説明

通信装置

【課題】通話音質の変化が少なく、かつ通話中においても発振する前にハウリングを抑制することができる通信装置を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態に係る通信システムの各端末1は、自らが送信したオーディオ信号が他の端末1から放音され、各端末1のそれぞれから放音された自らの音声が、自らの端末1により収音されたときの音量レベルを、放音した各端末1に対応する系列のPN符号の音量レベルを判定することにより認識することができる。そして、判定結果を対応する各端末1に対して通知することにより、通知を受けた各端末1は、自らの放音によりハウリングが発生しそうな端末1を認識して、各端末1から放音する音声のうち、ハウリングが発生しそうな端末1の音声の音量レベルを調整することによりハウリングを抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置におけるハウリングを抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
通話が可能な通信端末間においては、音声の回り込みにより発振がおきるハウリングが発生する場合がある。このようなハウリングを抑制するために、発振現象を検出して、音量を制御する技術が特許文献1に開示されている。また、その他にも、ハウリングを抑制するための技術が例えば、特許文献2、3に開示されている。
【特許文献1】特開2007−209043号公報
【特許文献2】特開2006−270147号公報
【特許文献3】特開2002−51142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの特許文献においては、発振現象がおきる前にハウリングを抑制できなかったり、会話中にレベルを調整できずにハウリングを抑制できなかったりと、必ずしも利用者にとって使い勝手のよいものではなかった。
【0004】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、通話音質の変化が少なく、かつ通話中においても発振現象がおきる前にハウリングを抑制することができる通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決するため、本発明は、他端末とネットワークを介して通信する通信装置において、前記他端末からオーディオデータを受信するオーディオデータ受信手段と、予め設定された周波数以上の帯域における、予め設定された系列のPN符号を発生する発生手段と、前記オーディオデータに応じた音に前記PN符号を重畳した合成音を放音する放音手段と、収音手段と、前記収音手段によって収音された音に含まれるPN符号のレベルであって、前記PN符号とは系列が異なるように予め設定された系列のPN符号のレベルを判定する判定手段と、前記判定手段によって判定されたレベルを示す他端末音量情報を前記他端末に前記ネットワークを介して送信する他端末音量情報送信手段と、前記他端末において前記放音手段から放音されたPN符号を収音したときのレベルを示す自端末音量情報を、当該他端末から前記ネットワークを介して受信する自端末音量情報受信手段と、前記自端末音量情報に応じて、前記合成音の音量レベルを調整する調整手段とを具備することを特徴とする通信装置を提供する。
【0006】
また、別の好ましい態様において、前記ネットワークを介して通信する他端末は複数であって前記オーディオデータ受信手段は、前記他端末の各々に対応してオーディオデータを受信し、前記発生手段は、前記他端末の各々に対応して、それぞれ異なる系列のPN符号を発生し、前記放音手段は、前記他端末の各々に対応したオーディオデータとPN符号とを合成した前記合成音を加算して放音し、前記判定手段は、前記他端末の各々に対応して、それぞれ異なる系列のPN符号が設定され、前記他端末の各々に対応したPN符号のレベルを判定し、前記他端末音量情報送信手段は、前記判定手段によって前記他端末の各々に対応して判定されたレベルを示す他端末音量情報を、対応する他端末に前記ネットワークを介して送信し、前記調整手段は、前記自端末音量情報に応じて、当該自端末音量情報を送信した前記他端末に対応する合成音の音量レベルを調整することを特徴とする。
【0007】
