説明

通信システム並びに通信装置

【課題】至近距離の通信機同士で高周波・広帯域信号を用いて高速な近接無線通信を行なう。
【解決手段】通信システムは、誘導結合方式により近接無線通信を行なうトランスポンダ及びリーダライタで構成され、距離に対し電界強度が急峻に変化するので、近接させたか否かの判断が正確になり、リーダライタにトランスポンダを近づける動作を行なうユーザの意図に応じて通信を開始させることができる。また、高速大容量の無線通信手段を装備し、近接させたか否かの判断結果に応じてその電源オン/オフをコントロールして、高速通信と低消費電力化を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、至近距離の通信機同士で無線によるデータ伝送を行なう通信システム並びに通信装置に係り、特に、高周波・広帯域信を用いて高速な近接無線通信を行なう通信システム並びに通信装置に関する。
【0002】
さらに詳しくは、本発明は、通信機を近づける動作をトリガとして近接無線通信を開始する通信システム並びに通信装置に係り、特に、通信機を「近接させる」のか「近接させない」のかの判断を正確に行なって所望する通信相手とのみ的確に通信を開始するとともに、待機時における通信機の電力消費を抑制する通信システム並びに通信装置に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、RFID(Radio Frequency IDentification)などの非接触若しくは近接無線による通信システムが広範に普及しており、例えば非接触ICカードによる乗車券や定期券、コンビニエンスストアでの支払いなど、その利用範囲は拡大している。RFIDシステムなどで利用される近接無線通信方法には、静電結合方式、電磁誘導方式、電波通信方式などが挙げられる。また、近接無線伝送は、伝送距離に応じて、密着型(0〜2mm以下)、近接型(0〜10cm以下)、近傍型(0〜70cm以下)の3種類に分類することができる。
【0004】
これら近接無線通信は、無線設備から3メートルの距離での電界強度(電波の強さ)が所定レベル以下となる微弱無線が可能であり、無線局の免許を受ける必要はない。また、伝送データを傍受する不正な機器が介在する余地はなく、伝送路上でハッキングの防止や秘匿性の確保を考慮する必要がないという利点がある。
【0005】
例えば、2端子アンテナの端子間インピーダンスを変化させる無電源のFETトランジスタを用い、入射電波に対するアンテナインピーダンスの整合/不整合により反射電波を送信データで変調することにより、スイッチング素子を駆動するバイアス電源を使用することなく、極微電力の反射型データ送信装置について提案がなされている(例えば、特許文献1を参照のこと)。
【0006】
近接無線通信システムは、一般に、無線通信機を近づける(例えばICカードなどのトランスポンダをリーダライタに接近させる)という動作をトリガとして、通信を開始する。しかしながら、アンテナを用いた電波通信では放射電界の電界強度が距離に反比例して比較的緩やかに変化するので、無線通信機を「近接させる」のか「近接させない」のかの判断が曖昧になり、ユーザの意図に反して通信状態に移行したり、あるいは逆に通信したくて近接させたにも拘らず必要な電界強度が得られずに通信状態に移行できなかったりする。また、アンテナは、デバイスの製造ばらつき、特に受信感度のばらつきによる影響が大きいことが懸念される。具体的には、受信感度のバラツキが±3dBあるとすると、通常のアンテナでは通信可能距離がほぼ2倍も異なる。このため、通信機の組み合わせなどによってトリガがかかる距離が変わり、安定した通信動作を確保することができない。
【0007】
バーコードや赤外線通信などの手段を使って識別情報を取得する方法や(例えば、特許文献2、特許文献3を参照のこと)、人体などの電界伝送媒体を介して通信を行なう方法(例えば、特許文献4を参照のこと)なども提案されているが、いずれの通信システムにおいても、通信距離の制御は困難であると思料される。
【0008】
他方、静電界や誘導電界は発生源から距離の3乗並びに2乗にそれぞれ反比例する、すなわち電界強度が距離に対し急峻に変化することから、静電結合方式や誘導結合方式の近接通信システムによれば、電界強度が距離に対し急峻に変化するので、「近接させる/近接させない」の判断が正確となり、ユーザの意図に応じた通信動作を実現することができる。
【0009】
しかしながら、静電結合や誘導結合を用いた従来の近接無線通信システムの多くは、低周波数信号を用いているため通信速度が遅く、大量のデータ伝送には不向きであり、信号の伝送効率がよくない。例えば、密着型の非接触ICカードの国際規格であるISO/IEC10536では、誘導結合又は静電結合のどちらかが使用されるが、伝送速度が9600bpsと比較的遅い。
【0010】
また、無線LAN(Local Area Network)など高速通信が可能な無線通信システムは既に存在するが、一般に通信を行なわない待機期間であっても多くの電力を消費するという問題がある。とりわけバッテリ駆動するモバイル方の通信機は小型・軽量化のためには省電力化は極めて重要である。しかしながら、待機期間に通信機の電源を完全にオフにしてしまうと、通信相手が接近してもこれを検知することができず、通信を開始できないことになる。
【0011】
例えば、利用者から指示された通信可能な範囲(距離)に応じて、送信アンプ並びに受信アンプのゲインを段階的に切り替えることによって、無線通信装置が限定的な範囲内の相手に対してのみデータ送信するようにした通信システムについて提案がなされており(例えば、特許文献5を参照のこと)、受信アンプのゲインを低くすることによって受信アンプから有効なレベルが出力されず、後段の処理部が動作しないことから、不要な電力消費や不要な処理負荷を低減することができる。しかしながら、送信アンプや受信アンプのゲインを段階的に設定するという方法では、待機時の電力消費を完全に抑えることはできない。
【0012】
【特許文献1】特許第2705076号公報
【特許文献2】特許第3756741号公報
【特許文献3】特開2006−186418号公報
【特許文献4】特開2006−165690号公報
【特許文献5】特開2001−128246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、至近距離の通信機同士で高周波・広帯域信号を用いて高速な近接無線通信を行なうことができる、優れた通信システム並びに通信装置を提供することにある。
【0014】
本発明のさらなる目的は、通信機を「近接させる」のか「近接させない」のかの判断を正確に行なって所望する通信相手とのみ的確に通信を開始することができる、優れた通信システム並びに通信装置を提供することにある。
