説明

造粒物の搬送方法

【課題】微粉を主体として造粒され平均粒径と強度が規定された造粒物の崩壊を抑制し、良好な品質を有する焼結鉱を効率よく製造可能な造粒物の搬送方法を提供する。
【解決手段】粒径500μmアンダーの粒子を60質量%以上含む焼結原料にバインダーを添加し、造粒して乾燥し、平均粒径を1mm以上20mm以下、強度を0.1MPa以上1.5MPa以下とした造粒物を、搬送用シュート11を介して落下させる造粒物の搬送方法であって、搬送用シュート11の内側対向面14、15には、造粒物の落下衝撃緩衝部材16が、造粒物の落下方向に間隔Hを有して交互に突出して設けられ、しかも上下隣り合う落下衝撃緩衝部材16間の造粒物の落下高さHを0.1m以上0.4m以下の範囲内とし、上下隣り合う落下衝撃緩衝部材16の平面視した際の重複距離Wを、0又は0を超え落下衝撃緩衝部材16の突出長さLの半分以下の範囲内とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粉を主体とする焼結原料で構成される造粒物の搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、焼結機においては、従来主流であった赤鉄鉱等の鉄鉱石の供給量が減少しており、ピソライト等のような、結晶含有率が高い(例えば、3質量%以上)多孔質の鉄鉱石や、マラマンバ等のような、結晶水が多く、多孔質かつ微粉が多い鉄鉱石、またペレットフィード等のような微粉の鉄鉱石の供給量が増加している。
このような鉄鉱石は、従来使用されてきた鉄鉱石と比較して、微粉成分が多いため(粒径500μmアンダーの粒子を60質量%以上含む)、事前処理を行うことなく焼結機に装入すると、焼結機の通風性を阻害して、良好な品質を有する焼結鉱を効率よく製造することが困難である。このため、このような鉄鉱石は、焼結機に装入する前に造粒する必要があった。
【0003】
高炉用原料として使用される焼結鉱は、従来、粉状の鉄鉱石に石灰石と粉コークスを混合し、更に適度な水分と生石灰等からなるバインダーを添加して造粒した後、焼結機に装入して製造していた。
特に、結晶水含有率が高い鉄鉱石や多孔質の鉄鉱石の場合には、粒径がより小さい微粉鉱石が多く、また多孔質の鉄鉱石の孔内部に造粒用の水分が吸収されてしまって造粒性が悪く、造粒した焼結原料の造粒物(擬似粒子ともいう)の強度が低くなっていた。そのため、造粒した焼結原料を、従来公知の流動層を用いて、水分が2〜4質量%になるまで乾燥し、平均粒径が1mm以上20mm以下の造粒物の圧壊強度を上げて、焼結機に装入していた。
【0004】
一方、流動層と焼結機の間には、ベルトコンベアからベルトコンベアへの乗継ぎ部や、一時的なトラブルで造粒工程が停止した場合に、焼結機の停止を防ぐために造粒物を貯留するホッパーが設けられている。そのため、造粒物が、上記した乗継ぎ部を通過したり、またホッパーに投入される際には、ベルトコンベアに設けられた落鉱回収装置や、ホッパーの大きさ等の設備制約等により、造粒物の落下高さが高くなる(例えば、2〜10m程度)。このため、乾燥した造粒物が崩壊する現象が生じ、これらを焼結機へ供給した場合には、焼結機の通気性を阻害して、良好な品質を有する焼結鉱を、効率よく製造することが困難となる問題があった。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1には、図7に示すように、原料ホッパー80からロールフィーダ81を介して払い出された焼結原料(造粒物を含む)を、スローピングシュート82に落下させる際に、角度可変(α:例えば、0〜30度)のシュート83を介在させ、擬似粒子の破壊を防止する方法が開示されている。このように、シュート83を介在させることにより、スローピングシュート82へ擬似粒子が落下する衝撃を緩和している。なお、図7において、番号84は鉱層、番号85はパレットである。
また、造粒物の崩壊を防止する方法ではないが、焼結鉱の粉化を防止する方法として、特許文献2には、図8に示すように、ベルトコンベア90の第1プーリ91と第2プーリ92の間に、キャリアプーリ93を設置することにより、ベルトコンベア90の先端高さ位置をベルト94に形成された頂部よりも低くし、更に、階段状のガイド部95を設けることで、焼結鉱の落下距離を低減し、焼結鉱の粉化を防止する方法が開示されている。なお、図8において、番号96は搬送物、番号97は搬送物の乗継ぎを行う他のベルトである。
