説明

通信装置および通信システム

【課題】電波干渉による通話品質の低下を抑制できる通信装置および通信システムを提供すること。
【解決手段】通話時には、無線LANによる無線通信202を停止することにより、無線LAN送受信部16とDCL送受信部20との間の電波干渉による通話品質の低下を抑制できる。そして、子機60から送られてくるFAX送信データの送信指示を受信すると、BOX10は、無線LAN接続要求をMFP30へ送信し、MFP30との間に無線LANリンクをはる。そして、無線LAN送受信部16による無線通信202により通信可能となったMFP30に対し、FAX送信データを要求する。したがって、ユーザの意思とは無関係にBOX10とMFP30との間の無線通信202が開始されて、電波干渉により通話品質が低下してしまうという事態の発生を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置および通信システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された通信システムは、コードレス電話機能とファクシミリ通信機能とを有する通信BOXと、この通信BOXに無線接続されたコードレス子機と、無線LANによって通信BOXに接続された複合機とを含む。この通信システムにおいて、通信BOXは、複合機から画像データが送られてくると、公衆回線を介しその画像データを外部装置へファクシミリ送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−89041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、通信BOXにおいて、コードレス子機との間の無線通信と、複合機との間の無線通信とが電波干渉する場合があり、その電波干渉が原因で、コードレス子機による通話品質が低下するおそれがあった。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、電波干渉による通話品質の低下を抑制できる通信装置および通信システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために、本発明の通信装置は、子機との間の無線通信によりデータを送受するための第1接続手段と、外部装置へ送信するデータを処理する処理装置との間の無線通信によりデータを送受するための第2接続手段と、通信網との間を接続する第3接続手段と、前記第3接続手段により接続される前記通信網を介した前記外部装置との間の接続状態を制御する通信制御手段とを備えるものであって、前記第2接続手段による前記処理装置との間の無線通信を停止する第2接続停止手段と、前記第2接続停止手段により前記処理装置との間の無線通信を停止した状態において、前記第1接続手段により無線通信可能な子機と、前記通信制御手段により通信可能な接続状態にある前記外部装置との間の通話を中継する中継手段と、前記中継手段により通話が中継される前記子機におけるユーザ操作に基づき、前記子機から送信データの送信指示が送られてくると、前記外部装置との間における通信可能な接続状態を維持しつつ、前記子機と前記外部装置との間の通話の中継を停止し、且つ、前記第2接続停止手段により停止された前記処理装置との間の無線通信を開始する切替手段と、前記切替手段により前記第2接続手段による無線通信が可能となった前記処理装置に対して送信データを要求する要求手段と、前記要求手段による要求に応答した前記処理装置から前記第2接続手段による無線通信で送られてくる前記送信データを受信する受信手段と、前記受信手段により受信した前記送信データを、通信可能な接続状態が維持された前記外部装置へ送信する送信手段とを備える。
【0007】
なお、本発明は、通信装置、該通信装置を制御する通信制御装置、通信方法、通信装置を制御する通信制御プログラム、該通信制御プログラムを記録する記録媒体等の種々の態様で構成することができる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の通信装置によれば、第2接続手段による処理装置との間の無線通信を停止した状態において、第1接続手段により無線通信可能な子機と、通信制御手段により通信可能な接続状態にある外部装置との間の通話が中継されるので、第1接続手段と第2接続手段との間の電波干渉による通話品質の低下を抑制できるという効果がある。また、ユーザにとっては、子機を用いて通話することで相手先の外部装置を認識することができる。そして、その上で子機を操作することにより、通信装置と処理装置との間の無線通信を開始させ、通信装置から通話の相手先の外部装置への送信データの送信を指示することができる。したがって、ユーザの意思とは無関係に通信装置と処理装置との間の無線通信が開始され、電波干渉により通話品質が低下してしまうという事態の発生を抑制できるという効果がある。
【0009】
請求項2記載の通信装置によれば、請求項1記載の通信装置の奏する効果に加え、処理装置との間の無線通信が不可能であると判断される場合は、子機と外部装置との間の通話の中継が再開されるので、ユーザは通話の相手先に対し、自機側の状況や事情を口頭で伝えることができるという効果がある。
【0010】
請求項3記載の通信装置によれば、請求項1または2に記載の通信装置の奏する効果に加え、特定データを指定して送信データが要求されるので、処理装置から通信装置へ適切な送信データを送信することができ、誤送信の発生を抑制できるという効果がある。
【0011】
請求項4記載の通信装置によれば、請求項3記載の通信装置の奏する効果に加え、指定した特定データと等しい特定データが対応づけられた送信データを処理装置から受信するので、通話の相手先の外部装置に送信すべき送信データを受信できるという効果がある。
【0012】
請求項5記載の通信装置によれば、請求項4記載の通信装置の奏する効果に加え、指定された特定データと等しい特定データが対応づけられた送信データがメモリに記憶されていない場合には、処理装置において原稿が読み取られ、その読み取った原稿に基づく送信データが作成される。そして通信装置においては、その送信データを処理装置から受信することができるので、新たに作成された送信データを、通話の相手先の外部装置へ送信することができるという効果がある。
【0013】
請求項6記載の通信装置によれば、請求項1から5のいずれかに記載の通信装置の奏する効果に加え、子機において選択された送信データまたは子機において選択された識別データに対応づけられた送信データが送信されるので、通話の相手先である外部装置に送信すべき送信データを、子機においてユーザに選択させることができるという効果がある。
【0014】
請求項7記載の通信装置によれば、請求項6記載の通信装置の奏する効果に加え、特定データが対応づけられた送信データがメモリに複数件記憶されている場合、複数件の送信データの中から、送信すべき送信データを子機において選択させることができるという効果がある。
【0015】
請求項8記載の通信装置によれば、請求項1から7のいずれかに記載の通信装置の奏する効果に加え、通信可能な接続状態が維持された前記外部装置に対してメッセージが送出されるので、子機側の通話者が通話を止めた後、外部装置側の通話者が誤ってオンフックをしてしまうことを抑制できるという効果がある。
【0016】
請求項9記載の通信装置によれば、請求項8記載の通信装置の奏する効果に加え、処理装置から送られてくる送信データの受信を通信装置において完了したことを、メッセージの変更により外部装置側の通話者に知らせることができるという効果がある。
【0017】
