説明

透明被膜付基材および透明被膜形成用塗布液

【課題】従来の透明被膜付基材と比べ、防眩性に優れた透明被膜付基材を提供すること。
【解決手段】基材と、基材上に形成された透明被膜とからなり、該透明被膜がマイクロリング状無機酸化物粒子とマトリックス成分を含み、マイクロリング状無機酸化物粒子が透明被膜の上部に偏在し、少なくともマイクロリング状無機酸化物粒子の一部が透明被膜表面にリング状凸部を形成して存在し、該凸部の高さ(H凸)が0.1〜1μmの範囲にある透明被膜付基材。前記マイクロリング状無機酸化物粒子の平均外径(DO)が0.5〜20μmの範囲にあり、貫通孔の平均径(DI)が0.18〜12μmの範囲にあり、リング幅(WR)と平均外径(DO)との比(WR)/(DO)が0.2〜0.45の範囲にあり、リングの厚み(Wh)は平均外径(DO)以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に貫通孔を有するマイクロリング状無機酸化物粒子が、透明被膜表面にリング状凸部を形成して存在するために防眩性を有し、且つ、膜強度、耐擦傷性、基材との密着性、耐水性、耐薬品性等に優れた透明被膜付基材および該透明被膜を形成するための塗布液とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ガラス、プラスチックシート、プラスチックレンズ等の基材表面の耐擦傷性を向上させるため、基材表面にハードコート機能を有する透明被膜を形成することが知られており、このような透明被膜として有機樹脂膜あるいは無機膜をガラスやプラスチック等の表面に形成することが行われている。さらに、有機樹脂膜あるいは無機膜中に樹脂粒子あるいはシリカ等の無機粒子を配合してさらに耐擦傷性を向上させることが行われている。また、このようなハードコート膜付の樹脂基材を表示装置前面板等に貼り付けて使用される場合がある。
【0003】
特に、表示装置等に使用する場合、ハードコート性に加えて反射防止性能、防眩性能が要求されている。
反射防止性能を付与するためには、表面に低屈折率の透明被膜を形成することが行われており(特開2002−79616号公報)、防眩性能を付与するためには凹凸を有する基板上に透明被膜を形成したり(特開2009−128488号公報)、透明被膜の膜厚より大きな粒子を用いて表面に凹凸を形成したりすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−79616号公報
【特許文献2】特開2009−128488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、表面に凹凸は形成できても、塗布液法では表面が平坦化する傾向にあり、再現性よく充分な防眩性を有する透明被膜を得ることができない場合があった。また従来公知の球状粒子では、表面に凸部が形成できても、防眩性に必要な凹凸を形成できず、防眩性に優れた透明被膜を得ることは困難であって。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、このような問題点に鑑み鋭意検討した結果、従来より使用されていた粒子形状とは異なり、ドーナツ形状(マイクロリング状)を採用し、しかも、表層に偏在させることによって防眩性に必要な凹凸をを有する透明被膜を形成できると考えた。
【0007】
そして、マイクロリング状粒子と、該マイクロリング状粒子と相溶性の低いマトリックス形成成分とを含む塗布液を基材に塗布し、乾燥すると貫通孔を有するマイクロリング状粒子が透明被膜表面にリング状に凸部を形成して偏在し、十分な防眩性を発揮できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0008】
[1]基材と、基材上に形成された透明被膜とからなり、
該透明被膜がマイクロリング状無機酸化物粒子とマトリックス成分を含み、マイクロリング状無機酸化物粒子が透明被膜の上部に偏在し、少なくともマイクロリング状無機酸化物粒子の一部が透明被膜表面にリング状凸部を形成してなり、該凸部の高さ(H凸)が0.1〜1μmの範囲にあることを特徴とする透明被膜付基材。
[2]前記マイクロリング状無機酸化物粒子の平均外径(DO)が0.5〜20μmの範囲にあり、貫通孔の平均径(DI)が0.18〜12μmの範囲にあり、リング幅(WR)と平均外径(DO)との比(WR)/(DO)が0.2〜0.45の範囲にあり、リングの厚み(Wh)は平均外径(DO)以下である[1]の透明被膜付基材。
[3]前記マイクロリング状無機酸化物粒子の表面電荷量(QPM)が3〜30μeq/gの範囲にある[1]〜[3]の透明被膜付基材。
[4]前記マトリックス成分が有機樹脂系マトリックス成分である[1]〜[3]の透明被膜付基材。
[5]前記有機樹脂系マトリックス成分が疎水性有機樹脂マトリックス成分である[1]〜[4]の透明被膜付基材。
[6]前記疎水性有機樹脂マトリックス成分が、親水性官能基を有さないものであるか、アルキル基、ビニル基、ウレタン基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、CF2基からなる群から選ばれる少なくとも1種の疎水性官能基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステル樹脂からなる[1]〜[5]の透明被膜付基材。
[7]さらにマトリックス成分として親水性有機樹脂マトリックス成分を含み、親水性有機樹脂マトリックス成分が透明被膜の下層に偏在し、疎水性有機樹脂マトリックス成分が上層に偏在する[5]または[6]の透明被膜付基材。
【0009】
[8]前記親水性有機樹脂マトリックス成分が水酸基(OH基)、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル樹脂からなる[7]の透明被膜付基材。
[9]前記親水性有機樹脂マトリックス成分からなる下層が金属酸化物粒子を含有し、該金属酸化物粒子の平均粒子径が5〜500nmの範囲にあり、表面電荷量(QMO)が30〜120μeq/gの範囲にある[7]または[8]の透明被膜付基材。
[10]前記金属酸化物粒子がシリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、五酸化アンチモン、ボリアおよびこれらの複合酸化物からなる[1]〜[9]の透明被膜付基材。
[11]前記透明被膜の膜厚(Th)が0.5〜20μmの範囲にある[1]〜[10]の透明被膜付基材。
[12]マイクロリング状無機酸化物粒子とマトリックス形成成分と有機分散媒とからなることを特徴とする透明被膜形成用塗布液。
[13]前記マイクロリング状無機酸化物粒子の平均外径(DO)が0.5〜20μmの範囲にあり、貫通孔の平均径(DI)が0.18〜12μmの範囲にあり、リング幅(WR)と平均外径(DO)との比(WR)/(DO)が0.2〜0.45の範囲にあり、リングの厚み(Wh)は平均外径(DO)以下である[12]の透明被膜形成用塗布液。
[14]前記マイクロリング状無機酸化物粒子の表面電荷量(QP)が3〜30μeq/gの範囲にある[12]または[13]の透明被膜形成用塗布液。
[15]前記マトリックス形成成分が有機樹脂系マトリックス形成成分である[12]〜[14]の透明被膜形成用塗布液。
【0010】
[16]前記有機樹脂系マトリックス形成成分が疎水性有機樹脂マトリックス形成成分である[12]〜[15]の透明被膜形成用塗布液。
[17]前記疎水性有機樹脂マトリックス形成成分が、親水性官能基を有さないものであるか、アルキル基、ビニル基、ウレタン基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、CF2基からなる群から選ばれる少なくとも1種の疎水性官能基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステル樹脂である[12]〜[16]の透明被膜形成用塗布液。
[18]さらに親水性有機樹脂マトリックス形成成分を含み、該親水性有機樹脂マトリックス形成成分が水酸基(OH基)、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基等の親水性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル樹脂であることを特徴とする[12]〜[17]の透明被膜形成用塗布液。
[19]さらに、金属酸化物粒子を含み、該金属酸化物粒子の平均粒子径が5〜500nmの範囲にあり、表面電荷量(QMO)が30〜120μeq/gの範囲にある[12]〜[18]の透明被膜形成用塗布液。
[20]前記金属酸化物粒子の表面電荷量(QMO)と前記マイクロリング状無機酸化物粒子の表面電荷量(QP)との差(QMO)−(QP)が20〜100μeq/gの範囲にある[12]〜[19]の透明被膜形成用塗布液。
[21]前記有機分散媒が、沸点の異なる2種以上の混合分散媒であり、一方が疎水性分散媒であり、他方が親水性分散媒である[12]〜[20]の透明被膜形成用塗布液。
[22]前記混合分散媒の最高沸点の分散媒が疎水性分散媒である[12]〜[21]の透明被膜形成用塗布液。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、透明被膜のマイクロリング状粒子に由来する凹凸が形成できるので、従来の透明被膜付基材と比べ、防眩性に優れた透明被膜付基材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のマイクロリング状無機酸化物粒子の概略モデル図を示す。
【図2】実施例1で得られたマイクロリング状シリカ粒子の拡大SEM写真を示す。
【図3】実施例1で得られたマイクロリング状シリカ粒子のSEM写真を示す。
【図4】本発明にかかる透明被膜付基材の一態様の概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、先ず、透明被膜付基材について説明する。
[透明被膜付基材]
本発明に係る透明被膜付基材は、基材と、基材上に形成された透明被膜とからなり、該透明被膜がマイクロリング状無機酸化物粒子とマトリックス成分を含み、マイクロリング状無機酸化物粒子が透明被膜の上部に偏在し、少なくともマイクロリング状無機酸化物粒子の一部が透明被膜表面にリング状凸部を形成している。
