説明

通信制御装置、及びプログラム

【課題】通信ネットワークの通信品質に応じて、端末装置に対する接続制御を行う。
【解決手段】端末装置と通信ネットワークを介して接続される通信制御装置において、前記端末装置から登録要求メッセージを受信したことに応じて、複数の試験パケットを前記端末装置に送信し、各々の試験パケットについて、往復遅延時間を測定し、通信品質情報格納手段に格納する手段と、複数の往復遅延時間と所定の基準値とを比較することにより、通信品質が正常か否かを判定する正常性判定手段と、前記正常性判定手段により、前記通信品質が正常でないと判定された場合に、通信品質測定結果の履歴に応じて、前記通信制御装置において前記端末装置と他の端末装置との接続をできない状態とするか、又は、所定の期間だけ前記端末装置と他の端末装置との接続をできる状態とするように接続制御を行う接続制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ネットワークの通信品質を測定し、当該通信品質に基づき、端末装置の通信ネットワークへの接続を制御する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
SIP(Session Initiation Protocol)に基づき呼接続制御を行うVoIP通信技術を用いたIP電話サービスが広く普及している。特に、近年では、無線LAN等の無線技術を用いた無線IP電話サービスが普及しつつある。
【0003】
このような無線IP電話サービスでは、サービスを利用しようとする端末装置は無線で無線アクセス装置にアクセスし、そこからSIPサーバ等への接続が行われる。ここで、無線通信に関わる区間の通信品質は、電波状況や無線アクセス装置にアクセスする端末装置の数等により変動し、有線区間に比べて安定していない。
【0004】
しかし、端末装置のユーザは、端末装置により実際に呼接続を行うまで通信品質が良いかどうかを把握することはできない。従って、例えば、端末装置のユーザは、通信品質の状況にかかわらず、まずは相手端末装置に電話をかける操作を行うが、通信品質の状況により、通話の途中で通信が切れたり、音声が途切れたりする場合が生じる。
【0005】
このように通信品質にかかわらずに通話を開始してしまうことにより、ユーザが満足に通話を継続できない状況が発生するのみならず、ある程度良好に通話を行っていた他のユーザの通信品質に悪影響を及ぼす場合もある。
【0006】
また、無線IP電話サービスで使用する端末装置は、一般に電池で動作するが、通信品質が悪くて通信を正常に行うことができないのに、呼接続のための処理を何度も行うことにより、電池を無駄に消費してしまうこともある。
【0007】
なお、本願に関連する先行技術文献として、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−208930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
端末装置による通話を行う前に通信品質に基づく接続可否を知ることができれば、通信品質が悪い場合に相手との呼接続を行わず、メール等の手段で通信を行うことなどが可能となり、上述したような他の端末装置への影響や電池の無駄な消費等の不都合は解消される。また、ユーザは、通話を行う場合にはいつも一定の良好な通話品質で相手との通話を行うことが可能となる。
【0010】
しかし、従来技術において、通信品質を把握するには、端末装置から試験パケットを他の装置に送信してから、その応答を受信するまでの時間を計測する等の方法しかなく、この方法を用いたのではユーザの利便性が非常に低下してしまう。また、呼接続処理に関係のない品質測定・判定のためだけの処理により電池が消費されてしまうという問題もある。
【0011】
ところで、SIPに基づくIP電話では、端末装置が定期的に登録要求(REGISTERリクエスト)を呼制御装置(SIPサーバ)に送信することにより、呼制御装置における登録情報を継続的に維持している。通信ネットワークへの接続が頻繁に切れてしまう可能性がある悪い通信品質の状況では、登録要求をある程度短い時間間隔で送ることは、呼制御装置側で端末装置の位置情報(IPアドレス等)を常に把握して、常に発着信ともに接続可能な状態にしておける点で意味があるが、通信品質がよい場合は、端末装置は通信ネットワークへの接続を継続している蓋然性が高く、短い時間間隔で登録要求を行うことの意味はあまりなく、そのことにより無駄に電池を消費してしまったり、ネットワークリソースを無駄に消費してしまうという問題がある。
【0012】
