説明

通信装置

【課題】IP網を通じて画像データを送受信する通信装置において、送信側で原稿の画像データと定型文書のフォームに合成すべきテキストデータを送信し、受信側で予め記憶している定型文書のフォームと送信側から受信したテキストデータを合成し、これらを合成した定型文書を送信側から受信した原稿の画像データとともに出力する通信装置を提供すること。
【解決手段】送信側通信装置30Aは、メディアセッションで原稿の画像データを送信すると共に定型文書のフォーム及び該フォームに組み込むべき組込情報のテキストデータをSIPのメソッドにより送信し、受信側通信装置30Bは、メディアセッションで原稿の画像データを受信すると共にSIPのメソッドにより受信した識別情報に対応付けて記憶している定型文書のフォームに、前記識別情報とともに受信した組込情報を組み込んで前記画像データとともに出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SIP(Session Initiation Protocol)等の呼制御プロトコルを利用して、画像データ及びテキストデータの送受信を行う通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、IP網を通じて画像データの送受信を行う通信装置が普及しつつある。例えば特許文献1に開示されている通信装置は、ITU−T勧告T.38に準拠したIPファクシミリ通信機能を備え、IP網を通じて画像データを送受信することができる。原稿の画像データをIP網を通じて送信すれば、電話回線を通じて送信するよりも格段に通信費を安く抑えることができる。
【0003】
一方、特許文献2には、定型文書が付加された原稿の通信時間を短縮するために、予め定型文書のフォームをファクシミリ装置内に記憶しておき、定型文書のフォームを受信原稿とともに出力するファクシミリ装置が提案されている。すなわち、送信側において、定型文書のフォームに合成すべきテキスト情報等と原稿の画像データを送信し、受信側において、予め記憶している定型文書のフォームと送信側から受信したテキスト情報を合成して定型文書の画像データを生成する。そして、生成した定型文書の画像データを送信側から受信した原稿の画像データとともに印字出力するものである。定型文書のフォームについては送受信する必要がないため、送信データ量を少なくすることができ、通信時間が短縮される。
【0004】
【特許文献1】特開2002−101256号公報
【特許文献2】特開平7−273971号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
IPファクシミリ通信においても、送信データ量の低減や送信時間の短縮化は、LANのトラフィック量を低減することに直結することから、顧客の要求する事項の1つである。
【0006】
そこで、IPファクシミリ通信においても、あらかじめ定型文書のフォームを記憶しておき、送信側において、定型文書のフォームに合成すべきテキスト情報と原稿の画像データを送信し、受信側において、定型文書のフォームとテキスト情報を合成することができれば、送信データ量の低減や送信時間の短縮化は可能である。しかし、G3ファクシミリ通信とIP通信とは通信手順が全く異なるものであることから、特許文献2に係る技術をIP通信に適用することは容易ではなく、未だにそのような通信装置は提案されていない。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、IP網を通じて画像データを送受信する通信装置において、送信側において、原稿の画像データとともに、定型文書のフォームに合成すべきテキストデータを送信し、受信側において、予め記憶している定型文書のフォームと送信側から受信したテキストデータを合成し、これらを合成した定型文書を送信側から受信した原稿の画像データとともに出力することができる通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の通信装置は、呼制御プロトコルにより確立したメディアセッションで画像データを送信する画像データ送信手段と、相手先が使用すべき定型文書のフォーム及び該フォームに組み込むべき組込情報を指定する指定手段と、指定された前記定型文書のフォームの識別情報及び前記組込情報のテキストデータを前記呼制御プロトコルのメソッドにより送信する送信手段と、を備えることを特徴としている。
【0009】
