説明

透明導電性フィルムおよびその製造方法並びにタッチパネル

【課題】耐久性、防汚性、視認性向上効果、オリゴマー抑制効果に優れる透明導電性フィルムおよびこれを用いたタッチパネルを提供する。
【解決手段】基材フィルムの一方の面に、シリカ層(A)と導電層とを基材フィルム側からこの順に有し、前記基材フィルムの前記シリカ層(A)を有する面とは反対面に、樹脂を含むハードコート層とシリカ層(B)とを基材フィルム側からこの順に有し、前記シリカ層(A)およびシリカ層(B)が、ケイ素、炭素および酸素を含む透明導電性フィルムおよびこれを用いたタッチパネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性、防汚性、視認性向上効果、オリゴマー抑制効果に優れ、かつ低コストで製造することが可能な透明導電性フィルムおよびこれを用いたタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
透明なプラスチックフィルム上に透明でかつ電気抵抗が小さい導電性薄膜を形成した透明導電性フィルムは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等のフラットパネルディスプレイやタッチパネルの透明電極として、電気・電子分野で広く使用されている。特に近年、携帯電話、タブレットPC等のタッチパネル付きデバイスの普及はめざましく、これに伴い透明導電性フィルムの需要は急速に拡大している。
【0003】
一般に、透明導電性フィルムの製造には加熱工程を有することが多い。例えば、透明導電膜を形成する際、スパッタリング法によりインジウム−スズ複合酸化物の膜を形成した後、結晶化のために熱処理を行う場合がある(特許文献1)。さらに、透明導電性フィルムの熱収縮を低減するために熱処理を行う場合がある。これらの熱処理はいずれも130℃〜160℃程度の条件下で行われることが多い。また、電極形成のために透明導電膜に銀ペーストが印刷されるが、その工程で150℃程度の加熱が必要な場合がある(特許文献2)。
【0004】
透明導電性フィルムの基材としては、透明性、耐久性、経済性等に優れたポリエステルフィルムが汎用されているが、ポリエステルフィルムを高温で加熱するとオリゴマーが表面に析出してフィルムが白濁してしまうことが問題となっていた。また、表面に析出したオリゴマーが製造工程中で剥がれて加工設備を汚染してしまう可能性もある。それ故、透明導電性フィルムに用いられるポリエステルフィルムの片面または両面には、ウェットコート法によるオリゴマー析出防止層が設けることが知られている(特許文献3)。
【0005】
また、タッチパネルの表面は、入力や描画の際の繰り返し押圧や摺動に対する耐久性が必要であり、一般的に、抵抗膜式タッチパネルの上部電極として用いられる透明導電性フィルムには、導電層の反対側の面にウェットコート法によるハードコート層が設けられている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−200823号公報
【特許文献2】特開2007−320144号公報
【特許文献3】特開2009−226774号公報
【特許文献4】特開2010−173234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3、4のように、オリゴマー析出防止や耐久性向上のために、タッチパネル最表面に単にウェットコート法によるハードコート層を付与するだけでは、タッチパネル表面に必要とされる防汚性や滑り性が不十分である。さらに、一般的なハードコート膜は屈折率が高いため、タッチパネル最表面に使用した場合反射率が高くなり、視認性が良くない。
【0008】
従って、本発明の目的は、耐久性、防汚性、視認性向上効果、オリゴマー抑制効果に優れる透明導電性フィルムおよびこれを用いたタッチパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の発明によって達成された。
1)基材フィルムの一方の面に、シリカ層(A)と導電層とを基材フィルム側からこの順に有し、前記基材フィルムの前記シリカ層(A)を有する面とは反対面に、樹脂を含むハードコート層とシリカ層(B)とを基材フィルム側からこの順に有し、前記シリカ層(A)およびシリカ層(B)が、ケイ素、炭素および酸素を含む透明導電性フィルム。
2)前記シリカ層(A)の厚みが0.005〜0.5μmの範囲であり、前記シリカ層(B)の厚みが0.01〜0.5μmの範囲である、前記1)の透明導電性フィルム。
3)基材フィルムの一方の面に、シリカ層(A)と導電層とを基材フィルム側からこの順に形成し、前記基材フィルムの前記シリカ層(A)を形成する面とは反対面に、樹脂を含むハードコート層とシリカ層(B)とを基材フィルム側からこの順に形成する透明導電性フィルムの製造方法であって、
前記シリカ層(A)およびシリカ層(B)が、ケイ素、炭素および酸素を含み、
前記シリカ層(A)およびシリカ層(B)をプラズマCVD法により形成し、
前記ハードコート層をウェットコート法で形成する、透明導電性フィルムの製造方法。