また、別の好ましい態様において、前記ネットワークを介して通信する他端末は複数であって、前記他端末の各々に対応して、それぞれ異なる系列のPN符号が設定され、前記他端末の各々に対応したPN符号のレベルを、前記収音手段によって収音された音に基づいて判定し、判定結果により複数の前記他端末から一部の他端末を特定する特定手段と、前記特定手段によって特定された他端末を示す端末特定情報を送信する端末特定情報送信手段と、前記他端末から前記端末特定情報を受信する端末特定情報受信手段と、前記端末特定情報受信手段によって受信された端末特定情報に応じて、複数の前記他端末から一部の他端末を選択する選択手段とをさらに具備し、前記オーディオデータ受信手段は、前記他端末の各々に対応してオーディオデータを受信し、前記発生手段は、前記選択手段によって選択された他端末に対応した系列のPN符号を発生し、前記放音手段は、前記オーディオデータを放音するとともに、前記選択手段によって選択された他端末に対応するオーディオデータについては、前記発生手段によって発生されたPN符号を重畳した合成音として放音し、前記判定手段は、前記特定手段によって特定された他端末に対応した系列のPN符号が設定され、当該他端末に対応したPN符号のレベルを判定し、前記他端末音量情報送信手段は、前記判定手段によって前記他端末に対応して判定されたレベルを示す他端末音量情報を、当該他端末に前記ネットワークを介して送信し、前記自端末音量情報受信手段は、前記選択手段によって選択された他端末から前記自端末音量情報を受信し、前記調整手段は、前記自端末音量情報に応じて、当該自端末音量情報を送信した前記他端末に対応する合成音の音量レベルを調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、通話音質の変化が少なく、かつ通話中においても発振する前にハウリングを抑制することができる通信装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0010】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態における通信装置である端末が複数接続された通信システムを示す図である。この例においては、通信システムは、N台の端末1−1、1−2、・・・、1−N(以下、それぞれを区別しない場合には、端末1という)がネットワーク1000を介して接続されている。各端末1には、マイク11(端末1−Nにおいてはマイク11−Nという)およびスピーカ12(端末1−Nにおいてはスピーカ12−Nという)が設けられている。詳細は後述するが、各端末1のマイク11において収音した音声は、他の端末1にネットワーク1000を介して送信され、他の端末1のスピーカ12から放音されるようになっている。また、各端末1は、自端末で音声を収音中に他端末からの音声を放音できる(全二重)構成になっている。
【0011】
この構成において、話者Sから端末1−1のマイク11−1に伝達される音声(経路S→1)は、他の端末1−2、1−3、・・・、1−Nのスピーカ12−2、12−3、・・・、12−Nから放音される。放音された音声が端末1−1のマイク11−1に伝達(経路2→1、3→1、・・・、N→1)されて収音されると、その収音レベルによってはハウリングが発生することになる。
【0012】
ここでは、各端末1のスピーカ12から放音された音声がマイク11において収音されるような距離で、各端末1が設置されているものとしているが、このような伝達経路が発生しないような遠隔地の端末1が含まれていてもよい。なお、後述するように、端末1−1のスピーカ12−1から放音された音声がマイク11−1に伝達(経路1→1)されるものに関しては、例えばエコーキャンセラにおいてキャンセルする。以下、このようにして発生するハウリングを抑制することができる端末1の構成について、図2を用いて説明する。
【0013】
図2は、第1実施形態に係る端末1−1の構成を示すブロック図である。マイク11−1は、周囲の音声を収音する収音手段であって、収音した音声を示すオーディオ信号Sinを出力する。このオーディオ信号Sinに他の端末1から放音された音声が含まれている場合には、後述するように予め設定された周波数以上の高周波数帯域(この例においては、18kHz以上)に、PN(Pseudo Noise:擬似ノイズ)符号が重畳されたものになっている。このPN符号は各端末1において異なる系列で重畳されたものであり、複数の系列のPN符号が合成されている。
【0014】
LPF120は、遮断周波数以下の周波数帯域を通過させるローパスフィルタであって、オーディオ信号SinのうちPN符号が重畳されている高周波数帯域を減衰させる。なお、LPF120は、必ずしも存在しなくてもよく、特に、後述する音声エンコーダ140においてエンコードするときに高周波数帯域がカットされる場合などは不要である。
【0015】
エコーキャンセラ130は、スピーカ12−1から放音されるオーディオ信号St(1)が入力され、オーディオ信号Sinに含まれるオーディオ信号St(1)の成分(上記経路1→1により回りこんだ成分)を低減させる処理を行って、オーディオ信号Sa(1)として出力する。音声エンコーダ140は、オーディオ信号Sa(1)をエンコードし通信制御部50に出力する。
【0016】
