説明

造型装置

【課題】上下型からなる金型、特に、中子造型用金型において、金型を加熱するヒータと、押し出しピンとを、金型内に、特に、中子造型用金型内に、より簡便に備えるようにした造型装置を提供する。
【解決手段】例えば造型品が中子である場合、中子上型と中子下型2により画成されるキャビティ4内で中子3を焼成し造型する中子造型用金型を含む造型装置1において、中子下型2の下面18からキャビティ4までの貫通孔11〜14に中子3を押出し中子下型2から中子3を離型するための押出しピン5〜8を挿入し、押出しピン5〜8に片端子型カートリッジヒータ33を内蔵させる。これにより押出しピン5〜8と片端子型カートリッジヒータ33が一体化するため、押出しピン5〜8と片端子型カートリッジヒータ33の造型装置1の中子造型用金型内の配置が容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型を含む造型装置に関し、さらに詳細にはレジンコーティッドサンド(以下「RCS」と略す)に代表される熱硬化樹脂含有の中子砂を、中子上下型によって画成されるキャビティに吹き込み充填して、焼成、造型された中子を押出して離型する押出しピン付きの中子造型用金型を含む造型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、特許文献1に開示されているような水平割り式の中子造型用金型を含む造型装置50(以下単に「造型装置50」と称する)がある。図3の(a)、(b)は、従来の造型装置50に係る概略断面図である。以下、図3の(a)、(b)を参照し、従来の造型装置50とその問題点を説明する。なお、図3において、同図(b)のA−A線に沿った断面が同図(a)の一点鎖線から上の構造に相当する。
造型装置50は、上下に水平分割された中子上型(不図示)と中子下型51を含み、造型装置50の中子上下型が型閉じされて画成されるキャビティ52(図3では中子54に対応させて図示。以下同様)にRCSを吹き込み、キャビティ52に充填されたRCSを焼成、造型し、中子上下型を型開きした後に離型し中子54を得る。
【0003】
中子下型51には、底面55からキャビティ52に至るまで貫通された複数の貫通孔56〜59及び底面55から上面55´に至るまで貫通された貫通孔71が形成されている。そして、貫通孔56〜59及び71のそれぞれに4本の押出しピン64〜67及び1本のリターンピン70が差し込まれる。ただし、これらの押出しピン64〜67及びリターンピン70の形成箇所はこれに限られるものではなく、造型される中子54の寸法次第で決定される(以下同様)。
押出しピン64〜67は、キャビティ52内で焼成・造型済みの中子54の複数箇所60〜63を均等に押出して中子下型51から中子54を離型する。リターンピン70は中子下型51の抜け落ち防止のためのストッパーであるとともに鉛直方向に中子下型51の円滑な移動のためのガイドとして機能する。
【0004】
さらに、造型装置50には、キャビティ52内に充填されたRCSを焼成させるヒータを備える必要がある。
そこで、図3の(a)、(b)から分かるように、従来よりヒータとして、中子下型51には、押し出しピン64〜67の中子54に対する押出し方向に対して略垂直の方向に、中子下型51の両側面68、69を貫通し、中子54を均等に加熱するために多数の(ここでは12本の)両端子型シースヒータ101〜112が具備されている。
図3の(b)には、両端子型シースヒータ101〜112のうち2本のみの両端子型シースヒータ106と107の側面の概略が分かるように示されている。なお、中子上型は図示しないが両端子型シースヒータが同様に配置されている。両端子型シースヒータ101〜112は図示しない電源部から中子54の造型に必要な電流が供給されることにより中子上下型を加熱して中子54を焼成、造型する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−210847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、中子下型51に両端子型シースヒータ101〜112を配置する際、以下の問題点が生じる。その問題点を図3の(a)、(b)を参照しながら以下に説明する。
中子下型51には、上述したように押出しピン64〜67用、リターンピン70用の多数の貫通孔56〜59及び71が形成されている一方、中子上下型をガイドするキーを固着するためのネジ穴72、81や、型を保全する際に吊り上げるための吊りボルト穴73が形成されている。さらに図示しない中子上型と中子下型51には、両端子型シースヒータ101〜112(中子上型用のものは不図示)から発生する熱を測るための熱電対や、熱電対のリード線その他の必要な部材、部品のための例えば穴82等も具備する必要がある。
