説明

逐次比較型ADコンバータおよびその検査方法

【課題】ADコンバータの変換時間および検査時間を削減する。
【解決手段】
本発明にかかる逐次比較型ADコンバータ10は、アナログ入力をサンプルホールドするサンプルホールド回路13と、サンプルホールド回路13から出力された電位と基準電位とを逐次比較する比較器14と、比較器14による比較結果を記憶する逐次比較レジスタ15と、逐次比較レジスタから出力された比較結果のうち上位ビットの値を記憶するSAR上位ビットレジスタ17と、逐次比較レジスタ15から出力された比較結果の下位ビットの値に基づいて、比較器14における次回以降の逐次比較を全ビットについて行うか、または下位ビットについてのみ行うかを設定するスキップフラグ設定回路18と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逐次比較型ADコンバータおよびその検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘルスケア市場やセキュリティ市場などの拡大に伴い、センシング技術への注目が高まっている。微細加工技術を利用して制作される極めて精巧なセンサ回路が、デバイス上に実現されるようになったが、センシング性能は、状態を認識して電気的な信号へ変換する機能と、その信号に対するデジタル信号処理性能に依存するため、その基本構成要素であるADコンバータについては高分解能化の要求が高まっている。
【0003】
また、半導体チップの低消費電力化の要求が高まっており、半導体チップに使用されるADコンバータとして、低消費電力化に優れた逐次比較型ADコンバータが注目されている。この逐次比較型ADコンバータでは、分解能を向上させるために、サンプリングしたアナログ信号入力と基準値との比較回数を増やす方法が公知であるが、この方法は変換時間の増加を伴う。変換時間の増加は、異なるアナログ信号入力に対してAD変換を繰り返し、得られた変換結果に対して統計処理を行って性能を検査する逐次比較型ADコンバータにとって、検査時間の増大を招き、搭載する半導体のチップコストに大きな影響を及ぼす。
【0004】
したがって、逐次比較型ADコンバータの高分解能化を実現しつつ、検査時間を小さくする技術が要求されている。
【0005】
特許文献1には、変換サイクルを短縮する逐次比較型ADコンバータについて記載されている。これによると逐次比較型ADコンバータは、前i回、例えばm回目とm+1回目の変換結果から上位側の連続した一致ビットを自動的に検出して、前i回、例えばm+1回目の変換結果の上位n'bitを予測データとすることで、今回、つまりm+2回目の際の変換サイクル短縮が可能となる。
【0006】
図4は、従来の逐次比較型ADコンバータの構成を示すブロック図である。第1比較用データレジスタ111は、nビットレジスタであり、k回目(kは1、2、‥‥)の変換結果を格納するレジスタである。第2比較用データレジスタ112は、nビットレジスタであり、k+1回目の変換結果を格納するレジスタである。nビットレジスタは、10ビット分解能のAD変換器の場合、n=10に設定される。一致ビット判定回路113は、第1比較用データレジスタ111の出力データ137と、第2比較用データレジスタ112の出力データ138とを入力とし、入力された2つのnビットのデータをビット毎に比較し、最上位ビットから数えた連続した一致ビットの個数に対応した一致ビット情報信号(変換開始ビット信号)139をADコントローラ116に出力すると同時に、予測データレジスタ114に格納する上位ビットデータ信号である予測データ出力141を出力させる。予測データレジスタ114は、一致ビット判定回路113から出力された予測データ出力141を格納するレジスタである。下位ビット変換データレジスタ115は、nビットレジスタで、下位Nビットの変換結果を格納するレジスタである。
【0007】
図5は、従来の逐次比較型ADコンバータの動作フローである。まず、ADコントロールレジスタ117の設定を行い、入力された1回目のアナログ入力信号131について、サンプルホールド回路118で一定時間サンプリングが行われ、AD変換器119でAD変換が行われる。変換結果は、逐次比較レジスタ120および下位ビット変換データレジスタ115を介してANnBUF121に格納されるとともに、第2比較用データレジスタ112にも格納される。次に、第1比較用データレジスタ111の値と第2比較用データレジスタ112の値をもとに各ビットの比較が行われ、最上位ビットから数えた連続した一致ビット数mを示す一致ビット情報信号139が一致ビット判定回路113から出力される。
