説明

通気性および排水性をもったプラスチック気泡シートまたはボードおよびその製造方法

【課題】
プラスチックフィルムの真空成形により形成した、多数のキャップ状の突起を有するキャップフィルム(1A)のキャップの底面に、平坦なプラスチックフィルムをバックフィルム(2A)として貼り合せ、多数の密閉された空気室を有する成形品とし、キャップの頂を連ねて平坦なプラスチックフィルムをライナーフィルム(3A)として貼り合わせてなる三層構成のプラスチック気泡シート(7A)であって、表面において通気性および排水性を有するものを提供する。
【解決手段】
ライナーフィルム(3A)を、製品の長手方向には連続しているが、幅方向には、フィルムが存在しない複数の部分(6)によって分割された構造とする。このライナーフィルムを接着剤として利用し、織布または不織布を表面に貼り合わせることにより、表面が連続しているが通気性および排水性は維持された四層構成のプラスチック気泡シート(8A)とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基本的には三層構成であり、場合によっては四層構成の、通気性および排水性をもったプラスチック気泡シートまたはプラスチック気泡ボードに関する。本発明はまた、それらの製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
本発明において「プラスチック気泡シート」(以下「気泡シート」という)という用語は、プラスチックフィルムを材料として使用し、その真空成形により多数のキャップ状の凹みを有するキャップフィルムを形成し、そのキャップの底面に平坦なプラスチックフィルムを貼り合せて、多数の密閉された空気室を有する成形品としたものを意味し、「プラスチック気泡ボード」(以下「気泡ボード」という)という用語は、それより厚いプラスチックシートを材料として使用し、構造的にはプラスチック気泡シートと同様であるような成形品を意味する。前者の材料となるフィルムは厚さが200μmより薄いものであって、製品は柔軟性を有するが、後者の材料とするシートは厚さが200μmより厚いものであって、製品は剛性を有する。
【0003】
上記の気泡シートおよび気泡ボードには、そのキャップの頂を連ねて、もう一枚の平坦なプラスチックフィルムまたはシートをライナーとして貼り合わせて、三層構成としたものがある。しかし、いずれの製品も、通気性や排水性はない。気泡シートは、その緩衝性能を利用して、青果物を包装するのに使用されるが、青果物が傷みやすく、とくに気泡シートと接した部分はその傾向が強いことが知られており、通気性のないことがその原因とされるから、表面が通気性をもった気泡シートの実現が望まれていた。
【0004】
気泡ボードにおいては、コンクリート打設のための型板として、ベニヤ板に代って使用され、また各種の工事の際の養生材としての使用に当たって、表面において排水性をもつことが望まれていたが、在来の三層構成の気泡ボードではその要望にこたえることができなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上述の未解決の問題を解決し、表面において通気性および排水性を有する三層構成または四層構成の気泡シートおよび気泡ボードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の三層構成のプラスチック気泡シートは、図1および図2にその構造を示すように、プラスチックフィルムの真空成形により形成した、多数のキャップ状の突起を有するキャップフィルム(1A)のキャップの底面に、平坦なプラスチックフィルムをバックフィルム(2A)として貼り合せ、多数の密閉された空気室を有する成形品を意味し、キャップの頂を連ねて平坦なプラスチックフィルムをライナーフィルム(3A)として貼り合わせてなる三層構成のプラスチック気泡シート(7A)であって、ライナーフィルム(3A)が、製品の長手方向には連続しているが、幅方向には、フィルムが存在しない複数の部分(6)によって分割された構造であることを特徴とする。
【0007】
本発明の三層構成のプラスチック気泡ボード(7B)は、前記した三層構成のプラスチック気泡シートにおいて、「キャップフィルム(1A)」を「キャップシート(1B)」に、「バックフィルム(2A)」を「バックシート(2B)」に、そして「ライナーフィルム(3A)」を「ライナーシート(3B)」にそれぞれ置き換え、「プラスチック気泡シート(7A)」を「プラスチック気泡ボード(7B)」に読み替えてなる製品である。
【0008】