【0006】
【特許文献1】特開昭58−71341号公報
【特許文献2】特開2001−233428号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の方法には、未だ解決すべき以下のような問題があった。
特許文献1の方法は、角度可変のシュート上を転がすことで、擬似粒子の落下時の衝撃を和らげ、その崩壊を低減させる思想であるが、本願発明者の実験の結果、シュートの勾配を60度以上にすると擬似粒子がシュート上を滑り落ち、衝撃緩和効果が低減されて、シュートがない状態とほぼ同様の崩壊状態になることが判明した。
また、特許文献1に記載された擬似粒子とは、核粒子の周りに微粉がまぶりついたものであり、粒径500μmアンダーの粒子を60質量%以上含む微粉の多い焼結原料を造粒した造粒物とは、その崩壊形態が異なるため、同じ強度でも造粒物の方が崩壊率が大きくなってしまう問題もある。図9には、微粉から構成される核粒子のない造粒物(P型造粒物ともいう)と、核粒子の周囲に微粉が付着した擬似粒子(S型造粒物ともいう)の崩壊率を示しているが、例え擬似粒子と造粒物が同じ強度であっても、同じ高さから落下させた場合の崩壊率が大きく異なることが分かる。ここで、崩壊率とは、落下後の造粒物中に含まれるφ500μm以下の粒子量の増加率である(以下、同様)。
【0008】
また、特許文献2は、キャリアプーリを設けることにより、焼結鉱の落下高さを従来よりも低くし、落下の際の衝撃を緩和して、焼結鉱の粉化を低減する思想であるが、設備制約上、落下高さが決まっている場合には適用することができない。また、焼結鉱のように、5MPa(50kgf/cm)以上の高い強度を有し、一度焼成され粒同士が融着されている場合には、落下崩壊時に微粉(φ500μm以下の粒子)の発生はほとんどなく、本願発明が対象とするような乾燥造粒物とは、崩壊現象が異なる。
また、階段状のガイドを設けたとしても、使用している間に焼結鉱が堆積し、デッドスペースができるため、結果的に特許文献1に示したスローピングシュートと同様の働きとなる。このため、焼結鉱はシュート上を滑り落ちてしまい、粉化抑制効果が低減してしまう問題がある。
【0009】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、微粉を主体として造粒され平均粒径と強度が規定された造粒物の崩壊を抑制し、良好な品質を有する焼結鉱を効率よく製造可能な造粒物の搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的に沿う本発明に係る造粒物の搬送方法は、粒径500μmアンダーの粒子を60質量%以上含む焼結原料にバインダーを添加し、造粒して乾燥し、平均粒径を1mm以上20mm以下、強度を0.1MPa以上1.5MPa以下とした造粒物を、搬送用シュートを介して落下させる造粒物の搬送方法であって、
前記搬送用シュートの内側対向面には、前記造粒物の落下衝撃緩衝部材が、該造粒物の落下方向に間隔を有して交互に突出して設けられ、しかも上下隣り合う前記落下衝撃緩衝部材間の前記造粒物の落下高さを0.1m以上0.4m以下の範囲内とし、上下隣り合う前記落下衝撃緩衝部材の平面視した際の重複距離を、0又は0を超え前記落下衝撃緩衝部材の突出長さの半分以下の範囲内とする。
【0011】
本発明に係る造粒物の搬送方法において、前記各落下衝撃緩衝部材は平板であって、該平板を、前記搬送用シュートの内側対向面に、基側から先側へかけて下方へ傾斜させて取付け、しかも水平位置に対する傾斜角度を30度以上45度以下の範囲内とすることが好ましい。
本発明に係る造粒物の搬送方法において、前記各落下衝撃緩衝部材は平板であって、該平板を、前記搬送用シュートの内側対向面に、水平に取付けることが好ましい。