【0008】
ここで、第1比較用データレジスタ111の出力データ137が(0000000000)であり、第2比較用データレジスタ112の出力データ138が(1111111110)であるものとする。第1比較用データレジスタ111の出力データ137と第2比較用データレジスタ112の出力データ138とが一致ビット判定回路113に入力され、最上位ビットから数えた連続した一致ビット数mを示す一致ビット情報信号139が出力される。これと同時に、最上位ビットから数えた連続した一致ビット数分の上位ビット側のデータが予測データとして予測データレジスタ114へ出力される。具体的には、一致ビット判定回路113から予測データレジスタ114に対して、第2比較用データレジスタ112の上位mビットの予測データ出力141が出力される。ここで、一致ビット情報信号139は一致ビット数mの値が0を示す状態となり、予測データレジスタ114には、(0000000000)が格納されている。
【0009】
予測データレジスタ114のデータがDA変換器122に入力され、2回目の変換の際の下位ビットの基準電位142が発生される。次に、2回目のアナログ入力信号131に対して、AD変換を行い、2回目の変換終了後、1回目の変換結果が第1比較用データレジスタ111に転送格納され、2回目の変換結果が第2比較用データレジスタ112に格納される。次に、一致ビット判定回路113は、第1比較用データレジスタ111の値と第2比較用データレジスタ112の値に基づいて各ビットの比較を行い、その比較結果に基づき、最上位から数えた連続した一致ビット数mを示す一致ビット情報信号139を出力する。ここで、第1比較用データレジスタ111の出力データ137が(1111111110)であり、第2比較用データレジスタ112の出力データ138が(1110001001)とすると、最上位ビットから数えた連続した一致ビット数mを示す一致ビット情報信号139が出力されると同時に、最上位ビットから数えた連続した一致ビット数mを示す一致ビット情報信号139(m=3)によって、一致ビット判定回路113から予測データレジスタ114へ第2比較用データレジスタ112の上位3ビットのデータが出力される。その結果、予測データレジスタ114には、(1110000000)が格納される。
【0010】
次に、予測データレジスタ114のデータがDA変換器122に入力され、3回目の変換の際の下位ビットの基準電位142が発生する。3回目の変換の際には、下位7ビットの変換が行われ、変換結果が下位ビット変換データレジスタ115に格納される。ここで、下位ビット変換データレジスタ115には(0000011110)が格納されている。そして、下位ビット変換データレジスタ115からのデータ出力144と予測データレジスタ114のデータ出力145とが合成され、3回目の変換結果として(1110011110)がANnBUF121に格納され、変換終了信号150が出力される。
図6のように、1回目、2回目の変換においては、10サイクル後に変換結果が出力されていたが、3回目の変換の際には、7サイクル後に変換結果を出力することができ、変換サイクルを短縮することができる。
【0011】
またその他にも、ADコンバータの処理時間を短縮するための技術が開示されている(特許文献2〜特許文献4)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−108893号公報
【特許文献2】特開2010−063055号公報
【特許文献3】特開平11−154866号公報
