説明

通信システム

【課題】コスト低減を図りつつ携帯電話機の通信不能エリアでの通信を可能とする。
【解決手段】携帯型ワイヤレス電話機30と、当該電話機の通話情報の配信を行うトンネルに沿って並んで配置された配信拠点装置20A,20Bとを含む通信システム10において、携帯型ワイヤレス電話機は、通話音声データを複数のパケットに分けて送信先を示すヘッダを付したパケットFに変換するパケット生成手段36と、各パケットの送受信を行う無線送受信手段37とを備え、配信拠点装置は、受信した通話音声データのパケットの送受信を行う無線送受信手段202と、パケットの無線送受信のための指向性アンテナ21とを備え、各配信拠点装置の無線送受信手段は、他の配信拠点装置と携帯型ワイヤレス電話機との通信を同じ周波数帯域で行っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話機の普及により、現在は屋外にあっても利便性の高い移動式の通信手段の入手が容易となった。そこで、鉄道の保守点検作業や鉄道の事故等における緊急連絡の手段としても携帯電話機は広く活用されるようになっている。
また、屋外の連絡手段として、鉄道に沿って有線の電話回線を敷設し、緊急連絡用の電話機を一定の距離間隔で設置していた(例えば、特許文献1の第7図参照)。
【0003】
また、山間部などにあっては、鉄道の随所にトンネルが形成されている場合が多く、当該トンネル区間では携帯電話機による通信を行うことはできないという事情がある。これに鑑みて、トンネル外部に設けられた交換機から有線回線を介して接続された基地局を含む複数の基地局をトンネル内に沿って所定の間隔で複数設置し、基地局に対して通信可能な移動局をトンネル内の任意の位置に配置し、移動局との間で無線LANの規格に準拠した通信プロトコル(SIP)により携帯型ワイヤレス電話機との通信を行うトンネル内の通信システムが考案されている(例えば、非特許文献1参照)。
この通信システムでは、各基地局と移動局との間では遠距離通信を行うために高出力での通信を行う所定の周波数帯域での通信を行い、移動局と携帯型ワイヤレス電話機との間では無線LANの規格に準拠した通信を行うことで、トンネル外部から携帯型ワイヤレス電話機までの間の通話を可能としている。
【特許文献1】特許第4127658号公報
【非特許文献1】「鉄道と電気技術」社団法人日本鉄道電気技術協会、2007年9月、p.14
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の先行技術は、鉄道に沿って設けられた緊急連絡用の電話機は、一定の間隔をおいて設置されているので、電話機まで移動して利用しなければならず、即時の利用ができず且つ電話機までの移動が負担となるという問題を生じていた。
また、非特許文献1の先行技術は、携帯型ワイヤレス電話機を携行することができるので、固定設置された電話機までの移動負担を解消することができるが、高出力を行う周波数帯域での通信と低出力の無線LAN規格の周波数帯域での通信の両方を組み合わせて使用するので、それぞれの周波数帯域での通信設備を必要とし、さらに、一方の周波数帯域での通信と他方の周波数帯域での通信とを接続するインターフェイスが必要となり、基地局や移動局の構成が複雑でコストも高くなるという問題があった。
さらに、基地局同士を高出力の周波数帯域で通信させることで、基地局同士の間隔を広げているため、通信距離の短い通信手段である携帯型ワイヤレス電話機との通信を可能とするためには、基地局から携帯型ワイヤレス電話機までの間を中継する移動局が必須となり、かかる面からも構成の複雑化を招き、コストの上昇を招いていた。
【0005】
本発明は、コストの低減を図りながら携帯電話機の使用ができないエリアでの通信を可能とすることをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、トンネルに沿って並んで配置された複数の配信拠点装置と、前記配信拠点装置との無線による通話情報の送受信により通話を行う携帯型ワイヤレス電話機とを有する通信システムにおいて、前記携帯型ワイヤレス電話機は、音声通話信号を、送信先を特定するヘッダを有する複数のパケットに変換する電話側パケット生成手段と、パケット化された音声通話信号を復調化して音声出力する電話側復調化手段と、音声通話情報のパケットの送受信を行う無線送受信手段とを備え、前記配信拠点装置の少なくともいずれか一つが外部の沿線電話回線に接続されると共に、少なくとも前記外部の沿線電話回線に接続された配信拠点装置は、前記沿線電話回線により伝送される音声通話信号を、送信先を特定するヘッダを有する複数のパケットに変換する拠点側パケット生成手段と、パケット化された音声通話信号を復調化して音声通話信号として前記沿線電話回線に出力する拠点側復調化手段とを備え、全ての前記配信拠点装置は、送受信方向がトンネルに沿う方向に向けられて設置された前記パケットの無線送受信のための指向性アンテナと、前記受信したパケット又は前記拠点側パケット生成手段により生成されたパケットの送受信を行う無線送受信手段とを備え、前記各配信拠点装置の無線送受信手段は、他の配信拠点装置との無線送受信と前記携帯型ワイヤレス電話機との無線送受信とを区別なく同じ周波数帯域で通信を行い、前記各配信拠点装置は、受信した前記パケットをその送信先にかかわらず、全て前記無線送受信手段により送信する中継通信制御手段を備え、前記携帯型ワイヤレス電話機は、受信した前記パケットの送信先に当該携帯型ワイヤレス電話機が含まれる場合にのみ前記電話側復調化手段による復調化を行うよう制御する通信制御手段を備えることを特徴とする。
【0007】