なお、IP電話に使用されるインターネット等のIPネットワークの通信品質は、固定電話ネットワークに比べれば安定していないため、通信品質が良くない状況で通話が行われる等の上述した問題は、無線IP電話サービスに限らず、有線でIPネットワークに接続するIP電話サービスでも生じ得る問題である。
【0013】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、端末装置から通信品質測定を行うことなく、通信ネットワークの通信品質に応じて端末装置の接続制御を行うとともに、端末装置が送信する無駄な登録要求を削減するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明は、端末装置と通信ネットワークを介して接続される通信制御装置であって、前記端末装置から登録要求メッセージを受信したことに応じて、複数の試験パケットを前記端末装置に送信し、各々の試験パケットについて、試験パケットを送信してから応答パケットを受信するまでにかかる時間である往復遅延時間を測定し、当該往復遅延時間を通信品質情報格納手段に格納する通信品質測定手段と、前記通信品質情報格納手段に格納された複数の往復遅延時間と所定の基準値とを比較することにより、前記通信ネットワークの通信品質が正常か否かを判定する正常性判定手段と、前記正常性判定手段により、前記通信品質が正常でないと判定された場合に、通信品質測定結果の履歴に応じて、前記通信制御装置において前記端末装置と他の端末装置との接続をできない状態とするか、又は、所定の期間だけ前記端末装置と他の端末装置との接続をできる状態とするように接続制御を行う接続制御手段と、を備えたことを特徴とする通信制御装置として構成される。
【0015】
前記通信品質測定結果の履歴は、前記通信品質測定手段によりなされる今回の通信品質測定の直前の通信品質測定結果であり、前記接続制御手段は、前記直前の通信品質測定結果に基づく正常性判定の結果が正常でない場合に、前記端末装置と他の端末装置との接続をできない状態とし、前記直前の通信品質測定結果に基づく正常性判定の結果が正常である場合に、所定の期間だけ前記端末装置と他の端末装置との接続をできる状態とするように接続制御を行うこととしてもよい。
【0016】
また、前記端末装置と他の端末装置との接続をできない状態とするために、前記接続制御手段が前記登録要求メッセージに基づく登録処理を行わないこととし、前記所定の期間だけ前記端末装置と他の端末装置との接続をできる状態とするために、前記接続制御手段が前記登録要求メッセージに基づく登録処理における登録情報の有効期間を前記所定の期間に設定することとしてもよい。
【0017】
前記正常性判定手段により、前記今回の通信品質が正常であると判定され、更に、前記直前の通信品質測定結果に基づく正常性判定の結果が正常である場合に、前記接続制御手段は、直前の通信品質測定結果に基づく正常性判定に基づき設定された登録情報の有効期間よりも長い有効期間を、前記登録要求メッセージに基づく登録処理における登録情報の有効期間とすることとしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、端末装置から通信品質測定を行うことなく、通信ネットワークの通信品質に応じて端末装置の接続制御を行うことが可能となる。また、通信品質が連続して正常である場合に、登録情報の有効期間を増加させることとしたので、端末装置が送信する無駄な登録要求を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態に係るシステムの構成図である。
【図2】通信制御装置1の機能構成図である。
【図3】通信品質測定結果格納部14が格納する情報の一例を示す図である。
【図4】システムの動作例を説明するためのシーケンス図である。
【図5】システムの動作例を説明するためのシーケンス図である。
【図6】システムの動作例を説明するためのシーケンス図である。
【図7】各状態の意味を示す図である。
【図8】状態遷移図である。
【図9】通信制御装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
【図10】通信制御装置1の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(システムの構成)
図1に、本発明の実施の形態に係るシステムの構成図を示す。図1に示すように、本実施の形態のシステムは、通信制御装置1と端末装置2とを備え、これらがインターネット等の通信ネットワーク3に接続されて構成されている。もちろん、図示してはいないが、端末装置2の接続相手となる多数の他の端末装置が通信ネットワーク3に接続されている。
【0021】
