説明

透明ガスバリアフィルム、透明ガスバリアフィルムの製造方法、有機エレクトロルミネッセンス素子、太陽電池および薄膜電池

【課題】 透明ガスバリア層の積層数が少なくてもガスバリア性に優れ、かつ、高い透明性を有し、さらに、透明ガスバリア層の内部応力が非常に低い透明ガスバリアフィルムおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 樹脂基板110上に透明ガスバリア層120が形成された透明ガスバリアフィルムであって、透明ガスバリア層120が、金属および半金属の少なくとも1種を含み、透明ガスバリア層120が、放電処理がされた放電処理層120bと、放電処理がされていない非放電処理層120aとを含み、非放電処理層120aの密度に対する放電処理層120bの密度の比が、1.0を超え2.0以下の範囲であり、透明ガスバリア層120の厚みに対する放電処理層120bの厚みの比が、0.05〜0.3の範囲であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明ガスバリアフィルム、透明ガスバリアフィルムの製造方法、有機エレクトロルミネッセンス素子、太陽電池および薄膜電池に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、電子ペーパー、太陽電池、薄膜リチウムイオン電池等の各種エレクトロニクスデバイスは、近年、軽量化・薄型化が進んでいる。これらデバイスの多くは大気中の水蒸気によって変質して劣化することがわかっている。
【0003】
従来、これらデバイスにはその支持基板としてガラス基板が用いられてきたが、軽量性、耐衝撃性、屈曲性等の各種特性に優れるという理由により、ガラス基板に代えて樹脂基板の使用が検討されている。樹脂基板は、一般には、ガラス等の無機材料から形成された基板と比較して、水蒸気等のガス透過性が著しく大きいという性質をもつ。したがって、上記用途においては、樹脂基板のガスバリア性を、その光透過性を維持しつつ向上させることが要求される。
【0004】
ところで、エレクトロニクスデバイスのガスバリア性は、食品包装でのそれに比べ、桁違いに高いレベルが要求されている。ガスバリア性は、例えば水蒸気透過速度(Water Vapor Transmission Rate 以下WVTR)で表される。従来の食品パッケージ用途でのWVTRの値は1〜10g・m−2・day−1程度であるのに対し、例えば薄膜シリコン太陽電池や化合物薄膜系太陽電池用途の基板に必要なWVTRは0.01g・m−2・day−1以下、さらには有機EL用途の基板に必要なそれは1×10−5g・m−2・day−1以下と考えられている。このような非常に高いガスバリア性の要求に対し、樹脂基板上にガスバリア層を形成させる方法が、種々提案されている。
【0005】
例えば、高温(樹脂基板の耐熱性を超える温度)に加熱することなくガスバリア効果を得る手段として、炭化シリコンをスパッタした薄膜を形成することが提案されている。炭化シリコン薄膜は光吸収が大きいため着色が生じるが、スパッタ時に窒素や酸素を加えることで光透過性が付与できるとされている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この技術に代表される真空プロセスにより形成される無機膜のガスバリア性は、上記の要求を満足させるものではなかった。
【0006】
そこで、無機層とポリマー層とを交互に複数層積層させてハイブリッド化することによりガスバリア性を向上させることが提案されている(例えば、特許文献2〜4参照。)。しかしながら、異なる材料の層を異なるプロセスにより形成するため、生産効率やコストの観点からは好ましいものとはいえない。また、十分なガスバリア性を得るためには積層の数を増やしたり、各層を厚く形成する必要があり、そのために製造効率が低下するという問題があった。また積層させる層の材質や積層数により光学吸収が大きくなり、透明性が低下しやすくなるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−151528号公報
【特許文献2】特許第2996516号公報
【特許文献3】特開2007−230115号公報
【特許文献4】特開2009−23284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
また、前記先行技術文献では指摘されていないが、ガスバリア層のクラックの問題があり、このクラックの問題は、ガスバリア性に影響を及ぼす。そこで、本発明は、透明ガスバリア層の積層数が少なくてもガスバリア性に優れ、かつ、高い透明性を有し、さらに、透明ガスバリア層の内部応力が非常に低い透明ガスバリアフィルムおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の透明ガスバリアフィルムは、樹脂基板上に透明ガスバリア層が形成された透明ガスバリアフィルムであって、
前記透明ガスバリア層が、金属および半金属の少なくとも1種を含み、
前記透明ガスバリア層が、放電処理がされた放電処理層と、放電処理がされていない非放電処理層とを含み、
前記非放電処理層の密度に対する前記放電処理層の密度の比が、1.0を超え2.0以下の範囲であり、
