説明

通信装置、通信制御方法

【課題】近距離無線通信を行う機器においてユーザーの利便性を維持しつつ、不必要な通信が行われることを防止し、また接続待受けにかかる電力を削減する。
【解決手段】通常は、近距離無線通信部による接続待受け電波の発生を、粗状態又は停止状態としておく。そして加速度センサーを備えるようにし、加速度センサーからの加速度検出信号によって認識される加速度変動情報から、筐体が外部通信機器と近接されたか否かを推定する。その推定結果から通信機会と判定した場合には、一定時間、近距離無線通信部から接続待受け電波を密状態で発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は近距離無線通信を行う通信装置、及びその通信制御方法に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2011−29892
【特許文献2】特開2010−199918
【特許文献3】特開2008−154004
【背景技術】
【0003】
例えばブルートゥース(Bluetooth)やトランスファージェット(TransferJet)等の近距離無線通信技術が知られている。
近距離無線通信では、無線通信が可能な通信相手を検出するために、検出用の電波を発信する必要がある。
【0004】
上記特許文献1では、近距離無線通信の一例としてのトランスファージェットについての記載がなされている。当該説明においては、通信相手機器を検出するための電波をポーリング信号と称し、通信を行う一方の機器がポーリング信号を発信し、そのポーリング信号に応じて他方の機器から応答信号を返信する動作が記載されている。このポーリングは、通信を行う両機器間でデータの送受信を開始する際に互いの準備状況を判断したり、処理の同期を取るために行われる。また、ポーリング信号は、所定のポーリング周期で間欠的に発信される。
【0005】
すなわち、近距離無線通信においては、通信相手を検出するために電波信号(本明細書では「待受け電波」と称する)を周期的に発信するということが行われる。これは、当該通信機器を通信相手に近接することで自動的に通信相手を検出し、通信を開始させることを意図したものであり、近距離無線通信に特有の直感的な操作感を実現するための技術である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、この通信相手の検出方式においては、以下のような問題がある。
第一に、上記の検出方式においては、通信相手と近接させることで自動的に通信相手を検出し、通信を開始させることでユーザーの利便性を高めているが、逆にユーザーが無線通信を実行する意思が無いにも関わらず、無線通信機器が近傍に存在することで通信相手を検出してしまう場合、ユーザーの意図に反して通信が開始されてしまう。
ユーザーの意図に関わらず通信が開始されてしまうことにより、意図せずデータが流出したり、消費電力の増大につながる。
【0007】
第二に、上記の検出方式においては、ユーザーが無線通信を実行する意思が無い場合でも、待受け電波を定常的に発信し続けることで、不必要な電力を消費してしまう。
【0008】
なお、周期的に電波信号を発信することによる電力消費を抑える手法として、以下に示す例がある。
まず特許文献2では、無線通信機器に加速度検出手段を備え、ユーザーの動作による加速度が検出される場合は、通信手段を動作するように制御する方式について述べられている。具体的には、加速度検出手段(例えば加速度センサー)によりユーザーの歩行等による加速度が検出された場合に通信処理を動作させ、加速度が検出されない場合には通信処理を停止するとしている。
ところがこの技術の場合、ユーザーの動作による加速度センサーの反応を見て通信処理の開始及び停止をしているので、ユーザーが通信を開始する意図のない場合でも、無線通信機器が加速度を検出した場合には通信を開始しようとしてしまう。例えば、ユーザーが無線通信機器を持ち歩いているような場合でも、通信を開始しようとすると考えられる。その結果、意図しない通信の開始が行われたり、不必要な電力消費がされる恐れがある。
【0009】
また特許文献3では、無線通信機器に加速度検出手段を備え、近接した無線通信機器同士に対して加えられた所定の振動運動の検知をトリガとして、通信機器間での通信を行うための機能を呼び出すようにする方式について述べられている。
具体的には、まず無線通信機器同士を近接させ、さらにそれらを、ユーザー同士が握手をするが如く所定の周期で振動させるという2ステップの動作をさせることが必要であり、各々の通信機器において所定の振動動作を検出して通信を開始させるとしている。
この技術においては、ユーザーが通信を開始するにあたり2種類の操作を要求しており、後者の操作は明らかに通信機器に特化した特有の操作であるので、ユーザーは事前にこれを認識した上での操作となる。つまり、近接するだけで通信を開始することの利便性が損なわれている。
【0010】
そこで本開示では、近距離無線通信を行う機器においてユーザーの利便性を維持しつつ、不必要な通信が行われることを防止し、また接続待受けにかかる電力を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の通信装置は、外部通信機器との間で近距離無線通信を行う近距離無線通信部と、筐体の移動による加速度を検出する加速度センサーと、上記加速度センサーからの加速度検出信号によって認識される加速度変動情報から、筐体が外部通信機器と近接されたか否かを推定し、該推定結果を用いた通信機会判定を行い、通信機会と判定した場合に、上記近距離無線通信部に、待受け電波を密状態で発生させるように制御するとともに、上記通信機会と判定した場合以外は、上記近距離無線通信部による待受け電波の発生を、粗状態又は停止状態に制御する制御部とを備える。
また上記制御部は、上記通信機会との判定により、上記近距離無線通信部に待受け電波を密状態で発生させるように制御した場合において、外部通信機器との通信が確立されずに所定時間経過した場合は、上記近距離無線通信部による待受け電波の発生を、粗状態又は停止状態に制御する。
【0012】
本開示の通信制御方法は、外部通信機器との間で近距離無線通信を行う近距離無線通信部と、筐体の移動による加速度を検出する加速度センサーとを備えた通信装置の通信制御方法として、上記加速度センサーからの加速度検出信号によって認識される加速度変動情報から、筐体が外部通信機器と近接されたか否かを推定し、該推定結果を用いた通信機会判定を行うとともに、通信機会と判定した場合には、上記近距離無線通信部から待受け電波を密状態で発生させ、上記通信機会と判定した場合以外は、上記近距離無線通信部による待受け電波の発生を、粗状態又は停止状態とする通信制御方法。
【0013】
