説明

通信装置、および通信方法

【課題】周波数に応じて送信または受信する電磁波の指向性を変化させて、反射板を介して効率よく送信または受信すること。
【解決手段】通信装置は、広帯域な周波数の電磁波に対して、反射板Mへの電磁波の放射、または反射板Mからの電磁波の受信を効率よくおこなうために、開口長Lを変化させることができる一つのアンテナとして機能する放射器100を有する。そして、通信装置は、送受信の対象になる電磁波の周波数に応じて放射器100の開口長Lを変化させることで、放射器100の指向特性のメインローブ(概ね10dBビーム幅)の範囲に反射板Mが入るようにして、反射板Mに電磁波を効率よく放射し、または、反射板Mから電磁波を効率よく受信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信をおこなう通信装置、および通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、反射板を介して電磁波の送受信をおこなう通信装置が存在する。通信装置は、反射板に対して電磁波を放射し、また、反射板から電磁波を受信する機能を有する放射器を備えている。そして、放射器では、様々な周波数の電磁波の送受信がおこなわれている。
【0003】
一般に、通信装置の放射器の指向特性は、反射板への電磁波の放射、または反射板からの電磁波の受信にふさわしい特性に調整されている。しかし、放射器の指向特性は、送受信の対象になる電磁波の周波数に依存して変化する特性である。そのため、放射器の指向特性は、送受信の対象になる電磁波の周波数次第では、当該周波数の電磁波の送受信にふさわしくない指向特性に変化してしまう場合がある。
【0004】
このため、放射器になる素子アンテナ群を中央部と周辺部とに分けてそれぞれ給電して、放射器の指向特性を調整する技術がある(例えば、下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平6−44689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した従来技術では、送受信の対象になる電磁波の周波数に応じて放射器の指向特性を動的に調整することは想定されていない。そのため、放射器の指向特性が、周波数に依存して変化し電磁波の送受信にふさわしくない特性になった場合でも、指向特性を改善できず、送受信の効率が悪化するといった問題があった。
【0007】
例えば、低周波数の電磁波を送信する場合に、放射器から放射された電磁波が、反射板に入射せずに反射板の後ろに漏れることがあるといった問題があった。また、低周波数の電磁波を受信する場合に、反射板の後ろから入り込んだノイズになる電磁波を受信してしまうことがあるといった問題があった。
【0008】
一方、高周波数の電磁波を送信する場合に、放射器から放射された電磁波が、反射板全体に効率よく入射しないことがあるといった問題があった。また、高周波数の電磁波を受信する場合に、反射板全体から放射器に効率よく電磁波を集めることができないことがあるといった問題があった。
【0009】
本発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、周波数に応じて送信または受信する放射器の電磁波の指向性を変化させて、反射板を介して効率よく送信または受信することができる通信装置、および通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の一側面によれば、反射板を介して電磁波を送信する素子群を有し、反射板の反射領域内で電磁波を反射させる素子の集合を、電磁波の周波数の違いに応じて素子群の中から選択する通信装置、および通信方法が提案される。
【0011】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の一側面によれば、反射板を介して電磁波を受信する素子群を有し、反射板から反射してくる電磁波を受信させる受信領域内の素子の集合を、電磁波の周波数の違いに応じて素子群の中から選択する通信装置、および通信方法が提案される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面によれば、周波数に応じて送信または受信する電磁波の指向性を変化させて、反射板を介して効率よく送信または受信することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、通信装置によりおこなわれる送受信の対象になる電磁波の周波数に応じた開口長の変化の内容を示す説明図である。
【図2】図2は、実施の形態にかかる通信装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。
【図3−1】図3−1は、放射器100の一例を示す説明図(その1)である。
【図3−2】図3−2は、放射器100の一例を示す説明図(その2)である。
【図3−3】図3−3は、放射器100の一例を示す説明図(その3)である。
【図3−4】図3−4は、放射器100の一例を示す説明図(その4)である。
【図4−1】図4−1は、通信装置200の記憶装置202に記憶されている周波数対開口長DB210の記憶内容を示す説明図である。
【図4−2】図4−2は、通信装置200の記憶装置202に記憶されているスイッチ切替DB220の記憶内容を示す説明図である。
【図5】図5は、通信装置200の機能的構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、送信対象の電磁波が低周波数の電磁波である場合における放射器100の送信特性を示す説明図である。
【図7】図7は、送信対象の電磁波が中間周波数の電磁波である場合における放射器100の送信特性を示す説明図である。
【図8】図8は、送信対象の電磁波が高周波数の電磁波である場合における放射器100の送信特性を示す説明図である。