【0015】
本発明のさらなる目的は、通信機を「近接させない」待機時における通信機の電力消費を抑制することができる、優れた通信システム並びに通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を参酌してなされたものであり、トランスポンダとリーダライタ間で誘導結合を利用した近接無線通信を行なう通信システムであって、
前記リーダライタは、第1の電極を含んだ電界カプラと、前記第1の電極に対し無変調キャリアの信号を印加する手段と、前記第1の電極に現れた受信信号を読み取ってデータを復調する受信手段を備え、
前記トランスポンダは、第2の電極を含んだ電界カプラと、前記第2の電極の負荷インピーダンスを切り替える負荷インピーダンス切替手段を備え、
前記第1及び第2の電極の間で誘導結合作用が発生する程度に前記リーダライタ及びトランスポンダ同士が接近した通信状態において、前記トランスポンダ側では、送信データに応じて前記負荷インピーダンス切替手段によって前記第2の電極の負荷インピーダンスを切り替え、前記リーダライタ側では、前記第2の電極の負荷インピーダンスの切替に伴う前記第1の電極のインピーダンスの変化に応じて前記第1の電極に現れる受信信号を前記受信手段がデータ復調する、
ことを特徴とする通信システムである。
【0017】
但し、ここで言う「システム」とは、複数の装置(又は特定の機能を実現する機能モジュール)が論理的に集合した物のことを言い、各装置や機能モジュールが単一の筐体内にあるか否かは特に問わない。
【0018】
近接無線通信として静電結合方式、誘導結合方式、電波通信方式などが挙げられ、既にRFIDシステムなどで広く利用に供されている。近接無線通信システムは、一般に、無線通信機を近づける動作をトリガとして、通信を開始する。ところが、電波通信方式では、電界強度が距離に対し緩やかに変化することから、「近接させる/近接させない」の判断が曖昧になり、ユーザの意図に反して通信状態になったり、逆に近接させたのに通信が開始しなかったりするという問題がある。
【0019】
これに対し、本発明に係る通信システムは、誘導結合方式により近接無線通信を行なうトランスポンダ及びリーダライタで構成されている。誘導結合によって生じる電界強度は、発生源からの距離の2乗に反比例する。したがって、本発明に係る通信システムによれば、トランスポンダ及びリーダライタ間の距離に対し電界強度が急峻に変化するので、「近接させる/近接させない」の判断が正確にとなり、リーダライタにトランスポンダを近づける動作を行なうユーザの意図に応じて通信を開始させることができる。
【0020】
本発明に係る通信システムでは、リーダライタは、第1の電極を含んだ電界カプラと、第1の電極に対し無変調キャリアの信号を印加する手段と、第1の電極に現れた受信信号を読み取ってデータを復調する受信手段を備えている。一方のトランスポンダは、第2の電極を含んだ電界カプラと、第2の電極の負荷インピーダンスを切り替える負荷インピーダンス切替手段を備えている。
【0021】
そして、第1及び第2の電極の間で誘導結合作用が発生する程度にリーダライタ及びトランスポンダ同士が接近した通信状態では、トランスポンダ側で、送信データに応じて前記負荷インピーダンス切替手段によって第2の電極の負荷インピーダンスを切り替えるようにする。すると、第2の電極の負荷インピーダンスの切替に伴う第1の電極のインピーダンスの変化に応じて第1の電極には受信信号が現れる。リーダライタ側では、受信手段が受信信号をデータ復調することによって、トランスポンダからデータを読み取ることができる。
【0022】
上述したように、誘導電界を利用した近接無線通信システムは、電界強度が距離に対し急峻に変化するので、「近接させる/近接させない」の判断が正確になる。しかしながら、従来の誘導結合方式の近接無線通信システムは、高周波・広帯域信号の伝送には適していないことから、高速通信を行なうことができないという問題がある。
【0023】
そこで、誘導結合方式により近接無線通信を行なうトランスポンダ及びリーダライタからなる通信システムに、高速大容量の無線通信手段を装備することによって、高速通信を実現することができる。
【0024】
追加装備する高速大容量無線通信手段として、既存の無線LANなど、誘導結合方式とは全く異なる無線通信技術を適用することができる。あるいは、高周波・広帯域信号の伝送に適した電界カプラを用いることによって、トランスポンダ及びリーダライタからなる近接無線通信に加えて、高速通信も誘導結合方式により行なうことが可能である。誘導結合方式による高速通信は、例えば近接無線通信よりも高いデータレートの変調方式を採用することによっても実現する。
【0025】
さらに、高速通信は、一般に通信を行なわない待機期間であっても多くの電力を消費するという問題がある。
【0026】
そこで、近距離ではより強く結合する一方で距離が大きくなると急激に結合が弱くなるという誘導結合方式の近接無線通信の伝搬特性を利用して、「近接させる/近接させない」の正確な判断結果に基づいて、併設した高速大容量無線通信手段の電源オン/オフをコントロールするようにしてもよい。多くの電力を消費する高速大容量無線通信手段を、必要なときだけ電源オンの状態に切り替えるようにすることによって、待機時の電力消費を完全に抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、至近距離の通信機同士で高周波・広帯域信号を用いて高速な近接無線通信を行なうことができる、優れた通信システム並びに通信装置を提供することができる。
【0028】
また、本発明によれば、通信機を「近接させる」のか「近接させない」のかの判断を正確に行なって所望する通信相手とのみ的確に通信を開始することができる、優れた通信システム並びに通信装置を提供することができる。
【0029】
また、本発明によれば、通信機を「近接させない」待機時における通信機の電力消費を抑制することができる、優れた通信システム並びに通信装置を提供することができる。
【0030】
本発明に係る通信システムは、無線通信機を近づけるという動作をトリガにして通信を開始する近接無線通信を行なうが、アンテナよりも距離による電界強度の変化が急峻となる電界カプラを使うことで、「近接する/近接させない」区別がより明確になる。この結果、ユーザの意図をよりよく反映させることができるので、ユーザの使い勝手が向上し、常に一定の距離で安定した動作を行なうことができる。
【0031】
ここで、従来の誘導結合方式の近接無線通信システムは、高周波・広帯域信号の伝送には適していないことから、高速通信を行なうことができない、という問題がある。これに対し、本発明では、誘導結合方式により近接無線通信を行なうトランスポンダ及びリーダライタからなる通信システムに、高速大容量の無線通信手段を追加して装備することによって、高速通信を実現することができる。
