説明

連結車両における後方車両の駆動制御装置

【課題】車両間連結部に水平面内曲げモーメントが作用しなくなるような後方車両の左右輪間制駆動力差制御により、後方車両の走行安定性を向上させる。
【解決手段】(a)は、前方車両1の左後輪前進駆動力Tflおよび右後輪前進駆動力Tfrを同じにし、且つ、後方車両2の左輪前進駆動力Twlおよび右輪前進駆動力Twrを同じにした前直進駆動状態を示す。この状態から、(b)に示すごとく前方車両1が左旋回を行った結果、後方車両2が車両連結部3に右回りの曲げモーメントLmを作用させた場合、このLmを検出するセンサ11からの信号に応答して、後方車両2における右輪9Rの目標前進駆動力tTwrを左輪9Lの目標前進駆動力tTwlよりも大きくする。かかる後方車両2の左右輪駆動力差制御は、後方車両2に(b)上で左回りのヨーモーメントを発生させ、このヨーモーメントが(b)の右回り曲げモーメントLmを減殺させて後方車両2の走行安定性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数車両をタンデムに連結してなる連結車両、特に、連結した複数車両の制駆動力を個別に制御可能な連結車両において、後方車両の走行安定性が向上するよう該後方車両を駆動制御する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
キャンピングカーや、トレーラトラックや、タンデムバスなどの連結車両における後方車両(被牽引車両)を駆動制御する技術としては従来、例えば特許文献1に記載のごとく、
前方車両である牽引車両および後方車両である被牽引車両の駆動力を個別に制御可能な連結車両において、
被牽引車両の左右転舵輪を旋回式の支持部材により車体に取り付けて、左右転舵輪を両者間の回転差により転舵可能とし、
前進時は牽引車両または被牽引車両の操舵角および車速に応じ被牽引車両の左右輪回転数および左右輪駆動力を制御し、後進時は逆に被牽引車両が牽引車両を牽引するよう被牽引車両の左右輪回転数および左右輪駆動力を制御するようにしたものが知られている。
【特許文献1】特表平07−500239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし従来のように、被牽引車両に左右転舵輪を設定し、これら左右転舵輪を両者間の回転差により転舵制御するのでは、被牽引車両の車輪を全て車体へ転舵不能に取り付けるという訳にいかず、左右転舵輪を設定してこれらを車体に対し転舵旋回式の支持部材により車体に取り付ける車輪支持構造が不可欠となり、被牽引車両の車輪を全て転舵不能に取り付ける場合に比して、車輪支持構造が複雑になってコスト上の不利益を生ずるという問題がある。
【0004】
しかも従来は、左右転舵輪を両者間の回転差制御により転舵して、被牽引車両が牽引車両に追従するようになすことから、左右転舵輪間の正確な回転差制御なしには所期の目的を達成することができず、正確で且つ困難な制御に頼らざるを得ず、この点でもコスト高になるという問題を生ずる。
【0005】
本発明は上記の実情に鑑み、被牽引車両である後方車両の車輪を全て車体へ転舵不能に取り付けたままで、従って、後方車両の車輪支持構造が複雑になってコスト高になるという不利益を蒙ることなく、また、車輪転舵のための正確で困難な左右輪回転差制御を必要とすることなく、従って、これに伴うコスト高を生ずることなく、後方車両の走行安定性を向上させ得るようにした、連結車両における後方車両の駆動制御装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のため、本発明による連結車両用後方車両の駆動制御装置は、請求項1に記載のごとく、
個別に制駆動力を制御可能な複数車両をタンデムに連結してなる連結車両を要旨構成の基礎前提とし、
連結車両の相互に隣り合う前方車両および後方車両間を連結する連結部に、該連結部へ加わる水平面内曲げ荷重を検出する連結部荷重検出手段を設け、
該手段により検出した水平面内曲げ荷重がなくなるよう前記後方車両の左右輪間に制駆動力差を持たせるべく後方車両の左右輪制駆動力を制御する後方車両用左右輪制駆動力制御手段を設けた構成に特徴づけられる。
【発明の効果】
【0007】
かかる本発明の、連結車両における後方車両の駆動制御装置によれば、
連結部荷重検出手段が、相互に隣り合う前方車両および後方車両間を連結した連結部に加わる水平面内曲げ荷重を検出し、
この検出した水平面内曲げ荷重がなくなるよう後方車両の左右輪間に制駆動力差を持たせるべく、後方車両用左右輪制駆動力制御手段が後方車両の左右輪制駆動力を制御して、後方車両を上記水平面内曲げ荷重が発生しない態様で安定下に走行させるようにしたため、
後方車両の車輪を全て車体へ転舵不能に取り付けたままでも、従って、後方車両の車輪支持構造が複雑になってコスト高になるという不利益を蒙ることなく、また、車輪転舵用に正確で困難な左右輪回転差制御を必要とすることなく、従って、これに伴うコスト高を生ずることなく、後方車両の走行安定性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例になる後方車両の駆動制御装置を具えた連結車両の平面図で、この連結車両は、前方車両である牽引車両1と、後方車両である被牽引車両2とをタンデム(前後方向)に連結したものとする。
【0009】
これら牽引車両1および被牽引車両2の連結に当たっては、牽引車両1の後端に一体結合されてこれから車両後方へ突出する牽引車両側連結シャフト3を設け、被牽引車両2の前端に一体結合されてこれから車両前方へ突出する被牽引車両側連結シャフト4を設け、これらシャフト3,4の先端同士をピボットピン5により、垂直軸線周りで矢印により示す方向へ揺動可能に連結する。
【0010】
牽引車両1は、左右前輪6L,6Rおよび左右後輪7L,7Rを有した4輪車両とし、電動モータ8L,8Rによる左右後輪7L,7Rの個別可逆駆動で前進・後進走行され、左右前輪6L,6Rの転舵により操向されるものとする。
被牽引車両2は、左右輪9L,9Rのみを有した2輪車両とし、これら左右輪9L,9Rを電動モータ10L,10Rにより個別に可逆駆動することにより、牽引車両1に追従するよう前進・後進走行されるものとする。
そして、牽引車両1および被牽引車両2は個別に上記の駆動力を制御し得るものとする。
【0011】
なお、牽引車両1の電動モータ8L,8Rおよび被牽引車両2の電動モータ10L,10Rは、上記の可逆駆動を行うだけでなく、対応車輪の可逆回転数を低下させるときは回転低下分のエネルギーを電力に変換して当該回転低下(制動)を行わせる回生制動用のジェネレータ機能をも持つものとする
よって、上記電動モータ8L,8Rによる左右後輪7L,7R(牽引車両1)の駆動力、および、電動モータ10L,10Rによる左右輪9L,9R(被牽引車両2)の駆動力はそれぞれ、制駆動力を意味するものとする。
【0012】
図1の連結車両には更に、牽引車両1および被牽引車両2間を連結する連結部(図では、牽引車両側連結シャフト3だが、被牽引車両側連結シャフト4でもよい)において、その上面または下面に連結部荷重検出手段としての車両連結部荷重センサ(歪ゲージ等)11を設け、これにより、車両連結部(牽引車両側連結シャフト3)に加わる水平面内曲げ荷重(水平面内曲げモーメント)Lmおよび車両前後方向(軸線方向)荷重Laを検出する。
【0013】