【0014】
基材
本発明に用いる基材としては、従来公知のものを特に制限なく使用することが可能であり、ガラス、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、シクロポリオレフィン、ノルボルネン等のプラスチックシート、プラスチックフィルム等、プラスチックパネル等があげられる。中でも樹脂系基材を好適に用いることができる。また、このような基材上に、他の被膜が形成された被膜付基材を用いこともできる。他の被膜としては従来公知のプライマー膜、ハードコート膜、高屈折率膜、導電性膜等が挙げられる。
【0015】
マイクロリング状無機酸化物粒子
本発明に用いるマイクロリング状無機酸化物粒子は、平均外径(DO)が0.5〜20μmの範囲にあり、貫通孔の平均径(DI)が0.18〜12μmの範囲にあり、リング幅(WR)と平均外径(DO)との比(WR)/(DO)が0.2〜0.45の範囲にあることを特徴としている。本発明に係るマイクロリング状無機酸化物粒子は貫通孔を有している。
【0016】
本発明では、このようなマイクロリング状粒子は、透明被膜中で、表面に偏在し、凹凸を形成している。なお、凹凸を球状粒子などで形成する場合、凹凸は球状粒子による1次元の点で形成されるのに対し、マイクロリング状粒子を用いる場合、リングに由来する凹凸が2次元の線となる。これによって、防眩性を高めることが可能となると考えられる。
【0017】
マイクロリング状無機酸化物粒子の平均外径(DO)は0.5〜20μmの範囲にあり、さらには1〜20μmの範囲にあることが好ましい。平均外径が前記範囲の下限未満のものは、得ること自体が困難であり、また貫通孔を設けることも難しくなる。加えて、防眩性が不充分となる場合がある。
【0018】
平均外径の上限は特に制限されるものではないが、前記範囲の上限を越えると、やはり防眩性が不充分となる場合があり、さらに、透明被膜形成用塗布液に用いた場合に容易に沈降したり分離する場合があり、得られる透明被膜の透明性やヘーズ、膜強度、耐擦傷性、基材との密着性が不充分となる場合がある。
【0019】
貫通孔の平均径(DI)は、外径にもよるが、0.18〜12μm、さらには0.25〜10μmの範囲にあることが好ましい。また、リング幅(WR)と平均外径(DO)との比(WR)/(DO)が0.2〜0.45、さらには0.25〜0.4の範囲にあることが好ましい。
【0020】
貫通孔を前記範囲の下限未満にすると球状ないし平板状の粒子と何ら変わることが無く、防眩性が得られない場合がある。貫通孔が大きすぎると、外径にもよるが、充分な防眩性が得られない場合がある。
【0021】
(WR)/(DO)が小さすぎると、粒子径にもよるが充分な防眩性が得られない場合があり、また、粒子径の割にリング幅が狭いので粒子強度が低く、透明被膜に用いると膜強度、耐擦傷性等が低下する場合がある。(WR)/(DO)が大きすぎても、粒子径にもよるが充分な防眩性が得られない場合がある。
【0022】
またリングの厚み(Wh)は、平均外径(DO)を越えることなく、通常Wh/DOは、1以下、好ましくは0.25〜0.75の比率にあることが望ましい。
前記した平均外径(DO)、貫通孔の平均径(DI)およびリング幅(WR)は、粒子の電子顕微鏡写真を撮影し、100個の粒子について平均外径(DO)、貫通孔の平均径(DI)およびリング幅(WR)測定し、その平均値として得られる。
【0023】
図1に、本発明に係るマイクロリング状無機酸化物粒子の平面モデル図を示す。
図1中、DOは外径を表し、DIは貫通孔の径を表し、WRはリング幅を表す。
マイクロリングを構成する無機酸化物としては、マイクロリング状無機酸化物粒子が得られれば特に制限はないが、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカ・アルミナ、シリカ・ジルコニア等の酸化物、複合酸化物等が挙げられる。
【0024】
本発明では、シリカまたはシリカとシリカ以外の酸化物とからなる複合酸化物が好ましい。複合酸化物としてはシリカ・アルミナ、シリカ・ジルコニア、シリカ・ボリア等が挙げられる。複合酸化物の場合、シリカの含有量が50重量%以上のものが好ましい。
【0025】
このようなシリカ、あるいはシリカを主成分とする複合酸化物(以下、シリカ系無機酸化物ということがある。)以外の酸化物、複合酸化物では、必ずしも所望のマイクロリング状無機酸化物粒子を得ることができないこともある。
【0026】
本発明に用いるマイクロリング状粒子は、通常2次粒子(すなわち複数の一次粒子の集合体)がリング状を形成している。このようなマイクロリング状粒子の電子顕微鏡写真を図2および3に示す。図2および3は実施例1で得られたマイクロリング状粒子の電子顕微鏡写真(SEM)である。
【0027】
この場合、2次粒子は、通常3〜100nm、さらには5〜50nmの一次粒子から構成されることが望ましい。
つぎに、本発明に用いる前記マイクロリング状無機酸化物粒子の表面電荷量(QPM)が3〜30μeq/g、さらには2〜25μeq/gの範囲にあることが好ましい。
【0028】
マイクロリング状無機酸化物粒子の表面電荷量(QPM)が小さすぎると、後述する有機樹脂マトリックス成分への分散性が不充分となり、透明被膜形成用塗布液を塗布し、乾燥した際に透明被膜表面に均一に分散してリング状凸部を形成できないために防眩性が不充分となる場合がある。マイクロリング状無機酸化物粒子の表面電荷量(QPM)が大きすぎても、後述する有機樹脂マトリックス成分、特に疎水性有機樹脂マトリックス成分への分散性が不充分となり、透明被膜形成用塗布液を塗布し、乾燥した際に透明被膜表面に均一に分散できずリング状凸部を形成できないために防眩性が不充分となる場合がある。
【0029】
マイクロリング状無機酸化物粒子の表面電荷量(QPM)が前記範囲にあれば、透明被膜表面に均一に分散したリング状凸部を形成できるので防眩性に優れた透明被膜を得ることができる。
【0030】
本発明での前記表面電荷量の測定方法は、表面電位滴定装置(Mutek(株) :pcd-03)を用いて、粒子の分散液を0.001Nのpoly-塩化ジアリルジメチルアンモニウムを用いて滴定し、粒子単位重量当たりの表面電荷量(μeq/g)として求める。
【0031】
マイクロリング状無機酸化物粒子の製造方法
このようなマイクロリング状無機酸化物粒子は、上記した粒子径(平均外径)、貫通孔等を有する粒子が得られれば特に制限はないが、本発明のマイクロリング状無機酸化物粒子の製造方法としては、特願2008-334181号明細書に記載された以下の方法が好ましい。
【0032】
先ず、平均粒子径が概ね3〜100nmの従来公知の前記した無機酸化物ゾルを噴霧乾燥して、少なくとも表面に窪み(凹部)を有する粒子を調製する。噴霧乾燥方法としては、例えば、本願出願人の出願による特開昭61−174103号公報に開示した方法に準拠して製造することができる。
【0033】
この時、噴霧乾燥雰囲気の温度は、噴霧する無機酸化物ゾルの濃度によっても異なるが、概ね20〜150℃、好ましくは30〜120℃の範囲にあることが好ましい。
噴霧乾燥雰囲気の温度が20℃未満の場合は所望の貫通孔または凹部ができない場合があり、150℃を越えるとリングが薄くなりすぎたり、破壊した破片状(お椀状)の粒子となる場合がある。
【0034】
また、無機酸化物ゾルの濃度は、無機酸化物ゾルの種類、粒子の大きさによっても異なるが0.1〜50重量%、さらには1〜20重量%の範囲にあることが好ましい。
無機酸化物ゾルの濃度が低過ぎても、高すぎても噴霧乾燥で貫通孔または凹部を有する粒子が得られず、単なる微粒子が得られる場合がある。
【0035】
また、必要に応じて噴霧乾燥雰囲気の湿度を調節することができる。この時の湿度は、乾燥速度を補助的に調節し、所望の貫通孔を生成させるためで、相対湿度は概ね3〜13vol%、好ましくは5〜9vol%の気流中に噴霧して乾燥する。
【0036】
なお、噴霧方法は特に制限はないが、アトマイザー法、ノズル法等従来公知の方法を採用することができる。
ついで、得られた粒子を酸または塩基で処理する。酸としては、粒子を構成する酸化物の種類によっても異なるが、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、有機酸等が挙げられ、塩基としてNaOH、KOH、アンモニア、第4級アンモニウムハイドロオキサイド等が挙げられる。
【0037】
酸または塩基で処理すると、凹部が浸食されて貫通孔が形成され、さらに貫通孔の大きさ、リング幅等を前記所望の大きさに調整することができる。
上記した製造方法で得られるマイクロリング状無機酸化物粒子の大きさは、平均粒子径が概ね0.5〜20μmである。
【0038】
表面処理
本発明に用いるマイクロリング状無機酸化物粒子は、表面電荷量(QPM)を調整する目的で、下記式(1)で表される有機ケイ素化合物で表面処理されていることが好ましい。
【0039】
n-SiX4-n (1)
(但し、式中、Rは炭素数1〜10の非置換または置換炭化水素基であって、互いに同一であっても異なっていてもよい。X:炭素数1〜4のアルコキシ基、水酸基、ハロゲン、水素、n:1〜3の整数)
【0040】
このような式(1)で表される有機珪素化合物としてはメチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル-3,3,3−トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β−(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシメチルトリエキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシエチルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシメチルトリエキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシエチルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラオクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、3-ウレイドイソプロピルプロピルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリイソプロポキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビストリメトキシシリルヘキサン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロオキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラノール、トリフェニルシラノール、トリメチルメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、n-オクチルジメチルクロロシラン等、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0041】
