合には、電力消費との関係で通信レートそのものが低下してしまい、比較的大容量のデータやリアルタイム性を要求されるデータの通信には適さない場合があった。
【0008】
そこで本発明の目的は、通信レートと送信出力の双方について通信の要求を満たすことができ、かつ要求を満足する範囲で無駄な電力消費も避けることのできる送信装置、通信システム、通信条件決定方法および通信条件決定プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、(イ)通信相手と通信する際の通信レートと送信出力についての複数の組み合わせを通信条件として規定した通信テーブルと、(ロ)前記した通信相手との通信に先立って前記した通信テーブルから通信が成功する可能性の高い1つの組み合わせを初期的な通信条件として選択する通信条件初期選択手段と、(ハ)特定された1つの通信条件で前記した通信相手に信号を送信する送信手段と、(ニ)この送信手段の送信した前記した信号を受信した前記した通信相手から受信の成功を示す返答があったときこれを受信する返答受信手段と、(ホ)この返答受信手段の受信した返答状況に応じて前記した通信相手との間の通信環境を判別する通信環境判別手段と、(へ)前記した通信条件初期選択手段の選択した通信条件を最初として前記した送信手段の送信に採用された通信条件に対する前記した通信環境判別手段の判別結果に応じて前記した通信テーブルから前記した通信レートが高くなる方向あるいは送信出力が減少する方向に沿って送信に使用する改定した通信条件を選択する通信条件改定手段と、(ト)前記した通信環境判別手段の判別結果に応じて前記した通信条件改定手段による次の改定した通信条件を選択するか現在の通信条件を保持するかを判別する通信条件判別手段とを送信装置が具備する。
【0010】
また、本発明では、(イ)通信相手と通信する際の通信レートと送信出力についての複数の組み合わせを通信条件として規定した通信テーブルと、前記した通信相手との通信に先立って前記した通信テーブルから通信が成功する可能性の高い1つの組み合わせを初期的な通信条件として選択する通信条件初期選択手段と、特定された1つの通信条件で前記した通信相手に信号を送信する送信手段と、この送信手段の送信した前記した信号を受信した前記した通信相手から受信の成功を示す返答があったときこれを受信する返答受信手段と、この返答受信手段の受信した返答状況に応じて前記した通信相手との間の通信環境を判別する通信環境判別手段と、前記した通信条件初期選択手段の選択した通信条件を最初として前記した送信手段の送信に採用された通信条件に対する前記した通信環境判別手段の判別結果に応じて前記した通信テーブルから前記した通信レートが高くなる方向あるいは送信出力が減少する方向に沿って送信に使用する改定した通信条件を選択する通信条件改定手段と、前記した通信環境判別手段の判別結果に応じて前記した通信条件改定手段による次の改定した通信条件を選択するか現在の通信条件を保持するかを判別する通信条件判別手段とを備えた送信装置と、(ロ)この送信装置の前記した送信手段から送られてきた信号を受信する受信手段と、この受信手段で信号の受信が成功したとき前記した受信の成功を示す返答を行う返答手段とを備えた受信装置とを通信システムが具備する。
【0011】
更に本発明では、(イ)通信相手と通信する際の通信レートと送信出力についての複数の組み合わせを通信条件として規定した通信テーブルの中から前記した通信相手との通信に先立って前記した通信テーブルから通信が成功する可能性の高い1つの組み合わせを初期的な通信条件として選択する通信条件初期選択ステップと、(ロ)1つの通信条件で前記した通信相手に信号を送信する送信ステップと、(ハ)この送信ステップで送信した前記した信号を受信した前記した通信相手から受信の成功を示す返答があったときこれを受信する返答受信ステップと、(ニ)この返答受信ステップにより受信した返答状況に応じて前記した通信相手との間の通信環境を判別する通信環境判別ステップと、(ホ)前記した通信条件初期選択ステップで選択した通信条件を最初として前記した送信ステップによる送信に採用された通信条件に対する前記した通信環境判別ステップによる判別結果に応じて前記した通信テーブルから前記した通信レートが高くなる方向あるいは送信出力が減少する方向に沿って送信に使用する改定した通信条件を選択する通信条件改定ステップと、(へ)前記した通信環境判別ステップによる判別結果に応じて前記した通信条件改定ステップを用いて次の改定した通信条件を選択するか現在の通信条件を保持するかを判別する通信条件判別ステップとを通信条件決定方法が具備する。
【0012】
更にまた本発明では、コンピュータに、通信条件決定プログラムとして、(イ)通信相手と通信する際の通信レートと送信出力についての複数の組み合わせを通信条件として規定した通信テーブルの中から前記した通信相手との通信に先立って前記した通信テーブルから通信が成功する可能性の高い1つの組み合わせを初期的な通信条件として選択する通信条件初期選択処理と、(ロ)1つの通信条件で前記した通信相手に信号を送信する送信処理と、(ハ)この送信処理で送信した前記した信号を受信した前記した通信相手から受信の成功を示す返答があったときこれを受信する返答受信処理と、(ニ)この返答受信処理により受信した返答状況に応じて前記した通信相手との間の通信環境を判別する通信環境判別処理と、(ホ)前記した通信条件初期選択処理で選択した通信条件を最初として前記した送信処理による送信に採用された通信条件に対する前記した通信環境判別処理による判別結果に応じて前記した通信テーブルから前記した通信レートが高くなる方向あるいは送信出力が減少する方向に沿って送信に使用する改定した通信条件を選択する通信条件改定処理と、(へ)前記した通信環境判別処理による判別結果に応じて前記した通信条件改定処理を用いて次の改定した通信条件を選択するか現在の通信条件を保持するかを判別する通信条件判別処理とを実行させる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、送信装置が受信装置との間で通信を行う際に使用する通信レートと送信出力の双方についての複数の組み合わせを通信テーブルに通信条件として格納するようにした。したがって、これら複数の通信条件の中から通信環境の判別結果に応じて、省電力の観点や通信レートの確保といった各種の観点で、それぞれ適切な通信条件を選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の送信装置のクレーム対応図である。
【図2】本発明の通信システムのクレーム対応図である。
【図3】本発明の通信条件決定方法のクレーム対応図である。
【図4】本発明の通信条件決定プログラムのクレーム対応図である。
【図5】本発明の実施の形態における無線LAN通信システムの概要を表わしたシステム構成図である。
【図6】本実施の形態で使用される無線LAN親機の構成の概要を表わしたブロック図である。
【図7】本実施の形態で使用される送信出力設定テーブルの内容の一例を表わした説明図である。
【図8】本実施の形態の無線LAN親機による無線LAN子機に対するパケット送出処理の一部を具体的に表わした流れ図である。
【図9】図8の処理における通信レートの決定処理を具体的に表わした流れ図である。
【図10】図8の処理で説明したパケット信号の送出に基づく無線LAN親機のその後の処理の様子を表わした流れ図である。
【図11】本発明の第1の変形例の無線LAN通信システムにおける無線LAN親機の構成を表わしたブロック図である。
【図12】第1の変形例における無線LAN親機のパケット信号の送信処理の要部を表わした流れ図である。
【図13】本発明の第2の変形例の無線LAN通信システムにおける無線LAN親機の構成を表わしたブロック図である。
【図14】第2の変形例における無線LAN親機のパケット信号の送信処理の要部を表わした流れ図である。
【図15】本発明の第3の変形例の無線LAN通信システムにおける無線LAN親機の構成を表わしたブロック図である。
【図16】第3の変形例の無線LAN親機による通信環境の変化に伴う送信電力低減閾値および送信出力増加閾値の校正処理の要部を示した流れ図である。
【図17】第3の変形例における良好通信環境用テーブルの一例を示した説明図である。
【図18】第3の変形例における劣悪通信環境用テーブルの一例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の送信装置のクレーム対応図を示したものである。本発明の送信装置10は、通信テーブル11と、通信条件初期選択手段12と、送信手段13と、返答受信手段14と、通信環境判別手段15と、通信条件改定手段16と、通信条件判別手段17を備えている。ここで、通信テーブル11は、通信相手と通信する際の通信レートと送信出力についての複数の組み合わせを通信条件として規定したものである。通信条件初期選択手段12は、前記した通信相手との通信に先立って通信テーブル11から通信が成功する可能性の高い1つの組み合わせを初期的な通信条件として選択する。送信手段13は、特定された1つの通信条件で前記した通信相手に信号を送信する。返答受信手段14は、送信手段13の送信した前記した信号を受信した前記した通信相手から受信の成功を示す返答があったときこれを受信する。通信環境判別手段15は、返答受信手段14の受信した返答状況に応じて前記した通信相手との間の通信環境を判別する。通信条件改定手段16は、通信条件初期選択手段12の選択した通信条件を最初として送信手段13の送信に採用された通信条件に対する通信環境判別手段15の判別結果に応じて通信テーブル11から前記した通信レートが高くなる方向あるいは送信出力が減少する方向に沿って送信に使用する改定した通信条件を選択する。通信条件判別手段17は、通信環境判別手段15の判別結果に応じて通信条件改定手段16による次の改定した通信条件を選択するか現在の通信条件を保持するかを判別する。
【0016】
