説明

逆止弁

【課題】流体が弁板の貫通孔に流入する際に、流体の流速が急激に増加することを防止して、流体の圧力損失を低減することができる逆止弁を提供する。
【解決手段】弁座(シート2)には、弁座を貫通する複数の流体導入孔2bが形成され、弁受け(ガイド3)には、弁受けを貫通する複数の流体導出孔3cが形成され、流体導入孔2bと流体導出孔3cとは、弁板(プレート4)の法線方向から見てずれた位置に配置され、弁板には、弁板の法線方向から見て流体導入孔2bとは重ならず流体導出孔3cとは重なる位置に、弁板を貫通する複数の貫通孔4aが形成され、流体導入孔2bは、弁板側に設けられた弁板側流路(プレート側流路22)と、弁板の反対側に設けられた拡張流路21と、を有し、拡張流路21の弁板に平行な断面積は、弁板側流路の弁板に平行な断面積よりも拡大され、拡張流路21の内壁21aは、弁板の法線方向と平行に設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、逆止弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、往復圧縮機の吸入口及び吐出口に設けられ、往復圧縮機の吸入・吐出弁として用いられる逆止弁が知られている。この逆止弁は、弁座と弁受けとの間の間隙に弁板を備え、弁座側から流入した流体を通過させ、弁受け側から流入する流体を弁板によって遮断するものである(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平2002−81380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の逆止弁では、弁板に形成された貫通孔を通過する流体の流速が急激に増加して流体の圧力損失が大きくなるという課題がある。
図5及び図6は、従来の逆止弁の弁板の法線方向に沿う断面図であり、弁板の貫通孔近傍を拡大した拡大断面図である。なお、図6(a)では、流体の流速をベクトルで表し、図6(b)では、貫通孔の入口近傍の圧力を等圧線により表している。また、図6(b)では、等圧線の内側でより濃色であるほど圧力が低くなっている。
【0004】
図5に示すように、従来の逆止弁100では、弁座20に複数の流体導入孔20bが形成されている。流体導入孔20bは、弁板40側に形成された弁板側流路220と、弁板40と反対側に設けられ、弁板40の法線と垂直な断面積が弁板側流路220よりも拡大された拡張流路210と、を有している。従来の逆止弁100では、流体導入孔20bの断面積の急激な変化を防止して、圧力損失を低減することを目的として、拡張流路210の内壁210aがテーパ状に形成されている。これにより、拡張流路210の弁板40の法線と垂直な断面積は、弁板側流路220に近接するにつれて漸減するようになっている。
【0005】
従来の逆止弁100では、弁座20の流体導入孔20bの拡張流路210側の開口端から流入した流体Fにより、弁板40が弁受け30方向に押し下げられる。押し下げられた弁板40と弁座20との間に流入した流体Fは、弁板40の貫通孔40aに流入し、弁受け30の流体導出孔30cから外部へ流出する。
このとき、拡張流路210における流体Fの速度にはほとんど変化が見られないが、図6(a)に示すように、断面積が拡張流路210よりも小さく、流体Fが縮流される弁板側流路220において、流体Fの流速が急激に増加してしまう。これにより、図6(b)に示すように、貫通孔40aの開口端40fの近傍において流体Fに大きな圧力損失が発生してしまう。
【0006】
そこで、この発明は、流体が弁板の貫通孔に流入する際に、流体の流速が急激に増加することを防止して、流体の圧力損失を低減することができる逆止弁を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の逆止弁は、弁座と弁受けとの間の間隙に弁板を備え、前記弁座側から前記弁板の法線方向に流入した流体を通過させ、前記弁受け側から前記法線方向に流入する前記流体を前記弁板によって遮断する逆止弁であって、前記弁座には、前記弁座を前記法線方向に貫通する複数の流体導入孔が形成され、前記弁受けには、前記弁受けを前記法線方向に貫通する複数の流体導出孔が形成され、前記流体導入孔と前記流体導出孔とは、前記法線方向から見てずれた位置に配置され、前記弁板には、前記法線方向から見て前記流体導入孔とは重ならず前記流体導出孔とは重なる位置に、前記弁板を前記法線方向に貫通する複数の貫通孔が形成され、前記流体導入孔は、前記弁板側に設けられた弁板側流路と、前記弁板の反対側に設けられた拡張流路と、を有し、前記拡張流路の前記弁板に平行な断面積は、前記弁板側流路の前記弁板に平行な断面積よりも拡大され、前記拡張流路の内壁は、前記法線方向と平行に設けられていることを特徴とする。