このような本開示では、通信装置筐体の移動に応じて加速度センサーによる加速度変動情報として、筐体が外部通信機器と近接されたか否かを推定して通信機会か否かを判定する。即ちユーザーが、通信装置筐体を通信相手の外部通信機器に近接させる操作を行った際に観測される加速度変動によって、近接状態を判定する。これによってユーザーの意思により通信機会となったことを、比較的高い確度で推定し、それに応じて待受け電波を密状態とすることで、通信開始の用意ができる。
一方、通常時は待受け電波を粗状態又は停止としておくことで、無駄な待受け電波の発生を控える。
なお待受け電波を密状態とするのは所定の時間のみとしておくことで、外部通信機器との近接状態ではなかったとしても、早期に密状態を止め、電力消費を抑えることができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、近距離無線通信を行う通信装置において、ユーザーが当該通信機器により通信を開始する意思がない場合に、通信接続してしまう事態を抑え、且つ、接続待受けにかかる電力を削減できる。また、特にユーザーに特別な操作負担をかけるものでもないため、ユーザーの利便性を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本開示の実施の形態のデジタルスチルカメラの外観の説明図である。
【図2】実施の形態のデジタルスチルカメラの内部構成のブロック図である。
【図3】実施の形態の近接操作の説明図である。
【図4】実施の形態の近接操作の際の加速度変動を示す波形の説明図である。
【図5】第1の実施の形態の通信制御処理のフローチャートである。
【図6】ポーリング周期と消費電力の説明図である。
【図7】実施の形態で検出する加速度方向の説明図である。
【図8】実施の形態で検出する加速度方向の説明図である。
【図9】実施の形態で検出する加速度方向の説明図である。
【図10】第2の実施の形態の通信制御処理のフローチャートである。
【図11】実施の形態で検出する加速度方向の説明図である。
【図12】第3の実施の形態の通信制御処理のフローチャートである。
【図13】第4の実施の形態の通信制御処理のフローチャートである。
【図14】本開示の通信装置の要部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施の形態を次の順序で説明する。なお実施の形態では、通信装置の例として、外部通信機器と近距離無線通信を行うデジタルスチルカメラ(以下、「DSC」という)を挙げて説明する。

<1.DSC(デジタルスチルカメラ)の構成>
<2.第1の実施の形態の通信制御処理>
<3.第2の実施の形態の通信制御処理>
<4.第3の実施の形態の通信制御処理>
<5.第4の実施の形態の通信制御処理>
<6.変形例>
【0017】
<1.DSC(デジタルスチルカメラ)の構成>

本開示の通信装置の実施の形態としてのDSCの構成を説明する。
図1Aは実施の形態のDSC1の正面側の外観を示す斜視図、図1BはそのDSC1の背面側(操作面側)の外観を示す背面図である。
【0018】
DSC1は、図1Aに示すように、例えば正面の下部に、近距離無線通信アンテナ2を有する。本例ではDSC1が近距離無線通信アンテナ2を具備しているが、近距離無線通信アンテナ2を含む通信モジュール(後述する近距離無線通信コントローラ10や通信用の記憶領域などを含むモジュール)がDSC1から取り外し可能なものであっても良い。
【0019】
またDSC1は、図1Bに示すように、背面に、LCD(Liquid Crystal Display)や有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等のディスプレイデバイスによる表示部3を有する。
また各部に操作入力部4としての操作子を有する。操作子としては、再生メニュー起動ボタン41、決定ボタン42、十字キー43、キャンセルボタン44、ズームキー45、スライドキー46、シャッターボタン47等が設けられる。
【0020】
図2はDSC1の内部構成と、他の電子機器(無線通信機器50)との近距離無線を用いた接続の様子を示すブロック図である。
図示するように、DSC1と、外部の無線通信機器5とは、近距離無線通信を用いて互いに接続・通信する事ができる。近距離無線通信の実施形態として例えばブルートゥースやトランスファージェットが挙げられるが、これら以外の近距離無線通信が用いられても一向に構わない。
【0021】
DSC1は、図1に示した近距離無線通信アンテナ2、表示部3、操作入力部4に加え、撮像部5、撮像信号処理部6、CPU(Central Processing Unit)7、メインメモリ8、記憶領域9、近距離無線通信コントローラ10、フラッシュメモリ11、加速度センサー20を有する。また各部は、それぞれシステムバス14を介して、内部的に相互に制御信号や撮像画像データ等の送受信が行われる。
上述のように、近距離無線通信アンテナ2、記憶領域9、近距離無線通信コントローラ10は、DSC1に備えつけのものではなく、着脱可能なモジュールとしてまとめられていてもよい。
【0022】
撮像部5は、被写体光を受光し電気信号に変換する撮像素子、被写体からの光を撮像素子に集光するためのレンズ系、レンズを移動させてフォーカス合わせやズーミングを行うための駆動機構、絞り機構などを有している。
撮像部5内のこれらの駆動機構は、全体の制御部であるCPU7からの制御信号に応じて駆動される。
撮像素子は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)型、CMOS(Complementary Metal OxideSemiconductor)型などの撮像素子とされる。
【0023】
撮像信号処理部6は、撮像部5の撮像素子で得られた電気信号についてA/D変換、ISOゲイン調整、その他の各種信号処理を行い、撮像画像信号を生成する。
さらに撮像信号処理部6は、撮像画像信号について圧縮処理等を行って静止画や動画としての画像ファイルとしたり、表示部3で表示させるスルー画として表示部3に転送する等の処理を行う。
【0024】
表示部3は、CPU7からの制御信号に応じて、たとえば被写体の撮像前の画像(スルー画)や、撮像した静止画像ファイルまたは動画像ファイル等のコンテンツや、操作用のメニュー(GUI;Graphical User Interface)などを表示する。
【0025】
操作入力部4は、ユーザーの操作を入力する入力手段として機能し、当該入力された操作に応じた信号をCPU7等へ送る。
なお、図1では操作入力部4として各種操作子を示したが、操作入力部4として表示部3と一体になったタッチパネルを設けても良い。
【0026】
メインメモリ8は、例えばRAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリからなり、CPU7の各種データ処理の際の作業領域として、データやプログラム等を一時的に格納する。例えば、シャッターボタン47が押されたタイミングで撮像信号処理部で処理された画像データは、一旦メインメモリ8に読み出され、その後、記憶領域9に書き込まれる。