前記透明ガスバリア層の厚みに対する前記放電処理層の厚みの比が、0.05〜0.3の範囲であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の透明ガスバリアフィルムの製造方法は、樹脂基板上に透明ガスバリア層を形成する透明ガスバリアフィルムの製造方法であって、
金属および半金属から選択される少なくとも1種を含む透明ガスバリア層を形成する透明ガスバリア層形成工程と、
前記透明ガスバリア層の一部に放電処理を行うことで、前記透明ガスバリア層の一部を放電処理層とし、前記放電処理を行っていないその他の部分を非放電処理層とする放電処理工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の他の態様の透明ガスバリアフィルムは、前記本発明の透明ガスバリアフィルムの製造方法によって製造されたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板上に、陽極層、有機エレクトロルミネッセンス(EL)層および陰極層が、この順序で設けられた積層体を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記基板が、前記本発明の透明ガスバリアフィルムであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板上に、陽極層、有機エレクトロルミネッセンス(EL)層および陰極層が、この順序で設けられた積層体を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
さらに、背面封止部材を有し、
前記積層体の少なくとも一部が前記背面封止部材で被覆されており、
前記基板および前記背面封止部材の少なくとも一方が、前記本発明の透明ガスバリアフィルムであることを特徴とする。
【0014】
本発明の太陽電池は、太陽電池セルを含む太陽電池であって、前記太陽電池セルが、前記本発明の透明ガスバリアフィルムで被覆されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の薄膜電池は、集電層、陽極層、固体電解質層、陰極層および集電層が、この順序で設けられた積層体を有する薄膜電池であって、前記積層体が、前記本発明の透明ガスバリアフィルムで被覆されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、透明ガスバリア層の積層数が少なくてもガスバリア性に優れ、かつ、高い透明性を有し、さらに、透明ガスバリア層の内部応力が非常に低い透明ガスバリアフィルムおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の透明ガスバリアフィルムの構成の一例を示す概略断面図である。
【図2】図2は、本発明の透明ガスバリアフィルムの構成の他の例を示す概略断面図である。
【図3】図3は、本発明の透明ガスバリアフィルムをバッチ生産方式で製造する装置の構成の一例を示す模式図である。
【図4】図4は、本発明の透明ガスバリアフィルムを連続生産方式で製造する装置の構成の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の透明ガスバリアフィルムにおいて、
前記透明ガスバリア層が、前記樹脂基板側から、非放電処理層、放電処理層の順に形成されており、
前記透明ガスバリア層の放電処理層上に、さらにバリア層が形成されていることが好ましい。
【0019】
本発明の透明ガスバリアフィルムにおいて、
前記金属および前記半金属の少なくとも1種が、酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物および酸化窒化炭化物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0020】
本発明の透明ガスバリアフィルムの製造方法において、
前記透明ガスバリア層の一部が、前記透明ガスバリア層の表層部であることが好ましい。
【0021】
本発明の透明ガスバリアフィルムの製造方法において、
前記放電処理が、プラズマビーム照射またはイオンビーム照射によって行われることが好ましい。
【0022】
つぎに、本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の記載により制限されない。
【0023】
本発明の透明ガスバリアフィルムにおける透明ガスバリア層は、放電処理がされた放電処理層と、放電処理がされていない非放電処理層とを含む。
【0024】
前記放電処理層と前記非放電処理層とは、金属および半金属の少なくとも1種を含んでいる。金属または半金属の少なくとも1種は、酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物および酸化窒化炭化物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。金属としては、例えば、アルミニウム、チタン、インジウム、マグネシウムなどであり、半金属は、例えば、ケイ素、ビスマス、ゲルマニウムなどである。ガスバリア性の向上のためには、透明ガスバリア層内におけるネットワーク構造(網目状の構造)を緻密にするような炭素、窒素を含むことが好ましい。さらに透明性を向上させるためには、酸素を含有していることが好ましい。