なかでも、nが1の有機珪素化合物で金属酸化物粒子が表面処理されていると、マイクロリング状無機酸化物粒子の表面電荷量(QP)が概ね前記範囲となる。さらに、該有機珪素化合物の処理量により表面電荷量(QP)を調節することができる。なお、nが1〜3の有機ケイ素化合物で表面処理する前に、nが0のテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシシラン、テトラブトキシシランなどの有機ケイ素化合物で表面処理しておくと、nが1〜3の有機ケイ素化合物で効率的に表面処理ができるので好ましい。なお、表面電荷量とするために、複数の表面処理剤を組合わせてもよい。
【0042】
また、粒子によって、表面電荷量(QP)が前記範囲にある場合、表面処理を行なわなくともよい。
有機珪素化合物による処理方法は、従来公知の方法を採用することができ、例えば、マイクロリング状無機酸化物粒子のアルコール分散液に前記有機珪素化合物を必要量加え、これに水を加え、必要に応じて加水分解用触媒として酸またはアルカリを加えて有機珪素化合物を加水分解することによって表面処理することができる。
【0043】
マトリックス成分
透明被膜に含まれるマトリックス成分としては有機樹脂マトリックス成分であることが好ましい。
【0044】
有機樹脂マトリックス成分として、たとえば、従来から用いられているポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、熱可塑性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーンゴムなどの熱可塑性樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、ケイ素樹脂、ブチラール樹脂、反応性シリコーン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、紫外線硬化型アクリル樹脂などの熱硬化性樹脂、紫外線硬化型アクリル樹脂などが挙げられる。さらにはこれら樹脂の2種以上の共重合体や変性体であってもよい。
【0045】
これらの樹脂は、エマルジョン樹脂、水溶性樹脂、親水性樹脂であってもよい。さらに、熱硬化性樹脂の場合、紫外線硬化型のものであっても、電子線硬化型のものであってもよく、熱硬化性樹脂の場合、硬化触媒が含まれていてもよい。本発明では、紫外線硬化型樹脂あるいは電子線硬化型樹脂が好適に用いられる。
【0046】
本発明では、有機樹脂マトリックスとして疎水性有機樹脂マトリックスが好適に用いられる。
疎水性有機樹脂マトリックス成分としては、親水性官能基を有さないものであるか、アルキル基、ビニル基、ウレタン基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、CF2基からなる群から選ばれる少なくとも1種の疎水性官能基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステル樹脂が挙げられ、具体的にはペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレートメチルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールジメタクルレート、エトキシ化ペンタエリストールテトラアクリレート、エトキシ化グリセリントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリストールポリアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,4ブタンジオールジメタクレート、1,9ノナンジオールジメタクレート、1,10デカンジオールジメタクレート、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、トリフロロエチルメテクリレート、フェニルグリシジルエーテルアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、フェニルグリシジルエーテルアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー等およびこれらの混合物が挙げられる。
【0047】
疎水性有機樹脂マトリックス成分を用いると、前記したマイクロリング状無機酸化物粒子が凝集することなく分散するとともに、透明被膜形成用塗布液を塗布し、乾燥した際に、マイクロリング状無機酸化物粒子が透明被膜表面に浮上してリング状凸部を形成する効率が高く、防眩性の高い透明被膜が得られる。加えて、マトリックス成分が疎水性であり、マイクロリング状無機酸化物粒子も比較的撥水性を有しているために耐水性に優れ、指紋付着性のない透明被膜が得られる。なお、本発明で撥水性とは、透明被膜上に水を滴下し、30分間放置した後、拭き取り、目視観察で水滴跡の有無、程度を意味する。
【0048】
本発明では、さらに親水性有機樹脂マトリックス成分を含み、透明被膜を形成したときに親水性有機樹脂マトリックス成分が被膜の下層に偏在し、疎水性有機樹脂マトリックス成分が上層に偏在していることが好ましい。親水性有機樹脂マトリックス成分としては水酸基(OH基)、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基等の親水性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル樹脂から選ばれる1種以上であることが好ましい。具体的には、ジエチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクレート、2−ヒドロキシプロピルメタクレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクレート、2−ヒドロキシ3フェノキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールジメタクリレート、ブトキシジエチレングリコールメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、テトラエチレンジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルアクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルアクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクロイロキシエチルコハク酸、2−アクロイロキシエチルフタル酸、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、2−アクロイロキシエチルアシッドフォスフェート、2ヒドロキシ−3フェノキシプロピルアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルメタクリル酸付加物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート、フェノールノボラック型エポキシアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルアクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルアクリレート、2ブチル−2エチル−1,3プロパンジオールジグリシジルエーテルアクリレート、2エチルヘキシルグリシジルエーテルアクリレート、O-フタル酸ジグリシジルエーテルアクリレート、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテルアクリレート、ジグリセリンポリグリシジルエーテルメタクレート、グリセリンポリグリシジルエーテルアクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルアクリレート、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルアクリレート、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテルアクリレート、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルアクリレートおよびこれらの混合物あるいはこれら樹脂の2種以上の共重合体や変性体であってもよい。親水性有機樹脂マトリックス成分を用いると、基材の種類によっては基材との密着性が向上する場合があり、耐擦傷性が向上する傾向がある。なお、上記マイクロリング状無機酸化物粒子は、疎水性有機樹脂マトリックス成分からなる上層に存在し、親水性有機樹脂マトリックス成分中は混和しにくい。
【0049】
親水性有機樹脂マトリックス成分からなる下層は、平均粒子径が5〜300nmの範囲にあり、表面電荷量(QMO)が30〜120μeq/gの範囲にある金属酸化物粒子を含有していることが好ましい。
【0050】
金属酸化物粒子としてはシリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、五酸化アンチモン、ボリアおよびこれらの複合酸化物からなる金属酸化物粒子、これらの混合物が好ましい。さらに、これら金属酸化物粒子が鎖状に連結した粒子を用いることもできる。