【0007】
しかし、これらの種々の貫通孔や穴を回避しながら、中子下型51の内部に多くの両端子型シースヒータ101〜112用の直線状の貫通孔を形成することはきわめて難しい。
加えて、両端子型シースヒータ101〜112を用いる場合、発熱部79、80を中子下型51の貫通孔内に収容して中子下型51の両側面68、69から両端子型シースヒータの101〜112の電流供給用の両端子75〜78を中子下型51の外に露出させる必要があるため、中子54の寸法次第であるが、例えば600〜800mm或いはそれ以上の長い直線距離Lにわたる孔加工が必要とされ、そのため、特殊なドリルを用いた金属加工が必要となる。
以上のように、造型装置50では設計、加工及び製造に係るコストが高くなることが不可避である。
【0008】
本発明は、上下型からなる金型、特に、中子造型用金型を含む造型装置において、金型を加熱するヒータと、押し出しピンとを、金型内、特に、中子造型用金型内に、より簡便に備えるようにした金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の態様)
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、請求可能発明と称する)の態様を例示し、例示された各態様について説明する。ここでは、各態様を、特許請求の範囲と同様に、項に区分すると共に各項に番号を付し、必要に応じて他の項の記載を引用する形式で記載する。これは、請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載、実施形態の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得る。
以下の各項において、(1)〜(4)項の各々が、請求項1〜4の各々に相当する。
【0010】
(1)押出しピンを備えた金型を含み、前記押出しピンは、金型を加熱するヒーターを備えていることを特徴とする造型装置。
【0011】
「金型」は、代表的には中子造型用金型を指す。係る場合、金型は中子上型と中子下型からなる。そして、中子上下型が見切り面で型合わせ、型締めされることにより中子形状に相当するキャビティが金型内に画成される。そして、キャビティに所定の貫通孔からRCSが吹き込まれて充填される。RCSには熱硬化樹脂が含有されており、これをヒータで加熱することによって中子が焼成、造型されるようになっている。
【0012】
この金型内には、通常、中子を均等に押出すため押出しピンは複数本配置されており、一方、中子を加熱する熱も均一に与える必要があるため長尺のヒータも複数本配置されている。そして、従来より、これらの長尺のシースヒータと押出しピンとは別個に金型内に配置されている。
【0013】
しかし、前述したように、多数本の長尺のヒータと多数本の押出しピンを、一つの金型内にお互いに回避しながら或いは他の穴、部品等を回避しながら配置するように設計・加工することは相当な困難さを要する。.
(1)項によれば、長尺のヒータが押出しピンに内蔵されるようにして備えられるため、長尺のヒータや押出しピンが複数本あってもかかる困難さを容易に回避することができる。
【0014】
(2)前記ヒーターは、前記押出しピンが前記金型のキャビティから露出するように移動した場合に、該ヒータに供給される電流が停止されることを特徴とする(1)項に記載の造型装置。
【0015】
例えば中子の造型を例にすると、中子の焼成が完了した後、中子を金型上下型のいずれか又は両方を中子から離型するが、押出しピンにヒータが内蔵されているため、押出しピンが金型のキャビティから露出すると同時に大気にさらされる。係る場合、なんらヒータの放熱手段がないと、ヒータが焼成時の温度を維持しようとしてオーバーヒートし、ひいてはヒータが故障することもある。
そこで、(2)項によれば、押出しピンが金型のキャビティから露出すると、ヒータに供給される電流が停止される結果、かかるヒータのオーバーヒートを防止することができる。
【0016】
(3)前記金型は、中子を造型する中子造型用金型であることを特徴とする(1)又は(2)項に記載の造型装置。
(1)又は(2)項に記載の造型装置は、前述したように好適には中子造型に用いられる。例えば、前述したように水平割り式の中子造型用金型として用いることができる。(3)項は、かかる事項を特定したものである。
なお、(1)項又は(2)項に記載の造型装置は、中子造型用ばかりでなくプラスチック製品を造形する射出成形用にも使用できる。係る場合は中子砂の代わりに、熱硬化性樹脂の粉末状又は溶融状の材料を用いる。即ち、本願で語句「造型」は「造形」と解釈することができ、かつ「造型装置」は、射出成形機を代表例とする「造形装置」となり得る。
