説明

逆走警報装置

【課題】車両が逆走していることを運転手に直接警告することが可能な逆走警報装置を低コストで提供する。
【解決手段】システムコントローラ24は、車載カメラ12を制御して撮像を実行させ、画像データを逐次取得するとともに、参照用画像データを参照して道路標識44,45をパターン認識して、道路標識44,45が走行車線に対して右側にあるか否かを判定する。道路標識44,45が走行車線41よりも左側にあると判定された場合、システムコントローラ24は、自動車10が高速道路40を順走していると判断する。また、道路標識44,45が走行車線41よりも右側にあると判定された場合、システムコントローラ24は、振動発生機17を制御して振動させ、運転手に対して警告を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車が道路を逆走した時に運転手に対して警告を行う逆走警報装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高速道路の一方通行路の出口には、間違って出口から高速道路に進入して、車両が逆走することを防止するために、進入禁止の標識が設置されている。しかし、このような進入禁止の標識を運転手が見落として、高速道路を逆走する場合がある。
【0003】
このような逆走する車両を停止させるために、一方通行路の出口にて逆走車両を検知して、遮断機によって逆走車両を停止させる逆走車両停止装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、車両のナンバープレートを所定のフレーム周期で撮像し、ナンバープレートの画像情報を文字情報として認識するとともに、ナンバープレートの位置を認識し、前後のフレームにて同一のナンバープレートがある場合に、そのナンバープレートの移動方向に基づいて車両の逆走を判断する逆走検知装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
さらに、道路横断方向に並列配置された複数個のループコイルを道路延長方向に沿って、交互にオフセットするように配置し、車両が道路上を正進している場合と逆進している場合とで、出力の先後関係の違いによって車両の走行方向を検知する車両走行方向検知装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
また、一方通行路に複数台の車両感知器を設置し、複数台の車両感知器の出力から走行車両の進行方向を判定することによって、車両が逆走していることを判定する車両監視装置が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開2004−178055号公報
【特許文献2】特開2004−234486号公報
【特許文献3】特開平9−7092号公報
【特許文献4】特開平10−269492号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1〜4に記載の装置では、道路にループコイル等のセンサを複数個取付けて、センサでの検出タイミングのズレから走行方向をシステムとして検出しており、さらに、逆走を検出した場合、道路付近に設置されたランプや表示機等を用いて危険を警告している。このため、走行中の車両自体では逆走と判断することが出来ないため、運転手に対して直接警告することができないという問題があった。また、システムの構築には大規模な費用と時間が必要であるという問題があった。
【0007】
本発明の逆送警告装置は、上記問題を解決するためになされたものであり、車両が逆走していることを運転手に直接警告することが可能な逆走警報装置を低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するために、本発明の逆走警報装置は、車両に搭載され、前記車両の前方を撮像する撮像手段と、前記車両の走行時に、前記撮像手段によって得られた画像データに基づいて道路標識を検出して、前記車両が逆走しているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によって前記車両が逆走していると判定された時に、運転手に対して警告を行う警告手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0009】
また、前記判定手段は、前記道路標識が前記車両の走行車線に対して右側にあるか否かを判断し、前記道路標識が右側にある場合、前記車両が逆走していると判定することが好ましい。
【0010】