【0032】
また、高速大容量の無線通信手段は一般に多くの電力を消費する、という問題がある。そこで、本発明に係る通信システムでは、高速通信を行なわない待機時には高速大容量の無線通信手段を停止させて電力の消費を抑制することができる。高速大容量の無線通信手段を停止させているときには、省電力となる近接無線通信手段のみによる通信を行なうので、所望の通信相手が通信可能な範囲に接近した(すなわち、トランスポンダがリーダライタに接近した)ことが確認できた時に、それをトリガにして高速大容量の無線通信手段を活動化するので、電力を効率的に使用することができる。トランスポンダが内部に電源を持たなくても送信データに応じて負荷インピーダンスを切り替え、リーダライタに現れる受信信号をデータ復調することが可能なので、特に、小型・小型化のため省電力化の要求が厳しいモバイル型の通信端末では、待機時の電力消費を完全に0にするか、あるいはトランスポンダ内部に電源を持つ場合でも消費電力を非常に小さい値に抑えることができる。
【0033】
本発明のさらに他の目的、特徴や利点は、後述する本発明の実施形態や添付する図面に基づくより詳細な説明によって明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳解する。
【0035】
近接無線通信として静電結合方式、誘導結合方式、電波通信方式などが挙げられ、既にRFIDシステムなどで広く利用に供されている。近接無線通信システムは、一般に、無線通信機を近づける動作をトリガとして、通信を開始する。ところが、電波通信方式では、電界強度が距離に対し緩やかに変化することから、「近接させる/近接させない」の判断が曖昧になり、ユーザの意図に反して通信状態になったり、逆に近接させたのに通信が開始しなかったりするという問題がある。
【0036】
これに対し、本発明に係る通信システムは、誘導結合方式により近接無線通信を行なうトランスポンダ及びリーダライタで構成されている。誘導結合によって生じる電界強度は、発生源からの距離の2乗に反比例する。したがって、本発明に係る通信システムによれば、トランスポンダ及びリーダライタ間の距離に対し電界強度が距離に対し急峻に変化するので、「近接させる/近接させない」の判断が正確になり、リーダライタにトランスポンダを近づける動作を行なうユーザの意図に応じて通信を開始させることができる。周波数4.5GHzにおける電界カプラ(誘導結合方式)とアンテナ(電波通信方式)をそれぞれ用いた通信システムにおける送受信間距離に対する伝搬損の測定結果を図5に示しておく。
【0037】
図1A及び図1Bには、本発明の一実施形態に係る通信システムの構成例を示している。図示の通信システムは、リーダライタとして動作するホスト1と、トランスポンダとして動作する端末2で構成され、トランスポンダ及びリーダ間では誘導結合を利用した近接無線通信が行なわれる。かかる近接無線通信システムでは、例えば、トランスポンダは識別コードなどの情報を不揮発的に記憶しており、リーダライタからの読み出し要求(質問信号)に応じて識別コードを読み出して返送する。
【0038】
まず、ホスト1から端末2へデータ送信する場合について説明する。ホスト1側では、ホスト機能部13から供給される送信データは、制御インターフェース15を介してホスト通信制御機能部12の変調機能部122において変調される。変調信号16は、ミキサ112によりRF機能部11のキャリア発生源111によって生成されたキャリア31に載せられ、さらに電力増幅アンプ113により増幅された後、方向結合作用を持つサーキュレータ117及び電界カプラ14を介して、変調波信号31として端末2に送信される。これに対し、端末2のRF機能部21は、電界カプラ24で変調波信号31を受信するとこれを復調して復調信号27を得る。復調機能部223は復調信号27をデータ復調し、制御インターフェース25を介して端末機能部23に渡す。端末機能部23は、必要に応じて、受信データの保存、画面(図示しない)への表示、ユーザへの受信通達などを行なう。
【0039】
続いて、端末2からホスト1へデータ送信する場合について説明する。端末2の端末機能部23から供給される送信データは、通信制御機能部22の変調機能部222によって変調される。RF機能部21のスイッチ211を変調信号26に応じてオン/オフ操作することによって、電界カプラ24の負荷インピーダンス212を切り替える。
【0040】
変調機能部222は、端末2の端末機能部23よりビット系列からなる送信データを受け取ると、データのビット・イメージに従って、電界カプラ24に接続されたスイッチ211のオン/オフ動作を行なう。例えば、データが1のときはスイッチ211をオンに、データが0のときオフとする。
【0041】
スイッチ211がオンのとき、電界カプラ24は負荷インピーダンス212で終端し、オフのときは電界カプラ24をオープンにする。この動作は、転送先(すなわち、ホスト1側の電界カプラ14)で発生する誘導電界(無変調キャリア31)に対して、スイッチ211がオンのときは誘導結合が作用し、オフのときは誘導結合が作用せずホスト側では電界カプラ14で送信信号が反射する(外部に電波は放射されない)という振る舞いをする。したがって、ホスト1では、誘導結合が作用したか否かの有無を検出することによって、無変調キャリア31が負荷変調され、端末2からの送信データを読み取ることができる。
【0042】
上述したような負荷インピーダンス212の切り替えによるデータ伝送は、ASK(Amplitude Shift Keying)変調方式に相当する。
【0043】
このようにして、端末2は、ホスト1側から受信する無変調キャリア31に対し、誘導結合を発生するか否かの切り替えで得られる変調信号32がホスト1に送信される。これに対し、ホスト1側のRF機能部11は、電界カプラ14で変調信号32を受信すると、低雑音アンプ114により増幅され、さらに直交復調器115でキャリア発生源111からのローカル信号と乗算され、復調信号を得る。復調信号は、AGC(Auto Gain Control)116によりゲイン調整が施された後、復調機能部123によってデータ復調され、制御インターフェース15を介してホスト機能部13に渡される。ホスト機能部13は、必要に応じて、受信データの保存や、画面(図示しない)への表示、ユーザへの受信通達などを行なう。
【0044】
また、上述したデータ送受信機能に加え、ホスト1及び端末2に相互で機能するプロトコル機能部121及び221を通信制御機能12及び22に設けることで、ホスト1と端末2の間で接続、切断、などのプロトコル制御が実現される。