4)基材フィルムにハードコート層を形成する工程、シリカ層(A)およびシリカ層(B)を同時あるいは逐次に形成する工程、および導電層を形成する工程をこの順に行い、前記シリカ層(A)およびシリカ層(B)を形成する少なくとも2つの工程を、長尺フィルムロールの巻出しから巻き取りの間に行う、前記3)の透明導電性フィルムの製造方法。
5)前記1)もしくは2)の透明導電性フィルム、または前記3)もしくは4)で製造された透明導電性フィルムを用いたタッチパネル。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐久性、防汚性、視認性向上効果、オリゴマー抑制効果に優れる透明導電性フィルムおよびこれを用いたタッチパネルを提供することができる。また、本発明の透明導電性フィルムの製造方法における好ましい態様によれば、上記本発明の透明導電性フィルムを生産性よく製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明にかかる透明導電性フィルムおよびこれを用いたタッチパネルについて詳細に説明する。
【0012】
(基材フィルム)
本発明にかかる基材フィルムの材質は特に限定されないが、透明性、耐久性等の観点から、ポリエステル、アクリル、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド等から成る樹脂フィルムが好ましく、なかでも、品質、経済性等を総合的に勘案するとポリエステルフィルムが特に好ましい。
【0013】
ポリエステルフィルムとは、エステル結合を主鎖の主要な結合鎖とする高分子化合物を材料とするフィルムの総称であって、例えば、エチレンテレフタレート、エチレン−2,6−ナフタレート、ブチレンテレフタレート、エチレン−α,β−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボキシレートなどから選ばれた少なくとも1種を主要構成成分とするフィルムが挙げられ、これらのフィルムの中でも、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが本発明において特に好ましく用いられる。
【0014】
本発明の基材フィルムに用いられる樹脂には、本発明の効果が失われない範囲内で、各種の添加剤を加えることができる。添加配合することができる添加剤の例としては、例えば、有機微粒子、無機微粒子、分散剤、染料、蛍光増白剤、酸化防止剤、耐候剤、帯電防止剤、重合禁止剤、離型剤、増粘剤、pH調整剤、造核剤および塩などが挙げられる。
【0015】
また基材フィルムの厚みは特に限定されるものではないが、20〜400μmの範囲が好ましく、コスト、工程での搬送性、機械強度、光学特性等を勘案すると50〜200μmの範囲が特に好ましい。
【0016】
さらに、基材フィルムの表面には、ハードコート層またはシリカ層(A)との密着性向上のため、易接着層を付与しても良い。
【0017】
(シリカ層)
以下、シリカ層(A)とシリカ層(B)に共通する内容については、「シリカ層」という統一略称を用いて説明する。
【0018】
本発明にかかるシリカ層は、ケイ素、炭素および酸素を含むシリカ層である。そして、本発明のシリカ層はドライコート法であるプラズマCVD法で形成されることが好ましい。
【0019】
一般的な酸化ケイ素膜の形成方法としては、真空蒸着法やスパッタリング法等が知られているが、これらの方法では、本発明が目的とする耐久性、防汚性、視認性向上効果、オリゴマー抑制効果に優れる透明導電性フィルムに適したシリカ層を形成することが難しい。
【0020】
本発明のケイ素、炭素および酸素を含むシリカ層は、ドライコート法で形成することが重要であり、これによって後述するように1つの生産ラインでシリカ層(A)とシリカ層(B)を同時もしくは逐次に形成することができるので生産性が大幅に向上する。
【0021】
そして、上述したようにドライコート法として一般的に知られている真空蒸着法やスパッタリング法では、本発明のシリカ層は形成することが難しいか、もしくは形成できたとしても本発明が目的とする特性が得られにくいか、あるいは安定的に生産することが、難しい。これに対して、プラズマCVD法は本発明のシリカ層を緻密に安定的に生産効率よく形成することができる。
【0022】
また、本発明のシリカ層は後述するような薄膜であっても、オリゴマー防止性、耐久性、防汚性を発現することが重要であり、そのためにはシリカ層を薄膜で緻密に形成する必要があるが、これにはウェットコート法に比べてドライコート法であるプラズマCVD法が優れている。
【0023】
本発明のシリカ層をプラズマCVD法で形成することによって、硬度が高く、滑り性が良好で、かつ耐擦傷性に優れたシリカ層が得られ、本発明のシリカ層を有する透明導電性フィルムをタッチパネルに適用することによりタッチパネル入力や描画の際の繰り返し押圧や摺動に対する耐久性が向上する。また、本発明のシリカ層はケイ素と酸素だけでなく炭素を含有するため、真空蒸着法やスパッタリング法によって形成されるケイ素および酸素から成る単なる酸化ケイ素膜と比べると、柔軟性に優れ、クラックが生じにくい。