さらに、前記道路標識を撮像して得られた複数の参照用画像データを記憶する記憶手段を備え、前記判定手段は、前記参照用画像データを参照して前記道路標識をパターン認識することが好ましい。また、前記判定手段によって、前記車両が逆走していると判定された時に、前記車両を減速させることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の逆送警告装置は、車両に搭載され、車両の前方を撮像する撮像手段と、撮像手段によって得られた画像データに基づいて道路標識を検出して、車両が逆走しているか否かを判定する判定手段と、判定手段によって車両が逆走していると判定された時に、運転手に対して警告を行う警告手段とを備えているので、車両の進行方向を検出するセンサ等を道路に設置することなく、車両自体で逆走を判断することが可能であり、運転手に対して直接警告を行うことができる。また、センサや警告手段を道路に設ける場合と比べて低コスト化が可能である。
【0012】
また、判定手段は、道路標識が車両の走行車線に対して左右どちら側にあるかを判断し、道路標識が右側にある場合、車両が逆走していると判定するので、道路標識の裏表を識別して車両の逆走を判定する場合よりも、判定処理に要する時間を短縮することができる。
【0013】
さらに、判定手段によって、車両が逆走していると判定された時に、車両を減速させるので、逆走によって発生する事故を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に示す自動車10において、ダッシュボード11上には、本発明の逆走警報装置(図2参照)20を構成する撮像手段である車載カメラ12が設けられている。この車載カメラ12は、撮影レンズの光軸を前方に向けてダッシュボード11上に固定されている。さらに、このダッシュボード11上には、後述するカーナビゲーション装置(図2参照)30を構成する表示装置13及びGPS(Global Positioning System)アンテナ14が設けられている。
【0015】
また、ダッシュボード11の前面側には、逆走警報装置20を構成する本体15と、ナビゲーション本体16とが設けられている。本体15には、操作ボタン15aが設けられている。操作ボタン15aは、運転手によって押圧操作されて、装置本体15がON/OFFされる。さらに、運転手側のシート内には、逆走警報装置20を構成する振動発生機17が設けられている。
【0016】
次に、逆走警報装置20の電気的構成について説明する。図2に示すように、逆走警報装置20は、車載カメラ12と、本体15と、逆走を運転手に警告する警告手段である振動発生機17とを備えて構成されている。車載カメラ12は、撮影レンズ(図示せず)の背後に配置されたCCDイメージセンサ(以下、CCDと称する)21と、TG(タイミングジェネレータ)22と、画像処理部23とを備えている。また、本体15は、逆走を判定する判定手段であるシステムコントローラ24と、スイッチ25と、メモリ26とを備えて構成されている。
【0017】
スイッチ25は、操作ボタン15aによってON/OFFされる。CCD21は、TG22を介してシステムコントローラ24に接続されている。システムコントローラ24は、スイッチ25がONにされている時に、TG22を制御してタイミング信号(クロックパルス)を発生させ、CCD21は、TG22から入力されるタイミング信号によって駆動される。
【0018】
CCD21の受光面には、図示せぬ撮影レンズによって被写体像が結像され、CCD21は光電変換によってアナログの撮像信号を画像処理部23に所定時間毎に出力する。この画像処理部23は、相関二重サンプリング回路(CDS)や、増幅器や、A/D変換器や、デジタル信号処理回路等を備えて構成されている。撮像信号は、CDSによってノイズが除去され、増幅器によって増幅される。その後、撮像信号は、A/D変換器によってデジタル信号の画像データに変換され、デジタル信号処理回路によって、各種画像処理(例えば、ホワイトバランス補正、ガンマ補正等)が施される。
【0019】
その後、画像データは、画像処理部23からシステムコントローラ24に逐次出力される。システムコントローラ24には、メモリ26が接続されている。このメモリ26は、道路標識を撮像して得られた参照用画像データが複数記憶された記憶手段であり、参照用画像データは、道路標識の形状を示す画像データである。システムコントローラ24は、画像信号処理部23から画像データを逐次取得する。その後、システムコントローラ24は、参照用画像データを参照して、撮影画像(図4参照)50,60内の道路標識をパターン認識して、道路標識が走行車線よりも右側にあるか否かを判定する。
【0020】
以下に、自動車10が、図3に示す高速道路40を走行している場合を例に説明する。高速道路40は、左側の2本の走行車線41と、右側の2本の走行車線42と、これらを分離する中央分離帯43とで構成されている。また、走行車線41よりも左側の路側帯には、道路標識である速度規制標識44及び合流注意標識45が設置されている。また、走行車線42よりも右側の路側帯にも同様に、速度規制標識44及び合流注意標識45が設置されている。
