説明

通気性を有する布

糸を含む布層を含む布帛であって、当該布層が水蒸気を通過させ、液体の水を通過させないものであり、布層の一方の側の少なくとも一部に、ウィッキング手段が配置されている、布帛。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布の分野に関し、特に衣類を作るのに適した布に関する。本発明の布の構成は、新規な、通気性の布であって、それは、衣類(例えば、シャツまたはズボン)にされ得る。
【背景技術】
【0002】
通気性を有する布は、従来技術において知られている。それらの主たる用途の一つは、外衣において、雨または雪の形態である水が、衣服に浸入することを防止することである。従来技術で使用されている技術の一つは、衣服の織物の外側に、撥水性コーティングを付着させることである。コーティングが通気性を有する、即ち、液体の水ではなく水蒸気がコーティングを通過することを許容する場合、これは、水蒸気が逃げることを許容する。しかしながら、コーティングを布に塗布することは、布の剛性および触感を増やす一方、コーティングが本来有する通気性を減少させる。常套のコーティングは、耐久性をそれほど有しておらず、複数回の洗濯サイクルの間に、その強度および通気性は有意に減少する。一般に、撥水性コーティングは、同じ厚さの通気性の膜よりも、耐水性が低い傾向にある。このことによって、コーティングは、時には、「耐水性(water resistant)」と呼ばれることとなり、一方、通気性を有する膜を本質的に「防水性(water proof)」と呼ばれる
【0003】
コーティングを塗布して、有効な「耐水性」衣服に至るには、比較的厚いコーティングを塗布することが、しばしば必要とされる。このようにして作られる衣服は、硬さ、低いドレープ触感(または低いドレープ形成性)を有する傾向にあり、また、そのようなものとして、ジャケットのような外衣用の衣服のアイテムに適している。例えば、従来の木綿のシャツにそのようなコーティングを塗布することは、通常の衣服には適していない、非常に硬い着心地の悪い衣服となるであろう。加えて、従来の撥水性コーティングで被覆されたシャツは、コーティングが通気性を有しているとしても、衣服の内部において着用者の発汗が蓄積することに帰着し、着用者に、暑さ、貼り付き感、湿気および着心地の悪さを残す。
【0004】
例えば、シャツを着たときに汗の一部(またはパッチ)が目に見えることを防止することが望まれる場合において、撥水性コーティングがシャツの布帛の内側に塗布されると、これもまた、満足のいくものとはならないであろう。着用者がある期間の間、絶えず汗をかく場合、布が、集中したエリアで蓄積された汗とともに、湿った皮膚にこすりつけられることとなり、そのことは、撥水性を擦り落とすことになり、また、汗は、布(例えば木綿である、シャツの素材)に吸収されるであろう。このことは、加えて、着用者の肌の隣において、水が蓄積した心地悪い触感になるであろう。なぜならば、撥水層が、皮膚と最も近接しているからである。
【0005】
国際公開01/34080号は、洗濯可能で、水漏れしない、通気性を有する布を開示している。布は2つの積層された層から成る。内側層は、吸収性アセテート繊維を含む。外側層は、蒸気浸透可能な、多孔性ポリウレタンフィルムである。
【0006】
EP−A−0542491は、衣類用の多層の布を開示している。層は、最も内側の層を最初の層として列挙する相対的な配置において、水分の浸透が可能な撥水性の厚い布層であって、例えばポリエステルを含む層;第1の比較的薄い、親水性の布層であって、例えばナイロンを含んでよい層;第二の比較的厚い親水性の布層であって、水の「貯留」層を与えるために、バフ加工された(または揉まれた)もしくは起毛されて(またはブラッシングされて)いてよい層;通気性の膜、および布製衣服の外側層を含む。
【0007】
不浸透性の衣類の構造の特徴は、水分の蓄積の可能性があり、その後に細菌が成長して、臭気の発生に至ることである。
【0008】
人が着用する衣類における、高い肉体活動性の別の特徴は、衣服の内側における、熱の発生およびそれに付随する発汗、即ち、着用者の「微気候」である。発汗は、衣服によって吸収され得、それは肌と接触し、目に見える染みを生成する。目に見える染みは、見苦しく、着用者に気恥ずかしい思いをさせる。この問題に対する可能な解決策は、脇の下に、使い捨ての吸収可能なパッドを取り付けることである。これらのパッドは、衣服の分離可能な構成要素であり、容易に目で見ることができるが、水分を吸収する。さらに、使い捨ての通気性を有するパッドおよびライナーは、それが再利用可能でない、又は洗濯可能でない傾向にあり、したがって、利用者が、必要である限り、ライナーまたはパッドを購入し続け、また、衣服に取り付け続けなければならないということにおいて、他の欠点を示している。
【0009】
したがって、可能な限り快適である、衛生特性が向上された、通気性の布を提供することが有利である。また、液体の形態の汗および水分が使用者の皮膚から離れたままにされ、通気性の布によって遠くに運ばれる、通気性の布を提供することもまた、有利である。
【0010】
さらに、通気性であって、衛生特性を有し、好ましくは、物品上または物品内部で目に見えるように水分が蓄積されることを防止する、布物品、特に衣類物品を提供することが有利であろう。水分の吸収が目に見えることは、シャツ素材において、重要である。着用者の発汗が、衣服の外側から見えることを緩和できる、衣服または衣類物品を製造することの要求がある。
【0011】
この分野での最近の開発として、三層の積層体から成る衣服が挙げられる。そのような衣服は、PCT特許出願PCT/GB2004/001479(本願の出願時には公開されていない)に開示されている。この出願において開示されている形態は、積層体から成る衣服であり、当該積層体において、3つの層は、通気性の膜を含み、当該膜の外側に、水蒸気を浸透させ得る布層があり、当該通気性の膜の内側に、衛生剤を含む層がある。この出願に開示された発明は、ある程度は、ドレープ可能で、心地よい布を提供するのに役立っているが、この技術のさらなる改良が、本発明者らによって為された。
【0012】
3つの上記文献で言及している、通気性の積層材料は、衣類に形成可能な素材であって、着用者の発汗が水蒸気の形態で通過することを許容するとともに、衣類の外側にて、液体の水を変色させること、または発汗のマークを生成することを防止する、素材を提供することに、ある程度役立っている。しかしながら、理論的に言えば、衣類の風合い、ドレープ性、および手触りに対して、さらなる改良をなすことができる。従来の単層の布素材(例えば、木綿、ウール、ポリエステル等)の風合い、ドレープ性、および手触りにより近い、衣類用の布を製造することは可能であると考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の好ましい形態の目的は、従来の技術の少なくとも1つの問題(ここで特に開示しているかどうかに関係ない)を克服する、または緩和することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、糸を含む布層(またはテキスタイル層)を含む布帛であって、
当該布層が、水蒸気を浸透させ、かつ液体の水を浸透させないものであり;
当該布層の一方の側の少なくとも一部に、ウィッキング(または吸い上げ、もしくは吸収、もしくは湿潤)手段が配置されている、
布帛を提供する。
【0015】
本発明は、布層を含む(繊維製品(またはテキスタイル))布帛、好ましくは衣類物品を形成するための布帛であって、
当該布層が、水蒸気を浸透させ、かつ液体の水を浸透させないものであり;
当該布層が、使用中、物品の意図された着用者に面する内側、および使用中、物品の意図された着用者から遠い外側を有し;ならびに
当該布層の内側の少なくとも一部に、ウィッキング(または吸い上げ、もしくは吸収、もしくは湿潤)手段が配置されている、
布帛を提供する。
【0016】
本発明を、例示のためだけに、図面を参照して、さらに説明する。
図1は、疎水性の経糸および緯糸の「上」層(1)、および低デニール数の(またはデニール数の小さい)繊維を含む、ウィッキング経糸および緯糸の「下」層(2)を有する、布を示す。下側の糸は、上側の糸と織り合わされているのを見ることができる。このタイプの布は、「1&3緯糸ステッチ付き綾織」と呼ばれる。疎水性の経糸および緯糸を含む布の側(3)は、撥水性であり、ウィッキング経糸および緯糸を含む布の側(4)は、ウィッキング性である(または水を吸い取る性質を有する)。
【0017】
図2は、疎水性の経糸および緯糸の「上」層(1)、および低デニールの繊維を含む、ウィッキング経糸および緯糸の「下」層(2)を有する布を示す。このタイプの布は、「1&1ステッチ付き綾織」と呼ばれる。
【0018】
図3は、実施例5の一重の織物を作製するための織パターンを示す。
図4は、図3のパターンに従って作製される布を示し、図4において、(1)は疎水性の木綿経糸(80/2 Ne WR)、(2)はウィッキング木綿緯糸(50/1 Ne ホワイトコットン)、および(3)は、疎水性の緯糸(80/2 Ne WR)を示す。(1)を付した糸に平行な全ての糸もまた、疎水性の経糸である。
【0019】
図5A〜図5Dは、本発明の布の内側(ウィッキング)綿の例を示す。黒く示したものは、疎水性の糸を示し、白く示したものはウィッキング糸を示す。内側面において、認識できる糸の殆どは、ウィッキング糸であることが明らかである。図5A〜図5Cは、一重の織物を示し、当該織物において、疎水性の糸は経糸および緯糸であり、ウィッキング糸は、浮いている緯糸であり、疎水性の糸と一体に織られている。図5Dは、二重織の布を示し、当該布は、疎水性の経糸および緯糸を含む第1の層(図示せず)、および第1の層と一体に織られる、ウィッキング経糸およびウィッキング緯糸を含む第2の層(図示せず)を含む。ウィッキング層の表面における糸の97%強が、ウィッキング糸である。
【0020】
ダイヤグラム5Aから5Dの各々において、実質的に疎水性の糸だけが、布の他方の側から見える。
【0021】
ここで、本発明をさらに説明する。下記の説明において、本発明の様々な特徴を、より詳細に規定する。そのように規定される特徴は、明らかに断りが無い限り、任意の他の特徴と組み合わせてよい。特に、好ましいまたは有利なものであると示される特徴はいずれも、好ましいまたは有利なものであると示される一つまたは複数の任意の他の特徴と組み合わせてよい。
【0022】
ウィッキング糸または繊維は、好ましくは疎水性である布層の糸と、織り合わされ、編み合わされ、または布層の糸に縫いつけられてよい。
布層は、織られ、不織布にされ、または編まれた糸で、好ましくは形成され、好ましくは、糸は、織られ又は編まれる。
【0023】
布層は、それ自体、水蒸気を通過させ、液体の水を透過させない。これは好ましくは、糸または糸繊維(yarn fiber)の疎水性によるものである。好ましくは、布層の糸/糸繊維は、好ましくは、
本来的に疎水性である、または
コーティング、添加剤もしくは仕上げ剤で処理されているか、および/または糸/糸繊維に結合した疎水性の分子部分を有していて、疎水性にされた親水性の糸/糸繊維を含む、
疎水性の糸/糸繊維である。布は、疎水性の糸で形成してよく、あるいは、布層の一部として処理されて疎水性の糸になる、親水性の糸で形成してよい。得られる布層は、理論的に言えば、布層が水蒸気を通過させるが、液体の水を通過させないのを確実にするのに十分なほど疎水性である、糸/糸繊維で形成される。布層は、疎水性の糸/糸繊維の非常に密な織物または編物構造に起因して、疎水性であってもよい。糸/糸繊維が疎水性の、例えばポリエステルであり、あるいは親水性の、例えば木綿糸である場合には、これらの糸/糸繊維は、ここで説明するように、個々の糸/糸繊維に結合して、それから作製される布層が、水蒸気は通過させるが、液体の水は実質的に通過させないことを確実にしている、ここで説明する疎水性の部分を有してよい。糸は、糸を構成する糸繊維が疎水性であるために、疎水性であってよい。そのような布層は、上述の文献および他の従来技術で言及されているものとは対照的に、「通気性」を付与するために、布の表面を覆う、通気性の膜または通気性のコーティングをさらに必要としない。「通気性」の物体は、水蒸気を通過させて、液体の水を通過させない能力を有するものである。通常の着用状態の下で、本発明の布で形成される物品は、理論的に言えば、汗が水蒸気の形態でその布層を通過することを許容するが、汗が液体として通過することを許容しない。当業者は、「不通過性」が、「実質的に通過させない」ことを含み、「通過性」が「実質的に通過させる」ことを含み、両方の用語が一般に、衣類が通常、使用中に遭遇する圧力および温度下における、素材の特性に言及していることを理解するであろう。
【0024】
「布帛」は、2001年に発行された、「Collins Concise English Dictionary」で「織成、編成、フェルティング等によって糸または繊維から形成される任意の布」として付与されているような定義を含む。布帛は、複数の層を含んでよい。
【0025】
「ウィッキング」は、本発明のコンテクストにおいて、皮膚(または肌)であり得る表面から、水分を遠くへ吸い出す(または引き出す)こととして、定義される。ウィッキングは、ポリエステルの場合には、単に毛管作用によるものであり得、あるいは、木綿の場合のように、吸収の形態であり得る。ウィッキングは、親水特性によるものであってよい。
【0026】
ウィッキングは、ウィッキング繊維またはウィッキング糸を含んでよい。「ウィッキング繊維/糸」は、布層に取り付けられたときに、水分を運ぶことができるウィッキング繊維/糸を指す。ウィッキング繊維/糸は、(i)それらを形成する材料の本来的なウィッキング特性、(ii)毛管作用によって、それらが水を運ぶことを許容する、布層上の多数の細いウィッキング繊維の組み合わせ、または(iii)繊維、糸、布、または衣服に付与された、ウィッキングコーティングもしくは処理、または親水性コーティングもしくは処理(これらの処理は、繊維を、布層に一体に編み合わせ、縫いつけ、または織り合わせる前または後に適用してよい)に起因して、ウィッキング性であってよい(または水を運ぶ若しくは吸い上げる特性を有してよい)。例えば、ポリエステルは、吸収性を有しない物質であり、それ自身疎水性である。しかしながら、ポリエステルから成る細い繊維の集まりは、毛管作用によって、水を運ぶ能力を有する。ウィッキング糸は、それ自体、ウィッキングに有効でないが、それらが糸または布帛の一部を形成したときに、ウィッキング性を示す(または水を運ぶ)繊維から含んでよい。好ましくは、ウィッキング繊維または糸は、本来的に、親水性であってよく、または好ましくは親水性の添加剤、コーティングもしくは仕上げ剤の付着によって、親水性にされていてよい。ウィッキング手段は、例えば、ウィッキング糸/糸繊維が、布層の表面の上方で、例えばブラッシングにより、毛羽立てられている場合には、布層における表面効果によるものであってよい。表面効果は、仕上剤または加工により形成されてよく、それは、ウィッキング特性を向上させる、不均一な表面効果、即ち、山および谷を有する内側表面を、布層に与える。布帛の表面は、ブラッシングまたは他の機械的な処理(例えば、カレンダーにかけること、エンボス加工、エメリー加工、毛羽立て、ナップ加工、スエード加工、および剪毛)に付した糸/糸繊維に起因して、ウィッキング特性を有してよい。ウィッキング手段は、疎水性のコーティングであって、その内部にギャップを有するコーティングを、布層に塗布することによるものであってよい。ギャップは、毛管作用によって、水が通過することを許容するようにされる。布層及びウィッキング手段は、タフテッド素材のパイルが、ウィッキング手段を含み、布層が、パイルを縫いつける、タフテッド素材の裏層を形成する、タフテッド素材を一緒に形成してよい。
【0027】
好ましくは、布層の糸は、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、リヨセル、レーヨン、ビスコース、ナイロン、木綿(またはコットン)、亜麻、フラックス、大麻、ジュートおよびウール、アセテート、アクリル、エラスタン、絹、またはそれらの組み合わせを含んでよい。布層の疎水性の糸は、木綿繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、毛繊維、絹繊維、亜麻繊維、合成繊維、ビスコース繊維、エラスタン繊維、またはそれらの組み合わせを含んでよい。布層の糸は、布層を形成する前または後のいずれかに、撥水仕上げ剤によって、疎水性にされてよい。