【0017】
(4)前記ヒータは、片端子型カートリッジヒータであることを特徴とする(1)から(3)項のいずれかに記載の造型装置。
(1)〜(3)項のいずれかに記載の造型装置では、ヒータが押出しピンに内蔵されるとき、ピンの中空に長尺状のカートリッジヒータを収納する。そのため押出しピンを中空にする必要があるため、ヒータにも一定の剛性が必要となり、リジッドな筐体からなるカートリッジで発熱体をカバーしたカートリッジヒータを用いることが好ましい。そして、(1)〜(3)項のいずれかに記載の造型装置では、押出しピンの片一方の端面は必ず、中子やプラスチック製品を押し出す面として使用されるため、カートリッジヒータに電流を供給するのは上記片一方の端面の反対側の端部でなければならず、そのため(4)項のような片端子型カートリッジヒータを使用することが好適となる。
【0018】
(5)中子上下型によって画成されるキャビティに中子砂を吹き込んで充填し、中子を焼成かつ造型する中子造型装置であって、中子下型の下面からキャビティに至るまで貫通した貫通孔と、貫通孔内に配置されかつ中子を押し出して離型するため片側の開口が閉じられた円筒状の押し出しピンと、を含み、片側の開口が閉じられた円筒状の押し出しピンに片端子型カートリッジヒータを内蔵していることを特徴とする中子造型装置。
【0019】
(5)項によれば、押出しピンの長尺方向に沿って、押出しピンの円筒状の筐体の中空部に片端子型カートリッジヒータを内蔵させるため、従来の課題であった中子造型金型内で両端子型シースヒータを押出しピンと略垂直方向に配置する際の設計上及び加工上の問題点がない中子造型装置を提供することができる。
また、押出しピンと片端子型カートリッジヒータの長尺方向が完全一致することから、現仕様の両端子型シースヒータ用の長孔加工が不要となり、押出しピンの位置を中子下型内及び/又は中子上型内で自由に設定できる。
【0020】
さらに、従来設置する要請があったものの、両端子型シースヒータ用の貫通孔と干渉するために設置が困難であったものが設置容易になる。RCSを焼成し造型する最中に熱硬化樹脂から発生するガスを抜くピンも中子下型内の押出しピンと片端子型カートリッジヒータの長尺方向と略平行な方向ならば自由に設置できるようになる。
さらにまた、押出しピンをさらに多数本使用することも可能となる。その結果、片端子型カートリッジヒータが押出しピンに内蔵されているため押出しピンを多数本使用すると、中子に、より均一に熱を伝達することができるばかりでなく、型合わせされた中子上下型全体のヒータの容量・出力を上げることができ、ひいては中子の造型のサイクルが短縮され、中子の生産性を向上することができる。
【0021】
(6)前記押出しピンによって中子が押出されて中子下型から離型されると、前記片端子型カートリッジヒータへの電流の供給を停止するスイッチング手段を備えていることを特徴とする(5)項に記載の中子造型装置。
(5)項の中子造型装置によって、中子の焼成、造型完了後、中子を離型するために押出しピンが中子下型の外に露出していくにつれ、片端子型カートリッジヒータの熱を中子下型に放熱できなくなる。しかし、このままでは、加熱されていた片端子型カートリッジヒータが中子下型中で必要とされていたヒータ温度を維持しようとするため、片端子型カートリッジヒータにより大きい電流が供給される結果、片端子型カートリッジヒータの発熱体がオーバヒートし、発熱体に大きな負荷がかかりかねない。
そこで、(6)項によって、押出しピンによって中子が押し出され、中子が中子下型から露出されると、自動的に片端子型カートリッジヒータへの電流供給を停止することができるスイッチング手段を具備することで、発熱体のオーバーヒートを防止して、中子製造装置の安定稼動を担保する。
【0022】
(7)前記スイッチング手段は、シーケンス回路によって制御され、前記片端子型カートリッジヒータへの前記電流供給のタイミングを調整できるようにされていることを特徴とする(6)項に記載の中子造型装置。
(6)項で、片端子型カートリッジヒータの発熱体のオーバーヒートを防止するために、押出しピンが中子を押出すタイミングの一定時間前から電流供給を停止し、中子下型に放熱することがさらに望ましい。
そこで、(7)項により、シーケンス回路の制御によって、中子の焼成・造型が完了しても所定時間押出しピンを移動させることなく電流供給を停止して、発熱体からの熱をある程度中子下型に放熱してから押出しピンが中子を押出すようにすることもできるようになる。
【0023】