なお、「沿線電話回線」とは、鉄道沿線に沿って設けられた電話回線のことをいい、国土交通省令(鉄道に関する技術上の基準を定める省令)に基づく保安通信設備の一部であり、当該電話回線とそれに対して約500m間隔で電話機又は電話機を接続するための端子が設けられており、鉄道独自の保安通信設備である。
列車が事故等で駅中間に停止した場合に、乗務員が隣接駅や関係箇所と連絡を行うほか、事故の連絡に限らず、施設や電気関係従業員の関係箇所との連絡にも使用される。端子が設けられている場合には、別途持参する電話機を接続して連絡を行うようになっている。
「沿線電話回線」は、上記のような保安通信用に設けられた電話回線をいうが、トンネル内の有線の電話機や当該電話機の接続端子は本発明の必須の構成ではない。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記並んで配置される複数の配信拠点装置の中で少なくとも前記トンネルの両端に位置するものを除く配信拠点装置が、前記トンネルの両端側に各々が向けられた二つの指向性アンテナを有することを特徴とする。
なお、「少なくとも」とあるように、トンネルの両端に位置する配信拠点装置については、トンネルの両端側に各々が向けられた二つの指向性アンテナを有していても良いし、トンネルの内側に向けられた一つの指向性アンテナのみを有していても良い。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明と同様の構成を備えると共に、前記沿線電話回線に接続された配信拠点装置は、前記沿線電話回線により伝送される音声通話信号から生成されたパケットを、全ての携帯型ワイヤレス電話機を送信先として送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明は、携帯型ワイヤレス電話機に対して、配信拠点装置を用いたデータのパケットの送受信により行うので、通常の携帯電話の通話ができないトンネル内であっても、当該トンネル内に配信拠点装置を設置することにより、その無線可能範囲について携帯型ワイヤレス電話機同士又は沿線電話回線を介する外部と携帯型ワイヤレス電話機との音声通信が可能となり、沿線作業時の連絡或いは沿線周辺での緊急連絡等の通話が可能となる。
そして、上記通信システムは、トンネル内に設置され、配信拠点装置の指向性アンテナの送受信方向をトンネルに沿う方向に向けて使用している。このため、電波の拡散を抑制し、外部からの外乱となるノイズの影響も防止できるため、周囲に遮蔽物のない屋外で通信を行う場合よりも遠距離の通信が可能となる。このため、広範囲の通信を少ない機材で行うことが可能となる。
また、上記携帯型ワイヤレス電話機は携行可能であるため、トンネル内で信を要するエリアに一定間隔で設けられた固定電話まで移動を余儀なくされる不都合を解消し、移動の負担と時間を要することなく速やか且つ容易に通信を行うことが可能となる。
【0011】
また、請求項1記載の発明は、各配信拠点装置の無線送受信手段は、他の配信拠点装置との無線送受信と前記携帯型ワイヤレス電話機との無線送受信とを区別なく同じ周波数帯域で通信を行い、中継通信制御手段は受信したパケットをその送信先にかかわらず、全て新たに送信するので、パケットが全て全配信拠点装置により中継されることとなり、いずれかの配信拠点装置の送受信可能範囲に存在する携帯型ワイヤレス電話機に対する通信を可能とする。そして、携帯型ワイヤレス電話機が複数存在する場合、全ての携帯型ワイヤレス電話機に対してパケットが送信されることとなるが、その通信制御手段は当該携帯型ワイヤレス電話機を送信先とするパケットのみを復調化させるので、予定された携帯型ワイヤレス電話機との通話が可能となる。
【0012】
そして、上記通信システムは、各配信拠点装置の無線送受信手段が、他の配信拠点装置との無線送受信と携帯型ワイヤレス電話機との無線送受信とを区別なく同じ周波数帯域で通信を行うので、配信拠点装置同士での通信と配信拠点装置と携帯型ワイヤレス電話機との間での通信とを異なる周波数待機域で通信を行う従来技術と異なり、周波数ごとの無線送受信手段や異なる周波数を扱う無線送受信手段の間に設けられるインターフェイスを不要とし、単一の周波数で通信を行う無線送受信手段のみを備えれば足りるため、構成の簡易化を図り、コスト低減を図ることが可能となる。
【0013】
さらに、各配信拠点装置の無線送受信手段は、他の配信拠点装置との無線送受信と携帯型ワイヤレス電話機との無線送受信とを区別なく同じ周波数帯域で通信を行うので、従来のように配信拠点装置同士が携帯型ワイヤレス電話機の通信可能距離よりも長い間隔で配置されることがないので、配信拠点装置と携帯型ワイヤレス電話機とを中継する移動可能な中継手段を不要とし、さらに、構成の簡易化を図り、コスト低減を図ることが可能となる。
【0014】
請求項2記載の発明は、少なくともトンネルの両端に位置するものを除く配信拠点装置がトンネルの両端側に各々が向けられた二つの指向性アンテナを有しているので、当該配信拠点装置は双方向について通信範囲を網羅することができ、配信拠点装置の設置数を低減することが可能となる。
【0015】
請求項3記載の発明は、沿線電話回線に接続された配信拠点装置が沿線電話回線により伝送される音声通話信号から生成されたパケットを全ての携帯型ワイヤレス電話機を送信先として送信するので、トンネルの外部から複数の携帯型ワイヤレス電話機に対して同時連絡を行うことが可能となり、例えば、複数の携帯型ワイヤレス電話機に対して緊急を要する連絡の必要性が生じた場合などでも速やかに連絡を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第一の実施形態)
