透明異方導電性膜、及び、その製造方法
【課題】 光透過性と異方導電性とを高いレベルで両立し、種々の電気機器に好適に用いることができる透明異方導電性膜、及び、そのような透明異方導電性膜を簡易かつ安価に製造することができる透明異方導電性膜の製造方法を提供する。
【解決手段】 導電物質を含む導電性線部が間隔を空けて複数並ぶ透明異方導電性膜であって、該透明異方導電性膜は、導電性線部の長軸方向における電気抵抗率が、1×10−2Ω・cm以下であり、導電性線部の長軸方向と直交する方向における電気抵抗率が、1×102Ω・cmであり、全光線透過率が50%以上である透明異方導電性膜。
【解決手段】 導電物質を含む導電性線部が間隔を空けて複数並ぶ透明異方導電性膜であって、該透明異方導電性膜は、導電性線部の長軸方向における電気抵抗率が、1×10−2Ω・cm以下であり、導電性線部の長軸方向と直交する方向における電気抵抗率が、1×102Ω・cmであり、全光線透過率が50%以上である透明異方導電性膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明異方導電性膜、及び、その製造方法に関する。より詳しくは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、電子ペーパー(デジタルペーパー)等の薄型ディスプレイ、タッチパネルに好適に用いることができる透明異方導電性膜、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明異方導電性膜は、光透過性を有し、導電性がその膜内の方向によって異なっているような導電性膜であり、種々の電気機器への適用が考えられる。特に近年、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、電子ペーパー(デジタルペーパー)等の薄型ディスプレイの需要が拡大しており、このような用途に適用される導電性膜としては、特に光透過性、導電性に優れるものが求められており、透明異方導電性膜もこのような用途に適用される可能性を有しているものである。
光透過性を有する導電性膜としては、現在では、酸化インジウム錫(ITO)が用いられることが一般的である。酸化インジウム錫により作製された導電性膜は、光透過性、導電性のバランスに優れており、通常の液晶ディスプレイ等だけではなく、例えば、タッチパネル用途等にも使用されている。しかしながら、インジウムのような希金属は高価であり、また、資源枯渇のおそれがあるため、より安価で、資源枯渇のおそれが少ない材料を用いた光透過性を有する導電性膜が求められているところであった。また、ITOの成膜には通常、スパッタリング法等が用いられているため、生産性が低い点でも改善の余地があった。
【0003】
光透過性を有する導電性膜の形態としては、酸化インジウム錫のように、光透過性と導電性を有する材料を用いた導電性膜の形態や、メッシュ状や網目状等の微細なパターンを有する導電性膜の形態等が挙げられる。
微細なパターンを作製する方法としては、一般には、リソグラフィーやスクリーン印刷による方法が用いられる。また、その他の方法として、2枚のガラス板の間隙にポリマー溶液を注入し、上方のガラス板を下方のガラス板に対してスライドさせることで、下方のガラス板上にポリマー溶液の存在する凸部とポリマー溶液の存在しない凹部とが交互に並ぶポリマーの周期的なラインパターンを形成する方法が開示されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】藪浩(Hiroshi Yabu)、下村政嗣(Masatsugu Shimomura)、アドバンスド・ファンクショナル・マテリアルズ(Advanced Functional Materials)、2005年、第15巻、第4号、pp575−581
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
透明異方導電性膜としては、上述したように種々の電気機器への適用が想定されているが、従来、メッシュ状や網目状等のパターンを有する導電性膜の形成に用いられてきたリソグラフィーによる方法では、工程が多く、金属の使用量が多いも多いという課題があり、スクリーン印刷による方法でも、金属の使用量が多いという課題があった。また、これらいずれの方法によって得られたパターンも、線幅やパターンの間隔が充分に狭いものではない等、実用化するためにはその透明性、異方導電性に関して研究の余地があるものであった。このように、実用化に耐えうる性能を有した透明異方導電性膜の開発が求められるところであった。また、そのような透明異方導電性膜を製造する方法としては、簡易かつ安価に、光透過性と異方導電性とを高いレベルで両立した透明異方導電性膜を製造する方法が求められるところであった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、光透過性と異方導電性とを高いレベルで両立し、種々の電気機器に好適に用いることができる透明異方導電性膜、及び、そのような透明異方導電性膜を簡易かつ安価に製造することができる透明異方導電性膜の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、優れた光透過性と異方導電性とを有する導電性膜を製造する方法について種々検討したところ、対向する2つの面の間隙に導電物質を含む有機溶媒分散体が挟持されるようにし、その2つの面のうちの少なくとも一方をもう一方の面に沿って移動させ、有機溶媒分散体からなる線状部が間隔を空けて複数並ぶパターンを形成する工程、及び、有機溶媒を揮発させて導電性線部を形成する工程を行うと、導電物質を含む導電性線部が間隔を空けて複数並び、その導電性線部の線幅が狭く、かつ、導電性線部間の間隔も狭いものとなることを見出した。この導電性線部は間隔を空けて同方向を向いて並ぶために、作製される導電性膜は、導電性線部の長軸方向には電流がよく流れるのに対して、長軸方向と直交する方向には導電性線部はほぼ繋がっていないために電流が流れにくくなっており、優れた光透過性と異方導電性とを有するものとなることがわかった。そしてそのような透明異方導電性膜は、導電性線部の長軸方向における電気抵抗率が、1×10−2Ω・cm以下であり、導電性線部の長軸方向と直交する方向における電気抵抗率が、1×102Ω・cm以上であり、全光線透過率が50%以上となるものであって、種々の電気機器に好適に用いることができるものであることも見出した。このような工程により導電性膜を製造すると、少ない工程で、微細なパターンを形成することができ、また、面を移動させる速度、導電物質を含む有機溶媒分散体の濃度、2つの面の間の距離等を調整することにより、導電性線部の線幅や間隔を調整することが可能であることから、特定の物性値を有する光透過性と異方導電性とを高いレベルで両立した透明異方導電性膜を形成することができることを見出し、上記課題をみごとに解決できることに想到し、本発明に到達したものである。
なお、非特許文献1には、上述したように、微細なパターンを作製する方法として、2枚のガラス板の間隙にポリマー溶液を注入し、上方のガラス板を下方のガラス板に対してスライドさせることで、下方のガラス板上にポリマー溶液の存在する凸部とポリマー溶液の存在しない凹部とが交互に並ぶポリマーの周期的なラインパターンを形成する方法が開示されている。しかしながら、非特許文献1は、ポリマー溶液を用いた場合にポリマーの周期的なラインパターンを形成することができることを開示しているのみであって、導電物質を含む有機溶媒分散体を用いた場合に、有機溶媒分散体からなる線状部が間隔を空けて複数並ぶパターンを形成することができること、そして更にはそのようなパターンから有機溶媒を揮発させて導電性線部を形成することによって光透過性と異方導電性とに優れた透明異方導電性膜を形成することができることについては、本発明により初めて見出されたものである。
【0008】
すなわち本発明は、導電物質を含む導電性線部が間隔を空けて複数並ぶ透明異方導電性膜であって、上記透明異方導電性膜は、導電性線部の長軸方向における電気抵抗率が、1×10−2Ω・cm以下であり、導電性線部の長軸方向と直交する方向における電気抵抗率が、1×102Ω・cm以上であり、全光線透過率が50%以上である透明異方導電性膜である。
また本発明は、導電物質を含む導電性線部が間隔を空けて複数並ぶ透明異方導電性膜の製造方法であって、上記製造方法は、対向する2つの面の間隙に導電物質を含む有機溶媒分散体が挟持されるようにしつつ、上記2つの面の少なくとも一方をもう一方の面に沿って移動させ、有機溶媒分散体からなる線状部が間隔を空けて複数並ぶパターンを形成する工程と、有機溶媒を揮発させて導電性線部を形成する工程とを含む透明異方導電性膜の製造方法でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明の透明異方導電性膜は、導電物質を含む導電性線部が間隔を空けて複数並ぶものである。上記導電物質としては、導電性を有するものであれば特に制限されないが、後述するように導電性を有する物質の微粒子である導電性微粒子であることが好ましい。すなわち、上記導電性線部は、導電性微粒子を含むこともまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0010】
上記導電性線部が間隔を空けて複数並ぶ形態としては、複数の導電性線部がその長軸方向を合わせて並んでいればよく、導電性線部は直線であってもよいし、多少曲がっていてもよいが、全体として直線状であることが好ましい。そして、導電性線部同士は全く接点を有していなくてもよいし、本発明の透明異方導電性膜が異方導電性を有する程度に多少交わっていてもよいが、導電性線部同士の接点はなるべく少ない方が好ましく、全く接点を有していないのが特に好ましい。また、導電性線部間の間隔も、等間隔であってもよいし、不規則であってもよいが、透明異方導電性膜全体として等間隔であるといえる形態が好ましい。
【0011】
上記導電性線部間の間隔としては、透明異方導電性膜が優れた光透過性と異方導電性とを有するものとなる限り特に制限されないが、1〜200μmであることが好ましい。このような間隔を空けて導電性線部が並んでいると、導電性線部間の間隔が狭いということができ、透明異方導電性膜を充分に優れた光透過性と異方導電性とを有するものとすることが可能である。より好ましくは、1〜100μmであり、更に好ましくは、1〜50μmである。
【0012】
上記導電性線部の線幅としては、透明異方導電性膜が優れた光透過性と異方導電性とを有するものとなる限り特に制限されないが、0.1〜100μmであることが好ましい。導電性線部の線幅がこのような範囲であると、導電性線部の線幅が狭いということができ、線幅が狭いことによって、例えば、ディスプレイ等において生じるおそれのあるモアレを抑制することができる。導電性線部の線幅が100μmを越える場合、光透過性が充分でなくなるおそれがある。より好ましくは、0.1〜50μmであり、更に好ましくは、0.1〜30μmである。
このように、導電性線部間の間隔が等間隔で狭く、導電性線部の線幅が狭いものであることによって、透明異方導電性膜はより光の透過性が高く、かつ均一性の高いものとなる。例えば、本発明の透明異方導電性膜を電子ペーパー等に用いる場合には、表示を行うマイクロカプセルに対して均一に電圧を印加することができる。導電性線部間の間隔が広い場合、透明異方導電性膜により電圧を印加してマイクロカプセルの色を変化させるような電子ペーパー等のディスプレイに用いた際に、導電性線部間にマイクロカプセルの全体が納まるおそれがあり、カプセルへの電圧の印加が充分に行われなくなるおそれがある。また、導電性線部間の間隔が狭いことによって、電流の流れる方向における導電性がより均一となる。これによれば、例えば、タッチパネルに用いられた場合、位置の認識の精度が高くなる。
【0013】
導電性線部の線幅、導電性線部間の間隔については、以下の方法により求めることができる。透明異方導電性膜の表面を光学顕微鏡(キーエンス社製、VHX−900)にて倍率500倍で観察し、観察した画像から直接導電性線部の線幅、導電性線部間の間隔を測定する。
【0014】
上記導電性線部の厚みは、200nm以上であることが好ましい。200nm以上であることによって、導電性線部の線幅が狭くなったとしても充分な導電率を得ることができる。透明異方導電性膜の膜厚が200nm未満である場合には、導電性が低くなり、透明異方導電性膜としての特性を充分に発揮することができないおそれがある。導電性線部の厚みとしてより好ましくは、1μm以上である。なお、導電性線部の厚みは、透明異方導電性膜の最大膜厚を測定することによって求められ、例えば、レーザー顕微鏡を用いることによって測定することができる。測定方法としては、レーザー顕微鏡(VK−9700、キーエンス社製)で倍率50倍で塗膜を観測し、観察した画像から塗膜の最大の段差を10箇所で計測し、平均した値を透明異方導電性膜の最大膜厚とする。
【0015】
本発明の透明異方導電性膜は、可視光(波長が400〜700nm)の光透過率が20%以上であることが好ましい。光透過率を高くすることで、例えば、電子ペーパー等の表示装置に対して好適に用いることができる。光透過率としてより好ましくは、40%以上であり、更に好ましくは、60%以上であり、特に好ましくは、80%以上である。上記光透過率は、例えば、分光光度計(商品名「V−530」、日本分光社製)を用いて、300〜800nmの波長の光について測定することができる。
【0016】
本発明の透明異方導電性膜は、全光線透過率が50%以上であるものである。全光線透過率が50%以上である場合、例えば、電子ペーパー等の表示装置に対して好適に用いることができる。全光線透過率として好ましくは、60%以上であり、より好ましくは、70%以上であり、更に好ましくは、80%以上である。
なお、上記全光線透過率は、ヘイズメーター NDH5000(日本電色工業社製)を用いて、JIS K7361−1に準拠して測定することができる。
【0017】
本発明の透明異方導電性膜は、導電性線部の長軸方向における電気抵抗率が1×10−2Ω・cm以下であり、導電性線部の長軸方向と直交する方向における電気抵抗率が1×102Ω・cm以上であるものである。このような電気抵抗率であると、導電性線部の長軸方向においては良好に電流が流れ、導電性線部の長軸方向と直交する方向においては充分に電流が流れないものとなり、充分な異方導電性を有しているため、種々の電気機器に好適に用いることが可能となる。
導電性線部の長軸方向における電気抵抗率として好ましくは、1×10−3Ω・cm以下であり、より好ましくは、1×10−4Ω・cm以下であり、更に好ましくは、1×10−5Ω・cm以下である。また、導電性線部の長軸方向と直交する方向における電気抵抗率として好ましくは、1×103Ω・cm以上であり、より好ましくは、1×104Ω・cm以上であり、更に好ましくは、1×105Ω・cm以上である。
なお、上記電気抵抗率は、四端子法を用いて測定した抵抗値の値から算出することができる。本発明の透明異方導電性膜上に図24中央に示すようなマスクを介して金を蒸着またはスパッタリングすることで四端子電極を作製し、測定を行うことで抵抗値を測定することが出来る。得られた抵抗値から、下記式の通り、電気抵抗率を算出することが出来る。下記式でR[Ω]は四端子法で測定した抵抗値、H[cm]はAFMにより測定した導電性線部の平均高さ、W[cm]は上述した方法で測定した、作製した電極間に存在する各導電性線部の線幅の合計、A[cm2]は作製した各導電性線部の断面積の合計、L[cm]は端子間距離、ρ[Ω・cm]は電気抵抗率を表す。
A=WH[cm2]
ρ=RA/L[Ω・cm]
【0018】
なお、上記透明異方導電性膜は、透明基板上に形成されることが好ましい。透明異方導電性膜が透明基板上に形成されることにより、導電性線部によって優れた異方導電性が発現すると共に、導電性線部からなるパターンと透明基板とが一体となってより優れた光透過性が実現されることとなる。すなわち、透明異方導電性膜を透明基板上に形成させて得られる透明異方導電性基板もまた本発明の1つである。
【0019】
上記透明基板とは、可視光の透過率が高い基板のことであり、例えば、波長400〜700nmの可視光の透過率が50%以上であることが好ましい。より好ましくは、上記透過率が70%以上であり、更に好ましくは、80%以上である。そのような透明基板としては、ガラス基板、透明性を有するプラスチック基板等が挙げられる。また、電子ペーパー等の表示装置として用いる場合には、透明基板としては、透明性を有するプラスチック基板等の可とう性を有しているものを用いることが好ましい。すなわち、上記透明異方導電性基板が、透明異方導電性フレキシブル基板であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。上記プラスチック基板としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のエステル系;アクリル系;シクロオレフィン系;オレフィン系;ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート等の樹脂系のフィルムが挙げられる。
【0020】
上記透明異方導電性膜の用途としては、特に限定されるものではなく、光透過性及び異方導電性を必要とする用途であればどのような用途にも用いることができる。例えば、プラズマディスプレイ等に用いられる電磁波遮蔽フィルム(EMIシールドフィルム)等として用いることができるし、太陽電池、電子ペーパー(デジタルペーパー)、液晶表示装置の表示装置に用いられる電極として用いることもできる。また、タッチパネル等にも用いることができる。