【特許文献4】特開2006−140819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ADコンバータの特性として、AD変換結果の直線性が挙げられる。しかしながら特許文献1にかかる技術では、アナログ入力信号として一般的なランプ入力信号を用いて逐次比較型ADコンバータの直線性を検査する場合、前2回のAD変換結果より得られた最上位ビットから連続した一致ビット数が以降の変換を繰り返すごとに減少(下位ビットが桁上がり)する。したがって、特許文献1のように予測データを用いて検査を行う場合には、上位ビットおよび下位ビットの両方を変換して予測データを変更するリカバリー処理を、頻繁に行う必要が有る。そのため、ランプ入力信号を用いて昇順あるいは降順で入力を繰り返しながらAD変換結果を得るためには多大な時間を要し、変換時間および検査時間を削減することは困難であるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明にかかる逐次比較型ADコンバータは、アナログ入力をサンプルホールドするサンプルホールド回路と、前記サンプルホールド回路から出力された電位と基準電位とを逐次比較する比較器と、前記比較器による比較結果を記憶する逐次比較レジスタと、前記逐次比較レジスタから出力された比較結果のうち上位ビットの値を記憶するSAR上位ビットレジスタと、前記逐次比較レジスタから出力された比較結果の下位ビットの値に基づいて、前記比較器における次回以降の逐次比較を全ビットについて行うか、または前記下位ビットについてのみ行うかを設定するスキップフラグ設定回路と、を備える。
【0015】
本発明にかかる逐次比較型ADコンバータでは、スキップフラグ設定回路を用いて、逐次比較レジスタから出力された比較結果の下位ビットの値に基づいて、比較器における次回以降の逐次比較を全ビットについて行うか、または下位ビットについてのみ行うかを設定している。このため、次回以降の逐次比較では、変化が生じたビットのみを比較し、変化が生じないビットについては前回の比較結果を用いることができるので、ADコンバータの変換時間および検査時間を削減することができる。
【0016】
本発明にかかる逐次比較型ADコンバータの検査方法は、アナログ入力をサンプルホールドし、前記サンプルホールドしたアナログ出力と基準電位とを比較し、比較結果を記憶し、前記比較結果のうち上位ビットの値を記憶し、前記比較結果の下位ビットの値に基づいて、次回以降の逐次比較を全ビットについて行うか、または前記下位ビットについてのみ行うかを決定する。
【0017】
本発明にかかる逐次比較型ADコンバータの検査方法では、比較結果の下位ビットの値に基づいて、次回以降の逐次比較を全ビットについて行うか、または下位ビットについてのみ行うかを決定している。このため、次回以降の逐次比較では、変化が生じたビットのみを比較し、変化が生じないビットについては前回の比較結果を用いることができるので、ADコンバータの変換時間および検査時間を削減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、ADコンバータの変換時間および検査時間を削減することが可能な逐次比較型ADコンバータおよび逐次比較型ADコンバータの検査方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態1にかかる逐次比較型ADコンバータのブロック図である。
【図2】実施の形態1にかかるスキップフラグ設定回路図のブロック図である。
【図3】実施の形態1にかかる逐次比較型ADコンバータのLSIテスターを用いた直線性を検査する処理を示すフローチャートである。
【図4】特許文献1に開示されている逐次比較型ADコンバータのブロック図である。
【図5】特許文献1に開示されている逐次比較型ADコンバータの変換動作を示すフローチャートである。
【図6】特許文献1に開示されている逐次比較型ADコンバータの動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の実施の形態1にかかる10ビット分解能を持つ逐次比較型ADコンバータ10のブロック図である。
【0021】
逐次比較型ADコンバータ10は、ADコントロールレジスタ(ANCTR)11と、ADコントローラ12と、サンプルホールド回路(SH回路)13と、比較器(COMP)14と、逐次比較レジスタ(SAR)15と、DA変換器(DAC)16と、SAR上位ビットレジスタ17と、スキップフラグ設定回路18と、変換結果レジスタ(ADCR)19と、を備える。
【0022】
サンプルホールド回路13は、アナログ入力信号31をサンプルホールドする。サンプルホールド回路13は、サンプリングしたアナログ入力信号31を比較器14に出力する。
【0023】