【0008】
このように構成することで、弁上流側から弁座の流体導入孔に流入した流体は、弁板を弁受け方向に押し下げて弁板と弁座との間に流入する。弁板と弁座との間を通過した流体は、弁板の貫通孔に流入する。このとき、拡張流路の内壁は、弁板の法線方向と平行に設けられ、拡張流路の弁板と平行な方向の断面積が、流体の上流側から下流側まで一定になっている。したがって、従来のように拡張流路の内壁がテーパ状に形成されている場合と比較して、拡張流路の断面積を増加させることができる。そのため、拡張流路を流通する流体の流速が増加することが防止される。これにより、流体が弁板の貫通孔に流入する際に、流体の流速が急激に増加することを防止できる。したがって、本発明の逆止弁によれば、逆止弁を流通する流体の圧力損失を低減することができる。
【0009】
また、本発明の逆止弁は、前記弁座には、前記弁板の前記貫通孔の前記弁座側の開口端の周囲に当接して前記流体の流れを遮断する弁座面が形成され、前記弁座面は、前記流体の遮断時に、前記弁板の前記開口端が前記弁座面に当接するよう設けられていることを特徴とする。
【0010】
このように構成することで、弁板の貫通孔と弁受けの流体導出孔とを従来と同様の寸法に形成した場合に、弁座の流体導入孔の弁板側流路同士の間隔を従来よりも狭め、弁板側流路の弁板と平行な方向の断面積を増加させることができる。そのため、弁板側流路を流通する流体の流速が増加することを防止できる。これにより、流体が弁板の貫通孔に流入する際に、流体の流速が急激に増加することをより効果的に防止できる。
【0011】
また、本発明の逆止弁は、前記拡張流路の内壁と前記弁板側流路の内壁との間には前記弁板と平行な方向に段差が形成され、前記段差の高さは、前記弁板と平行な方向における前記弁座面の外縁と前記弁板の前記開口端との間隔である封止幅と略等しいことを特徴とする。
【0012】
このように構成することで、流体を封止するための封止幅を十分に確保したまま、弁座の流体導入孔の拡張流路の断面積を弁板側流路の断面積よりも増加させることが可能になる。また、弁座の強度を確保しつつ複数の流体導入孔の拡張流路同士の間隔を狭め、拡張流路の断面積を増加させることができる。
【0013】
また、本発明の逆止弁は、前記弁板側流路の内壁は、前記法線方向と平行に設けられていることを特徴とする。
【0014】
このように構成することで、弁板側流路の弁板の反対側の端部から弁板側の端部までの弁板に平行な方向の断面積を一定にすることができる。これにより、弁板側流路を流通する流体の流速が増加することを防止できる。
【0015】
また、本発明の逆止弁は、前記拡張流路の前記法線方向の寸法は、前記弁板側流路の前記法線方向の寸法の4倍以上であることを特徴とする。
【0016】
このように構成することで、弁板の法線方向における拡張流路の寸法を十分に確保して、流体導入孔を流通する流体の流速が増加することを防止できる。
【0017】
また、本発明の逆止弁は、前記拡張流路の内壁と前記弁板側流路の内壁との間に凹状の曲面部が形成されていることを特徴とする。
【0018】
このように構成することで、断面積の異なる拡張流路と弁板側流路とを滑らかに接続して、流体導入孔を流通する流体の圧力損失を減少させることができる。
【0019】
また、本発明の逆止弁は、前記流体導入孔の前記弁板側の開口端は、面取りされていることを特徴とする。
【0020】
このように構成することで、弁座の流体導入孔から弁板の貫通孔に流入する流体の流れをより直線的にして、流体の圧力損失を低減することができる。
【0021】
また、本発明の逆止弁は、前記弁受けの前記流体導出孔の内壁は、前記法線方向に垂直な断面積が前記弁板から離間するにしたがって拡大するように、前記法線方向に対して傾斜して設けられていることを特徴とする。
【0022】
このように構成することで、流体導出孔の弁板と平行な方向の断面積を増加させ、流体導出孔を流通する流体の圧力損失を減少させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の逆止弁によれば、流体が弁板の貫通孔に流入する際に、流体の流速が急激に増加することを防止して、流体の圧力損失を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各図面では、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、部材毎に縮尺を適宜変更している。