図1の連結車両は、上記のセンサ11で検出した牽引車両側連結シャフト3への水平面内曲げモーメントLmおよび軸線方向荷重Laを基に、被牽引車両2の走行安定性が増すように当該車両2における左右輪(9L,9R)の制駆動力を制御するようにした、図2にブロック線図で示すような被牽引車両(後方車両)2用の駆動制御装置を具える。
【0014】
この駆動制御装置はコントローラ21を具え、このコントローラ21には、
上記センサ11で検出した水平面内曲げモーメントLmおよび軸線方向荷重Laに関する信号のほかに、
牽引車両(前方車両)1の前輪操舵角θを検出する操舵角センサ22からの信号と、
被牽引車両(後方車両)2に発生したヨーレートφを検出する後方車両ヨーレートセンサ23からの信号と、
車速VSPを検出する車速センサ24からの信号と、
運転者が駆動力要求度に応じて踏み込むアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)APOを検出するアクセル開度センサ25からの信号と、
ブレーキペダルを踏み込む制動時に応動してONとなるブレーキスイッチ26からの信号とを入力する。
【0015】
コントローラ21は、上記の入力情報を基に図3に示す制御プログラムを実行して被牽引車両2の目標左輪制駆動力tTwl’(tTwl)および目標右輪制駆動力tTwr’(tTwr)をそれぞれ演算し、これら目標左輪制駆動力tTwl’(tTwl)および目標右輪制駆動力tTwr’(tTwr)を対応する後方車両用左輪制駆動力制御部27および後方車両用右輪制駆動力制御部28に出力する。
後方車両用左輪制駆動力制御部27は目標左輪制駆動力tTwl’(tTwl)が達成されるよう左輪電動モータ10Lを制御し、後方車両用右輪制駆動力制御部28は目標右輪制駆動力tTwr’(tTwr)が達成されるよう右輪電動モータ10Rを制御する。
【0016】
コントローラ21が実行する図3の制御プログラムを詳述するに、先ずステップS11において、車速VSPが0(停車中)か、VSP>0(前進走行中)か、VSP<0(後進走行中)かをチェックする。
VSP=0(停車中)であれば、後方車両2の走行安定性を向上させるための、本発明が狙いとする駆動制御は不要であるから、制御をそのまま終了させる。
【0017】
VSP>0(前進走行中)であれば、ステップS12において、前記の車両連結部曲げモーメントLmが発生しているか否かをチェックし、発生していればステップS13において、車両連結部曲げモーメントLmが車両上方から見て右回り(時計回り)か、逆に、車両上方から見て左回り(反時計回り)かをチェックする。
ステップS13で、車両連結部に右回り(時計回り)の曲げモーメントLmが加わっていると判定する場合、本発明における後方車両用左右輪制駆動力制御手段に相当するステップS14において、後方車両2における右輪9Rの前進駆動力を左輪9Lの前進駆動力よりも大きくする。
【0018】
かかる左右輪9L,9Rの前進時における駆動力差制御によれば、以下のように後方車両2の前進走行安定性を向上させることができる。
図4(a)は、前方車両1の左輪(左後輪)前進駆動力Tflおよび右輪(右後輪)前進駆動力Tfrを同じにし、且つ、後方車両2の左輪前進駆動力Twlおよび右輪前進駆動力Twrを同じにした前直進駆動時の状態を示す。
かかる前直進駆動状態では、車両連結部に水平面内曲げモーメントが作用せず、この車両連結部に設けた荷重センサ11は水平面内曲げモーメントLmを検出しない。
【0019】
図4(a)の前直進駆動状態から、同図(b)に示すごとく前方車両1が左旋回を行った結果、後方車両2が前方車両1に追従しようとして車両連結部に、車両上方から見て右回りの水平面内曲げモーメントLmを作用させる場合、この右回り曲げモーメントLmに呼応してステップS13はステップS14を選択し、ここで上記したように、そして図4(b)に示すごとく、後方車両2における右輪9Rの目標前進駆動力tTwrを左輪9Lの目標前進駆動力tTwlよりも大きくする。
【0020】
これら後方車両2の右輪目標前進駆動力tTwrおよび左輪目標進駆動力tTwlはそれぞれ、図2に示すように右輪制駆動力制御部28および左輪制駆動力制御部27に指令され、これら制御部は後方車両2の対応する車輪の駆動力をそれぞれの目標値となるよう車輪駆動用の電動モータ10R,10Lを制御する。
かかる後方車両2の左右輪駆動力差制御は、後方車両2に図4(b)上で左回りのヨーモーメントを発生させ、このヨーモーメントが図4(b)の右回り曲げモーメントLmと逆向きであることから、車両連結部に作用する図4(b)の右回り曲げモーメントLmを減殺させることができ、後方車両2の走行安定性を向上させ得る。
【0021】
なお、図3のステップS14で後方車両2の右輪目標前進駆動力tTwrを左輪目標前進駆動力tTwlよりも大きくするに際しては、両者の和値を不変に保って駆動力差を持たせるようにするのが良い。
この場合、後方車両2の全体的な前進駆動力が不変に保たれて、車両連結部における車両前後方向荷重が変わることがなく、通常はこの車両前後方向荷重が0となるよう前方車両1との関係で後方車両2の駆動力を決定することから、旋回走行中も車両連結部における車両前後方向荷重を0に保って後方車両2を走行させることができる。
【0022】
図3のステップS13で、車両連結部に左回り(反時計回り)の曲げモーメントLmが加わっていると判定する場合、本発明における後方車両用左右輪制駆動力制御手段に相当するステップS15において、後方車両2における左輪9Lの前進駆動力を右輪9Rの前進駆動力よりも大きくする。
【0023】
かかる左右輪9L,9Rの前進時における駆動力差制御によれば、以下のように後方車両2の前進走行安定性を向上させることができる。
図4(a)は、前方車両1の左輪(左後輪)前進駆動力Tflおよび右輪(右後輪)前進駆動力Tfrを同じにし、且つ、後方車両2の左輪前進駆動力Twlおよび右輪前進駆動力Twrを同じにした前直進駆動時の状態を示し、
この前直進駆動状態では、車両連結部に水平面内曲げモーメントが作用せず、この車両連結部に設けた荷重センサ11は水平面内曲げモーメントLmを検出しない。
【0024】
図4(a)の前直進駆動状態から、例えばワインディング山岳路走行へ移行したため同図(c)に示すごとく前方車両1が左旋回を行っている間に、後方車両2が前方車両1に追従しようとして車両連結部に、車両上方から見て左回りの水平面内曲げモーメントLmを作用させる場合、この左回り曲げモーメントLmに呼応してステップS13はステップS15を選択し、ここで上記したように、そして図4(c)に示すごとく、後方車両2における左輪9Lの目標前進駆動力tTwlを右輪9Rの目標前進駆動力tTwrよりも大きくする。
【0025】
これら後方車両2の左輪目標進駆動力tTwlおよび右輪目標前進駆動力tTwrはそれぞれ、図2に示すように左輪制駆動力制御部27および右輪制駆動力制御部28に指令され、これら制御部は後方車両2の対応する車輪の駆動力をそれぞれの目標値となるよう車輪駆動用の電動モータ10L, 10Rを制御する。
かかる後方車両2の左右輪駆動力差制御は、後方車両2に図4(c)上で右回りのヨーモーメントを発生させ、このヨーモーメントが図4(c)の左回り曲げモーメントLmと逆向きであることから、車両連結部に作用する図4(c)の左回り曲げモーメントLmを減殺させることができ、後方車両2の走行安定性を向上させ得る。
【0026】