比較器14は、サンプルホールド回路13でサンプリングしたアナログ信号32を第1の入力とし、DA変換器16が出力する基準電位33を第2の入力として、これらの入力の比較を行い、AD変換を行う。比較器14は、比較結果出力信号34を逐次比較レジスタ15に出力する。
【0024】
逐次比較レジスタ15は、比較器14の比較結果出力信号34を入力とし、変換途中の結果を一時的に記憶する。例えば逐次比較レジスタ15は、10ビットの記憶が可能なレジスタである。
【0025】
変換結果レジスタ19は、逐次比較レジスタ15のデジタル出力信号35を入力する。ここで、逐次比較レジスタ15から出力されたデジタル出力信号35は、最上位ビット[9]から最下位ビット[0]の10ビットで構成される。以後、デジタル出力信号35[9:0]と表す。
【0026】
SAR上位ビットレジスタ17は、スキップフラグ設定回路18のスキップ許可信号36と、逐次比較レジスタ15から出力されたデジタル出力信号35[9:0]のうちの上位ビットを入力とし、SAR上位ビット信号37をDA変換器16へ出力する。例えば、SAR上位ビットレジスタ17に入力されるデジタル出力信号35は、最上位ビット[9]からビット[4]までの上位6ビットである。以後、デジタル出力信号35[9:4]と表す。
【0027】
スキップフラグ設定回路18は、逐次比較レジスタ15から出力されたデジタル出力信号35[9:0]のうちの下位ビットを入力とし、SAR上位ビットレジスタ17とADコントローラ12に、スキップ許可信号36を出力する。例えば、スキップフラグ設定回路18に入力されるデジタル出力信号35は、ビット[3]から最下位ビット[0]までの下位4ビットである。以後、デジタル出力信号35[3:0]と表す。
【0028】
図2は、図1のスキップフラグ設定回路18の一例を示すブロック図である。スキップフラグ設定回路18は、第1の設定値記憶回路51と、第1の一致検出回路52と、第2の設定値記憶回路53と、第2の一致検出回路54と、セットリセットフリップフロップ55と、を備える。
【0029】
第1の設定値記憶回路51は、逐次比較結果の値が下位ビットから上位ビットへ桁上げする直前から1[LSB]前の値(1110)を第1の設定値として記憶する。第1の一致検出回路52は、第1の設定値と逐次比較レジスタ15の下位ビットデジタル出力信号35[3:0]の値との一致を検出する。第1の一致検出回路52は、セットリセットフリップフロップ55に検出結果を出力する。
【0030】
また、例えば、第2の設定値記憶回路53は、逐次比較結果の値が下位ビットから上位ビットへ桁上げする直後から1[LSB]後の値(0001)を第2の設定として記憶する。第2の一致検出回路54は、第2の設定値と逐次比較レジスタ15の下位ビットデジタル出力信号35[3:0]の値との一致を検出する。第2の一致検出回路54は、セットリセットフリップフロップ55に検出結果を出力する。
【0031】
セットリセットフリップフロップ55は、第1の一致検出回路52にて一致を検出したらスキップ許可信号36を0にリセットし、第2の一致検出回路54にて一致を検出したらスキップ許可信号36を1にセットし、スキップ許可信号36をSAR上位ビットレジスタ17およびADコントローラ12に出力する。
【0032】
すなわち、セットリセットフリップフロップ55は、第1の一致検出回路52の出力をリセット信号として入力し、第2の一致検出回路54の出力をセット信号として入力し、第1の一致検出回路52の出力が活性状態で、第2の一致検出回路54の出力が非活性状態の場合、スキップ許可信号(制御信号)36を非活性状態とし、第1の一致検出回路52の出力が非活性状態で、第2の一致検出回路54の出力が活性状態の場合、スキップ許可信号を活性状態とする。
【0033】
なお、スキップフラグ設定回路18は、逐次比較レジスタ15から出力された比較結果の値が下位ビットから上位ビットへ桁上げする直前からn[LSB]前の値(n≧1)を第1の設定値としてもよい。また、逐次比較レジスタ15から出力された比較結果の値が下位ビットから上位ビットへ桁上げした直後からk[LSB]後の値(k≧1)を第2の設定値としてもよい。このように、下位ビットから上位ビットへ桁上げする前後においてマージンを設けることで、下位ビットから上位ビットへ桁上げが行われるタイミングを確実に捉えることができ、エラーの発生を抑制することができる。
【0034】