請求項2記載の通信装置は、呼制御プロトコルにより確立したメディアセッションで画像データを受信する画像データ受信手段と、前記呼制御プロトコルのメソッドによりテキストデータを受信するテキストデータ受信手段と、複数の定型文書のフォームとそれら定型文書のフォームの識別情報を対応付けて記憶する記憶手段と、前記テキストデータ受信手段により受信した識別情報に対応付けられた定型文書のフォームに、前記識別情報とともに受信した組込情報を組み込んで、これを前記画像データ受信手段により受信した画像データとともに出力する出力手段と、を備えることを特徴としている。
【0010】
請求項3記載の通信装置は、請求項1又は2記載の通信装置において、前記組込情報には、発信元名又は送信先名が含まれることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の通信装置を送信側、請求項2記載の通信装置を受信側とすることにより、定型文書の画像データの送信を省略しても送信元が意図する定型文書が受信側において出力されるので、送信する画像データのデータ量を削減することができる。これにより、通信時間も短縮される。また、本発明に係る通信装置は、識別情報や組込情報のテキストデータを呼制御プロトコルのメソッドにより送受信するので、原稿の画像データを送信しながら、画像データの送信とは別個独立した任意のタイミングでテキストデータをリアルタイムで送受信することができる。つまり、画像データの送信処理の前後或いは画像データの送信処理と並行してテキストデータの送受信をすることができる。SMTPを利用して画像データを送信するインターネットファクシミリ装置などでは、原稿の画像データとテキストデータが1つの纏まったファイルとなって送信されるため、原稿の画像データの送信とテキストデータの送信を別個独立して行うことはできないが、本発明によればそれが可能となる。
【0012】
請求項3記載の通信装置によれば、発信元名又は送信先名の表記が必要な定型文書に本発明を有効に適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明の第1の実施の形態に係る通信装置として、呼制御プロトコルを利用して原稿の画像データを送信するIPファクシミリ通信機能、G3ファクシミリ通信機能、クライアント装置からの要求に応じて前記各種のファクシミリ通信を行うファクシミリサーバ機能等を備える複合機型のファクシミリ装置を例に挙げて説明する。
【0014】
図1にファクシミリ装置1の構成例を示す。すなわち、ファクシミリ装置1は、CPU(中央処理装置)2、ROM(リードオンリーメモリー)3、RAM(ランダムアクセスメモリー)4、画像メモリ5、モデム6、NCU7、コーデック8、読取部9、記録部10、表示部11、操作部12、LANインタフェース13を備え、各部2乃至13はバス14によって接続されている。
【0015】
CPU2は、ROM3に格納された制御プログラムに従って、このファクシミリ装置1を構成する各部を制御する制御手段として機能する。RAM4は、CPU2の主メモリ、ワークエリア等として機能する。また、RAM4には、短縮番号やワンタッチキーに対応付けられた宛先ファクシミリ番号、宛先IP電話番号等を格納する電話帳4aが記憶されている。さらに、宛先IP電話番号(宛先情報)や送信する原稿の種別(送信する画像データの種別)と対応付けてテキストデータが登録されている。例えば、図2に示すように、宛先IP電話番号ごとにテキストデータを登録(記憶)する第1テーブル4b、図3に示すように、送信する原稿の種別ごとにテキストデータを登録(記憶)する第2テーブル4cがRAM4に形成されている。なお、テーブル4b、4cの「テキストデータ」欄に示す「メッセージA」、「メッセージB」等は、ユーザが任意に登録したテキストデータを意味する。
【0016】
画像メモリ5は、コーデック8によって圧縮符号化された画像データ等を記憶する。モデム6は、例えばITU−T(国際電気通信連合)の勧告V.34規格又はこれと同様のものに従った送受信データの変調及び復調を行う。NCU7は、PSTN(公衆交換電話網)15との回線の閉結及び開放の動作を行う回線網制御装置であり、G3ファクシミリ送受信時にモデム6をPSTN15と接続する。コーデック8は、ファクシミリ送信等に際して、画像データを、JPEG方式又はMH、MR、MMR方式等により圧縮符号化し、また、受信した画像データ等を復号する。
【0017】
読取部9は、原稿の画像データを読取るものであり、例えば、CCDカラーラインセンサ、A/Dコンバータ、画像処理回路等で構成される。記録部10は、給紙カセットから記録紙を取り出して、受信画像データ、読取画像データ等を記録紙上に記録する。表示部11は、例えば操作部12に並設されたLCD(Liquid Crystal Display)からなり、各種の画面情報を表示する。操作部12は、スタートキー、文字入力キー、ファンクションキーなど各種の操作キーを具備し、ユーザによる各種の操作は、この操作部7において行われる。