このように、本発明はまた、デジタルペーパーに用いられる透明異方導電性膜でもある。
【0021】
次に本発明の透明異方導電性膜の製造方法について説明する。
本発明の透明異方導電性膜の製造方法は、対向する2つの面の間隙に導電物質を含む有機溶媒分散体が挟持されるようにしつつ、上記2つの面の少なくとも一方をもう一方の面に沿って移動させ、有機溶媒分散体からなる線状部が間隔を空けて複数並ぶパターンを形成する工程と、有機溶媒を揮発させて導電性線部を形成する工程とを含むものであるが、これらの工程は、一部同時並行して行われる形態であってもよいし、パターンを形成する工程を行った後に、有機溶媒を揮発させて導電性線部を形成する工程を行ってもよい。中でも、パターンを形成する工程を行った後に、有機溶媒を揮発させて導電性線部を形成する工程を行うことが、本発明の好適な実施形態の1つである。
なお、本発明の透明異方導電性膜の製造方法は、対向する2つの面の間隙に導電物質を含む有機溶媒分散体が挟持されるようにしつつ、上記2つの面の少なくとも一方をもう一方の面に沿って移動させ、有機溶媒分散体からなる線状部が間隔を空けて複数並ぶパターンを形成する工程と、有機溶媒を揮発させて導電性線部を形成する工程とを含むものである限り、その他の工程を含んでいてもよい。
【0022】
本発明の透明異方導電性膜の製造方法は、対向する2つの面の間隙に導電物質を含む有機溶媒分散体が挟持されるようにしつつ、該2つの面の少なくとも一方をもう一方の面に沿って移動させ、有機溶媒分散体からなる線状部が間隔を空けて複数並ぶパターンを形成する工程(自己組織化工程)を含むものである。このような工程を含むことにより、導電性線部が間隔を空けて複数並ぶ周期的なラインパターンを有し、その導電性線部の線幅が狭く、かつ、導電性線部間の間隔も狭い透明異方導電性膜を形成することが可能となる。そしてそれにより、製造される透明異方導電性膜を光透過性にも異方導電性にも優れたものとすることができる。
【0023】
上記自己組織化工程によれば、対向する2つの面の間隙に導電物質を含む有機溶媒分散体が挟持されるようにして、該2つの面の少なくとも一方をもう一方の面に沿って移動させることで、面と有機溶媒分散体との相溶性の低さを原因とした撥水(Dewetting)作用により、一方の面上に有機溶媒分散体からなる線状部が間隔を空けて複数並ぶ周期的なラインパターンが自己組織化されることとなる。これにより、導電物質を含む有機溶媒分散体からなる線状部と、線状部と線状部の間の非線状部とを有する膜が形成される。このように、上記自己組織化工程により周期的なラインパターンを有する膜を製造することができるが、自己組織化工程は、他のパターン作製工程、例えば、リソグラフィー工程やスクリーン印刷工程等に比べて、工程数が少なく、導電性線部(ライン)の線幅、間隔を狭くすることが可能であり、また、導電物質の使用量も少なくて済むことから、他のパターン作製工程に比べて、簡易かつ低コストに、細かいラインパターンを形成することができる。これによって、上記自己組織化工程によってパターンを形成することにより、簡易かつ低コストに、光透過性と異方導電性とに優れた透明異方導電性膜を製造することが可能となる。
【0024】
上記自己組織化工程において、対向する2つの面の間隙に導電物質を含む有機溶媒分散体が挟持されるようにするとは、結果そのような形態となればそれを行う方法については特に制限されず、例えば、対向する2つの面の間隙に有機溶媒分散体を注入する方法や、1つの面上に有機溶媒分散体を塗工した後、別の1つの面により塗工された有機溶媒分散体を挟む方法等が挙げられる。
【0025】
また、上記自己組織化工程において、上記2つの面の少なくとも一方をもう一方の面に沿って移動させるとは、面の移動に伴い、挟持されている有機溶媒分散体が面との接点において摩擦力を受けるような形態であれば、2つの面の移動形態について特に制限されないが、例えば、導電物質を含む有機溶媒分散体を挟持した2つの面のうちの一方の面を、固定したもう一方の面に沿って移動させる形態、2つの面共に移動させるが、一方の面ともう一方の面とを移動させる方向が異なっている形態、2つの面共に同方向に移動させるが、それらの移動スピードが異なっている形態等が挙げられる。
【0026】
上記対向する2つの面としては、有機溶媒分散体を挟持することができ、少なくとも一方の面をもう一方の面に沿って移動させて、有機溶媒分散体からなる線状部が間隔を空けて複数並ぶパターンを形成することができれば、その種類は特に制限されない。そのような面としては、例えば、ガラス基板、プラスチック基板、単結晶基板、半導体基板、金属基板等の種々の基板を用いることができる。電子ペーパー(デジタルペーパー)等のディスプレイに用いる場合には、2つの面のうち、パターンが形成される方の面は少なくともガラス基板、透明性を有するプラスチック基板等の透明基板であることが好ましい。透明基板としては上述したものと同様のものを用いることができる。また、ガラス基板、プラスチック基板を用いることは、低コスト化の観点からも好適である。また、電子ペーパー等の表示装置として用いる場合には、可とう性を有する基板を面として用いることも好ましい形態である。プラスチック基板としては、上述したものと同様のものが挙げられる。
【0027】
また、上記対向する2つの面の一方が上述したような種々の基板であり、その基板上に有機溶媒分散体を塗工するためのダイコーター等の供給口の周囲が、上記基板と対向するような面状になっていて、上記基板をダイコーター等の供給口の周囲の面状部分に沿って移動させることで、有機溶媒分散体からなる線状部が間隔を空けて複数並ぶパターンを形成するような形態も本発明の好適な実施形態の1つである。
【0028】
上記面は、表面が有機溶媒分散体と相溶性の低いものであることが好ましい。上記面の表面と有機溶媒分散体との相溶性が低いことによって、面が有機溶媒分散体をはじきやすくなり、撥水作用によるラインパターンの自己組織化をより正確に行うことが可能となる。
【0029】
上記自己組織化工程においては、対向する2つの面の間隙の距離を調節することにより、形成されるラインパターンの線状部の線幅、及び、線状部間の間隔を制御することが可能である。したがって、求められるラインパターンの形状に応じて対向する2つの面の間隙の距離を適宜設定すればよいが、上記対向する2つの面の間隙の距離としては、0〜500μmであることが好ましい。対向する2つの面の間隙の距離がこのような範囲であると、形成されるラインパターンの線状部の線幅、及び、線状部間の間隔を充分に狭いものとすることが可能であり、作製される透明異方導電性膜を光透明性と異方導電性とにより優れたものとすることができる。対向する2つの面の間隙の距離としてより好ましくは、0〜400μmであり、更に好ましくは、0〜300μmである。
なお、対向する2つの面の間隙の距離が0μmであるとは、該2つの面の間に隙間が無く接していることを意味するものではなく、測定不能な程に接近しているがわずかには間隙が存在することを表している。
【0030】
上記自己組織化工程においては、また、対向する2つの面の少なくとも一方をもう一方の面に沿って移動させる際の、一方の面のもう一方の面に対する相対移動速度(以降、相対面移動速度ともいう。)を調節することにより、形成されるラインパターンの線状部の線幅、及び、線状部間の間隔を制御することが可能である。したがって、求められるラインパターンの形状に応じて、上記一方の面のもう一方の面に対する相対移動速度を適宜設定すればよいが、上記相対面移動速度としては、10〜500μm/sであることが好ましい。一方の面のもう一方の面に対する相対移動速度がこのような範囲であると、形成されるラインパターンの線状部の線幅、及び、線状部間の間隔を充分に狭いものとすることが可能であり、作製される透明異方導電性膜を光透明性と異方導電性とにより優れたものとすることができる。上記相対面移動速度としてより好ましくは、10〜400μm/sであり、更に好ましくは、10〜300μm/sである。
【0031】
上記自己組織化工程においては、更に、有機溶媒分散体中の導電物質の濃度を調節することにより、形成されるラインパターンの線状部の線幅、及び、線状部間の間隔を制御することが可能である。したがって、求められるラインパターンの形状に応じて、上記導電物質濃度を適宜設定すればよいが、上記導電物質濃度としては、0.5〜20g/Lであることが好ましい。有機溶媒分散体中の導電物質濃度がこのような範囲であると、形成されるラインパターンの線状部の線幅、及び、線状部間の間隔を充分に狭いものとすることが可能であり、作製される透明異方導電性膜を光透明性と異方導電性とにより優れたものとすることができる。上記導電物質濃度としてより好ましくは、1〜15g/Lであり、更に好ましくは、2.5〜10g/Lである。
【0032】
このように、上記自己組織化工程においては、対向する2つの面の間隙の距離、対向する2つの面の少なくとも一方をもう一方の面に沿って移動させる際の、一方の面のもう一方の面に対する相対移動速度(相対面移動速度)、有機溶媒分散体中の導電物質の濃度を調節することによって、形成されるラインパターンの線状部の線幅、及び、線状部間の間隔を制御することが可能である。中でも、この3つのパラメータを上述した範囲とすることによって、作製される透明異方導電性膜を光透明性と異方導電性とにより優れたものとすることができるものである。すなわち、対向する2つの面の間隙が0〜500μm、相対面移動速度が10〜500μm/s、有機溶媒分散体中の導電物質の濃度が0.5〜20g/Lで周期的パターンを形成する透明異方導電性膜の製造方法もまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0033】
ここで、上記自己組織化工程により有機溶媒分散体からなる線状部が間隔を空けて複数並ぶパターンを有する膜を製造する方法について、一例として、対向する2つの面としていずれもスライドガラス基板を用い、下方のガラス基板は固定し、上方のガラス基板を下方のガラス基板に沿って移動させる形態を図1に示す。図1で示すように、上方のスライドガラス11を、固定した下方のスライドガラス12に沿って矢印の方向に移動させることによって、スライドガラス11と導電物質を含む有機溶媒分散体13との撥水作用により、有機溶媒分散体からなる線状部が間隔を空けて複数並ぶ周期的なラインパターンが自己組織化されることとなる。
【0034】
本発明において用いられる導電物質は、導電性を有するものであれば特に制限されないが、導電性を有する物質の微粒子である導電性微粒子であることが好ましい。導電性微粒子とは、一般的に平均粒子径が100μm以下の導電性粒子を意味するものであり、導電性微粒子の粒子径は特に限定されるものではないが、平均粒子径が1μm以下であることが好ましい。1μm以下の平均粒子径とすることで、導電性を有する導電性線部の線幅を狭くすることができ、透明異方導電性膜の透過部を広くすることができ、開口率が向上することとなる。これにより、透明異方導電性膜の光透過性が向上する。導電性微粒子の平均粒子径としてより好ましくは、500nm以下であり、更に好ましくは、100nm以下であり、特に好ましくは、50nm以下であり、最も好ましくは、10nm以下である。特に、10nm以下の平均粒子径とすることにより、形成された導電性を有する導電性線部の導電率を高めることができる。また、粒子径分布としては、変動係数が30%以内であることが好ましく、より好ましくは、20%以内であり、更に好ましくは、15%以内である。
【0035】
上記導電性微粒子の平均粒子径は、TEM像(透過型電子顕微鏡観察像)、又は、SEM像(走査型電子顕微鏡観察像)により得られる数平均粒子径;粉末X線回折測定法により得られる結晶子径;X線小角散乱法等により得られる慣性半径とその散乱強度から求められる平均粒子径等を用いることができる。中でも、SEM像(走査型電子顕微鏡観察像)により得られる数平均粒子径であることが好ましい。
上記導電性微粒子の形状は、球状に限られず、例えば、楕円球状、立方体状、直方体状、ピラミッド状、針状、柱状、棒状、筒状、りん片状、板状(例えば、六角板状)等の薄片状、紐状等の形状でも好適に用いることができる。
【0036】
上記導電性微粒子は、導電性を有する物質を含有する微粒子であれば特に限定されないが、例えば、金属、導電性を有する無機酸化物、炭素系材料、炭化物系材料等の微粒子が挙げられる。金属としては、種々の金属を用いることができ、単体金属、合金、固溶体等のいずれの形態であってもよい。金属元素としては特に限定されず、例えば、白金、金、銀、銅、アルミ、クロム、コバルト、タングステン等の種々の金属元素を用いることができるが、導電性が高い金属であることが好ましい。導電性が高い金属としては、白金、金、銀及び銅からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有するものであることが好ましい。また、金属としては、化学的安定性が高い金属であることが好ましい。例えば、本発明の透明異方導電性膜の製造方法を用いる場合、有機溶媒に導電性微粒子を分散させて有機溶媒を揮発させる等の工程を経ることとなる。このような工程に対して、酸化、腐食等が生じないことが好ましい。化学的安定性が高い観点からは、上記金属は、白金、金及び銀からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有してなることが好ましい。この中でも、線状部の線幅、及び、線状部間の間隔が充分に狭いラインパターンをより安定的に形成するという観点からは、金を含有することが好ましい形態である。また、低コスト化の観点からは、銀を含有することが好ましい形態である。導電性を有する無機酸化物としては、酸化インジウム錫等のインジウム系酸化物、酸化亜鉛系酸化物等の透明導電性物質、導電性を有する非透明性の無機酸化物等が挙げられる。炭素系材料としては、カーボンブラック等が挙げられる。炭化物系材料としては、シリコンカーバイド、クロムカーバイド、チタンカーバイド等が挙げられる。また、用いることが可能な導電性微粒子としては、非導電性微粒子を上記導電性微粒子を形成する導電性物質(金属、導電性を有する無機酸化物、炭素系材料、炭化物系材料等)で取り囲んだ微粒子(例えば、コア「非導電性物質」、シェル「導電性物質」のコア−シェル構造を持つ微粒子)も好ましい。上記非導電性微粒子としては、特に限定されるものではなく、種々の物質で形成された非導電性微粒子を用いることができる。上記導電性微粒子としては、これらを単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
更に、用いることができる導電性微粒子としては、酸化銀、酸化銅等の酸化物微粒子を有機溶媒に分散させた後、有機溶媒を揮発させて導電性線部を形成する工程を行う前までに、還元雰囲気下に置くことで、銀、銅等の金属に還元して用いることも可能である。すなわち、上記透明異方導電性膜の製造方法は、酸化物微粒子を含む有機溶媒分散体を用い、有機溶媒を揮発させて導電性線部を形成する工程を行う前までに、還元雰囲気下に置くことで、酸化物微粒子を還元する工程を含むことも好ましい形態の一つである。
【0037】
上記導電物質の含有量は、有機溶媒分散体100質量%に対して、0.001〜10質量%であることが好ましい。このような範囲とすることによって、充分な導電性を有する透明異方導電性膜を得ることができる。導電物質の含有量としてより好ましくは、0.002〜0.1質量%であり、更に好ましくは、0.002〜0.01質量%である。
【0038】
本発明において用いられる有機溶媒分散体は、有機溶媒に導電物質が分散された分散体であり、有機溶媒、及び、導電物質以外の物質を含んでいてもよい。有機溶媒としては、特に限定されるものではなく、種々の有機溶媒を用いることができる。
上記有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレン、エチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ドデシルベンゼン、フェニルキシリルエタン等のベンゼン系炭化水素等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−デカン等のパラフィン系炭化水素、アイソパー(Isopar、エクソン化学社製)等のイソパラフィン系炭化水素、1−オクテン、1−デセン等のオレフィン系炭化水素、シクロヘキサン、デカリン等のナフテン系炭化水素等の脂肪族炭化水素類;ケロシン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、工業ガソリン、コールタールナフサ、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油や石炭由来の炭化水素混合物;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、トリクロロフルオロエタン、テトラブロモエタン、ジブロモテトラフルオロエタン、テトラフルオロジヨードエタン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、クロロブタン、クロロシクロヘキサン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードメタン、ジヨードメタン、ヨードホルム等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、オクタノール、メチルセロソルブ等のアルコール類;ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類;ハイドロフルオロエーテル等のフッ素系溶剤;二硫化炭素等が好ましい。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0039】