【図9】図9は、通信装置200による開口長変化処理の処理内容の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる通信装置、および通信方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0015】
通信装置は、広帯域な周波数範囲の電磁波に対しても、反射板への電磁波の放射または反射板からの電磁波の受信を効率よくおこなえるように、開口長を変化させることができる一つのアンテナとして機能する素子アンテナ群(以下、「放射器」という)を有する。そして、通信装置は、送受信の対象になる電磁波の周波数に応じて、放射器の開口長を変化させ、反射板へ電磁波を効率よく放射し、または反射板から電磁波を効率よく受信する。
【0016】
ここで、通信装置は、反射板への電磁波の放射(送信)と反射板からの電磁波の受信とのうち、少なくともいずれかをおこなう装置である。通信装置としては、例えば、ディッシュアンテナ(パラボラアンテナおよび球面アンテナを含む)、カセグレンアンテナ、または、グレゴリアンアンテナが挙げられる。また、上述したアンテナは、中央給電形であってもよいし、オフセット形であってもよい。
【0017】
また、通信装置は、電子対抗手段、電子支援手段、レーダ、電話、電信、放送、または、電波望遠鏡などといった電磁波の送信または受信に関する種々の用途に利用できる。電磁波としては、例えば、電波(電波法では300万[MHz]以下の周波数の電磁波と定義される)が挙げられる。
【0018】
なお、以下では、説明の便宜上、電磁波を、低周波数の電磁波と、中間周波数の電磁波と、高周波数の電磁波と、に分類している。そして、以下では、通信装置は、3パターンの周波数のそれぞれに対応する3パターンの開口長に変化させることができる放射器を有するとして説明をおこなっている。
【0019】
(通信装置によりおこなわれる送受信の対象になる電磁波の周波数に応じた開口長の変化の内容)
まず、図1を用いて、通信装置により電磁波の送受信の効率化のためにおこなわれる送受信の対象になる電磁波の周波数に応じた開口長の変化の内容について説明する。
【0020】
図1は、通信装置によりおこなわれる送受信の対象になる電磁波の周波数に応じた開口長の変化の内容を示す説明図である。なお、図1では、簡単のため、放射器により目的とする方向へ放射される電磁波(メインローブの電磁波)を対象にして、電磁波の送受信の効率化について説明する。
【0021】
まず、図1の(a)に、通信装置が有する放射器100の開口長Lの一例を示す。ここで、放射器100には、素子アンテナEが行列状に配列されている。放射器100は、送受信に使用する素子アンテナEの組み合わせを変更することにより、開口長Lを変化させることができる一つのアンテナとして機能する。ここで、開口長とは、送受信に使用する素子アンテナEの組み合わせにより生成される電磁波の放射面(または受信面)の長さであり、放射面が正方形であれば辺長に対応する。なお、図1の(a)では、送信に使用する素子アンテナEを白丸で示し、不使用の素子アンテナEを黒丸で示している。
【0022】
ここで、放射器100から放射される電磁波には、周波数が低いほどビーム幅が広くなるという特性がある。そして、ビーム幅の変化により、反射板Mへ電磁波が効率よく放射されなくなる場合がある。そのため、通信装置は、送受信の対象になる電磁波の周波数に応じて、放射器100の開口長Lを変化させて、反射板Mの幅に合うビーム幅へと調整することにより、反射板Mへの電磁波の放射を効率よくおこなえるようにする。
【0023】
(1)は、低周波数の電磁波の送受信に使用される開口長Lの長い放射器100である。ここで、放射器100は、素子アンテナEのすべてを使用することにより、開口長Lを長くしている。開口長Lが長くなると、ビーム幅は狭くなる性質がある。通信装置は、送信する電磁波が低周波数であるために反射板Mの幅よりビーム幅が広くなってしまった場合は、(1)の開口長Lの長い放射器100を使用することで、反射板M全体に効率よく電磁波を放射できるビーム幅に調整する。
【0024】
(2)は、中間周波数の電磁波の送受信に使用される開口長Lが中程度の放射器100である。ここで、放射器100は、素子アンテナEの外周部分を使用しないようにして、開口長Lを中程度にしている。開口長Lを中程度にすることでビーム幅を中程度にすることができる。通信装置は、送信する電磁波が中間周波数であってビーム幅が中程度である場合は、(2)の開口長Lが中程度の放射器100を使用することで、反射板M全体に効率よく電磁波を放射できるビーム幅に調整する。
【0025】
(3)は、高周波数の電磁波の送受信に使用される開口長Lが短い放射器100である。ここで、放射器100は、素子アンテナEの中央部分以外を使用しないようにして、開口長Lを短くしている。開口長Lが短くなると、ビーム幅は広くなる性質がある。通信装置は、送信する電磁波が高周波数であるために反射板Mの幅よりビーム幅が狭くなってしまった場合は、(3)の開口長Lの短い放射器100を使用することで、反射板M全体に効率よく電磁波を放射できるビーム幅に調整する。
【0026】
このように、放射器100は、開口長Lの大きさを3パターンに変化できるようにして、放射する電磁波のビーム幅を調整できるようにしている。そして、通信装置は、送信する電磁波の周波数に適した開口長Lを選択し、反射板M全体に効率よく電磁波を放射できるビーム幅に調整している。
【0027】
次に、図1の(b)および(c)を用いて、通信装置による電磁波の周波数に応じた開口長Lの変化の具体例について説明する。具体的には、通信装置は、電磁波を送信する場合、反射板Mの反射領域に電磁波を入射させ、反射板Mの後ろに電磁波を漏らさないように、電磁波の周波数に応じて開口長Lを変化させる。そして、通信装置は、放射器100から放射される電磁波の概ね10dBビーム幅が、常に反射板Mの反射領域に収まるようにする。
【0028】