【0045】
図1に示した近接無線通信システムは、近接通信の結合ユニットとしてアンテナの代わりに電界カプラを用いている。そうすることで、高周波・広帯域の信号を扱うことが可能になり、より高速の反射型送信装置を実現する。また、アンテナによる電界よりも電界カプラによる電界の方が距離に対して急峻に変化するので、「近接する/近接させない」という動作に対してより明確に「通信する/通信しない」という状態を対応付けることができ、ユーザの操作性を改善する。
【0046】
トランスポンダは独自の電力源(電池)を持たず、リーダライタの交信領域に入るまでは待ち受け状態となっている。トランスポンダはリーダライタの交信領域に入ったときに活動化される。トランスポンダを活動化するために必要な電力は、リーダライタから電界カプラを通して非接触でトランスポンダに供給することができる。あるいは、トランスポンダに電池を埋め込んでも良いが、トランスポンダの消費電力はマイクロワット程度の非常に小さいものとなる。
【0047】
上述したように、図1に示した近接無線通信システムは、トランスポンダとしての端末2側でのスイッチング動作に伴う電界カプラ24の負荷インピーダンス切り替えによって誘導結合による通信動作を実現するものである。負荷インピーダンスの切り替えによりトランスポンダ側でキャリアの発生源を持たずにデータ伝送を行なう、という観点からは、図1に示した近接通信システムは、「バックスキャッタ」とも呼ばれる反射波伝送システムに類似する。
【0048】
ここで、反射波伝送システムでは、トランスポンダは無変調キャリアに対し変調処理を施した反射波によりデータを送信する反射器を備え、リーダライタは反射器からの変調反射波信号からデータを読み取る反射波読取器を備えている。そして、反射器は、反射波読取器から無変調キャリアが送られてくると、アンテナ負荷インピーダンスの切り替え操作などに基づいてその反射波に変調を施して送信データを重畳する。すなわち、反射器側ではデータ送信に際してキャリア発生源が不要であることから、低消費でデータ伝送動作を駆動する。そして、反射波読取器側では、このような変調反射波を受信し、復調並びに復号処理して伝送データを取得することができる。
【0049】
反射波伝送システムと本発明に係る誘導結合方式の近接無線通信システムとの主な相違点として、前者の場合にはリーダライタの通信範囲にトランスポンダがいないときにはリーダライタから送出された無変調キャリアは反射されないのに対し(言い換えれば、外部に電波が放射され、近隣の通信システムや電子機器への影響が懸念される)(図2Aを参照のこと)、後者の場合にはリーダライタの通信範囲にトランスポンダが存在しないと誘導結合が作用しない(言い換えれば、送信信号はリーダライタ内の電界カプラの電極で反射され、リーダライタから外部に電波が放射されない)、ということを挙げることができる。したがって、本発明に係る近接無線通信システムによれば、非通信時における不要輻射を低減することができる。
【0050】
なお、反射波伝送システムの詳細に関しては、例えば、本出願人に既に譲渡されている特開2005−136666号公報などを参照されたい。
【0051】
上述したように、誘導電界を利用した近接無線通信システムは、電界強度が距離に対し急峻に変化するので、「近接させる/近接させない」の判断が正確になる。しかしながら、従来の誘導結合方式の近接無線通信システムは、高周波・広帯域信号の伝送には適していないことから、高速通信を行なうことができないという問題がある。
【0052】
これに対し、本発明では、誘導結合方式により近接無線通信を行なうトランスポンダ及びリーダライタからなる通信システムに、高速大容量の無線通信手段を追加して装備することによって、高速通信を実現することができる。
【0053】
また、高速通信は一般に通信を行なわない待機期間であっても多くの電力を消費するという問題がある。そこで、近距離ではより強く結合する一方で距離が大きくなると急激に結合が弱くなるという誘導結合方式の近接無線通信の伝搬特性を利用して、「近接させる/近接させない」の正確な判断結果に基づいて、併設した高速大容量無線通信手段の電源オン/オフをコントロールするようにしてもよい。多くの電力を消費する高速大容量無線通信手段を、必要なときだけ電源オンの状態に切り替えるようにすることによって、待機時の電力消費を完全に抑えることが可能となる。
【0054】
図3には、高速大容量無線通信手段を兼ね備えた近接無線通信システムの構成例を示している。図示の例では、追加装備する高速大容量無線通信手段として、既存の無線LANなど、誘導結合方式とは全く異なる無線通信技術を用いたものを適用している。
【0055】
図示の通信システムは、ホスト1と端末2からなる。ホスト1は、近接無線通信のリーダライタ機能を有する通信手段1Aと、高速大容量無線通信機能を有する通信手段1Bを備えた、例えば据え置き型の通信装置である。また、端末2は、近接無線通信のトランスポンダ機能を有する通信手段2Aと、大容量無線通信機能を有する通信手段2Bを備えた、例えばモバイル系の通信装置である。
【0056】
近接無線通信のリーダライタ機能を有する通信手段1Aと、近接無線通信のトランスポンダ機能を備えた通信手段2Aは、図1A及び図1Bに示した、リーダライタとして動作するホスト及びトランスポンダとして動作する端末の各RF機能部11及び21の構成と同様なので、ここでは説明を省略する。また、高速大容量無線通信機能を有する通信手段1B及び2Bには、例えばIEEE802.11などの無線LAN機能を適用することができるが、本発明の要旨は高速大容量無線通信を実現する特定の手段には限定されない。
【0057】
ホスト1は、通信手段1A及び1Bの駆動電力を供給する電源部1Cを備えている。また、端末2側では、通信手段2Bの駆動電力を供給する電源部2Cを備えているが、近接無線通信のトランスポンダに相当する通信手段2Aは無電源で(言い換えれば、リーダライタからの無変調キャリアから得られる電力を駆動電源として)動作する。
【0058】
通常の動作時(若しくは、高速大容量無線通信における待機期間において)、通信手段1B及び2Bは電源がオフの状態に設定される。そして、トランスポンダとしての通信手段2Aがリーダライタとしての通信手段1Aに近接し、通信を行なって互いに有効な通信相手であると確認されたときに、ホスト1側では、通信手段1Aは、通信手段1Bの電源をオンにする処理を行なうとともに、通信手段1Bを通じて近接無線通信により読み出した端末2の情報(識別コードなど)を、通信手段1Bに渡す。また、端末2側では、通信手段2Aは、通信手段2Bの電源をオンにする処理を行なうとともに、通信手段1Aを通じて近接無線通信により得られたホスト1の情報(識別コードなど)を通信手段2Bに渡す。その後、ホスト1と端末2間では、引き続き通信手段1Bと2Bによって、高速の無線通信を行なう。