上記有機溶媒分散体は、導電物質が導電性微粒子であった場合等微粒子を含む場合には、有機溶媒中に微粒子が分散するのを促進する微粒子分散剤を含有することが好ましい。微粒子分散剤を含有することによって、微粒子が有機溶媒中で凝集してしまうことを防止することができ、有機溶媒分散体をより均一なものとすることが可能となる。
上記微粒子分散剤としては、導電性微粒子等の微粒子を有機溶媒中に分散させることができれば、特に制限されるものではないが、例えば、オクチルアミン、ヘキシルアミン、オレイルアミン等のアミン化合物;ドデカンチオール等の硫黄化合物;オレイン酸等のカルボン酸化合物;等が挙げられる。
上記微粒子分散剤としては、これらを単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0040】
上記微粒子分散剤の含有量は、有機溶媒分散体100質量%に対して、0.001〜5質量%であることが好ましい。このような範囲よりも少ないと、有機溶媒分散体中の微粒子の凝集を充分に防止することができないおそれがある一方、多いと、形成される透明異方導電性膜の導電性が発現しなくなるおそれがある。微粒子分散剤の含有量としてより好ましくは、0.01〜3質量%である。
【0041】
上記有機溶媒分散体は、バインダーを含むものであってもよい。バインダーを含むものであると、面との密着性が向上することになる。バインダーとしては、有機溶媒に溶解する高分子であれば特に制限されないが、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリルアミド、ポリアルキレングリコール系ポリマー、ポリスチレン等が挙げられる。これらのバインダーは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
上記透明異方導電性膜の製造方法は、上記自己組織化工程の後に、更に、無電解めっきを行う工程を含んでもよい。このように、無電解めっきを行うことによって、得られる透明異方導電性膜の導電性を更に向上させることができる。
【0043】
本発明の透明異方導電性膜の製造方法は、有機溶媒を揮発させて導電性線部を形成する工程を含むものである。該工程を行う方法としては、有機溶媒分散体からなる線状部が間隔を空けて複数並ぶパターンを有するパターン膜から、有機溶媒を揮発させ、導電性線部を形成することができれば、特に制限されない。そのような方法としては、例えば、焼成することにより行う方法、可視光線、紫外線(UV)、赤外線等の光を照射することにより行う方法、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させることにより行う方法等が挙げられる。
これらの中でも、焼成することにより行う方法が好ましい。焼成を行うことによって、充分に有機溶媒を揮発させることができ、導電物質同士を結合させて導電性線部が形成され、より高い導電性を発現させることが可能となる。
【0044】
上記焼成方法において、焼成する温度は特に限定されず、金属材料、導電物質の含有量、有機溶媒の種類、膜厚等によって異なるものであり、各々の条件で適宜好適な条件で行うことができるが、焼成温度は、100〜280℃であることが好ましい。すなわち、有機溶媒を揮発させて導電性線部を形成する工程を100〜280℃の焼成によって行うこともまた、本発明の好適な実施形態の1つである。焼成温度が高い場合には、導電物質が凝集して結合することができず、充分な導電性が得られないおそれがある。焼成温度としてより好ましくは、150〜280℃であり、更に好ましくは、200〜280℃である。焼成時間としては、3時間以内であることが好ましく、より好ましくは、2時間以内であり、更に好ましくは、1時間以内である。
【0045】
本発明はまた、上記製造方法により製造される透明異方導電性膜でもある。上記製造方法により製造されたものであることにより、上記透明異方導電性膜は、導電性線部が間隔を空けて複数並び、導電性線部の線幅が狭く、かつ、導電性線部間の間隔も狭いものとなり、光透過性と異方導電性とに優れた透明異方導電性膜とすることができる。そのような透明異方導電性膜の好ましい形態としては、上述した本発明の透明異方導電性膜の好ましい形態と同様である。
【発明の効果】
【0046】
本発明の透明異方導電性膜の製造方法によって、光透過性と異方導電性とに優れた透明異方導電性膜を、簡易かつ安価に製造することができる。このようにして得られる透明異方導電性膜は、優れた光透過性と異方導電性とを有しているため、電子ペーパー等のディスプレイ等の各種電気機器に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、対向する2つの面の間隙に導電物質を含む有機溶媒分散体が挟持されるようにしつつ、該2つの面の少なくとも一方をもう一方の面に沿って移動させ、有機溶媒分散体からなる線状部が間隔を空けて複数並ぶパターンを形成する工程の一例を示す概念図である。
【図2】図2は、合成された金ナノ粒子の波長300〜800nmにおける吸収スペクトルを表したグラフである。
【図3】図3は、合成された金ナノ粒子のTEM画像である。
【図4】図4は、図3のTEM画像から個々の金ナノ粒子の粒子径を計測して作成したヒストグラムである。
【図5】図5は、合成された金ナノ粒子についてDSC測定を行った結果を示すグラフである。
【図6】図6は、ラインパターン(X−1)を作製するために行われた、金ナノ粒子ラインパターンの作製方法の概略を示す概念図である。
【図7】図7は、ラインパターン(X−1)をスライドガラスに載せた様子を表した写真である。
【図8】図8は、ラインパターン(X−1)〜(X−4)を観察した光学顕微鏡観察像である。
【図9】図9は、焼成ラインパターン(Y−5)〜(Y−8)を観察した光学顕微鏡観察像である。
【図10】図10は、焼成ラインパターン(Y−9)〜(Y−12)を観察した光学顕微鏡観察像である。
【図11】図11は、ラインパターンにおける金ナノ粒子の濃度と線状部の線幅との関係を示したグラフである。
【図12】図12は、ラインパターンにおける金ナノ粒子の濃度と線状部間の間隔との関係を示したグラフである。
【図13】図13は、ラインパターンにおけるスライドガラスの移動速度と線状部の線幅との関係を示したグラフである。
【図14】図14は、ラインパターンにおけるスライドガラスの移動速度と線状部間の間隔との関係を示したグラフである。
【図15】図15は、ラインパターンにおけるスライドガラス間の距離と線状部の線幅との関係を示したグラフである。
【図16】図16は、ラインパターンにおけるスライドガラス間の距離と線状部間の間隔との関係を示したグラフである。
【図17】図17は、焼成ラインパターン(Y−2−1)〜(Y−2−9)を観察した光学顕微鏡観察像である。
【図18】図18は、焼成ラインパターン(Y−2−8)、(Y−2−9)を観察した光学顕微鏡観察像である。
【図19】図19は、焼成ラインパターン(Y−2−2)、(Y−2−8)を観察したSEM写真である。
【図20】図20は、(a)が焼成ラインパターン(Y−2−2)の外観を表した写真であり、(b)が(a)の一部を観察した光学顕微鏡観察像である。
【図21】図21は、焼成ラインパターンにおける金ナノ粒子の濃度と線状部の線幅との関係を示したグラフである。
【図22】図22は、焼成ラインパターンにおける金ナノ粒子の濃度と線状部間の間隔との関係を示したグラフである。
【図23】図23は、(a)が焼成ラインパターン(Y−2−2)についてのAFM測定による表面形状像であり、(b)が電流像である。
【図24】図24は、抵抗値の測定のために作製された電極の様子を表す写真である。
【図25】図25は、焼成ラインパターン(Y−2−2)について、テスターを用いて異方導電性を調べている様子を表す写真である。
【図26】図26は、上図は作製したラインパターン(X−2)を、200℃で30分、1時間、2時間、3時間焼成した後の写真である。下図は上段が左から250℃で30分焼成した(X−2)、(Y−2−4)、(Y−2−5)、(Y−2−6)であり、下段は左から300℃で30分焼成した(X−2)、(Y−2−7)、(Y−2−8)、(Y−2−9)である。全てスライドガラス上に作製したものである。
【図27】図27は、焼成ラインパターン(Y−1)〜(Y−4)における350〜800nmの波長の光についての透過率を表したグラフである。
【図28】図28は、ラインパターン(X−2)及び焼成ラインパターン(Y−2)における300〜800nmの波長の光についての透過率を表したグラフである。
【図29】図29は、焼成ラインパターン(Y−1)〜(Y−4)における300〜800nmの波長の光についての透過率を表したグラフである。
【図30】図30は、焼成ラインパターン(Y−5)〜(Y−8)における300〜800nmの波長の光についての透過率を表したグラフである。
【図31】図31は、焼成ラインパターン(Y−9)〜(Y−12)における300〜800nmの波長の光についての透過率を表したグラフである。
【図32】図32は、焼成ベタ膜(Y´−1)〜(Y´−4)における300〜800nmの波長の光についての透過率を表したグラフである。
【図33】図33は、作製されたフレキシブル基板の様子を示した写真である。
【図34】図34は、作製したフレキシブル基板における300〜800nmの波長の光についての透過率を表したグラフである。
【図35】図35は、焼成ラインパターン(Y−1)〜(Y−4)を観察した光学顕微鏡写真である。
【図36】図36は、ラインパターン(X−5)〜(X−8)を観察した光学顕微鏡写真である。
【図37】図37は、ラインパターン(X−9)〜(X−12)を観察した光学顕微鏡写真である。
【図38】図38は、上段が作製したベタ膜の焼成前(X´−2)〜(X´−4)で、下段が焼成後(Y´−2)〜(Y´−4)を観察した光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0049】
<金ナノ粒子の合成>
金ナノ粒子は、M. Brust、M. Walker、D. Bethell、David J. Schiffrin、R. Whyman、Journal of the Chemical Society, Chemical Communications、1994年、p.801に記載の作製法に従って作製した。塩化金酸水溶液(30mL、30mM)とテトラオクチルアンモニウムブロミドのトルエン溶液(80mL、50mM)とを混合し、塩化金酸が有機相に移動するまで30分間激しく撹拌した。その後、溶液を激しく撹拌しながら、ドデカンチオールを170mg加え、最後にヒドロホウ素化ナトリウム水溶液(25mL、0.4M)をゆっくりと加え、さらに3時間激しく撹拌した。有機相を取り出し、数mLになるまで溶液を濃縮した。そこにエタノールを150mL加え、−18℃で2時間静置し、遠心分離により沈殿物を得た。その後エタノールで3回洗浄し、茶色の金ナノ粒子を得た。作製した金ナノ粒子のキャラクタリゼーションにはTEM、UV−visible(紫外−可視光)分光光度計、DSC(示差走査熱量計)を用いた。
【0050】
<金ナノ粒子のキャラクタリゼーション>
得られた金ナノ粒子の300〜800nmの波長の光についての吸収スペクトルを、分光光度計(商品名「V−670」、日本分光社製)を用いて測定した。測定結果を図2に示す。この結果より、520nm付近にプラズモン吸収ピークを持つ金ナノ粒子が形成されていることが示された。なお、図2のグラフ中に挿入されている写真は、吸収スペクトルを測定した金ナノ粒子サンプルの外観を示した写真である。
得られた金ナノ粒子をTEM(製品名:H−7650、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて20万倍にて観察した結果を図3に示す(100kV)。そしてTEM画像から個々の金ナノ粒子の粒子径を計測し作成したヒストグラムを図4に示す。この結果から、金ナノ粒子の平均粒子径が3.3nmであることが確認された。
また、得られた金ナノ粒子について示差走査熱量測定(DSC測定)を下記装置及び測定条件により行った結果を図5に示す。この結果から、200℃付近でドデカンチオールの脱離、金ナノ粒子の凝集が始まることが示された。
DSC装置:DSC822e(メトラー・トレド社製)
測定条件
25℃〜250℃、10℃/分
作製した金ナノ粒子20.9mgをアルミナパンに入れ、窒素ガスを40mL/分で流して測定を行った。
【0051】
<金ナノ粒子ラインパターンの作製>
ラインパターンを作製するために、非特許文献1に記載されている、2枚の基板を精密に移動させることのできる装置を用いた。2枚のスライドガラスを基板ホルダに設置して、ドデカンチオール被覆金ナノ粒子のクロロホルム分散液(金ナノ粒子の濃度:1.0g/L)をスライドガラス間のギャップ(100μm)に注入し、一方の基板を100μm/sの一定の速度で水平方向にスライドさせた。この様子を図6に示す。この手法により、メニスカス(凸部)24のクロロホルム分散液23に含まれるクロロホルムが蒸発し、金ナノ粒子が断続的にスライドガラス22上に析出したラインパターン(X−1)を作製した。
【0052】
金ナノ粒子の濃度が2.5g/L、5.0g/L、10g/Lとなるようにしたドデカンチオール被覆金ナノ粒子のクロロホルム分散液を用いた以外は、ラインパターン(X−1)と同様にして、それぞれラインパターン(X−2)〜(X−4)を作製した。
【0053】
図7は、ラインパターン(X−1)をスライドガラスに載せた様子を表した写真である。ラインパターン(X−1)と同様に、ラインパターン(X−2)〜(X−4)についてもスライドガラスに載せ、図7中の(1)〜(3)の位置について、ラインパターン(X−1)〜(X−4)を500倍の倍率により観察した光学顕微鏡観察像が図8である。図8中、pitchは線状部間の間隔を、widthは線状部の線幅をそれぞれ表している。全ての金ナノ粒子濃度において界面の進行方向に対して垂直に金ナノ粒子のラインパターンが形成された。
【0054】
ドデカンチオール被覆金ナノ粒子のクロロホルム分散液(金ナノ粒子の濃度:1.0g/L)を用いて、スライドガラスの移動速度を50、100、150、200μm/sとした以外は、ラインパターン(X−1)の作製と同様にして、ラインパターン(X−5)〜(X−8)を作製した。
【0055】
ラインパターン(X−5)〜(X−8)を図7に示したラインパターン(X−1)と同様にスライドガラスに載せ、図7中の(1)〜(3)の位置について、ラインパターン(X−5)〜(X−8)を500倍の倍率により観察した光学顕微鏡観察像が図36である。
【0056】
ドデカンチオール被覆金ナノ粒子のクロロホルム分散液(金ナノ粒子の濃度:1.0g/L)を用いて、スライドガラス間の距離(ギャップ)を±0、100、150、200μmとした以外は、ラインパターン(X−1)の作製と同様にして、ラインパターン(X−9)〜(X−12)を作製した。
なお、スライドガラス間の距離が±0であるとは、スライドガラス間に隙間が無く接していることを意味するものではなく、測定不能な程に接近しているがわずかには間隙が存在することを表している。
【0057】
ラインパターン(X−9)〜(X−12)を図7に示したラインパターン(X−1)と同様にスライドガラスに載せ、図7中の(1)〜(3)の位置について、ラインパターン(X−9)〜(X−12)を500倍の倍率により観察した光学顕微鏡観察像が図37である。
【0058】
ラインパターン(X−1)〜(X−12)について、図7中の(1)〜(3)の各位置における線状部の線幅及び線状部間の間隔を下記の測定方法により求めた。
透明異方導電性膜の表面を光学顕微鏡(キーエンス社製、VHX−900)にて倍率500倍で観察し、観察した画像から直接導電性線部の線幅、導電性線部間の間隔を測定した。
【0059】
ラインパターン(X−1)〜(X−4)についての線状部の線幅及び線状部間の間隔の測定結果から、金ナノ粒子の濃度と線状部の線幅との関係を示したグラフが図11であり、金ナノ粒子の濃度と線状部間の間隔との関係を示したグラフが図12である。図11から、金ナノ粒子の濃度が高い時ほど、線状部の線幅が広くなることが分かった。また、図12から、金ナノ粒子の濃度を変化させても、線状部間の間隔はそれほど変化しないことが分かった。
なお、(1)〜(3)の3カ所について測定を行ったが、全ての場所で同様の傾向が見られた。濃度が大きくなるほど線幅が大きくなる様子が観察されたので、さらに濃度を大きくすると、平膜となることが予想される。濃度を変化させることで、透明性に大きな影響を与える線幅を制御することができる。
【0060】
ラインパターン(X−5)〜(X−8)についての線状部の線幅及び線状部間の間隔の測定結果から、スライドガラスの移動速度と線状部の線幅との関係を示したグラフが図13であり、スライドガラスの移動速度と線状部間の間隔との関係を示したグラフが図14である。図13から、スライドガラスの移動速度が速い時ほど、線状部の線幅が狭くなることが分かった。また、図14から、スライドガラスの移動速度が速い時ほど、線状部間の間隔は広くなることが分かった。