【0051】
用いる金属酸化物粒子の種類は、基材との密着性、透明性、耐擦傷性に加えて、透明被膜の屈折率、帯電防止性能、反射防止性能等を向上させる目的で適宜選択して用いることができる。
【0052】
金属酸化物粒子の平均粒子径が5〜500nm、さらには10〜300nmの範囲にあることが好ましい。
金属酸化物粒子の平均粒子径が小さいと、金属酸化物粒子が凝集することがあり、透明被膜中に均一に分散しない場合があり、このため基材との密着性、耐擦傷性を向上する効果が不充分となる場合があり、さらに透明被膜の透明性が損なわれる場合がある。金属酸化物粒子の平均粒子径が大きすぎても透明被膜のヘーズが悪化する傾向にある。
なお、金属酸化物粒子の平均粒子径は電子顕微鏡写真を撮影し、100個の粒子について粒子径を測定し、その平均値として、測定される。
【0053】
金属酸化物粒子の表面電荷量(QMO)が30〜120μeq/g、さらには40〜100μeq/gの範囲にあることが好ましい。金属酸化物粒子の表面電荷量(QMO)が小さいと、親水性有機樹脂マトリックス成分中への分散性が不充分となり、基材との密着性、耐擦傷性等が不充分となる場合がある。また、金属酸化物粒子の表面電荷量(QMO)が大きすぎても、疎水性溶媒中での分散性、安定性が低く、塗料の安定性が不充分となり、塗料中で金属酸化物粒子が凝集したり、膜を形成した際に膜が白化ししたり、被膜の硬度が不充分となることがある。
【0054】
金属酸化物粒子の表面電荷量(QMO)と前記マイクロリング状無機酸化物粒子の表面電荷量(QP)との差(QMO)−(QP)が20〜100μeq/g、さらには30〜90μeq/gの範囲にあることが好ましい。
【0055】
表面電荷量の差(QMO)−(QP)が20μeq/g未満の場合は、金属酸化物粒子とマイクロリング状無機酸化物粒子が充分に分離せず混合する場合があるので、透明被膜表面に均一に分散してリング状凸部を形成できないために防眩性が不充分となる場合がある。
【0056】
表面電荷量の差(QMO)−(QP)が120μeq/gを越えると、塗料中で金属酸化物粒子とマイクロリング状無機酸化物粒子が凝集する場合があり、塗布性が低下して均一な透明被膜の形成が困難となったり、凸部を形成できないために防眩性が不充分となったり、透明被膜の内部に空隙が形成され、光の散乱を引き起こしたり、透明被膜のヘーズ値が高くなる場合があり、さらに耐擦傷性が不充分となる場合がある。
【0057】
透明被膜の構成
透明被膜の膜厚は0.5〜20μm、さらには1〜15μmの範囲にあることが好ましい。
【0058】
透明被膜の膜厚が薄過ぎると、耐擦傷性、膜強度が不充分となる場合がある。膜厚が厚すぎると、膜の厚さが不均一になったり、透明被膜にクラックやボイドを生じたり、このため膜強度が不充分となったり、プラスチック等の基材ではカーリング(湾曲あるいは反り)を生じる場合がある。また、この膜厚は、マトリックス成分が疎水性有機樹脂マトリックス成分のみからなる場合であっても、疎水性有機樹脂マトリックス成分が上層にあり、親水性有機樹脂マトリックス成分が下層にある場合であっても同様である。なお、本発明での膜厚は、後述する図4に示されるように凸部の高さ(H凸)を含まないものである。
【0059】
本発明では、少なくともマイクロリング状無機酸化物粒子の一部が透明被膜表面にリング状凸部を形成して存在しており、該凸部の高さ(H凸)が0.1〜1μm、さらには0.2〜0.8μmの範囲にあることが好ましい。通常、マイクロリング状無機酸化物粒子は、表面に一部が露出していることもある。なお、マイクリング状無機酸化物粒子からなる凹凸表面に透明被膜が薄膜として存在していてもよい。
【0060】
本発明の透明被膜の断面モデル図を図4に示す。
透明被膜中のマイクロリング状無機酸化物粒子の含有量は、防眩性を発揮できる範囲で透明被膜表面にリング状凸部を形成することができればよく、透明被膜の膜厚、マイクロリング状無機酸化物粒子の大きさ等によっても異なるが、透明被膜の疎水性有機樹脂マトリックス成分中に概ね0.1〜30重量%、さらには0.2〜20重量%の範囲にあることが好ましい。
【0061】
透明被膜中のマイクロリング状無機酸化物粒子の含有量が、少なすぎても、透明被膜表面のリング状凸部が少ないために充分な防眩性が得られない場合がある。また透明被膜中のマイクロリング状無機酸化物粒子の含有量が多すぎても、さらに防眩性が向上することもなく、防眩性に寄与しない疎水性有機樹脂マトリックス成分中に埋没した粒子が増加したり、透明被膜表面で凝集した粒子が増加し、透明被膜の強度が低下したり、ヘーズが上昇する場合がある。
【0062】
なお、前記疎水性有機樹脂マトリックス成分からなる上層の下に親水性有機樹脂マトリックス成分からなる下層を設ける場合、下層の親水性有機樹脂マトリックス成分の比率は、全マトリックス成分に対し、疎水性有機樹脂マトリックス形成成分からなる上層と、親水性有機樹脂マトリックス形成成分からなる下層の厚さが所望の範囲となるように適宜設定することができる。所望の厚さとは、得られる透明被膜の厚さが0.5〜20μmの範囲にあり、上層が0.2〜15μmの範囲の範囲にあり、下層が0.3〜19.8μmの範囲である。
【0063】
また、下層に前記金属酸化物粒子を含む際、親水性有機樹脂マトリックス成分に対する金属酸化物粒子の含有量は5〜80重量%、さらには10〜60重量%の範囲にあることが好ましい。親水性有機樹脂マトリックス成分中の金属酸化物粒子の含有量が少なすぎると、基材との密着性、透明被膜の硬度、耐擦傷性等が不充分となることがある。金属酸化物粒子の含有量が多すぎても、ヘーズが高くなったり、マトリックス成分が少ないために基材との密着性、耐擦傷性、鉛筆硬度等が不充分となる場合がある。
【0064】
このような本発明にかかる透明被膜付基材は、上記した各成分を含む塗布液を塗布した後、乾燥・硬化して形成することが可能である。また、親水性有機樹脂マトリックス成分からなる下層を形成する場合、親水性有機樹脂マトリックス成分、疎水性有機樹脂マトリックス成分及びマイクロリング状無機酸化物粒子、必要に応じて金属酸化物粒子をいずれも含む塗布液を基材上に塗布し、乾燥・硬化して透明被膜を形成するこが可能であり(いわゆる一液法)、または必要に応じて金属酸化物粒子を含む親水性有機樹脂マトリックス形成成分を含む塗布液を基材表面に塗布・乾燥したのち、マイクロリング状無機酸化物粒子と疎水性有機樹脂マトリックス形成成分とを含む塗布液を塗布・乾燥し、必要に応じて硬化処理する(いわゆる2液法)ことで透明被膜を形成可能である。
なお、本発明では、上記した各成分を含む、以下の塗布液を使用することが好ましい。
【0065】
[透明被膜形成用塗布液]
本発明に係る透明被膜形成用塗布液は、前記マイクロリング状無機酸化物粒子とマトリックス形成成分と有機分散媒とからなることを特徴としている。
【0066】
マイクロリング状無機酸化物粒子
マイクロリング状無機酸化物粒子としては前記したマイクロリング状無機酸化物粒子が用いられる。
【0067】
マトリックス形成成分
マトリックス形成成分としては、前記した有機樹脂マトリックス形成成分が好適に用いられる。なお、アクリル樹脂のような熱硬化型、電子線硬化型などの硬化性樹脂の場合は、マトリックス形成成分は、硬化前の有機樹脂モノマー等であり、マトリックス成分は重合、硬化後のポリマーとなる。
【0068】
金属酸化物粒子
本発明では、さらに、金属酸化物粒子を用いることができ、金属酸化物粒子としては前記した金属酸化物粒子が用いられる。
【0069】
有機分散媒
本発明に用いる有機分散媒としては前記マトリックス形成成分、必要に応じて用いる重合開始剤を溶解あるいは分散できるとともに前記したマイクロリング状無機酸化物粒子、必要に応じて用いる金属酸化物粒子を均一に分散することができれば特に制限はなく、従来公知の溶媒を用いることができる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール(IPA)、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプロピルグリコールなどのアルコール類;酢酸メチルエステル、酢酸エチルエステル、酢酸ブチルなどのエステル類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプルピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プルピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジプロピルケトン、メチルペンチルケトン、ジイソブチルケトン、イソホロン、アセチルアセトン、アセト酢酸エステルなどのケトン類、トルエン、キシレン等が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用することもできる。
【0070】
本発明では沸点の異なる2種以上の有機分散媒を混合して用いることができる。具体的には、50〜100℃に沸点を有する分散媒(A)と100超〜200℃に沸点を有する分散媒(B)との混合分散媒であり、混合分散媒中の分散媒(A)の割合が50〜90重量%の範囲にあり、分散媒(B)の割合が10〜50重量%の範囲にあることが好ましい。
【0071】
分散媒(A)としてメタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール(IPA)等などのアルコール類を含む親水性溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプルピルなどのエステル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、トルエン等の疎水性溶媒が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用してもよい。また、分散媒(B)としては、ブタノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのグリコール類;ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールイソプルピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プルピレングリコールものエチルエーテルなどのエーテル類を含む親水性溶媒、酢酸プルピル、酢酸イソブチル、酢酸ブチル、酢酸イソペンチル、酢酸ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸シクロヘキシル、エチレングリコールものアセタートなどのエステル類;メチルイソブチルケトン、ブチルメチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ジプロピルケトン、メチルペンチルケトン、ジイソブチルケトンなどのケトン類、等の疎水性溶媒が挙げられる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用してもよい。このとき、沸点の最も高い分散媒は疎水性の分散媒であることが好ましい。