まず、図1の(b)を用いて、通信装置による送信の対象になる電磁波が低周波数である場合を例に挙げて、開口長Lの変化による送信の効率の変化の具体例について説明する。ここで、低周波数の電磁波には、放射される際にビーム幅が広くなるという性質がある。
【0029】
(1)通信装置が図1の(a)の(3)のように開口長Lが短い状態で、低周波数の電磁波を送信すると、ビーム幅が周波数に依存して広くなり、さらに、開口長Lが短いためにビーム幅はより広くなる。そのため、放射器100から放射される電磁波の一部は、反射板Mに入射せずに反射板Mの後ろへ漏れてしまう。なお、電磁波が反射板Mの後ろへ漏れることを「スピルオーバー」という。このように、低周波数の電磁波の送信には短い開口長Lが不適であり、送信の効率が悪くなることが分かる。
【0030】
(2)一方、通信装置が図1の(a)の(1)のように開口長Lが長い状態で、低周波数の電磁波を送信すると、ビーム幅が周波数に依存して広くなるものの、開口長Lが長いためにビーム幅が狭められる。そのため、放射器100から放射される電磁波のほとんどが反射板Mに入射するようになり、送信の効率がよくなる。このように、低周波数の電磁波の送信には長い開口長Lが適当であり、送信の効率化が図れることが分かる。
【0031】
以上のように、通信装置は、低周波数の電磁波を送信する場合、開口長Lを長くすることにより、周波数に依存して広くなったビーム幅を反射板Mの反射領域に収まるように狭くすることができる。そして、通信装置は、放射器100からスピルオーバーを低減し電磁波を放射し、電磁波が反射板Mに効率よく入射するようにして、送信の効率をよくすることができる。
【0032】
また、図1の(c)を用いて、通信装置による送信の対象になる電磁波が高周波数である場合を例に挙げて、開口長Lの変化による送信の効率の変化の具体例について説明する。ここで、高周波数の電磁波には、放射される際にビーム幅が狭くなるという性質がある。
【0033】
(1)通信装置が図1の(a)の(1)のように開口長Lが長い状態で、高周波数の電磁波を送信すると、ビーム幅が周波数に依存して狭くなり、さらに、開口長Lが長いためにビーム幅はより狭くなる。そのため、放射器100から放射される電磁波のサイドローブを含め全体が反射板Mに入射し効率が低下てしまう。このように、高周波数の電磁波の送信には長い開口長Lは不適であり、送信の効率が悪くなることが分かる。
【0034】
(2)一方、通信装置が、図1の(a)の(3)のように開口長Lが短い状態で、高周波数の電磁波を送信すると、ビーム幅が周波数に依存して狭くなるものの、開口長Lが短いためにビーム幅が広げられる。そのため、放射器100から放射される電磁波は、反射板Mの反射領域全体に入射するようになり、送信の効率がよくなる。このように、高周波数の電磁波の送信には短い開口長Lが適当であり、送信の効率化が図れることが分かる。
【0035】
以上のように、通信装置は、高周波数の電磁波を送信する場合、開口長Lを短くすることにより、周波数に依存して狭くなったビーム幅を反射板Mの反射領域全体に入射するように広くすることができる。そして、通信装置は、放射器100から放射される電磁波が反射板M全体に効率よく入射するようにして、送信の効率をよくすることができる。
【0036】
ここでは、電磁波の送信の場合について説明した。しかし、放射器100による電磁波の送信と受信には可逆性があるため、上述した図1の(b)および(c)は、電磁波の経路を逆にすることで電磁波を受信する場合を示す図になる。そして、放射器100による電磁波の送信と受信には可逆性があるため、上述した反射板Mの反射領域全体に効率よく電磁波を放射できる開口長Lは、反射板Mの反射領域全体から効率よく電磁波を受信できる開口長Lでもある。
【0037】
そのため、通信装置は、送信の場合と同様に受信の場合でも、受信する電磁波の周波数に適した開口長Lを選択することで、反射板M全体から効率よく電磁波を受信できるように開口長Lを調整して、電磁波の受信の効率化を図ることができる。具体的には、通信装置は、電磁波を受信する場合、反射板Mの反射領域からの電磁波を受信し、反射板Mの外から入射する電磁波を受信しにくいように、電磁波の周波数に応じて開口長Lを変化させる。
【0038】
このように、通信装置は、送信の対象になる電磁波の周波数に応じて、開口長Lを変化させ、反射板Mに対して効率よく電磁波を放射することができるようになる。また、通信装置は、受信の対象になる電磁波の周波数に応じて、開口長Lを変化させ、反射板Mから効率よく電磁波を受信することができるようになる。
【0039】
これにより、通信装置は、広帯域に渡り、効率よく電磁波の送受信をおこなうことができるようになる。結果として、広帯域の周波数に対応するために、帯域ごとに装置を用意しなくてもよくなり、複数台の装置を用意するためのコストを削減することができる。また、複数台の装置を用意しなくてよいので、通信システムが巨大にならずに済む。
【0040】
なお、図1では、通信装置は、放射器100により目的とする方向へ放射される電磁波(メインローブの電磁波、概ね10dB)のビーム幅を対象にして、電磁波の送受信の効率化を図った。
【0041】
(通信装置のハードウェア構成例)
次に、図2を用いて、通信装置のハードウェア構成例について説明する。
【0042】
図2は、実施の形態にかかる通信装置のハードウェア構成例を示すブロック図である。図2において、通信装置200は、プロセッサ(CPU:Central Processing Unit)201と、記憶装置202と、入力装置203と、発信器204と、変調器205と、給電回路206と、駆動回路209と、放射器100と、電力増幅器211と、送受切換器212と、低雑音増幅器213と、復調器214を備えている。
【0043】
