説明

透湿防水性布帛及びその製造方法

【課題】 洗濯を繰り返しても、耐水圧が低下しにくい透湿防水性布帛を提供することにある。
【解決手段】 この透湿防水性布帛は、布帛本体の片面に、ポリウレタン樹脂を主体とする微多孔膜が積層されてなる。微多孔膜には、シリカ微粉末3〜45質量%、フッ素系撥水剤1〜9質量%及び油溶性のフッ素系界面活性剤0.1〜2質量%が含有されている。この透湿防水性布帛は、布帛本体の片面に、ポリウレタン樹脂を主体とし、シリカ微粉末3〜45質量%、フッ素系撥水剤1〜9質量%及び油溶性のフッ素系界面活性剤0.1〜2質量%を、N,N−ジメチルホルムアミドに溶解又は分散させてなる微多孔膜形成用樹脂組成物を塗布した後、N,N−ジメチルホルムアミドを5〜30質量%含有する水溶液に浸漬して、微多孔膜形成用樹脂組成物を凝固させて微多孔膜を形成することにより得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてスポーツ衣料用や防寒衣料用として用いられる透湿性能及び防水性能に優れた透湿防水性布帛及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スポーツ衣料や防寒衣料等には、身体からの発汗による水蒸気を衣料外へ放出する透湿機能と、雨水が衣料内に侵入するのを防止する防水機能とが要求されている。したがって、スポーツ衣料や防寒衣料等の素材として、従来より、透湿防水性布帛が用いられている。
【0003】
かかる透湿防水性布帛は、一般的に、ポリウレタン樹脂を主体とする微多孔膜形成用樹脂組成物を、布帛本体表面に塗布した後、水中に浸漬して前記組成物を湿式凝固させ、布帛本体表面に微多孔膜を形成して製造されている。たとえば、特許文献1には、ポリウレタン樹脂と撥水剤とシリカ微粉末を含有する微多孔膜形成用樹脂組成物を、布帛本体表面に塗布した後、水中に浸漬し、前記組成物を湿式凝固させて透湿防水性布帛を製造することが記載されている。このような方法で得られた透湿防水性布帛は、高い透湿度を持っているため透湿性能に優れており、また高い耐水圧を持っているため防水性能に優れたものであり、好ましいものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−166479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているような従来の透湿防水性布帛は、当初は高い耐水圧を持っているが、洗濯を繰り返すと、耐水圧が低下し、所望の防水性能を失ってしまうという欠点があった。本発明は、洗濯を繰り返しても、耐水圧が低下しにくい透湿防水性布帛を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は微多孔膜形成用樹脂組成物中に油溶性のフッ素系界面活性剤を混合させておき、得られる微多孔膜中に当該フッ素系界面活性剤を含有せしめて、これにより洗濯を繰り返しても耐水圧が低下しにくいようにしたものである。すなわち、本発明は、布帛本体の片面に、ポリウレタン樹脂を主体とする微多孔膜が積層されてなる透湿防水性布帛において、前記微多孔膜には、シリカ微粉末3〜45質量%、フッ素系撥水剤1〜9質量%及び油溶性のフッ素系界面活性剤0.1〜2質量%が含有されていることを特徴とする透湿防水性布帛及びその製造方法に関するものである。
【0007】
本発明に用いる布帛本体としては、従来公知の織物、編物又は不織布等が用いられる。具体的には、ナイロン6、ナイロン66で代表されるポリアミド系合成繊維、ポリエチレンテレフタレートで代表されるポリエステル系合成繊維、ポリアクリルニトリル系合成繊維、ポリビニルアルコール系合成繊維などの合成繊維、トリアセテートなどの半合成繊維、或いはナイロン6/綿、ポリエチレンテレフタレート/綿などの混合繊維からなる織物、編物又は不織布等が用いられる。
【0008】
布帛本体は撥水加工されているのが好ましい。すなわち、従来公知の撥水剤エマルジョンに布帛本体を浸漬するか、布帛本体の表面に撥水剤エマルジョンを塗布して、撥水加工を施すのが好ましい。撥水剤エマルジョンとしては、従来公知のフッ素系撥水剤エマルジョン、シリコーン系撥水剤エマルジョン或いはパラフィン系撥水剤エマルジョン等を使用しうる。本発明においては、フッ素系撥水剤エマルジョンを使用するのが好ましく、この中でも、フッ素系撥水剤中にパーフルオロオクタン酸が残留していたり或いはフッ素系撥水剤から経時的にパーフルオロオクタン酸が生成しにくいものを用いるのが好ましい。この理由は、パーフルオロオクタン酸は難分解性で、環境に残留する性質があるため、地球環境に好ましくないからである。かかるフッ素系撥水剤としては、側鎖に炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を有するアクリレート化合物を重合して得られたものが代表的である。具体的には、旭硝子株式会社製「アサヒガード AG−E061」、ダイキン工業株式会社製「ユニダイン TG−5521」、日華化学株式会社製「NKガード SCH−02」、クラリアントジャパン株式会社製「NUVA N2114 LIQ」等が挙げられる。
【0009】
布帛本体を撥水加工する方法としても、従来公知の方法を採用しうる。具体的には、パディング法、コーティング法、グラビアコーティング法、スプレー法等の手段を採用しうる。たとえば、パディング法では、撥水剤エマルジョンに布帛本体を浸漬後、マングルで絞り、所定の付与量に調整し、80〜150℃の温度で乾燥後、150〜180℃の温度で30秒〜2分間のキュアリングを行う。これによって、両面に撥水加工が施された布帛本体が得られる。また、グラビアコーティング法では、高メッシュのグラビアロールを用いて片面のみに撥水剤エマルジョンを付着させ、その後、同様にして乾燥及びキュアリングを行う。これによって、片面のみに撥水加工が施された布帛本体が得られる。また、乾燥及びキュアリングを行った後、鏡面ロールを具備するカレンダー加工機を用いて、布帛本体表面の目潰し加工を行うのが好ましい。これは、後で塗布する微多孔膜形成用樹脂組成物が、布帛本体内部に深く浸透するのを防止するためである。
【0010】
撥水剤の付与量は、布帛本体中に、固形分換算で0.1〜3質量%が好ましく、0.3〜2質量%がより好ましい。付与量が0.1質量%未満になると、布帛本体に十分な撥水性能を付与し難く、一方、3質量%を超えると、得られる透湿防水性布帛の風合いが硬化しやくなったり、微多孔膜との接着性が低下したり、或いは微多孔膜の透湿性能に悪影響を及ぼす恐れが生じる。
【0011】
撥水剤エマルジョン中には、撥水耐久性を向上させる目的で、トリアジン化合物、イソシアネート化合物等を混合してもよい。これらの中では、環境面からイソシアネート化合物が好適である。また、撥水剤エマルジョンの加工安定性の面からは、イソシアネート基をアセトオキシム、フェノール、カプロラクタム等でブロックした熱解離タイプのブロックイソシアネート化合物がより好適である。
【0012】
布帛本体の片面に積層されるポリウレタン樹脂を主体とする微多孔膜は、以下のような微多孔膜形成用樹脂組成物を、湿式凝固させて得られるものである。すなわち、かかる微多孔膜形成用樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂を主体とし、シリカ微粉末3〜45質量%、フッ素系撥水剤1〜9質量%及び油溶性のフッ素系界面活性剤0.1〜2質量%を含有する液状のものである。
【0013】
ポリウレタン樹脂としては、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応させて得られる従来公知のものを採用しうる。ポリイソシアネート成分としては、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等が単独で又は混合して用いられる。具体的には、トリレン−2,4−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート又は1,4−シクロヘキサンジイソシアネート等を主成分として用い、必要に応じ3官能以上のポリイソシアネートを使用してもよい。一方、ポリオール成分としては、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール等が用いられる。ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール又はポリテトラエチレングリコール等が用いられる。ポリエステルポリオールとしては、エチレングリコールやプロピレングリコール等のジオールと、アジピン酸やセバチン酸等の二塩基酸との反応生成物、又はカプロラクトン等の開環重合物を用いることができ、勿論、オキシ酸モノマー或いはそのプレポリマーの重合物も用いることができる。
【0014】
ポリウレタン樹脂は、微多孔膜形成用樹脂組成物の固形分中において、50質量%以上含有しているのが好ましい。ポリウレタン樹脂含有量が少なくなると、相対的にシリカ微粉末等の含有量が多くなり、微多孔膜が脆くなる傾向が生じる。もちろん、微多孔膜が脆くならなければ、50質量%よりも若干少なくなっても差し支えない。
【0015】
シリカ微粉末としては、二酸化珪素よりなる微粉末であれば、従来公知のものを用いることができる。一般的に、一次粒子径が7〜40nm程度の二酸化珪素よりなる微粉末が用いられる。一次粒子径が40nmを超えると、微多孔膜中に形成される孔の径が大きくなり、耐水圧が低下する傾向が生じる。本発明においては、シリカ微粉末として、アモルファスのガラス状で細孔のない球状一次粒子からなるがフュームドシリカ微粉末を用いるのが好ましい。具体的には、親水性フュームドシリカ微粉末又は疎水性フュームドシリカ微粉末が用いられるが、本発明では特に疎水性フュームドシリカ微粉末を用いるのが好ましい。かかるシリカ微粉末は市販されているものであり、たとえば、日本アエロジル株式会社製「AEROSIL 90」、「AEROSIL 130」、「AEROSIL 150」、「AEROSIL 200」、「AEROSIL 300」といった親水性フュームドシリカ微粉末、「AEROSIL R104」、「AEROSIL R106」、「AEROSIL R202」、「AEROSIL R805」、「AEROSIL RX200」、「AEROSIL RX300」、「AEROSIL R972」、「AEROSIL R974」、「AEROSIL R976」、「AEROSIL R7200」、「AEROSIL R8200」、「AEROSIL R9200」といった疎水性フュームドシリカ微粉末が用いられる。また、シリカ微粉末として、フュームドシリカとフュームド酸化アルミニウムを混合させた微粉末である「AEROSIL COK84」も用いることができる。