【0024】
また、本発明にかかるシリカ層は表面エネルギーが小さく、撥水性、防汚性に優れるため、タッチパネル表面に好適に用いられる。さらに、ウェットコート法で塗工される一般的な樹脂を含むハードコート膜に比べると屈折率が低いため、タッチパネル最表面にシリカ層を付与する場合は、膜厚を制御することによって外光の反射を抑制し、視認性を向上させることができる。
【0025】
本発明のシリカ層の形成に好適なプラズマCVD法とは、プラズマを発生させた反応室に所定のガスを導入し、プラズマ内の電子衝撃によってラジカルを発生させ、これを輸送して基板表面に薄膜を生成するものである。プラズマCVD法は真空蒸着法やスパッタリング法と比べると加工工程で基材フィルムにかかる温度が低いため、基材フィルムへのダメージを低減することができる。また、プラズマCVD法によって形成されたシリカ膜は基材フィルムとの密着性が良く、ポリエステルフィルムを高温に加熱したときに発生するオリゴマーを抑制する効果に優れている。
【0026】
本発明のシリカ層を形成するためのプラズマCVD法において、プラズマを発生させる方法としては容量結合プラズマ、誘導結合プラズマ、ECRプラズマ、表面波プラズマなど任意のプラズマ生成方法を選択することができるが、基材フィルムへシリカ層を安定的に生産効率よく形成できるという観点からは、基材の冷却および搬送機構を兼ね備えた冷却ドラムと、プラズマCVD電極とを対向配置させてプラズマを生成する容量結合プラズマを用いることが好ましい。プラズマCVD電極に接続する電源としては、高周波電源やパルス電源などを適宜選択して良い。高周波電源を用いる場合、その周波数は任意のものを選択して構わないが、整合の取り易さの観点から10kHz〜100MHzが好ましく、さらに成膜速度およびシリカ層へのイオン衝撃効果による膜質向上の観点から40kHz〜20MHzがより好ましく、100kHz〜15MHzがさらに好ましい。
【0027】
本発明のシリカ層をプラズマCVD法で形成するために用いられる原料ガスとしては、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、テトラエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、テトラメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、テトラキス(2−エチルへキソキシ)シラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラキス(2−メトキシエトキシ)シラン、メチルフェニルジメトキシシラン、テトラキス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、テトラメチルシラン、ジメチルジメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、テトラキス(2−エチルブトキシ)シラン、n−オクチルトリエトキシシラン、アセトキシプロピルトリメトキシシラン、トリス(トリメチルシロキシ)フェニルシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、1,2,3,3−テトラキス(トリメチルシロキシ)ジシロキサン、ペンタメチルジシロキサン等の有機シロキサンを挙げることができる。
【0028】
また、前述の有機シロキサンガスに酸素、窒素、酸化窒素、一酸化炭素、二酸化酸素、アルゴン、ヘリウム等のガスを混合させることもできる。混合ガスの組み合わせや流量比変えることでシリカ層の元素組成をコントロールすることができ、基材フィルムに所望の特性を付与することができる。
【0029】
本発明のシリカ層をプラズマCVD法で形成する際の圧力は、低すぎるとプラズマの生成が困難となり、また高すぎると異常放電が発生したり気相中で反応が進行して粉体が発生したりするため、0.1〜100Paが好ましく、1〜60Paがより好ましく、5〜40Paがさらに好ましい。
【0030】
本発明のシリカ層は、ケイ素、炭素および酸素を含むが、これらの元素組成比(atomic%)は、ケイ素:炭素:酸素=15〜35:5〜55:20〜60の範囲であることが好ましく、基材フィルムとの密着性や機械強度を考慮すると、ケイ素:炭素:酸素=20〜30:20〜40:30〜50の範囲であることが特に好ましい。炭素含有量が少なすぎる場合、あるいは酸素含有量が多すぎる場合は、シリカ層の柔軟性が低下して長尺基材の搬送時にクラックが発生することがある。また、炭素含有量が多すぎると耐擦傷性およびオリゴマー防止性が不十分となることがある。さらに、酸素含有量が少なすぎる場合は、膜の透明性が低下することがある。なお、本発明のシリカ層には、ケイ素、炭素、酸素の他に窒素やその他の元素を含んでも良い。シリカ層(A)とシリカ層(B)とは、上記組成比は同一であっても異なっていてもよい。
【0031】
シリカ層(A)の厚みは、オリゴマーの抑制効果の観点から0.005μm以上が好ましく、0.01μm以上がより好ましい。上限は、生産性やクラックの抑制および透明性の確保の観点から0.5μm以下が好ましく、0.4μm以下がより好ましく、更に0.3μm以下が好ましく、特に0.2μm以下が好ましい。