以下、本発明の第一の実施形態である通信システム10について、図1から図3を参照しながら説明する。図1は通信システム10の全体構成図である。
本実施形態は、鉄道沿線のトンネル区間T(トンネルには防風又は防雪のためのシェルターが設けられている場合があるが、そのような場合にはシェルターも通信の対象とする)に通信システム10が設けられた場合を例にして説明する。かかる通信システム10は、例えば,鉄道の保全・保守管理を行うための作業者相互間或いは作業者と外部遠隔地からの通信を行う場合に好適である。
【0017】
通信システム10は、沿線に沿って敷設された沿線電話回線11と、沿線電話回線11に接続された沿線電話機12と、沿線電話回線11に沿って複数配置された配信拠点装置20A,20Bと、各配信拠点装置20A,20Bを介して通話による通信を行う複数の携帯型ワイヤレス電話機としてのIP電話機30とを備えている。
沿線電話回線11は、前述したように、鉄道沿線に沿って設けられた電話回線であり、トンネルの外部に設けられた図示しない鉄道の管理所に設置されたアナログ電話機と接続されている。また、この沿線電話回線11を交換機に接続してそこから通信事業者のネットワークである加入電話網と接続しても良い。
上記各配信拠点装置20Aはトンネル区間の両端部のそれぞれに固定設置され、配信拠点装置20Bはトンネル区間の途中に固定設置される。なお、配信拠点装置20Bは、図1では一基のみ図示しているが、トンネル内の途中区間により多く設置して高密度に設置しても良い。また、各配信拠点装置20A、20Bは、無線による送受信回路202(後述)を備えており、隣接する配信拠点装置同士が、許容される通信強度での無線の送受信が可能な範囲でなるべく距離を離して配置されている。
【0018】
(IP電話機)
図2はIP電話機30の主要機能を示す機能ブロック図である。IP電話機30は、通信に要する主要な制御を行う主制御部36と、通話音声のデジタルデータ化と受信した音声データの音声化とを行う変調・復調化処理部33と、送信先や通話の開始及び切断(フックのオンオフ)を入力する操作ボタン34と、パケットF化された音声データを搬送波に乗せて発信すると共に外部から搬送波に乗ったデータのパケットFを受信する無線送受信手段としての送受信回路37と、送受信のための指向性を持たないホイップアンテナ38とを備えている。
【0019】
変調・復調化処理部33は、マイク31に接続されており、当該マイク31を通じて通話音声のサンプリングを行い、通話音声をデジタルデータに変調する。また、変調・復調化処理部33は、送受信回路37から受信した音声のデジタルデータを復調して音声信号を生成しスピーカ32により出力させる。かかる変調・復調化処理部33は「電話側復調化手段」として機能する。
【0020】
主制御部36は、変調・復調化処理部33で生成された音声データを所定サイズのデータユニットに分割し、送信先情報及び送信元情報を含むヘッダを付与する。
つまり、主制御部36と変調・復調化処理部33とが協働により「電話側パケット生成手段」として機能する。
そして、主制御部36は、パケットFを送受信回路37に送り、搬送波に乗せて発信することでデータ送信処理を行う。
【0021】
また、主制御部36は、送受信回路37で受信した各パケットFのヘッダから送信先情報を読み出して、当該IP電話機30が送信先である場合、全IP電話機30が送信先とされている場合又は送信先の指定がない場合(指定がない場合には全指定と見なす)には、パケットFから音声データを生成し、変調・復調化処理部33に出力する。これにより、変調・復調化処理部33は、音声データを復調してスピーカ32から音声出力を行う。
また、主制御部36は、受信したパケットFの送信先が他のIP電話機30である場合には、パケットFの破棄を行う。
これにより、主制御部36は「通信制御手段」として機能することとなる。
【0022】
また、主制御部36は、操作ボタン34による入力操作に基づいて各種の処理を行う。即ち、操作ボタン34により電話番号の入力を受けると、当該電話番号に基づく送信先情報と送信元情報とをヘッダに含めてパケットFを生成する。なお、相手方からの通話の場合には、相手から空のパケットFに付されたヘッドの送信元情報に基づく送信元を送信先とするヘッダをパケットFに付する処理を行う。
また、主制御部36は、操作ボタン34から通話に関する各種の指令(電話の発信、通話の終了、通話受信時の回線を接続するか等)に従って、各種の制御を行っている。
【0023】
(配信拠点装置)
配信拠点装置20A,20BはいずれもVoIPルータ200を内蔵している。そして、配信拠点装置20Aは、トンネル区間Tの端に配置されるため、トンネルの内側に向かって送受信を行うことが可能であれば足りるため、当該トンネルの内側に向けられた一本の指向性アンテナ21とこれに接続された一基のVoIPルータ200のみを具備している。
一方、配信拠点装置20Bは、トンネル区間Tの途中に配置されるので、双方向からの送受信を行う必要があり、トンネル区間に沿った方向の両側に向けられた二本の指向性アンテナ21,21とこれらに個々に接続された二基のVoIPルータ200,200とを具備している。ここで、指向性アンテナ21としては、八木・宇田アンテナが使用される。なお、これら二基のVoIPルータ200,200は互いにLANケーブル22で接続されており、有線によりパケットFの送受が行われている。
【0024】
図3は、配信拠点装置20Bの概略構成を示す機能ブロック図である。なお、配信拠点装置20Aは指向性アンテナ21及びVoIPルータ200が一つである点とVoIPルータ200がWANに接続されていない点を除けば同一構造であるため、配信拠点装置20Bのみを説明して配信拠点装置20Aの説明は省略するものとする。