【0016】
シリカ微粉末は、微多孔膜形成用樹脂組成物の固形分中において、3〜45質量%含有されている。好ましくは10〜45質量%であり、より好ましくは15〜45質量%である。シリカ微粉末の含有量が3質量%未満になると、形成された微多孔膜中の孔径が大きくなり、耐水圧が低下すると共に洗濯耐久性も低下するので、好ましくない。また、シリカ微粉末の含有量が45質量%を超えると、形成された微多孔膜が脆くなり、耐水圧が低下すると共に洗濯耐久性も低下するので、好ましくない。シリカ微粉末は微多孔膜形成用樹脂組成物中に比較的多量に含有されているが、均一に分散した状態で含有されているのが好ましい。シリカ微粉末を均一に分散するためには、予め、3本ロールミル機、ニーダー機又はサンドミル機等の混合機を用いて、ポリウレタン樹脂と混合しておき、その後、微多孔膜形成用樹脂組成物を調製するのが好ましい。
【0017】
フッ素系撥水剤としては、従来公知のものが用いられる。本発明において、フッ素系撥水剤を使用するのは、フッ素系界面活性剤と混合しやすく、調製しやすく且つ塗布しやすい微多孔膜形成用樹脂組成物を得ることができるからである。本発明においては、フッ素系撥水剤の中でも、そこにパーフルオロオクタン酸が残留していたり或いはそこから経時的にパーフルオロオクタン酸が生成しにくいものを用いるのが好ましい。この理由は、パーフルオロオクタン酸は難分解性で、環境に残留する性質があるため、地球環境に好ましくないからである。かかるフッ素系撥水剤は、側鎖に炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を有するアクリレート化合物を重合して得られたものである。具体的には、旭硝子株式会社製「アサヒガード AG−E061」、ダイキン工業株式会社製「ユニダイン TG−5521」、日華化学株式会社製「NKガード SCH−02」、クラリアントジャパン株式会社製「NUVA N2114 LIQ」等が挙げられる。
【0018】
フッ素系撥水剤は、微多孔膜形成用樹脂組成物の固形分中において、1〜9質量%含有されている。フッ素系撥水剤の含有量が1質量%未満であると、洗濯を繰り返したとき、微多孔膜中の微孔に洗剤が吸着しやすくなるので、好ましくない。すなわち、微孔に洗剤が吸着していると、水を呼び込みやすくなり、洗濯耐久性(耐水圧の洗濯耐久性)が低下するので、好ましくない。また、フッ素系撥水剤の含有量が9質量%を超えると、微多孔膜形成用樹脂組成物の安定性が悪くなり、塗布しにくくなって、均一な微多孔膜が形成しにくくなる。この結果、微多孔膜に班が生じ、耐水圧及び洗濯耐久性共に低下するので、好ましくない。
【0019】
油溶性のフッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキル基よりなる疎水基と、ポリオキシアルキレン基、スルホン酸基又はカルボン酸基等の親水基とを有し、界面活性能のあるものが採用される。ここで、油溶性とは、トルエンに対して50質量%以上溶解又は相溶するという意味である。すなわち、トルエン100質量部に対してフッ素系界面活性剤50質量部を混合攪拌したとき、1時間経過後においても、相分離を起こさないということである。本発明において、油溶性のフッ素系界面活性剤を用いる理由は、微多孔膜形成用樹脂組成物の溶媒が有機溶媒であることから、ここにフッ素系界面活性剤を均一に溶解又は分散させるためである。そして、フッ素系界面活性剤の界面活性能により、フッ素系撥水剤を均一に微多孔膜中に存在させるためである。油溶性のフッ素系界面活性剤としては、AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−651」 、「SURFLON S−611」 、「SURFLON S−386」 及び「SURFLON S−243」等が用いられる。
【0020】
また、本発明においては、油溶性で且つ水溶性のフッ素界面活性剤を用いるのが、特に好ましい。微多孔膜形成用樹脂組成物中には水も存在しているため、フッ素系界面活性剤が油溶性で且つ水溶性である方が、微多孔膜形成用樹脂組成物中により均一に溶解又は分散するからである。ここで、水溶性とは、油溶性の場合と同様に、水に対して50質量%以上溶解又は相溶するという意味である。すなわち、水100質量部に対してフッ素系界面活性剤50質量部を混合攪拌したとき、1時間経過後においても、相分離を起こさないということである。油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤としては、AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−386」 や「SURFLON S−243」 等が用いられる。
【0021】
なお、本発明においては、水溶性であるが油溶性ではないフッ素系界面活性剤や、水溶性でも油溶性でもないフッ素系界面活性剤は使用することができない。たとえば、前者のフッ素系界面活性剤としては、AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−241」 、「SURFLON S−221」 、「SURFLON S−211」 等が存在するが、このようなフッ素系界面活性剤は使用できない。また、後者のフッ素系界面活性剤としては、AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−420」 等が存在するが、このようなフッ素系界面活性剤も使用できない。
【0022】
本発明で用いるフッ素系界面活性剤の化学構造の代表例は、疎水基として炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を持ち、親水基としてポリオキシエチレン基又はポリオキシプロピレン基等のポリオキシアルキレン基を持つものである。たとえば、側鎖に炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基と共にポリオキシエチレン基又はポリオキシプロピレン基を持つアクリレート化合物を重合させたオリゴマーが用いられる。また、ポリオキシエチレン基又はポリオキシプロピレン基を持つ化合物に、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を側鎖に持つアクリレート化合物を重合させたオリゴマーを付加させたものが用いられる。ここで、疎水基として、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基が用いられる理由は、フッ素系撥水剤の説明中でも述べたのと同様である。すなわち、地球環境に悪影響を与えるパーフルオロオクタン酸がフッ素系界面活性剤中に残留していたり或いはフッ素系界面活性剤から経時的に生成しにくいからである。
【0023】
油溶性のフッ素系界面活性剤は、微多孔膜形成用樹脂組成物の固形分中において、0.1〜2質量%含有されている。フッ素系界面活性剤の含有量が0.1質量%未満であると、微多孔膜形成用樹脂組成物の安定性や塗布性が悪くなり、形成される微多孔膜の耐水圧が低下すると共に洗濯耐久性も低下するので、好ましくない。また、フッ素系界面活性剤の含有量が2質量%を超えると、形成される微多孔膜の撥水性が低下し、耐水圧が低下すると共に洗濯耐久性も低下するので、好ましくない。
【0024】
微多孔膜形成用樹脂組成物中には、前記したポリウレタン樹脂、シリカ微粉末、フッ素系撥水剤及び油溶性のフッ素系界面活性剤の他に、第三成分として架橋性イソシアネート化合物が含有されているのが好ましい。これは、微多孔膜を形成するポリウレタン樹脂を架橋させ、微多孔膜の強度の向上や、微多孔膜と布帛本体の接着力の向上を図るためである。架橋性イソシアネート化合物は、微多孔膜形成用樹脂組成物の固形分中に1〜10質量%程度含有させるのが好ましい。架橋性イソシアネート化合物の含有量が1質量%未満であると、微多孔膜の強度向上や、微多孔膜と布帛本体の接着力向上が図りにくくなる。また、架橋性イソシアネート化合物の含有量が10質量%を超えると、微多孔膜の風合いが硬くなる傾向が生じる。
【0025】
架橋性イソシアネート化合物としては、トリレン2,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が用いられる。また、これらのジイソシアネート類3モルと、活性水素を含有する化合物1モルとの付加反応によって得られるトリイソシアネート類も用いられる。なお、活性水素を含有する化合物としては、たとえば、トリメチロールプロパン、グリセリン等を用いることができる。架橋性イソシアネート化合物のうち、特にブロックイソシアネートを用いると、微多孔膜形成用樹脂組成物の安定性及びポットライフの点で有利である。ブロックイソシアネートとしては、熱処理によって解離するタイプが好ましく、具体的には、フェノール、ラクタム、メチルケトオキシム等で付加ブロック体を形成させたものが好適である。
【0026】
さらに、第三成分としては、ポリウレタン樹脂以外の樹脂が少量、たとえば固形分中に20質量%以下程度含有されていてもよい。かかる樹脂としては、たとえば、ポリアクリル酸、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリアミノ酸、ポリカーボネート等の重合体又は共重合体が用いられる。また、これらの重合体又は共重合体をフッ素やシリコン等で変成したものも用いられる。その他にも、第三成分として、顔料、フィラーなどの各種添加剤、抗菌剤、消臭剤、難燃剤等の各種機能材を含有させてもよい。
【0027】