【0025】
図1は、本実施形態の逆止弁1の斜視図であり、図2は、図1に示す逆止弁1の部分断面図である。本実施形態の逆止弁1は、例えば、LNG(Liquefied Natural Gas)への入熱により発生するBOG(Boil Off Gas)等を圧縮する往復動圧縮機の吸入口及び吐出口に設けられ、吸入弁及び吐出弁として用いられるものである。
図1及び図2に示すように、逆止弁1は、流体Fの上流側に配置されるシート(弁座)2と、流体Fの下流側に配置されるガイド(弁受け)3とを備えている。シート2とガイド3は、径が略等しい略円筒状の形状に形成され、流体Fの流入方向(図の矢印方向)に重なるように配置されている。
【0026】
図2に示すように、シート2のガイド3側の面の外周部2aと、ガイド3のシート2側の面の外周部3aとは密着している。ガイド3のシート2側の面には凹部3bが形成され、シート2とガイド3との間に間隙Sが形成されている。凹部3bには円板状のプレート(弁板)4が収容され、シート2とガイド3との間の間隙Sにプレート4が配置されている。
【0027】
図1及び図2に示すように、シート2には、シート2をプレート4の法線H方向に貫通する複数の流体導入孔2bが形成されている。流体導入孔2bは、プレート4の法線H方向から見て複数の流体導入孔2bが同一円周上に配置された円状の配列とされ、径の異なる複数の円状の配列が同心円状に配置されている。また、流体導入孔2bは、各々の円状の配列の円周方向に延びる長孔状の形状とされている。
【0028】
図2に示すように、ガイド3には複数の流体導出孔3cが形成されている。流体導出孔3cは、ガイド3をプレート4の法線H方向に貫通するように設けられている。ガイド3の流体導出孔3cとシート2の流体導入孔2bとはプレート4の面方向に交互に形成され、プレート4の法線H方向から見てずれた位置に配置されている。すなわち、プレート4の法線H方向から見てガイド3の流体導出孔3cとシート2の流体導入孔2bは重ならないようになっている。
【0029】
ガイド3の流体導出孔3cは、図1に示すシート2の流体導入孔2bと同様に、プレート4の法線H方向から見て複数の流体導出孔3cが同一円周上に配置された円状の配列とされ、径の異なる複数の円状の配列が同心円状に配置されている。また、ガイド3の流体導出孔3cは、図1に示すシート2の流体導入孔2bと同様に、各々の円状の配列の円周方向に延びる長孔状の形状とされている。
【0030】
図2に示すように、プレート4には、プレート4の法線H方向から見てシート2の流体導入孔2bとは重ならず、ガイド3の流体導出孔3cとは重なる位置に、複数の貫通孔4aが形成されている。貫通孔4aは、プレート4をプレート4の法線H方向に貫通するように設けられている。また、シート2、ガイド3、及びプレート4の中央部をプレート4の法線H方向に貫通するように丸棒状のスピンドル5が設けられ、プレート4はスピンドル5に固定されている。
【0031】
スピンドル5のガイド3側の基端部には、雄ねじ部5aが形成されている。スピンドル5の基端部の雄ねじ部5aは、ガイド3の中央部に設けられた雌ねじ部3dに螺合されてガイド3に固定されている。スピンドル5は、雄ねじ部5aが形成された基端部とは反対側の先端部が、流体Fの上流側に突出するように設けられている。
【0032】
スピンドル5の中央部のシート2よりも流体Fの上流側には、雄ねじ部5bが形成されている。スピンドル5の中央部の雄ねじ部5bにはナット6が螺合され、ナット6とシート2との間にはワッシャー7が挿入されている。これにより、シート2とガイド3とが一体的に固定され、シート2のガイド3側の面の外周部2aとガイド3のシート2側の面の外周部3aとの間には押圧力が付与されている。
【0033】
スピンドル5に固定されたプレート4の中央部の周囲にはバネ部(図示略)が設けられている。バネ部は、バネ部の外側と内側に円弧状の切り欠きを形成することで、円弧状の帯状に形成されている。これにより、バネ部は、プレート4の中央部の一部と、外周部の一部とを連結するようになっている。そして、バネ部は、所定の力がプレート4の法線H方向に作用したときに弾性変形し、貫通孔4aが形成されたプレート4の外周部がプレート4の法線H方向に移動するように、所定の弾性係数に設定されている。