【0072】
沸点の最も高い分散媒が疎水性の分散媒であると、疎水性のマトリックス形成成分と親水性マトリックス形成成分を併用する場合に、疎水性マトリックス形成成分がが透明被膜の上層に偏在するとともに透明被膜表面にマイクロリング状無機酸化物粒子がリング状凸部を形成して存在するために防眩性を発揮する。また、必要に応じて用いる金属酸化物粒子を含む親水性マトリックス形成成分が下層に偏在することになり、基材との密着性、強度等に優れるとともに、金属酸化物粒子の特性(屈折率、導電性等)を反映した反射防止性能、帯電防止性能等を有する透明被膜を得ることができる。
【0073】
混合分散媒中の分散媒(A)の割合が多すぎても、塗膜の乾燥が速すぎて透明被膜が緻密にならないことがあり硬度、強度や耐擦傷性が不充分となることがある。混合分散媒中の分散媒(A)の割合が少なすぎても、分散媒(B)が多すぎることになるため、塗膜の乾燥が遅くなり、分散媒が残留して透明被膜は充分に硬化しない場合があり、硬度や耐擦傷性が不充分となることがある。混合分散媒中の分散媒(B)のさらに好ましい割合は20〜40重量%の範囲の範囲である。
【0074】
透明被膜形成用塗料中の分散媒の割合は概ね40〜99重量%、さらには50〜98重量%の範囲にあることが好ましい。また混合溶媒を用いる際の疎水性分散媒/親水性分散媒の混合比は概ね0.1〜0.5の範囲にあることが好ましい。
【0075】
重合開始剤
本発明では、重合開始剤が含まれていてもよい。重合開始剤としては、公知のものを特に制限なく使用することが可能であり、例えば、ビス(2、4、6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2、6−ジメトキシベンゾイル)2、4、4−トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、2−ヒドロキシ-メチル-2-メチル-フェニル-プロパン-1-ケトン、2、2-ジメトキシ-1、2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン等が挙げられる。
【0076】
さらに、塗布液には、マトリックス形成成分を溶解するとともに、容易に揮発しうる溶剤が含まれていてもよく、マトリックス形成成分が熱硬化性樹脂の場合は、必要に応じて重合促進剤が配合されていてもよい。さらに、塗布液には分散性、安定性を高めるために界面活性剤等を添加することもできる。
【0077】
透明被膜形成用塗布液組成
本発明における透明被膜形成用塗布液の全固形分濃度は5〜60重量%、さらには7〜50重量%の範囲にあることが好ましい。
【0078】
全固形分濃度が少ないと、1回の塗布で膜厚が所望の膜厚(0.5μm以上)の透明被膜を得ることが困難な場合があり、繰り返し塗布、乾燥を繰り返すと、得られる透明被膜の硬度や耐擦傷性が不充分となったり、ヘーズあるいは外観が悪くなったり、生産性が問題となるばあいがある。全固形分濃度が多すぎると、塗布液の粘度が高くなり、塗布性が低下したり、得られる透明被膜のヘーズが高くなったり、表面粗さが大きくなり耐擦傷性が不充分となる場合がある。
【0079】
透明被膜形成用塗布液中のマイクロリング状無機酸化物粒子の濃度は、防眩性を発揮できる範囲で透明被膜表面にリング状凸部を形成することができればよく、得られる透明被膜の膜厚、マイクロリング状無機酸化物粒子の大きさ等によっても異なるが、概ね0.1〜30重量%、さらには0.2〜20重量%の範囲にあることが好ましい。マイクロリング状無機酸化物粒子の濃度が少ないと、得られる透明被膜表面のリング状凸部が少ないために充分な防眩性が得られない場合がある。マイクロリング状無機酸化物粒子の濃度が多すぎても、さらに防眩性が向上することもなく、防眩性に寄与しない疎水性有機樹脂マトリックス成分中に埋没した粒子が増加したり、透明被膜表面で凝集した粒子が増加し、透明被膜の強度が低下したり、ヘーズが低下する場合がある。
【0080】
有機樹脂マトリックス形成成分の濃度は固形分として4〜59重量%、さらには5〜55重量%の範囲にあることが好ましい。疎水性有機樹脂マトリックス形成成分と親水性有機樹脂マトリックス形成成分を双方使用する場合、その合計濃度は固形分として4〜59重量%、さらには5〜55重量%の範囲にあることが好ましい。またこの時、疎水性有機樹脂マトリックス形成成分と親水性有機樹脂マトリックス形成成分の比率は、疎水性有機樹脂マトリックス形成成分からなる上層と、親水性有機樹脂マトリックス形成成分からなる所望の範囲となるように適宜設定することができる。
【0081】
さらに透明被膜形成用塗布液中の金属酸化物粒子を含む場合その濃度は、得られる透明被膜の親水性有機樹脂マトリックス形成成分からなる下層中の金属酸化物粒子の含有量が5〜80重量%、さらには10〜70重量%の範囲となる濃度とする。
【0082】
また、上記塗布液と、必要に応じて金属酸化物粒子を含む親水性有機樹脂マトリックス形成成分を含む塗布液とを組合わせて使用する場合、塗布液中の親水性有機樹脂マトリックス形成成分の濃度は、2〜50重量%、好ましくは4〜40重量%の範囲にあることが好ましい。金属酸化物粒子を含む場合、その濃度は、前記したような親水性マトリックス形成成分に対する比率とすればよい。
【0083】
このような塗布液をディップ法、スプレー法、スピナー法、ロールコート法等の周知の方法で前記した基材に塗布し、乾燥し、加熱処理、紫外線照射等によって硬化させることによって透明被膜を形成することができる。
【0084】
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0085】
[実施例1]
マイクロリング状無機酸化物粒子(1)の調製
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:Cataloid SI−30、平均粒子径12nm、SiO2濃度30重量%)を噴霧乾燥装置の対向式2流体ノズルに供給し、処理液量120L/Hr、ノズル圧力0.40MPa、乾燥雰囲気温度50℃、湿度7.2Vol%、の条件下に噴霧乾燥して、表面に凹部を有する平均外径が概ね5μmの無機酸化物粒子(1)を調製した。
【0086】
ついで、濃度25重量%のテトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液100gに、表面に凹部を有する無機酸化物粒子(1)10gを添加し、25℃で12時間撹拌した後、濾過し、充分に洗浄し、ついで120℃で10時間乾燥してマイクロリング状無機酸化物粒子(1)を調製した。得られたマイクロリング状無機酸化物粒子(1)について、走査型電子顕微鏡写真(SEM)を撮影し、平均外径(DO)、貫通孔の平均径(DI)を測定し、結果を表1に示す。また、かかるマイクロリング状無機酸化物粒子のSEM写真、および一部を拡大したものを図2および3に示す。
【0087】
表面処理
ついで、マイクロリング状無機酸化物粒子(1)のメタノール分散液(固形分濃度30重量%)を調製し、この分散液100gにγ-メタアクリロオキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコ−ン(株)製 KBM−503 SiO2成分82.5重量%)4.5gを混合し、50℃で15時間加熱撹拌して表面処理したマイクロリング状無機酸化物粒子(1)分散液を得た。ついで、ロータリーエバポレーターにてイソプロピルアルコールに溶媒置換して濃度30重量%のマイクロリング状無機酸化物粒子(1)分散液を得た。このマイクロリング状無機酸化物粒子(1)の表面電荷量を測定したところ10μeq/gであった。
【0088】
透明被膜形成用塗布液(1)の調製
イソプロピルアルコールに溶媒置換して濃度30重量%のマイクロリング状無機酸化物粒子(1)分散液13.3gと疎水性の樹脂ペンタエリスリトールテトラアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE-4A)32.4gと疎水性の樹脂1.6-ヘキサンジオールジアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレート1.6HX-A)3.6gに光開始剤(チバジャパン(株)製イルガキュア184)2.2gおよび溶媒イソプロパノ−ル39.2g、メチルイソブチルケトン50gとを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(1)を調製した。
【0089】
透明被膜付基材(1)の作製
透明被膜形成用塗布液(1)を、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚さ:80μm、屈折率:1.50、基材全光線透過率92.0%、ヘーズ0.3%)にバーコーター法(#20)で塗布し、80℃で2分間乾燥した後、高圧水銀灯(120W/cm)を搭載した紫外線照射装置(日本電池(株)製UV照射装置: CS30L21−3)で600mJ/cm2照射して硬化させて透明被膜付基材(1)を作製した。このときの透明被膜の膜厚は6μmであった。
【0090】
得られた透明被膜付基材(1)の全光線透過率およびヘーズをヘーズメーター(日本電色工業(株)製:NDH2000)により測定し、結果を表1に示した。さらに、鉛筆硬度、耐擦傷性および密着性を評価し、結果を表1に示す。また、透明被膜表面の凸部の高さを以下の方法で測定し、結果を表1に示す。さらに防眩性を以下の方法で測定し、結果を表1に示す。