【0025】
前記透明ガスバリア層は、蒸着、スパッタリング、化学気相堆積法(CVD)のような真空を用いたドライプロセスにより形成される。これにより、非常に緻密でガスバリア性の高い薄膜を得ることができる。この中でも、蒸着法が好ましい。蒸着法は、成膜速度が非常に速いプロセスであり、生産性の高いプロセスであるため、生産効率が良いためである。
【0026】
本発明の透明ガスバリアフィルムにおいて、前記放電処理層は、前記透明ガスバリア層の一部に放電処理を施し、形成されている。前記放電処理を行っていないその他の部分が非放電処理層である。前記放電処理層は、前記非放電処理層に比べて層の密度が高く、優れたガスバリア性を有する。前記透明ガスバリア層の一部が、前記透明ガスバリア層の表層部であることが好ましい。前記放電処理層は、表面処理により形成された層であるため、層厚が薄く透明性も高くなる。層の厚みは、放電出力、処理時間など条件により異なるが、2.5nm〜150nmの範囲とすることができ、好ましくは、7.5nm〜105nmの範囲である。放電処理の手段としては、コロナ放電、大気圧プラズマ、高周波プラズマ、直流プラズマ、アーク放電プラズマ、イオンビームのような、電離活性気体を照射することがあげられる。中でも、アーク放電プラズマおよびイオンビームが好ましく、アーク放電プラズマがより好ましい。アーク放電プラズマは、通常使用されるグロー放電プラズマとは異なり、非常に高い電子密度であることがわかっている。蒸着法にアーク放電プラズマを用いることで、反応性を高くすることができ、非常に緻密な透明ガスバリア層が形成できる。
【0027】
アーク放電プラズマは、例えば、圧力勾配型プラズマガン、直流放電プラズマ発生装置、高周波放電プラズマ発生装置などで形成可能であるが、中でも蒸着中でも安定して高密度なプラズマを発生することが可能な圧力勾配型プラズマガンを用いることが好ましい。
【0028】
前記放電処理の際には、ガスを導入することが好ましい。前記ガスは、特に制限されないが、不活性ガスであるヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノン、または、反応性ガスである酸素、窒素、水素、炭化水素などがあげられる。
【0029】
前記放電処理層の密度は、前記非放電処理層の密度よりも高く、前記非放電処理層の密度に対する前記放電処理層の密度の比は1.0を超え2.0以下の範囲である。密度の高い放電処理層があることで、前記透明ガスバリア層が薄くても、ガスバリア性を向上させることができる。ただし、前記密度の比が2.0より大きい、あるいは1.0以下であると、内部応力差が生じ、クラックが発生して、ガスバリア性が逆に低下する。前記密度の比は、1.2〜1.8の範囲であることが好ましく、1.5〜1.8の範囲であることがより好ましい。前記非放電処理層の密度は材質、組成および成膜方法によっても異なるものとなるが、例えば、酸化シリコン層は1.6〜2.2g・cm−3、窒化シリコン層は2.3〜2.7g・cm−3である。
【0030】
前記放電処理層は、前記透明ガスバリア層の一部に形成され、前記透明ガスバリア層の厚みに対する前記放電処理層の厚みの比は0.05〜0.3の範囲である。前記厚みの比が0.05より小さいと、ガスバリア性が低下し好ましくない。また、0.3より大きいと、前記放電処理層により光学吸収が発生しやすく、前記ガスバリア層の透明性を低下させたり、また、処理時間がかかるなど生産効率が低下する。前記厚みの比は、0.07〜0.25の範囲であることが好ましく、0.13〜0.25の範囲であることがより好ましい。
【0031】
前記透明ガスバリア層の厚みは、ガスバリア性、透明性、成膜時間、膜の内部応力の観点を考慮し、50〜500nmの範囲であることが好ましい。より好ましくは、150nm〜350nmの範囲である。
【0032】
図1は、本発明の透明ガスバリアフィルムの構成の一例の概略断面図である。図示のとおり、この透明ガスバリアフィルム100は、樹脂基板110上に透明ガスバリア層120を有している。透明ガスバリア層120は、放電処理がされていない非放電処理層120aと、放電処理がされた放電処理層120bとが、この順で樹脂基板110上に形成されている。図2は、本発明の透明ガスバリアフィルムの構成の他の例の概略断面図である。この透明ガスバリアフィルム200は、樹脂基板110上に透明ガスバリア層220が形成されており、透明ガスバリア層220上に、さらにバリア層230が形成されている。透明ガスバリア層220は、非放電処理層220aと放電処理層220bとが、この順で樹脂基板110上に形成されている。バリア層230は、前記透明ガスバリア層と同様の金属および半金属の少なくとも1種を含んでいることが好ましく、前記透明ガスバリア層や、前記透明ガスバリア層における非放電処理層と同様に形成することができる。
【0033】
前記透明ガスバリア層において、前記非放電処理層および前記放電処理層の数や形成の順序は、前記各層が、それぞれ少なくとも1層形成されていれば特に制限されない。前記形成の順序は、例えば、非放電処理層/放電処理層の順、また、非放電処理層/非放電処理層/放電処理層の順などとすることができるが、放電処理層の上にバリア層として非放電処理層を形成すると、効果的にガスバリア性を発現させることができるため、好ましい。
