説明

通気止縁

【課題】本発明は、放湿機能、結露防止機能、断熱機能、防水機能、等を向上した通気壁構造を形成するための通気止縁に係るものである。
【解決手段】下地αと外壁材A間に通気層γを形成した通気壁構造の軒天23部分に使用する止縁において、垂直平面状の固定面2と、固定面2の上端を屋内側へ略平行に突出した突出面3と、突出面3に複数個形成した通気孔4と、固定面2の上端をさらに上方に突出した上面5と、固定面2あるいは上面5の一部を屋外側で下方に傾斜して突出した傾斜面6と、傾斜面6の先端を上方に突出すると共に上面5の上端よりも上方に突出した上片8と、上片8の根本に複数個形成した吸・排気孔9と、傾斜面6の先端を下方に突出した下片10とから形成した通気止縁である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放湿機能、結露防止機能、断熱機能、防水機能、等を向上した通気壁構造を形成するための通気止縁に係るものである。
【背景技術】
【0002】
壁体内が密閉状態の場合、水蒸気の逃げ場が無く、外気温度が低いと外壁材裏面や壁体内に結露が発生する。そこで、壁体内の水蒸気を外気に排出して内部結露を防止したり、土台や柱が吸収した水分を外気に排出するために、外壁材と躯体間に厚さ20mm程度の空気層(通気層)を設ける工法、所謂通気工法が開発され、その軒天部分からの排気のための見切縁や構造が考えられている。(例えば、特許文献1〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−013636号公報
【特許文献2】特開平09−302907号公報
【特許文献3】特開2000−230282号公報
【特許文献4】特開2001−323573号公報
【特許文献5】特開2002−317549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1〜5は湿気を排出することが出来るものの、外気が外壁材の裏面を通過するために、外壁材に断熱性のある部材を形成しても断熱材としての効果を発揮出来ず断熱材として機能しないものであるとされていた。勿論、住宅の外壁の断熱性を計算する上でも断熱性が無いものとされていた。また、通気層内を動く空気の量は、外の風によって大きく変化するものであり、特に風が強い場合には通気量が多くなり、断熱性のある外壁材を使用しても、効率の良い断熱性を発揮出来ない欠点があった。このため、風が強い場合でも通気層内の通気量を抑制することが大きな課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような欠点を解決するために、下地と外壁材間に通気層を形成した通気壁構造の軒天部分に使用する止縁において、垂直平面状の固定面と、固定面の上端を屋内側へ略平行に突出した突出面と、突出面に複数個形成した通気孔と、固定面の上端をさらに上方に突出した上面と、固定面あるいは上面の一部を屋外側で下方に傾斜して突出した傾斜面と、傾斜面の先端を上方に突出すると共に上面の上端よりも上方に突出した上片と、上片の根本に複数個形成した吸・排気孔と、傾斜面の先端を下方に突出した下片とから形成した通気止縁を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る通気止縁によれば、(1)風が強い場合でも通気層内の通気量を一定に保つことが出来る。(2)通気層の外側に位置する外壁材が断熱材として機能する。(3)外壁材の断熱性により、通気層、外壁材の裏面および壁内の温度が高く保持され、より内部結露の発生が抑えられる。等の特徴、効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る通気止縁の代表的一例を示す説明図である。
【図2】本発明に係る通気止縁の代表的一例を示す説明図である。
【図3】本発明に係る通気止縁の施工状態を示す説明図である。
【図4】本発明に係る通気止縁の施工状態を示す説明図である。
【図5】本発明に係る通気止縁を使用した通気壁構造の代表的一例を示す説明図である。
【図6】本発明に係る通気止縁を使用した通気壁構造の代表的一例を示す説明図である。