端末装置2の通信ネットワーク3への接続形態は特に限定されるわけではないが、本実施の形態においては、端末装置2は無線で通信ネットワーク3に接続され、端末装置2は移動可能ないわゆるモバイル端末であり、電池で電力が供給されるものとする。
【0022】
また、端末装置2は、SIPに基づき呼接続を行ってVoIP通信を行う機能とともに、ICMP(Internet Control Message Protocol)エコーリクエストを受信してICMPエコーリプライを返信する機能を備えている。これらの機能は、VoIP通信を行うための端末装置が一般的に備えている機能である。
【0023】
通信制御装置1は、SIPに基づく呼制御通信を行うとともに、端末装置2と通信制御装置1間の通信ネットワークの通信品質に基づき、端末装置2に対する接続制御を行う機能を備えた装置である。図2に通信制御装置1の機能構成図を示す。
【0024】
図2に示すように、通信制御装置1は、データ通信部11、SIP通信部12、端末装置接続制御部13、及び通信品質測定結果格納部14を有する。データ通信部11は、通信ネットワーク3を介してデータ通信を行う機能部である。
【0025】
SIP通信部12は、SIPに基づく呼制御通信を行う機能部であり、登録処理部15を含む。登録処理部15は、SIPに基づく登録処理を行う機能部であり、端末装置2から登録要求(REGISTERリクエスト)を受信して、バインディング情報(名前等の端末識別情報とアドレス情報との組)を記憶手段に格納し、応答を返す等の処理を行う。SIP通信部11は、ダイジェスト認証等の認証機能も備える。
【0026】
端末装置接続制御部13は、通信品質測定部16と接続制御部17とを有する。通信品質測定部16は、接続制御部17からの指示に基づき、ICMPエコーリクエストを端末装置2に送信し、端末装置2から返されるICMPエコーリプライを受信することにより、ICMPエコーリクエスト送信時刻からICMPエコーリプライ受信時刻までの時間(RTT:Round Trip Timeと呼ぶ)を測定し、それを通信品質測定結果として通信品質測定結果格納部14に格納する機能部である。接続制御部からの指示に基づく通信品質測定は、複数回連続的に行われる。
【0027】
接続制御部17は、通信品質測定結果等に基づき通信品質の正常性を判定する機能を有するとともに、現在の状態を管理し、その状態に対応した処理を行うように登録処理部15や通信品質測定部16を制御する機能部である。接続制御部17は、状態格納手段を有しており、当該状態格納手段に端末識別情報と状態とを格納し、状態格納手段から状態を読み出して当該状態に基づき制御を行うとともに、状態を変更したときには、変更後の状態で状態格納手段に格納された状態を更新する。
【0028】
図3に、通信品質測定結果格納部14が格納する情報の一例を示す。図3に示すように、通信品質測定結果格納部14は、端末識別情報、通信品質測定時刻、及び通信品質測定結果を対応付けて格納する。
【0029】
通信品質測定結果格納部14は、通信制御装置1の中に備える必要はなく、例えば、通信ネットワーク3に接続されたデータベースサーバとして実現してもよい。また、通信品質測定結果格納部14に格納された情報を通信ネットワーク3を介して外部に提供したり、外部からアクセス可能としてもよい。
【0030】
通信制御装置1は、上述した機能を実現するためのプログラムを、CPUやメモリ等の記憶手段を有するコンピュータに搭載することにより実現されるものである。当該プログラムは、可搬メモリ等の記憶媒体に格納し、当該記憶媒体からコンピュータにインストールすることが可能である。
【0031】
例えば、当該プログラムは、コンピュータを、端末装置2から登録要求メッセージを受信したことに応じて、複数の試験パケットを前記端末装置2に送信し、各々の試験パケットについて、試験パケットを送信してから応答パケットを受信するまでにかかる時間である往復遅延時間を測定し、当該往復遅延時間を通信品質情報格納手段に格納する通信品質測定手段、前記通信品質情報格納手段に格納された複数の往復遅延時間と所定の基準値とを比較することにより、前記通信ネットワークの通信品質が正常か否かを判定する正常性判定手段、前記正常性判定手段により、前記通信品質が正常でないと判定された場合に、通信品質測定結果の履歴に応じて、前記端末装置2と他の端末装置との接続をできない状態とするか、又は、所定の期間だけ前記端末装置2と他の端末装置との接続をできる状態とするように接続制御を行う接続制御手段、として機能させるためのプログラムとして構成できる。
【0032】
なお、通信制御装置1の中の機能部に関しては、図2に示した構成に限るわけではない。以下で説明する端末装置2に対する処理動作を実現できる構成であればどのような機能構成を有していてもよい。