微多孔膜形成用樹脂組成物中には、ポリウレタン樹脂、シリカ微粉末、フッ素系撥水剤及び油溶性のフッ素系界面活性剤を均一に溶解又は分散させるために、公知の有機溶媒が用いられる。特に、ポリウレタン樹脂に対する親溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドを用いるのが好ましい。有機溶媒の含有量も、従来公知の割合であって、概ね70〜85質量%程度である。
【0028】
布帛本体の片面に、コンマコーターやナイフコーター等の公知の手段で微多孔膜形成用樹脂組成物を塗布した後、湿式凝固液に浸漬させることにより、微多孔膜が形成される。湿式凝固液としては、水又はN,N−ジメチルホルムアミドを5〜30質量%含有する水溶液が用いられる。凝固液の温度は5〜35℃程度が好ましく、凝固時間は30秒〜5分間程度である。湿式凝固液にて微多孔膜形成用樹脂組成物を凝固させ、微多孔膜を得た後、N,N−ジメチルホルムアミドを除去するため、35〜80℃の温度下で1〜10分間湯洗する。そして、湯洗後、50〜150℃の温度下で1〜10分間乾燥することにより、微多孔膜が形成された透湿防水性布帛が得られるのである。微多孔膜の厚さは適宜設定しうる事項であるが、一般的には10〜50μm程度である。微多孔膜の厚さが薄くなると、耐水圧が低下する傾向があり、厚くなると風合いが低下する傾向が生じる。
【0029】
本発明においては、微多孔膜の表面に更に無孔膜を積層しても差し支えない。もちろん、無孔膜としては透湿性の無孔膜を採用するのであるが、無孔膜を積層すると、耐水圧が更に向上する。無孔膜としては、微多孔膜がポリウレタン樹脂を主体とするものであるから、微多孔膜との接着性が良好なポリウレタン樹脂膜を用いるのが好ましい。無孔膜を形成するには、無孔膜形成用樹脂組成物を微多孔膜表面に塗布して乾燥すればよい。また、離型紙等の離型基材表面に無孔膜形成用樹脂組成物を塗布して乾燥し、無孔膜を得た後、これを微多孔膜表面に積層貼合してもよい。無孔膜形成用樹脂組成物としては、一般的に、ポリウレタン樹脂を有機溶媒に溶解させたものを用いる。有機溶媒としては、微多孔質膜表面に直接に無孔膜形成用樹脂組成物を塗布する場合は、N,N−ジメチルホルムアミドの含有率が少ない、或いはこれを全く含まないものを用いる方が好ましい。なぜなら、N,N−ジメチルホルムアミドは、ポリウレタン樹脂の親溶媒に当たるので、有機溶媒中にこれが多く含まれていると、微多孔膜の表層が侵蝕される恐れがあるからである。なお、離型基材表面に無孔膜形成用樹脂組成物を塗布して、一旦無孔膜を形成した後、微多孔質膜と熱圧着或いは接着剤にて貼合する方法を採用する場合には、有機溶媒中のN,N−ジメチルホルムアミドの含有率にこだわる必要はなく、乾燥性や圧着性等を考慮して行えばよい。
【0030】
無孔膜形成用樹脂組成物の粘度は、塗布しやすいように、100〜10000mPa・s(25℃)程度が好ましい。また、無孔膜形成用樹脂組成物の固形分含有量は、10〜30質量%程度であるのが好ましい。無孔膜形成用樹脂組成物を塗布して無孔膜を形成する手段としては、従来公知の方法を採用すればよい。たとえば、ナイフコーター、コンマコーター、リバースコーター又は高メッシュ・低深度のグラビアロールを用いて、無孔膜形成用樹脂組成物を微多孔膜表面又は離型基材表面に塗布した後、乾燥して無孔膜を形成すればよい。
【0031】
無孔膜の厚さは、0.5〜12μm程度が好ましい。無孔膜の厚さが0.5μm未満であると、目的とする耐水圧の向上が不十分となる傾向が生じる。無孔膜の厚さが12μmを超えると、無孔膜自体の透湿度にもよるが、一般的に透湿度が低下する。
【0032】
本発明に係る透湿防水性布帛の微多孔膜表面又は無孔膜表面に、所定の柄が印刷されていてもよい。柄を印刷するには、柄印刷用組成物を微多孔膜表面又は無孔膜表面に、グラビアロール、ロータリースクリーン又はフラットスクリーン等を用いて所定の柄で塗布し乾燥すればよい。柄印刷用組成物は、基本的には、樹脂とこれを溶解させるための有機溶媒とが含有されてなるものである。また、樹脂を硬化させるための樹脂硬化剤が含有されていてもよい。樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂等が単独で又は混合して用いられる。特に、微多孔膜はポリウレタン樹脂を主体とするものであり、無孔膜も多くの場合ポリウレタン樹脂を主体とするものであるから、微多孔膜又は無孔膜との接着性の観点から、ポリウレタン系樹脂を採用するのが好ましい。
【0033】
柄印刷用組成物中には、樹脂と有機溶媒の他に、以下のような第三成分が含有されていてもよい。たとえば、柄の耐摩耗性の向上を図るため磨耗向上剤或いは柄の滑り性を向上させるため滑剤を含有させておいてもよい。摩耗向上剤或いは滑剤としては、ポリジメチルシロキサン等のシリコン系化合物、摺動剤等で用いられているL−リジンと有機酸の反応生成物であるNe −ラウロイル−L−リジン等の平板状粉体、湿式法(沈降法、ゲル法)による微多孔性の非晶質シリカ(二酸化珪素)微粉末が用いられる。また、その他の耐熱性有機フィラー微粉末や無機フィラー微粉末等が用いられる。さらに、透湿防水性布帛の増量を図るための充填剤、柄に所望の色彩や模様を与えるためのパール顔料等の顔料或いは染料、透湿防水性布帛に抗菌機能を与えるための抗菌剤、透湿防水性布帛の消臭効果を与えるための消臭剤等が、第三成分として含有されていてもよい。柄印刷用組成物の粘度は、印刷条件や柄によって適宜決定しうる事項であり、一般的には100〜10000mPa・s(25℃)の範囲で選択される。
【0034】
所定の柄としては、どのようなもので採用しうる。たとえば、ドット状、格子状、線状、斜線型、市松模様、ピラミッド型、亀甲柄、ある特定のネームや商標柄或いはランダム状柄等が採用され、これらは意匠性を発揮しやすい柄であり、好ましいものである。所定柄の占有面積は、透湿防水性布帛の透湿度に悪影響を及ぼさない範囲であれば任意である。一般的には、2〜50%程度の範囲である。2%未満では、たとえ細線柄を主体としても意匠性の発揮が困難となりやすく、また、占有面積が50%超えると布帛の透湿性能に影響を生じやすいので好ましくない。所定柄の厚さは、0. 5〜10μm程度でよい。柄の厚さが0. 5μm未満では見栄え感やコントラスト感が劣り、意匠性が乏しくなる傾向となる。また、柄の厚さが10μmを超えると、柄自体が摩耗脱落しやすくなり、耐久性に難点を生じやすい傾向となる。
【0035】
また、本発明では、縫製の簡略化や着用多汗時のべたつき防止等の観点から、布帛本体を表地として、微多孔膜表面或いは無孔膜表面に接着剤を用いて、裏地を貼合してもよい。すなわち、微多孔膜或いは無孔膜と裏地とを接着剤を介して貼合してもよい。このようにして得られた透湿防水性布帛は、布帛本体/微多孔膜/接着剤/裏地、或いは布帛本体/微多孔膜/無孔膜/接着剤/裏地の順で積層された形態となっている。
【0036】
裏地としては、布帛本体と同様のものが用いられる。特に、コスト、風合い、軽量性及びシームテープ接着性等から鑑みて、繊度が15〜78デシテックスのポリアミド系合成繊維やポリエステル系合成繊維、或いは前記と同繊度クラスのポリアミド系合成繊維/木綿やポリエステル系合成繊維/木綿の混合繊維よりなる織編物、不織布などが好ましい。その中でも、繊度が15〜44デシテックスのポリアミド系長繊維或いはポリエステル系長繊維よりなる編織物又は不織布が、縫製部へのシームテープ接着の容易さやシーリング部分の防水性能、並びにそれらの耐久性が有利となるので、より好ましい。なお、シームテープとは、縫製品の縫い目に防水の目的で貼合する接着テープのことである。
【0037】
裏地を貼合するための接着剤としては、従来公知のものを採用すればよい。たとえば、天然ゴム、ニトリルゴム系やクロロプレンゴム系等の合成ゴム、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリウレタン系樹脂等が単独で又は混合して用いられる。接着剤の種類としては、接着耐久性の観点から、硬化型接着剤を用いるのが好ましい。硬化型接着剤は、水酸基、イソシアネート基、アミノ基又はカルボキシル基等の反応基を持ついわゆる架橋性を有したポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂等が自己架橋するか、或いはイソシアネート系化合物又はエポキシ系化合物等の架橋剤と架橋して、硬化するものである。これらの中でも、ポリウレタン系樹脂が柔軟性に富み、かつ透湿性にも優れているので好ましい。
【0038】
また、接着剤の性状は、エマルジョン型、溶剤型或いはホットメルト型等のいずれであってもよい。エマルジョン型又は溶剤型の接着剤の場合は、粘度を500〜5000mPa・s程度として、グラビアロールやコンマコーター等の塗布手段で、微多孔膜表面、無孔膜表面又は裏地表面に、全面に又は部分的に塗布する。塗布後、微多孔膜又は無孔膜と裏地とをラミネート機で圧着又は熱圧着して貼合すればよい。また、ホットメルト型の接着剤の場合は、80〜180℃程度の温度をホットメルト型接着剤に与えて、溶融させた後、微多孔膜表面、無孔膜表面又は裏地表面に、全面に又は部分的に塗布する。そして、必要により冷却しながら、ラミネート機で微多孔膜又は無孔膜と裏地とを圧着して貼合すればよい。
【0039】
接着剤は、前記したように、微多孔膜等の表面に全面に又は部分的に適用される。透湿性能や風合いの観点からは、部分的に適用するのが好ましい。たとえば、点状、線状、市松模様、亀甲模様等の形態で、微多孔膜等の表面全体に亙って均一に適用するのが好ましい。接着剤の占有面積は、10〜80%程度が好ましい。接着剤の占有面積が10%未満では、接着剤の膜厚を厚くしても接着力が不十分となって、裏地が剥離しやすくなる傾向が生じる。また、接着剤の占有面積が80%を超えると、接着力は十分となりやすいが、特に透湿性能が低下する恐れが生じる。しかしながら、接着剤として透湿性のあるポリウレタン系接着剤を使用すれば、接着剤の占有面積が80%を超えても、差し支えない。適用した接着剤の厚さは、接着剤の占有面積や裏地の凹凸性やスパン感などにも依るが、5〜100μm程度でよい。接着剤の厚さが5μm未満では、裏地との接着力が不十分となる傾向が生じる。接着剤の厚さが100μmを超えると、透湿防水性布帛の透湿性能が低下したり、風合いが硬化したりする傾向となる。