【0028】
布層の糸は、混合糸を含んでよく、各糸は、異なる2またはそれより多い種類の繊維または糸、例えば、木綿糸とポリエステル糸の組み合わせを含む。疎水性の糸(それは、撥水仕上げ剤で処理された親水性の糸であってよい)は、二成分の糸または二成分の繊維を含んでよい。二成分の糸は、「二つの異なるステープル繊維および/または連続フィラメント成分(例えば、異なる繊維が一緒に寄り合わされた、2つの単一のフィラメント糸)を有する糸」と定義される(テキスタイル用語に関する、Anstey Weston Guide)。二成分の繊維は、「各フィラメントについて、1よりも多いポリマーが、紡糸口金の各孔を通過して押し出されている、人工繊維」と定義される(テキスタイル用語に関する、Anstey Weston Guide)。
【0029】
布層の疎水性の糸が、木綿糸である場合、これらの木綿糸は、2プライコットンであってよく、それは、織成プロセスを向上させることが分かった。疎水性の糸が、ポリエステルを含む場合、例えば、疎水性の糸は、織成プロセスを向上させるために、撚り糸であってよい。
【0030】
布層の糸は、それらを疎水性にするために、撥水仕上剤で処理してよい。これらの仕上剤は、適当な任意の成分を含んでよく、そのような成分としては、フルオロカーボン、炭化水素、フッ化炭化水素、シリコーン、酸化ケイ素、金属、ワックス、パラフィン、ポリシロキサン、フッ素化合物、疎水性残基を有する超分岐ポリマー(デンドリマー)、星形高分子、炭化水素マトリックスおよびデンドリマーに付着しているフルオロカーボンポリマー、ハイブリッドポリマー・ナノレイヤー、超薄膜ポリマーフィルム、ナノコーティング、セラミックポリマー、ポリウレタン、ポリアミノ酸、ポリアミド、ゴム、ポリオレフィン、アクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテル、ポリフルオロエチレン、またはそれらの共重合体が挙げられるが、これらに限定されない。糸および/または布層は、糸を疎水性にする他の処理、例えば、プラズマ処理、帯電処理、熱フィラメント化学気相蒸着(Hot Filament Chemical Vapour Deposition(HFCVD))、撥水性繊維のウィッキング繊維への溶着/接着、および糸/糸繊維への疎水性ウィスカーの付着に付してよい。
【0031】
布層の糸は、好ましくは、繊維製造中のポリマー段階、繊維合成段階、繊維押出し段階、繊維段階、糸押出し段階、または糸段階にて、即ち織成、編成によって、あるいはこれらの糸から、好ましくは布層を形成する前に、ポリマー段階にて、撥水性仕上げ剤で処理される。糸は、ボビン上に配置されてから、耐汚および/または撥水性仕上げ剤で、処理してよい。糸は、糸での排気プロセスによって、耐汚および/または撥水性仕上げ剤で処理してよい。
【0032】
布層を形成する糸は、フルオロカーボン仕上剤で処理してよい。フルオロカーボン仕上げ剤は、当業者に公知である。フルオロカーボン仕上剤は、一般に、糸に付けられ、それから糸は、布帛を形成するために織られ、それから、フルオロカーボン仕上剤を「固定」するために、乾燥させられる。しかしながら、好ましくは、フルオロカーボン仕上剤は、糸で布層を形成する前に、付与されて定着(または固定もしくは硬化)させられる。これは、ウィッキング繊維/糸が、布層の疎水性の糸と一体に織られ、または編まれる場合に、特に有利である。布層の糸をウィッキング糸と一体に織成することによって、布帛を形成した後に、布層のフルオロカーボン仕上剤を固定させる方法は、満足のいくものではないことがわかった。なぜならば、ウィッキング繊維のウィッキング特性が減少させられるからである。フルオロカーボン仕上げ剤を、ウィッキング糸を疎水性の糸/繊維(特に、ポリエステルのマイクロファイバー)と組み合わせる、編成/織成プロセスの前に固定しない場合、フルオロカーボン仕上げ剤がいくらか、ウィッキング糸/繊維に移動して、それらの疎水性を増加させ、それらが水を運ぶ能力を減少させる。これは、糸で布層を形成する前に、疎水性の仕上げ剤を付与して固定することにより、完全ではないが、ある程度まで、避け得る。
【0033】
布層の糸は、好ましくは布層を形成する前に、フルオロカーボンおよびフッ素を含まない炭化水素ポリマーを含む仕上げ剤で処理し得る。これは、布層の糸が、ウィッキング糸/繊維と一体に織られ、または編まれる場合に、特に有利である。疎水性フルオロカーボンがウィッキング繊維へ移動する傾向は、フッ素を含まない炭化水素ポリマーを、フルオロカーボンポリマーと組み合わせることにより、相当減少することが分かった。その完全な理由は完全には分からない。特に好ましい仕上げ剤は、フルオロカーボン、フッ素を含まない炭化水素ポリマー、および1もしくは複数のデンドリマーを含む。そのような仕上げ剤は、Rudolf Chemieにより、Rucostar E3の商品名で販売されている。理論によって限定されるものではないが、この仕上げ剤は、フルオロカーボンと糸との間の結合を向上させ、より少ないフルオロカーボンの使用を可能にすると考えられる。好ましくは、固定用の層間層(もしくはアンカー効果を奏する層間層)および/または架橋剤が、フルオロカーボン仕上げ剤を適用する前に、糸の表面に付着させられる。固定用の層は、ポリ(グリシジルメタクリレート)(PGMA)を含んでよい。
【0034】
ウィッキング糸/繊維は、親水性添加剤、コーティングまたは仕上げ剤で、好ましくは繊維段階にて、即ち、ウィッキング糸/繊維を、本発明の布帛に組み込む前に、処理してよい(それは、ウィッキング糸を布層の糸と編む又は織ることによって、本発明の布帛が形成される前であってよい)。これは、疎水性の仕上げ剤、特にフルオロカーボンの仕上げ剤が、疎水性の糸から、ウィッキング糸、特にポリアミド糸に移動することを減少させることがわかった。親水性の仕上げ剤を合成糸に付着させることによって、フルオロカーボン糸/糸繊維を、編成または織成プロセスの前に固定する(またはフィックスする)ことは必須でなくなる。理論によって拘束されないが、この処理は、比較的高い表面エネルギーを有する、内側の糸/糸繊維によって、好結果をもたらすと考えられる。親水性の添加剤、コーティング、または仕上げ剤は、1または複数の下記の剤を含む:ポリエチレンオキサイド、スルホイソフタル酸の共重合体、アミン化合物、アルコール、側鎖にカルボキシル基またはヒドロキシル基を有するポリマー、カルボキシル酸、カルボキシル酸の塩、アミド、ウレタン、オキシアルキレン化基を有する化合物等。内側の糸が木綿である場合、木綿は、本質的に親水性であるから、移動はまったく、もしくは殆ど生じず、したがって、外側の疎水性の糸は、編成/織成プロセスの前に、フルオロカーボンで固定する必要はない。
【0035】
糸または布の表面のような素材は、高い表面エネルギーまたは低いエネルギーを有してよい。例えば、有意の量の有極性の親水性基(例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル酸基、アミン基等)を有する表面を有する材料は、一般に高い表面エネルギーを示す。逆に、有意の部分(または量)の無極性の疎水性基(例えば、シリコーン、フッ素化基等)を含む表面を有する基体は、一般に低い表面エネルギーを示す。有極性の液体(例えば水)が基体の表面と接触するように配置されると、液体は、液体の表面張力が基体の表面エネルギーよりも低い場合にのみ、自然に表面を濡らす。液体の表面張力が、基体の表面張力よりも高い場合、自然な(または自発的な)濡れは容易には生じず、液体は、基体の表面にとどまるであろう。高い表面エネルギーの表面は、水のような表面張力の低い液体によって、自然に濡れることができる、木綿のような表面(即ち、25℃にて、水の接触角が90°未満)を説明する。テフロンのような、低い表面エネルギーの表面は、水では自然に濡れず、水(およびより高い表面張力を有する他の液体)との間で、90℃またはそれ未満の接触角度を維持する。
【0036】
本発明の布帛において、驚くべきことに、高い表面エネルギーを有する、ウィッキング糸/糸繊維(例えば、親水性の添加剤/コーティング/仕上げの付着したポリアミド糸/糸繊維)は、フルオロカーボンの移動に抵抗する。これは、布帛の洗濯の間も特にそうであることがわかり、親水性の添加剤/コーティング/仕上げ剤を有するポリアミド糸は、親水性の添加剤/コーティング/仕上げ剤が付いていない、Coolmaxのような、低い表面エネルギーを有する、ポリエステル/ポリアミドのウィッキング繊維またはポリエステルのマイクロ繊維よりも、大きい度合いで、フルオロカーボンの移動に抵抗した。ポリエステルのマイクロ繊維は、「毛管作用による繊維間のウィッキングチャンネル」のために、特に具合良く水を運ぶことを許容する、物理的特性を有しているが、その繊維は、低い表面エネルギーを有し、疎水性である。ポリアミド/ポリエステルが、例えば、その表面エネルギーを高くするために、それに対する化学処理、即ち、親水性添加剤を有している場合には、このことは、糸が、水で洗濯された後で、フルオロカーボン糸と接触したときに、そのウィッキング特性を維持することを許容するであろう。糸に付着させられる親水性添加剤/コーティング/仕上げ剤は、フルオロカーボンが、洗濯サイクルの間に、それに引き付けられることを防止する。親水性の添加剤、コーティングおよび仕上げ剤は、当業者に公知である。
【0037】
好ましくは、ウィッキング繊維は、高い表面エネルギーを有する。好ましくは、布層は、低い表面エネルギーを有する疎水性繊維を含む。「高い表面エネルギー」は、Fowkesの固体表面エネルギーに対する2成分のアプローチから計算されるように、約25℃にて、約25mJ/m以上の表面エネルギーと定義される。「低い表面エネルギー」は、約25℃にて、Fowkesの固体表面エネルギーに対する2成分のアプローチから計算されるように、約25mJ/mよりも小さい表面エネルギーと定義される。
【0038】
親水性の添加剤の付いた、ポリアミドの糸/糸繊維は、本発明の布帛の通常の使用の間において、同じ親水性の添加剤の付いたポリエステルと比較して、フルオロカーボンの糸/糸繊維と組み合わされたときに、より長い期間、それらのウィッキング特性を維持することがわかった。これは、ナイロンのようなポリアミドは、本質的に、ポリエステルよりも高い表面エネルギーを有しているからであると考えられる。驚くべきことに、木綿のような、ウィッキング糸は、表面エネルギーを高めるために、親水性の添加剤を必要としないこともまた分かった。これは、木綿が、ワックスおよびオイルを取り除くために、一度洗われると、本質的に親水性であることによる。好ましくは、布層の糸は、フルオロカーボン仕上げ剤で処理された糸を含み、ウィッキング手段は、木綿を含むウィッキング繊維または糸を含む。
【0039】
好ましくは、布帛は、個々の糸および/または糸繊維に結合した、疎水性の分子部分を有する糸を含む。糸は、「天然または合成繊維の、連続した撚りストランド(または撚られたストランド)」と定義される(Collins Concise Dictionary、2001年版)。ウィッキング手段として使用してよい繊維と、糸を構成してよい繊維を区別するために、「糸繊維」は、この文書で、糸の少なくとも一部を構成する繊維を指す。好ましくは、糸は、ここで規定される多くの糸繊維を含む(またはそれから成る)。典型的には、糸は多くの繊維を含む。糸が糸繊維を含む場合、疎水性の部分が、糸の繊維に結合していてよい。疎水性の部分は、糸の外側の繊維、糸の外側表面を形成する繊維の部分に結合していてよく、または、糸の内側および外側(外側表面)の両方に存在する、繊維の間で分布していてよい。
【0040】
好ましくは、分子部分はまた、疎油性であってよい。布帛が、疎油性の分子部分に結合した糸から成る場合、布帛は、好ましくは、耐油性である。
【0041】
好ましくは、疎水性の分子部分は、糸および/または糸繊維に、直接的または間接的に非共有結合している分子を構成する。これは、水素結合、金属配位、ファンデルワールス力、または他の非共有結合の相互作用の手段であってよい。疎水性の分子の布帛への金属配位による非共有的な結合の例は、国際公開01/18305に示されている。この文書は、調合処理剤による、通気性の布帛の製造方法を開示する。当該処理剤は、溶液、エマルションまたはサスペンション(もしくは懸濁液)において、(a)2またはそれより多い形式電荷を有する金属原子と、複合体を形成し得る、反応基を含む、フッ素化されたポリマー、(b)2またはそれより多い形式電荷を有する、一又は複数の金属原子を含む。フッ素化されたポリマーを構成し得る、フッ素化されたモノマー、オリゴマーまたはマクロモノマーが、水/汚れ/油に対する必要な耐性を与える群から選択され、重合され得る。例として、アクリレート、メタクリレート、アルケン、アルケニルエーテル、スチレン等のフッ素化されたモノマーを挙げる。本発明において有用であろう、炭素−フッ素結合を含むモノマーとして、Zonyl TA-N(DuPontのアクリレート)、Zonyl TM(DuPontのメタクリレート)、FX-13(3Mのアクリレート)、およびFX-14(3Mのメタクリレート)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。フルオロポリマーは、−CFおよび−CHFの末端基、パーフルオロイソプロポキシ基(−OCF(CF)、3,3,3-トリフルオロプロピル基等を含んでよい。ポリマーは、パーフルオロ化された、または部分的にフッ素化された、アルキル鎖を有するビニルエーテルを含み得る。フルオロポリマーは、好ましくは、下記式(I)の構造を有する、1または複数のフルオロ脂肪族ラジカル含有モノマーを含む。
【化1】


式(I)の化合物において、例えば:
mは0〜2であり;
nは0または1であり;
oは1または2であり;
Aは、−SO−、−N(W)−SO−、−CONH−、−CH−、または−CF−であり、
Rは、直鎖、分岐または環式の、完全にまたは部分的にフッ素化された炭化水素であり、好ましくは、C〜C10の直鎖アルキルの、完全にフッ素化された、フルオロカーボンであり;
Wは、水素またはC〜Cの低級アルキルであり;かつ
Xは、アクリレート(HC=CHCO−)、メタクリレート(HC=C(CH)CO−)、または炭素−炭素二重結合(HC=CH−)である。
特に有用なフッ素化モノマーは、下記の構造を有するアクリレートおよびメタクリレートモノマーである。
C=CHCOCHCH(CF)Fおよび
C=C(CH)COCHCH(CF)
ここで、nは両方の式において1〜20である。好ましくは、nは、約5と12との間にあるが、殆どの商業的に入手可能なモノマーは、鎖長の分布を含み、それらのうち僅かのものが、この範囲の外にある。
【0042】
疎水性の分子部分は、疎水性の重合体炭化水素基を有してよい。好ましくは、疎水性の重合体炭化水素基は、フッ素化されている。
【0043】
好ましくは疎水性の分子部分は、糸および/または糸繊維の表面に、直接的または間接的に共有結合している、化学基である。これらの化学基は、下記の式で表される1または複数のモノマー、または下記の式のモノマーの重合により得られるポリマーを含んでよい。
【化2】


式中、
mは0〜2であり;
nは0または1であり;
oは1または2であり;
Aは、−SO−、−N(W)−SO−、−CONH−、−CH−、または−CF−であり、
Rは、直鎖、分岐または環式の、完全にまたは部分的にフッ素化された炭化水素であり、好ましくは、C〜C30、より好ましくはC〜C10の直鎖アルキルの、完全にフッ素化された、フルオロカーボンであり;
Wは、水素またはC〜Cの低級アルキルであり;かつ
Xは、アクリレート(HC=CHCO−)、メタクリレート(HC=C(CH)CO−)、または炭素−炭素二重結合(HC=CH−)である。
【0044】