【0034】
本発明における樹脂基板としては、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンサルファイド、ポリフェニルサルファイド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドなど透明性があるフィルムがあげられる。前記樹脂基板の厚みは、20〜200μmが好ましく、ハンドリングの面から50〜150μmの厚さが特に好ましい。
【0035】
本発明における樹脂基板は、前記透明ガスバリア層の形成前にその表面を、例えば、コロナ放電処理、プラズマ放電処理またはイオンエッチング(RIE)処理を行ったものであってもよい。また平滑層や接着層として無機物やポリマーの層を、真空プロセスや塗布により形成したものであってもよい。
【0036】
本発明において、前記金属および前記半金属の少なくとも1種が、酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物および酸化窒化炭化物からなる群から選ばれる場合、酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物、酸化窒化炭化物に含まれる酸素、炭素または窒素は、例えば、反応ガスの存在下でアーク放電プラズマを発生させて、前記金属および前記半金属の少なくとも1種の蒸着を行うことによって、導入することができる。前記蒸着における蒸着材料として、金属酸化物、半金属酸化物を用いることもできる。前記反応ガスとしては、酸素含有ガス、窒素含有ガス、炭化水素含有ガス、またはこれらの混合ガスを用いることができる。
【0037】
酸素含有ガスとしては酸素(O)、一酸化二窒素(NO)、一酸化窒素(NO)、窒素含有ガスとしては窒素(N)、アンモニア(NH)、一酸化窒素(NO)、炭化水素含有ガスとしてはメタン(CH)、エタン(C)、プロパン(C)、ブタン(C10)、エチレン(C)、アセチレン(C)などがあげられる。
【0038】
前記蒸着材料を蒸発させる手段としては、抵抗加熱、電子ビーム、アーク放電プラズマのいずれかを蒸着材料(蒸着源)に導入する方法を用いることができる。中でも、高速蒸着が可能である電子ビームあるいはアーク放電プラズマによる方法であることが好ましい。これらの方法は、併用してもよい。
【0039】
前記透明ガスバリアフィルムは、バッチ生産方式でも連続生産方式でも製造することができる。連続生産方式の場合、前記透明ガスバリア層形成時に真空槽内において、前記透明樹脂フィルムをロールにより連続的に搬送しながら、前記透明樹脂フィルムの上に前記透明ガスバリア層を形成する(Roll−to−roll方式)。
【0040】
図3に、本発明における透明ガスバリアフィルムをバッチ生産方式で製造する装置の構成の一例を示す。図示のとおり、この製造装置300は、真空槽1、圧力勾配型プラズマガン2、反射電極5、収束電極6、蒸着源7、放電ガス供給手段11、反応ガス供給手段12、真空ポンプ20を主要な構成部材として有する。真空槽1内には、基板加熱ヒータ13が配置され、前記基板加熱ヒータ13に樹脂基板(例えば、透明樹脂フィルム)3が設置されている。蒸着源7は、基板加熱ヒータ13と対向するように、真空槽1の底部に設置されている。蒸着源7の上面には、蒸着材料8が装着されている。前記真空ポンプ20は、前記真空槽1の側壁(同図においては、右側側壁)に配置されており、これにより、前記真空槽1内を減圧することが可能となっている。前記放電ガス供給手段11および前記反応ガス供給手段12は、前記真空槽1の側壁(同図においては、右側側壁)に配置されている。前記放電ガス供給手段11は、放電ガス用ガスボンベ21に接続されており、これにより、適度な圧力の放電ガス(例えば、アルゴンガス)を、前記真空槽1内に供給することが可能となっている。前記反応ガス供給手段12は、反応ガス用ガスボンベ22に接続されており、これにより、適度な圧力の反応ガス(例えば、酸素ガス、窒素ガス、メタンガス)を、前記真空槽1内に供給することが可能となっている。基板加熱ヒータ13には、温度制御手段(図示せず)が接続されている。これにより、基板加熱ヒータ13の表面温度を調整することで、樹脂基板3の温度を、所定の範囲とすることが可能となっている。前記温度制御手段としては、例えば、シリコーンオイル等を循環する熱媒循環装置等があげられる。
【0041】
図3に示す製造装置を使用した場合の製造プロセスの一例は、次のとおりである。真空槽1内を10−3Pa以下に排気した後、アーク放電プラズマ発生源である圧力勾配型プラズマガン2に、放電ガス供給手段11から放電ガスとしてアルゴンを導入し、一定電圧を印加して、樹脂基板3が曝されるようにプラズマビーム4を反射電極5に向かって照射する。プラズマビーム4は収束電極6によって一定の形状になるよう制御される。アーク放電プラズマの出力は、例えば、1〜10kWである。一方、反応ガス供給手段12から反応ガスを導入する。また、蒸着源7に設置した蒸着材料8に電子ビーム9を照射し基板3に向かって材料を蒸発させる。反応ガスが存在する状態で、蒸着を行い、基板3上に所定の透明ガスバリア層を形成させる。透明ガスバリア層の形成速度(蒸着速度)は基板3付近に設置した水晶モニター10によって計測、制御される。