【0040】
以上の説明したように、本発明に係る透湿防水性布帛は、布帛本体/微多孔膜、布帛本体/微多孔膜/無孔膜、布帛本体/微多孔膜/柄印刷、布帛本体/微多孔膜/無孔膜/柄印刷、布帛本体/微多孔膜/接着剤/裏地及び布帛本体/微多孔膜/無孔膜/接着剤/裏地の順で積層された各種のものがある。かかる透湿防水性布帛に、さらに耐水圧を向上させるため、撥水加工を施してもよい。撥水加工の方法は、目潰し加工を行うことは少ないが、基本的には、布帛本体を撥水加工する方法と同様にして行うことができる。
【0041】
本発明にかかる透湿防水性布帛は、耐水圧、透湿性及び洗濯耐久性に優れており、スポーツ衣料や防寒衣料等の各種衣料の素材としてはもちろん、テント等の登山用具等の素材としても使用しうるものである。さらに、透湿防水性の必要な各種製品の素材としても、使用しうるものである。
【発明の効果】
【0042】
本発明に係る透湿防水性布帛は、布帛本体の片面に、ポリウレタン樹脂を主体とする微多孔膜が積層されてなるものであって、微多孔膜が、シリカ微粉末3〜45質量%、フッ素系撥水剤1〜9質量%及び油溶性のフッ素系界面活性剤0.1〜2質量%が含有されてなる微多孔膜形成用樹脂組成物を用いて形成されたものである。このため、シリカ微粉末の存在により、孔径の小さな微孔が多数形成されると共に、フッ素系撥水剤と油溶性のフッ素系界面活性剤を併用しているため、微孔の細部までもフッ素系撥水剤が均一に付与される。また、透湿防水性布帛に洗濯を繰り返すと、洗剤が微孔に残留してゆくが、油溶性のフッ素系界面活性剤は、その作用は定かではないが、この洗剤を水洗によって脱離しやすくする。したがって、本発明に係る透湿防水性布帛は、当初の耐水圧及び透湿度にも優れているが、洗濯を繰り返しても当初の耐水圧が低下しにくく、洗濯耐久性に優れるという効果を奏する。
【実施例】
【0043】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。本発明は、微多孔膜形成用樹脂組成物中に、シリカ微粉末、フッ素系撥水剤及び油溶性のフッ素系界面活性剤を所定量含有させて微多孔膜を形成すると、洗濯耐久性に優れた透湿防水性布帛が得られるとの知見に基づくものとして、解釈されるべきである。
【0044】
実施例1
[布帛本体の準備]
経糸、緯糸の双方に、ナイロン6マルチフィラメント78dtex/68fを用いて、経糸密度115本/2.54cm、緯糸密度95本/2.54cmの平組織織物を製織した。得られた平組織織物を精練した後、酸性染料(日本化薬株式会社製「Kayanol Blue N2G」)1.0%omfを用いて染色して、染色織物を得た。その後、染色織物へフッ素系撥水剤エマルジョン(旭硝子株式会社製「アサヒガード GS10」)の5%水分散液をパディング法(ピックアップ率40%)にて付与した後、乾燥し、その後170℃×40秒の熱処理を行った。続いて、一本が鏡面ロールである一対のカレンダーロールを用いて、温度170℃、圧力300kPa、速度30m/分の条件でカレンダー加工して、布帛本体を得た。
【0045】
[微多孔膜形成用樹脂組成物の調製]
まず、N,N−ジメチルホルムアミドを溶媒とするエステル型ポリウレタン樹脂溶液(セイコー化成株式会社製「ラックスキン 1740−29B」、固形分28質量%)30質量部、シリカ微粉末である疎水性フュームドシリカ(日本アエロジル株式会社製「AEROSIL R−972」、一次粒子径16nm、N,N−ジメチルホルムアミドの吸着量260mL/100g)10質量部及びN,N−ジメチルホルムアミド10質量部を混合して粗練り後、3本ロールミル機を用いて均一練りを行い、無色透明の樹脂溶液A50質量部を準備した。
【0046】
次に、油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S- 386」)0.2質量部を、N,N−ジメチルホルムアミド40質量部に相溶させた後、フッ素系撥水剤エマルジョン(旭硝子株式会社製「アサヒガード AG710」、固形分19質量%)5質量部を混合分散させて、樹脂溶液B45.2質量部を準備した。
【0047】
そして、樹脂溶液A50質量部と、樹脂溶液B45.2質量部と、N,N−ジメチルホルムアミドを溶媒とするエステル型ポリウレタン樹脂溶液(セイコー化成株式会社製「ラックスキン 1740−29B」、固形分28質量%)50質量部と、架橋性イソシアネート化合物(大日精化工業株式会社製「レザミンX」)2質量部とを混合し、真空脱泡しながらディスパー型攪拌機を用い、攪拌調液して、微多孔膜形成用樹脂組成物を調製した。この微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が24質量%であり、粘度が10000mPa・s/25℃であった。したがって、固形分中、シリカ微粉末(疎水性フュームドシリカ)は28質量%含有されており、フッ素系撥水剤は3質量%含有されており、フッ素系界面活性剤は0.6質量%含有されていることになる。
【0048】
[透湿防水性布帛の製造]
布帛本体の鏡面ロールが当接した面に、微多孔膜形成用樹脂組成物をコンマコーターにて塗布量90g/m2で塗布した。その後、濃度15質量%のN,N−ジメチルホルムアミド水溶液(20℃)からなる凝固浴に2分間浸漬することで、ポリウレタン樹脂を凝固させた。そして、50℃で5分間の湯洗を行い、布帛をマングルで絞り、続いて、130℃で2分間の乾燥を行い、ポリウレタン樹脂を主体とする微多孔膜を形成した。その後、170℃で1分間のセット加工を行って、透湿防水性布帛を得た。なお、得られた微多孔膜の厚さは約25μmであり、全体に亙って1μm以下の孔径を主体とする微孔が多数形成されていた。
【0049】
実施例2
[布帛本体の準備]
経糸としてポリエステルフィラメント140dtex/68f、緯糸としてポリエステルマルチフィラメント166dtex/288fを用いて、経糸密度86本/2.54cm、緯糸密度76本/2.54cmの平組織織物を製織した。得られた平組織織物を精練した後、分散染料(日本化薬(株)製「Dianix Blue UN- SE」)1.0%omfを用いて染色して、染色織物を得た。その後は、実施例1と同様の方法で布帛本体を得た。
【0050】
実施例1と同一の方法で[微多孔膜形成用樹脂組成物の調製]を行った。そして、微多孔膜形成用樹脂組成物の塗布量を110g/m2とした他は、実施例1と同一の方法で[透湿防水性布帛の製造]を行い。透湿防水性布帛を得た。得られた微多孔膜の厚さは約30〜32μmであり、全体に亙って1μm以下の孔径を主体とする微孔が多数形成されていた。
【0051】
実施例3
[無孔膜形成用樹脂組成物の調製]
下記に示す無孔膜形成用樹脂組成物Aを調製した。この無孔膜形成用樹脂組成物Aは、固形分が17質量%であり、粘度が3500mPa・s/25℃であった。なお、無孔膜形成用樹脂組成物Aの溶媒中に、N,N−ジメチルホルムアミドは殆ど含有されておらず、その含有率は1質量%未満であった。
[無孔膜形成用樹脂組成物A]
無黄変型ポリウレタン樹脂 50質量部
(セイコー化成株式会社製「ラックスキン U2524」、固形分25質量%)
前記ポリウレタン樹脂用マット剤 50質量部
(セイコー化成株式会社製「ラックスキン U2525M」、固形分20質量%)
イソプロピルアルコール 15質量部
トルエン 15質量部
【0052】
実施例2と同一の方法で透湿防水性布帛の製造を行い、ポリウレタン樹脂を主体とする微多孔膜を形成後、セット加工前に、上記無孔膜形成用樹脂組成物Aを微多孔膜表面にナイフコーターにて塗布量30g/m2で塗布した。そして、120℃で2分間の乾燥により約5μm厚の無孔膜を形成し、引き続き、170℃で1 分間のセット加工を行い、透湿防水性布帛を得た。
【0053】
実施例4
[無孔膜形成用樹脂組成物の調製]
下記に示す無孔膜形成用樹脂組成物Bを調製した。この無孔膜形成用樹脂組成物Bは、固形分が16質量%であり、粘度が3500mPa・s/25℃であった。なお、無孔膜形成用樹脂組成物Bの溶媒中に、N,N−ジメチルホルムアミドは殆ど含有されておらず、その含有率は1質量%未満であった。
[無孔膜形成用樹脂組成物B]
無黄変型ポリウレタン樹脂 50質量部
(セイコー化成株式会社製「ラックスキン U2524」、固形分25質量%)
前記ポリウレタン樹脂用マット剤 50質量部
(セイコー化成株式会社製「ラックスキン U2525M」、固形分20質量%)
イソプロピルアルコール 20質量部
トルエン 20質量部
【0054】
実施例1と同一の方法で透湿防水性布帛の製造を行い、ポリウレタン樹脂を主体とする微多孔膜を形成後、セット加工前に、上記無孔膜形成用樹脂組成物Bを微多孔膜表面にナイフコーターにて、固形分の塗布量が5g/m2となるように塗布した。そして、120℃で2分間の乾燥により約1μm厚の無孔膜を形成し、引き続き、170℃で1 分間のセット加工を行い、透湿防水性布帛を得た。
【0055】
実施例5
[無孔膜形成用樹脂組成物の調製]
下記に示す無孔膜形成用樹脂組成物Cを調製した。この無孔膜形成用樹脂組成物Cは、固形分が18質量%であり、粘度が3000mPa・s/25℃であった。
[無孔膜形成用樹脂組成物C]
エーテル系ポリウレタン樹脂 100質量部
(大日精化工業株式会社(株)製「ハイムレン Y−611−124」、固形分25質量%)
N,N−ジメチルホルムアミド 40質量部
【0056】
[無孔膜の形成]
離型紙(リンテック株式会社製「130TPD」)の離型面に、上記無孔膜形成用樹脂組成物Cをコンマコーターにて塗布量55g/m2で塗布した。そして、120℃で2分間の乾燥により約10μm厚の無孔膜を形成した。
【0057】
実施例2と同一の方法で透湿防水性布帛の製造を行い、ポリウレタン樹脂を主体とする微多孔膜を形成後、セット加工前に、上記[無孔膜の形成]で得られた無孔膜を速やかに、微多孔膜と積層した。そして、圧力400kPa、温度120℃にて熱圧着後、離型紙を剥離した後、170℃で1 分間のセット加工を行い、透湿防水性布帛を得た。
【0058】
実施例6
[柄印刷用組成物の調製]
下記に示す柄印刷用組成物Aを調製した。この柄印刷用組成物Aの粘度は100mPa・s/25℃であった。