布帛において使用または存在する、糸/糸繊維に共有結合され得る、適当な疎水性のポリマーは、国際公開WO01/18303号、WO153366および米国公報2002/0155771に開示されている。WO01/18303号は、カルボキシレートで官能基化された(またはカルボキシレートで官能性を付与された)、フッ素化されたポリマー、およびポリマーにおいてカルボキシル基間で反応性の無水環状物を形成することができる触媒を含む、調合液を開示している。得られる反応性の無水環状物は、布地および他のウェブのような、基体に結合している。好ましくは、ポリマーは、上述の式(I)のモノマーから成る、式Iの成分は上記で定義したとおりである。カルボキシレートで官能化された、フッ素化ポリマーは、i)1または複数のブロックのアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、クロトン酸、イタコン酸、または他の酸含有モノマー、およびii)木綿または、無水物形成触媒の存在下で、ヒドロキシル基、スルフヒドリル基、アミン基またはアミド基を含む、他の布帛に結合することができる、フッ素化されたモノマーの1または複数のブロックを有する、ブロックコポリマーであってよい。本発明において、有用である、炭素−フッ素結合を含むモノマーとして、Zonyl TA-N(DuPontのアクリレート)、Zonyl TM(DuPontのメタクリレート)、FX-13(3Mのアクリレート)、およびFX-14(3Mのメタクリレート)が挙げられるが、これらの限定されるものではない。フルオロポリマーは、−CFおよび−CHFの末端基、パーフルオロイソプロポキシ基(−OCF(CF)、3,3,3-トリフルオロプロピル基等を含んでよい。特に有用なフッ素化モノマーは、
C=CHCOCHCH(CF)Fおよび
C=C(CH)COCHCH(CF)
の構造を有するアクリレートおよびメタクリレートモノマーである。ここで、nは両方の式において1〜20である。好ましくは、nは、約5と12との間にあるが、商業的に入手可能なモノマーの多くは、鎖長の分布を含み、それらのうち数個が、この範囲の外にある。
【0045】
加えて、フルオロポリマーは、2またはそれよりも多い反応性のカルボキシル基を含み、それらのうちの少なくとも2つが、適当な条件下で、かつ隣接するカルボキシル基から反応性の無水物を形成するように作用する触媒の存在下で、5または6員環の無水環状物を形成するように、配置されている。例えば、反応性のモノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、ビスアクリルアミド酢酸、3−ブテン−1,2,3−トリカルボキシル酸、マレイン酸、2−カルボキシエチルアクリレート、イタコン酸、4−ビニル安息香酸等であるカルボキシレートを含む群から選択してよい。特に有用なモノマー、オリゴマー、またはポリマーは、少なくとも何らかの(または幾つかの)フッ素化モノマーまたはポリマーと共重合した、カルボキシル含有モノマーを有するものである。1または複数の界面活性剤が、重合の間存在し、溶解した又は懸濁したポリマーと共に存在する。
【0046】
無水物形成触媒として、アルカリ金属の次亜リン酸塩、アルカリ金属の亜リン酸塩、アルカリ金属のポリリン酸塩、およびアルカリ金属のリン酸二水素塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。そのような触媒の例は、NaHPO、HPO、NaPO、NaHPO、NaHPO、およびHPOである。
【0047】
WO01153366は、布帛に疎水性を付与するために、布帛の糸/糸繊維に結合してよいコポリマーを開示している。コポリマーは、(a)フルオロ脂肪族ラジカルを含む剤、(b)ステアリル(メタ)アクリレート;(c)塩素含有化合物(例えば、塩化ビニリデン、塩化ビニル、2−クロロエチルアクリレート、または2−クロロエチルビニルエーテル)および(d)無水官能基を含むモノマー、または無水官能基を形成することが可能なモノマー(もしくは無水官能基を形成することが可能な基を含むモノマー)から選択されるモノマーを含む(またはそれらから成る)。コポリマーは、i)得られるコポリマーの性能および不変性を高めるために、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ii)コポリマーの水への溶解度を向上させるために、ポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレートのような化合物、および/またはiii)ドデカンチオール、メルカプトコハク酸、または他の類似する化合物のような、鎖停止剤と、さらに共重合していてよい。鎖停止剤は、ポリマーが水により容易に分散し得、また、布帛により良好に浸透し得るように、ポリマーの分子量を低く維持する作用をする。コポリマーは、コポリマー中の酸含有モノマーから、無水物を形成する触媒(例えば、アルカリ金属の次亜リン酸塩または上述の触媒)の存在下で、コポリマー、布帛の糸/糸繊維を接触させることにより、布帛の糸/糸繊維に結合させることができる。
【0048】
米国公報2002/0155771は、布材料を変性させる方法を開示し、当該方法は、多官能ポリマーを当該材料に付着させることを含み、多官能ポリマーは疎水基および親水基を含む。重合した疎水性のモノマーは、(疎水性の)基の少なくとも一部を構成し得る。疎水性のモノマーは、N−(tert−ブチル)アクリルアミド、n−デシルアクリルアミド、n−デシルメタクリレート、N−ドデシルメタクリルアミド、2−エチルへキシルアクリレート、1−へキサデシルメタクリレート、n−ミリスチルアクリレート、N−(n−オクタデシル)アクリルアミド、n−オクタデシルトリエトキシシラン、N−tert−オクチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ビニルラウレート、ビニルステアレート、フルオロアクリレート、およびフルオロスチレン、ならびにテトラフルオロエチレンから選択してよいが、これらに限定されない。重合した親水性モノマーは、親水基の一部を構成し得る。親水性モノマーは、アクリルアミド、アクリル酸、N−アクリロイルトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、ビスアクリルアミド酢酸、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(グリコールメタクリレート)、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−メタクリロイルトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、N−メチルメタクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)(n)−モノメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)(n)モノメチルエーテルモノメタクリレート、2−スルホエチルメタクリレート、1,1,1−トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、N−ビニル−2−ピロリドン(1−ビニル−2−ピロリジノン)、および2−ヒドロキシエチルメタクリレートから選択してよいが、これらに限定されない。好ましくは、多官能ポリマーは、反応性基、例えば、ポリ(無水マレイン酸)ポリマーを含んでよい。他の反応性の基として、アミン、ヒドロキシル、カルボキシル、アミド、βケトエステル、アルデヒド、無水物、アシルクロライド、カルボン酸ヒドラジド、オキシラン、イソシアネートまたはメチロールアミド基が挙げられるが、これらに限定されない。ポリマーは、複数の反応性基を含んでよい。
【0049】
本発明で使用する通気性布層を製造する、別の方法は、フッ素化炭化水素(例えば、ポリフルオロエチレンもしくはテフロン(RTM)、またはテフロン系材料)で、糸および/または糸繊維を処理またはコートすることである。処理/コーティングは、個々の繊維/糸に、それらが布層にされる前または後に、適用される。そのような処理された布は、DuPontから入手可能である。最近、DuPontは、耐久性を有するフッ素化学仕上げ剤であって、布帛の表面全体を覆うコーティングよりはむしろ、各糸および/または糸繊維のまわりで疎水性コーティングを形成する、仕上げ剤である、改良されたテフロン汚れ防止剤を発表した。その結果、液体が、球のようになり、また、布から転がり落ちる。
【0050】
テフロンは、パッド、真空、フォーム、キスコート、コーティング、または排気(糸から衣服まで仕上げが可能である)技術により、塗布してよい。パッドプロセスが最も一般的である:布帛は、Zonyl/Oleophobal製品を含む水浴に浸される;過剰分が絞り出される;それから、布帛はオーブンを通って、仕上げた布帛が乾燥させられ、定着させられる。
【0051】
この新しいテフロンは、繊維または糸の表面に塗布される。ポリマーを溶融し、繊維の表面付近でポリマーを広げる熱が、加えられる。フルオロカーボンの側鎖は、表面から遠ざかる方向に向いていると考えられる。
【0052】
得られる、テフロンで処理された、特定の素材(例えば木綿)の布帛は、同じ素材の未処理の布帛と非常に似ている触感、風合およびドレープ性を有する。この改良されたテフロンは、個々の繊維に付着するので、先の処理剤とは異なっている。
【0053】
国際公開WO2004/035909もまた、本発明で使用する通気性の布の製造方法を開示している。当該方法は、好ましくはフッ素化学薬品を含む、保護組成物を、布製品に塗布し、形を作り、定着させ、それから物品を冷却することを伴う。
【0054】
上述したように、ウィッキング手段は、布層の内側に配置される。好ましくは、ウィッキング手段として、布層/糸の内側に結合し得る、ウィッキング(親水性)分子/化学基、ウィッキング物質、構造(即ち、ウィッキング性を向上させる、「十字形」を有し得る)、ウィッキング・チャンネル、またはウィッキング繊維もしくはウィッキング糸、またはそれらの組み合わせを挙げられるが、それらに限定されない。ウィッキング物質および親水性仕上げ剤は、布帛の糸または糸繊維に付着する、ポリシロキサンまたは親水性分子/材料を含む。国際公開WO03/097925は、親水性仕上げ剤として使用するのに適したウィッキングポリマーであって、カルボキシル基、カルボキシル基の塩、またはカルボキシル基に変換し得る部分を含むポリマーを開示する。国際公開WO02/059143は、親水性仕上げ剤として使用するのに適した、蛋白質の鞘(または被覆)を開示する。この鞘は、個々の糸に共有結合的に結合して、布の親水特性を増加させ得る。ウィッキング特性を有する他の適当な布帛として、NanoTexが製造するNanoDry、およびクラレの「spacemaster」と呼ばれる布帛、十字形を有し、繊維のウィッキング特性、またはウィッキング仕上げ剤の付いた糸/糸繊維を改良する、繊維(例えば、Meryl Nateo、Nylstarが供給する親水性のポリアミド糸)が挙げられる。
【0055】
ウィッキング糸またはウィッキング繊維であってよい、ウィッキング手段は、好ましくは、ポリエステルまたはポリアミドを、90重量%より多い量、より好ましくは95重量%よりも多い量で含む。
【0056】
好ましくは、ウィッキング添加剤/仕上げ剤を付着させることにより、ウィッキング糸が親水性にされる場合、このプロセスは、好ましくは織成または編成プロセスの前に、行われる。しかしながら、親水性の添加剤/仕上げ剤を、布帛の仕上げ段階の間、または衣服にした段階で、適用することは可能である
【0057】
ウィッキング繊維は、ポリエステル、ナイロン、ポリアミド、ポリプロピレン、疎水性合成繊維、親水性合成繊維、親水性および/またはセルロース系人工繊維(ビスコース、モダール)、および天然の親水性繊維(例えば木綿)のうち、1または複数を含んでよい。ウィッキング繊維は、セルロース繊維であってよい。ウィッキング糸/糸繊維は、二成分の糸/糸繊維であってよい。
【0058】
ウィッキング繊維は、密に結合した2またはそれよりも多い種類の繊維(例えば、木綿とポリエステル)を含む、混合糸の一部または全部を構成してよい。ウィッキング繊維は、本来的に親水性であってよく、あるいは、親水性添加剤を有してよい。ウィッキング繊維は、吸収繊維(または吸水性繊維)であってよい。
【0059】
好ましくは、ウィッキング糸が木綿繊維である場合、糸は細いことが好ましい。好ましくは、木綿糸は、メートル法による木綿番手がNm10/1であることが好ましく、Nm20/1であることがより好ましく、30/1であることがより好ましく、40/1であることがより好ましく、50/1であることが最も好ましい。木綿番手X/Nという用語は、メートル木綿番手(X)および糸のプライ(N)を示すために用いられる。木綿繊維は、布層の糸が疎水性仕上げ剤(例えば、フルオロカーボン仕上げ剤)で処理された場合に、仕上げ剤が木綿に有意に移動せず、木綿のウィッキング特性に悪影響を及ぼさないという点で有利であることがわかった。
【0060】
ウィッキング糸は、織成プロセスを向上させるために、2プライの木綿であってよい。木綿が用いられる場合には、繰り返しになるが、糸は細くすべきである。好ましくは、木綿の糸は、Nm20/2、好ましくはNm32/2、好ましくはNm40/2、好ましくはNm50/2、好ましくはNm60/2、好ましくはNm70/2、好ましくはNm80/2、最も好ましくはNm100/2とする。
【0061】
好ましくは、ウィッキング糸は、コーミングされている。好ましくは、木綿は、長く細い繊維(例えば、エジプト綿、または海島綿)から成ることが好ましい。アメリカ綿のような、中程度の細さおよび中程度のステープル長さもまた、有効である。
【0062】
好ましくは、ウィッキング手段は、ウィッキング繊維を含み、これらのウィッキング繊維は、外れないように布層に付着している。
【0063】
好ましくは、ウィッキング手段は、布層の糸、好ましくは疎水性の糸とともに、一体に編まれ又は織られた、ウィッキング糸または繊維である。ウィッキング糸または繊維は、機械的な処理(例えば、カレンダー加工)で処理された糸よりも、皮膚から水分を、より良好に取り除くことが分かった。好ましくは、水滴が、本発明の布帛のウィッキング表面(ウィッキング手段が配置される表面)に落とされると、水滴は、好ましくは10秒以内、より好ましくは8秒以内に、より好ましくは7秒以内に、より好ましくは6秒以内に、より好ましくは5秒以内に、より好ましくは4秒以内に、より好ましくは3秒以内に、より好ましくは2秒以内に、最も好ましくは1秒以内に、周囲の布帛表面領域上で広がる。
【0064】
ウィッキング糸/糸繊維は、布層の(好ましくは疎水性の)糸と、一体に織られ、又は編まれてよい。布帛は、二重織の布帛であってよい。二重織の布帛は次のように定義される:「二組の経糸および緯糸が、布の表面および裏面が異なるパターンを示す、または異なる特性を有することを許容する、複合織物。」一方の組の経糸および緯糸は、好ましくは疎水性の糸を含み、他の組または糸は、好ましくはウィッキング糸を含む。二重織物において、布帛は、2つの布帛層を有し、一方の布帛層の幾らかの糸は、他方の布帛層と絡み合っていて、布層は一体に保持される。別法においては、第三の、より細い隠れた経糸が、両方の布帛と絡み合って、それらを一体に結合している。
【0065】
布帛は、二重織物または二重編物であってよい。別法においては、第三の、より細い、隠れた糸が、両方の布帛/糸とともに一体に織られ、または編まれて、それらを一体に結合している。
【0066】
図1および図2は、本発明の2つの可能な織構造を示している。本発明の一形態は、二組の「下側」ウィッキング繊維またはウィッキング糸(下側経糸および緯糸)と一体に、編まれ又は織られた二組の「上側」疎水性糸(上側経糸および緯糸)を含む、布帛である。布帛の「上」側は、主に、疎水性の糸を含み、布帛の「下」側は、主にウィッキング糸を含む(図1および2を参照)。ウィッキング糸が外側層に存在しないように、そのような布帛を織成することは可能である。2つの層の間で織成を達成するために、ステッチが形成されるが、このステッチは、密な織構造のために、または、上側糸がステッチを被覆するために、衣服の面において見えない。そのような「隠れた」ステッチ(5)の例を、図1に示す。外側の層の糸が、ウィッキング繊維/糸の直径よりも大きい直径を有する場合、ウィッキング繊維/糸は、視界から実質的に隠されるであろう。
【0067】
布の触感、耐久性および有効性を向上させるために、布層の糸を、ウィッキング糸と一体に織成する、または編成することが、2つの独立した層を一体に積層することと比較して、より良い結果をもたらすことが分かった。布帛は、予期しなかったことには、液体が布帛を通過することを、なお防止している(したがって、汗の染みは、布帛上で見えない)が、蒸気が通過することを許容している(したがって、布帛の着用者は涼しいままである)。