【0021】
左側の走行車線41を自動車10が矢印A方向に走行している場合、つまり、走行車線41を順走している場合、図4(A)に示すように、撮影画像50内において、速度規制標識44及び合流注意標識45が走行車線41よりも左側にある。また、右側の走行車線42を自動車10が矢印B方向に走行している場合も同様に、走行車線42よりも速度規制標識44及び合流注意標識45が左側となる。
【0022】
また、左側の走行車線41を自動車10が矢印B方向に走行している場合、つまり、走行車線41を逆走している場合、図4(B)に示すように、撮影画像60内において、速度規制標識44及び合流注意標識45が走行車線41よりも右側となる。
【0023】
システムコントローラ24は、図4(B)に示すように、道路標識が走行車線よりも右側にあると判定された場合、自動車10が逆走していると判断するとともに、振動発生機17を制御して振動させることによって、運転手に対して警告を行う。なお、この振動発生機17は、例えば、偏心モータで構成すれば良い。
【0024】
また、道路標識が走行車線よりも右側にない、つまり、図4(A)に示すように、走行車線よりも左側にあると判定された場合、自動車10が順走しているものと判断して、運転手に対して警告を行わない。
【0025】
さらに、システムコントローラ24には、車両制御ユニット27が接続されている。この車両制御ユニット27は、ダッシュボード11の助手席付近に配置されており、燃料の噴射を電子制御する電子制御燃料噴射装置28や、自動変速機29等に接続されており、これらを制御することによって、自動車10を走行させている。道路標識が走行車線よりも右側にあると判定された場合、システムコントローラ24は、前述したように、振動発生機17を振動させて運転手に対して警告を行うとともに、車両制御ユニット27を制御して自動車10の速度を安全な速度に減速させる。
【0026】
つまり、車両制御ユニット27は、電子制御燃料噴射装置28を制御して、エンジンに対する燃料供給を停止させるとともに、自動変速機29を制御して、自動変速機29のギアを5速から4速のように1速分シフトダウンさせたり、5速から3速のように2速分シフトダウンさせたりすることで、エンジンブレーキによって安全な速度(0〜20km/h程度)に減速させる。
【0027】
また、カーナビゲーション装置30は、ナビゲーション制御部31と、表示装置13と、GPSアンテナ14と、大容量記憶装置32と、スピーカ33とを備えて構成されている。ナビゲーション制御部31は、GPSアンテナ14を介して複数のGPS衛星(図示せず)からリアルタイムでGPS信号を受信し、このGPS信号から現在の走行している位置座標、進行方向などの情報を逐次に検出する。
【0028】
大容量記憶装置32は、例えば、地図データが記憶された記憶メディアがセットされるCD−ROMドライブ、DVD−ROMドライブ、または、ハードディスクドライブなどである。ナビゲーション制御部31は、検出された自動車10の位置座標に基づいて大容量記憶装置32から現在の現在位置付近の地図データを読み出し、表示装置13に地図画像を表示し、さらに表示された地図画像の上に自動車10の位置を示すアイコンを重ねて表示する。
【0029】
スピーカ33は、表示装置13に一体に設けられており、目的地までの経路を案内する音声等を出力する。また、表示装置13及びスピーカ33は、自動車10が逆走している時に、運転手に対して警告を行う警告手段として機能する。つまり、システムコントローラ24は、自動車10が逆走していると判断した時に、ナビゲーション制御部31を制御することによって、スピーカ33及び表示装置13によって、音声及び表示画面によって運転手に対して警告を行う。例えば、スピーカ33によって「逆走している」ことを警告するメッセージを発したり、表示装置13に「逆走している」ことを警告するメッセージを点滅表示させたりすれば良い。
【0030】
次に、上記構成の逆走防止装置20の逆走警告処理について、図5に示すフローチャートを用いて説明する。高速道路を走行する場合、運転手は、操作ボタン15aを操作して、逆走警報装置20の電源をONにする。
【0031】
システムコントローラ24は、スイッチ25がONにされた時に、車載カメラ12を制御して撮像を実行させ、画像データを逐次取得する。システムコントローラ24は、これらの画像データを取得するとともに、参照用画像データを参照して道路標識をパターン認識して、道路標識が走行車線に対して右側にあるか否かを判定する。
【0032】
道路標識が右側にない、すなわち、図4(A)に示すように、道路標識が走行車線41よりも左側にあると判定された場合、システムコントローラ24は、自動車10が高速道路40を順走していると判断して、警告処理を終了する。
【0033】