蒸発開始から蒸着速度が安定化するまでの間は、基板3を覆うシャッター(図示せず)を閉じておき、蒸着速度が安定してから前記シャッターを開けて、透明ガスバリア層の形成を行うことが好ましい。透明ガスバリア層として、複数層を積層する場合には、この工程を繰り返し所定の積層体を形成させる。放電処理層の形成時には、蒸着源7に設置した蒸着材料8への電子ビーム照射を行わず、基板3上にアーク放電プラズマのみを照射する。このときのアーク放電プラズマの出力は、前記と同様である。放電プラズマの出力と照射時間とを制御することで、放電処理層の密度や厚みを制御することができる。放電プラズマを高出力にすると、放電処理層を高密度にすることができ、照射時間を長時間にすると、放電処理層の厚みを厚くすることができる。各層の形成時の系内圧力は、例えば、0.01Pa〜0.1Paの範囲内であり、0.02Pa〜0.05Paの範囲内であることが好ましい。また、基板温度は、例えば、20℃〜200℃の範囲内であり、80℃〜150℃の範囲内であることが好ましい。なお、前記アーク放電プラズマの発生と反応ガスの導入は同時または前後してもよく、反応ガス導入と前記プラズマ発生を同時に行ってもよいし、反応ガス導入後に前記プラズマを発生させてもよく、前記プラズマ発生後に反応ガスを導入してもよい。反応ガスは、透明ガスバリア層形成時に系内に存在すればよい。
【0042】
図4に、本発明の透明ガスバリア層を連続生産方式で製造する装置の構成の一例を示す。連続生産方式は、前記透明ガスバリア層形成時に真空槽内において、前記透明樹脂フィルムをロールにより連続的に搬送しながら、前記透明樹脂フィルムの上に前記透明ガスバリア層を形成する方式である。図4において、図3と同一部分には、同一符号を付している。図示のとおり、この製造装置400は、基板加熱ヒータ13に代えて、真空槽31内に、巻出ロール33a、キャンロール35、巻取ロール33b、および二つの補助ロール34a、34bが配置されている。巻出ロール33aから、巻取ロール33bにわたり、キャンロール35および二つの補助ロール34a、34bを介して、透明樹脂フィルム32が掛け渡されている。これら以外は、図3と同様の構成である。キャンロール35には、温度制御手段(図示せず)が接続されている。前記温度制御手段としては、基板加熱ヒータ13の場合と同様のものがあげられる。
【0043】
本装置による連続生産は、フィルムを連続して装置内に導入し、フィルムを移動させながら反応ガスの存在下でアーク放電プラズマビームに曝して蒸着を行い、連続して透明ガスバリア層を形成する。反応ガスおよびターゲットを切り替えて、また、蒸着材料への電子ビーム照射を行わず、この工程を繰り返すことで、所定の積層体を形成することができる。本装置による連続生産は、フィルムを移動させながら蒸着および放電処理を行うこと以外は、バッチ生産方式で製造する装置と同様に実施できる。
【0044】
本発明の有機EL素子は、基板上に、陽極層、有機エレクトロルミネッセンス(EL)層および陰極層が、この順序で設けられた積層体を有するものであって、前記基板が本発明の透明ガスバリアフィルムであることを特徴とする。前記陽極層としては、例えば、透明電極層として使用できる、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(登録商標、Indium Zinc Oxide)の層が形成される。前記有機エレクトロルミネッセンス(EL)層は、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層からなる。陰極層としては、反射層を兼ねてアルミニウム層、マグネシウム/アルミニウム層、マグネシウム/銀層等が形成される。この積層体を大気に曝さないようにこの上から金属、ガラス、樹脂等により封止を行う。
【0045】
本発明の有機EL素子は、さらに背面封止部材を有し、前記積層体の少なくとも一部が前記背面封止部材で被覆されており、前記基板および前記背面封止部材の少なくとも一方が、本発明の透明ガスバリアフィルムであることを特徴とする。すなわち、本発明の透明ガスバリアフィルムは有機EL素子の背面封止部材としても適用可能である。この場合、本透明ガスバリアフィルムを前記積層体上に接着剤を用いて、または、ヒートシールなどにより設置することで十分に封止性を保つことが可能である。
【0046】
有機EL素子の基板として、本発明の透明ガスバリアフィルムを用いると、有機EL素子の軽量化、薄型化および柔軟化が可能となる。したがって、ディスプレイとしての有機EL素子はフレキシブルなものとなり、これを丸めるなどして、電子ペーパーのように使用することも可能となる。また、本発明の透明ガスバリアフィルムを背面封止部材として用いると、被覆が容易であり、また、有機EL素子の薄型化も可能となる。
【0047】
本発明の太陽電池は、太陽電池セルを含み、前記太陽電池セルが、前記本発明の透明ガスバリアフィルムで被覆されている。前記本発明の透明ガスバリアフィルムは、太陽電池の受光側フロントシートおよび保護用バックシートとしても好適に使用できる。太陽電池の構造の一例としては、薄膜シリコンやCIGS(Copper Indium Gallium DiSelenide)薄膜により形成した太陽電池セルを、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の樹脂により封止し、さらに本発明の透明ガスバリアフィルムにより挟み込むことで構成されるものがあげられる。前記樹脂による封止をせずに、本発明の透明ガスバリアフィルムで直接挟み込んでもよい。