【0068】
布層の糸およびウィッキング糸は、一体に編まれて、二面の編布を与えてよい。それにより、布帛の一方の側が、撥水/防汚特性を有し、他方の側がウィッキング特性を有する。
【0069】
編まれた構造物は二重編物構造であってよい。布層の糸、好ましくは撥水性の糸、およびウィッキング糸/繊維は、好ましくは一緒に結びつけられ(またはつながれ)、それにより、布におけるエアポケットは非常に少ない、又は全く無いこととなる。好ましくは、少なくとも30%の疎水性の糸およびウィッキング層が一緒に繋がれ、より好ましくは40%、より好ましくは50%、より好ましくは60%、より好ましくは70%、より好ましくは80%、より好ましくは90%、最も好ましくは100%の疎水性の糸およびウィッキング層が一緒に繋がれる。好ましくは、疎水性の糸とウィッキング糸との間に、多くの交差点および編まれたステッチが存在し、交差点および編まれたステッチは、例えば、布帛の外側縁部の周囲にのみ延びているのとは対照的に、実質的に布帛の全体にわたって、延びていることが好ましい。
【0070】
ウィッキング糸が配置される布帛の側は、隆起(または浮き彫り)の効果を有する。本発明の布帛は、疎水性の糸、およびウィッキング糸もしくは繊維を含んでよく、布帛は、例えば、二重ジャージージャカード、二重ピケ、二重ツイルニット、または二重ジャージーもしくはバーズアイニット、またはインターロック、またはピケから選択される、二重編構造を有してよい。好ましくは、ウィッキング糸の長さの大部分は、布帛の一方の側、好ましくは最も隆起した表面組織の側に配置される。
【0071】
好ましくは、布帛の外側面では、少なくとも50%の疎水性糸が露出し、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは100%の疎水性糸が露出している。
【0072】
本発明の布帛は、一方の面が疎水特性を有し、他方の面が親水特性を有する、2つ異なる面を有する、一重編物であり得る、編構造を有してよい。外側の面は、ほとんど又は全体が、疎水性の糸から成り、内側の糸は親水性であるか、または親水性にされており、あるいはウィッキング特性を有する。本発明の布帛は、疎水性の糸およびウィッキング糸または繊維を含んでよく、布帛は、シングルピケニット、ジャカードニット、インターロックジャージー、リブニット、インターロック、ツイルニットまたはバーズアイニットから選択される、一重編構造を有してよい。一重編布帛において、内側(ウィッキング)面の糸と外側(疎水性)面の糸との間で、交差もしくはインターロックが多数存在し、布帛において、エアポケットが僅かに存在する、または全く存在しないことが好ましい。好ましくは、布帛のウィッキング糸が配置されている側は、隆起の効果を有する。例えば、布帛がシングルピケニット構造を有する場合、好ましくは、ウィッキング糸が、ピケ効果のある面に位置する。布帛が衣服の一部に形成され、又は一部を形成する場合、このピケ効果を有する布帛の側は、好ましくは、肌の隣に着けられる。
【0073】
より軽い布帛を作製するためには、布帛は、バインダとして作用する第三の糸(それは、布層の繊維またはウィッキング繊維と同じであってよく、あるいは、異なっていてよい)を有してよい。この場合、疎水性の糸およびウィッキング糸は、一体に編まれないが、一体に編まれた第三の糸によって、一緒に結びつけられる。これは、異なる糸/糸特性を有する2つの面を有する(即ち、布帛の意図されている内側がウィッキング繊維/糸(即ち、ポリエステルまたは木綿)を含み、布帛の意図されている外側が疎水性糸を含む)、薄い布帛を与える。
【0074】
本発明の編布帛を製造する別の方法は、3−D編成による、即ち、2つの層を有する布帛を形成することによる。第1の編まれた層は、疎水性の糸/繊維を含み、第2の編まれた層は、ウィッキング糸および繊維を含み、第1および第2の層は、一体に編まれた第3の糸によって、つながれる。疎水性の糸をウィッキング糸とつないで、布帛を形成する、第3の糸が導入されると、好ましくは、疎水性およびウィッキング糸の大部分が、一体につながれる。この構造は、疎水性の糸を含む編まれた布帛層を、規則的に間隔をあけたラインのステッチでもって、ウィッキング糸を含む編まれた布帛層に単純に縫いつけることよりも、好ましい。内側および外側の糸は、好ましくは一体につながれて、それにより、布帛において、エアポケットは非常に少ない、又は全く無いこととなる。好ましくは少なくとも30%の疎水性の糸およびウィッキング糸が、一緒につながれ、より好ましくは、40%、より好ましくは50%、より好ましくは60%、より好ましくは70%、より好ましくは80%、より好ましくは90%、最も好ましくは100%の疎水性の糸およびウィッキング糸が一緒につながれる。ウィッキング繊維はまた、フロートステッチまたはフロートループとして、編構造に導入され得る。
【0075】
二重織布帛は、比較的厚い布帛であって、軽量の衣服(例えば、夏用のシャツ)には不適当であり得る。一重織布帛は、二重織布帛に対して、より軽く、柔軟で、より蒸気を通過させ、より良好なドレープ性と触感を有するという利点を有する。理論的に言えば、本発明の布帛から成る衣服は、同じでないとしても、通常の一重織布帛(これは、液体の水および水蒸気の両方が透過可能であり、例えば木綿のシャツである)と同様の感触(または風合い)を与える。好ましくは、本発明の布帛は、通常の従来の一重織物と同様のドレープ性および感触を有する、一重織物である。布層全体にいずれの表面処理も有しないが、代わりに糸/糸繊維に処理が施されている、一重織布帛を開発することが有利であろう。これは、処理が、布帛の表面よりはむしろ、個々の糸でなされているために、衣服の手触りを向上させるだけでなく、糸と糸との間にギャップがあるため、蒸気が布帛を通過することを許容する能力を向上させるであろう。布帛の表面処理において、化学的な仕上げ剤/エマルションは、糸と糸との間のギャップを覆う傾向にあり、したがって、通気性を低下させる。
【0076】
撥水/防汚特性を一方の側で有し、ウィッキング特性を他方の側で有する、一重織の布帛は、疎水性の糸およびウィッキング糸/糸繊維を使用して、単層の布帛を織成することにより、得られた。これらのウィッキング糸/繊維の長さの大部分は、好ましくは、布帛の一方の側、即ち、布帛の意図された内側に配置されている。
【0077】
ウィッキング糸/糸繊維は、好ましくは、「浮いている糸/糸繊維」として一方の表面に存在する。それは、緯糸のフロート(または浮き上がり)であってよく、それは、Anstey Weston Guide to Textile Termsにより、「布の背面または表面における、交差点の間の緯糸の長さ」と定義され得る。交差点は、布帛において2つの他の糸が交差しているポイントである。一般に、浮いている緯糸は、それが経糸の下を通っているポイントとポイントとの間で、2またはそれよりも多い経糸の上を、通過している。それは、経糸のフロート(または浮き上がり)であってもよく、それは、Anstey Weston Guide to Textile Termsにより、「布の背面または表面における、交差点の間の経糸の長さ」と定義され得る。一般に、浮いている経糸は、それが緯糸の下を通っているポイントとポイントとの間で、2またはそれよりも多い緯糸の上を、通過している。これらの浮き上がっているウィッキング糸は、好ましくは、疎水性の糸に付着しているが、一方の表面(ウィッキングである表面、即ち、布帛の意図されている内側表面)にて、主に見えるだけである。
【0078】
別の形態において、本発明の布帛は、ウィッキング糸または繊維を含む、布層であって、疎水性の糸が、その一方の側に配置されている、布層を含んでよい。これらの疎水性の糸は、布層の親水性の糸と一体に織られ、または編まれてよい。布帛は、ウィッキング経糸および緯糸、ならびに一体に織られた浮き上がっている疎水性の糸を含んでよい。
【0079】
二つの表面を有する(即ち、各面が異なる特性を有する)、経糸/緯糸の浮き上がっているウィッキング糸/繊維が少なくとも一方の側にある、一重織の布帛が、有利である。なぜならば、これは、布の本来の触感およびドレープ性を含まないにもかかわらず、所望の特性を与えるからである。この一重織の布帛はしたがって、疎水特性を示す一方の面と、親水特性を示す他方の面を有する。布帛は、驚くべき事に、未処理の布帛と同様の風合いを有していることが分かった。
【0080】
布帛の外側にある糸は、布帛の内側にあるウィッキング糸/繊維よりも、より密な織構造を有してよい。これは、ウィッキング糸の大部分が、意図した内側表面に存在し、あるとしても少ないウィッキング糸が、布帛の意図された外側表面に表われることとなるという点で有利である。ウィッキング繊維は、布層の繊維/糸と一緒に、混合してよい。図5A〜図5Cは、本発明の種々の一層織布帛の意図された(または目的とする)内側(ウィッキング)層を示す。図5Dは、本発明の二重織布帛の一例の意図された内側(ウィッキング)層を示す。これらの図面において、白い糸は、ウィッキング繊維である。各図面において、布帛の意図された外側表面は、それを見たときに、略100%の疎水性の糸を示すであろう。
【0081】
一層の経繻子および/または緯繻子織布帛が、外側の疎水性の糸および内側のウィッキング糸を含むようにし、例えば、一方の面に、疎水性の糸の75%以上が存在し、他方の面に、ウィッキング糸の75%以上が存在するようにすることによって、所望の効果を得ることが可能である。緯繻子織の布帛は、最大量の緯糸が表面で見られる織構造である。経繻子織の布帛は、最大量の経糸が表面で見られる織構造である。
【0082】
ウィッキング手段は、層を形成する低デニールのウィッキング繊維を含んでよく、この層は、布層に付着させられてよい。付着は、液体接着剤、火炎貼り合わせ、もしくは粉末接着剤、フィルム、ウェブ接着剤、化学接着剤(または合成糊)、またはそれらの混合物のいずれか1つを使用することにより、達成され得る。別法として、低デニールの繊維は、布層に機械的に結合された層を形成してよい。「機械的に結合された」とは、織成、編成、または2つの層を一緒に縫い合わせることを含むが、これらに限定されない。機械的な結合手段は、ステッチのように、布帛全体にわたって規則的な間隔でもって、分布させられてよく、あるいは衣服の一部の場合には、縫い目に分布させられてよい。
【0083】
接着剤を用いて接着する場合、接着剤は好ましくは、層と層の間で、スポット位置で分布しており、層と層の間の界面の表面全体にわたって、均一に分布していない。接着剤は、通気性を有してよい。通気性の接着剤として、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレンを含むものが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、接着剤は、添加剤として、ここで説明するように、衛生剤を含んでいる。
【0084】
好ましくは、ウィッキング手段は、布帛の内側にて、層を形成している。好ましくは、ウィッキング手段は、ウィッキング繊維を含み、当該ウィッキング繊維は層を形成している。
【0085】
好ましくは、ウィッキング繊維は、不織布の、または織成された、もしくは編成された繊維であり、層を形成している。編成されたウィッキング繊維、特に低デニールのそのような繊維、好ましくはマイクロファイバーは、不織のウィッキング繊維よりも、より柔軟な風合いを有することが分かった。
【0086】
ウィッキング手段(例えば、ウィッキング繊維)は、層を形成し、層の重さは好ましくは300gsm以下であり、好ましくは250gsm以下、好ましくは200gsm以下、好ましくは180gsm以下、好ましくは150gsm以下、好ましくは120gsm以下、好ましくは100gsm以下、好ましくは80gsm以下、好ましくは60gsm以下、好ましくは70gsm以下、好ましくは50gsm以下、好ましくは30gsm以下、好ましくは10gsm以下の重さを有する。ウィッキング層が80gsm未満であると、これは有意に全体の布帛の触感を向上させることが分かった。
【0087】
好ましくは、ウィッキング手段は、ウィッキング糸/糸繊維を含み、これらは、布層の一部として織成され又は編成されており、全体の布帛が低重量の布帛である。低重量として、300gsm未満、250gsm未満、200gsm未満、185gsm未満、175gsm未満、150gsm未満、130gsm未満、120gsm未満、110gsm未満、100gsm未満、90gsm未満、および最も好ましくは70gsm未満が挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
本発明の布帛から成る(または布帛を含む)シャツは、布帛が300gsm以下、好ましくは250gsm、より好ましくは200gsm、より好ましくは140gsm未満、より好ましくは130gsm、さらにより好ましくは120gsm未満、最も好ましくは115gsm未満の重さを有するときに、最も心地よい。
【0089】
同様に、ピケトップ、スポーツウェアのトップ、およびTシャツは好ましくは、300gsm未満、好ましくは250gsm未満、好ましくは200gsm未満、より好ましくは150gsm未満、より好ましくは140gsm未満、より好ましくは130gsm未満、さらにより好ましくは120gsm未満、より好ましくは115gsm未満、より好ましくは110gsm未満、最も好ましくは100gsm未満の重量を有する、本発明の布帛から成る(または布帛を含む)。
【0090】
布帛は、糸の段階または布帛の段階のいずれかで、染色してよい。糸のレベルで染色される場合、これは、通常、耐汚および/または撥水仕上げ剤が適用される場合には、それらと同時に又はそれの前に、処理される。布帛のレベルで染色される場合には、外側の疎水性の糸は、特にそれが木綿である場合には、まだ、耐汚/撥水仕上げ剤で固定されていないことが好ましい。
【0091】
布帛は、織成され又は編成された後に、布帛段階で染色してよい。ポリエステル布帛については、フルオロカーボン布帛を、約120℃である通常の温度にて染色することができる。木綿のフルオロカーボン布帛について、40℃〜50℃の染色温度は、布帛を染色するのに十分ではない。なぜならば、フルオロカーボンが染料をはじくからである。したがって、染料が染料と熱によってフルオロカーボンに浸透して、染料が木綿繊維に固定されるようにするために、染色温度を、約70℃〜80℃まで挙げる必要がある。
【0092】
本発明の布帛の触感および特性は、上述のようなやり方で染色することによって、影響されないことがわかった。
【0093】
布層は、印刷してよい。フルオロカーボンで処理された木綿およびポリエステル布帛は、標準的な工業顔料色素を付与され、それから、オーブンで150℃にて3分間乾燥処理される。顔料色素は、両方の布帛に良好に固定されることがわかり、また、布帛の触感または特性のいずれにも影響を及ぼさなかった。印刷着色(または色素沈着)は、布帛の外側の面に結合するので、印刷はしたがって、ウィッキング糸の性能に影響を及ぼさない。
【0094】
上述したように、ウィッキング手段は、低デニールの繊維、好ましくはマイクロ繊維を含んでよい。ウィッキング手段は、ナノ繊維を含んでよい。好ましくは、ウィッキング手段はマイクロ繊維とナノ繊維とを含んでよい。これらのウィッキング手段/ウィッキング繊維は、ポリエステル、アクリルまたはポリアミドを含むことが好ましい。これらの繊維は、層を形成してよい。ウィッキング手段/繊維は、木綿または他の種類の親水性繊維を含んでよく、好ましくは、上記において定義したように、高い表面エネルギーを有する繊維を含む。
【0095】
デニールは、繊維または糸の線密度の尺度である。「低デニール」には、15デニール以下、より好ましくは11デニール以下、さらにより好ましくは5デニール以下、さらにより好ましくは3デニール以下、最も好ましくは2デニール未満、より好ましくは1.8デニール以下、より好ましくは1.5デニール以下、最も好ましくは1.2デニール以下を含むが、それらに限定されない。
【0096】
マイクロファイバーは、1フィラメントあたり、1デニール以下の線密度を有する、低デニール繊維である。好ましくは、マイクロファイバーは、1未満のデニールを有し、より好ましくは0.5未満のデニールを有し、より好ましくは0.05未満のデニールを有し、最も好ましくは0.005〜0.05のデニールを有する。第二層が低デニールの繊維、好ましくはマイクロファイバーを含む布物品は、従来技術の物品と比べて、着用者の皮膚から、水分を遠くへ運ぶことにおいて、有意により良好であることが分かった。好ましくは、ウィッキング手段は層を形成し、50重量%よりも多い低デニール繊維、より好ましくは80重量%よりも多い低デニール繊維、最も好ましくは95重量%よりも多い低デニール繊維を含む。