配信拠点装置20Bは、前述したようにトンネル区間Tの一方と他方にそれぞれ向けられた指向性アンテナ21,21と、各指向性アンテナ21,21のそれぞれに接続されたVoIPルータ200,200とから構成されている。
【0025】
上記VoIPルータ200は、VoIPに準拠したパケット配信等の通信制御を行うことにより、各IP電話機30のアクセスポイントとして機能する。このVoIPルータ200は、無線LANの標準規格であるIEEE802.11b,IEEE802.11a,IEEE802.11gに対応して通信を行うことができる。このため、これらの標準規格に準拠した無線LANクライアントを備える情報処理端末に対してもアクセスが可能となっている。
【0026】
そして、各VoIPルータ200は、通信プロトコルとしてSIPを採用しており、パケット配信等の通信制御を行う主制御部201と、所定のヘッダを付した通話音声データのパケットFを搬送波に乗せて発信すると共に外部から搬送波に乗ったパケットFを受信する無線送受信手段としての送受信回路202と、通信制御に要する情報を記憶したSIPサーバ212と、沿線電話回線11が接続されたTEL入力ポート204と、アナログ電話機である沿線電話機12が接続されたTEL出力ポート205と、WAN(Wide Area Network)との接続が可能なWAN接続ポート206と、LAN(Local Area Network)との接続ポート207,208と、各ポート206〜208のインターフェイス209と、TEL入出力ポート204,205のインターフェイス210と、通話音声のデジタルデータ化と受信した音声データの音声化とを行う変調・復調化処理部211とを備えている。
なお、VoIPルータ200を二つ備える配信拠点装置20Bにあっては、片方のVoIPルータ200についてのみ、TEL入力ポート204に沿線電話回線11が接続され、TEL出力ポート205に沿線電話機12が接続され、WAN接続ポート206にWAN接続が行われ、LAN接続ポート207にIP電話機13が接続されている。
【0027】
送受信回路202は、IP電話機30と同じ周波数の搬送波に乗せてパケット送信を行う。また、全てのVoIPルータ200は、いずれも同じ周波数の送受信回路であって、VoIPルータ200同士の相互間の通信も同じ周波数で行っている。つまり、VoIPルータ200は、送受信可能範囲内にある他のVoIPルータ200とIP電話機30のいずれに対しても通信を行うことが可能となっている。
【0028】
変調・復調化処理部211は、インターフェイス210を介してTEL入出力ポート204,205のそれぞれに接続されており、当該インターフェイス210を通じて通話音声信号が入力されると、当該通話音声信号をデジタルデータに変調して主制御部201に出力する。
また、変調・復調化処理部211は、主制御部201から通話音声のデジタルデータが入力されると、これを復調して通話音声信号を生成し、インターフェイス210を介してTEL入力ポート204又はTEL出力ポート205に出力する。
つまり、変調・復調化処理部211は、拠点側復調化手段として機能する。
【0029】
主制御部201は、変調・復調化処理部211で生成された音声データを所定サイズのデータユニットに分割し、送信先情報を含むヘッダを付与してパケットFを生成する。つまり、主制御部201と変調・復調化処理部211とが協働により「拠点側パケット生成手段」として機能する。
なお、変調・復調化処理部211で生成された音声データは、沿線電話機12又は沿線電話回線11を介して接続された外部のアナログ電話機からの通話音声信号に基づく音声データであり、これらの沿線電話機12又は外部のアナログ電話機は、IP電話機30のように送信先を示すヘッダを有するパケットFを電話機内で生成する機能を有していないので、変調・復調化処理部211で生成された音声データからパケット生成を行う際には、ヘッダに送信先情報を含まないパケットFを生成する。前述したように、各IP電話機30の主制御部36は、送信先を指定されていないパケットFについては、全指定と同様に処理するので、沿線電話機12又は沿線電話回線11を介して接続された外部のアナログ電話機からの音声データは全てのIP電話機30で音声化され、沿線電話機12及び外部のアナログ電話機は、全てのIP電話機30を対象とする通話を行うことを可能としている。
なお、主制御部201は、変調・復調化処理部211から音声データが入力された場合には、音声データは全て送信先を全指定とするヘッダを有するパケットFを生成する処理を行うように設定しても良い。
【0030】
また、主制御部201には、送受信回路202が受信したパケットFやインターフェイス209を介してWAN接続ポート206及びLAN接続ポート207,208からのパケットFが入力される。このとき、パケットFのヘッダに書き込まれた送信先情報がIP電話機30の操作ボタン34の入力した電話番号の場合には、SIPサーバ212を参照し、電話番号と送信先の対応関係を読み出して、ヘッダの内容を通信プロトコルに従った送信先情報に書き換える処理を実行する。
そして、主制御部201は、入力される全てのパケットFを全ての出力先、つまり、送受信回路202から搬送波に乗せて無線出力し、インターフェイス209を介してWAN接続ポート206,LAN接続ポート207,208への外部出力、インターフェイス210及び変調・復調化処理部211を介してTEL出力ポート205,TEL入力ポート204への外部出力を行う。
このようにパケットFはVoIPルータ200からあらゆるルートで出力されるが、送信先でパケットFの送信先情報の判断が行われるので問題はない。