【0034】
プレート4の貫通孔4aは、図1に示すシート2の流体導入孔2bと同様に、プレート4の法線H方向から見て複数の貫通孔4aが同一円周上に配置された円状の配列とされ、径の異なる複数の円状の配列が同心円状に配置されている。また、プレート4の貫通孔4aは、シート2の流体導入孔2b及びガイド3の流体導出孔3cと同様に、円状の配列の円周方向に延びる長孔状の形状とされている。
【0035】
図3は、図1及び図2に示す逆止弁1の要部を拡大した断面図である。
図3に示すように、シート2の流体導入孔2bは、プレート4とは反対側で流体Fの上流側に設けられた拡張流路21と、プレート4側で流体Fの下流側に設けられたプレート側流路(弁板側流路)22と、を備えている。拡張流路21の内壁21a及びプレート側流路22の内壁22aは、プレート4の法線H方向(図2参照)に沿って法線Hと略平行に設けられている。拡張流路21のプレート4に平行な方向の断面積は、プレート側流路22のプレート4に平行な方向の断面積よりも大きくなっている。これにより、拡張流路21の内壁21aとプレート側流路22の内壁22aとの間には、プレート4と平行な方向に段差Gが形成されている。
【0036】
拡張流路21の内壁21aとプレート側流路22の内壁22aとの間の段差Gには凹状の曲面部23が形成され、拡張流路21の内壁21aとプレート側流路22の内壁22aとが流体Fの流通方向(図の矢印方向)に滑らかに接続されている。
また、拡張流路21の流体Fの入口付近、すなわち流体導入孔2bのプレート4と反対側の開口端の近傍には、図3に示す断面視で略円弧状の流体導入面21rが形成され、開口端が拡張流路21よりも拡大されている。
プレート4の法線H方向の拡張流路21の寸法L1は、同方向のプレート側流路22の寸法L2よりも大きくなるように形成されている。拡張流路21の上記の寸法L1は、プレート側流路22の上記の寸法L2の例えば約4倍以上となっている。
【0037】
シート2には、プレート4の貫通孔4aのシート2側の開口端4fの周囲に当接して、流体Fの流れを遮断する弁座面2sが形成されている。弁座面2sは、流体Fの遮断時に、プレート4のシート2側の開口端4fが弁座面2sに当接するよう設けられている。弁座面2sの外周、すなわち流体導入孔2bのプレート4側の開口端は面取りされ、プレート4の法線H方向に対して例えば約45°程度傾斜したテーパ面2tが形成されている。弁座面2sとプレート4とが当接したときに、弁座面2sとプレート4とが接触するプレート4と平行な方向の幅が、流体Fを封止するためのいわゆる封止幅(封止しろ)Wとなっている。
【0038】
封止幅Wは、プレート4と平行な方向における弁座面2sの外縁2eとシート2の開口端4fの縁との間隔と等しくなっている。また、封止幅Wは、拡張流路21の内壁21aとプレート側流路22の内壁22aとの間の段差Gのプレート4と平行な方向の高さhと略等しくなっている。段差Gの高さhは、封止幅Wの他、プレート4の貫通孔4aの寸法、流体Fの圧力等により決定される。
【0039】
また、弁受け3の流体導出孔3cの内壁3eは、プレート4の法線H方向に対して傾斜してテーパ状に設けられている。これにより、流体導出孔3cのプレート4の法線H方向に垂直な断面積は、プレート4から離間するにしたがって拡大するようになっている。また、流体導出孔3cの流体Fの出口近傍、すなわちプレート4とは反対側の開口端の近傍には、流体導入孔2bの流体Fの上流側の開口端と同様に、図3に示す断面視で略円弧状の流体導出面3rが形成されて開口端が拡大されている。
【0040】
次に、図4を参照しながら本実施形態の作用について説明する。
図4は、逆止弁の要部の拡大断面図であり、(a)はシート2側からガイド3側への流体Fの流れを、(b)はプレート4の貫通孔4aのシート2側の開口端4fの入口近傍の流体Fの圧力分布を示している。なお、図4(a)では、流体Fの流速をベクトルで模式的に表している。また、図4(b)では、貫通孔4aの開口端4fの近傍の圧力を等圧線により表している。また、図4(b)では、等圧線の内側でより濃色であるほど圧力が低くなっている。
【0041】
本実施形態の逆止弁1を、例えば、不図示の往復動圧縮機の吐出口の配管に取り付けて吐出弁として用いる場合には、図1及び図2に示す逆止弁1のシート2側が吐出口側(流体Fの上流側)になるように配置する。また、吸入口の配管に取り付けて吸入弁として用いる場合には、逆止弁1のガイド3側が吸入口側(流体Fの下流側)になるように配置する。