【図7】本発明に係る通気止縁を使用した通気壁構造の代表的一例を示す説明図である。
【図8】本発明に係る通気止縁を使用した通気壁構造に使用する外壁材の代表的一例を示す説明図である。
【図9】本発明に係る通気止縁のその他の実施例を示す説明図である。
【図10】本発明に係る通気止縁のその他の実施例を示す説明図である。
【図11】本発明に係る通気止縁を使用した通気壁構造のその他の実施例を示す説明図である。
【図12】本発明に係る通気止縁を使用した通気壁構造のその他の実施例を示す説明図である。
【図13】本発明に係る通気止縁を使用した通気壁構造のその他の実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0008】
以下に図面を用いて本発明に係る通気止縁について詳細に説明する。図1、図2は本発明に係る通気止縁1を示す断面図、図3〜図7は本発明に係る通気止縁1を使用した通気壁構造の代表的一例を示す説明図、図8(a)〜(d)は外壁材Aを示す説明図である。図中、αは下地、βは釘等の固定具、γは通気層を示している。
【0009】
通気止縁1は図1(a)、(b)、図2(a)〜(c)に示すように、垂直平面状の固定面2と、固定面2の上端を屋内側へ略平行に突出した突出面3と、突出面3に一定ピッチで複数個形成した通気孔4と、固定面2の上端をさらに上方に突出した上面5と、固定面2の上端を屋外側で下方に傾斜して突出した傾斜面6と、傾斜面6の先端を上方に突出すると共に上面5の上端よりも上方に突出した上片8と、上片8の根本に一定ピッチで複数個形成した吸・排気孔9と、傾斜面6の先端を下方に突出した下片10と、上片8と下片10とから形成した化粧面7と、化粧面7の下端を屋内側で下方に傾斜して突出した傾斜化粧面11と、傾斜化粧面11の先端を上方に突出した受け面12と、上面5先端と上片8先端間の空間Hから吸・排気路5aを形成した長尺状部材である。その素材としては金属材、あるいはプラスチック材、等よりなるものである。
【0010】
固定面2は通気止縁1を下地α上に固定するための部分である。
【0011】
突出面3は通気孔4を形成するための部分であり、通気孔4の形成ピッチ、大きさを変化させることにより、通気路γ内の通気量を調整出来るようにしたものである。突出面3の突出幅tは、後記する通気層形成部材18の厚さTとほぼ同じ厚さである。また、突出面3は通気層形成部材18が邪魔になってしまうために、図2(c)に示すように通気層形成部材18の形成ピッチと同じ間隔Pで、かつ通気層形成部材18の幅と同じ幅Wで切り欠いて形成するものである。
【0012】
通気孔4は、突出面3に一定ピッチで複数個形成し、屋内Nから通気層γに放出された室内Nから出た湿気を屋外Gに排出するためのものである。
【0013】
上面5は、上片8先端間の空間Hから吸・排気路5aを形成するものであり、外気を取り入れる吸気路、内部の汚れた空気、湿った空気を排出する排気路として機能するものである。
【0014】
傾斜面6は万が一風雨が吸・排気孔9から内部に浸入した際に、その傾斜により吸・排気孔9から屋外Gに排水出来るように形成したものである。
【0015】
上片8は化粧面として機能すると共に、先端を軒天23に当接する施工面として機能すると共に、空間Hを形成する部分でもある。
【0016】
吸・排気孔9は傾斜面6と上片8の下端部分に一定間隔で複数個形成し、外気を取り入れる吸気口、内部の汚れた空気、湿った空気を排出する排気口として機能するものである。
【0017】
下片10と傾斜化粧面11は化粧面として機能すると共に、外壁材Aの上端の木口(切り口面)をカバーし、風雨から外装材Aを守ると共に、美観性を向上するために形成したものでる。また、受け面12は外装材Aと面接触し一体化を強化するための部分である。
【0018】
また、吸・排気孔9の開口面積と、突出面3に形成した通気孔13の開口面積を比べた場合に、吸・排気孔9の開口面積>通気孔4の開口面積となるように形成するものである。勿論、吸・排気路5aの開口面積>通気孔4の開口面積、吸・排気路5aの開口面積>吸・排気孔9の開口面積である。
【0019】