上記処理により、主制御部201は、「中継通信制御手段」として機能する。
【0031】
VoIPルータ200は、上記構成により、TEL入力ポート204に接続された沿線電話回線11を介する外部のアナログ電話機、TEL出力ポート205に接続された沿線電話機12、WAN接続ポート206及びWANを介して接続された外部のIP電話、LAN接続ポート207に接続された有線のIP電話機13、無線LAN通信を行う通信可能範囲内のIP電話機30との相互間の通話を可能とする。
また、パケットFは、送受信回路202に接続された指向性アンテナ21やLAN接続ポート208に接続されたVoIPルータ200の送受信回路202に接続された指向性アンテナ21により、トンネルに沿ったいずれの方向に対してもパケットFの送受信が可能なので、隣接するいずれの配信拠点装置20A,20Bとの間でも通信可能となり、トンネルに沿って並んだ全ての配信拠点装置20A又は20Bが網羅する範囲のIP電話機30や各配信拠点装置20A、20Bに接続された他の電話機との相互間の通話を可能とする。
【0032】
なお、WAN接続ポート206には、例えば、沿線電話回線から図示しないADSLモデムを介してWAN(インターネット)との接続が行われている。
また、LAN接続ポート207に接続された有線のIP電話機13は、前述したワイヤレスのIP電話機30の送受信回路37を除いてIP電話機30とほぼ同一の機能を備えた電話機である。
なお、通信システム10の全VoIPルータ200の内で少なくとも一基のみが外部のWAN及び沿線電話回線11に接続されていれば足りるが、より多く或いは全てのVoIPルータ200についてWAN及び沿線電話回線11に接続が行われていても良い。
【0033】
(通信システムによる通話処理)
上記通信システム10における通話時の処理について説明する。
まず、沿線電話回線11を通じて外部の電話機から通話を行う場合には、配信拠点装置20BのVoIPルータ200は、外部の電話からの音声信号を変調・復調化処理部211によりデジタルデータ化し、主制御部201が送信先を特定しないパケットFを生成し、送受信回路202及びWAN接続ポート206、LAN接続ポート20,208から外部に配信する。また、TEL出力ポート205に接続された沿線電話機12に対しても送信を行う。
その結果、片方のVoIPルータ200の送受信回路202に接続された指向性アンテナ21によりトンネルに沿った片側にパケットFは無線配信され、また、LAN接続ポート208を介して接続されたもう一方のVoIPルータ200によりトンネルに沿った逆側にもパケットFは無線配信される。
全ての配信拠点装置20A、20BのVoIPルータ200は、外部から受信したパケットFを新たに無線配信するので、各配信拠点装置20A、20Bを中継して全ての配信拠点装置20A、20Bに対してパケットFが送信されることとなる。そして、全配信拠点装置20A、20Bの通信可能範囲内にある全てのIP電話機30に対してパケットFの送信が行われる。また、全VoIPルータ200に接続された有線のIP電話機13にもパケットFの送信が行われる。また、全配信拠点装置20A、20BのVoIPルータ200は、変調・復調化処理部211によりパケットFの音声データを復調して音声信号に替えて沿線電話機12に信号を送信する。
これにより、沿線電話回線11を通じて外部の電話機から全ての電話機30,12,13に対して通話を行うことが可能である。
【0034】
また、IP電話機30から通話を行う場合には、ボタン34による番号で指定された送信先を示すヘッダが付されたパケットFが無線送信され、これをいずれかの配信拠点装置20A又は20Bで受信すると、そのVoIPルータ200の主制御部201は、ヘッダの指定番号に対応する送信先をSIPサーバ212により読み出して、通信プロトコルに従った送信先情報に書き換える。そして、前述の場合と同様に全ルートにパケットFを送信する。その結果、全ての配信拠点装置20A、20Bに対してパケットFが送信され、全配信拠点装置20A、20Bの通信可能範囲内にある全てのIP電話機30に対してパケットFの送信が行われる。また、全配信拠点装置20A、20Bに接続された全ての有線のIP電話機13(WANを介した外部のIP電話機を含む)及び沿線電話機12と沿線電話回線11を通じた外部の電話機に対してもパケットFまたは音声信号が送信される。
これにより、IP電話機30から全ての電話機に対して通話を行うことが可能である。
なお、有線のIP電話機13やWANを介した外部のIP電話機から通話を行う場合には、上記IP電話機30による場合と同様の処理が行われ、沿線電話機12による通話の際には、沿線電話回線11を通じて外部の電話機により場合と同様の処理が行われる。
【0035】
その結果、音声通話データのパケットFは、全てのVoIPルータ200(全ての配信拠点装置20)に送信され、さらに、各VoIPルータ200の全ての無線送信可能範囲にパケットFが発信されるため、送信先となるIP電話機30がいずれかの無線送信可能範囲内に存在している限り、音声通話データのパケットFは適正に受信される。
このため、WANを通じて外部のIP電話機と通信システム10内のIP電話機30との通話や通信システム10内のIP電話機30同士の通話が円滑に行われる。
【0036】
(第一の実施形態の効果)
上記通信システム10は、複数のIP電話機30に対する音声通信を配信拠点装置20A,20Bを用いたデータのパケット化の送受信により行うので、携帯電話の非通話エリアであっても、配信拠点装置20を設置することにより、その無線可能範囲についてIP電話機30の相互間での音声通信が可能となる。また、配信拠点装置20Bを情報伝送回線であるWANと接続しているので、通信システム10のネットワーク内に限らず外部のネットワークを通じて外部のIP電話或いはこれと同様に機能する通話機器との通話を行うことも可能である。
