説明

透明物の検査装置及び検査方法

【課題】簡単な構成で、透明な被検査物の表面と内部の両方を同時に検査することができる透明物の検査装置及び検査方法を提供する。
【解決手段】(a)透明な被検査物2の表面2aに斜め方向から光束15aを照射し、照射位置15sを線状に移動させる発光部14と、(b)被検査物2に関して発光部14と同じ側において照射位置15sに対向して線状に延在する受光窓16sを有し、受光窓16sを通った光束成分の強度を検出する受光部と、(c)受光部が検出した光束成分の強度に基づいて被検査物の良否判定を行う判定部と、を備える。受光窓16sは、光束成分として、光束15aが照射位置15sにおいて被検査物2の表面2aで正反射された正反射光成分15bと、光束15aが照射位置15sで被検査物2の内部に入射し、裏面2bで反射した後、表面2aから出射した内部反射成分15eとの両方が同時に通るように、広げて形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は透明物の検査装置及び検査方法に関し、詳しくは、透明な被検査物の表面及び内部を光学的に検査する検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透明な被検査物を光学的に検査する検査装置が種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された検査装置は、ガラス基板の表面に帯状の検査光を斜めに照射し、ガラス基板の裏面からの反射光及び散乱光を集光し、スリットを設けて散乱光を遮断し、反射光のみをCCDラインセンサの受光面に結像するように構成され、ガラス基板の裏面の傷を検出する。
【0004】
また、特許文献2には、板状の被検査物に斜めからレーザービームを照射し、被検査物の内部の欠陥により発生した散乱光を、被検査物の上から顕微鏡で観察することが開示されている。
【特許文献1】特開2005−156416号公報
【特許文献2】特開平4−24541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの検査装置は、検査対象部分に焦点を合わせる結像光学系が必要であるため、構成が複雑になる上、組立・調整も難しい。また、結像光学系の焦点深度によって検査対象部分が制限されるため、被検査物の表面と内部の両方を同時に検査することができない。
【0006】
本発明は、かかる実情に鑑み、簡単な構成で、透明な被検査物の表面と内部の両方を同時に検査することができる透明物の検査装置及び検査方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成された透明物の検査装置を提供する。
【0008】
透明物の検査装置は、(a)透明な被検査物の表面に斜め方向から光束を照射し、該光束の照射位置を線状に移動させる発光部と、(b)前記被検査物に関して前記発光部と同じ側において前記照射位置に対向して線状に延在する受光窓を有し、該受光窓を通った光束成分の強度を検出する受光部と、(c)該受光部が検出した前記光束成分の前記強度に基づいて前記被検査物の良否判定を行う判定部と、を備える。前記受光窓は、前記光束成分として、前記光束が前記照射位置において前記被検査物の前記表面で正反射された正反射光成分と、前記光束が前記照射位置で前記被検査物の内部に入射し、前記被検査物の裏面で反射した後、前記被検査物の前記表面から出射した内部反射成分との両方が同時に通るように、広げて形成されている。
【0009】
上記構成において、被検査物を発光部及び受光窓に対して相対的に移動させると、被検査物の表面を連続的に検査することができる。
【0010】
上記構成によれば、被検査物の表面や内部に異物、コーティング剥がれ、欠け、気泡等の不良個所がなければ、受光窓には最大強度の正反射光成分及び内部反射成分が通るので、受光部が受光する光束成分の強度は一定かつ最大となる。一方、被検査物の表面や内部に異物、コーティング剥がれ、欠け、気泡等の不良個所があれば、不良個所での散乱光の発生に伴う正反射光成分及び/又は内部反射成分の強度低下によって、あるいは不良個所で正反射光成分及び/又は内部反射成分の光路が変化して正反射光成分及び/又は内部反射成分が受光窓から外れることによって、受光部が受光する光束成分の強度が低下する。このような光束成分の強度の低下があれば、被検査物の表面又は内部には不良個所が存在すると判定することができる。
【0011】
上記構成によれば、被検査物の表面や内部に焦点を合わせた結像光学系を用いることなく、表面と内部の両方を同時に検査することができ、構成を簡素化することができる。また、受光窓を照射位置、すなわち、被検査物の表面に接近して配置し、構成を小型化することもできる。さらに、結像光学系の焦点を合わせる必要がないため、組立・調整も容易である。
【0012】
好ましくは、前記被検査物の前記裏面にパターンが形成されている。
【0013】
正反射成分と内部反射成分とは、被検査物の裏面にパターンが形成されていても、パターンが形成されていなくも、強度はほとんど変化しない。したがって、透明な被検査物について、裏面にパターンが形成されていても、表面及び内部を同時に検査することができる。
【0014】
また、本発明は、上記課題を解決するために、以下のように構成された透明物の検査方法を提供する。
【0015】
