説明

透水性側溝の蓋体

【課題】 製品としての蓋体の長さを統一させて規格化させ、フレキシブルに変形可能であり、蓋体の製造に際し専用の治具を用いることなく、簡易な手間で容易に製造することができ、十分な幅の通水間隙を確保しながら透水路面層の小骨材として従来よりも小さな粒径のものを使用できる透水性側溝の蓋体の提供。
【解決手段】 蓋体2の上に透水路面層8が形成された透水性側溝Aにおいて、側溝の溝長さ方向に延長した左右2本の縦枠材31,31と、溝幅方向に延長して両縦枠材の上面間に連結された複数本の横枠材32とでフレキシブル可能な挌子状に枠組みされた連結枠3を備え、連結枠を構成する横枠材間に納まる状態で蓋部材4の両端部が縦枠材間に架設され、この架設状態で蓋部材の側縁と横枠材の間に通水間隙20,20が保持されるように蓋部材と支持枠とが溶接部21により固着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水の排水機能を有する透水路面層によって上面が覆われている透水性側溝において、この透水性側溝に用いられる蓋体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、側溝本体の上面を雨水の排水機能を有する透水路面層によって覆うようにした透水性側溝が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この透水性側溝は、複数の蓋部材(等辺山形型材)をスリット状の通水間隙を保持して連結させた蓋体を形成させ、この蓋体の両端部を側溝本体に形成した左右の蓋受け段差面の間に載置させた状態で、この蓋体の上に透水路面層を形成させる構造になっている。
従って、雨水は透水路面層を透水し、さらに蓋体を形成する蓋部材間の通水間隙を通して側溝本体の内部に流入するもので、これにより雨水を効率よく側溝内に排水させることができる。
【0004】
このように、スリット状の通水間隙は、ここから雨水を側溝内に排水させると同時に、ここから透水路面層の小骨材が流出するのを防止させるような間隔に設定することが重要であり、現状は通水間隙をスリット幅5mm程度に設定させている。
【0005】
又、前記蓋体は、各蓋部材の両端部が蓋受け段差面の不陸に対して馴染むように載置され、ガタ付きなく装着されるようにすることが必要であり、このため、各蓋部材の連結部においてフレキシブルに捻じれや曲げ変形を生じさせて、各蓋部材が蓋受け段差面の不陸に対して馴染むように連結させている。
【0006】
このような蓋体として、従来、複数の蓋部材をスリット状の通水間隙を保持した並列状態で連結細棒(特許文献1の図2)によってフレキシブルに変形可能に連結させるようにした構造が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−23776号公報(図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のように、連結細棒によって各蓋部材を連結させる場合、蓋部材として用いる等辺山形型材のサイズにバラツキが生じていることが有り、このように不揃いの蓋部材を連結させて製造した蓋体は、その長さが統一されないため、施工現場において長さを切断したり、継ぎ足したりするなどして調節しなければならないという極めて手間のかかる作業を強いられるという問題があった。
このような問題は、製品である蓋体の長さを統一させて規格化させれば、容易に解決することができる。
【0009】
また、従来では、蓋体の製造に際し、専用の治具を用い、この治具に各蓋部材体と連結細棒等をセットした上で必要な各部を溶接して蓋体を製造させ、製造後は蓋体を治具から取り外し、再び新たな各蓋部材と連結細棒等を治具にセットするといった作業を繰り返すようにしていた。
このように、治具を必要としているため、この治具の製作や保守にコストや手間がかかるし、製作した蓋体を治具から取り外すといった作業に手間がかかるという問題があった。
【0010】
また、従来では、通水性を確保するために蓋体を構成する各蓋部材の間にスリット幅5mm程度の通水間隙を保持させており、このため透水路面層の小骨材の粒径は5mm以上にして通水間隙からの脱落を防止させる必要があった。