本発明に係る造粒物の搬送方法において、前記各落下衝撃緩衝部材は、前記造粒物の落下方向に等ピッチで取付けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る造粒物の搬送方法は、平均粒径を1mm以上20mm以下、強度を0.1MPa以上1.5MPa以下とした造粒物を落下させる搬送用シュートの内側対向面に、落下衝撃緩衝部材を、造粒物の落下方向に間隔を有して交互に突出して設け、しかも上下隣り合う落下衝撃緩衝部材間の造粒物の落下高さを0.1m以上0.4m以下の範囲内とするので、造粒物の落下時における造粒物の崩壊を抑制できる。これは、平均粒径と強度が上記のように規定された造粒物を落下させるに際し、1回あたりの造粒物の落下高さを規定することで、造粒物が崩壊する最小衝撃、即ち落下しても崩壊しにくくなる限界衝撃以下に調整できることによる。
ここで、上下隣り合う落下衝撃緩衝部材の平面視した際の重複距離を、0又は0を超え落下衝撃緩衝部材の突出長さの半分以下の範囲内とするので、造粒物は、各落下衝撃緩衝部材を通過しながら(全ての落下衝撃緩衝部材を介して)落下できる。
従って、このようにして搬送された造粒物を焼結機へ供給することで、焼結機の通気性を阻害することなく、良好な品質を有する焼結鉱を、効率よく製造できる。
【0013】
また、各落下衝撃緩衝部材を平板とし、これを搬送用シュートの内側対向面に、下方へ所定の傾斜角度で傾斜させて取付ける場合は、造粒物が各落下衝撃緩衝部材に堆積することなく、造粒物を連続的に安定に落下させることができる。
そして、各落下衝撃緩衝部材を平板とし、これを搬送用シュートの内側対向面に、水平に取付ける場合は、造粒物が各落下衝撃緩衝部材の上面に堆積して所定角度の傾斜面を形成する。これにより、造粒物は、各落下衝撃緩衝部材に衝突することなく、堆積した造粒物で形成される傾斜面上に落下して転がり落ちるので、各落下衝撃緩衝部材の摩耗や損耗を抑制でき、各落下衝撃緩衝部材のメンテナンス頻度やランニングコストを低減できる。
更に、各落下衝撃緩衝部材を、造粒物の落下方向に等ピッチで取付ける場合、搬送用シュートの構成を簡単にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の一実施の形態に係る造粒物の搬送方法に使用する搬送用シュートの説明図、図2は造粒物の崩壊率と落下高さとの関係を示す説明図、図3は造粒物の崩壊メカニズムの説明図、図4(A)、(B)はそれぞれ本発明の他の実施の形態に係る造粒物の搬送方法に使用する搬送用シュートの説明図、使用状態の説明図である。
【0015】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る造粒物の搬送方法は、粒径500μmアンダーの粒子を60質量%以上含む焼結原料にバインダーを添加し、造粒して乾燥し、平均粒径を1mm以上20mm以下、強度を0.1MPa以上1.5MPa以下とした造粒物10を、搬送用シュート11を介して落下させる搬送方法である。この搬送用シュート11は、造粒物10を搬送するベルトコンベア12と、一時的なトラブルで造粒工程が停止した場合に、焼結機(図示しない)の停止を防ぐために造粒物10を貯留するホッパー13との間に設けられている。なお、ベルトコンベア12の上面(搬送面)位置からホッパー13の底面位置までの距離は、例えば、3m以上10m以下程度である。
【0016】
本願発明者らは、前記した課題を解決するために検討を重ね、同じ造粒物であっても、核粒子の周囲に微粉を付着させることによって造粒される擬似粒子(S型造粒物)と、核粒子がない造粒物(P型造粒物)とでは、破壊形態が異なることに着目した。
前記したように、図9には、擬似粒子と造粒物の落下衝撃に対する崩壊率を示しているが、擬似粒子と造粒物が同じ強度であっても、造粒物は擬似粒子と比較して崩壊率が高い。
これは、擬似粒子や造粒物を構成する粒子の大きさによって破壊形態が異なるためである。具体的には、粒子の構成具合によって、擬似粒子や造粒物が崩壊するための最小衝撃が決定し、限界衝撃(ここでは、限界落下高さに相当)以下になると、擬似粒子や造粒物が崩壊しなくなるためである。
【0017】
図2に、造粒物の落下高さと崩壊率の関係を示す。なお、造粒物には、粒径500μmアンダーの粒子を65質量%含む焼結原料を造粒して乾燥し、平均粒径が5mm、強度が0.6MPaとしたものを用いた。