また、図4(B)に示すように、道路標識が右側にあると判定された場合、システムコントローラ24は、振動発生機17を制御して振動させて運転手に対して警告を行う。また、システムコントローラ24は、ナビゲーション制御部31を制御することによって、「逆走している」ことを警告するメッセージをスピーカ33によって音声で通知するとともに、「逆走している」ことを警告するメッセージを表示装置13に点滅表示させる。
【0034】
その後、システムコントローラ24は、車両制御ユニット27を制御して、エンジンブレーキによって自動車10の速度を安全な速度(例えば、0〜20km/h)に減速させて、逆走警告処理を終了する。
【0035】
なお、上記逆走警告処理の説明において、振動、音声、及び表示によって運転手に警告を行う場合を例に説明したが、これらのうち、少なくとも1つによって運転手に対して警告を行えば良い。
【0036】
また、上記実施形態において、警告手段として、カーナビゲーション装置の表示装置及びスピーカを用いる場合を例に説明したが、カーナビゲーション装置とは別に、表示装置及びスピーカを設けて、逆走警報装置を構成しても良い。
【0037】
さらに、上記実施形態において、道路標識が右側にあるか否かを判定することによって、自動車の逆走を判断する場合を例に説明したが、これに限るものではなく、逐次取得される画像データに基づいて、道路標識が一定時間左側にないことを検出して、自動車の逆走を判断しても良い。また、道路標識は、表側には、絵や文字や記号が記載されているが、裏側は白一色であるので、道路標識の表裏を検出して自動車の逆走を判断しても良い。しかし、道路標識の裏表を検出する場合、識別処理が複雑となって処理速度が低下するため、道路標識の位置によって逆走を判定することが好ましい。
【0038】
さらに、上記実施形態において、操作ボタンの操作に基づいて、高速道路と一般道とを切り替える場合を例に説明したが、これに限るものではなく、ETC(高速道路使用料金自動支払いシステム)の情報や、カーナビゲーション装置の位置情報に基づいて、自動的に高速道路と一般道とを切り替えても良い。
【0039】
また、上記実施形態において、高速道路を走行する際に逆走の警告を行う場合を例に説明したが、これに限るものではなく、中央分離帯のある幹線道路を走行する際に逆走警告を行っても良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の逆走警報装置を搭載した自動車の運転席部分の構成を示す斜視図である。
【図2】逆走警報装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】高速道路を示す説明図である。
【図4】自動車の順走時と逆走時の撮影画像を示す説明図である。
【図5】逆走警告処理を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0041】
10 自動車
12 車載カメラ
13 表示装置
17 振動発生機
24 システムコントローラ
33 スピーカ
44 速度規制標識
45 合流注意標識

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両の前方を撮像する撮像手段と、
前記車両の走行時に、前記撮像手段によって得られた画像データに基づいて道路標識を検出して、前記車両が逆走しているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記車両が逆走していると判定された時に、運転手に対して警告を行う警告手段と、
を備えていることを特徴とする逆走警報装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記道路標識が前記車両の走行車線に対して右側にあるか否かを判断し、前記道路標識が右側にある場合、前記車両が逆走していると判定することを特徴とする請求項1記載の逆走警報装置。
【請求項3】
前記道路標識を撮像して得られた複数の参照用画像データを記憶する記憶手段を備え、前記判定手段は、前記参照用画像データを参照して前記道路標識をパターン認識することを特徴とする請求項1または2記載の逆走警報装置。
【請求項4】
前記判定手段によって、前記車両が逆走していると判定された時に、前記車両を減速させることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか記載の逆走警報装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−293390(P2007−293390A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117150(P2006−117150)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】