このように形成することにより、小屋裏Kから流れてきた空気は、通気路γ方向ではなく通気止縁1の方向に流れ、通気路γ内へ流れる量を抑制出来るものである。
【0020】
下地αは、内装材13、ポリエチレンシート等の防湿層14、主柱、間柱等の躯体15、躯体15間に形成したグラスウール等の断熱材16より形成したものである。
【0021】
17は防風透湿層(二点鎖線で示す)であり、透湿防水シート(風・雨を通さず湿気だけを通す不織布)、あるいは透湿防水板(透湿性の高いシージングボード、シージングインシュレーションボード、等)あるいは合板やOSB等よりなり、透湿性、防風性、防水性、等を有する部材より形成したものである。
【0022】
18は通気層形成部材であり、通気層γが上下開口部と連通するように形成したものであり、例えば一定間隔で縦に形成した縦胴縁である。また、通気層γが後記する開口部(上開口19、下開口20、小屋裏通気開口21)と連通するように形成されれば一定間隔で横に形成した横胴縁でも良いものである。勿論、通気層形成部材18の替わりに、通気層γ(溝)を形成した板材を部分的あるいは全面に形成してもかまわない。通気層形成部材18の材質は、木材、金属材、プラスチック材、等である。
【0023】
19は上開口、20は下開口、21は小屋裏通気開口であり、通気層形成部材18により形成された通気層γと連通し、屋内Nから通気層γに放出された室内Nから出た湿気を屋外Gに排出するための出口である。勿論、上開口19、下開口20、小屋裏通気開口21は湿気を排出するために取り入れる空気の流入口としても機能するものである。
【0024】
上開口19は、外壁材Aの桁部分と軒天23間に、通気層γと連通するように形成したものであり、図では通気止縁1により通気層γと連通した上開口19を形成したものである。
【0025】
下開口20は外壁材Aと土台部D間に形成するものであり、水切り22により、通気層γと連通した下開口20を形成したものである。
【0026】
小屋裏通気開口21は、屋内Nに発生した湿気を通気層γを介して小屋裏Kから屋外Gへ排出するために形成したものである。
【0027】
Aは断熱性を有する外壁材(以下、単に外壁材という)であり、その他機能として防火性、防水性、気密性、耐候性、等の機能を有する部材である。例えば、図8(a)〜(d)に示すような金属製サイディング材等を使用するものである。特に、金属製サイディング材よりなる外壁材Aは、金属製表面材A1をロール成形した板材と、裏面材A2間に合成樹脂発泡体(プラスチックフォーム)等の芯材A3をサンドイッチした特に断熱性を有する外壁材Aである。
【0028】
さらに、図4(a)、(b)を用いて本発明に係る通気止縁の作用について説明する。つまり、図2(a)に示すように、空気が屋外Gから小屋裏Kへ流入する時は、小屋裏Kが負圧、軒天23付近が正圧、土台部が正圧となり、外気は主として抵抗の少ない軒天23部分の通気止縁1から吸われ、抵抗の多い土台部D方向(通気層γ)からはあまり吸われないために通気層γの温度が変化せず、外壁材Aの断熱性が発揮される。通常はこの状態である。
【0029】
また、希に図4(b)に示すように、空気が小屋裏Kから通気止縁1から屋外Gへ流出する時は壁面に対して平行に風が吹くような場合、あるいはその壁面が風下になる場合であり、小屋裏Kよりも、軒天23付近および地面近くの土台部の方が気圧が低くなり、空気は小屋裏Kから通気止縁1を経て屋外Gに流れ、土台部D方向(通気層γ)から屋外Gに流れる量が抑制され、通気層γの温度が変化せず、外壁材Aの断熱性が発揮されるものである。
【0030】
このように、小屋裏Kへの空気の流入・流出が、通気路γへ影響せず、通気層γ内を流れる空気の量を自然対流程度に抑制出来るために、通気層γが断熱層として機能し、外壁材Aの断熱性も発揮されるものである。なお、屋内Nから発生し通気層γへ流入した湿気は、通気層γの自然対流により、屋外Gへの空気の流出、屋内Nへの空気の流入に関係なく屋外Gへ常時排出されるものである。
【0031】
次に、図3〜図8を用いて本発明に係る通気止縁の施工方法について説明する。まず、内装材13、ポリエチレンシート等の防湿層14、主柱、間柱等の躯体15、躯体15間に形成したグラスウール等の断熱材16より形成した下地α上に、防風透湿層17(透湿防水シート)を形成する。
