説明

送水管用空気弁

【課題】ごみ等の異物が詰まり難く、維持管理が容易な送水管用空気弁を提供する。
【解決手段】送水管用空気弁10は、弁蓋12を含み、送水管内に混入した空気を排出したり、送水管内の水を排出する際に送水管内に空気を導入したりする。弁蓋12に形成したガイド部22の第1開口部24には、第1摺動体30が摺動可能に取り付けられる。また、第1摺動体30の有する第2開口部34には、第2摺動体48が摺動可能に取り付けられる。第1摺動体30は、第1弁体40を含み、弁蓋12の上方と下方とを直線状に連通する第1空気路を、その上限位置において遮断する。また、第2摺動体48は、フロート64の上に形成される第2弁体56を含み、弁蓋12の上方と下方とを直線状に連通する第2空気路を、その上限位置において遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は送水管用空気弁に関し、特にたとえば、送水管内に混入した空気を排出したり、送水管内の水を排出する際に送水管内に空気を導入したりする、送水管用空気弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の空気弁の一例が特許文献1に開示される。特許文献1の空気弁は、弁箱、弁箱の開口部に装着される蓋体、蓋体に装着されるカバー、弁箱内に配置される有底案内筒、案内筒内に摺動自在に設けられてその上限位置で大径空気孔を閉塞する遊動弁体、および案内筒内に設けられてその上限位置で小径空気孔を閉塞するフロート弁体を備えている。そして、案内筒の内面下方部に保持部(突条)を設けることによって、案内筒とフロート弁体との間に隙間を設け、そこに異物がたまらないようにしようとしている。
【特許文献1】特開2003−97751号公報 [F16K 24/00]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の空気弁では、遊動弁体およびフロート弁体などの作動部の周囲に水が満たされる構造となっている上、案内筒や遊動弁体には水が通るための孔や突条などが設けられて、その形状が複雑になっている。このため、特許文献1の空気弁を、落ち葉および藁などのごみや土粒子などの異物を多く含む農業用水などの配管に用いた場合には、水に含まれる異物が作動部や案内筒に付着したり詰まったりし易く、作動部が動作不良を起こし易いという問題点がある。
【0004】
また、特許文献1の空気弁では、作動部が弁箱内に入り込んでいるため、外部から作動部を点検および清掃することは困難であり、作動部の動作不良の原因となる異物を取り除くためには、カバーおよび蓋体を開いて、弁箱内を分解清掃する作業が必要となる。さらに、カバーおよび蓋体が弁箱に対してボルトで締結されているため、弁箱内を分解清掃する際には、複数のボルトを外さなければならず、その分解作業に手間がかかる上、スパナ等の工具も必要となる。つまり、特許文献1の技術では、維持管理に手間がかかる。
【0005】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、送水管用空気弁を提供することである。
【0006】
この発明の他の目的は、ごみ等の異物が詰まり難く、維持管理が容易な、送水管用空気弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、この発明を何ら限定するものではない。
【0008】
第1の発明は、送水管に取り付けられる送水管用空気弁であって、送水管に接続される弁蓋、弁蓋に設けられ弁蓋の上方と下方とを連通する第1開口部、第1開口部に摺動可能に設けられその上方と下方とを連通する第2開口部を有する第1摺動体、第2開口部に摺動可能に設けられる第2摺動体、第2摺動体の下部に設けられるフロート、第2開口部より外側に形成され弁蓋の上方と下方とを連通する第1空気路、第2開口部の内側に形成され弁蓋の上方と下方とを連通する第2空気路、第1摺動体に設けられ弁蓋の下面と当接して第1空気路の連通を遮断する第1弁体、およびフロートの上に設けられ第1摺動体の下面と当接して第2空気路の連通を遮断する第2弁体を備える、送水管用空気弁である。
【0009】