ここで、プロセッサ201は、通信装置200の全体の制御を司る。記憶装置202は、ブートプログラムなどのプログラムを記憶している。記憶装置202は、プロセッサ201のワークエリアとして使用される。記憶装置202は、周波数対開口長DB(DataBase)210とスイッチ切替DB220を記憶している。記憶装置202には、ROM(Read‐Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、磁気ディスク、光ディスクなどを採用できる。入力装置203は、文字、数字、各種指示などの入力のためのキーを備え、データの入力をおこなう。また、タッチパネル式の入力パッドやテンキーなどであってもよい。
【0044】
発信器204は、RF(Radio Frequency)信号を発生する。発信器204は、例えば、水晶振動子の圧電効果により信号を発生する。変調器205は、発信器204からRF信号を受信し、プロセッサ201から入力される変調コードに応じて変調する。変調器205は、変調したRF信号を電力増幅器211に送信しRF信号を増幅する。増幅されたRF信号は送受切換器212により受信経路と分離され給電回路206に送信する。受信時は、給電回路から受信したRF信号を送受切換器212により送信経路と分離して低雑音増幅器に入力し、次に復調器214で必要な情報に変換して取り出し、そしてプロセッサ201へ伝える。なお、電力増幅器211と送受切換器212および低雑音増幅器213は放射器100の各素子アンテナの入出力端にモジュール化して設けても良い。
【0045】
給電回路206は、分配器(パワーデバイダ:power divider)207(a,b,c)と、スイッチ208(a,b,c)と、を備えている。給電回路206は、送受切換器212から受信したRF信号を放射器100に供給する。具体的には、給電回路206は、スイッチ208(a)で各分配器207(a,b,c)を選択し、送受切換器212から受信したRF信号を、スイッチ208(b,c)を介して、放射器100の各素子アンテナEに同位相、同振幅(またはウエイティングが有っても良い)で供給する。スイッチ208には、ピンスイッチ、同軸スイッチ、またはMEMSスイッチを採用できる。なお、上記では、送信での流れを示したが受信の場合は逆の流れとなる。
【0046】
駆動回路209は、スイッチ208(a,b,c)の接続先を切り替える。駆動回路209は、プロセッサ201からスイッチ208(a,b,c)の接続先の組み合わせを受信し、スイッチ208(a,b,c)の接続先を切り替える。放射器100は、素子アンテナが配列されており、反射板Mを介して電磁波の送受信をおこなう。
【0047】
(放射器100の一例)
次に、図3−1〜図3―4を用いて、放射器100の一例について説明する。
【0048】
図3−1〜図3−4は、放射器100の一例を示す説明図である。図3−1に示すように、放射器100には、素子アンテナEが6×6の行列状に配列されている。そして、放射器100は、電磁波の送信または受信に使用する互いに隣接した素子アンテナEの組み合わせを変えることで、複数の開口長Lに変化させられる一つのアンテナとして機能する。例えば、放射器100は、1行1列目〜6行6列目までのすべての素子アンテナE(36個の素子アンテナE)を使用して、開口長Lの長い一つのアンテナとして機能することができる。
【0049】
また、放射器100は、2行2列目〜5行5列目までの素子アンテナE(16個の素子アンテナE)を使用して、開口長Lが中程度の一つのアンテナとして機能することができる。また、放射器100は、3行3列目〜4行4列目までの素子アンテナE(4個の素子アンテナE)を使用して、開口長Lが短い一つのアンテナとして機能することができる。
【0050】
そして、図3−2〜図3−4に示すように、放射器100の開口長Lは、駆動回路209により各素子アンテナEに対応するスイッチ208(a,b,c)が切り替えられることにより、選択される。例えば、放射器100を開口長Lが短い一つのアンテナとして機能させる場合、駆動回路209により3行3列目〜4行4列目までの素子アンテナEに対応するスイッチ208(a,b,c)が切り替えられ、分配器207(c)が選ばれ、その出力をスイッチ208(c)が選択し決定される。
【0051】
ここでは、放射器100は、3パターンの開口長Lのアンテナとして機能するようになっているが、2パターンまたは4パターン以上の開口長Lのアンテナとして機能するようになっていてもよい。また、ここでは、放射器100には、素子アンテナEが正方行列状に配列されているが、素子アンテナEが行の数と列の数が異なる行列状に配列されていてもよい。この場合、変化させる開口長Lとしては、長手方向の長さを採用してもよいし、長手方向と短手方向との両方の長さをそれぞれ採用してもよい。また、ここでは、放射器100には、素子アンテナEが行列状に配列されているが、素子アンテナEが同心円状に配列されていてもよく、この同心円とは、真円でも楕円でもよい。この場合、変化させる開口長Lとしては、円の直径、楕円の長半径や短半径を採用できる。
【0052】
(周波数対開口長DB210の記憶内容)
次に、図4−1を用いて、通信装置200の記憶装置202に記憶されている周波数対開口長DB210の記憶内容について説明する。
【0053】
図4−1は、通信装置200の記憶装置202に記憶されている周波数対開口長DB210の記憶内容を示す説明図である。図4−1に示すように、周波数対開口長DB210は、放射器番号項目に対応付けて、0(低周波数)項目と、1(中間周波数)項目と、2(高周波数)項目と、を有し、スイッチ208(a,b,c)による放射器の選択結果を構成する。
【0054】
放射器番号項目には、放射器100を識別する識別子が記憶されている。0(低周波数)項目には、送受信対象の電磁波の周波数が低周波数である場合での放射器番号項目の識別子によって識別される放射器100のONまたはOFFの状態が記憶されている。なお、ONとはRF信号が供給されている状態であり、OFFとはRF信号が供給されていない状態である。
【0055】