【0027】
フラッシュメモリ11(不揮発性メモリ)は、CPU7が各部を制御するためのOS(Operating System)や、画像ファイル等のコンテンツファイルの他、近距離無線通信を用いた通信に必要なアプリケーション等を記憶する。
【0028】
記録領域9は、例えば不揮発性メモリ等からなり、画像ファイル等のコンテンツファイル、その画像ファイルの属性情報及びサムネイル画像等を記憶する記憶手段として機能する。画像ファイルは、例えばJPEG(Joint Photographic Experts Group)、TIFF(Tagged Image File Format)、GIF(Graphics Interchange Format)等の形式で記憶される。
記録領域メディア9は、DSC1に着脱できるメモリカードの形態でもよいし、DSC1に内蔵されている形態としてもよい。例えば記録領域メディア9は、可搬型のフラッシュメモリやHDD(Hard Disk Drive)などとして実現される。
【0029】
近距離無線通信アンテナ2は、他の電子機器等から発せられた無線電波を受信し、信号に変換する。また待受け電波や他の電子機器へのデータ送信のための無線電波送信を行う。
近距離無線通信コントローラ10は、CPU7と協働して、近距離無線通信アンテナ2による、近距離無線通信の接続プロトコルに基づく信号の送受信を制御する。
【0030】
加速度センサー20は、DSC1の物理的な移動による筐体の加速度量と加速度の方向を検出し、検出信号に変換することができ、例えばCPU7が検出信号の値を読むことが可能であり、さまざまな用途で検出信号の値を利用できるものとする。
【0031】
CPU7は、例えばフラッシュメモリ11等に記憶されたプログラムを実行することで、このDSC1全体を統括的に制御する。
例えばCPU7は、ユーザーの操作に応じた撮像動作や撮像した画像ファイルの再生動作、さらに外部機器との近距離無線通信動作等について、必要各部の動作を制御する。
システムバス14は、CPU7などの各ブロックを相互に接続し、それぞれのブロック間での信号の授受を可能とする。
【0032】
この図2では、DSC1内に音声出力部11を示している。これは、後述する第3,第4の実施の形態において、ユーザーに対する音声による告知(電子音やメッセージ音声出力)を行うようにする場合に設けられるものである。音声出力部11は、CPU7の制御に基づいて、メッセージ音声や電子音を出力する。
なおユーザーに対する告知は、表示部3におけるメッセージ表示としても実行できる。第3,第4の実施の形態において、表示による告知のみを実行する場合は、音声出力部11は設けられなくても良い。
【0033】
DSC1との間で近距離無線通信を行う無線通信機器50は、近距離無線通信アンテナ51と、たとえば、CPU、ROM、RAM、表示部、操作入力部等の、図示しない、情報処理が可能な構成要素を有する。
無線通信機器5が受信した信号は近距離無線通信アンテナ51等を介して、変換され、CPUによる演算処理等が行われる。これらにより無線通信機器50は、近距離無線通信によって後述の待受け状態であるDSC1と接続され、通信を確立できる。通信が確立された状態では、DSC1は、DSC1内に含まれるコンテンツファイル等を無線通信機器5へ送信する事が可能となる。
【0034】
<2.第1の実施の形態の通信制御処理>

DSC1による近距離無線通信動作について第1の実施の形態としての通信制御処理を説明する。
【0035】
図3にはDSC1と無線通信機器50を模式的に示している。ここでは無線通信機器50は、DSC1を上部に置くことが可能な機器とし、DSC1が置かれた状態で、DSC1と無線通信機器50の間の近距離無線通信が実行されるものとしている。
また図では、DSC1においては、近距離無線通信アンテナ2の筐体内での配置位置をアンテナ位置2Pとし、さらに無線通信機器50における近距離無線通信アンテナ51の配置位置を、アンテナ位置51Pとして示している。
近距離無線通信においては、機器どうしが近接する必要があるが、より具体的にはアンテナどうしが近接する必要がある。
【0036】
なお、図3に示す無線通信機器50は、例えばパーソナルコンピュータ、画像編集装置、画像保存装置、その他の情報処理機器、画像処理機器などに接続され、DSC1から送信されてきたコンテンツファイル等を、それらの機器に転送できるものとしている。もちろん無線通信機器50が、タブレット型パーソナルコンピュータなどであって、それ自体がコンテンツファイル等の転送先となるものであってもよい。
【0037】
ユーザーがDSC1を通信相手の無線通信機器50と通信させる場合、DSC1は図3に示すように、無線通信機器5の上に置かれ、無線通信機器5と近接することにより通信が開始される。
近距離無線通信においては通信機器同士は近接していなければ通信が維持できないので、ユーザーがDSC1を保持し続けるとは考えにくく、図示のように無線通信機器50の上に置かれて通信が開始されるという使われ方が一般的である。
以下、ユーザーが手に持ったDSC1を無線通信機器50の上に置いて通信させる操作を「近接操作」と呼ぶ。
【0038】
ユーザーによる近接操作によりDSC1が図3に示す筐体の移動をした場合、DSC1内の加速度センサー20からの検出信号波形は、図4に示すように特定の形状を示す。図4においては、時間軸TM0の時点より、ユーザーが近接操作を開始したとし、その場合の速度の変化Vと、加速度の変化AVを示している。
【0039】
近接操作の開始時には、DSC1が停止した状態から移動を開始するため速度が増加するため、加速度として正の値が検出される。
その後、無線通信機器50に向かって筐体の移動中、速度が一定とすると、加速度は略0の値を示すが、無線通信機器5の上にDSC1が置かれると急激に速度が0となるため、加速度が負の値を検出する。
即ちユーザーが近接操作を実行した場合は、DSC1の加速度センサー20は、図4に示す如くの加速度の値を検出するので、DSC1のCPU7は、この検出信号波形として観測できる加速度変動情報から、DSC1の筐体が近接操作されたことを知ることができる。
【0040】
本実施の形態においては、DSC1は、通常時は待受け電波の発生を、粗状態又は停止状態としている。通常時とは、DSC1が電源オン状態であるが、特に近距離無線通信を実行するとは判断していない期間である。そしてDSC1は、無線通信機器50に対する近接操作がなされたと判別すると、一定時間、近距離無線通信における待受け電波を密状態で発生する。さらにその後、通信が確立されないまま一定時間が経過すると、待受け電波を疎状態又は停止状態とする。
【0041】
なお、待受け電波を粗状態とするとは、待受け電波を発信する周期間隔(ポーリング周期)を長くすることを意味している。