HPF21は、遮断周波数(この例においては18kHz)以上の周波数帯域を通過させるハイパスフィルタであって、オーディオ信号SinのうちPN符号が重畳されている高周波数帯域を通過させたオーディオ信号Spnを出力する。
【0017】
相関器221−2は、予め設定された系列のPN符号を発生させて、このPN符号と入力されるオーディオ信号Spnとの相互の相関を畳み込み演算などを行って算出し、相関の算出結果を示す相関情報を出力する。相関器221−2に設定されている系列は、PN系列(21)であり、後述するように、端末1−2において重畳されたPN符号の系列である。音量判定部222−2は、相関器221−2から出力された相関情報からオーディオ信号Spnに含まれるPN系列(21)のPN符号の音量レベルを判定し、判定結果を示す音量情報T(12)を通信制御部50に出力する。この音量レベルが大きいほど、端末1−2が端末1−1に近い、または端末1−2におけるスピーカ12−2からの音量レベルが大きいことを示している。
【0018】
相関器221−3、221−4、・・・、221−Nは、相関器221−2とは設定されているPN符号の系列が異なり、それぞれPN系列(31)、(41)、・・・、(N1)であって、端末1−3、1−4、・・・、1−Nにおいて重畳されたPN符号の系列が設定されている。そして、音量判定部222−3、222−4、・・・、222−Nは、それぞれ相関器221−3、221−4、・・・、222−Nにおいて算出された相関から、それぞれPN符号の音量レベルを判定し、音量情報T(13)、T(14)、・・・、T(1N)を出力する。
【0019】
相関器221−2、221−3、・・・、221−Nと音量判定部222−2、222−3、・・・、222−Nとにより判定部22−2、22−3、・・・、22−N(以下、それぞれを区別しない場合は判定部22という)を構成する。このように、判定部22においては、複数の系列のPN符号を含むオーディオ信号Spnから、それぞれの系列のPN符号を分離して各PN符号の音量レベルを判定する。この例においては、M系列を用いたPN符号であり、その周期により使用できる系列の数が異なる。例えば、511周期であれば、使用できる系列は48となる。なお、Gold系列を用いて、より多くの系列が使用可能になるようにしてもよい。
【0020】
通信制御部50は、音声エンコーダ140によってエンコードされたオーディオ信号Sa(1)を他の端末1に送信するとともに、各判定部22から出力された音量情報T(12)、T(13)、・・・、T(1N)(以下、それぞれを区別しない場合には音量情報Tという)(他端末音量情報)をそれぞれ端末1−2、1−3、・・・、1−Nに送信する。各音量情報Tは、各端末1にブロードキャストで送信し、各端末1において対応する音量情報を取得させるようにしてもよい。
【0021】
ここで、音量情報T(xy)は、端末1−xにおいて生成された音量情報であって、端末1−yにおいて重畳されたPN系列(yx)であるPN符号の音量レベルを示すものである。すなわち、音量情報T(xy)は、端末1−yにおいて放音された音声を端末1−xにおいて収音したときの音量レベルを示すものである。また、オーディオ信号Sa(z)は、端末1−zにおいて送信される音声を示すものである。上述のPN系列(yx)は、端末1−yにおいて端末1−xから受信したオーディオ信号Sa(x)に対して、後述のように制御されたレベルで重畳され、端末1−xにおいて音量レベルが判定されるPN符号の系列を示す。このPN系列(yx)は、x、yが異なれば、それぞれが全て異なるものになっている。すなわち、後述のように、端末1−yにおいて端末1−xから受信したオーディオ信号Sa(x)にPN系列(yx)のPN符号を重畳して放音された音声を、端末1−xで収音することにより、端末1−xは、端末1−y経由で回り込んできた音声の音量レベルを判定することができる。
【0022】
また、通信制御部50は、他の端末1から同様にして送信される音量情報Tを受信する。ここで、受信する音量情報Tは、音量情報T(21)、T(31)、・・・、T(N1)(自端末音量情報)であって、端末1−1において放音された音声を他の端末1−2、1−3、・・・、1−Nにおいて収音したときの音量レベルを示すものである。さらに、これらの他の端末1からは、それぞれ、エンコードされたオーディオ信号Sa(2)、Sa(3)、・・・、Sa(N)を受信する。
【0023】
音量レベル制御部31−2、31−3、・・・、31−Nは、それぞれ、音量情報T(21)、T(31)、・・・、T(N1)およびエンコードされたオーディオ信号Sa(2)、Sa(3)、・・・、Sa(N)が入力され、以下で説明する各処理を行って、オーディオ信号Sb(2)、Sb(3)、・・・、Sb(N)を出力する。音量レベル制御部31−2は、音声デコーダ311−2、PN符号発生器312−2、HPF313−2、レベル調整部314−2および加算器315−2を有する。