図2は、本発明の通信システムのクレーム対応図を示したものである。本発明の通信システム20は、送信装置21と、受信装置22を備えている。ここで、送信装置21は、通信テーブル21aと、通信条件初期選択手段21bと、送信手段21cと、返答受信手段21dと、通信環境判別手段21eと、通信条件改定手段21fと、通信条件判別手段21gを備えている。通信テーブル21aは、通信相手と通信する際の通信レートと送信出力についての複数の組み合わせを通信条件として規定したものである。通信条件初期選択手段21bは、前記した通信相手との通信に先立って通信テーブル21aから通信が成功する可能性の高い1つの組み合わせを初期的な通信条件として選択する。送信手段21cは、特定された1つの通信条件で前記した通信相手に信号を送信する。返答受信手段21dは、送信手段21cの送信した前記した信号を受信した前記した通信相手から受信の成功を示す返答があったときこれを受信する。通信環境判別手段21eは、返答受信手段21dの受信した返答状況に応じて前記した通信相手との間の通信環境を判別する。通信条件改定手段21fは、通信条件初期選択手段21bの選択した通信条件を最初として送信手段21cの送信に採用された通信条件に対する通信環境判別手段21eの判別結果に応じて通信テーブル21aから前記した通信レートが高くなる方向あるいは送信出力が減少する方向に沿って送信に使用する改定した通信条件を選択する。通信条件判別手段21gは、通信環境判別手段21eの判別結果に応じて通信条件改定手段21fによる次の改定した通信条件を選択するか現在の通信条件を保持するかを判別する。受信装置22は、受信手段22aと、返答手段22bを備えている。受信手段22aは、送信装置21の送信手段21cから送られてきた信号を受信する。返答手段22bは、受信手段22aで信号の受信が成功したとき前記した受信の成功を示す返答を行う。
【0017】
図3は、本発明の通信条件決定方法のクレーム対応図を示したものである。本発明の通信条件決定方法30は、通信条件初期選択ステップ31と、送信ステップ32と、返答受信ステップ33と、通信環境判別ステップ34と、通信条件改定ステップ35と、通信条件判別ステップ36を備えている。ここで、通信条件初期選択ステップ31では、通信相手と通信する際の通信レートと送信出力についての複数の組み合わせを通信条件として規定した通信テーブルの中から前記した通信相手との通信に先立って前記した通信テーブルから通信が成功する可能性の高い1つの組み合わせを初期的な通信条件として選択する。送信ステップ32では、1つの通信条件で前記した通信相手に信号を送信する。返答受信ステップ33では、送信ステップ32で送信した前記した信号を受信した前記した通信相手から受信の成功を示す返答があったときこれを受信する。通信環境判別ステップ34では、返答受信ステップ33により受信した返答状況に応じて前記した通信相手との間の通信環境を判別する。通信条件改定ステップ35では、通信条件初期選択ステップ31で選択した通信条件を最初として送信ステップ32による送信に採用された通信条件に対する通信環境判別ステップ34による判別結果に応じて前記した通信テーブルから前記した通信レートが高くなる方向あるいは送信出力が減少する方向に沿って送信に使用する改定した通信条件を選択する。通信条件判別ステップ36では、通信環境判別ステップ34による判別結果に応じて通信条件改定ステップ35を用いて次の改定した通信条件を選択するか現在の通信条件を保持するかを判別する。
【0018】
図4は、本発明の通信条件決定プログラムのクレーム対応図を示したものである。本発明の通信条件決定プログラム40は、コンピュータに、通信条件初期選択処理41と、送信処理42と、返答受信処理43と、通信環境判別処理44と、通信条件改定処理45と、通信条件判別処理46を実行させるようにしている。ここで、通信条件初期選択処理41では、通信相手と通信する際の通信レートと送信出力についての複数の組み合わせを通信条件として規定した通信テーブルの中から前記した通信相手との通信に先立って前記した通信テーブルから通信が成功する可能性の高い1つの組み合わせを初期的な通信条件として選択する。送信処理42では、1つの通信条件で前記した通信相手に信号を送信する。返答受信処理43では、送信処理42で送信した前記した信号を受信した前記した通信相手から受信の成功を示す返答があったときこれを受信する。通信環境判別処理44では、返答受信処理43により受信した返答状況に応じて前記した通信相手との間の通信環境を判別する。通信条件改定処理45では、通信条件初期選択処理41で選択した通信条件を最初として送信処理42による送信に採用された通信条件に対する通信環境判別処理44による判別結果に応じて前記した通信テーブルから前記した通信レートが高くなる方向あるいは送信出力が減少する方向に沿って送信に使用する改定した通信条件を選択する。通信条件判別処理46では、通信環境判別処理44による判別結果に応じて通信条件改定処理45を用いて次の改定した通信条件を選択するか現在の通信条件を保持するかを判別する。
【0019】
<発明の実施の形態>
【0020】
次に本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
図5は、本発明の実施の形態における無線LAN通信システムの概要を表わしたものである。この無線LAN通信システム100は、アクセスポイントとしての無線LAN親機101と、この無線LAN親機101と無線で通信を行う無線LAN子機102とで構成されている。この図では、無線LAN親機101の存在するエリアに無線LAN子機102が1台存在する最も単純な例を示している。無線LAN子機102が無線LAN親機101に対して複数台存在する場合もある。また、複数の無線LAN親機101が互いに近接するように存在する場合もある。
【0022】
無線LAN通信システム100では、無線LAN親機101がその送信出力を複数段階に設定できるようになっている。送信出力が一番小さいとき、無線LAN親機101は実線で示す円の内部としての第1の通信可能エリア1111に存在する無線LAN子機102とのみ通信することができる。無線LAN親機101の送信出力が1段階大きくなると、実線で示す円の外側で破線で示す円の内部のドーナツ状の第2の通信可能エリア1112に存在する無線LAN子機102とも通信することができる。もちろん、この場合にも無線LAN親機101は第1の通信可能エリア1111に存在する無線LAN子機102と通信可能であるが、送信出力に無駄が生じる。
【0023】
本実施の形態の無線LAN通信システム100では、無線通信時の通信レートおよび受信時のRSSI(Received Signal Strength Indicator)値によって無線送信出力を制御する。これにより、送信を行う無線回路の消費電力を低減させるようにしている。また、無線送信出力を制御することによって、通信可能エリアが必要以上に広がらないようにするので、同一チャネルを共有する他の無線通信への干渉を抑えることができる。
【0024】
以下に説明する本実施の形態の無線LAN通信システム100で、無線LAN親機101と無線LAN子機102は、それぞれ2.4GHz帯のIEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.)802.11nに対応しているものとして説明を行う。IEEE802.11nは、2.4GHz帯または5GHz帯の無線で最高600Mbps(ビット/秒)の通信を行う仕様である。通信可能エリアを切り替えるための無線回路の出力変更は無線LAN親機101と無線LAN子機102の双方が可能であるが、本実施の形態では説明を簡単にするために無線LAN親機101のみがその機能を備えているものとして説明を行う。
【0025】
図6は、無線LAN親機の構成の概要を表わしたものである。無線LAN親機101は、パケット信号の送受信を行う無線回路を備えた無線部121を備えている。無線部121は、通信レートを決定する通信レート決定部122と、送信出力を決定する送信出力決定部123および閾値超えアクノリッジカウンタ部124と接続されている。
【0026】
閾値超えアクノリッジカウンタ部124は、無線LAN親機101が通信に成功した通信レートのパケットをカウントする。カウントの対象となるパケットは、送信出力低減閾値未満または送信出力増加閾値以上の通信レートのものとなる。ここで「送信出力低減閾値」は、無線LAN親機101が無線LAN子機102と通信する際に送信出力を低減させることになる高めの通信レートに設定されている。設定されている通信レートが高いために「送信出力低減閾値」を超えるパケットの回数が規定値を超過するような場合には、送信出力を低下させる制御を行うことになる。
【0027】
一方、「送信出力増加閾値」は、無線LAN親機101が無線LAN子機102と通信する際に送信出力を増加させることになる低めの通信レートに設定されている。設定されている通信レートが低いために「送信出力増加閾値」を超えるパケットの回数が規定値を超過するような場合には、送信出力を増加させる制御を行うことになる。
【0028】
パケット通信に成功したかどうかはパケット信号の受信側からアクノリッジ応答が得られるかによって判別することができる。パケットのカウントのため、閾値超えアクノリッジカウンタ部124には送信出力低減閾値回数カウンタ125と送信出力増加閾値回数カウンタ126が備えられている。送信出力決定部123は送信出力の設定を行う際に送信出力設定テーブル部127内の送信出力設定テーブルを参照するようになっている。
【0029】
このような無線LAN親機101は、CPU(Central Processing Unit)128と、このCPU128が実行するプログラムを格納したROM(Read Only Memory)等のメモリ129を備えた制御部130を有している。無線LAN親機101を構成する通信レート決定部122等の各部のうちの少なくとも一部は、CPU128がメモリ129に格納されたプログラムを実行することによってソフトウェア的に実現するようになっていてもよい。
【0030】
図7は、送信出力設定テーブルの内容の一例を表わしたものである。図5および図6と共に説明する。
【0031】