図6Aには、待受け電波を発生するポーリング周期の例を示しているが、密状態とは、ポーリング周期Pが短い場合、粗状態とはポーリング周期Pが長い場合をいう。
密状態は、通信相手を検出しやすい。一方、粗状態は通信相手の検出がされにくい状態であるが、完全に検出を止めることにはならない。
停止状態とは、待受け電波の発生を完全に停止した状態であり、この場合は、通信相手の検出が行われない。
実施の形態の動作としては、通常時等に、待受け電波の発生を粗状態とするか停止状態とするかはどちらでもよく、機能が搭載される機器の特性や性格に応じて設定されるべきものである。
また、密状態と粗状態における具体的なポーリング周期Pの値も、機器の特性や性格に応じて設定されるべきである。以下で述べる密状態、粗状態とは、本例のDSC1として、ポーリング周期Pを短くする状態と、長くする状態とを示すものであり、具体的な周期の値が限定されるものではない。
【0042】
DSC1が近接操作によって生ずる加速度変動を判別し、待受け電波の制御を行う具体的な処理例について、図5に示すフローチャートで説明する。
尚、図5に示すフローチャートはCPU7によって実行されるプログラムに基づくCPU7の制御処理として説明するが、同様の処理がハードウエアで実施されてもよいし、ハードウエアとソフトウエアの両方で実施されてもよい。
【0043】
DSC1が電源オンとされている場合、CPU7は、ステップF100として通常時の待受け電波の制御を行う。即ちCPU7は、近距離無線通信コントローラ10に対し、待受け電波の発生について、停止状態又は粗状態を指示する。近距離無線通信コントローラ10は、これに応じて待受け電波を停止状態或いは粗状態とする。
【0044】
CPU7は、ステップF101として、加速度センサー20からの加速度の検出信号(加速度測定値)を取得し、加速度の値が一定の閾値thA以上であるかどうかを監視する。なお、図4に閾値thAと、後述する閾値thBの一例を示している。
加速度センサー20の検出値の取得方法は、一定間隔でCPU7から加速度センサー20の値を取得する形態でもよいし、加速度センサー20から割り込み等によって値を通知する方法でもよい。
加速度測定値が閾値thAを超えない場合は、同様の監視を続ける。
【0045】
ステップF101での監視処理において、加速度測定値が閾値thAを超えた場合、CPU7はステップF102に進む。この場合、CPU7はタイマー値Taを限度として、タイムカウントを開始する。
尚、タイマーは、CPU7に機能として含まれる場合もあり、CPU7以外のブロックとして実現される場合もあるが、そのどちらでも構わない。
【0046】
タイムカウントを開始した後は、CPU7は引き続き加速度センサー20の加速度測定値を取得しながら、ステップF103,F104の監視処理を続ける。
ステップF103では、タイムカウントがタイマー値Taに達したかを監視する。またステップF104では、加速度測定値として、一定の閾値thB以下の値が得られたか否かを監視する。
CPU7は、タイムカウントがタイマー値Taに達した場合は、ステップF103からF101の監視処理に戻る。
またCPU7は、ステップF104で、加速度測定値が閾値B以下となったことを検知した場合は、この時点で、近接操作されたと推定し、これにより通信機会となったと判定する。
【0047】
ここまでのステップF101〜F104は、加速度変動として、筐体の移動速度上昇に応じた正方向加速度と、筐体の移動停止に至る負方向加速度が所定時間(Ta)内に生じた場合に、DSC1の筐体が無線通信機器50と近接され、通信機会に至ったと判定するものである。
即ち図4に示す所定時間(タイマー値Ta)内に、近接操作の開始時における速度増加に応じた、正の加速度測定値が検出され、さらに無線通信機器5の上にDSC1が置かれて急激に速度が0となるときの負の加速度測定値が検出されることで、図4に示す波形形状を判別し、近接操作と推定する。
一方、一旦正の加速度が検出されても、以降、タイマー値Taに至るまで、負の加速度が検出されなかった場合は、そのときのDSC1の筐体の動きは、近接操作ではないとして、ステップF101に戻ることになる。
【0048】
近接操作と判定されてステップF105に進んだ場合、CPU7はタイマー値Tbを限度として、新たにタイムカウントを開始する。
さらにCPU7は、近距離無線通信コントローラ10に、密状態での待受け電波の発生を指示する。近距離無線通信コントローラ10は、これに応じて近距離無線通信アンテナ2からポーリング周期を短くして待受け電波を発生させる動作を行う。
その状態で、近距離無線通信コントローラ10は、相手先の無線通信機器50との通信接続を試行することになる。
【0049】
CPU7は、ステップF106でタイムカウントがタイマー値Tbに達したかを監視する。またステップF107で、通信相手の機器が検出されたか否かを監視する。
つまりタイマー値Tbは、密状態での待受け電波を発しながらの、通信先の検出期間の上限時間を規定するものとなる。
CPU7はステップF107で通信相手機器を検出した場合は、ステップF108に進み、近距離無線通信コントローラ10を制御して、無線通信を開始させる。
一方、通信相手機器が検出されないままタイムカウントがタイマー値Tbに達したら、CPU7はステップF106からF109に進み、近距離無線通信コントローラ10に対し、待受け電波の発生について、停止状態又は粗状態を指示する。近距離無線通信コントローラ10は、これに応じて待受け電波を停止状態或いは粗状態とする。そしてCPU7はステップF101の監視処理に戻る。
【0050】
以上の図5の処理は、次の特徴を有している。
・CPU7は、通常時は待受け電波を粗状態又は停止状態に制御する。
・CPU7は、加速度センサー20からの加速度検出信号(加速度測定値)によって認識される加速度変動から、DSC1の筐体が無線通信機器50等と近接される近接操作が行われたか否かを推定し、近接操作と判定した場合に、通信機会と判定する。
・通信機会と判定したら、CPU7は待受け電波を密状態に制御する。
・待受け電波を密状態とするのは、所定時間(タイマー値Tb)のみとし、その間に通信確立できなければ、待受け電波を粗状態又は停止状態とする通常の状態に戻す。
【0051】
このような第1の実施の形態では、次のような効果が得られる。
先にポーリング周期Pについて図6Aで説明したが、密状態では通信相手を検出しやすくなるが、粗状態では通信相手を検出しにくい。停止状態では通信相手は検出されない。
一方、消費電力とポーリング周期の関係を図6Bに示しているが、ポーリング周期Pが短い密状態になるほど待受けに係る消費電力は増加する。粗状態では消費電力はわずかとなり、停止状態では待受け電波に係る電力消費はない。
【0052】
このことを踏まえて第1の実施の形態の処理を考えると、近接操作を検出して通信機会と判定し、待受け電波を密状態とし、それ以外は粗状態又は停止状態とすることは、ユーザーが近距離無線通信を意図した可能性が高い場合のみ、通信接続の可能性を高くできることとなる。換言すれば、ユーザーが近距離無線通信を意図した可能性が低い場合は、通信接続が行われる可能性を低くでき、これは意図しない通信が行われてしまう状況をなるべく防止するという点で好適となる。
