説明

通信端末位置判定装置

【課題】通信マスタのアンテナ本数を少なく抑えることができるとともに、通信端末の位置をより精度よく検出することができる通信端末位置判定装置を提供する。
【解決手段】キー操作フリーシステムの車両発信機10として2軸一体アンテナを使用する。2軸一体アンテナは、軸が互いに直交する一対のコイルバーアンテナ16a,16bを備える。スマート通信の際、2軸一体アンテナの第1コイルバーアンテナ16a及び第2コイルバーアンテナ16bから交互に電波送信する。このとき、第1コイルバーアンテナ16aからの電波を電子キーが受信した際の磁界強度と、第2コイルバーアンテナ16bからの電波を電子キーが受信した際の磁界強度とを算出し、これら磁界強度の差から電子キーの位置を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末(通信機)の位置を判定する通信端末位置判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両キーとしての電子キーから無線によりIDコードを車両に送信してID照合を実行する電子キーシステムが広く使用されている。この電子キーシステムには、車両からIDコード返信要求としてリクエストを送信し、このリクエストに応答して電子キーが返信してきたIDコードによりID照合を行うキー操作スマートシステムがある。キー操作フリーシステムには、車外でID照合が成立すると、ドアロック施解錠が許可又は実行されるスマートエントリーシステムと、車内でID照合が成立すると、車内のエンジンスイッチの単なる押し操作のみでエンジン始動が可能となるワンプッシュエンジンスタートシステムとがある。
【0003】
この電子キーシステムの一種には、図16に示すように、車両80の運転席ドア81側(車体右側)にアンテナ83を配置し、助手席ドア82側(車体左側)にアンテナ84を設置し、これらアンテナ83,84からの送信電波に対して電子キー85が返してきた応答の論理判定によってキー位置を判定する技術(特許文献1,2等)が考案されている。この論理判定キー位置検出方式は、車体右側の運転席アンテナ83と、車体左側の助手席アンテナ84とから順にリクエストを送信して、運転席アンテナエリア86と助手席アンテナエリア87とを順に形成し、これらリクエストに対して電子キー85が返信するIDコード、即ち応答の論理判定によってキー位置を判定する。
【0004】
例えば、運転席アンテナ83のリクエストに対して電子キー85からの応答があり、助手席アンテナ84のリクエストに対して電子キー85から応答がないと、電子キー85が車外に位置すると判定する。また、運転席アンテナ83のリクエストに対して電子キー85からの応答がなく、助手席アンテナ84からのリクエストに対して電子キー85の応答があれば、電子キー85が車外に位置すると判定する。さらに、運転席アンテナ83のリクエストと助手席アンテナ84のリクエストとに対して両方とも応答があれば、電子キー85が車内に位置していると判定する。
【0005】
図16に示す論理判定キー位置検出方式は、車体右側と車体左側とに設けた一対のアンテナで車外と車内との両方の位置を見ることができる。よって、論理判定キー位置検出方式は、例えば車外アンテナとして各ドアにアンテナを設置しつつ、更に車内アンテナとして車内に複数のアンテナを設置して電子キーの位置を検出する場合に比べて、アンテナを車体の左右にのみ設置すればよい分だけ、アンテナ本数を少なく抑えることができる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−84406号公報
【特許文献2】特開2005−76329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、アンテナ83,84のアンテナエリア86,87は、必ずしもエリアの境界が車内及び車外の境界と一致する訳ではない。よって、論理判定キー位置判定方式では、図17に示すように、場合によって運転席アンテナ83のアンテナエリア86が助手席ドア82の外側に漏れたり、或いは、助手席アンテナ84のアンテナエリア87が運転席ドア81の外側に漏れたりする場合がある。こうなると、例えば電子キー85が運転席アンテナエリア86の助手席側の漏れエリア88に位置していた際に、電子キー85が助手席ドア82側に位置しているにも拘らず、電子キー85が運転席ドア81側にあると判定され、キー位置が誤判定されてしまう問題があった。
【0008】
ここで、運転席アンテナエリア86が助手席ドア82の外側に漏れ出したり、助手席アンテナエリア87が運転席ドア81の外側から漏れ出したりしないようにするためには、各アンテナエリア86,87を狭く設定すればよい。しかし、アンテナエリア86,87を狭く設定すると、今度は逆に車内にヌルエリアが発生してしまうので、車内に位置する電子キー85を正確に検出できなくなる問題が発生する。このため、現状システムでは、各アンテナエリア86,86を細かく切り分けることが困難であるため、電子キー85の位置を精度よく判定できる技術の開発が要望されていた。
【0009】
なお、この問題は、電子キーシステムに限るものではなく、2者が無線により通信を行う種々のシステムでも同様に言えることである。
本発明の目的は、通信マスタのアンテナ本数を少なく抑えることができるとともに、電子キーの位置をより精度よく検出することができる通信端末位置判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記問題点を解決するために、本発明では、通信マスタからの問い合せに通信端末が応答して、これらが双方向通信する無線システムに使用される通信端末位置判定装置において、前記通信マスタの送信アンテナとして形成され、軸方向が異なる向きに配置された少なくとも2つのアンテナ部材が設けられた複数軸一体アンテナと、ID照合の際に複数の前記アンテナ部材から各々個別に電波を送信させる個別送信実行手段と、一アンテナ部材からの電波を前記通信端末が受信した際の受信強度と、他アンテナ部材からの電波を前記通信端末が受信した際の受信強度とを取得する受信強度取得手段と、2つの前記受信強度の強度差を算出する強度差算出手段と、当該強度差から前記通信端末の位置を判定する位置判定手段とを備えたことを要旨とする。
【0011】
この構成によれば、通信マスタのアンテナを複数軸一体アンテナとし、通信の際に、複数軸一体アンテナの一アンテナ部材から送信された電波を通信端末が受信した際の受信強度と、複数軸一体アンテナの他アンテナ部材から送信された電波を通信端末が受信した際の受信強度とを算出する。そして、これら受信強度の差を算出し、この受信強度差から通信端末の位置を判定する。このため、複数軸一体アンテナという部品としては1つのアンテナで通信端末の位置を判定することが可能となるので、使用するアンテナ本数を少なく抑えることが可能となる。また、受信強度差で通信端末の位置を判定するので、例えば単に通信端末からの応答有無を見るだけで位置判定する場合と比較して、精度よく通信端末の位置を判定することが可能となる。
【0012】
本発明では、前記一アンテナ部材及び前記他アンテナ部材から前記電波を同時送信させる同時送信手段を備え、前記受信強度取得手段は、前記同時送信により送信された電波を前記通信端末が受信した際の受信強度を算出し、前記位置判定手段は、同時送信時に取得する前記受信強度を使用して、前記通信端末の位置を判定することを要旨とする。
【0013】
この構成によれば、一アンテナ部材及び他アンテナ部材を同時送信させると、各アンテナ部材を単独で電波送信させた際の電波に対して、指向性が略45度傾く電波が送信させる。よって、この同時送信時の電波によって、各アンテナ部材を単独送信させた際に電波が届かないヌル点に電波が行き渡る。このため、通信端末の位置を判定するに際して、位置検出漏れが生じ難くなり、より精度よく通信端末の位置を判定することが可能となる。
【0014】
本発明では、前記通信端末の位置判定単位である判定エリアの大きさを変えることにより、前記通信端末の位置を更に細分化して判定する細分位置判定手段を備えたことを要旨とする。
【0015】
この構成によれば、細分位置判定手段によって判定エリアの位置を変えて通信端末の位置を判定するので、大きさが決められた1つの判定エリアで通信端末の位置を検出するよりも、通信端末の位置を細かく判定することが可能となる。よって、より精度よく通信端末の位置を検出することが可能となる。
【0016】
本発明では、複数の前記複数軸一体アンテナと、複数の前記複数軸一体アンテナが並び配置され、前記通信端末の位置判定単位として各々の前記複数軸一体アンテナの両側にできる一対の判定エリアのうちの一方同士を重ね合わせることにより形成された重複エリアとを備え、前記位置判定手段は、前記重複エリアを構成する一方の前記複数軸一体アンテナで取得する前記強度差と、当該重複エリアを形成する他方の前記複数軸一体アンテナで取得する前記強度差との組み合わせにより、前記通信端末の位置を判定することを要旨とする。
【0017】
この構成によれば、複数軸一体アンテナを複数設けて、各複数軸一体アンテナにできる一対の判定エリアのうちの一方同士を重ね合わせて重複エリアを設ければ、これら一対の判定エリアを重複エリアによって区分けすることが可能となる。このため、一対の判定エリアのうちのどちらに通信端末が位置するのかが判定可能となるので、より精度よく通信端末の位置を検出することが可能となる。