【0024】
音声デコーダ311−2は、エンコードされたオーディオ信号Sa(2)を通信制御部50から取得し、デコードして出力する。PN符号発生器312−2は、予め設定された系列のPN符号を発生して出力する。PN符号発生器312−2に設定されている系列は、PN系列(12)である。
【0025】
HPF313−2は、遮断周波数(この例においては18kHz)以上の周波数帯域を通過させるハイパスフィルタであって、PN符号発生器312−2によって発生させたPN符号の高周波数帯域を通過させる。そして、加算器315−2において、高周波数帯域のPN符号をオーディオ信号Sa(2)に重畳した合成音を出力する。
【0026】
レベル調整部314−2は、加算器315−2から出力される合成音の出力レベルを入力される音量情報T(21)に応じて調整したオーディオ信号Sb(2)を出力する。この調整は音量情報T(21)が示す音量レベルが大きくなると、合成音の音量レベルを小さくするようにするものである。この例においては、音量情報T(21)が示す音量レベルが予め設定された値以上にならないように、すなわち、ハウリングを抑制するように音量レベルを調整する。
【0027】
音量情報T(21)は、端末1−2において収音したPN系列12の音量レベルを示すものであり、これは、端末1−2から受信した音声がスピーカ12−1から放音され、放音された音声が端末1−2において収音(経路1→2)されたレベルと正の相関がある。したがって、上記のように音量レベルの調整を行うことにより、端末1−1と端末1−2との間の結合によるハウリングを抑制することができる。
【0028】
ここで、他の音量レベル制御部31−3、31−4、・・・、31−NのPN符号発生器312−3、312−4、・・・、312−Nは、設定される系列がそれぞれ異なり、PN系列(13)、(14)、・・・、(1N)となっている。他の構成については、音量レベル31−2と同様であるので、詳細の説明を省略する。
【0029】
加算部32は、音量レベル制御部31−2、31−3、・・・、31−Nから出力されるオーディオ信号Sb(2)、Sb(3)、・・・、Sb(N)を加算して、オーディオ信号St(1)として出力し、スピーカ12−1から放音させる。また、エコーキャンセラ130に対しても出力する。以上が、端末1−1の構成についての説明である。
【0030】
他の端末1については、端末1−1と同様な構成であり、詳細な説明は省略するが、上述のように、他の端末1とは互いに発生するPN符号の系列が異なるように設定されているものである。このように設定されたPN符号の系列の関係について図3を用いて説明する。
【0031】
図3は、各端末1において放音される音声に含まれるPN符号の系列、各端末1において収音する音声に含まれるPN符号のうち、音量レベルを判定する系列を示すものである。例えば、端末1−1において放音される音声に含まれるPN符号の系列は、範囲A(横1行)に対応する系列である。また、同一空間に各端末1が設置されているときには、端末1−1は、図3に記載された系列全てのPN符号を収音(オーディオ信号Sinがオーディオ信号St(1)、St(2)、・・・、St(N)を含んでいる)することになるが、音量レベルを判定する系列は、そのうち範囲B(縦1列)に対応する系列である。
【0032】
この範囲Bの系列は、端末1−2、1−3、・・・、1−Nにおいてそれぞれ放音されるオーディオ信号Sa(1)に重畳されるPN符号の系列であり、合成音としてその音量レベルが制御されたものである。すなわち、端末1−1は、他の端末1から放音される音声のうち、自らが送信したオーディオ信号Sa(1)に重畳されたPN符号の音量レベルの判定を行うが、他の端末1から送信されたオーディオ信号Sa(2)、Sa(3)、・・・、Sa(N)に重畳されたPN符号の音量レベルの判定は行わない。
【0033】
このように、本発明の第1実施形態に係る通信システムの各端末1は、自らが送信したオーディオ信号が他の端末1から放音され、各端末1のそれぞれから放音された自らの音声が、自らの端末1により収音されたときの音量レベルを、放音した各端末1に対応する系列のPN符号の音量レベルを判定することにより認識することができる。そして、判定結果を対応する各端末1に対して通知することにより、通知を受けた各端末1は、自らの放音によりハウリングが発生しそうな端末1を認識して、各端末1から放音する音声のうち、ハウリングが発生しそうな端末1の音声の音量レベルを調整することによりハウリングを抑制することができる。このとき、重畳されているPN符号は、高周波数帯域に制限されたものであるから、聴覚上の影響が少ない。
【0034】
<第2実施形態>