【0091】
鉛筆硬度の測定
JIS−K−5400に準じて鉛筆硬度試験器により測定した。
耐擦傷性の測定
#0000スチールウールを用い、荷重500g/cm2で50回摺動し、膜の表面を目視観察し、以下の基準で評価し、結果を表1に示す。
【0092】
評価基準:
筋条の傷が認められない :◎
筋条に傷が僅かに認められる:○
筋条に傷が多数認められる :△
面が全体的に削られている :×
【0093】
密着性
透明被膜付基材(1)の表面にナイフで縦横1mmの間隔で11本の平行な傷を付け100個の升目を作り、これにセロハンテープ(登録商標)を接着し、ついで、セロハンテープ(登録商標)を剥離したときに被膜が剥離せず残存している升目の数を、以下の4段階に分類することによって密着性を評価した。結果を表1に示す。
残存升目の数100個 :◎
残存升目の数93〜97個:○
残存升目の数85〜92個:△
残存升目の数84個以下 :×
【0094】
凸部の高さ
透明被膜付基材(1)の膜を一部剥離し透明被膜の平均膜厚、凸部の高さ(T1)と凹部の高さ(T2)との差をレーザー顕微鏡(キーエンス株式会社製:VE-3000)を用いて測定した。結果を表1に示す。
【0095】
防眩性
ハードコート機能付き反射防止膜付基材(1)の防眩性を基材の裏面を黒スプレーで均一に塗り、30Wの蛍光灯から2mはなれ蛍光灯の映り込みを目視に確認し防眩性を評価した。結果を表1に示す。
蛍光灯が全く見えない :◎
蛍光灯がわずかに見える :○
蛍光灯は見えるが輪郭がぼける :△
蛍光灯がはっきり見える :×
【0096】
[実施例2]
透明被膜形成用塗布液(2)の調製
実施例1と同様にして調製し表面処理した濃度30重量%のマイクロリング状無機酸化物粒子(1)分散液13.3gと疎水性の樹脂ペンタエリスリトールテトラアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE-4A)25.9gと疎水性の樹脂1.6-ヘキサンジオールジアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレート1.6HX-A)2.9gおよび親水性の樹脂2−ヒドロキシ−3アクリロイロキシプロピルメタクリレート(共栄社化学(株)製:ライトエステルG−201P)7.2gに、光開始剤(チバジャパン(株)製イルガキュア184)2.2gおよび溶媒イソプロパノ−ル39.2g、メチルイソブチルケトン50gとを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(2)を調製した。
【0097】
透明被膜付基材(2)の作製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(2) を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(2)を製造した。得られた透明被膜付基材(2)について、透明被膜の膜厚、全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性、密着性、表面凸部の高さおよび防眩性を評価し、結果を表に示す。
【0098】
[実施例3]
五酸化アンチモン微粒子分散液(1)の調製
純水8000gに苛性カリ(旭硝子(株)製:純度85%)250gを溶解した溶液中に三酸化アンチモン(日本精鉱(株)製;パテックスM)500gを懸濁した。この懸濁液を95℃に加熱し、次いで、過酸化水素水(林純薬(株)製:特級、濃度35重量%)150gを純水500gで希釈した水溶液を9時間で添加し、三酸化アンチモンを溶解し、その後、11時間熟成した。ついで、冷却後、得られた溶液から8000gをとり、この溶液を純水48kgで希釈した後、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)製:pk−216)でPHが3.5になるまで処理して脱イオンを行った。脱イオンして得られた溶液を温度70℃で10時間熟成した後、限外膜で濃縮して固形分濃度14%の五酸化アンチモンからなる導電性微粒子分散液を調製した。この導電性微粒子分散液のpHは4.0、平均粒子径は20nmであった。次いで、導電性微粒子分散液1000gを25℃に調整し、テトラエトキシシラン(多摩化学(株)製:正珪酸エチル、SiO2濃度28.8%)25gを3分で添加した後、30分攪拌を行った。その後エタノ−ル1000gを1分かけて添加し、50℃に30分間で昇温、19時間過熱処理を行った。このときの固形分濃度は7重量%であった。
【0099】
次いで限外濾過膜にて分散媒の水、エタノ−ル混合溶媒を、エタノ−ルに置換し、表面処理した固形分濃度30重量%の五酸化アンチモン微粒子分散液を調製した。この五酸化アンチモン微粒子分散液(1)の表面電荷量を測定したところ50μeq/gであった。
【0100】
透明被膜形成用塗布液(3)の調製
実施例1と同様にして調製した濃度30重量%のマイクロリング状無機酸化物粒子(1)分散液16.7gと疎水性の樹脂ペンタエリスリトールテトラアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE-4A)25.2gと疎水性の樹脂1.6-ヘキサンジオールジアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレート1.6HX-A)2.8gおよび親水性の樹脂2−ヒドロキシ−3アクリロイロキシプロピルメタクリレート(共栄社化学(株)製:ライトエステルG−201P)7.0g、金属酸化物粒子として五酸化アンチモン微粒子分散液(1)33.3gに、光開始剤(チバジャパン(株)製イルガキュア184)2.1gおよび溶媒イソプロパノ−ル36.6g、メチルイソブチルケトン50gとを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(3)を調製した。
【0101】
透明被膜付基材(3)の作製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(3)を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(3)を製造した。得られた透明被膜付基材(3)について、透明被膜の膜厚、全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性、密着性、表面凸部の高さおよび防眩性を評価し、結果を表に示す。
【0102】
[実施例4]
透明被膜形成用塗布液(4)の調製
実施例1と同様にして調製した濃度30重量%のマイクロリング状無機酸化物粒子(1)分散液6.7gと疎水性の樹脂ペンタエリスリトールテトラアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE-4A)27.4gと疎水性の樹脂1.6-ヘキサンジオールジアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレート1.6HX-A)3.0gおよび親水性の樹脂2−ヒドロキシ−3アクリロイロキシプロピルメタクリレート(共栄社化学(株)製:ライトエステルG−201P)7.6g、金属酸化物粒子として五酸化アンチモン微粒子分散液(1)33.3gに、光開始剤(チバジャパン(株)製イルガキュア184)2.3gおよび溶媒イソプロパノ−ル44.0g、メチルイソブチルケトン50gとを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(4)を調製した。
【0103】
透明被膜付基材(4)の作製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(4) を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(4)を製造した。得られた透明被膜付基材(4)について、透明被膜の膜厚、全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性、密着性、表面凸部の高さおよび防眩性を評価し、結果を表に示す。
【0104】
[実施例5]
透明被膜形成用塗布液(4)の調製
実施例1と同様にして調製した濃度30重量%のマイクロリング状無機酸化物粒子(1)分散液33.3gと疎水性の樹脂ペンタエリスリトールテトラアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE-4A)21.6gと疎水性の樹脂1.6-ヘキサンジオールジアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレート1.6HX-A)2.4gおよび親水性の樹脂2−ヒドロキシ−3アクリロイロキシプロピルメタクリレート(共栄社化学(株)製:ライトエステルG−201P)6.0g、金属酸化物粒子として五酸化アンチモン微粒子分散液(1)33.3gに、光開始剤(チバジャパン (株)製イルガキュア184)1.8gおよび溶媒イソプロパノ−ル24.3g、メチルイソブチルケトン50gとを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(4)を調製した。
【0105】
透明被膜付基材(5)の作製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(5) を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(5)を製造した。得られた透明被膜付基材(5)について、透明被膜の膜厚、全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性、密着性、表面凸部の高さおよび防眩性を評価し、結果を表に示す。
【0106】
[実施例6]
マイクロリング状無機酸化物粒子(2)の調製
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:Cataloid SI−30、平均粒子径12nm、SiO2濃度30重量%)を稀釈したSiO2濃度20重量%のシリカゾルを噴霧乾燥装置の対向式2流体ノズルに供給し、処理液量120L/Hr、ノズル圧力0.40MPa、乾燥雰囲気温度60℃、湿度7.2Vol%、の条件下に噴霧乾燥して、表面に凹部を有する平均外径が概ね2.5μmの無機酸化物粒子(2)を調製した。