第1の発明では、送水管用空気弁(10)は、弁蓋(12)を含み、送水管(100)内に混入した空気を排出したり、送水管内の水を排出する際に送水管内に空気を導入したりする。弁蓋は、たとえば、第1開口部(24)を有するガイド部(22)を含み、第1開口部には、第1摺動体(30)が摺動可能に設けられる。また、第1摺動体に形成される第2開口部(34)には、第2摺動体(48)が摺動可能に設けられる。第1摺動体の下部には、第1弁体(40)が設けられる。第1弁体は、第1摺動体の上限位置において、弁蓋の下面、たとえば天頂部(16)やガイド部(22)の下面と当接し、弁蓋の上方と下方と(つまり送水管の内部と外部と)を連通する第1空気路(70)を遮断する。また、第2摺動体の下部には、フロート(64)が設けられ、フロートの上に第2弁体(56)が設けられる。第2弁体は、第2摺動体の上限位置において、第1摺動体の下面と当接し、弁蓋の上方と下方とを連通する第2空気路(72)を遮断する。
【0010】
第1の発明によれば、弁蓋に形成した第1開口部に第1摺動体を摺動させ、第1摺動体に形成した第2開口部に第2摺動体を摺動させるようにしたので、第1摺動体および第2摺動体の摺動部(実施例では、第1シャフト部および第2シャフト部)が水に浸からず、摺動部に異物が浸入し難い。また、水に浸かる部分の形状が複雑にならないので、異物が詰まり難い。また、このような構成であれば、各空気路を直線状に形成できるので、よりシンプルな構成にすることも可能であり、仮に、各空気路に水が浸入して異物が入り込んだとしても、異物は洗い流され易い。したがって、ごみ等の異物が詰まり難く、維持管理が容易となる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明に従属し、第2空気路は、第2摺動体の外側面と第2開口部の側面との間に形成される。
【0012】
第2の発明では、たとえば、第2摺動体(48)の第2シャフト部(50)の外径は、第2開口部(34)の径より小さく設定され、第2シャフト部の外側面と第2開口部の側面との間には隙間が形成される。そして、この隙間が第2空気路(72)として利用される。
【0013】
第3の発明は、第1の発明に従属し、第2空気路は、第2摺動体を貫通して形成される。
【0014】
第3の発明では、たとえば、第2摺動体の管壁を貫通する貫通孔が設けられ、この貫通孔が第2空気路(72)として利用される。
【0015】
第4の発明は、第1ないし第3のいずれかの発明に従属し、第1空気路は、第1摺動体の外側面と第1開口部の側面との間に形成される。
【0016】
第4の発明では、たとえば、第1摺動体(30)の外側面や第1開口部(24)の側面に切欠部(38,76)が設けられ、切欠部と第1開口部或いは第1摺動体との間に形成される空間が、第1空気路(70)として利用される。
【0017】
第5の発明は、第1ないし第3のいずれかの発明に従属し、第1空気路は、第1開口部より外側に形成される。
【0018】
第5の発明では、たとえば、弁蓋(12)の天板部(16)やガイド部(22)を貫通する貫通孔(74)が設けられ、この貫通孔が第1空気路(70)として利用される。
【0019】
第6の発明は、第1ないし第3のいずれかの発明に従属し、第1空気路は、第1摺動体を貫通して形成される。
【0020】
第6の発明では、たとえば、第1摺動体の管壁を貫通する貫通孔(78)が設けられ、この貫通孔が第1空気路(70)として利用される。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、水に浸かる部分の構造をシンプルにできるので、ごみ等の異物が詰まり難く、維持管理が容易となる。また、このような構成であれば、空気路を直線状に形成することもできるので、よりシンプルな構造とすることも可能である。
【0022】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1を参照して、この発明の一実施例である送水管用空気弁(以下、単に「空気弁」という。)10は、たとえば、農業用水配管などの送水管100に立設される縦管102に取り付けられ、送水管100内に混入した空気を排出したり、送水管100内の水を排出する際に送水管100内に空気を導入したりする。なお、縦管102の内径は、送水管100の内径などに応じて適宜設定されるものであり、たとえば100mmである。
【0024】