【0097】
「マイクロデニールファイバー」としても知られている、マイクロ繊維は、シルクのドレープ性、垂れ性、外観、風合い、動き、柔らかさ、および豪華さを含む、シルク様の特性を有し得る。このことは、インティメートアパレル(または下着)、アウターウェア、およびスポーツウェアのようなアイテムを製造する、ファッション産業において、マイクロ繊維を、望ましいものとする。合成マイクロ繊維は、シルクに似たものではあるが、人工繊維に付与され、また共通する、有用な特性および性能をも有する。例えば、合成マイクロ繊維(例えば、ポリエステルのもの)は、取扱いが容易であり、しばしば「ウォッシュ・アンド・ウェア」性能を有する傾向にある。本発明の布帛において、ウィッキングマイクロファイバーの層を使用することの利点は、この層が、着用者の皮膚から布層を分離し、もって、布層が着用者の皮膚および汗と摩擦接触することを減少させることに起因して、布層の撥水性の寿命を延ばし得ることである。これは特に、マイクロ繊維が非常に密に織られ又は編まれている場合にあてはまる。低デニールの繊維(マイクロ繊維およびナノ繊維を含む)は、他のいずれの繊維よりも、広い表面積にわたって、汗を広げることにおいて、有意に優れており、したがって、発汗の蒸発速度を向上させる。
【0098】
ナノテクロジーおよびポリマー押出の科学における最近の発展は、ナノ繊維の製造をもたらした。ナノ繊維は、好ましくは、フィラメント形態の単分子繊維である。ナノ繊維は、1000nm以下の直径を有する繊維と定義され得る。好ましくは、それらは、3nm〜1000nmの直径を有する。これは、一般に、マイクロ繊維よりもずっと細い。カーボン系のナノファイバーは、鋼鉄の数百倍もの引張強さを有し得る。ナノファイバーを製造する技術は、米国のナショナル・テキスタイル・センターが後援するプロジェクトで開発された。マンチェスター科学技術大学もまた、この技術を試験的な装置にて、開発した。製造技術は、繊維を押し出すために、静電力および機械的な力の組み合わせを利用している。当該プロセスは、「電子紡糸(Electro-spinning)」と説明されてきた。このプロセスにおいて、チューブ内の液体が、高電圧に付され、電気的な力が表面張力に打ち勝ち、そして液体が、噴流となって押し出され、それは分裂して、より細かいフィラメントのアレイ(または配列)になる。
【0099】
常套的な繊維紡糸技術(これはまた、ポリマー繊維を、その直径をマイクロメーター範囲まで減少させて、製造することができる)とは異なって、静電紡糸は、速くて、シンプルである。これらの開発に携わった科学者は、ナノ繊維は、揮発性の溶媒に溶解し得るいずれのポリマーからも容易に製造することができ、また、溶融ポリマーからも製造することができるという意見である。好ましくは、ナノ繊維のフィラメントは、直径が50〜100ナノメートルであり、長さが50〜200ミクロンである。
【0100】
ナノ繊維は、密度が低く、繊維の表面積が大きいために、衣類においてウィッキング手段として使用するのに、特に好都合である。好ましくは、ナノ繊維は、ポリエステルまたはポリアミドを含む(またはそれらから成る)。
【0101】
布層および/またはウィッキング手段は、1または複数の衛生剤を含んでよい。好ましくは、1または複数の衛生剤は、布層の内側に配置され、好ましくは、ウィッキング層またはウィッキング糸の内部に配置される。衛生剤は、物質、繊維または糸であってよい。衛生剤は、布層の内側全体にわたって、均等に配分されてよい。「衛生剤」は、衛生的な又は衛生的にする特性または性能を付与し得る、いずれの衛生的にする手段をも包含し、それは、例えば、抗微生物剤、殺生物剤、脱臭剤、臭い吸収剤、制汗剤、虫除け剤、または香料放出剤であってよい。
【0102】
衛生剤は、布層を構成する、繊維および/もしくは糸/布帛、またはウィッキング手段を構成する繊維の表面、または布層の糸/繊維もしくはウィッキング繊維の内部に分散させてよく、またはその組み合わせであってよい。衛生剤/繊維/糸は、布層の内部に存在してよく、または、当該層の一方もしくは両方の面に分配されていてよい。
【0103】
衛生剤は、抗微生物剤を含んでよい。抗微生物剤は、殺生物剤、生物静止剤(biostatic agent)であってよく、両方であってよい。抗微生物剤は、好ましくは、抗菌剤、抗真菌剤、または抗菌剤および抗真菌剤の両方であってよい。
【0104】
適当な抗微生物剤として、硫黄を含む化合物および/または窒素を含む化合物、ならびに当業者に公知の他の種類の抗微生物剤が挙げられる。
【0105】
適当な硫黄を含む抗微生物化合物として、例えば、チオカルバメート、チオシアネート、イソチオシオネート、ジチオカルバメート、およびそれらの混合物を挙げることができる。
【0106】
適当な窒素含有抗微生物化合物として、例えば、四級アンモニウム化合物、アミド、トリアジン、およびグアニジン、ならびにそれらの混合物を挙げることができる。
【0107】
衛生剤は、アンモニア、変性タンパク質、または乳酸を分解させる、またはこれらに結合する物質、またはその任意の組み合わせを含んでよい。適当な物質として、銀および銀含有化合物、銅および銅含有化合物が挙げられる。銀として、Ag(0)およびAg(I)が挙げられるが、これらに限定されない。これらは、銀の糸/糸繊維またはコーティング/仕上げ剤を含んでよい。
【0108】
特に適当な抗微生物剤は、トリクロサン(2,4,4'−トリクロロ−2−ヒドロキシジフェニルエーテル)またはその誘導体である。
【0109】
これに代えて、抗微生物剤は、例えば、銀含有化合物、錫含有化合物、銅化合物のような、金属をベースとするもの、グルタルアルデヒド、またはヨードフォアであってよい。
第二の層には、1よりも多い異なる抗微生物が存在していてよい。
【0110】
衛生剤は、脱臭剤を含んでよい。
脱臭剤は、化学的に臭気を中和する作用、光触媒反応、または両方によって、脱臭効果を発揮してよい。
【0111】
脱臭剤はまた、抗微生物剤であってよく、あるいは抗微生物活性を有してよい。
衛生剤は、臭気を発する化学薬品を、カプセルに閉じ込めることができる剤を含んでよい。あるいは、衛生剤は、マイクロカプセルの形態であってよい。
【0112】
適当な脱臭剤として、活性炭素、ゼオライト、無機化合物(例えば、チタン(TiO)、亜鉛(ZnO)、およびアルミニウムのケイ素金属の酸化物)、セラミックスおよびセラミックで被覆された鞘繊維(例えば、鞘側がセラミックスを含む、芯鞘ポリエステル二成分繊維)を挙げることができる。
【0113】
臭い吸収剤は、好ましくは、シクロデキストリン類、または活性炭、またはその混合物から選択される。シクロデキストリン類は、当該分野で公知である。それらは、グルコース単位の環であり、酵素反応によりデンプンから生成され得る。環の中央の「ホール」は、多くの小さい分子を保持するのに十分に大きく、例えば、シクロデキストリンは、不快な臭気の減少、布帛の水溶性の向上、化学物質(例えば、芳香化学物質)の制御された放出のような多くの用途について、封入剤として作用することができる。
【0114】
芳香剤を放出させる方法は、マイクロカプセル内の芳香剤を、布帛に付着させることであってもよい。
マイクロカプセル封入は、液体または固体物質の非常に小さい滴または粒子を、ポリマー材料の連続フィルムで、囲む、又は被覆する、プロセスである。マイクロカプセルの内容物は、カプセルの壁の特性に応じて、種々の方法(物理的な圧力、摩擦、分散、壁の溶解および生物学的分解を含む)で放出させることができる。商業的なマイクロカプセル封入技術は、5つの別個なカテゴリーに分類される:
a)スプレーコーティング法(例えば、ウルスター(Wurster)・エアーサスペンションコーティング)
b)溶液から壁を付着させる
c)界面反応
d)物理的なプロセス
e)マトリックス凝固
【0115】
さらに革新的なマイクロカプセル封入プロセスは、自然発生的な(または天然の)予め形成されたカプセル(例えばイースト細胞)の使用を伴う。
【0116】
好ましくは、衛生剤は、抗微生物剤と脱臭剤の両方、または抗微生物特性と脱臭特性の両方を与える単一の剤を含む。
【0117】
布帛の撥水効果を強化するために、布層とウィッキング層との間に、撥水コーティング、または撥水フィルム(通気性フィルム)、または撥水繊維、または撥水層を配置してよい。内側層は、ウィッキングのコーティング/仕上げ剤を有する内側層の内側表面を有する、撥水剤であってよい。
【0118】
本発明はまた、前述の請求の範囲のいずれかでクレームされる、布帛を含む、衣類物品を提供する。物品は、シャツ、Tシャツ、ベスト、ポロトップ、プルオーバー、男性用または女性用のブリーフ、下着、ズボン下、寝間着(例えばパジャマ)、スポーツウェアのトップ、ブラジャー、カーディガン、スカート、ドレス、ブラウス、トラウザー、トラックスーツのボトムス、ショーツ、靴下、ネクタイ、ジーンズ、手袋、コート、ジャケット、ボクシング用グローブ、婦人用長手袋、帽子、キャップ、頭蓋用帽子、ヘルメット、ドレッシングガウン、乳児用衣類(例えば、おむつ及びよだれかけ)、ガウンのような衣服、ドレープ(または覆い)、オーバーオール、マスク、シェフのジャケットおよびエプロンのようなユニフォーム、ならびにタオルおよび衣類の内張りから選択されてよい。衣類には、履き物(例えば、インソール、靴、サンダル、およびトレーニングシューズ)が含まれる。本発明の布帛は、衣服用布帛の一部、または好ましくは全部を構成してよい。例えば、それぞれの布帛が本発明の布帛である、トラウザー、シャツ、Tシャツを構成することが可能であろう。別法として、衣服の一部のみが、本発明の布帛から成っていてよい。例えば、Tシャツまたはシャツのような衣服は、衣服の「脇の下」又は背中のような、一般に汗と接触する位置にて、本発明の布帛を含んでよい。
【0119】
本発明はさらに、本発明の布帛を製造する複数の方法を含む。布層、糸、ウィッキング手段は、前述のとおりである。
【0120】
本発明はまた、
疎水性の糸/糸繊維を含む布層であって、水蒸気を通過させ、液体の水を通過させない布を供給すること、および
布層の意図される内側に、ウィッキング手段を配置すること
を含むプロセスによって得られる、本発明の布帛を製造する方法を提供する。
【0121】
当該方法は、
疎水性の糸を供給すること、
糸を布層に形成すること、
布層の意図される内側にウィッキング手段を配置すること
を含んでよい。ウィッキング手段は、布層と織り合わされる又は編まれる、低デニールの繊維を含んでよい。糸は、疎水性の糸繊維を含んでよい(または疎水性の糸繊維から成ってよい)。
【0122】
当該方法は、
(i)衣類用布帛を製造するための糸を供給し、糸を布層に形成すること
(ii)布層の意図された内側に、ウィッキング手段を配置し、工程(ii)の前または後に、
(iii)得られる布層が、水蒸気を通過させ、液体の水を通過させないように、布層の糸を処理して、疎水性の糸を形成すること
を含んでよい。ウィッキング糸は、布層が織成/編成されるプロセスと同じプロセスで(例えば、織布の場合、ウィッキング糸/糸繊維を浮き上がり(またはフロート)糸として導入することにより)、好ましくは、布層と一体にされる。
【0123】
疎水性の糸は、
疎水性のモノマー、および適宜、親水性のモノマーから形成される、ポリマーを供給すること、
当該ポリマーを糸と反応させて疎水性の糸を形成することを含むプロセスであって、
前記モノマーが、糸の表面にて、水酸基またはアミン基と共有結合を形成することができる、反応性基をさらに含む
プロセスによって得られるものであってよい。
【0124】
疎水性のモノマーは、N−(tert−ブチル)アクリルアミド、n−デシルアクリルアミド、n−デシルメタクリレート、N−ドデシルメタクリルアミド、2−エチルへキシルアクリレート、1−へキサデシルメタクリレート、n−ミリスチルアクリレート、N−(n−オクタデシル)アクリルアミド、n−オクタデシルトリエトキシシラン、N−tert−オクチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ビニルラウレート、ビニルステアレート、フルオロアクリレート、フルオロスチレン、およびテトラフルオロエチレンから選択してよい。
【0125】
親水性モノマーは、アクリルアミド、アクリル酸、N−アクリロイルトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、ビスアクリルアミド酢酸、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(グリコールメタクリレート)、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−メタクリロイルトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、N−メチルメタクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)(n)−モノメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)(n)モノメチルエーテルモノメタクリレート、2−スルホエチルメタクリレート、1,1,1−トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、N−ビニル−2−ピロリドン(1−ビニル−2−ピロリジノン)、および2−ヒドロキシエチルメタクリレートから選択してよいが、これらに限定されない。
ポリマーは、変性ポリ(無水マレイン酸)ポリマーであってよい。
【0126】
疎水性の糸は、糸を、
i)1または疎水性基および2またはそれより多い反応性カルボキシル基を含み、それらのうち少なくとも2つが、5または6員の無水物の環を形成し得るような位置に配置されている、ポリマー;および(ii)無水物形成触媒を含む調合液
と接触させることによって得られるものであってよい。
【0127】
本発明は、さらに、衣類物品を製造する方法であって、
本発明の方法を用いて製造された布帛を供給すること、
当該衣類物品を当該布帛から形成すること
適宜、1または複数の他の液体の水および水蒸気を通過させ得る布帛を使用すること
を含む方法を提供する。
【0128】
本発明はさらに、ここで規定されるような布帛を製造する方法によって得られる、布を提供する。
本発明は、ここで規定されるような衣類物品を製造する方法によって得られる、衣類物品を提供する。
【0129】
好ましくは、布層の内側の表面張力は、水のそれよりも高い表面張力を有する。外側は、水の表面張力よりも低い表面張力を有してよい。内側および外側の両方は、水の表面張力よりも低い表面張力を有してよい。好ましくは外側の表面張力は、油のそれよりも低く、好ましくは植物油のそれよりも低い。
【0130】
好ましくは、布層は、水蒸気を通過させ、液体の水は通過させず;
当該布層は、使用中、物品の意図される着用者に面する内側、および使用中、物品の意図される着用者から遠ざかる方向に向いている外側を含み;かつ
布層の内側の少なくとも一部にウィッキング繊維が配置されている。好ましくは、当該ウィッキング繊維は、取り外しできないように、布層に取り付けられている。ウィッキング繊維は、布層の糸と、一体に織られ、又は編まれていてよい。
【0131】
好ましくは、ウィッキング繊維は、取り外しできないように、接着剤で布層に取り付けられている。
好ましくは、ウィッキング繊維は、取り外しできないように、布層の糸と織られ/編まれている。
【0132】
好ましくは、ウィッキング繊維は、低デニールの繊維、好ましくはマイクロ繊維、さらにより好ましくはナノ繊維、またはそれらの組み合わせ、好ましくはマイクロ繊維とナノ繊維との組み合わせを含む。
好ましくは、低デニール繊維は、ウィッキング/親水性仕上げ剤の付いた、ポリエステルまたはポリアミドを含む。
【0133】
ウィッキング手段は、層を形成してよい。好ましくは、当該層は、低デニールの繊維、好ましくはマイクロ繊維、さらにより好ましくはナノ繊維、またはその組み合わせ、好ましくはマイクロ繊維とナノ繊維との組み合わせを含む。
ウィッキング繊維は、織られた、不織の、もしくは編まれた、またはメルトブローンされたものであってよい。
【0134】