【0107】
ついで、濃度25重量%のテトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液100gに、表面に凹部を有する無機酸化物粒子(2)10gを添加し、25℃で12時間撹拌した後、濾過し、充分に洗浄し、ついで120℃で10時間乾燥してマイクロリング状無機酸化物粒子(2)を調製した。得られたマイクロリング状無機酸化物粒子(2)について、平均外径(DO)、貫通孔の平均径(DI)を測定し、結果を表1に示す。
【0108】
表面処理
ついで、マイクロリング状無機酸化物粒子(2)のメタノール分散液(固形分濃度30重量%)を調製し、この分散液100gにγ-メタアクリロオキシプロピルトリメトキシシラン5.5g(信越シリコ−ン(株)製 KBM−503 SiO2成分82.5重量%)を混合し、50℃で15時間加熱撹拌して表面処理したマイクロリング状無機酸化物粒子(2)分散液を得た。
【0109】
ついで、ロータリーエバポレーターにてイソプロピルアルコールに溶媒置換して濃度30重量%のマイクロリング状無機酸化物粒子(2)分散液を得た。このマイクロリング状無機酸化物粒子(2)の表面電荷量を測定したところ9.0μeq/gであった。
【0110】
透明被膜形成用塗布液(6)の調製
実施例3において、マイクロリング状無機酸化物粒子(1)分散液の代わりにマイクロリング状無機酸化物粒子(2)分散液を用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(6)を調製した。
【0111】
透明被膜付基材(6)の作製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(6) を用い、バ−コーター法(#10)で塗布した以外は同様にして透明被膜付基材(6)を製造した。得られた透明被膜付基材(6)について、透明被膜の膜厚、全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性、密着性、表面凸部の高さおよび防眩性を評価し、結果を表に示す。
【0112】
[実施例7]
マイクロリング状無機酸化物粒子(3)の調製
実施例6の表面処理において、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコ−ン(株)製:KBM−403 SiO2成分80.9重量%)7.4gを用いた以外は同様にして表面処理したマイクロリング状無機酸化物粒子(3)分散液を得た。
【0113】
ついで、ロータリーエバポレーターにてイソプロピルアルコールに溶媒置換して濃度30重量%のマイクロリング状無機酸化物粒子(3)分散液を得た。このマイクロリング状無機酸化物粒子(3)の表面電荷量を測定したところ6μeq/gであった。
【0114】
透明被膜形成用塗布液(7)の調製
実施例6において、マイクロリング状無機酸化物粒子(2)分散液の代わりにマイクロリング状無機酸化物粒子(3)分散液を用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(7)を調製した。
【0115】
透明被膜付基材(7)の作製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(7) を用い、バ−コーター法(#10)で塗布した以外は同様にして透明被膜付基材(7)を製造した。得られた透明被膜付基材(7)について、透明被膜の膜厚、全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性、密着性、表面凸部の高さおよび防眩性を評価し、結果を表に示す。
【0116】
[実施例8]
マイクロリング状無機酸化物粒子(4)の調製
実施例6の表面処理において、γ-メタアクリロオキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコ−ン(株)製:KBM−503 SiO2成分82.5重量%)3.7gを用いた以外は同様にして表面処理したマイクロリング状無機酸化物粒子(4)分散液を得た。
ついで、ロータリーエバポレーターにてイソプロピルアルコールに溶媒置換して濃度30重量%のマイクロリング状無機酸化物粒子(4)分散液を得た。このマイクロリング状無機酸化物粒子(3)の表面電荷量を測定したところ15μeq/gであった。
【0117】
透明被膜形成用塗布液(8)の調製
実施例6において、マイクロリング状無機酸化物粒子(3)分散液の代わりにマイクロリング状無機酸化物粒子(4)分散液を用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(8)を調製した。
【0118】
透明被膜付基材(8)の作製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(8) を用い、バ−コーター法(#10)で塗布した以外は同様にして透明被膜付基材(8)を製造した。得られた透明被膜付基材(8)について、透明被膜の膜厚、全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性、密着性、表面凸部の高さおよび防眩性を評価し、結果を表に示す。
【0119】
[実施例9]
透明被膜形成用塗布液(9)の調製
実施例3において、疎水性の樹脂ペンタエリスリトールテトラアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートPE-4A)25.2gの代わりに疎水性の樹脂ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレートDPE−6A)25.2gを用い、疎水性の樹脂1.6-ヘキサンジオールジアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレート1.6HX-A)2.8gの代わりに疎水性の樹脂1.9-ノナンジオールジアクリレート(共栄社化学(株)製:ライトアクリレート1.9ND-A)2.8gを用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(9)を調製した。
【0120】
透明被膜付基材(9)の作製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(9) を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(9)を製造した。得られた透明被膜付基材(9)について、透明被膜の膜厚、全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性、密着性、表面凸部の高さおよび防眩性を評価し、結果を表に示す。
【0121】
[比較例1]
無機酸化物粒子(R1)の調製
実施例1と同様にして表面に凹部を有する平均外径が概ね5μmの無機酸化物粒子(1)を調製した。
【0122】
表面処理
ついで、無機酸化物粒子(1)のメタノール分散液(固形分濃度30重量%)を調製し、この分散液100gにγ-メタアクリロオキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコ−ン(株)製 KBM−503 SiO2成分82.5重量%)4.5gを混合し、50℃で15時間加熱撹拌して表面処理した無機酸化物粒子(R1)分散液を得た。ついで、ロータリーエバポレーターにてイソプロピルアルコールに溶媒置換して濃度30重量%の無機酸化物粒子(R1)分散液を得た。この無機酸化物粒子(R1)の表面電荷量を測定したところ8μeq/gであった。
【0123】
透明被膜形成用塗布液(R1)の調製
実施例3において、マイクロリング状無機酸化物粒子(1)分散液の代わりに無機酸化物粒子(R1)分散液を用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(R1)を調製した。
【0124】
透明被膜付基材(R1)の作製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R1) を用いた以外は同様にして透明被膜付基材(R1)を製造した。得られた透明被膜付基材(R1)について、透明被膜の膜厚、全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性、密着性、表面凸部の高さおよび防眩性を評価し、結果を表に示す。
【0125】
[比較例2]
透明被膜形成用塗布液(R2)の調製
実施例1と同様にして調製した濃度30重量%のマイクロリング状無機酸化物粒子(1)分散液13.3gと親水性の樹脂ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルアクリレート(新中村化学工業(株)製:NKオリゴEA−5323)36.5gに光開始剤(チバジャパン(株)製イルガキュア184)2.2gおよび溶媒イソプロパノ−ル39.2g、メチルイソブチルケトン50gとを充分に混合して透明被膜形成用塗布液(R2)を調製した。
【0126】
透明被膜付基材(R2)の作製
透明被膜形成用塗布液(R2)を、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚さ:80μm、屈折率:1.50、基材全光線透過率92.0%、ヘーズ0.3%)にバーコーター法(#20)で塗布し、80℃で2分間乾燥した後、高圧水銀灯(120W/cm)を搭載した紫外線照射装置(日本電池(株)製UV照射装置: CS30L21−3)で600mJ/cm2照射して硬化させて透明被膜付基材(R2)を作製した。このときの透明被膜の膜厚は6μmであった。得られた透明被膜付基材(R2)について、透明被膜の膜厚、全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性、密着性、表面凸部の高さおよび防眩性を評価し、結果を表に示す。
【0127】
[比較例3]
マイクロリング状無機酸化物粒子(5)の調製