【0032】
シリカ層(B)の厚みは、透明導電性フィルムの防汚性、滑り性、耐擦傷性の観点から0.01μm以上が好ましく、0.02μm以上がより好ましく、特に0.03μm以上が好ましい。上限の厚みは、生産性やクラックの抑制および透明性の確保の観点から0.5μm以下が好ましく、0.4μm以下がより好ましく、更に0.3μm以下が好ましく、特に0.2μm以下が好ましい。また、透明導電性フィルムに良好な反射防止性を付与するという観点から、シリカ層(B)の厚みは、0.08〜0.12μmの範囲が好ましい。
【0033】
シリカ層(A)およびシリカ層(B)の厚みは、プラズマCVD電極に印加する電力および基材フィルムの搬送速度を変化させることにより調整することができる。プラズマCVD電極に印加する電力の最適値については電極面積に依存するため一概に決めることはできないが、電力が小さすぎると放電が不安定になり、また電力が大きすぎると異常放電が発生したり基材フィルムに熱的ダメージが生じたりするため、プラズマCVD電極の単位面積あたりに投入する電力を3000〜150000W/mに設定することが好ましい。
【0034】
(ハードコート層)
本発明にかかるハードコート層は、樹脂を含むハードコート層である。そして、本発明のハードコート層は、ウェットコート法により形成されることが好ましい。かかるウェットコート法に用いられる塗工方式としては、例えば、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、スピンコート法等が挙げられ、塗剤の種類や膜厚等に応じて適宜選択することができる。
【0035】
本発明のハードコート層は、ハードコート層の固形分総量100質量%に対して樹脂を10質量%以上含むことが好ましく、15質量%以上含むことがより好ましく、更に20質量%以上含むことが好ましく、特に30質量%以上含むことが好ましい。上限は99質量%程度である。
【0036】
ハードコート層を形成するためのウェットコート用塗剤(以下、単に塗剤と言う)としては、重合性モノマーや重合性オリゴマー等の樹脂成分を適当な溶媒に溶解あるいは分散したものを用いることができる。上記塗剤を基材フィルムにウェットコートし、乾燥した後、活性エネルギー線あるいは熱で硬化することによってハードコート層が形成される。
本発明のハードコート層は、活性エネルギー線硬化性あるいは熱硬化性の樹脂成分を含むことが好ましく、特に活性エネルギー線硬化性の樹脂成分を含むことが好ましい。ここで、活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、放射線(α線、β線、γ線など)等が挙げられ、これらの中でも、紫外線や電子線が好ましく、特に紫外線が好ましい。
【0037】
活性エネルギー線硬化性の樹脂成分としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のエチレン性不飽和基を有するモノマーやオリゴマーが挙げられる。
【0038】
モノマーの例としては、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシ(メタ)アクリレート等の単官能アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)トリアクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリル酸安息香酸エステル、トリメチロールプロパン安息香酸エステル等の多官能アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートヘキサメチレンジイソシアネート等のウレタンアクリレート等を挙げることができる。
【0039】
オリゴマーの例としては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、アルキット(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、シリコーン(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0040】
上記したモノマー、オリゴマーの中でも、エチレン性不飽和基が2〜10個有する化合物が好ましく、特に3〜8個有する化合物が好ましい。
【0041】
上記したモノマーやオリゴマーの重合を開始させるために、光重合開始剤を含有することが好ましい。かかる光重合開始剤としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォルメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物などが挙げられ、これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて用いてもよい。
【0042】
本発明のハードコート層は、透明導電性フィルムに良好な耐擦傷性や耐摩耗性を付与するためのものであり、更にオリゴマー発生防止の役目も有する。