図2から明らかなように、造粒物の落下高さが高くなれば、造粒物の崩壊率も大きくなることが分かる。これは、衝撃エネルギーが造粒物の落下高さに比例するためと考えられ、このことから、1回あたりの造粒物の落下高さを低減したとしても、トータルの落下高さが同じであれば、同じ崩壊率になると考えられていた。
しかしながら、本願発明者らは、検討を重ねた結果、造粒物が崩壊しなくなる限界の落下高さが存在することを見出した。そして、限界落下高さが、造粒物の強度や造粒物の粒度構成により推定可能であることが分かった。
これらを基に、造粒物の崩壊を抑制できる搬送方法を発明した。以下、詳しく説明する。
【0018】
造粒物を構成する焼結原料には、粒径500μmアンダーの粒子を60質量%以上含む、例えば微粉を多量に含む原料、篩選別により前記構成に調整した原料、微粉のみを篩選別により分離した原料、更には粉砕した原料を使用できる。
この焼結原料は、例えば、褐鉄鉱(Fe・nHO)、磁鉄鉱(Fe)、及び赤鉄鉱(Fe)、蛇紋岩、石灰石、粉コークス、返し鉱、及び混練ダストのいずれか1又は2以上である。なお、褐鉄鉱としては、例えば、マラマンバ鉱石(産地銘柄:ウエストアンジェラス)、ピソライト鉱石(産地銘柄:ヤンディー、ローブリバー)、及び高燐ブロックマン鉱石がある。
【0019】
焼結原料として、粒径が0μmを超え500μmアンダーの粒子を60質量%以上含む原料を対象としたのは、このような構成の原料は、従来の方法で造粒し乾燥して、強度を高めた造粒物であっても、前記したように、落下時の崩壊が著しく、焼結性の低下を招くためである。
このことから、本実施の形態では、粒子が500μmアンダーの粒子を、60質量%以上、好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上含む焼結原料の造粒を対象とする。なお、微粉の粒子量の上限を規定していないのは、全て微粉であってもよいためである。
【0020】
バインダーは、造粒物の強度向上に寄与させるため、従来から使用している例えば生石灰又は石灰岩のような、無機系のバインダーを使用できる。また、バインダーとして、パルプ廃液又はコンスターチ(水溶液又はコロイド状になったもの)を含む有機系のバインダー、及び固体架橋を促進する分散剤(分散剤を添加した水溶液又はコロイドを含む)のいずれか1又は2を使用することが好ましいが、これと無機系のバインダーを併用して使用してもよい。
なお、バインダー添加量は、焼結原料に対して1質量%以下程度でよい。
【0021】
これらを造粒機(例えば、ドラム型造粒機)に入れて造粒した後に乾燥する。
なお、造粒物を乾燥する方法としては、静置状態で通気するバンド乾燥機が、造粒物の崩壊を抑制できてベストであるが、より効率的に乾燥する方法として流動層がよい。これは、ガスクッション効果により、造粒物の崩壊を十分に抑制できるためである。ここで、キルン等の機械的な衝撃が加わる方法は、崩壊が著しく適用が困難である。
これにより、造粒物の平均粒径を1mm以上20mm以下、強度を0.1MPa(1kgf/cm)以上1.5MPa(15kgf/cm)以下とする。
【0022】
ここで、造粒物の平均粒径を1mm以上20mm以下に規定したのは、1mm未満の造粒物は、焼結機の焼結ベッド内の通気性を阻害する懸念があり、一方、20mmを超える造粒物は、粒径が大き過ぎて、造粒物が焼成不足になる懸念があるためである。
以上のことから、造粒物の平均粒径を1mm以上20mm以下としたが、下限を3mm、更には5mm、上限を17mm、更には15mmとすることが好ましい。
【0023】
また、造粒物の強度を1.5MPa以下に規定したのは、例えば、流動層で乾燥した造粒物に2〜4質量%程度の水分が残存しているためである。このように、造粒物中に水分が残存すると、1.5MPaを超える強度を実現するのが難しく、その結果、落下部での崩壊が顕著になり易く、焼結機内の通気性を阻害する問題があるためである。一方、強度を0.1MPa以上としたのは、0.1MPa未満の場合、流動層の乾燥途中で崩壊してしまい、流動層から排出できなくなるためである。
以上のことから、造粒物の強度を、0.1MPa以上1.5MPa以下としたが、下限を0.3MPa、更には0.5MPaとすることが好ましい。
【0024】
このようにして製造した造粒物10を、ベルトコンベア12から、搬送用シュート11を介してホッパー13へ搬送する。