ADコントロールレジスタ11は、逐次比較型ADコンバータ10の開始状態及び終了状態を制御するレジスタである。ADコントロールレジスタ11は、信号をADコントローラ12に出力する。
【0035】
ADコントローラ12は、スキップフラグ設定回路18のスキップ許可信号36と、ADコントロールレジスタ11の出力信号を入力とし、これらの信号に基づいて、比較開始ステップを変更する制御信号38を比較器14へ出力する。
【0036】
次に、逐次比較型ADコンバータの動作について説明する。
図3は、図1の逐次比較型ADコンバータにおいて、ランプ入力電圧を用いたAD変換結果の直線性の検査を実施するフローチャートである。このとき検査は、検査装置(LSIテスター)を用いて実施するものとし、ランプ入力信号は1[LSB]の分解能であり、昇順で入力するものとする。
【0037】
AD変換結果の直線性の検査を実施するための初期設定を行う(ステップS1)。逐次比較レジスタ15の初期値は全ビット0とし、スキップフラグ設定回路18の出力信号であるスキップ許可信号36の初期値は0とする。
【0038】
アナログ入力信号31として、ランプ入力信号を入力する(ステップS2)。サンプルホールド回路13は、ランプ入力信号をサンプリングし、アナログ値を保持する(ステップS3)。
【0039】
スキップフラグ設定回路18は、逐次比較レジスタ15の下位ビットデジタル出力信号35[3:0]が予め第1の設定値記憶回路51に設定した第1の設定値と一致するかを判断する(ステップS4)。第1の設定値は、例えば逐次比較結果の値が下位ビットから上位ビットへ桁上げする直前より1[LSB]前の値として、(1110)を設定する。一致した場合にはステップS5に進み、不一致の場合にはステップS6へ進む。
【0040】
ステップS4でYesの場合、スキップフラグ設定回路18は、スキップ許可信号36の値を0に設定する(ステップS5)。その後、ステップS6に進む。
【0041】
スキップフラグ設定回路18は、逐次比較レジスタ15の下位ビットデジタル出力信号35[3:0]が予め第2の設定値記憶回路51に設定した第2の設定値と一致するかを判断する(ステップS6)。第2の設定値は、例えば逐次比較結果の値が下位ビットから上位ビットへ桁上げした直後から1[LSB]後の値として、(0001)を設定する。一致する場合にはステップS7に進み、不一致の場合にはステップS8へ進む。
【0042】
ステップS6でYesの場合、スキップフラグ設定回路18は、スキップ許可信号36の値を1に設定する(ステップS7)。その後、ステップS8に進む。
【0043】
スキップフラグ設定回路18は、スキップ許可信号36の値が0と一致するかを判断する(ステップS8)。一致する場合にはステップS9に進み、不一致の場合にはステップS10へ進む。
【0044】
ステップS8でYesの場合、比較器14は、逐次比較レジスタ15の最上位ビット[9]からビット[4]までの値を決定する(ステップS9)。より具体的には、比較器14は、上位ビット[9:4]の値について、サンプルホールド回路13でサンプリングしたアナログ信号32を第1の入力とし、DA変換器16が出力する基準電位33を第2の入力として逐次比較を行い、値を決定する。比較器14は、比較結果を比較結果出力信号(COMPOUT)34として逐次比較レジスタ15に出力し、ステップS11へ進む。
【0045】
ステップS8でNoの場合、SAR上位ビットレジスタ17は、記憶している前回のランプ入力に対する逐次比較レジスタ15の上位ビット[9:4]を、SAR上位ビット信号37として出力する。SAR上位ビット信号37は、DA変換器16と比較器14を介して伝送され、そのまま今回のランプ入力に対する逐次比較レジスタ15の上位ビット[9:4]の各ビットの値として(すなわち、比較結果として)用いられる(ステップS10)。すなわち比較器14において、今回の逐次比較レジスタ15の上位ビット[9:4]の逐次比較は行わずにスキップする。その後ステップS11に進む。
【0046】
比較器14は、逐次比較レジスタ15の下位ビット[3:0]の各ビットの値を逐次比較によりビット[3]から順にビット[0]まで決定する(ステップS11)。このとき下位ビット[3:0]の値は、上記ステップS9と同様に、比較器14の比較結果出力信号34によって決定する。その後、ステップS12に進む。
【0047】