【0018】
LANインタフェース13は、ファクシミリ装置1とLAN(ローカルエリアネットワーク)16とを接続するインターフェースであり、これを通じてファクシミリ装置1は、同じくLAN16に接続されたクライアントPC、ルータ19等と通信を行う。更にはルータ19を通じてIP網17上の自装置1と同様のファクシミリ装置18とSIPを利用したIPファクシミリ通信を行う。
【0019】
上記構成を備えるファクシミリ装置1は、TCP/IP、SIP、RTP(Real-time Transport Protocol)、SDP(Session Description Protocol)などを実装して、SIPによりメディアセッションを確立した上で、例えばRTPにより原稿の画像データを相手先と送受信する。また、SIPメソッド「MESSAGE」を使用して相手先とテキストデータの送受信を行う機能をも備える。画像データの送受信を行うための通信プロトコルは、RTPに限定されず、これに代えてSMTP、HTTP等を採用してもよい。
【0020】
次に、上記構成及び通信機能を備えるファクシミリ装置1が自装置1と同様の構成及び通信機能を備えるファクシミリ装置とIPファクシミリ通信により画像データ及びテキストデータを送信する際の処理動作について、図4に示すシーケンス図並びに図5及び図6に示すフローチャートに基づいて、より詳細に説明する。なお、これらの図に基づいて説明するファクシミリ装置1の処理動作は、それぞれ、ROM3に格納された制御プログラムに基づいて制御手段であるCPU2が発行する命令に従って実行される。以下説明の便宜のため、発呼側となるファクシミリ装置1を送信機1A、被呼側となるファクシミリ装置1を受信機1Bと称して説明する。
【0021】
まず、IPファクシミリ通信により送信機1Aと受信機1Bの間で画像データ及びテキストデータが送受信される際の通信手順を図4のシーケンス図に基づいて説明する。送信機1Aにおいて、送信操作がなされると、送信機1Aと受信機1Bの間で、図示するようなメディアセッションを確立するための呼制御セッションが形成される。すなわち、送信機1Aは、SIPサーバ20に対し受信機1BのIP電話番号を指定した、セッション参加リクエスト「INVITE」により受信機1Bの呼出を要求する(T1)。「INVITE」を受けたSIPサーバ20は、送信機1Aから指定されたIP電話番号に対応するIPアドレスを、IP電話番号とIPアドレスの対応付け情報を持つロケーションサーバ(不図示)に問い合わせて、取得した受信機1BのIPアドレスに対して、送信機1Aから受けた「INVITE」を送出することにより呼び出しを行う。SIPサーバ20の呼出しに対して受信機1Bが応答すると、受信機1Bは、「INVITE」を受信し、SIPサーバ20に対して成功応答コード「200」を送出する(R1)。前記成功応答コード「200」を受け取った送信機1Aは、成功応答コード「200」を受け取ったことを示す情報「ACK」をSIPサーバ20を介して受信機1Bに送信する(T2)。その後、送信機1Aと受信機1Bとの間に、メディアセッションが確立され、送信機から受信機1Bへ画像データが送信される。
【0022】
ユーザにより指定されたテキストデータは(テキストデータの指定については後述する。)、メディアセッションが確立されている間、メディアセッションにおける画像データの送信処理と別個独立したタイミングでSIPメソッド「MESSAGE」によって受信機1Bへ送信される(T3)。すなわち、ユーザにより指定されたテキストデータは、画像データの送信処理と同時に、或いは、前記画像データの送信処理に前後して、SIPメソッド「MESSAGE」によって受信機1Bへ送信される。なお、SIPメソッドは、指定された任意のテキストデータを相手先へ送信することができるものであれば、これに限定されず、その他のメソッドを使用してもよい。
【0023】
受信機1Bは、送信機1Aから受信した画像データ、テキストデータに対して、それぞれ所定の処理を施す。例えば、受信画像データに対しては、印刷処理、転送処理、画面表示処理等を行い、受信テキストデータに対しては、印刷処理、画面表示処理等を行う。また、受信機1Bにおいて、予めテキストデータと特定の処理動作を対応付けて記憶しておき、受信したテキストデータをコマンドとみなして対応する処理動作を実行するようにしてもよい。
【0024】