送信出力設定テーブル部127に格納されている送信出力設定テーブル127Tには、無線LAN親機101がデータパケットを無線LAN子機102に送信する場合の、通信レート、通信レート区分およびMCS(Modulation and Coding Scheme)の各組み合わせに対する3段階の送信出力を規定している。ここで3段階の送信出力(mW/MHz)とは、1番小さな出力値としての「小出力値」、次に大きな出力値としての「中出力値」、最大の出力値としての「最大出力値」である。送信出力の区分は3段階である必要はなく、これよりも多くても少なくてもよいが、本実施の形態では3段階としている。
【0032】
「通信レート(Mbps)」は、最低の通信レートを1Mbpsとしている。最低の通信レートである1Mbpsは、無線LANの接続を確保するマネージメント用パケットにも使用する。したがって、本実施の形態で最低の通信レートは、すべての送信出力の設定でマネージメント用パケットの通信レートと同じ値になっている。もちろん、最低の通信レートをマネージメント用パケットの通信レートと異なった値に設定してもよい。
【0033】
「通信レート区分」には、IEEE802.11b、IEEE802.11g、IEEE802.11nの3種類と、IEEE802.11nについてはストリーム数が示されている。HT20は1チャネル分の20MHzで通信を行い、HT40は2チャンネル分の40MHz幅で通信を行う。また、ストリーム数は、MIMO(Multi Input Multi Output)による空間多重の多重数である。
【0034】
無線通信時のストリーム数によって、使用される「MCS」が異なる。MCSが「0」から「7」まではストリーム数が「1」の場合に、MCSが「8」から「15」まではストリーム数が「2」の場合に、MCSが「16」から「23」まではストリーム数が「3」の場合に、MCSが「24」から「31」まではストリーム数が「4」の場合となる。ただし、本実施の形態の無線LAN通信システムでは、図7に示すように、ストリーム数が「1」および「2」の場合を示しているため、MCSは「0」から「15」までとなっている。MCSが「0」から「31」まで使用可能な無線LAN通信システムであってもよいことはもちろんである。
【0035】
図7に示したテーブルにおいて、白三角で示した記号は、送信出力低減閾値となる通信レートを示している。「送信出力低減閾値」を設定することにより、一定以上の通信レートを保ったまま、送信電力を低減することができる。もちろん、送信電力の低減に伴って一定以上の通信レートを確保することのできる通信可能エリアは減少することになる。黒三角で示した記号は、送信出力増加閾値となる通信レートを示している。
【0036】
さて、図5に示す無線LAN親機101が、図7の送信出力設定テーブル127Tで示される送信出力における最大出力値で、接続中の無線LAN子機102と通信を行っているものとする。このとき、無線LAN子機102は、図5に示したように第1の通信可能エリア1111内に位置しているものとする。
【0037】
無線LAN親機101が送信出力低減閾値となる通信レート以上の通信レートで無線LAN子機102に対して送信を行い、無線LAN子機102はこの通信で規定パケット数以上の受信に成功し、アクノリッジ応答をそれぞれ返送したものとする。この場合、無線LAN親機101が行った送信出力に余裕があることになる。そこで、無線LAN親機101は次に無線LAN子機102に対して送信を行うとき、最大出力値の送信出力から一段低い送信出力の設定となる中出力値の値を適用する。
【0038】
このように無線LAN親機101は、一定以上の通信レートを保持した状態で、無線LAN子機102との間で通信を行い、アクノリッジ応答の様子をチェックして、その結果に応じて送信電力を低減することができる。この例では、無線LAN親機101の通信可能エリアは、通信レートを保持したまま、第2の通信可能エリア1112から第1の通信可能エリア1111にそのサイズを縮小する。したがって、無線LAN子機102が図5に示すように第1の通信可能エリア1111に位置している場合には、無線LAN親機101の送信電力を減少させることができる。
【0039】
このように本実施の形態の無線LAN通信システム100では、送信出力の制御を行うとき、回線品質の測定のための特別な通信が不要である。このため、帯域の圧迫という問題が発生しない。
【0040】
図8は、無線LAN親機による無線LAN子機に対するパケット送出処理の一部を具体的に表わしたものである。図5〜図7と共に説明する。
【0041】
無線LAN親機101は、無線LAN子機102に対するパケットの送出開始の時機が到来すると(ステップS201:Y)、通信レート決定部122が使用可能な通信レートの中から1つの通信レートを決定する(ステップS202)。決定した通信レートは無線部121と、送信出力決定部123に通知される。
【0042】
送信出力決定部123は、決定した通信レートを基にして送信出力設定テーブル部127を参照し、現在動作中の送信出力の設定内容との関係から無線LAN親機101の送信出力を決定する(ステップS203)。たとえば、現在動作中の送信出力の設定が、図7に示す「中出力値」となっており、通信レートが40.5Mbps(11n HT40 1stream MCS2)であったとする。この場合、送信出力は7(mW/MHz)に決定される。
【0043】
無線LAN親機101の制御部130は、ステップS202で決定された通信レートが送信出力増加閾値未満であるかを判別する(ステップS204)。この例では通信レートが40.5Mbpsであり、「中出力値」における送信出力増加閾値は図7より6Mbpsである。そこで、ステップS202で決定された通信レートは送信出力増加閾値未満ではないことになる(ステップS204:N)。
【0044】
この場合、制御部130はステップS202で決定された通信レートが送信出力低減閾値以上であるかを判別する(ステップS205)。図7で「中出力値」における送信出力低減閾値は104Mbpsである。したがって、通信レート40.5Mbpsは送信出力低減閾値としての104Mbps以上でもない(N)。そこで、制御部130はステップS202で決定された通信レートと送信出力決定部123により決定された送信出力でパケット信号を送信する(ステップS206)。
【0045】
この後、無線LAN親機101は無線LAN子機102からアクノリッジ応答が返ってくるかを待機する(ステップS207)。無線LAN親機101がステップS206で送信したパケット信号を無線LAN子機102が正常に受信すればアクノリッジ信号が所定時間以内に無線LAN親機101に返送される。この一方で、無線LAN子機102がパケット信号の受信に失敗した場合にはアクノリッジ信号の返送は行われない。
【0046】
無線LAN子機102からアクノリッジ応答があれば(ステップS207:Y)、無線LAN親機101はその閾値超えアクノリッジカウンタ部124に無線LAN子機102との通信が成功したことを通知する(ステップS208)。これにより、無線LAN親機101によるパケット送出処理が終了する(エンド)。
【0047】
この例で無線LAN子機102から所定時間内にアクノリッジ応答が返って来なかった場合(ステップS207:N)、無線LAN親機101はパケット信号の再送処理を行うことになる。無線LAN親機101の無線部121は、この再送処理が予め定めた上限回数を超過したかを判別する(ステップS209)。超過していない場合(N)、無線部121は通信レート決定部122に使用可能な通信レートの中から現在よりも1段階低速な通信レートを選択させる(ステップS202)。この例ではIEEE802.11nの通信が行われているので、通信レートは40.5Mbpsから39Mbpsに変更される。そして、ステップS203以降の処理によって無線LAN子機102に対するパケット信号の再送が試みられることになる。
【0048】
このようなパケット信号の再送処理が失敗のうちに繰り返されたと仮定すると、遂にはステップS209で無線部121が再送についての上限回数を超過したと判別することになる(Y)。この場合、無線LAN親機101の無線部121は無線LAN子機102に送信する予定だったパケット信号を破棄する(ステップS210)。この場合には、無線LAN親機101によるパケット送出処理が不成功の状態で終了することになる(エンド)。
【0049】
図9は、図8における通信レートの決定処理を具体的に表わしたものである。図5〜図7と共に説明する。
【0050】
無線LAN親機101の制御部130は、パケットの送信処理が開始されたとき、これが新たなパケット送信であるかを判別する(ステップS221)。新たなパケット送信が無線LAN子機102との間で行われる場合には(Y)、その通信の状況に応じて新規に通信レートを決定して(ステップS222)、通信レートの決定処理を終了する(エンド)。
【0051】
新たなパケット送信でない場合には(ステップS221:N)、無線LAN子機102に対する前回まで設定した通信レートによる通信が成功した割合(アクノリッジが返送されてきた割合)が規定値以上であるかをチェックする(ステップS223)。たとえば、通信レートが40.5Mbpsの状態で100パケット中の50パケットについて通信が成功していたとする。この場合、制御部130は前回のパケット送出時より通信レートがひとつ上の通信レートが図7に示したテーブルで選択可能であるかをチェックする(ステップS224)。
【0052】
この例の場合、無線LAN子機102がIEEE802.11nの通信に対応しているので、40.5Mbpsの通信レートから1つ上の52Mbpsの通信レートが存在し、選択可能である(ステップS224:Y)。そこで、1つ上の52Mbpsの通信レートが決定されて(ステップS225)、処理が終了する(エンド)。
【0053】