第1実施形態においては、PN符号の系列は、図3に示すようにN×(N−1)の系列が必要であり、M系列で511周期の場合には、系列の数が48であったため、N=7までが限界であった。第2実施形態においては、ハウリングを抑制する制御対象となる端末1(例えば隣接する端末)を1つの端末1に特定することにより用いるPN符号の系列を少なくする構成の端末1Aとなっている。以下、第2実施形態における端末1A−1について図4を用いて説明する。
【0035】
図4は、第2実施形態に係る端末1A−1の構成を示すブロック図である。符号が同じ構成については、第1実施形態における説明と同様であるから、その説明を省略する。PN符号(1)発生器41は、PN系列(1)のPN符号を発生する。なお、本構成は、端末1A−2、1A−3、・・・、1A−Nにおいては、それぞれ異なる系列であるPN系列(2)、(3)、・・・、(N)のPN符号を発生するようになっている。
【0036】
HPF42は、遮断周波数(この例においては18kHz)以上の周波数帯域を通過させるハイパスフィルタであって、PN符号(1)発生器41によって発生させたPN符号の高周波数帯域を通過させる。そして、高周波数帯域のPN符号は、加算器43においてオーディオ信号St(1)と加算され、放音部12−1から放音される。
【0037】
隣接端末検出部44は、入力されるオーディオ信号Spnについて、PN系列(2)、(3)、・・・、(N)のPN符号を発生させて、相互の相関を算出して、第1実施形態における判定部22と同様に、それぞれの系列におけるPN符号の音量レベルを判定する。そして、最大の音量レベルとなるPN符号の系列に係る端末1が隣接する端末であり、ハウリングを抑制する制御対象となる端末1A(以下、特定端末1A−Xという)として特定する。隣接端末検出部44は、端末1A−1において特定端末1A−Xが特定されたことを示す隣接端末情報R(1)を通信制御部50に出力し、特定端末1A−Xに送信させる。
【0038】
なお、ブロードキャストで送信し、特定端末1A−Xで取得させてもよい。この場合は、隣接端末情報R(1)は、相関を検出したPN符号の系列(端末1−Xであれば、PN系列(X))を示すものとし、各端末1A−Xにおいて自らが重畳したPN符号の系列と一致したことを認識することにより、端末1A−Xが特定されたことを認識してもよい。また、各端末1AとPN系列とを対応させたテーブルを記憶して、これを参照することによりPN符号の系列から各端末1Aを対応させるようにしてもよい。
【0039】
また、隣接端末検出部44は、相関器221Aに対して、オーディオ信号Spnから相関を算出するPN符号の系列を、PN系列(X1)、すなわち、特定した特定端末1A−Xにおいて重畳され、端末1A−1において音量レベルが判定されるPN符号の系列として指定する。そして、相関器221Aによって算出された相関から、PN系列(X1)のPN符号の音量レベルを音量判定部222Aにおいて判定し、音量情報T(1X)を出力する。
【0040】
隣接端末選択部45は、他の端末1Aから送信され、通信制御部50において受信した隣接端末情報R(2)、R(3)、・・・、R(N)が入力され、端末1A−1を特定端末として特定した他の端末1Aを選択する。この例においては、R(W)が示す特定された特定端末が端末1A−1であり、端末1A−W(以下、選択端末1A−Wという)が選択されるものとする。すなわち、選択端末1−Wから、ハウリングの抑制の制御対象として端末1A−1が特定されたことになる。通常は、選択端末1A−Wと特定端末1A−Xとは同じ(W=X)となるが、利用者の位置関係、設置されている部屋の形状などにより異なる場合(W≠X)もある。なお、複数の端末1Aから端末1A−1が特定されている場合には、いずれかの端末1Aを選択するようにすればよい。また、各隣接端末情報に判定したPN符号の音量レベルを示す情報が含まれるようにすれば、この音量レベルが一番大きい端末1Aを選択すればよい。
【0041】
隣接端末選択部45は、PN符号発生器312Aに対して、発生するPN符号の系列をPN系列(1W)として指定する。また、セレクタ316に対して、選択端末1A−Wを示す端末選択情報を出力する。PN符号発生器312Aにより発生するPN系列(1W)のPN符号は、HPF313Aにより18kHz以上の高周波数帯域に制限され、セレクタ316に出力される。
【0042】
セレクタ316は、端末選択情報が示す選択端末1A−Wに対応する加算器315−Wに対して、HPF313Aから出力されるPN符号を出力する。したがって、オーディオ信号Sa(W)に対してのみ、PN符号が重畳される。ここで、通信制御部50において受信する音量情報は、選択端末1A−Wから送信される音量情報T(W1)となり、その他の端末1Aからは送信されない。したがって、ハウリングの抑制の制御対象である選択端末1A−Wから送信されたオーディオ信号Sa(W)に対して、PN符号を重畳するとともに、この合成音の音量レベルが音量情報T(W1)に応じて調整される。そのため、ハウリングの抑制の制御対象となっていない端末1から送信されたオーディオ信号は、PN符号が重畳されず、また音量レベルも調整されない。