送信機1Aから受信機1Bへの画像データ及びテキストデータの送信処理が完了すると、送信機1Aからセッションの終了を要求する「BYE」がSIPサーバ20を介して受信機1Bへ送信され(T4)、受信機1Bが、成功応答コード「200」をSIPサーバ20を介して送信機1Aへ送信した後(R3)、通信が切断される。
【0025】
次に、送信機1Aの上記処理動作について、図5及び図6に示すフローチャートに基づいて更に詳細に説明する。
【0026】
送信機1Aにおいて、宛先電話番号(宛先情報)が、直接入力指定され、あるいは、短縮・ワンタッチ機能を利用して指定されると(S1)、指定された宛先電話番号からIPファクシミリ送信を行うか、G3ファクシミリ送信を行うかが判断される(S2)。該判断は、例えば電話番号の特定の桁に基づいて行われる。
【0027】
G3ファクシミリ送信を行うと判断した場合は(S2:NO)、送信開始操作(スタートキーの押下など)があった後(S3:YES)、原稿の画像データをG3ファクシミリ通信により指定された電話番号の相手先装置へ送信する(S4)。
【0028】
IPファクシミリ送信を行うと判断した場合は(S2:YES)、テキストデータを送信するか否かの指示をユーザに求めるための処理動作として、例えば「テキストデータも送信しますか?」等の問合せ表示を行うとともに、その問合せ表示に対する肯定/否定指示操作(例えばY/Nの操作部12からの入力)を受付ける。そして、肯定指示操作が行われたことによりテキストデータも送信すると判断した場合に(S5:YES)、ユーザの所定操作によりテキストデータが指定される(S6)。
【0029】
ユーザによるテキストデータの指定は、前記S1で指定されたIP電話番号に対応付けて第1テーブル4bに登録されたテキストデータからの選択、原稿の種別に対応付けて第2テーブル4cに登録されたテキストデータからの選択、又はユーザが直接文字等を入力操作することにより行われる。より具体的には、送信機1Aは、前記S5で肯定判断をした後、例えば図7に示すような、テキストデータの指定方式を選択するための画面22を表示部11に表示する(S101)。該画面22においては、「IP電話番号に対応付けて登録したテキストデータから選択する。」、「原稿種別に対応付けて登録したテキストデータから選択する。」、「直接入力する。」等の選択可能な項目が表示される。所定操作により何れかの項目が選択されると、それぞれ対応する画面23、24、25が表示部11に表示される。
【0030】
「IP電話番号に対応付けて登録したテキストデータから選択する。」と表示された項目が選択されると(S102:宛先対応)、第1テーブル4bにおいて前記S1で指定されたIP電話番号に対応付けて記憶されているテキストデータを選択可能に表示するテキストデータ選択画面23が表示部11に表示される(S103)。該画面23において表示されたテキストデータの何れかが所定操作により選択されると、その選択結果が、後にテキストデータが送信されるまで、RAM4に記憶される(S104)。
【0031】
「原稿種別に対応付けて登録したテキストデータから選択する。」と表示された項目が選択されると(S102:原稿種別対応)、第2テーブル4cに登録されている原稿種別を選択可能に表示する原稿種別選択画面24が表示部11に表示される(S105)。該画面24において表示された原稿種別の何れかが所定操作により選択されると、その選択結果が、後にテキストデータが送信されるまで、RAM4に記憶される(S106)。
【0032】
「直接入力する。」と表示された項目が選択されると(S102:直接入力)、例えば図示するようなテキストデータの入力画面25を表示部11に表示し(S107)、操作部11のキー操作等によりテキストデータが直接入力操作された場合に、その入力されたテキストデータが後に送信されるまで記憶される(S108)。
【0033】
前記S6の処理動作を実行した後又は前記S5において否定判断した後、送信開始指示操作(スタートキーの押下など)がなされると(S7)、送信機1Aは、受信機1Bとの間で前記T1、T2等の呼制御セッションを形成して、メディアセッションを確立した上で(S8)、原稿の画像データの送信処理を行う(S9)。ここで送信される原稿の画像データは、読取部9によって読取られた原稿の画像データ、クライアントPCからファクシミリ送信命令とともに受け取った画像データ、予め自装置1に蓄積された画像データ等である。
【0034】