【0059】
高速無線通信の際、相手の情報(識別コードなど)を通信手段1A及び2Aからそれぞれ通信手段1B及び2Bに渡すことにより、通信手段1B及び2B間での認証プロセスを省略することができ、通信時間を短縮することができる。
【0060】
そして、通信手段1Bと2Bの間での高速大容量通信が終了したときには、一定の時間を置いて通信手段1Bと2Bの電源はともにオフになり、通信手段1Aのみが交信範囲の通信手段2Aと通信可能となる通常の状態(若しくは、高速大容量無線通信における待機期間)となる。
【0061】
近接無線通信のトランスポンダである通信手段2Aが無電源の場合には、より確実に相手のID情報を通信手段2Bに渡すためには、通信手段2A及び2Bの両者からアクセス可能な不揮発性メモリを搭載し、そこに書き込むようにすると良い。
【0062】
また、図4には、高速大容量無線通信手段を兼ね備えた近接無線通信システムについての他の構成例を示している。図示の例では、追加装備する高速大容量無線通信手段として、低速な近接無線通信と同じ誘導結合方式の無線通信技術を適用している。トランスポンダ及びリーダライタからなる近接無線通信に加えて、高速通信も誘導結合方式により行なうことが可能である。誘導結合方式による高速通信は、例えば近接無線通信よりも高いデータレートの変調方式を採用することによっても実現する。
【0063】
図示の通信システムは、ホスト1と端末2からなる。ホスト1は、近接無線通信のリーダライタ機能を有する通信手段1Aと、高速大容量無線通信機能を有する通信手段1Bを備えた、例えば据え置き型の通信装置である。また、端末2は、近接無線通信のトランスポンダ機能を有する通信手段2Aと、大容量無線通信機能を有する通信手段2Bを備えた、例えばモバイル系の通信装置である(同上)。
【0064】
近接無線通信のリーダライタ機能を有する通信手段1Aと、近接無線通信のトランスポンダ機能を備えた通信手段2Aは、図1A及び図1Bに示した、リーダライタとして動作するホスト及びトランスポンダとして動作する端末の各RF機能部11及び21の構成と同様なので、ここでは説明を省略する。
【0065】
高速大容量無線通信機能を有する通信手段1B及び2Bは、通信手段1A及び2Aの組み合わせと同様に、誘導結合方式の無線通信技術が採用されている。したがって、ホスト1側では、通信手段1A及び1Bが1つの電界カプラを共用しており、切り替えスイッチによって時分割で電界カプラを使用することができる。同様に、端末2側でも、通信手段2A及び2Bが1つの電界カプラを共用しており、切り替えスイッチによって時分割で電界カプラを使用することができる。
【0066】
リーダライタ及びトランスポンダとしての近接無線通信を行なう通信手段1A及び2A間では、負荷インピーダンスの切り替えにより、ASK変調方式に相当するデータ伝送を行なうから、データレートは低いものとなる。これに対し、高速大容量の無線通信を行なう通信手段1B及び2B間では、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying:4位相偏移変調)やQAM(Quadrature Amplitude Modulation:直交振幅変調)といった、よりデータレートの高い変調方式を採用すればよい。
【0067】
通常の動作時(若しくは、高速大容量無線通信における待機期間において)、通信手段1B及び2Bは電源がオフの状態に設定されるとともに、各々の電界カプラは切り替えスイッチを介して通信手段1A及び2Aにそれぞれ接続されている。そして、トランスポンダとしての通信手段2Aがリーダライタとしての通信手段1Aに近接し、通信を行なって互いに有効な通信相手であると確認されたときに、ホスト1側では、通信手段1Aは、通信手段1Bの電源をオンにする処理を行なうとともに、通信手段1Bを通じて近接無線通信により読み出した端末2の情報(識別コードなど)を、通信手段1Bに渡す。また、端末2側では、通信手段2Aは、通信手段2Bの電源をオンにする処理を行なうとともに、通信手段1Aを通じて近接無線通信により得られたホスト1の情報(識別コードなど)を通信手段2Bに渡す。
【0068】
その後、各々の電界カプラは切り替えスイッチを介して通信手段1B及び2Bにそれぞれ接続切り替えされ、ホスト1側では端末2間では、引き続き通信手段1Bと2Bによって高速の無線通信を行なう。
【0069】
高速無線通信の際、相手の情報(識別コードなど)を通信手段1A及び2Aからそれぞれ通信手段1B及び2Bに渡すことにより、通信手段1B及び2B間での認証プロセスを省略することができ、通信時間を短縮することができる(同上)。
【0070】
そして、通信手段1Bと2Bの間での高速大容量通信が終了したときには、一定の時間を置いて通信手段1Bと2Bの電源はともにオフになり、また、各々の電界カプラは切り替えスイッチを介して通信手段1A及び2Aにそれぞれ接続切り替えされ、通信手段1Aのみが交信範囲の通信手段2Aと通信可能となる通常の状態(若しくは、高速大容量無線通信における待機期間)となる。
【0071】
近接無線通信のトランスポンダである通信手段2Aが無電源の場合には、より確実に相手のID情報を通信手段2Bに渡すためには、通信手段2A及び2Bの両者からアクセス可能な不揮発性メモリを搭載し、そこに書き込むようにすると良い(同上)。
【0072】
最後に、本発明に係る通信システムで使用する電界カプラの構成について詳解する。
【0073】
高周波信号は空間での伝搬損が大きく、信号の伝送効率がよくない。このため、従来の誘導結合方式の近接無線通信システムでは、高周波・広帯域信号の伝送には適さず、その多くは、低周波数信号を用いているため通信速度が遅い。
【0074】
これに対し、本発明者らは、高周波信号を電界結合で伝送することを提案する。具体的には、UWB(Ultra Wide Band)通信のように高周波、広帯域を使用する通信方式を電界結合に適用することで、微弱無線であるとともに、大容量データ通信を実現することができる。
【0075】
UWB通信は、本来はアンテナを用いた電波通信方式として開発された通信技術であり、3.1GHz〜10.6GHzという非常に広い周波数帯域を使用し、近距離ながら100Mbps程度の大容量の無線データ伝送を実現することができる。例えば、IEEE802.15.3では、UWB通信のアクセス制御方式として、プリアンブルを含んだパケット構造のデータ伝送方式が考案されている。また、米インテル社は、パソコン向けの汎用インターフェースとして普及しているUSBの無線版を検討している。
【0076】