図2および図3に示すように、空気弁10は、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂などによって形成される弁蓋12を備える。弁蓋12は、短円筒状の側壁部14およびその上端に設けられる円板状の天板部16を含む。側壁部14の内径は、縦管102の外径に対応して適宜設定される。側壁部14の内面には、ねじ溝18が形成され、このねじ溝18と縦管102の外面に形成されるねじ山104との螺合によって、弁蓋12は縦管102に着脱可能に取り付けられる。また、側壁部14の下端には、その内面に沿うように溝部20が形成される。弁蓋12を縦管102に取り付けた際には、この溝部20の内面に、縦管102の外側面に形成された鍔状突起に装着されたゴム輪106が当接し、弁蓋12と縦管102とは水密的に接続される。さらに、天板部16の外側面、つまり側壁部14の外面上部は、周方向に波打つように形成され、縦管102に空気弁10を取り付けたり弁蓋12を着脱したりする際などに、作業者にとって力を入れ易い形状となっている。
【0025】
また、天板部16の中央には、ガイド部22が一体的に形成される。ガイド部22は、天板部16(弁蓋12)の上方と下方とを連通する円柱状の第1開口部24を有し、天板部16の上面および下面から突出するように円筒状に形成される。また、ガイド部22の上部には、カバー26が着脱可能に装着される。カバー26は、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂などによって、その側壁に開口28を有する有頂円筒状に形成される。たとえば、ガイド部22の外側面上部に形成されたねじ溝と、カバー26の内側面下部に形成されたねじ山との螺合によって、ガイド部22(弁蓋12)にカバー26が着脱可能に取り付けられる。このカバー26は、第1開口部24(具体的には、後述する第1空気路70或いは第2空気路72)を通って、送水管100内の水が万一外部に飛び出してしまった場合に、その水の飛散を防止するとともに、埃などの異物が外部から第1開口部24に浸入することを防止する。
【0026】
ガイド部22の第1開口部24には、第1摺動体30が摺動可能に設けられる。図4に示すように、第1摺動体30は、中空軸状の第1シャフト部32を含み、黄銅や炭素鋼などの金属などによって形成される。第1シャフト部32は、その中央に第1シャフト部32の上方と下方とを軸方向に連通する円柱状の第2開口部34を有する。また、第1シャフト部32の外側面36は、第1開口部24の側面(つまりガイド部22の内側面)に沿う曲面で形成されるが、外側面36の一部には切欠部38が形成される。これにより、切欠部38と第1開口部24との間には空間が形成される。この実施例では、鉛直方向に延びる平面状に形成され、互いに平行に延びる2つの切欠部38が形成される。ただし、切欠部38は、その下端において外方に向かって滑らかに湾曲する。なお、第1シャフト部32の外径は、第1開口部24の径とほぼ同じに設定されるが、第1シャフト部32(第1摺動体30)の摺動性を考慮して、第1開口部24の径より僅かに小さく設定される。
【0027】
第1シャフト部32の下端には、その外側面36から鍔状に突出する鍔状部40が一体的に形成される。この鍔状部40の上面に沿うように、第1シャフト部32の外側面36にはゴム輪溝が形成され、そこにゴム輪42が装着される。具体的な動作は後述するが、鍔状部40は、第1摺動体30の上限位置において、ゴム輪42を介して弁蓋12のガイド部22の下面と当接する。つまり、弁蓋12のガイド部22は、第1弁座として機能し、第1摺動体30の鍔状部40は、第1弁体として機能する。
【0028】
また、第1シャフト部32の上部には、第2開口部34より外側において2つの切欠部38を結ぶように、2つの貫通孔44が形成される。2つの貫通孔44のそれぞれには、円柱状の第1係止部46が挿通される。第1係止部46は、切欠部38から突出するように設けられ、第1摺動体30の下限位置においてガイド部22の上面と当接し、第1摺動体30の抜け落ちを防止する。これにより、第1摺動体30の第1係止部46から上の部分は、弁蓋12(ガイド部22)の上面から常に突出(露出)した状態を維持することになる。第1係止部46としては、たとえば汎用のスプリングピン等を利用するとよい。具体的には、スプリングピンは、軸方向に延びる切欠きを有する円筒状のピンであり、径方向にバネ作用を有しているので、貫通孔44の径よりもその最大径が少し大きいスプリングピンを用意し、そのスプリングピンを貫通孔44に挿通することにより、第1シャフト部32に第1係止部46が取り外し可能に取り付けられる。
【0029】