そして、前記S5で肯定判断をした場合は(S10:YES)、前記S104、S106又はS108において記憶した選択結果又は入力されたテキストデータに基づいて、指定された送信すべきテキストデータを読み出す。すなわち、S104の処理動作を実行した場合は、選択された宛先IP電話番号に対応付けられたテキストデータから選択されたものを、指定されたテキストデータとして、SIPメソッド「MESSAGE」により受信機1Bへ送信する(S11)。S106の処理動作を実行した場合は、選択された原稿種別(画像データの種別)に対応付けられたテキストデータを、指定されたテキストデータとして、SIPメソッド「MESSAGE」により受信機1Bへ送信する(S11)。S108の処理動作を実行した場合は、入力されたテキストデータを指定されたテキストデータとして、SIPメソッド「MESSAGE」により受信機1Bへ送信する(S11)。その後、セッション終了を要求する「BYE」を送出して受信機1Bとの間の通信を切断する。一方、前記S5で否定判断をした場合は(S10:NO)、前記S11の処理動作を行わずに「BYE」を送出して通信を切断する(T4)。
【0035】
なお、本実施の形態においては、S9の画像データの送信処理を行った後、S11のテキストデータの送信処理を行っているが、S9の画像データの送信処理を行う前に、S10及びS11の処理動作を行って、テキストデータの送信処理を行うようにしてもよい。また、S9の画像データを送信処理をしながら、S10及びS11の処理動作を行って、テキストデータを送信するようにしてもよい。
【0036】
また、本実施の形態においては、テキストデータを宛先IP電話番号や原稿種別と対応させて記憶しているが、テキストデータを他の情報と対応付けずに独立した形でRAM4の所定領域に複数登録しておき、前記S6において、登録されたそれらのテキストデータを選択可能に表示部11に表示し、選択されたものを指定された送信すべきテキストデータとして前記S11において送信するようにしてもよい。後に説明する第2及び第3の実施の形態においても同様である。
【0037】
つぎに、本発明の第2の実施の形態に係る通信装置について、図面に基づいて説明する。第2の実施の形態に係る通信装置も、第1の実施の形態と同様に複合機型のファクシミリ装置を例に挙げて説明する。
【0038】
第2の実施の形態に係るファクシミリ装置は、定型文書のフォームを予め記憶しており、原稿の送信側となる場合に、相手先が使用すべき定型文書のフォームの識別情報のテキストデータ、前記フォームに組み込むべき組込情報のテキストデータ、及び原稿の画像データを送信する。ここで、定型文書のフォームは、文書の宛名など内容が変更される部分以外の文字情報、画像情報等で構成されている。
【0039】
一方、ファクシミリ装置が原稿の受信側となる場合には、受信したフォームの識別情報に従って、使用する定型文書のフォームを選択し、選択した定型文書のフォームに組込情報のテキストデータを組み込んだ定型文書を生成する。そして、生成した定型文書を送信側から受信した画像データとともに印字出力する。以下、かかるファクシミリ装置の処理動作について更に詳細に説明する。なお、第1の実施の形態に係るファクシミリ装置1と同様の構成、通信機能については、図面において同一符号を付してその説明を省略し、主に相違点についてのみ説明を行う。
【0040】
図8に第2の実施の形態に係るファクシミリ装置30の構成例を示す。図示するように、ファクシミリ装置30の画像メモリ5には、複数の定型文書のフォーム5a乃至5dが記憶されている。また、RAM4には、定型文書のフォーム5a乃至5dとそれら定型文書のフォームの識別情報とを対応付けた対応テーブル4dが記憶されている。
【0041】
図9に対応テーブル4dの構成例を示す。図に例示する対応テーブル4dは、定型文書のフォームの識別情報として、「回覧文書」、「処理依頼文書」、「掲示文書」、「通常文書」を格納している。テーブル4dは、これら識別情報と画像メモリ5に記憶している定型文書のフォーム5a乃至5dとの対応関係を記憶している。
【0042】
画像メモリ5には、前述したように、定型文書のフォームとして、回覧フォーム5a、処理依頼フォーム5b、掲示フォーム5c及び通常フォーム5dが記憶されている。各フォーム5a乃至5dの所定位置には、送信側から受信した組込情報のテキストデータに置換えられる予定の置換えテキストが配置されている。置換えテキストの組込情報への置き換えは、例えば図10の左上図等に示すように、組込情報Kの直前に付加されたフィールド情報Fに従って行われる。本実施の形態においては、フィールド情報Fと置き換えテキストの特殊記号「$」の後の部分が一致するように置き換え処理が行われる。
【0043】
回覧フォーム5aは、例えば図10の右上図に示すように、回覧文書であることを示す表示「回覧文書」、置換えテキスト「$名前」、添付文書の回覧を依頼する表示「添付の文書を回覧して下さい。」、置き換えテキスト「$期限」等からなる。なお、前記名前置換え記号「$名前」には、回覧確認者が押印、サイン等を書き込むための枠欄が各々設けられている。