請求項10記載の通信システムによれば、請求項1記載の通信装置と同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の通信装置の一例であるBOXと、MFPおよび子機を含む通信システムの電気的構成を示したブロック図である。
【図2】通信システムにおいて実現されるFAX送信機能のシーケンスの一例を示す概略図である。
【図3】BOXのCPUによって実行されるFAX送信処理を示すフローチャートの一部である。
【図4】BOXのCPUによって実行されるFAX送信処理を示すフローチャートの一部である。
【図5】子機のCPUによって実行されるFAX手動送信処理を示すフローチャートである。
【図6】MFPのCPUによって実行されるFAXモード処理を示すフローチャートである。
【図7】(a)は、第2実施形態の子機が実行するFAX手動送信処理の一部を示すフローチャートであり、(b)は、第2実施形態のBOXが実行するFAX送信処理の一部を示すフローチャートであり、(c)は、第2実施形態のMFPが実行するFAXモード処理の一部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の通信装置の一実施形態である回線制御装置(以下「BOX」と称す)10と、多機能周辺装置(以下、「MFP」と称す)30と、子機60とを含む通信システム1の電気的構成を示したブロック図である。BOX10は、電話回線網100を使用した通信の制御を行う通信装置である。MFP30は、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、FAX機能などを備え、外部装置へ送信するデータ(以下、FAX送信データと称する)を作成する。子機60は、電話回線網100を介し外部装置との間で通話を行うデジタルコードレス電話機である。
【0020】
このBOX10は、MFP30との間で無線通信202を行い、子機60との間で無線通信203を行うが、電波干渉による通話品質の低下を抑制できるように構成されている。なお、本実施形態のBOX10は、電話回線網100を利用したG3FAXによりデータの送受を行うものとして説明するが、BOX10は、G4FAX、IPFAXやInternetFAXによりFAX送信を行うものであっても良い。
【0021】
BOX10には、CPU11、ROM12、RAM13、EEPROM14、無線LAN送受信部16、無線LANアンテナ部17、モデム18、電話回線接続部19、デジタルコードレス電話(DCL)送受信部20、DCLアンテナ部21、パネル22、ボタン入力部23が設けられている。これらの構成要素は、入出力ポート15を介して互いに通信可能に接続されている。
【0022】
CPU11は、ROM12等に記憶される固定値やプログラム或いは、無線通信202,203を介して送受信される各種信号に従って、入出力ポート15と接続された各部を制御する。ROM12は、書換不能なメモリであって、図3,図4を参照して後述する処理を実行するためのプログラムなどが格納されている。RAM13は、書換可能な揮発性のメモリである。EEPROM14は、書換可能な不揮発性のメモリである。
【0023】
無線LAN送受信部16は、IEEE802.11b/gの規格に準拠した無線LANにより、2.4GHz帯を利用した無線通信202を行うための回路である。この無線LAN送受信部16により、MFP30との間がデータ通信可能に接続され、無線LANアンテナ部17を介して、各種のデータを構成するデジタル信号が送受信される。モデム18は、FAX機能によって送信するFAX送信データを、電話回線網100に伝送可能な信号に変調して電話回線接続部19を介して送信したり、電話回線網100から電話回線接続部19を介して入力された信号を受信し、画像データへ復調するものである。電話回線接続部19は、電話回線網100とBOX10との間を接続するものであり、モデム18からの指示に従って、回線を閉結または切断することにより、電話回線網100を介した外部装置との間の接続状態を制御する。
【0024】
DCL送受信部20は、2.4GHz帯のデジタル方式の無線通信203により、DCLアンテナ部21を介し、子機60との間で制御データ及び音声データを送受するための無線回路である。パネル22は、BOX10の各種機能情報を表示する。ボタン入力部23は、BOX10の各機能を実行するためのキー群である。
【0025】
MFP30には、CPU31、ROM32、RAM33、EEPROM34、無線LAN送受信部36、無線LANアンテナ部37、プリンタ38、スキャナ39、パネル40、ボタン入力部41が設けられる。これらの構成要素は、入出力ポート35を介して互いに通信可能に接続されている。
【0026】
CPU31は、ROM32等に記憶される固定値やプログラム或いは、無線LAN送受信部36を介して送受信される各種信号に従って、各機能の制御や、入出力ポート35と接続された各部を制御する。
【0027】
ROM32は、MFP30で実行される制御プログラムなどを格納した書換不能なメモリであって、図6を参照して後述する処理を実行するプログラムなどが格納されている。RAM33は、書換可能な揮発性のメモリである。EEPROM34は、書換可能な不揮発性のメモリであり、手動送信待ちテーブル34aが設けられる。手動送信待ちテーブル34aについては、図2を参照して後述する。無線LAN送受信部36は上述した無線LAN送受信部16と同様に構成された回路であり、BOX10との間に無線LAN接続を形成する。
【0028】
プリンタ38は印刷を実行するものであり、スキャナ39は原稿の読み取りを実行するものである。パネル40は、MFP30の各種機能情報を表示するものである。ボタン入力部41は、MFP30の各機能を実行するためのキー群である。
【0029】
子機60には、CPU61、ROM62、DCL送受信部64、DCLアンテナ部65、パネル66、ボタン入力部67が設けられる。これらの構成要素は、入出力ポート63を介して互いに通信可能に接続されている。
【0030】
CPU61は、ROM62等に記憶される固定値やプログラム或いは、DCL送受信部64を介して送受信される各種信号に従って、各機能の制御や、入出力ポート63と接続された各部を制御する。
【0031】
ROM62は、子機60で実行される制御プログラムなどを格納した書換不能なメモリであって、図5を参照して後述する処理を実行するプログラムなどが格納されている。DCL送受信部64は上述したDCL送受信部20と同様に構成され、BOX10との間の無線通信203を行う。パネル66は、子機60の各種機能情報を表示するものである。ボタン入力部67は、子機60の各機能を実行するためのキー群である。
【0032】
なお、通信システム1のBOX10には複数台のMFP30を接続可能である。また、BOX10のDCL送受信部20は、複数台の子機60の各々とBOX10との間を無線通信203により接続可能である。
【0033】
図2は、通信システム1において実現されるFAX送信機能のシーケンスの一例を示す概略図である。なお、図2に示す各処理の詳細は図3から図6を参照して後述する。
【0034】
まず、ユーザが子機60において、発呼先電話番号を設定し発呼指示を行うと、ユーザにより設定された発呼先電話番号が子機60からBOX10へ通知され、発呼指示が行われる[1]。子機60から発呼指示を受信すると、BOX10は、MFP30へ無線LAN接続断指示を送信すると共に[2]、自機においても、無線LAN送受信部16からのデータ送信を停止する。一方、無線LAN接続断指示を受信したMFP30は、無線LAN送受信部36によるデータ送信を停止する。その結果、BOX10とMFP30との間の無線通信202が停止される。