搬送用シュート11は、ホッパー13に立設配置された中空状のものであり、この搬送用シュート11の内側対向面14、15に、造粒物10の落下衝撃を和らげる平板(落下衝撃緩衝部材の一例)16が、造粒物の落下方向に間隔を有して交互に突出して設けられている。この平板16は、造粒物の落下方向に、同一間隔(同一ピッチ)で設けられているが、部分的に異なる間隔で設けてもよい。
【0025】
また、平板16は、搬送用シュート11の内側対向面14、15に、基側から先側へかけて下方へ傾斜させて取付けられている。この傾斜角度θは、特に限定されるものではないが、水平位置に対する傾斜角度θを30度以上45度以下の範囲内とするのがよい。この各平板16の傾斜角度θは、全て同一角度であることが好ましいが、部分的に異なる角度にしてもよい。
このように、各平板16の傾斜角度θを30度以上45度以下とすることで、平板16上に落下した造粒物を、各平板16上に滞留させることなく、下方へ安定に落下させることができる。
【0026】
また、造粒物の落下方向に上下隣り合う平板16間の造粒物の落下高さHは、0.1m以上0.4m以下の範囲内である。
ここで、造粒物の1回あたりの落下高さHを0.4m以下とすることで、限界落下高さによる崩壊抑制効果が得られる。一方、落下高さHが0.1m未満の場合、隣り合う平板間の間隔が狭過ぎて閉塞し、造粒物の物流を安定に実施できなくなるためである。
この限界落下高さについて、その概念を示す図3を参照しながら、詳しく説明する。
造粒物の崩壊は、落下による衝撃(落下エネルギー)に支配される。一方、造粒物の強度は、崩壊を抑制する耐性(耐性エネルギー)として働き、実際には、両者(落下エネルギーと耐性エネルギー)の差が有効破壊指数(有効破壊エネルギー)となる。
【0027】
ここで、水分が2〜4質量%残存した1.5MPa以下の強度の造粒物の場合、一般的なベルトコンベアの乗継ぎ高さ(例えば、2m程度)やホッパーへの投入高さ(例えば、5m程度)では、前記した両者の差は無視できるほど小さく、造粒物の崩壊抑制にはほとんど寄与しない。しかし、造粒物の落下高さを低くしていくと、図3に示すように、造粒物の耐性が無視できなくなり、最終的には崩壊しなくなる。
このときの落下高さを、限界落下高さHcと定義した。
本願発明者らの実験により、限界落下高さは、造粒物の強度や、造粒物を構成する粒度に影響されることが明らかになっており、擬似粒子と造粒物とでは大きく異なる。なお、本願発明が対象とする粒径500μmアンダーの粒子を60質量%以上含み、平均粒径が1mm以上20mm以下、強度が0.1MPa以上1.5MPa以下の造粒物では、図2に示すように、0.4mであった。
【0028】
また、搬送用シュート11の内側対向面14、15に取付けられた上下に隣り合う平板16の平面視した際の重複距離Wは、0又は0を超え平板16の内側対向面14、15からの突出長さLの半分以下の範囲内とする。
重複距離Wの下限を0mとしたのは、上方の平板から落下する造粒物を、その下方に配置される平板上に必ず落下させるためである。一方、重複距離Wの上限を平板の突出長さLの半分以下としたのは、造粒物を、上下に隣り合う平板間に滞留させることなく、下方へ安定に落下させるためである。
以上のことから、平板16の重複距離Wを、0又は0を超え平板16の突出長さLの半分以下の範囲内としたが、下限を0.1×L、更には0.2×Lとし、上限を0.4×L、更には0.3×Lとするのが好ましい。
【0029】
次に、本発明の他の実施の形態に係る造粒物の搬送方法に使用される搬送用シュートについて説明する。
図4(A)に示す搬送用シュート17は、ホッパー13に立設配置された中空状のものであり、この搬送用シュート17の内側対向面18、19に、造粒物10の落下衝撃を和らげる平板(落下衝撃緩衝部材の一例)20が、造粒物の落下方向に同一間隔を有して(同一ピッチで)交互に突出して設けられている。なお、各平板20は、搬送用シュート17の内側対向面18、19に水平に取付けられている。ここで、水平とは、水平位置を基準として、±10度、更には±5度の範囲内を含む。
【0030】
この搬送用シュート17を使用して、造粒物を落下させるに際しては、各平板20が水平状態であるため、造粒物が各平板20の上面に堆積する。そして、各平板20上に堆積した造粒物が、所定の安息角(30〜40度)を有する傾斜面を形成する。