なお、ステップS15で後方車両2の左輪目標前進駆動力tTwlを右輪目標前進駆動力tTwrよりも大きくするに際しては、両者の和値を不変に保って駆動力差を持たせるようにするのが良い。
この場合、後方車両2の全体的な前進駆動力が不変に保たれて、車両連結部における車両前後方向荷重が変わることがなく、通常はこの車両前後方向荷重が0となるよう前方車両1との関係で後方車両2の駆動力を決定することから、旋回走行中も車両連結部における車両前後方向荷重を0に保って後方車両2を走行させることができる。
【0027】
なお上記では、前方車両1が左旋回した場合について説明したが、右旋回した場合においても、同様な後方車両2の左右輪駆動力差制御により同様の作用効果を達成することができる。
【0028】
また上記では、連結車両の前進駆動走行時について後方車両2の走行安定性を向上させる要領を説明したが、同じく前進走行ながら、前進制動走行時に後方車両の走行安定性を向上させる場合も、以下に説明する同様な要領で所期の目的を達成することができる。
【0029】
図5(a)は、前進走行中に前方車両1の左輪(左後輪)回生制動力Tfl’および右輪(右後輪)回生制動力Tfr’を同じにし、且つ、後方車両2の左輪回生制動力Twl’および右輪回生制動力Twr’を同じにした前直進制動時の状態を示す。
かかる前直進制動状態では、車両連結部に水平面内曲げモーメントが作用せず、この車両連結部に設けた荷重センサ11は水平面内曲げモーメントLmを検出しない。
【0030】
図5(a)の前直進制動状態から、同図(b)に示すごとく前方車両1が左転舵した結果、後方車両2が前方車両1との相対位置変化より車両連結部に、車両上方から見て左回りの水平面内曲げモーメントLmを作用させる場合、この左回り曲げモーメントLmに呼応してステップS13はステップS15を選択し、ここで前記したように、そして図5(b)に示すごとく、後方車両2における左輪9Lの目標前進駆動力tTwlを右輪9Rの目標前進駆動力tTwrよりも大きくする。
【0031】
これら後方車両2の左輪目標進駆動力tTwlおよび右輪目標前進駆動力tTwrはそれぞれ、図2に示すように左輪制駆動力制御部27および右輪制駆動力制御部28に指令され、これら制御部は後方車両2の対応する車輪の駆動力をそれぞれの目標値となるよう車輪駆動用の電動モータ10L,10Rを制御する。
かかる後方車両2の左右輪駆動力差制御は、後方車両2に図5(b)上で右回りのヨーモーメントを発生させ、このヨーモーメントが図5(b)の左回り曲げモーメントLmと逆向きであることから、車両連結部に作用する図5(b)の左回り曲げモーメントLmを減殺させることができ、後方車両2の走行安定性を向上させ得る。
【0032】
ところで、前進制動時において図5(b)に示すごとく車両連結部に作用する左回りの水平面内曲げモーメントLmを後方車両2の左右輪(回生)制動力差により減殺させる場合は、この左回り曲げモーメントLmに呼応して選択されるステップS15において、図5(c)に示すごとく、後方車両2における右輪9Rの目標制動力tTwr’を左輪9Lの目標制動力tTwl’よりも大きくする。
【0033】
これら後方車両2の右輪目標制動力tTwr’および左輪目標制動力tTwl’はそれぞれ、図2に示すように右輪制駆動力制御部28および左輪制駆動力制御部27に指令され、これら制御部は後方車両2の対応する車輪の制動力をそれぞれの目標値となるよう車輪駆動用の電動モータ10R,10Lを制御する。
かかる後方車両2の左右輪制動力差制御は、後方車両2に図5(c)上で右回りのヨーモーメントを発生させ、このヨーモーメントが図5(c)の左回り曲げモーメントLmと逆向きであることから、車両連結部に作用する図5(c)の左回り曲げモーメントLmを減殺させることができ、後方車両2の走行安定性を向上させ得る。
【0034】
なお図5(b),(c)に示すとは逆に、車両連結部に車両上方から見て右回りの水平面内曲げモーメントLmが作用する場合、この右回り曲げモーメントLmに呼応して選択されるステップS14において、図5(b)とは逆に後方車両2における右輪9Rの目標前進駆動力tTwrを左輪9Lの目標前進駆動力tTwlよりも大きくしたり、または、
図5(c)とは逆に後方車両2における左輪9Lの目標制動力tTwl’を右輪9Rの目標制動力tTwr’よりも大きくする。
かかる後方車両2の左右輪駆動力差制御、または左右輪制動力差制御は、後方車両2に図5(b),(c)上で左回りのヨーモーメントを発生させ、このヨーモーメントが図5(b),(c)に示すとは逆の右回りの水平面内曲げモーメントLmと逆向きであって、車両連結部に作用する当該右回り曲げモーメントLmを減殺させることができ、後方車両2の走行安定性を向上させ得る。
【0035】
ステップS12〜ステップS15を含む上記ループの繰り返しにより、連結車両の前進時において、
相互に隣り合う前方車両1および後方車両2間の連結部に加わる水平面内曲げモーメントLmがなくなるよう後方車両2の左右輪9L,9R間に制駆動力差を持たせるべく後方車両2の左右輪制駆動力を制御するため、
後方車両2を水平面内曲げモーメントLmが発生しない態様で安定下に走行させ得て、後方車両2の走行安定性を向上させることができ、
しかも、後方車両2の車輪9L,9Rを全て車体へ転舵不能に取り付けたままでも、従って、後方車両2の車輪支持構造が複雑になってコスト高になるという不利益を蒙ることなく、また、車輪転舵用に正確で困難な左右輪回転差制御を必要とすることなく、従って、これに伴うコスト高を生ずることなく、後方車両2の走行安定性を向上させるという上記の作用効果を達成することができる。
【0036】
ステップS12〜ステップS15を含む上記ループの繰り返しにより、車両連結部に水平面内曲げモーメントLmが作用しなくなると、ステップS12がステップS16を選択するようになり、ここで前記の車両連結部軸線方向荷重Laが発生しているか否かをチェックし、発生していなければ、曲げモーメントLmも発生していなくて、本発明による制御が不要であるから、制御をそのまま終了する。
【0037】
ステップS16で車両連結部軸線方向荷重Laが発生していると判定する場合は、ステップS17において、車両連結部軸線方向荷重Laが0より大きな引っ張り荷重(後方車両2が前方車両1により引っ張られている状態)か、逆に、車両連結部軸線方向荷重Laが0より小さな圧縮荷重(後方車両2が前方車両1を押している状態)かをチェックする。
【0038】
ステップS17で車両連結部軸線方向荷重Laが引っ張り荷重(後方車両2が前方車両1により引っ張られている状態)であると判定する場合、制御を、本発明における後方車両用左右輪制駆動力制御手段に相当するステップS18に進めて、後方車両2における左右輪9L,9Rの目標駆動力tTwl,Twrをそれぞれ同じ所定量ΔTwだけ増大させる。
かかる左右輪駆動力増大制御の繰り返しで、車両連結部に作用していた軸線方向引っ張り荷重Laが徐々に低下され、ついには0となって、後方車両2が前方車両1により引っ張られる状態の解消により後方車両2の走行安定性を向上させることができる。
なお、左右輪9L,9Rの駆動力増大量を同じΔTwにしたため、ステップS12〜ステップS15で曲げモーメントLmの解消用に設定した制駆動力差は維持され、左右輪9L,9Rの駆動力増大制御によっても後方車両2の走行安定性が阻害されることはない。
【0039】