また、配信拠点装置20Bを沿線電話回線11と接続しているので、トンネル外部の鉄道の管理所に設置された電話機とトンネル内で使用される全ての電話機12,13,30との通話を行うことも可能である。
また、IP電話機30は携行可能であるため、通信を要するエリアに疎らに設けられた固定電話まで歩行を余儀なくされる不都合を解消し、移動の負担と時間を要することなく速やか且つ容易に通信を行うことが可能となる。
【0037】
また、上記通信システム10では通話機器としてワイヤレスのIP電話機を使用し、配信拠点装置20A,20BがVoIPルータ200を含む構成としているため、市販の無線LANシステムを応用して通信システムを構成することが可能となり、通信システムの設置及び撤去を容易且つ低廉に行うことが可能となる。
特に、ワイヤレスのIP電話機は携行性に優れ、市販のVoIPルータはユニット及び小型化が進んでいるため可搬性にも優れることから、電源が確保することが可能であれば、屋外でも容易に設置することができ、設置作業のコストや作業負担の軽減も図ることが可能である。
【0038】
また、通信システム10は、各配信拠点装置20A,20Bが指向性アンテナ21を用いて電波の送受を行うので、通常のアンテナを用いる場合に比べて各配信拠点装置間距離をより離して配置することができ、使用機器の機体数低減、通信可能範囲の拡大化を図ることが可能となる。
特に、上記通信システム10は、トンネル内通信システムとして利用されており、指向性アンテナ21の送受信方向はトンネルに沿う方向に向けられている。一方、通信システム10の各配信拠点装置20A、20B、IP電話機30は、IEEE802.11b,IEEE802.11a,IEEE802.11gに準拠した2412〜2472[MHz]又は5180〜5320[MHz]の周波数帯域で無線通信を行っているが、
トンネル内は電波の拡散を抑制し、外部からの外乱となるノイズの影響も防止できるため、周囲に遮蔽物のない屋外で通信を行う場合よりも遠距離の通信が可能となる。このため、各配信拠点装置20A、20Bはより広範囲の通信を行うことが可能となる。
さらに、各配信拠点装置20A,20Bは、トンネルに沿って並んで配置されており、中間の配信拠点装置20Bはトンネルの両端側に各々が向けられた二つの指向性アンテナ21,21を有しているので、当該配信拠点装置20Bは双方向について通信範囲を網羅することができ、配信拠点装置の設置数を低減することが可能となる。
【0039】
また、通信システム10の各配信拠点装置20A、20Bの送受信回路202は、他の配信拠点装置20A、20Bとの無線送受信とIP電話機30との無線送受信とを区別なく同じ周波数帯域で通信を行い、中継通信制御手段として機能する主制御部201は、受信したパケットFをその送信先にかかわらず、全て新たに送信するので、パケットFが全て全配信拠点装置20A、20Bにより中継されることとなり、いずれかの配信拠点装置20A、20Bの送受信可能範囲に存在するIP電話機30に対する通信を可能とする。そして、IP電話機30がトンネル内に複数存在する場合、全てのIP電話機30に対してパケットFが送信されることとなるが、その主制御部36は当該携帯型ワイヤレス電話機を送信先とするパケットFのみを復調化させるので、予定された携帯型ワイヤレス電話機との通話が可能となる。
【0040】
そして、上記通信システム10は、各配信拠点装置20A、20Bの送受信回路202が、他の配信拠点装置20A、20Bとの無線送受信とIP電話機30との無線送受信とを区別なく同じ周波数帯域で通信を行うので、配信拠点装置20A、20B同士での通信と配信拠点装置20A、20BとIP電話機30との間での通信とを異なる周波数帯域で通信を行う従来技術と異なり、周波数ごとの送受信回路や異なる周波数を扱う送受信回路同士の間に設けられるインターフェイスを不要とし、単一の周波数で通信を行う送受信回路202のみを備えれば足りるため、構成の簡易化を図り、コスト低減を図ることが可能となる。
【0041】
さらに、各配信拠点装置20A、20Bの送受信回路202は、他の配信拠点装置20A、20Bとの無線送受信とIP電話機30との無線送受信とを区別なく同じ周波数帯域で通信を行うので、従来のように配信拠点装置同士がIP電話機の通信可能距離よりも長い間隔で配置されることがないので、配信拠点装置とIP電話機とを中継する移動可能な中継手段を不要とし、さらに、構成の簡易化を図り、コスト低減を図ることが可能となる。
【0042】
また、通信システム10における沿線電話回線11に接続された配信拠点装置20Bが沿線電話回線11により伝送される音声通話信号から生成されたパケットFをトンネル内で使用される全ての電話機12,13,30を送信先として送信するので、トンネルの外部からトンネル内で使用される全ての電話機12,13,30に対して同時連絡を行うことが可能となり、トンネル内で使用される全ての電話機12,13,30に対して緊急を要する連絡の必要性が生じた場合、例えば、熊出没情報や厳冬期におけるトンネルのつらら落とし作業等の場合でも速やかに連絡を行うことが可能となる。
【0043】
(第二の実施形態)
次に、本発明の第二の実施形態として、より具体的な実使用の例を図4に示す。
通信システム10は、北海道の石勝線の沿線における第一追分トンネルTから明かり区間L(トンネルではない区間)を介して連なる第二追分トンネルTを含む区間に通信システム10を適用した例である。