これは言いかえると、透水路面層の小骨材としては粒径5mm以上のものしか使用できないということであり、このため小骨材のサイズ選択範囲が制約され、路面設計の自由度が狭くなるという問題があった。
【0011】
本発明は、蓋部材に用いる等辺山形型材のサイズにバラツキが生じている場合でも、製品としての蓋体の長さを統一させて規格化させ、また、フレキシブルに変形可能であり、また、蓋体の製造に際し専用の治具を用いることなく、簡易な手間で容易に製造することができ、また、十分な幅の通水間隙を確保しながら透水路面層の小骨材として従来よりも小さな粒径(5mm以下)のものを使用できるようにした透水性側溝の蓋体を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明の(請求項1)の透水性側溝の蓋体は、
左右の側壁(12),(12)に蓋受け段差面(14),(14)が形成された側溝本体(1)と、複数の蓋部材(4)が間にスリット状の通水間隙(20)を保持して側溝の溝長さ方向に並列状態で連結された蓋体(2)を備え、
前記蓋体(2)が前記蓋受け段差面(14),(14)間に載置されると共に、この蓋体(2)の上に透水路面層(8)が形成された透水性側溝(A)において、
前記蓋体(2)は側溝の溝長さ方向に延長した少なくとも左右2本の縦枠材(31),(31)と、溝幅方向に延長して前記両縦枠材(31),(31)の上面間に連結された複数本の横枠材(32)とでフレキシブル可能な挌子状に枠組みされた連結枠(3)を備え、
前記連結枠(3)を構成する横枠材(32),(32)間に納まる状態で前記蓋部材(4)の両端部が前記縦枠材(31),(31)間に架設され、この架設状態で蓋部材(4)の側縁と前記横枠材(32)の間に通水間隙(20),(20)が保持されるように各蓋部材(4)と前記支持枠(3)とが溶接部(21)により固着されている構成とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明(請求項1)に係る透水性側溝の蓋体は、連結枠を備えている構成に特徴がある。
この連結枠は、少なくとも左右2本の縦枠材と、両縦枠材の上面間に連結された複数本の横枠材とでフレキシブル可能な挌子状に枠組みされたものである。
このようにフレキシブル可能な連結枠を用いて蓋部材を連結させているため、製品全体としてフレキシブルに捻じれや曲げ変形を生じさせることができ、蓋体を蓋受け段差面の不陸に対して馴染むように載置させることができる。
【0014】
蓋体の製造に際し、各蓋部材を、連結枠を構成する横枠材間に納めると共に、その蓋部材の両端部を縦枠材間に架設させるように載置させ、その架設状態で蓋部材の両側縁と横枠材の間に通水間隙を保持させるように各蓋部材と支持枠(連結枠)とを複数個所で溶接させるものである。
このように、連結枠自体が蓋体を製造する際の治具として機能するため、専用の治具が不要になるし、製品としての蓋体を治具から取り外すといった手間が不要になり、製造作業の能率を向上させることができる。
【0015】
特に、連結枠を用い、この連結枠をベースとして蓋部材を載置させ溶接で固着させるため、蓋部材(等辺山形型材)のサイズにバラツキが生じている場合でも、連結枠のサイズを基準として蓋体の長さを統一させることができ、製品を規格化させることができる。
【0016】
また、各蓋部材を横枠材間に納めた上で蓋部材の側縁と横枠材の間に通水間隙を保持させたので、隣り合う蓋部材の間には横枠材によって分断された2個の通水間隙が形成される。
従って、この通水間隙1個分のスリット幅を狭くさせれば(例えば2.5mm)、透水路面層の小骨材として従来よりも小粒のもの(例えば2.5mm以上)を使用できるし、通水間隙としては2個の通水間隙が形成されているため、その合計のスリット幅(例えば2.5+2.5=5mm)を確保することができ。
このように、十分な幅の通水間隙を確保しながら透水路面層の小骨材として従来よりも小さな粒径(5mm以下)のものを使用することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例に係る蓋体を備えた透水性側溝の例を示す切欠平面図。
【図2】その透水性側溝の溝幅方向断面図。
【図3】その透水性側溝の溝長さ方向断面図。