【0035】
次に、BOX10は、電話回線接続部19により回線を閉結して発呼信号を送出し[3]、発呼先電話番号を送出することにより[4]、発呼先電話番号で特定される外部装置へ発呼する。そして、BOX10は、子機待機モードから子機通話モードへ移行する。
【0036】
相手先の外部装置が呼び出しに応答することにより、外部装置との間が通信可能な接続状態とされると、BOX10は、DCL送受信部20により無線通信可能な子機60と、電話回線接続部19により通信可能な接続状態にある外部装置との間の通話を中継する[5]。すなわち、通話時には、無線LANによる無線通信202を停止することにより、無線LAN送受信部16とDCL送受信部20との間の電波干渉による通話品質の低下を抑制できる。BOX10を小型化した場合は特に、無線LAN送受信部16とDCL送受信部20とを近づけて配置しなければならず、電波干渉が問題となりやすいが、本実施形態のBOX10であれば、電波干渉の発生を確実に抑制できる。
【0037】
なお、「通信可能な接続状態」とは、一方の装置の呼び出しに他方の装置が応答することにより装置間に伝送路が確保され、装置間において双方向通信可能な状態であることを意味している。特に、本実施形態では、一方の装置からの呼び出しに対して、他方の装置が回線を閉結することにより、双方の装置において回線が閉結された状態にある場合を、「通信可能な接続状態」と称する。
【0038】
次に、子機60に設けられたFAX送信ボタンをユーザが押下する操作を行うと、子機60からBOX10へFAX送信データの送信指示が送られる[6]。子機60から送られてくるFAX送信データの送信指示を受信すると、BOX10は、外部装置との間における通信可能な接続状態を維持しつつ、子機通話モードから子機待機モードに移行する。子機待機モードへ移行した後、BOX10は、電話回線網100と子機60との間における音声データの送受を中継しない。すなわち、BOX10は、子機60と外部装置との間の通話の中継を停止するが、回線を閉結したままとする。
【0039】
次に、BOX10は、無線LAN接続要求をMFP30へ送信し[7]、MFP30との間に無線LANリンクをはる。すなわち、子機60から発呼指示を受けたことに基づいて停止した無線通信202を再開する。そして、無線LAN送受信部16による無線通信202により通信可能となったMFP30に対し、FAX送信データを要求する[8]。ここで、BOX10は、発呼先電話番号(通信可能な接続状態が維持された外部装置のFAX電話番号)を指定して、MFP30へFAX送信データを要求する。
【0040】
MFP30には、手動送信待ちテーブル34aが設けられている。MFP30において、ユーザは、スキャナ39により原稿を読み取ることにより、MFP30にFAX送信データを作成させ、通話をしてからFAX送信データを送信する「手動送信」か、通話せずにFAX送信データを送信する「自動送信」のいずれかを選択し、且つ、FAX電話番号を入力することができる。ユーザにより「手動送信」が選択された場合、MFP30は、「1」に設定した手動送信待ちフラグと、ユーザにより入力されたFAX電話番号とを、新たに作成されたFAX送信データに対応付け、この手動送信待ちテーブル34aに登録する。なお、FAX送信データと、手動送信フラグと、FAX電話番号とからなるデータを、1件分のデータとする。同報送信すべきFAX送信データには、1件のデータにつき、FAX電話番号が複数個、対応づけられて記憶されていても良い。
【0041】
MPF30は、手動送信待ちテーブル34aに記憶されているFAX送信データのうち、BOX10から指定された発呼先電話番号と等しいFAX電話番号が対応づけられたFAX送信データを手動送信待ちテーブル34aから読み出し、BOX10へ送出する[9]。一方、BOX10は、MFP30からFAX送信データを受信すると、受信したFAX送信データを、通信可能な接続状態が維持された外部装置へ送信する[10]。
【0042】
よって、ユーザにとっては、まず、子機60を用いて通話することで相手先の外部装置を認識した上で、子機60においてFAX送信ボタンを押下することにより、通話の相手先の外部装置へのFAX送信データの送信をBOX10へ指示することができる。最初に通話を行っているので、誤った相手先へ送信データを送信してしまうという誤送信の発生を抑制できる。また、FAX送信の指示を子機60から行うことができるので、子機60で通話をしていた場所からMFP30の設置場所までユーザ自身が移動する必要はなく、ユーザの負担を軽減できる。
【0043】
また、BOX10がMFP30からFAX送信データを受信し、さらに外部装置へ送信するまでの間、通話の相手先の外部装置との間の通信可能な接続状態は維持されたままであるので、再度発呼からやり直す必要がなく、処理の迅速性および電話料金の節約という点で効果がある。
【0044】
図3は、BOX10のCPU11が実行するFAX送信処理を示すフローチャートである。このFAX送信処理は、FAX送信機能を実現するための処理であり、BOX10の電源投入後、繰り返し実行される。
【0045】
まず、CPU11は、子機60から発呼指示と発呼先電話番号とを受信したか否かを判断する(S302)。S302の判断が否定される場合(S302:No)、処理を待機するが、S302の判断が肯定される場合(S302:Yes)、CPU11は、MFP30へ無線LAN接続断を指示し(S304)、無線LAN送受信部16によるデータ送信を停止して、無線LAN接続を断つ(S306)。すなわち、無線通信202を停止する。
【0046】
次に、CPU11は、受信した発呼先電話番号へダイヤルする(S308)。そして、CPU11は、BOX10を子機待機モードから子機通話モードへ移行させる(S310)。なお、子機通話モードとは、音声パスおよび音量を設定して、子機60と電話回線網100との間の音声データの送受を可能としたモードであり、子機待機モードとは、子機60と電話回線網100との間の音声データの送受を不可能としたモードである。子機通話モードにおいて、BOX10は、子機と外部装置との間における音声データの送受を中継し、通話を中継することができる。
【0047】
次に、CPU11は、電話回線からビジートーンを検出したか否かを判断する(S312)。S312の判断が肯定される場合(S312:Yes)、すなわち、被呼側の外部装置が通話を終了した場合、CPU11は、子機60へ回線接続断を通知し(S314)、BOX10を子機通話モードから子機待機モードへ移行させ(S316)、回線接続を断ち(S318)、処理を終了する。
【0048】
一方、S312の判断が否定される場合(S312:No)、CPU11は、子機60から回線断の指示が送られてきたか否かを判断する(S320)。S320の判断が肯定される場合(S320:Yes)、CPU11は、S316に移行して子機待機モードへ移行し、回線接続を断ち、処理を終了する。
【0049】
一方、S320の判断が否定される場合(S320:No)、次に、CPU11は、子機60からFAX送信データの送信指示が送られてきたか否かを判断する(S322)。S322の判断が否定される場合(S322:No)、CPU11は、S312に戻り処理を繰り返す。すなわち、子機60と外部装置との間の通話の中継を継続する。
【0050】
一方、S322の判断が肯定される場合(S322:Yes)、CPU11は、子機通話モードから子機待機モードへ移行する(S324)。これにより、BOX10は、子機60と外部装置との間の通話の中継を停止するが、回線は切断せず、通話の相手先である外部装置との間を、通信可能な接続状態に保つ。