[柄印刷用組成物A]
ポリウレタン系グラビアインキ 100質量部
(サカタインクス(株)製、XGL−010 グレー)
グラビアインキ用硬化剤 3質量部
トルエン/メチルエチルケトン(1/1) 50重量部
【0059】
実施例1と同一の方法で透湿防水性布帛の製造を行い、ポリウレタン樹脂を主体とする微多孔膜を形成後、セット加工前に、上記[柄印刷用組成物A]を、格子柄が彫刻されたグラビアロール(深度;38μm、格子占有面積:45%)を用いて、微多孔膜表面に塗布量6g/ m2にて印刷を行った。その後、120℃で30秒間乾燥し、格子柄を形成した。引き続き、170℃で1 分間のセット加工を行い、格子柄を表面に持つ透湿防水性布帛を得た。
【0060】
実施例7
実施例4と同一の方法で透湿防水性布帛の製造を行い、無孔膜を形成した後、セット加工前に、上記[柄印刷用組成物A]を、格子柄が彫刻されたグラビアロール(深度;38μm、格子占有面積:45%)を用いて、無孔膜表面に塗布量6g/ m2にて印刷を行った。その後、120℃で30秒間乾燥し、格子柄を形成した。引き続き、170℃で1 分間のセット加工を行い、格子柄を表面に持つ透湿防水性布帛を得た。
【0061】
実施例8
[裏地の準備]
ナイロンフィラメント22デシテックス/7 フィラメントを用いて、28ゲージのトリコット地を編成し、通常の方法により、精練を行い、裏地を準備した。
【0062】
実施例2と同一の方法で透湿防水性布帛を得た。この透湿防水性布帛の微多孔膜表面に、ドット柄が彫刻されたグラビアロール(20メッシュ)を用いて、湿気硬化型ポリウレタン樹脂系ホットメルト接着剤(三井武田ケミカル株式会社製「タケメルト MA3229」)を塗布量10g/ m2にて塗布した。そして、塗布面に前記裏地を積層し、圧力300kPaで圧着した。以上の方法で、裏地が貼合された透湿防水性布帛を得た。
【0063】
実施例9
実施例3と同一の方法で透湿防水性布帛を得た。この透湿防水性布帛の無孔膜表面に、ドット柄が彫刻されたグラビアロール(20メッシュ)を用いて、湿気硬化型ポリウレタン樹脂系ホットメルト接着剤(三井武田ケミカル株式会社製「タケメルト MA3229」)を塗布量10g/ m2にて塗布した。そして、塗布面に前記裏地を積層し、圧力300kPaで圧着した。以上の方法で、裏地が貼合された透湿防水性布帛を得た。
【0064】
実施例10
[布帛本体の準備]
フッ素系撥水剤エマルジョン(旭硝子株式会社製「アサヒガード GS10」)に代えて、フッ素系撥水剤エマルジョン(日華化学式会社製「NKガード SCH−02」、固形分20質量%)を用いる他は、実施例1と同一の方法により、布帛本体を準備した。
【0065】
[微多孔膜形成用樹脂組成物の調製]
フッ素系撥水剤エマルジョン(旭硝子株式会社製「アサヒガード AG710」、固形分19質量%)に代えて、フッ素系撥水剤エマルジョン(クラリアントジャパン株式会社製「NUVA N2114 LIQ」、固形分31質量%)を用いる他は、実施例1と同一の方法により、微多孔膜形成用樹脂組成物を調製した。この微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が24質量%であり、粘度が10000mPa・s/25℃であった。したがって、固形分中、シリカ微粉末(疎水性フュームドシリカ)は28質量%含有されており、フッ素系撥水剤は4質量%含有されており、フッ素系界面活性剤は0.6質量%含有されていることになる。
【0066】
[透湿防水性布帛の製造]
実施例1と同一の方法で透湿防水性布帛を得た。得られた微多孔膜の厚さは約27〜29μmであった。
【0067】
比較例1
[布帛本体の準備]
実施例1と同一の方法で布帛本体を準備した。
【0068】
[微多孔膜形成用樹脂組成物の調製]
実施例1で準備した無色透明の樹脂溶液A100質量部を準備した。次に、油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S- 386」)0.2質量部を、N,N−ジメチルホルムアミド60質量部に相溶させた後、フッ素系撥水剤エマルジョン(旭硝子株式会社製「アサヒガード AG710」、固形分19質量%)5質量部を混合分散させて、樹脂溶液C65.2質量部を準備した。そして、樹脂溶液A100質量部と、樹脂溶液C65.2質量部と、架橋性イソシアネート化合物(大日精化工業株式会社製「レザミンX」)2質量部とを混合し、真空脱泡しながらディスパー型攪拌機を用い、攪拌調液して、微多孔膜形成用樹脂組成物を調製した。この微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が24質量%であり、粘度が7000mPa・s/25℃であった。したがって、固形分中、シリカ微粉末(疎水性フュームドシリカ)は50質量%含有されており、フッ素系撥水剤は3質量%含有されており、フッ素系界面活性剤は0.5質量%含有されていることになる。
【0069】
[透湿防水性布帛の製造]
実施例1と同一の方法で透湿防水性布帛を得た。得られた微多孔膜の厚さは約30μmであり、全体に亙って1μm以下の孔径を主体とする微孔が多数形成されていた。
【0070】
比較例2
[布帛本体の準備]
実施例1と同一の方法で布帛本体を準備した。
【0071】
[微多孔膜形成用樹脂組成物の調製]
実施例1と同一の方法で無色透明の樹脂溶液A50質量部を準備した。次に、油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−386」)0.2質量部を、N,N−ジメチルホルムアミド40質量部に相溶させて、界面活性剤溶液A40.2質量部を準備した。この界面活性剤溶液Aは、実施例1で用いた樹脂溶液Bと異なり、フッ素系撥水剤エマルジョンが含有されていないものである。そして、樹脂溶液A50質量部と、樹脂溶液B40.2質量部と、N,N−ジメチルホルムアミドを溶媒とするエステル型ポリウレタン樹脂溶液(セイコー化成株式会社製「ラックスキン 1740−29B」、固形分28質量%)50質量部と、架橋性イソシアネート化合物(大日精化工業株式会社製「レザミンX」)2質量部とを混合し、真空脱泡しながらディスパー型攪拌機を用い、攪拌調液して、微多孔膜形成用樹脂組成物を調製した。この微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が24質量%であり、粘度が10000mPa・s/25℃であった。したがって、固形分中、シリカ微粉末(疎水性フュームドシリカ)は29質量%含有されており、フッ素系界面活性剤は0.6質量%含有されており、フッ素系撥水剤は含有されていないものである。
【0072】
[透湿防水性布帛の製造]
実施例1と同一の方法で透湿防水性布帛を得た。得られた微多孔膜の厚さは約24〜26μmであり、全体に亙って1μm以下の孔径を主体とする微孔が多数形成されていた。
【0073】
比較例3
[布帛本体の準備]
実施例1と同一の方法で布帛本体を準備した。
【0074】
[微多孔膜形成用樹脂組成物の調製]
実施例1と同一の方法で、無色透明の樹脂溶液A50質量部を準備した。次に、油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−386」)0.2質量部を、N,N−ジメチルホルムアミド40質量部に相溶させた後、フッ素系撥水剤エマルジョン(旭硝子株式会社製「アサヒガード AG710」、固形分19質量%)20質量部を混合分散させて、樹脂溶液D60.2質量部を準備した。そして、樹脂溶液A50質量部と、樹脂溶液D60.2質量部と、N,N−ジメチルホルムアミドを溶媒とするエステル型ポリウレタン樹脂溶液(セイコー化成株式会社製「ラックスキン 1740−29B」、固形分28質量%)50質量部と、架橋性イソシアネート化合物(大日精化工業株式会社製「レザミンX」)2質量部とを混合し、真空脱泡しながらディスパー型攪拌機を用い、攪拌調液して、微多孔膜形成用樹脂組成物を調製した。この微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が24質量%であり、粘度が10000mPa・s/25℃であった。したがって、固形分中、シリカ微粉末(疎水性フュームドシリカ)は26質量%含有されており、フッ素系撥水剤は10質量%含有されており、フッ素系界面活性剤は0.5質量%含有されていることになる。
【0075】
[透湿防水性布帛の製造]
実施例1と同一の方法で透湿防水性布帛を得た。得られた微多孔膜の厚さは約24〜26μmであり、全体に亙って1μm以下の孔径を主体とする微孔が多数形成されていた。
【0076】
比較例4
[布帛本体の準備]
実施例1と同一の方法で布帛本体を準備した。
【0077】
[微多孔膜形成用樹脂組成物の調製]
実施例1と同一の方法で無色透明の樹脂溶液A50質量部を準備した。次に、油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤を使用せずに、N,N−ジメチルホルムアミド40質量部に、フッ素系撥水剤エマルジョン(旭硝子株式会社製「アサヒガード AG710」、固形分19質量%)5質量部を混合分散させて、樹脂溶液B45質量部を準備した。そして、樹脂溶液A50質量部と、樹脂溶液B45質量部と、N,N−ジメチルホルムアミドを溶媒とするエステル型ポリウレタン樹脂溶液(セイコー化成株式会社製「ラックスキン 1740−29B」、固形分28質量%)50質量部と、架橋性イソシアネート化合物(大日精化工業株式会社製「レザミンX」)2質量部とを混合し、真空脱泡しながらディスパー型攪拌機を用い、攪拌調液して、微多孔膜形成用樹脂組成物を調製した。この微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が24質量%であり、粘度が10000mPa・s/25℃であった。したがって、固形分中、シリカ微粉末(疎水性フュームドシリカ)は28質量%含有されており、フッ素系撥水剤は3質量%含有されており、フッ素系界面活性剤は含有されていないものである。
【0078】
[透湿防水性布帛の製造]
実施例1と同一の方法で透湿防水性布帛を得た。得られた微多孔膜の厚さは約24〜26μmであり、全体に亙って1μm以下の孔径を主体とする微孔が多数形成されていた。