さらに、ユーザーが近距離無線通信を意図した可能性が高い場合のみ、消費電力の大きい密状態とし、それ以外は消費電力の少ない粗状態、もしくは待受け電波に係る消費電力のない停止状態とすることで、待受けに係る電力消費の削減に有効である。
【0053】
また待受け電波を密状態とするのは、所定時間(タイマー値Tb)のみとすることも有効である。加速度測定値からユーザーの近接操作を判定するものであるが、その近接操作は、必ずしも「DSC1が無線通信機器50に載置された動作」であるとは限らない。
例えばユーザーがDSC1を机上等の上に置く動作は、通常の使用において多数回行われる。
ここで一般的な使用状況を考えると、ユーザーがDSC1の使用を終え、机上等に置く場合は、多くの場合は電源オフとしておくため、その場合は上記図5の処理が行われることはない。しかし場合によっては、ユーザーはDSC1の電源をオンとしたまま、机上等に置く場合もある。そのような場合、加速度測定値による判定では、図5とほぼ同様の波形が観測され、通信機会と判定してしまうこともある。すると、通信相手の検出ができないまま密状態で待受け電波を発生することになる。
【0054】
本例では、通信相手の検出ができないまま密状態で待受け電波を発生するのを、タイマー値Tbの時間を限度としているため、単に机上に置かれたような状態で通信相手の検出ができない場合は、いつまでも密状態のままとされることはなく、一定時間後に粗状態又は停止状態に戻る。
即ち本例では、ユーザーが近距離無線通信を意図した可能性が高いと判定して待受け電波を密状態とするが、実際にはユーザが通信を意図していなかったとしても、無駄にいつまでも密状態のままとしておくことはなく、粗状態又は停止状態に戻すようにしている。これによって、ユーザの通信意図という、加速度検出からは完全な判定ができないものであっても、電力消費を必要最低限に抑えることができる。
【0055】
また本例の場合、ユーザーにとっては、DSC1を無線通信機器50の上に置くという近接操作を行えば、無線通信が行われ、例えばコンテンツファイル等を無線通信機器50側に送信できるため、ユーザーに余計な操作負担をかけず、利便性を維持できる。
【0056】
ところで、近接操作時以外について、待受け電波を粗状態とするか、停止状態とするかは、機器に応じて決められれば良いが、それぞれ次のような効果が得られる。
粗状態とする場合は、消費電力削減に関しては停止状態とする場合より不利である。しかし、近接操作と判定していない通常時でも、通信接続の可能性が残されるという利点がある。場合によっては、観測される加速度検出信号の波形が、上記図4とは異なる場合でも、ユーザーが通信意図を持っていることもある。
つまり、ユーザーが、DSC1を無線通信機器50等に近づける操作の際に、CPU7が、それを検出できないということもあり得る。DSC1及び対応する無線通信機器50が、そのような使用態様が考えられる機器である場合、通常は粗状態としておき、すくなくとも通信接続を確立できる可能性を残しておくことが好適となる。
【0057】
一方、通常時は停止状態とすることによれば、消費電力の削減に有利である。さらに停止状態とすることによれば、ユーザーの意図しない通信が行われることの防止効果は高いものとなる。但し、逆に、通信を行いたい場合は、ユーザーに特定の近接操作を要求することになる。
従ってDSC1及び対応する無線通信機器50が、特定の近接操作によってのみ通信を行うものとする場合は、通常時は停止状態とすることが好適となる。
【0058】
<3.第2の実施の形態の通信制御処理>

DSC1による第2の実施の形態の通信制御処理を説明する。
第2の実施の形態においては、加速度センサー20において、図4に示した波形形状の加速度の値を検出するとともに、加速度の3次元の発生方向を検出する。
具体的には、加速度センサー20は、加速度値をスカラー量としての値としてではなく、ベクトル量としての値を検出し、3次元方向の加速度量を検出できるものとする。
【0059】
例えば、上述した図3に示す近接操作をユーザーが行った場合に、近接した瞬間の加速度検出方向は、図7に示すようにDSC1の上部をX軸の正方向としてX軸、Y軸、Z軸方向を定めたとすると、X軸の負方向に加速度(加速度検出方向DET)が検出される。
なお図7(及び後述の図8,図9,図11)において、矢印Uは、DSC1の上面側を示し、矢印BはDSC1の底面側を示している。
近距離無線通信アンテナ2の位置は、位置2Pとして示すように、DSC筐体内で底面側に配置されているとしている。
【0060】
本例においては、加速度の値からなんらかの近接操作が行われたことを検出したときに、同時にそのときの加速度の方向を検出して、どの方向に対して近接操作が行われたかを判断する。これにより、ユーザーが通信開始する意思があるかどうかを、第1の実施の形態の方法よりさらに正確に検出できる。
【0061】
具体例を説明する。
図7の例によると、DSC1が通信相手の無線通信機器50に近接する方向が、DSC1のX軸方向で負方向である。DSC1の近距離無線通信アンテナ2はDSC1底面に存在するため、近接操作時に、無線通信機器5の無線通信アンテナ51(位置51P)と密着することになり、ユーザーは、通信を開始する意思があるものと考えられる。
【0062】
一方、図8の例のように、図7とは上下逆の方向、即ち加速度検出方向DETがX軸方向で正方向となる加速度が検出される場合がある。
この図8の例では、スカラー量としての加速度の波形は近接動作としての波形と同様となる。しかし、無線通信機器50が存在するとすれば、無線通信機器50に近接される方向が、DSC1の近距離無線通信アンテナ2の設置方向(底面側である位置2P)とは逆の上面側である。
通常、ユーザーが明らかにDSC1を上下逆にして通信相手に近接操作するとは考えにくく、ユーザーは通信を開始する意思があった可能性は低いと考えられる。
【0063】
さらに、図9の例のように、DSC1を縦方向に置いたような方向で加速度が検出される場合も考えられる。加速度検出方向DETがY軸方向で正方向となる場合である。
この図9の例でも、スカラー量としての加速度の波形は近接動作としての波形と同様となるが、方向がDSC1の近距離無線通信アンテナ2の設置方向(位置2P)と合わない。通常、ユーザーがDSC1を縦方向に置いて近接操作するとは考えられず、ユーザーは通信を開始する意思があった可能性は低いと考えられる。
【0064】
図7から図9の例で示したように、近距離無線通信機器におけるアンテナの位置により、通信開始が伴う近接操作がされる際の加速度の方向が決定され、近接操作が検出された際の加速度の方向がその方向と一致した場合に、ユーザーが通信開始する意思があると判断できる。