【0033】
(システムの動作)
以下、図4〜図6に示すシーケンス図を参照して本実施の形態に係るシステムの動作例を説明する。各図においては、動作を分かりやすく示すために、通信品質測定結果格納部14を通信制御装置1の外部に示している。また、以下で説明する各シーケンス図において、右側に示される"状態"は、通信制御装置1において管理される状態であり、この状態に基づき動作制御が行われるが、"状態"がどのように使用されるかに関しては、シーケンス図の説明の後に詳細に説明することにする。また、以下で説明する処理において、認証用ヘッダ(authorization header)を用いた認証処理が行われるが、この認証処理については常に成功しているものとする。
【0034】
まず、図4を参照して、通信品質の正常性判定結果が正常である場合のシステムの動作例を説明する。
【0035】
まず、端末装置2が認証用ヘッダを含まない最初の(再送でない)REGISTERリクエストを通信制御装置1に送信する(ステップ1)。通信制御装置1では、登録処理部15がREGISTERリクエストを受信し、当該REGISTERリクエストは接続制御部17に渡される。
【0036】
接続制御部17は、当該REGISTERリクエストが認証用ヘッダを含まない最初のREGISTERリクエストであることを識別し、登録処理部15に対して当該REGISTERリクエストを廃棄するよう指示するとともに、通信品質測定部16に通信品質測定を行うよう指示する。これにより、登録処理部15は、当該REGISTERリクエストに対する応答等の処理を行わずに当該REGISTERリクエストを廃棄する。
【0037】
また、通信品質測定部16は通信品質測定を行う。具体的には、まず通信品質測定部16は、REGISTERリクエストの送信元である端末装置2に対して複数回ICMPエコーリクエストを送信する(ステップ2)。ICMPエコーリクエストを送信する回数は特定の値に限定されるわけではないが、本実施の形態では3回送信するものとする。一度の通信品質測定で、複数のICMP送受信を行い、複数のRTTを用いて判定を行うことにより、瞬間的なバーストエラーに惑わされることなく適切な判定を行うことができる。
【0038】
端末装置2は、ICMPエコーリクエストに対する応答であるICMPエコーリプライを送信し、通信品質測定部16が当該ICMPエコーリプライを受信する(ステップ3)。また、各ICMPエコーリクエストに関して、通信品質測定部16は、ICMPエコーリクエストを送信してから当該ICMPエコーリクエストに対応するICMPエコーリプライを受信するまでの時間(RTT)を算出し、RTT、測定時刻(最後のICMPエコーリプライを受信した時刻等)、及び、端末装置2の端末識別情報を対応付けて通信品質測定結果格納部14に格納する(ステップ4)。なお、端末識別情報はREGISTERリクエスト内に含まれている情報であり、この端末識別情報を用いることにより、特定の端末装置の通信品質測定結果(RTT)を参照できる。
【0039】
その後、端末装置2は、認証用ヘッダが付されていないREGISTERリクエストを再送し(ステップ5)、通信制御装置1の登録処理部15は当該REGISTERリクエストを受信し、接続制御部17に通知する。接続制御部17は、当該REGISTERリクエストが、認証用ヘッダのない再送に係るREGISTERリクエストであることを識別し、通信品質測定結果格納部14に格納されている端末装置2の複数個(本実施形態では3つ)のRTTを取得する(ステップ6)。
【0040】
そして、通信品質測定結果格納部14は、所定の基準値と各RTTとを比較し、複数個のRTTの中に、基準値より小さいRTTが少なくとも1つあるかどうかを判断することにより、通信品質の正常性判定を行う。本実施の形態では、複数個のRTTの中に、基準値より小さいRTTが少なくとも1つある場合に通信品質が正常であると判断している。
【0041】
本例では、複数個のRTTの中に、基準値より小さいRTTが少なくとも1つあり、接続制御部17は、通信品質は正常であると判定し、この時点での応答である401レスポンスを返すよう登録処理部15に指示する。なお、本実施の形態に係るREGISTERリクエストとレスポンスの送受信手順は、ダイジェスト認証を行う場合の手順に基づくものである。
【0042】
登録処理部15から401レスポンスが端末装置2に送信されると(ステップ7)、端末装置2は、認証用ヘッダを含むREGISTERリクエストを通信制御装置1に送信する(ステップ8)。当該REGISTERリクエストを受信した通信制御装置1では、上記と同様にしてRTTを参照することにより通信品質の判定がなされ、正常であると判断され、200OKレスポンスが端末装置2に返される(ステップ9、10)。なお、ステップ9に係る正常性判定処理を行わなくてもよい。