【0043】
このように、本発明の第2実施形態に係る通信システムの端末1A−1は、ハウリングの抑制の制御対象となる特定端末1A−Xを特定し、特定端末1A−Xに対して音量情報T(1X)を送信して、特定端末1A−Xから放音されるオーディオ信号Sa(1)の音量レベルを調整させる。一方、端末1A−1が特定端末として他の端末1A−Wに特定された場合には、端末1A−1は、端末1A−Wを選択端末1A−Wとし、端末1A−Wにおいて音量情報T(W1)が送信できるように、オーディオ信号Sa(W)にPN系列(1W)を重畳した合成音を放音する。この合成音は、レベル調整部314−Wにおいて、音量情報T(W1)に応じて音量レベルが調整されているから、ハウリングが抑制されるものとなる。
【0044】
なお、第2実施形態においては、隣接端末検出部44において特定する特定端末、隣接端末選択部45において選択される選択端末は、それぞれ一の端末1Aとしていたが、複数の端末1Aであってもよい。その場合には、相関器221A、音量判定部222Aを複数用いるとともに、PN符号発生器312A、HPF313A、セレクタ316を複数設ければよい。そして、隣接端末検出部44は、判定した音量レベルが大きい順から複数の端末1Aを特定するようにすればよい。全ての端末1Aが特定、選択されるものとすると、第1実施形態における端末1−1の構成が全て含まれたものと同等となる。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以下のように、さまざまな態様で実施可能である。
【0046】
<変形例1>
上述した第1実施形態において、端末1が2台、すなわちN=2であってもよい。すなわち、判定部22および音量レベル制御部31は、複数で構成されていなくてもよい。この場合には、加算部32は不要である。
【0047】
<変形例2>
上述した第1実施形態における相関器221−2、221−3、・・・、221−N、PN符号発生器312−2、312−3、・・・、312−Nに設定されるPN符号の系列は、図3に示すような各端末1において放音、判定とPN符号の系列との関係を定めたテーブルを予め記憶しておき、これを参照して設定されるようにしてもよい。また、各端末1がネットワーク1000を介して接続されたときに、互いに異なる系列になるように設定を行うようにしてもよい。
【0048】
上述した第2実施形態における相関器221A、PN符号発生器312A、PN符号(1)発生器41に設定されるPN符号の系列は、上述の第1実施形態のようにして設定されるものとしてもよい。また、隣接端末情報に設定すべきPN符号の系列の情報が含まれるようにして、これを参照してPN符号発生器312Aに設定を行うようにしてもよい。この場合には、設定すべきPN符号の系列が他の端末1Aと異なる系列になるように、各端末1Aにおいて予め内容をネゴシエーションしておいてもよい。
【0049】
<変形例3>
上述した第1、第2実施形態における音量レベルの調整は、常時行われるようにしてもよいし、通信開始時に行われるようにしてもよいし、予め設定されたタイミングで行われるようにしてもよい。また、加速度センサなどにより端末1の移動を検出した後に行われるようにしてもよい。常時行わない場合には、音量レベルの調整を行わないときにはPN符号の重畳を停止してもよい。
【0050】
<変形例4>
上述した第2実施形態における特定端末の特定、選択端末の選択は、常時行われるようにしてもよいし、通信開始時に行われるようにしてもよいし、予め設定されたタイミングで行われるようにしてもよい。また、加速度センサなどを用いて端末1の移動を検出した後に行われるようにしてもよい。特定端末の特定、選択端末の選択を常時行わない場合には、PN符号(1)発生器41とPN符号発生器312Aとは一の発生器として切り替えて使用してもよい。端末1Aの移動、利用者の移動などにより特定端末、選択端末は変化することがあるため、常時、または定期的に特定端末の特定、選択端末の選択をして、動的に行われることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施形態に係る通信システムの説明図である。
【図2】第1実施形態に係る端末の構成を示すブロック図である。
【図3】各端末の放音、判定とPN符号の系列との関係を示す図である。
【図4】第2実施形態に係る端末の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0052】