ウィッキング手段は、それほど吸水性のものでなくてよく、水分を、毛管作用によって、大きな表面積にわたって、細い繊維(例えば、マイクロ繊維)を介して、体から遠くに運ぶ。ウィッキング手段は、疎水性または吸水性の物質を含んでよい。好ましくは、液体の汗は、僅かに又は全く吸収されないが、蒸発するために、盛んに運び出される。例えば、親水性繊維(例えば木綿)が、ウィッキング繊維として使用される場合には、木綿繊維は、その水分保持力を低減させ、水分が一つの木綿繊維から次の繊維に広がることを許容するように、細いものであることが好ましい。好ましくは、ウィッキング手段は、Nm10、Nm15、Nm20、Nm25、より好ましくはNm30、より好ましくはNm40、および最も好ましくはNm50の木綿の繊維または糸を含む。
【0135】
ウィッキング手段はまた、布層の内側、布層の個々の糸/糸繊維、もしくは布層、または内側層に付着させられる、コーティング/仕上げ剤/粉体であってよく、または、ウェブ状の構造に形成された材料、または粉体もしくはメルトブローン繊維、または非常に軽量のニット(女性用のタイツで見られるようなものに類する)であってよい。エラスタン等は、この層/糸/繊維に可撓性を付与し得る。ウィッキング手段は、毛羽立てのような表面効果によるものであってよい。
【0136】
好ましくは、布層は、木綿、および/またはポリエステル、および/または麻、および/または絹繊維を含む。
【0137】
好ましくは、本発明の全体の布帛は、2種類の糸、即ち、布層を構成する「外側の」糸、およびウィッキング手段を構成する「内側の」糸のみから構成される(例えば、外側の糸として、Nanopel/Nanocare(NanoTex)で被覆された木綿糸、およびウィッキング手段として、ポリエステルマイクロ繊維糸、またはウィッキング仕上げ剤(例えば、NylstarのMeryl Nateo)の付いたポリエステルもしくはポリアミド糸、または木綿糸のような吸水性の糸)。
【0138】
布帛の両側は、(ポリエステル、ポリアミド等を含む)マイクロ繊維を含んでよい(またはマイクロ繊維から成ってよい)。
【0139】
本発明のさらに好ましい形態および選択を、下記に説明する。「内側」は、「内部」と同義である。「外側」は、「外部」と同義である。
好ましい形態において、本発明は、通気性の布帛であって、2つの層を含む又は2つの層から成り、
外側の通気性の布層は、布層が疎水性となるように、個々の布層の糸もしくは糸繊維の周囲、または個々の糸もしく糸繊維の中に、疎水性のシールド(もしくは遮蔽物)またはコーティング(被覆物)のいずれかを有し、
前記布層は、水分をウィッキングする及び/または吸収する内側層に、積層され、取り付けられ、または縫合されている、
布帛を提供する。
【0140】
疎水性のシールドまたはコーティングは、布帛製造のいずれの段階にて施されてもよく、即ち、糸繊維、糸、布帛、または衣服に施されてよい。疎水性のシールドまたはコーティングは、ここで規定したような疎水性の分子部分を含んでよく、あるいは疎水性の分子部分から成ってよい。
【0141】
ウィッキング手段のための親水性/ウィッキング仕上げ剤は、布帛のいずれかの製造段階にて、布帛の内側に、または糸/糸繊維に、付着させてよいが、好ましくは、耐久性を向上させるために、織成/編成プロセスの前に付着させる。
【0142】
好ましくは、内側層は、低デニールの繊維、より好ましくはマイクロ繊維を含む。
好ましくは、内側層は、密に編成されて、または織構造を有していて、液体の汗を広い表面積にわたって広げ、また、液体の汗が、体に当たる玉になることを防止している。布帛においては、大きなギャップがより少ないほど、より良い。
【0143】
好ましくは、内側層は、外側の層の耐水性および体の汗による摩耗(例えば、脇の下の汗がこすりつけられること)を、最大にする/保護するように、密に編成され、または織構造を有している。好ましくは、内側/ウィッキング糸が、浮いている糸として、織構造に導入される場合、糸は、意図される内側表面の少なくとも30%を覆い、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは100%を覆う。好ましくは、毛管作用によって水分を除去するチャンネルを残すことによって、または糸/糸繊維に添加した親水性仕上げ剤、もしくは糸/糸繊維の本質的な吸水性によって、水分を表面全体に広げることによって、ウィッキング効果を向上させるために、浮いている糸は互いに接近しており、最も好ましくは互いに接触している。
【0144】
内側層は、コーティング、またはウェブ状構造体(女性用タイツで見られる構造体に類似している)に形成された低デニール繊維/マイクロ繊維であり得る。エラスタン等が、この層に可撓性/伸縮性を付与し得る。
【0145】
好ましくは、内側層は、臭いの外側布帛への移動を減少させるために、密に織成され、または織構造を有している。
好ましくは、布帛全体は、衛生特性を有し、両方の層/糸は、ここで規定される1または複数の衛生剤を含む。
【0146】
好ましくは、少なくとも一つの層/糸が、衛生特性を有し、1または複数の、ここで規定される衛生剤/繊維/糸を含む。
好ましくは、接着剤を使用して2つの層を一体に接着する場合には、接着剤が通気性を有する。好ましくは、接着剤は、さらに、ここで規定される衛生剤を、1または複数含む。
【0147】
好ましくは、2つの層が布帛であり、衣服の一部または全部を形成する場合、層は、衣服の縫い目にて単に縫合されるよりはむしろ、好ましくは、層全体にわたって均一な分布にて、一体に縫合される。
【0148】
外側布層が未処理の木綿を使用して親水性になっている、従来の他の通気性の布帛とは対照的に、本発明の布層は、外側糸において、吸収機能を有しない。代わりに、それは、水分が、糸の中または糸の間のギャップを通過して蒸発することを許容する。ウィッキング層/糸は、水分を着用者の皮膚から取り除く作用をし、理論的に言えば、水分を、広い表面積にわたって広げて、それが外側の布層を通過して速く蒸発することを許容する。
【0149】
低デニール繊維は、優れた触感を得られる布帛に与えることができるので、用いられる。マイクロ繊維の構造物、特に密に織られた構造物は、例えばフルオロカーボンを引き留めるので、低デニールの繊維は、布の糸に施される撥水性を、摩耗または劣化から、保護することができる。マイクロ繊維およびナノ繊維を含む低デニールの繊維は、広い表面積で汗を広げるうえで、他の繊維よりも、有意により良いものであり、したがって、洗濯後の衣服の撥水性のいずれのタイプの低下をも妨げる。ゆえに、目に見える発汗のマークは、外側の布帛において、見られない。
【0150】
低デニールの繊維は、好ましくは、アクリル、ポリエステル、ポリアミド繊維、またはそれらの任意の組み合わせを含む。好ましくは、低デニールの繊維は、その構造が、織成されたもの、編成されたもの、または不織のものである。好ましくは、低デニールの繊維は、ポリエステル、ナイロン、ポリアミド、ポリプロピレンまたはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0151】
内側の層は、布層または個々の糸繊維もしくは糸に付着した、コーティング/仕上げ剤であってよい。
好ましくは、少なくとも1つの層が、衛生特性を有し、好ましくは両方の層が衛生特性を有する。
【0152】
通気性の接着剤が、ここで規定される衛生特性を有していてよく、また、ここで規定される衛生剤を含んでよい。
好ましくは衛生剤は、布帛の内側に存在し、使用中、本発明の布帛から成る衣服の着用者の皮膚に接触する。
【0153】
好ましくは、布帛は、下記のうち、1または複数を含む
−木綿繊維
−毛繊維
−ポリエステル繊維
−ポリアミド繊維
−ライクラ
−スパンデックス
−レーヨン繊維
−ビスコース繊維
−レーヨン繊維
−ジュート繊維
−リネン(または麻もしくは亜麻)繊維
−絹
−エラスタン
−アクリル
−アセテート
−大麻
−亜麻
−ポリビニルアルコール
−とうもろこし繊維
−竹のような代替木綿繊維
−ポリプロピレン
−マイクロ繊維
−ナノ繊維
【0154】
2つの層は、一緒に積層されるか(熱、化学的)、編まれるか、織られるか、縫合され得る。布帛層が、編まれ、織られている場合、これは、繊維/糸のレベルでなすべきである、即ち、各層は、2つの予め製造された層を一緒に織成し、編成するよりはむしろ、一体に編まれ又は織られる。縫合は、布帛の段階にて、または繊維/糸の段階にて、行うことができる。
【0155】
好ましくは、2つの層は、永久的に、互いに取り付けられて、洗濯サイクルに耐える。
布帛は、二層の布帛、二重編物もしくは二重織物であるよりはむしろ、表裏を有する一重の編物または織物であって、一方の面が外側の疎水性の糸を含み、他方の面が内側のウィッキング糸を含むものであることが好ましい。
【0156】
好ましくは、衣服は、アイロンおよびドライクリーニングに耐えることができる。
好ましくは、外側の層/糸は、下記のうち、1または複数を含む
−木綿繊維
−毛繊維
−ポリエステル繊維
−シルク繊維
−ナイロン繊維
−ライクラ繊維
−マイクロ繊維
−ポリアミド繊維
−アクリル繊維
−絹
−エラスタン
−ナノ繊維
−毛繊維
−ポリプロピレン繊維
−ビスコース繊維
−リネン(または麻もしくは亜麻)繊維
【0157】
好ましくは、内側層は、体から汗を遠くに運ぶために、使用中、毛管効果を有する繊維を含む。
好ましくは、内側層/糸は、合成繊維または親水性の天然繊維から成る。
【0158】
好ましくは、内側層/糸は、下記のうち1または複数を含む。
−木綿繊維
−ポリエステル繊維
−絹繊維
−ナイロン繊維
−ライクラ繊維
−マイクロ繊維
−ポリアミド繊維
−アクリル繊維
−絹
−エラスタン
−ナノ繊維
−毛繊維
−ポリプロピレン繊維
【0159】
好ましくは、内側の糸が合成繊維である場合、それは、その表面/その内部に仕上げ剤を有している。仕上げ剤は、Nylstarが供給するポリアミドMeryl Nateoの場合がそうであるように、合成繊維を親水性にする。ウィッキング仕上げ剤の付いたポリアミドのような内側の糸を有することは、水分を皮膚から遠くに運ぶことに優れ、かつ他数回洗濯した後も耐久性を有することが分かった。
【0160】
暗い汗のパッチがウィッキング材料から透けて見えないようにするために、軽量の布帛を内側で採用するべく、あるいは、布がいずれか一方の層であると見えるようにするべく、好ましくは、両方の層/糸は、同じ色または互いに補色関係であるか、あるいは、内側がニュートラルな色を有するものである。
好ましくは、外側の布帛は、ここで規定される衛生特性および/または衛生剤、衛生繊維、衛生糸を有する。
【0161】
本発明の布帛は、重いコートまたはジャケットの下で着用される衣類物品、硬く剛性のあるものではない衣類物品、例えば、シャツ、Tシャツ、ブラウス、ショーツ、トラウザー、ジーンズ、下着、ドレス、長袖のトップス、ジャンパー、セーター、カーディガン、スカート、トラックスーツのトラウザー、スポーツウェア(サイクリングショーツ、タイトトップス、4分の3丈のトラウザーのような高伸縮性を有する衣類物品を含む)のような衣類物品用のものとして理想的である。一般に、布帛は、規則的な基準で洗濯される傾向にある、衣服の物品に適している。
【0162】
外側の層もしくは内側の層または両方の層はナノ繊維を含んでよく、それらは撥水性(外側層)またはウィッキング(内側層)をさらに向上させるために選択され得る。
【0163】
衣服の布帛がシャツである場合、それがピーチスキン仕上げ剤を有している場合には、触感は、より向上するであろう。
布層は、好ましくは、高い耐久性のアウターウェア(例えば、ハイキングジャケット)のような硬い又は柔らかいシェルファブリック(shell fabric)ではなく、毎日利用される衣類物品、すなわち、木綿のシャツおよびTシャツである。
【0164】
理論的にいえば、外側層/糸は、撥水性仕上げ剤で厚く被覆されているような風合いを有しておらず、例えば、他の木綿/ポリエステル布帛の類似する布帛/糸の触感を有する。
【0165】
好ましくは、内側の層/糸の布帛の構成は、外側の層/糸に合致する。例えば、外側層が織物である場合、内側層もまた、織物であるが、各層の糸の組成は異なっていることになろう。
内側層は、衣服の着用者を、暖かい状態に維持することを意図するものではなく、実際に、水分が体から遠くに運ばれることを意図しており、それにより皮膚を冷やすことになる。内側の層/糸は、好ましくはフリース材料ではなくて、薄く、非常に軽量のドレープ性を有する布帛/糸である。
【0166】
外側層/糸と内側層/糸との間には、乾燥しにくい、液体を保持する、セルロース吸収層が配置されていなくてよい。
好ましくは、少なくとも1つの層が、UV吸収剤または遮蔽剤のいずれかを有している。
【0167】
布帛は、耐炎性であるか、難燃性であってよい。布帛は、煙粒子吸収剤(シクロデキストリンが挙げられるが、これに限定されない)を含んでよい。
【0168】
布帛は、抗静電特性を有してよい。
外側の布帛/外側の糸は、撥水特性とともに、耐汚および撥油特性を有していてよい。
【0169】
内側および/または外側の糸は、汚れ放出特性(すなわち、腋の下のような体の皮脂の汚れおよび首の汚れを、洗い落とすのを助ける)を有することができる。米国特許5377249号は、これを達成するために、アクリルコポリマーエマルション、アミノプラスト樹脂、および樹脂触媒の使用を開示している。汚れ放出特性は、DuPontによって、彼らのテフロンシリーズに関して、また、Invistaによって、彼らの水分ウィッキング繊維に関して、最近、発表された。
【0170】
外側層は、好ましくは織物または編物である。
好ましくは、外側および内側層は、一体にされた衣類の物品を形成している。
布層および/またはウィッキング層/糸は、データ蓄積または移動情報を与え得る、金属コロイドを有してよい。別法として、金属コロイドは、米国特許0201960号のように、抗静電手段として、使用してよい。
本発明の布帛を下記の非制限的な実施例によって、示す。
【実施例】
【0171】
実施例1
2層の積層体を下記の方法で製造した。通気性のシャツ素材、すなわち、水蒸気は通過させ得るが、液体の水に対しては耐性を有する、シャツ素材を供給した。シャツ素材は、100%木綿シャツから得、その糸は、Nano-Pelフッ素化学処理に付した(Nano-Tex LLC)。処理したシャツは、Lands Endsから得た。シャツ素材の重さは、110−130gsmの間であり、役125gsmであった。Nano-Pel(Nano-Tex LLC)は、疎水性のフッ化ポリマーを個々の糸に結合させる処理である。低デニール繊維の内側層の布帛は、下記のように、布層に積層した。
【0172】
種々の独立したテストにおいて、下記の接着剤を採用した:通気性のポリアミド接着剤(Bostik)のウェブ、通気性のポリエステルの接着剤(Colplan)のウェブ、および通気性のポリエチレンのウェブ(Rubinstein&Son Ltd)。これらのウェブは、シャツ素材と、内側布(ウィッキング)層との間に配置した。布帛は、それから、約120℃〜160℃の温度に、約10〜20秒間、あるいは、接着剤が溶融して、2つの層を一体に接着するまで、付した。2つの層は、接着を助けるために、接着剤が溶融している間に、押し付けた。布帛は、それから、それらが室温になるまで、放置した。別のテストにおいて、Rossendale Combiningの「化学スプレー接着剤」を、シャツ素材に、室温にて塗布し、内側ウィッキング層を接着剤に接着させた。内側布(ウィッキング)層は、光触媒反応および化学吸収反応の二重脱臭メカニズムを提供する、100%ポリエステルの低デニール繊維を含んでいた。この内側層は、クラレ社が製造する、Claretta SP-99-Shine UPであった。低デニール繊維は、非常に軽い、編成された布帛であった。内側層単独の重さは、約70gsmであった。ニット構造は、得られる布帛が、快適であり、通常の木綿シャツに類似するドレープ性と触感を有することを許容した。
【0173】
実施例2
別のテストにおいて、実施例1で使用した、通気性を有するシャツ素材を供給した。一方の側にポリアミド接着剤の付いた、非常に軽量のニット(45〜55gsm)のポリエステル布帛もまた、供給した。内側層の布帛は、RubinsteinのLK3000製品であった。ポリアミド接着剤は、シャツ素材に接触させられ、布帛は、125〜140℃の温度にて、12秒間、曝すとともに、Kennegeisserのスケールで、4バールの圧力下で押しつけられた。布帛はそれから、放置して、室温にまで冷却した。