【0018】
本発明では、前記通信端末は、電子キーであり、前記無線システムは、前記通信マスタが前記電子キーとID照合する電子キーシステムであり、前記位置判定手段は、前記電子キーの位置を判定することを要旨とする。
この構成によれば、電子キーの位置を精度よく判定することが可能となる。
【0019】
本発明では、前記通信端末は、車両の各タイヤに取り付けられたタイヤ通信機であり、前記無線システムは、前記タイヤ通信機からタイヤ空気圧を無線により取得するタイヤ空気圧監視システムであり、前記位置判定手段は、前記タイヤ通信機の位置を判定することにより、タイヤの位置を特定することを要旨とする。
この構成によれば、通信成立したタイヤ通信機がどのタイヤに設置されたものなのかを、精度よく判定することが可能となる。
【0020】
本発明では、前記通信端末としての電子キーとID照合する前記無線システムとしての電子キーシステムと、前記通信端末としてのタイヤ通信機から無線によりタイヤ空気圧を取得する前記無線システムとしてのタイヤ空気圧監視システムとは、1つの前記通信マスタを共用することを要旨とする。
【0021】
この構成によれば、共通の部品を電子キーシステムとタイヤ空気圧監視システムとの両方で使用することが可能となるので、部品点数を削減することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、通信マスタのアンテナ本数を少なく抑えることができるとともに、通信端末の位置をより精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態におけるキー操作フリーシステムの概略構成を示すブロック図。
【図2】2軸一体アンテナの部品構成を示す構成図。
【図3】2軸一体アンテナが放射する電波イメージを示す概念図。
【図4】2軸一体アンテナの各アンテナを個別送信させた際の磁界強度差の関係性を示す相関図。
【図5】車外照合の検出イメージを示す概念図。
【図6】車内照合の検出イメージを示す概念図。
【図7】車内に発生するヌルエリアのイメージを示す概念図。
【図8】2軸一体アンテナの両アンテナを同時送信させた際の磁界強度差の関係性を示す相関図。
【図9】キー操作フリーシステムの電気構成を示す回路ブロック図。
【図10】スマート照合の通信シーケンスを示すタイムチャート。
【図11】第2実施形態におけるキー位置判定装置の概略構成を示す構成図。
【図12】同じく他のキー位置判定装置の具体例を示す構成図。
【図13】第3実施形態におけるタイヤ空気圧監視システムの概念図。
【図14】他のタイヤ空気圧監視システムの概念図。
【図15】他のタイヤ空気圧監視システムの概念図。
【図16】従来における電子キーシステムの概略構成を示す模式図。
【図17】車両にアンテナの漏れエリアが形成された状態を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1実施形態)
以下、本発明を具体化した通信端末位置判定装置の第1実施形態を図1〜図10に従って説明する。
【0025】
図1に示すように、車両1には、無線によりキー照合を行う電子キーシステムの一種として、電子キー2が車両1に近づくと自動でID(Identification)照合を実行するキー操作フリーシステム3が設けられている。このキー操作フリーシステム3には、実際のキー操作を行うことなくドア開閉の一連の操作過程の中でドアロックの施解錠が実行されるスマートエントリーシステムと、車内に設置されたプッシュ式のエンジンスイッチ4を押し操作するのみでエンジンを始動することが可能なワンプッシュエンジンスタートシステムとがある。なお、電子キー2が通信端末を構成し、キー操作フリーシステム3が無線システム及び電子キーシステムを構成する。
【0026】
この場合、車両1には、電子キー2との間でID照合を実行するキー照合装置5と、ドアロック動作を管理するドアロック装置6と、エンジンの動作を管理するエンジン始動装置7とが設けられ、これらが車内バス8によって接続されている。キー照合装置5には、同装置5のコントロールユニットとして照合ECU(Electronic Control Unit)9が設けられている。照合ECU9のメモリ(図示略)には、車両1と組みをなす電子キー2のIDコードが登録されている。
【0027】
照合ECU9には、車両周囲及び車内にLF(Low Frequency)帯の電波を発信する車両発信機10と、UHF(Ultra High Frequency)帯の電波を受信する車両チューナ11とが接続されている。車両発信機10は、車両1の車幅方向中央位置に1つ設けられ、電子キー2に対するID返信要求としてリクエスト信号SrqをLF帯の電波により断続的に送信する。なお、照合ECU9が通信マスタに相当し、車両発信機10が複数軸一体アンテナも構成する。
【0028】
電子キー2には、電子キー2の動作を統括制御する通信制御部12が設けられている。通信制御部12のメモリ(図示略)には、キー固有のIDとしてIDコードが登録されている。通信制御部12には、LF帯の電波を受信可能なLF受信機13と、UHF帯の電波を送信可能なUHF送信機14とが接続されている。電子キー2は、LF受信機13でリクエスト信号Srqを受信すると、IDコードを含むID信号SidをUHF送信機14によりUHF帯の電波で送信する。
【0029】
電子キー2が車外に位置する際、車両発信機10からリクエスト信号Srqが断続的に送信される。このとき、電子キー2がリクエスト信号Srqを受信すると、このリクエスト信号Srqに応答して、ID信号SidをUHF帯の電波で返信する。ID信号Sidには、電子キー2のIDコードが含まれている。照合ECU9は、ID信号Sidを車両チューナ11で受信して車外のスマート通信(車外通信)が確立すると、ID照合(スマート照合)として車外照合を実行する。そして、この車外照合が成立すると、ドアロック装置6によるドアロック施解錠が許可又は実行される。
【0030】
また、運転者が乗車したことが例えばカーテシスイッチ等により検出されると、このときも車両発信機10からリクエスト信号Srqの送信が開始される。このとき、電子キー2が車両発信機10のリクエスト信号Srqを受信して車内のスマート通信(車内通信)が確立すると、照合ECU9はID照合(スマート)として車内照合を実行する。そして、この車内照合が成立すると、エンジンスイッチ4(エンジン始動装置7)による電源遷移操作及びエンジン始動操作が許可される。
【0031】
図1及び図2に示すように、本例のキー操作フリーシステム3には、車両発信機10として2軸一体アンテナを使用し、各軸の磁界強度差から電子キー2の位置を判定する位置判定装置15が設けられている。なお、2軸一体アンテナとは、図2に示すように、コイル軸L1,L2を互いに直交する向きに並べた一対のコイルバーアンテナ16a,16bを備えたアンテナのことを言う。位置判定装置15は、2軸一体アンテナの一方の軸からリクエスト信号Srqを送信するとともに、他方の軸からもリクエスト信号Srqを送信し、電子キー2がこれらリクエスト信号Srqを受信したときの磁界強度の差(磁界強度差Hab)を演算し、この磁界強度差Habから電子キー2が車外及び車外のどちらに位置しているのかを判定する。なお、コイルバーアンテナ16a,16bがアンテナ部材(一アンテナ部材、他アンテナ部材)を構成する。
【0032】
図2及び図3に示すように、車両発信機10には、車両発信機10の電子部品の実装先として基板17が設けられ、この基板17上に一対のコイルバーアンテナ16a,16bが実装されている。車両発信機10は、コイル軸L1が車両幅方向に沿う向きをとる第1コイルバーアンテナ16aと、コイル軸L2が車両前後方向に沿う向きをとる第2コイルバーアンテナ16bとを備えている。これらコイルバーアンテナ16a,16bは、同一平面上に並び配置されるとともに、互いのコイル軸L1,L2が直交する向きで配置されている。コイル軸L1(L2)は、コイルバーアンテナ16a(16b)の各コイルが並ぶ方向の線、即ちコイル内部を通る磁界に沿う線に相当する。
【0033】
これらコイルバーアンテナ16a,16bの通信エリア(磁界エリア)は、長手方向(軸方向)の磁界がその直角方向の磁界よりも大きく形成される。よって、これらコイルバーアンテナ16a,16bは、図3に示すように、楕円形状の通信エリアを形成する。また、本例のコイルバーアンテナ16a,16bは、第1コイルバーアンテナ16aが車幅方向に長い楕円の通信エリアEaを形成し、第2コイルバーアンテナ16bが車両前後方向にエリアの長い楕円の通信エリアEbを形成する。
【0034】
ところで、電子キー2が車両発信機10からの電波を受信した際、第1コイルバーアンテナ16aからの電波を受信したときの磁界強度(以降、第1磁界強度Haと記す)と、第2コイルバーアンテナ16bからの電波を受信したときの磁界強度(以降、第2磁界強度Hbと記す)との磁界強度差Habを算出すると、この差Habには、図4に示すような関係がある。即ち、車両発信機10を中心として車両前後方向両側は、第2コイルバーアンテナ16bよりも第1コイルバーアンテナ16aが利くので、第2磁界強度Hbよりも第1磁界強度Haの方が高い値をとる。この場合、車両前後方向に対向する一対の第1判定エリアKa,Kaに電子キー2が位置すると判定できる。また、車両発信機10を中心として車幅方向両側は、第1コイルバーアンテナ16aよりも第2コイルバーアンテナ16bが利くので、第1磁界強度Haよりも第2磁界強度Hbの方が高い値をとる。この場合、車幅方向に対向する一対の第2判定エリアKb,Kbに電子キー2が位置すると判定できる。