なお、測定する位置(図7中の(1)〜(3)の各位置)を変えても、スライドガラスの移動速度と線状部の線幅との関係、及び、スライドガラスの移動速度と線状部間の間隔との関係は同様の傾向を示した。スライド速度を速くすると線幅が小さく、線間隔が大きくなる様子が観察された。スライド速度を速くするほど、メニスカス先端の溶液量が減るので、線幅が小さくなると考えられる。また速くするほどメニスカス先端での固定化が起こる頻度が減ることで線間隔が大きくなると考えられる。ただし、スライド速度を大きくすると、スライド速度に対してクロロホルムの蒸発が間に合わなくなってしまうので注意が必要である。
【0061】
ラインパターン(X−9)〜(X−12)についての線状部の線幅及び線状部間の間隔の測定結果から、スライドガラス間の距離と線状部の線幅との関係を示したグラフが図15であり、スライドガラス間の距離と線状部間の間隔との関係を示したグラフが図16である。図15から、スライドガラス間の距離を変化させても、線状部の線幅はそれほど変化しないことが分かった。また、図16から、スライドガラス間の距離を変化させても、線状部間の間隔はそれほど変化しないことが分かった。
なお、測定する位置(図7中の(1)〜(3)の各位置)を変えても、スライドガラス間の距離と線状部の線幅との関係、及び、スライドガラス間の距離と線状部間の間隔との関係は同様の傾向を示した。
スライドガラス間の距離を変化させても±0μm以外では大きな違いが見られなかった。これはスライドガラス間の距離の制御が非常に難しいためである。スライド装置にスライドガラスを設置する際、基板をホルダに挟むが、このときスライドガラスが必ずしも水平ではないこと、また水平でない時の角度を制御するのは非常に難しく、常にスライドガラス間の距離を一定とするのが難しいためこのような結果になったと考えられる。
【0062】
(実施例1)
<焼成条件>
作製した金ナノ粒子ラインパターン(X−2)を、卓上マッフル炉(KDF007EX、デンケン社製)を用いて200℃で2時間焼成し、焼成ラインパターン(Y−2−1)を作製した。
【0063】
(実施例2〜9)
焼成温度、焼成時間を表1に示したように変更した以外は、焼成ラインパターン(Y−2−1)の作製と同様にして、焼成ラインパターン(Y−2−2)〜(Y−2−9)を作製した。
【0064】
【表1】
【0065】
図17は、焼成ラインパターン(Y−2−1)〜(Y−2−9)を500倍の倍率により観察した光学顕微鏡観察像である。図18は、焼成ラインパターン(Y−2−8)、(Y−2−9)を500倍の倍率により更に拡大して観察した光学顕微鏡観察像である。図17及び図18から、200℃、250℃で焼成した際には、焼成前のパターン膜と形状に変化は見られないが、300℃で焼成した際には、線状部が200℃、250℃で焼成した際に比べて赤くなっており、部分的に切れて線がつながっていないように見える箇所が存在することが分かる。また、図19は、焼成ラインパターン(Y−2−2)、(Y−2−8)を450倍の倍率により観察したSEM写真である。図19中、Aは、焼成ラインパターン(Y−2−2)についてのSEM写真を、Bは、Aの一部を11000倍の倍率により更に拡大して観察したSEM写真を、Cは、焼成ラインパターン(Y−2−8)についてのSEM写真を、Dは、Cの一部を3000倍の倍率により更に拡大して観察したSEM写真をそれぞれ表している。
焼成ラインパターン(Y−2−2)の写真を図20(a)に、その一部を500倍の倍率により観察した光学顕微鏡観察像を(b)に示す。図20(a)中の、R1及びR2は、後述する抵抗値R1、R2の向きを表している。
(Y−2−8)を拡大したSEM写真であるDより明らかに導電性線部がつながっていない様子が観察された。これはナノ粒子が凝集後、ディウェッティングしてしまった結果であると考えられる。
【0066】
(実施例10〜13)
作製した金ナノ粒子ラインパターン(X−1)〜(X−4)を、卓上マッフル炉(KDF007EX、デンケン社製)を用いて200℃で2時間焼成し、焼成ラインパターン(Y−1)〜(Y−4)を作製した。
得られた焼成ラインパターン(Y−1)〜(Y−4)について、線状部の線幅及び線状部間の間隔を上述した測定方法により求めた。
【0067】
焼成ラインパターン(Y−1)〜(Y−4)についての線状部の線幅及び線状部間の間隔の測定結果から、金ナノ粒子の濃度と線状部の線幅(width)との関係を示したグラフが図21であり、金ナノ粒子の濃度と線状部間の間隔(pitch)との関係を示したグラフが図22である。図21及び図22から、金ナノ粒子の濃度が高くなるにつれ、線状部間の間隔は小さくなり、線状部の線幅は広くなった。このことから、更に金ナノ粒子の濃度を高くすると、撥水(ディウェッティング)しきらずにラインパターンではなく平膜が形成されることが予想される。
【0068】
(実施例14〜21)
作製した金ナノ粒子ラインパターン(X−5)〜(X−12)を、卓上マッフル炉(KDF007EX、デンケン社製)を用いて200℃で2時間焼成し、焼成ラインパターン(Y−5)〜(Y−12)を作製した。
【0069】
<焼成ラインパターンの導電性>
焼成ラインパターンについて、導電性の評価を行った。導電性の評価としては、まず導電性AFM測定を以下のようにして行った。
導電性AFM測定としては、走査型プローブ顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)を用いて、表面形状像、電流像の観察を行った。カンチレバーは、オリンパス社製のOMCL−TR800をオスミウムスパッタしたものを用いた。
測定条件:
導電測定AFMホルダ(セイコーインスツル社製)を用いて測定した。焼成後のサンプルを約1cm角に切り出し、端部をドータイト銀ペーストで固定した。オスミウムスパッタした探針を用い、探針と基板の間にバイアス電圧10Vを印加して表面形状像と電流像の同時測定を行った。スキャン範囲は100μm四方である。焼成ラインパターン(Y−2−2)について、AFM測定による表面形状像を図23(a)に、電流像を図23(b)に示す。この結果から、作製した焼成ラインパターン(Y−2−2)上を電流が流れていることが示された。
【0070】
また、作製した焼成ラインパターン上にマスクを介して金を蒸着又はスパッタリングすることで四端子電極を作製し、四端子法を用いて抵抗値を測定した。そして、得られた抵抗値から電気抵抗率、電気伝導率を算出した。四端子測定は、線状部のラインパターンに対して水平方向と垂直方向との二方向に対して行った。線状部と水平方向における抵抗値をR1、線状部と垂直方向における抵抗値をR2と定義し、図24に示したようにマスクを用いて電極を作製した。まず異方性があるかどうかを調べるために、ラインパターンの両端に4点ずつドータイト銀ペーストを塗った。図25は銀ペーストを電極として、テスターで導通するかを確認している写真である。図25中、(1)は、ラインと水平方向、(2)は、(1)と同様にラインと水平方向で(1)とは別の場所、(3)は、(1)、(2)と同様にラインと水平方向で(1)、(2)とは別の場所、(4)は、ラインと垂直方向、(5)は、ラインと斜め方向で抵抗値を測定している様子を表している。ラインと水平方向のみ抵抗値が得られた。この結果とAFMの結果から、作製した焼成ラインパターン上を電流が流れており、ラインのつながっていないラインと垂直方向には電流が流れていないことが示された。次に四端子法により正確な抵抗値を測定した。焼成ラインパターン(Y−2)の場合、水平方向の抵抗値R1は、R1=213Ωであった。この値から、電気抵抗率ρ1=6.34×10−4Ω・cm、電気伝導率σ1=1.58×103S/cmであった。一方、垂直方向の抵抗値R2は、装置の測定限界以上(R2>211MΩ)であった。これらの結果から、作製した焼成ラインパターン(Y−2)は面内に異方導電性を持つことが示された。なお、金ナノ粒子濃度が1.0g/Lである焼成ラインパターン(Y−1)の場合は導通せず、5.0g/L、10g/Lである焼成ラインパターン(Y−3)、(Y−4)は、焼成ラインパターン(Y−2)と同様に面内に異方導電性を有した。
電気抵抗率、電気伝導率は四端子法を用いて測定した抵抗値の値から算出することができる。本発明の異方導電性膜上に図24中央に示すようなマスクを介して金を蒸着またはスパッタリングすることで四端子電極を作製し、測定を行うことで抵抗値を測定することが出来る。得られた抵抗値から、下記式の通り、電気抵抗率を算出することが出来る。下記式でR[Ω]は四端子法で測定した抵抗値、H[cm]はAFMにより測定した導電性線部の平均高さ、W[cm]は上述した方法で測定した、作製した電極間に存在する各導電性線部の線幅の合計、A[cm2]は作製した各導電性線部の断面積の合計、L[cm]は端子間距離、ρ[Ω・cm]は電気抵抗率、σ[S・cm−1]は電気導電率を表す。
A=WH[cm2]
ρ=RA/L[Ω・cm]
σ=1/ρ[S・cm−1]
【0071】
また、焼成ラインパターン(Y−2−2)、(Y−2−5)、(Y−2−8)について、上述した焼成ラインパターン(Y−2)についての導電性の評価と同様にして、導電性を評価した。その様子を表した写真が図26である。図26中、下の図は8点にドータイト銀ペーストを塗った写真である。
焼成ラインパターン(Y−2−2)、(Y−2−5)、(Y−2−8)について、導電性を評価した結果、金ナノ粒子濃度が2.5g/Lの場合、200℃で焼成した時には、導通したが、250℃以上で焼成すると線状部が赤くなっており、粒子が接触していないことから、導通しなかったと考えられる。
【0072】
<焼成ラインパターンの透過率>
焼成ラインパターン(Y−1)〜(Y−4)について、透過率の評価を行った。透過率の評価には、分光光度計(商品名「V−670」、日本分光社製)を用いて、350〜800nmの波長の光について透過率を測定した(スライドガラスの透過率を100%とした。)。その結果を示した図が図27である。また、焼成前のラインパターン(X−2)及び焼成後のラインパターン(Y−2)について、分光光度計(商品名「V−530」、日本分光社製)を用いて、300〜800nmの波長の光について透過率を測定し(空気の透過率を100%とした。)、それらの透過率を比較したのが図28である。
図27の結果から、導通した焼成ラインパターンの中では金ナノ粒子の濃度が2.5g/Lである場合に最も透過率が高く、350〜800nmの可視光領域では透過率76%であった。そして、金ナノ粒子の濃度が高くなるほど透過率が下がっていくことが示された。また、導通しなかった金ナノ粒子の濃度が1.0g/Lの場合には、520nm付近にプラズモン吸収が見られたが、導通した金ナノ粒子の濃度が2.5〜10g/Lの場合には、プラズモン吸収は見られなかった。図28において、導通した焼成ラインパターン(Y−2)においても、焼成する前の(X−2)ではプラズモン吸収が見られ、焼成して金ナノ粒子同士が繋がることで、プラズモン吸収が減少することが示されており、これらのことから、金ナノ粒子の濃度が1.0g/Lの時には、金ナノ粒子同士が接触していなかったために導通しなかったと考えられる。
【0073】
また、焼成ラインパターン(Y−1)〜(Y−12)について、分光光度計(商品名「V−670」、日本分光社製)を用いて、300〜800nmの波長の光について透過率を測定した(空気の透過率を100%とした。)。焼成ラインパターン(Y−1)〜(Y−4)の透過率を測定した結果を図29に示す。焼成ラインパターン(Y−5)〜(Y−8)の透過率を測定した結果を図30に示す。焼成ラインパターン(Y−9)〜(Y−12)の透過率を測定した結果を図31に示す。本明細書において、透過率の測定結果を表すグラフにおいては、縦軸が透過率、横軸が光の波長を示している。
図28〜31の結果から、透過率には金ナノ粒子の濃度の影響が大きいことが分かった。また、ラインパターンを焼成して焼成ラインパターンとした時に導通するものは、497nmの波長の光の透過率が高く、導通しないものは、510nm付近に吸収ピークを有する(プラズモン吸収を示す)ことが分かった。
【0074】
また、ドデカンチオール被覆金ナノ粒子のクロロホルム分散液(金ナノ粒子の濃度:2.5 g/L)をスライドガラスに均一に塗工し、乾燥させることでベタ膜(X´−2)を作製した。
金ナノ粒子の濃度が2.5g/L、5.0g/L、10g/Lとなるようにしたドデカンチオール被覆金ナノ粒子のクロロホルム分散液を用いた以外は、ベタ膜(X´−2)と同様にして、それぞれベタ膜(X´−3)〜(X´−4)を作製した。
そして、作製したベタ膜(X´−2)〜(X´−4)を、卓上マッフル炉(KDF007EX、デンケン社製)を用いて200℃で2時間焼成し、焼成ベタ膜(Y´−2)〜(Y´−4)を作製し、焼成ラインパターン(Y−1)〜(Y−12)と同様に、分光光度計(商品名「V−670」、日本分光社製)を用いて、300〜800nmの波長の光について透過率を測定した(空気の透過率を100%とした。)。その測定結果を示した図が図32である。図32の結果から、パターンを形成せずにベタ膜とすることで497nmの波長の光の透過率が増加することが分かった。ただし、金ナノ粒子の濃度が低いほど透過率は大きく、濃度を高くするほどに透過率は減少していくことが分かった。これは、膜厚が厚くなっていくためであると考えられる。
図30はスライド速度を変化させて作製したラインパターンの透過スペクトルである。これらのサンプルは全て異方導電性を持ち、510nm付近に吸収は見られなかった。また透過率にそれほど大きな変化はなかった。図31はスライドガラス間の距離を変化させて作製したラインパターンの透過スペクトルである。ここで±0μmの時は導通せず、510nm付近に吸収が見られた。
【0075】
<フレキシブル基板の作製>
2枚のスライドガラスの代わりに、1枚のスライドガラス、1枚のポリエステルフィルム(商品名「東洋紡エステル(R)フィルム」、東洋紡社製)を用いた以外は、ラインパターン(X−1)と同様にラインパターンを作製し、卓上マッフル炉(KDF007EX、デンケン社製)を用いて200℃で2時間焼成することで、ポリエステルフィルム上にラインパターンを有する透明異方導電性フレキシブル基板を作製した。作製されたフレキシブル基板の写真が図33(a)及び(b)である。
【0076】
作製したフレキシブル基板について、分光光度計(商品名「V−530」、日本分光社製)を用いて、300〜800nmの波長の光について透過率を測定したところ、基板のポリエステルフィルムの透過率を100%とした場合の、フレキシブル基板の300〜800nmの可視光領域における透過率は73.5%であった。また、空気の透過率を100%とした場合の、フレキシブル基板の300〜800nmの可視光領域における透過率は59.4%であった。フレキシブル基板についての透過率の測定結果を図34に示す。
フレキシブル基板についての導電性については、上述した焼成ラインパターンの導電性の評価方法と同様にドータイト銀ペーストを塗り、それを電極として、テスターを用いて異方導電性を確認した。
【符号の説明】
【0077】
11、12:スライドガラス
13:有機溶媒分散体
21、22:スライドガラス
23:ドデカンチオール被覆金ナノ粒子のクロロホルム分散液
24:メニスカス
25:ラインパターン
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明異方導電性膜、及び、その製造方法に関する。より詳しくは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、電子ペーパー(デジタルペーパー)等の薄型ディスプレイ、タッチパネルに好適に用いることができる透明異方導電性膜、及び、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明異方導電性膜は、光透過性を有し、導電性がその膜内の方向によって異なっているような導電性膜であり、種々の電気機器への適用が考えられる。特に近年、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、電子ペーパー(デジタルペーパー)等の薄型ディスプレイの需要が拡大しており、このような用途に適用される導電性膜としては、特に光透過性、導電性に優れるものが求められており、透明異方導電性膜もこのような用途に適用される可能性を有しているものである。
光透過性を有する導電性膜としては、現在では、酸化インジウム錫(ITO)が用いられることが一般的である。酸化インジウム錫により作製された導電性膜は、光透過性、導電性のバランスに優れており、通常の液晶ディスプレイ等だけではなく、例えば、タッチパネル用途等にも使用されている。しかしながら、インジウムのような希金属は高価であり、また、資源枯渇のおそれがあるため、より安価で、資源枯渇のおそれが少ない材料を用いた光透過性を有する導電性膜が求められているところであった。また、ITOの成膜には通常、スパッタリング法等が用いられているため、生産性が低い点でも改善の余地があった。
【0003】
光透過性を有する導電性膜の形態としては、酸化インジウム錫のように、光透過性と導電性を有する材料を用いた導電性膜の形態や、メッシュ状や網目状等の微細なパターンを有する導電性膜の形態等が挙げられる。