周波数項目の1(中間周波数)項目には、送受信対象の電磁波の周波数が中間周波数である場合での放射器番号項目の識別子によって識別される放射器100のONまたはOFFの状態が記憶されている。周波数項目の2(高周波数)項目には、送受信対象の電磁波の周波数が高周波数である場合での放射器番号項目の識別子によって識別される放射器100のONまたはOFFの状態が記憶されている。
【0056】
周波数対開口長DB210は、通信装置200が放射器100の開口長Lを送受信の対象になる電磁波の周波数に対応する開口長Lに変化させるためのスイッチ208(a,b,c)の状態を取得する際に通信装置200により参照される。
【0057】
(スイッチ切替DB220の記憶内容)
次に、図4−2を用いて、通信装置200の記憶装置202に記憶されているスイッチ切替DB220の記憶内容について説明する。
【0058】
図4−2は、通信装置200の記憶装置202に記憶されているスイッチ切替DB220の記憶内容を示す説明図である。図4−2に示すように、周波数選択項目と、スイッチ208(a)項目と、スイッチ208(b)項目と、スイッチ208(c)項目と、を有し、送受信の対象になる電磁波の周波数の範囲ごとにレコードを構成する。
【0059】
周波数選択項目には、送受信の対象として選択した電磁波の周波数の範囲が記憶されている。ここでは、周波数項目には、高周波数の範囲と、中間周波数の範囲と、低周波数の範囲と、が記憶されている。
【0060】
スイッチ208(a)項目には、周波数選択項目の周波数の電磁波を送受信する場合におけるスイッチ208(a)の切替の状態が記憶されている。スイッチ208(b)項目には、周波数選択項目の周波数の電磁波を送受信する場合におけるスイッチ208(b)の切替の状態が記憶されている。スイッチ208(c)項目には、周波数選択項目の周波数の電磁波を送受信する場合におけるスイッチ208(c)の切替の状態が記憶されている。
【0061】
プロセッサ201は、スイッチ切替DB220を参照して、駆動回路209によりスイッチ208(a,b,c)を切り替えることで、放射器100を送受信の対象に選択した電磁波の周波数に対応した開口長Lに設定できる。
【0062】
(通信装置200の機能的構成例)
次に、図5を用いて、通信装置200の機能的構成例について説明する。
【0063】
図5は、通信装置200の機能的構成を示すブロック図である。通信装置200は、素子群501と、選択部502と、入力部503と、記憶部504と、駆動部505と、を含む構成である。
【0064】
素子群501は、反射板Mを介して電磁波を送信する機能を有する。ここで、素子群501とは、上述した放射器100(素子アンテナE群)である。電磁波には、例えば、電波がある。具体的には、例えば、素子群501は、入力された電磁波を反射板Mに入射させ、反射板Mで電磁波を反射させて電磁波を送信する。これにより、素子群501は、反射板Mが反射する方向へ電磁波を送信することができる。
【0065】
また、素子群501は、反射板Mを介して電磁波を受信する機能を有する。具体的には、例えば、素子群501は、反射板Mに入射し、反射板Mで反射してきた電磁波を受信する。これにより、素子群501は、反射板Mに入射する方向からの電磁波を受信することができる。
【0066】
選択部502は、電磁波を反射板Mの反射領域内で反射させる、入力周波数に応じた開口長Lの素子集合を、素子群501の中から選択する機能を有する。ここで、電磁波を反射板Mの反射領域内で反射させる、入力周波数に応じた開口長Lの素子集合とは、反射板Mの反射領域に概ね10dBビーム幅のメインローブの電磁波を放射する、入力周波数に応じた開口長Lの素子の集合である。また、電磁波を反射板Mの反射領域内で反射させる、入力周波数に応じた開口長Lの素子集合とは、反射板Mが存在しない方向には、メインローブの電磁波をほとんど漏らさない素子の集合である。なお、メインローブの電磁波とは、放射器100が、目的とする方向に放射する電磁波である。
【0067】
具体的には、例えば、選択部502は、記憶部504に記憶されているスイッチ切替DB220を参照して、送信の対象になる電磁波の周波数に対応付けられたスイッチ208(a,b,c)の状態を特定することで、素子アンテナEの集合を選択する。これにより、反射板Mにメインローブの電磁波を効率よく放射できる一つのアンテナとして機能する素子アンテナEの集合を選択することができる。
【0068】
また、具体的には、例えば、選択部502は、素子集合から反射板Mの反射領域が存在する方向にはスピルオーバーが少ない特性である素子集合を選択する。ここで、スピルオーバーが少ない特性である素子集合とは、例えば、概ね10dBビーム幅のメインローブの電磁波を反射板Mから漏らさない開口長Lの素子の集合である。より具体的には、例えば、選択部502は、メインローブの電磁波を反射板Mから漏らさない開口長Lとなる素子アンテナEの集合をONにするスイッチ208(a,b,c)の状態を、周波数に対応付けて記憶したスイッチ切替DB220を参照する。そして、選択部502は、送信対象の電磁波の周波数に対応するスイッチ208(a,b,c)の状態を特定することで、放射器100の中でONにする素子アンテナEの集合を選択する。これにより、放射器100から反射板Mの方向にはスピルオーバーが少ない素子アンテナEの集合を選択するため、メインローブの電磁波にスピルオーバーによる電磁波が干渉することを防止できる素子アンテナEの集合を選択できる。なお、スピルオーバーの電磁波とは、放射器100が放射した電磁波の中で反射板Mから漏れ出た電磁波であり、例えば、バックローブやサイドローブである。
【0069】
また、選択部502は、反射板Mから反射してくる電磁波を受信する、入力周波数に応じた開口長Lの素子集合を、素子群501の中から選択する機能を有する。ここで、反射板Mから反射してくる電磁波を受信させる受信領域内の素子の集合とは、反射板Mから反射してきた電磁波以外を受信しにくい開口長Lになる素子の集合である。
【0070】