第1シャフト部32(第1摺動体30)の第2開口部34には、第2摺動体48が摺動可能に設けられる。図5に示すように、第2摺動体48は、円柱状の第2シャフト部50を含み、黄銅や炭素鋼などの金属によって形成される。第2シャフト部50の外径は、第2開口部34の径より小さく設定され、第2シャフト部50の側面と第2開口部34の側面との間には隙間が形成される。言い換えると、第2シャフト部50と第2開口部34との径差(或いは「ガタ」)は、第2シャフト部50(第2摺動体48)の摺動性を考慮して設けられる最小限の径差よりも大きな径差に設定される。ただし、この径差を大きくしすぎると、第2摺動体48にふらつきが生じ、後述する第2空気路72を安定的に閉塞できない恐れがあるので、第2シャフト部50と第2開口部34との径差の設定には、第2空気路72の閉塞性が考慮される。
【0030】
また、第2シャフト部50の上部には、リング状の第2係止部52が設けられる。第2係止部52は、第2シャフト50の側面から鍔状に突出し、第2摺動体48の下限位置において第1シャフト部32の上面と当接して、第2摺動体48の抜け落ちを防止する。これにより、第2摺動体48の第2係止部52から上の部分は、第1摺動体30(第1シャフト部32)の上面から常に突出した状態を維持することになる。第2係止部52としては、たとえば汎用のナットを利用することができる。具体的には、第2シャフト部50の側面上部にねじ山54を形成しておき、そのねじ山54にナットを外嵌するとよい。
【0031】
さらに、第2シャフト部50の下部には、その側面から鍔状に突出する鍔状部材56が設けられる。鍔状部材56は、その中央に貫通孔を有する短円筒状に形成され、第2シャフト部50に外嵌される。たとえば、貫通孔の側面にねじ溝が形成され、そのねじ溝と第2シャフト50の側面下部に形成したねじ山58とを螺合させることにより、第2シャフト部50に鍔状部材56が取り外し可能に外嵌される。また、鍔状部材56の上面および下面のそれぞれには、貫通孔に沿うようにゴム輪溝が形成され、ゴム輪60,62が装着される。具体的な動作は後述するが、鍔状部材56は、第2摺動体48の上限位置において、ゴム輪60を介して第1摺動体30の鍔状部40の下面と当接する。つまり、第1摺動体30の鍔状部40は、第2弁座としても機能し、第2摺動体48の鍔状部材56は、第2弁体として機能する。
【0032】
図3に戻って、第2シャフト部50(第2摺動体48)の下部には、上述の鍔状部材56より下の位置において、フロート64が設けられる。フロート64は、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂などによって、たとえば釣鐘状に形成される。第2シャフト部50にフロート64を設ける際には、たとえば、フロート64の上部中央に孔を形成し、その孔に第2シャフト部50の下端を挿入し、その下から、ワッシャを介してナット66を取り付け、鍔状部材56とナット66とによって挟み込むようにしてフロート64を固定するとよい。この際には、鍔状部材56の下面に装着されたゴム輪62によって、鍔状部材56とフロート64との間の水密性は確保される。
【0033】
また、第2係止部52の下面と第1シャフト部32の上面と間には、スペーサ68が装着される。スペーサ68は、第2摺動体48がその下限位置にあるときに、第2係止部52の下面と第1シャフト部32の上面とが密着するように当接してしまうことを防ぐために設けられる。つまり、スペーサ68は、第2係止部52の下面と第1シャフト部32の上面との間に隙間を形成して、後述する第2空気路72がその位置において閉塞してしまうことを防ぐものである。スペーサ68としては、たとえば、汎用のスプリングワッシャやウェーブワッシャを用いることができる。また、たとえば、第1シャフト部32の上面に複数の突起を分散させて形成しておき、この突起の上端で第2摺動体48の第2係止部52を支えるようにして、第2空気路72の閉塞を防ぐようにしてもよい。
【0034】
図6は、弁蓋12の第1開口部24付近を上方から見た断面を示す部分断面図である。上述したように、第1シャフト部32の一部には、鉛直方向に延びる平面状の切欠部38が形成されるので、切欠部38と第1開口部24との間には鉛直方向に延びる直線状でかつ断面形状が一定の空間が形成される。この空間が多量の給排気を行うための第1空気路70となる。また、第2シャフト部50の外径は、第2開口部34の径より小さく設定されるので、第2シャフト部50と第2開口部34との間には鉛直方向に延びる直線状でかつ断面形状が一定の隙間が形成される。この隙間が少量の排気(圧力下排気)を行うための第2空気路72となる。