透明物の検査方法は、(1)透明な被検査物の表面に斜め方向から光束を照射し、該光束の照射位置を線状に移動させる第1の工程と、(2)前記照射位置に対向して線状に延在する受光窓を通った光束成分の強度を検出する第2の工程と、(3)前記第2の工程において検出した前記光束成分の前記強度に基づいて前記被検査物の良否判定を行う第3の工程と、を備える。前記受光窓は、前記光束成分として、前記光束が前記照射位置において前記被検査物の前記表面で正反射された正反射光成分と、前記光束が前記照射位置で前記被検査物の内部に入射し、前記被検査物の裏面で反射した後、前記被検査物の前記表面から出射した内部反射成分との両方が同時に通るように、広げて形成されている。
【0016】
上記方法において、被検査物を発光部及び受光窓に対して相対的に移動させると、被検査物の表面を連続的に検査することができる。
【0017】
上記方法によれば、被検査物の表面や内部に異物、コーティング剥がれ、欠け、気泡等の不良個所がなければ、受光窓には最大強度の正反射光成分及び内部反射成分が通るので、第2の工程で検出する光束成分の強度は一定かつ最大となる。一方、被検査物の表面や内部に異物、コーティング剥がれ、欠け、気泡等の不良個所があれば、不良個所での散乱光の発生に伴う正反射光成分及び/又は内部反射成分の強度低下によって、あるいは不良個所で正反射光成分及び/又は内部反射成分の光路が変化して正反射光成分及び/又は内部反射成分が受光窓から外れることによって、第2の工程で検出する光束成分の強度が低下する。このような光束成分の強度の低下があれば、第3の工程において、被検査物の表面又は内部には不良個所が存在すると判定することができる。
【0018】
上記方法によれば、被検査物の表面や内部に焦点を合わせた結像光学系を用いることなく、表面と内部の両方を同時に検査することができ、構成を簡素化することができる。また、受光窓を照射位置、すなわち、被検査物の表面に接近して配置し、構成を小型化することもできる。さらに、結像光学系の焦点を合わせる必要がないため、組立・調整も容易である。
【0019】
好ましくは、前記被検査物の前記裏面にパターンが形成されている。
正反射成分と内部反射成分とは、被検査物の裏面にパターンが形成されていても、パターンが形成されていなくも、強度はほとんど変化しない。したがって、透明な被検査物について、裏面にパターンが形成されていても、表面及び内部を同時に検査することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、結像光学系が不要であるため、簡単な構成で、透明な被検査物の表面と内部の両方を同時に検査することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態として実施例について、図1〜図2を参照しながら説明する。
【0022】
図1の斜視図に示すように、検査装置10は、搬送装置4によって矢印3で示す方向に搬送されている被検査物2の表面2aに、発光部14からレーザービーム15aを照射し、反射光15bが受光部本体16に入射するようになっている。
【0023】
発光部14は、所望のスポット径に絞った平行光束であるレーザービーム15aを矢印15pで示すように扇状に移動させる。レーザービーム15aの照射位置15sは、被検査物2の表面2aにおいて線状に移動する。受光部本体16は、線状の照射位置15sに対向して平行に配置されている。
【0024】
制御部12は、符号13,19で示すように、発光部14と、光検出器18とに接続され、光検出器18で検出した正反射光15bの受光量を、発光部14が照射するレーザー光15aの照射角度15pと対応付けて信号処理することにより、不良の位置を特定する。制御部12は、所定のプログラムに従って信号処理を行い、被検査物2の表面2aや内部の良否判定を行う。
【0025】
図1の線A−Aに沿って切断した断面図である図2に模式的に示すように、筒状の受光部本体16には、照射位置15sに対向して線状に延在する矩形の開口である受光窓16sが形成されている。受光窓16sには、照射されたレーザービーム15aによる正反射成分15bと内部反射成分15eとの両方が通るように、開口が広げて形成されている。
【0026】
すなわち、被検査物2の表面2aの照射位置15sに照射されたレーザービーム15aは、照射位置15sで正反射する正反射光成分15bと、被検査物の内部に入射する入射成分15cとに分かれる。正反射成分15bは、受光窓16sを通る。一方、入射成分15cは被検査物の裏面2bで反射する。被検査物の裏面2bで反射した反射成分15dは、被検査物の表面から出射する。被検査物の表面から出射した内部反射成分15eは、受光窓16sを通る。
【0027】
受光部本体16の内部には、略柱状のライトガイド17が配置され、受光窓16sを通った光束15b,15eが入射されるようになっている。
【0028】
ライトガイド17の一端に対向して、光検出器18(図1参照)が配置され、ライトガイド17に入射された光がライトガイド17の一端から出射し、ライトガイドの一端から出射した光の強度が、光検出器18で検出される。
【0029】
光検出器18には、S/N特性が極めて良好な光電子増倍管(ホトマル)を用いることが好ましいが、これに限るものではない。
【0030】
なお、ライトガイド17の他端にも光検出器を設け、両方の光検出器の出力を足し合わせるようにしてもよい。