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:Cataloid SI−30、平均粒子径12nm、SiO2濃度30重量%)を稀釈したSiO2濃度20重量%のシリカゾルを噴霧乾燥装置の対向式2流体ノズルに供給し、処理液量120L/Hr、ノズル圧力0.50MPa、乾燥雰囲気温度60℃、湿度7.2VOl%、の条件下に噴霧乾燥して、表面に凹部を有する平均外径が概ね1.5μmの無機酸化物粒子を調製し、これを分級して粒子径0.6μm以上の粒子を除去して平均外径が概ね0.4μm無機酸化物粒子(5)を調製した。
【0128】
ついで、濃度25重量%のテトラエチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液100gに、表面に凹部を有する無機酸化物粒子(5)10gを添加し、25℃で12時間撹拌した後、濾過し、充分に洗浄し、ついで120℃で10時間乾燥してマイクロリング状無機酸化物粒子(5)を調製した。得られたマイクロリング状無機酸化物粒子(5)について、平均外径(DO)、貫通孔の平均径(DI)を測定し、結果を表1に示す。
【0129】
表面処理
ついで、マイクロリング状無機酸化物粒子(5)のメタノール分散液(固形分濃度30重量%)を調製し、この分散液100gにγ-メタアクリロオキシプロピルトリメトキシシラン4.5g(信越シリコ−ン(株)製 KBM−503 SiO2成分82.5重量%)を混合し、50℃で15時間加熱撹拌して表面処理したマイクロリング状無機酸化物粒子(5)分散液を得た。
【0130】
ついで、ロータリーエバポレーターにてイソプロピルアルコールに溶媒置換して濃度30重量%のマイクロリング状無機酸化物粒子(5)分散液を得た。このマイクロリング状無機酸化物粒子(5)の表面電荷量を測定したところ20μeq/gであった。
【0131】
透明被膜形成用塗布液(R3)の調製
実施例1において、マイクロリング状無機酸化物粒子(1)分散液の代わりにマイクロリング状無機酸化物粒子(5)分散液を用いた以外は同様にして透明被膜形成用塗布液(R3)を調製した。
【0132】
透明被膜付基材(R3)の作製
実施例1において、透明被膜形成用塗布液(R3) を用い、バ−コーター法(#10)で塗布した以外は同様にして透明被膜付基材(R3)を製造した。得られた透明被膜付基材(R3)について、透明被膜の膜厚、全光線透過率、ヘーズ、耐擦傷性、密着性、表面凸部の高さおよび防眩性を評価し、結果を表1に示す。
【0133】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、基材上に形成された透明被膜とからなり、
該透明被膜がマイクロリング状無機酸化物粒子とマトリックス成分を含み、マイクロリング状無機酸化物粒子が透明被膜の上部に偏在し、少なくともマイクロリング状無機酸化物粒子の一部が透明被膜表面にリング状凸部を形成して存在し、該凸部の高さ(H凸)が0.1〜1μmの範囲にあることを特徴とする透明被膜付基材。
【請求項2】
前記マイクロリング状無機酸化物粒子の平均外径(DO)が0.5〜20μmの範囲にあり、貫通孔の平均径(DI)が0.18〜12μmの範囲にあり、リング幅(WR)と平均外径(DO)との比(WR)/(DO)が0.2〜0.45の範囲にあり、リングの厚み(Wh)は平均外径(DO)以下であることを特徴とする請求項1に記載の透明被膜付基材。
【請求項3】
前記マイクロリング状無機酸化物粒子の表面電荷量(QPM)が3〜30μeq/gの範囲にあることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の透明被膜付基材。
【請求項4】
前記マトリックス成分が有機樹脂系マトリックス成分であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の透明被膜付基材。
【請求項5】
前記有機樹脂系マトリックス成分が疎水性有機樹脂マトリックス成分であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の透明被膜付基材。
【請求項6】
前記疎水性有機樹脂マトリックス成分が、親水性官能基を有さないものであるか、アルキル基、ビニル基、ウレタン基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、CF2基からなる群から選ばれる少なくとも1種の疎水性官能基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステル樹脂からなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の透明被膜付基材。
【請求項7】
さらにマトリックス成分として親水性有機樹脂マトリックス成分を含み、親水性有機樹脂マトリックス成分が透明被膜の下層に偏在し、疎水性有機樹脂マトリックス成分が上層に偏在することを特徴とする請求項5または6に記載の透明被膜付基材。
【請求項8】
前記親水性有機樹脂マトリックス成分が水酸基(OH基)、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基からなる群から選ばれる少なくとも1種の親水性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル樹脂からなることを特徴とする請求項7に記載の透明被膜付基材。
【請求項9】
前記親水性有機樹脂マトリックス成分からなる下層が金属酸化物粒子を含有し、該金属酸化物粒子の平均粒子径が5〜500nmの範囲にあり、表面電荷量(QMO)が30〜120μeq/gの範囲にあることを特徴とする請求項7または8に記載の透明被膜付基材。
【請求項10】
前記金属酸化物粒子がシリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、五酸化アンチモン、ボリアおよびこれらの複合酸化物からなることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の透明被膜付基材。
【請求項11】
前記透明被膜の膜厚(Th)が0.5〜20μmの範囲にあることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の透明被膜付基材。
【請求項12】
マイクロリング状無機酸化物粒子とマトリックス形成成分と有機分散媒とからなることを特徴とする透明被膜形成用塗布液。
【請求項13】
前記マイクロリング状無機酸化物粒子の平均外径(DO)が0.5〜20μmの範囲にあり、貫通孔の平均径(DI)が0.18〜12μmの範囲にあり、リング幅(WR)と平均外径(DO)との比(WR)/(DO)が0.2〜0.45の範囲にあり、リングの厚み(Wh)は平均外径(DO)以下であることを特徴とする請求項12に記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項14】
前記マイクロリング状無機酸化物粒子の表面電荷量(QP)が3〜30μeq/gの範囲にあることを特徴とする請求項12または13に記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項15】
前記マトリックス形成成分が有機樹脂系マトリックス形成成分であることを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項16】
前記有機樹脂系マトリックス形成成分が疎水性有機樹脂マトリックス形成成分であることを特徴とする請求項12〜15のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項17】
前記疎水性有機樹脂マトリックス形成成分が、親水性官能基を有さないものであるか、アルキル基、ビニル基、ウレタン基、エポキシ基、(メタ)アクリロイル基、CF2基からなる群から選ばれる少なくとも1種の疎水性官能基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステル樹脂であることを特徴とする請求項12〜16のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項18】
さらに親水性有機樹脂マトリックス形成成分を含み、該親水性有機樹脂マトリックス形成成分が水酸基(OH基)、アミノ基、カルボキシル基、スルホ基等の親水性官能基を有する(メタ)アクリル酸エステル樹脂であることを特徴とする請求項12〜17のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項19】
さらに、金属酸化物粒子を含み、該金属酸化物粒子の平均粒子径が5〜500nmの範囲にあり、表面電荷量(QMO)が30〜120μeq/gの範囲にあることを特徴とする請求項12〜18のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項20】
前記金属酸化物粒子の表面電荷量(QMO)と前記マイクロリング状無機酸化物粒子の表面電荷量(QP)との差(QMO)−(QP)が20〜100μeq/gの範囲にあることを特徴とする請求項12〜19のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項21】
前記有機分散媒が、沸点の異なる2種以上の混合分散媒であり、一方が疎水性分散媒であり、他方が親水性分散媒であることを特徴とする請求項12〜20のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液。
【請求項22】
前記混合分散媒の最高沸点の分散媒が疎水性分散媒であることを特徴とする請求項12〜21のいずれかに記載の透明被膜形成用塗布液。

【図1】
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【図4】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−110787(P2011−110787A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−268679(P2009−268679)
【出願日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】