また、UWB通信は、3.1GHz〜10.6GHzという伝送帯域を占有しなくても100Mbpsを超えるデータ伝送が可能であることやRF回路の作り易さを考慮して、3.1〜4.9GHzのUWBローバンドを使った伝送システムも開発が盛んである。本発明者らは、図4に示した高速大容量無線通信手段にUWBローバンドを利用した誘導結合方式の無線通信技術を採用することで、例えばストレージ・デバイスを含む超高速な近距離用のDAN(Device Area Network)など、近距離エリアにおける高速データ伝送を実現することが可能であると考えている。
【0077】
ここで、波長に対する伝搬距離の大きさに応じて伝搬損が大きくなるという問題があり、誘導結合により高周波信号を伝搬する際には伝搬損を十分低く抑える必要がある。UWB信号のように高周波数の広帯域信号を電界結合で伝送する通信方式では、3cm程度の超近距離通信であっても使用周波数帯4GHzにとっては約2分の1波長に相当するため、無視することはできない。
【0078】
kHzあるいはMHz帯の周波数を使った通信では、空間での伝搬損が小さいため、図6に示すように送信機及び受信機が電極のみからなる電界カプラを備え、結合部分が単純に平行平板コンデンサとして動作する場合であっても、所望のデータ伝送を行なうことができる。しかしながら、GHz帯の高周波を使った通信では、空間での伝搬損が大きいため、信号の反射を抑え、伝送効率を向上させる必要がある。図7に示すように、送信機及び受信器のそれぞれにおいて高周波信号伝送路が所定の特性インピーダンスZ0に調整されているとしても、平行平板コンデンサで結合しただけでは、結合部においてインピーダンス・マッチングをとることはできない。このため、結合部におけるインピーダンス不整合部分において、信号が反射することにより、効率が低下する。
【0079】
そこで、本実施形態では、送受信のそれぞれの電界カプラを、図8に示すように、平板状の電極と、直列インダクタ、並列インダクタを高周波信号伝送路に接続して構成している。このような電界カプラを、図9に示すように向かい合わせて配置すると、2つの電極が1つのコンデンサとして動作し、全体としてバンドパス・フィルタのように動作するため、2つの電界カプラの間で効率よく高周波信号を伝達することができる。
【0080】
ここで、送受信の電極間すなわち結合部分において、単にインピーダンス・マッチングを取り、反射波を抑えることだけを目的とするのであれば、図10Aに示すように、各電界カプラを平板状の電極と、直列インダクタ、並列インダクタを高周波信号伝送路に接続して構成する必要はなく、図10Bに示すように各電界カプラを平板状の電極と直列インダクタを高周波信号伝送路に接続するという簡素な構造であってもよい。すなわち、高周波信号伝送路上に直列インダクタを挿入するだけでも、送信機側の電界カプラに対向して超近距離で受信機側の電界カプラが存在する場合において、結合部分におけるインピーダンスが連続的となるように設計することは可能である。
【0081】
但し、図10Bに示す構成例では、結合部分の前後における特性インピーダンスに変化はないので電流の大きさも変わらない。これに対し、図10Aに示したように、高周波信号伝送路末端の電極の手前において並列インダクタンスを介してグランドに接続した場合、電界カプラ単体としては、電界カプラの手前側の特性インピーダンスZ0に対し、電界カプラの先の特性インピーダンスZ1は低下する(すなわちZ0>Z1)というインピーダンス変換回路としての機能を備えることになり、電界カプラへの入力電流I0に対し電界カプラの出力電流I1を増幅する(すなわちI0<I1)ことができる。
【0082】
図11A及び図11Bには、並列インダクタンスを設けた場合と設けない場合の電界カプラのそれぞれにおいて、電極間の電界結合によって電界が誘起される様子を示している。同図からも電界カプラは直列インダクタに加えて並列インダクタを設けることによって、より大きな電界を誘起して、電極間で強く結合させることを理解できよう。また、図11Aに示すようにして電界近傍に大きな電界を誘起したとき、発生した電界は進行方向に振動する縦波として電極面の正面方向に伝搬する。この電界の波により、電極間の距離が比較的大きな場合であっても電極間で信号を伝搬することが可能になる。
【0083】
したがって、UWB信号などの高周波信号を電界結合により伝送する近接無線通信システムでは、電界カプラとして必須の条件は以下の通りとなる。
【0084】
(1)電界で結合するための電極があること。
(2)より強い電界で結合させるための並列インダクタがあること。
(3)通信に使用する周波数帯において、電界カプラを向かい合わせに置いたときにインピーダンス・マッチングが取れるように、インダクタ、及び電極によるコンデンサの定数が設定されていること。
【0085】
図9に示したように電極が対向する1組の電界カプラからなるバンドパス・フィルタは、直列インダクタと並列インダクタのインダクタンス、電極によって構成されるコンデンサのキャパシタンスによって、その通過周波数f0を決定することができる。図12には、1組の電界カプラからなるバンドパス・フィルタの等価回路を示している。特性インピーダンスR[Ω]、中心周波数f0[Hz]、入力信号と通過信号の位相差をα[ラジアン](π<α<2π)、電極によって構成されるコンデンサのキャパシタンスをC/2とすると、バンドパス・フィルタを構成する並列及び直列インダクタンスL1、L2の各定数は、使用周波数f0に応じて下式で求めることができる。
【0086】
【数1】

【0087】
また、電界カプラ単体としてインピーダンス変換回路として機能する場合、その等価回路は図13に示す通りとなる。図示の回路図において、下式を満たすように、使用周波数f0に応じて並列インダクタンスL1及び直列インダクタンスL2をそれぞれ選ぶことにより、特性インピーダンスをR1からR2へ変換するインピーダンス変換回路を構成することができる。
【0088】
【数2】

【産業上の利用可能性】
【0089】
以上、特定の実施形態を参照しながら、本発明について詳解してきた。しかしながら、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が該実施形態の修正や代用を成し得ることは自明である。
【0090】
本明細書では、トランスポンダ及びリーダライタからなる誘導結合方式の近接無線通信システムに装備する高速大容量無線通信手段として電波通信方式を用いた実施形態について説明したが、本発明の要旨はこれに限定されるものではない。高速大容量であればあらゆる方式の無線通信手段を適用することができる。
【0091】