【0042】
往復動圧縮機が吸入口から流体Fを吸入する際には、往復動圧縮機の吸入口に設けられた逆止弁1では、吸入口に配管を介して接続されたガイド3側の流体Fがシート2側の流体Fよりも低圧になる。この流体Fの圧力差により、逆止弁1のプレート4には、プレート4の法線H方向のガイド3の向きの力が作用する。この力により、スピンドル5に固定されたプレート4の中央部と周辺部とを連結するバネ部が弾性変形して、プレート4の外周部がガイド3側に移動する。これにより、図3に示すようにプレート4がガイド3側に移動する。そして、図4(a)に示すように、シート2の流体導入孔2bに流入した流体Fは、シート2とプレート4との間に形成された流路を介して、図3に示すガイド3の流体導出孔3cに流入する。ガイド3の流体導出孔3cに流入した流体Fは、ガイド3側から逆止弁1の外部へと排出され、往復動圧縮機の吸入口へ流入する。
【0043】
一方、往復動圧縮機の吐出口に設けられた逆止弁1では、吐出口に配管を介して接続されたシート2側の流体Fがガイド3側の流体Fよりも低圧になる。この流体Fの圧力差により、逆止弁1のプレート4には、プレート4の法線H方向のシート2の向きの力が作用する。この力により、スピンドル5に固定されたプレート4の中央部と周辺部とを連結するバネ部が弾性変形して、プレート4の外周部がシート2側に移動する。これにより、図3に示すようにプレート4がシート2側に移動する。そして、プレート4のシート2側の面がシート2の弁座面2sに当接する。これにより、シート2の流体導入孔2bが閉塞され、ガイド3の流体導出孔3cからシート2の流体導入孔2bへの流体Fの流れが遮断される。
このように、往復動圧縮機の吸入口と吐出口とにそれぞれ本実施形態の逆止弁1を用いることで、往復動圧縮機による流体Fの吸入時には、吐出口への流体Fの流入を遮断して、吸入口から流体Fを吸入することができる。
【0044】
また、往復動圧縮機により圧縮した流体Fを吐出口から吐出する際には、往復動圧縮機の吐出口に設けられた逆止弁1では、吐出口に配管を介して接続されたシート2側の流体Fがガイド3側の流体Fよりも高圧になる。この流体Fの圧力差により、逆止弁1のプレート4には、プレート4の法線H方向のガイド3の向きの力が作用する。この力により、スピンドル5に固定されたプレート4の中央部と周辺部とを連結するバネ部が弾性変形して、プレート4の外周部がガイド3側に移動する。これにより、図3に示すようにプレート4がガイド3側に移動する。そして、シート2の流体導入孔2bに流入した流体Fは、図4(a)に示すように、シート2とプレート4との間に形成された流路を介して、図3に示すガイド3の流体導出孔3cに流入する。ガイド3の流体導出孔3cに流入した流体Fは、ガイド3側から逆止弁1の外部へと排出される。
【0045】
一方、往復動圧縮機の吸入口に設けられた逆止弁1では、吸入口に配管を介して接続されたガイド3側の流体Fがシート2側の流体Fよりも高圧になる。この流体Fの圧力差により、逆止弁1のプレート4には、プレート4の法線H方向のシート2の向きの力が作用する。この力により、スピンドル5に固定されたプレート4の中央部と周辺部とを連結するバネ部が弾性変形して、プレート4の外周部がシート2側に移動する。これにより、図4(a)に示すように、プレート4がシート2側に移動する。そして、プレート4のシート2側の面がシート2の弁座面2sに当接する。これにより、シート2の流体導入孔2bが閉塞され、ガイド3の流体導出孔3cからシート2の流体導入孔2bへの流体Fの流れが遮断される。
このように、往復動圧縮機の吸入口と吐出口とにそれぞれ本実施形態の逆止弁1を用いることで、往復動圧縮機による流体Fの吐出時には、吸入口からの流体Fの流出を遮断して、吐出口から流体Fを吐出することができる。
【0046】
ここで、本実施形態の逆止弁1では、図3に示すように、拡張流路21の内壁21aは、プレート4の法線H方向と平行に設けられている。そして、拡張流路21のプレート4と平行な方向の断面積が、流体Fの上流側から下流側まで一定になっている。そのため、図5に示す従来の逆止弁100のように拡張流路210の内壁210aがテーパ状に形成されている場合と比較して、拡張流路21のプレート4側が拡張されてプレート4側の断面積が増加する。
【0047】