【図4】蓋体の一部切欠斜視図。
【図5】蓋体の一部拡大断面。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図において、1は側溝本体で、現場打ち施工によって形成され、上面が開口し、底部11と左右の側壁12,12により内部に溝水路13に形成され、前記両側壁12,12の内面上端部分に左右の蓋受け段差面14,14が形成されている。
なお、側溝本体1としてコンクリート二次製品を用いることができる。
【0019】
そして、前記蓋受け段差面14,14間に側溝の溝長さ方向(図1及び図3において矢印M方向)に列設させる状態で多数の蓋体2を載置させると共に、この蓋体2の上に透水路面層8を形成させることで透水性側溝Aを形成させるものである。
これにより、雨水は透水路面層8を透水し、さらに蓋体2に側溝の溝幅方向(図1及び図2において矢印N方向)に形成したスリット状の通水間隙20(実施例では5mm幅)を通して側溝本体1の溝水路13に流入する。
【0020】
この実施例は、透水性側溝Aを、前記特許文献1(特開2005−23776号公報)に示したような従来構造の通水性舗装路Bの路肩部分に設置した例である。
即ち、図2に示すように、下地層(不透水層)91の上に通水性表層90が形成された通水性舗装路Bの路肩部に透水性側溝Aが設置されたもので、この透水性側溝Aの透水路面層8と前記通水性舗装路Bの通水性表層90とが同時施工で一体に連続して形成されている。
【0021】
このように透水性側溝Aの透水路面層8を通水性舗装路Bの通水性表層90に連続させるように施工することで、通水性舗装路B上の雨水を通水性表層90に透水させたのち、この通水性表層90から引き続き連続して透水性側溝Aの透水路面層8に流入させることができる。
【0022】
実施例では、透水路面層8の一側(図2の図面右側)のみを通水性舗装路Bの通水性表層90に連続させた施工例を示したが、これに限らず、道路を横断して透水性側溝Aを設置させるような場合、透水路面層8の左右両側を通水性舗装路Bの通水性表層90に連続させるように施工することができるし、必ずしも通水性舗装路Bの通水性表層90に連続させる必要はなく、透水性側溝Aの上だけに透水路面層8を形成してもよい。
【0023】
前記蓋体2は連結枠3を備え、この連結枠3の上にスリット状の通水間隙20を保持して蓋部材4を側溝の溝長さ方向に並列状態で連結させたものである。
【0024】
前記連結枠3は、側溝の溝長さ方向に延長した少なくとも左右2本の縦枠材31と、溝幅方向に延長して前記両縦枠材31,31の上面間に連結された複数本(実施例では蓋部材4の数に対応した10本)の横枠材32とでフレキシブル可能な挌子状に枠組みされている。
実施例では、縦枠材31として5mm丸棒材、横枠材32として4mm丸棒材を使用し、その交差部分を溶接により接合させて、フレキシブルに捻じれや曲げ変形が可能なように形成させている。
なお、この連結枠3としては、例えば、コンクリート舗装等の埋設補強材等として一般に使用されている溶接金網の製作技術を用い、これで所定サイズの連結枠3を形成しており、この場合も縦枠材31の上に横枠材32が位置するように形成する。
このように、一般にある溶接金網の製作技術を用いることにより、連結枠3を容易に形成することができるし、コスト面や製作手間の面で有利になる。
【0025】
また、前記左右2本の縦枠材31,31の間隔L1は、図2に示すように、側溝本体1の溝幅L2よりも若干狭い程度にしており、これより、蓋体2が溝幅方向にズレ動くのを規制させることができる。
なお、縦枠材31の本数は、フレキシブル性に問題がなければ3本以上でも良いが、コスト面や製造手間の面からは2本が好ましい。
【0026】
前記蓋部材4としては、角部4aを頂部とした複数(実施例では10個)の等辺山形型材が用いられ、これが側溝の溝長さ方向(矢印M方向)に並列状態で連結されている。
この場合、前記連結枠3の横枠材32、32間に納まる状態で、蓋部材4の両端部を前記縦枠材31,31間に架設させ、この架設状態で蓋部材4の側縁と前記横枠材32の間に通水間隙20を保持させるように各蓋部材4と前記横枠材32とが複数個所で溶接部21により固着されている。
【0027】