【0051】
次に、CPU11は、電話回線網100へ応答メッセージ(以下、OGMと称する)、例えば、「FAXを送信します。しばらくそのままでお待ち下さい」を音声データとして送出する(S326)。すなわち、BOX10は、子機60からFAX送信データの送信指示を受信した後、FAX送信データの送信を開始するまでの間、OGMを送出する。このOGMは、通信可能な接続状態が維持された外部装置の受話器から出力される。したがって、子機60側の通話者が通話を止めた後、被呼側の外部装置の通話者が、回線接続が切れたと誤って認識し、オンフックをしてしまうことを抑制できる。
【0052】
次に、CPU11は、無線LAN接続要求をMFP30へ送信し、MFP30との間に無線LANリンクをはる(S328)。この処理には、IPアドレスの取得を要するので、比較的時間がかかる場合があり得るが、BOX10から相手先の外部装置へ、OGMを継続的に送出し続けることにより、誤ってオンフックされてしまうことを回避できる。
【0053】
そして、CPU11は、MFP30から応答があったか否かを判断する(S330)。すなわち、無線LAN送受信部16によるMFP30との間の無線通信202が可能であるか否かを判断する。S330の判断が否定される場合(S330:No)、すなわち、MFP30との間の無線通信202が不可能な場合、CPU11は、電話回線網100へのOGMの送出を停止する(S332)。そして、CPU11は、子機60へ無線LAN接続の失敗を通知し(S334)、子機通話モードに移行し(S336)、S312の処理に戻る。
【0054】
このようにすれば、MFP30の電源がオフとなっている、または、他の機器との間の電波干渉などが原因で、MFP30との間の無線通信202が不可能であると判断される場合、S324の処理により停止された子機60と外部装置との間の通話の中継を再開することができる。よって、ユーザは、例えば「MFPの電源がオフになっていて、すぐにはFAX送信できない」など、自機側の状況や事情を口頭で、通話の相手先に伝えることができる。
【0055】
一方、S330の判断が肯定される場合(S330:Yes)、CPU11は、図4に示すS338の処理へ移行する。
【0056】
図4は、図3に示すFAX送信処理の続きを示すフローチャートである。まず、CPU11は、発呼先電話番号(すなわち、通信可能な接続状態が保たれている外部装置のFAX電話番号)を指定して、MFP30へFAX送信データの送信を要求する(S338)。
【0057】
次に、CPU11は、MFP30から送られてくるFAX送信データを受信する(S340)。ここでBOX10が受信するFAX送信データは、手動送信待ちテーブル34aに記憶されたFAX送信データのうち、先に指定した発呼先電話番号と等しいFAX電話番号が対応づけられたFAX送信データである。すなわち、通話の相手先の外部装置に対して送信すべきFAX送信データである。
【0058】
次に、CPU11は、FAX送信中であることを子機60へ通知し(S342)、MFP30からのFAX送信データの受信を完了すると(S343)、外部装置へ送出するOGMを、例えば、「お待たせしました」に変更して送出する(S344)。FAX送信データの受信を完了することを条件として、外部装置に送出するメッセージを変更するので、BOX10におけるFAX送信データの送信準備の完了を、被呼側の通話者に知らせることができる。したがって、被呼側の通話者は、このOGMの変更に基づいて、例えば、FAX送信データがまもなく自機へ送られてくると予想することができる。または、被呼側の外部装置にFAX受信開始ボタンが設けられている場合には、OGMが変更されたことを確認してからFAX受信開始ボタンを押下することにより、BOX10からのFAX送信データの受信を開始することができる。
【0059】
次に、CPU11は、OGMの送出を中止する(S346)。そして、MFP30から受信したFAX送信データの送信を開始する(S348)。MFP30から複数件分のFAX送信データを受信した場合、BOX10は、受信したFAX送信データを全て外部装置へ送信する。換言すれば、指定した発呼先電話番号と等しいFAX電話番号に対応づけて、手動送信待ちテーブル34aに記憶されていた全てのFAX送信データを、当該外部装置へ送信する。なお、フローチャートには図示していないが、BOX10は、被呼側の外部装置からFAX送信開始の指示が送られてくることを条件として、FAX送信データの送信を開始するように構成されても良い。
【0060】
次に、CPU11は、FAX送信中であることを、無線通信202を介してMFP30へ通知する(S350)。そして、CPU11は、FAX送信が終了したか否かを判断し(S352)、S352の判断が否定される場合は(S352:No)、FAX送信データの送信を継続する。一方、S352の判断が肯定される場合(S352:Yes)、CPU11は、FAX送信完了を、無線通信202を介してMFP30へ通知する(S354)。また、CPU11は、FAX送信完了を、無線通信203を介して子機60へ通知し(S356)、処理を終了する。
【0061】
FAX送信処理によれば、BOX10は、発呼先電話番号を指定してMFP30へFAX送信データを要求するので、通話の相手先の外部装置へ送信すべき適切なFAX送信データをMFP30から受信することができ、通話先の相手先の外部装置に送信すべきFAX送信データを送信することができ、誤送信の発生を抑制できる。
【0062】
図5は、子機60のCPU61が実行するFAX手動送信処理を示すフローチャートである。このFAX手動送信処理は、まず、ユーザに外部装置との間で通話を行わせ、次に、ユーザによりFAX送信ボタンが押下された場合には、FAX送信データの送信をBOX10に指示する処理である。この処理は、子機60の電源投入後、繰り返し実行される。
【0063】
まず、CPU61は、ダイヤル入力があったか否かを判断する(S502)。ユーザは、子機60に設けられた押しボタンの操作、または子機60に記憶された電話帳を用いて、発呼したい外部装置のFAX電話番号をダイヤル入力する。
【0064】
S502の判断が肯定される場合(S502:Yes)、CPU61は、ダイヤル入力されたFAX電話番号を発呼先電話番号として設定する(S504)。一方、S502の判断が否定される場合(S502:No)、CPU61は、S504の処理をスキップする。
【0065】
次に、CPU61は、子機60に設けられた外線通話キーが押下されたか否かを判断する(S508)。S508の判断が否定される場合(S508:No)、CPU61は、S502に戻り処理を繰り返す。一方、S508の判断が肯定される場合(S508:Yes)、CPU61は、設定した発呼先電話番号をBOX10へ通知し、発呼指示を行う(S510)。
【0066】
次に、CPU61は、子機60の送話器からの音声入力および受話器からの音声出力をオンにした通話モードに子機60を移行させる(S512)。これにより、子機60は、BOX10を介して、外部装置との間で通話が可能な状態となる。次に、CPU61は、パネル66にメッセージ「FAX送信しますか」を表示する(S514)。これにより、MFP30において原稿の読み取りを行ってから、長い時間が経過し、送信すべきFAX送信データがあったこと自体をユーザが忘れてしまっている場合であっても、その存在を思い出させることができる。
【0067】
次に、CPU61は、子機60に設けられた切りボタンが押下されたか否かを判断する(S516)。S516の判断が肯定される場合(S516:Yes)、CPU61は、BOX10へ回線断を指示する(S518)。そして、CPU61は、子機60の送話器からの音声入力および受話器からの音声出力をオフとする待機モードへ子機60を移行させ(S520)、処理を終了する。