本発明の四層構成のプラスチック気泡シートは、図3および図4にその構造を示すように、図1および図2のプラスチック気泡シート(7A)の上に、織布または不織布の層(5)を貼り合わせてなるプラスチック気泡シート(8A)である。すなわち、プラスチックフィルムの真空成形により形成した、多数のキャップ状の突起を有するキャップフィルム(1A)のキャップの底面に、平坦なプラスチックフィルムをバックフィルム(2A)として貼り合せ、多数の密閉された空気室を有する成形品を意味し、キャップの頂を連ねて平坦なプラスチックフィルムをライナーフィルム(3A)として貼り合わせてなる三層構成のプラスチック気泡シート(7A)に対し、ライナーフィルム(3A)を接着層として利用し、その上に織布または不織布の層(5)を貼り合わせてなるプラスチック気泡シート(8A)であって、ライナーフィルム(3A)が、製品の長手方向には連続しているが、幅方向には、フィルムが存在しない複数の部分(6)によって分割された構造であることを特徴とする。
【0009】
本発明の四層構成のプラスチック気泡ボード(8B)は、上記した四層構成のプラスチック気泡シートにおいて、「キャップフィルム(1A)」を「キャップシート(1B)」に、「バックフィルム(2A)」を「バックシート(2B)」に、そして「ライナーフィルム(3A)」を「ライナーシート(3B)」にそれぞれ置き換え、「プラスチック気泡シート(8A)」を「プラスチック気泡ボード(8B)」に読み替えてなる製品である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の三層構成のプラスチック気泡シート(7A)は、ライナーフィルム(3A)が幅方向には断続的であって、フィルムが存在しない複数の部分(6)によって分割された構造となっているから、従来のライナーフィルムが連続したプラスチック気泡シートと違って、フィルムが存在しない部分においては、被包装物との接触が、キャップの頂という孤立したものとの間でしか生じない。したがって、プラスチック気泡シートの面に沿って空気が流通可能であるという意味において、通気性を有する。それゆえ、たとえば青果物をこの三層構成のプラスチック気泡シートで包装したときに、被包装物の包装材料に接していた部分が傷むことが少なくなる。
【0011】
上記した構造は、通気性と同時に、排水性を与える。本発明の三層構成のプラスチック気泡シート(7A)は、少量であれば、断続的なライナーシートの上から液体がこぼれても、その液体はライナーシートが存在しない部分から下に落ち、キャップの間を低い側に流れる。この性質を利用すれば、種々の水切り材として役立てることができる。病人の敷布の下に敷いて、失禁対策に使用すれば、プラスチック気泡シートのキャップが発揮する緩衝作用とあいまって、褥瘡の防止に有効である。
【0012】
本発明の三層構成のプラスチック気泡ボード(7B)は、プラスチック気泡シート(7A)の柔軟性に代って剛性を有し、上記した通気性および排水性は引き続き有しているから、そのような特性が必要とされる用途に適する。具体例を挙げれば、各種の建設工事における養生材であって、ドレンを抜く機能が望まれる場合に好適である。ライナーシート(3B)が、フィルムの存在しない複数の部分(6)によって分割された構造であることは、滑り止めの効果を有する。
【0013】
本発明の四層構成のプラスチック気泡シート(8A)は、上に説明した三層構成のプラスチック気泡シート(7A)の表面を織布または不織布(5)が覆っている構造であるから、表面の構造は連続的であるが、通気性および排水性を維持している。四層構成のプラスチック気泡ボード(8B)も同様である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の三層構成のプラスチック気泡シート(7A)を製造する方法は、溶融押出ししたプラスチックフィルムを連続的に真空成形することにより、多数の突起を有するキャップフィルムを成形し、キャップの底辺に平坦なフィルムをバックフィルムとして貼り合わせて二層のプラスチック気泡シートを製造した後、幅方向に複数に分割されたフィルムが並ぶように溶融フィルムを押し出し、これらの溶融フィルムがキャップの頂を長手方向に連ねるように貼り合わせることからなる。
【0015】
これと同様に、本発明の三層構成のプラスチック気泡ボード(7B)を製造する方法は、溶融押出ししたプラスチックシートを連続的に真空成形することにより、多数の突起を有するキャップシートを成形し、キャップの底辺に平坦なシートをバックシートとして貼り合わせて二層のプラスチック気泡ボードを製造した後、幅方向に複数に分割されたシートが並ぶように溶融シートを押し出し、これらの溶融シートがキャップの頂を長手方向に連ねるように貼り合わせることからなる。
【0016】