具体的には、例えば、選択部502は、記憶部504に記憶されているスイッチ切替DB220を参照して、受信の対象になる電磁波の周波数に対応付けられたスイッチ208(a,b,c)の状態を特定することで、素子アンテナEの集合を選択する。これにより、反射板Mから反射してきた電磁波を効率よく受信できる一つのアンテナとして機能する素子アンテナEの集合を選択することができる。
【0071】
また、具体的には、例えば、選択部502は、素子集合から反射板Mの反射領域が存在する方向にはスピルオーバーが少ない特性である素子集合を選択する。より具体的には、例えば、選択部502は、概ね10dBビーム幅のメインローブの電磁波を反射板Mから漏らさない開口長Lとなる素子アンテナEの集合をONにする場合のスイッチ208(a,b,c)の状態を記憶したスイッチ切替DB220を参照する。そして、選択部502は、受信対象の電磁波の周波数に対応するスイッチ208(a,b,c)の状態を特定することで、放射器100の中で、ONにする素子アンテナEの集合を選択する。これにより、放射器100から反射板Mの方向にはスピルオーバーが少ない素子アンテナEの集合を選択するため、雑音になるスピルオーバーによる電磁波を受信しにくい素子アンテナEの集合を選択することができる。
【0072】
選択部502は、具体的には、例えば、図2に示した記憶装置202(ROM、RAM、磁気ディスク、光ディスクなど)に記憶されたプログラムをプロセッサ201に実行させることにより、その機能を実現する。なお、選択結果は、例えば、記憶装置202に記憶される。
【0073】
入力部503は、送受信の対象になる電磁波の周波数を入力する機能を有する。具体的には、入力部503は、通信装置200のユーザから送受信の対象になる電磁波の周波数の入力を受ける。入力部503は、具体的には、例えば、図2に示した入力装置203により、その機能を実現する。
【0074】
記憶部504は、入力周波数に応じて開口長Lが異なる複数の素子集合を特定する情報を記憶する機能を有する。具体的には、例えば、記憶部504は、スイッチ切替DB220を記憶する。記憶部504は、具体的には、例えば、図2に示した記憶装置202(ROM、RAM、磁気ディスク、光ディスクなど)により、その機能を実現する。
【0075】
駆動部505は、選択部502によって選択された選択結果に基づいて、スイッチ208(a,b,c)を切り替える。これにより、通信装置200は、選択部502に選択された素子アンテナEの集合を用いて電磁波の送受信をおこなうようになる。駆動部505は、具体的には、例えば、図2に示した駆動回路209により、その機能を実現する。
【0076】
(放射器100の送信特性)
次に、図6〜図8を用いて、送信対象の電磁波の周波数を、低周波数、中間周波数、高周波数、のいずれかに固定し、放射器100の開口長Lを3パターンに変化させた場合のそれぞれの場合における放射器100の送信特性について説明する。そして、通信装置200が、周波数に応じて開口長Lを変化させることで、広帯域な周波数の電磁波の送受信に対応できることを示す。
【0077】
送信特性において、放射器100により目的とする方向へ放射される電磁波をメインローブの電磁波といい、放射器100から放射され反射器Mから漏れ出た、不要な方向へ放射される電磁波をスピルオーバー(サイドローブおよびバックローブ)の電磁波という。
【0078】
反射板Mを介した電磁波の送信では、メインローブ(概ね10dBビーム幅)の電磁波を反射板M全体に入射させることで、送信効率が向上する。また、反射板Mを介した電磁波の送信では、反射板Mにサイドローブの電磁波が入射すると、サイドローブの電磁波がメインローブの電磁波に干渉し、送信効率が低下する。
【0079】
そのため、メインローブの範囲に反射板Mが存在し、サイドローブの範囲に反射板Mが存在しない特性になる開口長Lが、送信に適した開口長Lである。また、反射板Mの端までメインローブ内の−10[dB]程度の強い電磁波が放射される特性になる開口長Lが、より送信に適した開口長Lである。
【0080】
(送信対象の電磁波が低周波数の電磁波である場合における放射器100の送信特性)
まず、図6を用いて、送信対象の電磁波が低周波数の電磁波である場合における放射器100の送信特性について説明する。
【0081】
図6は、送信対象の電磁波が低周波数の電磁波である場合における放射器100の送信特性を示す説明図である。図6は、放射器100からみた角度を横軸に示し、当該角度への電磁波の送信利得(相対値:dB)を縦軸に示した送信特性のグラフである。なお、ここでは、放射器100からみて、−20度〜20度の範囲に、反射板Mが存在するとする。
【0082】
ここで、開口長Lが短い場合および開口長Lが中程度の場合には、反射板Mが存在しない−45度〜−20度および20度〜45度の範囲に、メインローブの電磁波が漏れてしまっていることが分かる。一方、開口長Lが長い場合には、反射板Mが存在する−20度〜20度の範囲にメインローブ内の−10[dB]以上の強い電磁波を放射し、かつ、反射板Mが存在しない−45度〜−20度および20度〜45度の範囲には、ほとんどメインローブの電磁波を放射していないことが分かる。以上のように、低周波数の電磁波の送信の際には開口長Lを長くすることで、放射器100の送信特性が低周波数の電磁波の送信に適した特性になることが分かる。
【0083】
また、放射器100の送信特性と受信特性とには可逆性があるため、図6に示した角度における電磁波の送信利得(相対値:dB)の値は、そのまま当該角度における受信利得(相対値:dB)の値になる。そのため、送信の際と同様に、低周波数の電磁波の受信の際には開口長Lを長くすることで、放射器100の受信特性が低周波数の電磁波の受信に適した特性になることが分かる。
【0084】
(送信対象の電磁波が中間周波数の電磁波である場合における放射器100の送信特性)
次に、図7を用いて、送信対象の電磁波が中間周波数の電磁波である場合における放射器100の送信特性について説明する。