微細なパターンを作製する方法としては、一般には、リソグラフィーやスクリーン印刷による方法が用いられる。また、その他の方法として、2枚のガラス板の間隙にポリマー溶液を注入し、上方のガラス板を下方のガラス板に対してスライドさせることで、下方のガラス板上にポリマー溶液の存在する凸部とポリマー溶液の存在しない凹部とが交互に並ぶポリマーの周期的なラインパターンを形成する方法が開示されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】藪浩(Hiroshi Yabu)、下村政嗣(Masatsugu Shimomura)、アドバンスド・ファンクショナル・マテリアルズ(Advanced Functional Materials)、2005年、第15巻、第4号、pp575−581
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
透明異方導電性膜としては、上述したように種々の電気機器への適用が想定されているが、従来、メッシュ状や網目状等のパターンを有する導電性膜の形成に用いられてきたリソグラフィーによる方法では、工程が多く、金属の使用量が多いも多いという課題があり、スクリーン印刷による方法でも、金属の使用量が多いという課題があった。また、これらいずれの方法によって得られたパターンも、線幅やパターンの間隔が充分に狭いものではない等、実用化するためにはその透明性、異方導電性に関して研究の余地があるものであった。このように、実用化に耐えうる性能を有した透明異方導電性膜の開発が求められるところであった。また、そのような透明異方導電性膜を製造する方法としては、簡易かつ安価に、光透過性と異方導電性とを高いレベルで両立した透明異方導電性膜を製造する方法が求められるところであった。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、光透過性と異方導電性とを高いレベルで両立し、種々の電気機器に好適に用いることができる透明異方導電性膜、及び、そのような透明異方導電性膜を簡易かつ安価に製造することができる透明異方導電性膜の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、優れた光透過性と異方導電性とを有する導電性膜を製造する方法について種々検討したところ、対向する2つの面の間隙に導電物質を含む有機溶媒分散体が挟持されるようにし、その2つの面のうちの少なくとも一方をもう一方の面に沿って移動させ、有機溶媒分散体からなる線状部が間隔を空けて複数並ぶパターンを形成する工程、及び、有機溶媒を揮発させて導電性線部を形成する工程を行うと、導電物質を含む導電性線部が間隔を空けて複数並び、その導電性線部の線幅が狭く、かつ、導電性線部間の間隔も狭いものとなることを見出した。この導電性線部は間隔を空けて同方向を向いて並ぶために、作製される導電性膜は、導電性線部の長軸方向には電流がよく流れるのに対して、長軸方向と直交する方向には導電性線部はほぼ繋がっていないために電流が流れにくくなっており、優れた光透過性と異方導電性とを有するものとなることがわかった。そしてそのような透明異方導電性膜は、導電性線部の長軸方向における電気抵抗率が、1×10−2Ω・cm以下であり、導電性線部の長軸方向と直交する方向における電気抵抗率が、1×102Ω・cm以上であり、全光線透過率が50%以上となるものであって、種々の電気機器に好適に用いることができるものであることも見出した。このような工程により導電性膜を製造すると、少ない工程で、微細なパターンを形成することができ、また、面を移動させる速度、導電物質を含む有機溶媒分散体の濃度、2つの面の間の距離等を調整することにより、導電性線部の線幅や間隔を調整することが可能であることから、特定の物性値を有する光透過性と異方導電性とを高いレベルで両立した透明異方導電性膜を形成することができることを見出し、上記課題をみごとに解決できることに想到し、本発明に到達したものである。
なお、非特許文献1には、上述したように、微細なパターンを作製する方法として、2枚のガラス板の間隙にポリマー溶液を注入し、上方のガラス板を下方のガラス板に対してスライドさせることで、下方のガラス板上にポリマー溶液の存在する凸部とポリマー溶液の存在しない凹部とが交互に並ぶポリマーの周期的なラインパターンを形成する方法が開示されている。しかしながら、非特許文献1は、ポリマー溶液を用いた場合にポリマーの周期的なラインパターンを形成することができることを開示しているのみであって、導電物質を含む有機溶媒分散体を用いた場合に、有機溶媒分散体からなる線状部が間隔を空けて複数並ぶパターンを形成することができること、そして更にはそのようなパターンから有機溶媒を揮発させて導電性線部を形成することによって光透過性と異方導電性とに優れた透明異方導電性膜を形成することができることについては、本発明により初めて見出されたものである。
【0008】
すなわち本発明は、導電物質を含む導電性線部が間隔を空けて複数並ぶ透明異方導電性膜であって、上記透明異方導電性膜は、導電性線部の長軸方向における電気抵抗率が、1×10−2Ω・cm以下であり、導電性線部の長軸方向と直交する方向における電気抵抗率が、1×102Ω・cm以上であり、全光線透過率が50%以上である透明異方導電性膜である。
また本発明は、導電物質を含む導電性線部が間隔を空けて複数並ぶ透明異方導電性膜の製造方法であって、上記製造方法は、対向する2つの面の間隙に導電物質を含む有機溶媒分散体が挟持されるようにしつつ、上記2つの面の少なくとも一方をもう一方の面に沿って移動させ、有機溶媒分散体からなる線状部が間隔を空けて複数並ぶパターンを形成する工程と、有機溶媒を揮発させて導電性線部を形成する工程とを含む透明異方導電性膜の製造方法でもある。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明の透明異方導電性膜は、導電物質を含む導電性線部が間隔を空けて複数並ぶものである。上記導電物質としては、導電性を有するものであれば特に制限されないが、後述するように導電性を有する物質の微粒子である導電性微粒子であることが好ましい。すなわち、上記導電性線部は、導電性微粒子を含むこともまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0010】
上記導電性線部が間隔を空けて複数並ぶ形態としては、複数の導電性線部がその長軸方向を合わせて並んでいればよく、導電性線部は直線であってもよいし、多少曲がっていてもよいが、全体として直線状であることが好ましい。そして、導電性線部同士は全く接点を有していなくてもよいし、本発明の透明異方導電性膜が異方導電性を有する程度に多少交わっていてもよいが、導電性線部同士の接点はなるべく少ない方が好ましく、全く接点を有していないのが特に好ましい。また、導電性線部間の間隔も、等間隔であってもよいし、不規則であってもよいが、透明異方導電性膜全体として等間隔であるといえる形態が好ましい。
【0011】
上記導電性線部間の間隔としては、透明異方導電性膜が優れた光透過性と異方導電性とを有するものとなる限り特に制限されないが、1〜200μmであることが好ましい。このような間隔を空けて導電性線部が並んでいると、導電性線部間の間隔が狭いということができ、透明異方導電性膜を充分に優れた光透過性と異方導電性とを有するものとすることが可能である。より好ましくは、1〜100μmであり、更に好ましくは、1〜50μmである。
【0012】
上記導電性線部の線幅としては、透明異方導電性膜が優れた光透過性と異方導電性とを有するものとなる限り特に制限されないが、0.1〜100μmであることが好ましい。導電性線部の線幅がこのような範囲であると、導電性線部の線幅が狭いということができ、線幅が狭いことによって、例えば、ディスプレイ等において生じるおそれのあるモアレを抑制することができる。導電性線部の線幅が100μmを越える場合、光透過性が充分でなくなるおそれがある。より好ましくは、0.1〜50μmであり、更に好ましくは、0.1〜30μmである。
このように、導電性線部間の間隔が等間隔で狭く、導電性線部の線幅が狭いものであることによって、透明異方導電性膜はより光の透過性が高く、かつ均一性の高いものとなる。例えば、本発明の透明異方導電性膜を電子ペーパー等に用いる場合には、表示を行うマイクロカプセルに対して均一に電圧を印加することができる。導電性線部間の間隔が広い場合、透明異方導電性膜により電圧を印加してマイクロカプセルの色を変化させるような電子ペーパー等のディスプレイに用いた際に、導電性線部間にマイクロカプセルの全体が納まるおそれがあり、カプセルへの電圧の印加が充分に行われなくなるおそれがある。また、導電性線部間の間隔が狭いことによって、電流の流れる方向における導電性がより均一となる。これによれば、例えば、タッチパネルに用いられた場合、位置の認識の精度が高くなる。
【0013】
導電性線部の線幅、導電性線部間の間隔については、以下の方法により求めることができる。透明異方導電性膜の表面を光学顕微鏡(キーエンス社製、VHX−900)にて倍率500倍で観察し、観察した画像から直接導電性線部の線幅、導電性線部間の間隔を測定する。
【0014】
上記導電性線部の厚みは、200nm以上であることが好ましい。200nm以上であることによって、導電性線部の線幅が狭くなったとしても充分な導電率を得ることができる。透明異方導電性膜の膜厚が200nm未満である場合には、導電性が低くなり、透明異方導電性膜としての特性を充分に発揮することができないおそれがある。導電性線部の厚みとしてより好ましくは、1μm以上である。なお、導電性線部の厚みは、透明異方導電性膜の最大膜厚を測定することによって求められ、例えば、レーザー顕微鏡を用いることによって測定することができる。測定方法としては、レーザー顕微鏡(VK−9700、キーエンス社製)で倍率50倍で塗膜を観測し、観察した画像から塗膜の最大の段差を10箇所で計測し、平均した値を透明異方導電性膜の最大膜厚とする。
【0015】
本発明の透明異方導電性膜は、可視光(波長が400〜700nm)の光透過率が20%以上であることが好ましい。光透過率を高くすることで、例えば、電子ペーパー等の表示装置に対して好適に用いることができる。光透過率としてより好ましくは、40%以上であり、更に好ましくは、60%以上であり、特に好ましくは、80%以上である。上記光透過率は、例えば、分光光度計(商品名「V−530」、日本分光社製)を用いて、300〜800nmの波長の光について測定することができる。
【0016】
本発明の透明異方導電性膜は、全光線透過率が50%以上であるものである。全光線透過率が50%以上である場合、例えば、電子ペーパー等の表示装置に対して好適に用いることができる。全光線透過率として好ましくは、60%以上であり、より好ましくは、70%以上であり、更に好ましくは、80%以上である。
なお、上記全光線透過率は、ヘイズメーター NDH5000(日本電色工業社製)を用いて、JIS K7361−1に準拠して測定することができる。
【0017】
本発明の透明異方導電性膜は、導電性線部の長軸方向における電気抵抗率が1×10−2Ω・cm以下であり、導電性線部の長軸方向と直交する方向における電気抵抗率が1×102Ω・cm以上であるものである。このような電気抵抗率であると、導電性線部の長軸方向においては良好に電流が流れ、導電性線部の長軸方向と直交する方向においては充分に電流が流れないものとなり、充分な異方導電性を有しているため、種々の電気機器に好適に用いることが可能となる。
導電性線部の長軸方向における電気抵抗率として好ましくは、1×10−3Ω・cm以下であり、より好ましくは、1×10−4Ω・cm以下であり、更に好ましくは、1×10−5Ω・cm以下である。また、導電性線部の長軸方向と直交する方向における電気抵抗率として好ましくは、1×103Ω・cm以上であり、より好ましくは、1×104Ω・cm以上であり、更に好ましくは、1×105Ω・cm以上である。
なお、上記電気抵抗率は、四端子法を用いて測定した抵抗値の値から算出することができる。本発明の透明異方導電性膜上に図24中央に示すようなマスクを介して金を蒸着またはスパッタリングすることで四端子電極を作製し、測定を行うことで抵抗値を測定することが出来る。得られた抵抗値から、下記式の通り、電気抵抗率を算出することが出来る。下記式でR[Ω]は四端子法で測定した抵抗値、H[cm]はAFMにより測定した導電性線部の平均高さ、W[cm]は上述した方法で測定した、作製した電極間に存在する各導電性線部の線幅の合計、A[cm2]は作製した各導電性線部の断面積の合計、L[cm]は端子間距離、ρ[Ω・cm]は電気抵抗率を表す。
A=WH[cm2]
ρ=RA/L[Ω・cm]
【0018】
なお、上記透明異方導電性膜は、透明基板上に形成されることが好ましい。透明異方導電性膜が透明基板上に形成されることにより、導電性線部によって優れた異方導電性が発現すると共に、導電性線部からなるパターンと透明基板とが一体となってより優れた光透過性が実現されることとなる。すなわち、透明異方導電性膜を透明基板上に形成させて得られる透明異方導電性基板もまた本発明の1つである。
【0019】
上記透明基板とは、可視光の透過率が高い基板のことであり、例えば、波長400〜700nmの可視光の透過率が50%以上であることが好ましい。より好ましくは、上記透過率が70%以上であり、更に好ましくは、80%以上である。そのような透明基板としては、ガラス基板、透明性を有するプラスチック基板等が挙げられる。また、電子ペーパー等の表示装置として用いる場合には、透明基板としては、透明性を有するプラスチック基板等の可とう性を有しているものを用いることが好ましい。すなわち、上記透明異方導電性基板が、透明異方導電性フレキシブル基板であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。上記プラスチック基板としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のエステル系;アクリル系;シクロオレフィン系;オレフィン系;ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート等の樹脂系のフィルムが挙げられる。
【0020】
上記透明異方導電性膜の用途としては、特に限定されるものではなく、光透過性及び異方導電性を必要とする用途であればどのような用途にも用いることができる。例えば、プラズマディスプレイ等に用いられる電磁波遮蔽フィルム(EMIシールドフィルム)等として用いることができるし、太陽電池、電子ペーパー(デジタルペーパー)、液晶表示装置の表示装置に用いられる電極として用いることもできる。また、タッチパネル等にも用いることができる。
このように、本発明はまた、デジタルペーパーに用いられる透明異方導電性膜でもある。
【0021】
次に本発明の透明異方導電性膜の製造方法について説明する。
本発明の透明異方導電性膜の製造方法は、対向する2つの面の間隙に導電物質を含む有機溶媒分散体が挟持されるようにしつつ、上記2つの面の少なくとも一方をもう一方の面に沿って移動させ、有機溶媒分散体からなる線状部が間隔を空けて複数並ぶパターンを形成する工程と、有機溶媒を揮発させて導電性線部を形成する工程とを含むものであるが、これらの工程は、一部同時並行して行われる形態であってもよいし、パターンを形成する工程を行った後に、有機溶媒を揮発させて導電性線部を形成する工程を行ってもよい。中でも、パターンを形成する工程を行った後に、有機溶媒を揮発させて導電性線部を形成する工程を行うことが、本発明の好適な実施形態の1つである。
なお、本発明の透明異方導電性膜の製造方法は、対向する2つの面の間隙に導電物質を含む有機溶媒分散体が挟持されるようにしつつ、上記2つの面の少なくとも一方をもう一方の面に沿って移動させ、有機溶媒分散体からなる線状部が間隔を空けて複数並ぶパターンを形成する工程と、有機溶媒を揮発させて導電性線部を形成する工程とを含むものである限り、その他の工程を含んでいてもよい。
【0022】
本発明の透明異方導電性膜の製造方法は、対向する2つの面の間隙に導電物質を含む有機溶媒分散体が挟持されるようにしつつ、該2つの面の少なくとも一方をもう一方の面に沿って移動させ、有機溶媒分散体からなる線状部が間隔を空けて複数並ぶパターンを形成する工程(自己組織化工程)を含むものである。このような工程を含むことにより、導電性線部が間隔を空けて複数並ぶ周期的なラインパターンを有し、その導電性線部の線幅が狭く、かつ、導電性線部間の間隔も狭い透明異方導電性膜を形成することが可能となる。そしてそれにより、製造される透明異方導電性膜を光透過性にも異方導電性にも優れたものとすることができる。
【0023】
上記自己組織化工程によれば、対向する2つの面の間隙に導電物質を含む有機溶媒分散体が挟持されるようにして、該2つの面の少なくとも一方をもう一方の面に沿って移動させることで、面と有機溶媒分散体との相溶性の低さを原因とした撥水(Dewetting)作用により、一方の面上に有機溶媒分散体からなる線状部が間隔を空けて複数並ぶ周期的なラインパターンが自己組織化されることとなる。これにより、導電物質を含む有機溶媒分散体からなる線状部と、線状部と線状部の間の非線状部とを有する膜が形成される。このように、上記自己組織化工程により周期的なラインパターンを有する膜を製造することができるが、自己組織化工程は、他のパターン作製工程、例えば、リソグラフィー工程やスクリーン印刷工程等に比べて、工程数が少なく、導電性線部(ライン)の線幅、間隔を狭くすることが可能であり、また、導電物質の使用量も少なくて済むことから、他のパターン作製工程に比べて、簡易かつ低コストに、細かいラインパターンを形成することができる。これによって、上記自己組織化工程によってパターンを形成することにより、簡易かつ低コストに、光透過性と異方導電性とに優れた透明異方導電性膜を製造することが可能となる。