【0043】
上記目的のためにはハードコート層の厚みはある程度大きくする必要があり、ハードコート層の厚みを比較的大きくする場合、生産性、膜強度、透明性、カール防止性、クラック防止性の観点から、スパッタ法やCVD法等のドライ法によるハードコート層形成方法に比べて、ウェットコート法によるハードコート層形成方法が有効である。
【0044】
本発明のハードコート層の厚みは、上記した耐擦傷性、耐摩耗性、オリゴマー発生防止の観点から、0.5μm以上が好ましく、0.8μm以上がより好ましく、特に1μm以上が好ましい。上限の厚みは15μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、特に5μm以下が好ましい。
【0045】
ハードコート層上に積層されるシリカ層(B)との組み合わせによって、透明導電性フィルムに反射防止性を付与する場合、ハードコート層の屈折率を大きくすることが好ましい。例えば、ハードコート層の屈折率を1.55以上とすることにより、前述のシリカ層(B)との組み合わせによって反射防止性が発現する。上記観点から、ハードコート層の屈折率は、更に1.58以上が好ましく、特に1.60以上が好ましい。ハードコート層の屈折率の上限は1.80以下が好ましく、1.70以下がより好ましい。
【0046】
ハードコート層の屈折率を上記のように大きくするために、上記の樹脂成分に加えて金属酸化物微粒子を含有させることが好ましい。
【0047】
金属酸化物微粒子としては、例えば酸化亜鉛、酸化錫、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄、アンチモン酸亜鉛、酸化錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、リンドープ酸化錫、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛、フッ素ドープ酸化錫等が挙げられ、これらの金属酸化物微粒子は単独で用いても良いし、複数併用してもよい。
【0048】
金属酸化物微粒子の含有量は、上記の樹脂成分100質量部に対して、10〜500質量部の範囲が好ましい。
【0049】
(導電層)
本発明にかかる導電層は、透明性と導電性を併せ持つ材料であれば良く、特に限定されるものではない。例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)、スズ−アンチモン複合酸化物(ATO)、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物、金、銀、銅などの極薄の金属薄膜等から成る導電層が好ましく用いられるが、なかでも、安定性に優れ、比較的低コストで製造することができるインジウム−スズ複合酸化物またはスズ−アンチモン複合酸化物が特に好ましい。
【0050】
前述の導電層の形成方法ついては、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法、レーザーアブレーション法等が挙げられるが、膜の材料や厚み等に応じて適宜選択することができる。また、透明樹脂中に導電性フィラーを分散させた材料をウェットコート法で基材フィルム上に塗工し、導電層を形成しても良い。
【0051】
上記の導電層の形成方法の中でも、本発明の透明導電性フィルムの生産性の観点から、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法等のドライコート法が好ましく、特にスパッタリング法が好ましい。
【0052】
また、本発明のシリカ層(A)と導電層の間には、他の層、例えば炭素を含まないSiO層を含んでもよい。さらに、静電容量式タッチパネルでは、設計上、導電層がパターニングされる場合があり、その際にパターン形状が目立ってしまうといった問題があるが、本発明の透明導電性フィルムには、パターン形状の視認性を低減または解消するための調整層をシリカ層(A)と導電層の間、または導電層の表面に設けてもよい。
【0053】
導電層の膜厚は、透明性を損なわずかつ所望の表面抵抗値が得られる厚みであれば良い。例えば、インジウム−スズ複合酸化物(ITO)を用いて、表面抵抗値1000Ω/□以下を実現するためには、0.01〜0.3μmの厚みが好ましく、さらに0.02〜0.08μmの厚みが好ましく、特に0.02〜0.05μmの厚みが好ましい。導電層の厚みが薄すぎる場合は、連続した薄膜になりにくく良好な導電性が得られにくい。また、厚すぎる場合は、透明性が損なわれやすい。
【0054】
(透明導電性フィルム)
本発明にかかる透明導電性フィルムは、基材フィルムと、基材フィルムの一方の面にシリカ層(A)と導電層とを基材フィルム側からこの順に有し、前記基材フィルムの前記シリカ層(A)を有する面とは反対面に樹脂を含むハードコート層とシリカ層(B)とを基材フィルム側からこの順に有し、シリカ層(A)およびシリカ層(B)が、ケイ素、炭素および酸素を含むものである。
【0055】