1,1A…端末、11…マイク、12…スピーカ、120…LPF,130…エコーキャンセラ、140…音声エンコーダ、21…HPF、22…判定部、221,221A…相関器、222,222A…音量判定部、31…音量レベル制御部、311…音声デコーダ、312,312A…PN符号発生器、313…HPF、314…レベル調整部、315…加算器、316…セレクタ、32…加算部、41…PN符号(1)発生器、42…HPF、43…加算器、44…隣接端末検出部、45…隣接端末選択部、50…通信制御部、1000…ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
他端末とネットワークを介して通信する通信装置において、
前記他端末からオーディオデータを受信するオーディオデータ受信手段と、
予め設定された周波数以上の帯域における、予め設定された系列のPN符号を発生する発生手段と、
前記オーディオデータに応じた音に前記PN符号を重畳した合成音を放音する放音手段と、
収音手段と、
前記収音手段によって収音された音に含まれるPN符号のレベルであって、前記PN符号とは系列が異なるように予め設定された系列のPN符号のレベルを判定する判定手段と、
前記判定手段によって判定されたレベルを示す他端末音量情報を前記他端末に前記ネットワークを介して送信する他端末音量情報送信手段と、
前記他端末において前記放音手段から放音されたPN符号を収音したときのレベルを示す自端末音量情報を、当該他端末から前記ネットワークを介して受信する自端末音量情報受信手段と、
前記自端末音量情報に応じて、前記合成音の音量レベルを調整する調整手段と
を具備することを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記ネットワークを介して通信する他端末は複数であって、
前記オーディオデータ受信手段は、前記他端末の各々に対応してオーディオデータを受信し、
前記発生手段は、前記他端末の各々に対応して、それぞれ異なる系列のPN符号を発生し、
前記放音手段は、前記他端末の各々に対応したオーディオデータとPN符号とを合成した前記合成音を加算して放音し、
前記判定手段は、前記他端末の各々に対応して、それぞれ異なる系列のPN符号が設定され、前記他端末の各々に対応したPN符号のレベルを判定し、
前記他端末音量情報送信手段は、前記判定手段によって前記他端末の各々に対応して判定されたレベルを示す他端末音量情報を、対応する他端末に前記ネットワークを介して送信し、
前記調整手段は、前記自端末音量情報に応じて、当該自端末音量情報を送信した前記他端末に対応する合成音の音量レベルを調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記ネットワークを介して通信する他端末は複数であって、
前記他端末の各々に対応して、それぞれ異なる系列のPN符号が設定され、前記他端末の各々に対応したPN符号のレベルを、前記収音手段によって収音された音に基づいて判定し、判定結果により複数の前記他端末から一部の他端末を特定する特定手段と、
前記特定手段によって特定された他端末を示す端末特定情報を送信する端末特定情報送信手段と、
前記他端末から前記端末特定情報を受信する端末特定情報受信手段と、
前記端末特定情報受信手段によって受信された端末特定情報に応じて、複数の前記他端末から一部の他端末を選択する選択手段と
をさらに具備し、
前記オーディオデータ受信手段は、前記他端末の各々に対応してオーディオデータを受信し、
前記発生手段は、前記選択手段によって選択された他端末に対応した系列のPN符号を発生し、
前記放音手段は、前記オーディオデータを放音するとともに、前記選択手段によって選択された他端末に対応するオーディオデータについては、前記発生手段によって発生されたPN符号を重畳した合成音として放音し、
前記判定手段は、前記特定手段によって特定された他端末に対応した系列のPN符号が設定され、当該他端末に対応したPN符号のレベルを判定し、
前記他端末音量情報送信手段は、前記判定手段によって前記他端末に対応して判定されたレベルを示す他端末音量情報を、当該他端末に前記ネットワークを介して送信し、
前記自端末音量情報受信手段は、前記選択手段によって選択された他端末から前記自端末音量情報を受信し、
前記調整手段は、前記自端末音量情報に応じて、当該自端末音量情報を送信した前記他端末に対応する合成音の音量レベルを調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−154482(P2010−154482A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333217(P2008−333217)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】