これにより、造粒物は、各平板20の表面に衝突することなく、堆積した造粒物で形成される傾斜面上に落下して転がり落ちるので、各平板20の摩耗や損耗を抑制でき、各平板20のメンテナンス頻度やランニングコストを低減できる。
以上のことから、本願発明の造粒物の搬送方法を使用することで、落下による造粒物の崩壊を抑制できるので、この造粒物を焼結機に供給することにより、良好な品質を有する焼結鉱を効率よく製造できる。
【実施例】
【0031】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
ここでは、粒径500μmアンダーの粒子を65質量%含む焼結原料をドラム型造粒機に入れ、これに水と有機系のバインダーを添加して造粒し、流動層を用いた乾燥を行って、得られた平均粒径5mm、強度0.4MPaの造粒物の搬送前後の崩壊率(φ500μm以下の増加量)を検討した。
【0032】
まず、搬送用シュートに設けた隣り合う平板間の造粒物の落下高さを検討した結果について、図5(A)、(B)を参照しながら説明する。なお、図5(A)には、造粒物の1回あたりの落下高さ(平板の設置間隔)を、6m(平板なし)、1m、0.6m、0.4m、及び0.3mとした場合の造粒物の落下時のイメージを図示しており、図5(B)には、造粒物が6m(6m×1回)落下したときの崩壊率と、造粒物がトータルで6m落下するに際しての1回あたりの落下高さを変えた場合の崩壊率との関係を示している。ここで、搬送用シュートに設ける平板は、傾斜させることなく水平状態で、しかも造粒物の落下方向に等ピッチで設けられている。なお、図5(B)には、図5(A)に示したイメージ以外の落下高さを変えた場合の崩壊率も、併せて示している。
【0033】
図5(B)から明らかなように、造粒物を6m落下させる場合において、6mを1回、1mを6回、0.6mを10回というように、1回あたりの落下高さを低くすることで、1回あたりの崩壊率は低減されたが、合計6m落下したときの造粒物の崩壊率は同じであった。
しかし、図5(B)に示すように、1回あたりの落下高さを、0.4m(15回)、0.3m(20回)と更に低くすることで、合計6m落下したときの造粒物の崩壊率が減少することを確認できた。
これは、前記した造粒物の耐性の影響であり、落下高さを低くすることで、造粒物の耐性の影響が無視できなくなるためである。
【0034】
なお、上記した現象は、粒径500μmアンダーの粒子を60質量%以上含み、平均粒径が1mm以上20mm以下、強度が0.1MPa以上1.5MPa以下の造粒物に、同様に現れていた。
また、焼結機においては、造粒物の崩壊率、即ち落下後の造粒物中に含まれるφ500μm以下の増加率が7質量%まで、操業に大きな影響を耐えない。
以上のことから、粒径500μmアンダーの粒子を60質量%以上含み、1mm以上20mm以下の平均粒径を備え、0.1MPa以上1.5MPa以下の強度の造粒物を落下させる場合、造粒物の1回あたりの落下高さが0.4m以下であれば、造粒物の崩壊抑制効果が顕著に得られることを確認できた。
【0035】
次に、造粒物の落下方法と、そのときの造粒物の崩壊率を検討した結果について、図6(A)、(B)を参照しながら説明する。この図6(A)に示す搬送用シュートは、造粒物を搬送するベルトコンベアと、造粒物を貯留するホッパーとの間に設けられるものであり、その落下高さは5mである。ここで、従来例は、平板を使用することなく、造粒物を5m自由落下させた場合の結果であり、比較例は、搬送用シュート内に傾斜角度60度のシュートを設けて造粒物を落下させた場合の結果であり、実施例は、水平位置に対する傾斜角度を40度とした平板を、造粒物の落下方向に多段に設け、隣り合う平板間の造粒物の落下高さを0.3mとし、平面視した際の平板の重複距離を、平板の突出長さの0.1倍とした場合の結果である。
【0036】
図6(B)から明らかなように、造粒物を5m自由落下させた従来例と比較して、1つのシュートを使用する比較例では、造粒物の崩壊抑制効果がほとんど得られなかった。