【0079】
比較例5
[布帛本体の準備]
実施例1と同一の方法で布帛本体を準備した。
【0080】
[微多孔膜形成用樹脂組成物の調製]
実施例1と同一の方法で無色透明の樹脂溶液A50質量部を準備した。次に、油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−386」)1質量部を、N,N−ジメチルホルムアミド40質量部に相溶させた後、フッ素系撥水剤エマルジョン(旭硝子株式会社製「アサヒガード AG710」、固形分19質量%)5質量部を混合分散させて、樹脂溶液E46質量部を準備した。
【0081】
そして、樹脂溶液A50質量部と、樹脂溶液E46質量部と、N,N−ジメチルホルムアミドを溶媒とするエステル型ポリウレタン樹脂溶液(セイコー化成株式会社製「ラックスキン 1740−29B」、固形分28質量%)50質量部と、架橋性イソシアネート化合物(大日精化工業株式会社製「レザミンX」)2質量部とを混合し、真空脱泡しながらディスパー型攪拌機を用い、攪拌調液して、微多孔膜形成用樹脂組成物を調製した。この微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が25質量%であり、粘度が10000mPa・s/25℃であった。したがって、固形分中、シリカ微粉末(疎水性フュームドシリカ)は27質量%含有されており、フッ素系撥水剤は3質量%含有されており、フッ素系界面活性剤は3質量%含有されていることになる。
【0082】
[透湿防水性布帛の製造]
実施例1と同一の方法で透湿防水性布帛を得た。得られた微多孔膜の厚さは約24〜26μmであり、全体に亙って1μm以下の孔径を主体とする微孔が多数形成されていた。
【0083】
実施例1〜10及び比較例1〜5で得られた透湿防水性布帛に関して、耐水圧、洗濯耐久性及び透湿度を、以下の方法で測定した。そして、その結果を表1に示した。
(1)耐水圧(kPa)
JIS L−1092(高水圧法)に準じて測定した。
(2)洗濯耐久性(%)
JIS L−0217(103法)に準じた洗濯を100回繰り返した後の透湿防水性布帛の耐水圧(B)を測定し、下記式に準じて洗濯前の耐水圧(A)に対する洗濯後の耐水圧(B)の保持率を算出し、この値を透湿防水性布帛の洗濯耐久性(%)とした。
洗濯耐久性(%)=(B/A)×100
(3)透湿度(g/m2・24hrs)
JIS L−1099 A−1法(塩化カルシウム法)に準じて測定した。
【0084】
[表1]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
耐 水 圧
━━━━━━━━━━━━━━
洗濯前 100回洗濯後 洗濯耐久性 透湿度
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例1 192 136 71 11892
実施例2 251 188 75 10875
実施例3 405 328 81 8092
実施例4 250 190 76 10638
実施例5 580 540 93 8400
実施例6 198 152 77 10532
実施例7 258 203 79 9854
実施例8 268 214 80 9240
実施例9 435 360 83 7430
実施例10 208 158 76 11876
───────────────────────────────────
比較例1 157 54 34 11902
比較例2 181 80 44 11534
比較例3 120 67 56 11988
比較例4 115 48 42 11620
比較例5 98 39 40 17783
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0085】
実施例1〜10と比較例1〜5とを対比すると、実施例に係る透湿防水性布帛は、比較例に係るものに比べて、いずれも耐水圧が高く、洗濯耐久性も良好であることが分かる。この理由は、以下のとおりであると考えられる。比較例1に係る方法で得られた透湿防水性布帛は、シリカ微粉末の使用量が多すぎるため、形成された微多孔膜が脆くなり、このため、耐水圧が低く、洗濯耐久性に劣る。比較例2に係る方法で得られた透湿防水性布帛は、微多孔膜中にフッ素系撥水剤が含有されていないため、耐水圧が低く、洗濯耐久性に劣る。比較例3に係る方法で得られた透湿防水性布帛は、微多孔膜形成用樹脂組成物中に含有されているフッ素系撥水剤の量が多すぎるため、微多孔膜形成時に班が生じる。この結果、微多孔膜が均一に形成されないので、耐水圧が低く、洗濯耐久性に劣る。比較例4に係る方法で得られた透湿防水性布帛は、微多孔膜中に油溶性のフッ素系界面活性剤が含有されていないので、耐水圧が低く、洗濯耐久性に劣る。比較例5に係る方法で得られた透湿防水性布帛は、微多孔膜中に含有されている油溶性のフッ素系界面活性剤の量が多すぎるため、耐水圧が低く、洗濯耐久性に劣る。すなわち、微多孔膜に所定量のシリカ微粉末とフッ素系撥水剤と油溶性のフッ素系界面活性剤が存在すると、高耐水圧のものが得られると共に、洗濯耐久性が向上するのである。
【0086】
実施例11
[布帛本体の準備]
フッ素系撥水剤エマルジョン(旭硝子株式会社製「アサヒガード GS10」)の5%水分散液に代えて、下記処方1の水分散液を使用する他は、実施例1と同一の方法で布帛本体を得た。
〈処方1〉
フッ素系撥水剤エマルジョン 50質量部
(日華化学株式会社製「NKガード SCH−02」、固形分20質量%)
ブロックタイプイソシアネート 10質量部
(明成化学工業株式会社製「メイカネート WEB」)
イソプロピルアルコール 20質量部
水 920質量部
【0087】
[微多孔膜形成用樹脂組成物の調製]
まず、油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−386」)0.15質量部を、N,N−ジメチルホルムアミド35質量部に相溶させた後、フッ素系撥水剤エマルジョン(クラリアントジャパン株式会社製「NUVA N2114 LIQ」、固形分31質量%)6質量部を混合分散させた。
その後、この混合分散液に、エステル型ポリウレタン樹脂溶液(セイコー化成株式会社製「ラックスキン UJ8517」、固形分25質量%)100質量部と、シリカ微粉末であるフュームドシリカを含むポリウレタン樹脂溶液(セイコー化成株式会社製「ラックスキン UJ8518M」、総固形分20質量%、総固形分中のシリカ微粉末含有量60質量%。なお、このシリカ微粉末はフュームドシリカである。)35質量部及び架橋性イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業株式会社製「コロネートHX」)1質量部を混合し、真空脱泡しながらディスパー型攪拌機を用い、攪拌調液して、微多孔膜形成用樹脂組成物を調製した。この微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が20質量%であり、粘度が10000mPa・s/25℃であった。したがって、固形分中、シリカ微粉末(フュームドシリカ)は12質量%含有されており、フッ素系撥水剤は5質量%含有されており、フッ素系界面活性剤は0.4質量%含有されていることになる。
【0088】
[透湿防水性布帛の製造]
布帛本体の鏡面ロールが当接した面に、微多孔膜形成用樹脂組成物をコンマコーターにて塗布量100g/m2で塗布した。その後、濃度10質量%のN,N−ジメチルホルムアミド水溶液(20℃)の凝固浴に2分間浸漬することで、ポリウレタン樹脂を凝固させた。そして、50℃で5分間の湯洗を行い、布帛をマングルで絞り、続いて、130℃で2分間の乾燥を行い、ポリウレタン樹脂を主体とする微多孔膜を形成した。その後、170℃で1 分間のセット加工を行って、透湿防水性布帛を得た。なお、得られた微多孔膜の厚さは約60μmであり、全体に亙って1μm以下の孔径を主体とする微孔が多数形成されていた。そして、微孔に比べてその数が少ないが、付随的に10〜40μm程度の孔が形成されていた。
【0089】
実施例12
[無孔膜形成用樹脂組成物の調製]
まず、油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−386」)0.25質量部を、トルエン5質量部に相溶させた界面活性剤溶液B5.25質量部と、フッ素系撥水剤エマルジョン(クラリアントジャパン株式会社製「NUVA N2114 LIQ」、固形分31質量%)5質量部を、イソプロピルアルコール15質量部に混合した混合液20質量部とを混合分散させた。
その後、この混合分散液に、無黄変型ポリウレタン樹脂(セイコー化成株式会社製「ラックスキン U2524」、固形分25質量%)50質量部及び前記ポリウレタン樹脂用マット剤(セイコー化成株式会社製「ラックスキン U2525M」、固形分20質量%)50質量部を混合して、無孔膜形成用樹脂組成物Dを調製した。この無孔膜形成用樹脂組成物Dは、固形分が19重量%であり、粘度が4000mPa・s/25℃であった。なお、無孔膜形成用樹脂組成物Dの溶媒中に、N,N−ジメチルホルムアミドは殆ど含有されておらず、その含有率は1質量%未満であった。
【0090】
実施例11と同一の方法で透湿防水性布帛の製造を行い、ポリウレタン樹脂を主体とする微多孔膜を形成後、セット加工前に、上記無孔膜形成用樹脂組成物Dを微多孔膜表面にナイフコーターにて塗布量30g/m2で塗布した。そして、130℃で1分間の乾燥により約5μm厚の無孔膜を形成し、引き続き、170℃で1 分間のセット加工を行い、透湿防水性布帛を得た。
【0091】
実施例13
[無孔膜形成用樹脂組成物の調製]
トルエン5質量部とイソプロピルアルコール15質量部とが混合された混合溶媒20質量部に、無黄変型ポリウレタン樹脂(セイコー化成株式会社製「ラックスキン U2524」、固形分25質量%)50質量部及び前記ポリウレタン樹脂用マット剤(セイコー化成株式会社製「ラックスキン U2525M」、固形分20質量%)50質量部を混合して、無孔膜形成用樹脂組成物Eを調製した。この無孔膜形成用樹脂組成物Eは、固形分が19重量%であり、粘度が4000mPa・s/25℃であった。なお、無孔膜形成用樹脂組成物Eの溶媒中に、N,N−ジメチルホルムアミドは殆ど含有されておらず、その含有率は1質量%未満であった。