【0043】
その後、例えば、端末装置2が通話を行うのであれば端末装置2からINVITEが発信され、相手端末装置との呼接続、切断が行われることになる。
【0044】
図4の例では、REGISTERの有効期限が経過した後、端末装置2から新しいトランザクションの認証用ヘッダが付されたREGISTERリクエストが通信制御装置1に送られる(ステップ11)。当該REGISTERリクエストを受信した通信制御装置1において、接続制御部17が、当該REGISTERリクエストは(新たなトランザクションでの)最初の認証用ヘッダを含んだREGISTERリクエストであることを識別し、登録処理部15に401レスポンスを返させる(ステップ12)。
【0045】
更に、当該REGISTERリクエストは最初のREGISTERリクエストであるから、接続制御部17は、通信品質測定部16に対して通信品質測定を行うよう指示する。通信品質測定部16は、ステップ2、3と同様にして通信品質測定を行い、測定結果である複数個のRTTを通信品質測定結果格納部14に格納する(ステップ13〜15)。
【0046】
そして、通信制御装置1が、端末装置2から再送された認証用ヘッダ付きのREGISTERリクエストを受信すると(ステップ16)、接続制御部17は通信品質測定結果格納部14を参照することにより、RTTを取得し、通信品質の正常性の判定を行う(ステップ17)。ここでは、正常であると判定され、接続制御部17による指示に基づき、登録処理部15は、200OKを端末装置2に返す(ステップ18)。
【0047】
図4の例では、直前の通信品質測定結果での正常性判定結果が"正常"であり、それに続く通信品質測定結果であるステップ15における通信品質測定結果での正常性判定結果も"正常"である。このように、"正常"の判定結果が得られた通信品質測定の次に行う通信品質測定における正常性判定結果が"正常"である場合、本実施の形態では、接続制御部17からの指示に基づき、通信制御装置1における登録処理部15は、上記次の正常性判定の契機となるREGISTERリクエストに係るバインディング情報の保持期間(Expiration time)(次の保持期間)を、前の正常性判定の契機となるREGISTERリクエストに係るバインディング情報の保持期間(前の保持期間)よりも増加させる。そして、増加させた保持期間を含む200OKレスポンスを端末装置2に返す。更に、次に通信品質測定を行って、正常性判定結果が正常であれば、その前の保持期間より保持期間を増加させる。
【0048】
つまり、連続して正常性判定結果が正常であれば、保持期間を前回のものより増加させていく。ただし、増加させた保持期間が予め定めた最大値に達したら、その保持期間は当該最大値とし、それ以降は増加させない。増加させる量としては、例えば、次の保持期間を、前の保持期間の2倍にする。また、正常性判定結果が正常であった次の回の正常性判定で、正常と判定されなかった場合、その時点で保持期間として初期値が設定される。
【0049】
このように、正常な状態が続く場合に保持期間を増加させることにより、端末装置2からの無駄なREGISTERリクエスト送信を削減でき、ネットワークリソースの無駄な使用を削減できるとともに端末装置2の消費電力を削減できる。
【0050】
なお、"直前"の通信品質測定結果は、通信品質測定結果格納部14に格納された測定時刻を参照することにより決定できる。また、直前の通信品質測定結果での正常性判定結果については、直前の通信品質測定結果を用いて基準値との比較を行って得てもよいし、各回の正常性判定結果を測定時刻とともに通信品質測定結果格納部14に格納しておき、それを読み出すこととしてもよい。
【0051】
次に、"正常"でない正常性判定結果が得られる場合を含むシーケンスの第1の例(注意・一時利用可能状態となる例)を図5を参照して説明する。図5に示す例において、最初のREGISTERリクエスト受信の直前における正常性性判定結果は正常であったものとする。
【0052】
図5において、図4のステップ1〜ステップ4と同様にして通信品質測定、及び正常性判定が実施される。そして、図5の例では、正常性判定において、3つのRTTの全てが基準値より大きく、正常性判定において"異常"と判定される(ステップ21に係る判定)。
【0053】
図5の例では、今回の正常性判定の直前に行われた正常性判定の結果が正常であり、接続制御部17は、通信品質測定結果格納部14を参照することにより、直前に行われた正常性判定の結果が正常であることを把握する。