一方、実施例のように、造粒物の落下高さ等を、前記実施の形態に示した適正範囲内に設定することで、造粒物の崩壊率を2質量%まで低減でき、大きな崩壊抑制効果が得られることを確認できた。
以上のことから、本発明の造粒物の搬送方法を適用することで、微粉を主体として造粒された平均粒径と強度が規定された造粒物の崩壊を抑制し、良好な品質を有する焼結鉱を効率よく製造できることを確認できた。
【0037】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の造粒物の搬送方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、搬送用シュートを、造粒物を搬送するベルトコンベアと、この造粒物を貯留するホッパーとの間に設けた場合について説明したが、造粒物が落下する場所であればこれに限定されるものではなく、例えば、造粒物を搬送するベルトコンベアからベルトコンベアへの乗継ぎ部に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施の形態に係る造粒物の搬送方法に使用する搬送用シュートの説明図である。
【図2】造粒物の崩壊率と落下高さとの関係を示す説明図である。
【図3】造粒物の崩壊メカニズムの説明図である。
【図4】(A)、(B)はそれぞれ本発明の他の実施の形態に係る造粒物の搬送方法に使用する搬送用シュートの説明図、使用状態の説明図である。
【図5】(A)は造粒物の落下時のイメージの説明図、(B)は造粒物が6m落下する場合の1回あたりの落下高さとその崩壊率との関係を示す説明図である。
【図6】(A)、(B)は実施例に係る造粒物の搬送方法と造粒物の崩壊率との関係を示す説明図である。
【図7】従来例に係る擬似粒子の破壊防止方法を適用する装置の説明図である。
【図8】従来例に係る焼結鉱の粉化防止方法を適用する装置の説明図である。
【図9】擬似粒子及び造粒物の落下高さと崩壊率の関係を比較した説明図である。
【符号の説明】
【0039】
10:造粒物、11:搬送用シュート、12:ベルトコンベア、13:ホッパー、14、15:内側対向面、16:平板(落下衝撃緩衝部材)、17:搬送用シュート、18、19:内側対向面、20:平板(落下衝撃緩衝部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径500μmアンダーの粒子を60質量%以上含む焼結原料にバインダーを添加し、造粒して乾燥し、平均粒径を1mm以上20mm以下、強度を0.1MPa以上1.5MPa以下とした造粒物を、搬送用シュートを介して落下させる造粒物の搬送方法であって、
前記搬送用シュートの内側対向面には、前記造粒物の落下衝撃緩衝部材が、該造粒物の落下方向に間隔を有して交互に突出して設けられ、しかも上下隣り合う前記落下衝撃緩衝部材間の前記造粒物の落下高さを0.1m以上0.4m以下の範囲内とし、上下隣り合う前記落下衝撃緩衝部材の平面視した際の重複距離を、0又は0を超え前記落下衝撃緩衝部材の突出長さの半分以下の範囲内とすることを特徴とする造粒物の搬送方法。
【請求項2】
請求項1記載の造粒物の搬送方法において、前記各落下衝撃緩衝部材は平板であって、該平板を、前記搬送用シュートの内側対向面に、基側から先側へかけて下方へ傾斜させて取付け、しかも水平位置に対する傾斜角度を30度以上45度以下の範囲内とすることを特徴とする造粒物の搬送方法。
【請求項3】
請求項1記載の造粒物の搬送方法において、前記各落下衝撃緩衝部材は平板であって、該平板を、前記搬送用シュートの内側対向面に、水平に取付けたことを特徴とする造粒物の搬送方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の造粒物の搬送方法において、前記各落下衝撃緩衝部材は、前記造粒物の落下方向に等ピッチで取付けられていることを特徴とする造粒物の搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−132956(P2010−132956A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308892(P2008−308892)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】