これに対して、通信レートを40.5Mbpsに設定した状態で、パケットの成功の割合を統計的に調べるだけの数のパケットの送信を行っていない状態であったり、通信が成功した割合が規定値に達していないような場合には(ステップS223:N)、現在設定している通信レートが決定されて(ステップS226)、処理が終了する(エンド)。ステップS224でひとつ上の通信レートが図7に示したテーブルに存在しない場合も(N)、同様に現在設定している通信レートが決定されて(ステップS226)、処理が終了する(エンド)。
【0054】
このようにパケットの送信出力に余裕がある場合には、図9で示した処理で通信レートを選択可能な範囲内で高速化する。これにより、無線LAN親機101は無線LAN子機102との間の通信時間を短縮し、通信時の消費電力を抑えることができる。
【0055】
次に図8に戻って、ステップS202で初期的に決定された通信レートが、ステップS204の判別で送信出力増加閾値未満とされるものであった場合と、ステップS205で通信レートを送信出力低減閾値と比較した結果、送信出力増加閾値以上であった場合の説明を行う。
【0056】
まず、ステップS202で初期的に決定された通信レートが、ステップS204の判別で送信出力増加閾値未満とされるものであった場合(Y)、制御部130は決定された通信レートと、その通信レートが送信出力増加閾値未満であることを閾値超えアクノリッジカウンタ部124に通知する(ステップS211)。無線部121は、この通信レートと送信出力でパケット信号を送信する(ステップS212)。
【0057】
一方、ステップS205で通信レートを送信出力低減閾値と比較した結果、送信出力増加閾値以上であった場合(Y)、制御部130は決定した通信レートと、その通信レートが送信出力低減閾値以上であることを閾値超えアクノリッジカウンタ部124に通知する(ステップS213)。この場合、無線部121は、この通信レートと送信出力でパケット信号を送信することになる(ステップS214)。
【0058】
図10は、図8で説明したパケット信号の送出に基づいて無線LAN親機のその後の処理の様子を表わしたものである。図5〜図8と共に説明する。
【0059】
まず、図8のステップS212で無線LAN親機101がパケット信号を送出した場合を説明する。この例の場合、通信レートは送信出力増加閾値未満であり、送信出力を高めることになる低めな値となっている。
【0060】
無線LAN親機101はパケット信号を送出した後、無線LAN子機102からのアクノリッジ応答があるかを待機する(ステップS241)。パケット信号の送信から所定時間以内にアクノリッジ応答があれば(Y)、無線LAN親機101はその閾値超えアクノリッジカウンタ部124に無線LAN子機102との通信が成功したことを通知する(ステップS242)。閾値超えアクノリッジカウンタ部124はこの通知を受けると、送信出力増加閾値回数カウンタ126の計数値としての送信出力増加閾値回数を「1」だけ増加させる(ステップS243)。送信出力増加閾値回数カウンタ126のカウント値は初期値が「0」となっており、ステップS242の通信成功通知を受けるたびにカウント値を「1」ずつ増加させることになる。
【0061】
閾値超えアクノリッジカウンタ部124は送信出力増加閾値回数カウンタ126のカウント値が、予め送信出力増加閾値回数について定めた規定値を超過したかを判別する(ステップS244)。送信出力増加閾値回数について定めた規定値は、たとえば30(回)である。
【0062】
パケット信号の送信が成功したことが連続した結果、送信出力増加閾値回数カウンタ126のカウント値が規定値を超過した場合(Y)、閾値超えアクノリッジカウンタ部124は送信出力決定部123に対して送信出力設定の高出力側への変更を通知する(ステップS245)。そして、閾値超えアクノリッジカウンタ部124内の送信出力低減閾値回数カウンタ125と送信出力増加閾値回数カウンタ126の計数値を「0」に初期化して(ステップS246)、無線LAN親機101によるパケット送出処理を終了させることになる(エンド)。
【0063】
以上の処理により、パケットの送信出力が増加するので、当初設定された低めな通信レートで通信がより安定に行われる。この結果、通信レートは図9で説明した通信レートの決定処理によって可能な範囲まで高速化させることができる。このようにして無線LAN親機101と無線LAN子機102との間の通信が最適化され、効率的な通信が可能になる。
【0064】
一方、ステップS244でカウントアップ後の送信出力増加閾値回数カウンタ126のカウント値が予め定めた規定値を超過するに至っていない場合には(N)、ステップS245で説明した処理を行うことなく無線LAN親機101によるパケット送出処理が終了する(エンド)。また、ステップS241で無線LAN子機102からのアクノリッジ応答が所定時間以内になかった場合には(N)、図8のステップS202に進んで、図9で図示を省略した処理により低速な通信レートに変更して、変更後の通信レートでステップS203以降の処理としてのパケットの再送処理を行うことになる。パケットの再送処理の上限を超えた場合には(ステップS209:Y)、パケットを廃棄して(ステップS210)、無線LAN親機101によるパケット送出処理が終了する(エンド)。
【0065】
最後に、図8のステップS214で無線LAN親機101がパケット信号を送出した場合を説明する。この例の場合、通信レートは送信出力低減閾値以上となっており、送信出力を低減させることになる高めの値となっている。
【0066】
無線LAN親機101はパケット信号を送出した後、無線LAN子機102からのアクノリッジ応答があるかを待機する(ステップS247)。パケット信号の送信から所定時間以内にアクノリッジ応答があれば(Y)、無線LAN親機101はその閾値超えアクノリッジカウンタ部124に無線LAN子機102との通信が成功したことを通知する(ステップS248)。閾値超えアクノリッジカウンタ部124はこの通知を受けると、送信出力低減閾値回数カウンタ125の計数値としての送信出力低減閾値回数を「1」だけ増加させる(ステップS249)。送信出力低減閾値回数カウンタ125のカウント値は初期値が「0」となっており、ステップS248の通信成功通知を受けるたびにカウント値を「1」ずつ増加させることになる。
【0067】
閾値超えアクノリッジカウンタ部124は送信出力低減閾値回数カウンタ125のカウント値が、予め送信出力低減閾値回数について定めた規定値を超過したかを判別する(ステップS250)。送信出力低減閾値回数について定めた規定値としては、たとえば50(回)である。パケット信号の送信が成功したことが連続した結果、送信出力低減閾値回数カウンタ125のカウント値が規定値を超過した場合(Y)、閾値超えアクノリッジカウンタ部124は送信出力決定部123に対して送信出力設定の低出力側への変更を通知する(ステップS251)。そして、閾値超えアクノリッジカウンタ部124内の送信出力低減閾値回数カウンタ125と送信出力増加閾値回数カウンタ126の計数値を「0」に初期化して(ステップS246)、無線LAN親機101によるパケット送出処理を終了させることになる(エンド)。
【0068】
以上の処理により、パケットの送信出力が減少するので、無線LAN親機101と無線LAN子機102との間の通信が電力消費を低減した状態で行われることになる。
【0069】
ステップS250でカウントアップ後の送信出力低減閾値回数カウンタ125のカウント値が予め定めた規定値を超過するに至っていない場合には(N)、ステップS251で説明した処理を行うことなく無線LAN親機101によるパケット送出処理が終了する(エンド)。また、ステップS247で無線LAN子機102からのアクノリッジ応答が所定時間以内になかった場合には(N)、図8のステップS202に進んで、前記したように低速な通信レートに変更して、変更後の通信レートでステップS203以降の処理としてのパケットの再送処理を行うことになる。パケットの再送処理の上限を超えた場合には(ステップS209:Y)、パケットを廃棄して(ステップS210)、無線LAN親機101によるパケット送出処理が終了する(エンド)。
【0070】
以上説明したように本実施の形態の無線LAN通信システム100によれば、回線品質を測定する特別のパケットを使用することなく通信レートや送信出力を動的に制御して無線部での消費電力を抑えることができる。これにより、無線通信のオーバヘッドを解消することができる。
【0071】
また、本実施の形態の無線LAN通信システム100によれば、パケット信号を送信する無線LAN親機101あるいは無線LAN子機102が二次電池を電源とした場合に、動的に送信出力を制御する省電力効果によって長時間の通信が可能になる。
【0072】
更に、本実施の形態の無線LAN通信システム100によれば、自動的に送信出力を制御して、最適な通信可能エリアを構成することができる。これにより、他の無線通信への影響を低減することができる。したがって、ISM(Industry-Science-Medical)バンドを使用する2.4GHz帯の無線LAN通信に本発明を適用すると、実用的な効果が大きい。
【0073】
本発明は以上説明した実施の形態に限らず、各種の変形が可能である。
【0074】
<発明の第1の変形例>
【0075】
図11は、本発明の第1の変形例の無線LAN通信システムにおける無線LAN親機の構成を表わしたものである。図11で図6と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。
【0076】
第1の変形例の無線LAN親機101Aは、閾値超えアクノリッジカウンタ部124A内にタイマ301を配置している。タイマ301は、送信出力低減閾値回数カウンタ125および送信出力増加閾値回数カウンタ126と接続されており、起動時から時間t1を計時するようになっている。タイマ301の起動は、閾値超えアクノリッジカウンタ部124A内の送信出力低減閾値回数カウンタ125あるいは送信出力増加閾値回数カウンタ126の計数値が「0」の初期値から「1」にカウントアップされた時点で行われる。タイマ301は、たとえば時間t1を2秒間に設定しており、この間に送信出力低減閾値回数または送信出力増加閾値回数が規定回数を超えない場合は、これらの計数値を「0」にリセットするようになっている。制御部130A内のメモリ129Aには、このような制御を行うためのプログラムが格納されている。