本発明の透明導電性フィルムの好ましい製造方法は、先ず、基材フィルムの一方の面にウェットコート法によりハードコート層を形成し、次いでプラズマCVD法によりシリカ層(A)およびシリカ層(B)を形成し、次いで導電層を形成する。
【0056】
ここで、少なくともシリカ層(A)とシリカ層(B)とは、長尺ロールフィルムの巻き出しから巻き取りの間に、同時もしくは逐次に形成することが好ましく、これによって生産性が大幅に向上する。「同時に形成する」とは、シリカ層を形成する工程において、シリカ層(A)を形成する場所とシリカ層(B)を形成する場所とが、基材フィルムを挟んで対称の位置にあることである。「逐次に形成する」とは、シリカ層(A)を形成する場所とシリカ層(B)を形成する場所とが、基材フィルムの流れ方向で別々の位置にあることであり、どちらが上流側にあってもよい。
【0057】
ここで、長尺フィルムロールは、ハードコート層を形成する前の基材フィルムであってもよい。この場合、巻き出した長尺フィルムにウェットコート法でハードコート層を形成し、次いでプラズマCVD法によりシリカ層(A)とシリカ層(B)とを同時または逐次に形成し、そして再び長尺フィルムを巻き取る。
【0058】
また、長尺フィルムロールは、ハードコート層が形成された後の基材フィルムであってもよい。この場合、巻き出した長尺フィルムに、プラズマCVD法によりシリカ層(A)とシリカ層(B)とを同時または逐次に形成し、そして再び長尺フィルムを巻き取る。
【0059】
また、1つのドライ成膜装置の中にシリカ層の成膜室と導電層の成膜室を併設し、長尺フィルムを巻き取る前にシリカ層(A)、シリカ層(B)および導電層を連続的に形成しても良い。このように、1つの成膜装置の中でシリカ層(A)、シリカ層(B)および導電層を連続的に形成することで、導電性、防汚性、滑り性、オリゴマー抑制効果、反射防止効果といった複数の機能を一気に付与することができ、透明導電性フィルムの製造コストを大幅に削減することができる。
【0060】
(タッチパネル)
本発明の透明導電性フィルムは抵抗膜式や静電容量式のタッチパネルの透明電極として用いることができるが、特に抵抗膜式タッチパネルの上部電極として好ましく使用することができる。
【0061】
抵抗膜式タッチパネルでは、上部電極と下部電極の間にスペーサーが配置され、上部電極の上から指やペンで画面を押すことで下部電極と接触し入力位置を検出することができる。指やペンで押される上部電極は高度な耐擦傷性が要求されるため、上部電極に用いられる透明導電性フィルムの導電層が設けられている側とは反対面に、ウェットコート法によってハードコート層を設けるという提案が数多くされている。
【0062】
しかしながら、前述の通り、ウェットコート法によるハードコート層のみでは、タッチパネル表面に必要とされる防汚性や滑り性が不十分である場合が多い。さらに、ウェットコート法によって塗工される一般的なハードコート層は比較的屈折率が高いため、タッチパネル最表面に使用した場合反射率が高くなり、視認性が良くないという問題があった。この問題を解消するために、ハードコート層上に防汚性、滑り性、視認性向上のための層を新たに設けることは製造工程増となり生産性低下の問題が新たに発生する。
【0063】
上記問題に対して、上述したように本発明は導電層を設ける側の基材フィルム面にオリゴマー防止のためのシリカ層(A)と同一生産ラインで同一方法(CVD法)にてシリカ層(B)をハードコート層上に形成することによって、生産性を低下させずに、透明導電性フィルムに防汚性、滑り性および反射防止性を付与することが可能となる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、本実施例における、測定方法および評価方法を以下に示す。
【0065】
(1)シリカ層、導電層およびハードコート層の厚みの測定
サンプルの断面を超薄切片に切り出し、透過型電子顕微鏡(日立製H−7100FA型)で加速電圧100kVにて2000倍〜10万倍の倍率でサンプルの断面を観察し、各々の層の厚みを測定した。
【0066】
(2)シリカ層の元素組成比の測定
走査型X線光電子分光分析装置(アルバック−ファイ製Quantera SXM)を用いて、下記条件で元素分析を実施し、シリカ層の元素組成比を求めた。
・励起X線:monochromatic AlKα1,2線(1486.6eV)
・X線径:100μm
・光電子脱出角度:45°
・イオンエッチング:Ar ion 4.0kV
・エッチング速度:21.0nm/min
・Rasterサイズ:2×2mm。
【0067】
(3)シリカ層(B)の耐擦傷性;スチールウール硬度評価
耐擦傷性は、シリカ層(B)が形成された面を#0000のスチールウールに250gの荷重をかけて、ストローク幅10cm、速度30mm/secで10往復摩擦した後、表面を目視で観察し、傷の付き方を次の5段階で評価した。
5級:傷が全く付かない。
4級:傷が1本以上20本以下
3級:傷が21本以上40本以下
2級:傷が41本以上
1級:全面に無数の傷。
【0068】
(4)透明導電性フィルムのシリカ層(B)側表面の視感反射率の測定
<評価用サンプルの作成>