一台目の配信拠点装置20B(この配信拠点装置20Bのみが沿線電話回線11に接続)を第一追分トンネルTの一端部側に設置し、二台目の配信拠点装置20Bを第一追分トンネルTの他端部側に設置し、三台目の配信拠点装置20Bを第二追分トンネルTの途中に設置した。そして、一台目の配信拠点装置20B側のIP電話機30と三台目の配信拠点装置20B側のIP電話機30との相互間距離を約3500[m]まで離した状態で良好な通話を行うことができた。これにより、第一追分トンネルTと間の明かり区間と第二追分トンネルTの全長を全て含む区間を網羅する通信が可能であった。また、通信システム10は、その全てがトンネルの区間内ではなく、途中に明かり区間が介在しても、良好な通信を行うことが可能であることがこの例の試験により証明された。
【0044】
(第三の実施形態)
次に、本発明の第三の実施形態として、より具体的な他の実使用の例を図5に示す。
通信システム10は、北海道の函館本線の沿線における神居トンネルT、伊納第一トンネルT、伊納第二トンネルTとそれらに介在する明かり区間を含む区間に通信システム10を適用した例である。
一台目の配信拠点装置20B(この配信拠点装置20Bのみが沿線電話回線11に接続)を神居トンネルTの一端部側に設置し、二台目の配信拠点装置20Bを伊納第一トンネルT内に設置し、三台目の配信拠点装置20Bを伊納第二トンネルT内に設置した。そして、一台目の配信拠点装置20Bから三台目の配信拠点装置20B側のIP電話機30までの距離を約8000[m]まで離した状態で良好な通話を行うことができた。これにより、神居トンネルT、伊納第一トンネルT、伊納第二トンネルTの全長を全て含む区間を網羅する通信が可能であった。
【0045】
(参考例1)
次に、参考例としての通信システム10Cについて図6に基づいて説明する。かかる通信システム10Cにおいて前述した通信システム10と同一の構成については同符号を付して重複する説明は省略するものとする。
図6は通信システム10Cの全体構成図である。図示のように、通信システム10CはIP電話機30と配信拠点装置20Bとから構成され、トンネルのような周囲に遮蔽物のない解放的な屋外において実施される例を示している。かかる通信システム10Cでは、配信拠点装置20Bの各指向性アンテナ21,21が沿線電話回線11に沿った両方向に向けられて設置されている。なお、配信拠点装置20A又は20Bを複数並べて設置しても良いことは言うまでもない。
この通信システム10Cは、トンネル空間Tのように電波の拡散と外乱ノイズの影響を防止可能な環境ではないために通信可能な距離は短くなるが、かかる点を除けば、通信システム10と同様の効果を奏することが可能である。
なお、実際の使用実績では、かかる通信システム10Cでは配信拠点装置20Bに対してIP電話機30が沿線電話回線沿って340[m]離れた距離でも安定した通話が可能であった。また、前述したトンネル内の通信システム10では、配信拠点装置20Bに対してIP電話機30が沿線電話回線沿って2500[m]離れた距離でも安定した通話が可能であった。かかる実績により、各配信拠点装置20A,20Bの設置間隔は、遮蔽物なしで少なくとも340×2=680[m]まで離すことができ、トンネル区間では2500×2=5000[m]まで離すことができる。
【0046】
(参考例2)
次に、参考例2としての通信システム10D,10Eについて図7(A)及び図7(B)に基づいて説明する。かかる通信システム10D,10Eにおいて前述した通信システム10と同一の構成については同符号を付して重複する説明は省略するものとする。
図7(A)に示すように、通信システム10DはIP電話機30と配信拠点装置20Bに加えて配信拠点装置20Bの電源となるバッテリー14を備えており、配信拠点装置20B及びバッテリー14を運搬性のあるケース15に格納している。
また、指向性アンテナ21,21は、配信拠点装置20Bと一体化せず、三脚40により支持する構成とした。
かかる構成であれば、通信システム10と同様の効果を有すると共に、ケース15によりいかなる目的地にも通信システム10Dを運搬することができ、いかなる場所でも通信を可能とすると共に運搬さえすればすぐに通信を開始することも可能となる。また、指向性アンテナ21,21はケース15と別体なので、ケース15の運搬の邪魔とならず可搬性を向上させることができる。さらに、指向性アンテナ21は三脚40に支持されるので、指向性アンテナ21の設置及び撤去並びに運搬もひとりで容易に行うことが可能となる。
【0047】
図7(B)に示すように、通信システム10EはIP電話機30と配信拠点装置20Bを備えており、配信拠点装置20Bを運搬車両16(軽トラック、軌陸車、自家用車その他車種は選ばず)に搭載している。また、配信拠点装置の電源となるバッテリーについては専用のものを用意しても良いし、運搬車両16のバッテリーを利用しても良い。また、ジェネレータ(発電機)を用意して配信拠点装置20Bと共に搭載しても良い。
かかる構成であれば、通信システム10と同様の効果を有すると共に、運搬車両16によりいかなる目的地にも迅速且つ容易に通信システム10Dを運搬することができ、いかなる場所でも通信を可能とすると共に運搬さえすればすぐに通信を開始することも可能となる。
【0048】
なお、通信システム10C〜10Eについては配信拠点装置20Bを使用する例を示したが、配信拠点装置10Aを使用してもよい。
【0049】
(その他)
上記各通信システム10,10C〜10Eについては、寒冷地の使用にも適するように、各配信拠点装置20A、20Bにヒータを取り付けたり、外部を保温シートで包む構成としても良い。
また、海底トンネル内などは湿度が高くなる場合があるので、各配信拠点装置20A、20Bに除湿装置を取り付けても良い。