【0054】
本実施の形態では、今回の正常性判定において異常であっても、直前の正常性判定が正常である場合、接続制御部17の指示により、登録処理部15は保持期間として予め定めた期間(例えば、初期値より短い期間)を設定し、登録情報(バインディング情報)の保持、端末装置2への応答等、端末装置2が他の端末装置と通信を行うことを可能にするための処理を行う。
【0055】
つまり、異常と判定された後でも、図4のステップ7、8と同様にステップ22〜25の処理が行われる。ステップ25の200OKレスポンスに含まれる保持期間は、上記の例えば初期値より短い期間である。この後、例えば、INVITEの送受信(ステップ26、27)を得て、通話が行われることになる。ただし、図5の例では、保持期間が短く設定されておいるため、短い時間間隔でREGISTERリクエストの送信(ステップ1からの処理)が行われることになる。
【0056】
今回の判定で異常である場合でも、前回の判定で正常である場合は、今回の異常がバースト的、一時的なものである可能性が高い。従って、本例のように接続を許容することにより、ユーザへの利便性が高まる。
【0057】
次に、"正常"でない正常性判定結果が得られる場合を含むシーケンスの第2の例(エラー・一時利用不可能状態となる例)を図6を参照して説明する。図6に示す例において、最初のREGISTERリクエスト受信の直前における正常性判定結果は"異常"であったものとする。
【0058】
図6において、図4のステップ1〜ステップ4と同様にして通信品質測定、及び正常性判定が実施される。そして、図6の例では、正常性判定において、3つのRTTの全てが基準値より大きく、正常性判定において異常と判定される(ステップ32に係る判定)。
【0059】
図6の例では、今回の正常性判定の直前に行われた正常性判定の結果が異常であり、接続制御部17は、通信品質測定結果格納部14を参照することにより、直前に行われた正常性判定の結果が異常であることを把握する。本実施の形態では、直前の正常性判定が異常であり、それに続く今回の正常性判定も異常である場合、接続制御部17の指示により、登録処理部15は端末装置2から再送されてくる同じトランザクションのREGISTERリクエストに対する応答処理、登録処理や、認証のための処理を行わない(無視する)(ステップ33〜36)。
【0060】
従って、通信制御装置1がその後にINVITEリクエストを受信しても(ステップ37)、INVITEリクエストに係る正常な処理は行われず、一時的に利用不可を示す480レスポンスを返す(ステップ38)。
【0061】
連続して異常な通信品質である場合は、すぐに通信品質が改善する可能性が低いため、本例のように接続を不許可としている。これにより、無駄な電力消費や他の端末装置への悪影響等を防止できる。
【0062】
なお、この後、新たなトランザクションにて、REGISTERリクエストが端末装置2から通信制御装置1に送られ、通信品質測定が行われ、正常性判定結果が正常である場合は、図5に示す注意・一次利用可能状態の処理が行われることになる。
【0063】
(状態遷移について)
次に、通信制御装置2における各状態について説明する。図7に、各状態の意味を示す。また、図8に状態遷移図を示す。これらの状態は、端末装置(SIP-URI)毎、トランザクション毎に生成、管理されるものである。
【0064】
通信制御装置1は、端末装置2から最初のREGISTERリクエストを受信したときに、状態をwaitからcheckingに変え(図8のステップ51)、通信品質測定を開始する。通信品質測定結果を用いた正常性判定結果が正常であれば状態をcheckingからaliveに変える(ステップ52)。checkingでの正常性判定が異常の場合、当該正常性判定を行う前の正常性判定において結果が正常であった場合には状態をzombieに変える(ステップ53)。また、checkingでの正常性判定が異常の場合、当該正常性判定を行う前の正常性判定においても結果が異常であった場合には状態をdeadに変える(ステップ54)。
【0065】
また、aliveもしくはzombieの状態にある通信制御装置1は、200OKレスポンスを返したときに状態をwaitに戻す(ステップ55、56)。また、deadもしくはcheckingの状態にある通信制御装置1は、deadもしくはcheckingになってから予め定めた時間が経過した後、タイムアウトし、waitに戻る(ステップ57、58)。
【0066】
(通信制御装置の動作について)