変換結果レジスタ19は、各ランプ入力に対して、AD変換の変換結果を逐次比較レジスタ15から入力する。変換結果レジスタ19は、各ランプ入力に対して、AD変換の変換結果を検査装置(LSIテスター)に蓄積する(ステップS12)。その後、ステップS13に進む。
【0048】
検査装置は、ランプ入力が最後であるか否かを判断する。ランプ入力に続きがあればステップS14に進み、ランプ入力が最後であればステップS15に進む。
【0049】
ステップS13でNoの場合、ランプ入力を+1[LSB]とする(ステップS14)。その後、ステップS2に戻り、ステップS13においてランプ入力が最後であることが検査装置にて判断されるまで、上述した一連の処理を繰り返す。
【0050】
ステップS13でYesの場合、蓄積している全てのAD変換結果に対して、良品あるいは不良品を検査装置にて判定を行う(ステップS15)。
【0051】
以上で説明したように、本実施の形態にかかる逐次比較型ADコンバータでは、スキップフラグ設定回路を用いて、逐次比較レジスタから出力された比較結果の下位ビットの値に基づいて、比較器における次回以降の逐次比較を全ビットについて行うか、または下位ビットについてのみ行うかを設定している。
【0052】
すなわち、本実施の形態にかかる逐次比較型ADコンバータでは、スキップフラグ設定回路18を用いて、比較結果の値が下位ビットから上位ビットへ桁上げすることを検出している。そして、桁上げが発生しない場合には、SAR上位ビットレジスタ17に記憶されている前回の比較結果の上位ビットの値をそのまま用いている。一方、桁上げが発生した場合には、比較器における次回以降の逐次比較を全ビットについて行なっている。
【0053】
このため、次回以降の逐次比較では、変化が生じたビットのみを比較し、変化が生じないビットについては前回の比較結果を用いることができるので、ADコンバータの変換時間および検査時間を削減することができる。また、従来技術のように上位ビットおよび下位ビットの両方を変換するリカバリー処理を頻繁に行う必要がないため、変換時間および検査時間を削減することができる。
【0054】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、ステップS10において、SAR上位ビットレジスタ17から出力されたSAR上位ビット信号37は、DA変換器16及び比較器14を介して逐次比較レジスタ15に伝送されるものとしたが、DA変換器16及び比較器14を介さずに逐次比較レジスタ15に伝送しても良い。
【符号の説明】
【0055】
10 逐次比較型ADコンバータ
11 ADコントロールレジスタ
12 ADコントローラ
13 サンプルホールド回路
14 比較器
15 逐次比較レジスタ
16 変換器
17 SAR上位ビットレジスタ
18 スキップフラグ設定回路
19 変換結果レジスタ
31 アナログ入力信号
32 アナログ信号
33 基準電位
34 比較結果出力信号
35 デジタル出力信号
36 スキップ許可信号
37 上位ビット信号
38 制御信号
51 第1の設定値記憶回路
52 第1の一致検出回路
53 第2の設定値記憶回路
54 第2の一致検出回路
55 セットリセットフリップフロップ
111 第1比較用データレジスタ
112 第2比較用データレジスタ
113 一致ビット判定回路
114 予測データレジスタ
115 下位ビット変換データレジスタ
116 ADコントローラ
117 ADコントロールレジスタ
118 サンプルホールド回路
119 AD変換器
120 逐次比較レジスタ
122 DA変換器
131 アナログ入力信号
137 出力データ
138 出力データ
139 一致ビット情報信号
141 予測データ出力
142 基準電位
144 データ出力
145 データ出力
150 変換終了信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ入力をサンプルホールドするサンプルホールド回路と、
前記サンプルホールド回路から出力された電位と基準電位とを逐次比較する比較器と、
前記比較器による比較結果を記憶する逐次比較レジスタと、
前記逐次比較レジスタから出力された比較結果のうち上位ビットの値を記憶するSAR上位ビットレジスタと、