【0048】
本発明の薄膜電池は、集電層、陽極層、固体電解質層、陰極層および集電層が、この順序で設けられた積層体を有する薄膜電池であって、前記積層体が、前記本発明の透明ガスバリアフィルムで被覆されている。薄膜電池としては、薄膜リチウムイオン電池などがあげられる。前記薄膜電池としては、基板上に金属を用いた集電層、金属無機膜を用いた陽極層、固体電解質層、陰極層、金属を用いた集電層を順次積層させた構成が代表的である。前記本発明の透明ガスバリアフィルムは薄膜電池の基板としても使用することができる。
【実施例】
【0049】
つぎに、本発明の実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は、下記の実施例および比較例によってなんら限定ないし制限されない。また、各実施例および各比較例における各種特性および物性の測定および評価は、下記の方法により実施した。
【0050】
(水蒸気透過速度)
水蒸気透過速度(WVTR)は、JIS K7126に規定される水蒸気透過速度測定装置(MOCON社製、商品名PERMATRAN)にて、温度40℃、湿度90%RHの環境下で測定した。なお、前記水蒸気透過率測定装置の測定範囲は0.005g・m−2・day−1以上である。
【0051】
(光線透過率)
光線(可視光)透過率は、株式会社日立製作所製のUV−可視光分光光度計(商品名:U4000)を使用して測定し、550nmの透過率で表した。
【0052】
(透明ガスバリアフィルムを構成する各層の厚み)
透明ガスバリアフィルムを構成する各層の厚みdは、透明ガスバリアフィルムの断面を、株式会社日本電子製の走査型電子顕微鏡(商品名:JSM−6610)にて観察し、基板(フィルム)表面から各層表面までの長さを測長し、算出した。
【0053】
(透明ガスバリアフィルムを構成する各層の密度)
透明ガスバリアフィルムを構成する各層の密度ρは、株式会社リガク製のX線回折装置(商品名:Smart Lab)により、透明ガスバリア層を構成する各層のX線反射率を測定し、各層の密度を算出した。
【0054】
(フィルムのカール)
透明ガスバリア層およびバリア層の内部応力を確認するため、透明ガスバリア層およびバリア層を形成したフィルムのカール(反り)の有無を、次の方法で判定した。100mm角の前記フィルムを水平台に置き、端の一点を固定する。他方の端が水平台より離れた距離が3mm未満であれば「無」、3mm以上であれば「有」と判定した。
【0055】
[実施例1]
〔透明樹脂フィルムの準備〕
透明樹脂フィルム(樹脂基板)として、帝人デュポンフィルム社製のポリエチレンナフタレートフィルム(厚み100μm、商品名「テオネックス」)を準備した。
【0056】
〔透明ガスバリア層形成工程〕
つぎに、前記ポリエチレンナフタレートフィルムを、図3に示す製造装置に装着した。圧力勾配型プラズマガン内にアルゴンガス20sccm(20×1.69×10−3Pa・m/秒)を導入し、前記プラズマガンに5kWの放電出力を印加しアーク放電プラズマを発生させた。反応ガスとして、窒素(純度5N:99.999%)を40sccm(40×1.69×10−3Pa・m/秒)の流量で真空槽内に導入し、この状態で、蒸着材料であるシリコン粒(純度3N:99.9%)に電子ビーム(加速電圧 6kV、印加電流 50mA)を照射して、蒸着速度100nm/minとなるように蒸発させて、基板上に透明ガスバリア層を厚み80nmとなるように蒸着した。このとき系内圧力が2.0×10−2Paで、基板加熱ヒータ温度は100℃とした。
【0057】
〔放電処理工程〕
その後、前記電子ビームの照射を止め、前記シリコン粒の蒸発を中止した。この状態で、アルゴンガスを20sccm(20×1.69×10−3Pa・m/秒)および窒素を40sccm(40×1.69×10−3Pa・m/秒)の流量で真空槽内に導入し、前記プラズマガンに5kWの放電出力を印加し、前記透明ガスバリア層に対しアーク放電プラズマを30秒照射して、放電処理層を形成した。
【0058】
得られた透明ガスバリア層について、各層の厚みおよび密度を分析した。透明ガスバリア層の厚みは80nm、密度は2.4g・cm−3であった。放電処理層の厚みは10nm、密度は3.6g・cm−3であった。
【0059】
[実施例2]
非放電処理層および放電処理層を形成するまでは、実施例1と同様にし、前記放電処理層上に、前記透明ガスバリア層形成工程と同様の条件でバリア層を形成して、本実施例の透明ガスバリアフィルムを得た。
【0060】
得られた透明ガスバリア層について、厚みおよび密度を分析したところ、第1の実施例と同様であった。
【0061】
[実施例3]
放電処理層を形成する際の放電出力が3kWである他は、実施例2と同様にして、本実施例の透明ガスバリアフィルムを得た。
【0062】
得られた透明ガスバリア層について、厚みおよび密度を分析した。前記放電処理層の密度が2.9g・cm−3であった他は、実施例2と同様であった。
【0063】
[実施例4]