これにより、従来の逆止弁100では、図6(a)に示すように拡張流路210を流通する際に流体Fの流速が増加していたが、本実施形態の逆止弁1では、図4(a)に示すように拡張流路21を流通する流体Fの流速が増加することが防止される。そのため、流体Fがプレート4の貫通孔4aに流入する際に、流体Fの流速が急激に増加することを防止できる。
【0048】
その結果、図4(b)に示すように、貫通孔4aの開口端4fの近傍の圧力分布は、図6(b)に示す従来の逆止弁100の圧力分布よりも全体的に淡色となり、圧力の低下が抑制される。したがって、本実施形態の逆止弁1によれば、拡張流路21の内壁21aをプレート4の法線H方向と平行に設けることで流体Fに圧力損失が発生することを防止できる。
【0049】
また、プレート側流路22の内壁22aは、拡張流路21の内壁21aと同様に、プレート4の法線H方向と平行に設けられている。そのため、プレート側流路22のプレート4に平行な方向の断面積を、プレート4と反対側の端部からプレート4側の端部まで、一定にすることができる。これにより、プレート側流路22を流通する流体Fの流速が増加することを防止できる。したがって、流体Fがプレート4の貫通孔4aに流入する際に、流体Fの流速が増加することをより効果的に防止できる。
【0050】
また、図3に示すように、拡張流路21のプレート4の法線H方向の寸法L1は、プレート側流路22の同方向の寸法L2の4倍以上となっている。そのため、プレート4の法線H方向における拡張流路21の寸法L1を十分に確保して、流体導入孔2bを流通する流体Fの流速が増加することをより確実に防止できる。
【0051】
また、拡張流路21の内壁21aとプレート側流路22の内壁22aとの間に凹状の曲面部23を形成することで、断面積の異なる拡張流路21とプレート側流路22とを滑らかに接続して、流体導入孔2bを流通する流体Fの圧力損失を減少させることができる。
また、流体導入孔2bのプレート4側の開口端が面取りされてテーパ面2tが形成されているので、シート2の流体導入孔2bからプレート4の貫通孔4aに流入する流体Fの流れをより直線的にして、流体Fの圧力損失を低減することができる。また、プレート4に当接する弁座面2sの周囲を面取りすることにより、シート2のプレート4への食いつきを防止することができる。
【0052】
また、シート2の弁座面2sは、流体Fの遮断時にプレート4の開口端4fの縁が弁座面2sに当接するよう設けられている。これにより、プレート4の貫通孔4aとガイド3の流体導出孔3cとを従来の逆止弁100と同様の寸法に形成した場合に、シート2の流体導入孔2bのプレート側流路22同士の間隔を、図5に示す従来の逆止弁100よりも狭くすることができる。そして、プレート側流路22のプレート4と平行な方向の断面積を従来の逆止弁100よりも増加させることができる。そのため、プレート側流路22を流通する流体Fの流速が増加することをより効果的に防止できる。これにより、流体Fがプレート4の貫通孔4aに流入する際に、流体Fの流速が増加することをより効果的に防止できる。
【0053】
また、シート2の流体導入孔2bの拡張流路21の内壁21aとプレート側流路22の内壁22aとの間の段差Gの高さhが、封止幅Wと略等しくなっている。これにより、流体Fを封止するための封止幅Wを十分に確保したまま、シート2の流体導入孔2bの拡張流路21の断面積をプレート側流路22の断面積よりも増加させることが可能になる。また、シート2の強度を確保しつつ複数の流体導入孔2bの拡張流路21同士の間隔を狭め、拡張流路21の断面積をプレート側流路22の断面積よりも増加させることができる。
【0054】
また、ガイド3の流体導出孔3cの内壁3eが、プレート4の法線H方向に対して傾斜してテーパ状に設けられ、プレート4の法線H方向に垂直な断面積が、プレート4から離間するにしたがって拡大するように形成されている。これにより、流体導出孔3cのプレート4と平行な方向の断面積を増加させ、流体導出孔3cを流通する流体Fの圧力損失を低減させることができる。
【0055】
以上説明したように、本実施形態の逆止弁1によれば、流体Fがプレート4の貫通孔4aに流入する際に、流体Fの流速が急激に増加することを防止して、流体Fの圧力損失を低減することができる。
【0056】
尚、この発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、シートの流体導入孔、プレートの貫通孔、及びガイドの流体導出孔は長孔状の形状ではなく、円形や楕円形、あるいは多角形等の形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態における逆止弁の斜視図である。