(8)中子上下型によって画成されるキャビティ内で中子を造型する中子造型装置の製造方法であって、中子下型の下面からキャビティへと貫通した貫通孔を有し、該貫通孔内で、中子を中子下型から離型するための押出しピンと片端子型カートリッジヒータの長尺方向を一致させるように押出しピンと片端子型カートリッジヒータを一体的に配置することを特徴とする中子造型装置の製造方法。
(8)項は、(5)項の中子造型装置を製造する方法の基本的な設計思想を示すものであり、(8)項によれば(5)項で記載したことと同様の効果を奏することができる。
【0024】
すなわち、(8)項の中子造型装置の製造方法によれば、押出しピンと片端子型カートリッジヒータの長尺方向を一致させることにより、従来、押出しピンに対し両端子型シースヒータが実質的に互いに垂直となるような方向に設置されていたときの設計上、加工上の問題を解決することができる。
押出しピンと片端子型カートリッジヒータの長尺方向を一致させることには、押出しピンの中空部に片端子型カートリッジヒータを挿入して一体化すること又は片端子型カートリッジヒータのカートリッジをリジッドな材質のものに変更することにより片端子型カートリッジヒータ自体を押出しピンそのものとして使用することを含む。
【0025】
(9)押出しピンを、長尺かつ片側の開口が閉じられた筒状体に前記片端子型カートリッジヒータを内蔵させて作製することを特徴とする(8)項に記載の中子造型装置の製造方法。
(9)項は、(8)項の製造方法を具現化するための具体的な態様を示すものである。すなわち、押出しピンを長尺方向に延びる筒状とし中子を押出すときの当接部は望ましくは中子外径面に沿った面状に形成し、かつ、該筒状体の中空部内に前記片端子型カートリッジヒータを内蔵させて一体化するため、押出しピンと片端子型カートリッジヒータの長尺方向を常時一致させることができる。その結果、従来の設計上、加工上の問題が実質上なくなることになる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、金型、より代表的には中子用の押出しピンが中子下型側に具備されている中子造型用金型の設計、加工、組み立ての労力及びコストを削減する造型装置を提供できる。また、本発明によれば、中子の焼成・造型後に中子を押出しピンで押し出された後における、押出しピンに内蔵されている片端子型カートリッジヒータのオーバーヒートを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本願発明に係る中子造型用金型を含む造型装置を説明するための図であって、(a)は焼成、造型が完了した中子が中子下型のキャビティに配置されている概略断面図、(b)は押し出しピンによって焼成、造型が完了した中子を押し出して、中子下型から中子を離型した状態を示す概略断面図である。
【図2】本願発明に係る中子造型用金型を含む造型装置の押出しピンに包含される片端子型カートリッジヒータの概略断面図である。
【図3】従来技術の中子の概略断面図であり、図3(a)は焼成、造型が完了した中子が中子下型のキャビティに配置されている概略断面図、図3(b)は図3(a)の一点鎖線から上の構造の概略断面図であり、図3(b)のA−A線に沿って切り取った概略断面図が図3(a)に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本願発明に係る好適実施形態を、添付図面を参照しながら説明するが、以下に記載される中子造型用金型を含む造型装置1(以降、単に「造型装置1」と称する)及びその各構成要素、各部品、各箇所は、本願発明の実施形態の一例であり、これに限られるものではない。また、図中、同一の符号を付した部分は同一物、同一部材を表し、装置や部材の各寸法、各比率は実際のものを反映したものではなく、概略的に示したものである。また、本願発明に係る実施形態として、上下に配置した中子造型用金型を参照して説明するが、左右に配置した中子造型用金型にも同様に適用できる。さらに、本願発明は、上下または左右に配置した金型にも同様に適用することができる。
【0029】
図1及び2を参照して、本発明の実施形態を以下説明する。
図1(a)、(b)は、中子上型(不図示)と中子下型2との型合わせを行い、型合わせ後に画成されるキャビティ4へRCSを吹き込み、充填して、吹き込み充填されたRCSを熱硬化することで中子3の焼成、造型が完了し、さらに中子上型(不図示)を鉛直上方へ移動した後、中子3を中子下型2から離型して、取り出している状態の本発明に係る造型装置1を示す。
【0030】
この造型装置1は、中子下型2と、押出しピン5〜8と、押出し板9と、リターンピン10を含んでいる。中子下型2は、耐熱製の金型であって、中子3の形状に合致するキャビティ4と、押出しピン5〜8用の貫通孔11〜14と、リターンピン10用の貫通孔15が形成されている。