【0174】
シャツにされたとき、実施例1および2の得られた布帛は、着用者の皮膚から、水分を運び得るが、汗が、蒸気の形態で布を通過することを許容することが分かった。シャツの内側に液体の水を付けると、シャツ布帛の外側は変色しなかった、即ち、水のマークは見られなかった。
【0175】
実施例3
スポーツ用の衣服(例えば、ランニングシャツ、サイクリングショーツ)に組み込むのに適した布帛もまた、製造した。外側の通気性を有する層は、個々の糸/繊維に耐久性の撥水仕上げ剤が付着している、織成された、100%ポリエステルの低デニール繊維(75gsm)であった。布帛は、Carol Textile Company(台湾)から得られ、「撥水化学仕上げ剤が付いたマイクロ繊維」と呼ばれていた。この布帛は、非常に柔らかく、布帛上の仕上げ剤を感じさせないものであった。処理した布帛のドレープ性および通気性は、同じ重さの未処理の布帛に、実質的に類似すると認められた。これは、一部において、個々の繊維が処理されていることに起因する。そのようなドレープ性は、個々の繊維にではなく布に塗布された、通気性表面被覆を有する同様の布帛では、見られないものであろう。
【0176】
外側の通気性の布帛は、通気性のポリアミドウェブ接着剤(Bostik)を使用して、2つの層(布帛とウィッキング層)の間にウェブを配置し、布帛を140℃の温度に、約10秒間、または接着剤が溶融して、層を一緒に結合するまで、曝すことにより、ウィッキング層に積層された。使用した内側ウィッキング層は、Knitted-Claretta SP-99であった。それは、得られる布積層体を、比較的、柔らかく、軽量で、しなやかなものにした。布帛は、液体の水分を運ぶことができたが、通気性の層を通って、水分が蒸発することを許容した。層へのエラスタン繊維の組み込みは、さらに伸縮することができる素材を与えることが分かった。
【0177】
得られた実施例3の布帛を、スポーツ用の衣服(例えばランニングシャツ)に作製すると、着用者の皮膚から、水分を運ぶことができるが、蒸気の形態の発汗が布帛を通過することを許容したことが分かった。液体の水を衣服の内側層に付けると、シャツ布帛の外側は変色しない、即ち、水のマークは見られなかった。
【0178】
実施例4
布層として使用する布帛
撥水仕上げ剤を有するコットンの布帛を、Rudolf ChemieのBionic 仕上げ剤を用いて作製した。
ボビン上にある木綿糸が供給された。
予備処理:
2g/リットル RUCO-TEX NKS 150
80℃/15分
温かい濯ぎおよび冷たい濯ぎ
【0179】
仕上げ剤
液比 1:10
液体循環 2分i/o、および4分o/i
温度 60℃
時間 最終温度にて10分
染色 温度:100℃
定着 温度130℃、定着時間 60分
【0180】
上述の処理は、Nm80/2木綿糸に適用した。それは、ランニング挙動、ならびに撥水および撥油に関する優れた結果を達成した。撥水処理後の木綿糸のテスト結果を、下記に示す。
【0181】
Nm80/2、Rucostar DDDの付いた白色木綿糸
pH=6

摩擦
摩擦試験器 RK
繊維/金属ラッピング(または巻き付け)摩擦
ラッピング角度 180°
100m/分
予備張力(またはプレテンション) 10cN
摩擦値=0.19
変数CV%の係数=10.2
【0182】
摩擦
繊維/金属ラッピング摩擦
ラッピング角度 540°
150m/分
摩擦値=0.17
【0183】
ウィッキングテスト
4時間後の上昇高さ=0mm
撥油性
AATCC 118/EN 14419=6〜7
撥油性(AATCC 118−1966に準拠する)。テストサンプルを、平らな水平面に置き、テスト液体1〜8の滴(滴の直径は約5mm)を、滴下ピペットにより、試験サンプルの様々なポイントに、指示に従って、付与し、結果を各々のケースにおいて、30秒後に評価する。試験布帛のAATCC撥油性のレベルは、30秒の間に試験材料を濡らさない又は試験材料にしみこまないテスト液体のうち、最も高い番号である(1=最も撥油性が低い。8=最も撥油性が高い)。
【0184】
実施例5
実施例4のRucostar処理された糸を含む一層の平織物が、木綿糸と一体に織成されたものを、製造した。
使用した糸は、下記のとおりである・
疎水性の糸=Rucostar撥水/防汚処理された、80/2のコーミングされた木綿糸
ウィッキング糸=Nm50/1木綿糸
ウィッキング糸特性
Nm50/1 白色
【0185】
摩擦
摩擦試験器 RK
繊維/金属ラッピング(または巻き付け)摩擦
ラッピング角度 180°
100m/分
プレテンション(または予備張力) 10cN
摩擦値=0.29
変数CV%の係数=8.3
摩擦
繊維/金属ラッピング摩擦
ラッピング角度 540°
150m/分
摩擦値=0.33
【0186】
ウィッキングテスト
4時間後の上昇高さ=153mm
【0187】
白色の程度
Acc. To Ganz/Griesser=222
Nm80/2木綿(疎水性)糸の特性
pH=6
摩擦
摩擦試験器 RK
繊維/金属ラッピング(または巻き付け)摩擦
ラッピング角度 180°
100m/分
プレテンション 10cN
摩擦値=0.19
変数CV%の係数=10.2
【0188】
摩擦
繊維/金属ラッピング摩擦
ラッピング角度 540°
150m/分
摩擦値=0.17
ウィッキングテスト
4時間後の上昇高さ=0mm
撥油性
AATCC 118/EN 14419=6〜7
【0189】
撥油性(AATCC 118−1966に準拠する)。テストサンプルを、平らな水平面に置き、テスト液体1〜8の滴(滴の直径は約5mm)を、滴下ピペットにより、試験サンプルの様々なポイントに、指示に従って、付与し、結果を各々のケースにおいて、30秒後に評価する。試験布帛のAATCC撥油性のレベルは、30秒の間に試験材料を濡らさない又は試験材料にしみこまないテスト液体のうち、最も高い番号である(1=最も撥油性が低い。8=最も撥油性が高い)。
【0190】
本発明の布帛は、図3に示す織パターンに従って製造した。布は、一つの経糸および二つの緯糸を含む。経糸および緯糸の一つは、疎水性のNm80/2木綿糸であり、他の緯糸は、50/1の木綿ウィッキング繊維である。ウィッキング緯糸は、「緯糸フロート」と呼ばれる。得られる布帛を図4に示す。
【0191】
この布帛は、100%木綿シャツ素材に、理想的である。外側の疎水性の糸は、ツイルとして織られるが、外側の糸を平織として織ることによって、より軽くし得る。
【0192】
疎水性の糸を含む布層に取り付けられた浮いているウィッキング緯糸を有する、得られる一重の織物は、自然な触感を有する、非常に柔軟で軽い布帛となることが分かった。布帛は、表面効果を有しない通常の一重の織物とは、区別できなかった。得られた布帛の外側は、撥油および撥水性であり、内側は、皮膚から水分を遠くに引き出すことにおいて優れていた。汗は、ウィッキングの浮いている糸によって、皮膚から遠くに引き出され、布層を水蒸気として通過して、布帛から離れる。外側の糸が疎水性であるので、ウィッキング繊維上の/その内部の水分は、外側の糸によって吸収されず、したがって、発汗のマークは存在しない。外側の糸に付着している防汚/撥水仕上げ剤によって、外側の糸はそれほど膨潤しないので、布層は、シワに対する耐性を有していることもまた明らかとなった。
【0193】
実施例6
Sinteramaにより供給されるポリエステル糸、110/90(それにより、110は、糸のデシテックスで、線密度を示し、90は、糸のフィラメントの数を示す)を、テフロン仕上げ剤で、糸のレベルで処理し、150℃にて乾燥させた。
【0194】
親水性にされたポリアミド糸、110/68が、Nylstar、即ち、Meryl Nateoにより供給された。
これらの2つの糸を、ポリエステルの糸の交差点に(図5Cにおいて、強調されているように)緯糸のウィッキング浮き上がり糸が取り付けられた、図3に示すパターンと同じ織パターンで、一重織布帛に織成した。得られた布帛は、内側から水を運び(またはウィッキングし)、外側が耐雨/防汚性である、スポーツウェアの布帛に理想的なものであった。布帛は軽くて柔らかい。
【0195】
実施例7
2プライ木綿糸、Nm80/2を、防汚および撥水仕上げ剤(Rudolf ChemieのRucostar DDD)を用いて、糸段階で、処理した。
標準的な2プライ木綿糸、Nm80/2が、供給され、糸の段階で洗浄された。この洗浄プロセスによって、木綿から、ワックス等が取り除かれ、水分を運ぶことができるようにした。
2つの糸は、図5Dに示すように、二重の織構造に一緒に織成された。この得られた、僅かに厚い布帛は、例えば、シェフのジャケットに理想的なものである。布の外側の面は、100%の防汚/撥水繊維を有し、内側の面は、97%のウィッキング繊維を有していた。得られた布帛は、柔らかい触感を有し、皮膚から水分を遠くに運ぶのに優れていて、外側の面は非常に撥水性であった。
【0196】
実施例4、5、6および7は、布層の糸が疎水性の仕上げ剤(撥水剤)で被覆されているために、布層が被覆されているものとは対照的に、これは、布帛の触感および水蒸気を布層を通過させる能力がともに良好であることを確実にするだけでなく、外側の糸上の撥水仕上げ剤の耐久性および内側の糸のウィッキング特性が、非常に向上することを確実にしていることを、示した。あったとしても、極めて僅かな疎水性仕上げ剤がウィッキング層へ移動していることが見られた。表面コーティング(即ち、フロロカーボンコーティング)が、通常、布帛の段階で布層の全体に付けられると、布層の両側をコートしないようにする(または相互に汚染する、もしくは浸透する)こと、および両側に疎水性を付与しないようにすることが困難であるために、これは通常、問題を有している。例えば、フロロカーボンが、布帛の段階で、布帛の表面層(即ち、布の表面)に付与されると、フルオロカーボンは、布帛の他方の側(布帛の裏面)に、通常、浸透し又は接着する。糸段階でコーティングを施すことは、耐久性を有し、柔軟で、高度な通気性を有し、布層の両方の表面にて、相対する機能(疎水性および親水性)を有する有効な布帛を、確保する。
【0197】
ウィッキング繊維の非常に細く薄い糸/繊維、特に、低デニールの繊維および/またはマイクロ繊維は、ここで説明した外側の布層/糸と組み合わされると、快適で、柔軟な風合いを有し、水分を運ぶことができる布帛を生成することがわかった。木綿、毛、または衣類に通常使用される他の繊維を含む、ここで説明される通気性を有する布層/糸と組み合わされると、得られる布帛は、液体の水を通過させ得る、類似する布層のドレープ性および触感を有する。
【0198】
本発明の布帛を、衣類に適用するのと同様に、本発明の布帛は、下記に示すものとして使用してよい。
本発明の布帛は、家具を被覆する物品であって、本発明の布帛を含む物品をさらに提供する。
家具を被覆する物品は寝具類の物品であってよい。当該物品として枕ケース、キルトカバー、または積層物のベッドシートを挙げられるが、これに限定されない。当該物品は、マットレスを覆ってよく、あるいはマットレスの一部であってよい。
【0199】
本発明は、少なくとも一部が、家具を覆う物品によって、被覆された家具物品を含む。好ましくは、ウィッキング手段は、家具を使用する人に面する布帛の側、例えば物品の外側に配置される。家具物品は、椅子、ソファ、車いす、カーシート、マットレス、またはスツールの座部から選択されてよい。布帛は、これらの物品の背もたれ、アーム、もしくは座部、またはそれらの組み合わせを被覆してよい。
【0200】
本発明は、ハンドル−グリップを被覆する物品であって、本発明の布帛を含む物品を、さらに提供する。使用中、ウィッキング手段は、ハンドルグリップの被覆体の外側に配置されるであろう。
本発明は、さらに、ハンドルグリップを被覆する物品を含むハンドルグリップをさらに提供する。
【0201】
本発明は、本発明の布帛を含む又は本発明の布帛から成る、容器をさらに提供する。
ウィッキング手段は、当該容器の外側に配置してよい。そのような場合において、容器は、財布(またはがま口)または札入れから選択してよい。
【0202】
あるいは、ウィッキング手段は、容器の内部に配置してよい。そのような場合において、容器は、寝袋、リュックサック、ハンドバック、ショルダーバッグ、スポーツバッグ、ビーチバッグ、またはスーツケースであってよい。
【0203】
本発明は、床、壁、または天井を覆う、またはそれらに組み込まれる物品であって、本発明の布帛を含む物品を、さらに提供する。ウィッキング手段は、布層の側が、床、壁、または天井に面するように配置され、あるいは、布層の側が、床、壁、または天井から遠ざかるよう方に向くように配置される。物品は、ラグ、カーペット、バスマット、壁紙、タイル、フロアボード、壁、床または天井の構造部材、またはほろ付きのクーペ型自動車の布のルーフから選択してよい。
【0204】
本発明は、管類を被覆する物品であって、本発明の布帛を含む物品を、さらに提供する。好ましくは、使用中、ウィッキング手段は、管に面する布層の側に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0205】
【図1】図1は、疎水性の経糸および緯糸の「上」層(1)、および低デニールの繊維を含む、ウィッキング経糸および緯糸の「下」層(2)を有する、布を示す。
【図2】図2は、疎水性の経糸および緯糸の「上」層(1)、および低デニールの繊維を含む、ウィッキング経糸および緯糸の「下」層(2)を有する布を示す。
【図3】図3は、実施例5の一重の織物を作製するための織組織を示す。
【図4】図4は、図3のパターンに従って作製される布を示す。
【図5A】本発明の布の内側(ウィッキング)面の例を示す。
【図5B】本発明の布の内側(ウィッキング)面の例を示す。
【図5C】本発明の布の内側(ウィッキング)面の例を示す。
【図5D】本発明の布の内側(ウィッキング)面の例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を含む布層を含む布帛であって、
当該布層が、水蒸気を通過させ、液体の水は通過させないものであり、
当該布層の一方の側の少なくとも一部に、ウィッキング手段が配置されている、
布帛。
【請求項2】
前記布帛が衣類物品を形成するためのものであり、前記布帛が糸を含む布層を含み、
当該布層が、水蒸気を通過させ、液体の水は通過させないものであり、
当該布層が、使用時に、物品の意図する着用者に面する、内側、および使用時に、物品の意図する着用者から遠ざかる方に面する外側を有し、
当該布層の内側の少なくとも一部に、ウィッキング手段が配置されている、請求項1に記載の布帛。
【請求項3】
前記布層が、織られた又は編まれた糸で形成されている、請求項1または2に記載の布帛。
【請求項4】
布層の前記糸は、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、リヨセル、レーヨン、ビスコース、ナイロン、木綿、亜麻、フラックス、大麻、ジュートおよびウール、アセテート、アクリル、エラスタン、絹、またはそれらの2もしくはそれよりも多い組み合わせを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項5】
布帛が、個々の糸および/または当該糸の少なくとも一部を構成する個々の糸繊維に結合した疎水性の分子の部分を有する糸を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項6】
布層が、織られた又は編まれた糸から形成され、疎水性の分子の部分が、布帛を織成または編成する前に、個々の糸および/または糸繊維につけられている、請求項5に記載の布帛。
【請求項7】
分子の部分はまた疎油性である、請求項5または6に記載の布帛。
【請求項8】
疎水性の分子の部分の少なくとも幾つかが、糸および/または当該糸の少なくとも一部を構成する糸繊維に、直接的に又は間接的に非共有結合している分子を構成している、請求項5〜7のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項9】
疎水性の分子の部分の少なくとも幾つかが、糸および/または当該糸の少なくとも一部を構成する糸繊維に、直接的に又は間接的に共有結合している化学基である、請求項5〜7のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項10】