【図2】図1に示す逆止弁の部分断面図である。
【図3】図1に示す逆止弁の要部の拡大断面図である。
【図4】図1に示す逆止弁の要部の拡大断面図であり、(a)は流体の流れ示す図、(b)は流体の圧力分布を示す図である。
【図5】従来の逆止弁の要部の拡大断面図である。
【図6】従来の逆止弁の要部の拡大断面図であり、(a)は流体の流れを示す図、(b)は要部における流体の圧力分布を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
1 逆止弁、2 シート(弁座)、2a 外周部、2b 流体導入孔、2s 弁座面、2t テーパ面(面取り)、21 拡張流路、21a 内壁、22 プレート側流路(弁板側流路)、22a 内壁、23 曲面部、3 ガイド(弁受け)、3c 流体導出孔、3e 内壁、4 プレート(弁板)、4a 貫通孔、4f 開口端、F 流体、G 段差、H 法線、h 高さ、L1 寸法、L2 寸法、S 間隙、W 封止幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座と弁受けとの間の間隙に弁板を備え、前記弁座側から前記弁板の法線方向に流入した流体を通過させ、前記弁受け側から前記法線方向に流入する前記流体を前記弁板によって遮断する逆止弁であって、
前記弁座には、前記弁座を前記法線方向に貫通する複数の流体導入孔が形成され、
前記弁受けには、前記弁受けを前記法線方向に貫通する複数の流体導出孔が形成され、
前記流体導入孔と前記流体導出孔とは、前記法線方向から見てずれた位置に配置され、
前記弁板には、前記法線方向から見て前記流体導入孔とは重ならず前記流体導出孔とは重なる位置に、前記弁板を前記法線方向に貫通する複数の貫通孔が形成され、
前記流体導入孔は、前記弁板側に設けられた弁板側流路と、前記弁板の反対側に設けられた拡張流路と、を有し、
前記拡張流路の前記弁板に平行な断面積は、前記弁板側流路の前記弁板に平行な断面積よりも拡大され、
前記拡張流路の内壁は、前記法線方向と平行に設けられていることを特徴とする逆止弁。
【請求項2】
前記弁座には、前記弁板の前記貫通孔の前記弁座側の開口端の周囲に当接して前記流体の流れを遮断する弁座面が形成され、
前記弁座面は、前記流体の遮断時に、前記弁板の前記開口端が前記弁座面に当接するよう設けられていることを特徴とする請求項1記載の逆止弁。
【請求項3】
前記拡張流路の内壁と前記弁板側流路の内壁との間には前記弁板と平行な方向に段差が形成され、
前記段差の高さは、前記弁板と平行な方向における前記弁座面の外縁と前記弁板の前記開口端との間隔である封止幅と略等しいことを特徴とする請求項2記載の逆止弁。
【請求項4】
前記弁板側流路の内壁は、前記法線方向と平行に設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項記載の逆止弁。
【請求項5】
前記拡張流路の前記法線方向の寸法は、前記弁板側流路の前記法線方向の寸法の4倍以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の逆止弁。
【請求項6】
前記拡張流路の内壁と前記弁板側流路の内壁との間に凹状の曲面部が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の逆止弁。
【請求項7】
前記流体導入孔の前記弁板側の開口端は、面取りされていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の逆止弁。
【請求項8】
前記弁受けの前記流体導出孔の内壁は、前記法線方向に垂直な断面積が前記弁板から離間するにしたがって拡大するように、前記法線方向に対して傾斜して設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の逆止弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−112405(P2010−112405A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283566(P2008−283566)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】