【0044】
処理依頼フォーム5bは、例えば図11の右上図に示すように、処理依頼文書であることを示す表示「処理依頼文書」、置きえテキスト「$名前」、添付文書に指示する処理を依頼する旨の表示「添付の文書について・・・」、置き換えテキスト「$期限」等からなる。
【0045】
掲示フォーム5cは、例えば図12の右上図に示すように、掲示文書であることを示す表示「掲示文書」、置き換えテキスト「$名前」、添付文書の掲示を依頼する旨の表示「添付の文書を下記期限まで・・・」、置き換えテキスト「$期限」等からなる。
【0046】
通常文書フォーム5dは、例えば図13の右上図に示すように、複数の置換えテキスト「$名前1」、「$名前2」、「$メッセージ」等からなる。
【0047】
次に、ファクシミリ装置30同士でSIPを利用して原稿の画像データを送受信する場合の処理動作を、図14のシーケンス図及び図15のフローチャートに基づいて説明する。なお、以下の説明では、説明の便宜のため、原稿の送信側となるファクシミリ装置30を送信機30A、原稿の受信側となるファクシミリ装置30を受信機30Bという。
【0048】
まず、送信機30Aにおいて、定型文書が添付されていない原稿が読取部9にセットされ、相手先の宛先情報(IP電話番号)が指定される。更に、定型文書のフォームの識別情報、定型文書のフォームに組み込むべき組込情報、組込情報のフィールド情報等が指定される。これら情報の指定は、ユーザが送信機30A又はクライアントPCの操作部から入力操作することにより行われる。ただし、前記情報の指定は、第1の実施の形態のS101乃至S108において説明したように、テーブル4cにおいて、各原稿種別(つまり、定型文書の種別毎)に対応付けて識別情報、組込情報及びフィールド情報を記憶しておき、ユーザの選択操作により選択された定型文書に対応付けられた識別情報、組込情報及びフィールド情報を指定できるようにしてもよい。
【0049】
次いで、送信機30Aは、セットされた原稿の画像データの読取処理を開始するとともに、指定された前記定型文書のフォームの識別情報、組込情報及びフィールド情報を記述したテキストデータをSIPメソッド「MESSAGE」によって、受信機30Bへ送信する(T1)。ここで、識別情報のテキストデータは、「MESSAGE」のメッセージボディの先頭行に記述され、組込情報及びフィールド情報のテキストデータは2行目以降に記述される。また、識別情報、組込情報及びフィールド情報のテキストデータには、受信機30Bが他のテキストデータと区別できるように、所定のテキストデータが付される。本実施形態においては、前記所定のテキストデータとして、記号「<」、「>」がその前後に付される。
【0050】
送信機30AからSIPメソッド「MESSAGE」により送信されたテキストデータが、受信機30Bに受信されると、受信機30Bは応答コード「200 OK」を送信機30Aへ送信する(R1)。そして更に、送信機30Aと受信機30Bは、相互に「INVITE」、「200 OK」、「ACK」などのシグナリングメッセージを相互にやり取りして(T2、R2、T3)、メディアセッションを確立する。
【0051】
確立されたメディアセッションにおいては、送信機30Aから受信機30Bに対して原稿の画像データが送信される。送信機30Aは、送信予定の画像データを全て送出した後、セッションを終了するためのSIPメソッド「BYE」を受信機30Bに対して送信し、これを受信した受信機30Bが応答コード「200 OK」を返信して、メディアセッションが終了される。
【0052】
受信機30Bは、前記T1において送信機30Aから送信されたテキストデータを受信すると、図15のフローチャートに示すような、処理動作を実行する。すなわち、受信機30Bは、送信機30AからSIPメソッド「MESSAGE」によりテキストデータを受信すると(S201)、受信したテキストデータの内容を解析し(S202)、それが定型文書のフォームを利用すべきことを指定するものか否かを判断する(S203)。該判断は、受信したテキストデータに記号「<」、「>」で囲まれた所定の定型文書のフォームの識別情報、つまり、記号「<」、「>」で囲まれた「回覧文書」、「処理依頼文書」等のテキストデータが含まれるか否かにより判断される。
【0053】
記号「<」、「>」で囲まれた「回覧文書」、「処理依頼文書」等のテキストデータが受信テキストデータに含まれておらず、定型文書のフォームを利用すべきことを指定するものではないと判断した場合は(S203:NO)、所定の処理動作を実行する(S204)。例えば、「MESSAGE」により受信したテキストデータの記録部10における印字出力、表示部11における表示出力等を実行する。