【0068】
一方、S516の判断が否定される場合(S516:No)、CPU61は、BOX10から回線接続断通知を受信したか否かを判断する(S522)。S522の判断が肯定される場合(S522:Yes)、CPU61は、S520の処理へ移行し、通話を終了させる。
【0069】
一方、S522の判断が否定される場合(S522:No)、次に、CPU61は、子機60に設けられたFAX送信ボタンが押下されたか否かを判断する(S524)。S524の判断が否定される場合(S524:No)、CPU61は、S516に戻り処理を繰り返す。一方、S524の判断が肯定される場合(S524:Yes)、CPU61は、BOX10へFAX送信指示を行う(S526)。
【0070】
次に、CPU61は、子機60を通話モードから待機モードへ移行させる(S528)。すなわち、BOX10は、FAX送信データの送信に回線を使用するので、これ以降は、子機60と外部装置との間の通話の中継を停止するのである。
【0071】
次に、CPU61は、無線LAN接続の失敗がBOX10から通知されたか否かを判断する(S530)。S530の判断が肯定される場合(S530:Yes)、CPU61は、子機60のパネル66に、メッセージ「MFPの電源を入れて下さい」「FAX送信しますか」を表示させる(S532)。
【0072】
次に、CPU61は、子機60のスピーカ(図示せず)から呼び出し音を鳴動させ(S534)、子機60を通話モードへ移行させる(S536)。このようにすれば、BOX10とMFP30との間の無線通信202が不可能な場合、子機60による外部装置との間の通話を再開させることができる。そして、CPU61は、S516の処理に戻り、処理を繰り返す。
【0073】
一方、S530の判断が否定される場合(S530:No)、次に、CPU61は、外部装置へFAX送信中であることが、BOX10から通知されたか否かを判断する(S538)。S538の判断が否定される場合(S538:No)、CPU61は処理を待機する。
【0074】
S538の判断が肯定される場合(S538:Yes)、CPU61は、子機60のパネル66にメッセージ「FAX送信中」を表示する(S540)。そして、CPU61は、BOX10からFAX送信完了の通知を受信すると(S542)、パネル66にメッセージ「FAX送信完了」を表示し(S544)、図示しないスピーカから報知音を出力させ(S546)、処理を終了する。
【0075】
図6は、MFP30のCPU31が実行するFAXモード処理を示すフローチャートである。このFAXモード処理は、FAX送信データをMFP30からBOX10へ送信する処理であり、MFP30の電源投入後、繰り返し実行される。
【0076】
なお、このフローチャートでは図示を省略しているが、ユーザは、任意の時点において、MFP30のスキャナ39により原稿を読み取り、MFP30のボタン入力部41によりFAX電話番号を入力することにより、FAX送信データに、FAX電話番号と、「1」に設定した手動送信フラグとを対応づけて、手動送信待ちテーブル34a(図2)に登録しておくことができる。
【0077】
このFAXモード処理では、まず、CPU31は、BOX10から無線LAN接続断が指示されたか否かを判断する(S604)。S604の判断が否定される場合(S604:No)、CPU31は処理を待機する。一方、S604の判断が肯定される場合(S604:Yes)、CPU31は、無線LAN送受信部36によるデータ送信を停止する。その結果、BOX10とMFP30との間の無線LAN接続が断たれる(S606)。すなわち、無線通信202を停止する。
【0078】
次に、BOX10から無線LAN接続要求があったか否かを判断する(S608)。S608の判断が否定される場合(S608:No)、CPU31は処理を待機する。一方、S608の判断が肯定される場合(S608:Yes)、CPU31は、無線LAN送受信部36によるデータ送信を再開し、BOX10との間に無線LANリンクをはる(S610)。
【0079】
次に、CPU31は、BOX10から発呼先電話番号とFAX送信データの送信指示とを受けたか否かを判断する(S612)。S612の判断が否定される場合(S612:No)、CPU31は処理を待機する。一方、S612の判断が肯定される場合(S612:Yes)、CPU31は、受信した発呼先電話番号と等しいFAX電話番号が手動送信待ちテーブル34aにあるか否かを比較する(S614)。受信した発呼先電話番号と等しいFAX電話番号がある場合(S616:Yes)、そのFAX電話番号が対応づけられたFAX送信データを手動送信待ちテーブル34aから読み出し、無線通信202を介してBOX10へFAX送信データを送出する(S622)。すなわち、子機60による通話の相手先の外部装置へ送るべきデータとして、手動送信待ちテーブル34aに予め準備されていたFAX送信データを、BOX10へ送出するのである。
【0080】
BOX10から指定された発呼先電話番号と等しいFAX電話番号が対応づけられたFAX送信データが手動送信待ちテーブル34aに記憶されていない場合(S616:No)、CPU31は、スキャナ39を駆動し、所定の原稿載置位置に載置された原稿を自動で読み取り、スキャンデータを作成する(S618)。そして、新たに作成したスキャンデータをFAX送信データとして、「1」に設定された手動送信フラグと、BOX10から受信した発呼先電話番号に設定されたFAX電話番号とに対応付け、手動送信待ちフラグ34aに保存する(S620)。そして、CPU31は、その保存したFAX送信データを無線通信202を介してBOX10へ送出する(S622)。
【0081】
すなわち、通話の相手先の外部装置宛のFAX送信データが、手動送信待ちテーブル34aに予め準備されている場合、BOX10は、そのFAX送信データをMFP30から受信し、通話の相手先の外部装置へ送信する。一方、通話の相手先の外部装置宛のFAX送信データが、手動送信待ちテーブル34aに予め準備されていない場合、BOX10は、MFP30にFAX送信データを新たに作成させ、MFP30から受信して、通話の相手先の外部装置へ送信する。
【0082】
そして、FAX送信中であることが、BOX10から通知されると(S624)、CPU31は、パネル40にメッセージ「FAX送信中」を表示する(S626)。そして、CPU31は、BOX10からFAX送信完了を通知されたか否かを判断し(S628)、S628の判断が否定される間(S628:No)、CPU31は処理を待機する。一方、S628の判断が肯定されると(S628:Yes)、CPU31は、パネル40にメッセージ「FAX送信完了」を表示し(S630)、手動送信待ちテーブル34aから、BOX10へ送信済みである該当の項目を削除し(S632)、処理を終了する。
【0083】
上記第1実施形態では、手動送信待ちテーブル34aに記憶されるFAX送信データのうち、発呼先電話番号と等しいFAX電話番号が対応づけられているFAX送信データは全て、MFP30からBOX10へ送信され、BOX10から外部装置へ送信されていた。しかしながら、以下に第2実施形態として説明するように、送信すべきFAX送信データをユーザが子機60の操作することで選択できるように構成しても良い。なお、この第2実施形態の通信システム1において、第1実施形態の通信システム1と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。また、図示は省略するが、第2実施形態のMFP30に設けられる手動送信待ちテーブル34aにおいて、各FAX送信データには、識別のためのIDが対応づけられているものとする。