ステップS17で、車両連結部軸線方向荷重Laが圧縮荷重(後方車両2が前方車両1を押している状態)であると判定する場合、制御を、本発明における後方車両用左右輪制駆動力制御手段に相当するステップS19に進めて、後方車両2における左右輪9L,9Rの目標制動力tTwl’,Twr’をそれぞれ同じ所定量ΔTw’だけ増大させる。
かかる左右輪制動力増大制御の繰り返しで、車両連結部に作用していた軸線方向圧縮荷重Laが徐々に低下され、ついには0となって、後方車両2が前方車両1を押している状態の解消により後方車両2の走行安定性を向上させることができる。
なお、左右輪9L,9Rの制動力増大量を同じΔTw’にしたため、ステップS12〜ステップS15で曲げモーメントLmの解消用に設定した制駆動力差は維持され、左右輪9L,9Rの制動力増大制御によっても後方車両2の走行安定性が阻害されることはない。
【0040】
図3のステップS11でVSP<0(後進走行中)であると判定する場合は、ステップS21において、前記の車両連結部曲げモーメントLmが発生しているか否かをチェックし、発生していればステップS22において、車両連結部曲げモーメントLmが車両上方から見て右回り(時計回り)か、逆に、車両上方から見て左回り(反時計回り)かをチェックする。
ステップS22で、車両連結部に右回り(時計回り)の曲げモーメントLmが加わっていると判定する場合、本発明における後方車両用左右輪制駆動力制御手段に相当するステップS23において、後方車両2における左輪9Lの後進駆動力を右輪9Rの後進駆動力よりも大きくする。
【0041】
かかる左右輪9L,9Rの後進時における駆動力差制御によれば、以下のように後方車両2の後進走行安定性を向上させることができる。
図6(a)は、前方車両1の左輪(左後輪)後進駆動力Tflおよび右輪(右後輪)後進駆動力Tfrを同じにし、且つ、後方車両2の左輪後進駆動力Twlおよび右輪後進駆動力Twrを同じにした後直進駆動時の状態を示す。
かかる後直進駆動状態では、車両連結部に水平面内曲げモーメントが作用せず、この車両連結部に設けた荷重センサ11は水平面内曲げモーメントLmを検出しない。
【0042】
図6(a)の後直進駆動状態から、同図(b)に示すごとく前方車両1の左転舵により後方車両2が前方車両1との相対回転位置変化に起因して車両連結部に、車両上方から見て右回りの水平面内曲げモーメントLmを作用させる場合、この右回り曲げモーメントLmに呼応してステップS23はステップS23を選択し、ここで上記したように、そして図6(b)に示すごとく、後方車両2における左輪9Lの目標前進駆動力tTwlを右輪9Rの目標前進駆動力tTwrよりも大きくする。
【0043】
これら後方車両2の左輪目標進駆動力tTwlおよび右輪目標前進駆動力tTwrはそれぞれ、図2に示すように左輪制駆動力制御部27および右輪制駆動力制御部28に指令され、これら制御部は後方車両2の対応する車輪の駆動力をそれぞれの目標値となるよう車輪駆動用の電動モータ10L,10Rを制御する。
かかる後方車両2の左右輪後進駆動力差制御は、後方車両2に図6(b)上で左回りのヨーモーメントを発生させ、このヨーモーメントが図6(b)の右回り曲げモーメントLmと逆向きであることから、車両連結部に作用する図6(b)の右回り曲げモーメントLmを減殺させることができ、後方車両2の走行安定性を向上させ得る。
【0044】
なお、図3のステップS23で後方車両2の左輪目標後進駆動力tTwlを右輪目標後進駆動力tTwrよりも大きくするに際しては、両者の和値を不変に保って駆動力差を持たせるようにするのが良い。
この場合、後方車両2の全体的な後進駆動力が不変に保たれて、車両連結部における車両前後方向荷重が変わることがなく、通常はこの車両前後方向荷重が0となるよう前方車両1との関係で後方車両2の駆動力を決定することから、旋回走行中も車両連結部における車両前後方向荷重を0に保って後方車両2を走行させることができる。
【0045】
図3のステップS22で、車両連結部に図6(b)とは逆に左回り(反時計回り)の曲げモーメントLmが加わっていると判定する場合、本発明における後方車両用左右輪制駆動力制御手段に相当するステップS24において図6(b)とは逆に、後方車両2における右輪9Rの目標後進駆動力tTwrを左輪9Lの目標後進駆動力tTwlよりも大きくする。
【0046】
かかる左右輪9L,9Rの後進時における後進駆動力差制御は、後方車両2に図6(b)上で右回りのヨーモーメントを発生させ、このヨーモーメントが図6(b)とは逆の左回り曲げモーメントLmと反対の向きであることから、車両連結部に作用する図6(b)とは逆の左回り曲げモーメントLmを減殺させることができ、後方車両2の走行安定性を向上させ得る。
【0047】
なお、ステップS24で後方車両2の右輪目標後進駆動力tTwrを左輪目標後進駆動力tTwlよりも大きくするに際しては、両者の和値を不変に保って後進駆動力差を持たせるようにするのが良い。
この場合、後方車両2の全体的な前進駆動力が不変に保たれて、車両連結部における車両前後方向荷重が変わることがなく、通常はこの車両前後方向荷重が0となるよう前方車両1との関係で後方車両2の駆動力を決定することから、旋回走行中も車両連結部における車両前後方向荷重を0に保って後方車両2を走行させることができる。
【0048】
なお上記では、前方車両1を左操舵した場合について説明したが、右操舵した場合においても、同様な後方車両2の左右輪後進駆動力差制御により同様の作用効果を達成することができる。
【0049】
ステップS21〜ステップS24を含む上記ループの繰り返しにより、連結車両の後進時においても前進時と同様に、
相互に隣り合う前方車両1および後方車両2間の連結部に加わる水平面内曲げモーメントLmがなくなるよう後方車両2の左右輪9L,9R間に後進駆動力差を持たせるべく後方車両2の左右輪後進駆動力を制御するため、
後方車両2を水平面内曲げモーメントLmが発生しない態様で安定下に後進走行させ得て、後方車両2の後進走行安定性を向上させることができ、
しかも、後方車両2の車輪9L,9Rを全て車体へ転舵不能に取り付けたままでも、従って、後方車両2の車輪支持構造が複雑になってコスト高になるという不利益を蒙ることなく、また、車輪転舵用に正確で困難な左右輪回転差制御を必要とすることなく、従って、これに伴うコスト高を生ずることなく、後方車両2の後進走行安定性を向上させるという上記の作用効果を達成することができる。
【0050】
ステップS21〜ステップS24を含む上記ループの繰り返しにより、車両連結部に水平面内曲げモーメントLmが作用しなくなると、ステップS21がステップS25を選択するようになり、ここで前記の車両連結部軸線方向荷重Laが発生しているか否かをチェックし、発生していなければ、曲げモーメントLmも発生していなくて、本発明による制御が不要であるから、制御をそのまま終了する。
【0051】
ステップS25で車両連結部軸線方向荷重Laが発生していると判定する場合は、ステップS26において、車両連結部軸線方向荷重Laが0より小さな圧縮荷重(後方車両2が前方車両1により押されている状態)か、逆に、車両連結部軸線方向荷重Laが0より大きな引っ張り荷重(後方車両2が前方車両1を引っ張っている状態)かをチェックする。
【0052】
ステップS26で車両連結部軸線方向荷重Laが0より小さな圧縮荷重(後方車両2が前方車両1により押されている状態)であると判定する場合、制御を、本発明における後方車両用左右輪制駆動力制御手段に相当するステップS27に進めて、後方車両2における左右輪9L,9Rの目標後進駆動力tTwl,Twrをそれぞれ同じ所定量ΔTwだけ増大させる。