【0024】
上記自己組織化工程において、対向する2つの面の間隙に導電物質を含む有機溶媒分散体が挟持されるようにするとは、結果そのような形態となればそれを行う方法については特に制限されず、例えば、対向する2つの面の間隙に有機溶媒分散体を注入する方法や、1つの面上に有機溶媒分散体を塗工した後、別の1つの面により塗工された有機溶媒分散体を挟む方法等が挙げられる。
【0025】
また、上記自己組織化工程において、上記2つの面の少なくとも一方をもう一方の面に沿って移動させるとは、面の移動に伴い、挟持されている有機溶媒分散体が面との接点において摩擦力を受けるような形態であれば、2つの面の移動形態について特に制限されないが、例えば、導電物質を含む有機溶媒分散体を挟持した2つの面のうちの一方の面を、固定したもう一方の面に沿って移動させる形態、2つの面共に移動させるが、一方の面ともう一方の面とを移動させる方向が異なっている形態、2つの面共に同方向に移動させるが、それらの移動スピードが異なっている形態等が挙げられる。
【0026】
上記対向する2つの面としては、有機溶媒分散体を挟持することができ、少なくとも一方の面をもう一方の面に沿って移動させて、有機溶媒分散体からなる線状部が間隔を空けて複数並ぶパターンを形成することができれば、その種類は特に制限されない。そのような面としては、例えば、ガラス基板、プラスチック基板、単結晶基板、半導体基板、金属基板等の種々の基板を用いることができる。電子ペーパー(デジタルペーパー)等のディスプレイに用いる場合には、2つの面のうち、パターンが形成される方の面は少なくともガラス基板、透明性を有するプラスチック基板等の透明基板であることが好ましい。透明基板としては上述したものと同様のものを用いることができる。また、ガラス基板、プラスチック基板を用いることは、低コスト化の観点からも好適である。また、電子ペーパー等の表示装置として用いる場合には、可とう性を有する基板を面として用いることも好ましい形態である。プラスチック基板としては、上述したものと同様のものが挙げられる。
【0027】
また、上記対向する2つの面の一方が上述したような種々の基板であり、その基板上に有機溶媒分散体を塗工するためのダイコーター等の供給口の周囲が、上記基板と対向するような面状になっていて、上記基板をダイコーター等の供給口の周囲の面状部分に沿って移動させることで、有機溶媒分散体からなる線状部が間隔を空けて複数並ぶパターンを形成するような形態も本発明の好適な実施形態の1つである。
【0028】
上記面は、表面が有機溶媒分散体と相溶性の低いものであることが好ましい。上記面の表面と有機溶媒分散体との相溶性が低いことによって、面が有機溶媒分散体をはじきやすくなり、撥水作用によるラインパターンの自己組織化をより正確に行うことが可能となる。
【0029】
上記自己組織化工程においては、対向する2つの面の間隙の距離を調節することにより、形成されるラインパターンの線状部の線幅、及び、線状部間の間隔を制御することが可能である。したがって、求められるラインパターンの形状に応じて対向する2つの面の間隙の距離を適宜設定すればよいが、上記対向する2つの面の間隙の距離としては、0〜500μmであることが好ましい。対向する2つの面の間隙の距離がこのような範囲であると、形成されるラインパターンの線状部の線幅、及び、線状部間の間隔を充分に狭いものとすることが可能であり、作製される透明異方導電性膜を光透明性と異方導電性とにより優れたものとすることができる。対向する2つの面の間隙の距離としてより好ましくは、0〜400μmであり、更に好ましくは、0〜300μmである。
なお、対向する2つの面の間隙の距離が0μmであるとは、該2つの面の間に隙間が無く接していることを意味するものではなく、測定不能な程に接近しているがわずかには間隙が存在することを表している。
【0030】
上記自己組織化工程においては、また、対向する2つの面の少なくとも一方をもう一方の面に沿って移動させる際の、一方の面のもう一方の面に対する相対移動速度(以降、相対面移動速度ともいう。)を調節することにより、形成されるラインパターンの線状部の線幅、及び、線状部間の間隔を制御することが可能である。したがって、求められるラインパターンの形状に応じて、上記一方の面のもう一方の面に対する相対移動速度を適宜設定すればよいが、上記相対面移動速度としては、10〜500μm/sであることが好ましい。一方の面のもう一方の面に対する相対移動速度がこのような範囲であると、形成されるラインパターンの線状部の線幅、及び、線状部間の間隔を充分に狭いものとすることが可能であり、作製される透明異方導電性膜を光透明性と異方導電性とにより優れたものとすることができる。上記相対面移動速度としてより好ましくは、10〜400μm/sであり、更に好ましくは、10〜300μm/sである。
【0031】
上記自己組織化工程においては、更に、有機溶媒分散体中の導電物質の濃度を調節することにより、形成されるラインパターンの線状部の線幅、及び、線状部間の間隔を制御することが可能である。したがって、求められるラインパターンの形状に応じて、上記導電物質濃度を適宜設定すればよいが、上記導電物質濃度としては、0.5〜20g/Lであることが好ましい。有機溶媒分散体中の導電物質濃度がこのような範囲であると、形成されるラインパターンの線状部の線幅、及び、線状部間の間隔を充分に狭いものとすることが可能であり、作製される透明異方導電性膜を光透明性と異方導電性とにより優れたものとすることができる。上記導電物質濃度としてより好ましくは、1〜15g/Lであり、更に好ましくは、2.5〜10g/Lである。
【0032】
このように、上記自己組織化工程においては、対向する2つの面の間隙の距離、対向する2つの面の少なくとも一方をもう一方の面に沿って移動させる際の、一方の面のもう一方の面に対する相対移動速度(相対面移動速度)、有機溶媒分散体中の導電物質の濃度を調節することによって、形成されるラインパターンの線状部の線幅、及び、線状部間の間隔を制御することが可能である。中でも、この3つのパラメータを上述した範囲とすることによって、作製される透明異方導電性膜を光透明性と異方導電性とにより優れたものとすることができるものである。すなわち、対向する2つの面の間隙が0〜500μm、相対面移動速度が10〜500μm/s、有機溶媒分散体中の導電物質の濃度が0.5〜20g/Lで周期的パターンを形成する透明異方導電性膜の製造方法もまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
【0033】
ここで、上記自己組織化工程により有機溶媒分散体からなる線状部が間隔を空けて複数並ぶパターンを有する膜を製造する方法について、一例として、対向する2つの面としていずれもスライドガラス基板を用い、下方のガラス基板は固定し、上方のガラス基板を下方のガラス基板に沿って移動させる形態を図1に示す。図1で示すように、上方のスライドガラス11を、固定した下方のスライドガラス12に沿って矢印の方向に移動させることによって、スライドガラス11と導電物質を含む有機溶媒分散体13との撥水作用により、有機溶媒分散体からなる線状部が間隔を空けて複数並ぶ周期的なラインパターンが自己組織化されることとなる。
【0034】
本発明において用いられる導電物質は、導電性を有するものであれば特に制限されないが、導電性を有する物質の微粒子である導電性微粒子であることが好ましい。導電性微粒子とは、一般的に平均粒子径が100μm以下の導電性粒子を意味するものであり、導電性微粒子の粒子径は特に限定されるものではないが、平均粒子径が1μm以下であることが好ましい。1μm以下の平均粒子径とすることで、導電性を有する導電性線部の線幅を狭くすることができ、透明異方導電性膜の透過部を広くすることができ、開口率が向上することとなる。これにより、透明異方導電性膜の光透過性が向上する。導電性微粒子の平均粒子径としてより好ましくは、500nm以下であり、更に好ましくは、100nm以下であり、特に好ましくは、50nm以下であり、最も好ましくは、10nm以下である。特に、10nm以下の平均粒子径とすることにより、形成された導電性を有する導電性線部の導電率を高めることができる。また、粒子径分布としては、変動係数が30%以内であることが好ましく、より好ましくは、20%以内であり、更に好ましくは、15%以内である。
【0035】
上記導電性微粒子の平均粒子径は、TEM像(透過型電子顕微鏡観察像)、又は、SEM像(走査型電子顕微鏡観察像)により得られる数平均粒子径;粉末X線回折測定法により得られる結晶子径;X線小角散乱法等により得られる慣性半径とその散乱強度から求められる平均粒子径等を用いることができる。中でも、SEM像(走査型電子顕微鏡観察像)により得られる数平均粒子径であることが好ましい。
上記導電性微粒子の形状は、球状に限られず、例えば、楕円球状、立方体状、直方体状、ピラミッド状、針状、柱状、棒状、筒状、りん片状、板状(例えば、六角板状)等の薄片状、紐状等の形状でも好適に用いることができる。
【0036】
上記導電性微粒子は、導電性を有する物質を含有する微粒子であれば特に限定されないが、例えば、金属、導電性を有する無機酸化物、炭素系材料、炭化物系材料等の微粒子が挙げられる。金属としては、種々の金属を用いることができ、単体金属、合金、固溶体等のいずれの形態であってもよい。金属元素としては特に限定されず、例えば、白金、金、銀、銅、アルミ、クロム、コバルト、タングステン等の種々の金属元素を用いることができるが、導電性が高い金属であることが好ましい。導電性が高い金属としては、白金、金、銀及び銅からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有するものであることが好ましい。また、金属としては、化学的安定性が高い金属であることが好ましい。例えば、本発明の透明異方導電性膜の製造方法を用いる場合、有機溶媒に導電性微粒子を分散させて有機溶媒を揮発させる等の工程を経ることとなる。このような工程に対して、酸化、腐食等が生じないことが好ましい。化学的安定性が高い観点からは、上記金属は、白金、金及び銀からなる群より選ばれる少なくとも一つを含有してなることが好ましい。この中でも、線状部の線幅、及び、線状部間の間隔が充分に狭いラインパターンをより安定的に形成するという観点からは、金を含有することが好ましい形態である。また、低コスト化の観点からは、銀を含有することが好ましい形態である。導電性を有する無機酸化物としては、酸化インジウム錫等のインジウム系酸化物、酸化亜鉛系酸化物等の透明導電性物質、導電性を有する非透明性の無機酸化物等が挙げられる。炭素系材料としては、カーボンブラック等が挙げられる。炭化物系材料としては、シリコンカーバイド、クロムカーバイド、チタンカーバイド等が挙げられる。また、用いることが可能な導電性微粒子としては、非導電性微粒子を上記導電性微粒子を形成する導電性物質(金属、導電性を有する無機酸化物、炭素系材料、炭化物系材料等)で取り囲んだ微粒子(例えば、コア「非導電性物質」、シェル「導電性物質」のコア−シェル構造を持つ微粒子)も好ましい。上記非導電性微粒子としては、特に限定されるものではなく、種々の物質で形成された非導電性微粒子を用いることができる。上記導電性微粒子としては、これらを単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
更に、用いることができる導電性微粒子としては、酸化銀、酸化銅等の酸化物微粒子を有機溶媒に分散させた後、有機溶媒を揮発させて導電性線部を形成する工程を行う前までに、還元雰囲気下に置くことで、銀、銅等の金属に還元して用いることも可能である。すなわち、上記透明異方導電性膜の製造方法は、酸化物微粒子を含む有機溶媒分散体を用い、有機溶媒を揮発させて導電性線部を形成する工程を行う前までに、還元雰囲気下に置くことで、酸化物微粒子を還元する工程を含むことも好ましい形態の一つである。
【0037】
上記導電物質の含有量は、有機溶媒分散体100質量%に対して、0.001〜10質量%であることが好ましい。このような範囲とすることによって、充分な導電性を有する透明異方導電性膜を得ることができる。導電物質の含有量としてより好ましくは、0.002〜0.1質量%であり、更に好ましくは、0.002〜0.01質量%である。
【0038】
本発明において用いられる有機溶媒分散体は、有機溶媒に導電物質が分散された分散体であり、有機溶媒、及び、導電物質以外の物質を含んでいてもよい。有機溶媒としては、特に限定されるものではなく、種々の有機溶媒を用いることができる。
上記有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレン、エチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ドデシルベンゼン、フェニルキシリルエタン等のベンゼン系炭化水素等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−デカン等のパラフィン系炭化水素、アイソパー(Isopar、エクソン化学社製)等のイソパラフィン系炭化水素、1−オクテン、1−デセン等のオレフィン系炭化水素、シクロヘキサン、デカリン等のナフテン系炭化水素等の脂肪族炭化水素類;ケロシン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、工業ガソリン、コールタールナフサ、石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油や石炭由来の炭化水素混合物;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、トリクロロフルオロエタン、テトラブロモエタン、ジブロモテトラフルオロエタン、テトラフルオロジヨードエタン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、クロロブタン、クロロシクロヘキサン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードメタン、ジヨードメタン、ヨードホルム等のハロゲン化炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、オクタノール、メチルセロソルブ等のアルコール類;ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類;ハイドロフルオロエーテル等のフッ素系溶剤;二硫化炭素等が好ましい。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0039】
上記有機溶媒分散体は、導電物質が導電性微粒子であった場合等微粒子を含む場合には、有機溶媒中に微粒子が分散するのを促進する微粒子分散剤を含有することが好ましい。微粒子分散剤を含有することによって、微粒子が有機溶媒中で凝集してしまうことを防止することができ、有機溶媒分散体をより均一なものとすることが可能となる。
上記微粒子分散剤としては、導電性微粒子等の微粒子を有機溶媒中に分散させることができれば、特に制限されるものではないが、例えば、オクチルアミン、ヘキシルアミン、オレイルアミン等のアミン化合物;ドデカンチオール等の硫黄化合物;オレイン酸等のカルボン酸化合物;等が挙げられる。
上記微粒子分散剤としては、これらを単独で用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0040】
上記微粒子分散剤の含有量は、有機溶媒分散体100質量%に対して、0.001〜5質量%であることが好ましい。このような範囲よりも少ないと、有機溶媒分散体中の微粒子の凝集を充分に防止することができないおそれがある一方、多いと、形成される透明異方導電性膜の導電性が発現しなくなるおそれがある。微粒子分散剤の含有量としてより好ましくは、0.01〜3質量%である。
【0041】
上記有機溶媒分散体は、バインダーを含むものであってもよい。バインダーを含むものであると、面との密着性が向上することになる。バインダーとしては、有機溶媒に溶解する高分子であれば特に制限されないが、例えば、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリルアミド、ポリアルキレングリコール系ポリマー、ポリスチレン等が挙げられる。これらのバインダーは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
上記透明異方導電性膜の製造方法は、上記自己組織化工程の後に、更に、無電解めっきを行う工程を含んでもよい。このように、無電解めっきを行うことによって、得られる透明異方導電性膜の導電性を更に向上させることができる。
【0043】
本発明の透明異方導電性膜の製造方法は、有機溶媒を揮発させて導電性線部を形成する工程を含むものである。該工程を行う方法としては、有機溶媒分散体からなる線状部が間隔を空けて複数並ぶパターンを有するパターン膜から、有機溶媒を揮発させ、導電性線部を形成することができれば、特に制限されない。そのような方法としては、例えば、焼成することにより行う方法、可視光線、紫外線(UV)、赤外線等の光を照射することにより行う方法、有機溶媒を含む溶媒溶液を作用させることにより行う方法等が挙げられる。