【0035】
このため、車両発信機10の通信エリアは、車両発信機10を中心として車両前後方向に対向する向きに形成された一対の第1判定エリアKa,Kaと、車両発信機10を中心として車幅方向に対向する向きに形成された一対の第2判定エリアKb,Kbとに区分けされる。これら4つの判定エリアKa,Ka,Kb,Kbは、車両発信機10を中心として十字状、かつ放射状に形成される。
【0036】
よって、第2磁界強度Hbよりも第1磁界強度Haの方が高いことが分かれば、電子キー2が第1判定エリアKa,Kaに位置することが分かる。また、第1磁界強度Haよりも第2磁界強度Hbの方が高いことが分かれば、電子キー2が第2判定エリアKb,Kbに位置することが分かる。よって、本例の位置判定装置15は、第1磁界強度Ha及び第2磁界強度Hbの磁界強度差Habを算出し、この強度差Habがどのような値をとるのかを見ることによって電子キー2が車外及び車内のどちらに位置するのかを判定する。
【0037】
図1に示すように、照合ECU9には、一対のコイルバーアンテナ16a,16bを各々個別に電波送信させる第1アンテナ個別送信動作部18が設けられている。第1アンテナ個別送信動作部18は、まずは最初に第1コイルバーアンテナ16aを使用して電子キー2とスマート通信を実行させ、このスマート通信の完了後、今度は第2コイルバーアンテナ16bにより電子キー2とスマート通信を実行させる。そして、第1アンテナ個別送信動作部18は、第1コイルバーアンテナ16aでスマート通信を行い、続けて第2コイルバーアンテナ16bでスマート通信を行う動作を連続して実行させる。なお、第1アンテナ個別送信動作部18が個別送信実行手段に相当する。
【0038】
一方、電子キー2の通信制御部12には、車両発信機10からのリクエスト信号Srqを受信した際の受信強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)を算出する磁界強度算出部19が設けられている。磁界強度算出部19は、この受信強度を電波の磁界強度Hxとして算出する。磁界強度算出部19は、第1コイルバーアンテナ16aからのリクエスト信号Srqを受信した際の磁界強度Hxを算出するとともに、第2コイルバーアンテナ16bからリクエスト信号Srqを受信した際にも、このときの電波受信時の磁界強度Hxを算出する。なお、磁界強度算出部19が受信強度取得手段を構成し、磁界強度Hxが受信強度を構成する。
【0039】
また、通信制御部12には、磁界強度算出部19により算出された磁界強度Hxをスマート通信の過程で車両1に出力する磁界強度出力部20が設けられている。磁界強度出力部20は、スマート通信でID信号Sidを車両1に送信する際に、IDコードとともに磁界強度Hxを車両1に通知する。なお、磁界強度出力部20が受信強度取得手段を構成する。
【0040】
照合ECU9には、スマート通信の際に電子キー2から磁界強度Hxを取得する磁界強
度取得部21が設けられている。磁界強度取得部21は、スマート通信の際、ID信号Sidに含まれる磁界強度Hxを参照して、磁界強度Hxを取得する。磁界強度取得部21は、第1コイルバーアンテナ16aを送信アンテナとして使用したときの第1磁界強度Haと、第2コイルバーアンテナ16bを送信アンテナとして使用したときの第2磁界強度Hbとを取得する。なお、磁界強度取得部21が受信強度取得手段を構成し、第1磁界強度Ha及び第2磁界強度Hbが受信強度を構成する。
【0041】
照合ECU9には、第1磁界強度Ha及び第2磁界強度Hbとの磁界強度差Habから電子キー2の位置を判定する位置判定部22が設けられている。位置判定部22は、第1磁界強度Haと第2磁界強度Hbとを取得すると、これら強度Ha,Hbの差、即ち磁界強度差Habを求め、この磁界強度差Habを基に、電子キー2が車外及び車内のどちらに位置するのかを判定する。なお、位置判定部22が強度差算出手段及び位置判定手段を構成する。
【0042】
図5に示すように、電子キー2が車外に位置するかどうかを見る際、車両発信機10は、車両発信機10の電波が車外にまで届くように、強めの送信強度(強送信強度Vhi)で電波送信を実行する。このとき、車外には、第1コイルバーアンテナ16aの磁界成分よりも、第2コイルバーアンテナ16bの磁界成分の方が強く形成される。よって、位置判定部22は、車両1がドアロックを解錠又は施錠しにいく際、第1磁界強度Haよりも第2磁界強度Hbが高くなることを確認できると、電子キー2が第2広領域判定エリアKb1、つまり車外に位置すると判定し、ドアロックの施解錠を許可する。
【0043】
また、図6に示すように、車両発信機10が強送信強度Vhiで電波送信を行う際、車内前部及び車内後部には、第2コイルバーアンテナ16bの電波成分よりも、第1コイルバーアンテナ16aの電波成分の方が強く形成される。よって、位置判定部22は、車両発信機10から強送信強度Vhiで電波を送信して電子キー2が車内にあるかどうかを確認しにいった際、第2磁界強度Hbよりも第1磁界強度Haが高くなることを確認できれば、電子キー2が第1広領域判定エリアKa1、つまり車内に位置すると判定する。
【0044】
ここで、図6に示すように、車幅左右方向の車内エリアは、強送信強度Vhiに対する電子キー2の応答を見ただけでは、電子キー2が車外にあるのか、それとも車内にあるのかを判定することができない。よって、本例の場合、車内照合の際には、電波送信を強送信強度Vhiで実行した後、今度は弱めの送信強度(弱送信強度Vlow)で電波送信を行って、車内において車幅左右方向に狭めの判定エリアを形成し、電子キー2がこれらエリアに位置しているか否かを見ることで車内判定を実行する。
【0045】
よって、照合ECU9には、送信強度を弱めてリクエスト信号Srqの送信を実行する第2アンテナ個別送信動作部23が設けられている。第2アンテナ個別送信動作部23は、車内照合の際、第1アンテナ個別送信動作部18がリクエスト信号Srqの送信を実行した後、続いてリクエスト信号Srqの送信を弱送信強度Vlowにより実行する。なお、第2アンテナ個別送信動作部23も、第1アンテナ個別送信動作部18と同様に、第1コイルバーアンテナ16a→第2コイルバーアンテナ16bの順で、連続して電波送信を実行させる。位置判定部22は、弱送信強度Vlowで送信したリクエスト信号Srqに対して電子キー2から応答を受けたことを確認できると、電子キー2が第1狭領域判定エリアKa2又は第2狭領域判定エリアKb2、つまり車内に位置していると判定する。なお、第2アンテナ個別送信動作部23が細分位置判定手段に相当する。
【0046】
ところで、図7に示すように、車内には、車両発信機10の電波が届かないヌル点(ヌルエリア24)が存在する場合がある。もし仮に、電子キー2がヌルエリア24に位置してしまうと、車両発信機10からのリクエスト信号Srqが電子キー2に届かず、スマート通信が成立しない。よって、電子キー2が車内にあるにも拘らず車内に無いと誤判定され、電子キー2の位置を正確に判定できない問題に繋がる。ヌルエリア24は、第1コイルバーアンテナ16a又は第2コイルバーアンテナ16bが単独で電波送信を行った際に、これら電波が届かないエリアに形成される。図7の例で示すと、車体右斜め前方の第1ヌルエリア24a、車体左斜め前方の第2ヌルエリア24b、車体右斜め後方の第3ヌルエリア24c、車体左斜め後方の第4ヌルエリア24dがある。
【0047】
ここで、図3に示すように、第1コイルバーアンテナ16aと第2コイルバーアンテナ16bとを同時に電波送信させると、このときの車両発信機10の磁界方向は、第1コイルバーアンテナ16aの磁界方向と第2コイルバーアンテナ16bの磁界方向との成す角度を2分する方向、即ち第1コイルバーアンテナ16a(第2コイルバーアンテナ16b)に対して斜め45度を向く方向となる。このため、第1コイルバーアンテナ16a及び第2コイルバーアンテナ16bを同相で電波送信させた際にできる通信エリアEcによって、第1ヌルエリア24a及び第3ヌルエリア24cを補完できることが分かる。磁界強度算出部19は、このときの磁界強度Hxを同相合成磁界強度Hkとして算出する。なお、同相合成磁界強度Hkが受信強度を構成する。
【0048】
また、第1コイルバーアンテナ16aと第2コイルバーアンテナ16bを同時送信させる際、同相に対して180度反転させて、逆相で同時送信させると、同相同時送信に対して90度位相が傾いた通信エリアが形成される。このため、第1コイルバーアンテナ16a及び第2コイルバーアンテナ16bを逆相で同時送信した際にできる通信エリアEdによって、第2ヌルエリア24b及び第4ヌルエリア24dを補完できることが分かる。磁界強度算出部19は、このときの磁界強度Hxを逆相合成磁界強度Hsとして算出する。なお、逆相合成磁界強度Hsが受信強度を構成する。
【0049】
そして、同相合成磁界強度Hkと逆相合成磁界強度Hsとの磁界強度差Habには、図8に示すように、第1ヌルエリア24a及び第3ヌルエリア24cでは、逆相合成磁界強度Hsよりも同相合成磁界強度Hkの方が高い値をとり、第2ヌルエリア24b及び第4ヌルエリア24dでは、同相合成磁界強度Hkよりも逆相合成磁界強度Hsの方が高い値をとる。よって、逆相合成磁界強度Hsよりも同相合成磁界強度Hkの方が高いことが分かれば、電子キー2が第1ヌルエリア24a又は第3ヌルエリア24cに位置することが分かる。また、同相合成磁界強度Hkより逆相合成磁界強度Hsの方が高いことが分かれば、電子キー2が第2ヌルエリア24b又は第4ヌルエリア24dに位置することが分かる。なお、本例の場合は、電子キー2どのヌルエリア24a〜24dに位置するのかを細かく見るのではなく、同時送信に対する電子キー2からの応答有無を見ることにより、単に電子キー2が車内にあるかどうかだけを判定する。