前記逐次比較レジスタから出力された比較結果の下位ビットの値に基づいて、前記比較器における次回以降の逐次比較を全ビットについて行うか、または前記下位ビットについてのみ行うかを設定するスキップフラグ設定回路と、
を備える逐次比較型ADコンバータ。
【請求項2】
前記スキップフラグ設定回路は、前記比較結果の値が下位ビットから上位ビットへ桁上げする直前からn[LSB]前の値(n≧1)を第1の設定値とし、前記比較結果の値が下位ビットから上位ビットへ桁上げした直後からk[LSB]後の値(k≧1)を第2の設定値として予め保持し、
前記比較器は、前記比較結果の下位ビットの値と前記第1の設定値が一致した場合には次回以降の逐次比較を上位ビットも含め全ビットについて実施し、前記比較結果の下位ビットの値と前記第2の設定値が一致した場合には次回以降の逐次比較を前記下位ビットについてのみ実施する、
請求項1に記載の逐次比較型ADコンバータ。
【請求項3】
前記SAR上位ビットレジスタは、前記スキップフラグ設定回路が前記比較器における次回以降の逐次比較を前記下位ビットについてのみ行うと設定した場合、前記記憶されている上位ビットの値を出力する、請求項1または2に記載の逐次比較型ADコンバータ。
【請求項4】
前記スキップフラグ設定回路は、
前記第1の設定値を予め保持する第1の設定値記憶回路と、
前記第2の設定値を予め保持する第2の設定値記憶回路と、
前記第1の設定値と前記逐次比較レジスタの下位ビットの値の一致を検出する第1の一致検出回路と、
前記第2の設定値と前記逐次比較レジスタの下位ビットの値の一致を検出する第2の一致検出回路と、
前記第1の一致検出回路および第2の一致検出回路の出力に基づいて制御信号を出力するセットリセットフリップフロップと、
を備える、請求項2または3に記載の逐次比較型ADコンバータ。
【請求項5】
前記セットリセットフリップフロップは、前記第1の一致検出回路の出力をリセット信号として入力し、前記第2の一致検出回路の出力をセット信号として入力し、前記第1の一致検出回路の出力が活性状態で、前記第2の一致検出回路の出力が非活性状態の場合、前記制御信号を非活性状態とし、前記第1の一致検出回路の出力が非活性状態で、前記第2の一致検出回路の出力が活性状態の場合、前記制御信号を活性状態とし、
前記SAR上位ビットレジスタは、前記制御信号が活性状態の場合に前記記憶されている上位ビットの値を出力する、
請求項4に記載の逐次比較型ADコンバータ。
【請求項6】
前記逐次比較レジスタは、前記SAR上位ビットレジスタから出力された上位ビットの値を前記比較結果として記憶する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の逐次比較型ADコンバータ。
【請求項7】
アナログ入力をサンプルホールドし、
前記サンプルホールドしたアナログ出力と基準電位とを比較し、
比較結果を記憶し、
前記比較結果のうち上位ビットの値を記憶し、
前記比較結果の下位ビットの値に基づいて、次回以降の逐次比較を全ビットについて行うか、または前記下位ビットについてのみ行うかを決定する、逐次比較型ADコンバータの検査方法。
【請求項8】
前記比較結果の値が下位ビットから上位ビットへ桁上げする直前からn[LSB]前の値(n≧1)を第1の設定値とし、前記比較結果の値が下位ビットから上位ビットへ桁上げした直後からk[LSB]後の値(k≧1)を第2の設定値として予め保持し、
前記比較結果の下位ビットの値と前記第1の設定値が一致した場合には次回以降の逐次比較を上位ビットも含め全ビットについて比較を実施し、前記比較結果の下位ビットの値と前記第2の設定値が一致した場合には次回以降の逐次比較を前記下位ビットについてのみ比較を実施する、
請求項7に記載の逐次比較型ADコンバータの検査方法。
【請求項9】
次回以降の逐次比較を前記下位ビットについてのみ行うと決定した場合、記憶されている前記上位ビットの値を前記比較結果として記憶する、請求項7または8に記載の逐次比較型ADコンバータの検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−209686(P2012−209686A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72700(P2011−72700)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】