【0077】
図12は、この第1の変形例における無線LAN親機のパケット信号の送信処理の要部を表わしたものである。図12は、先の実施の形態における図10に対応するものである。したがって、図12で図10と同一の処理を行う箇所には、図10と同一のステップ番号を付している。図5〜図9および図11と共に説明する。
【0078】
第1の変形例では、先の実施の形態と同様に無線LAN親機101Aが無線LAN子機102に対するパケット信号の通信レートと送信出力を決定して(図8ステップS202、ステップS203)、通信を開始することになる。図8のステップS212で無線LAN親機101Aが通信レートを送信出力増加閾値未満の状態に設定してパケット信号を送出したとする。この場合、送信出力を高める制御が行われることになる。
【0079】
無線LAN親機101Aはパケット信号を送出した後、無線LAN子機102からのアクノリッジ応答があるかを待機する(ステップS241)。パケット信号の送信から所定時間以内にアクノリッジ応答があれば(Y)、無線LAN親機101Aはその閾値超えアクノリッジカウンタ部124Aに無線LAN子機102との通信が成功したことを通知する(ステップS242)。閾値超えアクノリッジカウンタ部124Aはこの通知を受けると、送信出力増加閾値回数カウンタ126の計数値としての送信出力増加閾値回数を「1」だけ増加させる(ステップS243)。
【0080】
送信出力増加閾値回数カウンタ126のカウント値は初期値が「0」となっている。したがって、制御部130Aは、送信出力増加閾値回数カウンタ126のカウント値が「1」だけ増加した時点でタイマ301がすでに起動している状態であるかをチェックする(ステップS401)。タイマ301が起動していなければ(N)、これを起動させる(ステップS402)。そして、今回のパケット送信処理を終了する(エンド)。
【0081】
タイマ301が既に起動している場合には(ステップS401:Y)、起動から時間t1が経過しているかを判別する(ステップS403)。起動から時間t1が経過している場合には(Y)、ステップS246に進んで閾値超えアクノリッジカウンタ部124A内の送信出力低減閾値回数カウンタ125と送信出力増加閾値回数カウンタ126の計数値を「0」に初期化し、今回のパケット送信処理を終了する(エンド)。
【0082】
起動から時間t1が経過していない場合(ステップS403:N)、閾値超えアクノリッジカウンタ部124Aは送信出力増加閾値回数カウンタ126のカウント値が、予め送信出力増加閾値回数について定めた規定値を超過したかを判別する(ステップS244)。送信出力増加閾値回数について定めた規定値は、たとえば30(回)である。パケット信号の送信が成功したことが連続した結果、送信出力増加閾値回数カウンタ126のカウント値が規定値を超過した場合(Y)、閾値超えアクノリッジカウンタ部124Aは送信出力決定部123に対して送信出力設定の高出力側への変更を通知する(ステップS245)。そして、閾値超えアクノリッジカウンタ部124A内の送信出力低減閾値回数カウンタ125と送信出力増加閾値回数カウンタ126の計数値を「0」に初期化して(ステップS246)、無線LAN親機101Aによるパケット送出処理を終了させることになる(エンド)。
【0083】
一方、ステップS244でカウントアップ後の送信出力増加閾値回数カウンタ126のカウント値が予め定めた規定値を超過するに至っていない場合には(N)、ステップS245で説明した処理を行うことなく無線LAN親機101Aによるパケット送出処理が終了する(エンド)。また、ステップS241で無線LAN子機102からのアクノリッジ応答が所定時間以内になかった場合には(N)、図8のステップS202に進んで、図9で図示を省略した処理により低速な通信レートに変更して、変更後の通信レートでステップS203以降の処理としてのパケットの再送処理を行うことになる。パケットの再送処理の上限を超えた場合には(ステップS209:Y)、パケットを廃棄して無線LAN親機101Aによるパケット送出処理が終了する(エンド)。
【0084】
次に、図8のステップS214で無線LAN親機101Aがパケット信号を送出した場合における第1の変形例での処理を説明する。この例の場合、通信レートは送信出力低減閾値以上となっており、送信出力を低減させることになる高めの値となっている。
【0085】
無線LAN親機101Aはパケット信号を送出した後、無線LAN子機102からのアクノリッジ応答があるかを待機する(ステップS247)。パケット信号の送信から所定時間以内にアクノリッジ応答があれば(Y)、無線LAN親機101Aはその閾値超えアクノリッジカウンタ部124Aに無線LAN子機102との通信が成功したことを通知する(ステップS248)。閾値超えアクノリッジカウンタ部124Aはこの通知を受けると、送信出力低減閾値回数カウンタ125の計数値としての送信出力低減閾値回数を「1」だけ増加させる(ステップS229)。
【0086】
送信出力低減閾値回数カウンタ125のカウント値は初期値が「0」となっている。したがって、制御部130Aは、送信出力低減閾値回数カウンタ125のカウント値が「1」だけ増加した時点でタイマ301がすでに起動している状態であるかをチェックする(ステップS404)。タイマ301が起動していなければ(N)、これを起動させる(ステップS402)。そして、今回のパケット送信処理を終了する(エンド)。
【0087】
タイマ301が既に起動している場合には(ステップS404:Y)、起動から時間t1が経過しているかを判別する(ステップS405)。起動から時間t1が経過している場合には(Y)、ステップS246に進んで閾値超えアクノリッジカウンタ部124A内の送信出力低減閾値回数カウンタ125と送信出力増加閾値回数カウンタ126の計数値を「0」に初期化し、今回のパケット送信処理を終了する(エンド)。
【0088】
起動から時間t1が経過していない場合(ステップS405:N)、閾値超えアクノリッジカウンタ部124Aは送信出力低減閾値回数カウンタ125のカウント値が、予め送信出力低減閾値回数について定めた規定値を超過したかを判別する(ステップS250)。送信出力低減閾値回数について定めた規定値としては、たとえば50(回)である。パケット信号の送信が成功したことが連続した結果、送信出力低減閾値回数カウンタ125のカウント値が規定値を超過した場合(Y)、閾値超えアクノリッジカウンタ部124Aは送信出力決定部123に対して送信出力設定の低出力側への変更を通知する(ステップS251)。そして、閾値超えアクノリッジカウンタ部124A内の送信出力低減閾値回数カウンタ125と送信出力増加閾値回数カウンタ126の計数値を「0」に初期化して(ステップS246)、無線LAN親機101Aによるパケット送出処理を終了させることになる(エンド)。
【0089】
ステップS250でカウントアップ後の送信出力低減閾値回数カウンタ125のカウント値が予め定めた規定値を超過するに至っていない場合には(N)、ステップS251で説明した処理を行うことなく無線LAN親機101Aによるパケット送出処理が終了する(エンド)。また、ステップS247で無線LAN子機102からのアクノリッジ応答が所定時間以内になかった場合には(N)、図8のステップS202に進んで、前記したように低速な通信レートに変更して、変更後の通信レートでステップS203以降の処理としてのパケットの再送処理を行うことになる。パケットの再送処理の上限を超えた場合には(ステップS209:Y)、パケットを廃棄して無線LAN親機101Aによるパケット送出処理が終了する(エンド)。
【0090】
以上説明した第1の変形例では、タイマ301を用いた制御によって、通信環境の変化に追従した細かい送信電力制御が可能になる。
【0091】
<発明の第2の変形例>
【0092】
図13は、本発明の第2の変形例の無線LAN通信システムにおける無線LAN親機の構成を表わしたものである。図13で図6と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。
【0093】
第2の変形例の無線LAN親機101Bは、閾値超え回数監視部501を備えている。閾値超え回数監視部501は、閾値超えアクノリッジカウンタ部124B内の送信出力低減閾値回数カウンタ125および送信出力増加閾値回数カウンタ126のカウント値を監視する。そして、送信出力低減閾値回数カウンタ125と送信出力増加閾値回数カウンタ126のカウント値が共に規定の通信環境判断回数、たとえば20回を超えると、送信出力決定部123Bに送信出力低減閾値回数と送信出力増加閾値回数が両方とも通信環境判断回数を超えたと判断して送信出力設定の高出力側への変更を通知するようになっている。この通知が行われると、送信出力低減閾値回数カウンタ125および送信出力増加閾値回数カウンタ126は、これらのカウント値を「0」に初期化する。制御部130B内のメモリ129Bには、このような制御を行うためのプログラムが格納されている。
【0094】
図14は、この第2の変形例における無線LAN親機のパケット信号の送信処理の要部を表わしたものである。図14は、先の実施の形態における図10および第1の変形例の図12に対応するものである。したがって、図14で図10と同一の処理を行う箇所には、図10と同一のステップ番号を付している。図5〜図9および図13と共に説明する。
【0095】
第2の変形例では、先の実施の形態と同様に無線LAN親機101Bが無線LAN子機102に対するパケット信号の通信レートと送信出力を決定して(図8ステップS202、ステップS203)、通信を開始することになる。図8のステップS212で無線LAN親機101Bが通信レートを送信出力増加閾値未満の状態に設定してパケット信号を送出したとする。この場合、送信出力を高める制御が行われることになる。
【0096】