これらの中でも、焼成することにより行う方法が好ましい。焼成を行うことによって、充分に有機溶媒を揮発させることができ、導電物質同士を結合させて導電性線部が形成され、より高い導電性を発現させることが可能となる。
【0044】
上記焼成方法において、焼成する温度は特に限定されず、金属材料、導電物質の含有量、有機溶媒の種類、膜厚等によって異なるものであり、各々の条件で適宜好適な条件で行うことができるが、焼成温度は、100〜280℃であることが好ましい。すなわち、有機溶媒を揮発させて導電性線部を形成する工程を100〜280℃の焼成によって行うこともまた、本発明の好適な実施形態の1つである。焼成温度が高い場合には、導電物質が凝集して結合することができず、充分な導電性が得られないおそれがある。焼成温度としてより好ましくは、150〜280℃であり、更に好ましくは、200〜280℃である。焼成時間としては、3時間以内であることが好ましく、より好ましくは、2時間以内であり、更に好ましくは、1時間以内である。
【0045】
本発明はまた、上記製造方法により製造される透明異方導電性膜でもある。上記製造方法により製造されたものであることにより、上記透明異方導電性膜は、導電性線部が間隔を空けて複数並び、導電性線部の線幅が狭く、かつ、導電性線部間の間隔も狭いものとなり、光透過性と異方導電性とに優れた透明異方導電性膜とすることができる。そのような透明異方導電性膜の好ましい形態としては、上述した本発明の透明異方導電性膜の好ましい形態と同様である。
【発明の効果】
【0046】
本発明の透明異方導電性膜の製造方法によって、光透過性と異方導電性とに優れた透明異方導電性膜を、簡易かつ安価に製造することができる。このようにして得られる透明異方導電性膜は、優れた光透過性と異方導電性とを有しているため、電子ペーパー等のディスプレイ等の各種電気機器に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】図1は、対向する2つの面の間隙に導電物質を含む有機溶媒分散体が挟持されるようにしつつ、該2つの面の少なくとも一方をもう一方の面に沿って移動させ、有機溶媒分散体からなる線状部が間隔を空けて複数並ぶパターンを形成する工程の一例を示す概念図である。
【図2】図2は、合成された金ナノ粒子の波長300〜800nmにおける吸収スペクトルを表したグラフである。
【図3】図3は、合成された金ナノ粒子のTEM画像である。
【図4】図4は、図3のTEM画像から個々の金ナノ粒子の粒子径を計測して作成したヒストグラムである。
【図5】図5は、合成された金ナノ粒子についてDSC測定を行った結果を示すグラフである。
【図6】図6は、ラインパターン(X−1)を作製するために行われた、金ナノ粒子ラインパターンの作製方法の概略を示す概念図である。
【図7】図7は、ラインパターン(X−1)をスライドガラスに載せた様子を表した写真である。
【図8】図8は、ラインパターン(X−1)〜(X−4)を観察した光学顕微鏡観察像である。
【図9】図9は、焼成ラインパターン(Y−5)〜(Y−8)を観察した光学顕微鏡観察像である。
【図10】図10は、焼成ラインパターン(Y−9)〜(Y−12)を観察した光学顕微鏡観察像である。
【図11】図11は、ラインパターンにおける金ナノ粒子の濃度と線状部の線幅との関係を示したグラフである。
【図12】図12は、ラインパターンにおける金ナノ粒子の濃度と線状部間の間隔との関係を示したグラフである。
【図13】図13は、ラインパターンにおけるスライドガラスの移動速度と線状部の線幅との関係を示したグラフである。
【図14】図14は、ラインパターンにおけるスライドガラスの移動速度と線状部間の間隔との関係を示したグラフである。
【図15】図15は、ラインパターンにおけるスライドガラス間の距離と線状部の線幅との関係を示したグラフである。
【図16】図16は、ラインパターンにおけるスライドガラス間の距離と線状部間の間隔との関係を示したグラフである。
【図17】図17は、焼成ラインパターン(Y−2−1)〜(Y−2−9)を観察した光学顕微鏡観察像である。
【図18】図18は、焼成ラインパターン(Y−2−8)、(Y−2−9)を観察した光学顕微鏡観察像である。
【図19】図19は、焼成ラインパターン(Y−2−2)、(Y−2−8)を観察したSEM写真である。
【図20】図20は、(a)が焼成ラインパターン(Y−2−2)の外観を表した写真であり、(b)が(a)の一部を観察した光学顕微鏡観察像である。
【図21】図21は、焼成ラインパターンにおける金ナノ粒子の濃度と線状部の線幅との関係を示したグラフである。
【図22】図22は、焼成ラインパターンにおける金ナノ粒子の濃度と線状部間の間隔との関係を示したグラフである。
【図23】図23は、(a)が焼成ラインパターン(Y−2−2)についてのAFM測定による表面形状像であり、(b)が電流像である。
【図24】図24は、抵抗値の測定のために作製された電極の様子を表す写真である。
【図25】図25は、焼成ラインパターン(Y−2−2)について、テスターを用いて異方導電性を調べている様子を表す写真である。
【図26】図26は、上図は作製したラインパターン(X−2)を、200℃で30分、1時間、2時間、3時間焼成した後の写真である。下図は上段が左から250℃で30分焼成した(X−2)、(Y−2−4)、(Y−2−5)、(Y−2−6)であり、下段は左から300℃で30分焼成した(X−2)、(Y−2−7)、(Y−2−8)、(Y−2−9)である。全てスライドガラス上に作製したものである。
【図27】図27は、焼成ラインパターン(Y−1)〜(Y−4)における350〜800nmの波長の光についての透過率を表したグラフである。
【図28】図28は、ラインパターン(X−2)及び焼成ラインパターン(Y−2)における300〜800nmの波長の光についての透過率を表したグラフである。
【図29】図29は、焼成ラインパターン(Y−1)〜(Y−4)における300〜800nmの波長の光についての透過率を表したグラフである。
【図30】図30は、焼成ラインパターン(Y−5)〜(Y−8)における300〜800nmの波長の光についての透過率を表したグラフである。
【図31】図31は、焼成ラインパターン(Y−9)〜(Y−12)における300〜800nmの波長の光についての透過率を表したグラフである。
【図32】図32は、焼成ベタ膜(Y´−1)〜(Y´−4)における300〜800nmの波長の光についての透過率を表したグラフである。
【図33】図33は、作製されたフレキシブル基板の様子を示した写真である。
【図34】図34は、作製したフレキシブル基板における300〜800nmの波長の光についての透過率を表したグラフである。
【図35】図35は、焼成ラインパターン(Y−1)〜(Y−4)を観察した光学顕微鏡写真である。
【図36】図36は、ラインパターン(X−5)〜(X−8)を観察した光学顕微鏡写真である。
【図37】図37は、ラインパターン(X−9)〜(X−12)を観察した光学顕微鏡写真である。
【図38】図38は、上段が作製したベタ膜の焼成前(X´−2)〜(X´−4)で、下段が焼成後(Y´−2)〜(Y´−4)を観察した光学顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0049】
<金ナノ粒子の合成>
金ナノ粒子は、M. Brust、M. Walker、D. Bethell、David J. Schiffrin、R. Whyman、Journal of the Chemical Society, Chemical Communications、1994年、p.801に記載の作製法に従って作製した。塩化金酸水溶液(30mL、30mM)とテトラオクチルアンモニウムブロミドのトルエン溶液(80mL、50mM)とを混合し、塩化金酸が有機相に移動するまで30分間激しく撹拌した。その後、溶液を激しく撹拌しながら、ドデカンチオールを170mg加え、最後にヒドロホウ素化ナトリウム水溶液(25mL、0.4M)をゆっくりと加え、さらに3時間激しく撹拌した。有機相を取り出し、数mLになるまで溶液を濃縮した。そこにエタノールを150mL加え、−18℃で2時間静置し、遠心分離により沈殿物を得た。その後エタノールで3回洗浄し、茶色の金ナノ粒子を得た。作製した金ナノ粒子のキャラクタリゼーションにはTEM、UV−visible(紫外−可視光)分光光度計、DSC(示差走査熱量計)を用いた。
【0050】
<金ナノ粒子のキャラクタリゼーション>
得られた金ナノ粒子の300〜800nmの波長の光についての吸収スペクトルを、分光光度計(商品名「V−670」、日本分光社製)を用いて測定した。測定結果を図2に示す。この結果より、520nm付近にプラズモン吸収ピークを持つ金ナノ粒子が形成されていることが示された。なお、図2のグラフ中に挿入されている写真は、吸収スペクトルを測定した金ナノ粒子サンプルの外観を示した写真である。
得られた金ナノ粒子をTEM(製品名:H−7650、日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて20万倍にて観察した結果を図3に示す(100kV)。そしてTEM画像から個々の金ナノ粒子の粒子径を計測し作成したヒストグラムを図4に示す。この結果から、金ナノ粒子の平均粒子径が3.3nmであることが確認された。
また、得られた金ナノ粒子について示差走査熱量測定(DSC測定)を下記装置及び測定条件により行った結果を図5に示す。この結果から、200℃付近でドデカンチオールの脱離、金ナノ粒子の凝集が始まることが示された。
DSC装置:DSC822e(メトラー・トレド社製)
測定条件
25℃〜250℃、10℃/分
作製した金ナノ粒子20.9mgをアルミナパンに入れ、窒素ガスを40mL/分で流して測定を行った。
【0051】
<金ナノ粒子ラインパターンの作製>
ラインパターンを作製するために、非特許文献1に記載されている、2枚の基板を精密に移動させることのできる装置を用いた。2枚のスライドガラスを基板ホルダに設置して、ドデカンチオール被覆金ナノ粒子のクロロホルム分散液(金ナノ粒子の濃度:1.0g/L)をスライドガラス間のギャップ(100μm)に注入し、一方の基板を100μm/sの一定の速度で水平方向にスライドさせた。この様子を図6に示す。この手法により、メニスカス(凸部)24のクロロホルム分散液23に含まれるクロロホルムが蒸発し、金ナノ粒子が断続的にスライドガラス22上に析出したラインパターン(X−1)を作製した。
【0052】
金ナノ粒子の濃度が2.5g/L、5.0g/L、10g/Lとなるようにしたドデカンチオール被覆金ナノ粒子のクロロホルム分散液を用いた以外は、ラインパターン(X−1)と同様にして、それぞれラインパターン(X−2)〜(X−4)を作製した。
【0053】
図7は、ラインパターン(X−1)をスライドガラスに載せた様子を表した写真である。ラインパターン(X−1)と同様に、ラインパターン(X−2)〜(X−4)についてもスライドガラスに載せ、図7中の(1)〜(3)の位置について、ラインパターン(X−1)〜(X−4)を500倍の倍率により観察した光学顕微鏡観察像が図8である。図8中、pitchは線状部間の間隔を、widthは線状部の線幅をそれぞれ表している。全ての金ナノ粒子濃度において界面の進行方向に対して垂直に金ナノ粒子のラインパターンが形成された。
【0054】
ドデカンチオール被覆金ナノ粒子のクロロホルム分散液(金ナノ粒子の濃度:1.0g/L)を用いて、スライドガラスの移動速度を50、100、150、200μm/sとした以外は、ラインパターン(X−1)の作製と同様にして、ラインパターン(X−5)〜(X−8)を作製した。
【0055】
ラインパターン(X−5)〜(X−8)を図7に示したラインパターン(X−1)と同様にスライドガラスに載せ、図7中の(1)〜(3)の位置について、ラインパターン(X−5)〜(X−8)を500倍の倍率により観察した光学顕微鏡観察像が図36である。
【0056】
ドデカンチオール被覆金ナノ粒子のクロロホルム分散液(金ナノ粒子の濃度:1.0g/L)を用いて、スライドガラス間の距離(ギャップ)を±0、100、150、200μmとした以外は、ラインパターン(X−1)の作製と同様にして、ラインパターン(X−9)〜(X−12)を作製した。
なお、スライドガラス間の距離が±0であるとは、スライドガラス間に隙間が無く接していることを意味するものではなく、測定不能な程に接近しているがわずかには間隙が存在することを表している。
【0057】
ラインパターン(X−9)〜(X−12)を図7に示したラインパターン(X−1)と同様にスライドガラスに載せ、図7中の(1)〜(3)の位置について、ラインパターン(X−9)〜(X−12)を500倍の倍率により観察した光学顕微鏡観察像が図37である。
【0058】
ラインパターン(X−1)〜(X−12)について、図7中の(1)〜(3)の各位置における線状部の線幅及び線状部間の間隔を下記の測定方法により求めた。
透明異方導電性膜の表面を光学顕微鏡(キーエンス社製、VHX−900)にて倍率500倍で観察し、観察した画像から直接導電性線部の線幅、導電性線部間の間隔を測定した。
【0059】
ラインパターン(X−1)〜(X−4)についての線状部の線幅及び線状部間の間隔の測定結果から、金ナノ粒子の濃度と線状部の線幅との関係を示したグラフが図11であり、金ナノ粒子の濃度と線状部間の間隔との関係を示したグラフが図12である。図11から、金ナノ粒子の濃度が高い時ほど、線状部の線幅が広くなることが分かった。また、図12から、金ナノ粒子の濃度を変化させても、線状部間の間隔はそれほど変化しないことが分かった。
なお、(1)〜(3)の3カ所について測定を行ったが、全ての場所で同様の傾向が見られた。濃度が大きくなるほど線幅が大きくなる様子が観察されたので、さらに濃度を大きくすると、平膜となることが予想される。濃度を変化させることで、透明性に大きな影響を与える線幅を制御することができる。
【0060】
ラインパターン(X−5)〜(X−8)についての線状部の線幅及び線状部間の間隔の測定結果から、スライドガラスの移動速度と線状部の線幅との関係を示したグラフが図13であり、スライドガラスの移動速度と線状部間の間隔との関係を示したグラフが図14である。図13から、スライドガラスの移動速度が速い時ほど、線状部の線幅が狭くなることが分かった。また、図14から、スライドガラスの移動速度が速い時ほど、線状部間の間隔は広くなることが分かった。
なお、測定する位置(図7中の(1)〜(3)の各位置)を変えても、スライドガラスの移動速度と線状部の線幅との関係、及び、スライドガラスの移動速度と線状部間の間隔との関係は同様の傾向を示した。スライド速度を速くすると線幅が小さく、線間隔が大きくなる様子が観察された。スライド速度を速くするほど、メニスカス先端の溶液量が減るので、線幅が小さくなると考えられる。また速くするほどメニスカス先端での固定化が起こる頻度が減ることで線間隔が大きくなると考えられる。ただし、スライド速度を大きくすると、スライド速度に対してクロロホルムの蒸発が間に合わなくなってしまうので注意が必要である。
【0061】
ラインパターン(X−9)〜(X−12)についての線状部の線幅及び線状部間の間隔の測定結果から、スライドガラス間の距離と線状部の線幅との関係を示したグラフが図15であり、スライドガラス間の距離と線状部間の間隔との関係を示したグラフが図16である。図15から、スライドガラス間の距離を変化させても、線状部の線幅はそれほど変化しないことが分かった。また、図16から、スライドガラス間の距離を変化させても、線状部間の間隔はそれほど変化しないことが分かった。
なお、測定する位置(図7中の(1)〜(3)の各位置)を変えても、スライドガラス間の距離と線状部の線幅との関係、及び、スライドガラス間の距離と線状部間の間隔との関係は同様の傾向を示した。
スライドガラス間の距離を変化させても±0μm以外では大きな違いが見られなかった。これはスライドガラス間の距離の制御が非常に難しいためである。スライド装置にスライドガラスを設置する際、基板をホルダに挟むが、このときスライドガラスが必ずしも水平ではないこと、また水平でない時の角度を制御するのは非常に難しく、常にスライドガラス間の距離を一定とするのが難しいためこのような結果になったと考えられる。
【0062】
(実施例1)
<焼成条件>
作製した金ナノ粒子ラインパターン(X−2)を、卓上マッフル炉(KDF007EX、デンケン社製)を用いて200℃で2時間焼成し、焼成ラインパターン(Y−2−1)を作製した。
【0063】
(実施例2〜9)
焼成温度、焼成時間を表1に示したように変更した以外は、焼成ラインパターン(Y−2−1)の作製と同様にして、焼成ラインパターン(Y−2−2)〜(Y−2−9)を作製した。
【0064】
【表1】
【0065】
図17は、焼成ラインパターン(Y−2−1)〜(Y−2−9)を500倍の倍率により観察した光学顕微鏡観察像である。図18は、焼成ラインパターン(Y−2−8)、(Y−2−9)を500倍の倍率により更に拡大して観察した光学顕微鏡観察像である。図17及び図18から、200℃、250℃で焼成した際には、焼成前のパターン膜と形状に変化は見られないが、300℃で焼成した際には、線状部が200℃、250℃で焼成した際に比べて赤くなっており、部分的に切れて線がつながっていないように見える箇所が存在することが分かる。また、図19は、焼成ラインパターン(Y−2−2)、(Y−2−8)を450倍の倍率により観察したSEM写真である。図19中、Aは、焼成ラインパターン(Y−2−2)についてのSEM写真を、Bは、Aの一部を11000倍の倍率により更に拡大して観察したSEM写真を、Cは、焼成ラインパターン(Y−2−8)についてのSEM写真を、Dは、Cの一部を3000倍の倍率により更に拡大して観察したSEM写真をそれぞれ表している。