疎水性の分子の部分が、疎水性の分子または疎水性の化学基を含む、請求項5〜9のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項11】
疎水性の分子または基が、疎水性のフッ素化された重合体炭化水素基を含む、請求項10に記載の布帛。
【請求項12】
当該疎水性の分子または基が、下記の式の1または複数のモノマーで形成されたものである、請求項11に記載の布帛。
【化1】


(式中、
mは0〜2であり;
nは0または1であり;
oは1または2であり;
Aは、−SO−、−N(W)−SO−、−CONH−、−CH−、または−CF−であり、
Rは、直鎖、分岐または環式の、完全にまたは部分的にフッ素化された炭化水素であり、好ましくは、C〜C10の直鎖アルキルの、完全にフッ素化された、フルオロカーボンであり;
Wは、水素またはC〜Cの低級アルキルであり;かつ
Xは、アクリレート(HC=CHCO−)、メタクリレート(HC=C(CH)CO−)、または炭素−炭素二重結合(HC=CH−)である。)
【請求項13】
ウィッキング手段が、ウィッキング物質、ウィッキング繊維、ウィッキング糸、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項14】
ウィッキング手段が、ウィッキング繊維またはウィッキング糸を含み、これらのウィッキング繊維または糸が、取り外しできないように、布層に取り付けられている、請求項1〜13のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項15】
前記ウィッキング繊維またはウィッキング糸が、布層の糸と一体に織られ又は編まれている、請求項14に記載の布帛。
【請求項16】
前記ウィッキング手段が、浮いている糸または繊維を含み、それらの長さの大部分が、布層の一方の側に配置されている、請求項15に記載の布帛。
【請求項17】
前記ウィッキング繊維またはウィッキング糸と、布層の糸とが、二重織の布帛を一緒に形成している、請求項15または16に記載の布帛。
【請求項18】
前記ウィッキング繊維またはウィッキング糸と、布層の糸とが、一重織の布帛を一緒に形成している、請求項15または16に記載の布帛。
【請求項19】
前記ウィッキング繊維またはウィッキング糸が、浮いている経または緯の繊維もしくは糸である、請求項15〜18のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項20】
前記ウィッキング繊維またはウィッキング糸が、浮いている緯の繊維もしくは糸である、請求項19に記載の布帛。
【請求項21】
前記ウィッキング繊維またはウィッキング糸と、布層の糸とが、二重編の布帛を一緒に形成している、請求項15または16に記載の布帛。
【請求項22】
前記ウィッキング繊維またはウィッキング糸と、布層の糸とが、一重編の布帛を一緒に形成している、請求項15または16に記載の布帛。
【請求項23】
前記ウィッキング繊維またはウィッキング糸が、隆起効果を有する布帛の側に配置されている、請求項1〜22のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項24】
隆起効果が、ピケ効果である、請求項23に記載の布帛。
【請求項25】
ウィッキング手段が配置されている布の側が、25℃にて、表面における水の接触角が、90°よりも小さい、高い表面エネルギーの表面を有する、請求項1〜24のいずれか
1項に記載の布帛。
【請求項26】
前記ウィッキング手段が、起毛に付された繊維もしくは糸を含む、請求項1〜25のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項27】
前記ウィッキング手段が、低デニールの繊維を含む、請求項1〜26のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項28】
前記ウィッキング手段が、マイクロ繊維を含む、請求項1〜27のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項29】
前記ウィッキング手段が、ナノ繊維を含む、請求項1〜28のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項30】
ウィッキング手段が、ポリエステルを含む繊維を含む、請求項1〜29のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項31】
ウィッキング手段が、ポリアミドを含む糸または繊維を含む、請求項1〜30のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項32】
ウィッキング手段が、親水性の仕上げ剤を有する繊維または糸を含む、請求項1〜31のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項33】
親水性の仕上げ剤を有する繊維または糸が、布層の糸と一体に織られ又は編まれ、親水性の仕上げ剤が、布帛が織られ又は編まれる前に、糸および/または糸繊維に付与されている、請求項32に記載の布帛。
【請求項34】
ウィッキング手段が、メートル法による番手が、Nm30以上である、木綿糸を含む、請求項1〜33のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項35】
1または複数の衛生剤が、ウィッキング糸または撥水/防汚糸のいずれか一方または両方に配置されている、請求項1〜34のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項36】
1または複数の衛生剤が、布層の内側に配置されている、請求項1〜35のいずれか1項に記載の布帛。
【請求項37】
1または複数の衛生剤が、殺生物剤、脱臭剤、臭い吸収剤、制汗剤、虫除け剤、または芳香剤から選択される、請求項36に記載の布帛。
【請求項38】
殺生物剤が、抗菌剤または抗真菌剤から選択される、抗微生物剤である、請求項37に記載の布帛。
【請求項39】
抗微生物剤が、チオカルバメート、チオシアネート、イソチオシオネート、ジチオカルバメート、四級アンモニウム化合物、アミド、トリアジン、グアニジン、銀含有化合物、錫含有化合物、または銅含有化合物から選択される、請求項38に記載の布帛。
【請求項40】
抗微生物剤が、2,4,4’−トリクロロ−2−ヒドロキシジフェニルエーテルである、請求項39に記載の布帛。
【請求項41】
脱臭剤が、チタンの酸化物(TiO)、亜鉛の酸化物(ZnO)、およびアルミニウムの酸化物である金属の酸化物、活性炭、ゼオライト、ケイ素、セラミックスならびにセラミックで被覆された鞘繊維から選択される、請求項37に記載の布帛。
【請求項42】
臭い吸収剤が、シクロデキストリン、活性炭、またはそれらの混合物から選択される、請求項37に記載の布帛。
【請求項43】
請求項1〜42のいずれか1項に記載の布帛を含む、衣類物品。
【請求項44】
物品が、シャツ、Tシャツ、ベスト、ポロトップ、プルオーバー、男性用または女性用のブリーフ、下着、ズボン下、寝間着(例えばパジャマ)、スポーツウェアのトップ、ブラジャー、カーディガン、スカート、ドレス、ブラウス、トラウザー、トラックスーツのボトムス、ショーツ、靴下、ネクタイ、ジーンズ、手袋、コート、ジャケット、ボクシング用グローブ、婦人用長手袋、帽子、キャップ、頭蓋用帽子、ヘルメット、ドレッシングガウン、乳児用衣類(例えば、おむつ及びよだれかけ)、ガウンのような衣服、ドレープ、オーバーオール、マスク、シェフのジャケットおよびエプロンのようなユニフォーム、ならびにタオルおよび衣類の内張りから選択される、請求項43に記載の物品。
【請求項45】
疎水性の糸を含む布層であって、水蒸気を通過させ、液体の水を通過させない布層を供給すること、および
布層の意図される内側に、ウィッキング手段を配置すること
を含む、請求項1〜42のいずれか一項に規定される布帛を製造する方法。
【請求項46】
疎水性の糸を供給すること、
糸を布層に形成すること、および
布層の意図される内側に、ウィッキング手段を配置すること
を含む、請求項45に記載の布帛を製造する方法。
【請求項47】
(i)衣類用布帛を製造するための糸を供給すること、
(ii)糸を布層に形成すること、
(iii)布層の意図される内側に、ウィッキング手段を配置すること、および工程(ii)の前、間または後に、
(iv)得られる布層が水蒸気は通過させ、液体の水を通過させないように、布層の糸を処理して疎水性の糸を形成すること
を含む、請求項1〜42のいずれか一項に規定される布帛を製造する方法。
【請求項48】
疎水性の糸およびウィッキング糸を供給すること、
疎水性の糸およびウィッキング糸を一体に編んで又は織って、一方の側にて、他方の側よりも、配置されるウィッキング糸をより多く有する、布帛を一緒に形成させること
を含む、請求項1〜42のいずれか一項に規定される布帛を製造する方法。
【請求項49】
疎水性の糸およびウィッキング糸を供給すること、
疎水性の糸が、経糸および緯糸の両方となり、ウィッキング糸が、浮いている糸となるように、布帛において、ウィッキング糸の長さの大部分が、布帛の一方の側に配置され、かつ疎水性の糸と一体に織られている一重織の布帛になるように、疎水性の糸およびウィッキング糸を織ること
を含む、請求項48に記載の布帛を製造する方法。
【請求項50】
疎水性の糸およびウィッキング糸を供給すること、
疎水性の糸およびウィッキング糸を、二重織の布帛になるように織って、疎水性の糸が、二重織の布帛の第一層における経糸および緯糸の両方となり、ウィッキング糸が、二重織の布帛の第二層における経糸および緯糸となり、第一層と第二層とが一体に一緒に織られているようにすること、
を含む、請求項48に記載の布帛を製造する方法。
【請求項51】
疎水性の糸およびウィッキング糸を供給すること、
疎水性の糸およびウィッキング糸を、二重編の布帛になるように編んで、疎水性の糸が、二重編の布帛の第一層にあり、ウィッキング糸が二重編の布帛の第二層にあり、第一層と第二層とが一体に一緒に編まれるようにすること
を含む、請求項48に記載の布帛の製造方法。
【請求項52】
疎水性の糸およびウィッキング糸を供給すること、
疎水性の糸およびウィッキング糸を、一重編又は二重編の布帛になるように編んで、ウィッキング糸が、隆起効果を有する布帛の側に存在するようにすること
を含む、請求項48に記載の布帛の製造方法。
【請求項53】
(i)衣類用布帛を形成する糸、およびウィッキング糸を供給すること、
(ii)衣類用布帛を形成する糸およびウィッキング糸を一体に、布層となるように織り又は編んで、ウィッキング糸の長さの大部分が布帛の一方の側に配置されるようにすること、および
工程(ii)の前、間または後に、
(iii)得られる布層が水蒸気は通過させ、液体の水は通過させないように、布層の糸を処理して、疎水性の糸を形成すること
を含む、請求項1〜42のいずれか1項に規定される布帛を製造する方法。
【請求項54】
(i)疎水性の糸およびウィッキング糸を供給すること、
(ii)疎水性の糸およびウィッキング糸を、布層となるように、一体に織って又は編んで、ウィッキング糸の長さの大部分が布層の一方の側に配置されるようにすること、
工程(ii)の前、間または後に、
(iii)ウィッキング糸を親水性の仕上げ剤で処理すること
を含む、請求項1〜42のいずれか1項に規定される布帛を製造する方法。
【請求項55】
疎水性の糸が、
疎水性のモノマー、および適宜親水性のモノマーであって、
糸の表面の水酸基またはアミン基と共有結合を形成できる反応性基をさらに含むモノマー
から形成されるポリマーを供給すること、
当該ポリマーを糸と反応させて疎水性の糸を形成すること
を含む方法によって得られる、請求項45〜55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
疎水性のモノマーが、請求項11に規定される式(I)のモノマー、N−(tert−ブチル)アクリルアミド、n−デシルアクリルアミド、n−デシルメタクリレート、N−ドデシルメタクリルアミド、2−エチルへキシルアクリレート、1−へキサデシルメタクリレート、n−ミリスチルアクリレート、N−(n−オクタデシル)アクリルアミド、n−オクタデシルトリエトキシシラン、N−tert−オクチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ビニルラウレート、ビニルステアレート、フルオロアクリレート、フルオロスチレン、およびテトラフルオロエチレンから選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
親水性のモノマーが、アクリルアミド、アクリル酸、N−アクリロイルトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、ビスアクリルアミド酢酸、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(グリコールメタクリレート)、N−(2−ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド、N−メタクリロイルトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、N−メチルメタクリルアミド、ポリ(エチレングリコール)(n)−モノメタクリレート、ポリ(エチレングリコール)(n)モノメチルエーテルモノメタクリレート、2−スルホエチルメタクリレート、1,1,1−トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、N−ビニル−2−ピロリドン(1−ビニル−2−ピロリジノン)、および2−ヒドロキシエチルメタクリレートから選択される、請求項55または56に記載の方法。
【請求項58】
ポリマーが、変性ポリ(無水マレイン酸)ポリマーである、請求項55または56に記載の方法。
【請求項59】
疎水性の糸が、糸を、
i)1または疎水性基、および2またはそれより多い反応性カルボキシル基を含み、それらのうち少なくとも2つが、5または6員の無水物の環を形成し得るような位置に配置されている、ポリマー;および(ii)無水物形成触媒を含む調合液
と接触させることによって得られる、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
請求項1〜42のいずれか1項に規定される布帛を供給すること、
当該布帛から衣類物品を、必要に応じて、液体の水および水蒸気を通過させる1または複数のほかの布帛を用いて、形成すること
を含む、衣類物品を製造する方法。
【請求項61】
請求項45〜59のいずれか一項に規定される方法で得られる、布帛。
【請求項62】
請求項60に規定される方法で得られる、衣類物品。
【請求項63】
ウィッキング糸または繊維を含む布層であって、布層の一方の側に疎水性の糸または繊維が配置されている布層を含む、布帛。
【請求項64】
疎水性の糸または繊維が、布層のウィッキング糸または繊維と一体に織られ又は編まれている、請求項63に記載の布帛。
【請求項65】
布層が、ウィッキング経糸もしくは経繊維およびウィッキング緯糸もしくは緯繊維、ならびに織られた、浮いている疎水性の糸または繊維を含む、請求項64に記載の布帛。
【請求項66】
疎水性の糸が、その表面に疎水性の部分を有している、請求項63〜65のいずれか1項に記載の布帛。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図5C】
image rotate

【図5D】
image rotate


【公表番号】特表2008−509289(P2008−509289A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524385(P2007−524385)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002766
【国際公開番号】WO2006/013317
【国際公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(507037437)ライテックス・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】LIGHTEX LIMITED
【Fターム(参考)】