【0084】
図7(a)は、第2実施形態の子機60が実行するFAX手動送信処理の一部を示すフローチャートである。この図7(a)に示すS720からS726の処理は、第1実施形態のFAX手動送信処理(図5)におけるS530とS538との間に挿入される処理である。図7(b)は、第2実施形態のBOX10が実行するFAX送信処理の一部を示すフローチャートである。この図7(b)に示すS710からS718の処理は、第1実施形態のFAX送信処理(図4)におけるS338とS340との間に挿入される処理である。図7(c)は、第2実施形態のMFP30が実行するFAXモード処理の一部を示すフローチャートである。この図7(c)に示すS702からS708の処理は、第1実施形態のMFP30が実行するFAXモード処理におけるS614とS624との間に挿入される処理である。
【0085】
まず、図7(c)に示すように、MFP30のCPU31は、BOX10から受信した発呼先電話番号と等しいFAX電話番号が、手動送信待ちテーブル34aにあるか否かを比較する(S614)。そして、発呼先電話番号と等しいFAX電話番号のデータが2件以上あるか否かを判断する(S702)。S702の判断が肯定される場合(S702:Yes)、CPU31は、発呼先電話番号と等しいFAX電話番号に対応するIDの一覧をBOX10に通知する(S704)。
【0086】
BOX10は、MFP30からID一覧の通知を受信したか否かを判断する(S710)。S710の判断が肯定される場合(S710:Yes)、BOX10のCPU11は、受信したID一覧を子機60へ通知する(S712)。
【0087】
一方、子機60では、BOX10からID一覧の通知があるか否かを判断する(S720)。S720の判断が肯定される場合(S720:Yes)、子機60のCPU61は、受信したID一覧をパネル66に表示する(S722)。そして、パネル66に表示されたIDの中からいずれかを選択する選択入力が、ユーザにより行われたか否かを判断する(S724)。S724の判断が否定される間(S724:No)、子機60のCPU61は処理を待機する。一方、S724の判断が肯定されると(S724:Yes)、子機60のCPU61は、子機60における選択入力により選択されたIDを、FAX送信要求IDとしてBOX10へ通知する(S726)。そして、BOXからFAX送信中通知があったか否かを判断し(S538)、この判断が否定される間(S538:No)、S720から処理を繰り返す。
【0088】
一方、BOX10では、CPU11が、子機60からFAX送信要求IDを受信したか否かを判断する(S714)。S714の判断が否定される間(S714:No)、BOX10のCPU11は処理を待機するが、S714の判断が肯定されると(S714:Yes)、CPU11は、子機60から受信したFAX送信要求IDをMFP30に対して通知する(S716)。
【0089】
一方、MFP30のCPU31は、BOX10からFAX送信要求IDを受信しない間(S706:No)、処理を待機するが、FAX送信要求IDを受信すると(S706:Yes)、CPU31は、FAX送信要求IDと等しいIDが対応づけられたFAX送信データをBOX10へ送出する(S708)。
【0090】
BOX10のCPU11は、MFP30からFAX送信データ受信を開始したか否かを判断し(S718)、S718の判断が否定される間(S718:No)、S710から処理を繰り返す。そして、S718の判断が肯定されると(S718:Yes)、BOX10のCPU11は、FAX送信データを受信し(S340)、その受信したFAX送信データを外部装置へ送信する(S348)。すなわち、子機60において選択されたIDに対応づけられたFAX送信データを外部装置へ送信する。
【0091】
なお、発呼先電話番号と等しいFAX電話番号が対応づけられたFAX送信データが手動送信待ちテーブル34aに1件記憶されている場合、または1件も記憶されていない場合(S702:No)、MFP30のCPU31は、第1実施形態で説明したS616以降の処理を実行するので、ID一覧をBOX10へ通知しない。また、BOX10においては、S710の判断が否定され(S710:No)、S712からS716のステップがスキップされるので、ID一覧が子機60へ通知されない。また、子機60においては、S720の判断が否定され(S720:No)、S722からS726のステップがスキップされるので、子機60においてIDの選択の通知は行われない。したがって、通信システム1における通信処理の負荷を軽減することができる。
【0092】
第2実施形態によれば、複数件のFAX送信データのうち、通話の相手先である外部装置に送信すべき送信データを、子機60において、ユーザに選択させることができるので、複数人で通信システム1を共同使用する場合においても、各ユーザが所望のFAX送信データを送信することができる。
【0093】
上記実施形態において、DCL送受信部20およびDCLアンテナ部21が第1接続手段の一例に相当し、MFP30が処理装置の一例に相当し、無線LAN送受信部16および無線LANアンテナ部17が第2接続手段の一例に相当し、BOX10が通信装置の一例に相当する。電話回線網100が通信網の一例に相当し、モデム18および電話回線接続部19が第3接続手段および通信制御手段の一例に相当する。S310の処理を実行するCPU11が中継手段の一例に相当する。S338の処理を実行するCPU11が要求手段の一例に相当する。S340を実行するCPU11が受信手段の一例に相当する。S348を実行するCPU11が送信手段の一例に相当する。S326を実行するCPU11がメッセージ送出手段の一例に相当し、S344の処理を実行するCPU11がメッセージ変更手段の一例に相当する。S618を実行するCPU31が新規データ作成手段の一例に相当し、S622を実行するCPU31が送出手段の一例に相当する。FAX送信データが送信データの一例に相当し、発呼先電話番号およびFAX電話番号が特定データの一例に相当し、手動送信待ちテーブル34aがメモリの一例に相当する。図7のS712を実行するCPU11が、通知手段の一例に相当する。IDが識別データの一例に相当する。ID一覧がリストの一例に相当する。S304,S306の処理を実行するCPU11が、第2接続停止手段の一例に相当する。S324,S328,S330の処理を実行するCPU11が切替手段の一例に相当する。S324の処理を実行するCPU11が中継停止手段の一例に相当し、S330を実行するCPU11が第2接続判断手段の一例に相当し、S336を実行するCPU11が通話再開手段の一例に相当する。
【0094】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0095】
また、上記実施形態では、処理装置の一例であるMFP30がスキャナ39を備え、原稿をスキャナ39により読み取ってFAX送信データを生成し、BOX10に送信するものであったが、処理装置は、スキャナを備えないものであっても良く、例えば、装着されたメモリカードからデータを読み込み、その読み込んだデータに基づきFAX送信データを生成し、BOX10へ送信するものであっても良い。
【0096】
また、上記実施形態では、FAX電話番号が特定データの一例であったが、例えば、特定データは、宛先の氏名等、他の情報であっても良い。
【0097】