無線LAN親機101Bはパケット信号を送出した後、無線LAN子機102からのアクノリッジ応答があるかを待機する(ステップS241)。パケット信号の送信から所定時間以内にアクノリッジ応答があれば(Y)、無線LAN親機101Bはその閾値超えアクノリッジカウンタ部124Bに無線LAN子機102との通信が成功したことを通知する(ステップS242)。閾値超えアクノリッジカウンタ部124Bはこの通知を受けると、送信出力増加閾値回数カウンタ126の計数値としての送信出力増加閾値回数を「1」だけ増加させる(ステップS243)。送信出力増加閾値回数カウンタ126のカウント値は初期値が「0」となっており、ステップS242の通信成功通知を受けるたびにカウント値を「1」ずつ増加させることになる。
【0097】
閾値超えアクノリッジカウンタ部124Bは送信出力増加閾値回数カウンタ126のカウント値が、予め送信出力増加閾値回数について定めた規定値を超過したかを判別する(ステップS244)。送信出力増加閾値回数について定めた規定値は、たとえば30(回)である。パケット信号の送信が成功したことが連続した結果、送信出力増加閾値回数カウンタ126のカウント値が規定値を超過した場合(Y)、閾値超えアクノリッジカウンタ部124Bは送信出力決定部123Bに対して送信出力設定の高出力側への変更を通知する(ステップS245)。そして、閾値超えアクノリッジカウンタ部124B内の送信出力低減閾値回数カウンタ125と送信出力増加閾値回数カウンタ126の計数値を「0」に初期化して(ステップS246)、無線LAN親機101Bによるパケット送出処理を終了させることになる(エンド)。
【0098】
一方、ステップS244でカウントアップ後の送信出力増加閾値回数カウンタ126のカウント値が予め定めた規定値を超過するに至っていない場合(N)、閾値超え回数監視部501は送信出力低減閾値回数カウンタ125と送信出力増加閾値回数カウンタ126のカウント値が共に規定の通信環境判断回数を超えたかをチェックする(ステップS601)。通信環境判断回数を超えていない場合には(N)、先の実施の形態と同様に、ステップS245で説明した処理を行うことなく無線LAN親機101Bによるパケット送出処理が終了する(エンド)。
【0099】
送信出力低減閾値回数カウンタ125と送信出力増加閾値回数カウンタ126のカウント値が共に規定の通信環境判断回数を超えた場合(ステップS601:Y)、閾値超えアクノリッジカウンタ部124Bは送信出力決定部123Bに送信出力設定の高出力側への変更を通知する(ステップS245)。この通知を受け、閾値超えアクノリッジカウンタ部124Bは送信出力低減閾値回数カウンタ125と送信出力増加閾値回数カウンタ126のカウント値を共に「0」に初期化する(ステップS246)。そして、無線LAN親機101Bによるパケット送出処理が終了する(エンド)。ここで、ステップS601で判別の対象となる通信環境判断回数は、送信出力低減閾値回数カウンタ125と送信出力増加閾値回数カウンタ126の規定の通信環境判断回数のいずれよりも少ない回数となっている。
【0100】
なお、ステップS241で無線LAN子機102からのアクノリッジ応答が所定時間以内になかった場合には(N)、図8のステップS202に進んで、図9で図示を省略した処理により低速な通信レートに変更して、変更後の通信レートでステップS203以降の処理としてのパケットの再送処理を行うことになる。パケットの再送処理の上限を超えた場合には(ステップS209:Y)、パケットを廃棄して無線LAN親機101Bによるパケット送出処理が終了する(エンド)。
【0101】
最後に、図8のステップS214で無線LAN親機101Bがパケット信号を送出した場合を説明する。この例の場合、通信レートは送信出力低減閾値以上となっており、送信出力を低減させることになる高めの値となっている。
【0102】
無線LAN親機101Bはパケット信号を送出した後、無線LAN子機102からのアクノリッジ応答があるかを待機する(ステップS247)。パケット信号の送信から所定時間以内にアクノリッジ応答があれば(Y)、無線LAN親機101Bはその閾値超えアクノリッジカウンタ部124Bに無線LAN子機102との通信が成功したことを通知する(ステップS248)。閾値超えアクノリッジカウンタ部124Bはこの通知を受けると、送信出力低減閾値回数カウンタ125の計数値としての送信出力低減閾値回数を「1」だけ増加させる(ステップS249)。送信出力低減閾値回数カウンタ125のカウント値は初期値が「0」となっており、ステップS248の通信成功通知を受けるたびにカウント値を「1」ずつ増加させることになる。
【0103】
閾値超えアクノリッジカウンタ部124Bは送信出力低減閾値回数カウンタ125のカウント値が、予め送信出力低減閾値回数について定めた規定値を超過したかを判別する(ステップS250)。送信出力低減閾値回数について定めた規定値としては、たとえば50(回)である。パケット信号の送信が成功したことが連続した結果、送信出力低減閾値回数カウンタ125のカウント値が規定値を超過した場合(Y)、閾値超えアクノリッジカウンタ部124Bは送信出力決定部123Bに対して送信出力設定の低出力側への変更を通知する(ステップS251)。そして、閾値超えアクノリッジカウンタ部124B内の送信出力低減閾値回数カウンタ125と送信出力増加閾値回数カウンタ126の計数値を「0」に初期化して(ステップS246)、無線LAN親機101Bによるパケット送出処理を終了させることになる(エンド)。
【0104】
ステップS250でカウントアップ後の送信出力低減閾値回数カウンタ125のカウント値が予め定めた規定値を超過するに至っていない場合(N)、閾値超え回数監視部501は送信出力低減閾値回数カウンタ125と送信出力増加閾値回数カウンタ126のカウント値が共に規定の通信環境判断回数を超えたかをチェックする(ステップS601)。通信環境判断回数を超えていない場合には(N)、先の実施の形態と同様に、ステップS251で説明した処理を行うことなく無線LAN親機101Bによるパケット送出処理が終了する(エンド)。
【0105】
送信出力低減閾値回数カウンタ125と送信出力増加閾値回数カウンタ126のカウント値が共に規定の通信環境判断回数を超えた場合(ステップS601:Y)、閾値超えアクノリッジカウンタ部124Bは送信出力決定部123Bに送信出力設定の高出力側への変更を通知する(ステップS245)。この通知を受け、閾値超えアクノリッジカウンタ部124Bは送信出力低減閾値回数カウンタ125と送信出力増加閾値回数カウンタ126のカウント値を共に「0」に初期化する(ステップS246)。そして、無線LAN親機101Bによるパケット送出処理が終了する(エンド)。
【0106】
なお、ステップS247で無線LAN子機102からのアクノリッジ応答が所定時間以内になかった場合には(N)、図8のステップS202に進んで、前記したように低速な通信レートに変更して、変更後の通信レートでステップS203以降の処理としてのパケットの再送処理を行うことになる。パケットの再送処理の上限を超えた場合には(ステップS209:Y)、パケットを廃棄して無線LAN親機101Bによるパケット送出処理が終了する(エンド)。
【0107】
<発明の第3の変形例>
【0108】
図15は、本発明の第3の変形例の無線LAN通信システムにおける無線LAN親機の構成を表わしたものである。図15で図6と同一部分には同一の符号を付しており、これらの説明を適宜省略する。
【0109】
第3の変形例の無線LAN親機101Cは、送信出力閾値校正部701を備えている。また、送信出力設定テーブル部127Cには、通信環境が良好な場合と劣悪な場合の双方についての送信出力低減閾値711および送信出力増加閾値712を抽出するための良好通信環境用テーブル721および劣悪通信環境用テーブル722が新たに格納されている。制御部130C内のメモリ129Cには、第3の変形例で無線LAN親機101Cが通信環境の変化に応じて送信電力低減閾値および送信出力増加閾値の変更を行うためのプログラムが格納されている。
【0110】
図16は、第3の変形例の無線LAN親機による通信環境の変化に伴う送信電力低減閾値および送信出力増加閾値の校正処理の要部を示したものである。図5および図15と共に説明する。
【0111】
無線LAN親機101Cの無線部121は、図5に示す無線LAN子機102からパケット信号を受信すると(ステップS801)、そのRSSI値を送信出力閾値校正部701に通知する(ステップS802)。RSSI値は受信した信号の強度であり「0」から「255」までの値をとることができる。しかしながら、同じ電力を無線部121に入力したとしても、受信した装置によってRSSI値が異なってくることが知られている。そこで本実施の形態では最大RSSI値を100パーセントとして、パーセントで表わした相対的な値を送信出力閾値校正部701に通知する。
【0112】
送信出力閾値校正部701は、通知されたRSSI値が70パーセント以上であるかをまず判別する(ステップS803)。RSSI値が70パーセント以上であれば(Y)、送信出力閾値校正部701は無線LAN親機101Cが無線LAN子機102と良好な通信環境で通信を行っていると判断する。そこで、送信出力閾値校正部701は良好通信環境用テーブル721を用いて送信出力低減閾値711および送信出力増加閾値712を抽出し、これらの閾値を校正して(ステップS804)、図16に示した処理を終了する(エンド)。
【0113】
一方、送信出力閾値校正部701に通知されたRSSI値が70パーセント未満であった場合には(ステップS803:N)、この値が30パーセント以下であるかを判別する(ステップS805)。30パーセント以下であれば(Y)、送信出力閾値校正部701は無線LAN親機101Cが無線LAN子機102と劣悪な通信環境で通信を行っていると判断する。そこで、送信出力閾値校正部701は劣悪通信環境用テーブル722を用いて送信出力低減閾値711および送信出力増加閾値712を抽出し、これらの閾値を校正して(ステップS806)、図16に示した処理を終了する(エンド)。
【0114】