かかる左右輪後進駆動力増大制御の繰り返しで、車両連結部に作用していた軸線方向圧縮荷重Laが徐々に低下され、ついには0となって、後方車両2が前方車両1により押されている状態の解消により後方車両2の走行安定性を向上させることができる。
なお、左右輪9L,9Rの後進駆動力増大量を同じΔTwにしたため、ステップS21〜ステップS24で曲げモーメントLmの解消用に設定した後進駆動力差は維持され、左右輪9L,9Rの後進駆動力増大制御によっても後方車両2の走行安定性が阻害されることはない。
【0053】
ステップS26で、車両連結部軸線方向荷重Laが0より大きな引っ張り荷重(後方車両2が前方車両1を引っ張っている状態)であると判定する場合、制御を、本発明における後方車両用左右輪制駆動力制御手段に相当するステップS28に進めて、後方車両2における左右輪9L,9Rの目標後進制動力(回生制動力)tTwl’,Twr’をそれぞれ同じ所定量ΔTw’だけ増大させる。
かかる左右輪後進制動力増大制御の繰り返しで、車両連結部に作用していた軸線方向引っ張り荷重Laが徐々に低下され、ついには0となって、後方車両2が前方車両1を引っ張っている状態の解消により後方車両2の走行安定性を向上させることができる。
なお、左右輪9L,9Rの後進制動力増大量を同じΔTw’にしたため、ステップS21〜ステップS24で曲げモーメントLmの解消用に設定した後進駆動力差は維持され、左右輪9L,9Rの後進制動力増大制御によっても後方車両2の走行安定性が阻害されることはない。
【0054】
なお上記では図1に示すように、連結車両が牽引車両1と被牽引車両2とをタンデム連結して構成した場合について説明したが、
先頭の牽引車両1に多数の被牽引車両を順次連結した連結車両であっても、相互に隣り合う牽引車両1と直後の被牽引車両との間において、或いは、相互に隣り合う被牽引車両間において、後方の車両に対し前記したと同様な駆動制御を行うことにより前記したと同様の作用効果を奏し得ることは言うまでもない。
【0055】
更に上記では図1に示すように、被牽引車両2が一対の左右輪9L,9Rのみを有した2輪車両である場合について説明したが、被牽引車両2が4輪車両であって、そのうちの2輪を駆動する場合においても、また、4輪を駆動する場合においても、本発明の着想は同様に適用し得ること勿論である。
また、前記した左右輪制駆動力差制御に際しては、車両連結部曲げモーメントLmの大きさから、これを打ち消すべき後方車両2の目標ヨーレートを演算し、これと、センサ23で検出した後方車両2の実ヨーレートφとの偏差に基づき、1演算周期当たりの左右輪制駆動力差の大きさを決定して制御ゲインを可変にすることもできる。
【0056】
図7(a),(b)は、本発明の他の実施例になる後方車両2の駆動制御装置を示し、本実施例においては上記したと同様な駆動制御を行う他に、後方車両2の左右輪9L,9Rを転舵可能にして車両に懸架する。
つまり、これら左右輪9L,9Rを回転自在に支持したナックル12L,12Rをサスペンション装置13L,13Rを介して、車体上下方向へ延在するキングピン軸線周りに揺動可能にして車体に懸架し、これにより左右輪9L,9Rをトー角変化可能に、つまり転舵可能に支持する。
【0057】
そしてナックル12L,12R間を、キングピン軸線からオフセットした箇所において相互にタイロッド14で連結し、これによりナックル12L,12R、従って左右輪9L,9Rを相互に連動して同方向へトー角変化し得るようになす。
また、タイロッド14にその長手方向両方向へ作用する一対のバネ15L,15Rを張設して、タイロッド14を車幅方向中立位置に弾支し、これにより常態で左右輪9L,9Rを図7(a)に示す非転舵位置に保持する。
【0058】
更に、図7(a)に示す左右輪9L,9Rの駆動力tTwl,tTwrに伴う駆動反力により左右輪9L,9Rがトーアウト方向へトー角変化するよう、従って、左右輪9L,9Rの制動力tTwl’,tTwr’に伴う制動反力により左右輪9L,9Rがトーイン方向へトー角変化するようなスクラブオフセットが付与されるべくサスペンション装置13L,13Rのジオメトリを設定する。
【0059】
かかる本実施例の構成によれば、前記の左右輪駆動力差制御により図4(c)および図5(b)のごとく左右輪9L,9Rの駆動力tTwl,tTwr間にtTwl>tTwrの関係を持たせた場合について説明すると、駆動力の大きな左輪9Lのトーアウト方向トー角変化力が、駆動力の小さな右輪9Rのトーアウト方向トー角変化力よりも大きくて、左右輪9L,9Rが図7(b)に示すように左転舵される。
この左転舵は、図4(c)および図5(b)の左右輪駆動力差(tTwl>tTwr)による右回りヨーレートを更に助長することとなり、左回りの曲げモーメントLmを速やかに解消して、後方車両2の走行安定性を向上させるという作用効果を速やかに達成することができる。
【0060】
また前記の左右輪駆動力差制御により図4(b)のごとく左右輪9L,9Rの駆動力tTwl,tTwr間にtTwl<tTwrの関係を持たせた場合は、駆動力の大きな右輪9Rのトーアウト方向トー角変化力が、駆動力の小さな左輪9Lのトーアウト方向トー角変化力よりも大きくて、左右輪9L,9Rが図7(b)とは逆に右転舵される。
この右転舵は、図4(b)の左右輪駆動力差(tTwl<tTwr)による左回りヨーレートを更に助長することとなり、右回りの曲げモーメントLmを速やかに解消して、後方車両2の走行安定性を向上させるという作用効果を速やかに達成することができる。
【0061】
更に前記の左右輪制動力差制御により図5(c)のごとく左右輪9L,9Rの制動力tTwl’,tTwr’間にtTwl’<tTwr’の関係を持たせた場合は、制動力の大きな右輪9Rのトーイン方向トー角変化力が、制動力の小さな左輪9Lのトーイン方向トー角変化力よりも大きくて、左右輪9L,9Rが左に転舵される。
この左転舵は、図5(c)の左右輪制動力差(tTwl’<tTwr’)による右回りヨーレートを更に助長することとなり、左回りの曲げモーメントLmを速やかに解消して、後方車両2の走行安定性を向上させるという作用効果を速やかに達成することができる。
【0062】
また前記の左右輪後進駆動力差制御により図6 (b)のごとく左右輪9L,9Rの後進駆動力tTwl,tTwr間にtTwl>tTwrの関係を持たせた場合は、後進駆動力の大きな左輪9Lのトーイン方向トー角変化力が、後進駆動力の小さな右輪9Rのトーイン方向トー角変化力よりも大きくて、左右輪9L,9Rが右転舵される。
この右転舵は、図6 (b)の左右輪後進駆動力差(tTwl>tTwr)による左回りヨーレートを更に助長することとなり、右回りの曲げモーメントLmを速やかに解消して、後方車両2の走行安定性を向上させるという作用効果を速やかに達成することができる。
【0063】
図8は、本発明の更に他の実施例になる後方車両2の駆動制御装置を示し、本実施例においては、
前記実施例が連結シャフト3の上面(または下面)に1個の車両連結部荷重センサ11を設けて水平面内曲げモーメントLmおよび軸線方向荷重Laを検出するものであるのに対し、
車両上方から見て連結シャフト3(または連結シャフト4)の車幅方向左右両側にそれぞれ車両連結部荷重センサ11L,11R(歪ゲージ等)を設け、これら一対のセンサ11L,11Rで検出した車両前後方向(軸線方向)荷重の差を基に水平面内曲げモーメントを検出するようにしたものである。