本発明の四層構成のプラスチック気泡シート(8A)を製造する方法は、溶融押出ししたプラスチックフィルムを連続的に真空成形することにより、多数の突起を有するキャップフィルムを成形し、キャップの底辺に平坦なフィルムをバックフィルムとして貼り合わせて二層のプラスチック気泡シートを製造した後、幅方向に複数に分割されたフィルムが並ぶように溶融シートを押し出し、これらの溶融フィルムがキャップの頂を長手方向に連ねるように貼り合わせることにより三層構成のプラスチック気泡シートを製造するとともに、これらの溶融フィルムを接着剤として利用し、織布または不織布を貼り合わせることからなる。
【0017】
やはり同様に、本発明の四層構成のプラスチック気泡ボード(8B)を製造する方法は、溶融押出ししたプラスチックシートを連続的に真空成形することにより、多数の突起を有するキャップシートを成形し、キャップの底辺に平坦なシートをバックシートとして貼り合わせて二層のプラスチック気泡ボードを製造した後、幅方向に複数に分割されたシートが並ぶように溶融シートを押し出し、これらの溶融シートがキャップの頂を長手方向に連ねるように貼り合わせることにより三層構成のプラスチック気泡ボードを製造するとともに、これらの溶融シートを接着剤として利用し、織布または不織布を貼り合わせることからなる。
【0018】
本発明の三層構成のプラスチック気泡シートを構成する材料は、任意の熱可塑性合成樹脂から選ぶことができるが、常用のポリエチレンが最適である。二層構成のプラスチック気泡シートの製造には確立された技術があり、それに従えばよい。幅方向に複数に分割されたシートが並ぶように溶融シートを押し出すには、T−ダイの吐出口を多数に分割したものを使用すればよい。本発明の三層構成のプラスチック気泡ボードに関しても、上記したところは当てはまる。この場合の材料は、常用されているポリプロピレンが最適である。
【0019】
四層構成のプラスチック気泡シートおよびプラスチック気泡ボードに使用する織布または不織布は、これも任意の材料が使用できるが、とくにポリプロピレン製の織布および不織布が好適である。製品の用途によって、厚さや目の細かさを選択すべきことはいうまでもない。
【実施例1】
【0020】
LDPEを材料として、下記の仕様で二層構成のプラスチック気泡シートを製造した。
キャップフィルム:厚さ30μm
キャップ:直径10mm、高さ4mm、ピッチ11.5mmの千鳥配置
バックフィルム:厚さ10μm
シート幅:1200mm
そのキャップの上に、同じ材料を用いて、下記のライナーフィルムを押し出して融着させることにより三層構成のプラスチック気泡シートを製造し、
ライナーフィルム:厚さ15μm
幅:100mm、間隔:100mm
さらに、このライナーフィルムを接着剤として利用し、ポリプロピレン製の織布を貼り合わせることにより、四層構成のプラスチック気泡シートを得た。この製品は、褥瘡防止用の敷布下敷きとして有用である。
【実施例2】
【0021】
ポロプロピレンを材料として、下記の範囲の厚さのシートから、下記の範囲のキャップ寸法をもつ仕様の、二層構成のプラスチック気泡ボードを製造した。
キャップシート:厚さ90〜1200mm
キャップ:直径5〜15mm、高さ3〜20mm、千鳥配置
バックシート:厚さ60〜750μm
ボード幅:1600mm
そのキャップの上に、同じ材料を用いて、下記のライナーシートを押し出して融着させることにより、三層構成のプラスチック気泡ボードを製造した。
ライナーシート:厚さ100〜700μm
幅:1600mm、間隔:3〜20mm
この三層構成のプラスチック気泡ボードは、土木工事現場に敷く養生材として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の三層構成のプラスチック気泡シート(または気泡ボード)を示す、一部を切り欠いて構造を示した平面図。
【図2】図1の三層構成プラスチック気泡シート(または気泡ボード)のA−A方向の断面図。
【図3】本発明の四層構成プラスチック気泡シート(または気泡ボード)を示す、一部を切り欠いて構造を示した平面図。
【図4】図3の四層構成プラスチック気泡シート(または気泡ボード)のB−B方向の断面図。
【符号の説明】
【0023】
1A キャップフィルム
1B キャップシート
2A バックフィルム
2B バックシート
3A 断続的なライナーフィルム
3B 断続的なライナーシート
4A 接着層としての断続的なライナーフィルム
4B 接着層としての断続的なライナーシート
5 織布または不織布
6 ライナーフィルム(シート)が存在しない部分
7A 三層構成のプラスチック気泡シート
7B 三層構成のプラスチック気泡ボード
8A 四層構成のプラスチック気泡シート