【0050】
図1に示すように、照合ECU9には、車内のヌルエリア24a〜24dを補完するために、第1コイルバーアンテナ16a及び第2コイルバーアンテナ16bを同時に電波送信させるアンテナ同時送信動作部25が設けられている。アンテナ同時送信動作部25は、第1コイルバーアンテナ16a及び第2コイルバーアンテナ16bを同相で同時送信させ、続いて位相を180度反転させて、これらコイルバーアンテナ16a,16bを逆相で同時送信させる。アンテナ同時送信動作部25は、車内にのみ通信エリアを形成するために、弱送信強度Vlowで電波送信を実行する。なお、アンテナ同時送信動作部25が同
時送信手段に相当する。
【0051】
磁界強度算出部19は、同相同時送信のときの磁界強度Hxを同相合成磁界強度Hkとして算出する。そして、磁界強度出力部20は、この同相合成磁界強度Hkをスマート通信の過程で車両1に出力する。また、磁界強度算出部19は、逆相同時送信のときの磁界強度を逆相合成磁界強度Hsとして算出する。そして、磁界強度出力部20は、この逆相合成磁界強度Hsをスマート通信の過程で車両1に出力する。
【0052】
位置判定部22は、磁界強度取得部21で同相合成磁界強度Hkと逆相合成磁界強度Hsとを取得すると、これら磁界強度Hk,Hsの差、つまり磁界強度差Habを算出して、キー位置を判定する。ここで、位置判定部22は、逆相合成磁界強度Hsよりも同相合成磁界強度Hkの方が高い値をとることを確認すると、電子キー2が同相狭領域判定エリアKk、つまり車内にあると認識する。また、位置判定部22は、同相合成磁界強度Hkよりも逆相合成磁界強度Hsの方が高い値をとることを確認すると、電子キー2が逆相狭領域判定エリアKs、つまり車内にあると認識する。
【0053】
図9に示すように、第1コイルバーアンテナ16aには、コイル26と、コンデンサ27と、第1アンテナ駆動回路28とが設けられている。コイル26及びコンデンサ27は、第1コイルバーアンテナ16aの直列共振回路として形成され、第1アンテナ駆動回路28により駆動される。また、第2コイルバーアンテナ16bには、コイル29と、コンデンサ30と、第2アンテナ駆動回路31とが設けられている。コイル29及びコンデンサ30は、第2コイルバーアンテナ16bの直列共振回路として形成され、第2アンテナ駆動回路31により駆動される。
【0054】
また、照合ECU9には、車両発信機10に送信データDを生成出力する送信波形発生回路32が設けられている。送信波形発生回路32は、第1スイッチ33を介して第1コイルバーアンテナ16aに接続されるとともに、反転回路34及び第2スイッチ35を介して第2コイルバーアンテナ16bに接続されている。反転回路34には、入力信号を位相反転して出力するインバータ36と、1回路2接点スイッチからなる第3スイッチ37が設けられている。第3スイッチ37は、第2コイルバーアンテナ16bを送信波形発生回路32に直に接続するのか、或いはインバータ36を介して接続するのかを決めるスイッチである。
【0055】
第1コイルバーアンテナ16aから電波送信をする際、第1スイッチ33がオンされ、第2スイッチ35がオフされ、第3スイッチ37がa接点37aに接続される。これにより、送信波形発生回路32からの送信データDが第1コイルバーアンテナ16aにのみ流れ、第1コイルバーアンテナ16aのみから電波が送信される。また、第2コイルバーアンテナ16bから電波送信をする際、第1スイッチ33がオフされ、第2スイッチ35がオンされ、第3スイッチ37がa接点37aに接続される。これにより、送信波形発生回路32からの送信データDが第2コイルバーアンテナ16bにのみ流れ、第2コイルバーアンテナ16bのみから電波が送信される。
【0056】
第1コイルバーアンテナ16a及び第2コイルバーアンテナ16bから電波を同相で同時送信する際、第1スイッチ33及び第2スイッチ35がともにオンされるとともに、第3スイッチ37がa接点37aに接続される。これにより、送信波形発生回路32からの送信データDが、第1コイルバーアンテナ16a及び第2コイルバーアンテナ16bにともに流れ、これらコイルバーアンテナ16a,16bから電波が同相に同時送信される。
【0057】
第1コイルバーアンテナ16a及び第2コイルバーアンテナ16bから電波を逆相で同時送信する際、第1スイッチ33及び第2スイッチ35がともにオンされるとともに、第3スイッチ37がb接点37bに接続される。よって、第2コイルバーアンテナ16bは、インバータ36を介して送信波形発生回路32と接続される。このため、送信波形発生回路32の送信データDは、第1コイルバーアンテナ16aにそのまま流れ込むものの、第2コイルバーアンテナ16bには位相が反転した状態で流れる。よって、第1コイルバーアンテナ16a及び第2コイルバーアンテナ16bから電波が逆相に同時送信される。
【0058】
次に、本例の位置判定装置15の動作を図10に従って説明する。
車両1が駐車状態(ドアロック施錠及びエンジン停止)の際、第1アンテナ個別送信動作部18は、待機状態をとる電子キー2を起動状態に切り換えるために、車両発信機10からウェイク信号38を断続的に送信して車外照合を実行する。このとき、第1アンテナ個別送信動作部18は、第1コイルバーアンテナ16aから第1ウェイク信号38aを送信し、続いて第2コイルバーアンテナ16bから第2ウェイク信号38bを送信し、この交互送信を繰り返し実行する。また、第1アンテナ個別送信動作部18は、車両発信機10(第ウェイク信号38)の通信エリアが車外にも形成されるように、強送信強度Vhiで送信動作を実行する。
【0059】
ここで、電子キー2が車両発信機10による強送信強度Vhiの通信エリアEbに進入し、電子キー2が第1ウェイク信号38aを受信したとする。電子キー2は、第1ウェイク信号38aを受信すると、第1ウェイク信号38aによって起動状態に入る。このとき、磁界強度算出部19は、第1ウェイク信号38aの受信強度、即ち第1磁界強度Haを算出する。また、電子キー2は、起動状態に切り換わると、第1アック信号39を車両1に返信する。
【0060】
照合ECU9は、第1ウェイク信号38aを送信した際、制限時間内にアック応答を受信すると、車両周囲に電子キー2が存在すると認識する。また、第1アンテナ個別送信動作部18は、第1ウェイク信号38aの後にアック応答を受信すると、第2コイルバーアンテナ16bからのウェイク送信を停止して、アック受信後の以降のスマート通信を、第1コイルバーアンテナ16aを車両送信アンテナとして継続する。
【0061】
照合ECU9は、車両周囲に電子キー2が存在することを認識すると、第1コイルバーアンテナ16aからビークルID40を送信する。ビークルID40は、車両1の固有IDである。電子キー2は、ビークルID40を受信すると、ビークルID照合を実行し、このときの通信相手の車両1が正規通信相手か否かを確認する。電子キー2は、ビークルID照合が成立することを確認すると、第2アック信号41を車両1に送信する。
【0062】
照合ECU9は、ビークルID40の送信後の制限時間内に第2アック信号41を受信すると、続いてチャレンジ42を第1コイルバーアンテナ16aから送信する。チャレンジ42には、電子キー2が何番目の登録キーかを問い合せるためのキー番号と、チャレンジレスポンス認証用のチャレンジコードとが含まれている。電子キー2は、チャレンジ42を受信すると、チャレンジ42内のキー番号で番号照合を実行し、番号照合が成立することを確認すると、チャレンジコードを自身の暗号鍵に通してレスポンスコードを演算する。電子キー2は、レスポンスコードの演算が完了すると、レスポンス43を車両1に送信する。レスポンス43には、電子キー2のIDコードと、演算したレスポンスコードとが含まれている。電子キー2は、レスポンス43の送信が完了すると、元の待機状態に戻る。
【0063】
また、電子キー2がレスポンス43を車両1に送信する際、磁界強度出力部20は、レスポンス43にIDコード及びレスポンスコードとともに第1磁界強度Haのデータを含ませて送信させる。即ち、レスポンス43として、IDコードとレスポンスコードと第1磁界強度Haとが電子キー2から車両1に送信される。
【0064】
照合ECU9は、チャレンジ42の送信の際、自身もチャレンジコードを自らの暗号鍵に通してレスポンスコードを演算する。そして、照合ECU9は、電子キー2からレスポンス43を受信すると、レスポンス43に含まれるレスポンスコードでレスポンス照合を行い、この照合が成立することを確認すると、レスポンス43に含まれるIDコードでIDコード照合を実行する。照合ECU9は、両照合がともに成立することを確認すると、スマート照合を成立として処理する。
【0065】
さらに、磁界強度取得部21は、スマート照合が成立することを確認すると、レスポンス43に含まれる第1磁界強度Haを取得し、この第1磁界強度Haを位置判定部22に出力する。即ち、磁界強度取得部21は、車両1の送信アンテナとして第1コイルバーアンテナ16aから電波送信させた後に、電子キー2から取得する磁界強度Hxを、第1コイルバーアンテナ16aの電波を電子キー2が受信した際の第1磁界強度Haとして取り込む。