【0064】
そして本実施例では、図2のコントローラ21が車速VSPをもとに前進走行か、後進走行かを判断し、前進走行なら図9に示す論理マップに基づき後方車両2における左右輪9L,9Rの前進制駆動力を制御し、後進走行なら図10に示す論理マップに基づき後方車両2における左右輪9L,9Rの後進制駆動力を制御するものとする。
【0065】
図9に示す前進時の制駆動力制御について以下に説明する。
左側荷重センサ11Lが圧縮荷重を検出し、右側荷重センサ11Rも圧縮荷重を検出する場合は車両が制動状態であり、この場合、以下のケース1〜3が存在する。
ケース1:
左側荷重センサ11Lで検出した圧縮荷重と、右側荷重センサ11Rで検出した圧縮荷重とが同じであれば、直進での前進制動状態と見なすことができ、この場合は、後方車両2の左右輪9L,9Rに同じ制動力を指令する。
ケース2:
左側荷重センサ11Lで検出した圧縮荷重が、右側荷重センサ11Rで検出した圧縮荷重よりも大きければ、車両連結部に右回り曲げモーメントが作用する旋回前進制動状態と見なすことができ、この場合は、後方車両2の左輪制動力を右輪制動力よりも大きくするよう指令し、これにより後方車両2に左回りのヨーレートを発生させて、車両連結部の右回り曲げモーメントを減殺することで、後方車両2の走行安定性を向上させることができる。
ケース3:
左側荷重センサ11Lで検出した圧縮荷重が、右側荷重センサ11Rで検出した圧縮荷重よりも小さければ、車両連結部に左回り曲げモーメントが作用する旋回前進制動状態と見なすことができ、この場合は、後方車両2の右輪制動力を左輪制動力よりも大きくするよう指令し、これにより後方車両2に右回りのヨーレートを発生させて、車両連結部の左回り曲げモーメントを減殺することで、後方車両2の走行安定性を向上させることができる。
【0066】
左側荷重センサ11Lが引っ張り荷重を検出し、右側荷重センサ11Rも引っ張り荷重を検出する場合は車両が駆動状態であり、この場合、以下のケース1〜3が存在する。
ケース1:
左側荷重センサ11Lで検出した引っ張り荷重と、右側荷重センサ11Rで検出した引っ張り荷重とが同じであれば、直進での前進駆動状態と見なすことができ、この場合は、後方車両2の左右輪9L,9Rに同じ駆動力を指令する。
ケース2:
左側荷重センサ11Lで検出した引っ張り荷重が、右側荷重センサ11Rで検出した引っ張り荷重よりも大きければ、車両連結部に左回り曲げモーメントが作用する旋回前進駆動状態と見なすことができ、この場合は、後方車両2の左輪駆動力を右輪駆動力よりも大きくするよう指令し、これにより後方車両2に右回りのヨーレートを発生させて、車両連結部の左回り曲げモーメントを減殺することで、後方車両2の走行安定性を向上させることができる。
ケース3:
右側荷重センサ11Rで検出した引っ張り荷重が、左側荷重センサ11Lで検出した引っ張り荷重よりも大きければ、車両連結部に右回り曲げモーメントが作用する旋回前進駆動状態と見なすことができ、この場合は、後方車両2の右輪駆動力を左輪駆動力よりも大きくするよう指令し、これにより後方車両2に左回りのヨーレートを発生させて、車両連結部の右回り曲げモーメントを減殺することで、後方車両2の走行安定性を向上させることができる。
【0067】
左側荷重センサ11Lが圧縮荷重を検出し、右側荷重センサ11Rが引っ張り荷重を検出する場合は、車両連結部に右回り曲げモーメントが作用する車両の前進旋回駆動状態であり、この場合は、後方車両2の右輪駆動力を左輪駆動力よりも大きくするよう指令し、これにより後方車両2に左回りのヨーレートを発生させて、車両連結部の右回り曲げモーメントを減殺することで、後方車両2の走行安定性を向上させることができる。
【0068】
左側荷重センサ11Lが引っ張り荷重を検出し、右側荷重センサ11Rが圧縮荷重を検出する場合は、車両連結部に左回り曲げモーメントが作用する車両の前進旋回駆動状態であり、この場合は、後方車両2の左輪駆動力を右輪駆動力よりも大きくするよう指令し、これにより後方車両2に右回りのヨーレートを発生させて、車両連結部の左回り曲げモーメントを減殺することで、後方車両2の走行安定性を向上させることができる。
【0069】
次いで、図10に示す後進時の制駆動力制御について以下に説明する。
左側荷重センサ11Lが圧縮荷重を検出し、右側荷重センサ11Rも圧縮荷重を検出する場合は車両が駆動状態であり、この場合、以下のケース1〜3が存在する。
ケース1:
左側荷重センサ11Lで検出した圧縮荷重と、右側荷重センサ11Rで検出した圧縮荷重とが同じであれば、直進での後進駆動状態と見なすことができ、この場合は、後方車両2の左右輪9L,9Rに同じ駆動力を指令する。
ケース2:
左側荷重センサ11Lで検出した圧縮荷重が、右側荷重センサ11Rで検出した圧縮荷重よりも大きければ、車両連結部に右回り曲げモーメントが作用する旋回後進駆動状態と見なすことができ、この場合は、後方車両2の左輪後進駆動力を右輪後進駆動力よりも大きくするよう指令し、これにより後方車両2に左回りのヨーレートを発生させて、車両連結部の右回り曲げモーメントを減殺することで、後方車両2の走行安定性を向上させることができる。
ケース3:
左側荷重センサ11Lで検出した圧縮荷重が、右側荷重センサ11Rで検出した圧縮荷重よりも小さければ、車両連結部に左回り曲げモーメントが作用する旋回後進駆動状態と見なすことができ、この場合は、後方車両2の右輪後進駆動力を左輪後進駆動力よりも大きくするよう指令し、これにより後方車両2に右回りのヨーレートを発生させて、車両連結部の左回り曲げモーメントを減殺することで、後方車両2の走行安定性を向上させることができる。
【0070】
左側荷重センサ11Lが引っ張り荷重を検出し、右側荷重センサ11Rも引っ張り荷重を検出する場合は車両が後進制動状態であり、この場合、以下のケース1〜3が存在する。
ケース1:
左側荷重センサ11Lで検出した引っ張り荷重と、右側荷重センサ11Rで検出した引っ張り荷重とが同じであれば、直進での後進制動状態と見なすことができ、この場合は、後方車両2の左右輪9L,9Rに同じ制動力を指令する。
ケース2:
左側荷重センサ11Lで検出した引っ張り荷重が、右側荷重センサ11Rで検出した引っ張り荷重よりも大きければ、車両連結部に左回り曲げモーメントが作用する旋回後進制動状態と見なすことができ、この場合は、後方車両2の右輪後進制動力を左輪後進制動力よりも大きくするよう指令し、これにより後方車両2に右回りのヨーレートを発生させて、車両連結部の左回り曲げモーメントを減殺することで、後方車両2の走行安定性を向上させることができる。
ケース3:
右側荷重センサ11Rで検出した引っ張り荷重が、左側荷重センサ11Lで検出した引っ張り荷重よりも大きければ、車両連結部に右回り曲げモーメントが作用する旋回後進制動状態と見なすことができ、この場合は、後方車両2の左輪後進制動力を右輪後進制動力よりも大きくするよう指令し、これにより後方車両2に左回りのヨーレートを発生させて、車両連結部の右回り曲げモーメントを減殺することで、後方車両2の走行安定性を向上させることができる。
【0071】
左側荷重センサ11Lが圧縮荷重を検出し、右側荷重センサ11Rが引っ張り荷重を検出する場合は、車両連結部に右回り曲げモーメントが作用する車両の後進旋回駆動状態であり、この場合は、後方車両2の左輪後進駆動力を右輪後進駆動力よりも大きくするよう指令し、これにより後方車両2に左回りのヨーレートを発生させて、車両連結部の右回り曲げモーメントを減殺することで、後方車両2の走行安定性を向上させることができる。