【0092】
実施例11と同一の方法で透湿防水性布帛の製造を行い、ポリウレタン樹脂を主体とする微多孔膜を形成後、セット加工前に、上記無孔膜形成用樹脂組成物Dを微多孔膜表面にナイフコーターにて塗布量30g/m2で塗布した。そして、130℃で1分間の乾燥により約5μm厚の無孔膜を形成し、引き続き、170℃で1 分間のセット加工を行い、透湿防水性布帛を得た。
【0093】
実施例14
実施例6で用いたのと同一の柄印刷用組成物Aを準備した。そして、実施例11と同一の方法で透湿防水性布帛の製造を行い、ポリウレタン樹脂を主体とする微多孔膜を形成後、セット加工前に、前記柄印刷用組成物Aを格子柄が彫刻されたグラビアロール(深度;38μm、格子占有面積:45%)を用いて、微多孔膜表面に塗布量6g/ m2にて印刷を行った。その後、120℃で30秒間乾燥し、格子柄を形成した。引き続き、170℃で1分間のセット加工を行い、格子柄を表面に持つ透湿防水性布帛を得た。
【0094】
実施例15
実施例8で用いたのと同一の裏地を準備した。そして、実施例11と同一の方法で透湿防水性布帛を得た。この透湿防水性布帛の微多孔膜表面に、ドット柄が彫刻されたグラビアロール(20メッシュ)を用いて、湿気硬化型ポリウレタン樹脂系ホットメルト接着剤(三井武田ケミカル株式会社製「タケメルト MA3229」)を塗布量10g/ m2にて塗布した。そして、塗布面に前記裏地を積層し、圧力300kPaで圧着した。以上の方法で、裏地が貼合された透湿防水性布帛を得た。
【0095】
比較例11
[布帛本体の準備]
実施例11と同一の方法で布帛本体を準備した。
【0096】
[微多孔膜形成用樹脂組成物の調製]
油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤を使用せずに、N,N−ジメチルホルムアミド35質量部にフッ素系撥水剤エマルジョン(クラリアントジャパン株式会社製「NUVA N2114 LIQ」、固形分31質量%)6質量部を混合分散させた。
その後、この混合分散液に、エステル型ポリウレタン樹脂溶液(セイコー化成株式会社製「ラックスキン UJ8517」、固形分25質量%)100質量部と、シリカ微粉末であるフュームドシリカを含むポリウレタン樹脂溶液(セイコー化成株式会社製「ラックスキン UJ8518M」、総固形分20質量%、総固形分中のシリカ微粉末含有量60質量%。なお、このシリカ微粉末はフュームドシリカである。)35質量部及び架橋性イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業株式会社製「コロネートHX」)1質量部を混合し、真空脱泡しながらディスパー型攪拌機を用い、攪拌調液して、微多孔膜形成用樹脂組成物を調製した。この微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が20質量%であり、粘度が10000mPa・s/25℃であった。したがって、固形分中、シリカ微粉末(フュームドシリカ)は12質量%含有されており、フッ素系撥水剤は5質量%含有されており、フッ素系界面活性剤は含有されていないものである。
【0097】
[透湿防水性布帛の製造]
実施例11と同一の方法で透湿防水性布帛を得た。得られた微多孔膜の厚さは約60μmであり、全体に亙って1μm以下の孔径を主体とする微孔が多数形成されていた。そして、微孔に比べてその数が少ないが、付随的に10〜40μm程度の孔が形成されていた。
【0098】
比較例12
[布帛本体の準備]
実施例11と同一の方法で布帛本体を準備した。
【0099】
[微多孔膜形成用樹脂組成物の調製]
まず、油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−386」)0.15質量部を、N,N−ジメチルホルムアミド35質量部に相溶させた界面活性剤溶液C35.15質量部を得た。
その後、この界面活性剤溶液Cに、エステル型ポリウレタン樹脂溶液(セイコー化成株式会社製「ラックスキン UJ8517」、固形分25質量%)100質量部と、シリカ微粉末であるフュームドシリカを含むポリウレタン樹脂溶液(セイコー化成株式会社製「ラックスキン UJ8518M」、総固形分20質量%、総固形分中のシリカ微粉末含有量60質量%。なお、このシリカ微粉末はフュームドシリカである。)35質量部及び架橋性イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業株式会社製「コロネートHX」)1質量部を混合し、真空脱泡しながらディスパー型攪拌機を用い、攪拌調液して、微多孔膜形成用樹脂組成物を調製した。この微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が19質量%であり、粘度が10000mPa・s/25℃であった。したがって、固形分中、シリカ微粉末(フュームドシリカ)は12質量%含有されており、フッ素系撥水剤は含有されておらず、フッ素系界面活性剤は0.5質量%含有されていることになる。
【0100】
[透湿防水性布帛の製造]
実施例11と同一の方法で透湿防水性布帛を得た。得られた微多孔膜の厚さは約60μmであり、全体に亙って1μm以下の孔径を主体とする微孔が多数形成されていた。そして、微孔に比べてその数が少ないが、付随的に10〜40μm程度の孔が形成されていた。
【0101】
比較例13
[布帛本体の準備]
実施例11と同一の方法で布帛本体を準備した。
【0102】
[微多孔膜形成用樹脂組成物の調製]
N,N−ジメチルホルムアミド35質量部に、エステル型ポリウレタン樹脂溶液(セイコー化成株式会社製「ラックスキン UJ8517」、固形分25質量%)100質量部と、シリカ微粉末であるフュームドシリカを含むポリウレタン樹脂溶液(セイコー化成株式会社製「ラックスキン UJ8518M」、総固形分20質量%、総固形分中のシリカ微粉末含有量60質量%。なお、このシリカ微粉末はフュームドシリカである。)35質量部及び架橋性イソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業株式会社製「コロネートHX」)1質量部を混合し、真空脱泡しながらディスパー型攪拌機を用い、攪拌調液して、微多孔膜形成用樹脂組成物を調製した。この微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が19質量%であり、粘度が10000mPa・s/25℃であった。したがって、固形分中、シリカ微粉末(フュームドシリカ)は12質量%含有されており、フッ素系撥水剤及びフッ素系界面活性剤は含有されていない。
【0103】
[透湿防水性布帛の製造]
実施例11と同一の方法で透湿防水性布帛を得た。得られた微多孔膜の厚さは約60μmであり、全体に亙って1μm以下の孔径を主体とする微孔が多数形成されていた。そして、微孔に比べてその数が少ないが、付随的に10〜40μm程度の孔が形成されていた。
【0104】
実施例11〜15及び比較例11〜13で得られた透湿防水性布帛に関して、耐水圧、洗濯耐久性及び透湿度を、実施例1〜10及び比較例1〜5で採用した方法と同一の方法で測定した。その結果を表2に示した。
【0105】
[表2]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
耐 水 圧
━━━━━━━━━━━━━━
洗濯前 100回洗濯後 洗濯耐久性 透湿度
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例11 145 95 66 9989
実施例12 238 186 78 7266
実施例13 229 165 72 7028
実施例14 157 118 75 8990
実施例15 170 136 80 9190
───────────────────────────────────
比較例11 115 69 60 9893
比較例12 93 33 35 9436
比較例13 136 54 40 9275
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0106】
実施例11〜15と比較例11〜13とを対比すると、実施例に係る透湿防水性布帛は、比較例に係るものに比べて、いずれも耐水圧が高く、洗濯耐久性も良好であることが分かる。この理由は、以下のとおりであると考えられる。比較例11に係る方法で得られた透湿防水性布帛は、微多孔膜中に油溶性のフッ素系界面活性剤が含有されていないので、耐水圧が低く、洗濯耐久性に劣る。比較例12に係る方法で得られた透湿防水性布帛は、微多孔膜中にフッ素系撥水剤が含有されていないため、耐水圧が低く、洗濯耐久性に劣る。比較例13に係る方法で得られた透湿防水性布帛は、微多孔膜中にフッ素系界面活性剤及びフッ素系撥水剤の両者が含有されていないため、耐水圧が低く、洗濯耐久性に劣る。なお、実施例11〜15と前記表1の比較例1〜5とを対比すると、耐水圧の絶対値は実施例11〜15の方が低くなっていることもあるが、これは使用するポリウレタン樹脂等の原料が相違するためである。注目すべきは洗濯耐久性であり、実施例1〜15に係る透湿防水性布帛は、いずれの比較例に係る透湿防水性布帛よりも洗濯耐久性に優れている。すなわち、微多孔膜に所定量のシリカ微粉末とフッ素系撥水剤と油溶性のフッ素系界面活性剤が存在すると、洗濯耐久性が向上するのである。
【0107】
実施例21
油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−386」)を0.2質量部用いるのに代えて、これを0.5質量部を用いて混合分散させる他は、実施例1と同一の方法により、防水透湿性布帛を得た。したがって、ここで使用した微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が24質量%であり、粘度が10000mPa・s/25℃であった。また、固形分中、シリカ微粉末(疎水性フュームドシリカ)は28質量%含有されており、フッ素系撥水剤は3質量%含有されており、フッ素系界面活性剤は1.4質量%含有されていることになる。