【0050】
また、各通信システム10,10C〜10Eでは、携帯型ワイヤレス電話機としてIP電話としての専用機であるIP電話機30を使用する場合を例示したが、携帯電話機とIP電話機のハイブリッド型の電話機を使用しても良いことは言うまでもない。その場合、ハイブリッド型の電話機をトンネル外の携帯通話エリアで使用する場合には、通常の携帯電話と同じように使用することができ、通信の手段として使用エリアの拡大を図ることが可能となる。
また、同様に、携帯型ワイヤレス電話機としての他の例として、IP電話機能が搭載されたスマートフォンのような携帯情報端末や、IP電話機能をソフトウェアにより実現するいわゆるソフトフォンがインストールされた情報処理端末(パーソナルコンピュータ等を含む)を利用しても良い。
【0051】
また、図8に示すように、通信システム10に、IP電話機30に替えて或いはIP電話機30と併用して、壁面設置式の放送システム連携ユニット50を使用してもよい。かかる放送システム連携ユニット50は、設置式である点を除くと、IP電話機30と全く同じ機能を有し、その内部構成もIP電話機30(図2参照)と同じである。つまり、スピーカとマイクを備え、通話も可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の第一の実施形態である通信システムの概略構成図である。
【図2】通信システムのIP電話機の機能ブロック図である。
【図3】通信システムの配信拠点装置の機能ブロック図である。
【図4】本発明の第二の実施形態である通信システムの概略構成図である。
【図5】本発明の第三の実施形態である通信システムの概略構成図である。
【図6】参考例1の全体構成図である。
【図7】参考例2の全体構成図であり、図7(A)は配信拠点装置をケースに格納した例を示し、図7(B)は配信拠点装置を運搬車両に搭載した例を示す。
【図8】通信システムに放送システム連携ユニットを適用した例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0053】
10,10C,10D,10E 通信システム
11 沿線電話回線
20A,20B 配信拠点装置
21 指向性アンテナ
30 IP電話機(携帯型ワイヤレス電話機)
33 変調・復調化処理部(電話側復調化手段)
36 主制御部(電話側パケット生成手段、通信制御手段)
37 送受信回路(無線送受信手段)
200 VoIPルータ
201 主制御部(拠点側パケット生成手段、中継通信制御手段)
202 送受信回路(無線送受信手段)
211 変調・復調化処理部(拠点側復調化手段)
F パケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルに沿って並んで配置された複数の配信拠点装置と、前記配信拠点装置との無線による通話情報の送受信により通話を行う携帯型ワイヤレス電話機とを有する通信システムにおいて、
前記携帯型ワイヤレス電話機は、
音声通話信号を、送信先を特定するヘッダを有する複数のパケットに変換する電話側パケット生成手段と、
パケット化された音声通話信号を復調化して音声出力する電話側復調化手段と、
音声通話情報のパケットの送受信を行う無線送受信手段とを備え、
前記配信拠点装置の少なくともいずれか一つが外部の沿線電話回線に接続されると共に、
少なくとも前記外部の沿線電話回線に接続された配信拠点装置は、前記沿線電話回線により伝送される音声通話信号を、送信先を特定するヘッダを有する複数のパケットに変換する拠点側パケット生成手段と、
パケット化された音声通話信号を復調化して音声通話信号として前記沿線電話回線に出力する拠点側復調化手段とを備え、
全ての前記配信拠点装置は、
送受信方向がトンネルに沿う方向に向けられて設置された前記パケットの無線送受信のための指向性アンテナと、
前記受信したパケット又は前記拠点側パケット生成手段により生成されたパケットの送受信を行う無線送受信手段とを備え、
前記各配信拠点装置の無線送受信手段は、他の配信拠点装置との無線送受信と前記携帯型ワイヤレス電話機との無線送受信とを区別なく同じ周波数帯域で通信を行い、
前記各配信拠点装置は、受信した前記パケットをその送信先にかかわらず、全て前記無線送受信手段により送信する中継通信制御手段を備え、
前記携帯型ワイヤレス電話機は、受信した前記パケットの送信先に当該携帯型ワイヤレス電話機が含まれる場合にのみ前記電話側復調化手段による復調化を行うよう制御する通信制御手段を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記並んで配置される複数の配信拠点装置の中で少なくとも前記トンネルの両端に位置するものを除く配信拠点装置が、前記トンネルの両端側に各々が向けられた二つの指向性アンテナを有することを特徴とする請求項1記載の通信システム。
【請求項3】
前記沿線電話回線に接続された配信拠点装置は、前記沿線電話回線により伝送される音声通話信号から生成されたパケットを、全ての携帯型ワイヤレス電話機を送信先として送信することを特徴とする請求項1又は2記載の通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−124206(P2010−124206A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295629(P2008−295629)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(590003825)北海道旅客鉄道株式会社 (94)
【Fターム(参考)】