サンプルの導電層側の面を粘着剤でガラス板に貼り付け、該ガラス板の反対面(透明導電性フィルムサンプルが貼り付けられた面とは反対側の面)に黒テープ(日東電工製 No.21トク(BC))を貼り付けて評価用サンプルを作製する。
<測定>
分光光度計(島津製作所製、UV3150PC)を用いて、測定面から5度の入射角で波長380〜780nmの範囲で反射率(片面反射)を算出し、視感反射率(JIS Z8701−1999において規定されている反射の刺激値Y)を求めた。分光光度計で分光立体角を測定し、JIS Z8701−1999に従って反射率(片面光線反射)を算出する。算出式は以下の通りである。
T=K・ ∫S(λ)・y(λ)・ R(λ) ・dλ (ただし、積分区間は380〜780nm)
T:片面光線反射率
S(λ) :色の表示に用いる標準の光の分布
y(λ) :XYZ表示系における等色関数
R(λ) :分光立体角反射率。
【0069】
(5)オリゴマー抑制効果の確認
オリゴマー抑制効果を確認するため、作成したサンプルを140℃のオーブン中に90分間放置し、熱処理を行った。熱処理前後のヘイズをJIS K 7105に基づき、日本電色工業(株)製濁度計NDH 2000を用いて測定した。熱処理前後のヘイズ変化に基づいてオリゴマー抑制効果を以下の基準で評価した。
○:熱処理前後のヘイズ変化が1.0%未満
△:熱処理前後のヘイズ変化が1.0%以上2.0%未満
×:熱処理前後のヘイズ変化が2.0%以上。
【0070】
(6)シリカ層の防汚性;指紋拭き取り性評価
シリカ層(B)に指紋を付着させた後、不織布(小津産業株式会社製 ハイゼガーゼ)を用いて10往復拭き取り、付着した指紋の取れ易さを目視で確認した。判定基準は以下の通りで評価した。
○:指紋の拭き取り跡が目立たないか、もしくは指紋を完全に拭き取ることができる。
×:指紋の拭き取り跡がくっきりと残る。
【0071】
[実施例1]
厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(屈折率1.64)の両面に易接着層(厚み100nm、屈折率1.64)が積層されたPETフィルムの一方の面に、下記のウェットコート用のハードコート塗料をグラビアコーターでリバース塗工し、90℃で乾燥後、紫外線400mJ/cmを照射して硬化させ、厚みが2μmのハードコート層(屈折率1.64)を形成した。
【0072】
<ハードコート塗料>
樹脂成分(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとウレタンアクリレートの混合物)30質量部、平均一次粒子径が50nmの五酸化アンチモン粒子70質量部、光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製「イルガキュア184」)5質量部を有機溶媒(メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンの混合溶媒)に溶解・分散したハードコート層形成用塗料を用意した。この塗料の固形分濃度は30質量%で、粘度(23℃)は6mPa・Sである。
【0073】
次に、下記条件で、シリカ層(A)、シリカ層(B)および導電層を1つの成膜装置内で連続的に成膜し、導電層、シリカ層(A)、PETフィルム、ハードコート層、シリカ層(B)がこの順に積層された透明導電性フィルムを得た。
【0074】
<シリカ層>
シリカ層(A)用プラズマCVD電極およびシリカ層(B)用プラズマCVD電極を備える成膜装置の内部を真空ポンプにより1×10−2Pa以下に排気した後、原料ガスとしてヘキサメチルジシロキサンおよび酸素、キャリアガスとして窒素ガスを前記プラズマCVD電極近傍に導入した。導入したガスの流量は、それぞれのプラズマCVD電極に対してヘキサメチルジシロキサン12.5sccm、酸素100sccm、窒素100sccmとした。成膜装置内の圧力は28Paとした。プラズマCVD電極はいずれも100mm×300mmの矩形型とした。周波数が100kHzの高周波電源を用い、シリカ層(A)用プラズマCVD電極およびシリカ層(B)用プラズマCVD電極にそれぞれ1kWの高周波電力を印加して、PETフィルムを1m/minの速度で搬送しながら、プラズマCVD法によりシリカ層(A)およびシリカ層(B)を形成した。得られたシリカ層(A)およびシリカ層(B)の元素組成比は、ケイ素:炭素:酸素:窒素=27:26:46:1であった。また、シリカ層(A)の厚みは0.1μm、シリカ層(B)の厚みは0.1μmであった。
【0075】
<導電層>
導電層はインジウム−スズ複合酸化物を原料とし、スパッタリング法によって形成した。得られた導電層の厚みは0.03μmであった。
【0076】
[実施例2]
シリカ層(A)用プラズマCVD電極への印加電力を280Wとして実施例1のシリカ層(A)の厚みを0.01μmにしたこと以外は、実施例1と同様にして透明導電性フィルムを得た。
【0077】
[実施例3]
シリカ層(B)用プラズマCVD電極への印加出力を440Wとして実施例1のシリカ層(B)の厚みを0.03μmにしたこと以外は、実施例1と同様にして透明導電性フィルムを得た。
【0078】