要するに、例示という形態で本発明を開示してきたのであり、本明細書の記載内容を限定的に解釈するべきではない。本発明の要旨を判断するためには、特許請求の範囲を参酌すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1A】図1Aは、本発明の一実施形態に係る通信システムにおけるホスト1の構成を模式的に示した図である。
【図1B】図1Bは、本発明の一実施形態に係る通信システムにおける端末2の構成を模式的に示した図である。
【図2A】図2Aは、反射波伝送システムと本発明に係る近接無線通信システムとの相違点を説明するための図である。
【図2B】図2Bは、反射波伝送システムと本発明に係る近接無線通信システムとの相違点を説明するための図である。
【図3】図3は、高速大容量無線通信手段を兼ね備えた近接無線通信システムの構成例を示した図である。
【図4】図4は、高速大容量無線通信手段を兼ね備えた近接無線通信システムについての他の構成例を示した図である。
【図5】図5は、電界カプラ(誘導結合方式)とアンテナ(電波通信方式)をそれぞれ用いた通信システムにおける送受信間距離に対する伝搬損の測定結果を示した図である。
【図6】図6は、kHzあるいはMHz帯の周波数を使った通信において、送信機及び受信機が電極のみからなる電界カプラを備え、結合部分が単純に平行平板コンデンサとして動作する構成例を示した図である。
【図7】図7は、GHz帯の高周波を使った通信において、結合部におけるインピーダンス不整合部分において、信号が反射することにより伝搬損が生じる様子を示した図である。
【図8】図8は、送信機及び受信機のそれぞれに配置される電界カプラの構成例を示した図である。
【図9】図9は、図8に示した電界カプラの電極同士を向かい合わせて配置した様子を示した図である。
【図10A】図10Aは、図8に示した電界カプラの単体での特性を説明するための図である。
【図10B】図10Bは、図8に示した電界カプラの単体での特性を説明するための図である。
【図11A】図11Aは、インピーダンス変換器としての機能により電界カプラが電界を誘起する様子を示した図である。
【図11B】図11Bは、インピーダンス変換器としての機能により電界カプラが電界を誘起する様子を示した図である。
【図12】図12は、1組の電界カプラからなるバンドパス・フィルタの等価回路を示した図である。
【図13】図12は、1組の電界カプラにより単体として構成されるインピーダンス変換回路の等価回路を示した図である。
【符号の説明】
【0093】
1…ホスト
11…RF機能部
111…キャリア発生源
112…ミキサ
113…電力増幅アンプ
114…低雑音アンプ
115…直交復調器
116…AGC
117…サーキュレータ
12…通信制御機能部
121…プロトコル制御部
122…変調機能部
123…復調機能部
13…ホスト機能部
14…電界カプラ
2…端末
21…RF機能部
211…スイッチ
212…負荷インピーダンス
213…バンドパス・フィルタ(BPF)
214…ASK検波部
22…通信制御機能部
221…プロトコル制御部
222…変調機能部
223…復調機能部
23…端末機能部
24…電界カプラ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスポンダとリーダライタ間で誘導結合を利用した近接無線通信を行なう通信システムであって、
前記リーダライタは、第1の電極を含んだ電界カプラと、前記第1の電極に対し無変調キャリアの信号を印加する手段と、前記第1の電極に現れた受信信号を読み取ってデータを復調する受信手段を備え、
前記トランスポンダは、第2の電極を含んだ電界カプラと、前記第2の電極の負荷インピーダンスを切り替える負荷インピーダンス切替手段を備え、
前記第1及び第2の電極の間で誘導結合作用が発生する程度に前記リーダライタ及びトランスポンダ同士が接近した通信状態において、前記トランスポンダ側では、送信データに応じて前記負荷インピーダンス切替手段によって前記第2の電極の負荷インピーダンスを切り替え、前記リーダライタ側では、前記第2の電極の負荷インピーダンスの切替に伴う前記第1の電極のインピーダンスの変化に応じて前記第1の電極に現れる受信信号を前記受信手段がデータ復調する、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記リーダライタは、送信データに応じて変調した送信信号を前記第1の電極に印加する送信手段をさらに備え、
前記トランスポンダは、前記通信状態において、前記第2の電極に現れた受信信号を読み取ってデータを復調する受信手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
請求項1に記載の通信システムにおいてトランスポンダとして動作する通信装置であって、
電極を含んだ電界カプラと、
前記電極の負荷インピーダンスを切り替える負荷インピーダンス切替手段と、
前記電極に現れた受信信号を読み取ってデータを復調する受信手段と、
を具備することを特徴とする通信装置。
【請求項4】
前記リーダライタ側の電極との間で誘導結合作用が発生する程度に前記リーダライタ及びトランスポンダ同士が接近した通信状態において、
送信データに応じて前記負荷インピーダンス切替手段によって前記電極の負荷インピーダンスを切り替える送信動作を行ない、
又は、前記受信手段が前記電極に現れた受信信号を読み取ってデータを復調する受信動作を行なう、
ことを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
請求項1に記載の通信システムにおいてリーダライタとして動作する通信装置であって、
電極を含んだ電界カプラと、
前記電極に対し無変調キャリアの信号を印加する手段と、
前記電極に現れた受信信号を読み取ってデータを復調する受信手段と、
送信データに応じて変調した送信信号を前記電極に印加する送信手段と、
を具備することを特徴とする通信装置。
【請求項6】
前記トランスポンダ側の電極との間で誘導結合作用が発生する程度に前記リーダライタ及びトランスポンダ同士が接近した通信状態において、
前記電極に現れる受信信号を前記受信手段がデータ復調する受信動作を行ない、
又は、前記送信手段が送信データに応じて変調した送信信号を前記電極に印加する送信動作を行なう、
ことを特徴とする請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
第1の通信装置と第2の通信装置の間で無線通信を行なう通信システムであって、
前記第1の通信装置は、誘導結合による近接無線通信を行なう第1Aの通信手段と、高速大容量の無線通信を行なう第1Bの通信手段を備え、
前記第2の通信装置は、誘導結合による近接無線通信を行なう第2Aの通信手段と、高速大容量の無線通信を行なう第2Bの通信手段を備える、
ことを特徴とする通信システム。
【請求項8】