【0054】
前記S203において、記号「<」、「>」で囲まれた「回覧文書」、「処理依頼文書」等のテキストデータが受信テキストデータに含まれており、定型文書のフォームを利用べきことを指定するものであると判断した場合は(S203:YES)、使用する定型文書のフォームを決定するとともに(S205)、組込情報及びフィールド情報を抽出する(S206)。具体的には、識別情報にテーブル4dにおいて、記号「<」、「>」に囲まれた、「回覧文書」、「処理依頼文書」等に対応付けられたものを使用すべき定型文書のフォームとして決定する。さらに、2行目以降に記述されている、記号「<」、「>」で囲まれた情報をそれぞれフィールド情報及び組込情報とみなして上行から下行へ順番に行毎に抽出する。
【0055】
次いで、前記S205において決定した定型文書のフォームを画像メモリ5から読み出し、その定型文書のフォームに前記S206で抽出した組込情報を組み込んで定型文書を生成する(S207)。具体的には、抽出した組込情報Kのテキストデータをそのフィールド情報Fに従って、定型文書のフォームの置換えテキストに置換える。
【0056】
受信機30Bが、図10に示すような、テキストデータX1をSIPメソッド「MESSAGE」により受信した場合、識別情報S「回覧文書」に対応付けられた回覧フォーム5aを画像メモリ5から読み出す。そして、回覧フォーム5aの置換えテキスト「$名前」を、フィールド情報「名前」が付された組込情報K(図示「村田一郎」、「村田二郎」等)のテキストデータに置換える。更に、回覧フォーム5aの置換えテキスト「$期限」を、フィールド情報「期限」が付された組込情報K(図示「2004/4/10」)に置換えて回覧文書Z1を生成する。
【0057】
受信機30Bが、図11に示すような、テキストデータX2をSIPメソッド「MESSAGE」により受信した場合、識別情報S「処理依頼文書」に対応付けられた処理依頼フォーム5bを画像メモリ5から読み出す。そして、処理依頼フォーム5bの置換えテキスト「$名前」を、フィールド情報「名前」が付された組込情報K(図示「村田一郎」)に置換える。更に、処理依頼フォーム5bの置換えテキスト「$期限」を、フィールド情報「期限」が付された組込情報K(例えば図示「2004/4/10」)に置換えて回覧文書Z2を生成する。
【0058】
受信機30Bが、図12に示すような、テキストデータX3をSIPメソッド「MESSAGE」により受信した場合、識別情報S「掲示文書」に対応付けられた掲示フォーム5cを画像メモリ5から読み出す。そして、掲示フォーム5cの置き換えテキスト「$名前」を、フィールド情報「名前」が付された組込情報K(図示「村田一郎」)に置換える。更に、掲示フォーム5cの置換えテキスト「$期限」を、フィールド情報「期限」が付された組込情報K(例えば図示「2004/4/10」)に置換えて掲示文書Z3を生成する。
【0059】
受信機30Bが、図13に示すような、テキストデータX4をSIPメソッド「MESSAGE」により受信した場合、識別情報S「通常文書」に対応付けられた通常フォーム5dを画像メモリ5から読み出す。そして、通常フォーム5dの置換えテキスト「$名前」を、フィールド情報「名前」が付された組込情報K(図示「村田一郎」)に、また、置き換えテキスト「$名前2」を、フィールド情報「名前2」が付された組込情報K(図示「○×(株)日本太郎」)に置換える。更に、置換えテキスト「$メッセージ」をフィールド情報「メッセージ」が付された組込情報K(図示「いつもお世話になっています・・・」)に置き換えて掲示文書Z4を生成する。
【0060】
最後に、送信機30Aから画像データを受信し(S208)、受信した画像データを前記S207で生成した文書Z1、Z2、Z3又はZ4とともに印字出力する(S209)。なお、前記印字出力処理に代えて、転送、表示などその他の出力処理を行っても良い。
【0061】
本実施の形態においては、「MESSAGE」によるテキストデータの送受信が行われた後に、画像データの送受信が行われているが、これらの実行順序は逆であってもよく、また、これらを同時に並行して実行してもよい。この場合、前記S208、T2、T3、T4、R2、R3の処理動作が前記S201乃至S207の処理動作より先に或いは並行して実行される。
【0062】