そこで、このような加速度方向情報も加味して、ユーザーが通信開始する意思があると判断された場合は、一定時間、待受け電波を密状態で発信するようにする。それ以外は待受け電波を粗状態もしくは停止状態とする。これにより、ユーザーが意図しない通信を防止し、且つ待受け電波のために消費される電力を削減することが可能になる。
【0065】
第2の実施の形態のCPU7の通信制御処理を図10に示す。
なお図10において、ステップF100〜F104、F105〜F109は図5と同様であるので、重複した説明を省略する。この図10は、図5の各ステップに加えて、ステップF110が追加された処理例となる。
この図10の処理では、CPU7は、まずステップF100〜F104でスカラー量としての加速度の波形で近接操作を判定することになる。そして、スカラー量について近接操作に相当と判断された場合は、CPU7はステップF110で、加速度の方向が、アンテナ設置方向に一致しているか否かを判別する。
【0066】
図7〜図9で述べた例の場合、加速度検出方向DETがX軸の負方向である場合、一致していると判定することとなる。
一方、加速度検出方向DETがX軸の正方向である場合、又はY軸の正方向又は負方向である場合は、加速度の方向が、アンテナ設置方向に一致していないと判定する。
なお、図11で後述するが、加速度検出方向DETがZ軸の正方向又は負方向となる場合もある。DSC1の前面又は背面が無線通信機器50の上面に置かれたような場合である。この場合、通信は可能である場合も多く、またユーザーが通信可能であると考えて、そのように置く場合も想定される。従って、DSC1の近距離無線通信アンテナ2が、図11のような状態で通信可能な配置や性能とされている場合は、加速度検出方向DETがZ軸の正方向又は負方向の場合は、加速度の方向が、アンテナ設置方向に一致していると判断することとしても良い。或いは、その場合は一致していないと判断することとしても良い。Z軸の正方向又は負方向の場合にステップF110の判断をどうするかは、機器の性能、使用状況等に応じて決められれば良い。
【0067】
ステップF110で加速度の方向が、アンテナ設置方向に一致していないと判断した場合は、CPU7はステップF101に戻る。即ちユーザーの通信意思の可能性は低いとして、待受け電波を密状態とすることはしない。
一方、ステップF110で加速度の方向がアンテナ設置方向に一致していると判断した場合は、CPU7はステップF105以降に進む。即ちユーザーの通信意思の可能性は高く通信機会であるとして、待受け電波を密状態とする。ステップF105〜F109の処理は第1の実施の形態と同様である。
【0068】
以上のように第2の実施の形態では、CPU7は、加速度センサー20によって得られた加速度検出信号から、加速度変動情報とともに、加速度が発生した3次元の加速度方向情報も認識する。そして加速度変動情報と加速度方向情報から、筐体が特定の加速度方向の状態で無線通信機器50と近接されたと推定した場合に、通信機会と判定し、一定時間(タイマー値Tbに至る期間)、待受け電波を密状態とする。
【0069】
この第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、ユーザーの利便性を維持しながら、省電力化と、不要な通信の防止効果を得ることができる。特にユーザーの通信意思の判定確度を高めることで、これらの効果を一層向上させることができる。
【0070】
<4.第3の実施の形態の通信制御処理>

DSC1による第3の実施の形態の通信制御処理を説明する。
第3の実施の形態においては、加速度変動情報と加速度方向情報から近接操作が行われたこと及びユーザーの通信開始の意思を推定することは前述の第2の実施の形態と同様である。これに加えて第3の実施の形態では、ユーザーの通信開始の意思があると思われる場合に、DSC1の筐体の置かれ方が適切でないために、アンテナ方向が正しくなっていないことを検出し、アンテナの方向が通信相手の近距離無線通信アンテナと密着できるように置き方を補正するような表示もしくは音声による告知を行うものである。
【0071】
先の図7の例によると、通信相手に近接する方向がDSC1のX軸方向で負方向であり、DSC1の近距離無線通信アンテナ2はDSC1底面に存在するため、近接操作時に、無線通信機器50のアンテナ51と密着することになり、ユーザーは、通信を開始する意思があるものと考えられる。
一方、図11の例のように、DSC1が寝かされたような状態で置かれる場合がある。この例では、スカラー量としての加速度の波形は近接動作としての波形となるが、方向がZ軸の正方向となっており、ユーザーは通信を開始する意思があったものの、通信を開始するにあたっては近距離無線通信アンテナ2の方向が適切とはいえない。
この図11に示す状態では、機器の通信性能にもよるが、通信相手の近距離無線通信アンテナ51と密着しないため、ユーザーが通信する意思があったとしても、電波状態が良好ではないため、接続できない恐れがある。
【0072】
第3の実施の形態では、このような場合に、DSC1が、アンテナの方向が通信相手の近距離無線通信アンテナ51と密着できるように置き方を補正するような表示もしくは音声による告知を行う。これにより、ユーザーにDSC1の姿勢の修正を促し、電波を良好な状態にする可能性を高める。
【0073】
第3の実施の形態のCPU7の通信制御処理を図12に示す。
なお図12において、ステップF100〜F104、F105〜F109は図5と同様の処理であり、またステップF110は図10と同様の処理である。
この図12は、図10の各ステップに加えて、ステップF111、F112が追加された処理例となる。
【0074】
この図12の処理では、CPU7は、まずステップF100〜F104で第1、第2の実施の形態と同様に、スカラー量としての加速度の波形で近接操作を判定することになる。そして、スカラー量について近接操作に相当と判断された場合は、CPU7はステップF110で第2の実施の形態と同様に、加速度の方向が、アンテナ設置方向に一致しているか否かを判別する。
【0075】
但し、この場合のステップF110では、図7で述べた例のように、加速度検出方向DETがX軸の負方向である場合のみ、一致していると判定し、他は一致していないと判定する。
つまりアンテナ方向が一致していないと判定するのは、加速度検出方向DETが、X軸の正方向である場合、又はY軸の正方向又は負方向である場合、又はZ軸の正方向又は負方向となる場合である。
【0076】
アンテナ方向が一致していないと判定した場合は、CPU7はステップF111に進み、加速度の方向が、アンテナ設置方向に対して垂直であるか否かを判定する。アンテナ設置方向に対して垂直であるとは、例えば図11のような場合であり、つまり加速度検出方向DETがZ軸の正方向又は負方向となる場合である。
【0077】