【0032】
その後、厚さ18mm×幅45mm程度の通気層形成部材18を455mmピッチで縦に複数本固定する。この時、通気層形成部材18は軒天23形成部分よりも内側に突出するように形成する。
【0033】
通気層形成部材18の形成が完了したら、軒天23を形成し、その後上開口7、下開口8が形成されるように、通気層形成部材18上の軒天23部分に通気止縁1、通気層形成部材18の下端に水切り22を固定する。
【0034】
その後、通気層形成部材18上に図8(a)に示すような外壁材Aを各種役物を使用して施工し、施工を完了するものである。
【0035】
以上説明したのは本発明に係る通気止縁の一実施例にすぎず、図9(a)〜(c)〜図13に示すように形成することも出来る。
【0036】
図9(a)〜(c)、図10(a)〜(d)は通気止縁1のその他の実施例を示す説明図である。
【0037】
図11は、通気層形成部材18上に防水層24(点線で示す)を形成し、通気層γ内に雨水等が浸入しないように形成したものである。例えば、アスファルトフェルト等の防水シートである。
【0038】
図12軒天23に軒天通気口25を形成した通気壁構造、図13は通気層形成部材18を軒天23部分まで形成し、小屋裏Kと通気路γを連通しないように形成した通気壁構造である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る通気止縁によれば、外壁材Aの裏面に通気層γを形成した構造では、外壁材Aとして断熱性の有る部材を形成しても外壁材Aが断熱材として認められなかったが、通気層γ内を空気が微量にしか移動しないように小屋裏通気開口・上開口・下開口の3カ所の開口を壁体に形成することにより、通気層γの本来の意義である内部結露防止の効果を生かし、さらに、断熱性のある外壁材Aの断熱効果を生むことで、外壁材A裏面および壁内の温度を高く保つことが可能となり、省エネルギーと壁内結露の防止効果を高めることが出来る構造となる。これは、今までの通気構造のように、外壁材Aの裏面と下地間の通気路を外気が移動することにより結露を防止する構造とは異なり、外気の移動を極力抑えた状態で湿気だけを外部に排出出来る構造であるために、断熱性を有する外壁材Aの性能を有効に活用出来るものである。
【符号の説明】
【0040】
α 下地
β 固定具
γ 通気層
A 断熱性を有する外壁材
A1 金属製表面材
A2 裏面材
A3 芯材
D 土台部
G 屋外
K 小屋裏
N 屋内
1 通気止縁
2 固定面
3 突出面
4 通気孔
5 上面
5a 吸・排気路
6 傾斜面
7 化粧面
8 上片
9 吸・排気孔
10 下片
11 傾斜化粧面
12 受け面
13 内装材
14 防湿層
15 躯体
16 断熱材
17 防風透湿層
18 通気層形成部材
19 上開口
20 下開口
21 小屋裏通気開口
22 水切り
23 軒天
24 防水層
25 軒天通気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地と外壁材間に通気層を形成した通気壁構造の軒天部分に使用する止縁において、垂直平面状の固定面と、該固定面の上端を屋内側へ略平行に突出した突出面と、該突出面に複数個形成した通気孔と、固定面の上端をさらに上方に突出した上面と、固定面あるいは上面の一部を屋外側で下方に傾斜して突出した傾斜面と、該傾斜面の先端を上方に突出すると共に上面の上端よりも上方に突出した上片と、該上片の根本に複数個形成した吸・排気孔と、傾斜面の先端を下方に突出した下片とから形成したことを特徴とする通気止縁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−26913(P2011−26913A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176160(P2009−176160)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(390018463)アイジー工業株式会社 (100)
【Fターム(参考)】