以上の説明から明らかなように、第2の実施の形態に係るファクシミリ装置30によれば、定型文書は、予め受信側で記憶された定型フォーマットに送信側から受信した組込情報を組み込むことにより生成されるので、定型文書を授受する際のデータ伝送量を低減することができる。また、これにより、通信時間を短くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、例えば、SIPにより確立したメディアセッションで画像データを送受信する通信装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】第1の実施の形態に係る通信装置(ファクシミリ装置)の構成例等を示した図である。
【図2】宛先IP電話番号(宛先情報)とテキストデータを対応付けて登録したテーブルの一例を示す図である。
【図3】原稿種別とテキストデータを対応付けて登録したテーブルの一例を示す図である。
【図4】第1の実施の形態に係るファクシミリ装置同士がIPファクシミリ通信を実行する際に形成する通信手順の一例の概略を示したシーケンス図である。
【図5】第1の実施の形態に係るファクシミリ装置がIPファクシミリ送信又はG3ファクシミリ送信する際に実行する処理動作を示したフローチャートである。
【図6】テキストデータの指定が行われる際に実行される発呼側ファクシミリ装置の処理動作を示したフローチャートである。
【図7】テキストデータの指定が行われる際に発呼側ファクシミリ装置において表示される表示画面の具体例を示した図である。
【図8】第2の実施の形態に係る通信装置(ファクシミリ装置)の構成例等を示した図である。
【図9】定型文書のフォームの識別情報と定型文書のフォームを対応つけて記憶したテーブルの一例を示す図である。
【図10】定型文書の1つである回覧文書が生成される場合の説明図である。
【図11】定型文書の1つである処理依頼文書が生成される場合の説明図である。
【図12】定型文書の1つである掲示依頼文書が生成される場合の説明図である。
【図13】定型文書の1つである通常文書が生成される場合の説明図である。
【図14】第2の実施の形態に係る通信装置(ファクシミリ装置)同士が画像データとテキストデータを送受信する際に形成する通信手順の一例の概略を示したシーケンス図である。
【図15】第2の実施の形態に係る通信装置(ファクシミリ装置)がSIPを用いて画像データ及びテキストデータを受信する際に実行する処理動作を示したシーケンス図である。
【符号の説明】
【0065】
S 識別情報
K 組込情報
X1乃至X4 「MESSAGE」により送信されるテキストデータ
30、30A、30B ファクシミリ装置(通信装置)
2 CPU
3 ROM
4 RAM
4d 対応テーブル
5a 回覧フォーム(定型文書のフォーム)
5b 処理依頼フォーム(定型文書のフォーム)
5c 掲示フォーム(定型文書のフォーム)
5d 通常フォーム(定型文書のフォーム)
10 記録部
11 表示部
20 SIPサーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼制御プロトコルにより確立したメディアセッションで画像データを送信する画像データ送信手段と、相手先が使用すべき定型文書のフォーム及び該フォームに組み込むべき組込情報を指定する指定手段と、指定された前記定型文書のフォームの識別情報及び前記組込情報のテキストデータを前記呼制御プロトコルのメソッドにより送信する送信手段と、を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
呼制御プロトコルにより確立したメディアセッションで画像データを受信する画像データ受信手段と、前記呼制御プロトコルのメソッドによりテキストデータを受信するテキストデータ受信手段と、複数の定型文書のフォームとそれら定型文書のフォームの識別情報を対応付けて記憶する記憶手段と、前記テキストデータ受信手段により受信した識別情報に対応付けられた定型文書のフォームに、前記識別情報とともに受信した組込情報を組み込んで、これを前記画像データ受信手段により受信した画像データとともに出力する出力手段と、を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項3】
前記組込情報には、発信元名又は送信先名が含まれることを特徴とする請求項1又は2記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−80814(P2006−80814A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−261903(P2004−261903)
【出願日】平成16年9月9日(2004.9.9)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】