前記蓋部材4を連結枠3の横枠材32,32間に納める場合、この横枠材32が縦枠材31の上面に位置しているため、蓋部材4を納める領域が横枠材32によって区画された状態になっている。
したがって、この横枠材32をガイドとして、横枠材32,32間に蓋部材4を載置させるだけで簡単に蓋部材4を位置決めさせることができる。この際、通水間隙20については目測によって保持させるようにしている。
【0028】
前記横枠材32,32間の間隔Pは、図5に示すように、蓋部材4としての等辺山形型材の底面幅P1に、通水間隙20の幅P2を2個分合計させた幅に形成され{P=P1+(2×P2)}、この実施例では、1個の通水間隙が2.5mmになるように形成している。
【0029】
また、蓋部材4と連結枠3との溶接部21は、各通水間隙20において側溝の溝幅方向中央部分に1個所づつ設けている。このほか、各通水間隙20において側溝の溝幅方向端部に1個所づつ(合計2箇所)設けてもよいし、或いは蓋部材4,4間の2個の通水間隙20,20のうち、一方の通水間隙20には側溝の溝幅方向中央部分に1個所で、他方の通水間隙20には側溝の溝幅方向端部に1個所づつ(合計2箇所)設けるなどしてもよい。
【0030】
蓋体2を製造するには、まず、縦枠材31と横枠材32を溶接により接合させて連結枠3を作る。
そして、この連結枠3をベースとして蓋部材4を横枠材32,32間に納めるようにその両端を縦枠材31,31に載置させ、次に溶接部21で固着させる。
このように連結枠3を用いることにより、連結枠3自体が蓋体2を製造する際の治具として機能するため、製造が容易になるし、蓋部材4(等辺山形型材)のサイズにバラツキが生じている場合でも、連結枠3のサイズを基準として蓋体2の長さを統一させることができ、製品を規格化させることができる。
【0031】
また、隣り合う蓋部材4,4の間には横枠材32によって分断された2個の通水間隙20,20が形成されるため、1個の通水間隙20のスリット幅を狭くしても十分な幅の通水間隙を確保できるし、透水路面層8の小骨材として従来よりも小さな粒径(5mm以下)のものを使用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 側溝本体
11 底部
12 側壁
13 溝水路
14 蓋受け段差面
2 蓋体
20 通水間隙
21 溶接部
3 連結枠
31 縦枠材
32 横枠材
4 蓋部材
4a 角部
8 透水路面層
90 通水性表層
91 下地層
A 透水性側溝
B 通水性舗装路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の側壁(12),(12)に蓋受け段差面(14),(14)が形成された側溝本体(1)と、複数の蓋部材(4)が間にスリット状の通水間隙(20)を保持して側溝の溝長さ方向に並列状態で連結された蓋体(2)を備え、
前記蓋体(2)が前記蓋受け段差面(14),(14)間に載置されると共に、この蓋体(2)の上に透水路面層(8)が形成された透水性側溝(A)において、
前記蓋体(2)は側溝の溝長さ方向に延長した少なくとも左右2本の縦枠材(31),(31)と、溝幅方向に延長して前記両縦枠材(31),(31)の上面間に連結された複数本の横枠材(32)とでフレキシブル可能な挌子状に枠組みされた連結枠(3)を備え、
前記連結枠(3)を構成する横枠材(32),(32)間に納まる状態で前記蓋部材(4)の両端部が前記縦枠材(31),(31)間に架設され、この架設状態で蓋部材(4)の側縁と前記横枠材(32)の間に通水間隙(20),(20)が保持されるように各蓋部材(4)と前記支持枠(3)とが溶接部(21)により固着されていることを特徴とする透水性側溝の蓋体。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−80286(P2011−80286A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234032(P2009−234032)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(504127887)エムシー産業株式会社 (9)
【Fターム(参考)】