【0035】
図7−図9を参照して、空気弁10の動作について説明する。上述したように、空気弁10は、送水管100内に混入した空気を排出したり、送水管100内の水を排出する際に送水管100内に空気を導入したりするものである。
【0036】
図7に示すように、送水管100内への通水(充水)を開始するときや、送水管100内の水を排出するときには、縦管102内に水は無く(或いは水位が低く)、縦管102内の圧力も低いので、フロート64(第2摺動体48)は下降した状態となる。このときには、第1シャフト部32の鍔状部40の上面と、弁蓋12のガイド部22の下面とは離れており、第1空気路70は、弁蓋12の上方と下方と(つまり送水管100の外部と内部と)を連通する。また、第2シャフト部50の鍔状部材56の上面と、第1シャフト部32の鍔状部40の下面とは離れており、第2空気路72は、第1摺動体30の上方と下方と(つまり弁蓋12の上方と下方と)を連通する。このように、第1空気路70および第2空気路72が連通状態となることによって、送水管100内への通水を開始するときには、多量の空気を送水管100内から排出でき、送水管100内の水を排出するときには、多量の空気を送水管100内に導入できる。
【0037】
また、図8に示すように、送水管100内への通水が完了して、縦管102内、つまりフロート64の周囲の水位が上昇すると、フロート64の受ける浮力によって第2摺動体48は上昇する。そして、第2シャフト部50の鍔状部材56の上面と、第1シャフト部32の鍔状部40の下面とがゴム輪60を介して当接し、第2空気路72の連通が遮断される。また、第2摺動体48の上昇に伴い、第1摺動体30も押し上げられるように上昇する。そして、第1シャフト部32の鍔状部40の上面と、弁蓋12のガイド部22の下面とがゴム輪42を介して当接し、第1空気路70の連通が遮断される。これによって、空気の排出あるいは導入が停止されると共に、外部への水の排出が防止される。なお、このとき、水に浸かる部分はフロート64のみであり、管内が高圧になり水面が上昇しても、第1シャフト部32および第2シャフト部50の摺動部、第1空気路70および第2空気路72には水が浸入しない。
【0038】
また、送水管100に混入した空気が縦管102内に溜まると、図9に示すように、フロート64の受ける浮力が小さくなって第2摺動体48は下降する。これにより、第2空気路72は連通状態となり、送水管100に混入した空気が第2空気路72を通って外部に排出される。
【0039】
なお、大気圧をP1、縦管102(送水管100)内の圧力をP2、第2シャフト部50の断面積(正確には、鍔状部40の下面とゴム輪60との接触部より内側の面積)をS、第2摺動体48全体(つまりフロート64を含む)の重さをWとした場合、「(P2−P1)×S」の値が「W」の値よりも大きくなると、フロート64の受ける浮力が小さくなっても第2摺動体48は下降しなくなる。しかし、この実施例では、第2シャフト部50の断面積(受圧面積)が小さいので、縦管102内の圧力が高い場合でも第2摺動体48は作動する。つまり、圧力下排気を行うことができる。言い換えると、この実施例では、縦管102内の圧力が高い(たとえば、0.2MPa)場合でも排気が行えるように、第2シャフト部50の外径が設定されている。
【0040】
また、縦管102内の圧力が低い場合(たとえば、大気圧と同程度、或いはそれ以下の場合)には、第2摺動体48の下降に伴い、第1摺動体30も自重により下降して第1空気路70が連通状態になるので、大量排気が可能となる。また、縦管102内の圧力が比較的高く、第1摺動体30がその自重のみでは下降しないような場合でも、第2摺動体48の下降に伴い、第2係止部52が第1摺動体30を押し下げたり、第1摺動体30に衝撃を与えたりすることにより、第1摺動体30を下降させることができる。
【0041】
この実施例では、弁蓋12にガイド部22(第1開口部24)を設けると共に、第2摺動体48の下部にフロート64を設けることによって、第1シャフト部32や第2シャフト部50などの摺動部(作動部)が水に浸からないようにしたので、摺動部にごみ等の異物が侵入し難い。また、水に浸かる部分は、フロート64だけであるので、水に浸かる部分の形状がシンプルになる。つまり、特許文献1の技術のように、案内筒を弁箱内に設けることをしないので、水に浸かる部分の形状が複雑ならず、異物が詰まり難い。