【0066】
第1アンテナ個別送信動作部18は、第1ウェイク信号38aでのスマート照合が完了すると、今度は第2コイルバーアンテナ16bから第2ウェイク信号38bの送信を開始して、第2コイルバーアンテナ16bを車両送信アンテナとして電子キー2とスマート通信する。電子キー2は、第2ウェイク信号38bを受信すると、第2ウェイク信号38bによって起動状態に入る。このとき、磁界強度算出部19は、第2ウェイク信号38bの受信強度、即ち第2磁界強度Hbを算出する。
【0067】
また、電子キー2は、第2ウェイク信号38bにより起動状態に切り換わると、第3アック信号44を車両1に送信する。照合ECU9は、第2ウェイク信号38bを送信した際、制限時間内にアック応答を受信すると、第2コイルバーアンテナ16bを車両送信アンテナとしたスマート通信を継続する。
【0068】
以降のスマート通信は、第1コイルバーアンテナ16aを車両送信アンテナとしたときと同様の通信シーケンスにより実行される。即ち、第3アック信号44が車両1に届くと、第2コイルバーアンテナ16bからビークルID45が送信され、ビークルID照合が実行される。そして、ビークル照合成立通知として第4アック信号46が電子キー2から車両1に届くと、第2コイルバーアンテナ16bからチャレンジ47が送信される。
【0069】
電子キー2は、チャレンジ47を受信すると、同チャレンジ47でキー番号照合と、レスポンスコード演算とを実行する。電子キー2は、レスポンスコード演算が完了すると、レスポンス48を車両1に送信する。このレスポンス48には、電子キー2のIDコードと、演算したレスポンスコードと、第2磁界強度Hbのデータとが含まれている。
【0070】
照合ECU9は、レスポンス48を受信すると、レスポンス認証とIDコード照合とを行い、これら両照合が成立することを確認すると、スマート照合を成立として処理する。また、磁界強度取得部21は、スマート照合が成立することを確認すると、このレスポンス48から第2磁界強度Hbを取得し、第2磁界強度Hbを位置判定部22に出力する。即ち、磁界強度取得部21は、車両1の送信アンテナとして第2コイルバーアンテナ16bから電波送信させた後に、電子キー2から取得する磁界強度Hxを、第2コイルバーアンテナ16bの電波を電子キー2が受信した際の第2磁界強度Hbとして取り込む。
【0071】
位置判定部22は、第1磁界強度Haと第2磁界強度Hbとを取得すると、これら磁界強度Ha,Hbの差(即ち、磁界強度差Hab)を算出する。このとき、磁界強度差Habは、実車の影響(例えば、車両1のボディ形状、シートの形状や位置等)を少なくするために、第1磁界強度Haに係数αを乗算しつつ、第2磁界強度Hbに係数βを乗算した後、第1磁界強度Haから第2磁界強度Hbを減算すること、即ち「α×Ha−β×Hb」の演算式により算出される。
【0072】
そして、位置判定部22は、磁界強度差Habが閾値Hrよりも大きな値をとるか否かを確認すること、即ちHab>Hrが成立するか否かを確認することで、電子キー2の位置を判定する。閾値Hrは、電子キー2が車外又は車内のどちらにあるのかを見るための判定値であって、この値を調整することにより、車内外の境目が設定される。ここで、電子キー2が車外に位置するときは、第1磁界強度Haよりも第2磁界強度Hbの方が大きくなるので、結果、磁界強度差Habは閾値Hr以下となる。よって、位置判定部22は、Hab>Hrが不成立となっていれば、電子キー2が車外(第2広領域判定エリアKb1)に存在すると認識する。そして、位置判定部22は、車外照合を成立として処理して、ドアロックの解錠を許可する。一方、位置判定部22は、HAb>Hrが成立すれば、車外照合を不成立として処理し、ドアロックの解除を不許可とする。
【0073】
照合ECU9は、運転者が乗車したことを例えばカーテシスイッチ等により検出すると、車内に進入した電子キー2と車内照合を実行する。このとき、第1アンテナ個別送信動作部18は、車両発信機10を強送信強度Vhiにより動作させて、スマート通信を開始する。ところで、車内においては、第2コイルバーアンテナ16bの磁界よりも、第1コイルバーアンテナ16aの方が、磁界強度が強い。よって、位置判定部22は、磁界強度差Habが閾値Hrよりも高い値をとること、即ちHab>Hrが成立することを確認すると、電子キー2が車内(第1広領域判定エリアKa1)に位置すると判定する。そして、位置判定部22は、電子キー2が車内に位置することを確認すると、車内照合を成立として処理して、エンジンスイッチ4による電源遷移操作及びエンジン始動操作を許可する。
【0074】
このとき、仮に電子キー2が車内において車幅方向に位置していると、強送信強度Vhiではスマート通信は成立するものの、電子キー2が車外又は車内のどちらに位置するのか判定することができない。また、仮に電子キー2がヌルエリア24a〜24dに位置していると、車両発信機10から送信した電波が電子キー2に届かず、スマート通信が成立しない。よって、車両発信機10の電波送信を強送信強度Vhiで実行した際、電子キー2がこれら位置に存在する場合には、電子キー2の位置を判定できないことになる。
【0075】
そこで、このとき、第2アンテナ個別送信動作部23は、車両発信機10を弱送信強度Vlowで動作させて、強送信強度Vhiのときと同様のスマート通信を実行する。そして、
位置判定部22は、このスマート通信の際に、電子キー2から応答を取得してスマート照合が成立することを確認すると、電子キー2が車内(第1狭領域判定エリアKa2、第2狭領域判定エリアKb2)に存在すると認識する。なお、このとき、取得した第1磁界強度Haと第2磁界強度Hbとの磁界強度差Habを算出して、電子キー2の位置を細かく確認することも可能である。
【0076】
また、第2アンテナ個別送信動作部23によりスマート通信を実行しても、電子キー2を見付けることができない場合、アンテナ同時送信動作部25は、第1コイルバーアンテナ16a及び第2コイルバーアンテナ16bを弱送信強度Vlowにより同相及び逆相で同
時送信させて、前述した手順と同様のスマート通信を実行する。そして、位置判定部22は、このスマート通信の際に、電子キー2から応答を取得してスマート照合が成立することを確認すると、電子キー2が車内(同相狭領域判定エリアKk、逆相狭領域判定エリアKs)に存在すると認識する。なお、このとき、取得した第1磁界強度Haと第2磁界強度Hbとの磁界強度差Habを算出して、電子キー2の位置を細かく確認することも可能である。
【0077】
さらに、運転者が車両1から降車した際、解錠状態のドアロックを施錠するには、車外ドアハンドルのロックボタン(図示略)を押し操作する。照合ECU9は、このロックボタンの操作を検出すると、前述した車内照合を実行して、車内に電子キー2が置き忘れていないか否か確認する。このとき、電子キー2が車内に存在することを確認すると、例えば車両ブザー等を吹鳴させたり、メータの警報ランプを点灯させたりするなどして、電子キー2の置き忘れを運転者に通知する。
【0078】
照合ECU9は、車内に電子キー2が置き忘れていないことを確認すると、前述した車外照合を同様に実行して、車外に位置する電子キー2が正規キーか否かを確認する。照合ECU9は、車外照合が成立することを確認すると、ドアロック装置6にドアロック施錠要求を出力して、ドアロック装置6にドアロックを施錠させる。また、照合ECU9は、ロックボタンが押し操作されても、車外照合成立を確認できないと、ドアロック装置6にドアロック施錠要求を出力せず、ドアロックの施錠動作を実行させない。
【0079】
従って、本例の場合、車両発信機10を2軸一体アンテナとし、2軸一体アンテナの第1コイルバーアンテナ16aと第2コイルバーアンテナ16bとを、それぞれ個別に電波送信させ、各コイルバーアンテナ16a,16bの磁界強度差Habから電子キー2の位置を判定する。よって、スマート通信に必要な車両送信アンテナが2軸一体アンテナの1つで済むので、アンテナ総数を少なく抑えることが可能となる。また、磁界強度差Habから電子キー2の位置を判定するので、例えば単に電子キー2からの応答有無を見てキー位置を判定する場合に比べて、より精度よく電子キー2の位置を判定することが可能となる。
【0080】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)車両発信機10を2軸一体アンテナとし、2軸一体アンテナの第1コイルバーアンテナ16a及び第2コイルバーアンテナ16bを各々単独に個別送信させ、第1コイルバーアンテナ16aからの電波を電子キー2が受信した際の磁界強度Haと、第2コイルバーアンテナ16bからの電波を電子キー2が受信した際の磁界強度Hbとの磁界強度差Habを算出し、この磁界強度差Habから電子キー2の位置を判定する。よって、電子キー2の位置を1つのアンテナ部品で検出できるとともに、精度よく電子キー2の位置を判定することもできる。
【0081】
(2)車内照合の際、第1コイルバーアンテナ16a及び第2コイルバーアンテナ16bを同時送信させてキー位置を判定するので、仮に車内にヌルエリア24a〜24dが存在していても、これらを通信エリアとして補完することが可能となる。よって、もし仮に電子キー2がヌルエリア24a〜24dに位置していても、電子キー2を検出することが可能となるので、より精度よく電子キー2の位置を判定することができる。