また、上記実施形態では、手動送信待ちテーブル34aに記憶されているFAX送信データのうち、通信可能な接続状態が維持されている外部装置のFAX電話番号と等しいFAX電話番号が対応づけられているFAX送信データのみが、MFP30からBOX10へ送信され、BOX10から外部装置へ送信されていた。しかしながら、これに代えて、手動送信待ちテーブル34aに記憶されている全てのFAX送信データを、MFP30からBOX10へ送信し、BOX10から外部装置へ送信するように構成しても良い。
【0098】
また、上記実施形態では、MFP30とBOX10とが別体に構成されていたが、これらが一体的に構成されている場合にも本発明は適用可能である。その場合は、スキャナ39が処理装置の一例に相当し、MFP30とBOX10とを一体化した装置が通信装置の一例に相当する。
【0099】
また、上記実施形態では、通信網の一例として電話回線網100を例示していたが、通信網は、例えばISDN回線、CATV回線、インターネットであっても良く、また、通信システム1は、音声データをパケットで送受信するいわゆるIP電話システムであっても良い。
【0100】
また、MFP30は、手動送信待ちテーブル34aを備えず、BOX10からFAX送信データの要求を受けた場合は、スキャナ39により原稿の読み取りを行ってFAX送信データを作成し、BOX10へ送出するように構成されても良い。また、MFP30には、手動送信待ちテーブル34aとは別に、すぐに送出することを望まないFAX送信データを記憶するテーブル(例えば編集中テーブル)が設けられていても良い。そして、BOX10からFAX送信データの要求を受けた場合、手動送信待ちテーブル34aに記憶されたFAX送信データを送信すること、あるいはFAX送信データのIDを通知することに加えて、編集中テーブルに記憶されたFAX送信データのID等をBOX10へ通知するように構成しても良い。また、上記実施形態では、手動送信待ちテーブル34aはMFP30のEEPROM34に設けられていたが、MFP30がカードスロットを備え、カードスロットに装着されたメモリからデータを読み出し可能に構成されている場合には、手動送信待ちテーブル34aは、当該メモリに記憶されていても良い。
【0101】
また、上記実施形態において、MFP30は、BOX10から発呼先電話番号を指定されると、その発呼先電話番号と等しいFAX電話番号に対応するFAX送信データを送信し、またはIDを通知していた。これに代えて、MFP30は、指定された発呼先電話番号を、パネル40に表示出力するものであっても良い。このようにすれば、例えば、MFP30において、ユーザは、パネル40に表示出力された発呼先電話番号を視認し、宛先を再確認した上で、スキャナ39により原稿を読み込むなど、適切なFAX送信データをMFP30からBOX10へ送出することができる。
【0102】
また、上記実施形態において、通信システム1に、複数台の子機60が含まれる場合には、各子機60を識別するための子機IDが、各子機60に割り当てられていても良い。また、BOX10は、発呼指示の送信元の子機(すなわち通話を行った子機)の子機IDを指定して、MFP30にFAX送信データ送信要求を送信しても良い。一方、MFP30においては、各FAX送信データに、子機IDを対応づけて手動送信待ちテーブル34aに登録しておき、子機IDをBOX10から受信した場合には、受信した子機IDに対応づけられているFAX送信データをBOX10へ送信し、またはFAX送信データのIDをBOX10へ通知するように構成すれば良い。このようにすれば、送信できるFAX送信データを子機60毎に区別して管理することができ、複数人で通信システム1を共同使用する場合であっても利便性が良い。
【0103】
また、上記実施形態のMFP30に設けられるスキャナ39は、自動原稿送り装置を備え、複数枚の原稿を読み取り可能に構成されても良いが、自動原稿送り装置を備えない構成であっても良い。その場合、子機60は、FAX送信指示が行われた後、ユーザに原稿の枚数を入力させ、ユーザにより入力された原稿の枚数を、BOX10を介して、MFP30へ通知する構成とされても良い。さらに、子機60は、ユーザにより入力された原稿の枚数が複数頁である場合は、MFP30での操作を促すメッセージ、例えば「2頁目以降はMFPで設定して下さい」をパネル66に表示出力するように構成されても良い。一方、MFP30は、通知される原稿の枚数が1頁であれば、所定位置に載置された原稿を読み取り、FAX送信データとしてBOX10に送出し、複数頁であれば、1枚スキャンする毎に、次の原稿を載置するようユーザに促すメッセージをパネル40に表示出力するように構成されても良い。このようにすれば、MFP30において、読み取るべき原稿の枚数に誤りが生じることを抑制できる。また、1枚の原稿をスキャンさせる場合であれば、ユーザがMFP30の設置位置まで移動する必要がなく、利便性が良い。
【0104】
また、スキャナ39に自動原稿送り装置が設けられている場合、自動原稿送り装置の所定の原稿載置位置に原稿が載置されていない場合、MFP30は、BOX10へエラー通知をし、さらに、BOX10から子機60へエラー通知し、子機60は、エラーの発生をユーザに報知するように構成しても良い。このようにすれば、MFP30の設置位置から離れた位置でユーザが通話を行っていても、MFP30において自動原稿送り装置に原稿を載置していないというミスに気づくことができる。
【0105】
また、上記実施形態のFAX送信処理(図4)では、BOX10のCPU11は、MFP30から送られてくるFAX送信データの受信を開始した後(S340)、FAX送信中であることを子機60へ通知していた(S342)。これに代えて、FAX送信中であることを子機60へ通知した後、MFP30から送られてくるFAX送信データの受信を開始するように、FAX送信処理(図4)を構成しても良い。このようにすれば、BOX10がMFP30からのFAX送信データを受信する際における、無線LAN送受信部16とDCL送受信部20との間の電波干渉により、BOX10から子機60への通知が失敗してしまうことを回避できる。
【0106】
また、上記実施形態において、BOX10のCPU11は、MFP30から送られてくるFAX送信データの受信を完了した後に、外部装置へのFAX送信データの送信を開始していた。これに代えて、MFP30から送られてくるFAX送信データの一部を受信したら、外部装置への送信を開始し、FAX送信データの受信と送信とを同時進行するように構成してもよい。このようにすれば、FAX送信データ送信開始までの待ち時間を減らすことができる。また、この場合において、外部装置へFAX送信データを送信する途中に、モデム18の通信速度よりも無線LAN送受信部16のスループットが低くなった場合は、モデム18の通信速度を、無線LAN送受信部16のスループットよりも低減すれば良い。
【0107】
また、FAX送信データの送信中に、外部装置側で回線が切断されるなどの理由でFAX送信に失敗した場合、BOX10は、一定時間後に、手動送信待ちテーブル34aから該当のFAX送信データを再度取得し、外部装置へ再送するように構成されても良い。また、手動送信待ちテーブル34aに保存されているデータを、子機60から確認し、不要なデータを削除できるように構成しても良い。
【0108】
また、上記第2実施形態では、BOX10から子機60へは、各FAX送信データのIDが通知されていたが、例えば、各FAX送信データ自体を通知しても良いし、あるいは、各FAX送信データの件名や作成日時やサムネイルなどを識別データとして通知するように構成しても良い。
【0109】