【0042】
さらに、第1空気路70および第2空気路72を、鉛直方向に延びる直線状に形成したので、仮に、各空気路70,72に水が浸入して異物が入り込んだとしても、異物は洗い流され易く詰まり難い。また、万一異物が詰まったとしても、異物の除去が容易である。
【0043】
また、第1摺動体30および第2摺動体48の上部は、弁蓋12の上面から常に突出(露出)しているので、空気弁10を縦管102に取り付けた状態で、第1摺動体30および第2摺動体48を外部から手動で動かすことができる。つまり、空気弁10を分解すること無く作動部の動作を確認することができ、メンテナンスを行い易い。また、空気弁10を分解すること無く、外部に突出した部分からオイルを差すこともできる。
【0044】
さらに、弁蓋12の側壁部14内面にねじ溝18を形成し、縦管102の外面にねじ山104を形成して、それらの螺合によって弁蓋12と縦管102とを接続するようにしたので、工具などを用いること無く、簡単に空気弁10を着脱することができる。つまり、空気弁10の分解点検作業が容易となる。同様に、カバー26も簡単に着脱することができる。
【0045】
したがって、この実施例によれば、ごみ等の異物が詰まり難く、維持管理が容易な空気弁10を提供できる。
【0046】
なお、上述の実施例では、第1シャフト部32の上部に2つの貫通孔44を形成し、そこに円柱状の部材を挿通するように設けて第1係止部46としたが、第1係止部46の形状および取り付け方法は、これに限定されない。たとえば、第1係止部46をリング状或いはC字状に形成して、取り外しが可能なように、第1シャフト部32に外嵌するようにしてもよい。また、第1シャフト部32と鍔状部40とを予め一体的に形成するようにしたが、これに限定されず、それぞれを別部材として形成して、溶接や接着、或いはねじ方式などを利用して接続するようにしてもよい。
【0047】
また、第2シャフト部50の上部にリング状の部材を外嵌して第2係止部52としたが、第2係止部52の形状および取り付け方法は、これに限定されない。たとえば、C字状の部材を外嵌するようにしてもよいし、第1シャフト部32の第1係止部46と同様に、棒状の部材を差込むようにしてもよい。また、第2シャフト部50と鍔状部材56およびフロート64とを別部材として形成し、ねじ方式を利用して接続したが、これに限定されない。たとえば、溶接や接着などの方式を利用して接続するようにしてもよいし、予め一体的に形成するようにしてもよい。もちろん、鍔状部材56とフロート64とを一体的に形成し、それを第2シャフト部50に接続するようにすることもできる。また、フロート64自体が第2弁体として機能するようにしてもよい。つまり、フロート64の上面がゴム輪を介して第1摺動体30の鍔状部40(第2弁座)の下面と当接することにより、第2空気路72の連通を遮断するようにすることもできる。
【0048】
さらに、弁蓋12とガイド部22とを予め一体的に形成するようにしたが、これに限定されず、それぞれを別部材として形成して、溶接や接着、或いはねじ方式などを利用して接続するようにしてもよい。
【0049】
また、上述の実施例では、フロート64の形状を釣鐘状にしたが、これに限定されない。たとえば、球形や楕円球形に形成してもよいし、有頂円筒形や有頂有底の円筒形に形成してもよい。
【0050】
さらに、上述の実施例では、第1摺動体30の第1シャフト部32に、互いに平行に延びる2つの切欠部38を形成したが、切欠部38の形状などは、これに限定されない。たとえば、図10および図11に示すように、3つの切欠部32を形成することもできるし、1つ或いは4つ以上の切欠部32を形成することもできる。また、図12に示すように、必ずしも互いに平行に切欠部38を形成する必要は無い。さらに、図13に示すように、必ずしも平面状に切欠部38を形成する必要は無く、曲面状或いは溝状に形成してもよい。
【0051】
また、上述の実施例では、第1摺動体30の第1シャフト部32に切欠部38を形成し、第1開口部24と切欠部38とによって第1空気路70を形成するようにしたが、これに限定されない。たとえば、弁蓋12に貫通孔74を形成し、この貫通孔74を第1空気路70として利用するようにしてもよい。具体的には、図14および図15に示すように、弁蓋12の天板部16を鉛直方向に貫通する1つ或いは複数(図14および図15に示す実施例では4つ)の貫通孔74を、第1開口部24の周囲に形成するとよい。この際には、第1摺動体30の鍔状部40を、各貫通孔74よりも外方に延びるように形成し、その鍔状部40の上面外縁にゴム輪42を設けるようにするとよい。もちろん、貫通孔74は、ガイド部22内を貫通するように形成することもできる。また、貫通孔74の形状は、図15に示すような断面円形のものでなくてもよく、断面形状がC字形や方形などであってもよい。