8B 四層構成のプラスチック気泡ボード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムの真空成形により形成した、多数のキャップ状の突起を有するキャップフィルム(1A)のキャップの底面に、平坦なプラスチックフィルムをバックフィルム(2A)として貼り合せ、多数の密閉された空気室を有する成形品とし、キャップの頂を連ねて平坦なプラスチックフィルムをライナーフィルム(3A)として貼り合わせてなる三層構成のプラスチック気泡シート(7A)において、ライナーフィルム(3A)が、製品の長手方向には連続しているが、幅方向には、フィルムが存在しない複数の部分(6)によって分割された構造であることを特徴とする三層構成のプラスチック気泡シート(7A)。
【請求項2】
プラスチックシートの真空成形により形成した、多数のキャップ状の突起を有するキャップシート(1B)のキャップの底面に、平坦なプラスチックシートをバックシート(2B)として貼り合せ、多数の密閉された空気室を有する成形品とし、キャップの頂を連ねて平坦なプラスチックシートをライナーシート(3B)として貼り合わせてなる三層構成のプラスチック気泡ボード(7B)において、ライナーシート(3B)が、製品の長手方向には連続しているが、幅方向には、シートが存在しない複数の部分(6)によって分割された構造であることを特徴とする三層構成のプラスチック気泡ボード(7B)。
【請求項3】
請求項1に記載した三層構成のプラスチック気泡シート(7A)の上に、ライナーフィルム(4A)を接着層として利用し、その上に織布または不織布の層(5)を貼り合わせてなる四層構成のプラスチック気泡シート(8A)。
【請求項4】
請求項2に記載した三層構成のプラスチック気泡ボード(7B)の上に、ライナーシート(4B)を接着層として利用し、その上に織布または不織布の層(5)を貼り合わせてなる四層構成のプラスチック気泡ボード(8B)。
【請求項5】
請求項1に記載した三層構成のプラスチック気泡シート(7A)を製造する方法であって、溶融押出ししたプラスチックフィルムを連続的に真空成形することにより、多数の突起を有するキャップフィルムを成形し、キャップの底辺に平坦なフィルムをバックフィルムとして貼り合わせて二層のプラスチック気泡シートを製造した後、幅方向に複数に分割されたフィルムが並ぶように溶融フィルムを押し出し、これらの溶融フィルムがキャップの頂を長手方向に連ねるように貼り合わせることからなる製造方法。
【請求項6】
請求項2に記載した三層構成のプラスチック気泡ボード(7B)を製造する方法であって、溶融押出ししたプラスチックシートを連続的に真空成形することにより、多数の突起を有するキャップシートを成形し、キャップの底辺に平坦なシートをバックシートとして貼り合わせて二層のプラスチック気泡ボードを製造した後、幅方向に複数に分割されたシートが並ぶように溶融シートを押し出し、これらの溶融シートがキャップの頂を長手方向に連ねるように貼り合わせることからなる製造方法。
【請求項7】
請求項3に記載した四層構成のプラスチック気泡シート(8A)を製造する方法であって、溶融押出ししたプラスチックフィルムを連続的に真空成形することにより、多数の突起を有するキャップフィルムを成形し、キャップの底辺に平坦なフィルムをバックフィルムとして貼り合わせて二層のプラスチック気泡シートを製造した後、幅方向に複数に分割されたフィルムが並ぶように溶融シートを押し出し、これらの溶融フィルムがキャップの頂を長手方向に連ねるように貼り合わせることにより三層構成のプラスチック気泡シートを製造するとともに、これらの溶融フィルムを接着剤として利用し、織布または不織布を貼り合わせることからなる製造方法。
【請求項8】
請求項4に記載した四層構成のプラスチック気泡ボード(8B)を製造する方法であって、溶融押出ししたプラスチックシートを連続的に真空成形することにより、多数の突起を有するキャップシートを成形し、キャップの底辺に平坦なシートをバックシートとして貼り合わせて二層のプラスチック気泡ボードを製造した後、幅方向に複数に分割されたシートが並ぶように溶融シートを押し出し、これらの溶融シートがキャップの頂を長手方向に連ねるように貼り合わせることにより三層構成のプラスチック気泡ボードを製造するとともに、これらの溶融シートを接着剤として利用し、織布または不織布を貼り合わせることからなる製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−126038(P2011−126038A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−284560(P2009−284560)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】