【0072】
左側荷重センサ11Lが引っ張り荷重を検出し、右側荷重センサ11Rが圧縮荷重を検出する場合は、車両連結部に左回り曲げモーメントが作用する車両の後進旋回駆動状態であり、この場合は、後方車両2の右輪後進駆動力を左輪後進駆動力よりも大きくするよう指令し、これにより後方車両2に右回りのヨーレートを発生させて、車両連結部の左回り曲げモーメントを減殺することで、後方車両2の走行安定性を向上させることができる。
【0073】
以上の説明から明らかなように、図8〜10に示す実施例においても、連結車両の前進時および後進時に、
相互に隣り合う前方車両1および後方車両2間の連結部に加わる水平面内曲げモーメントがなくなるよう後方車両2の左右輪9L,9R間に制駆動力差を持たせるべく後方車両2の左右輪制駆動力を制御するため、
後方車両2を水平面内曲げモーメントが発生しない態様で安定下に走行させ得て、後方車両2の走行安定性を向上させることができ、
しかも、後方車両2の車輪9L,9Rを全て車体へ転舵不能に取り付けたままでも、従って、後方車両2の車輪支持構造が複雑になってコスト高になるという不利益を蒙ることなく、また、車輪転舵用に正確で困難な左右輪回転差制御を必要とすることなく、従って、これに伴うコスト高を生ずることなく、後方車両2の走行安定性を向上させるという上記の作用効果を達成することができる。
【0074】
なお上記実施例ではいずれも、後方車両2の左右輪制駆動力差制御により後方車両2の直進走行安定性を向上させるようにしたが、後方車両2の左右輪制駆動力差制御と、前方車両1の左右輪制駆動力差制御との組み合わせにより後方車両2の直進走行安定性を向上させることもできる。
また、前方車両1の左右輪制駆動力差制御は必ずしも必要でないことから、上記各実施例におけるように前方車両1の左右輪を個々に制駆動力制御し得るようにする必要は必ずしもない。
【0075】
図11(a),(b)は、図7(a),(b)につき前述したと同様に後方車両2の左右輪9L,9Rを転舵可能にして車両に懸架するが、図7(a),(b)の場合とは逆のスクラブオフセットを付与したものである。
つまり、後方車両2の左右輪9L,9Rを回転自在に支持したナックル12L,12Rをサスペンション装置13L,13Rを介して、車体上下方向へ延在するキングピン軸線周りに揺動可能にして車体に懸架し、これにより左右輪9L,9Rをトー角変化可能に、つまり転舵可能に支持する。
【0076】
そしてナックル12L,12R間を、キングピン軸線からオフセットした箇所において相互にタイロッド14で連結し、これによりナックル12L,12R、従って左右輪9L,9Rを相互に連動して同方向へトー角変化し得るようになす。
また、タイロッド14にその長手方向両方向へ作用する一対のバネ15L,15Rを張設して、タイロッド14を車幅方向中立位置に弾支し、これにより常態で左右輪9L,9Rを図11(a)に示す非転舵位置に保持する。
【0077】
更に、図11(a),(b)に示す左右輪9L,9Rの前進駆動力Twl,Twrに伴う駆動反力により左右輪9L,9Rがトーイン方向へトー角変化するよう、従って、図13(a),(b)に示す左右輪9L,9Rの前進制動力tTwl’,tTwr’に伴う制動反力により左右輪9L,9Rがトーアウト方向へトー角変化するようなスクラブオフセットが付与されるべくサスペンション装置13L,13Rのジオメトリを設定する。
【0078】
後方車両2の上記した左右輪サスペンション装置13L,13Rによれば、以下のような作用効果が奏し得られる。
図11(a)は、後方車両2の左右輪9L,9Rが同じ摩擦係数μの路面上に乗って前進駆動されている場合の状態を示し、この場合、路面μが同じであることから、左右輪9L,9Rが同じ前進駆動力Twl,Twrを発生する。
従って、前進駆動力Twl,Twrに伴う駆動反力による左右輪9L,9Rのトーイン方向トー角変化力が同じになり、左右輪9L,9Rはそれぞれ、バネ15L,15Rの相互逆向きバネ力により図11(a)に示す非転舵中立位置に保たれる。
【0079】
ところで、図12(a)に示すように左輪9Lが相対的に摩擦係数の低い氷結路のような低μ路に乗ったため、左右輪9L,9Rが異なる摩擦係数μの路面上に乗った状態で前進駆動されることになった場合(左右スプリットμ走行時)は、左輪路面μ<右輪路面μに起因して、図11(b)および図12(a)に示すように左輪前進駆動力Twl<右輪前進駆動力Twrとなる。
かかる左右輪前進駆動力差は直進中の後方車両2をして、車両上方から見たとき図12(a)にαで示す左回りのヨーモーメントにより同方向へヨー運動させようとする。
このヨー運動は後方車両2の直進走行安定性を害し、できるだけ回避する必要がある。
【0080】
しかして図11(a)の構成によれば、上記の左右スプリットμ走行時は、左輪前進駆動力Twl<右輪前進駆動力Twrのため、前進駆動力の大きな右輪9Rのトーイン方向トー角変化力が、前進駆動力の小さな左輪9Lのトーイン方向トー角変化力よりも大きくて、左右輪9L,9Rが図12(b)に示すように左転舵される。
かかる左右輪9L,9Rの図12(b)に示す左転舵は、後方車両2にβで示すような右回りのヨーモーメントを発生させ、このヨーモーメントβが上記した左回りのヨーモーメントαを減殺して、後方車両2が左回りのヨーモーメントαにより同方向へヨー運動させるのを防止し、左右スプリットμでの前進駆動走行時における後方車両2の直進走行安定性を向上させることができる。
【0081】
この作用効果は、逆に右輪9Rが相対的に摩擦係数の低い氷結路のような低μ路に乗ったため、左右輪9L,9Rが異なる摩擦係数μの路面上に乗った状態で前進駆動されることになった左右スプリットμでの前進駆動走行時においても、上記したと同様の原理による左右輪9L,9Rの右転舵により後方車両2の直進走行安定性を向上させることができる。
【0082】
図13(a),(b)は、車両が左右スプリットμ路で前進制動を行っている時の状態を示し、図示のごとく左輪9Lが相対的に摩擦係数の低い氷結路のような低μ路に乗ったため、左右輪9L,9Rが異なる摩擦係数μの路面上に乗った状態で前進制動されることになった場合は、左輪路面μ<右輪路面μに起因して、図13 (a),(b)に示すように左輪前進制動力Twl’<右輪前進制動力Twrとなる。
かかる左右輪前進制動力差は直進中の後方車両2をして、車両上方から見たとき図13(a)にγで示す右回りのヨーモーメントにより同方向へヨー運動させようとする。
【0083】
しかして図11(a)の構成によれば、かかる左右スプリットμ走行時は、左輪前進制動力Twl’<右輪前進駆動力Twr’のため、前進制動力の大きな右輪9Rのトーアウト方向トー角変化力が、前進制動力の小さな左輪9Lのトーアウト方向トー角変化力よりも大きくて、左右輪9L,9Rが図13(b)に示すように右転舵される。
かかる左右輪9L,9Rの図13(b)に示す右転舵は、後方車両2にδで示すような左回りのヨーモーメントを発生させ、このヨーモーメントδが上記した右回りのヨーモーメントγを減殺して、後方車両2が右回りのヨーモーメントγにより同方向へヨー運動させるのを防止し、左右スプリットμでの前進制動走行時における後方車両2の直進走行安定性を向上させることができる。
【0084】