ステップF111で加速度の方向が、アンテナ設置方向に対して垂直ではないと判断した場合、つまり加速度検出方向DETが、X軸の正方向である場合、又はY軸の正方向又は負方向である場合は、CPU7はステップF101に戻る。即ちユーザーの通信意思の可能性は低いとして、待受け電波を密状態とすることはしない。
一方、ステップF111で加速度の方向がアンテナ設置方向に対して垂直と判断した場合は、CPU7はステップF112に進む。そしてCPU7は、ユーザーへのコーション告知を行う。
例えば表示部3において、「無線通信する場合、底面を対向機に密接してください」等の警告メッセージを表示させたり、或いは音声出力部12から同様の警告メッセージ音声を出力させる。或いは音声出力部12から電子音を発生させる。警告メッセージ音声や電子音の出力とともに表示部3での警告メッセージ表示を行うようにしてもよい。
【0078】
このような警告の告知を行ったら、CPU7はステップF105に進む。なお、ステップF110で加速度の方向がアンテナ設置方向に一致していると判断した場合も、CPU7はステップF105以降に進む。
即ちこれらの場合は、ユーザーの通信意思の可能性は高く通信機会であるとして、待受け電波を密状態とする。ステップF105〜F109の処理は第1,第2の実施の形態と同様である。
【0079】
以上のように第3の実施の形態では、CPU7は、加速度変動情報と加速度方向情報から、DSC1の筐体が特定の加速度方向の状態で無線通信機器50等の外部通信機器と近接されたと推定した場合には、DSC1のアンテナ方向と無線通信機器50等との位置関係に応じて、告知出力を実行させる。
特には、DSC1のアンテナ方向と無線通信機器50との位置関係が通信可能ではあるが最適ではない状態で、DSC1の筐体が無線通信機器50と近接されたと推定した場合に、通信機会と判定し、表示部3や音声出力部11から告知出力を実行させるものとなる。
これによって、ユーザーは通信にとって適切な置き方ではないことを知ることができ、通信意思がある場合は、DSC1の置き方を修正することが期待できる。その場合は、無線状態が良い状態で通信できることとなる。
【0080】
<5.第4の実施の形態の通信制御処理>

第4の実施の形態について説明する。第4の実施の形態は、上記第3の実施の形態とほぼ同様であるが、ユーザーがDSC1の置き方を修正した場合に対応する処理を加えたものである。
図13にCPU7の通信制御処理を示すが、ステップF113、F114を加えた以外は図12と同様であるため、ステップF113、F114に関する説明のみを行う。
【0081】
第3の実施の形態で説明したように、DSC1の置き方によっては、ステップF112で警告メッセージの告知を行う場合がある。
その場合も、ステップF105の時点から、タイマー値Tbを限度とする一定期間、待受け電波を密状態とするわけであるが、図11のようにDSC1の置き方が適切でないと、接続確立できない可能性も高い。
このため、ユーザーに告知するわけであるが、ユーザーが、どの時点で対応かは不定である。ユーザーがDSC1の姿勢を直したものの、その時点でタイムカウントがタイマー値Tbに達してしまうようなこともある。例えばステップF109が粗状態ではなく停止状態とする処理であった場合には、ユーザーがDSC1の姿勢を直したにもかかわらず、通信ができないということも生じ得る。
【0082】
そこで本例では、CPU7はステップF105で待受け電波を密状態とし、タイムカウントを開始した後、ステップF113で、加速度変動情報と加速度方向情報から、DSC1の姿勢が修正されたことを監視する。
ここで、通信相手が検出できない状態が続いているときに、ユーザーがステップF112での告知に応じてDSC1の姿勢を修正することがある。DSC1の姿勢が修正され、図11の状態から図7の状態に修正されたことを検知したら、CPU7はステップF114に進み、タイマー値Tbに至るタイムカウントを最初からやり直すようにする。
この処理により、DSC1の姿勢が修正されたときは、その時点から一定期間、待受け電波が密状態となる状態が継続され、通信確立の確度を高めることができる。
【0083】
<6.変形例>

以上、実施の形態について説明してきたが、本開示の通信装置の構成や通信制御処理は実施の形態に限らず、多様な変形例が考えられる。
【0084】
加速度検出値による加速度変動による近接操作の判定については、各実施の形態では、図4の加速度検出波形について、正方向加速度が検出され、その後、負方向加速度が検出されるのが所定時間Ta内であることとした(各通信制御処理のステップF101〜F104)。
近接操作の判定手法は、これに限らず、次の(a)(b)(c)のようにしてもよい。
(a)所定時間Ta内で、正方向加速度が検出された後、加速度0期間を経て負方向加速度が検出された場合に近接操作とする。
(b)所定時間Ta内で、正方向加速度が検出され、その後、負方向加速度が検出される。そして、さらにその後、ある時間、加速度0期間が保たれる(つまり無線通信機器50への載置後の状態が保たれる)ことで近接操作と判定する。
(c)所定時間Ta内で、正方向加速度が検出された後、加速度0期間を経て負方向加速度が検出される。そして、さらにその後、ある時間、加速度0期間が保たれる(つまり無線通信機器50への載置後の状態が保たれる)ことで近接操作と判定する。
【0085】
これらは一例であるが、このように近接操作の判定の手法は多様に考えられる。もちろん、各期間の時間条件、検出期間を制限するウインドウ期間等を設定し、より正確な近接判定を行うこともできる。
また、実際には加速度センサー20から出力される加速度検出値として、近接操作判定にとってノイズとなる成分を適切にフィルタリングすることも当然に想定される。
【0086】
また実施の形態では、近接操作は、DSC1を無線通信機器50の上に「置く」という近接操作に対象とし、これを図4のような加速度測定値の波形から判断するものとしたが、実際の使用状況、機器種別等に応じて、ユーザーの近接操作の動作態様は異なる。
例えば無線通信機器50に相当する相手側の機器が壁面にあり、これにDSC1等に相当する通信装置を近接させるような場合もある。
従って、近接操作の判定は、実際の通信装置の種類、形態、使用状況などを考慮し、それに応じた波形検出で近接判定を行うべきものである。
【0087】
実施の形態では、通信装置の例としてDSC1を挙げたが、もちろんDSC1に限られず、多様な機器において、本開示の通信装置を実現できる。
例えば携帯電話機、ビデオカメラ機器、モバイル端末機器、携帯型ゲーム機器、情報処理装置、携帯型音楽再生機、携帯型テレビジョン受像器、その他各種の機器が考えられる。機器本体の動きによる加速度を検出して判断するという観点からは、ユーザーが手に持つことのできる小型の機器が適しているが、必ずしもそれに限らない。
【0088】
これらの各種の機器を本開示の通信装置100として実現する場合、それらの機器が図14の構成を備えていれば良い。
図14では制御部101、加速度センサー102、近距離無線通信コントローラ103、近距離無線通信アンテナ104を示している。