以上と異なり、送信出力閾値校正部701に通知されたRSSI値が70パーセント以上でも30パーセント以下でもなかった場合には(ステップS803:N、ステップS805:N)、特に校正を行うことなく送信出力の制御が行われることになる。
【0115】
図17は、良好通信環境用テーブルの一例を示しており、図18は劣悪通信環境用テーブルの一例を示している。良好通信環境用テーブル721と劣悪通信環境用テーブル722で送信出力増加閾値および送信出力低減閾値が通信環境の違いから異なった設定となっている。
【0116】
この第3の変形例による送信出力の制御は、無線LAN親機101Cが複数の無線LAN子機102と通信を行うとき、それぞれの通信環境の変化に応じて独立した形で行われる。この結果、各無線LAN子機101に最適な送信電力の設定が可能となる。
【0117】
以上説明した実施の形態および第1〜第3の変形例では、無線LAN親機101、101A、101B、101C側の送信制御について説明した。無線LAN子機102側でも同様の制御が可能である。また、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)で複数の無線LAN親機がチャネルを共有する通信環境でも、本発明は同様に適用可能である。
【0118】
更に図7に示した送信出力設定テーブル127Tでは「小出力値」と「中出力値」の送信出力増加閾値および、「中出力値」と「最大出力値」の送信出力低減閾値が、それぞれ同じ通信レートとなっているが、これらの変更も可能である。たとえば、「中出力値」の送信出力増加閾値を6Mbpsから36Mbpsに変更すれば、通信レートが安定しない場合に、より早く「最大出力値」の送信出力へと設定を変えることができる。
【0119】
なお本発明で最低限確保したい通信レートがある場合は、その通信レートを送信出力増加閾値として初期的な送信を開始するようにし、その通信レートが確保できる範囲内で送信出力を順次減少する方向に選択を行うようにすることも可能である。また、実施の形態の無線LAN通信システム100で最低限確保したい通信レートがある場合には、その通信レートを送信出力増加閾値とすることで、その通信レートを確保できる送信出力を選択することが可能になる。
【0120】
更に、以上説明した実施の形態および第1〜第3の変形例では、無線LANを通信の例として採り上げたが、これに限定されるものではない。一般的な無線あるいは有線の通信でも通信環境が変動する場合には、本発明を同様に適用することができる。
【0121】
以上説明した実施の形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されるが、以下の記載に限定されるものではない。
【0122】
(付記1)
通信相手と通信する際の通信レートと送信出力についての複数の組み合わせを通信条件として規定した通信テーブルと、
前記通信相手との通信に先立って前記通信テーブルから通信が成功する可能性の高い1つの組み合わせを初期的な通信条件として選択する通信条件初期選択手段と、
特定された1つの通信条件で前記通信相手に信号を送信する送信手段と、
この送信手段の送信した前記信号を受信した前記通信相手から受信の成功を示す返答があったときこれを受信する返答受信手段と、
この返答受信手段の受信した返答状況に応じて前記通信相手との間の通信環境を判別する通信環境判別手段と、
前記通信条件初期選択手段の選択した通信条件を最初として前記送信手段の送信に採用された通信条件に対する前記通信環境判別手段の判別結果に応じて前記通信テーブルから前記通信レートが高くなる方向あるいは送信出力が減少する方向に沿って送信に使用する改定した通信条件を選択する通信条件改定手段と、
前記通信環境判別手段の判別結果に応じて前記通信条件改定手段による次の改定した通信条件を選択するか現在の通信条件を保持するかを判別する通信条件判別手段
とを具備することを特徴とする送信装置。
【0123】
(付記2)
前記通信テーブルには、前記通信相手の通信方式に適合するための複数の通信方式についての通信条件が規定されており、前記通信条件初期選択手段および前記通信条件改定手段は通信相手に適合する通信方式の中から通信条件を選択することを特徴とする付記1記載の送信装置。
【0124】
(付記3)
前記通信テーブルには、前記通信条件初期選択手段が初期的な通信条件を選択する指標となる閾値が設定されていることを特徴とする付記1記載の送信装置。
【0125】
(付記4)
前記通信環境判別手段は、前記返答受信手段が前記送信手段の信号送信に対して所定回数以上連続して前記受信の成功を示す返答を受信したとき通信環境に余裕があると判別し、前記通信条件判別手段は前記通信条件改定手段による次の通信条件への改定が可能であると判別することを特徴とする付記1記載の送信装置。
【0126】
(付記5)
前記通信環境判別手段は、同一の通信条件における前記送信手段の信号送信回数に対する前記受信の成功を示す返答の受信の割合が所定回数を超えたとき通信環境に余裕があると判別し、前記通信条件判別手段は前記通信条件改定手段による次の通信条件への改定が可能であると判別することを特徴とする付記1記載の送信装置。
【0127】
(付記6)
前記通信環境判別手段は、前記受信の成功を示す返答の受信が前記所定回数以上連続して行われる制限時間を測定するタイマと、前記所定回数に達する前に前記制限時間に達したとき計数した回数をクリアするカウントクリア手段とを具備することを特徴とする付記5記載の送信装置。
【0128】
(付記7)
前記通信環境判別手段は、前記返答受信手段の受信した信号のRSSI(Received Signal Strength Indicator)値を用いて通信環境を判別することを特徴とする付記1記載の送信装置。
【0129】
(付記8)
前記通信テーブルには、無線LANで通信を行う際の通信条件が規定されていることを特徴とする付記1記載の送信装置。
【0130】
(付記9)
前記通信条件改定手段は前記通信テーブルから通信出力を減少させる方向に通信条件を改定し、その後に通信レートを高める方向に通信条件を更に改定することを特徴とする付記1記載の送信装置。
【0131】
(付記10)
前記通信テーブルは、前記通信環境判別手段の判別した通信環境にそれぞれ対応した専用のテーブルを備えていることを特徴とする付記1記載の送信装置。
【0132】
(付記11)
通信相手と通信する際の通信レートと送信出力についての複数の組み合わせを通信条件として規定した通信テーブルと、前記通信相手との通信に先立って前記通信テーブルから通信が成功する可能性の高い1つの組み合わせを初期的な通信条件として選択する通信条件初期選択手段と、特定された1つの通信条件で前記通信相手に信号を送信する送信手段と、この送信手段の送信した前記信号を受信した前記通信相手から受信の成功を示す返答があったときこれを受信する返答受信手段と、この返答受信手段の受信した返答状況に応じて前記通信相手との間の通信環境を判別する通信環境判別手段と、前記通信条件初期選択手段の選択した通信条件を最初として前記送信手段の送信に採用された通信条件に対する前記通信環境判別手段の判別結果に応じて前記通信テーブルから前記通信レートが高くなる方向あるいは送信出力が減少する方向に沿って送信に使用する改定した通信条件を選択する通信条件改定手段と、前記通信環境判別手段の判別結果に応じて前記通信条件改定手段による次の改定した通信条件を選択するか現在の通信条件を保持するかを判別する通信条件判別手段とを備えた送信装置と、
この送信装置の前記送信手段から送られてきた信号を受信する受信手段と、この受信手段で信号の受信が成功したとき前記受信の成功を示す返答を行う返答手段を備えた受信装置
とを具備することを特徴とする通信システム。
【0133】
(付記12)
前記受信装置は前記送信装置に対して通信可能な通信方式を返答する通信方式返答手段を備え、前記送信装置の通信条件改定手段は前記通信テーブルの中から改定後の通信条件を選択するとき受信装置の通信可能な通信方式のうちの1つを選択することを特徴とする付記11記載の通信システム。
【0134】
(付記13)
通信相手と通信する際の通信レートと送信出力についての複数の組み合わせを通信条件として規定した通信テーブルの中から前記通信相手との通信に先立って前記通信テーブルから通信が成功する可能性の高い1つの組み合わせを初期的な通信条件として選択する通信条件初期選択ステップと、
1つの通信条件で前記通信相手に信号を送信する送信ステップと、
この送信ステップで送信した前記信号を受信した前記通信相手から受信の成功を示す返答があったときこれを受信する返答受信ステップと、
この返答受信ステップにより受信した返答状況に応じて前記通信相手との間の通信環境を判別する通信環境判別ステップと、
前記通信条件初期選択ステップで選択した通信条件を最初として前記送信ステップによる送信に採用された通信条件に対する前記通信環境判別ステップによる判別結果に応じて前記通信テーブルから前記通信レートが高くなる方向あるいは送信出力が減少する方向に沿って送信に使用する改定した通信条件を選択する通信条件改定ステップと、
前記通信環境判別ステップによる判別結果に応じて前記通信条件改定ステップを用いて次の改定した通信条件を選択するか現在の通信条件を保持するかを判別する通信条件判別ステップ
とを具備することを特徴とする通信条件決定方法。
【0135】
(付記14)
最低限確保したい通信レートがあるとき、前記通信条件初期選択ステップでは、この通信レートを通信条件の一部として送信出力を選択し、前記通信条件改定ステップでは前記通信レートを固定して選択して送信出力が減少する方向に通信条件を選択することを特徴とする付記13記載の通信条件決定方法。
【0136】
(付記15)
コンピュータに、
通信相手と通信する際の通信レートと送信出力についての複数の組み合わせを通信条件として規定した通信テーブルの中から前記通信相手との通信に先立って前記通信テーブルから通信が成功する可能性の高い1つの組み合わせを初期的な通信条件として選択する通信条件初期選択処理と、
1つの通信条件で前記通信相手に信号を送信する送信処理と、
この送信処理で送信した前記信号を受信した前記通信相手から受信の成功を示す返答があったときこれを受信する返答受信処理と、