放電処理層を形成する際の放電出力が7kWである他は、実施例2と同様にして、本実施例の透明ガスバリアフィルムを得た。
【0064】
得られた透明ガスバリア層について、厚みおよび密度を分析した。前記放電処理層の密度が4.3g・cm−3であった他は、実施例2と同様であった。
【0065】
[実施例5]
前記プラズマガンに5kWの放電出力を印加し、前記透明ガスバリア層に対しアーク放電プラズマを10秒照射して放電処理層を形成し、前記放電処理層の厚みを6nmとした他は、実施例2と同様にして、本実施例の透明ガスバリアフィルムを得た。
【0066】
[実施例6]
前記プラズマガンに5kWの放電出力を印加し、前記透明ガスバリア層に対しアーク放電プラズマを90秒照射して放電処理層を形成し、前記放電処理層の厚みを20nmとした他は、実施例2と同様にして、本実施例の透明ガスバリアフィルムを得た。
【0067】
[比較例1]
基板上に、実施例1と同様の条件で、非放電処理層のみを形成し、本比較例の透明ガスバリアフィルムを得た。
【0068】
[比較例2]
実施例1と同様の条件で、非放電処理層を形成し、その上に、前記非放電処理層と同様の条件でバリア層を形成して、本比較例の透明ガスバリアフィルムを得た。
【0069】
[比較例3]
放電処理層を形成する際の放電出力が2kWである他は、実施例2と同様にして、本比較例の透明ガスバリアフィルムを得た。
【0070】
得られた透明ガスバリア層について、厚みおよび密度を分析した。前記放電処理層の密度が1.9g・cm−3であった他は、実施例2と同様であった。
【0071】
[比較例4]
放電処理層を形成する際の放電出力が10kWである他は、実施例2と同様にして、本比較例の透明ガスバリアフィルムを得た。
【0072】
得られた透明ガスバリア層について、厚みおよび密度を分析した。前記放電処理層の密度が5.3g・cm−3であった他は、実施例2と同様であった。
【0073】
[比較例5]
前記プラズマガンに5kWの放電出力を印加し、前記透明ガスバリア層に対しアーク放電プラズマを4秒照射して放電処理層を形成し、前記放電処理層の厚みを2.5nmとした他は、実施例2と同様にして、本比較例の透明ガスバリアフィルムを得た。
【0074】
[比較例6]
前記プラズマガンに5kWの放電出力を印加し、前記透明ガスバリア層に対しアーク放電プラズマを120秒照射して放電処理層を形成し、前記放電処理層の厚みを30nmとした他は、実施例2と同様にして、本比較例の透明ガスバリアフィルムを得た。
【0075】
実施例1〜6および比較例1〜6で得られた透明ガスバリアフィルムについて、水蒸気透過速度(WVTR)、550nmの波長における光線透過率、およびフィルムのカールの有無を測定した。測定結果を表1に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
前記表1に示すとおり、実施例で得られた透明ガスバリアフィルムは、いずれも水蒸気透過速度が0.01g・m−2・day−1以下の良好なガスバリア性と、83%以上の良好な光線透過率を有しており、好適な特性を有する透明ガスバリアフィルムが得られていることがわかる。また、フィルムの反りも見られず、透明ガスバリア層の内部応力が低いことがわかる。一方、放電処理層を有していない比較例1および2では、水蒸気透過速度が0.12g・m−2・day−1以上と大きく、ガスバリア性に劣っていることがわかる。前記非放電処理層の密度に対する前記放電処理層の密度の比が1.0より小さい比較例3では、放電処理層の密度が十分高くないために、ガスバリア性が0.04g・m−2・day−1と、良好ではなかった。前記密度の比が2.0より大きい比較例4では、フィルムのカールが見られ、ガスバリア性が0.03g・m−2・day−1と、良好ではなかった。これは、前記各層間の内部応力差が生じ、クラックが発生して、ガスバリア性が低下したものと考えられる。また、高密度の放電処理層による光学吸収の発生のため、光線透過率が80%と、光透過性は十分とはいえなかった。前記非放電処理層の密度に対する前記放電処理層の厚みの比が0.05より小さい比較例5では、放電処理層の厚みが十分ではないために、ガスバリア性が0.04g・m−2・day−1と、良好ではなかった。前記厚みの比が0.3より大きい比較例6では、放電処理層による光学吸収の発生のため、光線透過率が80%と、光透過性は十分とはいえなかった。また、フィルムのカールが見られ、透明ガスバリア層の内部応力が高いことがわかる。そのために、ガスバリア性が0.03g・m−2・day−1と、低下したものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の透明ガスバリアフィルムは、透明ガスバリア層の積層数が少なくてもガスバリア性に優れ、かつ、高い透明性を有し、さらに、透明ガスバリア層の内部応力が非常に低いものである。本発明の透明ガスバリアフィルムは、例えば有機EL表示装置、フィールドエミッション表示装置ないし液晶表示装置等の各種の表示装置(ディスプレイ)、太陽電池、薄膜電池、電気二重層コンデンサ等の各種の電気素子・電気素子の基板ないし封止材料等として使用することができ、その用途は限定されず、前述の用途に加えあらゆる分野で使用することができる。
【符号の説明】
【0079】