次に、図9、図10のフローチャートを参照して、通信制御装置1の動作を説明する。図1に示す動作は、図4〜6で説明したシーケンスの動作において、通信制御装置1の動作を抽出したものに対応するが、図9、10では、状態に基づく処理手順を明確に示している。また、図9、10に示す動作は、図2に示す登録処理部15、接続制御部17、及び通信品質測定部16により行われるものであるが、機能の区分はこれに限られるものではなく、通信制御装置1は、全体として図9、10のフローチャートの処理を実行できる手段を含んでいればよい。
【0067】
図9において、通信制御装置1が、端末装置2からREGISTERリクエストを受信すると(ステップ101)、当該REGISTERリクエストが認証用ヘッダ付きのものかどうか判定する(ステップ102)。REGISTERリクエストが認証用ヘッダ付きである場合、通信制御装置1は、現在の状態がwaitであるかどうかを判定し(ステップ103)、waitであれば端末装置2に401レスポンスを返信し(ステップ104)、状態をcheckingにして(ステップ105)、通信品質正常性判定処理を行う(ステップ106)。通信品質正常性判定処理の内容については、図10を参照して後述する。
【0068】
ステップ102において認証用ヘッダ付きでない場合、通信制御装置1は、現在の状態がwaitかどうかを判定し(ステップ107)、waitであればステップ105に移る。
【0069】
ステップ107でwaitであれば、通信制御装置1は、現在の状態がalive又はzombieかどうかを判定し(ステップ108)、alive又はzombieであれば401レスポンスを端末装置に返信し(ステップ109)、フローの最初に戻る。ステップ107にて、aliveかzombieのいずれでもなければ最初に戻る。
【0070】
ステップ103で状態がwaitでない場合、通信制御装置1は、状態がaliveかどうか判定する(ステップ110)。ここで状態がaliveである場合、今回の正常性判定結果が正常であることを意味し、通信制御装置1は、次のステップ111で、端末装置2に対する前回の正常性判定結果が正常であったかどうかを判定する。前回の正常性判定結果が正常であった場合、通信制御装置1は、保持期間(Expire値)を現在の値の2倍に変更し(ステップ112)、その値が予め定められた最大値以下かどうか判定する(ステップ113)。予め定められた最大値以下であれば、通信制御装置1は200OK応答を端末装置2に返信し(ステップ114)、状態をwaitに変更する(ステップ115)。
【0071】
ステップ113で、2倍にした後の保持期間が予め定められた最大値以下でない場合、通信制御装置1は、保持期間を当該予め定められた最大値にし(ステップ116)、ステップ114以降の処理を行う。ステップ111において、前回の正常性判定結果が正常でなかった場合、通信制御装置1は、保持期間を初期値として(ステップ117)、ステップ114に進む。
【0072】
ステップ110において、状態がaliveでない場合、通信制御装置1は、状態がzombieであるかどうかを判定し(ステップ118)、zombieであれば保持期間を初期値に変更してステップ114に進み(ステップ119)、zombieでなければ最初に戻る。
【0073】
次に、図10のフローチャートを参照して正常性判定処理の手順を説明する。通信制御装置1は、複数回ICMPエコーリクエストを端末装置2に送信し、それぞれのICMPエコーリプライを受信し、RTTを算出し、それぞれ通信品質測定結果格納部14に格納する(ステップ201)。
通信制御装置1は、今回求めた複数のRTTの中に、1つでも基準値未満のRTTがあるかどうかを判定することにより通信品質正常性判定を行う(ステップ202)。ステップ202での結果が正常である場合、通信制御装置1は状態をcheckingからaliveに変更する(ステップ203)。
【0074】
ステップ202での結果が正常でない場合、通信制御装置1は、前回の正常性判定結果を参照し、それが正常であったかどうか判定する(ステップ204)。正常であった場合、状態をcheckingからzombieに変更し(ステップ205)、正常でなかった場合、状態をcheckingからdeadに変更する(ステップ206)。
【0075】
本発明は、上記の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲内において、種々変更・応用が可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 通信制御装置
2 端末装置
3 通信ネットワーク
11 データ通信部
12 SIP通信部
13 端末装置接続制御部
14 通信品質測定結果格納部
15 登録処理部
16 通信品質測定部