【0108】
実施例22
油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−386」)0.2質量部に代えて、油溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−611」。これは水溶性ではない。)0.2質量部を用いて混合分散させる他は、実施例1と同一の方法により、防水透湿性布帛を得た。したがって、ここで使用した微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が24質量%であり、粘度が10000mPa・s/25℃であった。また、固形分中、シリカ微粉末(疎水性フュームドシリカ)は28質量%含有されており、フッ素系撥水剤は3質量%含有されており、フッ素系界面活性剤は0.6質量%含有されていることになる。
【0109】
実施例23
油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−386」)0.2質量部に代えて、油溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−651」。これは水溶性ではない。)0.2質量部を用いて混合分散させる他は、実施例1と同一の方法により、防水透湿性布帛を得た。したがって、ここで使用した微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が24質量%であり、粘度が10000mPa・s/25℃であった。また、固形分中、シリカ微粉末(疎水性フュームドシリカ)は28質量%含有されており、フッ素系撥水剤は3質量%含有されており、フッ素系界面活性剤は0.6質量%含有されていることになる。
【0110】
実施例24
油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−386」)0.2質量部に代えて、油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−243」)0.2質量部を用いて混合分散させる他は、実施例1と同一の方法により、防水透湿性布帛を得た。したがって、ここで使用した微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が24質量%であり、粘度が10000mPa・s/25℃であった。また、固形分中、シリカ微粉末(疎水性フュームドシリカ)は28質量%含有されており、フッ素系撥水剤は3質量%含有されており、フッ素系界面活性剤は0.6質量%含有されていることになる。
【0111】
比較例21
油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−386」)0.2質量部に代えて、水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−241」。固形分濃度30質量%。これは油溶性ではない。)0.6質量部を用いて混合分散させる他は、実施例1と同一の方法により、防水透湿性布帛を得た。したがって、ここで使用した微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が24質量%であり、粘度が10000mPa・s/25℃であった。また、固形分中、シリカ微粉末(疎水性フュームドシリカ)は28質量%含有されており、フッ素系撥水剤は3質量%含有されており、フッ素系界面活性剤は0.6質量%含有されていることになる。
【0112】
比較例22
油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−386」)0.2質量部に代えて、水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−241」。固形分濃度30質量%。これは油溶性ではない。)1.5質量部を用いて混合分散させる他は、実施例1と同一の方法により、防水透湿性布帛を得た。したがって、ここで使用した微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が24質量%であり、粘度が10000mPa・s/25℃であった。また、固形分中、シリカ微粉末(疎水性フュームドシリカ)は28質量%含有されており、フッ素系撥水剤は3質量%含有されており、フッ素系界面活性剤は1.4質量%含有されていることになる。
【0113】
比較例23
油溶性且つ水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−386」)0.2質量部に代えて、水溶性のフッ素系界面活性剤(AGCセイミケミカル株式会社製「SURFLON S−221」。固形分濃度30質量%。これは油溶性ではない。)0.6質量部を用いて混合分散させる他は、実施例1と同一の方法により、防水透湿性布帛を得た。したがって、ここで使用した微多孔膜形成用樹脂組成物は、固形分濃度が24質量%であり、粘度が10000mPa・s/25℃であった。また、固形分中、シリカ微粉末(疎水性フュームドシリカ)は28質量%含有されており、フッ素系撥水剤は3質量%含有されており、フッ素系界面活性剤は0.6質量%含有されていることになる。
【0114】
実施例21〜24及び比較例21〜23で得られた透湿防水性布帛に関して、耐水圧、洗濯耐久性及び透湿度を、実施例1〜10及び比較例1〜5で採用した方法と同一の方法で測定した。その結果を表3に示した。
【0115】
[表3]
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
耐 水 圧
━━━━━━━━━━━━━━
洗濯前 100回洗濯後 洗濯耐久性 透湿度
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例21 180 133 74 11824
実施例22 162 115 71 11790
実施例23 152 93 61 12707
実施例24 118 78 66 12129
───────────────────────────────────
比較例21 82 43 52 11391
比較例22 76 37 49 11832
比較例23 92 44 48 12206
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0116】
実施例21〜34と比較例21〜23とを対比すると、実施例に係る透湿防水性布帛は、比較例に係るものに比べて、いずれも耐水圧が高く、洗濯耐久性も良好であることが分かる。この理由は、以下のとおりであると考えられる。比較例21〜23に係る方法で得られた透湿防水性布帛は、いずれも、微多孔膜中に油溶性のフッ素系界面活性剤が含有されておらず、水溶性のフッ素系界面活性剤が含有されているので、耐水圧が低く、洗濯耐久性に劣る。すなわち、微多孔膜中に、水溶性ではなく油溶性のフッ素系界面活性剤と、シリカ微粉末と、フッ素系撥水剤とが所定量存在していると、得られる透湿防水性布帛の洗濯耐久性が向上するのである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
布帛本体の片面に、ポリウレタン樹脂を主体とする微多孔膜が積層されてなる透湿防水性布帛において、前記微多孔膜には、シリカ微粉末3〜45質量%、フッ素系撥水剤1〜9質量%及び油溶性のフッ素系界面活性剤0.1〜2質量%が含有されていることを特徴とする透湿防水性布帛。
【請求項2】
フッ素系界面活性剤が油溶性且つ水溶性である請求項1記載の透湿防水性布帛。
【請求項3】
フッ素系界面活性剤は、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基よりなる疎水基と、ポリオキシエチレン基又はポリオキシプロピレン基よりなる親水基を有している請求項1記載の透湿防水性布帛。
【請求項4】
シリカ微粉末がフュームドシリカ微粉末である請求項1記載の透湿防水性布帛。
【請求項5】
フッ素系撥水剤が、側鎖に炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を有するアクリレート化合物を重合して得られたものである請求項1記載の透湿防水性布帛。
【請求項6】
布帛本体が撥水加工されている請求項1記載の透湿防水性布帛。
【請求項7】
微多孔膜表面に、所定柄が印刷されてなる請求項1記載の透湿防水性布帛。
【請求項8】
微多孔膜表面に、ポリウレタン樹脂を主体とする無孔膜が積層されてなる請求項1記載の透湿防水性布帛。
【請求項9】
無孔膜表面に、所定柄が印刷されてなる請求項8記載の透湿防水性布帛。
【請求項10】
微多孔膜と裏地とが、接着剤を介して貼合されてなる請求項1記載の透湿防水性布帛。
【請求項11】
無孔膜と裏地とが、接着剤を介して貼合されてなる請求項8記載の透湿防水性布帛。
【請求項12】
布帛本体表面に、ポリウレタン樹脂を主体とし、シリカ微粉末15〜45質量%、フッ素系撥水剤1〜9質量%及び油溶性のフッ素系界面活性剤0.1〜2質量%を、N,N−ジメチルホルムアミドに溶解又は分散させてなる微多孔膜形成用樹脂組成物を塗布した後、N,N−ジメチルホルムアミドを5〜30質量%含有する水溶液に浸漬して、該微多孔膜形成用樹脂組成物を凝固させて微多孔膜を形成することを特徴とする透湿防水性布帛の製造方法。

【公開番号】特開2010−163728(P2010−163728A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9387(P2009−9387)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(592197315)ユニチカトレーディング株式会社 (84)
【出願人】(000107907)セーレン株式会社 (462)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100089152
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 茂樹
【Fターム(参考)】