【0031】
キャビティ4は中子形状に相当し、図示しない中子上型と中子下型2とを型合わせすることによって画成される中子造型用の空間である。そのため各図面で中子3とキャビティ4とは実質上同一箇所を指すことになる。押出しピン5〜8用の貫通孔11〜14は、中子下型2の底面18から中子下型2のキャビティ4を形成する壁面に至るまで貫通するように形成されている。
【0032】
押出しピン5〜8用の貫通孔11〜14の内径は、押出しピン5〜8用の貫通孔11〜14と押出しピン5〜8との間に一定のクリアランスを確保するため押出しピン5〜8の外径よりもいくらか大きい径に形成され、押出しピン5〜8の貫通孔11〜14内の円滑な移動を可能にしている。例えば、押出しピン5〜8の外径が12mmであった場合は、貫通孔11〜14の内径は12.2mmといったように一定のクリアランスをもつように設定する。リターンピン10用の貫通孔15は、中子下型2のキャビティ4に対向する底面を除く中子下型2の上面17と中子下型2の底面18との間であって望ましくは上面17と底面18の4隅周辺に貫通して形成されており、同様にして貫通孔15の内径は貫通孔11〜14の孔径と同様にクリアランス確保のためリターンピン10の外径よりもいくらか大きく形成されている。
【0033】
押出し板9は、押出し板9と押出しピン5〜8とリターンピン10が一体化して鉛直上下方向に移動できるように一体に結合された構造になっている。
押出し板9は、上板19と下板20とが重ね合わされて一体化しており、上板19の下面には断面逆T字状で大小径の内周部22、23によって画成された座ぐり穴24〜27が押出しピン5〜8の配置箇所に対応して形成されている。なお、下板20については後述する。
【0034】
次に、図2を参照して押出しピン5〜8に内蔵される片端子型カートリッジヒータ33を説明する。
片端子型カートリッジヒータ33は、典型的には耐熱金属製円筒状体35に挿入したスパイラル発熱体(不図示)を熱伝導の良い高絶縁粉末(不図示)で充填した発熱部36を含む電気ヒーターである。片端子型カートリッジヒータ33は押出しピン5〜8の上端側に内蔵されている。また、この発熱部36への電流が供給される部位は断面逆T字状のつば形状の供給端子34であり、供給端子34は押出しピン5〜8の下端に取り付けられている。
【0035】
供給端子34は、上述した押出し板9の座ぐり穴24〜27の大径部22に嵌合するように形成されており、座ぐり穴24〜27の小径部23は、押出しピン5〜8が隙間をもって挿通されるように形成されている。このように片端子型カートリッジヒータ33は、押出しピン5〜8の中空部に挿入され、例えば、供給端子34と押出しピン5〜8の下端とを溶接等で固着又は供給端子34と押出しピン5〜8とを螺着させ、押出しピン5〜8と片端子型カートリッジヒータ33を一体化する。
なお、このとき片端子型カートリッジヒータ33の円筒状体35を、やや厚めの耐熱かつ剛性の高い材質で作製することで、片端子型カートリッジヒータ33そのものを押出しピン5〜8とするようにしてもよい。
【0036】
下板20には、上板19の座ぐり穴24〜27のほぼ真下に、片端子型カートリッジヒータ33からのリード線37を通して電源部45に接続させるためのリード線用の貫通孔28〜31が形成されている。また、押出し板9の四隅周辺の数箇所(図1では便宜上1箇所)にリターンピン10用の断面T字状の嵌合孔32が上板19と下板20を貫通するように形成されており、リターンピン10の下端を嵌合穴32に挿入し、溶接等によって固着するか、リターンピン10と嵌合穴32とを螺着してリターンピン10を押出し板9と一体化する。
【0037】
上述したように、片端子型カートリッジヒータ33に電流を供給する供給端子34は、押出しピン5〜8の下端に固着することで押出しピン5〜8のつば部になる。供給端子34付きの押出しピン5〜8が上板19の座ぐり穴24〜27に差し込まれ、供給端子34が押出し板9の上板19の座ぐり穴24〜27に嵌合し当接する。供給端子34の頂面が上板19の下面と同一面まで到達するように嵌合した後、下板20に形成したリード線の貫通孔28〜31にそれぞれリード線37〜40を通し、上板19と下板20とを重ね合わせ、図示しない数箇所で上下板19、20をボルト締め等により固定する。
このようにして、押出しピン5〜8とリターンピン10が押出し板9の上面に対して垂直に配置され、押出しピン5〜8、リターンピン10及び押出し板9が一体化される。
【0038】
なお、リターンピン10の上端に取り付けられた断面T字状端部46と、中子下型2に形成されているリターンピン10用の貫通孔15の座ぐり部47が当接する結果、リターンピン10は中子下型2が造型装置1から外れることを防ぐストッパーとなる。