17 接続制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末装置と通信ネットワークを介して接続される通信制御装置であって、
前記端末装置から登録要求メッセージを受信したことに応じて、複数の試験パケットを前記端末装置に送信し、各々の試験パケットについて、試験パケットを送信してから応答パケットを受信するまでにかかる時間である往復遅延時間を測定し、当該往復遅延時間を通信品質情報格納手段に格納する通信品質測定手段と、
前記通信品質情報格納手段に格納された複数の往復遅延時間と所定の基準値とを比較することにより、前記通信ネットワークの通信品質が正常か否かを判定する正常性判定手段と、
前記正常性判定手段により、前記通信品質が正常でないと判定された場合に、通信品質測定結果の履歴に応じて、前記通信制御装置において前記端末装置と他の端末装置との接続をできない状態とするか、又は、所定の期間だけ前記端末装置と他の端末装置との接続をできる状態とするように接続制御を行う接続制御手段と、
を備えたことを特徴とする通信制御装置。
【請求項2】
前記通信品質測定結果の履歴は、前記通信品質測定手段によりなされる今回の通信品質測定の直前の通信品質測定結果であり、
前記接続制御手段は、前記直前の通信品質測定結果に基づく正常性判定の結果が正常でない場合に、前記端末装置と他の端末装置との接続をできない状態とし、前記直前の通信品質測定結果に基づく正常性判定の結果が正常である場合に、所定の期間だけ前記端末装置と他の端末装置との接続をできる状態とするように接続制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記端末装置と他の端末装置との接続をできない状態とすることは、前記接続制御手段が前記登録要求メッセージに基づく登録処理を行わないことであり、前記所定の期間だけ前記端末装置と他の端末装置との接続をできる状態とすることは、前記接続制御手段が前記登録要求メッセージに基づく登録処理における登録情報の有効期間を前記所定の期間に設定することである請求項2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記正常性判定手段により、前記今回の通信品質が正常であると判定され、更に、前記直前の通信品質測定結果に基づく正常性判定の結果が正常である場合に、前記接続制御手段は、直前の通信品質測定結果に基づく正常性判定に基づき設定された登録情報の有効期間よりも長い有効期間を、前記登録要求メッセージに基づく登録処理における登録情報の有効期間とすることを特徴とする請求項2又は3に記載の通信制御装置。
【請求項5】
前記正常性判定手段は、前記複数の往復遅延時間のうちの少なくとも1つが前記所定の基準値より小さい場合に、前記通信品質が正常であると判定することを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項に記載の通信制御装置。
【請求項6】
前記登録要求メッセージは、SIPにおけるREGISTERリクエストメッセージであることを特徴とする請求項1ないし5のうちいずれか1項に記載の通信制御装置。
【請求項7】
コンピュータを、端末装置と通信ネットワークを介して接続される通信制御装置として機能させるためのプログラムであって、コンピュータを、
前記端末装置から登録要求メッセージを受信したことに応じて、複数の試験パケットを前記端末装置に送信し、各々の試験パケットについて、試験パケットを送信してから応答パケットを受信するまでにかかる時間である往復遅延時間を測定し、当該往復遅延時間を通信品質情報格納手段に格納する通信品質測定手段、
前記通信品質情報格納手段に格納された複数の往復遅延時間と所定の基準値とを比較することにより、前記通信ネットワークの通信品質が正常か否かを判定する正常性判定手段、
前記正常性判定手段により、前記通信品質が正常でないと判定された場合に、通信品質測定結果の履歴に応じて、前記通信制御装置において前記端末装置と他の端末装置との接続をできない状態とするか、又は、所定の期間だけ前記端末装置と他の端末装置との接続をできる状態とするように接続制御を行う接続制御手段、
として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−220011(P2010−220011A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65960(P2009−65960)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(397014282)株式会社エヌ・ティ・ティ ピー・シー コミュニケーションズ (5)
【Fターム(参考)】