【0085】
図7は、送信対象の電磁波が中間周波数の電磁波である場合における放射器100の送信特性を示す説明図である。図7は、放射器100からみた角度を横軸に示し、当該角度への電磁波の送信利得(相対値:dB)を縦軸に示した送信特性のグラフである。なお、ここでは、放射器100からみて、−20度〜20度の範囲に、反射板Mが存在するとする。
【0086】
ここで、開口長Lが長い場合には、反射板Mが存在する−20度〜20度の範囲の一部にしかメインローブ内の−10[dB]以上の強い電磁波を放射できていないことが分かる。また、開口長Lが短い場合には、反射板Mが存在しない−45度〜−20度および20度〜45度の範囲にも、メインローブの電磁波を放射してしまっていることが分かる。一方、開口長Lが中程度の場合には、反射板Mが存在する−20度〜20度の範囲にメインローブ内の−10dB以上の強い電磁波を放射し、かつ、反射板Mが存在しない−45度〜−20度および20度〜45度の範囲には、ほとんどメインローブの電磁波を放射していないことが分かる。
【0087】
以上のように、中間周波数の電磁波の送信の際には開口長Lを中程度にすることで、放射器100の送信特性が中間周波数の電磁波の送信に適した特性になることが分かる。また、放射器100の送信特性と受信特性とには可逆性があるため、図7に示した角度における電磁波の送信利得(相対値:dB)の値は、そのまま当該角度における受信利得(相対値:dB)の値になる。中間周波数の電磁波の受信の際には開口長Lを中程度にすることで、放射器100の受信特性が中間周波数の電磁波の受信に適した特性になることが分かる。
【0088】
(送信対象の電磁波が高周波数の電磁波である場合における放射器100の送信特性)
次に、図8を用いて、送信対象の電磁波が高周波数の電磁波である場合における放射器100の送信特性について説明する。
【0089】
図8は、送信対象の電磁波が高周波数の電磁波である場合における放射器100の送信特性を示す説明図である。図8は、放射器100からみた角度を横軸に示し、当該角度への電磁波の送信利得(相対値:dB)を縦軸に示した送信特性のグラフである。なお、ここでは、放射器100からみて、−20度〜20度の範囲に、反射板Mが存在するとする。
【0090】
ここで、開口長Lが長い場合および開口長Lが中程度の場合には、反射板Mが存在する−20度〜20度の範囲の一部にしかメインローブの電磁波を放射できていないことが分かる。また、反射板Mが存在する−20度〜20度の範囲に、サイドローブの電磁波を放射してしまっていることが分かる。一方、開口長Lが短い場合には、反射板Mが存在する−20度〜20度の範囲にメインローブ内の−10[dB]以上の強い電磁波を放射し、かつ、反射板Mが存在しない−45度〜−20度および20度〜45度の範囲には、ほとんどメインローブの電磁波を放射していないことが分かる。
【0091】
以上のように、高周波数の電磁波の送信の際には開口長Lを短くすることで、放射器100の送信特性が高周波数の電磁波の送信に適した特性になることが分かる。また、放射器100の送信特性と受信特性とには可逆性があるため、図8に示した角度における電磁波の送信利得(相対値:dB)の値は、そのまま当該角度における受信利得(相対値:dB)の値になる。高周波数の電磁波の受信の際には開口長Lを短くすることで、放射器100の受信特性が高周波数の電磁波の受信に適した特性になることが分かる。
【0092】
図6〜図8を用いて示したように、通信装置200は、送受信の対象になる電磁波の周波数に応じて開口長Lを変化させることで、放射器100を広帯域な周波数に対して適した指向特性(送信特性および受信特性)に設定することができる。そのため、通信装置200は、広帯域な周波数に対しても効率よく送受信をおこなうことができる。
【0093】
(開口長変化処理の処理内容)
次に、図9を用いて、通信装置200による開口長変化処理の処理内容について説明する。
【0094】
図9は、通信装置200による開口長変化処理の処理内容の詳細を示すフローチャートである。まず、プロセッサ201は、送受信の対象になる電磁波の周波数が入力されたか否かを判定する(ステップS901)。ここで、周波数が入力されていない場合(ステップS901:No)、プロセッサ201は、ステップS901に戻り、周波数の入力を待つ。
【0095】
一方、周波数が入力された場合(ステップS901:Yes)、プロセッサ201は、スイッチ切替DB220から、入力された周波数に対応する各スイッチ208(a,b,c)の状態を抽出する(ステップS902)。次に、プロセッサ201は、抽出した各スイッチ208(a,b,c)の状態を駆動回路209に送信する(ステップS903)。
【0096】
そして、駆動回路209は、各スイッチ208(a,b,c)を切り替える(ステップS904)。これにより、電磁波の送受信に使用する素子アンテナEを選択することで、放射器100の開口長Lを変化させることができる。
【0097】
以上説明したように、通信装置200は、送信の対象になる電磁波の周波数に応じて開口長Lを変化させることにより、反射板Mに対して効率よく電磁波を放射することができる。具体的には、通信装置200は、送信の対象になる電磁波の周波数が低いほどより開口長Lを長くすることで、周波数に依存して広がったメインローブのビーム幅が狭まるように、放射器100の送信特性を調整し、反射板Mからメインローブの電磁波が漏れないようにして送信の効率化を図ることができる。
【0098】
また、通信装置200は、受信の対象になる電磁波の周波数に応じて開口長Lを変化させることで、反射板Mから効率よく電磁波を受信することができるようになる。具体的には、通信装置200は、受信の対象になる電磁波の周波数が低いほどより開口長Lを長くすることで、反射板Mの後ろから入り込んだ電磁波がメインローブの範囲に入らないように、放射器100の受信特性を調整し、受信の効率化を図ることができる。
【0099】