【0052】
また、たとえば、図16に示すように、第1開口部24の側面(ガイド部22の内面)に溝状の切欠部76を形成し、この切欠部76と第1シャフト部32の外側面36とによって第1空気路70を形成することもできる。
【0053】
ここで、第1摺動体30(第1シャフト部32)に切欠部38を形成する場合には、より大きな第1空気路70を形成しようとすると、第1摺動体30の外径を大きくする必要がある。しかし、上述のように、弁蓋12に形成した貫通孔74や切欠部76を利用して第1空気路70を形成することによって、第1摺動体30の径を大きくすること無く、より大きな第1空気路70を形成することが可能となる。
【0054】
さらに、第1空気路70は、第1摺動体30の管壁を貫通するように形成することもできる。具体的には、たとえば、図17および図18に示すように、第1摺動体30の管壁を鉛直方向に貫通する直線状の貫通孔78を形成し、この貫通孔78を第1空気路70として利用するとよい。なお、この貫通孔78は、その下部において湾曲し、第1シャフト部32の外側面36下部で開口する。このように、第1摺動体30の管壁を貫通する第1空気路70を形成すれば、加工コストが上昇する懸念はあるが、第1シャフト部32の外側面34を断面円形に形成できるので、第1摺動体30をよりスムーズに摺動(動作)させることができる。
【0055】
また、たとえば、図19に示すように、必ずしも第1摺動体30の中央に第2開口部34を形成する必要は無く、第2開口部34を偏心させて形成してもよい。この場合には、たとえば、貫通孔78を形成して第1空気路70として利用してもよいし、切欠部38を形成して第1空気路70として利用してもよい。
【0056】
また、上述の実施例では、第2シャフト部50(第2摺動体48)の外径を第1摺動体30の第2開口部34の径よりも小さくすることによって、第2シャフト部50の側面と第2開口部34の側面との間に隙間を形成し、この隙間を第2空気路72として利用したが、これに限定されない。たとえば、第2シャフト部50の側面に鉛直方向に延びる溝を形成し、その溝と第2開口部34の側面との間に形成される空間を第2空気路72としてもよい。この場合には、第2シャフト部50の側面と第2開口部34の側面との間の隙間は、第2摺動体48が摺動できる最低限の大きさにしておくとよい。また、第2シャフト部50の側面に溝を形成する代わりに(或いは共に)、第1シャフト部32の内側面に溝を形成することもできる。このように、第2シャフト部50の側面、或いは第1摺動体30の内側面に溝を形成して第2空気路72とすることによって、製作工程(加工工程)は増えるが、「ガタ」を大きくする必要が無いので、第2摺動体48がふらつくことなく摺動可能となり、第2空気路72を確実に閉塞できるようになる(つまりシール性が向上する)。
【0057】
さらに、第2摺動体48の内部を軸方向に貫通するように第2空気路72を形成してもよい。ただし、外径の小さい第2摺動体48に貫通孔を形成することは困難な場合があるため、製作容易性や加工コストを考慮すると、第2空気路72は、第2摺動体48の側面と第2開口部34の側面との間に形成することが望ましい。
【0058】
また、上述の実施例では、縦管102と弁蓋12とを、ねじ山104とねじ溝18とを螺合させるねじ方式を利用して接続したが、これに限定されない。たとえば、縦管102と弁蓋12とを回転嵌合させて固定する、所謂バヨネット方式(或いはターンアップ方式)を利用して接続しても、空気弁10の着脱を容易に行える。また、カバー26の接続に関しても、同様にバヨネット方式を利用できる。さらに、空気弁10は、縦管102を弁箱として、その構成に含むようにすることもできる。この場合には、たとえば、弁蓋12と縦管102とが一体的に形成されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】この発明の一実施例の送水管用空気弁を送水管に設けた様子を簡略的に示す図解図である。
【図2】図1の送水管用空気弁を示す平面図である。