[実施例4]
PETフィルムを0.2m/minの速度で搬送して実施例1のシリカ層(A)の厚みを0.5μm、シリカ層(B)の厚みを0.5μmにしたこと以外は、実施例1と同様にして透明導電性フィルムを得た。
【0079】
[比較例1]
導電層をPETフィルムの上に直接形成したこと以外は、実施例1と同様にして透明導電性フィルムを得た。
【0080】
[比較例2]
ハードコート層の上に何も形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして透明導電性フィルムを得た。
【0081】
[比較例3]
PETフィルムの導電層と反対側の面には何も積層しなかったこと以外は、実施例1と同様にして透明導電性フィルムを得た。
【0082】
[比較例4]
ハードコート層を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして透明導電性フィルムを得た。
【0083】
[比較例5]
ハードコート層を形成せず、上記PETフィルムに厚み2μmのシリカ層(B)を直接形成したこと以外は、実施例1と同様にして透明導電性フィルムを得た。
【0084】
[比較例6]
シリカ層(A)およびシリカ層(B)をプラズマCVD法ではなく、スパッタリング法で形成したこと以外は、実施例2と同様にして透明導電性フィルムを得た。スパッタリングの材料には二酸化珪素を用いた。また、得られたシリカ層(A)の厚みは0.01μm、シリカ層(B)の厚みは0.1μmであった。また、得られたシリカ層(A)とシリカ層(B)は、いずれも炭素原子を含んでいなかった。
【0085】
【表1】

【0086】
表1の結果から分かるように、本発明の実施例1〜4の透明導電性フィルムは、耐久性、防汚性、オリゴマー抑制効果に優れるものである。さらに、実施例1および2の透明導電性フィルムは、シリカ層(B)の厚みが0.08〜0.12μmの範囲内であるので、優れた反射防止性を有し、視認性にも優れる。
【0087】
一方、比較例1では、シリカ層(A)が無いためオリゴマー抑制効果が得られなかった。また、比較例2ではシリカ層(B)が無いため耐久性、防汚性、反射防止性に劣る。比較例3では、ハードコート層およびシリカ層(B)が無いため耐久性、防汚性、視認性、オリゴマー抑制効果が得られなかった。比較例4では、ハードコート層が無いため耐久性が得られなかった。比較例5では、ハードコート層が無い代わりにシリカ層(B)の厚みを2μmとしたが、フィルムが白濁しており、ヘイズ値が高く、視認性が悪化した。さらに、比較例6では、プラズマCVD法によるシリカ層(A)およびシリカ層(B)の代わりに、スパッタリング法で二酸化珪素膜(炭素原子を含まない)を形成したが、耐久性、オリゴマー抑制効果、防汚性が得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの一方の面に、シリカ層(A)と導電層とを基材フィルム側からこの順に有し、前記基材フィルムの前記シリカ層(A)を有する面とは反対面に、樹脂を含むハードコート層とシリカ層(B)とを基材フィルム側からこの順に有し、前記シリカ層(A)およびシリカ層(B)が、ケイ素、炭素および酸素を含む透明導電性フィルム。
【請求項2】
前記シリカ層(A)の厚みが0.005〜0.5μmの範囲であり、前記シリカ層(B)の厚みが0.01〜0.5μmの範囲である、請求項1の透明導電性フィルム。
【請求項3】
基材フィルムの一方の面に、シリカ層(A)と導電層とを基材フィルム側からこの順に形成し、前記基材フィルムの前記シリカ層(A)を形成する面とは反対面に、樹脂を含むハードコート層とシリカ層(B)とを基材フィルム側からこの順に形成する透明導電性フィルムの製造方法であって、
前記シリカ層(A)およびシリカ層(B)が、ケイ素、炭素および酸素を含み、
前記シリカ層(A)およびシリカ層(B)をプラズマCVD法により形成し、
前記ハードコート層をウェットコート法で形成する、透明導電性フィルムの製造方法。
【請求項4】
基材フィルムにハードコート層を形成する工程、シリカ層(A)およびシリカ層(B)を同時あるいは逐次に形成する工程、および導電層を形成する工程をこの順に行い、
前記シリカ層(A)およびシリカ層(B)を形成する少なくとも2つの工程を、長尺フィルムロールの巻出しから巻き取りの間に行う、請求項3の透明導電性フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1もしくは2の透明導電性フィルム、または請求項3もしくは4で製造された透明導電性フィルムを用いたタッチパネル。

【公開番号】特開2012−206275(P2012−206275A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71821(P2011−71821)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000222462)東レフィルム加工株式会社 (142)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】