100、200 透明ガスバリアフィルム
110 樹脂基板
120、220 透明ガスバリア層
120a、220a 非放電処理層
120b、220b 放電処理層
230 バリア層
300、400 製造装置
1、31 真空槽
2 圧力勾配型プラズマガン(アーク放電プラズマ発生源)
3 樹脂基板
4 プラズマビーム
5 反射電極
6 収束電極
7 蒸着源
8 蒸着材料
9 電子ビーム
10 水晶モニター
11 放電ガス供給手段
12 反応ガス供給手段
13 基板加熱ヒータ
20 真空ポンプ
21 放電ガス用ガスボンベ
22 反応ガス用ガスボンベ
32 透明樹脂フィルム
33a 巻出ロール
33b 巻取ロール
34a、34b 補助ロール
35 キャンロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂基板上に透明ガスバリア層が形成された透明ガスバリアフィルムであって、
前記透明ガスバリア層が、金属および半金属の少なくとも1種を含み、
前記透明ガスバリア層が、放電処理がされた放電処理層と、放電処理がされていない非放電処理層とを含み、
前記非放電処理層の密度に対する前記放電処理層の密度の比が、1.0を超え2.0以下の範囲であり、
前記透明ガスバリア層の厚みに対する前記放電処理層の厚みの比が、0.05〜0.3の範囲であることを特徴とする透明ガスバリアフィルム。
【請求項2】
前記透明ガスバリア層が、前記樹脂基板側から、非放電処理層、放電処理層の順に形成されており、
前記透明ガスバリア層の放電処理層上に、さらにバリア層が形成されていることを特徴とする、請求項1記載の透明ガスバリアフィルム。
【請求項3】
前記金属および前記半金属の少なくとも1種が、酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、酸化炭化物、窒化炭化物および酸化窒化炭化物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1または2記載の透明ガスバリアフィルム。
【請求項4】
樹脂基板上に透明ガスバリア層を形成する透明ガスバリアフィルムの製造方法であって、
金属および半金属から選択される少なくとも1種を含む透明ガスバリア層を形成する透明ガスバリア層形成工程と、
前記透明ガスバリア層の一部に放電処理を行うことで、前記透明ガスバリア層の一部を放電処理層とし、前記放電処理を行っていないその他の部分を非放電処理層とする放電処理工程とを含むことを特徴とする、透明ガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項5】
前記透明ガスバリア層の一部が、前記透明ガスバリア層の表層部であることを特徴とする、請求項4記載の透明ガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項6】
前記放電処理が、プラズマビーム照射またはイオンビーム照射によって行われることを特徴とする、請求項4または5記載の透明ガスバリアフィルムの製造方法。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか一項に記載の透明ガスバリアフィルムの製造方法によって製造されたことを特徴とする透明ガスバリアフィルム。
【請求項8】
基板上に、陽極層、有機エレクトロルミネッセンス層および陰極層が、この順序で設けられた積層体を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、前記基板が、請求項1から3のいずれか一項または請求項7記載の透明ガスバリアフィルムであることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
基板上に、陽極層、有機エレクトロルミネッセンス層および陰極層が、この順序で設けられた積層体を有する有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
さらに、背面封止部材を有し、
前記積層体の少なくとも一部が前記背面封止部材で被覆されており、
前記基板および前記背面封止部材の少なくとも一方が、請求項1から3のいずれか一項または請求項7記載の透明ガスバリアフィルムであることを特徴とする、有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
太陽電池セルを含む太陽電池であって、前記太陽電池セルが、請求項1から3のいずれか一項または請求項7記載の透明ガスバリアフィルムで被覆されていることを特徴とする太陽電池。
【請求項11】
集電層、陽極層、固体電解質層、陰極層および集電層が、この順序で設けられた積層体を有する薄膜電池であって、前記積層体が、請求項1から3のいずれか一項または請求項7記載の透明ガスバリアフィルムで被覆されていることを特徴とする薄膜電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−22820(P2013−22820A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159422(P2011−159422)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】