これにより、通信装置200は、広帯域な周波数の電磁波に対して、効率よく反射板Mを介した電磁波の送受信をおこなうことができる。結果として、広帯域の周波数に対応するために、帯域ごとに装置を用意しなくてもよくなり、複数台の装置を用意するためのコストを削減することができる。また、複数台の装置を用意しなくてよいので、通信システムが巨大にならずに済む。
【0100】
また、通信装置200は、放射器100の概ね10dBビーム幅のメインローブが反射板Mに照射される特性の開口長Lにすることで、放射器100のサイドローブの電磁波が反射板Mに入射することによる送信の効率の低下を防止できる。また、通信装置200は、放射器100の概ね10dBビーム幅のメインローブの範囲のみで反射板Mから反射した電磁波を受信することで、受信の効率の低下を防止することができる。
【0101】
なお、本実施の形態で説明した通信方法は、予め用意された通信プログラムをパーソナル・コンピュータやワークステーション等のコンピュータで実行することにより実現することができる。本通信プログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行される。また本通信プログラムは、インターネット等のネットワークを介して配布してもよい。
【0102】
上述した実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0103】
(付記1)反射板を介して電磁波を送信する素子群と、
前記電磁波を前記反射板の反射領域内で反射させる、入力周波数に応じた開口長の素子集合を、前記素子群の中から選択する選択手段と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【0104】
(付記2)反射板を介して電磁波を受信する素子群と、
前記反射板から反射してくる電磁波を受信する、入力周波数に応じた開口長の素子集合を、前記素子群の中から選択する選択手段と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【0105】
(付記3)前記選択手段は、
前記入力周波数が低いほど前記開口長が長い素子集合を選択することを特徴とする付記1または2に記載の通信装置。
【0106】
(付記4)前記選択手段は、
前記素子集合内の素子数を増加させることで前記開口長が長い素子集合を選択することを特徴とする付記3に記載の通信装置。
【0107】
(付記5)前記入力周波数に応じて前記開口長が異なる複数の素子集合を特定する情報を記憶する記憶手段を備え、
前記選択手段は、
前記記憶手段を参照することにより、前記開口長が異なる複数の素子集合の中から前記入力周波数に応じた素子集合を選択することを特徴とする付記1〜4のいずれか一つに記載の通信装置。
【0108】
(付記6)前記素子集合は、前記素子集合から前記反射板の前記反射領域が存在する方向にはスピルオーバーが少ない特性であることを特徴とする付記1〜5のいずれか一つに記載の通信装置。
【0109】
(付記7)反射板を介して電磁波を送信する素子群を有する通信装置が、
前記電磁波を前記反射板の反射領域内で反射させる、入力周波数に応じた開口長の素子集合を、前記素子群の中から選択する、ことを特徴とする通信方法。
【0110】
(付記8)反射板を介して電磁波を受信する素子群を有する通信装置が、
前記反射板から反射してくる電磁波を受信する、入力周波数に応じた開口長の素子集合を、前記素子群の中から選択する、ことを特徴とする通信方法。
【符号の説明】
【0111】
100 放射器(素子アンテナ群)
E 素子アンテナ
200 通信装置
M 反射板
501 素子群
502 選択部
504 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射板を介して電磁波を送信する素子群と、
前記電磁波を前記反射板の反射領域内で反射させる、入力周波数に応じた開口長の素子集合を、前記素子群の中から選択する選択手段と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
反射板を介して電磁波を受信する素子群と、
前記反射板から反射してくる電磁波を受信する、入力周波数に応じた開口長の素子集合を、前記素子群の中から選択する選択手段と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項3】
前記選択手段は、
前記入力周波数が低いほど前記開口長が長い素子集合を選択することを特徴とする付記1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記素子集合は、前記素子集合から前記反射板の前記反射領域が存在する方向にはスピルオーバーが少ない特性であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の通信装置。
【請求項5】
反射板を介して電磁波を送信する素子群を有する通信装置が、
前記電磁波を前記反射板の反射領域内で反射させる、入力周波数に応じた開口長の素子集合を、前記素子群の中から選択することを特徴とする通信方法。
【請求項6】
反射板を介して電磁波を受信する素子群を有する通信装置が、
前記反射板から反射してくる電磁波を受信する、入力周波数に応じた開口長の素子集合を、前記素子群の中から選択することを特徴とする通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図3−4】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−26802(P2013−26802A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159356(P2011−159356)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】