また、押出しピン5〜8は、中子3の焼成中は頂面41〜43が下型2のキャビティ4に突出しないような位置に停止される。このとき、押出しピン5〜8の頂面41〜43が中子3の曲面に柔軟に接するように、押出しピン5〜8の頂面41〜44を耐熱性かつ可撓性のある材料や耐熱性ばね等の弾性体や耐熱性の繊維体で形成するようにしてもよい。
【0039】
上述したように、片端子型カートリッジヒータ33は、発熱体36に接続されたリード線37が不図示のスイッチやシーケンス回路を含む電源部45に接続されており、中子3を焼成、造型するときに不図示のスイッチをオン状態にして発熱体36にリード線37〜40を介して電源部45から電流を供給し、発熱体36から発生される熱を押出しピン5〜8を介し中子下型2に伝達して、中子上型(不図示)と中子下型2によって画成されたキャビティ4内に吹き込まれて充填されたRCSを焼成して中子3を焼成、造型する(図示、説明は省略する中子上型は、押出しピンを備えていない)。
【0040】
中子3の焼成・造型が完了すると、シーケンス回路(不図示)からの命令により、中子上型(不図示)が、中子3が載置されている中子下型2から分離するために鉛直方向に移動されるように制御される。通常、中子上型(不図示)、中子下型2のキャビティ4の壁には離型剤が予め塗布されており、中子上型(不図示)が中子下型2から分離されにくかったり、中子上型(不図示)と共に中子3が持ち上がることはなく、造型された中子3は一定の重量を持つため中子下型2のキャビティ4に収まり載置状態となる。
ただし、必要に応じて、中子上型(不図示)にも、図1に示されるような中子下型2に具備させたものと同様な片端子型カートリッジヒータが内蔵された押出しピン等を設置することもできる。
【0041】
中子上型(不図示)が中子下型2から分離されると、具体的には、中子3を押出す押出しピン5〜8がキャビティ4に露出するように移動した場合に、図示しないレーザセンサ等の変位を光で感知する光センサによる中子上型(不図示)の変位に基づく信号を電源部45のシーケンス回路(不図示)が受け、シーケンス回路から図示しないスイッチング手段に命令を出して電源部45から片端子型カートリッジヒータ33への電流の供給を停止する。なお、光センサと共に又は別個に、中子下型2内に設置された熱電対(不図示)によって測定される中子下型2の温度変化に応じて同様にして電流供給を適宜調整或いは停止するようにしてもよい。
このようにして、上記の本発明の実施形態に係る造型装置1によって、中子3を得る。
【0042】
上記の好適実施形態によれば、押出しピン5〜8のそれぞれに片端子型カートリッジヒータ33が内蔵された結果、押出しピン5〜8と片端子型カートリッジヒータ33の長尺方向が一致し、従来両端子型シースヒータを中子焼成用のヒータとして使っていたときの煩雑な設計や穴明け加工等が不要になる。すなわち、従来のように金型に穴を明けるときの設計上、加工上の困難さが解消され、ひいては、造型装置1の製造コストを下げることができる。
また、上記の好適実施形態によれば、中子3の焼成、造型が完了すると、中子3を押出しピン5〜8を用いて中子下型2から離型するときに、片端子型カートリッジヒータ33の加熱を自動的に停止することができるため、発熱体36がオーバーヒートすることがなくなるため片端子型カートリッジヒータ33の故障を防止できる。
【符号の説明】
【0043】
1:造型装置、4:キャビティ、5〜8:押し出しピン、33:ヒータ(片端子型カートリッジヒータ)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出しピンを備えた金型を含み、前記押出しピンは、金型を加熱するヒーターを備えていることを特徴とする造型装置。
【請求項2】
前記ヒーターは、前記押出しピンが前記金型のキャビティから露出するように移動した場合に、該ヒータに供給される電流が停止されることを特徴とする請求項1に記載の造型装置。
【請求項3】
前記金型は、中子を造型する中子造型用金型であることを特徴とする請求項1又は2に記載の造型装置。
【請求項4】
前記ヒータは、片端子型カートリッジヒータであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の造型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−228726(P2012−228726A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99686(P2011−99686)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】