【0082】
(3)コイルバーアンテナ16a,16bを同相で同時送信させて同相合成磁界強度Hkを取得し、コイルバーアンテナ16a,16bを逆相で同時送信させて逆相合成磁界強度Hsを取得し、これら磁界強度Hk,Hsの磁界強度差Habからキー位置を判定する。よって、電子キー2をより細分化して位置検出することが可能となるので、より精度よく電子キー2の位置を判定することができる。
【0083】
(4)電子キー2の位置を車内判定する際、第1コイルバーアンテナ16a及び第2コイルバーアンテナ16bの送信強度を弱めることにより、見かけ上、エリアが小さい判定エリアKa2,Kb2を形成して、電子キー2が車内にあるか否かを判定する。よって、判定エリアKa,Kbが単に大きさが1つのみの場合に比べて、車内のキー位置を細分化して判定することが可能となるので、電子キー2が車内にあるか否かを、より精度よく判定することができる。
【0084】
(5)磁界強度差Habと閾値Hrとの大小を比較する際、各磁界強度Ha,Hbに係数α,βを乗算して位置判定する。このため、見かけ上の判定エリアKa,Kbのサイズを適宜調整することが可能となるので、もし仮に第1コイルバーアンテナ16aや第2コイルバーアンテナ16bの通信エリアが、意図しない箇所に漏れ出たとしても、この漏れ分を相殺することができる。
【0085】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を図11及び図12に従って説明する。なお、本例は、車両発信機10(2軸一体アンテナ)を車両1に複数搭載することにより、電子キー2の位置を細分して検出可能とした実施形態である。よって、第1実施形態と同一部分は同一符号を付して詳しい説明を省略し、異なる箇所についてのみ詳述する。
【0086】
図11に示すように、車体前部には、車幅方向中央位置に、第1車両発信機10aが搭載されている。第1車両発信機10aは、コイル軸L1(L2)が例えば車両前後方向に対して45度傾斜させて配置されている。このため、第1車両発信機10aの4つの判定エリアKa,Ka,Kb,Kbは、車両前後方向に対して45度傾く向きで形成される。なお、本例の場合、4つの判定エリアKa,Ka,Kb,Kbのうち、一方の組みを前部第1判定エリアKc1,Kc1とし、他方の組みを前部第2判定エリアKd1,Kd1とする。
【0087】
また、車体後部には、車幅方向中央位置に、第2車両発信機10bが搭載されている。第2車両発信機10bも、第1車両発信機10aと同様に、コイル軸L1(L2)が例えば車両前後方向に対して45度傾斜させて配置されている。なお、本例の場合、第2車両発信機10bの4つの判定エリアKa,Ka,Kb,Kbのうち、一方の組みを後部第1判定エリアKc2,Kc2とし、他方の組みを後部第2判定エリアKd2,Kd2とする。また、第1車両発信機10aと第2車両発信機10bとは、車両前後方向に沿って並び配置されている。
【0088】
ところで、図4に示すように、1つの車両発信機10を見た場合、互いに対向する第1判定エリアKa,Kaでは、磁界強度差Habが同じ判定結果をとるので、結果として、電子キー2がこれら判定エリアKa,Kaのどちらに位置するのかまでは見ることができない。これは、第2判定エリアKb,Kbでも同じである。
【0089】
しかし、本例のように、2つの車両発信機10a,10bを用意して、第1車両発信機10aの前部第1判定エリアKc1,Kc1の一方を、第2車両発信機10bの後部第1判定エリアKc2,Kc2の一方に重複させれば、前部第1判定エリアKc1,Kc1の2エリアが区別可能となり、さらには後部第1判定エリアKc2,Kc2の2エリアも区別可能となる。また、同様に、第1車両発信機10aの前部第2判定エリアKd1,Kd1の一方を、第2車両発信機10bの後部第2判定エリアKd2,Kd2の一方に重複させれば、前部第2判定エリアKd1,Kd1の2エリアが区別可能となり、さらには後部第2判定エリアKd2,Kd2の2エリアも区別可能となる。ここでは、第1車両発信機10aの前部第1判定エリアKc1と、第2車両発信機10bの後部第1判定エリアKc2との重複領域を第1重複エリアKz1とし、第1車両発信機10aの前部第2判定エリアKd1と、第2車両発信機10bの後部第2判定エリアKd2との重複領域を第2重複エリアKz2とする。
【0090】
よって、本例の場合、位置判定部22は、第1車両発信機10aでスマート通信を実行した際に取得した磁界強度差Habの判定結果と、第2車両発信機10bでスマート通信を実行した際に取得した磁界強度差Habの判定結果とを基に、電子キー2の位置を判定する。即ち、位置判定部22は、第1車両発信機10aを使用したときの磁界強度差Habの判定結果と、第2車両発信機10bを使用したときの磁界強度差Habの判定結果との組み合わせにより、電子キー2の位置を判定する。
【0091】
例えば、第1車両発信機10aでHab>Hkとなり、第2車両発信機10bでスマート通信不可となると、電子キー2が車体右斜め前部(前部第1判定エリアKc1)に位置すると判定される。第1車両発信機10aでHab<Hkとなり、第2車両発信機10bでスマート通信不可となると、電子キー2が車体左斜め前部(前部第2判定エリアKd1)に位置すると判定される。また、第1車両発信機10aでスマート通信不可となり、第2車両発信機10bでHab>Hkとなると、電子キー2が車体右斜め後部(後部第1判定エリアKc2)に位置すると判定される。第1車両発信機10aでスマート通信不可となり、第2車両発信機10bでHab<Hkとなると、電子キー2が車内左斜め後部に位置すると判定される。
【0092】
また、第1車両発信機10aでHab>Hkとなり、第2車両発信機10bでHab>Hkとなると、電子キー2が車体左側方(第1重複エリアKz1)に位置すると判定される。即ち、電子キー2が2つの判定エリアKc1,Kc1のうち、どちらに位置しているかが判定される。第1車両発信機10aでHab<Hkとなり、第2車両発信機10bでHab<Hkとなると、電子キー2が車体右側方(第2重複エリアKz2)に位置すると判定される。即ち、電子キー2が2つの判定エリアKc2,Kc2のうち、どちらに位置しているかが判定される。
【0093】
従って、本例の場合、車両発信機10として2つの車両発信機10a,10bを設けて重複エリアKz1,Kz2を形成し、この配置状態の下、第1車両発信機10aから電波送信した際の磁界強度差Habと、第2車両発信機10bから電波送信した際の磁界強度差Habとの組み合わせにより、電子キー2の位置を判定する。このため、各車両発信機10a,10bの一対の判定エリアKa,Ka(Kb,Kb)を、それぞれ別のエリアとして判定可能となるので、電子キー2が判定エリアKa,Ka(Kb,Kb)のどちらに位置するのかを検出することが可能となる。よって、電子キー2の位置をより細分化して検出することが可能となるので、より精度よく電子キー2の位置を判定することが可能となる。
【0094】
また、第1車両発信機10a及び第2車両発信機10bの配置位置は、車両前後方向に沿って並び配置されることに限定されない。例えば図12に示すように、第1車両発信機10a及び第2車両発信機10bを車幅方向に沿って並び配置して、電子キー2の位置を判定してもよい。この場合、運転席側車外前方、運転席側車外後方、助手席側車外前方、助手席側車外後方、車内前方、車内後方という8エリアのどの位置に電子キー2が位置しているのかを判定することが可能となる。
【0095】
本実施形態の構成によれば、第1実施形態に記載の(1)〜(5)の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
(6)車両発信機10を複数設けて重複エリアKz1,Kz2を形成し、第1車両発信機10aから電波送信した際の磁界強度差Habと、第2車両発信機10bから電波送信した際の磁界強度差Habとの組み合わせにより、電子キー2の位置を判定するので、より細分化して電子キー2の位置を判定することができる。
【0096】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を図13〜図15に従って説明する。なお、本例は、第2実施形態の技術思想をタイヤ空気圧監視システム50に応用した実施例であって、本例も前記実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0097】
図13に示すように、車両1には、各タイヤ51a〜51eに無線式のバルブ(タイヤセンサ)52を取り付けて各タイヤ空気圧を監視するタイヤ空気圧監視システム50が搭載されている。タイヤ空気圧監視システム50は、タイヤ空気圧が閾値よりも低いタイヤを検出すると、そのタイヤを例えば車内インストルメントパネル等で運転者に通知する。タイヤ51a〜51eには、右前タイヤ51a、左前タイヤ51b、右後タイヤ51c、左後タイヤ51d、スペアタイヤ51eがある。なお、タイヤ空気圧監視システム50が無線システムを構成する。
【0098】
各タイヤ51a〜51eには、タイヤ空気圧情報Stpを無線により送信可能なバルブ52が取り付けられている。本例のバルブ52には、LF電波を受信可能なLF受信機、UHF電波を送信可能なUHF受信機、タイヤ空気圧を検出する圧力センサ、タイヤ温度を検出する温度センサ、タイヤに加わる加速度を検出する加速度センサ、以上の部品を制御するマイクロコンピュータ等が搭載されている。また、各バルブ52のマイクロコンピュータには、前述したような磁界強度算出部19や磁界強度出力部20も設けられている。なお、バルブ52が通信端末及びタイヤ通信機を構成する。