【0031】
被検査物は、例えば、液晶パネルやプラズマディスプレイの組立前のガラス基板であり、表面2aにコーティングが形成され、裏面2bに回路などの不透明パターンが形成された状態で、検査される。
【0032】
次に、検査装置10の検査の原理について説明する。
【0033】
被検査物の表面2aや内部2kに異物、コーティング剥がれ、欠け、気泡等の不良個所がなければ、受光窓16sには最大強度の正反射光成分15b及び内部反射成分15eが通るので、受光窓を通る光束の強度が最大かつ略一定となり、光検出器18からの出力信号レベルは略一定かつ最大となる。
【0034】
一方、被検査物の表面2aや内部2kに異物、コーティング剥がれ、欠け、気泡等の不良個所があれば、不良個所での散乱光の発生に伴う正反射光成分及び/又は内部反射成分の強度低下によって、あるいは不良個所で正反射光成分及び/又は内部反射成分の光路が変化して正反射光成分及び/又は内部反射成分が受光窓から外れることによって、受光窓を通る光束の強度が低下し、光検出器18からの出力信号レベルが低下する。
【0035】
このような光検出器18からの出力信号レベルの低下があれば、被検査物の表面2a又は内部2kには、レーザー光15aの照射位置15sに対応する部分に不良個所が存在すると判定することができる。
【0036】
正反射成分の強度は、被検査物の表面の特性で決まり、被検査物の裏面に形成されるパターンの有無による影響は受けない。また、内部反射成分も、被検査物の裏面に形成されるパターンの有無による影響をほとんど受けない。したがって、透明な被検査物について、裏面にパターンが形成されていても、被検査物の表面及び内部を同時に検査することができる。
【0037】
検査装置10は、被検査物の表面や内部に焦点を合わせた結像光学系を用いることなく、表面と内部の両方を同時に検査することができる。また、受光窓を照射位置、すなわち、被検査物の表面に接近して配置し、構成を小型化することもできる。さらに、結像光学系の焦点を合わせる必要がないため、組立・調整も容易である。
【0038】
<まとめ> 以上に説明したように、検査装置10は、結像光学系が不要であるため、簡単な構成で、透明な被検査物の表面と内部の両方を同時に検査することができる。
【0039】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の態様で実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】検査装置の斜視図である。(実施例)
【図2】検査装置の要部拡大断面図である。(実施例)
【符号の説明】
【0041】
10 検査装置
12 制御部(判定部)
14 発光部
15a レーザービーム(光束)
15b 正反射成分
15e 内部反射成分
15s 照射位置
16 受光部本体(受光部)
16b 受光窓
17 ライトガイド(受光部)
18 光検出器(受光部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な被検査物の表面に斜め方向から光束を照射し、該光束の照射位置を線状に移動させる発光部と、
前記被検査物に関して前記発光部と同じ側において前記照射位置に対向して線状に延在する受光窓を有し、該受光窓を通った光束成分の強度を検出する受光部と、
該受光部が検出した前記光束成分の前記強度に基づいて前記被検査物の良否判定を行う判定部と、
を備え、
前記受光窓は、前記光束成分として、前記光束が前記照射位置において前記被検査物の前記表面で正反射された正反射光成分と、前記光束が前記照射位置で前記被検査物の内部に入射し、前記被検査物の裏面で反射した後、前記被検査物の前記表面から出射した内部反射成分との両方が同時に通るように、広げて形成されていることを特徴とする、透明物の検査装置。
【請求項2】
前記被検査物の前記裏面にパターンが形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
透明な被検査物の表面に斜め方向から光束を照射し、該光束の照射位置を線状に移動させる第1の工程と、
前記照射位置に対向して線状に延在する受光窓を通った光束成分の強度を検出する第2の工程と、
前記第2の工程において検出した前記光束成分の前記強度に基づいて前記被検査物の良否判定を行う第3の工程と、
を備え、
前記受光窓は、前記光束成分として、前記光束が前記照射位置において前記被検査物の前記表面で正反射された正反射光成分と、前記光束が前記照射位置で前記被検査物の内部に入射し、前記被検査物の裏面で反射した後、前記被検査物の前記表面から出射した内部反射成分との両方が同時に通るように、広げて形成されていることを特徴とする、透明物の検査方法。
【請求項4】
前記被検査物の前記裏面にパターンが形成されていることを特徴とする、請求項3に記載の検査方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−216150(P2008−216150A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56434(P2007−56434)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(502356469)タイヨー電機株式会社 (8)
【Fターム(参考)】