前記第1Aの通信手段は、第1の電極を含んだ電界カプラと、前記第1の電極に対し無変調キャリアの信号を印加する手段と、前記第1の電極に現れた受信信号を読み取ってデータを復調する受信手段を備えて、誘導結合による近接無線通信におけるリーダライタとして機能し、
前記第2Aの通信手段は、第2の電極を含んだ電界カプラと、前記第2の電極の負荷インピーダンスを切り替える負荷インピーダンス切替手段を備えて、誘導結合により近接無線通信におけるトランスポンダとして機能する、
ことを特徴とする請求項7に記載の通信システム。
【請求項9】
前記リーダライタは、送信データに応じて変調した送信信号を前記第1の電極に印加する送信手段をさらに備え、
前記トランスポンダは、前記第2の電極に現れた受信信号を読み取ってデータを復調する受信手段をさらに備える、
ことを特徴とする請求項8に記載の通信システム。
【請求項10】
前記第1B及び第2Bの通信手段は、アンテナを用いた電波通信方式の無線通信によって高速大容量のデータ通信を行なう、
ことを特徴とする請求項8に記載の通信システム。
【請求項11】
前記第1B及び第2Bの通信手段は、誘導結合方式の近接無線通信によって高速大容量のデータ通信を行なう、
ことを特徴とする請求項8に記載の通信システム。
【請求項12】
前記第1Bの通信手段は、前記第1Aの手段とは1つの電界カプラを時分割で共用し、
又は、前記第2Bの通信手段は、前記第2Aの手段とは1つの電界カプラを時分割で共用する、
ことを特徴とする請求項11に記載の通信システム。
【請求項13】
前記第1及び第2の電極の間で誘導結合作用が発生する程度に前記リーダライタ及びトランスポンダ同士が接近した近接無線通信状態において、前記第1Aの通信手段は前記第1Bの通信手段の電源をオンにするとともに、前記第2Aの通信手段は前記第2Bの通信手段の電源をオンにする、
ことを特徴とする請求項9に記載の通信システム。
【請求項14】
前記通信手段1Bと2Bの間での高速大容量通信が終了したときに、一定の時間を置いて前記通信手段1Bと2Bの電源はともにオフになり、前記通信手段1Aのみが交信範囲の通信手段2Aと通信可能となる通常の状態(若しくは、高速大容量無線通信における待機期間)となる、
ことを特徴とする請求項13に記載の通信システム。
【請求項15】
前記第1及び第2の電極の間で誘導結合作用が発生する程度に前記リーダライタ及びトランスポンダ同士が接近した近接無線通信状態において、前記第1Aの通信手段は、前記第2Aの通信手段を通じて前記第2の通信装置のID情報を取得して、電源をオンにした際に前記第1Bの通信手段に該ID情報を渡すとともに、前記第2Aの通信手段は、前記第1Aの通信手段を通じて前記第1の通信装置のID情報を取得して、電源をオンにした際に前記第2Bの通信手段に該ID情報を渡し、前記第1B及び第2Bの通信手段はそれぞれ取得したID情報を元に認証処理を行なう、
ことを特徴とする請求項13に記載の通信システム。
【請求項16】
請求項7に記載の通信システムにおいて、前記第1の通信装置として動作する通信装置であって、
第1の電極を含んだ電界カプラと、前記第1の電極に対し無変調キャリアの信号を印加する手段と、前記第1の電極に現れた受信信号を読み取ってデータを復調する受信手段と、送信データに応じて変調した送信信号を前記第1の電極に印加する送信手段を備え、リーダライタとして誘導結合による近接無線通信を行なう第1Aの通信手段と、
高速大容量の無線通信を行なう第1Bの通信手段と、
を具備することを特徴とする通信装置。
【請求項17】
前記第1Bの通信手段は、アンテナを用いた電波通信方式の無線通信によって高速大容量のデータ通信を行なう、
ことを特徴とする請求項16に記載の通信装置。
【請求項18】
前記第1Bの通信手段は、前記第1Aの手段とは1つの電界カプラを時分割で共用して、誘導結合方式の近接無線通信によって高速大容量のデータ通信を行なう、
ことを特徴とする請求項16に記載の通信装置。
【請求項19】
前記トランスポンダとの近接無線通信状態において、前記第1Aの通信手段は前記第1Bの通信手段の電源をオンにし、高速大容量通信が終了したときに一定の時間を置いて前記通信手段1Bの電源をオフにして、前記通信手段1Aのみが通信可能となる通常の状態(若しくは、高速大容量無線通信における待機期間)となる、
ことを特徴とする請求項16に記載の通信装置。
【請求項20】
前記トランスポンダとの近接無線通信状態において、前記第1Aの通信手段による近接無線通信を通じて前記第2の通信装置のID情報を取得して、電源をオンにした際に前記第1Bの通信手段に該ID情報を渡す、
ことを特徴とする請求項19に記載の通信装置。
【請求項21】
請求項7に記載の通信システムにおいて、前記第2の通信装置として動作する通信装置であって、
第2の電極を含んだ電界カプラと、前記第2の電極の負荷インピーダンスを切り替える負荷インピーダンス切替手段と、前記第2の電極に現れた受信信号を読み取ってデータを復調する受信手段を備え、トランスポンダとして誘導結合による近接無線通信を行なう第2Aの通信手段と、
高速大容量の無線通信を行なう第2Bの通信手段と、
を具備することを特徴とする通信装置。
【請求項22】
前記第2Bの通信手段は、アンテナを用いた電波通信方式の無線通信によって高速大容量のデータ通信を行なう、
ことを特徴とする請求項21に記載の通信装置。
【請求項23】
前記第2Bの通信手段は、前記第2Aの手段とは1つの電界カプラを時分割で共用して、誘導結合方式の近接無線通信によって高速大容量のデータ通信を行なう、
ことを特徴とする請求項21に記載の通信装置。
【請求項24】
前記リーダライタとの近接無線通信状態において、前記第2Aの通信手段は前記第2Bの通信手段の電源をオンにし、高速大容量通信が終了したときに一定の時間を置いて前記通信手段2Bの電源をオフにして、前記通信手段2Aのみが通信可能となる通常の状態(若しくは、高速大容量無線通信における待機期間)となる、
ことを特徴とする請求項16に記載の通信装置。
【請求項25】
前記リーダライタとの近接無線通信状態において、前記第2Aの通信手段による近接無線通信を通じて前記第1の通信装置のID情報を取得して、電源をオンにした際に前記第2Bの通信手段に該ID情報を渡す、
ことを特徴とする請求項24に記載の通信装置。


【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2009−135610(P2009−135610A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307974(P2007−307974)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】