また、上記第2実施形態では、発呼先電話番号と等しいFAX電話番号が対応づけられたFAX送信データが手動送信待ちテーブル34aに複数件記憶されている場合(S702:Yes)、MFP30からBOX10へID一覧を送っていたが、これに代えて、発呼先電話番号とFAX電話番号とが等しいか否かに関わらず、手動送信待ちテーブル34aに複数件のFAX送信データが記憶されている場合、ID一覧を通知するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0110】
1 通信システム
10 BOX
30 MFP
60 子機
16 無線LAN送受信部
17 無線LANアンテナ部
18 モデム
19 電話回線接続部
20 DCL送受信部
21 DCLアンテナ部
100 電話回線網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
子機との間の無線通信によりデータを送受するための第1接続手段と、外部装置へ送信するデータを処理する処理装置との間の無線通信によりデータを送受するための第2接続手段と、通信網との間を接続する第3接続手段と、前記第3接続手段により接続される前記通信網を介した前記外部装置との間の接続状態を制御する通信制御手段とを備える通信装置であって、
前記第2接続手段による前記処理装置との間の無線通信を停止する第2接続停止手段と、
前記第2接続停止手段により前記処理装置との間の無線通信を停止した状態において、前記第1接続手段により無線通信可能な子機と、前記通信制御手段により通信可能な接続状態にある前記外部装置との間の通話を中継する中継手段と、
前記中継手段により通話が中継される前記子機におけるユーザ操作に基づき、前記子機から送信データの送信指示が送られてくると、前記外部装置との間における通信可能な接続状態を維持しつつ、前記子機と前記外部装置との間の通話の中継を停止し、且つ、前記第2接続停止手段により停止された前記処理装置との間の無線通信を開始する切替手段と、
前記切替手段により前記第2接続手段による無線通信が可能となった前記処理装置に対して送信データを要求する要求手段と、
前記要求手段による要求に応答した前記処理装置から前記第2接続手段による無線通信で送られてくる前記送信データを受信する受信手段と、
前記受信手段により受信した前記送信データを、通信可能な接続状態が維持された前記外部装置へ送信する送信手段とを備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記切替手段は、
前記中継手段による前記子機と前記外部装置との間の通話の中継を停止する中継停止手段と、
前記第2接続手段による前記処理装置との間の無線通信が可能かを判断する第2接続判断手段とを備え、
前記中継手段は、
前記第2接続判断手段により前記処理装置との間の無線通信が不可能であると判断される場合、前記中継停止手段により停止された前記子機と前記外部装置との間の通話の中継を再開する通話再開手段を備えることを特徴とする請求項1記載の通信装置。
【請求項3】
前記要求手段は、通信可能な接続状態が維持された前記外部装置を特定する特定データを指定して、前記処理装置へ前記送信データを要求するものである請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記処理装置は、送信先の外部装置を特定する特定データが対応づけられた前記送信データをメモリから読み出し、前記要求手段による要求に応答して、前記送信データを送出するものであり、
前記受信手段は、前記メモリに記憶された前記送信データのうち、前記要求手段により指定した特定データと等しい特定データが対応づけられた前記送信データを受信するものである請求項3記載の通信装置。
【請求項5】
前記処理装置は、前記要求手段により指定された前記特定データと等しい特定データが対応づけられた前記送信データが前記メモリに記憶されていない場合、原稿を読み取り、その読み取った原稿に基づく送信データを作成する新規データ作成手段を備えるものであり、
前記受信手段は、前記新規データ作成手段により作成された前記送信データを、前記処理装置から受信するものである請求項4記載の通信装置。
【請求項6】
前記受信手段により前記処理装置から前記送信データを受信する場合、前記第1接続手段による無線通信により、前記子機に対して、受信した前記送信データまたは前記送信データに対応付けられた識別データを通知する通知手段を備え、
前記送信手段は、前記通知手段により前記子機に対して通知した前記送信データまたは前記識別データのうち、前記子機において選択された送信データまたは前記子機において選択された識別データに対応づけられた送信データを送信するものである請求項1から5のいずれかに記載の通信装置。
【請求項7】
前記通知手段は、特定データが対応づけられた前記送信データがメモリに複数件記憶されている場合、前記中継手段により通話が中継される前記子機に対して、前記受信手段により受信した前記送信データまたは前記送信データに対応づけられた識別データを記述したリストを通知するものである請求項6記載の通信装置。
【請求項8】
前記中継手段により通話が中継される前記子機から前記送信データの送信指示を受信した後、前記送信手段による前記送信データの送信を開始するまでの間に、通信可能な接続状態が維持された前記外部装置に対してメッセージを送出するメッセージ送出手段を備える請求項1から7のいずれかに記載の通信装置。
【請求項9】
前記受信手段により前記送信データの受信を完了することを条件として、前記メッセージ送出手段により前記外部装置に対して送出するメッセージを変更するメッセージ変更手段を備えることを特徴とする請求項8記載の通信装置。
【請求項10】
子機との間の無線通信によりデータを送受するための第1接続手段と、外部装置へ送信するデータを処理する処理装置との間の無線通信によりデータを送受するための第2接続手段と、通信網との間を接続する第3接続手段と、前記第3接続手段により接続される前記通信網を介した前記外部装置との間の接続状態を制御する通信制御手段とを備える通信装置と、前記処理装置とを含む通信システムであって、
前記通信装置は、
前記第2接続手段による前記処理装置との間の無線通信を停止する第2接続停止手段と、
前記第2接続停止手段により前記処理装置との間の無線通信を停止した状態において、前記第1接続手段により無線通信可能な子機と、前記通信制御手段により通信可能な接続状態にある前記外部装置との間の通話を中継する中継手段と、
前記中継手段により通話が中継される前記子機におけるユーザ操作に基づき、前記子機から送信データの送信指示が送られてくると、前記外部装置との間における通信可能な接続状態を維持しつつ、前記子機と前記外部装置との間の通話の中継を停止し、且つ、前記第2接続停止手段により停止された前記処理装置との間の無線通信を開始する切替手段と、
前記切替手段により前記第2接続手段による無線通信が可能となった前記処理装置に対して送信データを要求する要求手段と、
前記要求手段による要求に応答した前記処理装置から前記第2接続手段による無線通信で送られてくる前記送信データを受信する受信手段と、
前記受信手段により受信した前記送信データを、通信可能な接続状態が維持された前記外部装置へ送信する送信手段とを備え、
前記処理装置は、
前記要求手段による要求に応答して、前記送信データを前記通信装置に対して送出する送出手段を備えるものである通信システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−114748(P2011−114748A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−271074(P2009−271074)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】