この返答受信処理により受信した返答状況に応じて前記通信相手との間の通信環境を判別する通信環境判別処理と、
前記通信条件初期選択処理で選択した通信条件を最初として前記送信処理による送信に採用された通信条件に対する前記通信環境判別処理による判別結果に応じて前記通信テーブルから前記通信レートが高くなる方向あるいは送信出力が減少する方向に沿って送信に使用する改定した通信条件を選択する通信条件改定処理と、
前記通信環境判別処理による判別結果に応じて前記通信条件改定処理を用いて次の改定した通信条件を選択するか現在の通信条件を保持するかを判別する通信条件判別処理
とを実行させることを特徴とする通信条件決定プログラム。
【0137】
(付記16)
最低限確保したい通信レートがあるとき、前記通信条件初期選択処理では、この通信レートを通信条件の一部として送信出力を選択し、前記通信条件改定処理では前記通信レートを固定して選択して送信出力が減少する方向に通信条件を選択することを特徴とする付記15記載の通信条件決定プログラム。
【符号の説明】
【0138】
10、21 送信装置
11、21a 通信テーブル
12、21b 通信条件初期選択手段
13、21c 送信手段
14、21d 返答受信手段
15、21e 通信環境判別手段
16、21f 通信条件改定手段
17、21g 通信条件判別手段
20 通信システム
22 受信装置
22a 受信手段
22b 返答手段
30 通信条件決定方法
31 通信条件初期選択ステップ
32 送信ステップ
33 返答受信ステップ
34 通信環境判別ステップ
35 通信条件改定ステップ
36 通信条件判別ステップ
40 通信条件決定プログラム
41 通信条件初期選択処理
42 送信処理
43 返答受信処理
44 通信環境判別処理
45 通信条件改定処理
46 通信条件判別処理
100 無線LAN通信システム
101、101A、101B、101C 無線LAN親機
102 無線LAN子機
121 無線部
122 通信レート決定部
123、123B、123C 送信出力決定部
124、124A、124B、124C 閾値超えアクノリッジカウンタ部
125 送信出力低減閾値回数カウンタ
126 送信出力増加閾値回数カウンタ
127、127C 送信出力設定テーブル部
127T 送信出力設定テーブル
128 CPU
129、129A、129B、129C メモリ
130、130A、130B、130C 制御部
301 タイマ
501 回数監視部
701 送信出力閾値校正部
711 送信出力低減閾値
712 送信出力増加閾値
721 良好通信環境用テーブル
722 劣悪通信環境用テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信相手と通信する際の通信レートと送信出力についての複数の組み合わせを通信条件として規定した通信テーブルと、
前記通信相手との通信に先立って前記通信テーブルから通信が成功する可能性の高い1つの組み合わせを初期的な通信条件として選択する通信条件初期選択手段と、
特定された1つの通信条件で前記通信相手に信号を送信する送信手段と、
この送信手段の送信した前記信号を受信した前記通信相手から受信の成功を示す返答があったときこれを受信する返答受信手段と、
この返答受信手段の受信した返答状況に応じて前記通信相手との間の通信環境を判別する通信環境判別手段と、
前記通信条件初期選択手段の選択した通信条件を最初として前記送信手段の送信に採用された通信条件に対する前記通信環境判別手段の判別結果に応じて前記通信テーブルから前記通信レートが高くなる方向あるいは送信出力が減少する方向に沿って送信に使用する改定した通信条件を選択する通信条件改定手段と、
前記通信環境判別手段の判別結果に応じて前記通信条件改定手段による次の改定した通信条件を選択するか現在の通信条件を保持するかを判別する通信条件判別手段
とを具備することを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記通信テーブルには、前記通信相手の通信方式に適合するための複数の通信方式についての通信条件が規定されており、前記通信条件初期選択手段および前記通信条件改定手段は通信相手に適合する通信方式の中から通信条件を選択することを特徴とする請求項1記載の送信装置。
【請求項3】
前記通信テーブルには、前記通信条件初期選択手段が初期的な通信条件を選択する指標となる閾値が設定されていることを特徴とする請求項1記載の送信装置。
【請求項4】
前記通信環境判別手段は、前記返答受信手段が前記送信手段の信号送信に対して所定回数以上連続して前記受信の成功を示す返答を受信したとき通信環境に余裕があると判別し、前記通信条件判別手段は前記通信条件改定手段による次の通信条件への改定が可能であると判別することを特徴とする請求項1記載の送信装置。
【請求項5】
前記通信環境判別手段は、同一の通信条件における前記送信手段の信号送信回数に対する前記受信の成功を示す返答の受信の割合が所定回数を超えたとき通信環境に余裕があると判別し、前記通信条件判別手段は前記通信条件改定手段による次の通信条件への改定が可能であると判別することを特徴とする請求項1記載の送信装置。
【請求項6】
前記通信環境判別手段は、前記受信の成功を示す返答の受信が前記所定回数以上連続して行われる制限時間を測定するタイマと、前記所定回数に達する前に前記制限時間に達したとき計数した回数をクリアするカウントクリア手段とを具備することを特徴とする請求項5記載の送信装置。
【請求項7】
前記通信テーブルは、前記通信環境判別手段の判別した通信環境にそれぞれ対応した専用のテーブルを備えていることを特徴とする請求項1記載の送信装置。
【請求項8】
通信相手と通信する際の通信レートと送信出力についての複数の組み合わせを通信条件として規定した通信テーブルと、前記通信相手との通信に先立って前記通信テーブルから通信が成功する可能性の高い1つの組み合わせを初期的な通信条件として選択する通信条件初期選択手段と、特定された1つの通信条件で前記通信相手に信号を送信する送信手段と、この送信手段の送信した前記信号を受信した前記通信相手から受信の成功を示す返答があったときこれを受信する返答受信手段と、この返答受信手段の受信した返答状況に応じて前記通信相手との間の通信環境を判別する通信環境判別手段と、前記通信条件初期選択手段の選択した通信条件を最初として前記送信手段の送信に採用された通信条件に対する前記通信環境判別手段の判別結果に応じて前記通信テーブルから前記通信レートが高くなる方向あるいは送信出力が減少する方向に沿って送信に使用する改定した通信条件を選択する通信条件改定手段と、前記通信環境判別手段の判別結果に応じて前記通信条件改定手段による次の改定した通信条件を選択するか現在の通信条件を保持するかを判別する通信条件判別手段とを備えた送信装置と、
この送信装置の前記送信手段から送られてきた信号を受信する受信手段と、この受信手段で信号の受信が成功したとき前記受信の成功を示す返答を行う返答手段を備えた受信装置
とを具備することを特徴とする通信システム。
【請求項9】
通信相手と通信する際の通信レートと送信出力についての複数の組み合わせを通信条件として規定した通信テーブルの中から前記通信相手との通信に先立って前記通信テーブルから通信が成功する可能性の高い1つの組み合わせを初期的な通信条件として選択する通信条件初期選択ステップと、
1つの通信条件で前記通信相手に信号を送信する送信ステップと、
この送信ステップで送信した前記信号を受信した前記通信相手から受信の成功を示す返答があったときこれを受信する返答受信ステップと、
この返答受信ステップにより受信した返答状況に応じて前記通信相手との間の通信環境を判別する通信環境判別ステップと、
前記通信条件初期選択ステップで選択した通信条件を最初として前記送信ステップによる送信に採用された通信条件に対する前記通信環境判別ステップによる判別結果に応じて前記通信テーブルから前記通信レートが高くなる方向あるいは送信出力が減少する方向に沿って送信に使用する改定した通信条件を選択する通信条件改定ステップと、
前記通信環境判別ステップによる判別結果に応じて前記通信条件改定ステップを用いて次の改定した通信条件を選択するか現在の通信条件を保持するかを判別する通信条件判別ステップ
とを具備することを特徴とする通信条件決定方法。
【請求項10】
コンピュータに、
通信相手と通信する際の通信レートと送信出力についての複数の組み合わせを通信条件として規定した通信テーブルの中から前記通信相手との通信に先立って前記通信テーブルから通信が成功する可能性の高い1つの組み合わせを初期的な通信条件として選択する通信条件初期選択処理と、
1つの通信条件で前記通信相手に信号を送信する送信処理と、
この送信処理で送信した前記信号を受信した前記通信相手から受信の成功を示す返答があったときこれを受信する返答受信処理と、
この返答受信処理により受信した返答状況に応じて前記通信相手との間の通信環境を判別する通信環境判別処理と、
前記通信条件初期選択処理で選択した通信条件を最初として前記送信処理による送信に採用された通信条件に対する前記通信環境判別処理による判別結果に応じて前記通信テーブルから前記通信レートが高くなる方向あるいは送信出力が減少する方向に沿って送信に使用する改定した通信条件を選択する通信条件改定処理と、
前記通信環境判別処理による判別結果に応じて前記通信条件改定処理を用いて次の改定した通信条件を選択するか現在の通信条件を保持するかを判別する通信条件判別処理
とを実行させることを特徴とする通信条件決定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−51579(P2013−51579A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189049(P2011−189049)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000197366)NECアクセステクニカ株式会社 (1,236)
【Fターム(参考)】