焼成ラインパターン(Y−2−2)の写真を図20(a)に、その一部を500倍の倍率により観察した光学顕微鏡観察像を(b)に示す。図20(a)中の、R1及びR2は、後述する抵抗値R1、R2の向きを表している。
(Y−2−8)を拡大したSEM写真であるDより明らかに導電性線部がつながっていない様子が観察された。これはナノ粒子が凝集後、ディウェッティングしてしまった結果であると考えられる。
【0066】
(実施例10〜13)
作製した金ナノ粒子ラインパターン(X−1)〜(X−4)を、卓上マッフル炉(KDF007EX、デンケン社製)を用いて200℃で2時間焼成し、焼成ラインパターン(Y−1)〜(Y−4)を作製した。
得られた焼成ラインパターン(Y−1)〜(Y−4)について、線状部の線幅及び線状部間の間隔を上述した測定方法により求めた。
【0067】
焼成ラインパターン(Y−1)〜(Y−4)についての線状部の線幅及び線状部間の間隔の測定結果から、金ナノ粒子の濃度と線状部の線幅(width)との関係を示したグラフが図21であり、金ナノ粒子の濃度と線状部間の間隔(pitch)との関係を示したグラフが図22である。図21及び図22から、金ナノ粒子の濃度が高くなるにつれ、線状部間の間隔は小さくなり、線状部の線幅は広くなった。このことから、更に金ナノ粒子の濃度を高くすると、撥水(ディウェッティング)しきらずにラインパターンではなく平膜が形成されることが予想される。
【0068】
(実施例14〜21)
作製した金ナノ粒子ラインパターン(X−5)〜(X−12)を、卓上マッフル炉(KDF007EX、デンケン社製)を用いて200℃で2時間焼成し、焼成ラインパターン(Y−5)〜(Y−12)を作製した。
【0069】
<焼成ラインパターンの導電性>
焼成ラインパターンについて、導電性の評価を行った。導電性の評価としては、まず導電性AFM測定を以下のようにして行った。
導電性AFM測定としては、走査型プローブ顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)を用いて、表面形状像、電流像の観察を行った。カンチレバーは、オリンパス社製のOMCL−TR800をオスミウムスパッタしたものを用いた。
測定条件:
導電測定AFMホルダ(セイコーインスツル社製)を用いて測定した。焼成後のサンプルを約1cm角に切り出し、端部をドータイト銀ペーストで固定した。オスミウムスパッタした探針を用い、探針と基板の間にバイアス電圧10Vを印加して表面形状像と電流像の同時測定を行った。スキャン範囲は100μm四方である。焼成ラインパターン(Y−2−2)について、AFM測定による表面形状像を図23(a)に、電流像を図23(b)に示す。この結果から、作製した焼成ラインパターン(Y−2−2)上を電流が流れていることが示された。
【0070】
また、作製した焼成ラインパターン上にマスクを介して金を蒸着又はスパッタリングすることで四端子電極を作製し、四端子法を用いて抵抗値を測定した。そして、得られた抵抗値から電気抵抗率、電気伝導率を算出した。四端子測定は、線状部のラインパターンに対して水平方向と垂直方向との二方向に対して行った。線状部と水平方向における抵抗値をR1、線状部と垂直方向における抵抗値をR2と定義し、図24に示したようにマスクを用いて電極を作製した。まず異方性があるかどうかを調べるために、ラインパターンの両端に4点ずつドータイト銀ペーストを塗った。図25は銀ペーストを電極として、テスターで導通するかを確認している写真である。図25中、(1)は、ラインと水平方向、(2)は、(1)と同様にラインと水平方向で(1)とは別の場所、(3)は、(1)、(2)と同様にラインと水平方向で(1)、(2)とは別の場所、(4)は、ラインと垂直方向、(5)は、ラインと斜め方向で抵抗値を測定している様子を表している。ラインと水平方向のみ抵抗値が得られた。この結果とAFMの結果から、作製した焼成ラインパターン上を電流が流れており、ラインのつながっていないラインと垂直方向には電流が流れていないことが示された。次に四端子法により正確な抵抗値を測定した。焼成ラインパターン(Y−2)の場合、水平方向の抵抗値R1は、R1=213Ωであった。この値から、電気抵抗率ρ1=6.34×10−4Ω・cm、電気伝導率σ1=1.58×103S/cmであった。一方、垂直方向の抵抗値R2は、装置の測定限界以上(R2>211MΩ)であった。これらの結果から、作製した焼成ラインパターン(Y−2)は面内に異方導電性を持つことが示された。なお、金ナノ粒子濃度が1.0g/Lである焼成ラインパターン(Y−1)の場合は導通せず、5.0g/L、10g/Lである焼成ラインパターン(Y−3)、(Y−4)は、焼成ラインパターン(Y−2)と同様に面内に異方導電性を有した。
電気抵抗率、電気伝導率は四端子法を用いて測定した抵抗値の値から算出することができる。本発明の異方導電性膜上に図24中央に示すようなマスクを介して金を蒸着またはスパッタリングすることで四端子電極を作製し、測定を行うことで抵抗値を測定することが出来る。得られた抵抗値から、下記式の通り、電気抵抗率を算出することが出来る。下記式でR[Ω]は四端子法で測定した抵抗値、H[cm]はAFMにより測定した導電性線部の平均高さ、W[cm]は上述した方法で測定した、作製した電極間に存在する各導電性線部の線幅の合計、A[cm2]は作製した各導電性線部の断面積の合計、L[cm]は端子間距離、ρ[Ω・cm]は電気抵抗率、σ[S・cm−1]は電気導電率を表す。
A=WH[cm2]
ρ=RA/L[Ω・cm]
σ=1/ρ[S・cm−1]
【0071】
また、焼成ラインパターン(Y−2−2)、(Y−2−5)、(Y−2−8)について、上述した焼成ラインパターン(Y−2)についての導電性の評価と同様にして、導電性を評価した。その様子を表した写真が図26である。図26中、下の図は8点にドータイト銀ペーストを塗った写真である。
焼成ラインパターン(Y−2−2)、(Y−2−5)、(Y−2−8)について、導電性を評価した結果、金ナノ粒子濃度が2.5g/Lの場合、200℃で焼成した時には、導通したが、250℃以上で焼成すると線状部が赤くなっており、粒子が接触していないことから、導通しなかったと考えられる。
【0072】
<焼成ラインパターンの透過率>
焼成ラインパターン(Y−1)〜(Y−4)について、透過率の評価を行った。透過率の評価には、分光光度計(商品名「V−670」、日本分光社製)を用いて、350〜800nmの波長の光について透過率を測定した(スライドガラスの透過率を100%とした。)。その結果を示した図が図27である。また、焼成前のラインパターン(X−2)及び焼成後のラインパターン(Y−2)について、分光光度計(商品名「V−530」、日本分光社製)を用いて、300〜800nmの波長の光について透過率を測定し(空気の透過率を100%とした。)、それらの透過率を比較したのが図28である。
図27の結果から、導通した焼成ラインパターンの中では金ナノ粒子の濃度が2.5g/Lである場合に最も透過率が高く、350〜800nmの可視光領域では透過率76%であった。そして、金ナノ粒子の濃度が高くなるほど透過率が下がっていくことが示された。また、導通しなかった金ナノ粒子の濃度が1.0g/Lの場合には、520nm付近にプラズモン吸収が見られたが、導通した金ナノ粒子の濃度が2.5〜10g/Lの場合には、プラズモン吸収は見られなかった。図28において、導通した焼成ラインパターン(Y−2)においても、焼成する前の(X−2)ではプラズモン吸収が見られ、焼成して金ナノ粒子同士が繋がることで、プラズモン吸収が減少することが示されており、これらのことから、金ナノ粒子の濃度が1.0g/Lの時には、金ナノ粒子同士が接触していなかったために導通しなかったと考えられる。
【0073】
また、焼成ラインパターン(Y−1)〜(Y−12)について、分光光度計(商品名「V−670」、日本分光社製)を用いて、300〜800nmの波長の光について透過率を測定した(空気の透過率を100%とした。)。焼成ラインパターン(Y−1)〜(Y−4)の透過率を測定した結果を図29に示す。焼成ラインパターン(Y−5)〜(Y−8)の透過率を測定した結果を図30に示す。焼成ラインパターン(Y−9)〜(Y−12)の透過率を測定した結果を図31に示す。本明細書において、透過率の測定結果を表すグラフにおいては、縦軸が透過率、横軸が光の波長を示している。
図28〜31の結果から、透過率には金ナノ粒子の濃度の影響が大きいことが分かった。また、ラインパターンを焼成して焼成ラインパターンとした時に導通するものは、497nmの波長の光の透過率が高く、導通しないものは、510nm付近に吸収ピークを有する(プラズモン吸収を示す)ことが分かった。
【0074】
また、ドデカンチオール被覆金ナノ粒子のクロロホルム分散液(金ナノ粒子の濃度:2.5 g/L)をスライドガラスに均一に塗工し、乾燥させることでベタ膜(X´−2)を作製した。
金ナノ粒子の濃度が2.5g/L、5.0g/L、10g/Lとなるようにしたドデカンチオール被覆金ナノ粒子のクロロホルム分散液を用いた以外は、ベタ膜(X´−2)と同様にして、それぞれベタ膜(X´−3)〜(X´−4)を作製した。
そして、作製したベタ膜(X´−2)〜(X´−4)を、卓上マッフル炉(KDF007EX、デンケン社製)を用いて200℃で2時間焼成し、焼成ベタ膜(Y´−2)〜(Y´−4)を作製し、焼成ラインパターン(Y−1)〜(Y−12)と同様に、分光光度計(商品名「V−670」、日本分光社製)を用いて、300〜800nmの波長の光について透過率を測定した(空気の透過率を100%とした。)。その測定結果を示した図が図32である。図32の結果から、パターンを形成せずにベタ膜とすることで497nmの波長の光の透過率が増加することが分かった。ただし、金ナノ粒子の濃度が低いほど透過率は大きく、濃度を高くするほどに透過率は減少していくことが分かった。これは、膜厚が厚くなっていくためであると考えられる。
図30はスライド速度を変化させて作製したラインパターンの透過スペクトルである。これらのサンプルは全て異方導電性を持ち、510nm付近に吸収は見られなかった。また透過率にそれほど大きな変化はなかった。図31はスライドガラス間の距離を変化させて作製したラインパターンの透過スペクトルである。ここで±0μmの時は導通せず、510nm付近に吸収が見られた。
【0075】
<フレキシブル基板の作製>
2枚のスライドガラスの代わりに、1枚のスライドガラス、1枚のポリエステルフィルム(商品名「東洋紡エステル(R)フィルム」、東洋紡社製)を用いた以外は、ラインパターン(X−1)と同様にラインパターンを作製し、卓上マッフル炉(KDF007EX、デンケン社製)を用いて200℃で2時間焼成することで、ポリエステルフィルム上にラインパターンを有する透明異方導電性フレキシブル基板を作製した。作製されたフレキシブル基板の写真が図33(a)及び(b)である。
【0076】
作製したフレキシブル基板について、分光光度計(商品名「V−530」、日本分光社製)を用いて、300〜800nmの波長の光について透過率を測定したところ、基板のポリエステルフィルムの透過率を100%とした場合の、フレキシブル基板の300〜800nmの可視光領域における透過率は73.5%であった。また、空気の透過率を100%とした場合の、フレキシブル基板の300〜800nmの可視光領域における透過率は59.4%であった。フレキシブル基板についての透過率の測定結果を図34に示す。
フレキシブル基板についての導電性については、上述した焼成ラインパターンの導電性の評価方法と同様にドータイト銀ペーストを塗り、それを電極として、テスターを用いて異方導電性を確認した。
【符号の説明】
【0077】
11、12:スライドガラス
13:有機溶媒分散体
21、22:スライドガラス
23:ドデカンチオール被覆金ナノ粒子のクロロホルム分散液
24:メニスカス
25:ラインパターン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電物質を含む導電性線部が間隔を空けて複数並ぶ透明異方導電性膜であって、
該透明異方導電性膜は、導電性線部の長軸方向における電気抵抗率が、1×10−2Ω・cm以下であり、導電性線部の長軸方向と直交する方向における電気抵抗率が、1×102Ω・cm以上であり、全光線透過率が50%以上であることを特徴とする透明異方導電性膜。
【請求項2】
前記導電性線部は、導電性微粒子を含むことを特徴とする請求項1に記載の透明異方導電性膜。
【請求項3】
前記透明異方導電性膜は、デジタルペーパーに用いられるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明異方導電性膜。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の透明異方導電性膜を透明基板上に形成させて得られることを特徴とする透明異方導電性基板。
【請求項5】
導電物質を含む導電性線部が間隔を空けて複数並ぶ透明異方導電性膜の製造方法であって、
該製造方法は、対向する2つの面の間隙に導電物質を含む有機溶媒分散体が挟持されるようにしつつ、該2つの面の少なくとも一方をもう一方の面に沿って移動させ、有機溶媒分散体からなる線状部が間隔を空けて複数並ぶパターンを形成する工程と、有機溶媒を揮発させて導電性線部を形成する工程とを含むことを特徴とする透明異方導電性膜の製造方法。
【請求項6】
前記製造方法は、対向する2つの面の間隙が0〜500μm、相対面移動速度が10〜500μm/s、有機溶媒分散体中の導電物質の濃度が0.5〜20g/Lで周期的パターンを形成することを特徴とする請求項5に記載の透明異方導電性膜の製造方法。
【請求項7】
前記製造方法は、有機溶媒を揮発させて導電性線部を形成する工程を100〜280℃の焼成によって行うことを特徴とする請求項5又は6に記載の透明異方導電性膜の製造方法。
【請求項1】
導電物質を含む導電性線部が間隔を空けて複数並ぶ透明異方導電性膜であって、
該透明異方導電性膜は、導電性線部の長軸方向における電気抵抗率が、1×10−2Ω・cm以下であり、導電性線部の長軸方向と直交する方向における電気抵抗率が、1×102Ω・cm以上であり、全光線透過率が50%以上であることを特徴とする透明異方導電性膜。
【請求項2】
前記導電性線部は、導電性微粒子を含むことを特徴とする請求項1に記載の透明異方導電性膜。
【請求項3】
前記透明異方導電性膜は、デジタルペーパーに用いられるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の透明異方導電性膜。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の透明異方導電性膜を透明基板上に形成させて得られることを特徴とする透明異方導電性基板。
【請求項5】
導電物質を含む導電性線部が間隔を空けて複数並ぶ透明異方導電性膜の製造方法であって、
該製造方法は、対向する2つの面の間隙に導電物質を含む有機溶媒分散体が挟持されるようにしつつ、該2つの面の少なくとも一方をもう一方の面に沿って移動させ、有機溶媒分散体からなる線状部が間隔を空けて複数並ぶパターンを形成する工程と、有機溶媒を揮発させて導電性線部を形成する工程とを含むことを特徴とする透明異方導電性膜の製造方法。
【請求項6】
前記製造方法は、対向する2つの面の間隙が0〜500μm、相対面移動速度が10〜500μm/s、有機溶媒分散体中の導電物質の濃度が0.5〜20g/Lで周期的パターンを形成することを特徴とする請求項5に記載の透明異方導電性膜の製造方法。
【請求項7】
前記製造方法は、有機溶媒を揮発させて導電性線部を形成する工程を100〜280℃の焼成によって行うことを特徴とする請求項5又は6に記載の透明異方導電性膜の製造方法。
【図1】
【図4】
【図5】
【図6】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図21】
【図22】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図34】
【図2】
【図3】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図33】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図4】
【図5】
【図6】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図21】
【図22】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図34】
【図2】
【図3】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図33】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【公開番号】特開2012−54078(P2012−54078A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195198(P2010−195198)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]