【0099】
バルブ52は、車両発信機10からトリガ信号Strを受信したとき、タイヤ空気圧情報StpをUHF電波により送信する。タイヤ空気圧情報Stpには、例えばバルブ固有の識別ID、タイヤ空気圧、タイヤ温度、タイヤに付与されている加速度等の情報が含まれている。また、トリガ信号Strは、LF電波であって、バルブ52に電波送信を要求する動作実行要求が含まれている。トリガ信号Strは、車両走行中において車両発信機10が電子キー2と通信を実行しない所定タイミングで送信される。
【0100】
車両1には、車体の前後2箇所に車両発信機10(2軸一体アンテナ)が車両進行方向(車体前後方向)に対して45度傾く向きにて配置されている。本例の場合、前側のものを10aとし、後側のものを10bとする。また、車両発信機10a,10bの間には、互いの通信エリアを重複させることにより重複エリアKz1,Kz2が形成されている。本例の場合、車両発信機10aの一対の判定エリアKa,Kaのうち、車体右前部側の判定エリアKc11で右前タイヤ51aをカバーし、車両発信機10aの一対の判定エリアKb,Kbのうち、車体左前部側の判定エリアKd11で左前タイヤ51bをカバーする。また、重複エリアKz2で右後タイヤ51cをカバーし、重複エリアKz1で左後タイヤ51dをカバーする。さらに、車両発信機10bの判定エリアKc22,Kd22のどちらかでスペアタイヤ51eをカバーする。
【0101】
次に、本例のタイヤ空気圧監視システム50の動作を説明する。
照合ECU9は、各タイヤ51a〜51eの空気圧を確認するとき、車両発信機10a,10bからトリガ信号Strを送信する。トリガ信号Strの送信は、車両1の走行中において、電子キー2に問い合せを行わない期間の所定時期に断続的に実行される。また、トリガ信号Strの通信エリアは、車両発信機10a,10bが電子キー2と通信を行うときと同程度の範囲にて形成される。
【0102】
このとき、まず第1車両発信機10aは、トリガ信号Strの判定エリアKaを形成し、続いてトリガ信号Strの判定エリアKbを形成する。そして、これに続けて、第2車両発信機10bは、トリガ信号Strの判定エリアKsを形成し、続いてトリガ信号Strの判定エリアKbを形成する。
【0103】
各タイヤ51a〜51eのバルブ52は、これら車両発信機10a,10bから送信されたトリガ信号Strを受信したとき、トリガ信号Strの磁界強度(受信信号強度RSSI)を磁界強度算出部19にて算出する。各タイヤ51a〜51eのバルブ52は、トリガ信号Strを受信すると、これに応答してタイヤ空気圧情報Stpを車体に送信するが、このタイヤ空気圧情報Stpの中に磁界強度のデータも含めて送信する。
【0104】
照合ECU9は、これらタイヤ空気圧情報Stpを車両チューナ11で受信すると、タイヤ空気圧情報Stpに含まれる識別IDにより照合を行い、この照合が成立すれば、同じタイヤ空気圧情報Stpの中に含まれるタイヤ空気圧、タイヤ温度、タイヤ加速度等を取得する。そして、照合ECU9は、識別IDとこれら情報とを対応付けて、自身のメモリに保持する。
【0105】
また、位置判定部22は、第1車両発信機10aからトリガ信号Strを送信した際に取得した磁界強度差Habの判定結果と、第2車両発信機10bからトリガ信号Strを送信した際に取得した磁界強度差Habの判定結果とを基に、電子キー2の位置を判定する。即ち、位置判定部22は、第1車両発信機10aを使用したときの磁界強度差Habの判定結果と、第2車両発信機10bを使用したときの磁界強度差Habの判定結果との組み合わせにより、タイヤ51a〜51eの位置を特定する。
【0106】
例えば、第1車両発信機10aでHab>Hkとなり、第2車両発信機10bで通信が成立しないと、その識別IDは右前タイヤ51a(判定エリアKc11)のものと判定される。また、第1車両発信機10aでHab<Hkとなり、第2車両発信機10bで通信が成立しないと、その識別IDは左前タイヤ51b(判定エリアKd11)のものと判定される。さらに、第1車両発信機10aでHab>Hkとなり、第2車両発信機10bでHab>Hkとなると、その識別IDは左後タイヤ51d(第1重複エリアKz1)のものと判定される。また、第1車両発信機10aでHab<Hkとなり、第2車両発信機10bでHab<Hkとなると、その識別IDは右後タイヤ51c(第2重複エリアKz2)のものと判定される。
【0107】
さらに、第1車両発信機10aで通信が成立せず、第2車両発信機10bでのみ通信が成立すると、その識別IDはスペアタイヤ51e(判定エリアKc22,Kd22)のものと判定される。なお、スペアタイヤ51eの位置特定は、例えば第2車両発信機10b(2軸一体アンテナ)の各アンテナの位相を制御することで、トランクのみをカバーする通信エリアを形成することで対応することも可能である。
【0108】
また、図14に示すように、車両発信機10a,10bを車両の左右方向に配置してもよい。この場合は、車内外の両方において前後を特定することが可能となる。図14の例では、スペアタイヤ51eは、車内後部に存在することを以て特定する。さらに、第1実施形態の思想を用い、同相合成や逆相合成の通信エリアを形成することにより、ヌルエリアを補完するようにしてもよい。
【0109】
さらに、図15に示すように、1つの車両発信機10のみでタイヤ51a〜51eの位置を特定することも可能である。この場合は、車両発信機10の位置を前又は後にずらして配置する。これにより、2軸一体アンテナの各アンテナのどちらかにおいて、バルブ52がトリガ信号Strを受信したときの電界強度が、一方に対して強くなる。よって、磁界強度の比較結果と、電界強度の大きさとから、タイヤ51a〜51eの位置を特定することが可能となる。また、スペアタイヤ51eは、2軸一体アンテナの位相を制御、又は一方の強度を他方の2倍とすることにより、位置を特定することが可能である。
【0110】
ところで、従来は、各タイヤハウスにイニシエータを配置し、動作するバルブ52をイニシエータによって指定していた。この場合は、各タイヤ51a〜51eにイニシエータが必要となるので、部品点数の増加に繋がる。しかし、本例は、このようなイニシエータを使用しなくともタイヤ位置を特定することが可能となるので、イニシエータが不要となる。よって、タイヤ空気圧監視システム50に必要な部品点数を少なく抑えることが可能となる。
【0111】
本実施形態の構成によれば、前記実施形態に記載の(1)〜(6)の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
(7)各タイヤハウスにイニシエータを配置しなくてもタイヤ51a〜51eの位置を特定することが可能となるので、タイヤ空気圧監視システム50に必要な部品点数を少なく抑えることができる。また、タイヤ特定も精度よく行うことができる。
【0112】
(8)キー操作フリーシステム3における車体側の通信インフラ(主に照合ECU9、車両発信機10、車両チューナ11等)をタイヤ空気圧監視システム50にも共用するので、車両1に搭載される部品点数を削減することができる。
【0113】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・第1〜第3実施形態において、複数軸一体アンテナは、2つのコイルバーアンテナ16a,16bを持つ2軸一体アンテナに限定されない。例えば、アンテナ部品を3つ設けて、3軸(X軸、Y軸、Z軸)対応のアンテナとしてもよい。
【0114】
・第1〜第3実施形態において、2軸一体アンテナのコイルバーアンテナ16a,16bは、コイル軸L1,L2が互いに直交する向きに配置されることに限定されず、直交以外の角度をとってもよい。
【0115】
・第1〜第3実施形態において、磁界強度Hxの算出は、ウェイク信号38a,38bで行うことに限らず、例えばビークルID40,45やチャレンジ42,47により算出してもよい。
【0116】
・第1〜第3実施形態において、車両発信機10のアンテナ部材は、コイルバーアンテナ16a,16bに限らず、例えばループアンテナやダイポールアンテナとしてもよい。
・第1及び第2実施形態において、車内外のキー位置判定で車両発信機10の判定エリアKa,Kbの大きさを変える方式は、車両発信機10の送信強度を切り換える方式に限定されない。例えば、車両発信機10の電波出力を一定とし、電子キー2の受信強度を確認する際の受信強度の閾値を変更することにより、見かけ上の判定エリアKa,Kbのサイズを切り換える方式を採用してもよい。なお、この思想は第3実施形態にも応用可能である。
【0117】
・第1及び第2実施形態において、磁界強度差Habの演算は、電子キー2から磁界強度Hxのデータを車両1が受け付けて、車両1側で行う形式に限定されない。例えば、磁界強度差Habの演算までを電子キー2側で行い、その演算結果を車両1に通知する形式でもよい。なお、この思想は第3実施形態にも応用可能である。
【0118】
・第1〜第3実施形態において、受信強度は、受信電波の磁界強度Hxに限定されず、電界強度としてもよい。
・第1〜第3実施形態において、コイルバーアンテナ16a,16bを同時送信させる際、同相送信と逆相送信との両方を必ず実行することに限らず、一方のみ行うものでもよい。