【図3】図1の送水管用空気弁を側方から見た断面を示す断面図である。
【図4】第1摺動体の一例を示す斜視図である。
【図5】第2摺動体の一例を示す斜視図である。
【図6】図1の送水管用空気弁を上方から見た断面の一部を示す部分断面図である。
【図7】図1の送水管用空気弁の第1空気路および第2空気路が共に開いている状態を示す部分断面図である。
【図8】図1の送水管用空気弁の第1空気路および第2空気路が共に閉じている状態を示す部分断面図である。
【図9】図1の送水管用空気弁のフロートの第2空気路のみが開いている状態を示す部分断面図である。
【図10】第1摺動体の他の一例を示す斜視図である。
【図11】図10の第1摺動体を用いた送水管用空気弁を上方から見た断面の一部を示す部分断面図である。
【図12】さらに他の一例の第1摺動体を用いた送水管用空気弁を上方から見た断面の一部を示す部分断面図である。
【図13】さらに他の一例の第1摺動体を用いた送水管用空気弁を上方から見た断面の一部を示す部分断面図である。
【図14】この発明の他の実施例の送水管用空気弁を側方から見た断面の一部を示す部分断面図である。
【図15】図14の送水管用空気弁を上方から見た断面の一部を示す部分断面図である。
【図16】この発明のさらに他の実施例の送水管用空気弁を上方から見た断面の一部を示す部分断面図である。
【図17】第1摺動体のさらに他の一例を示す斜視図である。
【図18】図17の第1摺動体を用いた送水管用空気弁を上方から見た断面の一部を示す部分断面図である。
【図19】さらに他の一例の第1摺動体を用いた送水管用空気弁を上方から見た断面の一部を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0060】
10 …送水管用空気弁
12 …弁蓋
22 …ガイド部(第1弁座)
24 …第1開口部
30 …第1摺動体
32 …第1シャフト部
34 …第2開口部
38 …切欠部
40 …鍔状部(第1弁体,第2弁座)
48 …第2摺動部
50 …第2シャフト部
56 …鍔状部材(第2弁体)
64 …フロート
70 …第1空気路
72 …第2空気路
100 …送水管
102 …縦管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送水管に取り付けられる送水管用空気弁であって、
前記送水管に接続される弁蓋、
前記弁蓋に設けられ、当該弁蓋の上方と下方とを連通する第1開口部、
前記第1開口部に摺動可能に設けられ、その上方と下方とを連通する第2開口部を有する第1摺動体、
前記第2開口部に摺動可能に設けられる第2摺動体、
前記第2摺動体の下部に設けられるフロート、
前記第2開口部より外側に形成され、前記弁蓋の上方と下方とを連通する第1空気路、
前記第2開口部の内側に形成され、前記弁蓋の上方と下方とを連通する第2空気路、
前記第1摺動体に設けられ、前記弁蓋の下面と当接して前記第1空気路の連通を遮断する第1弁体、および
前記フロートの上に設けられ、前記第1摺動体の下面と当接して前記第2空気路の連通を遮断する第2弁体を備える、送水管用空気弁。
【請求項2】
前記第2空気路は、前記第2摺動体の外側面と前記第2開口部の側面との間に形成される、請求項1記載の送水管用空気弁。
【請求項3】
前記第2空気路は、前記第2摺動体を貫通して形成される、請求項1記載の送水管用空気弁。
【請求項4】
前記第1空気路は、前記第1摺動体の外側面と前記第1開口部の側面との間に形成される、請求項1ないし3のいずれかに記載の送水管用空気弁。
【請求項5】
前記第1空気路は、前記第1開口部より外側に形成される、請求項1ないし3のいずれかに記載の送水管用空気弁。
【請求項6】
前記第1空気路は、前記第1摺動体を貫通して形成される、請求項1ないし3のいずれかに記載の送水管用空気弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−222214(P2009−222214A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70587(P2008−70587)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(505142964)クボタシーアイ株式会社 (192)
【出願人】(596029085)株式会社パディ研究所 (28)
【Fターム(参考)】