この作用効果は、逆に右輪9Rが相対的に摩擦係数の低い氷結路のような低μ路に乗ったため、左右輪9L,9Rが異なる摩擦係数μの路面上に乗った状態で前進制動されることになった左右スプリットμでの前進制動走行時においても、上記したと同様の原理による左右輪9L,9Rの左転舵により後方車両2の直進走行安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施例になる後方車両用駆動制御装置を具えた連結車両を、車両上方から見てその概略を示す線図的平面図である。
【図2】同連結車両に設けた後方車両の駆動制御装置を示すブロック線図である。
【図3】駆動制御装置におけるコントローラが実行する、後方車両の駆動制御プログラムを示すフローチャートである。
【図4】図1の連結車両を前進駆動走行させている場合の状態で示す線図的平面図で、 (a)は、連結車両を直進させている場合の線図的平面図、 (b)は、連結車両を左旋回させていて、車両連結部に右回りの曲げモーメントが作用する場合の線図的平面図、 (c)は、連結車両を左旋回させていて、車両連結部に左回りの曲げモーメントが作用する場合の線図的平面図である。
【図5】図1の連結車両を前進制動走行させている場合の状態で示す線図的平面図で、 (a)は、連結車両を直進させている場合の線図的平面図、 (b)は、連結車両を左旋回させていて、車両連結部に右回りの曲げモーメントが作用する場合の線図的平面図、 (c)は、連結車両を左旋回させていて、車両連結部に左回りの曲げモーメントが作用する場合の線図的平面図である。
【図6】図1の連結車両を後進駆動走行させている場合の状態で示す線図的平面図で、 (a)は、連結車両を直進させている場合の線図的平面図、 (b)は、連結車両を左旋回させていて、車両連結部に右回りの曲げモーメントが作用する場合の線図的平面図である。
【図7】本発明の他の実施例になる駆動制御装置を具えた後方車両を、車両上方から見てその概略を示す線図的平面図で、 (a)は、車両を前直進駆動走行させている場合の線図的平面図、 (b)は、車両を前旋回駆動走行させている場合の線図的平面図である。
【図8】本発明の更に他の実施例になる後方車両用駆動制御装置を具えた連結車両を、車両上方から見てその概略を示す線図的平面図である。
【図9】同実施例における後方車両用駆動制御装置のコントローラが前進走行時において実行する、後方車両の左右輪制駆動力差制御の制御論理図である。
【図10】同実施例における後方車両用駆動制御装置のコントローラが後進走行時において実行する、後方車両の左右輪制駆動力差制御の制御論理図である。
【図11】連結車両を成す後方車両の他の構成例を、車両上方から見て示す線図的平面図で、 (a)は、後方車両を、左右輪が同じ摩擦係数の路面に乗っている場合の前進駆動状態で示す線図的平面図、 (b)は、後方車両を、左右輪が異なる摩擦係数の路面に乗っている場合の前進駆動状態で示す線図的平面図である。
【図12】図11の後方車両を、前直進駆動中に左輪が摩擦係数の低い路面に乗った場合の状態で示す線図的平面図で、 (a)は、後方車両の左輪が摩擦係数の低い路面に乗った直後における左右輪前進駆動力差の発生状況を示す線図的平面図、 (b)は、後方車両の左輪が摩擦係数の低い路面に乗ったことで発生する左右輪前進駆動力差に伴う左右輪の転舵状態を示す線図的平面図である。
【図13】図11の後方車両を、前直進制動中に左輪が摩擦係数の低い路面に乗った場合の状態で示す線図的平面図で、 (a)は、後方車両の左輪が摩擦係数の低い路面に乗った直後における左右輪前進制動力差の発生状況を示す線図的平面図、 (b)は、後方車両の左輪が摩擦係数の低い路面に乗ったことで発生する左右輪前進制動力差に伴う左右輪の転舵状態を示す線図的平面図である。
【符号の説明】
【0086】
1 牽引車両(前方車両)
2 被牽引車両(後方車両)
3 牽引車両側連結シャフト(車両連結部)
4 被牽引車両側連結シャフト(車両連結部)
5 ピボットピン
6L 左前輪
6R 右前輪
7L 左後輪
7R 右後輪
8L 電動モータ
8R 電動モータ
9L,9R 被牽引車両用左右輪
10L,10R 電動モータ
11 車両連結部荷重センサ(連結部荷重検出手段)
11L,11R 車両連結部荷重センサ(連結部荷重検出手段)
12L,12R ナックル
13L,13R サスペンション装置
14 タイロッド
15L,15R バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別に制駆動力を制御可能な複数車両をタンデムに連結してなる連結車両において、
連結車両の相互に隣り合う前方車両および後方車両間を連結する連結部に、該連結部へ加わる水平面内曲げ荷重を検出する連結部荷重検出手段を設け、
該手段により検出した水平面内曲げ荷重がなくなるよう前記後方車両の左右輪間に制駆動力差を持たせるべく後方車両の左右輪制駆動力を制御する後方車両用左右輪制駆動力制御手段を設けたことを特徴とする、連結車両における後方車両の駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の、連結車両における後方車両の駆動力制御装置において、
前記連結部荷重検出手段は、車両上方から見て前記連結部の車幅方向両側にそれぞれ設けられた一対の車両前後方向荷重検出センサで構成し、これら一対のセンサで検出した車両前後方向荷重の差を基に前記水平面内曲げ荷重を検出するものであることを特徴とする、連結車両における後方車両の駆動制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の、連結車両における後方車両の駆動力制御装置において、
前記後方車両用左右輪制駆動力制御手段は、前記水平面内曲げ荷重がなくなるよう後方車両の左右輪間に制駆動力差を持たせるに際し、これら左右輪制駆動力の和値を不変に保って前記左右輪間制駆動力差を持たせるよう後方車両の左右輪制駆動力を制御するものであることを特徴とする、連結車両における後方車両の駆動制御装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の、連結車両における後方車両の駆動力制御装置において、
前記連結部荷重検出手段が、前記水平面内曲げ荷重のほかに車両前後方向荷重をも検出するものであり、
前記後方車両用左右輪制駆動力制御手段は、前記車両前後方向荷重がなくなるよう後方車両の左右輪制駆動力を等しく増減させるものでもあることを特徴とする、連結車両における後方車両の駆動制御装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の、連結車両における後方車両の駆動力制御装置において、
前記後方車両の左右輪を転舵可能にして車両に懸架し、これら左右輪間を連動して同方向へ転舵されるよう相互に連結する共に非転舵位置に弾支し、
前記後方車両の左右輪が前記制駆動力差に応動して前記水平面内曲げ荷重をなくす方向へ転舵されるよう該左右輪のサスペンションジオメトリを決定したことを特徴とする、連結車両における後方車両の駆動制御装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−161148(P2007−161148A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−361790(P2005−361790)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】