【0119】
・第1〜第3実施形態において、リクエストは、ID返信要求であるリクエスト信号Srqに限らず、電子キー2に応答を求める信号であればよい。
・第1〜第3実施形態において、スマート照合は、2つのコイルバーアンテナ16a,16bの両方での成立を成立条件とすることに限らず、どちらか一方のみとしてもよい。
【0120】
・第2又は第3実施形態において、複数の車両発信機10,…を設ける場合、個数は2つに限らず、3つ以上としてもよい。
・第2又は第3実施形態において、第1車両発信機10aの判定エリアKa,Kbと、第2車両発信機10bの判定エリアKa,Kbとの重複の仕方は、例えば1つのエリアのみ重複するなど、適宜変更可能である。
【0121】
・第1〜第3実施形態において、電子キー2は、車両キーに限定されず、種々の端末(携帯電話、ICカード等)が使用可能である。また、電子キー2は、必ずしもキー機能を持つものに限らず、広義として認証動作を行う通信端末(認証端末)を広く含むものとする。
【0122】
・第1〜第3実施形態において、キー操作フリーシステム3やタイヤ空気圧監視システム50は、相互通信の往路と復路とで周波数が異なることに限定されず、同じ周波数としてもよい。また、キー操作フリーシステム3やタイヤ空気圧監視システム50の通信周波数は、LFやUHFに限らず、例えばHF(High Frequency)等の他の周波数を使用してもよい。
【0123】
・第1〜第3実施形態において、無線システムや問い合せは、実施形態に述べた例に限定されず、本願思想の適用先に応じて適宜変更可能である。
・第1〜第3実施形態において、スマート通信の過程で車両1から電子キー2の電力電波を送信し、この電力電波により電子キー2を駆動させることで、電子キー2を電池レスとしてもよい。
【0124】
・第3実施形態において、タイヤ空気圧情報Stpの内容は、適宜変更可能である。
・第3実施形態において、タイヤ空気圧監視システム50のコントロールユニットは、照合ECU9が兼ねることに限定されず、専用のECUを設けてもよい。
【0125】
・第1〜第3実施形態において、キー操作フリーシステム3及びタイヤ空気圧監視システム50は、車体側の通信インフラが共用されることに限定されず、各システムで機能が独立していてもよい。また、本例の技術思想は、車両1に搭載されることに限らず、他の機器や装置に採用可能である。
【0126】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(イ)請求項2〜7のいずれかにおいて、同時送信手段は、前記一アンテナ部材と前記他アンテナ部材とを同じ位相で電波送信させる同相送信と、前記同相に対して位相を180度反転させた逆相で電波送信させる逆相送信とを実行し、前記位置判定手段は、前記同相送信時の受信強度と、前記逆相送信時の受信強度との強度差を基に、前記通信端末の位置を判定する。この構成によれば、より精度よく通信端末の位置を判定することが可能となる。
【0127】
(ロ)請求項3〜7、前記技術的思想(イ)のいずれかにおいて、前記細分位置判定手段は、前記複数軸一体アンテナの送信強度を変化させることにより、前記判定エリアの大きさを変える。
【0128】
(ハ)請求項3〜7、前記技術的思想(イ)のいずれかにおいて、前記細分位置判定手段は、前記複数軸一体アンテナの出力を一定としつつも、当該複数軸一体アンテナからの電波受信した際の受信強度の閾値を変えることにより、前記判定エリアの見かけ上の大きさを変える。
【符号の説明】
【0129】
1…車両、2…通信端末を構成する電子キー、3…無線システム及び電子キーシステムを構成するキー操作フリーシステム、9…通信マスタとしての照合ECU、10…複数軸一体アンテナを構成する車両発信機、15…位置判定装置、16a…アンテナ部材(一アンテナ部材、他アンテナ部材)を構成するコイルバーアンテナ、16b…アンテナ部材(一アンテナ部材、他アンテナ部材)を構成するコイルバーアンテナ、18…個別送信実行手段としての第1アンテナ個別送信動作部、19…受信強度取得手段を構成する磁界強度算出部、20…受信強度取得手段を構成する磁界強度出力部、21…受信強度取得手段を構成する磁界強度取得部、22…強度差算出手段及び位置判定手段を構成する位置判定部、23…細分位置判定手段としての第2アンテナ個別動作部、25…同時送信手段としてのアンテナ同時送信動作部、50…無線システムを構成するタイヤ空気圧監視システム、51a〜51e…タイヤ、52…通信端末及びタイヤ通信機を構成するバルブ、L1,L2…軸としてのコイル軸、Hx,Ha,Hb,Hk,Hs…受信強度としての磁界強度、Hab…強度差としての磁界強度差、Ka,Kb,Ka1,Ka2,Kb1,Kb2,Kk,Ks,Kc1(Kc11),Kc2(Kc22),Kd1(Kd11),Kd2(Kd22)…判定エリア、Kz1,Kz2…重複エリア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信マスタからの問い合せに通信端末が応答して、これらが双方向通信する無線システムに使用される通信端末位置判定装置において、
前記通信マスタの送信アンテナとして形成され、軸方向が異なる向きに配置された少なくとも2つのアンテナ部材が設けられた複数軸一体アンテナと、
ID照合の際に複数の前記アンテナ部材から各々個別に電波を送信させる個別送信実行手段と、
一アンテナ部材からの電波を前記通信端末が受信した際の受信強度と、他アンテナ部材からの電波を前記通信端末が受信した際の受信強度とを取得する受信強度取得手段と、
2つの前記受信強度の強度差を算出する強度差算出手段と、
当該強度差から前記通信端末の位置を判定する位置判定手段と
を備えたことを特徴とする通信端末位置判定装置。
【請求項2】
前記一アンテナ部材及び前記他アンテナ部材から前記電波を同時送信させる同時送信手段を備え、
前記受信強度取得手段は、前記同時送信により送信された電波を前記通信端末が受信した際の受信強度を算出し、前記位置判定手段は、同時送信時に取得する前記受信強度を使用して、前記通信端末の位置を判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の通信端末位置判定装置。
【請求項3】
前記通信端末の位置判定単位である判定エリアの大きさを変えることにより、前記通信端末の位置を更に細分化して判定する細分位置判定手段を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の通信端末位置判定装置。
【請求項4】
複数の前記複数軸一体アンテナと、
複数の前記複数軸一体アンテナが並び配置され、前記通信端末の位置判定単位として各々の前記複数軸一体アンテナの両側にできる一対の判定エリアのうちの一方同士を重ね合わせることにより形成された重複エリアとを備え、
前記位置判定手段は、前記重複エリアを構成する一方の前記複数軸一体アンテナで取得する前記強度差と、当該重複エリアを形成する他方の前記複数軸一体アンテナで取得する前記強度差との組み合わせにより、前記通信端末の位置を判定する
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の通信端末位置判定装置。
【請求項5】
前記通信端末は、電子キーであり、
前記無線システムは、前記通信マスタが前記電子キーとID照合する電子キーシステムであり、
前記位置判定手段は、前記電子キーの位置を判定する
ことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の通信端末位置判定装置。
【請求項6】
前記通信端末は、車両の各タイヤに取り付けられたタイヤ通信機であり、
前記無線システムは、前記タイヤ通信機からタイヤ空気圧を無線により取得するタイヤ空気圧監視システムであり、
前記位置判定手段は、前記タイヤ通信機の位置を判定することにより、タイヤの位置を特定する
ことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の通信端末位置判定装置。
【請求項7】
前記通信端末としての電子キーとID照合する前記無線システムとしての電子キーシステムと、前記通信端末としてのタイヤ通信機から無線によりタイヤ空気圧を取得する前記無線システムとしてのタイヤ空気圧監視システムとは、1つの前記通信マスタを共用する
ことを特徴とする請求項1〜6のうちいずれか一項に記載の通信端末位置判定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図9】
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【図10】
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【図16】
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【図17】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−147104(P2011−147104A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214426(P2010−214426)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】