外部通信機器との間で近距離無線通信を行う近距離無線通信部として、近距離無線通信コントローラ103と近距離無線通信アンテナ104が設けられる。
また筐体の移動による加速度を検出する加速度センサー102が設けられる。
制御部101は、近接判定や、加速度方向判定を行ったり、近距離無線通信コントローラ103に対して待受け動作制御を行う。即ち制御部101は、加速度センサー102からの加速度検出信号によって認識される加速度変動情報から、通信装置100の筐体が外部通信機器50と近接されたか否かを推定し、該推定結果を用いた通信機会判定を行う。そして制御部101は、通信機会と判定した場合に、近距離無線通信部(103,104)に、待受け電波を密状態で発生させるように制御する。また制御部101は、通信機会と判定した場合以外は、近距離無線通信部(103,104)による待受け電波の発生を、粗状態又は停止状態に制御する。
上述の携帯電話機、ビデオカメラ機器、モバイル端末機器等が、その主たる機能のための構成に加え、この図14の構成を備えることで、本開示の通信装置に該当するものとなる。
【0089】
なお本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)外部通信機器との間で近距離無線通信を行う近距離無線通信部と、
筐体の移動による加速度を検出する加速度センサーと、
上記加速度センサーからの加速度検出信号によって認識される加速度変動情報から、筐体が外部通信機器と近接されたか否かを推定し、該推定結果を用いた通信機会判定を行い、通信機会と判定した場合に、上記近距離無線通信部に、待受け電波を密状態で発生させるように制御するとともに、上記通信機会と判定した場合以外は、上記近距離無線通信部による待受け電波の発生を、粗状態又は停止状態に制御する制御部と、
を備えた通信装置。
(2)上記制御部は、
上記通信機会との判定により、上記近距離無線通信部に待受け電波を密状態で発生させるように制御した場合において、外部通信機器との通信が確立されずに所定時間経過した場合は、上記近距離無線通信部による待受け電波の発生を、粗状態又は停止状態に制御する上記(1)に記載の通信装置。
(3)上記制御部は、上記加速度変動情報として、筐体の移動速度上昇に応じた正方向加速度と、筐体の移動停止に至る負方向加速度が所定時間内に生じた場合に、筐体が外部通信機器と近接されたと判定する上記(1)又は(2)に記載の通信装置。
(4)上記制御部は、
上記加速度センサーによって得られた加速度検出信号から、さらに加速度が発生した3次元の加速度方向情報も認識するとともに、
上記加速度変動情報と上記加速度方向情報から、筐体が特定の加速度方向の状態で外部通信機器と近接されたと推定した場合に、上記通信機会と判定する上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の通信装置。
(5)告知出力部をさらに備え、
上記制御部は、
上記加速度変動情報と上記加速度方向情報から、筐体が特定の加速度方向の状態で外部通信機器と近接されたと推定した場合に、上記近距離無線通信部のアンテナ方向と外部通信機器との位置関係に応じて、上記告知出力部から告知出力を実行させる上記(4)に記載の通信装置。
【符号の説明】
【0090】
1 DSC、2,104 近距離無線通信アンテナ、3 表示部、4 操作入力部、5 撮像部、6 撮像信号処理部、7 CPU、8 メインメモリ、9 記憶領域、10,103 近距離無線通信コントローラ、11 フラッシュメモリ、12 音声出力部、20,102 加速度センサー、50 無線通信機器、51 近距離無線通信アンテナ、100 通信装置、101 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部通信機器との間で近距離無線通信を行う近距離無線通信部と、
筐体の移動による加速度を検出する加速度センサーと、
上記加速度センサーからの加速度検出信号によって認識される加速度変動情報から、筐体が外部通信機器と近接されたか否かを推定し、該推定結果を用いた通信機会判定を行い、通信機会と判定した場合に、上記近距離無線通信部に、待受け電波を密状態で発生させるように制御するとともに、上記通信機会と判定した場合以外は、上記近距離無線通信部による待受け電波の発生を、粗状態又は停止状態に制御する制御部と、
を備えた通信装置。
【請求項2】
上記制御部は、
上記通信機会との判定により、上記近距離無線通信部に待受け電波を密状態で発生させるように制御した場合において、外部通信機器との通信が確立されずに所定時間経過した場合は、上記近距離無線通信部による待受け電波の発生を、粗状態又は停止状態に制御する請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
上記制御部は、上記加速度変動情報として、筐体の移動速度上昇に応じた正方向加速度と、筐体の移動停止に至る負方向加速度が所定時間内に生じた場合に、筐体が外部通信機器と近接されたと判定する請求項1に記載の通信装置。
【請求項4】
上記制御部は、
上記加速度センサーによって得られた加速度検出信号から、さらに加速度が発生した3次元の加速度方向情報も認識するとともに、
上記加速度変動情報と上記加速度方向情報から、筐体が特定の加速度方向の状態で外部通信機器と近接されたと推定した場合に、上記通信機会と判定する請求項1に記載の通信装置。
【請求項5】
告知出力部をさらに備え、
上記制御部は、
上記加速度変動情報と上記加速度方向情報から、筐体が特定の加速度方向の状態で外部通信機器と近接されたと推定した場合に、上記近距離無線通信部のアンテナ方向と外部通信機器との位置関係に応じて、上記告知出力部から告知出力を実行させる請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
外部通信機器との間で近距離無線通信を行う近距離無線通信部と、筐体の移動による加速度を検出する加速度センサーとを備えた通信装置の通信制御方法として、
上記加速度センサーからの加速度検出信号によって認識される加速度変動情報から、筐体が外部通信機器と近接されたか否かを推定し、該推定結果を用いた通信機会判定を行うとともに、通信機会と判定した場合には、上記近距離無線通信部から待受け電波を密状態で発生させ、
上記通信機会と判定した場合以外は、上記近距離無線通信部による待受け電波の発生を、粗状態又は停止状態とする通信制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2013−21475(P2013−21475A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152746(P2011−152746)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】